説明

苗移植機

【課題】整地ロータの回転や機体の前進に伴う泥水流が、整地ロータ周りで、圃場に植え付けた苗に悪影響を及ぼさないようにした苗移植機を提供すること。
【解決手段】昇降自在な苗植付部4の下部に圃場面を均す左右一対の整地ロータ27aと中央の整地ロータ27bを設け、ロータ27a,27b間で駆動力を伝動する伝動部材73aを収納した伝動ケース73を設け、該ケース73に左右の取付フレーム88を取り付け、このフレーム88に泥除け部材89を取り付け、左右の整地伝動ケース73と左右の泥除け部材89の間に間隔部S1を設ける。また伝動ケース73の機体内側上部に左右の上部支持ステー92を配置し、該上部支持ステー92の間に中央の取付ロッド93を設け、該取付ロッド93に左右一対の支持アーム87’を取り付け、該支持アーム87’の間に中央泥除けカバー89’を装着し、該中央の泥除け部材89’と伝動ケース73の間に間隔部S2を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対地作業装置付きの苗移植機に関する。
【背景技術】
【0002】
フロート付きの苗植付装置を備えた苗移植機において、苗植付装置による苗植付の直前に圃場を均平化するためのロータを備えた構成が知られている。
なお、本明細書では苗移植機の前進方向を前側、後退方向を後側といい、前進方向に向かって左右方向をそれぞれ左側、右側ということにする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−118778号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
引用文献1の苗移植機では、伝動ケースに固着した取付フレームに、整地ロータのカバーが溶着されているため、伝動ケースとロータカバー間に隙間が無く、整地ロータの回転や機体の前進に伴う泥水流が整地ロータの左右外側端部に移動し、隣接する条に植えられた苗が泥を被ったり、苗が水流で流されてしまうことがあり、苗が生育不良を起こすという問題や、流された苗を作業者が植え直さねばならないという問題がある。
本発明の課題は、整地ロータの回転や機体の前進に伴う泥水流が、整地ロータ周りで、圃場に植え付けた苗に悪影響を及ぼさないようにした苗移植機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の上記課題は、次の解決手段で解決される。
請求項1記載の発明は、圃場を走行する走行車体(2)と、走行車体(2)の後部に取り付けられた、圃場に苗を植え付ける昇降自在な苗植付部(4)と、苗植付部(4)の下部に取り付けられた、圃場面を均す左右一対の整地装置(サイドロータ)(27a)と、苗植付部(4)の下部に取り付けられた、圃場面を均す中央の整地装置(センターロータ)(27b)と、整地装置(27a,27b)間で駆動力を伝動する伝動部材(73a)を収納した左右の整地伝動ケース(73)を有する苗移植機において、整地伝動ケース(73)に左右一対の取付フレーム(88)を取り付け、取付フレーム(88)に左右整地装置(27a)の泥除け部材(89)を取り付け、左右の整地伝動ケース(73)と左右の泥除け部材(89)との間に間隔部(S1)を設けたことを特徴とする苗移植機である。
【0006】
請求項2記載の発明は、左右の整地伝動ケース(73)の機体内側下部に左右の下部支持ステー(90)を配置し、左右の下部支持ステー(90)と整地装置支持部材(ロータ支持フレーム)(68)の間に左右の取付フレーム(88)を配置したことを特徴とする請求項1記載の苗移植機である。
【0007】
請求項3記載の発明は、左右の整地伝動ケース(73)の機体内側上部に左右の上部支持ステー(92)を配置し、該左右の上部支持ステー(92)の間に中央の取付ロッド(93)を設け、該取付ロッド(93)に左右一対の支持アーム(87’)を接触させて設け、該左右一対の(87’)の間に中央泥除けカバー(89’)を装着し、該中央の泥除け部材(89’)と左右の整地伝動ケース(73)の間に間隔部(S2)を設けたことを特徴とする請求項1または2記載の苗移植機である。
【0008】
請求項4記載の発明は、左右の泥除け部材(89)において、左右の整地装置(27a)の前後方向中央部よりも後方位置に屈曲部を形成し、中央の泥除け部材(89’)において、側面視で中央の取付ロッド(93)と接触する位置に屈曲部を形成したことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の苗移植機である。
【0009】
請求項5記載の発明は、左右の取付フレーム(88)の機体前方部位を上向きに設け、該左右の取付フレーム(88)の機体後方部位を下向きに屈曲させ、該屈曲させた機体後方部位に泥除け部材(89)を装着したことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の苗移植機である。
【0010】
請求項6記載の発明は、エンジン(29)と、変速装置を収納したミッションケース(12)と、ミッションケース(12)内の変速装置からの駆動力をミッションケース(12)の外部に伝動する駆動シャフト(18c)と、駆動シャフト(18c)の後端部に設けた伝動ベベルギア(80)と、伝動ベベルギア(80)と噛み合い回転する入力ギア(81)と、入力ギア(81)の下側で、該入力ギア(81)に噛合する後輪(11)の車軸(11a)を回転させる後輪出力ギア(82)と、前記入力ギア(81)と後輪出力ギア(82)を収納した駆動伝動ケース(リアファイナルケース)(18)と、入力ギア(81)の後側で、該入力ギア(81)に噛合する整地出力ベベルギア(84)と、該整地出力ベベルギア(84)を前端部に連結した整地伝動軸(72)と、該整地伝動軸(72)の後端部に連結した整地入力ベベルギア(72v)と、該整地入力ベベルギア(72v)に噛合するベベルギア(70v)と、整地入力ベベルギア(72v)とベベルギア(70v)を収納した整地入力伝動ケース(70c)と、該整地入力伝動ケース(70c)内のベベルギア(70v)を左側または右側の整地装置(27a)の伝動軸(70a)に固着し、該整地入力伝動ケース(70c)内の整地入力ベベルギア(72v)の駆動力を中央の整地装置(27b)の伝動軸(70b)に伝動するための伝動部材(73a)を収納した整地装置ケース(73)を設けたことを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の苗移植機である。
【0011】
請求項7記載の発明は、整地伝動軸(72)を入力側伝動軸(72a)と出力側伝動軸(72b)で構成し、出力側伝動軸(72b)に設けた中空部に爪クラッチ(72c1)を有し、出力側伝動軸(72b)の前記中空部内には該中空部に設けた溝部(図示せず)に係合するスプライン部材(72c)と該スプライン部材(72c)の後端側にスプリング(72d)を配置し、入力側伝動軸(72a)の後端部に爪クラッチ(72a1)と設け、入力側伝動軸(72a)を出力側伝動軸(72b)の中空部に挿入することで、入力側伝動軸(72a)の爪クラッチ(72a1)をスプライン部材(72c)の爪クラッチ(72c1)に係合可能な構成としたことを特徴とする請求項6記載の苗移植機である。
【0012】
請求項8記載の発明は、苗植付部(4)を昇降自在に装着するリンク機構(3)と、リンク機構(3)の取付支点を後輪(11)の車軸(11a)よりも機体前側に配置したことを特徴とする請求項7記載の苗移植機である。
【発明の効果】
【0013】
請求項1記載の発明によれば、整地伝動ケース73と左右の泥除け部材89との間に間隔部S1を設けたことにより、左右の整地装置27a及び中央の整地装置27bの整地作業により発生した泥流を間隔部S1を通過させて後方に移動させることができるので、泥流が左右の整地装置27aの外側端部に集中し、隣接条に植え付けられている苗を押し流したり泥土を被らせたりすることが防止され、欠株の発生が防止されると共に、苗の生育不良が防止される。
【0014】
また、取付フレーム88に泥除け部材89を設けることにより、泥除け部材89の取付位置を取付フレーム88の幅内で自由に決めることができるので、間隔部S1の幅の調節が可能となり、圃場の土質等による泥流の発生し易さに合わせて間隔部S1の幅を変更することができ、防波・防泥性能が向上する。
【0015】
請求項2記載の発明によれば、請求項1記載の発明の効果に加えて、取付フレーム88を下部支持ステー90と整地装置支持部材68の間に配置したことにより、取付フレーム88の取付支点の数が増えるため、強度が向上する。
【0016】
請求項3記載の発明によれば、請求項1または2記載の発明の効果に加えて、左右の上部支持ステー92の間に中央の取付ロッド93を設けたことにより、左右の上部支持ステー92が連結されるので、強度が向上する。
また、支持アーム87’を中央の取付ロッド93に接触させて設け、この支持アーム87’に泥除け部材89’を設けたことにより、さらに強度が向上する。
【0017】
そして、泥除け部材89’と左右の整地伝動ケース73の間に間隔部S2を設けたことにより、中央の整地装置27bの整地作業により発生した泥流を間隔部S2を通過させて後方に移動させることができるので、泥流が左右の整地装置27a,27bの外側端部に集中し、隣接条に植え付けられている苗を押し流したり泥土を被らせたりすることが防止され、欠株の発生が防止されると共に、苗の生育不良が防止される。
【0018】
請求項4記載の発明によれば、請求項1から3のいずれかに記載の発明の効果に加えて、整地装置27a,27bの前後方向中央部よりも後方位置にある左右の泥除け部材89に屈曲部を形成すると共に、側面視で中央の取付ロッド93と接触する位置にある中央の泥除け部材89’に屈曲部を形成したことにより、左右または中央の整地装置27a,27bが巻き上げた泥土が泥除け部材89,89’から機体後方に移動しやすくなるので、作業終了後にこの泥土を除去する掃除に要する時間と労力が軽減される。
また、後輪の回転により巻き上げられる泥土も泥除け部材89,89’により同じく機体後方に移動させることができるので、いっそう掃除に要する時間と労力が軽減される。
【0019】
請求項5記載の発明によれば、請求項1から4のいずれかに記載の発明の効果に加えて、左右の取付フレーム88を上下方向に向けて設け、左右の取付フレーム88を機体後方に向けて屈曲させ、この屈曲部に泥除け部材89を装着したことにより、泥除け部材89の取付位置が取付フレーム88の上下方向側(屈曲させていない側)に設けられるので、取付部に泥土が付着しにくくなり、耐久力が向上すると共に、作業終了後にこの泥土を除去する掃除に要する時間と労力が軽減される。
【0020】
請求項6記載の発明によれば、請求項1から5のいずれかに記載の発明の効果に加えて、駆動伝動ケース18内に設ける入力ギア81に、駆動シャフト18cに軸着する伝動ベベルギア80と、整地伝動軸72aに軸着する整地出力ベベルギア84と、後輪11の車軸11aを回転させる後輪出力ギア82をそれぞれ噛み合わせたことにより、伝動ベベルギア80と整地出力ベベルギア84を前後方向に略直線状に配置することができるので、整地装置27a,27bへの伝動経路が簡略化されるため、部品点数が削減される。
また、入力ギア81と後輪出力ギア82を上下方向に略直線状に配置することができるので、後輪伝動系の左右幅を抑えることができ、コンパクト化が図られる。
【0021】
請求項7記載の発明によれば、請求項6記載の発明の効果に加えて、整地伝動軸72を入力側伝動軸72aと出力側伝動軸72bで構成し、出力側伝動軸72bの中空部に入力側伝動軸72aを挿入することで入力側伝動軸72aの爪クラッチ72a1とスプライン部材72cの爪クラッチ72c1を係合させて整地装置27a,27bにエンジン20からの駆動力を伝動する構成とすることができるので、整地装置27a,27bを上昇させると爪クラッチ72a1,72c1の係合がはずれて、入力側伝動軸72aがスプライン部材72cから抜け出て伝動を切る構成となるため、整地装置27a,27bを上昇させる際に整地装置27a,27bの駆動力を入切する必要が無く、作業能率が従来より向上する。
【0022】
また、スプライン部材72cよりも後端側にスプリング72dを配置したことにより、一定以上整地伝動軸72a,72bの間が伸びると、入力側伝動軸72aの爪クラッチ72a1が出力側伝動軸72bの外側に押し出されるため、整地装置27a,27bが異物(石等)を噛んで整地伝動軸72a,72bが異常に縮まり過負荷がかかる状態になっても、爪クラッチ72a1がスプライン部材72cから逃げて切れた状態となるので、過負荷による破損が防止される。
【0023】
請求項8記載の発明によれば、請求項7記載の発明の効果に加えて、苗植付部4のリンク機構3の取付支点を後輪11の車軸11aよりも機体前側に配置したことにより、苗植付部4を上昇させると苗植付部4が後退しつつ上昇する構成となるため、苗植付部4の昇降により整地伝動軸72a,72bの連結状態または非連結状態が切り替わるため、苗植付部4が所定高さ以下になると整地装置27a,27bが作動する構成とすることができるので、旋回の開始及び終了時、植付作業の開始及び終了時等に整地装置27a,27bの操作が不要となり、作業能率と操作性が従来より向上する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施例の乗用型苗移植機の側面図である。
【図2】図1の乗用型苗移植機の平面図である。
【図3】図1の乗用型苗移植機のロータ駆動部の要部側面図(図3(a))と図3(a)の矢印A方向からの矢視図(図3(b))である。
【図4】図1の乗用型苗移植機の苗載台の支持構造の要部背面図である。
【図5】図1の乗用型苗移植機のロータの駆動機構の略図である。
【図6】図1の乗用型苗移植機の整地装置の駆動系統の構成を説明する部分図である。
【図7】図6の矢印A方向からの矢視図である。
【図8】図7の矢印B方向からの矢視図である。
【図9】図の乗用型苗移植機の整地装置の駆動系統の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面に基づき、本発明の好ましい実施の形態について説明する。
図1及び図2は本発明を用いた一実施例である乗用型苗移植機の側面図と平面図である。この乗用型苗移植機1は、走行車体2の後側に昇降リンク装置3を介して苗植付部4が昇降可能に装着されている。
【0026】
走行車体2は、駆動輪である左右一対の前輪10,10及び左右一対の後輪11,11を備えた四輪駆動車両であって、機体の前部にミッションケース12が配置され、そのミッションケース12の左右側方に前輪ファイナルケース13,13が設けられ、該左右前輪ファイナルケース13,13の操向方向を変更可能な各々の前輪支持部から外向きに突出する左右前輪車軸に左右前輪10,10が各々取り付けられている。
また、走行車体2の後側に昇降リンク装置3を介して苗植付部4が昇降可能に装着され、走行車体2の後部上側に施肥装置5の本体部分が設けられている。
【0027】
さらに、ミッションケース12の背面部にメインフレーム15の前端部が固着されており、そのメインフレーム15の後端左右中央部に前後水平に設けた後輪ローリング軸(図示せず)を支点にして後輪ギアケース18,18がローリング自在に支持され、その後輪ギアケース18,18から外向きに突出する後輪車軸11aに後輪11,11が取り付けられている。
【0028】
エンジン20はメインフレーム15の上に搭載されており、該エンジン20の回転動力が、静油圧式無段変速装置(HST)23などを介してミッションケース12に伝達される。ミッションケース12に伝達された回転動力は、該ケース12内のトランスミッションにより変速された後、走行動力と外部取出動力に分離して取り出される。
【0029】
そして、走行動力は、一部が前輪ファイナルケース13,13に伝達されて前輪10,10を駆動すると共に、残りが後輪ギアケース18,18に伝達されて後輪11,11を駆動する。また、外部取出動力は、走行車体2の後部に設けた植付クラッチケース(図示せず)に伝達され、それから植付伝動軸26によって苗植付部4へ伝動される。
【0030】
エンジン20の上部に座席31が設置されている。座席31の前方には各種操作機構を内蔵するフロントカバー32があり、その上方に前輪10,10を操向操作するハンドル34が設けられている。フロントカバー32の下端左右両側は水平状のフロアステップ35になっている。フロアステップ35は多数の穴が設けられており(図2参照)、該ステップ35を歩く作業者の靴についた泥が圃場に落下するようになっている。フロアステップ35上の後部は、後輪フェンダを兼ねるリヤステップ36となっている。
また、走行車体2の前部左右両側には、補給用の苗を載せておく予備苗載台38を設けても良い。昇降リンク装置3は平行リンク構成であって、1本の上リンク40と左右一対の下リンク41,41を備えている。これらリンク40,41,41は、その基部側がメインフレーム15の後端部に立設した背面視門形のリンクベースフレーム42に回動自在に取り付けられ、その先端側に縦リンク43が連結されている。
【0031】
そして、縦リンク43の下端部に苗植付部4に回転自在に支承された連結軸44が挿入連結され、連結軸44を中心として苗植付部4がローリング自在に連結されている。メインフレーム15に固着した支持部材と上リンク40に一体形成したスイングアーム(図示せず)の先端部との間に昇降用油圧シリンダ46が設けられており、該シリンダ46を油圧で伸縮させることにより、上リンク40が上下に回動し、苗植付部4がほぼ一定姿勢のまま昇降する。
【0032】
苗植付部4は4条植の構成で、フレームを兼ねる伝動ケース50、マット苗を載せて左右往復動し苗を一株分ずつ各条の苗取出口51a,…に供給するとともに横一列分の苗を全て苗取出口51a,…に供給すると苗送りベルト54,…により苗を下方に移送する苗載台51、苗取出口51a,…に供給された苗を圃場に植付ける苗植付装置52,…、次行程における機体進路を表土面に線引きする左右一対の線引きマーカ(図示せず)等を備えている。苗植付部4の下部には中央にセンターフロート55、その左右両側にサイドフロート56,56がそれぞれ設けられている。
【0033】
これらフロート55,56,56を、圃場の泥面に接地させた状態で機体を進行させると、フロート55,56,56が泥面を整地しつつ滑走し、その整地跡に苗植付装置52,…により苗が植付けられる。各フロート55,56,56は圃場表土面の凹凸に応じて前端側が上下動するように回動自在に取り付けられており、植付作業時にはセンターフロート55の前部の上下動がフロート傾斜角センサ94(図1)により検出され、その検出結果に応じ前記昇降用油圧シリンダ46を制御する油圧バルブを切り替えて苗植付部4を昇降させることにより、苗の植付深さを常に一定に維持する。
【0034】
苗植付部4には整地装置の一例であるロータ27(27a,27b)が取り付けられている。また、苗載台51は苗植付部4の全体を支持する左右方向と上下方向に幅一杯の矩形の支持枠体65の支持ローラ65a(図1)をレールとして左右方向にスライドする構成である。
【0035】
施肥装置5は、肥料ホッパ60に貯留されている粒状の肥料を繰出部61,…によって一定量ずつ繰り出し、その肥料を施肥ホース62,…でフロート55,56,56の左右両側に取り付けた施肥ガイド(図示せず),…まで導き、施肥ガイド,…の前側に設けた作溝体64(図1),…によって苗植付条の側部近傍に形成される施肥溝内に落とし込むようになっている。ブロア用電動モータ53で駆動するブロア58で発生させたエアが、左右方向に長いエアチャンバ59を経由して施肥ホース62,…に吹き込まれ、施肥ホース62,…内の肥料を風圧で強制的に搬送するようになっている。
【0036】
ロータ駆動部の要部を図3の側面図に示す。
トランスミッション12(図1)内の図示しない変速装置からの駆動力を駆動シャフト18cに伝達し、該駆動シャフト18cの後端部に伝動ベベルギア80を設け、該伝動ベベルギア80からの駆動力を後輪11とロータ27a,27bに伝達する後輪ギアケース(リアファイナルケース)18内に設けた入力ギア81に伝動させる。
【0037】
なお、後輪ギアケース18内の入力ギア81の下側には後輪11の車軸11aを回転させる後輪出力ギア82が配置され、後輪出力ギア82は入力ギア81に噛合しているので、変速装置よりの駆動力は後輪出力ギア82を経由して後輪11に伝達される。また、後輪ギアケース18内の後側で入力ギア81は整地装置27aに駆動力を伝動するための整地出力ベベルギア84と噛み合い、該整地出力ベベルギア84を前端部に装着した自在継手85を介して接続している。該自在継手85は整地伝動軸72に接続し、整地伝動軸72が自在継手86を介してロータ入力ベベルギア72vに接続し、該ロータ入力ベベルギア72vは機体両側の駆動軸70aに設けられるベベルギア70vに噛合しているので、変速装置よりの駆動力は左右のロータ27aに伝達される。
【0038】
駆動伝動ケース18内に設ける入力ギア81に、駆動シャフト18cに軸着する伝動ベベルギア80と、整地伝動軸72aに軸着する整地出力ベベルギア84と、後輪11の車軸11aを回転させる後輪出力ギア82をそれぞれ噛み合わせたことにより、伝動ベベルギア80と整地出力ベベルギア84を前後方向に略直線状に配置することができるので、整地装置27a,27bへの伝動経路が簡略化されるため、部品点数が削減される。
また、入力ギア81と後輪出力ギア82を上下方向に略直線状に配置することができるので、後輪伝動系の左右幅を抑えることができ、コンパクト化が図られる。
【0039】
ここで、駆動シャフト18cに軸着する伝動ベベルギア80の歯数よりも整地伝動軸72aに軸着する整地出力ベベルギア84の歯数を小さくすると後輪の駆動軸11aの回転数よりもロータ27aの入力側伝動軸72aの回転数を大きくすることができるのでロータ27a,27bによる圃場の整地性が従来より向上する。
【0040】
また、駆動シャフト18cに軸着する伝動ベベルギア80と、整地伝動軸72aに軸着する整地出力ベベルギア84を同一サイズとする場合に、ロータ入力ギア(駆動軸70aと一体のベベルギア70v;図5参照)の歯数を極力多くしてロータ27a,27bの回転数を後輪11の回転数より多くすることが、圃場の整地性を高めるためには望ましい。
【0041】
図3(a)に示す側面略図と図3(b)に示す図3(a)のA方向からの矢視図に示すように、後輪ギアケース18の機体内側には後輪駆動カバー18dが設けられている。
整地伝動軸72は入力側伝動軸72aと出力側伝動軸72bで構成され、出力側伝動軸72bに設けた中空部内に、中空部に設けた溝部(図示せず)と係合するスプライン部材72cを挿入する。スプライン部材72cの先端には爪クラッチ72c1を設ける。また、該スプライン部材72cよりも後端側の出力側伝動軸72bの中空部内にスプリング72dを配置する。入力側伝動軸72aの後端部には爪クラッチ72a1を設けている。
【0042】
こうして入力側伝動軸72aを出力側伝動軸72bの中空部に挿入することで、入力側伝動軸72aの爪クラッチ72a1をスプライン部材72cの爪クラッチ72c1に係合可能な出力な構成となる。なお、スプライン部材72cのスプライン(図示せず)は、出力側伝動軸72bの中空部に設けられる溝(図示せず)と係合するので、スプライン部材72cは出力側伝動軸72bと一体回転する。
【0043】
また、整地伝動軸72を入力側伝動軸72aと出力側伝動軸72bで構成し、出力側伝動軸72bの中空部に入力側伝動軸72aを挿入することで入力側伝動軸72aの爪クラッチ72a1とスプライン部材72cの爪クラッチ72c1を係合させて整地装置27a,27bにエンジン20からの駆動力を伝動する構成としたので、整地装置27a,27bを上昇させると、それまで係合していた爪クラッチ72a1,72c1がはずれて、入力側伝動軸72aがスプライン部材72cから抜け出て伝動を切る構成となるため、整地装置27a,27bを上昇させる際に整地装置27a,27bの駆動力を入切する必要が無く、作業能率が従来より向上する。
【0044】
また、スプライン部材72cよりも後端側にスプリング72dを配置したことにより、一定以上整地伝動軸72a,72bが伸びると、入力側伝動軸72aの爪クラッチ72a1が出力側伝動軸72bの外側に押し出されるため、整地装置27a,27bが異物(石等)を噛んで整地伝動軸72a,72bが異常に縮まり過負荷がかかる状態になっても、爪クラッチ72a1がスプライン部材72cから逃げて切れた状態となるので、過負荷による破損が防止される。
【0045】
整地入力伝動ケース70c(図5)内に前記爪クラッチ72a1,72c1の入・切を操作するクラッチアーム95をロータ伝動軸ケース73に回動自在に差し込み、クラッチアーム95を回動操作すると、整地装置27a,27bのクラッチが入切する。該クラッチアーム95には作動ケーブル96の引き・緩みにより動作してクラッチアーム95を回動させるアウタ受け97を設けている。
【0046】
苗植付部4を昇降自在にするリンク機構3をリンクベースフレーム42に装着するが、リンク機構3のリンクベースフレーム42への取付支点を後輪11の車軸11aよりも機体前側に配置した。これにより、苗植付部4を上昇させると苗植付部4が後退しつつ上昇する構成となるため、苗植付部4の昇降により整地伝動軸72a,72bの連結状態または非連結状態が切り替わるため、苗植付部4が所定高さ以下になると整地装置27a,27bが作動する構成とすることができるので、旋回の開始及び終了時、苗植付作業の開始及び終了時等に整地装置27a,27bの操作が不要となり、作業能率と操作性が従来より向上する。
【0047】
整地ロータ27a,27bの支持構造を図4(背面図)に示し、整地ロータ27a,27bの駆動部の概略構成図を図5に示す。
ロータ駆動部には、苗載台51の前記支持枠体65の両側辺部材65bに上端を回動自在に支持された梁部材66と該梁部材66の両端に固着した支持アーム67と該支持アーム67に回動自在に取り付けられたロータ支持フレーム68が設けられている。また、ロータ昇降用モータ63が梁部材66の軸方向延長線上に設けられている。ロータ支持フレーム68の下端には整地ロータ27(27a,27b)の駆動軸70(70a,70b)が取り付けられている。また、該ロータ支持フレーム68の下端部近くは伝動ケース50に回動自在に取り付けられた連結部材71(図1)に連結している。
【0048】
また、図4に示すロータ昇降用モータ63に代えて支持アーム67に支持されたロータ高さ調節レバー69(図1)の操作により支持アーム67を前後方向に回動させてロータ支持フレーム68を上下動させても良い。
【0049】
図5に示すようにミッションケース12から右側の後輪ギアケース18には中間部にユニバーサルジョイント18bを有する伝動シャフト18aから動力が伝達され、後輪ギアケース18から後輪ギアケース18内にある入力ギア81(図3)から整地伝動シャフト72等を経由して駆動軸70aが駆動することで右側の整地ロータ27aが回転する。右側の各駆動軸70aにはベベルギア70vが設けられており、該ベベルギア70vには前記整地伝動シャフト72の先端に設けられたベベルギア72vと噛合することでミッションケース12側からの駆動力が伝達される。
【0050】
機体左右方向の中央部には一対の整地ロータ27bが配置されており、整地ロータ27bのロータ駆動軸70bで駆動される。該ロータ駆動軸70bには右側ロータ駆動軸ケース73の駆動チェーン73aからの動力が伝達される。さらに左側ロータ駆動軸70bにはロータ駆動軸70bから左側ロータ駆動軸ケース73の駆動チェーン73aを経由して動力が伝達される。
【0051】
図6に整地装置27a,27bの駆動系統の構成を説明する部分図を示し、図7には図6の矢印A方向からの矢視図を示し、図8には図7の矢印B方向からの矢視図を示す。
整地装置27a,27bの間で駆動力を伝動する伝動部材を収納したロータ伝動ケース73に左右一対の取付フレーム88を取り付け、取付フレーム88に取り付けた左右整地装置27a,27aに泥除け部材89を取り付け、また中央の整地装置27bに泥除け部材89’を取り付け、また整地伝動ケース73の両側にできる泥除け部材89及び泥除け部材89’の間にそれぞれ間隔部S1,S2を設けて構成した。
【0052】
整地伝動ケース73と泥除け部材89及び泥除け部材89’の間にそれぞれ間隔部S1,S2を設けたことにより、左右の2つの整地装置27a,27a及び中央の整地装置27bの整地作業により発生した泥流を間隔部S1,S2を通過させて後方に移動させることができるので、泥流が左右の整地装置27aの外側端部に集中し、隣接条に植え付けられている苗を押し流したり泥土を被らせたりすることが防止され、欠株の発生が防止されると共に、苗の生育不良が防止される。
【0053】
また、取付フレーム88に泥除け部材89を設けることにより、泥除け部材89の取付位置を取付フレーム88の幅内で自由に決めることができるので、間隔部S1の幅の調節が可能となり、圃場の土質等による泥流の発生し易さに合わせて間隔部S1の幅を変更することができ、防波・防泥性能が向上する。
【0054】
左右の整地伝動ケース73の機体内側下部に左右の下部支持ステー90を配置し、左右の取付フレーム88を左右の下部支持ステー90と整地装置支持部材(ロータ支持フレーム)68の間に配置した。
また、取付フレーム88は下部支持ステー90と支持アーム87に支持されている。また、苗植付部支持枠体65の両側辺部材65bに支持された取付アーム91に支持アーム87が連結している。
【0055】
こうして取付フレーム88を下部支持ステー90とロータ支持フレーム68の間に配置したことにより、取付フレーム88の取付支点の数が増えるため、強度が向上する。さらに、左右の取付フレーム88に泥除け部材89を設け、左右の泥除け部材89と左右の整地伝動ケース73の間に間隔部S1を設ける構成としたことにより、左右の整地装置27a,27bの整地作業により発生した泥流を間隔部S1,S2を通過させて後方に移動させることができるので、泥流が左右の整地装置27a,27bの外側端部に集中し、隣接条に植え付けられている苗を押し流したり泥土を被らせたりすることが防止され、欠株の発生が防止されると共に、苗の生育不良が防止されることは既に述べた通りである。
【0056】
また、左右の整地伝動ケース73の機体内側上部に左右の上部支持ステー92を配置し(左側の上部支持ステー92のみ図示)、左右の上部支持ステー92の間に中央の取付ロッド93を設け、該取付ロッド93に左右一対の87’を取り付け、該左右一対の支持アーム87’の間に中央泥除けカバー89’を装着し、該中央の泥除け部材89’と左右の整地伝動ケース73の間に間隔部S2を設けた。
【0057】
このように、左右の上部支持ステー92の間に中央の取付ロッド93を設けたことにより、左右の上部支持ステー92が連結されるので、強度が従来より向上する。
また、支持アーム87’の後側下部を中央の取付ロッド93に接触させて設け、この支持アーム87’に泥除け部材89’を設けたことにより、さらに強度が従来より向上する。
【0058】
そして、泥除け部材89’と左右の整地伝動ケース73の間に間隔部S2を設けたことにより、中央の整地装置27bの整地作業により発生した泥流を間隔部S2を通過させて後方に移動させることができるので、泥流が左右の整地装置27a,27bの外側端部に集中し、隣接条に植え付けられている苗を押し流したり泥土を被らせたりすることが防止され、欠株の発生が防止されると共に、苗の生育不良が防止される。
【0059】
整地装置27aの前後方向中央部よりも後方部位の左右の泥除け部材89の部分に屈曲部を形成し、中央の泥除け部材89’の側面視で取付ロッド93と接触する位置に屈曲部を形成した。
【0060】
上記左右の泥除け部材89と中央の泥除け部材89’にそれぞれ屈曲部を形成したことにより、左右の整地装置27aまたは中央の整地装置27bが巻き上げた泥土が左右の泥除け部材89と中央の泥除け部材89’から機体後方に移動しやすくなるので、作業終了後にこの泥土を除去する掃除に要する時間と労力が軽減される。
また、後輪11の回転により巻き上げられる泥土も泥除け部材89,89’により同じく機体後方に移動させることができるので、掃除に要する時間と労力がいっそう軽減される。
【0061】
左右の取付フレーム88の機体前方部位を上向きに設け、該左右の取付フレーム88の機体後方部位を下向きに屈曲させ、該屈曲させた機体後方部位に泥除け部材89を装着した。そのため、左右の取付フレーム88を上下方向に向けて設け、左右の取付フレーム88を機体後方に向けて屈曲させ、この屈曲部に泥除け部材89を装着したことにより、泥除け部材89の取付位置が取付フレーム88の上下方向側(屈曲させていない側)に設けられるので、取付部に泥土が付着しにくくなり、耐久力が向上すると共に、作業終了後にこの泥土を除去する掃除に要する時間と労力が軽減される。
【0062】
また、支持アーム87は取付フレーム88に固着しているが、取付フレーム88に装着した泥除け部材89には溝部89aを設け、該溝部89aに支持アーム87の先端を配置して取付フレーム88と泥除け部材89の間に泥が入り込む隙間を形成させないように泥除け部材89の溝深さ(La)<取付フレーム88の上面の幅(Lb)としている(図8)。
【0063】
図9に示すように、フロート55,56との配置位置の関係でセンターフロート55の前方にある中央整地ロータ27bはサイドフロート56の前方にある整地ロータ27aより前方に配置されている。そのため、左側の整地ロータ27aの駆動軸70aへの動力は後輪ギアケース18内のギア81から整地伝動シャフト72等を介して伝達される。また、整地ロータ27bのロータ駆動軸70bには左側の整地ロータ27aの駆動軸70aの車体内側の端部から動力が伝達され、右側の駆動軸70aにはロータ伝動軸ケース73内の駆動チェーン73aを介して動力伝達されることは前に述べた通りである。
また、整地ロータ27bはロータ伝動軸ケース73を橋渡しする補強部材74を介して梁部材66に上端部が支持された一対のリンク部材76,77によりスプリング78を介して吊り下げられている。
【0064】
図4に示すように、該一対のリンク部材76,77は梁部材66に一端部が固着支持された第一リンク部材76と該第一リンク76の他端部に一端が回動自在に連結した第二リンク部材77からなり、該第二リンク部材77の他端部と両方のロータ伝動軸ケース73を橋渡しする補強部材74に支持された取付片74a(図9参照)との間に前記スプリング78が接続している。
【0065】
ロータ昇降用モータ63の作動により、第一リンク部材76を上方へ回動する向きに梁部材66が回動し、該梁部材66の回動に伴って、ロータ支持フレーム68を介して第一リンク部材76と第二リンク部材77とスプリング78に吊り下げられた整地ロータ27a,27bを上方に上げることができる。整地ロータ27a,27bを上方に移動させると、ロータ駆動軸70bを介して一対の整地ロータ27b,27bも同時に上方に移動する。
【0066】
本実施例では、標準位置で圃場面より40mmの高さにある整地ロータ27a,27bをロータ昇降用モータ63の回動で標準位置より最大15mm高くでき、またロータ昇降用モータ63の逆向きの回動で標準位置より最大15mm低くできるように設定している。
【0067】
図4に示すように、上記整地ロータ27a,27bをロータ昇降用モータ63で上下動ができる構成にしているので、整地ロータ27a,27bで畦際を整地しながら苗の植付を行う場合に、梁部材66の軸を回動可能にした整地ロータ27a,27bの作業状態から整地ロータ27a,27bの収納状態への切替えを苗植付部4の上昇に連動させてロータ昇降用モータ63で自動的に行う構成とすることができる。
【0068】
苗植付部4の上昇時に整地ロータ27bが昇降リンク装置3の下リンク41,41から逃げるように苗植付部4に対してスプリング78などを介して支持されているので、整地ロータ27aが融通性をもって苗植付部4に支持される。
また、操縦座席31近傍に設ける図示しないメータパネル上に設けたロータ高さ調節ダイヤルにより、整地ロータ27a,27bを設定高さに調整する構成にしても良い。
【0069】
手動でロータ高さを設定する場合には、整地ロータ27a,27bを収納位置に移動したままで次の苗植付作業時に整地ロータ27a,27bを使用できないことがあるが、自動的に整地ロータ27a,27bを設定高さに調整する構成にすると、そのような不具合を防ぐことができる。
【0070】
図4に示すように、梁部材66の一端にロータ昇降用モータ63を取り付けておき、苗植付部4が上昇すると整地ロータ27a,27bは下降するようにし、また苗植付部4が下降すると整地ロータ27a,27bは上昇するような構成としても良い。これにより、畦際旋回時に整地ロータ27a,27bを下降させて、旋回跡のみを整地することができる。この場合は、苗植付部4の上リンク40が所定高さ以上に回動するとオンとなる昇降リンクスイッチ(フロート傾斜角センサ)94(図1)が作動すると制御装置100がロータ昇降用モータ63の駆動制御を行う。この様な構成の場合はロータ昇降用モータ63を自動で作動させることができるので、操作性が従来技術に比べて向上する。
また、図1に示すように、整地ロータ27a,27bの後ろ上方には、ロータカバー37を設け、フロート55,56上に泥がかからないようにしている。
【0071】
前述のように、通常はロータ昇降用モータ63を作動させることで、整地ロータ27a,27bは上昇される構成であるが、本実施例では、苗植付装置52にエンジン20の動力を伝達させるための畦クラッチ(図示せず)が畦クラッチレバー19(図2)の操作により切りになると、ロータ昇降用モータ63が作動して自動的に整地ロータ27a,27bを下降させて整地作業を行わせる構成になっている。
そのために、畦クラッチレバー19(図2)の入・切を検知する畦クラッチレバーセンサ19a(図4)を設けている。
従って、枕地及びその近傍では植付条数あわせのために畦クラッチレバー19の操作により畦クラッチを切りにしたときに、該畦クラッチレバーセンサ19aが畦クラッチレバー19の切りを検出し、制御装置100(図4)により自動的に整地ロータ27a,27bを下降させて整地作業を行わせることができる。
このことにより、圃場内において荒れやすい枕地又は枕地の近くを確実に整地することができる。
【0072】
本実施例では、圃場の硬軟に合わせて座席31の近傍に設けた制御感度変更ダイヤル(図示せず)を調節して昇降用油圧シリンダ46の伸縮による苗植付部4の上下位置の制御感度を複数段に変更できる構成を備えている。また、センターフロート55の前後傾斜角度がフロート傾斜角度検出センサ94で検出されるので、制御感度変更ダイヤルによる制御感度の設定値毎にセンターフロート55の前後傾斜角度がフロート傾斜角度検出センサ94で検出され、センターフロート55の前後傾斜角度(仰角)は、圃場が硬い場合は前上がり側に、圃場が軟い場合は前下がり側になるように、複数の異なる角度にそれぞれ設定される。
従って、前記フロート傾斜角度検出センサ94の検出値が、制御感度変更ダイヤルにて設定されているセンターフロート55の傾斜角度になるように、制御装置100により昇降用油圧シリンダ46を伸縮させて、苗植付装置4が設定された上下位置になるように制御する。
【符号の説明】
【0073】
1 施肥装置付き乗用型苗移植機 2 走行車体
3 昇降リンク装置 4 苗植付部
5 施肥装置 10 前輪
11 後輪 11a 後輪車軸
12 ミッションケース 13 前輪ファイナルケース
15 メインフレーム 18 後輪ギアケース
18a 伝動シャフト 18b ユニバーサルジョイント
18c 駆動シャフト 18d 後輪駆動カバー
19 畦クラッチレバー 19a 畦クラッチレバーセンサ
20 エンジン
23 静油圧式無段変速装置(HST)
26 植付伝動軸
27(27a,27b) 整地ロータ
31 座席 32 フロントカバー
34 ハンドル 35 フロアステップ
36 リヤステップ 37 ロータカバー
38 予備苗載台 40 上リンク
41 下リンク 42 リンクベースフレーム
43 縦リンク 44 連結軸
46 昇降用油圧シリンダ 50 伝動ケース
51 苗載台 51a 苗取出口
52 苗植付装置 53 ブロア用電動モータ
54 苗送りベルト 55 センターフロート
56 サイドフロート 58 ブロア
59 エアチャンバ 60 肥料ホッパ
61 繰出部 62 施肥ホース
63 ロータ昇降用モータ 64 作溝体
65 苗植付部支持枠体 65a 支持ローラ
65b 両側辺部材 66 梁部材
67 支持アーム 68 ロータ支持フレーム
69 ロータ高さ調節レバー
70(70a,70b) ロータ駆動軸
70c 整地入力伝動ケース 70v,72v ベベルギア
71 連結部材 72 整地伝動軸
72a 第一伝動軸 72b 第二伝動軸
72a1,72c1 爪クラッチ
72b 出力側伝動軸 72c スプライン部材
72d スプリング 72v ロータ入力ベベルギア
73 ロータ駆動軸ケース 73a 駆動チェーン
74 補強部材 74a 取付片
76 第一リンク部材 77 第二リンク部材
78 スプリング 80 伝動ベベルギア
81 入力ギア 82 後輪出力ギア
84 整地出力ベベルギア 85,86 自在継手
87,87’ 支持アーム 88 取付フレーム
89,89’ 泥除け部材 89a 溝部
90 下部支持ステー 91 取付アーム
92 上部支持ステー 93 取付ロッド
94 フロート傾斜角度検出センサ(昇降リンクスイッチ)
95 クラッチアーム 96 作動ケーブル
97 アウタ受け 100 制御装置
S1,S2 間隔部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圃場を走行する走行車体(2)と、走行車体(2)の後部に取り付けられた、圃場に苗を植え付ける昇降自在な苗植付部(4)と、苗植付部(4)の下部に取り付けられた、圃場面を均す左右一対の整地装置(サイドロータ)(27a)と、苗植付部(4)の下部に取り付けられた、圃場面を均す中央の整地装置(センターロータ)(27b)と、整地装置(27a,27b)間で駆動力を伝動する伝動部材(73a)を収納した左右の整地伝動ケース(73)を有する苗移植機において、
整地伝動ケース(73)に左右一対の取付フレーム(88)を取り付け、
取付フレーム(88)に左右整地装置(27a)の泥除け部材(89)を取り付け、
左右の整地伝動ケース(73)と左右の泥除け部材(89)との間に間隔部(S1)を設けた
ことを特徴とする苗移植機。
【請求項2】
左右の整地伝動ケース(73)の機体内側下部に左右の下部支持ステー(90)を配置し、左右の下部支持ステー(90)と整地装置支持部材(ロータ支持フレーム)(68)の間に左右の取付フレーム(88)を配置したことを特徴とする請求項1記載の苗移植機。
【請求項3】
左右の整地伝動ケース(73)の機体内側上部に左右の上部支持ステー(92)を配置し、該左右の上部支持ステー(92)の間に中央の取付ロッド(93)を設け、該取付ロッド(93)に左右一対の支持アーム(87’)を接触させて設け、該左右一対の支持アーム(87’)の間に中央泥除けカバー(89’)を装着し、該中央の泥除け部材(89’)と左右の整地伝動ケース(73)の間に間隔部(S2)を設けたことを特徴とする請求項1または2記載の苗移植機。
【請求項4】
左右の泥除け部材(89)において、左右の整地装置(27a)の前後方向中央部よりも後方位置に屈曲部を形成し、中央の泥除け部材(89’)において、側面視で中央の取付ロッド(93)と接触する位置に屈曲部を形成したことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の苗移植機。
【請求項5】
左右の取付フレーム(88)の機体前方部位を上向きに設け、該左右の取付フレーム(88)の機体後方部位を下向きに屈曲させ、該屈曲させた機体後方部位に泥除け部材(89)を装着したことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の苗移植機。
【請求項6】
エンジン(29)と、変速装置を収納したミッションケース(12)と、ミッションケース(12)内の変速装置からの駆動力をミッションケース(12)の外部に伝動する駆動シャフト(18c)と、駆動シャフト(18c)の後端部に設けた伝動ベベルギア(80)と、伝動ベベルギア(80)と噛み合い回転する入力ギア(81)と、入力ギア(81)の下側で、該入力ギア(81)に噛合する後輪(11)の車軸(11a)を回転させる後輪出力ギア(82)と、前記入力ギア(81)と後輪出力ギア(82)を収納した駆動伝動ケース(18)と、入力ギア(81)の後側で、該入力ギア(81)に噛合する整地出力ベベルギア(84)と、該整地出力ベベルギア(84)を前端部に連結した整地伝動軸(72)と、該整地伝動軸(72)の後端部に連結した整地入力ベベルギア(72v)と該整地入力ベベルギア(72v)に噛合するベベルギア(70v)と、整地入力ベベルギア(72v)とベベルギア(70v)を収納した整地入力伝動ケース(70c)と、該整地入力伝動ケース(70c)内のベベルギア(70v)を左側または右側の整地装置(27a)の伝動軸(70a)に固着し、該整地入力伝動ケース(70c)内の整地入力ベベルギア(72v)の駆動力を中央の整地装置(27b)の伝動軸(70b)に伝動するための伝動部材(73a)を収納した整地装置ケース(73)を設けたことを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の苗移植機。
【請求項7】
整地伝動軸(72)を入力側伝動軸(72a)と出力側伝動軸(72b)で構成し、出力側伝動軸(72b)に設けた中空部に爪クラッチ(72c1)を有し、出力側伝動軸(72b)の前記中空部内には該中空部の溝部に係合するスプライン部材(72c)と該スプライン部材(72c)の後端側にスプリング(72d)を配置し、入力側伝動軸(72a)の後端部に爪クラッチ(72a1)と設け、
入力側伝動軸(72a)を出力側伝動軸(72b)の中空部に挿入することで、入力側伝動軸(72a)の爪クラッチ(72a1)をスプライン部材(72c)の爪クラッチ(72c1)に係合可能な構成としたことを特徴とする請求項6記載の苗移植機。
【請求項8】
苗植付部(4)を昇降自在に装着するリンク機構(3)と、リンク機構(3)の取付支点を後輪(11)の車軸(11a)よりも機体前側に配置したことを特徴とする請求項7記載の苗移植機。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2012−244931(P2012−244931A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−118643(P2011−118643)
【出願日】平成23年5月27日(2011.5.27)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】