説明

苗植機

【課題】本発明は、苗植付体で苗を圃場に植え付ける苗植機において、苗植付体に付着する泥を掻き落とすスクレーパの駆動機構を従来の技術より簡単な構成で提供することが課題である。
【解決手段】植付け伝動ケース18からの駆動力で作動する後リンク68Aと前リンク68Bで苗植付体ケース63を昇降し、該苗植付体ケース63に左右へ開閉すべく左側苗植付体4aLと右側苗植付体4aRを設け、昇降する左側苗植付体4aLと右側苗植付体4aRの内外周面に摺接して泥を掻き落とすスクレーパ70を設けた苗植機において、昇降する苗植付体4aと交差する位置にスクレーパ70を移動させるスクレーパ駆動機構50を前記前記後リンク68Aと前リンク68Bの昇降動作で作動する苗植機とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、苗植付体を用いて苗を圃場に植え付ける苗植機の技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
苗植機は苗を受け入れて昇降する苗植付体を有し、この苗植付体を圃場に突き刺して左右に開くことで苗を圃場に残して植付する。そして、苗を植え付けた後の苗植付体の内外周面には圃場の泥が付着し、この付着した泥が次の苗を植え付ける時に苗植付体から圃場への苗の移動を阻害して苗が倒れたり浮き上がったりすることがあるので、この苗植付体に付着する泥を掻き落とすスクレーパを設ける技術が特開2010−5123号公報に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−5123号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記の従来技術は、苗植付体のリンク機構の上下駆動部とは別にスクレーパの駆動機構を設けてスクレーパを駆動しているが、構造が複雑で苗植付体の昇降と連動する調整が難しい。
【0005】
そこで、本発明は、苗植付体で苗を圃場に植え付ける苗植機において、苗植付体に付着する泥を掻き落とすスクレーパの駆動機構を従来の技術より簡単な構成で提供することが課題である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記本発明の課題は、次の技術手段により解決される。
請求項1に記載の発明は、植付け伝動ケース18からの駆動力で作動する後リンク68Aと前リンク68Bで苗植付体ケース63を昇降し、該苗植付体ケース63に左右開閉すべく左側苗植付体4aLと右側苗植付体4aRを設け、昇降する左側苗植付体4aLと右側苗植付体4aRの内外周面に摺接して泥を掻き落とすスクレーパ70を設けた苗植機において、昇降する苗植付体4aと交差する位置にスクレーパ70を移動させるスクレーパ駆動機構50を前記前記後リンク68Aと前リンク68Bの昇降動作で作動させることを特徴とする苗植機とする。
【0007】
この構成で、スクレーパ70のスクレーパ駆動機構50が後リンク68Aと前リンク68Bの昇降動作で駆動されるために、構成が簡略化され、苗植付体4aの昇降動作と同期して駆動され、タイミング良く左右に開いた左側苗植付体4aLと右側苗植付体4aRの内部にスクレーパ70を侵入させてその内部をスクレープする。
【0008】
請求項2に記載の発明は、スクレーパ70を設けたカム板56が後リンク68Aと前リンク68Bの一方に当接して回転駆動されるようにスクレーパ駆動機構50を構成したことを特徴とする請求項1に記載の苗植機とした。
【0009】
この構成で、スクレーパ70を設けたカム板56を設ける簡単な構成でスクレーパ駆動機構50を構成できる。
請求項3に記載の発明は、カム板56を後リンク68Aと前リンク68Bの下側に設け、このカム板56に接近した後リンク68Aにカム板56の上部カム面を当接してスクレーパ駆動機構50を構成したことを特徴とする請求項2に記載の苗植機とした。
【0010】
この構成で、カム板56を小さくしてスクレーパ駆動機構50を軽く出来る。
請求項4に記載の発明は、カム板56の上端にローラを設け、該ローラを後リンク68Aと前リンク68Bの一方に当接してなる請求項2に記載の苗植機とした。
この構成で、カム板56の回動をスムースにして、スクレーパ駆動機構50の耐久性を良くする。
【0011】
請求項5に記載の発明は、略垂直に昇降する苗植付体4aに対してスクレーパ駆動機構50を前側から前傾斜状態で苗植付体4aの内外周面に当接してなる請求項1に記載の苗植機とした。
【0012】
この構成で、スクレーパ70による苗植付体4aの内外周面に付着した泥をスクレーパ70で軽く掻き落とす。
【発明の効果】
【0013】
請求項1乃至請求項5に記載の構成によって、従来よりも簡単なスクレーパ駆動機構50でスクレーパ70を駆動して苗植付体4aに付着する泥を効果的に掻き落とす。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態による苗植機の左側面図である
【図2】苗植付装置の斜視図である。
【図3】苗植付体を昇降する後リンクの拡大側面図である。
【図4】スクレーパの底面図である。
【図5】苗植付体4aの動きに対して苗植付体4aに作用するスクレーパ70の位置関係を示す説明図である。
【図6】本発明とは異なるスクレーパ構成の第二実施例の左側面図である。
【図7】本発明とは異なるスクレーパ構成の第三実施例の正面図である。
【図8】本発明とは異なるスクレーパ構成の第三実施例の右側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施例では、ねぎ等の苗を畝の間の溝部又は平地に植付ける苗植機を例にして図面と共に説明する。
【0016】
なお、本実施例についての説明で前又は後というときは、操縦ハンドル2を配置した側を後とし、その反対側、即ちエンジン5を配置した側を前とする。そして、右又は左というときは、機体後部において機体前部側を前側として立つ作業者から見て右手側を右とし、左手側を左としていう。
【0017】
苗植機は、走行装置1と操縦ハンドル2を備えた機体に、昇降駆動するリンク機構3と連結して昇降動作する開閉可能なくちばし状の苗植付体4aを備えた苗植付装置4を設けた構成としている。
【0018】
走行装置1は、図示例では、エンジン5と、該エンジン5の動力が伝達されて駆動回転する左右一対の後輪7,7と、転動自在に支持した左右一対の前輪6,6とを備えたものとしている。
【0019】
エンジン5の下部には、ミッションケース8を配置し、そのミッションケース8は、その左側部からエンジン5の左側方に延びるケース部分を有し、これがエンジン5の左側部と連結している。このケース部分にエンジン5の出力軸が入り込んでミッションケース8内の伝動機構に動力が伝達される構成となっている。ミッションケース8の左右両側部に伝動ケース9,9を回動自在に取り付け、この伝動ケース9,9の回動中心にミッションケース8から左右両外側方に延出させた車輪駆動軸9Aの先端が入り込んで伝動ケース9,9内の伝動機構に走行用の動力を伝達している。そして、走行用の動力は伝動ケース9,9内の伝動機構を介して、機体後方側に延びてその後端側方に突出する車軸10,10に伝動され、車軸10,10に固着した後輪7,7が駆動回転するようになっている。
【0020】
また、伝動ケース9,9のミッションケース8への取付部には、上方に延びるアーム9B,9Bを一体的に取り付けている。昇降用油圧シリンダ15の図示しないピストンロッドの先端には横杆(図示せず)が取り付けられており、該横杆の左右端部が各々左右アーム9B,9Bに連結されている。
【0021】
そして、昇降用油圧シリンダ15が作動してそのピストンロッドが突出すると、これに伴い横杆及び左右アーム9B,9Bを介して伝動ケース9,9が下方に回動して、機体が上昇する。反対に、昇降用油圧シリンダ15のピストンロッドが収縮すると、左右の前記アーム9B,9Bは前方に回動し、これに伴い伝動ケース9,9が上方に回動して、機体が下降する。
【0022】
この昇降用油圧シリンダ15は、機体に対する圃場面(畝U)の高さを検出するセンサの検出結果に基づいて機体を圃場面(畝U)に対して設定高さになるよう作動するよう構成しており、また、操縦ハンドル2近傍に配置した操作具28の人為操作によって機体を上昇或は下降させるよう作動する構成ともしている。
【0023】
また、左右水平制御用油圧シリンダ13のピストンロッド(図示せず)が伸縮作動すると、左の伝動ケース9を上下動させ機体を左右に傾斜させる。この左右水平制御用油圧シリンダ13は、手動レバーの操作に基づいて機体を所望の左右傾斜姿勢になるように作動する構成にしている。
【0024】
一対の前輪6,6は、車体に支持された左右一対の前輪支持フレーム16に取り付けられた車軸17に回転自在に取り付けられている。
操縦ハンドル2は、ミッションケース8に前端部を固定した機体フレーム14の後端部に取り付けられている。機体フレーム14は、機体の左右中央から右側に偏った位置に配置されて後方に延び、また、前後中間部から斜め後上方に延びている。操縦ハンドル2は、機体フレーム14の後端部から左右に後方に延びてその各後端部を操縦ハンドル2のグリップ部2a,2aとしている。操縦ハンドル2の左右のグリップ部2a,2aは、作業者がそのグリップ部2a,2aを楽に手で握れるように適宜高さに設定する。なお、図例ではグリップ部2a,2aを左右に分かれた構成としているが、操縦ハンドル2の左右の後端部を互いに左右に連結してその連結部分をグリップ部2a,2aとしても良い。
【0025】
エンジン5の動力を伝動する植付伝動機構を収納した植付伝動ケース18は、その前部がミッションケース8の後部に連結し、そこから後斜め上方に延びる第一ケース部18aと、この第一ケース部18aの上部左側部に固定され、前下側方に延びる第二ケース部18bと、その第二ケース部18bの左端部に固定され、後方に伸びる第三ケース部18cを有するものとしている。これら第一ケース部18a〜第三ケース部18c内にリンク機構3を昇降駆動するための動力を伝達する伝動機構を内装している。
【0026】
なお、第一ケース部18a内に内装した伝動機構には、リンク機構3及び苗植付装置4をその昇降動最上位の位置で、又はその近傍位置で設定時間停止させる間欠駆動機構と、リンク機構3及び苗植付装置4の昇降動を停止させるクラッチ機構とを備えている。間欠駆動機構によって停止する時間は、該間欠駆動機構が備える変速機構によって調節され、この調節によって苗植付装置4による苗植付株間が変更調節されるようになっている。
【0027】
そして、リンク機構3は、後述の作動機構により上下揺動しながら昇降動し、その結果、苗植付装置4の下方に向かって伸び左右方向に開くくちばし状の苗植付体4aの下端部が側面視で上下に長い略楕円形状の軌跡(イ)で昇降動する。
【0028】
そして、苗植付体ケース63へ落下した苗を収納した苗植付装置4はリンク機構3によって、側面視で上下に長い略楕円形状の軌跡(イ)に従って下降して圃場内に挿入され、左右のくちばし状の苗植付体4aが機体左右方向に開放すると苗が圃場に植え付けられ、その後に苗植付装置4が上昇する。
【0029】
苗植付体4aの下端部が左側方から見て反時計回りに略楕円形状の軌跡(イ)で昇降回動する。従って、作業走行しながら苗植付体4aが上記回転方向で前記軌跡を描くように昇降回動すると、軌跡(イ)の下端部で苗植付体4aの下端部が圃場の畝の土壌中に苗を植付け、苗植付体4aは、機体左右方向に開いて苗植付装置4内の苗を畝の土壌に放出する。そのため、苗植付体4aで苗の左右方向の隣接する畝の斜面に寄せられた泥が、再度苗の周辺に流入し易くなり、より鎮圧輪38,38で覆土し易くなる。また、機体左右方向に開くことで、苗を溝部の土壌中に植え付けて挿して上昇するときに植え付けた苗に苗植付体4aが当たって苗の植付姿勢を乱すことを防止することができる。これは特にねぎ等のように長い苗を植え付ける場合に効果がある。
【0030】
リンク機構3は、第三ケース部18cから上方に突出する支持部18dに後リンク支持アーム67Aが回動自在に取り付けられ、その後リンク支持アーム67Aに基部が枢着された後リンク68Aの後端に苗植付体ケース63の後回動軸63Aが連結されている。後リンク68Aの中間部には、第三ケース部18cの後端部に設けた後リンク駆動アーム69Aが連結されている。また、第二ケース部18bに前リンク支持アーム67Bが回動自在に取り付けられ、その後リンク支持アーム67Bに基部が枢着された前リンク68Bの後端に苗植付体ケース63の前回動軸63Bが連結されている。前リンク68Bの中間部には、第三ケース部18cの後端部に設けた前リンク駆動アーム69Bが連結されている。
【0031】
後リンク駆動アーム69Aと前リンク駆動アーム69Bが駆動回転すると、後リンク68A及び前リンク68Bが基部の位置を前後に変動させつつ上下に揺動し、苗植付具4aが一定姿勢のまま上下動する。
【0032】
苗植付体ケース63には、左側苗植付体4aLを取り付けた左側開閉用アーム部45と右側苗植付体4aRを取り付けた右側開閉用アーム部44が前後方向の枢支軸46で回動可能に枢支されている。
【0033】
左側苗植付体4aLを取り付けた左側開閉用アーム部45の先端部に開閉用ケーブル43のインナーワイヤ43aの端部を連結し、右側苗植付体4aRを取り付けた右側開閉用アーム部44の先端部に開閉用ケーブル43のアウターケーブル43bの端部を連結し、前記後リンク支持アーム67Bの枢支軸64から上方へ伸ばした作動アーム65を設け、この作動アーム65の先端部に前記開閉用ケーブル43のインナーワイヤ43aの他端を連結し、機体側に開閉用ケーブル43のアウターケーブル43bの他端を固定して取り付けている。
【0034】
そして、作動アーム65が、設定したタイミングで前側に回動する構成としている。これにより、苗植付体4aが上下動して下降下端位置に達すると、作動アーム65が前側に回動し、開閉用ケーブル43のアウターケーブル43bに対してインナーワイヤ43aが右側に引かれて左側開閉用アーム部45と右側開閉用アーム部44とが互いに近づくように回動し、右側苗植付体4aRが右方に回動し、これに連動して左側苗植付体4aLが左方に回動して、苗植付体4aの下部側が左右に開いて下方に開放状態となる。そして、苗植付体4aが上昇すると作動アーム64が苗植付体4aに対して元の位置(後側)に回動して開閉用ケーブル43のインナーワイヤ43aが弛められ、左右に開いた苗植付体4aの下部が閉じる。
【0035】
尚、左側苗植付体4aLと右側苗植付体4aRとは、スプリング65により苗植付体4aの下部が閉じる側へ回動付勢されている。
苗植付具4aが上死点にある時に、苗供給装置40により苗が落下供給される。供給された苗は、左側苗植付体4aLと右側苗植付体4aRに取り付けられている筒状の苗植付体ケース63を通って苗植付具4a内に導かれる。苗を保持した苗植付具4aが下降し、下死点では苗植付具4aの下部が畝の表土部に突き刺さり、苗移植用穴を形成する。これとほぼ同期して苗植付具4aが左右に開き、保持していた苗を上記苗移植用穴の中に解放する。そのまま苗植付具4aが上昇し、上死点付近まで上昇すると苗植付具4aが閉じる。
【0036】
次に、スクレーパ70前後動するスクレーパ駆動機構50を説明する。
後リンク支持アーム67Aは後リンク68Aとの枢支軸55より下方へ作動アーム58を伸ばし、その先端に側面視で三角状のカム板56を軸57で枢支し、このカム板56にスクレーパ70の駆動用の作動アーム59の基部を固着している。
【0037】
カム板56は、後リンク支持アーム67Aとの間に張設したバネ60でその上端が後リンク68Aの下端縁に当接させている。そして、後リンク68Aの前後動でカム板56を回動して作動アーム59の先端に取り付けたスクレーパ70が前後方向(矢印C方向)へ移動する動作を繰り返す。尚、後リンク68Aの下端縁は、図3の如く、カム面47を形成している。また、カム板56の上端にローラを設けて後リンク68Aの下端縁に当接するとカム板56の動きがスムースになる。
【0038】
このように苗植付体4aの上下動に合わせてスクレーパ70を前後方向(矢印C方向)へ動かし、スクレーパ70は苗植付体4aの左側苗植付体4aLと右側苗植付体4aRから離れた位置と左側苗植付体4aLと右側苗植付体4aRに接当する位置とに移動する。
【0039】
図4にスクレーパ70の底面図を示すように作動アーム59の先端に傾斜した平面を有するスクレーパ70は苗植付体4aの左右一対の左側苗植付体4aLと右側苗植付体4aRの外側面と内側面の両方を清掃することができるように、左側苗植付体4aLと右側苗植付体4aRの外側面に作用する大略「コ」字状の外側スクレーパ70aと左側苗植付体4aLと右側苗植付体4aRの内側面に作用する先端が尖った大略三角形状の内側スクレーパ70bとからなる。外側スクレーパ70aと内側スクレーパ70bは大略「ヨ」字状の金属製スクレーパフレーム71に支持されたゴム製部材であり、左側苗植付体4aLと右側苗植付体4aRの表面に付いた泥を擦り取るときに騒音が出ない。
【0040】
外側スクレーパ70aはスクレーパフレーム71に対して3箇所以上の止め部71a〜71cで支持することでゴム製の外側スクレーパ70aに腰を持たせている。また、ゴム製の内側スクレーパ70bはスクレーパフレーム71の中央の突出片に1箇所の止め部71dの止め部で支持されている。
【0041】
外側スクレーパ70aの「コ」字状の先端部は突起部70a1としているので開いた一対のくちばし体4a1,4a2の外側に外側スクレーパ70aを挿入するときにスクレーパ70の突起部70a1をくちばし体4a1,4a2の外側面に沿って確実にくちばし体4a1,4a2の外側にスクレーパ70を挿入することができるようにした。
【0042】
また、内側スクレーパ70bの略三角形状の先端部は内側スクレーパ70bの両側に左側苗植付体4aLと右側苗植付体4aRが入りやすくするためである。さらに、外側スクレーパ70aが金属製スクレーパフレーム71の下側に取り付けられていることで、スクレーパ70が上向きにめくれても金属製スクレーパフレーム71により支持され、ゴム製のスクレーパ70が切断され難い。また、内側スクレーパ70bの後方部位は幅広くなっているが、この後方部位も、その中央部を金属製スクレーパフレーム71で支持されているので、腰がでるため左側苗植付体4aLと右側苗植付体4aRの後側の泥も容易に取ることができる。
【0043】
こうして内外のスクレーパ70により苗植付体4aの内外面に付着した泥も一度の清掃動作で容易に落とすことができる。
上記構成からスクレーパ70と苗植付体の構成は次のような作動とその作動による作用効果がある。
【0044】
苗植付体4aで圃場に苗を植え付ける時、左右一対の左側苗植付体4aLと右側苗植付体4aRの下端部は左右に開いて苗を開放し、その開いた開放状態のまま軌跡(イ)の動きで上方に移動するが、その開放状態の左右一対の左側苗植付体4aLと右側苗植付体4aRの内外に内側スクレーパ70bと外側スクレーパ70aが入り込み、左側苗植付体4aLと右側苗植付体4aRが上昇する過程で内側スクレーパ70bと外側スクレーパ70aによりくちばし体4a1,4a2の内側面と外側面に付着した泥が除かれる。
【0045】
また、左側苗植付体4aLと右側苗植付体4aRの内側に作用する内側スクレーパ70bの最大幅Aは一対の左側苗植付体4aLと右側苗植付体4aRを最大限開いたときのくちばし体4a1,4a2の間隔よりも大きくなっている。更に、くちばし体4a1,4a2の内側に作用する内側スクレーパ70bの幅Bの形状は左側苗植付体4aLと右側苗植付体4aRの内側の形状に合わせた構成になっており、くちばし体4a1,4a2に入りやすいように肉厚を薄くしている。
【0046】
図5は、苗植付体4aの動きに対して苗植付体4aに作用するスクレーパ70の位置関係を示す説明図である。
図5(a)〜図5(h)に示すように苗植付体4aは軌跡(イ)(図1)に従って移動する過程で図5(a)〜図5(c)の間に苗植付体4aは下降して図5(c)に示す位置で苗を圃場に植え付けを行い、その後図5(d)〜図5(h)の間に苗植付体4aが上昇するが、苗植付体4aの上昇中にスクレーパ70の略三角形状の内側スクレーパ70bは苗植付体4aに対して垂直方向上方から苗植付体4aに向けて近づき、ほぼ図4(d)に示す位置でスクレーパ70の先端部が開いた左右一対のくちばし体4a1,4a2に挿入される。このときスクレーパ70の先端部が上方にめくれ、スムースに苗植付体4a内に入り、図4(e)〜図4(g)の間でスクレーパ70が苗植付体4aの側面部に当たっている間に苗植付体4aが上昇するので、一対のくちばし体4a1,4a2に付いた泥を確実に落とすことができる。
【0047】
上記したように、カム板56の回動によりスクレーパ70の作動アーム69は軸57に支持された状態で前後揺動し、苗植付体4aが上動する過程でスクレーパ70が、苗植付体4aに対して図2の矢印C(図3)に示す前後方向に動くように作用する。
【0048】
また苗植付体4aに挿入されるスクレーパ70は苗植付体4aの上方から入り下方へ抜けるかのような動きをするため、苗植付体4aの泥を上から下へ確実に落とすことができ、また、スクレーパ70に泥が溜まらない。
【0049】
さらに、苗植付体4aの軌跡(イ)に対してスクレーパ70が苗植付体4aの泥を除去した後の苗植付体4aが上昇する過程でスクレーパ70が苗植付体4aから逃げている構成となっている。
【0050】
苗植付装置4に苗を供給する苗供給装置40は、機体の左右に配置したスプロケット(図示せず)の一方の回転軸51aと第一ケース部18aとを伝動軸52を介して連結することでエンジン5からの動力を伝動して左右のスプロケットを回転駆動させて苗供給カップ41を周回移動させる構成としている。
【0051】
苗供給装置40の上方には、多数の苗供給カップ41が等間隔で連結され、苗供給カップ41の周回移動軌跡に沿う移動を案内するガイド体42を苗供給カップ41…の周回移動軌跡の内側と外側とにそれぞれ設けている。これにより、苗供給カップ41…の周回移動が適確且つ円滑に行われる。
【0052】
苗供給カップ41の周回移動中の所定位置で、その底蓋が開放してカップ41内の苗を苗植付体4aの上方開放口から苗植付体4aに供給する。
ミッションケース8の右側部には第一株間調節レバーを設け、該第一株間調節レバーの操作によりミッションケース8内のギヤの噛み合いを変更して機体の走行速度に対する苗植付装置4の駆動を変速して苗の植付株間を変更できるようになっている。これとは別に、植付伝動ケース18の右側部には第二株間調節レバーを設け、該第二株間調節レバーの操作により植付伝動ケース18内のギヤの噛み合いを変更して機体の走行速度に対する苗植付装置4の間欠駆動周期を変更して苗の植付株間を変更できるようになっている。
【0053】
前記操縦ハンドル2の前側で苗供給装置40の後側には、操作パネル29を設けている。この操作パネル29には後輪7,7及び苗植付装置4の駆動を共に入切可能な主クラッチレバーと、油圧昇降シリンダ15による機体の昇降操作及び苗植付装置4のみの駆動の入切が行える植付・昇降(サブクラッチ)レバー(操作具)28とを設けている。また、操縦ハンドル2の左右それぞれの把持部2a,2aの下方にはサイドクラッチレバー30を設け、このサイドクラッチレバー30の操作により左右一対の後輪7,7の左右一方の駆動を断つようになっている。そして、オペレータが操縦ハンドル2を押し下げ前輪6,6を宙に浮かせた状態で左右一方のサイドクラッチレバー30を操作して左右一方の後輪7の駆動を断ち、該後輪7を中心に機体を旋回させるようになっている。
【0054】
苗植付位置の後方には、左右一対の鎮圧輪38,38が設けられている。この鎮圧輪38,38は、下部ほど互いの間隔が狭くなるように斜めに取り付けられ、支持アーム37の上部に設けるウエイト39によって下向きに押し付けられており、機体の進行に伴って畝面を転動し、苗が植付けられた後の苗移植穴の周囲の土を崩落させて穴を埋め戻すと共に、その跡を軽く鎮圧するようになっている。
【0055】
図6は、本発明とは異なるスクレーパ駆動構成を示す第二実施例の左側面図である。
苗植付体ケース63から前方へロッド支持アーム20を突設し、このロッド支持アーム20にスクレーパ取付軸21を上下にスライドしかつ圧縮バネ22で下方へ突出するように設け、このスクレーパ取付軸21の下端軸24に前後に回動するようにスクレーパ70を取り付け、上端には遊びを持たせてワイヤ25を連結している。スクレーパ取付軸21と苗植付体4aとの間にガイドプレート23を設け、スクレーパ70の下端がガイドプレート23に接している間は苗植付体4aから離している。
【0056】
そして、苗植付体ケース63が上昇している間はワイヤ25でスクレーパ取付軸21が上に引っ張られスクレーパ70がガイドプレート23上に接しているが、苗植付体ケース63が下降するとワイヤ25が弛みスクレーパ取付軸21が圧縮バネ22で下方へスライドしてスクレーパ70が苗植付体4aの外周面に接するようになり、苗植付体4aが左右に開いてくると苗植付体4aの内部にスクレーパ70の先端が入り込んで苗植付体4aの内周面に接して泥を掻き落とすようになる。
【0057】
ガイドプレート23を上下することでスクレーパ70が苗植付体4aに接する位置を変更調整出来、スクレーパ70が苗植付体4a側に傾いていることでガイドプレート23から外れると苗植付体4aに接するようになる。
【0058】
図7と図8は、本発明とは異なるススクレーパ駆動構成を示す第三実施例である。
苗植付体4aの側面に設けたロッド支持アーム20にスクレーパ取付軸21を上下にスライドしかつ圧縮バネ22で下方へ突出する付勢して設け、このスクレーパ取付軸21の下端に板状の内スクレーパ70cと外スクレーパ70dを取り付け、このうち内スクレーパ70cを苗植付体4aに設けたスリット27から内部に差し込み、外スクレーパ70dを苗植付体4aの外周面に接していて、スクレーパ取付軸21の上端にはワイヤ25を連結している。また、外スクレーパ70dの下端をL字状に折り曲げてその折り曲げ面で土やマルチフィルムを下方へ押し付けるようにしている。
【0059】
そして、苗植付体ケース63が上昇している間はスクレーパ取付軸21が圧縮バネ22で下方へ押し下げられてスクレーパ70が苗植付体4aの内部に入り込み、苗植付体ケース63が下降するとワイヤ25でスクレーパ取付軸21が引っ張られて殆どが苗植付体4aの外部に引き出される。このスクレーパ70の上下スライドは苗植付体4aの下死点付近で行われ、それより上昇した位置ではスクレーパ70が苗のガイド面となる。このために、スクレーパ70は内面に縦筋を形成した樹脂板とする。また、スクレーパ70は上下して苗の根鉢を押し下げるが、上下動が少ないので苗を連れ戻すことが無い。
【符号の説明】
【0060】
4a 苗植付体
4aL 左側苗植付体
4aR 右側苗植付体
18 植付け伝動ケース
50 スクレーパ駆動機構
56 カム板
63 苗植付体ケース
68A 後リンク
68B 前リンク
70 スクレーパ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
植付け伝動ケース(18)からの駆動力で作動する後リンク(68A)と前リンク(68B)で苗植付体ケース(63)を昇降し、該苗植付体ケース(63)に左右開閉すべく左側苗植付体(4aL)と右側苗植付体(4aR)を設け、昇降する左側苗植付体(4aL)と右側苗植付体(4aR)の内外周面に摺接して泥を掻き落とすスクレーパ(70)を設けた苗植機において、昇降する苗植付体(4a)と交差する位置にスクレーパ(70)を移動させるスクレーパ駆動機構(50)を前記前記後リンク(68A)と前リンク(68B)の昇降動作で作動させることを特徴とする苗植機。
【請求項2】
スクレーパ(70)を設けたカム板(56)が後リンク(68A)と前リンク(68B)の一方に当接して回転駆動されるようにスクレーパ駆動機構(50)を構成したことを特徴とする請求項1に記載の苗植機。
【請求項3】
カム板(56)を後リンク(68A)と前リンク(68B)の下側に設け、このカム板(56)に接近した後リンク(68A)にカム板(56)の上部カム面を当接してスクレーパ駆動機構(50)を構成したことを特徴とする請求項2に記載の苗植機。
【請求項4】
カム板(56)の上端にローラを設け、該ローラを後リンク(68A)と前リンク(68B)の一方に当接してなる請求項2に記載の苗植機。
【請求項5】
略垂直に昇降する苗植付体(4a)に対してスクレーパ駆動機構(50)を前側から前傾斜状態で苗植付体(4a)の内外周面に当接してなる請求項1に記載の苗植機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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