説明

苗移植機

【課題】作業管理ができるように実際に行った苗植付面積を知り得る装置を備えた苗移植機を提供すること。
【解決手段】作業モニタ装置33は、後輪回転センサ17の走行速度に基づき走行車体の走行距離を計測する制御装置100の走行距離計測手段100aと該走行距離計測手段100aによる走行距離の計測に基づいて算出される植付面積を算出する植付面積算出手段100bと、に基づきモニタ画面に表示がなされる走行距離表示部33aと走行距離に基づいて算出される苗植付面積を告知する苗植付面積告知部33bを備え、また苗植付部4の一部の植付条のみを非植付状態にする畦クラッチレバー19の作動に基づいて苗植付面積を補正する植付面積補正手段100cを備えているので、苗植付部4の一部の植付条のみを非植付状態にしたことを制御装置100に送信してその結果を苗植付面積告知部33bに表示できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植付面積を確定できる苗移植機に関する。
【背景技術】
【0002】
フロート付きの苗植付装置を備えた苗移植機において、苗の植付作業をモニタする表示装置を備えた構成が知られている。
なお、本明細書では苗移植機の前進方向を前側、後退方向を後側といい、前進方向に向って左右方向をそれぞれ左側、右側ということにする。
【特許文献1】特開2002−272221号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記特許文献に開示された苗移植機は、該苗移植機のエンジンが作動している全時間をモニタ画面に表示すること、燃料計、エンジンメータ、畦クラッチが切りであるときに点灯するランプなどが表示可能になっている。
【0004】
しかし、前記モニタ画面による表示装置では、どのようにこの苗移植機が使用されてきたのかを記録するものでないので、この苗移植機の作業管理ができない。
本発明の課題は、作業管理ができるように実際に行った苗植付面積を知り得る装置を備えた苗移植機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の上記課題は、次の解決手段で解決される。
請求項1記載の発明は、走行車体(2)と、苗植付部(4)と、走行車体(2)の走行距離を計測する走行距離計測手段(100a)と、該走行距離計測手段(100a)による走行距離の計測に基づいて植付面積を算出する植付面積算出手段(100b)と、苗植付部の一部の植付条のみを非植付状態にする部分非植付手段(19)と、該部分非植付手段(19)の作動に基づいて苗植付面積を補正する苗植付面積補正手段(100c)とを設けた苗移植機である。
【0006】
請求項2記載の発明は、部分非植付手段(19)に基づく苗植付面積の補正度合を変更する苗植付面積補正度合変更手段(24)を設けた請求項1記載の苗移植機である。
【発明の効果】
【0007】
請求項1記載の発明によれば、部分非植付手段(19)を作動させたときにも、部分非植付手段(19)の作動に基づいて苗植え付け面積を補正する苗植付面積補正手段(100c)が備えられており、前記苗植付部(4)の一部の植付条のみを非植付状態にしたことを制御装置100に送信する。また、その結果に基づいて、正確な苗植付面積が得られ、労務管理や以降の栽培管理が容易になる。
【0008】
請求項2記載の発明は、部分非植付手段(19)に基づく苗植付面積の補正度合を変更する苗植付面積補正度合変更手段(24)を設けているので、請求項1の効果に加えて、圃場の形状や植付方法に応じて、正確な植付面積が得られるように調整できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、図面に基づき、本発明の好ましい実施の形態について説明する。
図1及び図2は本発明を用いた一実施例である粉粒体繰出し装置として施肥装置を装着した施肥装置付き乗用型田植機の左側面図と平面図である。この施肥装置付き乗用型田植機1は、走行車体2の後側に昇降リンク装置3を介して苗植付部4が昇降可能に装着され、走行車体2の後部上側に施肥装置5の本体部分が設けられている。
【0010】
走行車体2は、駆動輪である左右一対の前輪10,10及び左右一対の後輪11,11を備えた四輪駆動車両であって、機体の前部にミッションケース12が配置され、そのミッションケース12の左右側方に前輪ファイナルケース13,13が設けられ、該左右前輪ファイナルケース13,13の操向方向を変更可能な各々の前輪支持部から外向きに突出する左右前輪車軸に左右前輪10,10が各々取り付けられている。また、ミッションケース12の背面部にメインフレーム15の前端部が固着されており、そのメインフレーム15の後端左右中央部に前後水平に設けた後輪ローリング軸を支点にして後輪ギヤケース18,18がローリング自在に支持され、その後輪ギヤケース18,18から外向きに突出する後輪車軸に後輪11,11が取り付けられている。
【0011】
エンジン20はメインフレーム15の上に搭載されており、該エンジン20の回転動力が、ベルト伝動装置21及びHST23を介してミッションケース12に伝達される。ミッションケース12に伝達された回転動力は、該ケース12内のトランスミッションにより変速された後、走行動力と外部取出動力に分離して取り出される。そして、走行動力は、一部が前輪ファイナルケース13,13に伝達されて前輪10,10を駆動すると共に、残りが後輪ギヤケース18,18に伝達されて後輪11,11を駆動する。また、外部取出動力は、走行車体2の後部に設けた植付クラッチケース25に伝達され、それから植付伝動軸26によって苗植付部4へ伝動されるとともに、施肥伝動機構28によって施肥装置5へ伝動される。
【0012】
エンジン20の上部はエンジンカバー30で覆われており、その上に操縦席31が設置されている。操縦席31の前方には各種操作機構を内蔵するフロントカバー32があり、その上方に前輪10,10を操向操作するハンドル34が設けられている。エンジンカバー30及びフロントカバー32の下端左右両側は水平状のフロアステップ35になっている。フロアステップ35は一部格子状になっており、該ステップ35を歩く作業者の靴についた泥が圃場に落下するようになっている。フロアステップ35上の後部は、後輪フェンダを兼ねるリヤステップ36になっている。
【0013】
また、走行車体2の前部左右両側には、補給用の苗を載せておく予備苗載台38,38が機体よりも側方に張り出す位置と内側に収納した位置とに回動可能に設けられている。
【0014】
苗植付部4を昇降させる昇降リンク装置3は平行リンク構成であって、1本の上リンク40と左右一対の下リンク41,41を備えている。これらリンク40,41,41は、その基部側がメインフレーム15の後端部に立設した背面視門形のリンクベースフレーム42に回動自在に取り付けられ、その先端側に縦リンク43が連結されている。そして、縦リンク43の下端部に苗植付部4に回転自在に支承された連結軸44が挿入連結され、連結軸44を中心として苗植付部4がローリング自在に連結されている。メインフレーム15に固着した支持部材と上リンク40に一体形成したスイングアーム(図示せず)の先端部との間に昇降油圧シリンダ46が設けられており、該シリンダ46を油圧で伸縮させることにより、上リンク40が上下に回動し、苗植付部4がほぼ一定姿勢のまま昇降する。
【0015】
苗植付部4は8条植の構成で、フレームを兼ねる伝動ケース50、マット苗を載せて左右往復動し苗を一株分づつ各条の苗取出口51a、…に供給するとともに横一列分の苗を全て苗取出口51a、…に供給すると苗送りベルト51b、…により苗を下方に移送する苗載台51、苗取出口51a、…に供給された苗を圃場に植付ける苗植付装置52、…、次行程における機体進路を表土面に線引きする左右一対の線引きマーカ(図示せず)等を備えている。苗植付部4の下部には中央にセンターフロート55、左右両端の一対のサイドフロート56,56及びセンターフロート55と左右両端の一対のサイドフロート56,56の間のミドルフロート57,57がそれぞれ設けられている。フロート55,56,57を圃場の泥面に接地させた状態で機体を進行させると、フロート55,56,57が泥面を整地しつつ滑走し、その整地跡に苗植付装置52、…により苗が植付けられる。各フロート55,56,57は圃場表土面の凹凸に応じて前端側が上下動するように回動自在に取り付けられており、植付作業時にはセンターフロート55の前部の上下動が迎角制御センサ(図示せず)により検出され、その検出結果に応じ前記昇降油圧シリンダ46を制御する油圧バルブを切り替えて苗植付部4を昇降させることにより、苗の植付深さを常に一定に維持する。
【0016】
施肥装置5は、肥料ホッパ60に貯留されている粒状の肥料を繰出部61、…によって一定量づつ繰り出し、その肥料を施肥ホース62、…でフロート55,56,57の左右両側に取り付けた施肥ガイド47(図1)、…まで導き、施肥ガイド47、…の前側に設けた作溝体48(図1)、…によって苗植付条の側部近傍に形成される施肥構内に落とし込むようになっている。電動モータ(図示せず)で駆動するブロア58で発生させたエアが、左右方向に長いエアチャンバ59を経由して施肥ホース62、…に吹き込まれ、施肥ホース62、…内の肥料を風圧で強制的に搬送するようになっている。
【0017】
苗植付部4には整地装置の一例であるロータ27(27a,27b)が取り付けられている。また、苗載台51は苗植付部4の全体を支持する左右方向と上下方向に幅一杯の矩形の支持枠体65の支持ローラ65aをレールとして左右方向にスライドする構成である。
【0018】
変速レバー16が操縦席31の右隣に配置され、またフロントカバー32の頂部には作業モニタ装置33(図2)が配置されている。
【0019】
図3の制御ブロック図に示すように、後輪回転センサ17の走行速度に基づき制御装置100の走行距離計測手段100aにより走行車体の走行距離を計測すると、その計測結果は作業モニタ装置33の走行距離表示部33aに表示される。また、前記走行距離計測手段100aによる走行距離の計測に基づいて植付面算出知手段100bにより植付面積が算出され、その結果は作業モニタ装置33の苗植付面積告知部33bに告知される。
【0020】
なお、走行距離や植付面積は植付作業中に逐次必要な情報ではないので、走行距離表示部33a及び苗植付面積告知部33bをフロントカバー32内に配置し、作業者が該フロントカバー32を開けて走行距離や植付面積を認識できる構成としてもよい。
【0021】
また本実施例の苗移植機は苗植付部4の一部の植付条のみを非植付状態にする部分非植付手段である畦クラッチレバー19を設けているので、該畦クラッチレバー19の作動に基づいて苗植え付け面積を補正する苗植付面積補正手段100cが制御装置100に備えられており、前記苗植付部4の一部の植付条のみを非植付状態にしたことを制御装置100に送信する。また、その結果に基づいて苗植付面積告知部33bに表示できる。
【0022】
さらに畦クラッチレバー19の操作位置を検出する畦クラッチセンサ14のオンオフで圃場の形状や植付方法に応じて、作業面積調整ダイヤル24により苗植付面積を補正して、正確な植付面積が得られるように調整できる。
【0023】
このように、畦クラッチレバー19と作業面積調整ダイヤル24により作業面積算出時の補正係数を外部から設定可能となり、苗の植付面積の算出が正確に行え、労務管理や苗植付後の栽培管理が容易になる。
また、上記制御機構により個人の認証パスワードを苗移植機の起動時に制御装置100に入力すれば、上記作業モニタ装置33により、誰がどれだけ作業したかを知ることができ、労務管理の一助となる。
【0024】
図4には操縦席31とその下のエンジンルームと施肥装置5の設置された部分の左側面図を示す。エンジンカバー30の後ろにラジエータ20aが配置され、そのラジエータ20aを冷却するファン20bで後方に送られる空気は肥料ホッパ60の下方にあるブロア58のエアガイド58aの吸気口58a’に向けて送られる。
またエンジンカバー30の内部にあるエンジン20のすぐ後ろにはヒューズボックス20cを配置しているので、ヒューズボックス20cの発熱はラジエータ冷却用ファン20bからの送風で抑えられる。
【0025】
図5には苗植付装置52の左側面図を示す。苗植付装置52には植付スタンド54が取り付けられており、該植付スタンド54は苗植付装置52の後部側に一端部が回動可能に取り付けられたL字状部材である。
【0026】
苗植付装置52を使用して苗の植え付けをするときは、植付スタンド54を実線で示す位置に配置しておき、苗の植え付けの障害にならないようにする。また、苗植付装置52を使用しないときは植付スタンド54を点線(二点鎖線)で示す位置に配置することで、苗植付装置52が地面に触れないようにしておく。
【0027】
また、植付スタンド54の先端に散布機などを取り付けるための穴を設けているので、苗植付装置52による苗植付時に植付スタンド54を実線位置に配置している場合に、前記スタンド54の先端の穴を利用して薬剤散布機99を設置しても良い。
【0028】
また、植付スタンド54の先端の穴を苗ストッパ101の仮止め部材の一部として利用することもできる。8条分の各苗載台51の下端部の苗ストッパ取付部51cに前記苗ストッパ101を取り付けて苗床Nが苗載台51の下方の苗取出口51a(図2)にスライドしないようにすると、該当する条では苗の植え付けができなくなる。上記苗の植え付けを禁止する場合とは、苗植付装置52を複数条毎(2条毎)に停止する畦クラッチでは行えない植付条(奇数条)の苗植付を停止するときに、畦クラッチで停止する植付条単位(2条)のうちの一部の条(1条)のみを行う場合である。
【0029】
苗ストッパ101を一部の苗載台51の下端部の苗ストッパ取付部51cに取り付けて一部の苗植付装置52が作動できないようにして苗植付面積を変えたことは作業者が操作する作業面積調整ダイヤル24により制御装置100に送信され、該制御装置100が苗植付面積が補正されたことを認識して、記憶後、必要に応じて作業モニタ装置の植付面積告知部33bに表示する。
【0030】
図6の苗植付部4の展開平面図と、図6の矢印A方向から見たレーキ取付部の部分矢視図である図7と、図8の苗載台51の下半部の側面図と、図9の苗載台51の下半部のスライダ周辺の断面側面図に示すように、苗載台51は、苗載面の裏側で、その裏面側下部に左右方向に設けた横枠81に沿って左右動自在に支持されている。なお、前記横枠81に8条分の前記苗取出口51aが設けられている。エンジンからの動力伝動ケース50の左右両側から突出して、該伝動ケース50内の動力で横方向に左右往復移動する横移動棒82が設けられ、該横移動棒82の両端部に固着した連結部材83と苗載台51とが連結されていて、横移動棒82が左右往復動することにより苗載台51が左右往復動するようにしている。
【0031】
なお、伝動ケース50には、リードカム88と該リードカム88に螺合する該リードカム軸88aが設けられている。従って、横移動棒82は、その中間部が伝動ケース50で前記リードカム88に固着され、前記リードカム軸88aの駆動回転により左右往復移動する構成となっている。また、リードカム軸88aには苗送りカム88bが設けられている。
【0032】
苗載台51の裏面側の上下には、左右方向に長い左右移動用案内部材120、121(図8)がそれぞれ固着して設けられている。上側の左右移動用案内部材120は、側面視で下側が切り欠かれた門型の断面形状に形成されており、下側から支持される回転自在の支持ローラ65a(図1)が係合している。この支持ローラ65aは、上側の左右移動用案内部材120に沿う適宜位置(4か所)に複数個(4個)設けられ、伝動ケース50の上側に固着された苗載台支持フレーム65bの上部に取り付けられている。
【0033】
図9に示すように下側の左右移動用案内部材121は、側面視で下側が切り欠かれた門型の断面形状部分121aとその直上の四角形の断面形状部分121bとを備え、門型の断面形状部分121aにスライダ124が固着されている。このスライダ124は、上部に設けた突起124aを下側の左右移動用案内部材121に設けた取付孔に挿入して固着する構成となっており、下側の左右移動用案内部材121に沿う適宜位置(4か所)に複数個(4個)設けられ、横枠81の上部に備えるレール部分81aに上側から係合する。従って、苗載台51は、支持ローラ65aと横枠81とにより左右方向に移動可能に支持されている。また、支持ローラ65aとスライダ124とは、ポリエチレン系樹脂(超高分子量ポリエチレン)で形成された摺動部材となっている。
【0034】
なお、前記スライダ124は、側面視で下側が切り欠かれた門型すなわちコの字型の断面形状となっており、内部に三平面からなる側面視コの字型の摺動面を備える。側面視コの字型の摺動面の中央に前記三平面のうち最も面積の広い主摺動面124bが構成され、前記三平面の中でこの主摺動面124bの法線方向が最も鉛直方向に近く、主摺動面124bの接触面の面圧が最も高くなる。
【0035】
また、苗載台51の上部からスライダ124の主摺動面124bの上側の隅部124cに至る給液路125を設けており、この給液路125を介してスライダ124の摺動面124bに潤滑油タンク126から吐出ポンプ127を介して潤滑油を供給することにより、摺動部を潤滑することができる構成となっている。摺動部が潤滑油で潤滑されることで苗載台51の摺動性を向上させることができると共に、スライダ124やレール部分81aの摩耗を防止できる。
【0036】
摺動面124bの潤滑油切れは下側の左右移動用案内部材121の四角形の断面形状部分121bに設けた近赤外線センサ129で検知して吐出ポンプ127の作動制御を行う。
【0037】
なお、給液路125を構成するため、下側の左右移動用案内部材121及びスライダ124には孔が形成されている。また、前記給液路125は、スライダ124の摺動面の最上位置に臨む構成としたので、潤滑油をコの字型の摺動面全体にいきわたらせることができ、潤滑性が向上する。
【0038】
苗送りベルト51bは、駆動ローラ84と従動ローラ85(図1)とに張架されている。駆動ローラ84は左右方向の苗送り駆動軸86と一体回転するように設けられている。苗送り駆動軸86は、ラチェット機構87により、苗送りベルト51bが苗送りする方向にだけ回転を伝達するようになっている。
【0039】
苗送りベルト51bの駆動機構は下記の構成となっている。すなわち、伝動ケース50の左右両側から突出して回転駆動するリードカム軸88aに苗送りカム88bが設けられている。また、図6、図8に示すように、苗送り駆動軸86の上側には左右方向の中継軸89が設けられ、それに従動側アーム90が取り付けられている。中継軸89と苗送り駆動軸86とは、アーム91,92及びリンク93とからなるリンク機構94により伝動連結されている。
【0040】
苗載台51が左右移動行程の端部に到達すると、苗送りカム88bが従動側アーム90にその下側から当接して、中継軸89を所定角度回転させる。その回転がリンク機構94及びラチェット機構87を介して苗送り駆動軸86に伝達される。これにより、苗送りベルト51bが所定量だけ作動する。なお、苗載台51が左右移動両端部でそれぞれ苗送り動力を伝達できるように、1個の苗送りカム88bに対して左右に2個の従動側アーム90が同一の中継軸89上に設けられている。苗送りカム88bが従動側アーム90から離れると、後述する揺動支点軸95に係止した図示しないスプリングの張力によって中継軸89及び従動側アーム90は駆動前の位置に戻る。なお、中継軸89及び従動側アーム90は、スプリング(図示せず)の張力で、中継軸89の端部に設けたストッパ97が苗載台51本体側の規制部材(図示せず)に当接する位置まで戻る構成となっている。
【0041】
ところで、苗送り駆動軸86は、左側4条部分と右側4条部分とに分割されている。また、中継軸89も左側中継軸と右側中継軸とに分割されている。そして、左右の苗送り駆動軸86及び中継軸89に対応して、苗送りカム88b、リンク機構94及び左右各2個の従動側アーム90も左右にそれぞれ設けられた構成となっている。
【0042】
図8に示すように従動側アーム90は、回動中心近くの基部分90aと苗送りカム88bが当接する回動先端側部分90bとが別体で構成され、両部分90a,90bがアーム90中途部に設けた左右方向の揺動支点軸95で連結されている。なお、前記基部分90aが中継軸89と一体回転する構成となっており、前記回動先端側部分90bは、揺動支点軸95に設けたトルクスプリング(図示せず)により揺動支点軸95回りに上側(苗送りベルト51bへの伝動において当接する側とは反対側)へ回動する方向へ付勢され、常態ではそれ以上上側へ回動しないように中継軸89に当接している。従って、苗送りカム88bが従動側アーム90にその下側から当接する通常の苗送り伝動時には、従動側アーム90の基部分90aと回動先端側部分90bとが一体的に中継軸89回りに上側へ回動する。一方、苗送りカム88bが逆転して従動側アーム90にその上側から当接するときは、基部分90aに対して回動先端側部分90bだけが下側(苗送りベルト51bへの伝動において当接する側)へトルクスプリングに抗して揺動するのである。
【0043】
苗植付部4の下部のフロート55,56,57を圃場の泥面に接地させた状態で機体を進行させると、フロート55,56,57が泥面を整地しつつ滑走し、その整地跡に苗植付装置52により苗が植付けられる。各フロート55,56,57は圃場表土面の凹凸に応じて前端側が上下動するように回動自在に取り付けられており、植付作業時にはセンターフロート55の前部の上下動が迎角制御センサ(図示せず)により検出され、その検出結果に応じ前記昇降油圧シリンダ46を制御する油圧バルブ(図示せず)を切り替えて苗植付部4を昇降させることにより、苗の植付深さを常に一定に維持する。
【0044】
図10には変速レバー16と左右車輪の静油圧式無段変速装置中立兼四輪ブレーキ用ペダル141と静油圧式無段変速装置(HST)23のトラニオン軸23aとの連繋機構を田植機1の上方から見た図を示す。図10に示すように変速レバー16は操縦席31の右側に配置し、操縦席31の左側又は右側に四輪用のブレーキペダル141を配置し、HST23を操縦席31の前方に配置している。
【0045】
また、回転軸141bを回動支点とするブレーキペダルアーム141aの端部にロッド161の一端部が回動自在に連結し、該ロッド161の他端部がHST中立カム160の中間部に回動自在に連結している。前記HST中立カム60の一端部が変速レバー固定カム162に連結しており、さらに変速レバー固定カム162がロッド164の一端部に連結している(詳細は図11参照)。
【0046】
前記ロッド164の他端部にはHST23のトラニオン軸23aを回動軸とする変速操作アーム143の一端部が連結している。トラニオン軸23aを回動軸とする変速操作アーム143はトラニオン軸23aを支点として回動するが、前記ロッド164との連結部の反対側のアーム143の端部にも回動自在に変速ロッド144の一端部が連結しており、該変速ロッド144の他端部は車軸に平行な方向に機体に取り付けられ、軸方向に回動自在な円筒体145の一端部に第1取付片147aを介して連結している。前記円筒体145の他端部に固着した第2取付片147bを設け、該第2取付片147bに回動自在に連結したHSTロッド148は変速レバー16の基部に回動自在に連結している。
【0047】
上記構成からなる変速レバー16とブレーキペダル141とHST23のトラニオン軸23aとの連繋機構よりブレーキペダル141を踏み込むとトラニオン軸23aを回動軸とする変速操作アーム143が矢印A方向に回動してトラニオン軸23aを回動させ、HST23を中立位置に復帰させる。このときトラニオン軸23aを回動軸とする変速操作アーム143を介して変速レバー16も中立位置に復帰する。
【0048】
同様に、変速レバー16を中立側に操作すると変速操作アーム143が矢印A方向に回動してトラニオン軸23aを回動させ、HST23を中立位置に復帰させる。
【0049】
このように、ブレーキペダル141と変速レバー16がHST23を挟んで左右に配置されており、変速操作アーム143の両端部にそれぞれ連結したブレーキペダル141と変速レバー16で変速操作アーム143が操作されるので変速レバー16の中立位置への復帰のための構成が合理的に配置されており、従来技術のようにブレーキペダル141の踏み込み動作で直接的に変速レバー16を作動させて変速レバー16を中立位置に戻し、該変速レバー16の作動でHST23を中立に戻す機械的連結機構に比較して構成が簡素であり、また変速レバー16とブレーキペダル141の操作が容易であり、かつシンプルな連結構成であるため、ブレーキ制動によるHST23の停止連動の精度が従来技術に比較して良くなる。
【0050】
また、図11の静油圧式無段変速装置中立兼四輪ブレーキ用ペダル141を操縦席31の左側に配置するペダル141付近の左側面図に示すように、操縦席31左側のHST中立兼四輪ブレーキ用ペダル141にはHST中立カム160がロッド161を介して連動しており、またHST中立カム160は変速レバー固定カム162とも連動する構成である。HST中立カム160は側面視「ヘ」字状の部材であり、一端がHST中立兼四輪ブレーキ用ペダル141に連結しているロッド161の他端が前記中立カム160の「ヘ」字状の頂部に連結している。またHST中立カム160の一端が機体に回動自在に連結し、他端には突起部160aを設け、該突起部160aを変速レバー固定カム162に設けられた円弧状の長穴162a内に挿着している。
【0051】
従って、HST中立兼四輪ブレーキ用ペダル141を図11の矢印A方向に踏み込むと、ロッド161が矢印B方向に移動し、該ロッド161の矢印B方向への移動に連動してHST中立カム160が、その回動軸160bを中心に矢印C方向に回動し、少し時間が経過した後に変速レバー固定カム162が回動軸162bを中心に矢印D方向に回動する。該変速レバー固定カム162の矢印D方向への回動に伴って、変速レバー固定カム162の一端に連結したロッド164を介して図10に示す変速レバー16が中立位置に復帰する。
【0052】
上記変速レバー固定カム162とHST中立カム160は互いに近傍に配置され、それぞれの回動軸162b、160bが別々に設けられているので、変速レバー16よりHST23に近いペダル(HST中立兼四輪ブレーキ用ペダル141)で確実に中立復帰が可能となる。
【0053】
なお、ロッド164を介して変速レバー16に連動するHST固定カム162は変速レバー16の操作を段階的に変更するために図示しないバネで付勢されているポジションローラ165が嵌入する複数の円弧溝162cを備えているので、変速レバー16の操作に応じて有段変速をすることができる。
【0054】
また、図10に示すように変速レバー16と畦クラッチレバー19を隣接する位置に配置し、それらの回動支点を同軸とするか又は近くに配置した。そして、図2に示すように、変速レバーガイド16aを畦クラッチレバーガイド19aと並列状に同一ガイドプレートに設けたので、部品の統合でコストダウンが図れ、設計スペースを小さくできる。
【0055】
また、変速レバー16と操縦席31の間に株間レバー22を設けた。株間レバー22は機体進行方向の前後の苗の植付け間隔を調整するレバーであり、走行速度に応じて苗植付具の回動連動速度を変えることで株間を調整することができる。この株間レバー22も、変速レバー16及び畦クラッチレバー19と隣接する位置で、その回動支点を両レバー16,19の回動支点と同軸とするか又は近くにし、変速レバー16と並列的に配置し、株間レバーガイド22aを変速レバーガイド16a及び畦クラッチレバーガイド19aと並列状に同一ガイドプレートに設けたので、部品の統合でコストダウンが図れ、設計スペースを小さくできる。
【0056】
上記変速レバー16をフロントカバー32の頂部にある作業モニタ装置33の横に配置したレバーガイド孔39(図2)に横変速レバーとして取付位置を変更可能な構成としている。
これは、ユーザーにより変速レバー取付位置を操縦席31の横でなくフロントカバー32の横変速レバー位置に配置して欲しいとの要望に応えるためである。
また横変速レバーを使用しない場合はレバーガイド孔39にはゴミが入らないように、蓋ができるようにしておく。
【0057】
これにより、簡単な構成で変速レバー16の配置を前後に変えることができ、またレバーガイド孔39を蓋で塞ぐ構成とすることにより、変速レバー16の配置に拘らず機体カバーの共用化が図れる。尚、前記蓋を機体カバーに溶着すれば、誤って蓋を外してしまうことがなく、ゴミや雨水等の浸入を確実に防ぐことができる。
【0058】
図6、図7に示すように植付部伝動ケース50のリードカム軸受プレート130にはレーキ取付プレート131を介してレーキ132を取り付けている。レーキ132は左右の前後輪10,11の圃場の踏み跡を均す位置に配置され、また、フロート56とフロート57の間の圃場を均す位置にある。またレーキ取付プレート131は植付部伝動ケース50にリードカム軸受プレート130とボルト共締めで固定されており、部品点数が削減されコストダウンになる。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明は田植機の苗植付部を簡易な構成とすることができ利用可能が大きい。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明の実施例の乗用型田植機の側面図である。
【図2】図1の乗用型田植機の平面図である。
【図3】図1の乗用型田植機の主要部の制御ブロック図である。
【図4】図1の乗用型田植機の操縦席とその下のエンジンルームと施肥装置の設置された部分の左側面図である。
【図5】図1の乗用型田植機の苗植付装置の左側面図である。
【図6】図1の乗用型田植機の苗植付部の展開平面図である。
【図7】図6の矢印A方向から見た部分矢視図である。
【図8】図1の乗用型田植機の苗載台の下半部の側面図である。
【図9】図1の乗用型田植機の苗載台の下半部のスライダ周辺の断面側面図である。
【図10】図1の乗用型田植機の変速レバーと左右車輪のHST中立兼四輪ブレーキ用ペダルとHSTトラニオン軸との連繋機構を田植機の上方から見た平面図である。
【図11】図10の一部側面図である。
【符号の説明】
【0061】
1 施肥装置付き乗用型田植機 2 走行車体
3 昇降リンク装置 4 苗植付部
5 粉粒体繰出し装置(施肥装置) 10 前輪
11 後輪 12 ミッションケース
13 前輪ファイナルケース 14 畔クラッチセンサ
15 メインフレーム 16 変速レバー
16a 変速レバーガイド 17 後輪回転センサ
18 後輪ギヤケース 19 畦クラッチレバー
19a 畦クラッチレバーガイド 20 エンジン
20a ラジエータ 20b ラジエータ冷却ファン
20c ヒューズボックス 21 ベルト伝動装置
22 株間レバー 22a 株間レバーガイド
23 HST 23a トラニオン軸
24 作業面積調整ダイヤル 25 植付クラッチケース
26 植付伝動軸 27(27a,27b) ロータ
28 施肥伝動機構 30 エンジンカバー
31 操縦席 32 フロントカバー
33 作業モニタ装置 33a 走行距離表示部
33b 植付面積告知部 34 ハンドル
35 フロアステップ 36 リヤステップ
37 ロータカバー 37a 回動支点部
38 予備苗載台 39 レバーガイド孔
40 上リンク 41 下リンク
42 リンクベースフレーム 43 縦リンク
44 連結軸 46 昇降油圧シリンダ
47 施肥ガイド 48 作溝体
50 伝動ケース 51 苗載台
51a 苗取出口 51b 苗送りベルト
51c 苗ストッパ取付部 52 苗植付装置
54 植付スタンド 55 センターフロート
56 サイドフロート 57 ミドルフロート
58 ブロア 58a ブロアエアガイド
58a’ 吸気口 59 エアチャンバ
60 肥料ホッパ 61 繰出部
62 施肥ホース 63 電動モータ
65 苗植付部支持枠体 65a 支持ローラ
65b 苗載台支持フレーム 81 横枠
81a レール部分 82 横移動棒
83 連結部材 84 駆動ローラ
85 従動ローラ 86 苗送り駆動軸
87 ラチェット機構 88 リードカム
88a リードカム軸 88b 苗送りカム
89 中継軸 90 従動側アーム
91,92 アーム 93 リンク
94 リンク機構 95 揺動支点軸
97 ストッパ 99 薬剤散布機
100 制御装置 100a 走行距離計測手段
100b 植付面積算出手段 100c 苗植付面積補正手段
101 苗ストッパ 120,121 左右移動用案内部材
121a 門型の断面形状部分 121b 四角形の断面形状部分
124 スライダ 124a 突起
124b 主摺動面 124c 隅部
125 給液路 126 潤滑油タンク
127 吐出ポンプ 129 近赤外線センサ
130 リードカム軸受プレート 131 レーキ取付プレート
132 レーキ
141 HST中立兼四輪ブレーキ用ペダル
141b 回転軸 141a ブレーキペダルアーム
143 変速操作アーム 144 変速ロッド
145 円筒体 147a 第1取付片
147b 第2取付片 148 HSTロッド
160 HST中立カム 160a 突起部
160b 回動軸 161 ロッド
162 変速レバー固定カム 162a 長穴
162b 回動軸 162c 円弧溝
164 ロッド 165 ポジションローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行車体(2)と、
苗植付部(4)と、
走行車体(2)の走行距離を計測する走行距離計測手段(100a)と、
該走行距離計測手段(100a)による走行距離の計測に基づいて植付面積を算出する植付面積算出手段(100b)と、
苗植付部の一部の植付条のみを非植付状態にする部分非植付手段(19)と、
該部分非植付手段(19)の作動に基づいて苗植付面積を補正する苗植付面積補正手段(100c)と
を設けたことを特徴とする苗移植機。
【請求項2】
部分非植付手段(19)に基づく苗植付面積の補正度合を変更する苗植付面積補正度合変更手段(24)
を設けたことを特徴とする請求項1記載の苗移植機。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2008−289367(P2008−289367A)
【公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−134933(P2007−134933)
【出願日】平成19年5月22日(2007.5.22)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】