説明

苗又は新芽野菜生産装置及び当該装置を用いた苗又は新芽野菜生産システム

【課題】 本発明は、新芽野菜、苗を効率よく大量に生産でき、操作が容易でメンテナンスが不要な安価な装置及び当該装置を用いたシステムを提供することを課題とする。
【解決手段】 培養に際し、浸漬槽にて種子を水に浸漬し、これを発芽又は発芽直前の状態にまで膨潤させ、これをポンプを用いて培養槽に送出し、培養槽に水を投入して曝気することで育苗を行い、得られた苗をポンプを用いて篩に送出し洗浄を行うことで、連続的に効率よくなおかつ大量に苗又は新芽野菜を生産することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、種子を曝気水中において発芽させ培養して苗又は新芽野菜を生産する装置及び当該装置を用いた苗又は新芽野菜の生産システムに関する。
【背景技術】
【0002】
食用に供すカイワレ状態の新芽野菜、いわゆるスプラウトを生産するには、従来、不織布やスポンジ上に播種し、水で浸漬して、培養するといった方法がとられてきた。最近では、円筒状の槽に種子を投入し、加湿・保温条件下で、筒を回転させて、培養する方法がとられている。
しかしながら、これらの方法はバッチ式であり、大量に安価な新芽野菜や苗を生産することは困難で、効率よく大量に新芽野菜、苗を生産する方法を用いることが望まれていた。
【非特許文献1】片岡芙佐子著「スプラウトレシピ〜発芽を食べる育てる〜」創森社 2003年
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、新芽野菜、苗を効率よく大量に生産でき、操作が容易でメンテナンスが不要な安価な装置及び当該装置を用いたシステムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者は、上記問題点に鑑み、鋭意検討を行い、培養に際し、浸漬槽にて種子を水に浸漬し、これを発芽又は発芽直前の状態にまで膨潤させ、これをポンプを用いて培養槽に送出し、培養槽に水を投入して曝気することで育苗を行い、得られた苗をポンプを用いて篩に送出し洗浄を行うことで、連続的に効率よくなおかつ大量に苗又は新芽野菜を生産できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【発明の効果】
【0005】
本発明における装置及びこれを用いたシステムを実施することで、連続的に苗又は新芽野菜を生産することができる。これにより、安価でありながら手間を省くことができ、苗又は新芽野菜を効率的かつ大量に生産することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明に用いられる培養槽は、水を受け入れる形状のものであって、槽の上部に開口部、槽の下部に空気孔を有するものであれば、いずれのものであっても用いることができる。材質は、ガラス製、プラスチック製、金属製等いずれの材質であっても用いることができるが、内部の状態を確認できるものが好ましく、透明なガラス製、プラスチック製のものを用いることが特に好ましい。
【0007】
種子を培養するに際し、予め水に浸漬して洗浄、吸水、出芽状態にさせることが好ましい。種子の水への浸漬は浸漬槽内で行う。浸漬槽は温度制御を可能とする恒温槽とすることが好ましい。発芽に適する温度は作物毎に異なり、得ようとする苗又は新芽野菜を選択し、それに適した温度に恒温槽を設定する。浸漬時間は、種子の種類によるが、24時間前後とすることが好ましい。
【0008】
次に、膨潤させた種子をチューブを介し、ポンプにより浸漬槽から培養槽へ送出する。培養槽には更に水を加え、水中にて種子から苗又は新芽野菜に生育するまで培養を行う。培養中、エアポンプよりチューブを介し、槽の下部に設けられた空気孔を通じて水中に空気を供給する。槽側のチューブにはエアストーンを装着し、これを用いることにより、内部は循環し、攪拌均一化されることで、より効率的に培養がなされ、培養期間の短縮がはかれる。また、衛生面においては、培養中、水中での細菌類の繁殖を抑制することが求められる。そのための装置としては、殺菌灯が最も効果的で、培養中、槽上部の開口部より紫外線を照射して細菌類の繁殖を抑制させる。
【0009】
培養は、得ようとする作物の苗又は新芽野菜の成長段階を考慮して行う。すなわち、得ようとする作物が、苗又は新芽野菜まで成長し、所期の成長段階となるまで培養を行えばよい。このとき子葉の展開状態は生育に伴って大きくなり、この子葉面積に応じ、循環水流に乗じ下層から上層に向かって浮上してくるので、得られた苗又は新芽野菜をチューブを介し、順次、ポンプにより培養槽から篩へ送出することができる。
【0010】
用いる篩は、苗及び新芽野菜を通過させず、洗浄水を通過させる網目を有する篩であれば、これに用いることができるが、洗浄効率からいって、円錐型又は円筒型で回転式のトロンメル篩を用いることが好ましい。篩に送出された苗又は新芽野菜は、ここで洗浄される。洗浄水としては、水又は洗浄剤を溶解させた水を用いることができ、トロンメル篩を用いる場合、洗浄中これを回転させ、苗又は新芽野菜に付着する不要物を洗い落とす。
【0011】
こうして得られた苗又は新芽野菜を製品とし、食用に供することができる。また、食用以外にも、得られた苗又は新芽野菜を栽培培地に移植し、育苗することも可能である。
以上の浸漬、培養、洗浄からなる苗又は新芽野菜の生産工程は、同一のシステム内で同時期に行うことができる。すなわち、上層にて収穫しつつ、それ相当量の浸漬種子を補充することで、連続的に苗又は新芽野菜を生産することを可能とするもので、これらの生産を効率的かつ大量に行うことができる。
【実施例1】
【0012】
図1は、本発明の本発明の苗又は新芽野菜生産装置を用い、新芽野菜を生産したシステム図である。
野菜種子13(品種名:ブロッコリー)を浸漬槽2に置き、水を加えて浸漬させた。槽内の温度を20℃に制御し、24時間放置した。野菜種子13は、膨潤し出芽状態となった。次に、この野菜種子13をチューブ9を通じ、ポンプ7を用いて、培養槽1に送出した。
この培養槽1に水を加え、エアポンプ4よりチューブ11を介し、培養槽1の下部に設けられた空気孔を通じ空気を供給した。予め、チューブ11の槽側にはエアストーン5を装着し、これを用いて発芽種子が必要とする酸素を供給し、内部を循環・攪拌をすることで培養を行った。培養中は、培養槽1の上部の開口部に、殺菌灯6を置き紫外線を照射した。
【0013】
培養5日目、野菜種子13は新芽野菜12まで成長し、その子葉面積に応じ、循環水流に乗じ下層から上層に向かって浮上してきた。上層部分のみ新芽野菜12をチューブ10を介しポンプ8を用いてトロンメル篩3に送出した。トロンメル篩3を回転させ、洗浄水14を浴びせ、新芽野菜12の洗浄を行った。培養6日目以降、10日までの毎日、同様に上層部分に浮上してきた新芽野菜12について、同様にトロンメル篩に送出、洗浄を行い新芽野菜製品とした。
また、本ロットの培養8日目には、新たに野菜種子13(品種名:ブロッコリー)を浸漬槽2に置き、以降、上述の方法と同様にして、次ロットの新芽野菜の生産を行った。
【産業上の利用可能性】
【0014】
本発明における装置及びこれを用いたシステムを実施することで、連続的に苗を生産することができる。これにより、安価でありながら手間を省くことができ、苗を効率的かつ大量に生産することができる。新芽野菜を生産するのに好適である他、移植用苗を生産するにも適する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の苗又は新芽野菜生産装置を用い、新芽野菜の生産システムを示した説明図である。
【符号の説明】
【0016】
1 培養槽
2 浸漬槽
3 トロンメル篩
4 エアポンプ
5 エアストーン
6 殺菌灯
7 ポンプ
8 ポンプ
9 チューブ
10 チューブ
11 チューブ
12 新芽野菜
13 野菜種子
14 洗浄水

【特許請求の範囲】
【請求項1】
槽の上部に開口部、槽の下部に空気孔を設けた培養槽と、培養槽の上方に設置された殺菌灯と、培養に際し予め種子を水に浸漬させるための浸漬槽並びに浸漬槽から培養槽へ種子を送出するためのポンプ及びチューブと、苗又は新芽野菜を収穫し洗浄を行うための篩並びに培養槽から篩に苗又は新芽野菜を送出するためのポンプ及びチューブと、培養槽の空気孔を通じ曝気を行うためのエアポンプ、エアストーン及びこれらを接続するためのチューブを配置したことを特徴とする苗又は新芽野菜生産装置。
【請求項2】
培養に際し種子を浸漬槽内で水に浸漬させ、膨潤しわずかに発芽した種子をチューブを介しポンプを用いて培養槽に送出し、培養槽内に水を投入した後、エアポンプからチューブを介してエアストーンより曝気し、槽内の水を循環させて培養を行い、上層に得られた苗又は新芽を、順次チューブを介しポンプを用いて篩に送出し、篩内で洗浄を行うことを特徴とする苗又は新芽野菜生産システム。

【図1】
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【公開番号】特開2006−25665(P2006−25665A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−207386(P2004−207386)
【出願日】平成16年7月14日(2004.7.14)
【出願人】(000240950)片倉チッカリン株式会社 (24)
【Fターム(参考)】