説明

苗挿し機

【課題】苗挿し深さの調節が容易に行える苗を育苗器に移植する苗挿し機を提供すること。
【解決手段】育苗器1を載置して移送する育苗器移送装置Aと、苗を支持する苗支持体15が周回する苗供給装置Cと、該苗支持体15内の苗を把持して移動して前記育苗器移送装置Aに設置された育苗器1に苗を挿す苗把持ハンド5b,5cとを設け、苗支持体15には、作業者Nが供給する苗を上方から苗支持体15内に入り込ませるよう上方に開口した上側苗支持部15aと、苗支持体15内の苗の下端を支持する下側苗支持部15dと、苗把持ハンド5b,5cが側方から苗支持体15内に出入りして苗を取り出せるよう側方に開口した苗取り出し用開口部15cとを設け、前記苗支持体15の下側苗支持部15dを、苗把持個所に移動した苗把持ハンド5b,5cに対して上下位置変更可能に構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、育苗器に苗を挿す苗挿し機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一度に多数の苗を同時に育苗器に苗挿しする苗挿し機の技術に関して、例えば、特開平16−208519号公報に次のような構成が開示されている。すなわち、育苗器(セルトレイ)を載置して移送する育苗器移送装置と、菊等の苗を収容して支持する多数の苗支持体が周回する苗供給装置と、該苗支持体内の苗の茎部を把持して移動して前記育苗器に苗を挿す苗把持ハンドとを備えた苗挿し機である。
【特許文献1】特開平16−208519号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
前記特許文献1に開示された苗挿し機は、菊などの短い苗はセルトレイのセル内の培土に浅く挿し、サトウキビやイ草などの長い苗は深く挿すことになる。このため、苗を深く挿し込む場合には、苗把持ハンドは苗の茎部の下端から高い個所を把持してセルに向かって設定距離下降して苗をセル内の培土に挿し、苗を浅く挿し込む場合には、苗把持ハンドは苗の茎部の下端から低い個所を把持してセルに向かって設定距離下降して苗をセル内の培土に挿す必要がある。
【0004】
しかしながら、前記苗挿し機は、セルトレイのセル内の培土に苗を挿し込む高さによって苗把持ハンドが苗を把持する位置を上下高さ変更するために、苗把持ハンドが苗把持個所に移動したときの苗把持ハンドの高さを変更調節する構成を採用すると、苗把持ハンドの位置検出用のセンサの位置調節機構等が必要になり、結局、センサ位置の微調整が必要となって、苗挿し深さ調節が容易に行えない問題が生じる。
本発明の課題は、苗を育苗器に移植する苗移植機に関して、苗挿し深さの調節が容易に行なえるようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の上記課題は次の解決手段で解決される。
請求項1記載の発明は、育苗器1を載置して移送する育苗器移送装置Aと、苗を支持する苗支持体15が周回する苗供給装置Cと、該苗支持体15内の苗を把持して移動して前記育苗器移送装置Aに配置された育苗器1に苗を挿す苗把持ハンド5b,5cを有する苗挿し装置Bを備えた苗挿し機において、前記苗支持体15には、作業者Nが供給する苗を上方から苗支持体15内に入り込ませるよう上部に開口した苗供給用開口部15eを有する上側苗支持部15aと、苗支持体15内の苗の下端を支持する下側苗支持部15dと、苗把持ハンド5b,5cが側方から苗支持体15内に出入りして苗を取り出せるよう側方に開口した苗取り出し用開口部15cとを設け、前記苗支持体15の下側苗支持部15dを、苗把持個所に移動した苗把持ハンド5b,5cに対して上下位置変更可能に構成した苗挿し機である。
【0006】
請求項2記載の発明は、前記苗支持体15には、作業者が供給する苗を上方から苗支持体15内に入り込ませるよう上方に開口した苗供給用開口部15eを有する上側苗支持部15aと、苗支持体15内の苗の下端を支持する下側苗支持部15dと、前記苗把持ハンド5b,5cが側方から苗支持体15内に出入りして苗を取り出せるよう側方に開口した苗取り出し用開口部15cとを設け、前記苗支持体15の上側苗支持部15aを、下側苗支持部15dに対して上下位置変更可能に構成した請求項1記載の苗挿し機である。
【0007】
請求項3記載の発明は、前記苗供給装置Cは苗供給装置支持部材54で支持され、前記苗挿し装置Bは苗挿し装置支持部材9で支持される構成とし、前記苗供給装置支持部材54と苗挿し装置支持部材9を上下方向に移動調節可能に構成し、前記苗供給装置Cと前記苗把持ハンド5b,5cの支持高さを前記育苗器移送装置Aに対して上下位置変更可能に構成した請求項1又は請求項2記載の苗挿し機である。
【発明の効果】
【0008】
請求項1記載の発明によれば、苗支持体15内の苗の下端を支持する下側苗支持部15dを、苗把持個所に移動した苗把持ハンド5b,5cに対して上下位置変更可能に構成したので、苗把持ハンド5b,5cが苗把持個所に移動したときの苗把持ハンド5b,5cの高さを変更調節することなく、苗把持ハンド5b,5cが苗を把持する位置を上下高さ変更でき、よって苗挿し深さ調節が容易に行える。
【0009】
請求項2記載の発明によれば、請求項1記載の発明の効果に加えて、苗支持体15内の苗の上側を支持する上側苗支持部(開口部)15aを、苗支持体15内の苗の下端を支持する下側苗支持部15bに対して上下位置変更可能に構成したので、苗の長さに応じて苗の上部側を適正な位置で支持できて、苗支持体15内に支持される苗の姿勢が適正になり、よって、苗把持ハンド5b,5cが適正な姿勢で苗を把持できるようになって、苗挿し姿勢が良好になる。
【0010】
請求項3記載の発明によれば、請求項1又は請求項2記載の発明の効果に加えて、前記苗供給装置支持部材54と苗挿し装置支持部材9を上下方向に移動調節可能に構成し、前記苗供給装置Cと前記苗把持ハンド5b,5cの支持高さを前記育苗器移送装置Aに対して上下位置変更可能に構成したので、深さが異なる育苗器1を用いることによって育苗器移送装置Aに設置された育苗器1の上面高さが変わるのに対応して苗供給装置Cの支持高さと苗把持ハンド5b,5cの支持高さを一緒に調節でき、しかも、この調節によって以前に設定した苗挿し深さが変更されることもないので、深さが異なる育苗器1に対応した調節が容易に行える。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明を実施するための最良の形態となる苗挿し機の構成を図面に基づいて説明する。本実施例の苗挿し機の平面図を図1に、側面図を図2に示し、これら図1と図2に基づいて苗挿し機の全体的な構成について説明する。
【0012】
苗挿し機は、育苗器1を載置して移送方向Rに向かって移送する育苗器移送装置Aと、苗を支持する苗支持体15が周回する苗供給装置Cと、該苗支持体15内の苗を把持して移動して前記育苗器移送装置Aに設置された育苗器1に苗を挿す苗挿し装置Bと育苗器1内のセル内の土に穴を開ける穴開け装置Dを備えている。
【0013】
育苗器移送装置Aには育苗器1の左右幅と略同じ幅に一対の枠体2,2が設けられ、該一対の枠体2,2の両端部には駆動軸4cが掛け渡され、該駆動軸4cに固着された駆動プーリ4bが駆動用モータ(図示せず)により駆動する。前記駆動プーリ4bの回転により該駆動プーリ4bに掛け渡された移送ベルト3が移動することで、該移送ベルト3上に載置された育苗器1が移送方向Rに移送される。
育苗器1には苗を挿入できるセル1aを多数(本実施の形態では一列につき20個)設けられている。
【0014】
図1、図2に示すように、苗挿し装置Bに苗を供給する苗供給装置Cは、カップ形状の苗支持体15を平面視で略長円形状に形成する苗供給装置枠体16に沿って多数(本実施の形態では把持具5aの4倍の数である40個)連続して数珠繋ぎで配置している。苗支持体15を周回移動させる一対のスプロケット17,17は、苗供給装置枠体16の両端部にそれぞれ設けられ、一方のスプロケット17が駆動体となり、一対のスプロケット17,17間に掛け渡された図示しないチェーンの駆動で他方のスプロケット17も連動する。一対のスプロケット17,17が回動すると苗支持体15の全体はスプロケット17,17の作用を受けて押され、苗供給装置枠体16に沿って略長円形状の軌跡を描いてT方向に周回移動する。また、前記平面視略長円形状に複数配置された苗支持体15の内側上方には供給する苗を置く苗置台6が設けられている。
【0015】
次に苗支持体15について、図3のその一部斜視図と図4の分解斜視図により説明する。
【0016】
苗支持体15は平面視円状に形成する上側苗支持部15aと、正面視五角形状で底部15bを三角形状に形成し、表面側に苗取り出し用開口部15cを形成した受け体(下側苗支持部)15dから構成され、上側苗支持部15aと受け体15dとは多数の苗収容体15を連結させる上下2枚のプレート23a,23bそれぞれに2つずつ形成する孔23c,23dに挿入し、受け体15dの上面に屈曲形成した取付部15fを上側苗支持部15aに形成している溝部15gに差し込み、連結環24を受け体15dの後部に挟み付けるよう取り付け、受け体15dの苗取り出し用開口部15cが歪み等により開いて受け体15dが上側苗支持部15aから脱落することを防止している。また、受け体15dの底部15b側に形成する傾斜部分の苗取り出し用開口部15c側には苗取り出し用開口部15cからの苗の落下を防止するブラシ(あるいは弾性体)15hを取り付けている。なお、前記プレート23aと23bとは上下が互い違いに重なる状態で苗収容体15を各孔23c,23dに挿入することで連結する。
【0017】
また、苗供給装置Cの一端(図1の紙面左側半分)は育苗器1の左右幅方向より側方に向かって突出して配置しているので、作業者Nが苗支持体15に苗を投入する苗投入場所となるスペースを形成している。そして、作業者Nが苗を投入する苗投入場所Mは、苗を把持具5aで把持する苗把持位置Fに隣接するスペースに設けている。
【0018】
苗置き台6の上面には苗挿し機の運転停止を行う切替スイッチ20を設け、苗投入場所Mの近傍には図示はしないが電源スイッチ、リセットスイッチ、そして各種装置を作動させるシーケンサー等を内蔵する操作盤や、苗供給装置Cの周回速度を作業者Nが足で調節するフットスイッチ等、作業者Nが操作する各種装置を集中的に備え、作業者Nが苗収容体15に苗を投入しながら苗挿し機を運転・制御することができるよう構成している。
【0019】
図2に示す穴開け装置Dは、育苗器1のセル1aに詰めている土に苗を差し込むための穴を作る作孔装置であり、育苗器1の長手方向に配置されるセル1aの数(本実施の形態では20個)に対応して配置されたセル1aと同一数の穴開けピン22aを取り付けている。穴開け装置Dで育苗器1のセル1aに詰めている土に苗を差し込むための穴を開けた後、ベルト3で育苗器1が図2の矢印R方向に移動するので、苗把持部5でセル1a内の土に苗を差し込むことができる。
【0020】
図5に一対の苗把持ハンド5b,5cを含む把持部5の斜視図を示す。
苗挿し装置Bは苗を保持するとき苗の茎を1本ずつ両側から把持する把持具5aを多数備えている。なお、本実施の形態では10個の把持具5aを並列して把持具プレート5mに取り付けて把持部5を形成することで、同時に10本の苗を育苗器1に苗挿しできるよう構成している。
【0021】
また、把持具5aはハンド開閉モータ10により開閉する一対の苗把持ハンド5b,5cを備えている。該把持具5aは一対の苗把持ハンド5b,5cと各苗把持ハンド5b,5cとそれぞれ一体で横方向に移動するプレート5d,5eと該プレート5d,5eにそれぞれ連結したアーム5f,5gなどからなるリンク部材と該リンク部材を介して作動させるハンド開閉カム5jを備えている。該カム5jはハンド開閉モータ10の回転軸に固定されているので、ハンド開閉モータ10が回転するとリンク部材を介して一対の苗把持ハンド5b,5cが開閉動作する。
【0022】
把持部5の把持具プレート5mの裏面はアーム33bの一端で支持され、アーム33bの他端は横移動プレート8上に配置された前後移動用モータ33の回転軸に固定されたカム33aに取り付けられることで、把持部5は移送方向Rに沿った方向に前後移動可能に構成している。
【0023】
横移動プレート8にはアーム35bの一端を取り付け、アーム35bの他端を横支持プレート9上に配置された横移動用モータ35の回転軸に固定されたカム35aに取り付けられることで、横移動プレート8は横支持プレート9に沿って移送方向Rと交差する方向Sに沿って育苗器移送装置Aの左右内側を移動可能に構成している。
【0024】
また、前記左右移動用モータ35の駆動により円形カム35aが回転すると、図6に示すように円形カム35aの周辺部に設けられた凹部35a1に各一対の苗把持ハンド5b,5cの苗の把持位置検出用のリミットスイッチ37の端子37aが入り込む構成になっている。そして、上記左右移動用モータ35の駆動で横移動プレート8が移動すると苗把持部5も移動する。横移動プレート8の移動中はリミットスイッチ37の端子37aがカム35aの外周面を摺動している。そして、端子37aがカム35aに設けた凹部35a1に嵌まると左右移動用モータが駆動停止し、横移動プレート8及び苗把持部5も停止する。
【0025】
図6に示すカム35aは定速回転する左右移動用モータ35により一方向にフル回転するのではなく、180度の半回転の往復運動を繰り返す。図6(a)に示すようにカム35aに設けた凹部35a1がカム35aの180度の対象に位置にあるとカム35aの180度の回転で横移動プレート8は育苗器1の一列分を2回で挿し木する横移動をする。同様に図6(b)に示すようにカム35aに設けた凹部35a1が90度の角度毎に3個設けられていると、カム35aの1/2回転で横移動プレート8は育苗器1の一列分を3回で挿し木する横移動をする。また、図6(c)に示すようにカム35aに設けた凹部35a1が45度の角度毎に4個設けられていると。カム35aの1/2回転で横移動プレート8は育苗器1の一列分を4回で挿し木する横移動をする。
【0026】
なお、苗把持部5を上下方向に昇降動作させるための上下移動用モータ26は、その駆動で横支持プレート9を縦支持プレート7に沿って上下方向に昇降動作させることで苗把持部5を昇降動作させる構成である。
【0027】
次に、本実施の形態の苗挿し機の作業内容について説明する。
操作盤の電源スイッチ、運転スイッチを押すと苗挿し機の装置各部動作を開始する。作業者Nは苗投入場所Mにいて苗を周回する苗収容体15に一本ずつ苗を投入していく。
【0028】
苗収容体15に収容した苗はT方向を略一回転して苗把持位置Fまで周回する。そのとき、センサ(図示せず)はスプロケット17の歯数をカウントしており、設定する歯数をカウントする毎に一時停止する。
【0029】
一方、ベルト3上を移動する育苗器移送装置Aは育苗器1を移送する。枠体2にはセル列検出用のリミットスイッチ(図示せず)が育苗器1内のセル穴1a全列に対応した数だけ設けられており、苗挿し装置Bと穴開け装置Dが育苗器1内の土に作用する苗挿し位置にある。この構成により、育苗器1内の一列分のセル内の土に穴開け装置Dで穴を開け、次いで苗挿し装置Bが苗を該セル内の穴に苗を植え付ける作業を行う毎に育苗器移送装置Aが間欠的に前進している。
【0030】
なお、育苗台移送装置Aは左右移動用モータ35が育苗器1の一列にある全部のセル1a内に同時に苗を植え付ける間は移動停止し、一列分の全てのセル1a内に同時に20個の苗を植え付けた後はセル1aの1個分だけ前進する。
【0031】
苗供給装置Cが苗把持位置Mで停止したら、苗把持具5aがそれぞれ対向する苗収容体15に収容する苗を取りに前進する。苗把持具5aが苗収容体15の苗供給開口部15eから苗を把持する位置まで進むと開閉モータ10が駆動して苗を把持し、再度元の位置まで後進する。そして、苗を把持した苗把持具5aは下降し、前記穴開け装置Dで開けた穴に苗の根元部分を挿入する。
【0032】
苗挿し作業が終了したら、把持ハンド5b,5cは苗を放し後進・上昇して元の位置に戻る。この苗挿し作業の工程中に次の工程で苗挿しする苗を供給するために、苗収容体15が設定したスプロケット17の回転数分周回する。
【0033】
図7(a)には、育苗器1の矢印R方向への移動に連動させて左右移動用モータ35を駆動させると、育苗器1の一列20穴のセル1aに対して10組の苗把持ハンド5b,5cが設けられている場合には一列分の1回目と2回目でそれぞれ1個おきのセル1a内に挿し木するように横移動プレート8が横移動する例を示す。
【0034】
図7(b)には、育苗器1の一列16穴のセル1aに対して8組の苗把持ハンド5b,5cが設けられている場合には一列分を2回で挿し木するように横移動プレート8が横移動する例を示す。
【0035】
図7(c)には、育苗器1の一列32穴のセル1aに対して8組の苗把持ハンド5b,5cが設けられている場合には一列分を4回で挿し木するように横移動プレート8が横移動する例を示す。
【0036】
図7(d)には、育苗器1の一列24穴のセル1aに対して8組の苗把持ハンド5b,5cが設けられている場合には一列分を3回で挿し木するように横移動プレート8が横移動する例を示す。
【0037】
なお、図7の(b)から(d)の場合に10組の苗把持ハンド5b、5cを使用する場合には、10組のうち8組だけ苗を把持するよう苗支持体15を一度に8個分ずつ周回させるように構成しても良い。
【0038】
次に、長さが異なる苗を苗挿し作業する場合について説明する。
図8に示すように苗支持体15の苗支持部15aを、苗把持個所に移動した苗把持用の苗把持ハンド5b,5cに対して上下位置変更可能に延長体53を苗供給用開口部15eを有する苗支持部15aと受け体(下側苗支持部)15dとの間に挿入できるように構成した。またこの延長体53は苗の種類によってその高さが変えられるように複数の高さの異なるものを用意しておき、挿し木する苗の種類に応じて使い分けることができるようにする。
【0039】
たとえば、苗が比較的短くて苗把持ハンド5b,5cの底部の高さと下側苗支持部15dの底部の高さの差がL1であるときにはセル1a内に同じ高さ(深さ)の苗の挿し木ができる。また、苗が比較的長くて苗把持ハンド5b,5cの底部の高さと下側苗支持部15dの底部の高さの差がL2(L1<L2)であるときには長さL2の挿し木ができるような高さの延長体53を用いることで、セル1a内に同じ高さ(深さ)L2の苗の挿し木ができる。
【0040】
こうして、苗把持ハンド5b,5cが苗把持個所に移動したときに、苗把持ハンド5b,5cの高さ位置を変更調節することなく、苗把持ハンド5b,5cが把持する苗の把持位置を上下高さ変更でき、セル1aに苗挿しする深さ調節が容易に行える。
【0041】
また図9と図10に示すように、苗供給装置Cの苗供給装置枠体16に苗の高さに応じて苗支持体15の高さを変更可能な構成を設けた。苗供給装置枠体16には苗供給装置Cの全体を支持する脚54と苗供給装置枠体16の補強枠体55が設けられているが、該脚54の下部に苗支持体15の高さを変更可能な上下調節部材を設ける。
【0042】
図9は苗供給装置Cの要部正面図であり、図10は苗供給装置Cの脚54の上下位置変更部材の例示を示す。図9(a)は菊などの茎の短い苗を挿し木する場合の要部側面図、図9(b)はい草などの茎の長い苗を挿し木する場合の要部側面図であり、苗支持体15の上側苗支持部15aと受け体15dの間に延長体53を配置した苗支持体15を用いた例である。また図10(a)は脚54の下に接続させるスペーサ56であり、図10(b)は脚54自体の高さを変更可能にした脚基礎部材58と該脚基礎部材58に挿入する脚54と両者を係止させるピン57とヘヤーピン59と脚54に設けた複数のピン挿入用穴54aと基礎部材58に設けた複数のピン挿入用穴58aからなる構成であり、図10(a)又は図10(b)に示す構成のいずれかを用いることができる。
【0043】
また、図示はしないが、スペーサ56は苗把持装置の縦支持プレート7(図2)の下に入れることで苗供給装置Cの苗支持体15の支持高さの変更と共に苗把持ハンド5b,5cの把持高さ位置をも変更する構成にする。
【0044】
また、図9に示す通り、苗支持体15を支持する苗供給装置枠体16の高さを高さ調節装置18の調節により変更する構成としている。
【0045】
図9と図10に示すように、苗供給装置Cの苗支持体15の支持高さを、育苗器移送装置Aに対して上下位置変更可能に構成したので、長さの異なる苗に対してもそれぞれ適切な把持位置で把持することができる。そして、深さが異なるセル1aを用いることによって育苗器移送装置Aに設置された育苗器1の上面高さが変わるのに対応して苗供給装置Cの支持高さと苗把持ハンド5b,5cの支持高さを一緒に調節でき、しかも、この調節によって以前に設定した苗把持ハンド5b,5cの高さ位置、すなわち昇降量が変更されることもないので、深さが異なる育苗器1に対応した調節が容易に行える。
【0046】
次に、苗把持ハンド5b,5cの高さ位置を変更することで、異なる品種の苗、及び異なる深さの育苗器に対応する構成について説明する。
図11には苗支持体15の側面苗取り出し用開口部15cから苗を把持するために挿入する苗把持ハンド5b,5cの高さ位置を調整する手段を苗挿し装置Bに設けた場合の構成を示す。(図11(a)は苗挿し機の苗支持体と苗把持ハンドの配置関係を説明する図、図11(b)は図11(a)の矢印A方向から見た図である。)
【0047】
上下移動自在に取り付けられた苗把持ハンド5b,5cは該苗把持ハンド5b,5cの上下位置を横支持プレート9に当接可能なリミットスイッチ62で検出可能にしておく。また該リミットスイッチ62の高さ位置を苗挿し機の適所に設けた苗把持ハンドル63で調節して、調節後に固定可能にして、苗の種類に応じて適切な位置で苗把持ハンド5b,5cが苗を把持できるようにようにしておく。この苗把持ハンド5b,5c位置の高さ調節を苗挿し処理前に予め設定しておくと、以後はリミットスイッチ62の作動で苗把持ハンド5b,5cの苗把持位置が自動的に設定することができる。
【0048】
前記図9、図10に示した苗支持体15の高さ位置の調節と図11に示した苗把持ハンド5b,5cの高さ位置の調節の両方を行うことができる場合には、苗支持体15と苗把持ハンド5b,5cのそれぞれの単独の高さ位置を調節する場合に比べて、より正確に、かつより多くの種類の苗の苗挿しに対応できる。
【0049】
また、図12には、苗把持ハンド5b,5cで把持した苗をセル1a内に差し込む深さを調整する手段を苗挿し装置Bに設けた場合の構成を示す。
上下移動自在に取り付けられた横支持プレート9に当接可能なリミットスイッチ65で検出可能にしておく。また該リミットスイッチ65の高さ位置を苗挿し機に設けた苗差し込み深さ調節レバー66で調節して、調節後に固定可能にして、苗の種類に応じて適切な位置で苗把持ハンド5b,5cが苗をセル1aに差し込めるようにしておく。
【0050】
この構成により、苗把持ハンド15の苗挿し深さを調節することができ、異なる深さの育苗器1に対応することができる。
【0051】
また、図13には別実施例の穴開け装置Dを配置した苗挿し機の一部側面図を示す。
本実施例は苗把持ハンド5b,5cが育苗器1に苗を挿す位置と同じ位置で穴を開けるよう構成することでより確実に苗を穴に挿すことができるようにしたものである。
【0052】
図13の穴開け装置Dは苗供給装置Cの下方に配置している。そして、枠体2の下方でカム41の壁面に回動自在に支持され、育苗器1より上方に立設されたアーム42と該アーム42の上端に固定された水平枠43に取付られ、また、穴開けピン22aを取り付けるピン取付体22bとピン取付体22bと並列位置にスライドレール44と該スライドレール44の案内体46が前記水平枠43に支持部材47を介して取付られている。スライドレール44の案内体46の下端は枠体2に固定されている。
【0053】
また、穴開けピン22aがセル1a内の土に深く入り過ぎないようにする穴深さ規制体22cがスプリング22dを介してピン取付体22bに取り付けられている。また円形カム41は駆動モータ49で一方にフル回転するが、カム41に設けた凹部に穴開けピン22aの上下位置検出用のリミットスイッチ51の端子51aが入り込む構成になっている。
【0054】
上記穴開け装置Dの構成により、図13に示す位置にアーム42に連結したカム41がモータ49の駆動で回転してアーム42が下降すると、スライドレール44も共に下降して穴開けピン22aが育苗器1のセル1aに詰めている土に苗を差し込むための穴を作ることができる。カム41に設けた凹部にリミットスイッチ51の端子51aが入り込むとモータ49が作動停止する。なおカム41には180度毎に凹部を設けた構成にしているが、凹部は1つでも良い。なお、この穴開けピン22aの下降動作は苗把持具5aによる育苗器1のセル1aへの苗の植付け動作に連動させている。
【0055】
苗把持ハンド5b,5cの苗の挿し木動作の軌跡T1とピン22aのセル1a内の土の穴開け動作軌跡T2を図13に示し、また苗の挿し木動作とセル1aの穴開け動作のタイミングについて次に説明する。
穴開け装置Dが挿し木すべきセル1aの上方から下方へ移動して穴開けピン22aがセル1a内の土に穴を開ける動作をする。前記穴開けピン22aがセル1a内の土に穴を開ける動作中に又は穴を開ける動作後に、苗の挿し木装置Bの一対の苗把持ハンド5b,5cが把持している苗を矢印T1で示す軌跡でセル1a方向に移動し始める。
【0056】
また、穴開けピン22aがセル1a内の土に穴を開けた後、穴開けピン22aが上昇中に一対の苗把持ハンド5b,5cが水平移動して、更に下降して把持している苗をセル1a内の土に挿し木する。
【0057】
従来は、穴あけ装置Dで穴を開けてから育苗器1がベルト3で搬送され、次いで、苗把持ハンド5b,5cで穴に苗を挿す構成のため、育苗器1がベルトスリップ等で苗挿し位置と穴位置がずれる場合が生じていた。本実施例にすることで、穴位置と苗挿し位置とのずれを防止することができる。
【産業上の利用可能性】
【0058】
苗挿し深さの調節が容易に行える苗を育苗器に移植する苗挿し機として利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の実施例の苗挿し機の平面図である。
【図2】図1の苗挿し機の側面図である。
【図3】図1の苗挿し機の苗支持体の一部斜視図である。
【図4】図1の苗挿し機の苗支持体の分解斜視図である。
【図5】図1の苗挿し機の苗挿し装置の斜視図である。
【図6】図1の苗挿し機の横移動プレート作動用カムの構成とその差動態様を示す図である。
【図7】育苗器のセルに挿し木する方法を示す図である。
【図8】図1の苗挿し機の苗支持体の高さ変更を説明する側面図である。
【図9】図1の高さ調整した苗挿し機の要部正面図である。
【図10】図1の苗挿し機の上下位置変更部材の斜視図である。
【図11】本発明の実施例の苗挿し機の苗支持体と苗把持ハンドの配置関係を説明する図(図11(a))と図11(a)の矢印A方向から見た図(図11(b))である。
【図12】本発明の実施例の育苗機と苗把持ハンドの配置関係を説明する図である。
【図13】本発明の実施例の苗挿し機の一部側面図である。
【符号の説明】
【0060】
1 育苗器 1a セル
2 枠体 3 ベルト
4b 駆動プーリ 4c 駆動軸
5 把持部 5a 把持具
5b,5c 苗把持ハンド 5d,5e 移動プレート
5f,5g アーム 5j ハンド開閉カム
5m 把持具プレート 6 苗置き台
7 縦支持プレート 8 横移動プレート
9 横支持プレート 10 把持ハンド開閉モータ
15 苗支持体 15a 上側苗支持部
15b 底部 15c 苗取出用開口部
15d 受け体(下側苗支持部) 15e 苗供給用開口部
15f 取付部 15g 溝部
15h ブラシ(弾性体) 16 苗供給装置枠体
17 スプロケット 18 支持枠体高さ調節装置
20 苗挿し機の切替スイッチ 22a 穴開けピン
22b ピン取付体 22d スプリング
22c 穴深さ規制体 23a,23b プレート
23c,23d 孔 24 連結環
26 ハンド上下移動用モータ 33 前後移動用モータ
33a カム 33b アーム
35 左右移動用(ハンドピッチ切替)モータ
35a 円形カム 35b アーム
35c 駆動軸 37 苗把持位置検出用リミットスイッチ
37a 端子 41 円形カム
42 アーム 43 水平枠
44 スライドレール 46 スライドレール案内体
47 支持部材 49 カム駆動モータ
51 リミットスイッチ 51a 端子
53 延長体 54 脚
55 補強枠体 56 スペーサ
57 ピン 58 脚基礎部材
59 ヘヤーピン 62 リミットスイッチ
63 苗把持ハンドル 65 リミットスイッチ
66 調節レバー A 育苗器移送装置
B 苗挿し装置 C 苗供給装置
D 穴開け装置 F 苗把持位置
M 苗投入場所 N 作業者

【特許請求の範囲】
【請求項1】
育苗器1を載置して移送する育苗器移送装置Aと、苗を支持する苗支持体15が周回する苗供給装置Cと、該苗支持体15内の苗を把持して移動して前記育苗器移送装置Aに配置された育苗器1に苗を挿す苗把持ハンド5b,5cを有する苗挿し装置Bを備えた苗挿し機において、
前記苗支持体15には、作業者Nが供給する苗を上方から苗支持体15内に入り込ませるよう上部に開口した苗供給用開口部15eを有する上側苗支持部15aと、苗支持体15内の苗の下端を支持する下側苗支持部15dと、苗把持ハンド5b,5cが側方から苗支持体15内に出入りして苗を取り出せるよう側方に開口した苗取り出し用開口部15cとを設け、
前記苗支持体15の下側苗支持部15dを、苗把持個所に移動した苗把持ハンド5b,5cに対して上下位置変更可能に構成したことを特徴とする苗挿し機。
【請求項2】
前記苗支持体15には、作業者が供給する苗を上方から苗支持体15内に入り込ませるよう上方に開口した苗供給用開口部15eを有する上側苗支持部15aと、苗支持体15内の苗の下端を支持する下側苗支持部15dと、前記苗把持ハンド5b,5cが側方から苗支持体15内に出入りして苗を取り出せるよう側方に開口した苗取り出し用開口部15cとを設け、
前記苗支持体15の上側苗支持部15aを、下側苗支持部15dに対して上下位置変更可能に構成したことを特徴とする請求項1記載の苗挿し機。
【請求項3】
前記苗供給装置Cは苗供給装置支持部材54で支持され、前記苗挿し装置Bは苗挿し装置支持部材9で支持される構成とし、前記苗供給装置支持部材54と苗挿し装置支持部材9を上下方向に移動調節可能に構成し、前記苗供給装置Cと前記苗把持ハンド5b,5cの支持高さを前記育苗器移送装置Aに対して上下位置変更可能に構成したことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の苗挿し機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2006−121971(P2006−121971A)
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−314347(P2004−314347)
【出願日】平成16年10月28日(2004.10.28)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】