説明

苗移植機

【課題】リンクアームの構成を工夫することで、予備苗載せ台の側方を塞ぐことがないようにし、予備苗載せ台に載置した苗を取り出しやすくした苗移植機を提供すること。
【解決手段】支持機枠49複数の予備苗載せ台38a,38b,38cを回動自在に連結するリンク機構Rを設け、該リンク機構Rは予備苗載せ台8a,38b,38cの一側に回動自在に取り付けられた一本のリンクアーム39と、一本のリンクアーム39の回動により複数の予備苗載せ部材38a,38b,38cが前後方向に並ぶ展開状態と上下方向に並ぶ積層状態に切り替えときに予備苗載せ台38a,38b,38cの位置をそれぞれ揃える、リンクアーム39とほぼ同じ長さのリンクロッド40を有し、予備苗載せ台38a,38b,38cが展開状態と積層状態にある時に、それぞれの状態を確実に保持し得るようにした回動アーム45a,45b,45c,45xを有する苗移植機である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、走行装置を有する機体の側部に予備の苗載せ台を備えた苗移植機に関する。
【背景技術】
【0002】
苗植付装置を機体後部に備えた苗移植機において、機体の側部に、複数の予備の苗載せ台からなる予備苗載部を備えた苗移植機が知られている。
下記特許文献1及び2には、複数の予備苗載せ台が上下多段となって平面視で重複した積層状態と、前記複数の予備苗載せ台が前後向きに略一直線状になって展開した展開状態とに、前記複数の予備苗載せ台を切り替え可能に構成した苗移植機が開示されている。この切り替え機構は、1本の長い移動リンク部材と2本の短い移動リンク部材からなる平行リンク機構に複数の予備苗載せ台を取り付け、平行リンク機構の回動によって上下方向に重なり合う状態(平面視で重なる積層状態)と前後方向に略一直線上に並ぶ状態(水平方向に並ぶ展開状態)とに予備苗載せ台の状態を切り替え可能な構成である。
【0003】
そして、積層状態から複数の予備苗載せ台のうちのいずれか一つの可動予備苗載せ台を、固定予備苗載せ台に対して展開状態の姿勢に変更すると、複数の予備苗載せ台が展開状態に切り替えられ、逆に、展開状態から複数の予備苗載せ台のうちのいずれか一つの可動予備苗載せ台を、固定予備苗載せ台に対して積層状態の姿勢に変更すると、複数の予備苗載せ台が重複状態に切り替えられる構成である。
したがって、特許文献1及び2記載の構成は複数の予備苗載せ台の状態の切り替えを簡易迅速に行うことができ、複数の予備苗載せ台の状態の切り替え作業性を従来技術より向上させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−232809号公報
【特許文献2】特開2011−110026号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1及び2記載の構成からなる苗移植機では、複数のリンクアームを用いて予備苗載せ台の作業姿勢を変更する構成としているため、予備苗載せ台を積載状態に切り替えたとき、リンクアームが予備苗載せ台の側方を塞ぐ構造となっている。このため、予備苗載せ台の側方から積載した苗を取り出しにくく、作業能率が低下する問題がある。
【0006】
また、予備苗載せ台の作業状態は手作業で切り替える構成であるため、苗を積載して重量が増加すると作業者は余分な労力を費やして切替操作を行なわなければならないという問題がある。
そこで、本発明の課題は、リンクアームの構成を工夫することで、予備苗載せ台の側方を塞ぐことがないようにし、かつ予備苗載せ台に載置した苗を取り出し易くした予備苗載部を有する苗移植機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題は、下記構成によって達成される。
すなわち、請求項1に係る発明は、走行車体(2)の後側に圃場に苗を植え付ける植付部(4)を設け、走行車体(2)に設けた支持機枠(49)に苗箱を載置する複数の予備苗載せ部材(予備苗載せ台)(38a,38b,38c)と前記複数の予備苗載せ部材(38a,38b,38c)を回動自在に連結するリンク機構(R)を設け、該リンク機構(R)は、複数の予備苗載せ部材(38a,38b,38c)の一側に回動自在に取り付けられた一本のリンクアーム(39)と、前記一本のリンクアーム(39)の回動により複数の予備苗載せ部材(38a,38b,38c)が前後方向に並ぶ展開状態と複数の予備苗載せ部材(38a,38b,38c)が上下方向に並ぶ積層状態に切り替えときに予備苗載せ部材(38a,38b,38c)の位置をそれぞれ揃える一本の補助リンク部材(リンクロッド)(40)を有する構成することを特徴とする苗移植機である。
【0008】
請求項2に係る発明は、補助リンク部材(40)をリンクアーム(39)とほぼ同じ長さとし、前記リンクアーム(39)の複数の予備苗載せ部材(38a,38b,38c)の一側面に設けた各取付支点(39a,39b,39c)にそれぞれに対応した位置に複数の回動アーム(45a,45b,45c)の一側をそれぞれ回動自在に取り付け、リンクアーム(39)の支持機枠(49)の一側面に設けた単一の取付支点(39x)に対応した位置に基準回動アーム(45x)の一側を回動自在に取り付け、さらに補助リンク部材(40)に前記複数の回動アーム(45a,45b,45c,45x)の他端を回動自在に取り付けたことを特徴とする請求項1記載の苗移植機である。
【0009】
請求項3に係る発明は、補助リンク部材(40)を順次隣接するギア同士が噛合する第1〜第9の切替ギア(40a,40b,40c,40d,40e,40f,40g,40h,40i)からなるギア機構(G)で構成し、ギア機構(G)は、リンクアーム(39)の予備苗載せ部材(38a,38b,38c)の一側面に設けた取付支点(39a,39b,39c)にそれぞれ回動自在に取り付けた第1、第5、第9切替ギア(40a,40e,40i)とリンクアーム(39)の支持枠体(49)への取付支点(39x)に回動自在に取り付けた第7切替ギア(40g)と、前記第1、第5切替ギア(40a,40e)を順次伝動させるために前記第1切替ギア(40a)と第7切替ギア(40g)の間に順に噛合するように設けられた第2、第3、第4、第5、第6、第8切替ギア(40b,40c,40d,40e,40f,40h)と、第9切替ギア(40i)を伝動させるために第7切替ギア(40g)と第9切替ギア(40i)の間に噛合するように設けられた第8切替ギア(40h)から構成し、該第7切替ギア(40g)はリンクアーム(39)に回転自在に取り付ける構成としたことを特徴とする請求項1記載の苗移植機である。
【0010】
請求項4に係る発明は、積載状態で最上段に位置し、展開状態で最前列に位置する予備苗載せ部材(38a)の前後方向中央位置に支柱(83)を設け、該支柱(83)の上部に補助予備苗載せ部材(補助予備苗載せ台)(38d)を前後方向に回動自在に配置し、リンクアーム(39)の一側端部に取付凸部(39y)を形成し、該取付凸部(39y)の上端部と補助予備苗載せ台(38d)の後端部を回動自在に連結ロッド(84)で連結し、予備苗載せ部材(38a,38b,38c)を積層状態から展開状態に切り替えると、補助予備苗載せ台(38d)の後部が連結ロッド(84)に引き下げられ、補助苗載せ台(38d)の前部が上方に移動する構成としたことを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載の苗移植機である。
【0011】
請求項5に係る発明は、支持枠体(49)を予備苗載せ部材(38a,38b,38c)よりも上方まで延長し、支持枠体(49)の上方延長部に設けた取付部(49c)を介して補助予備苗載せ部材(38d)を取り付け、前記取付部(49c)に補助予備苗載せ部材(38d)の後端部(38dx)を回動支点として装着し、積載状態において、補助予備苗載せ部材(38d)と最上段にある他の予備苗載せ部材(38a)の上下間隔は、他の予備苗載せ部材(38a,38b,38c)同士の上下間隔とほぼ同じとし、積載状態で最上段に位置し、展開状態で最前列に位置する予備苗載せ部材(38a)の後部に持上げ支柱(86)を配置し、該持上げ支柱(86)の上端部に持上げ回転体(ローラ)(87)を装着し、予備苗載せ部材(38a,38b,38c)の展開状態と積載状態の切り替えの際に前記持上げ回転体(87)が補助予備苗載せ部材(38d)の下方に接触すると補助予備苗載せ部材(38d)が上方回動する構成としたことを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載の苗移植機である。
【0012】
請求項6に係る発明は、支持枠体(49)の下部側に延長支持部材(延長支持フレーム)(49d)を配置し、リンク機構(R)を設けた側の反対側に、積層状態での予備苗載せ部材(38a,38b,38c)の上下長さよりも長い、前後一対の補助リンクアーム(88a,88b)を前記延長支持部材(延長支持フレーム)(49d)に前後回動自在に配置し、一対の補助リンクアーム(88a,88b)の上端部に補助苗載せ台(38d)を配置したことを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載の苗移植機である。
【0013】
請求項7に係る発明は、予備苗載せ部材(38a,38b,38c)を切り替える切替装置(70)と、切替装置(70)を作動させる切替操作部材(切替スイッチ)(73)と、切替装置(70)を回動部材(切替回動ギア)(70a)と、切替電動モータ(71)と、切替電動モータ(71)により回転して回動部材(70a)を回動させると共に回動部材(70a)が回動不能になると切替電動モータ(71)を停止させる駆動切替機構(ストッパもしくはリミットスイッチ)(73a1,73a2)と、回動部材(切替回動ギア)(70a)を、予備苗載せ部材(38a,38b,38c)のリンクアーム(39b)の回動支点(39b3)に装着する構成としたことを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載の苗移植機である。
【発明の効果】
【0014】
請求項1記載の発明によれば、リンク機構Rを一本のリンクアーム39と一本の補助リンク部材40で構成することにより、複数の予備苗載せ部材38a,38b,38cの側方を遮る面積を小さくすることができるので、予備苗載せ部材38a,38b,38cに載置した苗が取り出しやすくなり、作業能率が向上する。
また、従来のリンク機構に比べて本発明のリンク機構Rの部品数が少なくなるため、簡潔な構成となる。
【0015】
請求項2記載の発明によれば、請求項1記載の発明の効果に加えて、リンクアーム39と補助リンク部材40をほぼ平行姿勢とすることができ、予備苗載せ部材38a,38b,38cの一方の側面を遮る面積を小さくすることができるので、予備苗載せ部材38a,38b,38cに載置した苗が取り出しやすくなり、作業能率が従来技術に比して向上する。
リンクアーム39と補助リンク部材40を、支持機枠49及び予備苗載せ部材38a,38b,38cの取付支点39a,39b,39c,39xにそれぞれ設けた回動アーム45a,45b,45c,45xを介して連結したことにより、展開状態及び積層状態で予備苗載せ部材38a,38b,38cが適切な姿勢に並ぶため、苗の積み込み作業や取り出し作業が容易になり、作業能率が従来技術に比して向上する。
【0016】
請求項3記載の発明によれば、請求項1記載の発明の効果に加えて、補助リンク部材40をギア機構Gとしたことにより、リンクアーム39とギア機構Gを常に同じ位相に位置するため、予備苗載せ部材38a,38b,38cの側方が塞がれる面積が従来のリンクアームと2本の補助リンクアームを用いる構成により、より一層減少し、苗の取り出しが一層容易になり、作業能率が従来技術より向上する。
ギア機構Gは第1〜第9切替ギア40a,40b,40c,40d,40e,40f,40g,40h,40iからなり、これらの第1〜第9切替ギア40a,40b,40c,40d,40e,40f,40g,40h,40iの隣接するギア同士の歯の噛み合いにより予備苗載せ部材38a,38b,38cの展開状態及び積層状態をそれぞれ維持することができるので、ストッパが不要となり、予備苗載せ部材38a,38b,38cの構成が簡潔になる。
【0017】
請求項4記載の発明によれば、請求項1から3のいずれかに記載の発明の効果に加えて、予備苗載せ部材38a,38b,38cの上部に補助予備苗載せ部材38dを設けたことにより、苗の積載量が増えるため、苗の補充作業回数を減らすことができるので、作業能率が向上する。
また、予備苗載せ部材38a,38b,38cを展開状態として苗の補充作業を行うときに、補助予備苗載せ部材38dの前部が自動的に上方に移動するので、補助予備苗載せ部材38dが他の予備苗載せ部材38a,38b,38cへの苗の積み込みを妨げることが防止され、作業能率が従来よりも向上する。
【0018】
請求項5記載の発明によれば、請求項1から3のいずれかに記載の発明の効果に加えて、予備苗載せ部材38a,38b,38cの上部に補助予備苗載せ部材38dを設けたことにより、苗の積載量が増えるため、苗の補充作業回数を減らすことができるので、作業能率が従来技術より向上する。
【0019】
また、予備苗載せ部材38a,38b,38cの切替操作の際に持上げ回転体86が補助予備苗載せ台38dを上方に回動させることにより、リンク機構Rが回動する軌跡を確保することができるので、リンク機構Rと補助予備苗載せ台38dが接触することがなく、破損が防止される。
また、予備苗載せ部材38a,38b,38cと補助予備苗載せ台38dの上下間隔を抑えることができるので、苗が積み込みやすく、作業能率が向上する。
【0020】
請求項6記載の発明によれば、請求項1から3のいずれかに記載の発明の効果に加えて、予備苗載せ部材38a,38b,38cの上部に補助予備苗載せ部材38dを設けたことにより、苗の積載量が増えるため、苗の補充作業回数を減らすことができるので、作業能率が向上する。
また、補助リンクアーム88a,88bが予備苗載せ部材38a,38b,38cの上下長さよりも長いことにより、予備苗載せ部材38a,38b,38cの積載状態と展開状態の切替操作の際に、リンク機構Rが回動する軌跡を確保することができるので、リンク機構Rと補助予備苗載せ部材38dが接触することがなく、破損が防止される。
【0021】
請求項7記載の発明によれば、請求項1から3のいずれかに記載の発明の効果に加えて予備苗載せ部材38a,38b,38cの切り替えを手作業で行う必要がなく、作業能率が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一実施形態の乗用型田植機の側面図である。
【図2】図1の乗用型田植機の平面図である。
【図3】図1の乗用型田植機の予備苗載せ台を上下三段に配置した場合(積層状態)の側面図である。
【図4】図1の乗用型田植機の他の実施例の予備苗載せ台を上下三段に配置した場合(積層状態)の側面簡略図である。
【図5】図1の乗用型田植機の他の実施例の予備苗載せ台を上下四段に配置した場合(積層状態)の側面簡略図である。
【図6】図1の乗用型田植機の他の実施例の予備苗載せ台を上下四段に配置した場合(積層状態)の側面簡略図である。
【図7】図1の乗用型田植機の他の実施例の予備苗載せ台を上下四段に配置した場合(積層状態)の側面簡略図である。
【図8】図1の乗用型田植機の他の実施例の予備苗載せ台の積層状態を示す側面簡略図である。
【図9】図8の乗用型田植機の予備苗載せ台の展開状態を示す側面簡略図である。
【図10】図1の乗用型田植機の予備苗載せ台の作動制御ブロック図である。
【図11】図1の乗用型田植機の予備苗載せ台を上下三段に配置した場合(積層状態)の側面図である。
【図12】図11の一部拡大図(予備苗載せ台の積層状態の側面図(図12(a))と展開状態の側面図(図12(b))である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、図面に基づき、本発明の好ましい実施の形態について説明する。
図1及び図2は本発明の苗移植機の典型例である粉粒体繰出し装置として施肥装置を装着した乗用型田植機の側面図と平面図である。この施肥装置付き乗用型田植機1は、走行車体2の後側に昇降リンク装置3を介して苗植付部4が昇降可能に装着され、走行車体2の後部上側に施肥装置5の本体部分が設けられている。搭乗オペレータが乗用型田植機の前進方向に向かって左右方向をそれぞれ左、右といい、前進方向と後進方向をそれぞれ前、後という。
【0024】
走行車体2は、駆動輪である左右一対の前輪10,10及び左右一対の後輪11,11(走行装置)を備えた四輪駆動車両であって、機体の前部にミッションケース12が配置され、そのミッションケース12の左右側方に前輪ファイナルケース13,13が設けられ、該左右前輪ファイナルケース13,13の操向方向を変更可能な各々の前輪支持部から外向きに突出する左右前輪車軸に左右前輪10,10が各々取り付けられている。また、ミッションケース12の背面部にメインフレーム15の前端部が固着されており、そのメインフレーム15の後端左右中央部に前後水平に設けた後輪ローリング軸を支点にして後輪ギヤケース18,18がローリング自在に支持され、その後輪ギヤケース18,18から外向きに突出する後輪車軸に後輪11,11が取り付けられている。
【0025】
エンジン20はメインフレーム15の上に搭載されており、該エンジン20の回転動力が、ベルト伝動装置21及び油圧無段変速装置(HST)23を介してミッションケース12に伝達される。ミッションケース12に伝達された回転動力は、該ケース12内のトランスミッションにより変速された後、走行動力と外部取出動力に分離して取り出される。そして、走行動力は、一部が前輪ファイナルケース13,13に伝達されて前輪10,10を駆動すると共に、残りが後輪ギヤケース18,18に伝達されて後輪11,11を駆動する。また、外部取出動力は、走行車体2の後部に設けた植付クラッチケース25に伝達され、それから植付伝動軸26によって苗植付部4へ伝動されるとともに、施肥伝動機構28によって施肥装置5へ伝動される。
【0026】
エンジン20の上部はエンジンカバー30で覆われており、その上に座席31が設置されている。座席31の前方には各種操作機構を内蔵するフロントカバー32があり、その上方に前輪10,10を操向操作するハンドル34が設けられており、この領域を操縦部33とする。エンジンカバー30及びフロントカバー32の下端左右両側は水平状のフロアステップ35になっている。フロアステップ35は一部格子状になっており(図2参照)、該ステップ35を歩く作業者の靴についた泥が圃場に落下するようになっている。フロアステップ35上の後部は、後輪フェンダを兼ねるリヤステップ36となっている。
【0027】
昇降リンク装置3は平行リンク機構であって、1本の上リンク41aと左右一対の下リンク41b,41bを備えている。これらリンク41a,41b,41bは、その基部側がメインフレーム15の後端部に立設した背面視門形のリンクベースフレーム42に回動自在に取り付けられ、その先端側に縦リンク43が連結されている。そして、縦リンク43の下端部に苗植付部4に回転自在に支承された連結軸44が挿入連結され、連結軸44を中心として苗植付部4がローリング自在に連結されている。
【0028】
メインフレーム15に固着した支持部材(図示せず)と上リンク41aに一体形成したスイングアーム(図示せず)の先端部との間に昇降油圧式シリンダ46が設けられており、該シリンダ46を油圧で伸縮させることにより、上リンク41aが上下に回動し、苗植付部4がほぼ一定姿勢のまま昇降する。
苗植付部4は6条植の構成で、フレームを兼ねる伝動ケース50、マット苗を載せて左右往復動し苗を一株分ずつ各条の苗取出口51a,…に供給するとともに横一列分の苗を全て苗取出口51a,…に供給すると苗送りベルト51b,…により苗を下方に移送する苗載せ台51、苗取出口51a,…に供給された苗を圃場に植付ける苗植付装置52,…、次行程における機体進路を表土面に線引きする左右一対の線引きマーカ75(図1)等を備えている。
【0029】
苗植付部4の下部には中央にセンターフロート55、その左右両側にサイドフロート56,56がそれぞれ設けられている。これらフロート55,56,56を圃場の泥面に接地させた状態で機体を進行させると、フロート55,56,56が泥面を整地しつつ滑走し、その整地跡に苗植付装置52,…により苗が植え付けられる。各フロート55,56,56は圃場表土面の凹凸に応じて前端側が上下動するように回動自在に取り付けられており、植付作業時にはセンターフロート55の前部の上下動が迎角制御センサ(図示せず)予備苗載せ台38a,38b,38c(図示せず)を切り替えて苗植付部4を昇降させることにより、苗の植付深さを常に一定に維持する。
【0030】
施肥装置5は、肥料ホッパ60に貯留されている粒状の肥料を繰出部61,…によって一定量ずつ繰り出し、その肥料を施肥ホース62,…でフロート55,56,56の左右両側に取り付けた施肥ガイド(図示せず),…まで導き、施肥ガイド,…の前側に設けた作溝体76(図1),…によって苗植付条の側部近傍に形成される施肥構内に落とし込むようになっている。ブロア用電動モータ53で駆動するブロア58で発生させたエアが、左右方向に長いエアチャンバ59を経由して施肥ホース62,…に吹き込まれ、施肥ホース62,…内の肥料を風圧で強制的に搬送するようになっている。
【0031】
苗植付部4には整地装置の一例であるロータ27(第1ロータ27aと第2ロータ27bの組み合わせを単にロータ27ということがある)が取り付けられている。また、苗載せ台51は苗植付部4の全体を支持する左右方向と上下方向に幅一杯の矩形の支持枠体65(支持ローラ65aと両側辺部材65bを備える)の支持ローラ65aをレールとして左右方向にスライドする構成である。
また、走行車体2の前部左右両側には、補給用の苗を載せておく一対の予備苗載せ台38,38が機体の前後に張り出す位置と上下に並んだ位置とに回動可能に設けられている。
【0032】
図3の側面図に示すように、予備苗載せ台38は走行車体2のフロアステップ35の下部に基部側を配置した支持機枠49に支持され、リンクアーム39を介してそれぞれ上下三段に構成され、第1予備苗載せ台38a、第2予備苗載せ台38b及び第3予備苗載せ台38cからなっている。
これら第1予備苗載せ台38a、第2予備苗載せ台38b及び第3予備苗載せ台38cの側壁面には、一本のリンクアーム39に設けられた回動軸39a,39b,39cと回動自在に連結している。一本のリンクアーム39には予備苗載せ部材38a,38b,38cの一側面と前記回動軸39a,39b,39cはほぼ等間隔で連結しており、各回動軸39a,39b,39cには第1、第2及び第3回動アーム45a,45b,45cの一端部がそれぞれ回動自在に連結している。回動アーム45a,45b,45cの他端部は一本のリンクロッド(補助リンク部材)40にほぼ等間隔に回動自在に連結している。
【0033】
また、図3に示すように、リンクアーム39の支持機枠49の一側面に設けた単一の取付支点39xに対応した位置に基準回動アーム45xの一端を回動自在に取り付け、基準回動アーム45xの他端をリンクロッド40に回動自在に取り付ける。
従ってリンクアーム39とリンクロッド40は回動アーム45a,45b,45c,45xにより平行移動できるように取り付けられている。
【0034】
図3にはリンク機構Rが実線位置で予備苗載せ部材38a,38b,38cが積載状態にあり、点線位置で予備苗載せ部材38a,38b,38cが展開状態にある場合を示している。
こうして、リンク機構Rを一本のリンクアーム39とリンクロッド40を予備苗載せ部材38a,38b,38cのリンク機構Rという。また一本のリンクアーム39とリンクロッド40と回動アーム45a,45,45c,45xを予備苗載せ部材38a,38b,38cのリンク機構Rということがある。
【0035】
このようなリンク機構Rを用いる構成により、予備苗載せ台38a,38b,38cの側方を遮る面積を小さくすることができるので、予備苗載せ台38a,38b,38cに載置した苗が取り出しやすくなり、作業能率が向上する。
また、従来のリンク機構Rに比べて本発明のリンク機構Rの部品数が少なくなるため、簡潔な構成となる。
【0036】
また、リンクアーム39とリンクロッド40をほぼ平行姿勢とすることができ、さらに予備苗載せ台38a,38b,38cの一方の側面を遮る面積を小さくすることができるので、予備苗載せ台38a,38b,38cに載置した苗が取り出しやすくなり、作業能率が従来技術に比して向上する。
【0037】
リンクアーム39とリンクロッド40を、支持機枠49及び予備苗載せ台38a,38b,38cの取付支点39a,39b,39c,39xに設けた回動アーム45a,45b,45c,45xを介して連結したことにより、展開状態及び積層状態で予備苗載せ台38a,38b,38cが適切な姿勢に並ぶため、苗の積み込み作業や取り出し作業が容易になり、作業能率が従来技術に比して向上する。
【0038】
図3に示すリンクアーム39の取付支点39xを中心とする図3の紙面上で左周りの回動で積層状態の予備苗載せ台38a,38b,38cが展開状態になる間にはリンクアーム39が鉛直方向を向いた位置から約30度過ぎる当たりまで回るとリンクアーム39とリンクロッド40が側面視でほぼ重なる位置にあり、その後はリンクアーム39を追い抜いてリンクロッド40が先に水平位置に回動する。
【0039】
図4の予備苗載せ台38a,38b,38cの側面図に示すように、リンクロッド40を第1〜第9切替ギア(40a,40b,40c,40d,40e,40f,40g,40h,40i)からなるギア機構Gで構成し、ギア機構Gは、リンクアーム39の予備苗載せ台38a,38b,38cの一側面に設けた各取付支点39a,39b,39cにそれぞれ回動自在に取り付けた第1、第5、第9切替ギア40a,40e,40iとリンクアーム39の支持機枠49への取付支点39xに回動自在に取り付けた第7切替ギア40gと、前記第1切換ギア40a、第5切替ギア40eを順次伝動させるために前記第1切替ギア40aと第7切替ギア40gの間に順に噛合するように設けられた第2切替ギア40b、第3切替ギア40c、第4切替ギア40d、第5切替ギア40e、第6切替ギア40f、第8切替ギア40h及び第9切替ギア40iを伝動させるために第7切替ギア40gと第9切替ギア40iの間に噛合するように設けられた第8切替ギア40hから構成し、該第7切替ギア40gはリンクアーム39に回転自在に取り付ける構成とした。
【0040】
このため、リンクロッド40をギア機構Gとしたことにより、リンクアーム39とギア機構Gを常に同じ位相に位置するため、予備苗載せ台38a,38b,38cの側方が塞がれる面積が従来のリンクアームと2本の補助リンクアームを用いる構成より、より一層減少し、苗の取り出しが一層容易になり、作業能率が向上する。
また、前記切替ギア同士の歯の噛み合いにより予備苗載せ台38a,38b,38cの展開状態及び積層状態をそれぞれ維持することができるので、ストッパが不要となり、予備苗載せ台38a,38b,38cの構成が簡潔になる。
【0041】
図5に予備苗載せ台38a,38b,38cの側面図で示すように、最上段及び最前列に位置する予備苗載せ台38aの前後方向中央位置に支持機枠49を設け、該支持機枠49の上部に補助の苗載せ台38dを前後方向に回動自在に配置し、リンクアーム39の一側端部に取付凸部39yを形成し、該取付凸部39yの上端部と補助予備苗載せ台38dの後端部を連結ロッド84で回動自在に連結し、予備苗載せ台38a,38b,38cを積層状態から展開状態に切り替えると、補助予備苗載せ台38dの後部が連結ロッド84に引き下げられ、補助予備苗載せ台38dの前部が上方に移動する構成とする。
【0042】
上述のように予備苗載せ台38a,38b,38cの上部に補助予備苗載せ台38dを設けたことにより、苗の積載量が増えるため、苗の補充作業回数を減らすことができるので、作業能率が従来より向上する。
また、予備苗載せ台38a,38b,38cを展開状態として苗の補充作業を行うときに、補助予備苗載せ台38dの前部が自動的に上方に移動するので、補助予備苗載せ台38dが予備苗載せ台38a,38b,38cへの苗の積み込みを妨げることが防止され、作業能率が従来より向上する。
【0043】
図6に示すように、支持機枠49を予備苗載せ台38a,38b,38cよりも上方まで延長し、支持機枠49の上方延長部に補助予備苗載せ台38dの取付部49cを形成し、該取付部49cに補助予備苗載せ台38dを、その後端部を回動支点として装着し、補助予備苗載せ台38dと予備苗載せ台38a,38b,38cの上下間隔は、予備苗載せ台38a,38b,38c同士の上下間隔とほぼ同じとし、最上段かつ最前列に位置する予備苗載せ台38aの後部に持上げ支柱86を配置し、該持上げ支柱86の上端部に持上げローラ87を装着し、予備苗載せ台38a,38b,38cの展開状態と積載状態の切り替えの際に前記持上げローラ87が補助予備苗載せ台38dの下方に接触すると補助予備苗載せ台38dが上方回動する構成とした。
【0044】
こうして、予備苗載せ台38a,38b,38cの上部に補助予備苗載せ台38dを設けたことにより、苗の積載量が増えるため、苗の補充作業回数を減らすことができるので、作業能率が従来技術より向上する。また、予備苗載せ台38a,38b,38cの切替操作の際に持上げ回転体86が補助予備苗載せ台38dを上方に回動させることにより、リンク機構Rが回動する軌跡を確保することができるので、リンク機構Rと補助予備苗載せ台38dが接触することがなく、破損が防止される。
【0045】
また、予備苗載せ台38a,38b,38cと補助予備苗載せ台38dの上下間隔を抑えることができるので、苗が積み込みやすく、作業能率が向上する。
なお、リンク機構Rの回動軌跡を避けるには、補助予備苗載せ台38dの取付位置を大幅に上方とする構成を採用すると、補助予備苗載せ台38dに苗を積み込みにくくなる問題がある。
【0046】
図7に予備苗載せ台38a,38b,38cの側面図を示すように、支持機枠49の下部側に延長支持フレーム49dを配置し、リンク機構Rを設けた側の反対側に、積層状態での予備苗載せ台38a,38b,38cの上下長さよりも長い、前後一対の補助リンクアーム88a,88bを延長支持フレーム49dに前後回動自在に配置し、一対の補助リンクアーム88a,88bの上端部に補助予備苗載せ台38dを配置した構成を用いることもできる。
補助リンクアーム88a,88bの長さは、予備苗載せ台38a,38b,38cの切替操作の際にリンクアーム39が干渉せず、且つ前方に回動させると最前列の予備苗載せ台38aよりも前側に位置する長さとする。
【0047】
こうして、予備苗載せ台38a,38b,38cの上部に補助苗載せ台38dを設けたことにより、苗の積載量が増えるため、苗の補充作業回数を減らすことができるので、作業能率が向上する。
また、補助リンクアーム88a,88bが予備苗載せ台38a,38b,38cの上下長さよりも長いことにより、予備苗載せ台38a,38b,38cの積載状態と展開状態の切替操作の際に、リンク機構Rが回動する軌跡を確保することができるので、リンク機構Rと補助予備苗載せ台38dが接触することがなく、破損が防止される。
【0048】
図8には積載状態の第1予備苗載せ台38a、第2予備苗載せ台38b及び第3予備苗載せ台38cと、第1予備苗載せ台38aの中央部と第2予備苗載せ台38bの前端部には第1移動リンク部材39aの両端をそれぞれ回動自在に連結し、第1予備苗載せ台38aの後端部と第3予備苗載せ台38cの前端部には第2移動リンク部材39bの両端をそれぞれ回動自在に連結し、さらに第2予備苗載せ台38bの後端部と第3予備苗載せ台38cの中央部には第3移動リンク部材39cの両端を回動自在に連結した構成を示している。
【0049】
また支持機枠49には前後2つの分岐支柱49a,49bが設けられ、分岐支柱49a,49bの頂部は第2予備苗載せ台38bの下面近くまで達している。そして前側分岐支柱49aの頂部付近には第2移動リンク部材39bの中央部付近に設けられた回動軸39b3が設けられ、該回動軸39b3を中心として第2移動リンク部材39bが前側分岐支柱49aの周りを回動自在となっている。前記回動軸39b3はリンクロッド40の中央部の回動支点45b1より下側の第2移動リンク部材39bに設けられている。また後側分岐支柱49bの頂部付近には第3移動リンク部材39cの後端部付近に設けられた回動軸39c3が設けられ、該回動軸39c3を中心として第3移動リンク部材39cが後側分岐支柱49bの周りを回動自在となっている。前記回動軸39c3は回動軸39c1より下側の第3移動リンク部材39cに設けられている。
【0050】
このとき、第2予備苗載せ台38bは機体部材である前側分岐支持機枠49aと後側支持機枠49bに固定されておらず、第2移動リンク部材39bが図8に示す状態から回動支点39b3を中心に回動して図9に示す状態になる場合には、図8で示す状態では回動支点39b3が第2予備苗載せ台38bのリンクロッド40の中央部の回動軸45b1より下方にあるため、図8に示す位置より前寄りに第2予備苗載せ台38bが配置される。このとき、第3移動リンク部材39cも図8に示す状態から回動支点39c3を中心に回動して図9に示す状態になる場合には同様に第2予備苗載せ台38cも図8に示す位置より前寄りに配置される。
【0051】
したがって、第1予備苗載せ台38a、第2予備苗載せ台38b及び第3予備苗載せ台38cをほぼ同一平面上に展開形態とすると、広い苗箱などの載置平面を得ようとする場合にはこれら3つの予備苗載せ台38a,38b,38cが従来より前寄りに移動して、機体前側端部を圃場の外に突出させることができるので、例えば、畦際でトラックなどから苗を予備苗載せ台38a,38b,38c上に積載する作業が容易となる。
また、第2移動リンク部材39bの回動支点39b3をリンクロッド40の中央部の回動軸45b1と同軸上に設けても良い。この場合は、中央の第2予備苗載せ台38bが前後に移動しない。
【0052】
上述のように、第1,第2,第3移動リンク部材39a,39b,39cの作動(回動)により、第1,第2,第3予備苗載せ台38a,38b,38cが前後方向に並ぶ展開状態と各予備苗載せ台38a,38b,38cが上下方向に並ぶ積層状態とに切り替えられるが、この切り替えは、電動モータ71で駆動する切替駆動装置70によって行うことができる。切替駆動装置70には、電動モータ71の図示しない回転軸に取り付けられた駆動ギア71aと該駆動ギア71aに噛合する移動リンク部材39bの回動軸39b3と一体回転する円盤状、半円状または半月状の切替ギア70aが設けられている。
【0053】
該切替ギア70aは前側分岐支柱49aに設けられた移動リンク部材39bの回動軸39b3と同心円状に設けられ、該回動軸39b3と一体回転するので、電動モータ71の駆動で回動軸39b3が回動し、同時に該回動軸39b3と一体の第2移動リンク部材39bが回動することで、第1,第2,第3移動リンク部材39a,39b,39cが積層状態と展開状態に切り替えられる。
【0054】
図10に予備苗載せ台38a,38b,38cの作動制御ブロック図を示す。
切替駆動装置70により予備苗載せ台38a,38b,38cを展開状態と積層状態とに切り替え操作する切替操作手段として切替スイッチ73(ボタン、レバーでもよい)(図1,図2)を座席31近傍に設け、この切替スイッチ73の操作により展開状態または積層状態に予備苗載せ台38a,38b,38cで回動するときに、これら予備苗載せ台38a,38b,38cを停止させる停止プレート73a1,73a2を第3予備苗載せ台38bと第2予備苗載せ台38cの側面にそれぞれ設けた。停止プレート73a1は予備苗載せ台38a,38b,38cが展開状態になると第2移動リンク部材39bに当たり、電動モータ71に過負荷をかけて過度の電圧を生じさせる、または過熱させて作動を停止させる部材であり、停止プレート73a2は予備苗載せ台38a,38b,38cが積層状態になると、停止プレート73a2に第2移動リンク部材39bが当たり、電動モータ71に過負荷をかけて過度の電圧を生じさせる、または過熱させて作動を停止させる部材である。
【0055】
また、第2移動リンク部材39bに停止プレート73a1,73a2が接触し続けると負荷で電動モータ71が停止する構成であり、作業者は電動モータ71の停止操作を行わなくてもよいので、他の操作に集中することができ、作業能率が従来以上に向上する。
【0056】
また、予備苗載せ台38a,38b,38cが展開状態または積載状態になると、第2移動リンク部材39bが停止プレート73a1又は73a2に接触する構成となるので、機体の振動で第2移動リンク部材39bが動いて第1,第2,第3予備苗載せ台38a,38b,38cが前後に揺れることが防止され、苗の落下が防止されると共に、揺れによる第1,第2,第3予備苗載せ台38a,38b,38c及びその他の予備苗載せ用の構成部材の摩耗が軽減される。
さらに、第1,第2,第3予備苗載せ台38a,38b,38cを展開状態または積載状態になると電動モータ71を停止させるためのスイッチ等の構成部材及び回路を省略することができるので、部品点数が大幅に削減されると共に、構成が簡潔になる。
【0057】
従来のようなリミットスイッチを用いると、スイッチに移動リンク部材39b,39cが接触と同時に停止信号を送るケーブルや回路が必要なため、部品点数が多く、構造が複雑になっていた。しかも、展開状態で止めるリミットスイッチと積載状態で止めるリミットスイッチが必要であるため、さらに部品数が増え、構造が複雑になっていた。
これに比べ、本願発明では、電動モータ71内のバイメタル85(図10にのみ図示)が過電圧または過熱によって退避する(曲がる)と電動モータ71は自動停止するので、停止信号を伝動する経路が不要となる。そして電動モータ71を展開状態及び積載状態に操作するスイッチを設け、該スイッチと電動モータをケーブルで繋ぐだけでよいため、部品点数の減少、構造の簡略化が図られる。
【0058】
また、図9に示すように、第1,第2,第3予備苗載せ台38a,38b,38cが展開状態にあるときに、第1,第2,第3移動リンク部材39a,39b,39cの動きを停止させる停止プレート73a1を中央段の第2予備苗載せ台38bに配置すると共に、図8に示すように、第1,第2,第3予備苗載せ台38a,38b,38cの積載状態で第1,第2,第3移動リンク部材39a,39b,39cを停止させる停止プレート73a2を下段の第3予備苗載せ台38cに配置したことにより、前記展開状態または積載状態になる位置で第1,第2,第3移動リンク部材39a,39b,39cが接触する構成となるので、簡潔な構成とすることができる。
【0059】
そして、第1,第2,第3移動リンク部材39a,39b,39cが停止プレート73a1,73a2に接触して止まる構成となるので、機体の振動で第1,第2,第3移動リンク部材39a,39b,39cが動いて第1,第2,第3予備苗載せ台38a,38b,38cが前後に揺れることが防止され、苗の落下が防止されると共に、揺れによる第1,第2,第3予備苗載せ台38a,38b,38cとその周りの部材の摩耗が軽減される。
さらに、第1,第2,第3移動リンク部材39a,39b,39cと停止プレート73a1,73a2の接触により電動モータ71に負荷がかかりやすくなるので、電動モータ71の停止が速くなり、電力の消費量が軽減される。
【0060】
切換スイッチ73を「入」としたときには、苗移植機は苗を補給するための操作に入っているので苗移植機が走行用のエンジンを停止させることが省エネルギーとなるため、切換スイッチ73を「入」としたときは、自動的にエンジンを停止させる。そして苗の補給が完了すると第1,第2,第3予備苗載せ台38a,38b,38cを積載状態にすると、第2移動リンク部材39bの下端部が停止プレート73a2に当接して、電動モータ71が停止するので、このときエンジンを再スタートさせる構成にすると、省エネルギー化が図れる。
【0061】
図11に第1予備苗載せ台38a,第2予備苗載せ台38b,第3予備苗載せ台38cの側面図を示すように、一方の機体側面にある第1予備苗載せ台38a,第2予備苗載せ台38b,第3予備苗載せ台38cを上下三段に配置した場合に、この第1予備苗載せ台38a、第2予備苗載せ台38b及び第3予備苗載せ台38cの底面にはそれぞれ一体的に平面視コ字状の第1支持枠体37a、第2支持枠体37b及び第3支持枠体37cが取り付けられ、第1支持枠体37aの中央部と第2支持枠体37bの前端部には第1移動リンク部材39aの両端の回動軸39a1,39a2がそれぞれ回動自在に連結し、第1支持枠体37aの後端部と第3支持枠体37cの前端部には第2移動リンク部材39bの両端の回動軸39b1,39b2がそれぞれ回動自在に連結し、さらに第2支持枠体37bの後端部と第3支持枠体37cの中央部には第3移動リンク部材39cの両端の回動軸39c1,39c2とが回動自在に連結した構成を採用してもよい。
【0062】
この構成で、回動軸39a2,39b1,39b2,39c1の外周部は、支持枠体37a,37b,37cに溶接して取り付けられている。そして、支持枠体37a,37b,37cに溶着された回動軸39a2,39b1,39b2,39c1の挿入部(図示せず)に、移動リンク部材39a,39b,39cの支持片(図示せず)を挿し込んで装着する。
【0063】
また、第2移動リンク部材39bのほぼ中央部と第2支持枠体37bのほぼ中央部には回動支点37b1が設けられ、互いに回動自在となっている。
さらに支持機枠49には前後2つの分岐支柱49a,49bが設けられ、分岐支柱49a,49bの頂部は第2支持枠体37bの下面近くまで達している。そして前側分岐支柱49aの頂部付近には第2移動リンク部材39bの中央部付近に回動軸39b3が設けられ、該回動軸39b3を中心として第2移動リンク部材39bが前側分岐支柱49aの周りを回動自在となっている。前記回動軸39b3は回動支点37b1より下側の第2移動リンク部材39bに設けられている。また後側分岐支柱49bの頂部付近には第3移動リンク部材39cの後端部付近に回動軸39c3が設けられ、該回動軸39c3を中心として第3移動リンク部材39bが後側分岐支柱49bの周りを回動自在となっている。前記回動軸39c3は回動軸39c1より下側の第3移動リンク部材39cに設けられている。
【0064】
そして、第1,第2,第3移動リンク部材39a,39b,39cの作動(回動)により、第1,第2,第3予備苗載せ台38a,38b,38cが前後方向に並ぶ展開状態と各予備苗載せ台38a,38b,38cが上下方向に並ぶ積層状態とに切り替えられるが、この切り替えは、電動モータ71で駆動する切替駆動装置70によって行うことができる。切替駆動装置70には、電動モータ71の図示しない回転軸に取り付けられた駆動ギア71aと該駆動ギア71aに噛合する移動リンク部材39bの回動軸39b3と一体回転する円盤状、半円状または半月状の切替ギア70aが設けられている。
【0065】
該切替ギア70aは前側分岐支柱49aに設けられた移動リンク部材39bの回動軸39b3と同心円状に設けられ、該回動軸39b3と一体回転するので、電動モータ71の駆動で回動軸39b3が回動し、同時に該回動軸39b3と一体の第2移動リンク部材39bが回動することで、第1,第2,第3移動リンク部材39a,39b,39cが積層状態と展開状態に切り替えられる。
【0066】
切替駆動装置70により予備苗載せ台38a,38b,38cを展開状態と積層状態とに切替操作は切替スイッチ73(図1,図2,図10)で行うが、この切替スイッチ73の操作により展開状態または積層状態に予備苗載せ台38a,38b,38cを回動するときに、これら予備苗載せ台38a,38b,38cを停止させる停止プレート73a1,73a2を第3予備苗載せ台38bと第2予備苗載せ台38cの側面にそれぞれ設けた。予備苗載せ台38a,38b,38cが積層状態になると、停止プレート73a1に第2移動リンク部材39bが当たり、電動モータ71に過負荷をかけて過度の電圧を生じさせる、または過熱させて作動を停止させる部材であり、停止プレート73a1は予備苗載せ台38a,38b,38cが展開状態になると第2移動リンク部材39bに当たり、電動モータ71に過負荷をかけて過度の電圧を生じさせる、または過熱させて作動を停止させる部材である。
【0067】
上記図11に示す構成において、図12に第1予備苗載せ台38aの後端部の拡大側面図を示すように、第1移動リンク部材39aと第2移動リンク部材39bの後端部の上部側に横方向に伸びたピン39ba1を有する突起部39baを固着しておき、該突起部39baのピン39ba1が係止される長穴38aa1を有する取付片38aaを第1予備苗載せ台38aと第2予備苗載せ台38bの後端部の上部に取り付けている。
【0068】
従って、図12(a)の予備苗載せ台38a,38b,38cが積層状態にあるときには、第1予備苗載せ台38aの後端部が、第2移動リンク部材39bの突起部39baにあるピン39ba1により第1支持枠体37aの平面より上向きに動かされて前下がりに傾斜するが、図12(b)に示す展開状態にあるときには前記ピン39ba1により第1支持枠体37aの平面より下向きに第1予備苗載せ台38aの後端部が動かされ、第1予備苗載せ台38aは前上がりに傾斜する。
前記展開状態にあるときには第2予備苗載せ台38bの後端部も同様に動かされて前上がりに傾斜する。
【0069】
こうして予備苗載せ台38a,38b,38cが展開状態にあるときには、予備苗載せ台38a,38b,38cが同一平面にならないため、積載状態のときに予備苗載せ台38a,38b,38cが前上がり傾斜することを防止する部材を設けることなく、また、展開状態では予備苗載せ台38a,38b,38cを前上がり傾斜させることができるので、設計が容易で、製造コストも比較的少なくて済む。
【0070】
苗植付部4のロータ27の圃場に対する高さを調整するロータ高さ調節レバー(図示せず)を操縦部33に設けているが、該レバーの基部にレバーの回動の程度を検出するポテンショメータ(図示せず)を装着していると、該ポテンショメータの検出値に応じてHSTがサーボモータによりトラニオン軸(図示せず)の回動角度を調節する構成である場合には、容易に車速を補正することができる。
これはロータ27の高さが低いと表土を激しく掻き回すおそれがあるので、その場合には自動で減速できるようにした。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明の苗移植機は、田植機に限らず、野菜苗などのその他の苗を植え付ける苗移植機として利用可能性がある。
【符号の説明】
【0072】
1 施肥装置付き乗用型田植機 2 走行車体
3 昇降リンク装置 4 苗植付部
5 粉粒体繰出し装置(施肥装置)
10 前輪 11 後輪
12 ミッションケース 13 前輪ファイナルケース
15 メインフレーム 18 後輪ギヤケース
20 エンジン 21 ベルト伝動装置
23 油圧無段変速装置(HST)
25 植付クラッチケース 26 植付伝動軸
27(27a,27b) ロータ
28 施肥伝動機構 30 エンジンカバー
31 座席 32 フロントカバー
33 操縦部 34 ハンドル
35 フロアステップ 36 リヤステップ
37a,37b,37c 第1〜第3支持枠体
37b1 回動軸
38a,38b,38c 第1〜第3予備苗載せ台
38d 補助予備苗載せ台
38dx 補助予備苗載せ台後端部
38aa 取付片 38aa1 長穴
39 リンクアーム
39a,39b,39c,39x 取付支点
39a1,39a2,39b1,39b2,39b3,39c2,39c3 回動軸
39ba 突起部 39ba1 ピン
39y リンクアーム取付凸部
40 リンクロッド
40a〜40i 第1〜第9切替ギア
41a 上リンク 41b 下リンク
42 リンクベースフレーム 43 縦リンク
44 連結軸
45a,45b,45c,45x 回動アーム
45b1 回動軸 45x1 取付支点
46 昇降油圧式シリンダ
49(49a,49b) 支持機枠
49c 支持機枠取付部
49d 延長支持フレーム
49x 取付支点 50 伝動ケース
51 苗載せ台 51a 苗取出口
51b 苗送りベルト 52 苗植付装置
53 ブロア用電動モータ 55 センターフロート
56 サイドフロート 58 ブロア
59 エアチャンバ 60 肥料ホッパ
61 繰出部 62 施肥ホース
65 支持枠体 65a 支持ローラ
65b 両側辺部材 70 切替駆動装置
70a 切替回動ギア 71 電動モータ
71a 電動モータ駆動ギア 73 切替スイッチ
73a1,73a2 停止プレート
75 線引きマーカ 76 作溝体
83 支柱 84 連結ロッド
85 バイメタル 86 持上げ支柱
87 持上げローラ
88a,88b 補助リンクアーム
100 制御装置 G ギア機構
R リンク機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行車体(2)の後側に圃場に苗を植え付ける植付部(4)を設け、
走行車体(2)に設けた支持機枠(49)に苗箱を載置する複数の予備苗載せ部材(38a,38b,38c)と前記複数の予備苗載せ部材(38a,38b,38c)を回動自在に連結するリンク機構(R)を設け、
該リンク機構(R)は、複数の予備苗載せ部材(38a,38b,38c)の一側に回動自在に取り付けられた一本のリンクアーム(39)と、前記一本のリンクアーム(39)の回動により複数の予備苗載せ部材(38a,38b,38c)が前後方向に並ぶ展開状態と複数の予備苗載せ部材(38a,38b,38c)が上下方向に並ぶ積層状態に切り替えときに予備苗載せ部材(38a,38b,38c)の位置をそれぞれ揃える一本の補助リンク部材(40)を有する構成する
ことを特徴とする苗移植機。
【請求項2】
補助リンク部材(40)をリンクアーム(39)とほぼ同じ長さとし、
前記リンクアーム(39)の複数の予備苗載せ部材(38a,38b,38c)の一側面に設けた各取付支点(39a,39b,39c)にそれぞれに対応した位置に複数の回動アーム(45a,45b,45c)の一側をそれぞれ回動自在に取り付け、
リンクアーム(39)の支持機枠(49)の一側面に設けた単一の取付支点(39x)に対応した位置に基準回動アーム(45x)の一側を回動自在に取り付け、
さらに補助リンク部材(40)に前記複数の回動アーム(45a,45b,45c,45x)の他端を回動自在に取り付けた
ことを特徴とする請求項1記載の苗移植機。
【請求項3】
補助リンク部材(40)を順次隣接するギア同士が噛合する第1〜第9の切替ギア(40a,40b,40c,40d,40e,40f,40g,40h,40i)からなるギア機構(G)で構成し、
ギア機構(G)は、リンクアーム(39)の予備苗載せ部材(38a,38b,38c)の一側面に設けた取付支点(39a,39b,39c)にそれぞれ回動自在に取り付けた第1、第5、第9切替ギア(40a,40e,40i)とリンクアーム(39)の支持枠体(49)への取付支点(39x)に回動自在に取り付けた第7切替ギア(40g)と、前記第1、第5切替ギア(40a,40e)を順次伝動させるために前記第1切替ギア(40a)と第7切替ギア(40g)の間に順に噛合するように設けられた第2、第3、第4、第5、第6、第8切替ギア(40b,40c,40d,40e,40f,40h)と、第9切替ギア(40i)を伝動させるために第7切替ギア(40g)と第9切替ギア(40i)の間に噛合するように設けられた第8切替ギア(40h)から構成し、
該第7切替ギア(40g)はリンクアーム(39)に回転自在に取り付ける構成とした
ことを特徴とする請求項1記載の苗移植機。
【請求項4】
積載状態で最上段に位置し、展開状態で最前列に位置する予備苗載せ部材(38a)の前後方向中央位置に支柱(83)を設け、
該支柱(83)の上部に補助予備苗載せ部材(補助予備苗載せ台)(38d)を前後方向に回動自在に配置し、
リンクアーム(39)の一側端部に取付凸部(39y)を形成し、
該取付凸部(39y)の上端部と補助予備苗載せ台(38d)の後端部を回動自在に連結ロッド(84)で連結し、
予備苗載せ部材(38a,38b,38c)を積層状態から展開状態に切り替えると、補助予備苗載せ台(38d)の後部が連結ロッド(84)に引き下げられ、補助苗載せ台(38d)の前部が上方に移動する構成とした
ことを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載の苗移植機。
【請求項5】
支持枠体(49)を予備苗載せ部材(38a,38b,38c)よりも上方まで延長し、支持枠体(49)の上方延長部に設けた取付部(49c)を介して補助予備苗載せ部材(38d)を取り付け、
前記取付部(49c)に補助予備苗載せ部材(38d)の後端部(38dx)を回動支点として装着し、
積載状態において、補助予備苗載せ部材(38d)と最上段にある他の予備苗載せ部材(38a)の上下間隔は、他の予備苗載せ部材(38a,38b,38c)同士の上下間隔とほぼ同じとし、
積載状態で最上段に位置し、展開状態で最前列に位置する予備苗載せ部材(38a)の後部に持上げ支柱(86)を配置し、
該持上げ支柱(86)の上端部に持上げ回転体(ローラ)(87)を装着し、
予備苗載せ部材(38a,38b,38c)の展開状態と積載状態の切り替えの際に前記持上げ回転体(87)が補助予備苗載せ部材(38d)の下方に接触すると補助予備苗載せ部材(38d)が上方回動する構成とした
ことを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載の苗移植機。
【請求項6】
支持枠体(49)の下部側に延長支持部材(49d)を配置し、
リンク機構(R)を設けた側の反対側に、積層状態での予備苗載せ部材(38a,38b,38c)の上下長さよりも長い、前後一対の補助リンクアーム(88a,88b)を前記延長支持部材(49d)に前後回動自在に配置し、
一対の補助リンクアーム(88a,88b)の上端部に補助苗載せ台(38d)を配置した
ことを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載の苗移植機。
【請求項7】
予備苗載せ部材(38a,38b,38c)を切り替える切替装置(70)と、
切替装置(70)を作動させる切替操作部材(切替スイッチ)(73)と、
切替装置(70)を回動部材(切替回動ギア)(70a)と、
切替電動モータ(71)と、
切替電動モータ(71)により回転して回動部材(70a)を回動させると共に回動部材(70a)が回動不能になると切替電動モータ(71)を停止させる駆動切替機構(ストッパもしくはリミットスイッチ)(73a1,73a2)と、
回動部材(切替回動ギア)(70a)を予備苗載せ部材(38a,38b,38c)のリンクアーム(39b)の回動支点(39b3)に装着する構成とした
ことを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載の苗移植機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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