若年性ヘモクロマトーシス遺伝子(HFE2A)、その発現産物および使用法
HFE2Aのポリヌクレオチドおよびポリペプチド、および若年性ヘモクロマトーシスに関連する突然変異、および有機小分子を含む鉄代謝の疾患の処置のための物質のスクリーニングおよび同定についてこれらを利用する方法は、鉄代謝の疾患の処置およびまたは改善の方法と共に開示される。特にヒト患者におけるものが開示される。HFE2Aを用いた診断用化合物、キットおよび方法もまた開示される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
1.本出願は2003年4月15日に出願された合衆国仮出願60/462867号、2003年7月18日に出願された合衆国仮出願60/488607号および2003年8月28日に出願された合衆国仮出願60/498458号の優先権を主張し、その開示は全体で引用例としてここに組み込まれている。
【0002】
本発明は、概して鉄代謝疾患、特に若年性ヘモクロマトーシス(血色素症)の分野、それらに関連する遺伝子に関し、また鉄代謝疾患の治療法を含む、治療に有用な物質のスクリーニングおよび同定に対してのこの遺伝子およびその発現産物の使用法に関する。
【背景技術】
【0003】
少なくとも4つのヘモクロマトーシスと呼ばれる鉄過剰疾患が、臨床的特徴、生化学的特徴および遺伝的特徴に基づいて分類されている。ヘモクロマトーシス1型は標準的なヘモクロマトーシスであり(ときに“HFE”と示される)(OMIM Number:235200;Online Mendelian Inheritance in Man,OMIMTM. Johns Hopkins University,Baltimore,MD,at www.ncbi.nlm.nih.gov/omim/参照)、常染色体劣性疾患であって、染色体6p21.3上のHFEを指定する遺伝子における突然変異により引き起こされる。若年性ヘモクロマトーシスと呼ばれる内科的疾患(ときに“JH”あるいは“若年性ヘモクロマトーシス”と呼ばれる)もまた、ヘモクロマトーシス2型(“HFE2”)として知られている。ヘモクロマトーシス3型(HFE3;OMIM604250)は、常染色体劣性疾患であり、7q22に位置するトランスフェリン受容体(レセプター)2(TFR2;OMIM604720)をエンコードする遺伝子における突然変異により引き起こされる。ヘモクロマトーシス4型(HFE4;OMIM606069)は、常染色体優性疾患であり、Ferroportinをエンコードし、2q32に位置するSLC11A3遺伝子(OMIM604653)における突然変異により引き起こされる。
【0004】
いくつかのファミリーにおいては、若年性ヘモクロマトーシスは染色体1q21との関連を示すが、一方他のファミリーにおいては、染色体19q13に位置するヘプシジン抗微生物ペプチドをエンコードする遺伝子における突然変異により引き起こされる。若年性ヘモクロマトーシス(HFE2)の2つのフォームが仮にそれぞれHFE2AおよびHFE2Bと示される。本発明は、染色体1q21と関連するJHのフォームであるHFE2Aの遺伝的性質に関する。
【0005】
若年性ヘモクロマトーシス(JH)は、標準的な遺伝的ヘモクロマトーシスとは異なる。HFEは男性(雄)に発現する傾向があるが、一方JHは両方の性に等しく影響を与える。JHは鉄蓄積を含み、若年期に発現し、通常30歳前に臨床症状を引き起こす。JHは標準的な遺伝的ヘモクロマトーシスよりもより深刻な疾患であり、JHは頻繁に低ゴナドトロピン性性機能低下症、心不全、不整脈およびまたは心筋ミオパチーの徴候を示す。未治療の場合には、疾患は、心合併症および他の合併症のために致命的である。
【0006】
HFE2Aの染色体位置としての1q21の同定は、Roetto et al.,Am.J.Hum.Genet.64:1388−1393(1999)にて最初に報告されたが、この遺伝子座は、鉄代謝に関連する任意の既知の遺伝子の染色体位置とは一致しなかった。
【0007】
本発明は、HFE2Aについての遺伝的性質の同定を提供し、それにより鉄代謝の疾患を処置するためのより強力な物質の開発を容易にする。HFE2A遺伝子あるいはそのタンパク質の投与は、治療的なものとなり得る。また、内在する遺伝的突然変異は、鉄代謝の疾患を処置するための新規治療標的を同定する。この治療標的は、より効果的な治療物質の同定および発見に用いることができる。HFE2Aを用いた診断用化合物、キットおよび方法もまた、JHの診断のために、また成人ヘモクロマトーシスの発現および重症度の診断および予測のために、また鉄代謝疾患のタイプの区別のために用いることができるであろう。
【発明の開示】
【0008】
(発明の簡単な要約)
本発明は、若年性ヘモクロマトーシス(ヘモクロマトーシス2A型あるいはHFE2A)が、配列番号1から9に提示されるヌクレオチド配列およびまたは配列番号10から12に提示される対応するアミノ酸配列を持つ1q22に見られるヒト遺伝子における突然変異により引き起こされることの発見に関する。遺伝子とタンパク質は、ここでHFE2Aおよびまたヘモジュヴェリン(hemojuvelin)と称され、これらの用語は文脈上他の意味に解すべき場合を除き、遺伝子、遺伝子産物およびそれらから発現したタンパク質を示す。遺伝子はまたHFE2と名づけられ、これは1q21の位置の遺伝子により引き起こされるJHフォームを意味する。この命名法はここでの発明に不可欠なものではない。
【0009】
一態様において、本発明はヘモジュヴェリンを調節する物質を同定するための方法に関し、前記方法は、試験化合物をヘモジュヴェリンと接触させ、化合物によるヘモジュヴェリン活性における変化を測定し、それにより所望の型の調節因子を同定することを含む。調節因子は、遺伝子あるいはタンパク質の活性を変換する薬剤様小分子、抗体、アンチセンス核酸、リボザイムあるいは他の化合物であり得る。
【0010】
一態様において、本発明はHFE2A遺伝子発現を調節する物質を同定するための方法に関し、前記方法は、HFE2A遺伝子の発現を促進する条件下(すなわち、ポリヌクレオチドが発現する条件)で試験化合物を、HFE2A遺伝子を含むポリヌクレオチドと接触させ、試験化合物の存在による発現の変化を測定することを含む。これは、試験化合物を調節因子として同定する。好ましい実施例において、この発現の変化は遺伝子の転写の変化として検出され、好ましくはここで遺伝子は哺乳類遺伝子であり、最も好ましくはここで遺伝子は細胞によって発現される。
【0011】
他の態様において、本発明はHFE2A遺伝子発現を調節する物質を同定するための方法に関し、前記方法は試験化合物を、プロモーター配列と動作可能に連結するレポーター遺伝子と接触させ、試験化合物によるレポーター遺伝子の発現の変化を測定し、構成体の調節因子を同定することを含む。これは、好ましくはHFE2Aプロモーター、最も好ましくはマウス、ラットあるいはヒトHFE2Aプロモーター等の哺乳類HFE2Aに動作可能に連結する前記レポーター遺伝子の転写の調節である。
【0012】
さらなる態様において、本発明は動物の疾患を処置およびまたは予防するための方法に関し、前記方法は、疾患に苦しむ動物あるいは前記疾患の発症の恐れのある動物に、治療上効果的な量のHFE2A調節因子を投与することを含む。好ましい実施例において、HFE2A調節因子は本発明の方法において調節活性を示し、最も好ましくはここで前記物質は、前記方法を用いて最初にHFE2A調節因子として同定され、そうでなければ前記活性を持つことが知られなかったものである。
【0013】
またさらなる態様において、本発明は、HFE2Aあるいは関連疾患に苦しむ個体あるいは発現する恐れのある個体を診断する方法に関し、前記方法は前記個体のHFE2A遺伝子の核酸配列を測定することを含み、ここで前記遺伝子の突然変異あるいは多型は、前記個体をHFE2Aあるいは関連疾患に苦しむ個体あるいは発現する恐れのある個体として識別する。
【0014】
本発明はまた、HFE2A活性を調節することができる化合物を同定するための方法を意図し、前記方法は(a)HFE2Aを発現する細胞を試験化合物と接触させ、(b)試験化合物の、HFE2A核酸の転写あるいはHFE2Aポリペプチドの活性を調節する能力を測定することを含み、それによりHFE2A活性を調節することができる化合物を同定する。前記方法の好ましい実施例において、化合物は抗HFE2Aポリペプチド抗体、リボザイムあるいはアンチセンスHFE2A核酸分子である。その一つの好ましい実施例において、化合物はHFE2Aリボザイムである。
【0015】
本発明はまた、ここに開示された遺伝子の単離されたポリヌクレオチドあるいは単離されたポリペプチドを包含する。
【0016】
(図面の簡単な説明)
図1は、LOC148738遺伝子構造の図である。LOC148738遺伝子は4つのエキソンと5つの転写産物を持つ。5つの転写産物は200AA、313AAおよび426AAの3つのタンパク質をコードする。エキソン2は、アンサンブル(Ensembl)により、cDNA配列AK098165.1から予測された。エキソン2へのアクセプター部位は、ゲノム配列から推測される。エキソン3aおよび3bは、同一のアクセプター部位を持つが、異なるドナー部位を持つ。非翻訳配列は白色で翻訳配列は黒色である。転写産物は長いものから短いものの順で記載されている。
【0017】
図2は、ヒト、マウスおよびラットのHFE2Aのプロモーター配列のアラインメント(配列構造)である。ヒト配列の転写開始位置は、このアラインメントの1514の位置から始まり、エキソン1は1676の位置で終了する。3つの反復配列がヒト配列内に存在する。(TAGA)nが58から129の位置であり、alu反復配列が324から603の位置であり、(GGAA)nが604から702の位置である。これらの配列はげっ歯動物配列には存在せず、遺伝子のプロモーター境界線を規定していると思われる。種間の配列相同性は、このアラインメントの844の位置の5′、転写開始の約670bpだけ5′側の位置で失われる。推定転写開始位置(TATA)は、ヒトの転写開始位置の27から24bpだけ5′側の位置で、3つの種全てにおいて保存されている。
【0018】
図3は、ヒトLOC148738426aa遺伝子産物(タンパク質3)およびヒトパラログ(重複)のタンパク質配列アラインメントを示す;染色体15上のヒト反発誘導分子(Repulsive Guidance Molecule)(ヒトRGM)(NCBI:NP_064596.1)および染色体5上で同定されたENSESTP00000023393(アンサンブル)−ヒトパラログの比較。
【0019】
図4は、ClustalXを用いたLOC148738配列の配列アラインメントを示す。ヒト(タンパク質3)、マウス(アンサンブル:ENSMUSESTP00000016634)、ラット(NCBI:AK098165.1から翻訳された、しかしながら、ヒト配列として注釈が付けられ、ラットゲノム配列と99.9%同一であり、ヒトゲノム配列と86.6%だけ同一である)、およびフグ(アンサンブル:SINFRUP00000138308)。
【0020】
図5は、ヒトLOC148738遺伝子産物とニワトリ反発誘導分子(RGM)のタンパク質配列アラインメントを示す。ヒト(タンパク質3)、ニワトリ_RGM(NCBI:AY128507.1の翻訳)、A=シグナルペプチド、B=RGD、C=N−グリコシル化位置、D=不完全フォン ヴィレブランド タイプDドメイン、E=GPI修飾、矢印=可能性のある切断部位。
【0021】
図6Aは、複数種のホモログ間の高度の類似性の概要を示す。
【0022】
図6Bは、異なる種におけるHFE2Aに類似する遺伝子間の高度の類似性を示す。
【0023】
図7(a)−LOC148738の426aa翻訳オープンリーディングフレーム(読み取り枠)の構造的特徴。RGD−細胞結合トリアミノ酸モチーフ、vWF−不完全フォン ヴィレブランド因子タイプDドメイン、TM−膜貫通ドメイン。矢印は、172と173の位置の間の可能性のあるタンパク質分解部位、335と336の位置の間のフューリン切断部位、および400の位置の予測されたGPI修飾部位を示す。図7(b)は、SignalP(Henrik Nielsen et al. Protein Engineering,10,1−6(1997))を用いたHFE2Aの426aa翻訳におけるシグナルペプチド切断部位の予測を示す。ペプチド切断部位は、S35とQ36の間にあると予測される。図7(c)は、TMHMMを用いたHFE2Aの426aa翻訳における膜貫通領域の予測を示す。膜貫通領域は403から425残基である。図7(d)は、NCBI保存ドメインサーチを用いた不完全フォン ヴィレブランド タイプDドメインの同定(57%)を示す(LOC148738=HFE2A)。図7(e)は、ニワトリ反発誘導分子(RGM)との配列比較により同定された172Dおよび173P残基間の可能性のあるタンパク質分解切断部位(矢印)を示す。
【0024】
図8は、LOC148738の転写産物4(タンパク質3)から翻訳された426aaオープンリーディングフレームの核酸およびアミノ酸配列を示す。このタンパク質は、予測されたアンサンブル転写産物ENST00000306561からのアンサンブルタンパク質ENSP00000304614と同一である。ボックス、開始コドン;三角形、潜在的なシグナルペプチド切断部位;ドット、RGD部位;十字形、予測されたO−グリコシル化部位(NetOGlyc2.0 予測);ひし形、予測されたN−グリコシル化部位(NetNGlyc1.0 予測);矢印、ニワトリRGMとの比較からの推定切断部位;2つの矢印、フューリン切断部位;四角形、予測されたGPIアンカー修飾部位;アスタリスク、終止コドン。
【0025】
図9(a)から(e)は、若年性ヘモクロマトーシスを引き起こす遺伝的突然変異を同定するために用いた家系図を示す。
【0026】
(発明の詳細な説明)
本発明は、ヘモジュヴェリンあるいはHFE2Aと称される鉄代謝の疾患に関連する遺伝子およびその対応するタンパク質を提供する。ヘモジュヴェリンおよびHFE2Aは、文脈上他の意味に解すべき場合を除き、遺伝子、遺伝子産物およびそれらから発現したタンパク質の両方を示す。
【0027】
本発明にしたがって、ヒトHFE2A遺伝子が開示される。この遺伝子は、突然変異を起こした場合、若年性ヘモクロマトーシス(ヘモクロマトーシス2A型)をもたらす。この遺伝子はまたHFE2Aと名づけられ、これは1q21の位置の遺伝子により引き起こされるJHフォームを意味する。遺伝子産物/タンパク質もまた、ときに“ヘモジュヴェリン”と呼ばれる。この命名法はここでの発明に不可欠なものではない。
【0028】
一態様において本発明は、HFE2Aを包含する、あるいはHFE2Aに対応するゲノム配列、mRNAあるいはcDNA、多型、対立遺伝子、アイソフォーム(成熟、新生児、その他)およびそれらの突然変異型、またベクター、プラスミドを含む遺伝子の核酸構成体、組換え細胞、トランスジェニック生物(あるいはそれらのノックアウト)を含む、HFE2Aの核酸配列に関する。前記核酸配列は、配列番号1から9および13から22に規定される。
【0029】
他の態様において本発明は、ポリペプチド、タンパク質、アミノ酸配列、多型、対立型、アイソフォーム(成熟、新生児、その他)、それらの突然変異型、HFE2AのmRNAあるいは他の転写産物、組換え細胞およびトランスジェニック生物を含む、ここでときにヘモジュヴェリンあるいはHFE2Aポリペプチドと呼ばれるHFE2Aの遺伝子産物に関する。ここで、このポリペプチドあるいはこれらに対応するポリペプチドは発現する。前記アミノ酸配列は、配列番号10から12および23から28に規定される。
【0030】
本発明の一態様において、HFE2Aはスクリーニング分析に組み込まれ、そこで化合物(潜在的な治療物質)がHFE2A遺伝子発現活性を調節するかどうか測定するために試験され、それにより潜在的な治療物質を同定する。
【0031】
前記にしたがって、本発明はHFE2A遺伝子発現を調節する物質を同定するための方法に関し、前記方法は、
a)試験化合物を、HFE2A遺伝子を発現する細胞と接触させ、
b)前記接触の結果としての前記HFE2A遺伝子の発現の変化を測定することを含み、
ここで、発現の変化が前記試験化合物を、HFE2A遺伝子発現を調節する物質として同定する。
【0032】
好ましい実施例において、この発現の変化は、前記遺伝子の転写における変化を検出することにより検出され、例えばここで転写における変化は、転写の減少あるいは増加である。他の好ましい実施例において、HFE2A遺伝子は哺乳類HFE2A遺伝子であり、最も好ましくはここで哺乳類はマウス、ラットあるいはヒトである。
【0033】
他の好ましい実施例において、その調節が測定される遺伝子は、哺乳類細胞、好ましくは組換え細胞中に存在し、ここで細胞は、マクロファージ、炎症細胞、肝臓細胞、肝細胞、腸細胞、造血性細胞、膵臓細胞、骨格筋細胞あるいは神経系の細胞であることを含む。
【0034】
他の態様において、本発明はHFE2Aポリペプチドの活性を調節する物質を同定するための方法に関し、前記方法は、
a)試験化動物を、HFE2Aポリペプチドの活性を支持する条件下で、HFE2Aポリペプチドと接触させ、
b)前記接触の結果としての前記ポリペプチドの前記活性の変化を測定することを含み、
ここで活性の変化が、前記試験化合物を、HFE2Aポリペプチドの活性を調節する物質として同定する。
【0035】
前記方法の好ましい実施例において、HFE2Aエンコードポリペプチドは哺乳類HFE2Aポリペプチドであり、最も好ましくはマウス、ラットあるいはヒト由来のものである。
【0036】
他の好ましい実施例において、前記調節は前記生物学的活性の減少あるいは増加である。非常に有用な実施例において、ポリペプチドは、細胞、好ましくは哺乳類細胞、最も好ましくは組換え細胞中にあるか、あるいはその一部であり、ここで細胞はマクロファージ、炎症細胞、肝臓細胞、肝細胞、腸細胞、造血性細胞、膵臓細胞、骨格筋細胞あるいは神経系の細胞であることを含む。他の好ましい実施例において、細胞は例えば遺伝子操作により、前記ポリペプチドを包含するように処理されたものであり、特にここで前記細胞は、前記操作がなければ前記ポリペプチドを発現しないものである。
【0037】
さらなる好ましい実施例において、ポリペプチドは、配列番号1、2、3、4、5、6、7、8および9より成るグループから選択された配列を持つポリヌクレオチドによりエンコードされ、最も好ましくはここで、前記ポリペプチドは配列番号10、11および12の配列から選択されたアミノ酸配列を含む。
【0038】
本発明はまた、ポリヌクレオチドの組換え型を含む、配列番号1、2、3、4、5、6、7、8および9の前記ポリヌクレオチドの一つあるいはそれ以上を含む細胞系(セルライン)に関し、また配列番号10、11および12のポリペプチド、好ましくはポリペプチドの組換え型の一つあるいはそれ以上を含む細胞系に関する。他の実施例において、本発明はヘモジュヴェリンの発現あるいは活性を調節する組成物を同定するための方法における前記細胞系の使用に関する。
【0039】
さらなる態様において、本発明は動物の疾患を処置およびまたは予防するための方法に関し、前記方法は、疾患に苦しむ動物あるいは前記疾患の発症の恐れのある動物に、治療上効果的な量のHFE2A調節因子を投与することを含む。好ましい実施例において、HFE2A調節因子は本発明の方法において調節活性を示し、最も好ましくはここで前記物質は、前記方法を用いて最初にHFE2A調節因子として同定され、そうでなければ前記活性を持つことが知られなかったものである。前記方法の好ましい実施例において、HFE2A調節因子は、選択的HFE2Aアゴニストあるいは選択的HFE2Aアンタゴニスト、その薬剤として許容される塩、およびまたはこれらの任意の組み合わせであり、ここでこれらは薬剤として許容される担体(薬剤許容担体)中のものであることを含む。一実施例において、前記疾患は、鉄過剰疾患およびまたは鉄欠乏症を含む鉄代謝の疾患である。このような鉄代謝の疾患はまた、I型糖尿病、II型糖尿病およびインスリン抵抗性の一つあるいはそれ以上を含み得る。
【0040】
またさらなる態様において、本発明は、HFE2Aあるいは関連疾患に苦しむ個体あるいは発現する恐れのある個体を診断する方法に関し、前記方法は前記個体におけるHFE2A遺伝子の核酸配列の全部あるいは一部を測定することを含み、ここで前記遺伝子の突然変異あるいは多型は、前記個体をHFE2Aあるいは関連疾患に苦しむ個体あるいは発現する恐れのある個体として識別する。他の実施例において、本発明はHFE2Aあるいは関連疾患に罹患した個体あるいは発現する恐れのある個体を診断する方法に関し、前記方法は前記個体におけるHFE2Aポリペプチドのアミノ酸配列の全部あるいは一部を測定することを含み、ここで前記遺伝子の突然変異あるいは多型は、前記個体をHFE2Aあるいは関連疾患に罹患した個体あるいは発現する恐れのある個体として識別する。
【0041】
本発明はまた、HFE2A活性を調節することができる化合物を同定するための方法を意図し、前記方法は(a)HFE2Aを発現する細胞を試験化合物と接触させ、(b)試験化合物の、HFE2A核酸の転写あるいはHFE2Aポリペプチドの活性を調節する能力を測定することを含み、それによりHFE2A活性を調節することができる化合物を同定する。前記方法の好ましい実施例において、化合物は抗HFE2Aポリペプチド抗体、リボザイムあるいはアンチセンスHFE2A核酸分子である。その一つの好ましい実施例において、化合物はHFE2Aリボザイムである。他の実施例において、化合物は有機小分子である。
【0042】
本発明はまた、配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、19、20、21および22より成るグループから選択された配列と最低60%のパーセント同一性を持つヌクレオチド配列を持つポリヌクレオチドを含む、単離されたポリヌクレオチドを包含する。他の実施例において、前記パーセント同一性は、最低70%であり、より好ましくは最低78%であり、さらにより好ましくは最低90%であり、またより好ましくは最低95%であり、さらにより好ましくは最低98%であり、最も好ましくはここでヌクレオチド配列は、配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、19、20、21および22より成るグループから選択されたものである。
【0043】
他のそのような実施例において、本発明は特に、配列番号10、11、12、23、24、25、26、27および28より成るグループから選択されたアミノ酸配列と最低90%、好ましくは最低95%、より好ましくは最低98%のパーセント同一性を持つアミノ酸配列を持つポリペプチドを含む単離されたポリペプチドを包含し、最も好ましくはここで、前記アミノ酸配列は配列番号10、11、12、23、24、25、26、27および28より成るグループから選択されたものである。
【0044】
本発明はまた、本発明の方法により同定された物質、あるいは本発明の方法において有用な物質が、薬剤として許容される担体中の治療上効果的な量の本発明のポリペプチド、あるいはその薬剤として活性を持つ断片を含む、鉄代謝の疾患を処置するための組成物の形状で存在し得ることを包含する。それらにしたがって、本発明は特に鉄代謝の疾患を処置するための方法を意図し、前記方法は必要とする患者に、治療上効果的な量の前記組成物を投与することを含む。その一実施例において、疾患は若年性ヘモクロマトーシスである。
【0045】
さらなる態様において、本発明は鉄代謝疾患の治療のための物質を同定するための方法に関し、前記方法は、
a)動物に、ここに開示された方法を用いて活性を持つことが認められた物質を投与し、
b)前記動物における、前記投与に起因した鉄代謝の変化の指標である変化を検出し、
それにより鉄代謝の疾患を治療するための物質を同定することを含む。
【0046】
好ましくは、動物はヒト等の哺乳類である。特定の実施例において、鉄代謝の変化は、鉄の貯蔵組織分布の変化であり得る。
【0047】
本発明の好ましい実施例において、HFE2Aを調節することが確認された化合物は、関連遺伝子あるいはタンパク質の前方のHFE2Aに選択性を持ち、したがって直接結合によって他の関連遺伝子あるいはタンパク質の活性を調節することはあまりない。
【0048】
さらなる態様において、本発明は鉄代謝の疾患に苦しむ動物の状態を処置するための方法に関し、前記方法は前記動物に、本発明の分析法により最初に同定された物質の効果的な量を投与することを含む。好ましくは、前記動物はヒト患者、例えば鉄代謝の慢性疾患に苦しむ患者である。
【0049】
さらなる態様において、ここに開示された分析法により同定された化合物、および前記化合物を用いて患者を処置する方法は、HFE2A活性を調節することにより処置可能なことが認められた鉄代謝の疾患を超えた、代わりのあるいはさらなる兆候に対して適用される。
【0050】
さらなる態様において、本発明は、この分野における通常の技術を有する者によりこれから同定され得るHFE2Aを調節する化合物に関する。これらの化合物は、抗体、アンチセンス化合物、遺伝子治療ベクターおよびタンパク質、また小分子有機化合物を含む。本発明はまた、異常なHFE2A活性と関連する疾患の治療へのこれらの化合物の使用法を含む。一実施例において、これは鉄代謝の疾患の処置への化合物の使用法である。
【0051】
他の態様において、本発明はある産物を生み出すための方法に関し、前記方法は本発明のプロセスにしたがって物質を同定することを含み、ここで前記産物は、前記プロセスの結果としての前記物質に関して集められた情報であり、またここで前記情報は、前記物質の化学的構造およびまたは性質を伝えるのに十分なものである。
【0052】
他の態様において、患者における、配列番号14、16および18に同定された特異的突然変異、および後に関連することが明らかとなるだろう他の突然変異を含む、配列番号1から12に対応するポリヌクレオチドあるいはポリペプチドにおける一つあるいはそれ以上の突然変異の存在あるいは不在を同定する診断用および薬理ゲノム学用組成物、キットおよび方法に関する。この実施例は、若年性ヘモクロマトーシスの存在あるいは不在の診断に有用である。また、成人発症ヘモクロマトーシスの診断および、その発現と重症度の予測に有用である。
【0053】
図1は、HFE2A遺伝子の転写中に生じる選択的スプライス変異体を示す。便宜上、コーディングエキソンのヌクレオチド配列は以下のように設定される。
【0054】
【0055】
選択的スプライス変異体は、遺伝子産物から最低5つの転写産物として生じる。cDNA配列(あるいはTがUに置換されている場合にはプロセッシングを受けたmRNA配列)に対応する転写産物1から4のそれぞれのヌクレオチド配列は、以下のように設定される。
【0056】
【0057】
これらの4つのHFE2A遺伝子の転写産物のそれぞれは、HFE2Aポリペプチドに翻訳され得る。転写産物1および2は、同一の全長タンパク質を生じさせ、したがって、それぞれ200、313および426のアミノ酸(a.a.)の3つの全長タンパク質である。各転写産物から生じるアミノ酸配列は、以下のように設定される。
【0058】
【0059】
最長のcDNA配列(転写産物4、配列番号9)と最長のタンパク質配列(タンパク質3、配列番号12)は、本明細書において用いられたシークエンシング ナンバリング慣例法の基礎として用いられてきた。
【0060】
HFE2Aの配列の特徴は、以下のものを含む種々の情報源に既に開示されている:Homo sapiens Official Gene Symbol and Name:LOC148738;NCBI LocusID:148738;他の名称:ENSG00000168509(アンサンブルv.12.31.1)、NM_145277(RefSeq);遺伝子位置:染色体1上の142000393から142004657bp(アセンブリ:ヒトゲノムのNCBI 31アセンブリ、凍結日:2002年11月)(参照配列のアンサンブル バージョン:アンサンブルv.12.31.1)。HFE2Aの不完全断片は、PCT公開WO02/051438に包含され、ここでRGM3として記載され、神経発達における反発誘導分子(5′コーディング末端からの3アミノ酸、9ntの欠失)として関連している。
【0061】
以下の実施例1に提示されるポジショナルクローニング法が、染色体領域1q21が若年性ヘモクロマトーシスと非常に関連することを確認するために用いられた。候補遺伝子が、突然変異が存在するかを確認するために調査された。ここに開示されたHFE2A遺伝子は、以下に示す種々の有害な突然変異を含むことについて確認された。
【0062】
【表1】
【0063】
表1は、HFE2A(ENSE00001277351)において確認された遺伝的変異を示す。突然変異のcDNA位置は、一列目に数字で示されている(すなわち、c.665)。突然変異は、ENST00000306561(転写産物4)(配列番号9)における開始ATGコドンから数えた。各変異について、両側の配列の10塩基が、大文字で記された野生型(WT)および突然変異型(MT)塩基と共に示されている。
【0064】
【表2】
【0065】
表2は、若年性ヘモクロマトーシスファミリーにおいて同定された遺伝的変異を示す。一列目は変異を開示し、他の列は各ファミリーにおける発端者の、突然変異の部位での各染色体の遺伝子型を提示する。JH3、4、5、6、7、8、9、10および12は、変異がホモ接合である。JH11は、2つの変異の合わさったヘテロ接合である。
【0066】
HFE2A罹患患者のHFE2Aにおける指定された突然変異の分離は、表2で同定されたファミリーにおける全ての罹患者で確認された。変異は、128人のヨーロッパ人と37人のギリシャ人のコントロール(未罹患)個人には見られなかった。したがって、G320Vをもたらす1つのコーディング変換を持つ7つのファミリー、1281Tをもたらす独特のコーディング変換を持つ1つのファミリーおよび、このタンパク質の早期切断(Premature trancation)を持つ2つの他のファミリーの存在は、HFE2A(遺伝子3(LOC148378)ENSG00000168509 v.12.31.1)における突然変異が若年性ヘモクロマトーシスを引き起こす確信的な証拠となる。
【0067】
コントロールサンプル(すなわち、JHに罹患していない無関係のヒト)において他の変異が生じた。128人のオランダ人のコントロールの2人が、c.1207G>A,p.V403Iについてヘテロ接合である。これらの2つのサンプルにおいてヘテロ接合であったため、JH表現型が現れるとは思われず、これらの個人においても見られない。この変異は、有害でないオランダ人母集団における一塩基変異多型(SNP)であり得る。または、ホモ接合型において現れる場合には、潜在的なJHの原因となる突然変異であり得る。この時点ではそれはSNPであるが、診断目的あるいは治療目的について有用であり得る。
【0068】
HFE2Aの高度に保存されたゲノムDNAプロモーター核酸配列は、ヒト、マウスおよびラットについて、以下のように特定されている。
【0069】
【0070】
図2のプロモーター配列のアラインメントは、調節領域における種間の高度の保存性を示す。配列保存性は、ヒト配列の転写開始部位の約670nt5′で実質的に失われる。
【0071】
ゲノム配列:HFE2Aの周辺の核酸配列を説明する全ヒトゲノム配列は、配列番号22に規定される。エキソンは大文字で示されている。
【0072】
これらにしたがって、本発明の方法に有用な遺伝子は、配列番号19、20、21および22より成るグループから選択されたヌクレオチド配列を持つポリヌクレオチに対応するポリヌクレオチドを含む。
【0073】
他の態様において、本発明はHFE2A遺伝子発現を調節する物質を同定するための方法に関し、前記方法は、
(a)試験化合物を、HFE2Aプロモーターと動作可能に連結するレポーター遺伝子の発現を支持する条件下で、前記レポーター遺伝子を含む遺伝子構成体と接触させ、
(b)前記接触の結果としての前記レポーター遺伝子の発現の変化を測定することを含み、
ここで発現の変化が前記試験化合物を、HFE2A遺伝子発現を調節する物質として同定あるいは確認する。
【0074】
その好ましい実施例において、前記調節は前記レポーター遺伝子の発現、特に転写の減少あるいは増加であり、また、HFE2Aプロモーターが哺乳類HFE2Aプロモーター、好ましくはマウス、ラットあるいはヒトHFE2Aプロモーターである実施例を含む。より好ましい実施例において、プロモーターは配列番号19のヌクレオチド配列を持つ。
【0075】
好ましい実施例において、前記レポーター遺伝子の発現は、酵素の活性を測定することにより判断され、例えばここでレポーター遺伝子は容易に測定可能な酵素活性を持つタンパク質をエンコードする。
【0076】
ここで用いられるように“同定”という用語は、前記試験化合物を、遺伝子発現あるいはポリペプチド活性を調節する物質として最初に同定すること(すなわち、前記物質はこの活性を持つことを今までに知られていなかったか、あるいは予想されていなかったものである)を含むことができ、あるいはそのような活性を、本発明の一つあるいはそれ以上の分析法を実施することにより確認すること(ここで前記物質はこの活性を持つことが既に予想されていたものであるが、そのような活性を持つことが明確に示されなかったものである)を含むことができる。例えばここで、ある物質はHFE2A遺伝子あるいはポリペプチド活性の調節に以前から関係していたものであり、あるいはここで前記物質は鉄代謝を変更、調節あるいは作用することができる物質であることが予想されたか、あるいはそうでなければ信じられていたものであり、例えばここで前記物質は鉄代謝の調節に関係しており、前記物質の活性は本発明の方法に利用される活性を持つことが確認され、前記物質は示唆された活性を持つことが確認されていたと思われる。
【0077】
他の態様において、本発明はHFE2Aポリペプチド活性を調節する物質を同定するための方法に関し、前記方法は、
a)化学物質を、タンパク質間相互作用を促進する条件下で、前記HFE2Aポリペプチドと接触させ、またあるいは、
b)化学物質を、HFE2Aリガンド−HFE2Aレセプター相互作用を促進する条件下で、前記HFE2Aポリペプチドと接触させ、またあるいは、
c)化学物質を、脂質組成の修飾を促進する条件下で、前記HFE2Aポリペプチドと接触させ、またあるいは、
d)化学物質を、関連するセカンドメッセンジャーシグナリング(シグナル伝達)の変換を促進する条件下で、前記HFE2Aポリペプチドと接触させ、
ここで前記相互作用、変換あるいは修飾が調節を示し、それにより前記化学物質を、HFE2Aポリペプチド活性を調節する物質として同定することを含む。
【0078】
HFE2A活性は、関連するセカンドメッセンジャーの変換を介して媒介され得る。
【0079】
非常に有用な実施例の一つにおいて、遺伝子構成体は、細胞、好ましくは哺乳類細胞、最も好ましくは組換え細胞中に存在し、例えばここで、哺乳類細胞はマクロファージ、肝臓細胞、肝細胞、腸細胞、炎症細胞、造血性細胞、膵臓細胞、骨格筋細胞あるいは神経系細胞である。
【0080】
以下の表3は、コントロール個人のHFE2A遺伝子中に確認された他の多型(すなわち、若年性ヘモクロマトーシスあるいは他の鉄代謝疾患の臨床発現のないもの)を示す。これらの多型あるいはこの分野における通常の知識を有する者により発見され得る他のものは、診断用あるいは治療用、もしくは他の用途について有用であり得る。
【0081】
【表3】
【0082】
大文字は多型の位置および性質を示す。WT=野生型、MT=突然変異
他のヒト遺伝子との類似性
図3は、HFE2Aと、ヒトゲノム中に見られる2つの関連タンパク質との間のアラインメントを示す。類似性は、いくつかの機能がこれらのタンパク質間で共有あるいは類似し得ることを示す。
【0083】
表4は、BLAST**を用いたヒトLOC148738 426aaタンパク質配列(タンパク質3)のヒトパラログ*との比較を示す。
【0084】
【表4】
【0085】
* 染色体5上のENSESTP00000023393(アンサンブル)および染色体15上のヒト反発誘導分子(ヒトRGM)(NCBI:NP_064596.1)
** “BLAST 2配列”を用いた配列比較(Tatiana A.Tatusova,Thomas L.Madden(1999),FEMS Microbiol Lett.174:247−250)。パラメーター:blastp、BLOSUM62マトリックス、オープンギャップペナルティー 11、伸張ギャップペナルティー 1、ギャップ×_ドロップオフ 50、ワードサイズ 3、期待値 10。
【0086】
他の生物におけるHFE2Aの保存性
2.ヒトHFE2A遺伝子のホモログが、マウス(ハツカネズミ(Mus musculus))、ラット(ドブネズミ(Rattus norvegicus))およびサカナ(トラフグ(Takifugu rubripes)(“Fugu”))において発見された。図4は、これらの配列のヌクレオチドレベルでの配列比較を示す。これらの配列の高度の保存性は表5に示される。表5は、BLAST**を用いたヒトLOC148738 426aaタンパク質配列(タンパク質3)のオルソログ(Orthologs)*との比較を示す。
【0087】
【表5】
【0088】
* 生物配列:マウス(アンサンブル:ENSMUSESTP00000016634)、ラット(NCBI:AK098165.1から翻訳)およびフグ(アンサンブル:SINFRUP00000138308)
** “BLAST 2配列”を用いた配列比較(Tatiana A.Tatusova,Thomas L.Madden(1999),FEMS Microbiol Lett.174:247−250)。パラメーター:blastp、BLOSUM62マトリックス、オープンギャップペナルティー 11、伸張ギャップペナルティー 1、ギャップ×_ドロップオフ 50、ワードサイズ 3、期待値 10。
【0089】
ヒトHFE2AのニワトリRGMとの比較が図5に示される。ヒトLOC148738の426aa配列翻訳物(ENSP00000304614と同一のタンパク質3)は、ニワトリ_反発誘導分子(RGM)(NCBI:AY128507.1の翻訳)と、かなりの配列相同性(ホモロジー)を共有する。ニワトリRGMアミノ酸配列は、配列番号28に記載されている。“BLAST 2配列”(Tatiana A.Tatusova,Thomas L.Madden(1999),FEMS Microbiol Lett.174:247−250)を用い、395の残基が46%の同一性、61%の正数および9%のギャップで揃う。2つのタンパク質はまた、N−末端シグナルペプチド、細胞接着に関連し得るRGDトリアミノ酸モチーフ、ニワトリRGM中の可能性のある切断部位として同定された部位、不完全(〜57%)フォン ヴィレブランド タイプDドメイン、および予測されたN−グリコシル化部位を共有する。両タンパク質はまた、C末端でのGPI修飾を持つことが予測される。
【0090】
ヒトHFE2Aと、マウス、ラットおよびフグにおけるホモログ、またMacac RGM、ニワトリRGM、ゼノパスRGMおよびC.エレガンスNP由来の配列の間で共通する類似性の概観が図6に示される。この類似性の程度は、他の種由来の類似遺伝子あるいはタンパク質が本発明の種々の実施例に有用であり得ることを示している。タンパク質はまた、335と336の間の位置での切断をもたらす前駆タンパク質転換酵素フューリン(Molloy,S.S.et al.J.Biol.Chem.,267,16396−16402(1992))の一致した切断部位(Arg−X−Lys/Arg−Arg)に相当する配列Arg−Asn−Arg−Arg335を持つ。
【0091】
ヒト、マウス、ラット、ニワトリおよびゼブラフィッシュ由来の関連遺伝子間の配列の比較が図6Bに示される。ヒトHFE2Aタンパク質のオルソログは、マウス、ラットおよびゼブラフィッシュに見られる(図6B)。配列比較は、ヒトHFE2Aが哺乳類のオルソログと85%より高く(>85%)同一であり、またサカナのオルソログと45%まで同一であることを示している。HFE2Aの426アミノ酸翻訳物もまた、ヒトの反発誘導分子(RGMあるいはRGMA)(48%の同一性)およびニワトリのRGM(46%の同一性)とかなりの配列類似性を共有する(図6B)。ヒトにおいてはまた、その生物学的機能が現在知られていない第3のRGM様遺伝子がある。
【0092】
HFE2Aポリペプチド機能
本発明は、HFE2Aが鉄代謝の重大な調節因子(レギュレーター)であるという重要な発見を教示する。正確にそれがどのようにこのプロセスに関連するかは、依然として十分に明らかにされていない。このタンパク質の活性についての重要な情報は、タンパク質ドメインの分析に基づいて測定することができる。
【0093】
426aaLOC148738遺伝子産物(タンパク質3)は、小胞体へ進入するためのN末端疎水性シグナルペプチドを含むGPI(グリコシル ホスファチジル イノシトール)結合タンパク質(図7a)と一致した構造上の特徴を持ち、ここでGPIアンカー付加が起こり(残基1から35、図7b)、またC末端疎水性ドメイン/GPI付加シグナル配列が起こる(残基403−425、図7c)(Udenfriend S and Kodukula K Ann Rev Biochem 1995)。GPI予測プログラムであるbig−Pi predictorは、この遺伝子産物が修飾されたGPIであること、およびアミノ酸399あるいは400のどちらかがオメガ部位として働くことができることを予測する(Eisenhaber et al.,JMB,292(3),741−758,1999)。確認された他の特徴は、RGM−細胞接着トリアミノ酸モチーフ(残基98−100)(Ruoslahti,E.Annu.Rev.Cell Dev.Biol.12,697−715(1996))および不完全フォン ヴィレブランド因子タイプDドメインである。フォン ヴィレブランド因子タイプDドメインは、フォン ヴィレブランド因子(残基167−253)の多量体化のために必要である(Jorieux,S.et al.,Blood 1998 Dec 15;92(12):4663−70)。さらにタンパク質は、残基172と173の間に、ニワトリ反発誘導分子(RGM)との配列比較により同定された可能性のあるタンパク質分解切断部位を持つ(図7e)(Monnier,P.P.et al.Nature 419,392−394,2002)。また存在するが示されないものは、コンセンサス配列と一致することが明らかなN−グリコシル化部位およびO−グリコシル化部位である。
【0094】
図8は、ヌクレオチド/アミノ酸展望からのHFE2Aのタンパク質ドメイン分析を示す。配列の特徴はそこに示されている。
【0095】
生化学レベルでのHFE2Aポリペプチド機能のさらなる特徴は、標準技術を用いてこの分野における通常の知識を有する者により確定されるであろう。ヒトにおけるこの遺伝子の欠如が若年性ヘモクロマトーシス(2A型)あるいはHFE2Aの状態を引き起こすことから、HFE2Aポリペプチドが鉄輸送に直接的に関連していることは、本発明から明らかである。
【0096】
16個のヒト組織が、エキソン4からのプローブを用いたノーザンブロッティング法により、HFE2A発現について検査された。著しいHFE2A発現が、肝臓、心臓(特に心房)および骨格筋において検出された(不図示)。
【0097】
公に入手可能なESTs(発現配列タグ)に基づいて、この遺伝子の断片もまた以下の組織中に発現することが認められた。
【0098】
ヒトHFE2A:骨格筋、肝臓、坐骨神経、肝臓および脾臓、前立腺、心臓
マウスHFE2A:乳腺、心臓、舌、肝臓、剣状軟骨、延髄
ラットHFE2A:脳、卵巣、胎盤、腎臓、肺、肝臓、心臓、筋肉、脾臓
したがって、HFE2A遺伝子は、多くの組織に広く発現するが、かなり低いレベルで発現すると思われる。
【0099】
HFE2A突然変異の若年性ヘモクロマトーシスの引き起こし方、あるいは成人発症ヘモクロマトーシスのもたらし方の働きの任意の特定の機構に結びつけられることは望まないが、本発明の遺伝子/タンパク質が鉄代謝において働き得る異なる役割を推測することはできる。例えば、HFE2Aタンパク質は、鉄代謝経路におけるヘプシジンの上流あるいは下流に位置し得る。一つの可能性としては、タンパク質はヘプシジンレセプターあるいはヘプシジンレセプターの共同因子(コファクター)である。他の可能性としては、ヘプシジンの転写、翻訳およびまたはプロセッシングにおけるHFE2Aの機能が、ヘプシジンの適切な機能に必要である。HFE2Aはヘプシジン相互作用タンパク質であり得る。別の機能としては、HFE2Aタンパク質は、ヘプシジンレベルのホルモンあるいはホルモン様化合物レギュレーターとしてパラクライン様式で働く、骨髄あるいは肝臓からの分泌因子であり得る。
【0100】
これらの可能性のある働きの機構は、タンパク質のさらなる探査について示唆するものであるが、しかしながら、ここに含まれる請求の範囲に限定されることを意図するものではない。これらのシナリオの全てにおいて、機能的因果関係は同様であり、すなわち、HFE2Aの機能の喪失は正常ヘプシジン機能を介して鉄代謝を制御する身体の能力の喪失をもたらし、その結果若年性ヘモクロマトーシスあるいは成人発症ヘモクロマトーシスの発現を促進する(おそらくここで、ヘプシジン/HFE2A代謝経路における他の因子は、十分に機能しない)。したがって、HFE2Aの活性の調節は、体内の鉄の血清レベル、生体内分布およびまたは代謝を調節するための方法である。
【0101】
HFE2Aの調節はまた、鉄あるいは鉄代謝に直接的に関連しない疾患を処置するための方法である。鉄代謝における提示された役割と無関係なHFE2Aの機能は、血液量を調節する機能である。HFE2Aは心臓、特に右心房中に多く発現し、そのためHFE2Aは、循環血液量検出(センシング)および血液量調節等において、血液学的役割を果たすことができる。または、HFE2Aは心臓において、鉄関連疾患から局所的筋細胞を保護するパラクライン機能を果たし得る。したがって、HFE2Aの活性を調節する化合物は、血液疾患、心疾患(心不全、心筋ミオパチー、体液恒常性障害および不整脈を含むがこれらに限定されない)およびホルモン障害の処置あるいは予防に有用である。また重要なことは、ヘプシジンレベルが細菌感染、炎症、LPS注入に対する応答等において活性化されるため、HFE2Aがこれらの疾患の媒介側面に対する適当な治療標的であることであり、また細菌種等の処置において重要であり得る。
【0102】
本発明は、HFE2Aの機能が、その正確な働きの機構に係わらず、人体における必須の鉄調節因子であることを証明する。したがって、動物における鉄代謝の疾患を処置するための望ましい薬剤標的である。例えば、HFE2Aが本発明にしたがってJHおよび成人発症ヘモクロマトーシスに直接関連するため、発明者は、JHおよび鉄代謝の不良な他の疾患がHFE2Aの化学的調節因子を投与することにより処置可能であろうことを認識している。この疾患は、必ずしも異常なHFE2A遺伝子あるいはタンパク質活性と関連していないであろう。例えば、HFE2A活性を調節する化合物は、鉄代謝経路の他の側面における機能不全を補い得る。あるいは、HFE2Aの調節因子は、血液中の鉄レベルに間接的に応答する疾患の処置に用いられ得る。
【0103】
本開示において用いられるように、“鉄代謝の疾患”という語句は、その最も広い背景で解釈されるべきである。これは疾患を含み、ここで異常鉄代謝が直接的に疾患を引き起こし、あるいはここで鉄の血中レベルが異常調節されて疾患を引き起こし、またはここで鉄異常調節は他の疾患の結果であり、またはここで疾患は鉄レベル等を調節することにより処置することができる。より特には、本開示にしたがった鉄代謝の疾患は、鉄過剰疾患、鉄欠乏症、鉄の生体内分布の疾患、鉄代謝の他の疾患および鉄代謝に潜在的に関連する他の疾患、その他を含む。さらにより特には、鉄代謝の疾患は、ヘモクロマトーシス、ferroportin突然変異ヘモクロマトーシス、トランスフェリンレセプター2突然変異ヘモクロマトーシス、若年性ヘモクロマトーシス、新生児ヘモクロマトーシス、ヘプシジン欠乏症、輸血関連鉄過剰状態、サラセミア(地中海貧血)、サラセミア インテルメディア、αサラセミア、鉄芽球性貧血、ポルフィリン症、晩発性皮膚ポルフィリン症、アフリカ型鉄過剰症、hyperferritinemia、セルロプラスミン欠損症、無トランスフェリン血症、先天性赤血球異形成貧血、慢性疾患に伴う貧血、貧血症、低色素性小球性貧血、鉄欠乏性貧血、ヘプシジン過剰状態、フリードリッヒ運動失調、大腿薄筋症候群、ハレルフォルデン スパッツ病、ウィルソン病、肺ヘモジデリン沈着症、肝細胞癌、癌、肝炎、肝硬変、異食症、慢性腎不全、インスリン抵抗性、糖尿病、アテローム性動脈硬化症、神経変性障害、多発性硬化症、パーキンソン病、ハンチントン病、アルツハイマー病を含む。
【0104】
特に、HFE2Aの調節因子は、慢性疾患に伴う貧血を効果的に処置できる。世界的に、慢性疾患に伴う貧血(ACD、また炎症性貧血としても知られている)は2番目に一般的な種類の貧血である。ACDは入院患者において、最も一般的な貧血に相当する。ACDは、感染、悪性腫瘍および慢性炎症を含む様々な状態の患者に見られる後天性疾患である。マクロファージによる鉄の保持と、腸の鉄吸収の減少が特徴であり、これは赤血球生成への鉄の利用可能性の減少をもたらす。これらの疾患の経過の初期には、ACDを患う患者は、異常な鉄再生利用による軽度の正球性貧血を有する。後期には減少した腸吸収により、低色素性小球性状況の鉄欠乏となる。ACDにおけるヘプシジンの役割を探査した初期の研究は、過剰なヘプシジン生成がACDの根拠となることを示している。
【0105】
マウスヘプシジンの機能の喪失は、重度の鉄過剰をもたらし、JHの生化学的、臨床的表現型と似た表現型を呈する。その一方、動物モデルおよびヒト疾患の両方において、ヘプシジンの過剰発現がマクロファージ鉄保持と、ACDに見られる鉄障害に特有の鉄欠乏性表現型をもたらす。既存のACDの治療は、特異的に鉄表現型の改善に向けられた有効な処置を伴わず、主に基礎疾患を処置することを狙っている。したがって、例えばHFE2Aの抑制により、ヘプシジン生成を減少させる治療方針は、ACDに見られる鉄障害を処置するための重要で新規な方法に相当する。
【0106】
場合によって、“鉄代謝の疾患”の定義に含まれる疾患および障害は、通常は鉄関連であると識別されない。HFE2A(ヘモジュヴェリン)およびその関連タンパク質であるヘプシジンの組織分布に基づく本発明によって、鉄代謝がこれらの疾患プロセスにおいて重要な役割を果たすことが認識されている。例えば、ヘプシジンがマウス膵臓中に非常に多く発現することが最近示され、これは糖尿病(I型あるいはII型)、インスリン抵抗性、耐糖能異常および他の疾患が根本的な鉄代謝疾患の治療により改善され得ることを示唆するものである(IIyin,G.et al.2003 Febs.Letters 542 22−26)。そのようなものとして、これらの疾患は広い定義に包含される。
【0107】
治療標的としてHFE2Aを用いた処置方法
HFE2Aにおける突然変異が、ヒトにおいて明らかに定義できる生理学的結果(すなわち若年性ヘモクロマトーシス)に関連することの発見は、発明者が、ヘモジュヴェリン、HFE2A遺伝子およびHFE2Aポリペプチドがヒトにおける鉄代謝の疾患の処置への治療標的として有用であることを初めて証明することを可能にする。“治療標的”という用語は、治療的介入が遺伝子あるいはタンパク質の活性を調節する治療物質によって得られることを意味することが意図される。“調節”は、活性を増加させ、減少させ、あるいはそれ以外に変化させることを意味する。標準的な産業プロセスが、遺伝子あるいはタンパク質の活性を調節し、そのいくつかが以下に規定される治療物質の独自性を確認するために、この分野における通常の知識を有する者によって利用可能である。
【0108】
前記にしたがって、本発明は疾患を処置するための方法に関し、前記方法は、前記処置を必要とするヒトに、効果的な量の選択的HFE2Aアゴニストあるいはアンタゴニスト、またはその薬剤として許容される塩、もしくはどちらかの構成要素を包含する薬剤組成物を投与することを含む。
【0109】
好ましい実施例において、前記疾患は鉄代謝の疾患である。さらに好ましい実施例において、前記投与は経口あるいは静脈投与法により行われる。
【0110】
治療物質を同定するためのスクリーニング分析におけるHFE2Aの使用法および潜在的な治療物質の分類
本発明は、HFE2Aの活性を調節する能力にしたがって鉄代謝の疾患を処置する物質の同定のための異なる方法を容易に提供する。前記化合物の同定に有用な分析法の例がここに詳細に示されるが、この分野における通常の知識を有する者は他の方法を知っている。
【0111】
以下にある程度詳細に開示される一連の実施例において、分析法は、HFE2Aに関連する生物学的活性を測定するために設計された分析フォーマットにおける、一つずつあるいは組み合わせでの化合物の試験用ライブラリーを伴う。望ましい様式で生物学的活性を調節するこれらのライブラリー化合物は、これにより本発明の治療物質として同定される。実質的に、幅広い種類の化合物が、この分析の測定可能な生物学的活性に影響を与えるか測定するために、順次この分析について試験される。分析は、HFE2Aに対応する遺伝子あるいはポリペプチドの様々な測定可能な生物学的活性の一つあるいはそれ以上に基づき得る。
【0112】
ここで用いられるように、“HFE2A活性”あるいは“HFE2A生物学的活性”は、特にスクリーニング分析に関して、広く解釈されるべきであり、また全ての直接あるいは間接的に測定可能であり同定可能なHFE2A遺伝子、遺伝子産物およびHFE2Aポリペプチドの生物学的活性を意図する。精製HFE2Aポリペプチドタンパク質に関して、HFE2Aポリペプチド活性は、タンパク質の全ての生物学的プロセス、相互作用、結合性質、結合活性関係、pKa、pD、酵素反応速度、安定性および機能評価を含むが、これらに限定されない。細胞画分、再構成細胞画分あるいは全細胞におけるHFE2Aポリペプチド活性に関して、これらの活性は、HFE2Aポリペプチドが任意の測定可能な生物学的生物学的特徴を実施する速度、および細胞増殖、発生あるいは行動、HFE2Aポリペプチド活性の他の直接的あるいは間接的作用を含む、これらの作用の全ての測定可能な結果を含むが、これらに限定されない。HFE2A遺伝子および転写に関して、HFE2A活性は、RNAを生成するためのゲノムDNAの転写速度、規模あるいは範囲、前記転写における調節タンパク質の作用、前記転写における前記調節タンパク質の調節因子の作用、加えてmRNA転写産物の安定性および行動、転写後プロセッシング、mRNA量およびターンオーバー、mRNAの発現およびポリペプチド配列への翻訳の全測定値、およびタンパク質発現レベルあるいは動態の全測定値を含む。生物におけるHFE2A活性に関して、これは、これらの生物における異常なHFE2A生物学的活性により引き起こされる疾患プロセスあるいは障害において、その不在あるいは不足により同定された生物学的活性を含むが、これに限定されない。いくつかの既知のあるいは示唆された生物学的活性が、本明細書において提供されたHFE2Aの開示中に示されるが、この分野における通常の知識を有する者は、通常の知識を用いてさらなる測定可能なHFE2Aの活性を同定することができるであろう。大まかに言って、HFE2A生物学的活性は、この分野において知られているタンパク質および遺伝子の生物学的特性を分析するためのこれら全ての方法およびその他の方法により測定することができる。
【0113】
この分野における通常の知識を有する者がここに開示された配列に対応するHFE2Aの型を使用することを好むかもしれないが、同一である必要はないこともまた認識されている。例えば、スクリーニング分析ではヒト、マウス、ラットあるいはフグ由来のHFE2Aを採用することが望ましいが、他の分析では異なる生物、好ましくは脊椎動物、最も好ましくは哺乳類種由来のHFE2Aを利用することができる。したがって本発明は、より特にここでヒトHFE2Aと示されたものと同一の目的に対して、ヒツジ、イヌ、ウシあるいはウマHFE2Aを含むがこれらに限定されないものの使用を包含する。HFE2Aのこれらの型の共通する技術的特徴は、発現した場合にそれらが類似の生物学的活性を持つことであり、またHFE2Aと機能的類似性を共有することであり、場合によっては、例えばそれはこの分野における通常の知識を有する者により測定され得る。本発明にしたがったHFE2A遺伝子およびまたはHFE2Aポリペプチドはまた、ここでの開示に基づいて、他の哺乳類種、他の脊椎動物、無脊椎動物および微生物から獲得され得る。
【0114】
したがって、(自然発生スプライス変異体および対立遺伝子を含む、プロセッシングを受けた、あるいはプロセッシングを受けていない)HFE2Aをエンコードするポリヌクレオチドに“対応する”、本発明のスクリーニング分析において用いるためのポリヌクレオチドは、HFE2Aポリヌクレオチド(配列番号1から9、あるいは13から22)によりエンコードされたRNA、あるいは適度に厳密な条件下でのハイブリダイゼーション等により前記ポリヌクレオチドと相補的なRNAと最低40%、好ましくは最低50%、より好ましくは最低60%、特に最低70%、さらにより好ましくは最低80%、あるいはさらに最低85%、最も好ましくは最低90%、あるいはさらに最低95%、または最も特には最低98%同一であり、特に好ましい実施例においては同一であり、また特にその配列を持つ。さらに、HFE2Aに対応する任意の核酸配列と同じポリペプチドをエンコードするHFE2Aタンパク質配列はまた、その配列のパーセント同一性に係わらず、任意のあるいは全ての前記配列に依存する本発明の任意の方法により特に意図され、それは他にどの様に開示あるいは限定されているかに係わらない。したがって、任意の前記配列が、本発明にしたがって開示された任意の方法の実施において用いるために利用可能である。前記配列はまた、HFE2Aポリヌクレオチド内に存在する、ここに定義されたオープンリーディングフレームを含む。
【0115】
最初のRNA転写産物の最終mRNAへの変形において起こり得るプロセッシングのために、ここに開示された配列は、全ゲノム配列よりも短いものに相当し得る。これらはまた、エキソンの選択的スプライシングから得られた配列に相当し得る。したがって、細胞内に存在する(そしてゲノム配列に相当する)遺伝子およびここに開示された配列、主にcDNA配列は、同一であるか、あるいはcDNAsがゲノム配列中の全エキソン未満のエキソンを包含しているものであり得る。前記遺伝子およびcDNA配列は、それらが共に類似のRNA配列をエンコードしているため、対応する配列であると見なされる。したがって、非限定的な例示のみを目的として、転写後により短いmRNAに加工されるRNA転写産物をエンコードする遺伝子は、前記RNAの両方をエンコードしていると見なされ、したがってここに開示されたHFE2A配列に対応するRNAをエンコードする(この分野における通常の知識を有する者は、“エンコード”という用語およびその派生語が、この分野において、“転写可能である”あるいは“翻訳可能である”という意味であることを理解している)。したがって、ここに開示された配列は、細胞に包含される遺伝子に対応し、またそれらの配列が、これらの遺伝子によりエンコードされたRNAsと同じ配列であるかあるいは相補的であるため、転写の相対的レベルを測定するために用いられる。前記遺伝子はまた、本発明のプロセスにおいて用いられる細胞中で生じ得る異なる対立遺伝子およびスプライス変異体を含む。
【0116】
ここで用いられるように、“パーセント同一性”あるいは“パーセント同一性の”という用語は、配列を示す場合には、配列が、比較される配列(“比較配列”)の、開示あるいは請求された配列(“参照配列”)とのアライメントの後に、請求あるいは開示された配列と比較されることを意味する。その後パーセント同一性は以下の公式にしたがって測定される:
パーセント同一性=100[1−(C/R)]
ここでCは、参照配列と比較配列との間のアライメントの全長にわたる参照配列と比較配列との間の差異の数であり、ここで(i)比較配列中に対応するアライメントされた塩基あるいはアミノ酸のない参照配列中の各塩基あるいはアミノ酸、および(ii)参照配列中の各ギャップ、および(iii)比較配列中のアライメントされた塩基あるいはアミノ酸と異なる参照配列中のアライメントされた各塩基あるいはアミノ酸が差異を構成し、Rは、参照配列中に構成されたギャップも塩基あるいはアミノ酸として数に入れた、比較配列とのアライメントの全長の参照配列中の塩基あるいはアミノ酸の数である。
【0117】
アライメントが比較配列と参照配列との間に存在し、それに対する上記のように計算されたパーセント同一性が規定の最小パーセント同一性と同等あるいはそれ以上である場合には、たとえアライメントが、上記の算出されたパーセント同一性が規定のパーセント同一性以下である場合に存在したとしても、比較配列は参照配列に対して規定の最小パーセント同一性を持つ。
【0118】
ここで文脈は、配列がNCBI Blast toolsを用いて分析されたこと、配列スコア、アラインメント、同一性%、正数%およびギャップ%がこれらの計算に基づいて算出されたことを示唆する。分節対については、アラインメントスコアは、スコアリングマトリックス(scoring matrix)値の合計である。アミノ酸置換行列の理論は[1]に開示され、[2]においてDNA配列比較に適用される。正数の数が、アラインメントスコアが正数値となる残基の数である。BLOSUM−62マトリックス[3]が、最も弱いタンパク質類似性の検出に最適であることが実験により示された。[1]Altschul,S.F.(1991)“Amino acid substitution matrices from an information theoretic perspective.” J.Mol.Biol.219:555−565。[2]States,D.J.,Gish,W.& Altschul,S.F.(1991)“Improved sensitivity of nucleic acid database searches using application−specific scoring matrices.”Methods 3:66−70。[3]Henikoff,S.& Henikoff,J.G.(1992)“Amino acid substitution matrices from protein blocks.”Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:10915−10919。
【0119】
ここで用いられるように、“部位”、“分節”および“断片”という用語は、ポリヌクレオチドに関して用いられた場合、ヌクレオチド残基の連続した配列を示し、この配列はより大きな配列の一部を形成する。前記用語は、前記ポリヌクレオチドの任意の共通エンドヌクレアーゼでの処理により産生された生成物、あるいは合成的に合成することが可能なポリヌクレオチドの伸長を含む。これらは、対応遺伝子のエキソンおよびイントロン配列を含み得る。
【0120】
本発明は、HFE2Aの活性を測定し、また前記活性に作用するものを同定するために行う化合物の試験に有用な多くの分析法を提供する。分析法のフォーマットに関して、分析法は、細胞全体、細胞抽出物あるいは再構成細胞抽出物、または、精製あるいは半精製タンパク質を用いることができ、あるいはより大きな規模の組織もしくは動物全体の分析であり得る。一般的な分析法は、蛍光、発光、放射活性、あるいはタンパク質/遺伝子転写産物レベル、量あるいは安定性の他の指標に基づく測定を用いる。ポリペプチド分析はまた、HFE2Aポリペプチドが樹脂や他のポリマー等の固体担体に付着されることを含み、特にここでこれは活性を測定するためのカラム処置の一部である。または、バッチ処置もまた使用され得る。
【0121】
一態様において、本発明はHFE2Aポリペプチドの活性を調節する物質を同定するための方法に関し、前記方法は、
a)試験化合物を、HFE2Aポリペプチドの活性を支持する条件下で、HFE2Aポリペプチドと接触させ、
b)前記接触の結果としての前記HFE2Aポリペプチドの前記活性の変化を測定することを含み、
ここで、活性の変化が、前記試験化合物をHFE2Aポリペプチドの活性を調節する物質として同定する。
【0122】
好ましい実施例において、前記遺伝子は配列番号1から9の配列を持つ。
【0123】
好ましい実施例において、ステップ(b)において観察された活性の変化は活性の減少あるいは増加であり、最も好ましくはここで前記活性の変化は、ステップ(b)の前記化学物質による前記ポリペプチドへの結合の結果である。好ましい実施例において、前記物質は、鉄代謝の疾患の処置に有用である。
【0124】
他の好ましい実施例において、ポリペプチドは無傷細胞、好ましくは哺乳類細胞の一部であり、また細胞は組換え細胞であり得る。HFE2Aについて、最も関連のある細胞は、マクロファージ、肝細胞、腸細胞、心臓細胞(特に心房細胞)、膵臓細胞、骨格筋細胞および骨髄の細胞を含むが、他の組織由来の細胞も採用し得る。一実施例において、前記細胞は前記ポリペプチドを包含するように処理され、前記処理は遺伝子操作を含み、特にここで前記細胞は前記操作が無ければ前記ポリペプチドを所有しない。したがって本発明は特に、細胞が遺伝子操作以外の方法により処理される実施例を意図し、例えばここでポリペプチドの活性は増強されるものであり、また細胞は前記ポリペプチドを包含するように、あるいはその表面に持つように処理されるが、しかしながらここで前記ポリペプチドは、細胞中に含まれる遺伝子の発現によってではなく、前記細胞の膜あるいは細胞質へのポリペプチドの物理的挿入により存在する。例えばポリエチレングリコール、ウイルス、その他のものの使用といったこの分野においてよく知られた方法は、前記挿入をもたらすために利用され、その方法の詳細はここにさらに開示される必要はない。
【0125】
前記方法の好ましい一実施例において、ポリペプチドは、配列番号10から12の配列と最低95%同一、より好ましくは最低98%同一のアミノ酸配列を持つポリペプチドと反応する、あるいは特異的な抗体と反応するポリペプチドであり、またここでアミノ酸配列中の任意の差異は、保存されたアミノ酸置換のみに因る。特に好ましい実施例において、ポリペプチドは配列番号10から12のアミノ酸配列を持つ。
【0126】
本発明のHFE2Aポリペプチド分析は、ポリペプチドの活性に起因する分析状態における変化に対する応答における、色を変える種々の染料、あるいは蛍光シグナリング(シグナル伝達)/クエンチングの能力等(しかし、これらに限定されない)の化合物スクリーニング技術を適用し得る。化合物スクリーニング分析はまた、標的ペプチド(HFE2Aポリペプチド)および既知のあるいは発見された相互作用タンパク質もしくはタンパク質レセプターの相互作用を調節するための試験化合物の能力に基づくことができる。前記相互作用タンパク質は、例えば放射性免疫沈降法、共免疫沈降、破壊試験におけるエピトープ標識した構成体の使用、抽出およびクロマトグラフィー技術による同時精製、および酵母2ハイブリッドスクリーニングを含む、この分野における種々の既知の技術により同定することができる。前記相互作用はさらに、表面プラスモン共鳴、蛍光物あるいは蛍光色素を用いた蛍光および発生団を用いたクエンチング等の直接検出法、放射標識タンパク質、蛍光偏光、共焦点蛍光像あるいはシンチレーション近接技術を含むがこれらに限定されない方法により分析することができる。間接的相互作用はまた、細胞静止判別試験、Gタンパク質共役型レセプター分析等のセカンドメッセンジャーレポーティング、cAMP検出、酸化窒素シンターゼ、ホスホジエステラーゼ活性、あるいはスフィンゴミエリナーゼ等の脂質修飾、イノシトール三リン酸分析を介して監視され得る。
【0127】
HFE2Aポリペプチドの半減期を調節する作用を持つ物質もまた、鉄代謝の疾患を処置するために有用である。非限定的な例示を目的として、この種の物質についての分析は、野生型HFE2Aポリペプチドを発現する細胞を含み、ここで前記ポリペプチドは、翻訳の間一時的、代謝的に標識され、候補化合物と接触させられ、またポリペプチドの半減期は標準技術を用いて測定される。ポリペプチドの半減期を調節する化合物は、本発明において有用な化合物である。
【0128】
ここに開示された遺伝子によりエンコードされたポリペプチドが有用である前記分析の一つにおいて、精製あるいは半精製HFE2Aポリペプチド(あるいはその断片、もしくはエピトープ標識した形態またはその断片)は、適当な担体(例えば、前記ポリペプチドのhis標識(ヒスタグ)形態の場合のニトロセルロース、抗体あるいは金属アガロース)に結合する。担体への結合は好ましくは、前記ポリペプチドと関連するタンパク質が関連を維持できる条件下で行われる。前記条件は、タンパク質間相互作用の障害を最小限にするバッファの使用を含み得る。必要に応じて、他のタンパク質(例えば、細胞溶解物)は添加され、ポリペプチドと関連する機会が与えられる。その後固定されたポリペプチドは、ポリペプチドあるいは担体に非特異的に関連付けられ得るタンパク質あるいは他の細胞構成体を除去するために洗浄される。固定されたポリペプチドはその後、多目的に使用することができる。Neogenesis Pharmaceuticals,Inc.(Cambridge,MA)により提供されるような、化合物スクリーニング実施例において、結合HFE2Aポリペプチドは、ロー、ミディアムあるいはハイスループット能力での自動化リガンド同定システム(automated ligand identification system)に用いられる。この場合、試験化合物のプールは、試験化合物のタンパク質への特異的結合を促進する条件(すなわち、バッファ、温度、その他)下で、HFE2Aへさらされる。非特異的結合を伴う化合物は、混合物から分離される。HFE2A/リガンド複合体は続いて回収され、結合リガンドは解除されて質量分析計により測定される。情報分析システムは、質量情報と、元の試験化合物混同物中に含まれる化合物質量のリストと相互に関連付ける。別の実施例において、化合物は、HFE2Aポリペプチドと他の結合分子(推定上HFE2Aポリペプチド相互作用タンパク質である)との間の相互作用に干渉する能力について試験され得る。相互作用タンパク質をうまく置き換えることができる化合物は、それにより本発明のHFE2Aポリペプチド調節物質として同定される。精製あるいは半精製標的タンパク質を使用する他のよく知られたタンパク質結合分析はまた、タンパク質への特異的な結合親和性を持つ試験化合物を同定するために用いることができる。
【0129】
HFE2Aポリペプチド相互作用タンパク質を同定するように設計された別の実施例において、固定されたポリペプチドはその担体から解離され、またそれに結合したタンパク質は(例えば加熱により)解除され、あるいは結びついたタンパク質は、担体からポリペプチドを解除することなくポリペプチドから解除される。解除されたタンパク質および他の細胞構成体は、例えばSDS−PAGEゲル電気泳動、ウェスタンブロッティングおよび特異的抗体を用いた検出、ホスホアミノ酸分析、プロテアーゼ消化、タンパク質シークエンシング、あるいは等電点電気泳動法により、分析することができる。前記ポリペプチドの正常および突然変異形態は、特定の因子がポリペプチドのどの位置に結合するかについてのさらなる情報を得るために、これらの分析に用いることができる。さらに、不完全に精製されたポリペプチドが用いられた場合、タンパク質の正常および突然変異形態の比較は、正確な結合タンパク質の識別を促進するために用いることができる。前記分析は、HFE2Aポリヌクレオチドによりエンコードされたポリペプチドと相互作用することが知られている精製あるいは半精製タンパク質または他の分子を用いて実施することができる。
【0130】
この分析法は以下のステップを含み得る。
【0131】
1.エンコードされたポリペプチドを回収し、適当な蛍光標識を結合させ、
2.相互作用タンパク質(あるいは他の分子)を第2の、異なる蛍光標識で標識する。互いに近接近している場合と物理的に離れている場合とで異なるクエンチングパターンを引き起こす染料(すなわち、互いに近接している場合に互いを消光し、近接近していない場合に蛍光する染料)を用い、
3.相互作用分子を、相互作用分子と固定されたポリペプチドの間の相互作用に干渉する能力について試験される化合物の存在下あるいは不在下で、固定されたポリペプチドにさらし、
4.蛍光読み出し情報を回収する。
【0132】
前記タンパク質相互作用についての別の分析法は、蛍光エネルギー共鳴移動(Fluorescent Resonance Energy Transfer(FRET))分析法である。この分析法は以下のようにして実施することができる。
【0133】
1.エンコードされたタンパク質あるいはその適当なポリペプチド断片を用意し、適当なFRETドナー(例えば、ニトロベンゾオキサジアゾール(NBD))を結合させ、
2.相互作用タンパク質(あるいは他の分子)をFRETアクセプター(例えばローダミン)で標識し、
3.アクセプター標識相互作用分子を、アクセプター標識相互作用分子とドナー標識ポリペプチドの間の相互作用に干渉する能力について試験される化合物の存在下あるいは不在下で、ドナー標識ポリペプチドにさらし、
4.蛍光エネルギー共鳴移動を測定する。
【0134】
クエンチング分析法とFRET分析法は適応される。分析法において、どちらの蛍光物の組み合わせが用いられるかに依存して、どちらかの分析法を任意のケースに採用することができる。
【0135】
ここに示されたHFE2Aの解説は、ロー、ミディアムあるいはハイスループットスクリーニング分析の開発に有用であり得るHFE2Aの多種多様な生物学的活性を教示する。
【0136】
種々の分析法に役立つ有用な生物学的活性の一つは、リガンド結合(すなわち、HFE2Aのリガンドとの結合を抑制あるいは増強する分析法)である。ヘプシジンタンパク質(OMIM:606464、Roetto,A.et al.2003.NAture Genet.33:21−22参照)は、HFE2Aのリガンドであり得る。この分野における通常の知識を有する者は、他のリガンドを見出し得る。HFE2Aの特異的なリガンドとの結合を抑制あるいは増強する試験化合物の能力を測定する、全細胞、細胞抽出物あるいは精製タンパク質に基づく分析法は、開発され得る。
【0137】
細胞機能分析法を設計することができる。これらの分析法において、HFE2A活性に依存する測定可能な細胞機能は、試験化合物による抑制あるいは増強を判断するために測定することができる。前記機能は細胞増殖分析法を含み、例えばここで、全体で引用例としてここに組み込まれているPCT国際公開第02/051438号パンフレットに開示されている分析法等において、化合物は、軸作成長に影響を与える能力について評価される。RGDおよびフォン ヴィレブランド因子様ドメインの存在に基づいて、HFE2Aは細胞間接着に関連し得る。分析法は、HFE2A誘導接着の生物学的活性に依存し、また試験化合物の接着を調節する能力を測定するように設計することができる。
【0138】
他の細胞に基づく分析法において、HFE2Aタンパク質応答が最初に測定される。例えばHFE2Aは、マクロファージによるトランスフェリンへの鉄の放出を調節し得る。あるいはHFE2Aは、CaCo2膜を超えた鉄の輸送を調節し得る。または、HFE2Aは、分析においてNRAMP2鉄輸送動作の変化を引き起こし得る。HFE2Aに対するこれらの引き起こされた反応を調節する化合物について分析し、それによりHFE2Aの生物学的活性の調節因子を見出すことができる。シグナル伝達分析は、HFE2Aのシグナル伝達分子としての可能性のある機能に基づいて開発することができる。適応され得る鉄輸送分析法は、十二指腸腺窩細胞のHFE−CHO細胞モデルにおける鉄取り込みを含む。これは96ウェルプレート中での分析に適用することができ、ここで試験化合物は鉄取り込みを減少させる。同様に、試験化合物はヒトヘパトーマ細胞(HLF)における59Fe結合トランスフェリン取り込みを抑制し得る。適応に適した分析法は、Su,M.A.et al. Blood,Vol.92 No.6(September 15),1998:pp.2157−2163;Nunez MT,et al. J.Nutr 1996 Sep;126(9):2151−8;Tandy S,et al. J Biol Chem 2000 Jan 14;275(2):1023−9;あるいはFeeney GP and Worwood M. Biochim Biophys Acta 2001 Apr 23;1538(2−3):242−51に開示されたものを含む。HFE2Aは、ヒト反発誘導分子(RGM)(図3)およびニワトリRGM様分子(図5)と配列類似性を共有し、また類似の構造のドメインを共有する。RGMは神経発生および免疫応答に関連するタンパク質のファミリーである(国際公開第02/051438号パンフレット参照)が、タンパク質およびmRNA発現が神経細胞中に見られないため、最低いくつかのこれらの機能のHFE2Aタンパク質への割り当ては、疑わしいと考えなければならない。ともかく関連タンパク質は細胞膜上で、局所的には細胞内シグナルを開始するレセプターとして、また全身的には分割可溶性タンパク質として働くことが知られている。ニワトリRGMのように、HFE2Aは、それが可溶性ペプチドとして働くことを示唆する推定上の細胞外切断部位を持つ。一つの提示された作用機構は、この分泌分子がヘプシジンのような腸上皮細胞の基底側面表面上のタンパク質と相互作用し、飲食物からの鉄の先端面取り込みを調節するものであり得る。この相互作用は、腸細胞の基底面で直接的であり、あるいは鉄取り込みの調節をもたらす上流相互作用を介し得る。この直接あるいは間接的作用は、細胞培養システムにおいて分析することができる。
【0139】
HFE2A誘導応答(すなわちHFE2A生物学的活性)に依存する化合物スクリーニング分析の一例は、Caco2 HFE2A誘導鉄輸送分析である。Caco2細胞はヒト結腸直腸細胞系であり、腸内吸収を測定するための標準規格であると認められている。コンフルエント(集合する)まで増殖したこれらの細胞は、明確な先端および側底面と、密着結合を形成する。トランスウェル プレート インサート(Transwell plate inserts)において透過膜上で増殖され、Caco2細胞は膜上で細胞の側底面を伴って分裂し、Bチャンバー溶質にさらされる。一方、細胞の先端部はAチャンバー中の溶質にさらされる。このシステムは、AからBへの腸上皮を介した鉄の積極的輸送と、細胞を介した腸管腔から血液への偽輸送を測定するために有用である。HFE2Aに対する応答は、CaCo2分析のB(側底)チャンバーにHFE2Aを添加することにより引き起こすことができる。組換えHFE2Aは哺乳類細胞中で生成することができ、精製タンパク質はBチャンバーに直接添加される。または、培養細胞はHFE2A構成体を移入(トランスフェクト)することができ、続いてHFE2Aタンパク質を発現する。トランスフェクションに適した細胞は、それぞれヒト肝臓癌細胞あるいはマウスマクロファージ細胞である、HepG2あるいはRAW細胞であろう。これらの2つの細胞型は、鉄代謝に関連し、またおそらくHFE2Aを発現することが知られている。HFE2Aを包含するこれらのトランスフェクト“ドナー”細胞からの培地は、Caco2細胞のBチャンバーに適用することができ、調整された培地の“アクセプター”およびAチャンバーからの鉄吸収を監視することができる。トランスフェクトドナー細胞はまた、Bチャンバー表面の底部でも増殖させることができ、したがってアクセプター細胞の基底面からミリメートルの範囲内で、Bチャンバー中に直接HFE2Aを放出することができる。
【0140】
HFE2Aが、レセプターとして働こうと、細胞内シグナル分子として働こうと、あるいは分泌タンパク質として働こうと、この多細胞コミュニケーションシステムはHFE2A誘導反応を測定するために用いることができる。この分析法は鉄輸送、Aチャンバーからの鉄取り込み、鉄吸収、およびまたはBチャンバーへの鉄の細胞分泌を測定し得る。この細胞コミュニケーションシステムはその後、腸吸収における鉄調節のための初期薬剤化合物スクリーニングに用いることができる。
【0141】
全細胞あるいは細胞抽出物を用いて、GPI切断あるいはHFE2Aの分泌を増加あるいは減少させる化合物のために、あるいはHFE2AのN−グリコシル化を増加あるいは減少させる化合物のために、分析法を開発することができる。HFE2Aの翻訳後修飾因子を調節する化合物を測定する分析法は、潜在的な治療物質を同定するために用いることができる。
【0142】
いくつかの分析法は、好ましくは精製あるいは半精製HFE2Aタンパク質分析法を採用する。このタンパク質は、GPI結合型、あるいは切断、可溶性型であり得る。I125標識HFE2Aは、これらの分析法に対して有用であり得る。前記分析法は、RGDあるいはフォン ヴィレブランド因子様ドメインによって凝集あるいはホモ二量体化するHFE2Aの傾向に基づいて設計された分析法である凝集法を含む。この分析法において化合物は、その同種親和性二量体化ドメインの凝集を増強あるいは抑制する能力について試験される。この場合、上記タンパク質間相互作用分析は、異なる蛍光体で標識されたHFE2Aの2つのプールを用いることができる。いくつかの実施例において、HFE2AのGPI切断型が、GPI結合型と共に用いられ得る。代わりの半精製フォーマットは、酵母2ハイブリッドおよびまたはファージディスプレイフォーマットを含み、ここでHFE2A結合領域はベイトベクターおよびプレイベクターの両方に組み込まれる。このフォーマットは、ラジオイムノアッセイあるいはプレートフォーマットに適した、適度なハイスループットスクリーニング分析を提供するであろう。
【0143】
さらに、HFE2Aは鉄代謝経路の他の既知のタンパク質:トランスフェリン、Tfレセプター、Hfe、ヘプシジン、p97あるいは他の鉄輸送体、およびそのレセプターと相互作用し得ることは注意されるべきである。この相互作用は、スクリーニング分析の基礎として用いられ得る有用な活性である。
【0144】
さらに、薬剤スクリーニング分析もまた、遺伝子機能とのアンチセンス相互作用により推定されたポリペプチド機能に基づき得る。HFE2Aの細胞内局在、あるいは前記タンパク質の細胞内局在における変化に起こる影響もまた、薬剤スクリーニングのための分析法として用いられ得る。
【0145】
前記にしたがって本発明は、ヒトの身体の組織中に見られ(例えばヒト由来の配列番号10から12)、また若年性ヘモクロマトーシスの遺伝的感染と関連する、ヘモジュヴェリンあるいはHFE2Aに指定されたタンパク質のアミノ酸配列を提供する。さらに、複数の突然変異が、若年性ヘモクロマトーシスを持つことが確認された個体から得られたこの配列中に認められた。したがって、ヘモジュヴェリンあるいはHFE2Aと関係を持つ物質は、本発明の治療物質として評価するための候補化合物に相当する。
【0146】
別の広い分野のスクリーニング分析法は、転写分析である。これらの分析法は、HFE2A遺伝子の転写を調節する(すなわち、増加あるいは減少)化合物を同定しようとするものである。転写分析に関連して、一態様において本発明は、その転写が鉄代謝の疾患の改善に役立つポリヌクレオチドの活性を調節する物質を同定するための方法に関し、前記方法は、
a)化学物質を、生理的条件下で、HFE2Aのプロモーター領域に対応するポリヌクレオチド(好ましい実施例において、プロモーターは配列番号19の配列を持つ)と接触させ、
b)前記接触の結果としての前記ポリヌクレオチドの転写の変化を検出し、
それにより、前記ポリヌクレオチドの転写あるいは遺伝子活性を調節する物質を同定することを含む。
【0147】
前記調節は、好ましくは転写の減少あるいは増加である。好ましい実施例において、前記転写は転写産物の量を測定することにより測定される。有用な実施例において、HFE2Aのプロモーター領域はレポーター遺伝子、すなわちその転写が適宜測定される遺伝子(例えば、緑色蛍光タンパク質、ルシフェラーゼ、クロラムフェニコール、アセチルトランスフェラーゼ(CAT)等のレポーター遺伝子)に動作可能に結合する。
【0148】
好ましい実施例において、その転写が測定あるいは監視されるべきポリヌクレオチドは、無傷細胞、好ましくは哺乳類細胞、最も好ましくはマクロファージ、肝細胞、腸細胞、造血性細胞、膵臓細胞、骨格筋細胞および他の骨髄、神経、CNSの細胞、あるいは脊髄細胞から選択された細胞中に存在するが、他の組織由来の細胞もまた用いられ得る。さらなる好ましい実施例において、前記無傷細胞は、例えば遺伝子操作により、前記ポリヌクレオチドを包含するように処理された細胞であり、好ましくはここで前記細胞は、そのような操作がなければ目的とする遺伝子あるいはポリヌクレオチドを発現しないものである。または、非組換え細胞は、例として組織の細胞あるいは細胞系に採用することができ、ここでHFE2Aの転写は構成的であり、あるいは誘導することができる。
【0149】
ここでの開示にしたがって、HFE2A遺伝子の上流非翻訳領域およびプロモーター領域は、配列番号19あるいは22および公開された検索可能な配列データベースから容易に得られる。前記ゲノムあるいは非翻訳領域は、その転写を調節する物質を同定するための分析等において、同定された遺伝子を包含するプラスミドに含まれ得る。そのような一つの分析法において、上流ゲノム領域はレポーター遺伝子に連結(ライゲーション)し、転写プラスミド中に組み込まれる。プラスミドは細胞中にトランスフェクトされ、組換え細胞は試験化合物にさらされる。レポーターの発現を増加あるいは減少させるこれらの化合物は、その結果遺伝子/タンパク質の調節因子であり、本発明の治療物質と見なされる。
【0150】
本発明はまた、ここに開示されたポリヌクレオチドあるいはポリペプチドを発現するように処理された組換え細胞を請求する。ここで動物においてHFE2Aに関連すると開示された遺伝子あるいはその断片は、タンパク質を発現させるための手段として使用可能であり、ここで前記遺伝子はin vitroで、適切な細胞中でタンパク質をエンコードし、あるいは薬剤スクリーニングのためのin vitro分析において用いるための十分に大量なタンパク質を生成するために用いることができる発現ベクター中に複製することができる。または、発現構成体は、HFE2Aのゲノムプロモーター領域を使用し、それをその発現レベルが容易に測定されるレポーター遺伝子等の遺伝子に連結する。採用され得る発現システムは、バキュロウイルス、ヘルペスウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、細菌システム、およびCHO細胞等の真核生物システムを含む。裸DNAおよびDNA−リポソーム複合体もまた用いることができる。したがって本発明は、異種HFE2A遺伝子を包含する組換え細胞系を請求する。
【0151】
前記組換え細胞は、前記細胞を治療特性を持ち得る物質と接触させた後の、HFE2A遺伝子あるいは適当なレポーター遺伝子の転写レベルを分析するための転写分析において用いられ得る。遺伝子転写レベルは、ノーザンブロット分析あるいはRT−PCRにより、あるいはまた生成されたタンパク質の量の測定により、この分野において知られた多数の方法の一つにより、またはそれらの遺伝子あるいは他の遺伝子によりエンコードされたポリペプチドの生物学的活性のレベルを測定することにより、定量することができる。このように遺伝子転写は、物質に対する細胞の生理学的反応の指標となる標識として働くことができる。したがって、この反応状態は、前記物質での個体の処置の前に、またその間の様々な時点で測定され得る。
【0152】
精製タンパク質分析が望まれる場合には、組換え細胞系はまた、精製タンパク質の調製に好適である。この分野における通常の知識を有する者は、組換え細胞系を産生し、高度に精製されたタンパク質を包含するタンパク質画分を抽出することができる。これらのサンプルは、タンパク質と相互作用する化合物を同定するための種々の結合分析に用いることができる。相互作用する化合物は、本発明の治療物質あるいはその類似体である。
【0153】
標的選択性は、治療物質の開発の重要な側面である。本発明は特に、ここに定義された、HFE2A遺伝子の転写あるいは、それによりエンコードされたHFE2Aポリペプチド(ヒト由来の配列番号10から12等)の活性に高い特異性を持って作用あるいは拮抗し、また他の遺伝子およびまたはポリペプチドにほとんどあるいは全く影響を与えない化学物質、特に有機小分子の同定を意図する。
【0154】
したがって、そのような好ましい実施例の一つにおいて、HFE2Aに対応する遺伝子、好ましくはヒト由来の配列番号1から9の配列を持つ遺伝子の発現を調節、好ましくは抑制し、あるいはそれらによりエンコードされるポリペプチドの活性を調節する物質を同定するための、ここに開示された方法は、最初に前記物質を同定し、続いて最低一つの他の遺伝子あるいはポリペプチド、好ましくは治療的介入により阻害されず、また、ほとんどあるいは全く影響のない重要な生理学的結果を伴う遺伝子あるいはポリペプチドの発現あるいは活性への影響について、前記物質を試験することを含む。
【0155】
他の態様において本発明は、本発明の化合物をコンピュータにより同定するための方法を提供する。この方法は、(a)(すなわち、X線結晶学的技法あるいは他の技法を介して)HFE2Aポリペプチドタンパク質の活性部位の結晶構造を測定し、(b)コンピュータモデリングを介して、活性部位と相互作用する化合物を同定し、それにより化合物ありはその類似体を前記ポリペプチドの活性の調節に有用な化合物として同定することを含む。このプロセスは時にin silicoスクリーニングのように示される。コンピュータで作成した数千万の化合物を試験することができる、標的タンパク質と相互作用できる試験化合物の可能性を試験するための高性能ソフトウェアが、この分野における通常の知識を有する者に利用可能である。
【0156】
本発明の方法を用いて同定された潜在的な治療化合物は通常、推測された効果を確認するために、動物モデルシステムで試験される。したがって、さらなる態様において、本発明は治療物質を同定するための方法に関し、前記方法は、
a)動物に、ここに開示された分析法あるいはスクリーニング法を用いて活性を持つと認められた物質を投与し、
b)前記動物における、前記投与に起因した鉄代謝の変化を検出し、
それにより、鉄代謝の疾患を処置するための物質を同定することを含む。
【0157】
この分野における通常の知識を有する者は、動物モデルにおいて(すなわち潜在的な治療物質での処置の結果として)調節され得る鉄代謝の通常の測定結果が、トランスフェリン飽和率、ヘプシジンレベル、腸での放射性鉄取り込み、肝臓鉄含量、全身鉄含量、貧血指数を含むことを承知している。研究に特化したマウスモデルは、貧血性マウス、鉄過剰マウス、ヘモクロマトーシスマウス(hfe/hfe)、Hpxマウス(低トランスフェリン血症マウス)、およびその他のマウスを含む。
【0158】
さらなる態様において本発明は、鉄代謝の疾患に苦しむ動物の状態を処置するための方法に関し、前記方法は、前記動物に本発明の分析法により最初に同定された物質の効果的な量を投与することを含む。好ましくは、前記動物は、鉄代謝の疾患に苦しむ患者等のヒト患者である。
【0159】
したがって、本発明のスクリーニング分析は、鉄代謝の疾患を処置するための治療物質の評価、同定および開発を簡素化する。
【0160】
本発明はまた、ヘモジュヴェリン、HFE2Aポリペプチドあるいはそのエピトープを標的とする、あるいは相互作用する、もしくは結合する抗体および免疫反応性物質を含む。ここに開示されたポリヌクレオチドによりエンコードされたポリペプチドは、モノクローナル抗体を含む抗体をもたらす抗原として用いることができる。前記抗体は、治療物質、機能性試験、薬剤スクリーニング分析、およびまたは診断用物質を含むがこれらに限定されない多種多様な目的に有用であろう。本発明にしたがって同定されたHFE2Aポリペプチドの発現あるいは生物学的活性に対する物質(例えば有機小化合物)の影響を監視することは、基礎的な薬剤スクリーニングだけでなく、臨床試験においても適用することができる。例えば、遺伝子転写、タンパク質レベル、あるいは生物学的活性を増加あるいは減少させる、ここに開示されたスクリーニング分析により測定された物質の効果は、不適当な遺伝子転写、タンパク質レベル、あるいは生物学的活性に起因する鉄代謝の疾患の症状を示す被験者(例えば、ここで研究された個体)の臨床試験において監視することができる。または、HFE2A遺伝子、および構造的、機能的に関連する遺伝子、それらと高い配列相同性を持つ遺伝子の転写、タンパク質レベル、あるいは生物学的活性を調節することが、スクリーニング分析により測定された物質の効果は、減少した、変換された遺伝子転写、タンパク質レベル、あるいは生物学的活性を示す被験者の臨床試験において監視することができる。このような臨床試験において、ここに開示された遺伝子あるいはポリペプチド、および好ましくは、例えば鉄代謝に関わる他の遺伝子の転写あるいは活性は、特定の薬剤の効果を解明するために用いることができる。
【0161】
好ましい実施例において、本発明はある物質(例えば、ここに開示されたスクリーニング分析により同定されたアゴニスト、アンタゴニスト、ペプチド模倣薬、タンパク質、ペプチド、抗体、核酸、小分子あるいは他の薬剤候補)での被験者の処置の効果を監視するための方法を提供し、前記方法は、(i)患者が鉄代謝疾患あるいは障害の処置を必要としていることを判断し、(ii)ここに開示されたスクリーニング分析の一つを用いて同定された物質の効果的な量を投与し、(iii)前記投与後の鉄代謝の改善を解明し、(vi)それに応じて被験者への物質の投与を変えるステップを含む。例えば、前記物質の投与の増加は、遺伝子あるいはエンコードされたポリペプチドの発現あるいは活性を減少させるために、すなわち前記物質の効果を高めるために望ましいものであり得る。
【0162】
ここで、患者はヒト以外であり、バイオプシーサンプルが、タンパク質、mRNA、あるいはゲノムDNA投与後サンプルのレベルを測定し、投与前サンプルの前記タンパク質、mRNA、あるいはゲノムDNAの発現あるいは活性のレベルと、対応する投与後サンプルのそれとを比較し、それにより、ここに開示された一つあるいはそれ以上の遺伝子、および同時に起こる鉄代謝の疾患の減少への薬剤投与の効果を示すこと等により、遺伝子転写の減少を示すために用いることができる。
【0163】
精製あるいは半精製HFE2Aタンパク質、あるいはその断片、もしくはHFE2Aに対応するタンパク質、および任意のそれらの生化学的に修飾された型は、それら自体が本発明の治療物質である。これらのタンパク質あるいは断片の組換えあるいは非組換え型は、鉄代謝の疾患等の疾患の治療のために、それを必要とするヒトに投与することができる。この分野における通常の知識を有する者は、前記物質を産み出すための技術および、投与の状態を測定するための技術をよく知っている。
【0164】
HFE2Aの細胞における遺伝子発現あるいは遺伝子転写レベルを調節し得る特定の化合物は、HFE2A遺伝子(前記遺伝子のエキソンあるいはイントロン、プロモーター、3′末端部等を含む)と特異的にハイブリダイズするアンチセンス核酸、リボザイムおよび他の核酸構成体を含む。これらの特定の化合物は本発明の化合物であり、また前述の疾患の処置に有用である。前記化合物の設計および製造は、この分野における通常の知識を有する者によく知られている。
【0165】
HFE2Aの活性を調節する特定の化合物は、前記ポリペプチドのエピトープに特異的に結合する抗体(ポリクローナルあるいはモノクローナル)および、修飾された抗体あるいは抗体の断片を含む。これらの特定の化合物は本発明の化合物であり、また前述の疾患の処置に有用である。前記化合物の設計および製造は、この分野における通常の知識を有する者によく知られている。特に、Abgenix,Inc.(Freemont,CA)、Medarex,Inc.(Princeton,NJ)、Protein Design Labs,Inc.(Freemont,CA)、Genentech(South San Francisco,CA)、その他により提供される技術を用いて生成されたヒト化抗体がどちらかといえば好ましい。
【0166】
体内のHFE2Aの活性を調節する特定の化合物は、HFE2A遺伝子配列あるいは突然変異HFE2A配列の全部または一部を包含する遺伝子治療ベクターを含む。この分野における通常の知識を有する者によく知られているように、遺伝子治療は生物中でHFE2Aの細胞への送達を可能にし、ここでHFE2Aは活動して発現し、それにより前記細胞におけるHFE2Aポリペプチドタンパク質のレベルあるいは量を変える。それによりこれらのベクターは、体内でのHFE2Aの活性を調節し、ここに開示された治療指標に有用である。
【0167】
体内のHFE2Aの活性を調節する特定の化合物は、有機小分子を含む。前記化合物は自然発生し得る。あるいは合成したものであり得る。前記化合物の収集物および組み合わせライブラリーは、商業的供給源から広く入手可能である。この分野における通常の知識を有する者に知られているように、本明細書中に開示された分析法等のスクリーニング分析は、望ましいHFE2A調節能力を持つ治療物質を同定するために、容易に適用することができる。鉄代謝の疾患の減少に効果的であることが認められたアゴニスト、アンタゴニスト、あるいは模倣薬は、動物モデル(例えば、マウス、チンパンジー、その他)において有用であることが確認され得る。他の実施例において、本発明の化合物を用いた処置は、複合的な効果、場合によってはさらに相乗効果を獲得するために、他の治療物質と組み合わされ得る。
【0168】
候補調節因子は、精製(あるいは実質的に精製された)分子であり得るか、あるいは化合物の混合(例えば、細胞から得られた抽出物あるいは上清)の一成分であり得る。混合化合物分析において、遺伝子発現は、単一化合物あるいは最小限の化合物混合体が治療効果を持つ態様で遺伝子あるいはタンパク質活性あるいは発現を調節することが示されるまで、候補化合物プール(例えば、HPLCあるいはFPLC等の標準精製技術により生成される)の漸次小さくなるサブセットに対して試験される。
【0169】
最適化誘導および、類似体開発および選択
通常、治療特性を持つ新規薬剤は、自然産物あるいは合成(あるいは半合成)抽出物両方のライブラリー、場合によっては大きなライブラリーから、もしくはこの分野において知られる方法にしたがった化学ライブラリーから同定される。この分野、あるいは薬剤発見および開発における通常の技術を有する者は、試験抽出物あるいは化合物の正確な情報源が本発明のスクリーニング法に絶対不可欠なものではないことを理解するであろう。したがって、事実上いくらでも化学抽出物あるいは化合物を、ここに開示された例となる方法を用いて選別することができる。前記抽出物あるいは化合物の例は、植物、菌類、原核生物あるいは動物抽出物、発酵もろみ液、合成化合物、および既存の化合物の修飾体を含むがこれらに限定されない。多数の方法がまた、サッカライド、脂質、ペプチド、および核酸の化合物を含むがこれらに限定されない任意の数の化学物質のランダムあるいはダイレクト合成体(例えば、半合成あるいは完全合成体)を生成するために利用可能である。合成化合物ライブラリーは、Brandon Associates(Merrimack,NH)およびAldrich Chemical(Milwaukee,WI)から市販されている。または、細菌、菌類、植物および動物抽出物の形状の自然化合物のライブラリーは、Biotics(Sussex,UK)、Xenova(Slough,UK)、Harbor Branch Oceangraphics Institute(Ft.Pierce,FL)、およびPharmaMar,U.S.A.(Chambridge,MA)を含む、多数の情報源から市販されている。さらに、自然的および合成的に産生されたライブラリーは、必要な場合には、この分野において知られた方法にしたがって、例えば標準抽出および分画法によって作成される。さらに、必要な場合には、任意のライブラリーあるいは化合物が、標準化学的、物理的あるいは生化学的方法を用いて容易に修正される。
【0170】
治療活性について既知の物質の複製あるいは繰返しの脱複製(De−replication)(例えば、分類学的脱複製、生物学的脱複製および化学的脱複製、あるいはそれらの任意の組み合わせ)あるいは除去が、可能であればいつでも用いることができる。
【0171】
未精製抽出物が治療活性を持つことが分かった場合、さらに陽性主要抽出物の分画が、観察された効果に関与する化学成分を単離するために可能である。したがって、抽出、分画および精製プロセスの目的は、前記治療活性を持つ未精製抽出物中の化学物質の慎重な特性決定および同定である。化合物の混同体における活性の検出のための、ここに開示された同じ分析法を、活性成分を精製するために、またその誘導体を試験するために用いることができる。前記異種抽出物の分画法および精製法は、この分野において知られている。必要な場合には、病原性の処置に有用な物質であることが示された化合物は、この分野において知られた方法にしたがって、化学的に修飾される。治療価値があることが同定された化合物はその後、この分野において知られた鉄代謝疾患の任意の標準動物モデルを用いて分析される。
【0172】
通常、これらのスクリーニング法は、さらに評価されて少数の活性中心構造体に凝縮される大集団(すなわち、組み合わせ法により作成されたもの等の化学ライブラリー)から、関連する自然産物抽出物あるいは合成化合物を選択するための迅速な方法を提供する。前記中心構造体の多数の類似体は、治療物質として改良された特性を持つ好ましい類似体を同定するために開発され、試験され得る。
【0173】
改良された類似体はまた、改良された安定性、生体内分布、薬物動態あるいは治療標的の調節に直接的に関連しない治療物質に関して望ましい他の特徴を持つ化合物を含み得る。好ましい実施例において、本発明の改良された類似体は、生理学的方法あるいは補助的な方法により、HFE2Aポリペプチドタンパク質を発現する体内の細胞に効果的にもたらされる。類似体化合物は、それらが同定された生物学的活性を調節するか評価するために体系的に選別され、効果的に調節するものは、その結果、本発明にしたがった治療物質あるいはさらなるそれらの類似体である。
【0174】
治療物質およびそれらの使用法
この分野における通常の知識を有する者は、ここに開示された疾患の処置に用いるための、本発明によって最初に同定された新規化学物質および化合物の効果および安全性を証明するために用いられる臨床前試験およびヒト臨床試験に必要なステップに精通している。
【0175】
本発明の一つあるいはそれ以上の分析法を用いて、有用な治療物質であると最初に同定された化合物は、単位剤形において、薬剤として許容される希釈剤、担体あるいは賦形剤と共に投与され得る。従来の製薬実務が、前記組成物を患者に投与するのに適した剤形あるいは組成を提供するために用いられ得る。経口投与が好ましいが、任意の適切な投与経路、例えば静脈内、非経口、皮下、筋肉内、頭蓋内、眼窩内、眼、心室内、嚢内、髄腔内、くも膜下腔、硬膜外、槽内、腹腔内、鼻腔内、あるいはエアロゾル投与が用いられ得る。治療剤形は、溶液あるいは懸濁液の形態であり得る。経口投与に対しては、剤形は錠剤あるいはカプセルの形態であり得る。また鼻腔内に対しては、剤形は粉末、点鼻薬あるいはエアロゾルの形態であり得る。
【0176】
剤形形成についてのこの分野においてよく知られた方法は、例えばRemington:The Science and Practice of Pharmacy,(19th ed.)ed.A.R. Gennaro AR.,1995,Mack Publishing Company,Eston,PAに見られる。非経口投与の剤形は、例えば、賦形剤、滅菌水あるいは生理食塩水、ポリエチレングリコール等のポリアルキレングリコール、植物性油、もしくは水素化ナフタレンを含み得る。生体適合性、生体分解性ラクチドポリマー、ラクチド/グリコリド コポリマー、あるいはポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン コポリマーは、化合物の放出を調節するために用いられ得る。本発明のアゴニストの他の潜在的に有用な非経口送達システムは、エチレンビニルアセテート コポリマー粒子、浸透圧ポンプ、埋め込み式注入システム、およびリポソームを含む。吸入用の剤形は、賦形剤、例えばラクトースを含み得るか、あるいは例えばポリオキシエチレン−9−ラウリルエーテル、グリココール酸塩およびデオキシコール酸塩を包含する水溶液であり得るか、もしくは点鼻薬の形態で、あるいはゲルとして投与するための油性溶液であり得る。
【0177】
組み合わせ治療もまた発明者により意図されている。ここに開示されたスクリーニング法の一つにより同定された治療物質は、同時に起こる状態を処置することを目的とする他の物質と共に投与され得る。例えばここで、治療物質および抗癌剤が、続けてあるいは同時に与えられる。
【0178】
本発明はまた、例えば前記産物の同定を容易にするために試験情報を生成することによる、ある産物を産生するための方法を含むプロセスに関し、前記プロセスは、前記物質(すなわちここに開示された分析法にしたがって同定された治療物質)を同定するための開示されたプロセスの一つにしたがって物質を同定することを含み、ここで前記産物は前記同定プロセスあるいは分析法の結果としての前記物質に関して集められた情報であり、またここで前記情報は、前記物質の化学的特徴および/または構造および/または性質を伝達するのに十分なものである。例えば、本発明は特に、本発明の分析法の使用者が希望の酵素調節活性を持つ化合物を選別するために前記分析法を用い、そして化合物を同定し、続いてその情報(すなわち構造、投薬量その他についての情報)を、本発明にしたがって治療あるいは研究目的で前記物質を再生産し、それを投与するために前記情報を利用する他の使用者に伝達するといった状況を意図する。例えば、前記分析の使用者(使用者1)は、多数の試験化合物を前記化合物の構造あるいは同一性を知らずに選別し(例えばここで多数のコード番号が用いられ、最初の使用者は前記コード番号が付されたサンプルが与えられるだけである)、本発明の一つあるいはそれ以上の分析プロセスを用いてスクリーニングプロセスを実施した後、続いて口頭あるいは文書で、もしくは同等の方法で、特定の調節活性を持つ化合物を同定するのに十分な情報(例えば対応する結果を伴ったコード番号)を次の使用者(使用者2)に伝える。この使用者1から使用者2への情報の伝達は、本発明により特に意図される。
【0179】
前記にしたがって、本発明は化合物によるHFE2A遺伝子発現の調節に関する試験情報を生成するための方法に関し、前記方法は、
(a)試験化合物を、HFE2Aプロモーターに動作可能に結合するレポーター遺伝子の発現を支持する条件下で、前記レポーター遺伝子を含む遺伝子構成体と接触させ、
(b)前記接触の結果としての前記レポーター遺伝子の発現の変化を測定し、ここで前記変化は調節を示し、
(c)遺伝子調節活性を示す、測定された遺伝子の発現の変化に基づく前記試験化合物の遺伝子調節活性に関する試験情報を生成することを含む。
【0180】
別のそのような実施例において、本発明は化合物によるHFE2Aポリペプチド活性の調節に関する試験情報を生成するための方法に関し、前記方法は、
(a)試験化合物を、HFE2Aポリペプチドの活性を促進する条件下で、前記HFE2Aポリペプチドと接触させ、
(b)前記接触の結果としての前記ポリペプチドの活性の変化を測定し、ここで前記変化は調節を示し、
(c)調節活性を示す、HFE2Aポリペプチド活性の変化に基づく前記試験化合物のHFE2Aポリペプチド調節活性に関する試験情報を生成することを含む。
【0181】
診断および薬理ゲノム学
さらなる実施例において、本発明は診断用および薬理ゲノム学用化合物、キットおよび方法に関する。この態様は、若年性ヘモクロマトーシス、成人発症ヘモクロマトーシス、鉄代謝の疾患の発症あるいは発症の重傷度の予後診断を含む診断についての、あるいは患者への治療物質の選択(すなわち薬理ゲノム学)におけるHFE2A遺伝子(HFE2A、ヘモジュヴェリン遺伝子)の分析に関する。また、鉄代謝の疾患を患うか、あるいは患う恐れのある患者を分類するためのHFE2A診断の使用法に関する。
【0182】
例えば、核酸分析は、ここに開示されたHFE2A突然変異を同定するために用いることができ、したがって、若年性ヘモクロマトーシスの診断を確認する。
【0183】
本発明において開示された核酸配列、野生型(非疾患関連)配列(配列番号1から9)および疾患関連(突然変異)配列(配列番号14、16および18)の両方を用いて、この分野における通常の知識を有する者は、多数の異なるタイプの核酸診断法、化合物およびキットを開発することができる。技術は、DNAシークエンシング、ハイブリダイゼーションプロービング、単鎖配座解析、ミスマッチ増幅等のPCRを基礎にした技術、および無数の他のよく知られた方法を含む。それらの分析法の全てが、患者により提供された血液、唾液、尿あるいは他の組織の小サンプルについて実施することができる。
【0184】
または、本発明において開示されたタンパク質配列(配列番号10から12)を用いて、抗体を基礎にした分析法等のタンパク質を基礎にした分析法(ELISA、ラジオイムノアッセイ等)は、正常あるいは突然変異HFE2Aタンパク質(HFE2Aポリペプチド)、例えばここに開示された突然変異に起因する突然変異ポリペプチドの発現、量または存在あるいは不在を同定するために用いることができる。
【0185】
相対的および絶対的な遺伝子転写および、生物学的活性、突然変異分析は、それぞれ鉄代謝の疾患に対する診断手段として働くことができ、したがって、HFE2AmRNAの量の測定は、前記疾患に関係する突然変異の存在あるいは不在を診断するために用いることができる。
【0186】
本発明に基づいて、この分野における通常の知識を有する者はまた、動物組織サンプルと共に用いるのに適した、他のHFE2A突然変異の生化学的、化学的および診断用分析法を開発することができるであろう。
【0187】
本発明の有用な実施例は、鉄代謝の疾患を患うか、あるいは患う恐れのある患者を分類するための診断分析を用いるものである。増強した血清フェリチンレベル、トランスフェリンレセプター飽和率、あるいはヘモクロマトーシスの遺伝子(すなわちHfe遺伝子)における突然変異の同定等の、鉄代謝の疾患についての多くの危険因子がある。これらの危険因子の全てが、鉄代謝の疾患の進行の原因となるわけではない。本発明の教示を用いて、既知の危険因子に基づいて鉄代謝の疾患を患う恐れのある患者を受け入れ、またさらにHFE2Aにおける突然変異について判断することが可能であり、ここで(遺伝子の一複製あるいは両複製における)HFE2Aの突然変異は、統計的に、鉄代謝の疾患の発現の高い可能性を示す。この発見は特に、Hfe遺伝子の既知の突然変異と軽くのみ関連する、成人発症ヘモクロマトーシスの恐れの診断および予後診断の助けとなる。
【0188】
以下のものは、成人発症ヘモクロマトーシスに関連するHFE2Aの診断利益の例である。ここに開示されたHFE2A突然変異を同定するために用いられる核酸あるいはタンパク質分析は、成人ヘモクロマトーシスの発症あるいは重傷度を予測するために用いることができる。成人ヘモクロマトーシスは、臨床浸透度の広い可変性を示す。HFE突然変異についてホモ接合である、あるヒト被験者では、重症表現型が早期に発症し、一方HFE突然変異についてホモ接合である他の被験者では、臨床的に正常のままである。HFE2A遺伝子の評価は、患者に成人疾患が現れること、および比較的症状がないままであることについて情報を与えるものであり得る。
【0189】
患者は、H63DでのHfe1遺伝子の突然変異について、ヘテロ接合であることが分かった。この突然変異は、常にヘモクロマトーシスの発症を引き起こすわけではない軽度の突然変異であると考えられる。その後、第2の診断試験がHFE2A遺伝子について実施された。それにより以下のホモ接合突然変異が明らかとなった。
【0190】
【0191】
患者は、成人発症ヘモクロマトーシスを発症した。したがって、HFE2Aの突然変異の検出は、既知の危険因子(例えばHfe1突然変異)により、ヘモクロマトーシスを発症する恐れのある患者を同定し、分類し、またどの患者が疾患を発症するのか判断するのに有用である。
【0192】
したがって、本発明は鉄代謝の疾患を発症する恐れのある患者を分類する方法を開示し、前記方法は、
a)鉄代謝の疾患についての最初の評価を実施し、
b)HFE2Aについて診断分析を実施することを含み、
ここでHFE2Aにおける突然変異の発見は、前記患者を、前記疾患を発症する恐れが統計的に高い患者であると分類する。
【0193】
薬理ゲノム学は、病気に冒された個人における変化した薬物動態および異常作用に起因する、薬剤に対する応答の臨床的に重要な遺伝的変異を取り扱う(Eichelbaum,M.,Clin.Exp.Pharmacol.Physiol.,23:983−985,1996;Linder,M.W.,Clin.Chem.,43:254−266,1997)。通常、2つのタイプの薬理ゲノム学的状態が区別することができる。遺伝的状態は、薬剤の身体への働き方を変える単一因子(変化した薬剤作用)として伝えられる。あるいは遺伝的状態は、身体の薬剤への働き方を変える単一因子(変化した薬剤代謝)として伝えられる。変化した薬剤作用は、HFE2A遺伝子のプロモーター、イントロンあるいはエキソン配列における多型(例えば、一塩基変異多型あるいはSNP)を持つ患者に起こり得る。したがって、多型の存在および普及率を測定することにより、特定の治療物質に対する患者の反応の予測が可能である。
【0194】
この薬理ゲノム学分析は、治療物質、特に本明細書に開示された疾患を処置するための治療物質の投与による副作用の予測を含む、患者の遺伝子型にしたがった薬剤処置の仕立て方をもたらすことができる。薬理ゲノム学は、個人の遺伝子型(例えば、個人の遺伝子型は、個人の特定の薬剤に反応する能力を測定するために検査される)に基づく、個人の治療あるいは予防処置のための物質(例えば、薬剤)の選択を可能にする。
【0195】
HFE2A遺伝子(HFE2A)に対応する遺伝子あるいはタンパク質を用いる診断はまた、潜在的な治療物質の臨床試験のための患者の選択に有用である。患者は、HFE2A遺伝子のDNAあるいはタンパク質配列にしたがって階層を成すことができ、薬剤処置に対する反応を評価することができる。前記階層化は、潜在的な治療物質についての効果を証明することが求められる患者の数を大きく減らすことができる。
【0196】
したがって本発明は、HFE2A遺伝子の突然変異の存在あるいは不在を同定するように設計された化合物、試薬およびキットを含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0197】
(実施例1)
若年性ヘモクロマトーシス2A(HFE2A)に関与する遺伝子突然変異の同定
3.我々は、JHHを伴う13人の個人を含むギリシャ人の10家族を集めた。これらの家族の家系図は、図9aから9dに示される。これらの家族(JH3から12)の5家族が既に報告されていた(JH3から7)(Papanikolaou,G.et al.Linkage to chromosome 1q in Greek familes with juvenile hemochromatosis.Blood Cells Mol.Dis.27,744−749(2001))。1家族、JH7のみが、血族であることが知られている。我々は、疾患が、ゲノム配列から同定された6つの新規マイクロサテライト標識を含む25個の遺伝子型標識を用いることにより、新しい家族の1q21(HFE2A;OMIM602390)との関連と一致することを確認した。Build 31ヒトゲノム配列集合はギャップと複製を含んでいるが、我々は連結間隔の大きさを推定することができ、また既存の配列コンティグに基づいて連結境界と遺伝子含有量を明確にすることができた。JH7のホモ接合性マッピングは、標識CA3AL590452(141595604から141595847bp)とCA1AL596177(143293543から143293826bp)の間の〜1.7Mb間隔中の候補領域の境界を明確にした(各標識のプライマー配列は表6にある)。
【0198】
この領域のホモ接合性はまた、既知の血族でない7家族の病気に冒された個人にも観察された。我々は、さらに12個の標識を用いてハプロタイプを構成することにより、6つの異なるギリシャ人ハプロタイプを得た。家族JH3、5、6、7、10、11および12の病気に冒された個人は、連結間隔中に最低6から7の標識に対する対立遺伝子を共有していた。JH4および8の病気に冒された個人は、異なるホモ接合ハプロタイプを示した。
【0199】
【表6】
【0200】
HFE2Aの突然変異の同定
HFE2Aの突然変異、(LOC148738)ENSG00000168509、転写産物ENST00000306561、アンサンブル v.12.31.1、2002年11月。
【0201】
我々は最初、この遺伝子の3つのコーディングエキソンの一つ(ENSE00001277351、v.12.31.1)の配列を決定した。シークエンシングは最初、家族JH3および4の、固有のハプロタイプを保持していたであろう発端者に限定した。最初に同定された突然変異は、JH4−203における、3′エキソンのTからCへの転移(c.842T>C、p.1281T)であった。JH4−203は、このSNPについてホモ接合である。病気に冒されていない2人の兄弟と1人の子供は、このSNPについてヘテロ接合である。このSNPは、いずれの他のJH発端者あるいは家族の構成員にも存在せず、また74人のヨーロッパ人および74人のギリシャ人のコントロールの染色体にも存在しなかった。
【0202】
このエキソン内で同定された第2の遺伝的変異は、GからTへの塩基転換(c.959G>T、p.G320V)である。このSNPは、JH3発端者ではホモ接合であった。病気に冒されたJH3は、c.959T対立遺伝子についてホモ接合であり、病気に冒されていない1人の兄弟は、このSNPについてヘテロ接合である。このSNPは、128人のヨーロッパ人と37人のギリシャ人のコントロールの染色体には存在しなかった。10のJH家族の全ての家族構成員のシークエンシングの後、このSNPが家族JH5、JH6、JH7、JH10の病気に冒された個人ではホモ接合であり、JH11発端者および、JH12発端者の両親ではヘテロ接合であることが分かった。
【0203】
第3の変異、ヌクレオチド1079の欠失(c.1079delC、p.C361fsX366)は、JH8においてホモ接合状態で同定された。これは、5つの固有のアミノ酸および未成熟終止をもたらす。このSNPはまた、JH11発端者にも存在し、この個人が複合へテロ接合であることを示す。
【0204】
本明細書における配列番号リストに開示された配列についてのさらなる情報
LOC148738エキソン
エキソン1、3a、3bおよび4はまた、遺伝子ENSG00000168509(アンサンブル)およびREFSEQ NM_145277.1(NCBI)に見られた。エキソン2は、配列AK098165.1に基づくアンサンブル予測から推測され得る。
【0205】
配列検索を簡略化するために、エキソン配列配位が、ヒトゲノムのNCBI31アセンブリに基づいて以下に提供される。これらについての配列番号は以下のとおりである。
【0206】
配列番号1−エキソン1 ENSE00001155188
開始:142000393、終止:142000541 Chr:1
配列番号2−エキソン2
開始:142001790、終止:142001993 Chr:1
配列番号3−エキソン3a ENSE00001155182
開始:142002394、終止:142002430 Chr:1
配列番号4−エキソン3b ENSE00001277320
開始:142002394、終止:142002953 Chr:1
配列番号7−転写産物2 ENST00000317920
エキソン1、3a、4、翻訳_開始:208
配列番号8−転写産物3 エキソン1、3b、4 翻訳_開始:392
配列番号9−転写産物4 エキソン1、2、3b、4 翻訳_開始:257
【0207】
LOC148738翻訳タンパク質
タンパク質1は、転写産物1および転写産物2のタンパク質翻訳であり、アンサンブルタンパク質ENSP00000320072およびNCBIタンパク質NP_660320.1と類似する。タンパク質2は、転写産物2のタンパク質翻訳であり、AK098165.1のタンパク質翻訳に見られ得る。タンパク質3は、予測アンサンブルタンパク質ENSP00000304614と類似する。配列番号は以下のとおりである。
【0208】
配列番号10−タンパク質1 ENSP00000320072
転写産物1および転写産物2より翻訳された
配列番号11−タンパク質2
転写産物3より翻訳された
配列番号12−タンパク質3 ENSP00000304614
転写産物4より翻訳された
【0209】
ヒト、マウスおよびラット由来のHFE2Aプロモーター配列
配列番号19から21については、プロモーター配列は、転写開始部位の1500bp5′で始まると思われる。
【0210】
HFE2Aプロモーター領域およびエキソンを含むヒトゲノムDNA断片は以下の配列番号を持つ。
【0211】
配列番号22−HFE2Aプロモーター領域およびエキソンを含むヒトゲノムDNA断片
配列番号23−gi|24308189|ref|NP_064596.1|ヒトRGMと類似する
配列番号24−染色体5上のENSESTP00000023393 ヒトHFE2Aパラログ、最初のメチオニンから開始する配列と類似する
配列番号25−ENSMUSESTP00000016634 マウスHFE2Aと類似する
配列番号26−ヒト由来であると注釈されるがヌクレオチド配列はラット由来であると同定される、gi|21758120|dbj|BAC05248.1|ラットHFE2Aと類似する
配列番号27−N末端が不明である、SINFRUP00000138308 フグHFE2Aと類似する
配列番号28−gi|22651834|gb|AAM95449.1|ニワトリRGMと類似する
【0212】
この分野における通常の知識を有する者は、上述の化合物および方法の多数の変形に精通しており、その全てがさらに以上に示される請求の範囲によって包含される。
【図面の簡単な説明】
【0213】
【図1】LOC148738遺伝子構造を示す図
【図2】ヒト、マウスおよびラットのHFE2Aのプロモーター配列のアラインメントを示す図
【図3】ヒトLOC148738426aa遺伝子産物およびヒトパラログのタンパク質配列アラインメントを示す図
【図4】ClustalXを用いたLOC148738配列の配列アラインメントを示す図
【図5】ヒトLOC148738遺伝子産物とニワトリRGMのタンパク質配列アラインメントを示す図
【図6A】複数種のホモログ間の高度の類似性の概要を示す図
【図6B】異なる種におけるHFE2Aに類似する遺伝子間の高度の類似性を示す図
【図7A】LOC148738の426aa翻訳読み取り枠の構造的特徴を示す図
【図7B】HFE2Aの426aa翻訳におけるシグナルペプチド切断部位の予測を示す図
【図7C】HFE2Aの426aa翻訳における膜貫通領域の予測を示す図
【図7D】不完全フォン ヴィレブランド タイプDドメインの同定を示す図
【図7E】タンパク質分解切断部位(矢印)を示す図
【図8A】LOC148738の転写産物4から翻訳された426aaオープンリーディングフレームの核酸およびアミノ酸配列を示す図
【図8B】LOC148738の転写産物4から翻訳された426aaオープンリーディングフレームの核酸およびアミノ酸配列を示す図
【図9】若年性ヘモクロマトーシスを引き起こす遺伝的突然変異を同定するために用いた家系図
【図9A】若年性ヘモクロマトーシスを引き起こす遺伝的突然変異を同定するために用いた家系図
【図9B】若年性ヘモクロマトーシスを引き起こす遺伝的突然変異を同定するために用いた家系図
【図9C】若年性ヘモクロマトーシスを引き起こす遺伝的突然変異を同定するために用いた家系図
【図9D】若年性ヘモクロマトーシスを引き起こす遺伝的突然変異を同定するために用いた家系図
【図9E】若年性ヘモクロマトーシスを引き起こす遺伝的突然変異を同定するために用いた家系図
【技術分野】
【0001】
1.本出願は2003年4月15日に出願された合衆国仮出願60/462867号、2003年7月18日に出願された合衆国仮出願60/488607号および2003年8月28日に出願された合衆国仮出願60/498458号の優先権を主張し、その開示は全体で引用例としてここに組み込まれている。
【0002】
本発明は、概して鉄代謝疾患、特に若年性ヘモクロマトーシス(血色素症)の分野、それらに関連する遺伝子に関し、また鉄代謝疾患の治療法を含む、治療に有用な物質のスクリーニングおよび同定に対してのこの遺伝子およびその発現産物の使用法に関する。
【背景技術】
【0003】
少なくとも4つのヘモクロマトーシスと呼ばれる鉄過剰疾患が、臨床的特徴、生化学的特徴および遺伝的特徴に基づいて分類されている。ヘモクロマトーシス1型は標準的なヘモクロマトーシスであり(ときに“HFE”と示される)(OMIM Number:235200;Online Mendelian Inheritance in Man,OMIMTM. Johns Hopkins University,Baltimore,MD,at www.ncbi.nlm.nih.gov/omim/参照)、常染色体劣性疾患であって、染色体6p21.3上のHFEを指定する遺伝子における突然変異により引き起こされる。若年性ヘモクロマトーシスと呼ばれる内科的疾患(ときに“JH”あるいは“若年性ヘモクロマトーシス”と呼ばれる)もまた、ヘモクロマトーシス2型(“HFE2”)として知られている。ヘモクロマトーシス3型(HFE3;OMIM604250)は、常染色体劣性疾患であり、7q22に位置するトランスフェリン受容体(レセプター)2(TFR2;OMIM604720)をエンコードする遺伝子における突然変異により引き起こされる。ヘモクロマトーシス4型(HFE4;OMIM606069)は、常染色体優性疾患であり、Ferroportinをエンコードし、2q32に位置するSLC11A3遺伝子(OMIM604653)における突然変異により引き起こされる。
【0004】
いくつかのファミリーにおいては、若年性ヘモクロマトーシスは染色体1q21との関連を示すが、一方他のファミリーにおいては、染色体19q13に位置するヘプシジン抗微生物ペプチドをエンコードする遺伝子における突然変異により引き起こされる。若年性ヘモクロマトーシス(HFE2)の2つのフォームが仮にそれぞれHFE2AおよびHFE2Bと示される。本発明は、染色体1q21と関連するJHのフォームであるHFE2Aの遺伝的性質に関する。
【0005】
若年性ヘモクロマトーシス(JH)は、標準的な遺伝的ヘモクロマトーシスとは異なる。HFEは男性(雄)に発現する傾向があるが、一方JHは両方の性に等しく影響を与える。JHは鉄蓄積を含み、若年期に発現し、通常30歳前に臨床症状を引き起こす。JHは標準的な遺伝的ヘモクロマトーシスよりもより深刻な疾患であり、JHは頻繁に低ゴナドトロピン性性機能低下症、心不全、不整脈およびまたは心筋ミオパチーの徴候を示す。未治療の場合には、疾患は、心合併症および他の合併症のために致命的である。
【0006】
HFE2Aの染色体位置としての1q21の同定は、Roetto et al.,Am.J.Hum.Genet.64:1388−1393(1999)にて最初に報告されたが、この遺伝子座は、鉄代謝に関連する任意の既知の遺伝子の染色体位置とは一致しなかった。
【0007】
本発明は、HFE2Aについての遺伝的性質の同定を提供し、それにより鉄代謝の疾患を処置するためのより強力な物質の開発を容易にする。HFE2A遺伝子あるいはそのタンパク質の投与は、治療的なものとなり得る。また、内在する遺伝的突然変異は、鉄代謝の疾患を処置するための新規治療標的を同定する。この治療標的は、より効果的な治療物質の同定および発見に用いることができる。HFE2Aを用いた診断用化合物、キットおよび方法もまた、JHの診断のために、また成人ヘモクロマトーシスの発現および重症度の診断および予測のために、また鉄代謝疾患のタイプの区別のために用いることができるであろう。
【発明の開示】
【0008】
(発明の簡単な要約)
本発明は、若年性ヘモクロマトーシス(ヘモクロマトーシス2A型あるいはHFE2A)が、配列番号1から9に提示されるヌクレオチド配列およびまたは配列番号10から12に提示される対応するアミノ酸配列を持つ1q22に見られるヒト遺伝子における突然変異により引き起こされることの発見に関する。遺伝子とタンパク質は、ここでHFE2Aおよびまたヘモジュヴェリン(hemojuvelin)と称され、これらの用語は文脈上他の意味に解すべき場合を除き、遺伝子、遺伝子産物およびそれらから発現したタンパク質を示す。遺伝子はまたHFE2と名づけられ、これは1q21の位置の遺伝子により引き起こされるJHフォームを意味する。この命名法はここでの発明に不可欠なものではない。
【0009】
一態様において、本発明はヘモジュヴェリンを調節する物質を同定するための方法に関し、前記方法は、試験化合物をヘモジュヴェリンと接触させ、化合物によるヘモジュヴェリン活性における変化を測定し、それにより所望の型の調節因子を同定することを含む。調節因子は、遺伝子あるいはタンパク質の活性を変換する薬剤様小分子、抗体、アンチセンス核酸、リボザイムあるいは他の化合物であり得る。
【0010】
一態様において、本発明はHFE2A遺伝子発現を調節する物質を同定するための方法に関し、前記方法は、HFE2A遺伝子の発現を促進する条件下(すなわち、ポリヌクレオチドが発現する条件)で試験化合物を、HFE2A遺伝子を含むポリヌクレオチドと接触させ、試験化合物の存在による発現の変化を測定することを含む。これは、試験化合物を調節因子として同定する。好ましい実施例において、この発現の変化は遺伝子の転写の変化として検出され、好ましくはここで遺伝子は哺乳類遺伝子であり、最も好ましくはここで遺伝子は細胞によって発現される。
【0011】
他の態様において、本発明はHFE2A遺伝子発現を調節する物質を同定するための方法に関し、前記方法は試験化合物を、プロモーター配列と動作可能に連結するレポーター遺伝子と接触させ、試験化合物によるレポーター遺伝子の発現の変化を測定し、構成体の調節因子を同定することを含む。これは、好ましくはHFE2Aプロモーター、最も好ましくはマウス、ラットあるいはヒトHFE2Aプロモーター等の哺乳類HFE2Aに動作可能に連結する前記レポーター遺伝子の転写の調節である。
【0012】
さらなる態様において、本発明は動物の疾患を処置およびまたは予防するための方法に関し、前記方法は、疾患に苦しむ動物あるいは前記疾患の発症の恐れのある動物に、治療上効果的な量のHFE2A調節因子を投与することを含む。好ましい実施例において、HFE2A調節因子は本発明の方法において調節活性を示し、最も好ましくはここで前記物質は、前記方法を用いて最初にHFE2A調節因子として同定され、そうでなければ前記活性を持つことが知られなかったものである。
【0013】
またさらなる態様において、本発明は、HFE2Aあるいは関連疾患に苦しむ個体あるいは発現する恐れのある個体を診断する方法に関し、前記方法は前記個体のHFE2A遺伝子の核酸配列を測定することを含み、ここで前記遺伝子の突然変異あるいは多型は、前記個体をHFE2Aあるいは関連疾患に苦しむ個体あるいは発現する恐れのある個体として識別する。
【0014】
本発明はまた、HFE2A活性を調節することができる化合物を同定するための方法を意図し、前記方法は(a)HFE2Aを発現する細胞を試験化合物と接触させ、(b)試験化合物の、HFE2A核酸の転写あるいはHFE2Aポリペプチドの活性を調節する能力を測定することを含み、それによりHFE2A活性を調節することができる化合物を同定する。前記方法の好ましい実施例において、化合物は抗HFE2Aポリペプチド抗体、リボザイムあるいはアンチセンスHFE2A核酸分子である。その一つの好ましい実施例において、化合物はHFE2Aリボザイムである。
【0015】
本発明はまた、ここに開示された遺伝子の単離されたポリヌクレオチドあるいは単離されたポリペプチドを包含する。
【0016】
(図面の簡単な説明)
図1は、LOC148738遺伝子構造の図である。LOC148738遺伝子は4つのエキソンと5つの転写産物を持つ。5つの転写産物は200AA、313AAおよび426AAの3つのタンパク質をコードする。エキソン2は、アンサンブル(Ensembl)により、cDNA配列AK098165.1から予測された。エキソン2へのアクセプター部位は、ゲノム配列から推測される。エキソン3aおよび3bは、同一のアクセプター部位を持つが、異なるドナー部位を持つ。非翻訳配列は白色で翻訳配列は黒色である。転写産物は長いものから短いものの順で記載されている。
【0017】
図2は、ヒト、マウスおよびラットのHFE2Aのプロモーター配列のアラインメント(配列構造)である。ヒト配列の転写開始位置は、このアラインメントの1514の位置から始まり、エキソン1は1676の位置で終了する。3つの反復配列がヒト配列内に存在する。(TAGA)nが58から129の位置であり、alu反復配列が324から603の位置であり、(GGAA)nが604から702の位置である。これらの配列はげっ歯動物配列には存在せず、遺伝子のプロモーター境界線を規定していると思われる。種間の配列相同性は、このアラインメントの844の位置の5′、転写開始の約670bpだけ5′側の位置で失われる。推定転写開始位置(TATA)は、ヒトの転写開始位置の27から24bpだけ5′側の位置で、3つの種全てにおいて保存されている。
【0018】
図3は、ヒトLOC148738426aa遺伝子産物(タンパク質3)およびヒトパラログ(重複)のタンパク質配列アラインメントを示す;染色体15上のヒト反発誘導分子(Repulsive Guidance Molecule)(ヒトRGM)(NCBI:NP_064596.1)および染色体5上で同定されたENSESTP00000023393(アンサンブル)−ヒトパラログの比較。
【0019】
図4は、ClustalXを用いたLOC148738配列の配列アラインメントを示す。ヒト(タンパク質3)、マウス(アンサンブル:ENSMUSESTP00000016634)、ラット(NCBI:AK098165.1から翻訳された、しかしながら、ヒト配列として注釈が付けられ、ラットゲノム配列と99.9%同一であり、ヒトゲノム配列と86.6%だけ同一である)、およびフグ(アンサンブル:SINFRUP00000138308)。
【0020】
図5は、ヒトLOC148738遺伝子産物とニワトリ反発誘導分子(RGM)のタンパク質配列アラインメントを示す。ヒト(タンパク質3)、ニワトリ_RGM(NCBI:AY128507.1の翻訳)、A=シグナルペプチド、B=RGD、C=N−グリコシル化位置、D=不完全フォン ヴィレブランド タイプDドメイン、E=GPI修飾、矢印=可能性のある切断部位。
【0021】
図6Aは、複数種のホモログ間の高度の類似性の概要を示す。
【0022】
図6Bは、異なる種におけるHFE2Aに類似する遺伝子間の高度の類似性を示す。
【0023】
図7(a)−LOC148738の426aa翻訳オープンリーディングフレーム(読み取り枠)の構造的特徴。RGD−細胞結合トリアミノ酸モチーフ、vWF−不完全フォン ヴィレブランド因子タイプDドメイン、TM−膜貫通ドメイン。矢印は、172と173の位置の間の可能性のあるタンパク質分解部位、335と336の位置の間のフューリン切断部位、および400の位置の予測されたGPI修飾部位を示す。図7(b)は、SignalP(Henrik Nielsen et al. Protein Engineering,10,1−6(1997))を用いたHFE2Aの426aa翻訳におけるシグナルペプチド切断部位の予測を示す。ペプチド切断部位は、S35とQ36の間にあると予測される。図7(c)は、TMHMMを用いたHFE2Aの426aa翻訳における膜貫通領域の予測を示す。膜貫通領域は403から425残基である。図7(d)は、NCBI保存ドメインサーチを用いた不完全フォン ヴィレブランド タイプDドメインの同定(57%)を示す(LOC148738=HFE2A)。図7(e)は、ニワトリ反発誘導分子(RGM)との配列比較により同定された172Dおよび173P残基間の可能性のあるタンパク質分解切断部位(矢印)を示す。
【0024】
図8は、LOC148738の転写産物4(タンパク質3)から翻訳された426aaオープンリーディングフレームの核酸およびアミノ酸配列を示す。このタンパク質は、予測されたアンサンブル転写産物ENST00000306561からのアンサンブルタンパク質ENSP00000304614と同一である。ボックス、開始コドン;三角形、潜在的なシグナルペプチド切断部位;ドット、RGD部位;十字形、予測されたO−グリコシル化部位(NetOGlyc2.0 予測);ひし形、予測されたN−グリコシル化部位(NetNGlyc1.0 予測);矢印、ニワトリRGMとの比較からの推定切断部位;2つの矢印、フューリン切断部位;四角形、予測されたGPIアンカー修飾部位;アスタリスク、終止コドン。
【0025】
図9(a)から(e)は、若年性ヘモクロマトーシスを引き起こす遺伝的突然変異を同定するために用いた家系図を示す。
【0026】
(発明の詳細な説明)
本発明は、ヘモジュヴェリンあるいはHFE2Aと称される鉄代謝の疾患に関連する遺伝子およびその対応するタンパク質を提供する。ヘモジュヴェリンおよびHFE2Aは、文脈上他の意味に解すべき場合を除き、遺伝子、遺伝子産物およびそれらから発現したタンパク質の両方を示す。
【0027】
本発明にしたがって、ヒトHFE2A遺伝子が開示される。この遺伝子は、突然変異を起こした場合、若年性ヘモクロマトーシス(ヘモクロマトーシス2A型)をもたらす。この遺伝子はまたHFE2Aと名づけられ、これは1q21の位置の遺伝子により引き起こされるJHフォームを意味する。遺伝子産物/タンパク質もまた、ときに“ヘモジュヴェリン”と呼ばれる。この命名法はここでの発明に不可欠なものではない。
【0028】
一態様において本発明は、HFE2Aを包含する、あるいはHFE2Aに対応するゲノム配列、mRNAあるいはcDNA、多型、対立遺伝子、アイソフォーム(成熟、新生児、その他)およびそれらの突然変異型、またベクター、プラスミドを含む遺伝子の核酸構成体、組換え細胞、トランスジェニック生物(あるいはそれらのノックアウト)を含む、HFE2Aの核酸配列に関する。前記核酸配列は、配列番号1から9および13から22に規定される。
【0029】
他の態様において本発明は、ポリペプチド、タンパク質、アミノ酸配列、多型、対立型、アイソフォーム(成熟、新生児、その他)、それらの突然変異型、HFE2AのmRNAあるいは他の転写産物、組換え細胞およびトランスジェニック生物を含む、ここでときにヘモジュヴェリンあるいはHFE2Aポリペプチドと呼ばれるHFE2Aの遺伝子産物に関する。ここで、このポリペプチドあるいはこれらに対応するポリペプチドは発現する。前記アミノ酸配列は、配列番号10から12および23から28に規定される。
【0030】
本発明の一態様において、HFE2Aはスクリーニング分析に組み込まれ、そこで化合物(潜在的な治療物質)がHFE2A遺伝子発現活性を調節するかどうか測定するために試験され、それにより潜在的な治療物質を同定する。
【0031】
前記にしたがって、本発明はHFE2A遺伝子発現を調節する物質を同定するための方法に関し、前記方法は、
a)試験化合物を、HFE2A遺伝子を発現する細胞と接触させ、
b)前記接触の結果としての前記HFE2A遺伝子の発現の変化を測定することを含み、
ここで、発現の変化が前記試験化合物を、HFE2A遺伝子発現を調節する物質として同定する。
【0032】
好ましい実施例において、この発現の変化は、前記遺伝子の転写における変化を検出することにより検出され、例えばここで転写における変化は、転写の減少あるいは増加である。他の好ましい実施例において、HFE2A遺伝子は哺乳類HFE2A遺伝子であり、最も好ましくはここで哺乳類はマウス、ラットあるいはヒトである。
【0033】
他の好ましい実施例において、その調節が測定される遺伝子は、哺乳類細胞、好ましくは組換え細胞中に存在し、ここで細胞は、マクロファージ、炎症細胞、肝臓細胞、肝細胞、腸細胞、造血性細胞、膵臓細胞、骨格筋細胞あるいは神経系の細胞であることを含む。
【0034】
他の態様において、本発明はHFE2Aポリペプチドの活性を調節する物質を同定するための方法に関し、前記方法は、
a)試験化動物を、HFE2Aポリペプチドの活性を支持する条件下で、HFE2Aポリペプチドと接触させ、
b)前記接触の結果としての前記ポリペプチドの前記活性の変化を測定することを含み、
ここで活性の変化が、前記試験化合物を、HFE2Aポリペプチドの活性を調節する物質として同定する。
【0035】
前記方法の好ましい実施例において、HFE2Aエンコードポリペプチドは哺乳類HFE2Aポリペプチドであり、最も好ましくはマウス、ラットあるいはヒト由来のものである。
【0036】
他の好ましい実施例において、前記調節は前記生物学的活性の減少あるいは増加である。非常に有用な実施例において、ポリペプチドは、細胞、好ましくは哺乳類細胞、最も好ましくは組換え細胞中にあるか、あるいはその一部であり、ここで細胞はマクロファージ、炎症細胞、肝臓細胞、肝細胞、腸細胞、造血性細胞、膵臓細胞、骨格筋細胞あるいは神経系の細胞であることを含む。他の好ましい実施例において、細胞は例えば遺伝子操作により、前記ポリペプチドを包含するように処理されたものであり、特にここで前記細胞は、前記操作がなければ前記ポリペプチドを発現しないものである。
【0037】
さらなる好ましい実施例において、ポリペプチドは、配列番号1、2、3、4、5、6、7、8および9より成るグループから選択された配列を持つポリヌクレオチドによりエンコードされ、最も好ましくはここで、前記ポリペプチドは配列番号10、11および12の配列から選択されたアミノ酸配列を含む。
【0038】
本発明はまた、ポリヌクレオチドの組換え型を含む、配列番号1、2、3、4、5、6、7、8および9の前記ポリヌクレオチドの一つあるいはそれ以上を含む細胞系(セルライン)に関し、また配列番号10、11および12のポリペプチド、好ましくはポリペプチドの組換え型の一つあるいはそれ以上を含む細胞系に関する。他の実施例において、本発明はヘモジュヴェリンの発現あるいは活性を調節する組成物を同定するための方法における前記細胞系の使用に関する。
【0039】
さらなる態様において、本発明は動物の疾患を処置およびまたは予防するための方法に関し、前記方法は、疾患に苦しむ動物あるいは前記疾患の発症の恐れのある動物に、治療上効果的な量のHFE2A調節因子を投与することを含む。好ましい実施例において、HFE2A調節因子は本発明の方法において調節活性を示し、最も好ましくはここで前記物質は、前記方法を用いて最初にHFE2A調節因子として同定され、そうでなければ前記活性を持つことが知られなかったものである。前記方法の好ましい実施例において、HFE2A調節因子は、選択的HFE2Aアゴニストあるいは選択的HFE2Aアンタゴニスト、その薬剤として許容される塩、およびまたはこれらの任意の組み合わせであり、ここでこれらは薬剤として許容される担体(薬剤許容担体)中のものであることを含む。一実施例において、前記疾患は、鉄過剰疾患およびまたは鉄欠乏症を含む鉄代謝の疾患である。このような鉄代謝の疾患はまた、I型糖尿病、II型糖尿病およびインスリン抵抗性の一つあるいはそれ以上を含み得る。
【0040】
またさらなる態様において、本発明は、HFE2Aあるいは関連疾患に苦しむ個体あるいは発現する恐れのある個体を診断する方法に関し、前記方法は前記個体におけるHFE2A遺伝子の核酸配列の全部あるいは一部を測定することを含み、ここで前記遺伝子の突然変異あるいは多型は、前記個体をHFE2Aあるいは関連疾患に苦しむ個体あるいは発現する恐れのある個体として識別する。他の実施例において、本発明はHFE2Aあるいは関連疾患に罹患した個体あるいは発現する恐れのある個体を診断する方法に関し、前記方法は前記個体におけるHFE2Aポリペプチドのアミノ酸配列の全部あるいは一部を測定することを含み、ここで前記遺伝子の突然変異あるいは多型は、前記個体をHFE2Aあるいは関連疾患に罹患した個体あるいは発現する恐れのある個体として識別する。
【0041】
本発明はまた、HFE2A活性を調節することができる化合物を同定するための方法を意図し、前記方法は(a)HFE2Aを発現する細胞を試験化合物と接触させ、(b)試験化合物の、HFE2A核酸の転写あるいはHFE2Aポリペプチドの活性を調節する能力を測定することを含み、それによりHFE2A活性を調節することができる化合物を同定する。前記方法の好ましい実施例において、化合物は抗HFE2Aポリペプチド抗体、リボザイムあるいはアンチセンスHFE2A核酸分子である。その一つの好ましい実施例において、化合物はHFE2Aリボザイムである。他の実施例において、化合物は有機小分子である。
【0042】
本発明はまた、配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、19、20、21および22より成るグループから選択された配列と最低60%のパーセント同一性を持つヌクレオチド配列を持つポリヌクレオチドを含む、単離されたポリヌクレオチドを包含する。他の実施例において、前記パーセント同一性は、最低70%であり、より好ましくは最低78%であり、さらにより好ましくは最低90%であり、またより好ましくは最低95%であり、さらにより好ましくは最低98%であり、最も好ましくはここでヌクレオチド配列は、配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、19、20、21および22より成るグループから選択されたものである。
【0043】
他のそのような実施例において、本発明は特に、配列番号10、11、12、23、24、25、26、27および28より成るグループから選択されたアミノ酸配列と最低90%、好ましくは最低95%、より好ましくは最低98%のパーセント同一性を持つアミノ酸配列を持つポリペプチドを含む単離されたポリペプチドを包含し、最も好ましくはここで、前記アミノ酸配列は配列番号10、11、12、23、24、25、26、27および28より成るグループから選択されたものである。
【0044】
本発明はまた、本発明の方法により同定された物質、あるいは本発明の方法において有用な物質が、薬剤として許容される担体中の治療上効果的な量の本発明のポリペプチド、あるいはその薬剤として活性を持つ断片を含む、鉄代謝の疾患を処置するための組成物の形状で存在し得ることを包含する。それらにしたがって、本発明は特に鉄代謝の疾患を処置するための方法を意図し、前記方法は必要とする患者に、治療上効果的な量の前記組成物を投与することを含む。その一実施例において、疾患は若年性ヘモクロマトーシスである。
【0045】
さらなる態様において、本発明は鉄代謝疾患の治療のための物質を同定するための方法に関し、前記方法は、
a)動物に、ここに開示された方法を用いて活性を持つことが認められた物質を投与し、
b)前記動物における、前記投与に起因した鉄代謝の変化の指標である変化を検出し、
それにより鉄代謝の疾患を治療するための物質を同定することを含む。
【0046】
好ましくは、動物はヒト等の哺乳類である。特定の実施例において、鉄代謝の変化は、鉄の貯蔵組織分布の変化であり得る。
【0047】
本発明の好ましい実施例において、HFE2Aを調節することが確認された化合物は、関連遺伝子あるいはタンパク質の前方のHFE2Aに選択性を持ち、したがって直接結合によって他の関連遺伝子あるいはタンパク質の活性を調節することはあまりない。
【0048】
さらなる態様において、本発明は鉄代謝の疾患に苦しむ動物の状態を処置するための方法に関し、前記方法は前記動物に、本発明の分析法により最初に同定された物質の効果的な量を投与することを含む。好ましくは、前記動物はヒト患者、例えば鉄代謝の慢性疾患に苦しむ患者である。
【0049】
さらなる態様において、ここに開示された分析法により同定された化合物、および前記化合物を用いて患者を処置する方法は、HFE2A活性を調節することにより処置可能なことが認められた鉄代謝の疾患を超えた、代わりのあるいはさらなる兆候に対して適用される。
【0050】
さらなる態様において、本発明は、この分野における通常の技術を有する者によりこれから同定され得るHFE2Aを調節する化合物に関する。これらの化合物は、抗体、アンチセンス化合物、遺伝子治療ベクターおよびタンパク質、また小分子有機化合物を含む。本発明はまた、異常なHFE2A活性と関連する疾患の治療へのこれらの化合物の使用法を含む。一実施例において、これは鉄代謝の疾患の処置への化合物の使用法である。
【0051】
他の態様において、本発明はある産物を生み出すための方法に関し、前記方法は本発明のプロセスにしたがって物質を同定することを含み、ここで前記産物は、前記プロセスの結果としての前記物質に関して集められた情報であり、またここで前記情報は、前記物質の化学的構造およびまたは性質を伝えるのに十分なものである。
【0052】
他の態様において、患者における、配列番号14、16および18に同定された特異的突然変異、および後に関連することが明らかとなるだろう他の突然変異を含む、配列番号1から12に対応するポリヌクレオチドあるいはポリペプチドにおける一つあるいはそれ以上の突然変異の存在あるいは不在を同定する診断用および薬理ゲノム学用組成物、キットおよび方法に関する。この実施例は、若年性ヘモクロマトーシスの存在あるいは不在の診断に有用である。また、成人発症ヘモクロマトーシスの診断および、その発現と重症度の予測に有用である。
【0053】
図1は、HFE2A遺伝子の転写中に生じる選択的スプライス変異体を示す。便宜上、コーディングエキソンのヌクレオチド配列は以下のように設定される。
【0054】
【0055】
選択的スプライス変異体は、遺伝子産物から最低5つの転写産物として生じる。cDNA配列(あるいはTがUに置換されている場合にはプロセッシングを受けたmRNA配列)に対応する転写産物1から4のそれぞれのヌクレオチド配列は、以下のように設定される。
【0056】
【0057】
これらの4つのHFE2A遺伝子の転写産物のそれぞれは、HFE2Aポリペプチドに翻訳され得る。転写産物1および2は、同一の全長タンパク質を生じさせ、したがって、それぞれ200、313および426のアミノ酸(a.a.)の3つの全長タンパク質である。各転写産物から生じるアミノ酸配列は、以下のように設定される。
【0058】
【0059】
最長のcDNA配列(転写産物4、配列番号9)と最長のタンパク質配列(タンパク質3、配列番号12)は、本明細書において用いられたシークエンシング ナンバリング慣例法の基礎として用いられてきた。
【0060】
HFE2Aの配列の特徴は、以下のものを含む種々の情報源に既に開示されている:Homo sapiens Official Gene Symbol and Name:LOC148738;NCBI LocusID:148738;他の名称:ENSG00000168509(アンサンブルv.12.31.1)、NM_145277(RefSeq);遺伝子位置:染色体1上の142000393から142004657bp(アセンブリ:ヒトゲノムのNCBI 31アセンブリ、凍結日:2002年11月)(参照配列のアンサンブル バージョン:アンサンブルv.12.31.1)。HFE2Aの不完全断片は、PCT公開WO02/051438に包含され、ここでRGM3として記載され、神経発達における反発誘導分子(5′コーディング末端からの3アミノ酸、9ntの欠失)として関連している。
【0061】
以下の実施例1に提示されるポジショナルクローニング法が、染色体領域1q21が若年性ヘモクロマトーシスと非常に関連することを確認するために用いられた。候補遺伝子が、突然変異が存在するかを確認するために調査された。ここに開示されたHFE2A遺伝子は、以下に示す種々の有害な突然変異を含むことについて確認された。
【0062】
【表1】
【0063】
表1は、HFE2A(ENSE00001277351)において確認された遺伝的変異を示す。突然変異のcDNA位置は、一列目に数字で示されている(すなわち、c.665)。突然変異は、ENST00000306561(転写産物4)(配列番号9)における開始ATGコドンから数えた。各変異について、両側の配列の10塩基が、大文字で記された野生型(WT)および突然変異型(MT)塩基と共に示されている。
【0064】
【表2】
【0065】
表2は、若年性ヘモクロマトーシスファミリーにおいて同定された遺伝的変異を示す。一列目は変異を開示し、他の列は各ファミリーにおける発端者の、突然変異の部位での各染色体の遺伝子型を提示する。JH3、4、5、6、7、8、9、10および12は、変異がホモ接合である。JH11は、2つの変異の合わさったヘテロ接合である。
【0066】
HFE2A罹患患者のHFE2Aにおける指定された突然変異の分離は、表2で同定されたファミリーにおける全ての罹患者で確認された。変異は、128人のヨーロッパ人と37人のギリシャ人のコントロール(未罹患)個人には見られなかった。したがって、G320Vをもたらす1つのコーディング変換を持つ7つのファミリー、1281Tをもたらす独特のコーディング変換を持つ1つのファミリーおよび、このタンパク質の早期切断(Premature trancation)を持つ2つの他のファミリーの存在は、HFE2A(遺伝子3(LOC148378)ENSG00000168509 v.12.31.1)における突然変異が若年性ヘモクロマトーシスを引き起こす確信的な証拠となる。
【0067】
コントロールサンプル(すなわち、JHに罹患していない無関係のヒト)において他の変異が生じた。128人のオランダ人のコントロールの2人が、c.1207G>A,p.V403Iについてヘテロ接合である。これらの2つのサンプルにおいてヘテロ接合であったため、JH表現型が現れるとは思われず、これらの個人においても見られない。この変異は、有害でないオランダ人母集団における一塩基変異多型(SNP)であり得る。または、ホモ接合型において現れる場合には、潜在的なJHの原因となる突然変異であり得る。この時点ではそれはSNPであるが、診断目的あるいは治療目的について有用であり得る。
【0068】
HFE2Aの高度に保存されたゲノムDNAプロモーター核酸配列は、ヒト、マウスおよびラットについて、以下のように特定されている。
【0069】
【0070】
図2のプロモーター配列のアラインメントは、調節領域における種間の高度の保存性を示す。配列保存性は、ヒト配列の転写開始部位の約670nt5′で実質的に失われる。
【0071】
ゲノム配列:HFE2Aの周辺の核酸配列を説明する全ヒトゲノム配列は、配列番号22に規定される。エキソンは大文字で示されている。
【0072】
これらにしたがって、本発明の方法に有用な遺伝子は、配列番号19、20、21および22より成るグループから選択されたヌクレオチド配列を持つポリヌクレオチに対応するポリヌクレオチドを含む。
【0073】
他の態様において、本発明はHFE2A遺伝子発現を調節する物質を同定するための方法に関し、前記方法は、
(a)試験化合物を、HFE2Aプロモーターと動作可能に連結するレポーター遺伝子の発現を支持する条件下で、前記レポーター遺伝子を含む遺伝子構成体と接触させ、
(b)前記接触の結果としての前記レポーター遺伝子の発現の変化を測定することを含み、
ここで発現の変化が前記試験化合物を、HFE2A遺伝子発現を調節する物質として同定あるいは確認する。
【0074】
その好ましい実施例において、前記調節は前記レポーター遺伝子の発現、特に転写の減少あるいは増加であり、また、HFE2Aプロモーターが哺乳類HFE2Aプロモーター、好ましくはマウス、ラットあるいはヒトHFE2Aプロモーターである実施例を含む。より好ましい実施例において、プロモーターは配列番号19のヌクレオチド配列を持つ。
【0075】
好ましい実施例において、前記レポーター遺伝子の発現は、酵素の活性を測定することにより判断され、例えばここでレポーター遺伝子は容易に測定可能な酵素活性を持つタンパク質をエンコードする。
【0076】
ここで用いられるように“同定”という用語は、前記試験化合物を、遺伝子発現あるいはポリペプチド活性を調節する物質として最初に同定すること(すなわち、前記物質はこの活性を持つことを今までに知られていなかったか、あるいは予想されていなかったものである)を含むことができ、あるいはそのような活性を、本発明の一つあるいはそれ以上の分析法を実施することにより確認すること(ここで前記物質はこの活性を持つことが既に予想されていたものであるが、そのような活性を持つことが明確に示されなかったものである)を含むことができる。例えばここで、ある物質はHFE2A遺伝子あるいはポリペプチド活性の調節に以前から関係していたものであり、あるいはここで前記物質は鉄代謝を変更、調節あるいは作用することができる物質であることが予想されたか、あるいはそうでなければ信じられていたものであり、例えばここで前記物質は鉄代謝の調節に関係しており、前記物質の活性は本発明の方法に利用される活性を持つことが確認され、前記物質は示唆された活性を持つことが確認されていたと思われる。
【0077】
他の態様において、本発明はHFE2Aポリペプチド活性を調節する物質を同定するための方法に関し、前記方法は、
a)化学物質を、タンパク質間相互作用を促進する条件下で、前記HFE2Aポリペプチドと接触させ、またあるいは、
b)化学物質を、HFE2Aリガンド−HFE2Aレセプター相互作用を促進する条件下で、前記HFE2Aポリペプチドと接触させ、またあるいは、
c)化学物質を、脂質組成の修飾を促進する条件下で、前記HFE2Aポリペプチドと接触させ、またあるいは、
d)化学物質を、関連するセカンドメッセンジャーシグナリング(シグナル伝達)の変換を促進する条件下で、前記HFE2Aポリペプチドと接触させ、
ここで前記相互作用、変換あるいは修飾が調節を示し、それにより前記化学物質を、HFE2Aポリペプチド活性を調節する物質として同定することを含む。
【0078】
HFE2A活性は、関連するセカンドメッセンジャーの変換を介して媒介され得る。
【0079】
非常に有用な実施例の一つにおいて、遺伝子構成体は、細胞、好ましくは哺乳類細胞、最も好ましくは組換え細胞中に存在し、例えばここで、哺乳類細胞はマクロファージ、肝臓細胞、肝細胞、腸細胞、炎症細胞、造血性細胞、膵臓細胞、骨格筋細胞あるいは神経系細胞である。
【0080】
以下の表3は、コントロール個人のHFE2A遺伝子中に確認された他の多型(すなわち、若年性ヘモクロマトーシスあるいは他の鉄代謝疾患の臨床発現のないもの)を示す。これらの多型あるいはこの分野における通常の知識を有する者により発見され得る他のものは、診断用あるいは治療用、もしくは他の用途について有用であり得る。
【0081】
【表3】
【0082】
大文字は多型の位置および性質を示す。WT=野生型、MT=突然変異
他のヒト遺伝子との類似性
図3は、HFE2Aと、ヒトゲノム中に見られる2つの関連タンパク質との間のアラインメントを示す。類似性は、いくつかの機能がこれらのタンパク質間で共有あるいは類似し得ることを示す。
【0083】
表4は、BLAST**を用いたヒトLOC148738 426aaタンパク質配列(タンパク質3)のヒトパラログ*との比較を示す。
【0084】
【表4】
【0085】
* 染色体5上のENSESTP00000023393(アンサンブル)および染色体15上のヒト反発誘導分子(ヒトRGM)(NCBI:NP_064596.1)
** “BLAST 2配列”を用いた配列比較(Tatiana A.Tatusova,Thomas L.Madden(1999),FEMS Microbiol Lett.174:247−250)。パラメーター:blastp、BLOSUM62マトリックス、オープンギャップペナルティー 11、伸張ギャップペナルティー 1、ギャップ×_ドロップオフ 50、ワードサイズ 3、期待値 10。
【0086】
他の生物におけるHFE2Aの保存性
2.ヒトHFE2A遺伝子のホモログが、マウス(ハツカネズミ(Mus musculus))、ラット(ドブネズミ(Rattus norvegicus))およびサカナ(トラフグ(Takifugu rubripes)(“Fugu”))において発見された。図4は、これらの配列のヌクレオチドレベルでの配列比較を示す。これらの配列の高度の保存性は表5に示される。表5は、BLAST**を用いたヒトLOC148738 426aaタンパク質配列(タンパク質3)のオルソログ(Orthologs)*との比較を示す。
【0087】
【表5】
【0088】
* 生物配列:マウス(アンサンブル:ENSMUSESTP00000016634)、ラット(NCBI:AK098165.1から翻訳)およびフグ(アンサンブル:SINFRUP00000138308)
** “BLAST 2配列”を用いた配列比較(Tatiana A.Tatusova,Thomas L.Madden(1999),FEMS Microbiol Lett.174:247−250)。パラメーター:blastp、BLOSUM62マトリックス、オープンギャップペナルティー 11、伸張ギャップペナルティー 1、ギャップ×_ドロップオフ 50、ワードサイズ 3、期待値 10。
【0089】
ヒトHFE2AのニワトリRGMとの比較が図5に示される。ヒトLOC148738の426aa配列翻訳物(ENSP00000304614と同一のタンパク質3)は、ニワトリ_反発誘導分子(RGM)(NCBI:AY128507.1の翻訳)と、かなりの配列相同性(ホモロジー)を共有する。ニワトリRGMアミノ酸配列は、配列番号28に記載されている。“BLAST 2配列”(Tatiana A.Tatusova,Thomas L.Madden(1999),FEMS Microbiol Lett.174:247−250)を用い、395の残基が46%の同一性、61%の正数および9%のギャップで揃う。2つのタンパク質はまた、N−末端シグナルペプチド、細胞接着に関連し得るRGDトリアミノ酸モチーフ、ニワトリRGM中の可能性のある切断部位として同定された部位、不完全(〜57%)フォン ヴィレブランド タイプDドメイン、および予測されたN−グリコシル化部位を共有する。両タンパク質はまた、C末端でのGPI修飾を持つことが予測される。
【0090】
ヒトHFE2Aと、マウス、ラットおよびフグにおけるホモログ、またMacac RGM、ニワトリRGM、ゼノパスRGMおよびC.エレガンスNP由来の配列の間で共通する類似性の概観が図6に示される。この類似性の程度は、他の種由来の類似遺伝子あるいはタンパク質が本発明の種々の実施例に有用であり得ることを示している。タンパク質はまた、335と336の間の位置での切断をもたらす前駆タンパク質転換酵素フューリン(Molloy,S.S.et al.J.Biol.Chem.,267,16396−16402(1992))の一致した切断部位(Arg−X−Lys/Arg−Arg)に相当する配列Arg−Asn−Arg−Arg335を持つ。
【0091】
ヒト、マウス、ラット、ニワトリおよびゼブラフィッシュ由来の関連遺伝子間の配列の比較が図6Bに示される。ヒトHFE2Aタンパク質のオルソログは、マウス、ラットおよびゼブラフィッシュに見られる(図6B)。配列比較は、ヒトHFE2Aが哺乳類のオルソログと85%より高く(>85%)同一であり、またサカナのオルソログと45%まで同一であることを示している。HFE2Aの426アミノ酸翻訳物もまた、ヒトの反発誘導分子(RGMあるいはRGMA)(48%の同一性)およびニワトリのRGM(46%の同一性)とかなりの配列類似性を共有する(図6B)。ヒトにおいてはまた、その生物学的機能が現在知られていない第3のRGM様遺伝子がある。
【0092】
HFE2Aポリペプチド機能
本発明は、HFE2Aが鉄代謝の重大な調節因子(レギュレーター)であるという重要な発見を教示する。正確にそれがどのようにこのプロセスに関連するかは、依然として十分に明らかにされていない。このタンパク質の活性についての重要な情報は、タンパク質ドメインの分析に基づいて測定することができる。
【0093】
426aaLOC148738遺伝子産物(タンパク質3)は、小胞体へ進入するためのN末端疎水性シグナルペプチドを含むGPI(グリコシル ホスファチジル イノシトール)結合タンパク質(図7a)と一致した構造上の特徴を持ち、ここでGPIアンカー付加が起こり(残基1から35、図7b)、またC末端疎水性ドメイン/GPI付加シグナル配列が起こる(残基403−425、図7c)(Udenfriend S and Kodukula K Ann Rev Biochem 1995)。GPI予測プログラムであるbig−Pi predictorは、この遺伝子産物が修飾されたGPIであること、およびアミノ酸399あるいは400のどちらかがオメガ部位として働くことができることを予測する(Eisenhaber et al.,JMB,292(3),741−758,1999)。確認された他の特徴は、RGM−細胞接着トリアミノ酸モチーフ(残基98−100)(Ruoslahti,E.Annu.Rev.Cell Dev.Biol.12,697−715(1996))および不完全フォン ヴィレブランド因子タイプDドメインである。フォン ヴィレブランド因子タイプDドメインは、フォン ヴィレブランド因子(残基167−253)の多量体化のために必要である(Jorieux,S.et al.,Blood 1998 Dec 15;92(12):4663−70)。さらにタンパク質は、残基172と173の間に、ニワトリ反発誘導分子(RGM)との配列比較により同定された可能性のあるタンパク質分解切断部位を持つ(図7e)(Monnier,P.P.et al.Nature 419,392−394,2002)。また存在するが示されないものは、コンセンサス配列と一致することが明らかなN−グリコシル化部位およびO−グリコシル化部位である。
【0094】
図8は、ヌクレオチド/アミノ酸展望からのHFE2Aのタンパク質ドメイン分析を示す。配列の特徴はそこに示されている。
【0095】
生化学レベルでのHFE2Aポリペプチド機能のさらなる特徴は、標準技術を用いてこの分野における通常の知識を有する者により確定されるであろう。ヒトにおけるこの遺伝子の欠如が若年性ヘモクロマトーシス(2A型)あるいはHFE2Aの状態を引き起こすことから、HFE2Aポリペプチドが鉄輸送に直接的に関連していることは、本発明から明らかである。
【0096】
16個のヒト組織が、エキソン4からのプローブを用いたノーザンブロッティング法により、HFE2A発現について検査された。著しいHFE2A発現が、肝臓、心臓(特に心房)および骨格筋において検出された(不図示)。
【0097】
公に入手可能なESTs(発現配列タグ)に基づいて、この遺伝子の断片もまた以下の組織中に発現することが認められた。
【0098】
ヒトHFE2A:骨格筋、肝臓、坐骨神経、肝臓および脾臓、前立腺、心臓
マウスHFE2A:乳腺、心臓、舌、肝臓、剣状軟骨、延髄
ラットHFE2A:脳、卵巣、胎盤、腎臓、肺、肝臓、心臓、筋肉、脾臓
したがって、HFE2A遺伝子は、多くの組織に広く発現するが、かなり低いレベルで発現すると思われる。
【0099】
HFE2A突然変異の若年性ヘモクロマトーシスの引き起こし方、あるいは成人発症ヘモクロマトーシスのもたらし方の働きの任意の特定の機構に結びつけられることは望まないが、本発明の遺伝子/タンパク質が鉄代謝において働き得る異なる役割を推測することはできる。例えば、HFE2Aタンパク質は、鉄代謝経路におけるヘプシジンの上流あるいは下流に位置し得る。一つの可能性としては、タンパク質はヘプシジンレセプターあるいはヘプシジンレセプターの共同因子(コファクター)である。他の可能性としては、ヘプシジンの転写、翻訳およびまたはプロセッシングにおけるHFE2Aの機能が、ヘプシジンの適切な機能に必要である。HFE2Aはヘプシジン相互作用タンパク質であり得る。別の機能としては、HFE2Aタンパク質は、ヘプシジンレベルのホルモンあるいはホルモン様化合物レギュレーターとしてパラクライン様式で働く、骨髄あるいは肝臓からの分泌因子であり得る。
【0100】
これらの可能性のある働きの機構は、タンパク質のさらなる探査について示唆するものであるが、しかしながら、ここに含まれる請求の範囲に限定されることを意図するものではない。これらのシナリオの全てにおいて、機能的因果関係は同様であり、すなわち、HFE2Aの機能の喪失は正常ヘプシジン機能を介して鉄代謝を制御する身体の能力の喪失をもたらし、その結果若年性ヘモクロマトーシスあるいは成人発症ヘモクロマトーシスの発現を促進する(おそらくここで、ヘプシジン/HFE2A代謝経路における他の因子は、十分に機能しない)。したがって、HFE2Aの活性の調節は、体内の鉄の血清レベル、生体内分布およびまたは代謝を調節するための方法である。
【0101】
HFE2Aの調節はまた、鉄あるいは鉄代謝に直接的に関連しない疾患を処置するための方法である。鉄代謝における提示された役割と無関係なHFE2Aの機能は、血液量を調節する機能である。HFE2Aは心臓、特に右心房中に多く発現し、そのためHFE2Aは、循環血液量検出(センシング)および血液量調節等において、血液学的役割を果たすことができる。または、HFE2Aは心臓において、鉄関連疾患から局所的筋細胞を保護するパラクライン機能を果たし得る。したがって、HFE2Aの活性を調節する化合物は、血液疾患、心疾患(心不全、心筋ミオパチー、体液恒常性障害および不整脈を含むがこれらに限定されない)およびホルモン障害の処置あるいは予防に有用である。また重要なことは、ヘプシジンレベルが細菌感染、炎症、LPS注入に対する応答等において活性化されるため、HFE2Aがこれらの疾患の媒介側面に対する適当な治療標的であることであり、また細菌種等の処置において重要であり得る。
【0102】
本発明は、HFE2Aの機能が、その正確な働きの機構に係わらず、人体における必須の鉄調節因子であることを証明する。したがって、動物における鉄代謝の疾患を処置するための望ましい薬剤標的である。例えば、HFE2Aが本発明にしたがってJHおよび成人発症ヘモクロマトーシスに直接関連するため、発明者は、JHおよび鉄代謝の不良な他の疾患がHFE2Aの化学的調節因子を投与することにより処置可能であろうことを認識している。この疾患は、必ずしも異常なHFE2A遺伝子あるいはタンパク質活性と関連していないであろう。例えば、HFE2A活性を調節する化合物は、鉄代謝経路の他の側面における機能不全を補い得る。あるいは、HFE2Aの調節因子は、血液中の鉄レベルに間接的に応答する疾患の処置に用いられ得る。
【0103】
本開示において用いられるように、“鉄代謝の疾患”という語句は、その最も広い背景で解釈されるべきである。これは疾患を含み、ここで異常鉄代謝が直接的に疾患を引き起こし、あるいはここで鉄の血中レベルが異常調節されて疾患を引き起こし、またはここで鉄異常調節は他の疾患の結果であり、またはここで疾患は鉄レベル等を調節することにより処置することができる。より特には、本開示にしたがった鉄代謝の疾患は、鉄過剰疾患、鉄欠乏症、鉄の生体内分布の疾患、鉄代謝の他の疾患および鉄代謝に潜在的に関連する他の疾患、その他を含む。さらにより特には、鉄代謝の疾患は、ヘモクロマトーシス、ferroportin突然変異ヘモクロマトーシス、トランスフェリンレセプター2突然変異ヘモクロマトーシス、若年性ヘモクロマトーシス、新生児ヘモクロマトーシス、ヘプシジン欠乏症、輸血関連鉄過剰状態、サラセミア(地中海貧血)、サラセミア インテルメディア、αサラセミア、鉄芽球性貧血、ポルフィリン症、晩発性皮膚ポルフィリン症、アフリカ型鉄過剰症、hyperferritinemia、セルロプラスミン欠損症、無トランスフェリン血症、先天性赤血球異形成貧血、慢性疾患に伴う貧血、貧血症、低色素性小球性貧血、鉄欠乏性貧血、ヘプシジン過剰状態、フリードリッヒ運動失調、大腿薄筋症候群、ハレルフォルデン スパッツ病、ウィルソン病、肺ヘモジデリン沈着症、肝細胞癌、癌、肝炎、肝硬変、異食症、慢性腎不全、インスリン抵抗性、糖尿病、アテローム性動脈硬化症、神経変性障害、多発性硬化症、パーキンソン病、ハンチントン病、アルツハイマー病を含む。
【0104】
特に、HFE2Aの調節因子は、慢性疾患に伴う貧血を効果的に処置できる。世界的に、慢性疾患に伴う貧血(ACD、また炎症性貧血としても知られている)は2番目に一般的な種類の貧血である。ACDは入院患者において、最も一般的な貧血に相当する。ACDは、感染、悪性腫瘍および慢性炎症を含む様々な状態の患者に見られる後天性疾患である。マクロファージによる鉄の保持と、腸の鉄吸収の減少が特徴であり、これは赤血球生成への鉄の利用可能性の減少をもたらす。これらの疾患の経過の初期には、ACDを患う患者は、異常な鉄再生利用による軽度の正球性貧血を有する。後期には減少した腸吸収により、低色素性小球性状況の鉄欠乏となる。ACDにおけるヘプシジンの役割を探査した初期の研究は、過剰なヘプシジン生成がACDの根拠となることを示している。
【0105】
マウスヘプシジンの機能の喪失は、重度の鉄過剰をもたらし、JHの生化学的、臨床的表現型と似た表現型を呈する。その一方、動物モデルおよびヒト疾患の両方において、ヘプシジンの過剰発現がマクロファージ鉄保持と、ACDに見られる鉄障害に特有の鉄欠乏性表現型をもたらす。既存のACDの治療は、特異的に鉄表現型の改善に向けられた有効な処置を伴わず、主に基礎疾患を処置することを狙っている。したがって、例えばHFE2Aの抑制により、ヘプシジン生成を減少させる治療方針は、ACDに見られる鉄障害を処置するための重要で新規な方法に相当する。
【0106】
場合によって、“鉄代謝の疾患”の定義に含まれる疾患および障害は、通常は鉄関連であると識別されない。HFE2A(ヘモジュヴェリン)およびその関連タンパク質であるヘプシジンの組織分布に基づく本発明によって、鉄代謝がこれらの疾患プロセスにおいて重要な役割を果たすことが認識されている。例えば、ヘプシジンがマウス膵臓中に非常に多く発現することが最近示され、これは糖尿病(I型あるいはII型)、インスリン抵抗性、耐糖能異常および他の疾患が根本的な鉄代謝疾患の治療により改善され得ることを示唆するものである(IIyin,G.et al.2003 Febs.Letters 542 22−26)。そのようなものとして、これらの疾患は広い定義に包含される。
【0107】
治療標的としてHFE2Aを用いた処置方法
HFE2Aにおける突然変異が、ヒトにおいて明らかに定義できる生理学的結果(すなわち若年性ヘモクロマトーシス)に関連することの発見は、発明者が、ヘモジュヴェリン、HFE2A遺伝子およびHFE2Aポリペプチドがヒトにおける鉄代謝の疾患の処置への治療標的として有用であることを初めて証明することを可能にする。“治療標的”という用語は、治療的介入が遺伝子あるいはタンパク質の活性を調節する治療物質によって得られることを意味することが意図される。“調節”は、活性を増加させ、減少させ、あるいはそれ以外に変化させることを意味する。標準的な産業プロセスが、遺伝子あるいはタンパク質の活性を調節し、そのいくつかが以下に規定される治療物質の独自性を確認するために、この分野における通常の知識を有する者によって利用可能である。
【0108】
前記にしたがって、本発明は疾患を処置するための方法に関し、前記方法は、前記処置を必要とするヒトに、効果的な量の選択的HFE2Aアゴニストあるいはアンタゴニスト、またはその薬剤として許容される塩、もしくはどちらかの構成要素を包含する薬剤組成物を投与することを含む。
【0109】
好ましい実施例において、前記疾患は鉄代謝の疾患である。さらに好ましい実施例において、前記投与は経口あるいは静脈投与法により行われる。
【0110】
治療物質を同定するためのスクリーニング分析におけるHFE2Aの使用法および潜在的な治療物質の分類
本発明は、HFE2Aの活性を調節する能力にしたがって鉄代謝の疾患を処置する物質の同定のための異なる方法を容易に提供する。前記化合物の同定に有用な分析法の例がここに詳細に示されるが、この分野における通常の知識を有する者は他の方法を知っている。
【0111】
以下にある程度詳細に開示される一連の実施例において、分析法は、HFE2Aに関連する生物学的活性を測定するために設計された分析フォーマットにおける、一つずつあるいは組み合わせでの化合物の試験用ライブラリーを伴う。望ましい様式で生物学的活性を調節するこれらのライブラリー化合物は、これにより本発明の治療物質として同定される。実質的に、幅広い種類の化合物が、この分析の測定可能な生物学的活性に影響を与えるか測定するために、順次この分析について試験される。分析は、HFE2Aに対応する遺伝子あるいはポリペプチドの様々な測定可能な生物学的活性の一つあるいはそれ以上に基づき得る。
【0112】
ここで用いられるように、“HFE2A活性”あるいは“HFE2A生物学的活性”は、特にスクリーニング分析に関して、広く解釈されるべきであり、また全ての直接あるいは間接的に測定可能であり同定可能なHFE2A遺伝子、遺伝子産物およびHFE2Aポリペプチドの生物学的活性を意図する。精製HFE2Aポリペプチドタンパク質に関して、HFE2Aポリペプチド活性は、タンパク質の全ての生物学的プロセス、相互作用、結合性質、結合活性関係、pKa、pD、酵素反応速度、安定性および機能評価を含むが、これらに限定されない。細胞画分、再構成細胞画分あるいは全細胞におけるHFE2Aポリペプチド活性に関して、これらの活性は、HFE2Aポリペプチドが任意の測定可能な生物学的生物学的特徴を実施する速度、および細胞増殖、発生あるいは行動、HFE2Aポリペプチド活性の他の直接的あるいは間接的作用を含む、これらの作用の全ての測定可能な結果を含むが、これらに限定されない。HFE2A遺伝子および転写に関して、HFE2A活性は、RNAを生成するためのゲノムDNAの転写速度、規模あるいは範囲、前記転写における調節タンパク質の作用、前記転写における前記調節タンパク質の調節因子の作用、加えてmRNA転写産物の安定性および行動、転写後プロセッシング、mRNA量およびターンオーバー、mRNAの発現およびポリペプチド配列への翻訳の全測定値、およびタンパク質発現レベルあるいは動態の全測定値を含む。生物におけるHFE2A活性に関して、これは、これらの生物における異常なHFE2A生物学的活性により引き起こされる疾患プロセスあるいは障害において、その不在あるいは不足により同定された生物学的活性を含むが、これに限定されない。いくつかの既知のあるいは示唆された生物学的活性が、本明細書において提供されたHFE2Aの開示中に示されるが、この分野における通常の知識を有する者は、通常の知識を用いてさらなる測定可能なHFE2Aの活性を同定することができるであろう。大まかに言って、HFE2A生物学的活性は、この分野において知られているタンパク質および遺伝子の生物学的特性を分析するためのこれら全ての方法およびその他の方法により測定することができる。
【0113】
この分野における通常の知識を有する者がここに開示された配列に対応するHFE2Aの型を使用することを好むかもしれないが、同一である必要はないこともまた認識されている。例えば、スクリーニング分析ではヒト、マウス、ラットあるいはフグ由来のHFE2Aを採用することが望ましいが、他の分析では異なる生物、好ましくは脊椎動物、最も好ましくは哺乳類種由来のHFE2Aを利用することができる。したがって本発明は、より特にここでヒトHFE2Aと示されたものと同一の目的に対して、ヒツジ、イヌ、ウシあるいはウマHFE2Aを含むがこれらに限定されないものの使用を包含する。HFE2Aのこれらの型の共通する技術的特徴は、発現した場合にそれらが類似の生物学的活性を持つことであり、またHFE2Aと機能的類似性を共有することであり、場合によっては、例えばそれはこの分野における通常の知識を有する者により測定され得る。本発明にしたがったHFE2A遺伝子およびまたはHFE2Aポリペプチドはまた、ここでの開示に基づいて、他の哺乳類種、他の脊椎動物、無脊椎動物および微生物から獲得され得る。
【0114】
したがって、(自然発生スプライス変異体および対立遺伝子を含む、プロセッシングを受けた、あるいはプロセッシングを受けていない)HFE2Aをエンコードするポリヌクレオチドに“対応する”、本発明のスクリーニング分析において用いるためのポリヌクレオチドは、HFE2Aポリヌクレオチド(配列番号1から9、あるいは13から22)によりエンコードされたRNA、あるいは適度に厳密な条件下でのハイブリダイゼーション等により前記ポリヌクレオチドと相補的なRNAと最低40%、好ましくは最低50%、より好ましくは最低60%、特に最低70%、さらにより好ましくは最低80%、あるいはさらに最低85%、最も好ましくは最低90%、あるいはさらに最低95%、または最も特には最低98%同一であり、特に好ましい実施例においては同一であり、また特にその配列を持つ。さらに、HFE2Aに対応する任意の核酸配列と同じポリペプチドをエンコードするHFE2Aタンパク質配列はまた、その配列のパーセント同一性に係わらず、任意のあるいは全ての前記配列に依存する本発明の任意の方法により特に意図され、それは他にどの様に開示あるいは限定されているかに係わらない。したがって、任意の前記配列が、本発明にしたがって開示された任意の方法の実施において用いるために利用可能である。前記配列はまた、HFE2Aポリヌクレオチド内に存在する、ここに定義されたオープンリーディングフレームを含む。
【0115】
最初のRNA転写産物の最終mRNAへの変形において起こり得るプロセッシングのために、ここに開示された配列は、全ゲノム配列よりも短いものに相当し得る。これらはまた、エキソンの選択的スプライシングから得られた配列に相当し得る。したがって、細胞内に存在する(そしてゲノム配列に相当する)遺伝子およびここに開示された配列、主にcDNA配列は、同一であるか、あるいはcDNAsがゲノム配列中の全エキソン未満のエキソンを包含しているものであり得る。前記遺伝子およびcDNA配列は、それらが共に類似のRNA配列をエンコードしているため、対応する配列であると見なされる。したがって、非限定的な例示のみを目的として、転写後により短いmRNAに加工されるRNA転写産物をエンコードする遺伝子は、前記RNAの両方をエンコードしていると見なされ、したがってここに開示されたHFE2A配列に対応するRNAをエンコードする(この分野における通常の知識を有する者は、“エンコード”という用語およびその派生語が、この分野において、“転写可能である”あるいは“翻訳可能である”という意味であることを理解している)。したがって、ここに開示された配列は、細胞に包含される遺伝子に対応し、またそれらの配列が、これらの遺伝子によりエンコードされたRNAsと同じ配列であるかあるいは相補的であるため、転写の相対的レベルを測定するために用いられる。前記遺伝子はまた、本発明のプロセスにおいて用いられる細胞中で生じ得る異なる対立遺伝子およびスプライス変異体を含む。
【0116】
ここで用いられるように、“パーセント同一性”あるいは“パーセント同一性の”という用語は、配列を示す場合には、配列が、比較される配列(“比較配列”)の、開示あるいは請求された配列(“参照配列”)とのアライメントの後に、請求あるいは開示された配列と比較されることを意味する。その後パーセント同一性は以下の公式にしたがって測定される:
パーセント同一性=100[1−(C/R)]
ここでCは、参照配列と比較配列との間のアライメントの全長にわたる参照配列と比較配列との間の差異の数であり、ここで(i)比較配列中に対応するアライメントされた塩基あるいはアミノ酸のない参照配列中の各塩基あるいはアミノ酸、および(ii)参照配列中の各ギャップ、および(iii)比較配列中のアライメントされた塩基あるいはアミノ酸と異なる参照配列中のアライメントされた各塩基あるいはアミノ酸が差異を構成し、Rは、参照配列中に構成されたギャップも塩基あるいはアミノ酸として数に入れた、比較配列とのアライメントの全長の参照配列中の塩基あるいはアミノ酸の数である。
【0117】
アライメントが比較配列と参照配列との間に存在し、それに対する上記のように計算されたパーセント同一性が規定の最小パーセント同一性と同等あるいはそれ以上である場合には、たとえアライメントが、上記の算出されたパーセント同一性が規定のパーセント同一性以下である場合に存在したとしても、比較配列は参照配列に対して規定の最小パーセント同一性を持つ。
【0118】
ここで文脈は、配列がNCBI Blast toolsを用いて分析されたこと、配列スコア、アラインメント、同一性%、正数%およびギャップ%がこれらの計算に基づいて算出されたことを示唆する。分節対については、アラインメントスコアは、スコアリングマトリックス(scoring matrix)値の合計である。アミノ酸置換行列の理論は[1]に開示され、[2]においてDNA配列比較に適用される。正数の数が、アラインメントスコアが正数値となる残基の数である。BLOSUM−62マトリックス[3]が、最も弱いタンパク質類似性の検出に最適であることが実験により示された。[1]Altschul,S.F.(1991)“Amino acid substitution matrices from an information theoretic perspective.” J.Mol.Biol.219:555−565。[2]States,D.J.,Gish,W.& Altschul,S.F.(1991)“Improved sensitivity of nucleic acid database searches using application−specific scoring matrices.”Methods 3:66−70。[3]Henikoff,S.& Henikoff,J.G.(1992)“Amino acid substitution matrices from protein blocks.”Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:10915−10919。
【0119】
ここで用いられるように、“部位”、“分節”および“断片”という用語は、ポリヌクレオチドに関して用いられた場合、ヌクレオチド残基の連続した配列を示し、この配列はより大きな配列の一部を形成する。前記用語は、前記ポリヌクレオチドの任意の共通エンドヌクレアーゼでの処理により産生された生成物、あるいは合成的に合成することが可能なポリヌクレオチドの伸長を含む。これらは、対応遺伝子のエキソンおよびイントロン配列を含み得る。
【0120】
本発明は、HFE2Aの活性を測定し、また前記活性に作用するものを同定するために行う化合物の試験に有用な多くの分析法を提供する。分析法のフォーマットに関して、分析法は、細胞全体、細胞抽出物あるいは再構成細胞抽出物、または、精製あるいは半精製タンパク質を用いることができ、あるいはより大きな規模の組織もしくは動物全体の分析であり得る。一般的な分析法は、蛍光、発光、放射活性、あるいはタンパク質/遺伝子転写産物レベル、量あるいは安定性の他の指標に基づく測定を用いる。ポリペプチド分析はまた、HFE2Aポリペプチドが樹脂や他のポリマー等の固体担体に付着されることを含み、特にここでこれは活性を測定するためのカラム処置の一部である。または、バッチ処置もまた使用され得る。
【0121】
一態様において、本発明はHFE2Aポリペプチドの活性を調節する物質を同定するための方法に関し、前記方法は、
a)試験化合物を、HFE2Aポリペプチドの活性を支持する条件下で、HFE2Aポリペプチドと接触させ、
b)前記接触の結果としての前記HFE2Aポリペプチドの前記活性の変化を測定することを含み、
ここで、活性の変化が、前記試験化合物をHFE2Aポリペプチドの活性を調節する物質として同定する。
【0122】
好ましい実施例において、前記遺伝子は配列番号1から9の配列を持つ。
【0123】
好ましい実施例において、ステップ(b)において観察された活性の変化は活性の減少あるいは増加であり、最も好ましくはここで前記活性の変化は、ステップ(b)の前記化学物質による前記ポリペプチドへの結合の結果である。好ましい実施例において、前記物質は、鉄代謝の疾患の処置に有用である。
【0124】
他の好ましい実施例において、ポリペプチドは無傷細胞、好ましくは哺乳類細胞の一部であり、また細胞は組換え細胞であり得る。HFE2Aについて、最も関連のある細胞は、マクロファージ、肝細胞、腸細胞、心臓細胞(特に心房細胞)、膵臓細胞、骨格筋細胞および骨髄の細胞を含むが、他の組織由来の細胞も採用し得る。一実施例において、前記細胞は前記ポリペプチドを包含するように処理され、前記処理は遺伝子操作を含み、特にここで前記細胞は前記操作が無ければ前記ポリペプチドを所有しない。したがって本発明は特に、細胞が遺伝子操作以外の方法により処理される実施例を意図し、例えばここでポリペプチドの活性は増強されるものであり、また細胞は前記ポリペプチドを包含するように、あるいはその表面に持つように処理されるが、しかしながらここで前記ポリペプチドは、細胞中に含まれる遺伝子の発現によってではなく、前記細胞の膜あるいは細胞質へのポリペプチドの物理的挿入により存在する。例えばポリエチレングリコール、ウイルス、その他のものの使用といったこの分野においてよく知られた方法は、前記挿入をもたらすために利用され、その方法の詳細はここにさらに開示される必要はない。
【0125】
前記方法の好ましい一実施例において、ポリペプチドは、配列番号10から12の配列と最低95%同一、より好ましくは最低98%同一のアミノ酸配列を持つポリペプチドと反応する、あるいは特異的な抗体と反応するポリペプチドであり、またここでアミノ酸配列中の任意の差異は、保存されたアミノ酸置換のみに因る。特に好ましい実施例において、ポリペプチドは配列番号10から12のアミノ酸配列を持つ。
【0126】
本発明のHFE2Aポリペプチド分析は、ポリペプチドの活性に起因する分析状態における変化に対する応答における、色を変える種々の染料、あるいは蛍光シグナリング(シグナル伝達)/クエンチングの能力等(しかし、これらに限定されない)の化合物スクリーニング技術を適用し得る。化合物スクリーニング分析はまた、標的ペプチド(HFE2Aポリペプチド)および既知のあるいは発見された相互作用タンパク質もしくはタンパク質レセプターの相互作用を調節するための試験化合物の能力に基づくことができる。前記相互作用タンパク質は、例えば放射性免疫沈降法、共免疫沈降、破壊試験におけるエピトープ標識した構成体の使用、抽出およびクロマトグラフィー技術による同時精製、および酵母2ハイブリッドスクリーニングを含む、この分野における種々の既知の技術により同定することができる。前記相互作用はさらに、表面プラスモン共鳴、蛍光物あるいは蛍光色素を用いた蛍光および発生団を用いたクエンチング等の直接検出法、放射標識タンパク質、蛍光偏光、共焦点蛍光像あるいはシンチレーション近接技術を含むがこれらに限定されない方法により分析することができる。間接的相互作用はまた、細胞静止判別試験、Gタンパク質共役型レセプター分析等のセカンドメッセンジャーレポーティング、cAMP検出、酸化窒素シンターゼ、ホスホジエステラーゼ活性、あるいはスフィンゴミエリナーゼ等の脂質修飾、イノシトール三リン酸分析を介して監視され得る。
【0127】
HFE2Aポリペプチドの半減期を調節する作用を持つ物質もまた、鉄代謝の疾患を処置するために有用である。非限定的な例示を目的として、この種の物質についての分析は、野生型HFE2Aポリペプチドを発現する細胞を含み、ここで前記ポリペプチドは、翻訳の間一時的、代謝的に標識され、候補化合物と接触させられ、またポリペプチドの半減期は標準技術を用いて測定される。ポリペプチドの半減期を調節する化合物は、本発明において有用な化合物である。
【0128】
ここに開示された遺伝子によりエンコードされたポリペプチドが有用である前記分析の一つにおいて、精製あるいは半精製HFE2Aポリペプチド(あるいはその断片、もしくはエピトープ標識した形態またはその断片)は、適当な担体(例えば、前記ポリペプチドのhis標識(ヒスタグ)形態の場合のニトロセルロース、抗体あるいは金属アガロース)に結合する。担体への結合は好ましくは、前記ポリペプチドと関連するタンパク質が関連を維持できる条件下で行われる。前記条件は、タンパク質間相互作用の障害を最小限にするバッファの使用を含み得る。必要に応じて、他のタンパク質(例えば、細胞溶解物)は添加され、ポリペプチドと関連する機会が与えられる。その後固定されたポリペプチドは、ポリペプチドあるいは担体に非特異的に関連付けられ得るタンパク質あるいは他の細胞構成体を除去するために洗浄される。固定されたポリペプチドはその後、多目的に使用することができる。Neogenesis Pharmaceuticals,Inc.(Cambridge,MA)により提供されるような、化合物スクリーニング実施例において、結合HFE2Aポリペプチドは、ロー、ミディアムあるいはハイスループット能力での自動化リガンド同定システム(automated ligand identification system)に用いられる。この場合、試験化合物のプールは、試験化合物のタンパク質への特異的結合を促進する条件(すなわち、バッファ、温度、その他)下で、HFE2Aへさらされる。非特異的結合を伴う化合物は、混合物から分離される。HFE2A/リガンド複合体は続いて回収され、結合リガンドは解除されて質量分析計により測定される。情報分析システムは、質量情報と、元の試験化合物混同物中に含まれる化合物質量のリストと相互に関連付ける。別の実施例において、化合物は、HFE2Aポリペプチドと他の結合分子(推定上HFE2Aポリペプチド相互作用タンパク質である)との間の相互作用に干渉する能力について試験され得る。相互作用タンパク質をうまく置き換えることができる化合物は、それにより本発明のHFE2Aポリペプチド調節物質として同定される。精製あるいは半精製標的タンパク質を使用する他のよく知られたタンパク質結合分析はまた、タンパク質への特異的な結合親和性を持つ試験化合物を同定するために用いることができる。
【0129】
HFE2Aポリペプチド相互作用タンパク質を同定するように設計された別の実施例において、固定されたポリペプチドはその担体から解離され、またそれに結合したタンパク質は(例えば加熱により)解除され、あるいは結びついたタンパク質は、担体からポリペプチドを解除することなくポリペプチドから解除される。解除されたタンパク質および他の細胞構成体は、例えばSDS−PAGEゲル電気泳動、ウェスタンブロッティングおよび特異的抗体を用いた検出、ホスホアミノ酸分析、プロテアーゼ消化、タンパク質シークエンシング、あるいは等電点電気泳動法により、分析することができる。前記ポリペプチドの正常および突然変異形態は、特定の因子がポリペプチドのどの位置に結合するかについてのさらなる情報を得るために、これらの分析に用いることができる。さらに、不完全に精製されたポリペプチドが用いられた場合、タンパク質の正常および突然変異形態の比較は、正確な結合タンパク質の識別を促進するために用いることができる。前記分析は、HFE2Aポリヌクレオチドによりエンコードされたポリペプチドと相互作用することが知られている精製あるいは半精製タンパク質または他の分子を用いて実施することができる。
【0130】
この分析法は以下のステップを含み得る。
【0131】
1.エンコードされたポリペプチドを回収し、適当な蛍光標識を結合させ、
2.相互作用タンパク質(あるいは他の分子)を第2の、異なる蛍光標識で標識する。互いに近接近している場合と物理的に離れている場合とで異なるクエンチングパターンを引き起こす染料(すなわち、互いに近接している場合に互いを消光し、近接近していない場合に蛍光する染料)を用い、
3.相互作用分子を、相互作用分子と固定されたポリペプチドの間の相互作用に干渉する能力について試験される化合物の存在下あるいは不在下で、固定されたポリペプチドにさらし、
4.蛍光読み出し情報を回収する。
【0132】
前記タンパク質相互作用についての別の分析法は、蛍光エネルギー共鳴移動(Fluorescent Resonance Energy Transfer(FRET))分析法である。この分析法は以下のようにして実施することができる。
【0133】
1.エンコードされたタンパク質あるいはその適当なポリペプチド断片を用意し、適当なFRETドナー(例えば、ニトロベンゾオキサジアゾール(NBD))を結合させ、
2.相互作用タンパク質(あるいは他の分子)をFRETアクセプター(例えばローダミン)で標識し、
3.アクセプター標識相互作用分子を、アクセプター標識相互作用分子とドナー標識ポリペプチドの間の相互作用に干渉する能力について試験される化合物の存在下あるいは不在下で、ドナー標識ポリペプチドにさらし、
4.蛍光エネルギー共鳴移動を測定する。
【0134】
クエンチング分析法とFRET分析法は適応される。分析法において、どちらの蛍光物の組み合わせが用いられるかに依存して、どちらかの分析法を任意のケースに採用することができる。
【0135】
ここに示されたHFE2Aの解説は、ロー、ミディアムあるいはハイスループットスクリーニング分析の開発に有用であり得るHFE2Aの多種多様な生物学的活性を教示する。
【0136】
種々の分析法に役立つ有用な生物学的活性の一つは、リガンド結合(すなわち、HFE2Aのリガンドとの結合を抑制あるいは増強する分析法)である。ヘプシジンタンパク質(OMIM:606464、Roetto,A.et al.2003.NAture Genet.33:21−22参照)は、HFE2Aのリガンドであり得る。この分野における通常の知識を有する者は、他のリガンドを見出し得る。HFE2Aの特異的なリガンドとの結合を抑制あるいは増強する試験化合物の能力を測定する、全細胞、細胞抽出物あるいは精製タンパク質に基づく分析法は、開発され得る。
【0137】
細胞機能分析法を設計することができる。これらの分析法において、HFE2A活性に依存する測定可能な細胞機能は、試験化合物による抑制あるいは増強を判断するために測定することができる。前記機能は細胞増殖分析法を含み、例えばここで、全体で引用例としてここに組み込まれているPCT国際公開第02/051438号パンフレットに開示されている分析法等において、化合物は、軸作成長に影響を与える能力について評価される。RGDおよびフォン ヴィレブランド因子様ドメインの存在に基づいて、HFE2Aは細胞間接着に関連し得る。分析法は、HFE2A誘導接着の生物学的活性に依存し、また試験化合物の接着を調節する能力を測定するように設計することができる。
【0138】
他の細胞に基づく分析法において、HFE2Aタンパク質応答が最初に測定される。例えばHFE2Aは、マクロファージによるトランスフェリンへの鉄の放出を調節し得る。あるいはHFE2Aは、CaCo2膜を超えた鉄の輸送を調節し得る。または、HFE2Aは、分析においてNRAMP2鉄輸送動作の変化を引き起こし得る。HFE2Aに対するこれらの引き起こされた反応を調節する化合物について分析し、それによりHFE2Aの生物学的活性の調節因子を見出すことができる。シグナル伝達分析は、HFE2Aのシグナル伝達分子としての可能性のある機能に基づいて開発することができる。適応され得る鉄輸送分析法は、十二指腸腺窩細胞のHFE−CHO細胞モデルにおける鉄取り込みを含む。これは96ウェルプレート中での分析に適用することができ、ここで試験化合物は鉄取り込みを減少させる。同様に、試験化合物はヒトヘパトーマ細胞(HLF)における59Fe結合トランスフェリン取り込みを抑制し得る。適応に適した分析法は、Su,M.A.et al. Blood,Vol.92 No.6(September 15),1998:pp.2157−2163;Nunez MT,et al. J.Nutr 1996 Sep;126(9):2151−8;Tandy S,et al. J Biol Chem 2000 Jan 14;275(2):1023−9;あるいはFeeney GP and Worwood M. Biochim Biophys Acta 2001 Apr 23;1538(2−3):242−51に開示されたものを含む。HFE2Aは、ヒト反発誘導分子(RGM)(図3)およびニワトリRGM様分子(図5)と配列類似性を共有し、また類似の構造のドメインを共有する。RGMは神経発生および免疫応答に関連するタンパク質のファミリーである(国際公開第02/051438号パンフレット参照)が、タンパク質およびmRNA発現が神経細胞中に見られないため、最低いくつかのこれらの機能のHFE2Aタンパク質への割り当ては、疑わしいと考えなければならない。ともかく関連タンパク質は細胞膜上で、局所的には細胞内シグナルを開始するレセプターとして、また全身的には分割可溶性タンパク質として働くことが知られている。ニワトリRGMのように、HFE2Aは、それが可溶性ペプチドとして働くことを示唆する推定上の細胞外切断部位を持つ。一つの提示された作用機構は、この分泌分子がヘプシジンのような腸上皮細胞の基底側面表面上のタンパク質と相互作用し、飲食物からの鉄の先端面取り込みを調節するものであり得る。この相互作用は、腸細胞の基底面で直接的であり、あるいは鉄取り込みの調節をもたらす上流相互作用を介し得る。この直接あるいは間接的作用は、細胞培養システムにおいて分析することができる。
【0139】
HFE2A誘導応答(すなわちHFE2A生物学的活性)に依存する化合物スクリーニング分析の一例は、Caco2 HFE2A誘導鉄輸送分析である。Caco2細胞はヒト結腸直腸細胞系であり、腸内吸収を測定するための標準規格であると認められている。コンフルエント(集合する)まで増殖したこれらの細胞は、明確な先端および側底面と、密着結合を形成する。トランスウェル プレート インサート(Transwell plate inserts)において透過膜上で増殖され、Caco2細胞は膜上で細胞の側底面を伴って分裂し、Bチャンバー溶質にさらされる。一方、細胞の先端部はAチャンバー中の溶質にさらされる。このシステムは、AからBへの腸上皮を介した鉄の積極的輸送と、細胞を介した腸管腔から血液への偽輸送を測定するために有用である。HFE2Aに対する応答は、CaCo2分析のB(側底)チャンバーにHFE2Aを添加することにより引き起こすことができる。組換えHFE2Aは哺乳類細胞中で生成することができ、精製タンパク質はBチャンバーに直接添加される。または、培養細胞はHFE2A構成体を移入(トランスフェクト)することができ、続いてHFE2Aタンパク質を発現する。トランスフェクションに適した細胞は、それぞれヒト肝臓癌細胞あるいはマウスマクロファージ細胞である、HepG2あるいはRAW細胞であろう。これらの2つの細胞型は、鉄代謝に関連し、またおそらくHFE2Aを発現することが知られている。HFE2Aを包含するこれらのトランスフェクト“ドナー”細胞からの培地は、Caco2細胞のBチャンバーに適用することができ、調整された培地の“アクセプター”およびAチャンバーからの鉄吸収を監視することができる。トランスフェクトドナー細胞はまた、Bチャンバー表面の底部でも増殖させることができ、したがってアクセプター細胞の基底面からミリメートルの範囲内で、Bチャンバー中に直接HFE2Aを放出することができる。
【0140】
HFE2Aが、レセプターとして働こうと、細胞内シグナル分子として働こうと、あるいは分泌タンパク質として働こうと、この多細胞コミュニケーションシステムはHFE2A誘導反応を測定するために用いることができる。この分析法は鉄輸送、Aチャンバーからの鉄取り込み、鉄吸収、およびまたはBチャンバーへの鉄の細胞分泌を測定し得る。この細胞コミュニケーションシステムはその後、腸吸収における鉄調節のための初期薬剤化合物スクリーニングに用いることができる。
【0141】
全細胞あるいは細胞抽出物を用いて、GPI切断あるいはHFE2Aの分泌を増加あるいは減少させる化合物のために、あるいはHFE2AのN−グリコシル化を増加あるいは減少させる化合物のために、分析法を開発することができる。HFE2Aの翻訳後修飾因子を調節する化合物を測定する分析法は、潜在的な治療物質を同定するために用いることができる。
【0142】
いくつかの分析法は、好ましくは精製あるいは半精製HFE2Aタンパク質分析法を採用する。このタンパク質は、GPI結合型、あるいは切断、可溶性型であり得る。I125標識HFE2Aは、これらの分析法に対して有用であり得る。前記分析法は、RGDあるいはフォン ヴィレブランド因子様ドメインによって凝集あるいはホモ二量体化するHFE2Aの傾向に基づいて設計された分析法である凝集法を含む。この分析法において化合物は、その同種親和性二量体化ドメインの凝集を増強あるいは抑制する能力について試験される。この場合、上記タンパク質間相互作用分析は、異なる蛍光体で標識されたHFE2Aの2つのプールを用いることができる。いくつかの実施例において、HFE2AのGPI切断型が、GPI結合型と共に用いられ得る。代わりの半精製フォーマットは、酵母2ハイブリッドおよびまたはファージディスプレイフォーマットを含み、ここでHFE2A結合領域はベイトベクターおよびプレイベクターの両方に組み込まれる。このフォーマットは、ラジオイムノアッセイあるいはプレートフォーマットに適した、適度なハイスループットスクリーニング分析を提供するであろう。
【0143】
さらに、HFE2Aは鉄代謝経路の他の既知のタンパク質:トランスフェリン、Tfレセプター、Hfe、ヘプシジン、p97あるいは他の鉄輸送体、およびそのレセプターと相互作用し得ることは注意されるべきである。この相互作用は、スクリーニング分析の基礎として用いられ得る有用な活性である。
【0144】
さらに、薬剤スクリーニング分析もまた、遺伝子機能とのアンチセンス相互作用により推定されたポリペプチド機能に基づき得る。HFE2Aの細胞内局在、あるいは前記タンパク質の細胞内局在における変化に起こる影響もまた、薬剤スクリーニングのための分析法として用いられ得る。
【0145】
前記にしたがって本発明は、ヒトの身体の組織中に見られ(例えばヒト由来の配列番号10から12)、また若年性ヘモクロマトーシスの遺伝的感染と関連する、ヘモジュヴェリンあるいはHFE2Aに指定されたタンパク質のアミノ酸配列を提供する。さらに、複数の突然変異が、若年性ヘモクロマトーシスを持つことが確認された個体から得られたこの配列中に認められた。したがって、ヘモジュヴェリンあるいはHFE2Aと関係を持つ物質は、本発明の治療物質として評価するための候補化合物に相当する。
【0146】
別の広い分野のスクリーニング分析法は、転写分析である。これらの分析法は、HFE2A遺伝子の転写を調節する(すなわち、増加あるいは減少)化合物を同定しようとするものである。転写分析に関連して、一態様において本発明は、その転写が鉄代謝の疾患の改善に役立つポリヌクレオチドの活性を調節する物質を同定するための方法に関し、前記方法は、
a)化学物質を、生理的条件下で、HFE2Aのプロモーター領域に対応するポリヌクレオチド(好ましい実施例において、プロモーターは配列番号19の配列を持つ)と接触させ、
b)前記接触の結果としての前記ポリヌクレオチドの転写の変化を検出し、
それにより、前記ポリヌクレオチドの転写あるいは遺伝子活性を調節する物質を同定することを含む。
【0147】
前記調節は、好ましくは転写の減少あるいは増加である。好ましい実施例において、前記転写は転写産物の量を測定することにより測定される。有用な実施例において、HFE2Aのプロモーター領域はレポーター遺伝子、すなわちその転写が適宜測定される遺伝子(例えば、緑色蛍光タンパク質、ルシフェラーゼ、クロラムフェニコール、アセチルトランスフェラーゼ(CAT)等のレポーター遺伝子)に動作可能に結合する。
【0148】
好ましい実施例において、その転写が測定あるいは監視されるべきポリヌクレオチドは、無傷細胞、好ましくは哺乳類細胞、最も好ましくはマクロファージ、肝細胞、腸細胞、造血性細胞、膵臓細胞、骨格筋細胞および他の骨髄、神経、CNSの細胞、あるいは脊髄細胞から選択された細胞中に存在するが、他の組織由来の細胞もまた用いられ得る。さらなる好ましい実施例において、前記無傷細胞は、例えば遺伝子操作により、前記ポリヌクレオチドを包含するように処理された細胞であり、好ましくはここで前記細胞は、そのような操作がなければ目的とする遺伝子あるいはポリヌクレオチドを発現しないものである。または、非組換え細胞は、例として組織の細胞あるいは細胞系に採用することができ、ここでHFE2Aの転写は構成的であり、あるいは誘導することができる。
【0149】
ここでの開示にしたがって、HFE2A遺伝子の上流非翻訳領域およびプロモーター領域は、配列番号19あるいは22および公開された検索可能な配列データベースから容易に得られる。前記ゲノムあるいは非翻訳領域は、その転写を調節する物質を同定するための分析等において、同定された遺伝子を包含するプラスミドに含まれ得る。そのような一つの分析法において、上流ゲノム領域はレポーター遺伝子に連結(ライゲーション)し、転写プラスミド中に組み込まれる。プラスミドは細胞中にトランスフェクトされ、組換え細胞は試験化合物にさらされる。レポーターの発現を増加あるいは減少させるこれらの化合物は、その結果遺伝子/タンパク質の調節因子であり、本発明の治療物質と見なされる。
【0150】
本発明はまた、ここに開示されたポリヌクレオチドあるいはポリペプチドを発現するように処理された組換え細胞を請求する。ここで動物においてHFE2Aに関連すると開示された遺伝子あるいはその断片は、タンパク質を発現させるための手段として使用可能であり、ここで前記遺伝子はin vitroで、適切な細胞中でタンパク質をエンコードし、あるいは薬剤スクリーニングのためのin vitro分析において用いるための十分に大量なタンパク質を生成するために用いることができる発現ベクター中に複製することができる。または、発現構成体は、HFE2Aのゲノムプロモーター領域を使用し、それをその発現レベルが容易に測定されるレポーター遺伝子等の遺伝子に連結する。採用され得る発現システムは、バキュロウイルス、ヘルペスウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、細菌システム、およびCHO細胞等の真核生物システムを含む。裸DNAおよびDNA−リポソーム複合体もまた用いることができる。したがって本発明は、異種HFE2A遺伝子を包含する組換え細胞系を請求する。
【0151】
前記組換え細胞は、前記細胞を治療特性を持ち得る物質と接触させた後の、HFE2A遺伝子あるいは適当なレポーター遺伝子の転写レベルを分析するための転写分析において用いられ得る。遺伝子転写レベルは、ノーザンブロット分析あるいはRT−PCRにより、あるいはまた生成されたタンパク質の量の測定により、この分野において知られた多数の方法の一つにより、またはそれらの遺伝子あるいは他の遺伝子によりエンコードされたポリペプチドの生物学的活性のレベルを測定することにより、定量することができる。このように遺伝子転写は、物質に対する細胞の生理学的反応の指標となる標識として働くことができる。したがって、この反応状態は、前記物質での個体の処置の前に、またその間の様々な時点で測定され得る。
【0152】
精製タンパク質分析が望まれる場合には、組換え細胞系はまた、精製タンパク質の調製に好適である。この分野における通常の知識を有する者は、組換え細胞系を産生し、高度に精製されたタンパク質を包含するタンパク質画分を抽出することができる。これらのサンプルは、タンパク質と相互作用する化合物を同定するための種々の結合分析に用いることができる。相互作用する化合物は、本発明の治療物質あるいはその類似体である。
【0153】
標的選択性は、治療物質の開発の重要な側面である。本発明は特に、ここに定義された、HFE2A遺伝子の転写あるいは、それによりエンコードされたHFE2Aポリペプチド(ヒト由来の配列番号10から12等)の活性に高い特異性を持って作用あるいは拮抗し、また他の遺伝子およびまたはポリペプチドにほとんどあるいは全く影響を与えない化学物質、特に有機小分子の同定を意図する。
【0154】
したがって、そのような好ましい実施例の一つにおいて、HFE2Aに対応する遺伝子、好ましくはヒト由来の配列番号1から9の配列を持つ遺伝子の発現を調節、好ましくは抑制し、あるいはそれらによりエンコードされるポリペプチドの活性を調節する物質を同定するための、ここに開示された方法は、最初に前記物質を同定し、続いて最低一つの他の遺伝子あるいはポリペプチド、好ましくは治療的介入により阻害されず、また、ほとんどあるいは全く影響のない重要な生理学的結果を伴う遺伝子あるいはポリペプチドの発現あるいは活性への影響について、前記物質を試験することを含む。
【0155】
他の態様において本発明は、本発明の化合物をコンピュータにより同定するための方法を提供する。この方法は、(a)(すなわち、X線結晶学的技法あるいは他の技法を介して)HFE2Aポリペプチドタンパク質の活性部位の結晶構造を測定し、(b)コンピュータモデリングを介して、活性部位と相互作用する化合物を同定し、それにより化合物ありはその類似体を前記ポリペプチドの活性の調節に有用な化合物として同定することを含む。このプロセスは時にin silicoスクリーニングのように示される。コンピュータで作成した数千万の化合物を試験することができる、標的タンパク質と相互作用できる試験化合物の可能性を試験するための高性能ソフトウェアが、この分野における通常の知識を有する者に利用可能である。
【0156】
本発明の方法を用いて同定された潜在的な治療化合物は通常、推測された効果を確認するために、動物モデルシステムで試験される。したがって、さらなる態様において、本発明は治療物質を同定するための方法に関し、前記方法は、
a)動物に、ここに開示された分析法あるいはスクリーニング法を用いて活性を持つと認められた物質を投与し、
b)前記動物における、前記投与に起因した鉄代謝の変化を検出し、
それにより、鉄代謝の疾患を処置するための物質を同定することを含む。
【0157】
この分野における通常の知識を有する者は、動物モデルにおいて(すなわち潜在的な治療物質での処置の結果として)調節され得る鉄代謝の通常の測定結果が、トランスフェリン飽和率、ヘプシジンレベル、腸での放射性鉄取り込み、肝臓鉄含量、全身鉄含量、貧血指数を含むことを承知している。研究に特化したマウスモデルは、貧血性マウス、鉄過剰マウス、ヘモクロマトーシスマウス(hfe/hfe)、Hpxマウス(低トランスフェリン血症マウス)、およびその他のマウスを含む。
【0158】
さらなる態様において本発明は、鉄代謝の疾患に苦しむ動物の状態を処置するための方法に関し、前記方法は、前記動物に本発明の分析法により最初に同定された物質の効果的な量を投与することを含む。好ましくは、前記動物は、鉄代謝の疾患に苦しむ患者等のヒト患者である。
【0159】
したがって、本発明のスクリーニング分析は、鉄代謝の疾患を処置するための治療物質の評価、同定および開発を簡素化する。
【0160】
本発明はまた、ヘモジュヴェリン、HFE2Aポリペプチドあるいはそのエピトープを標的とする、あるいは相互作用する、もしくは結合する抗体および免疫反応性物質を含む。ここに開示されたポリヌクレオチドによりエンコードされたポリペプチドは、モノクローナル抗体を含む抗体をもたらす抗原として用いることができる。前記抗体は、治療物質、機能性試験、薬剤スクリーニング分析、およびまたは診断用物質を含むがこれらに限定されない多種多様な目的に有用であろう。本発明にしたがって同定されたHFE2Aポリペプチドの発現あるいは生物学的活性に対する物質(例えば有機小化合物)の影響を監視することは、基礎的な薬剤スクリーニングだけでなく、臨床試験においても適用することができる。例えば、遺伝子転写、タンパク質レベル、あるいは生物学的活性を増加あるいは減少させる、ここに開示されたスクリーニング分析により測定された物質の効果は、不適当な遺伝子転写、タンパク質レベル、あるいは生物学的活性に起因する鉄代謝の疾患の症状を示す被験者(例えば、ここで研究された個体)の臨床試験において監視することができる。または、HFE2A遺伝子、および構造的、機能的に関連する遺伝子、それらと高い配列相同性を持つ遺伝子の転写、タンパク質レベル、あるいは生物学的活性を調節することが、スクリーニング分析により測定された物質の効果は、減少した、変換された遺伝子転写、タンパク質レベル、あるいは生物学的活性を示す被験者の臨床試験において監視することができる。このような臨床試験において、ここに開示された遺伝子あるいはポリペプチド、および好ましくは、例えば鉄代謝に関わる他の遺伝子の転写あるいは活性は、特定の薬剤の効果を解明するために用いることができる。
【0161】
好ましい実施例において、本発明はある物質(例えば、ここに開示されたスクリーニング分析により同定されたアゴニスト、アンタゴニスト、ペプチド模倣薬、タンパク質、ペプチド、抗体、核酸、小分子あるいは他の薬剤候補)での被験者の処置の効果を監視するための方法を提供し、前記方法は、(i)患者が鉄代謝疾患あるいは障害の処置を必要としていることを判断し、(ii)ここに開示されたスクリーニング分析の一つを用いて同定された物質の効果的な量を投与し、(iii)前記投与後の鉄代謝の改善を解明し、(vi)それに応じて被験者への物質の投与を変えるステップを含む。例えば、前記物質の投与の増加は、遺伝子あるいはエンコードされたポリペプチドの発現あるいは活性を減少させるために、すなわち前記物質の効果を高めるために望ましいものであり得る。
【0162】
ここで、患者はヒト以外であり、バイオプシーサンプルが、タンパク質、mRNA、あるいはゲノムDNA投与後サンプルのレベルを測定し、投与前サンプルの前記タンパク質、mRNA、あるいはゲノムDNAの発現あるいは活性のレベルと、対応する投与後サンプルのそれとを比較し、それにより、ここに開示された一つあるいはそれ以上の遺伝子、および同時に起こる鉄代謝の疾患の減少への薬剤投与の効果を示すこと等により、遺伝子転写の減少を示すために用いることができる。
【0163】
精製あるいは半精製HFE2Aタンパク質、あるいはその断片、もしくはHFE2Aに対応するタンパク質、および任意のそれらの生化学的に修飾された型は、それら自体が本発明の治療物質である。これらのタンパク質あるいは断片の組換えあるいは非組換え型は、鉄代謝の疾患等の疾患の治療のために、それを必要とするヒトに投与することができる。この分野における通常の知識を有する者は、前記物質を産み出すための技術および、投与の状態を測定するための技術をよく知っている。
【0164】
HFE2Aの細胞における遺伝子発現あるいは遺伝子転写レベルを調節し得る特定の化合物は、HFE2A遺伝子(前記遺伝子のエキソンあるいはイントロン、プロモーター、3′末端部等を含む)と特異的にハイブリダイズするアンチセンス核酸、リボザイムおよび他の核酸構成体を含む。これらの特定の化合物は本発明の化合物であり、また前述の疾患の処置に有用である。前記化合物の設計および製造は、この分野における通常の知識を有する者によく知られている。
【0165】
HFE2Aの活性を調節する特定の化合物は、前記ポリペプチドのエピトープに特異的に結合する抗体(ポリクローナルあるいはモノクローナル)および、修飾された抗体あるいは抗体の断片を含む。これらの特定の化合物は本発明の化合物であり、また前述の疾患の処置に有用である。前記化合物の設計および製造は、この分野における通常の知識を有する者によく知られている。特に、Abgenix,Inc.(Freemont,CA)、Medarex,Inc.(Princeton,NJ)、Protein Design Labs,Inc.(Freemont,CA)、Genentech(South San Francisco,CA)、その他により提供される技術を用いて生成されたヒト化抗体がどちらかといえば好ましい。
【0166】
体内のHFE2Aの活性を調節する特定の化合物は、HFE2A遺伝子配列あるいは突然変異HFE2A配列の全部または一部を包含する遺伝子治療ベクターを含む。この分野における通常の知識を有する者によく知られているように、遺伝子治療は生物中でHFE2Aの細胞への送達を可能にし、ここでHFE2Aは活動して発現し、それにより前記細胞におけるHFE2Aポリペプチドタンパク質のレベルあるいは量を変える。それによりこれらのベクターは、体内でのHFE2Aの活性を調節し、ここに開示された治療指標に有用である。
【0167】
体内のHFE2Aの活性を調節する特定の化合物は、有機小分子を含む。前記化合物は自然発生し得る。あるいは合成したものであり得る。前記化合物の収集物および組み合わせライブラリーは、商業的供給源から広く入手可能である。この分野における通常の知識を有する者に知られているように、本明細書中に開示された分析法等のスクリーニング分析は、望ましいHFE2A調節能力を持つ治療物質を同定するために、容易に適用することができる。鉄代謝の疾患の減少に効果的であることが認められたアゴニスト、アンタゴニスト、あるいは模倣薬は、動物モデル(例えば、マウス、チンパンジー、その他)において有用であることが確認され得る。他の実施例において、本発明の化合物を用いた処置は、複合的な効果、場合によってはさらに相乗効果を獲得するために、他の治療物質と組み合わされ得る。
【0168】
候補調節因子は、精製(あるいは実質的に精製された)分子であり得るか、あるいは化合物の混合(例えば、細胞から得られた抽出物あるいは上清)の一成分であり得る。混合化合物分析において、遺伝子発現は、単一化合物あるいは最小限の化合物混合体が治療効果を持つ態様で遺伝子あるいはタンパク質活性あるいは発現を調節することが示されるまで、候補化合物プール(例えば、HPLCあるいはFPLC等の標準精製技術により生成される)の漸次小さくなるサブセットに対して試験される。
【0169】
最適化誘導および、類似体開発および選択
通常、治療特性を持つ新規薬剤は、自然産物あるいは合成(あるいは半合成)抽出物両方のライブラリー、場合によっては大きなライブラリーから、もしくはこの分野において知られる方法にしたがった化学ライブラリーから同定される。この分野、あるいは薬剤発見および開発における通常の技術を有する者は、試験抽出物あるいは化合物の正確な情報源が本発明のスクリーニング法に絶対不可欠なものではないことを理解するであろう。したがって、事実上いくらでも化学抽出物あるいは化合物を、ここに開示された例となる方法を用いて選別することができる。前記抽出物あるいは化合物の例は、植物、菌類、原核生物あるいは動物抽出物、発酵もろみ液、合成化合物、および既存の化合物の修飾体を含むがこれらに限定されない。多数の方法がまた、サッカライド、脂質、ペプチド、および核酸の化合物を含むがこれらに限定されない任意の数の化学物質のランダムあるいはダイレクト合成体(例えば、半合成あるいは完全合成体)を生成するために利用可能である。合成化合物ライブラリーは、Brandon Associates(Merrimack,NH)およびAldrich Chemical(Milwaukee,WI)から市販されている。または、細菌、菌類、植物および動物抽出物の形状の自然化合物のライブラリーは、Biotics(Sussex,UK)、Xenova(Slough,UK)、Harbor Branch Oceangraphics Institute(Ft.Pierce,FL)、およびPharmaMar,U.S.A.(Chambridge,MA)を含む、多数の情報源から市販されている。さらに、自然的および合成的に産生されたライブラリーは、必要な場合には、この分野において知られた方法にしたがって、例えば標準抽出および分画法によって作成される。さらに、必要な場合には、任意のライブラリーあるいは化合物が、標準化学的、物理的あるいは生化学的方法を用いて容易に修正される。
【0170】
治療活性について既知の物質の複製あるいは繰返しの脱複製(De−replication)(例えば、分類学的脱複製、生物学的脱複製および化学的脱複製、あるいはそれらの任意の組み合わせ)あるいは除去が、可能であればいつでも用いることができる。
【0171】
未精製抽出物が治療活性を持つことが分かった場合、さらに陽性主要抽出物の分画が、観察された効果に関与する化学成分を単離するために可能である。したがって、抽出、分画および精製プロセスの目的は、前記治療活性を持つ未精製抽出物中の化学物質の慎重な特性決定および同定である。化合物の混同体における活性の検出のための、ここに開示された同じ分析法を、活性成分を精製するために、またその誘導体を試験するために用いることができる。前記異種抽出物の分画法および精製法は、この分野において知られている。必要な場合には、病原性の処置に有用な物質であることが示された化合物は、この分野において知られた方法にしたがって、化学的に修飾される。治療価値があることが同定された化合物はその後、この分野において知られた鉄代謝疾患の任意の標準動物モデルを用いて分析される。
【0172】
通常、これらのスクリーニング法は、さらに評価されて少数の活性中心構造体に凝縮される大集団(すなわち、組み合わせ法により作成されたもの等の化学ライブラリー)から、関連する自然産物抽出物あるいは合成化合物を選択するための迅速な方法を提供する。前記中心構造体の多数の類似体は、治療物質として改良された特性を持つ好ましい類似体を同定するために開発され、試験され得る。
【0173】
改良された類似体はまた、改良された安定性、生体内分布、薬物動態あるいは治療標的の調節に直接的に関連しない治療物質に関して望ましい他の特徴を持つ化合物を含み得る。好ましい実施例において、本発明の改良された類似体は、生理学的方法あるいは補助的な方法により、HFE2Aポリペプチドタンパク質を発現する体内の細胞に効果的にもたらされる。類似体化合物は、それらが同定された生物学的活性を調節するか評価するために体系的に選別され、効果的に調節するものは、その結果、本発明にしたがった治療物質あるいはさらなるそれらの類似体である。
【0174】
治療物質およびそれらの使用法
この分野における通常の知識を有する者は、ここに開示された疾患の処置に用いるための、本発明によって最初に同定された新規化学物質および化合物の効果および安全性を証明するために用いられる臨床前試験およびヒト臨床試験に必要なステップに精通している。
【0175】
本発明の一つあるいはそれ以上の分析法を用いて、有用な治療物質であると最初に同定された化合物は、単位剤形において、薬剤として許容される希釈剤、担体あるいは賦形剤と共に投与され得る。従来の製薬実務が、前記組成物を患者に投与するのに適した剤形あるいは組成を提供するために用いられ得る。経口投与が好ましいが、任意の適切な投与経路、例えば静脈内、非経口、皮下、筋肉内、頭蓋内、眼窩内、眼、心室内、嚢内、髄腔内、くも膜下腔、硬膜外、槽内、腹腔内、鼻腔内、あるいはエアロゾル投与が用いられ得る。治療剤形は、溶液あるいは懸濁液の形態であり得る。経口投与に対しては、剤形は錠剤あるいはカプセルの形態であり得る。また鼻腔内に対しては、剤形は粉末、点鼻薬あるいはエアロゾルの形態であり得る。
【0176】
剤形形成についてのこの分野においてよく知られた方法は、例えばRemington:The Science and Practice of Pharmacy,(19th ed.)ed.A.R. Gennaro AR.,1995,Mack Publishing Company,Eston,PAに見られる。非経口投与の剤形は、例えば、賦形剤、滅菌水あるいは生理食塩水、ポリエチレングリコール等のポリアルキレングリコール、植物性油、もしくは水素化ナフタレンを含み得る。生体適合性、生体分解性ラクチドポリマー、ラクチド/グリコリド コポリマー、あるいはポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン コポリマーは、化合物の放出を調節するために用いられ得る。本発明のアゴニストの他の潜在的に有用な非経口送達システムは、エチレンビニルアセテート コポリマー粒子、浸透圧ポンプ、埋め込み式注入システム、およびリポソームを含む。吸入用の剤形は、賦形剤、例えばラクトースを含み得るか、あるいは例えばポリオキシエチレン−9−ラウリルエーテル、グリココール酸塩およびデオキシコール酸塩を包含する水溶液であり得るか、もしくは点鼻薬の形態で、あるいはゲルとして投与するための油性溶液であり得る。
【0177】
組み合わせ治療もまた発明者により意図されている。ここに開示されたスクリーニング法の一つにより同定された治療物質は、同時に起こる状態を処置することを目的とする他の物質と共に投与され得る。例えばここで、治療物質および抗癌剤が、続けてあるいは同時に与えられる。
【0178】
本発明はまた、例えば前記産物の同定を容易にするために試験情報を生成することによる、ある産物を産生するための方法を含むプロセスに関し、前記プロセスは、前記物質(すなわちここに開示された分析法にしたがって同定された治療物質)を同定するための開示されたプロセスの一つにしたがって物質を同定することを含み、ここで前記産物は前記同定プロセスあるいは分析法の結果としての前記物質に関して集められた情報であり、またここで前記情報は、前記物質の化学的特徴および/または構造および/または性質を伝達するのに十分なものである。例えば、本発明は特に、本発明の分析法の使用者が希望の酵素調節活性を持つ化合物を選別するために前記分析法を用い、そして化合物を同定し、続いてその情報(すなわち構造、投薬量その他についての情報)を、本発明にしたがって治療あるいは研究目的で前記物質を再生産し、それを投与するために前記情報を利用する他の使用者に伝達するといった状況を意図する。例えば、前記分析の使用者(使用者1)は、多数の試験化合物を前記化合物の構造あるいは同一性を知らずに選別し(例えばここで多数のコード番号が用いられ、最初の使用者は前記コード番号が付されたサンプルが与えられるだけである)、本発明の一つあるいはそれ以上の分析プロセスを用いてスクリーニングプロセスを実施した後、続いて口頭あるいは文書で、もしくは同等の方法で、特定の調節活性を持つ化合物を同定するのに十分な情報(例えば対応する結果を伴ったコード番号)を次の使用者(使用者2)に伝える。この使用者1から使用者2への情報の伝達は、本発明により特に意図される。
【0179】
前記にしたがって、本発明は化合物によるHFE2A遺伝子発現の調節に関する試験情報を生成するための方法に関し、前記方法は、
(a)試験化合物を、HFE2Aプロモーターに動作可能に結合するレポーター遺伝子の発現を支持する条件下で、前記レポーター遺伝子を含む遺伝子構成体と接触させ、
(b)前記接触の結果としての前記レポーター遺伝子の発現の変化を測定し、ここで前記変化は調節を示し、
(c)遺伝子調節活性を示す、測定された遺伝子の発現の変化に基づく前記試験化合物の遺伝子調節活性に関する試験情報を生成することを含む。
【0180】
別のそのような実施例において、本発明は化合物によるHFE2Aポリペプチド活性の調節に関する試験情報を生成するための方法に関し、前記方法は、
(a)試験化合物を、HFE2Aポリペプチドの活性を促進する条件下で、前記HFE2Aポリペプチドと接触させ、
(b)前記接触の結果としての前記ポリペプチドの活性の変化を測定し、ここで前記変化は調節を示し、
(c)調節活性を示す、HFE2Aポリペプチド活性の変化に基づく前記試験化合物のHFE2Aポリペプチド調節活性に関する試験情報を生成することを含む。
【0181】
診断および薬理ゲノム学
さらなる実施例において、本発明は診断用および薬理ゲノム学用化合物、キットおよび方法に関する。この態様は、若年性ヘモクロマトーシス、成人発症ヘモクロマトーシス、鉄代謝の疾患の発症あるいは発症の重傷度の予後診断を含む診断についての、あるいは患者への治療物質の選択(すなわち薬理ゲノム学)におけるHFE2A遺伝子(HFE2A、ヘモジュヴェリン遺伝子)の分析に関する。また、鉄代謝の疾患を患うか、あるいは患う恐れのある患者を分類するためのHFE2A診断の使用法に関する。
【0182】
例えば、核酸分析は、ここに開示されたHFE2A突然変異を同定するために用いることができ、したがって、若年性ヘモクロマトーシスの診断を確認する。
【0183】
本発明において開示された核酸配列、野生型(非疾患関連)配列(配列番号1から9)および疾患関連(突然変異)配列(配列番号14、16および18)の両方を用いて、この分野における通常の知識を有する者は、多数の異なるタイプの核酸診断法、化合物およびキットを開発することができる。技術は、DNAシークエンシング、ハイブリダイゼーションプロービング、単鎖配座解析、ミスマッチ増幅等のPCRを基礎にした技術、および無数の他のよく知られた方法を含む。それらの分析法の全てが、患者により提供された血液、唾液、尿あるいは他の組織の小サンプルについて実施することができる。
【0184】
または、本発明において開示されたタンパク質配列(配列番号10から12)を用いて、抗体を基礎にした分析法等のタンパク質を基礎にした分析法(ELISA、ラジオイムノアッセイ等)は、正常あるいは突然変異HFE2Aタンパク質(HFE2Aポリペプチド)、例えばここに開示された突然変異に起因する突然変異ポリペプチドの発現、量または存在あるいは不在を同定するために用いることができる。
【0185】
相対的および絶対的な遺伝子転写および、生物学的活性、突然変異分析は、それぞれ鉄代謝の疾患に対する診断手段として働くことができ、したがって、HFE2AmRNAの量の測定は、前記疾患に関係する突然変異の存在あるいは不在を診断するために用いることができる。
【0186】
本発明に基づいて、この分野における通常の知識を有する者はまた、動物組織サンプルと共に用いるのに適した、他のHFE2A突然変異の生化学的、化学的および診断用分析法を開発することができるであろう。
【0187】
本発明の有用な実施例は、鉄代謝の疾患を患うか、あるいは患う恐れのある患者を分類するための診断分析を用いるものである。増強した血清フェリチンレベル、トランスフェリンレセプター飽和率、あるいはヘモクロマトーシスの遺伝子(すなわちHfe遺伝子)における突然変異の同定等の、鉄代謝の疾患についての多くの危険因子がある。これらの危険因子の全てが、鉄代謝の疾患の進行の原因となるわけではない。本発明の教示を用いて、既知の危険因子に基づいて鉄代謝の疾患を患う恐れのある患者を受け入れ、またさらにHFE2Aにおける突然変異について判断することが可能であり、ここで(遺伝子の一複製あるいは両複製における)HFE2Aの突然変異は、統計的に、鉄代謝の疾患の発現の高い可能性を示す。この発見は特に、Hfe遺伝子の既知の突然変異と軽くのみ関連する、成人発症ヘモクロマトーシスの恐れの診断および予後診断の助けとなる。
【0188】
以下のものは、成人発症ヘモクロマトーシスに関連するHFE2Aの診断利益の例である。ここに開示されたHFE2A突然変異を同定するために用いられる核酸あるいはタンパク質分析は、成人ヘモクロマトーシスの発症あるいは重傷度を予測するために用いることができる。成人ヘモクロマトーシスは、臨床浸透度の広い可変性を示す。HFE突然変異についてホモ接合である、あるヒト被験者では、重症表現型が早期に発症し、一方HFE突然変異についてホモ接合である他の被験者では、臨床的に正常のままである。HFE2A遺伝子の評価は、患者に成人疾患が現れること、および比較的症状がないままであることについて情報を与えるものであり得る。
【0189】
患者は、H63DでのHfe1遺伝子の突然変異について、ヘテロ接合であることが分かった。この突然変異は、常にヘモクロマトーシスの発症を引き起こすわけではない軽度の突然変異であると考えられる。その後、第2の診断試験がHFE2A遺伝子について実施された。それにより以下のホモ接合突然変異が明らかとなった。
【0190】
【0191】
患者は、成人発症ヘモクロマトーシスを発症した。したがって、HFE2Aの突然変異の検出は、既知の危険因子(例えばHfe1突然変異)により、ヘモクロマトーシスを発症する恐れのある患者を同定し、分類し、またどの患者が疾患を発症するのか判断するのに有用である。
【0192】
したがって、本発明は鉄代謝の疾患を発症する恐れのある患者を分類する方法を開示し、前記方法は、
a)鉄代謝の疾患についての最初の評価を実施し、
b)HFE2Aについて診断分析を実施することを含み、
ここでHFE2Aにおける突然変異の発見は、前記患者を、前記疾患を発症する恐れが統計的に高い患者であると分類する。
【0193】
薬理ゲノム学は、病気に冒された個人における変化した薬物動態および異常作用に起因する、薬剤に対する応答の臨床的に重要な遺伝的変異を取り扱う(Eichelbaum,M.,Clin.Exp.Pharmacol.Physiol.,23:983−985,1996;Linder,M.W.,Clin.Chem.,43:254−266,1997)。通常、2つのタイプの薬理ゲノム学的状態が区別することができる。遺伝的状態は、薬剤の身体への働き方を変える単一因子(変化した薬剤作用)として伝えられる。あるいは遺伝的状態は、身体の薬剤への働き方を変える単一因子(変化した薬剤代謝)として伝えられる。変化した薬剤作用は、HFE2A遺伝子のプロモーター、イントロンあるいはエキソン配列における多型(例えば、一塩基変異多型あるいはSNP)を持つ患者に起こり得る。したがって、多型の存在および普及率を測定することにより、特定の治療物質に対する患者の反応の予測が可能である。
【0194】
この薬理ゲノム学分析は、治療物質、特に本明細書に開示された疾患を処置するための治療物質の投与による副作用の予測を含む、患者の遺伝子型にしたがった薬剤処置の仕立て方をもたらすことができる。薬理ゲノム学は、個人の遺伝子型(例えば、個人の遺伝子型は、個人の特定の薬剤に反応する能力を測定するために検査される)に基づく、個人の治療あるいは予防処置のための物質(例えば、薬剤)の選択を可能にする。
【0195】
HFE2A遺伝子(HFE2A)に対応する遺伝子あるいはタンパク質を用いる診断はまた、潜在的な治療物質の臨床試験のための患者の選択に有用である。患者は、HFE2A遺伝子のDNAあるいはタンパク質配列にしたがって階層を成すことができ、薬剤処置に対する反応を評価することができる。前記階層化は、潜在的な治療物質についての効果を証明することが求められる患者の数を大きく減らすことができる。
【0196】
したがって本発明は、HFE2A遺伝子の突然変異の存在あるいは不在を同定するように設計された化合物、試薬およびキットを含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0197】
(実施例1)
若年性ヘモクロマトーシス2A(HFE2A)に関与する遺伝子突然変異の同定
3.我々は、JHHを伴う13人の個人を含むギリシャ人の10家族を集めた。これらの家族の家系図は、図9aから9dに示される。これらの家族(JH3から12)の5家族が既に報告されていた(JH3から7)(Papanikolaou,G.et al.Linkage to chromosome 1q in Greek familes with juvenile hemochromatosis.Blood Cells Mol.Dis.27,744−749(2001))。1家族、JH7のみが、血族であることが知られている。我々は、疾患が、ゲノム配列から同定された6つの新規マイクロサテライト標識を含む25個の遺伝子型標識を用いることにより、新しい家族の1q21(HFE2A;OMIM602390)との関連と一致することを確認した。Build 31ヒトゲノム配列集合はギャップと複製を含んでいるが、我々は連結間隔の大きさを推定することができ、また既存の配列コンティグに基づいて連結境界と遺伝子含有量を明確にすることができた。JH7のホモ接合性マッピングは、標識CA3AL590452(141595604から141595847bp)とCA1AL596177(143293543から143293826bp)の間の〜1.7Mb間隔中の候補領域の境界を明確にした(各標識のプライマー配列は表6にある)。
【0198】
この領域のホモ接合性はまた、既知の血族でない7家族の病気に冒された個人にも観察された。我々は、さらに12個の標識を用いてハプロタイプを構成することにより、6つの異なるギリシャ人ハプロタイプを得た。家族JH3、5、6、7、10、11および12の病気に冒された個人は、連結間隔中に最低6から7の標識に対する対立遺伝子を共有していた。JH4および8の病気に冒された個人は、異なるホモ接合ハプロタイプを示した。
【0199】
【表6】
【0200】
HFE2Aの突然変異の同定
HFE2Aの突然変異、(LOC148738)ENSG00000168509、転写産物ENST00000306561、アンサンブル v.12.31.1、2002年11月。
【0201】
我々は最初、この遺伝子の3つのコーディングエキソンの一つ(ENSE00001277351、v.12.31.1)の配列を決定した。シークエンシングは最初、家族JH3および4の、固有のハプロタイプを保持していたであろう発端者に限定した。最初に同定された突然変異は、JH4−203における、3′エキソンのTからCへの転移(c.842T>C、p.1281T)であった。JH4−203は、このSNPについてホモ接合である。病気に冒されていない2人の兄弟と1人の子供は、このSNPについてヘテロ接合である。このSNPは、いずれの他のJH発端者あるいは家族の構成員にも存在せず、また74人のヨーロッパ人および74人のギリシャ人のコントロールの染色体にも存在しなかった。
【0202】
このエキソン内で同定された第2の遺伝的変異は、GからTへの塩基転換(c.959G>T、p.G320V)である。このSNPは、JH3発端者ではホモ接合であった。病気に冒されたJH3は、c.959T対立遺伝子についてホモ接合であり、病気に冒されていない1人の兄弟は、このSNPについてヘテロ接合である。このSNPは、128人のヨーロッパ人と37人のギリシャ人のコントロールの染色体には存在しなかった。10のJH家族の全ての家族構成員のシークエンシングの後、このSNPが家族JH5、JH6、JH7、JH10の病気に冒された個人ではホモ接合であり、JH11発端者および、JH12発端者の両親ではヘテロ接合であることが分かった。
【0203】
第3の変異、ヌクレオチド1079の欠失(c.1079delC、p.C361fsX366)は、JH8においてホモ接合状態で同定された。これは、5つの固有のアミノ酸および未成熟終止をもたらす。このSNPはまた、JH11発端者にも存在し、この個人が複合へテロ接合であることを示す。
【0204】
本明細書における配列番号リストに開示された配列についてのさらなる情報
LOC148738エキソン
エキソン1、3a、3bおよび4はまた、遺伝子ENSG00000168509(アンサンブル)およびREFSEQ NM_145277.1(NCBI)に見られた。エキソン2は、配列AK098165.1に基づくアンサンブル予測から推測され得る。
【0205】
配列検索を簡略化するために、エキソン配列配位が、ヒトゲノムのNCBI31アセンブリに基づいて以下に提供される。これらについての配列番号は以下のとおりである。
【0206】
配列番号1−エキソン1 ENSE00001155188
開始:142000393、終止:142000541 Chr:1
配列番号2−エキソン2
開始:142001790、終止:142001993 Chr:1
配列番号3−エキソン3a ENSE00001155182
開始:142002394、終止:142002430 Chr:1
配列番号4−エキソン3b ENSE00001277320
開始:142002394、終止:142002953 Chr:1
配列番号7−転写産物2 ENST00000317920
エキソン1、3a、4、翻訳_開始:208
配列番号8−転写産物3 エキソン1、3b、4 翻訳_開始:392
配列番号9−転写産物4 エキソン1、2、3b、4 翻訳_開始:257
【0207】
LOC148738翻訳タンパク質
タンパク質1は、転写産物1および転写産物2のタンパク質翻訳であり、アンサンブルタンパク質ENSP00000320072およびNCBIタンパク質NP_660320.1と類似する。タンパク質2は、転写産物2のタンパク質翻訳であり、AK098165.1のタンパク質翻訳に見られ得る。タンパク質3は、予測アンサンブルタンパク質ENSP00000304614と類似する。配列番号は以下のとおりである。
【0208】
配列番号10−タンパク質1 ENSP00000320072
転写産物1および転写産物2より翻訳された
配列番号11−タンパク質2
転写産物3より翻訳された
配列番号12−タンパク質3 ENSP00000304614
転写産物4より翻訳された
【0209】
ヒト、マウスおよびラット由来のHFE2Aプロモーター配列
配列番号19から21については、プロモーター配列は、転写開始部位の1500bp5′で始まると思われる。
【0210】
HFE2Aプロモーター領域およびエキソンを含むヒトゲノムDNA断片は以下の配列番号を持つ。
【0211】
配列番号22−HFE2Aプロモーター領域およびエキソンを含むヒトゲノムDNA断片
配列番号23−gi|24308189|ref|NP_064596.1|ヒトRGMと類似する
配列番号24−染色体5上のENSESTP00000023393 ヒトHFE2Aパラログ、最初のメチオニンから開始する配列と類似する
配列番号25−ENSMUSESTP00000016634 マウスHFE2Aと類似する
配列番号26−ヒト由来であると注釈されるがヌクレオチド配列はラット由来であると同定される、gi|21758120|dbj|BAC05248.1|ラットHFE2Aと類似する
配列番号27−N末端が不明である、SINFRUP00000138308 フグHFE2Aと類似する
配列番号28−gi|22651834|gb|AAM95449.1|ニワトリRGMと類似する
【0212】
この分野における通常の知識を有する者は、上述の化合物および方法の多数の変形に精通しており、その全てがさらに以上に示される請求の範囲によって包含される。
【図面の簡単な説明】
【0213】
【図1】LOC148738遺伝子構造を示す図
【図2】ヒト、マウスおよびラットのHFE2Aのプロモーター配列のアラインメントを示す図
【図3】ヒトLOC148738426aa遺伝子産物およびヒトパラログのタンパク質配列アラインメントを示す図
【図4】ClustalXを用いたLOC148738配列の配列アラインメントを示す図
【図5】ヒトLOC148738遺伝子産物とニワトリRGMのタンパク質配列アラインメントを示す図
【図6A】複数種のホモログ間の高度の類似性の概要を示す図
【図6B】異なる種におけるHFE2Aに類似する遺伝子間の高度の類似性を示す図
【図7A】LOC148738の426aa翻訳読み取り枠の構造的特徴を示す図
【図7B】HFE2Aの426aa翻訳におけるシグナルペプチド切断部位の予測を示す図
【図7C】HFE2Aの426aa翻訳における膜貫通領域の予測を示す図
【図7D】不完全フォン ヴィレブランド タイプDドメインの同定を示す図
【図7E】タンパク質分解切断部位(矢印)を示す図
【図8A】LOC148738の転写産物4から翻訳された426aaオープンリーディングフレームの核酸およびアミノ酸配列を示す図
【図8B】LOC148738の転写産物4から翻訳された426aaオープンリーディングフレームの核酸およびアミノ酸配列を示す図
【図9】若年性ヘモクロマトーシスを引き起こす遺伝的突然変異を同定するために用いた家系図
【図9A】若年性ヘモクロマトーシスを引き起こす遺伝的突然変異を同定するために用いた家系図
【図9B】若年性ヘモクロマトーシスを引き起こす遺伝的突然変異を同定するために用いた家系図
【図9C】若年性ヘモクロマトーシスを引き起こす遺伝的突然変異を同定するために用いた家系図
【図9D】若年性ヘモクロマトーシスを引き起こす遺伝的突然変異を同定するために用いた家系図
【図9E】若年性ヘモクロマトーシスを引き起こす遺伝的突然変異を同定するために用いた家系図
【特許請求の範囲】
【請求項1】
HFE2A遺伝子発現を調節する物質を同定するための方法であって、前記方法が、
(a)試験化合物を、HFE2Aプロモーターと動作可能に連結するレポーター遺伝子の発現を支持する条件下で、前記レポーター遺伝子を含む遺伝子構成体と接触させ、
(b)前記接触の結果としての前記レポーター遺伝子の発現の変化を測定することを含み、
ここで発現の変化が、前記試験化合物を、HFE2A遺伝子発現を調節する物質として同定することを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、前記調節が前記レポーター遺伝子の発現の増加であることを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項1に記載の方法において、前記調節が前記レポーター遺伝子の発現の減少であることを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項1に記載の方法において、前記HFE2Aプロモーターが哺乳類HFE2Aプロモーターであることを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項4に記載の方法において、前記哺乳類がマウス、ラットおよびヒトより成るグループから選択されたものであることを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項1に記載の方法において、前記プロモーターが配列番号19のヌクレオチド配列を持つことを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項1に記載の方法において、前記遺伝子構成体が細胞中にあることを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項7に記載の方法において、前記細胞が哺乳類細胞であることを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項7に記載の方法において、前記細胞が前記遺伝子を発現するように処理された組換え細胞であり、またここで前記細胞が、前記処理がなければ前記遺伝子を発現しないことを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項8に記載の方法において、前記哺乳類細胞が、マクロファージ、炎症細胞、肝臓細胞、肝細胞、腸細胞、造血性細胞、膵臓細胞、骨格筋細胞あるいは神経系細胞のいずれかであることを特徴とする方法。
【請求項11】
請求項1に記載の方法において、前記試験化合物が鉄代謝の制御に有用であることを特徴とする方法。
【請求項12】
請求項1に記載の方法において、前記試験化合物が、前記方法を用いてHFE2A遺伝子発現を調節する物質として最初に同定されることを特徴とする方法。
【請求項13】
請求項1に記載の方法において、前記変化が酵素活性の変化を測定することにより測定されることを特徴とする方法。
【請求項14】
HFE2A遺伝子発現を調節する物質を同定するための方法であって、前記方法が、
a)試験化合物を、HFE2A遺伝子を発現する細胞と接触させ、
b)前記接触の結果としての前記HFE2A遺伝子の発現の変化を測定することを含み、
ここで発現の変化が、前記試験化合物を、HFE2A遺伝子発現を調節する物質として同定することを特徴とする方法。
【請求項15】
HFE2Aポリペプチドの活性を調節する物質を同定するための方法であって、前記方法が、
a)試験化動物を、HFE2Aポリペプチドの活性を支持する条件下で、HFE2Aポリペプチドと接触させ、
b)前記接触の結果としての前記ポリペプチドの前記活性の変化を測定することを含み、
ここで活性の変化が、前記試験化合物を、HFE2Aポリペプチドの活性を調節する物質として同定することを特徴とする方法。
【請求項16】
請求項15に記載の方法において、前記HFE2Aポリペプチドが哺乳類HFE2Aポリペプチドであることを特徴とする方法。
【請求項17】
請求項16に記載の方法において、前記哺乳類がマウス、ラットおよびヒトより成るグループから選択されたものであることを特徴とする方法。
【請求項18】
請求項15に記載の方法において、前記変化が前記活性の減少であることを特徴とする方法。
【請求項19】
請求項15に記載の方法において、前記変化が前記活性の増加であることを特徴とする方法。
【請求項20】
請求項15に記載の方法において、前記ポリペプチドが細胞の一部であることを特徴とする方法。
【請求項21】
請求項20に記載の方法において、前記細胞が哺乳類細胞であることを特徴とする方法。
【請求項22】
請求項20に記載の方法において、前記細胞が前記ポリペプチドを包含するように処理されていることを特徴とする方法。
【請求項23】
請求項22に記載の方法において、前記細胞が遺伝子操作により処理されたことを特徴とする方法。
【請求項24】
請求項23に記載の方法において、前記細胞が、前記処理がなければ前記ポリペプチドを包含しないことを特徴とする方法。
【請求項25】
請求項20に記載の方法において、前記細胞が、マクロファージ、炎症細胞、肝臓細胞、肝細胞、腸細胞、造血性細胞、膵臓細胞、骨格筋細胞あるいは神経系の細胞のいずれかであることを特徴とする方法。
【請求項26】
請求項15に記載の方法において、前記HFE2Aポリペプチドが高度に精製されることを特徴とする方法。
【請求項27】
請求項15に記載の方法において、前記HFE2Aポリペプチドが半精製ポリペプチドであることを特徴とする方法。
【請求項28】
請求項15に記載の方法において、前記HFE2Aポリペプチドが固体表面に付着されることを特徴とする方法。
【請求項29】
請求項28に記載の方法において、前記固体表面が樹脂であることを特徴とする方法。
【請求項30】
請求項15に記載の方法において、前記HFE2Aポリペプチドが抽出物の一部であることを特徴とする方法。
【請求項31】
請求項15に記載の方法において、前記ポリペプチドが、配列番号1、2、3、4、5、6、7、8および9より成るグループから選択された配列を持つポリヌクレオチドによりエンコードされることを特徴とする方法。
【請求項32】
請求項15に記載の方法において、前記ポリペプチドが、配列番号10、11および12から選択されたアミノ酸配列を含むことを特徴とする方法。
【請求項33】
疾患を処置するための方法であって、前記方法が、前記疾患に苦しむ動物に、治療上効果的な量のHFE2A調節因子を投与することを含むことを特徴とする方法。
【請求項34】
請求項33に記載の方法において、前記HFE2A調節因子が、請求項1、14あるいは15のいずれか一項に記載の方法において調節活性を示すことを特徴とする方法。
【請求項35】
請求項34に記載の方法において、前記調節因子が前記方法を用いてHFE2A調節因子として最初に同定されたことを特徴とする方法。
【請求項36】
請求項33に記載の方法において、前記HFE2A調節因子が、選択的HFE2Aアゴニスト、選択的HFE2Aアンタゴニスト、それらの薬剤として許容される塩、およびこれらの組み合わせより成るグループから選択されたものであることを特徴とする方法。
【請求項37】
請求項36に記載の方法において、前記選択されたものが薬剤として許容される担体中にあることを特徴とする方法。
【請求項38】
請求項33に記載の方法において、前記HFE2A調節因子が、抗体、アンチセンス分子、リボザイムおよび薬剤様有機小分子から選択されることを特徴とする方法。
【請求項39】
請求項33に記載の方法において、前記疾患が鉄代謝の疾患であることを特徴とする方法。
【請求項40】
請求項39に記載の方法において、前記鉄代謝の疾患が、鉄過剰疾患および鉄欠乏症より成るグループから選択されたものであることを特徴とする方法。
【請求項41】
請求項39に記載の方法において、前記鉄代謝の疾患が、ヘモクロマトーシス、輸血関連鉄過剰状態、サラセミア、ポルフィリン症、および若年性ヘモクロマトーシスより成るグループから選択されたものであることを特徴とする方法。
【請求項42】
請求項39に記載の方法において、前記鉄代謝の疾患が、貧血および慢性疾患に伴う貧血より成るグループから選択されたものであることを特徴とする方法。
【請求項43】
請求項39に記載の方法において、前記鉄代謝の疾患が、I型糖尿病、II
型糖尿病、およびインスリン抵抗性から選択されたものであることを特徴とする方法。
【請求項44】
疾患を予防するための方法であって、前記方法は、前記疾患を発症する恐れのある動物に、治療上効果的な量のHFE2A調節因子を投与することを含むことを特徴とする方法。
【請求項45】
請求項44に記載の方法において、前記HFE2A調節因子が請求項1、14あるいは15のいずれか一項に記載の方法において調節活性を示すことを特徴とする方法。
【請求項46】
請求項45に記載の方法において、前記調節因子が、前記方法を用いてHFE2A調節因子として最初に同定されたことを特徴とする方法。
【請求項47】
請求項44に記載の方法において、前記HFE2A調節因子が、選択的HFE2Aアゴニスト、選択的HFE2Aアンタゴニスト、それらの薬剤として許容される塩、およびこれらの組み合わせより成るグループから選択されたものであることを特徴とする方法。
【請求項48】
請求項47に記載の方法において、前記選択されたものが薬剤として許容される担体中にあることを特徴とする方法。
【請求項49】
請求項44に記載の方法において、前記HFE2A調節因子が、抗体、アンチセンス分子、リボザイムおよび薬剤様有機小分子から選択されることを特徴とする方法。
【請求項50】
請求項44に記載の方法において、前記疾患が鉄代謝の疾患であることを特徴とする方法。
【請求項51】
請求項50に記載の方法において、前記鉄代謝の疾患が、鉄過剰疾患および鉄欠乏症より成るグループから選択されたものであることを特徴とする方法。
【請求項52】
請求項50に記載の方法において、前記鉄代謝の疾患が、ヘモクロマトーシス、輸血関連鉄過剰状態、サラセミア、ポルフィリン症、および若年性ヘモクロマトーシスより成るグループから選択されたものであることを特徴とする方法。
【請求項53】
請求項50に記載の方法において、前記鉄代謝の疾患が、貧血および慢性疾患に伴う貧血より成るグループから選択されたものであることを特徴とする方法。
【請求項54】
請求項50に記載の方法において、前記鉄代謝の疾患が、I型糖尿病、II型糖尿病、およびインスリン抵抗性から選択されたものであることを特徴とする方法。
【請求項55】
鉄代謝の疾患に冒されているか、あるいは発症する恐れのある個人を診断するための方法であって、前記方法が、前記個人のHFE2A遺伝子の核酸配列における突然変異あるいは多型を測定することを含み、ここで前記遺伝子における前記突然変異あるいは多型が、前記個人を鉄代謝の疾患に冒されているか、あるいは発症する恐れがあるとして同定することを特徴とする方法。
【請求項56】
請求項55に記載の方法において、前記突然変異あるいは多型が、表1に示す突然変異あるいは多型であることを特徴とする方法。
【請求項57】
鉄代謝の疾患に冒されているか、あるいは発症する恐れのある個人を診断するための方法であって、前記方法が、前記個人のHFE2Aポリペプチドのアミノ酸配列における突然変異あるいは多型を測定することを含み、ここで前記HFE2Aポリペプチドの突然変異あるいは多型が、前記個人を鉄代謝の疾患に冒されているか、あるいは発症する恐れがあるとして同定することを特徴とする方法。
【請求項58】
鉄代謝の疾患に冒されているか、あるいは発症する恐れのある個人を診断するための方法であって、前記方法が、前記個人のHFE2Aポリペプチドのレベルあるいは量の減少を測定することを含み、ここで減少が、前記個人を鉄代謝の疾患に冒されているか、あるいは発症する恐れがあるとして同定することを特徴とする方法。
【請求項59】
請求項55ないし58のいずれか一項に記載の方法において、前記鉄代謝の疾患が成人発症ヘモクロマトーシスであることを特徴とする方法。
【請求項60】
請求項55ないし58のいずれか一項に記載の方法において、前記鉄代謝の疾患が若年性ヘモクロマトーシスであることを特徴とする方法。
【請求項61】
請求項55ないし58のいずれか一項に記載の方法において、前記鉄代謝の疾患がI型糖尿病、II型糖尿病、およびインスリン抵抗性から選択されることを特徴とする方法。
【請求項62】
HFE2A活性を調節することができる化合物を同定するための方法であって、前記方法が、(a)試験化合物を、HFE2Aを発現する細胞と接触させ、(b)前記試験化合物の、HFE2A核酸の転写あるいはHFE2Aポリペプチドの活性を調節する能力を測定することを含み、それによりHFE2A活性を調節することができる化合物を同定することを特徴とする方法。
【請求項63】
請求項62に記載の方法において、前記化合物が抗HFE2Aポリペプチド抗体であることを特徴とする方法。
【請求項64】
請求項62に記載の方法において、前記化合物がアンチセンスHFE2A核酸分子であることを特徴とする方法。
【請求項65】
請求項62に記載の方法において、前記化合物がHFE2Aリボザイムであることを特徴とする方法。
【請求項66】
請求項62に記載の方法において、前記化合物が有機小分子であることを特徴とする方法。
【請求項67】
配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、19、20、21および22より成るグループから選択された配列と最低60%のパーセント同一性を持つヌクレオチド配列を持つポリヌクレオチドを含む単離されたポリヌクレオチド。
【請求項68】
請求項67に記載の単離されたポリヌクレオチドにおいて、前記パーセント同一性が最低70%であることを特徴とする単離されたポリヌクレオチド。
【請求項69】
請求項67に記載の単離されたポリヌクレオチドにおいて、前記パーセント同一性が最低78%であることを特徴とする単離されたポリヌクレオチド。
【請求項70】
請求項67に記載の単離されたポリヌクレオチドにおいて、前記パーセント同一性が最低90%であることを特徴とする単離されたポリヌクレオチド。
【請求項71】
請求項67に記載の単離されたポリヌクレオチドにおいて、前記パーセント同一性が最低95%であることを特徴とする単離されたポリヌクレオチド。
【請求項72】
請求項67に記載の単離されたポリヌクレオチドにおいて、前記パーセント同一性が最低98%であることを特徴とする単離されたポリヌクレオチド。
【請求項73】
請求項67に記載の単離されたポリヌクレオチドにおいて、前記ヌクレオチド配列が、配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、19、20、21および22より成るグループから選択されたものであることを特徴とする。
【請求項74】
配列番号10、11、12、23、24、25、26、27および28より成るグループから選択されたアミノ酸配列と最低90%のパーセント同一性を持つアミノ酸配列を持つポリペプチドを含む単離されたポリペプチド。
【請求項75】
請求項74に記載の単離されたポリペプチドにおいて、前記パーセント同一性が最低95%であることを特徴とする単離されたポリペプチド。
【請求項76】
請求項74に記載の単離されたポリペプチドにおいて、前記パーセント同一性が最低98%であることを特徴とする単離されたポリペプチド。
【請求項77】
請求項74に記載の単離されたポリペプチドにおいて、前記アミノ酸配列が、配列番号10、11、12、23、24、25、26、27および28より成るグループから選択されることを特徴とする単離されたポリペプチド。
【請求項78】
請求項67に記載のポリヌクレオチドの組換え型を含む細胞系。
【請求項79】
請求項74に記載のポリペプチドの組換え型を含む細胞系。
【請求項80】
ヘモジュヴェリンの発現あるいは活性を調節する組成物を同定するための方法における、請求項78あるいは79に記載の細胞系の使用法。
【請求項81】
鉄代謝の疾患を処置するための組成物であって、前記組成物が、薬剤として許容される担体中の治療上効果的な量の請求項74に記載のポリペプチドを含むことを特徴とする組成物。
【請求項82】
鉄代謝の疾患を処置するための方法であって、前記方法が、必要とする患者に、薬剤として許容される担体中の治療上効果的な量の請求項81に記載の組成物を投与することを含むことを特徴とする方法。
【請求項83】
請求項82に記載の方法であって、前記疾患が若年性ヘモクロマトーシスであることを特徴とする方法。
【請求項84】
化合物によるHFE2A遺伝子発現の調節に関する試験情報を生成するための方法であって、前記方法が、
(a)試験化合物を、HFE2Aプロモーターに動作可能に結合するレポーター遺伝子の発現を支持する条件下で、前記レポーター遺伝子を含む遺伝子構成体と接触させ、
(b)前記接触の結果としての前記レポーター遺伝子の発現の変化を測定し、ここで前記変化は調節を示し、
(c)遺伝子調節活性を示す、測定された遺伝子の発現の変化に基づく前記試験化合物の遺伝子調節活性に関する試験情報を生成することを含むことを特徴とする方法。
【請求項85】
化合物によるHFE2Aポリペプチド活性の調節に関する試験情報を生成するための方法であって、前記方法が、
(a)試験化合物を、HFE2Aポリペプチドの活性を促進する条件下で、前記HFE2Aポリペプチドと接触させ、
(b)前記接触の結果としての前記ポリペプチドの活性の変化を測定し、ここで前記変化は調節を示し、
(c)調節活性を示す、HFE2Aポリペプチド活性の変化に基づく前記試験化合物のHFE2Aポリペプチド調節活性に関する試験情報を生成することを含むことを特徴とする方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
HFE2A遺伝子発現を調節する物質を同定するための方法であって、前記方法が、
(a)試験化合物を、HFE2Aプロモーターと動作可能に連結するレポーター遺伝子の発現を支持する条件下で、前記レポーター遺伝子を含む遺伝子構成体と接触させ、
(b)前記接触の結果としての前記レポーター遺伝子の発現の変化を測定することを含み、
ここで発現の変化が、前記試験化合物を、HFE2A遺伝子発現を調節する物質として同定することを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、前記調節が前記レポーター遺伝子の発現の増加であることを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項1に記載の方法において、前記調節が前記レポーター遺伝子の発現の減少であることを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項1に記載の方法において、前記HFE2Aプロモーターが哺乳類HFE2Aプロモーターであることを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項4に記載の方法において、前記哺乳類がマウス、ラットおよびヒトより成るグループから選択されたものであることを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項1に記載の方法において、前記プロモーターが配列番号19のヌクレオチド配列を持つことを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項1に記載の方法において、前記遺伝子構成体が細胞中にあることを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項7に記載の方法において、前記細胞が哺乳類細胞であることを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項7に記載の方法において、前記細胞が前記遺伝子を発現するように処理された組換え細胞であり、またここで前記細胞が、前記処理がなければ前記遺伝子を発現しないことを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項8に記載の方法において、前記哺乳類細胞が、マクロファージ、炎症細胞、肝臓細胞、肝細胞、腸細胞、造血性細胞、膵臓細胞、骨格筋細胞あるいは神経系細胞のいずれかであることを特徴とする方法。
【請求項11】
請求項1に記載の方法において、前記試験化合物が鉄代謝の制御に有用であることを特徴とする方法。
【請求項12】
請求項1に記載の方法において、前記試験化合物が、前記方法を用いてHFE2A遺伝子発現を調節する物質として最初に同定されることを特徴とする方法。
【請求項13】
請求項1に記載の方法において、前記変化が酵素活性の変化を測定することにより測定されることを特徴とする方法。
【請求項14】
HFE2A遺伝子発現を調節する物質を同定するための方法であって、前記方法が、
a)試験化合物を、HFE2A遺伝子を発現する細胞と接触させ、
b)前記接触の結果としての前記HFE2A遺伝子の発現の変化を測定することを含み、
ここで発現の変化が、前記試験化合物を、HFE2A遺伝子発現を調節する物質として同定することを特徴とする方法。
【請求項15】
HFE2Aポリペプチドの活性を調節する物質を同定するための方法であって、前記方法が、
a)試験化動物を、HFE2Aポリペプチドの活性を支持する条件下で、HFE2Aポリペプチドと接触させ、
b)前記接触の結果としての前記ポリペプチドの前記活性の変化を測定することを含み、
ここで活性の変化が、前記試験化合物を、HFE2Aポリペプチドの活性を調節する物質として同定することを特徴とする方法。
【請求項16】
請求項15に記載の方法において、前記HFE2Aポリペプチドが哺乳類HFE2Aポリペプチドであることを特徴とする方法。
【請求項17】
請求項16に記載の方法において、前記哺乳類がマウス、ラットおよびヒトより成るグループから選択されたものであることを特徴とする方法。
【請求項18】
請求項15に記載の方法において、前記変化が前記活性の減少であることを特徴とする方法。
【請求項19】
請求項15に記載の方法において、前記変化が前記活性の増加であることを特徴とする方法。
【請求項20】
請求項15に記載の方法において、前記ポリペプチドが細胞の一部であることを特徴とする方法。
【請求項21】
請求項20に記載の方法において、前記細胞が哺乳類細胞であることを特徴とする方法。
【請求項22】
請求項20に記載の方法において、前記細胞が前記ポリペプチドを包含するように処理されていることを特徴とする方法。
【請求項23】
請求項22に記載の方法において、前記細胞が遺伝子操作により処理されたことを特徴とする方法。
【請求項24】
請求項23に記載の方法において、前記細胞が、前記処理がなければ前記ポリペプチドを包含しないことを特徴とする方法。
【請求項25】
請求項20に記載の方法において、前記細胞が、マクロファージ、炎症細胞、肝臓細胞、肝細胞、腸細胞、造血性細胞、膵臓細胞、骨格筋細胞あるいは神経系の細胞のいずれかであることを特徴とする方法。
【請求項26】
請求項15に記載の方法において、前記HFE2Aポリペプチドが高度に精製されることを特徴とする方法。
【請求項27】
請求項15に記載の方法において、前記HFE2Aポリペプチドが半精製ポリペプチドであることを特徴とする方法。
【請求項28】
請求項15に記載の方法において、前記HFE2Aポリペプチドが固体表面に付着されることを特徴とする方法。
【請求項29】
請求項28に記載の方法において、前記固体表面が樹脂であることを特徴とする方法。
【請求項30】
請求項15に記載の方法において、前記HFE2Aポリペプチドが抽出物の一部であることを特徴とする方法。
【請求項31】
請求項15に記載の方法において、前記ポリペプチドが、配列番号1、2、3、4、5、6、7、8および9より成るグループから選択された配列を持つポリヌクレオチドによりエンコードされることを特徴とする方法。
【請求項32】
請求項15に記載の方法において、前記ポリペプチドが、配列番号10、11および12から選択されたアミノ酸配列を含むことを特徴とする方法。
【請求項33】
疾患を処置するための方法であって、前記方法が、前記疾患に苦しむ動物に、治療上効果的な量のHFE2A調節因子を投与することを含むことを特徴とする方法。
【請求項34】
請求項33に記載の方法において、前記HFE2A調節因子が、請求項1、14あるいは15のいずれか一項に記載の方法において調節活性を示すことを特徴とする方法。
【請求項35】
請求項34に記載の方法において、前記調節因子が前記方法を用いてHFE2A調節因子として最初に同定されたことを特徴とする方法。
【請求項36】
請求項33に記載の方法において、前記HFE2A調節因子が、選択的HFE2Aアゴニスト、選択的HFE2Aアンタゴニスト、それらの薬剤として許容される塩、およびこれらの組み合わせより成るグループから選択されたものであることを特徴とする方法。
【請求項37】
請求項36に記載の方法において、前記選択されたものが薬剤として許容される担体中にあることを特徴とする方法。
【請求項38】
請求項33に記載の方法において、前記HFE2A調節因子が、抗体、アンチセンス分子、リボザイムおよび薬剤様有機小分子から選択されることを特徴とする方法。
【請求項39】
請求項33に記載の方法において、前記疾患が鉄代謝の疾患であることを特徴とする方法。
【請求項40】
請求項39に記載の方法において、前記鉄代謝の疾患が、鉄過剰疾患および鉄欠乏症より成るグループから選択されたものであることを特徴とする方法。
【請求項41】
請求項39に記載の方法において、前記鉄代謝の疾患が、ヘモクロマトーシス、輸血関連鉄過剰状態、サラセミア、ポルフィリン症、および若年性ヘモクロマトーシスより成るグループから選択されたものであることを特徴とする方法。
【請求項42】
請求項39に記載の方法において、前記鉄代謝の疾患が、貧血および慢性疾患に伴う貧血より成るグループから選択されたものであることを特徴とする方法。
【請求項43】
請求項39に記載の方法において、前記鉄代謝の疾患が、I型糖尿病、II型糖尿病、およびインスリン抵抗性から選択されたものであることを特徴とする方法。
【請求項44】
疾患を予防するための方法であって、前記方法は、前記疾患を発症する恐れのある動物に、治療上効果的な量のHFE2A調節因子を投与することを含むことを特徴とする方法。
【請求項45】
請求項44に記載の方法において、前記HFE2A調節因子が請求項1、14あるいは15のいずれか一項に記載の方法において調節活性を示すことを特徴とする方法。
【請求項46】
請求項45に記載の方法において、前記調節因子が、前記方法を用いてHFE2A調節因子として最初に同定されたことを特徴とする方法。
【請求項47】
請求項44に記載の方法において、前記HFE2A調節因子が、選択的HFE2Aアゴニスト、選択的HFE2Aアンタゴニスト、それらの薬剤として許容される塩、およびこれらの組み合わせより成るグループから選択されたものであることを特徴とする方法。
【請求項48】
請求項47に記載の方法において、前記選択されたものが薬剤として許容される担体中にあることを特徴とする方法。
【請求項49】
請求項44に記載の方法において、前記HFE2A調節因子が、抗体、アンチセンス分子、リボザイムおよび薬剤様有機小分子から選択されることを特徴とする方法。
【請求項50】
請求項44に記載の方法において、前記疾患が鉄代謝の疾患であることを特徴とする方法。
【請求項51】
請求項50に記載の方法において、前記鉄代謝の疾患が、鉄過剰疾患および鉄欠乏症より成るグループから選択されたものであることを特徴とする方法。
【請求項52】
請求項50に記載の方法において、前記鉄代謝の疾患が、ヘモクロマトーシス、輸血関連鉄過剰状態、サラセミア、ポルフィリン症、および若年性ヘモクロマトーシスより成るグループから選択されたものであることを特徴とする方法。
【請求項53】
請求項50に記載の方法において、前記鉄代謝の疾患が、貧血および慢性疾患に伴う貧血より成るグループから選択されたものであることを特徴とする方法。
【請求項54】
請求項50に記載の方法において、前記鉄代謝の疾患が、I型糖尿病、II型糖尿病、およびインスリン抵抗性から選択されたものであることを特徴とする方法。
【請求項55】
鉄代謝の疾患に冒されているか、あるいは発症する恐れのある個人を診断するための方法であって、前記方法が、前記個人のHFE2A遺伝子の核酸配列における突然変異あるいは多型を測定することを含み、ここで前記遺伝子における前記突然変異あるいは多型が、前記個人を鉄代謝の疾患に冒されているか、あるいは発症する恐れがあるとして同定することを特徴とする方法。
【請求項56】
請求項55に記載の方法において、前記突然変異あるいは多型が、表1に示す突然変異あるいは多型であることを特徴とする方法。
【請求項57】
鉄代謝の疾患に冒されているか、あるいは発症する恐れのある個人を診断するための方法であって、前記方法が、前記個人のHFE2Aポリペプチドのアミノ酸配列における突然変異あるいは多型を測定することを含み、ここで前記HFE2Aポリペプチドの突然変異あるいは多型が、前記個人を鉄代謝の疾患に冒されているか、あるいは発症する恐れがあるとして同定することを特徴とする方法。
【請求項58】
鉄代謝の疾患に冒されているか、あるいは発症する恐れのある個人を診断するための方法であって、前記方法が、前記個人のHFE2Aポリペプチドのレベルあるいは量の変化を測定することを含み、ここで前記変化が、前記個人を鉄代謝の疾患に冒されているか、あるいは発症する恐れがあるとして同定することを特徴とする方法。
【請求項59】
請求項55ないし58のいずれか一項に記載の方法において、前記鉄代謝の疾患が成人発症ヘモクロマトーシスであることを特徴とする方法。
【請求項60】
請求項55ないし58のいずれか一項に記載の方法において、前記鉄代謝の疾患が若年性ヘモクロマトーシスであることを特徴とする方法。
【請求項61】
請求項55ないし58のいずれか一項に記載の方法において、前記鉄代謝の疾患がI型糖尿病、II型糖尿病、およびインスリン抵抗性から選択されることを特徴とする方法。
【請求項62】
HFE2A活性を調節することができる化合物を同定するための方法であって、前記方法が、(a)試験化合物を、HFE2Aを発現する細胞と接触させ、(b)前記試験化合物の、HFE2A核酸の転写あるいはHFE2Aポリペプチドの活性を調節する能力を測定することを含み、それによりHFE2A活性を調節することができる化合物を同定することを特徴とする方法。
【請求項63】
請求項62に記載の方法において、前記化合物が抗HFE2Aポリペプチド抗体であることを特徴とする方法。
【請求項64】
請求項62に記載の方法において、前記化合物がアンチセンスHFE2A核酸分子であることを特徴とする方法。
【請求項65】
請求項62に記載の方法において、前記化合物がHFE2Aリボザイムであることを特徴とする方法。
【請求項66】
請求項62に記載の方法において、前記化合物が有機小分子であることを特徴とする方法。
【請求項67】
配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、19、20、21および22より成るグループから選択された配列と最低60%のパーセント同一性を持つヌクレオチド配列を持つポリヌクレオチドを含む単離されたポリヌクレオチド。
【請求項68】
請求項67に記載の単離されたポリヌクレオチドにおいて、前記パーセント同一性が最低70%であることを特徴とする単離されたポリヌクレオチド。
【請求項69】
請求項67に記載の単離されたポリヌクレオチドにおいて、前記パーセント同一性が最低78%であることを特徴とする単離されたポリヌクレオチド。
【請求項70】
請求項67に記載の単離されたポリヌクレオチドにおいて、前記パーセント同一性が最低90%であることを特徴とする単離されたポリヌクレオチド。
【請求項71】
請求項67に記載の単離されたポリヌクレオチドにおいて、前記パーセント同一性が最低95%であることを特徴とする単離されたポリヌクレオチド。
【請求項72】
請求項67に記載の単離されたポリヌクレオチドにおいて、前記パーセント同一性が最低98%であることを特徴とする単離されたポリヌクレオチド。
【請求項73】
請求項67に記載の単離されたポリヌクレオチドにおいて、前記ヌクレオチド配列が、配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、19、20、21および22より成るグループから選択されたものであることを特徴とする。
【請求項74】
配列番号10、11、12、23、24、25、26、27および28より成るグループから選択されたアミノ酸配列と最低90%のパーセント同一性を持つアミノ酸配列を持つポリペプチドを含む単離されたポリペプチド。
【請求項75】
請求項74に記載の単離されたポリペプチドにおいて、前記パーセント同一性が最低95%であることを特徴とする単離されたポリペプチド。
【請求項76】
請求項74に記載の単離されたポリペプチドにおいて、前記パーセント同一性が最低98%であることを特徴とする単離されたポリペプチド。
【請求項77】
請求項74に記載の単離されたポリペプチドにおいて、前記アミノ酸配列が、配列番号10、11、12、23、24、25、26、27および28より成るグループから選択されることを特徴とする単離されたポリペプチド。
【請求項78】
請求項67に記載のポリヌクレオチドの組換え型を含む細胞系。
【請求項79】
請求項74に記載のポリペプチドの組換え型を含む細胞系。
【請求項80】
ヘモジュヴェリンの発現あるいは活性を調節する組成物を同定するための方法における、請求項78あるいは79に記載の細胞系の使用法。
【請求項81】
鉄代謝の疾患を処置するための組成物であって、前記組成物が、薬剤として許容される担体中の治療上効果的な量の請求項74に記載のポリペプチドを含むことを特徴とする組成物。
【請求項82】
鉄代謝の疾患を処置するための方法であって、前記方法が、必要とする患者に、薬剤として許容される担体中の治療上効果的な量の請求項81に記載の組成物を投与することを含むことを特徴とする方法。
【請求項83】
請求項82に記載の方法であって、前記疾患が若年性ヘモクロマトーシスであることを特徴とする方法。
【請求項84】
化合物によるHFE2A遺伝子発現の調節に関する試験情報を生成するための方法であって、前記方法が、
(a)試験化合物を、HFE2Aプロモーターに動作可能に結合するレポーター遺伝子の発現を支持する条件下で、前記レポーター遺伝子を含む遺伝子構成体と接触させ、
(b)前記接触の結果としての前記レポーター遺伝子の発現の変化を測定し、ここで前記変化は調節を示し、
(c)遺伝子調節活性を示す、測定された遺伝子の発現の変化に基づく前記試験化合物の遺伝子調節活性に関する試験情報を生成することを含むことを特徴とする方法。
【請求項85】
化合物によるHFE2Aポリペプチド活性の調節に関する試験情報を生成するための方法であって、前記方法が、
(a)試験化合物を、HFE2Aポリペプチドの活性を促進する条件下で、前記HFE2Aポリペプチドと接触させ、
(b)前記接触の結果としての前記ポリペプチドの活性の変化を測定し、ここで前記変化は調節を示し、
(c)調節活性を示す、HFE2Aポリペプチド活性の変化に基づく前記試験化合物のHFE2Aポリペプチド調節活性に関する試験情報を生成することを含むことを特徴とする方法。
【請求項86】
単離されたポリペプチドあるいはその断片であって、前記ポリペプチドが、配列番号10、11および12より成るグループから選択されたアミノ酸配列と最低90%のパーセント同一性を持つアミノ酸配列を含み、前記断片が最低10個のアミノ酸残基を含むことを特徴とする単離されたポリペプチド。
【請求項87】
請求項86に記載の単離されたポリペプチドあるいはその断片において、前記パーセント同一性が最低95%であることを特徴とする単離されたポリペプチドあるいはその断片。
【請求項88】
請求項86に記載の単離されたポリペプチドあるいはその断片において、前記パーセント同一性が最低98%であることを特徴とする単離されたポリペプチドあるいはその断片。
【請求項89】
請求項86に記載の単離されたポリペプチドあるいはその断片において、前記ポリペプチドが配列番号10、11および12より成るグループから選択されたアミノ酸配列を含むことを特徴とする単離されたポリペプチドあるいはその断片。
【請求項90】
請求項86、87、88あるいは89のいずれか一項に記載のポリペプチドを発現するように処理されたことを特徴とする組換え細胞系。
【請求項91】
ヘモジュヴェリンの発現あるいは活性を調節する組成物を同定することへの、請求項90に記載の細胞系の使用。
【請求項92】
鉄代謝の疾患を処置するための組成物であって、前記組成物が、薬剤として許容される担体中の治療上効果的な量の請求項86、87、88あるいは89のいずれか一項に記載のポリペプチドを含むことを特徴とする組成物。
【請求項93】
鉄代謝の疾患を処置するための方法であって、前記方法が、必要とする患者に、薬剤として許容される担体中の治療上効果的な量の請求項86、87、88あるいは89のいずれか一項に記載の組成物を投与することを含むことを特徴とする方法。
【請求項94】
請求項93に記載の方法において、前記疾患が若年性ヘモクロマトーシスであることを特徴とする方法。
【請求項95】
請求項93に記載の方法において、前記疾患が成人発症ヘモクロマトーシスであることを特徴とする方法。
【請求項96】
請求項93に記載の方法において、前記疾患が慢性疾患に伴う貧血であることを特徴とする方法。
【請求項97】
請求項93に記載の方法において、前記疾患が鉄欠乏性貧血であることを特徴とする方法。
【請求項98】
請求項67に記載の単離されたポリヌクレオチドにおいて、前記ヌクレオチド配列が配列番号7、8および9より成るグループから選択され、前記単離されたポリヌクレオチドが、ポリペプチドの13kDaから40kDaの分解産物をエンコードすることを特徴とする単離されたポリヌクレオチド。
【請求項99】
請求項68に記載の単離されたポリヌクレオチドにおいて、前記ヌクレオチド配列が配列番号7、8および9より成るグループから選択され、前記単離されたポリヌクレオチドがHFE2Aポリペプチドの分解産物をエンコードし、前記分解産物がおおよそ13kDaから40kDaであることを特徴とする単離されたポリヌクレオチド。
【請求項100】
請求項69に記載の単離されたポリヌクレオチドにおいて、前記ヌクレオチド配列が配列番号7、8および9より成るグループから選択され、前記単離されたポリヌクレオチドがHFE2Aポリペプチドの分解産物をエンコードし、前記分解産物がおおよそ13kDaから40kDaであることを特徴とする単離されたポリヌクレオチド。
【請求項101】
請求項70に記載の単離されたポリヌクレオチドにおいて、前記ヌクレオチド配列が配列番号7、8および9より成るグループから選択され、前記単離されたポリヌクレオチドがHFE2Aポリペプチドの分解産物をエンコードし、前記分解産物がおおよそ13kDaから40kDaであることを特徴とする単離されたポリヌクレオチド。
【請求項102】
請求項71に記載の単離されたポリヌクレオチドにおいて、前記ヌクレオチド配列が配列番号7、8および9より成るグループから選択され、前記単離されたポリヌクレオチドがHFE2Aポリペプチドの分解産物をエンコードし、前記分解産物がおおよそ13kDaから40kDaであることを特徴とする単離されたポリヌクレオチド。
【請求項103】
請求項72に記載の単離されたポリヌクレオチドにおいて、前記ヌクレオチド配列が配列番号7、8および9より成るグループから選択され、前記単離されたポリヌクレオチドがHFE2Aポリペプチドの分解産物をエンコードし、前記分解産物がおおよそ13kDaから40kDaであることを特徴とする単離されたポリヌクレオチド。
【請求項104】
請求項73に記載の単離されたポリヌクレオチドにおいて、前記ヌクレオチド配列が配列番号7、8および9より成るグループから選択され、前記単離されたポリヌクレオチドがHFE2Aポリペプチドの分解産物をエンコードし、前記分解産物がおおよそ13kDaから40kDaであることを特徴とする単離されたポリヌクレオチド。
【請求項105】
請求項98、99、100、101、102、103あるいは104のいずれか一項に記載の単離されたポリヌクレオチドにおいて、前記分解産物が約26kDaのポリペプチドを含むことを特徴とする単離されたポリヌクレオチド。
【請求項106】
請求項58に記載の方法において、前記変化が減少であることを特徴とする方法。
【請求項107】
請求項58に記載の方法において、前記変化が増加であることを特徴とする方法。
【請求項108】
慢性疾患に伴う貧血を診断するための方法であって、前記方法が、個人におけるHFE2Aポリペプチドのレベルあるいは量の変化を測定することを含み、前記変化が前記個人を慢性疾患に伴う貧血に冒されているか、あるいは発症する恐れがあるとして同定することを特徴とする方法。
【請求項109】
鉄欠乏性貧血を診断するための方法であって、前記方法が、個人におけるHFE2Aポリペプチドのレベルあるいは量の変化を測定することを含み、前記変化が前記個人を鉄欠乏性貧血に冒されているか、あるいは発症する恐れがあるとして同定することを特徴とする方法。
【請求項110】
請求項108または109に記載の方法において、前記変化が減少であることを特徴とする方法。
【請求項111】
請求項108または109に記載の方法において、前記変化が増加であることを特徴とする方法。
【請求項112】
請求項57に記載の方法において、前記突然変異あるいは多型が前記ポリペプチドの断片の存在を測定することにより測定されることを特徴とする方法。
【請求項113】
請求項112に記載の方法において、前記診断が、前記断片の大きさを測定することに基づくことを特徴とする方法。
【請求項114】
請求項58に記載の方法において、前記変化が前記ポリペプチドの断片の存在を検出することにより測定されることを特徴とする方法。
【請求項115】
請求項114に記載の方法において、前記診断が、前記断片の大きさを測定することに基づくことを特徴とする方法。
【請求項116】
請求項108または109に記載の方法において、前記変化が前記ポリペプチドの断片のレベルあるいは量を測定することにより測定されることを特徴とする方法。
【請求項117】
請求項116に記載の方法において、前記診断が、前記断片の大きさを測定することに基づくことを特徴とする方法。
【請求項1】
HFE2A遺伝子発現を調節する物質を同定するための方法であって、前記方法が、
(a)試験化合物を、HFE2Aプロモーターと動作可能に連結するレポーター遺伝子の発現を支持する条件下で、前記レポーター遺伝子を含む遺伝子構成体と接触させ、
(b)前記接触の結果としての前記レポーター遺伝子の発現の変化を測定することを含み、
ここで発現の変化が、前記試験化合物を、HFE2A遺伝子発現を調節する物質として同定することを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、前記調節が前記レポーター遺伝子の発現の増加であることを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項1に記載の方法において、前記調節が前記レポーター遺伝子の発現の減少であることを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項1に記載の方法において、前記HFE2Aプロモーターが哺乳類HFE2Aプロモーターであることを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項4に記載の方法において、前記哺乳類がマウス、ラットおよびヒトより成るグループから選択されたものであることを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項1に記載の方法において、前記プロモーターが配列番号19のヌクレオチド配列を持つことを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項1に記載の方法において、前記遺伝子構成体が細胞中にあることを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項7に記載の方法において、前記細胞が哺乳類細胞であることを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項7に記載の方法において、前記細胞が前記遺伝子を発現するように処理された組換え細胞であり、またここで前記細胞が、前記処理がなければ前記遺伝子を発現しないことを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項8に記載の方法において、前記哺乳類細胞が、マクロファージ、炎症細胞、肝臓細胞、肝細胞、腸細胞、造血性細胞、膵臓細胞、骨格筋細胞あるいは神経系細胞のいずれかであることを特徴とする方法。
【請求項11】
請求項1に記載の方法において、前記試験化合物が鉄代謝の制御に有用であることを特徴とする方法。
【請求項12】
請求項1に記載の方法において、前記試験化合物が、前記方法を用いてHFE2A遺伝子発現を調節する物質として最初に同定されることを特徴とする方法。
【請求項13】
請求項1に記載の方法において、前記変化が酵素活性の変化を測定することにより測定されることを特徴とする方法。
【請求項14】
HFE2A遺伝子発現を調節する物質を同定するための方法であって、前記方法が、
a)試験化合物を、HFE2A遺伝子を発現する細胞と接触させ、
b)前記接触の結果としての前記HFE2A遺伝子の発現の変化を測定することを含み、
ここで発現の変化が、前記試験化合物を、HFE2A遺伝子発現を調節する物質として同定することを特徴とする方法。
【請求項15】
HFE2Aポリペプチドの活性を調節する物質を同定するための方法であって、前記方法が、
a)試験化動物を、HFE2Aポリペプチドの活性を支持する条件下で、HFE2Aポリペプチドと接触させ、
b)前記接触の結果としての前記ポリペプチドの前記活性の変化を測定することを含み、
ここで活性の変化が、前記試験化合物を、HFE2Aポリペプチドの活性を調節する物質として同定することを特徴とする方法。
【請求項16】
請求項15に記載の方法において、前記HFE2Aポリペプチドが哺乳類HFE2Aポリペプチドであることを特徴とする方法。
【請求項17】
請求項16に記載の方法において、前記哺乳類がマウス、ラットおよびヒトより成るグループから選択されたものであることを特徴とする方法。
【請求項18】
請求項15に記載の方法において、前記変化が前記活性の減少であることを特徴とする方法。
【請求項19】
請求項15に記載の方法において、前記変化が前記活性の増加であることを特徴とする方法。
【請求項20】
請求項15に記載の方法において、前記ポリペプチドが細胞の一部であることを特徴とする方法。
【請求項21】
請求項20に記載の方法において、前記細胞が哺乳類細胞であることを特徴とする方法。
【請求項22】
請求項20に記載の方法において、前記細胞が前記ポリペプチドを包含するように処理されていることを特徴とする方法。
【請求項23】
請求項22に記載の方法において、前記細胞が遺伝子操作により処理されたことを特徴とする方法。
【請求項24】
請求項23に記載の方法において、前記細胞が、前記処理がなければ前記ポリペプチドを包含しないことを特徴とする方法。
【請求項25】
請求項20に記載の方法において、前記細胞が、マクロファージ、炎症細胞、肝臓細胞、肝細胞、腸細胞、造血性細胞、膵臓細胞、骨格筋細胞あるいは神経系の細胞のいずれかであることを特徴とする方法。
【請求項26】
請求項15に記載の方法において、前記HFE2Aポリペプチドが高度に精製されることを特徴とする方法。
【請求項27】
請求項15に記載の方法において、前記HFE2Aポリペプチドが半精製ポリペプチドであることを特徴とする方法。
【請求項28】
請求項15に記載の方法において、前記HFE2Aポリペプチドが固体表面に付着されることを特徴とする方法。
【請求項29】
請求項28に記載の方法において、前記固体表面が樹脂であることを特徴とする方法。
【請求項30】
請求項15に記載の方法において、前記HFE2Aポリペプチドが抽出物の一部であることを特徴とする方法。
【請求項31】
請求項15に記載の方法において、前記ポリペプチドが、配列番号1、2、3、4、5、6、7、8および9より成るグループから選択された配列を持つポリヌクレオチドによりエンコードされることを特徴とする方法。
【請求項32】
請求項15に記載の方法において、前記ポリペプチドが、配列番号10、11および12から選択されたアミノ酸配列を含むことを特徴とする方法。
【請求項33】
疾患を処置するための方法であって、前記方法が、前記疾患に苦しむ動物に、治療上効果的な量のHFE2A調節因子を投与することを含むことを特徴とする方法。
【請求項34】
請求項33に記載の方法において、前記HFE2A調節因子が、請求項1、14あるいは15のいずれか一項に記載の方法において調節活性を示すことを特徴とする方法。
【請求項35】
請求項34に記載の方法において、前記調節因子が前記方法を用いてHFE2A調節因子として最初に同定されたことを特徴とする方法。
【請求項36】
請求項33に記載の方法において、前記HFE2A調節因子が、選択的HFE2Aアゴニスト、選択的HFE2Aアンタゴニスト、それらの薬剤として許容される塩、およびこれらの組み合わせより成るグループから選択されたものであることを特徴とする方法。
【請求項37】
請求項36に記載の方法において、前記選択されたものが薬剤として許容される担体中にあることを特徴とする方法。
【請求項38】
請求項33に記載の方法において、前記HFE2A調節因子が、抗体、アンチセンス分子、リボザイムおよび薬剤様有機小分子から選択されることを特徴とする方法。
【請求項39】
請求項33に記載の方法において、前記疾患が鉄代謝の疾患であることを特徴とする方法。
【請求項40】
請求項39に記載の方法において、前記鉄代謝の疾患が、鉄過剰疾患および鉄欠乏症より成るグループから選択されたものであることを特徴とする方法。
【請求項41】
請求項39に記載の方法において、前記鉄代謝の疾患が、ヘモクロマトーシス、輸血関連鉄過剰状態、サラセミア、ポルフィリン症、および若年性ヘモクロマトーシスより成るグループから選択されたものであることを特徴とする方法。
【請求項42】
請求項39に記載の方法において、前記鉄代謝の疾患が、貧血および慢性疾患に伴う貧血より成るグループから選択されたものであることを特徴とする方法。
【請求項43】
請求項39に記載の方法において、前記鉄代謝の疾患が、I型糖尿病、II
型糖尿病、およびインスリン抵抗性から選択されたものであることを特徴とする方法。
【請求項44】
疾患を予防するための方法であって、前記方法は、前記疾患を発症する恐れのある動物に、治療上効果的な量のHFE2A調節因子を投与することを含むことを特徴とする方法。
【請求項45】
請求項44に記載の方法において、前記HFE2A調節因子が請求項1、14あるいは15のいずれか一項に記載の方法において調節活性を示すことを特徴とする方法。
【請求項46】
請求項45に記載の方法において、前記調節因子が、前記方法を用いてHFE2A調節因子として最初に同定されたことを特徴とする方法。
【請求項47】
請求項44に記載の方法において、前記HFE2A調節因子が、選択的HFE2Aアゴニスト、選択的HFE2Aアンタゴニスト、それらの薬剤として許容される塩、およびこれらの組み合わせより成るグループから選択されたものであることを特徴とする方法。
【請求項48】
請求項47に記載の方法において、前記選択されたものが薬剤として許容される担体中にあることを特徴とする方法。
【請求項49】
請求項44に記載の方法において、前記HFE2A調節因子が、抗体、アンチセンス分子、リボザイムおよび薬剤様有機小分子から選択されることを特徴とする方法。
【請求項50】
請求項44に記載の方法において、前記疾患が鉄代謝の疾患であることを特徴とする方法。
【請求項51】
請求項50に記載の方法において、前記鉄代謝の疾患が、鉄過剰疾患および鉄欠乏症より成るグループから選択されたものであることを特徴とする方法。
【請求項52】
請求項50に記載の方法において、前記鉄代謝の疾患が、ヘモクロマトーシス、輸血関連鉄過剰状態、サラセミア、ポルフィリン症、および若年性ヘモクロマトーシスより成るグループから選択されたものであることを特徴とする方法。
【請求項53】
請求項50に記載の方法において、前記鉄代謝の疾患が、貧血および慢性疾患に伴う貧血より成るグループから選択されたものであることを特徴とする方法。
【請求項54】
請求項50に記載の方法において、前記鉄代謝の疾患が、I型糖尿病、II型糖尿病、およびインスリン抵抗性から選択されたものであることを特徴とする方法。
【請求項55】
鉄代謝の疾患に冒されているか、あるいは発症する恐れのある個人を診断するための方法であって、前記方法が、前記個人のHFE2A遺伝子の核酸配列における突然変異あるいは多型を測定することを含み、ここで前記遺伝子における前記突然変異あるいは多型が、前記個人を鉄代謝の疾患に冒されているか、あるいは発症する恐れがあるとして同定することを特徴とする方法。
【請求項56】
請求項55に記載の方法において、前記突然変異あるいは多型が、表1に示す突然変異あるいは多型であることを特徴とする方法。
【請求項57】
鉄代謝の疾患に冒されているか、あるいは発症する恐れのある個人を診断するための方法であって、前記方法が、前記個人のHFE2Aポリペプチドのアミノ酸配列における突然変異あるいは多型を測定することを含み、ここで前記HFE2Aポリペプチドの突然変異あるいは多型が、前記個人を鉄代謝の疾患に冒されているか、あるいは発症する恐れがあるとして同定することを特徴とする方法。
【請求項58】
鉄代謝の疾患に冒されているか、あるいは発症する恐れのある個人を診断するための方法であって、前記方法が、前記個人のHFE2Aポリペプチドのレベルあるいは量の減少を測定することを含み、ここで減少が、前記個人を鉄代謝の疾患に冒されているか、あるいは発症する恐れがあるとして同定することを特徴とする方法。
【請求項59】
請求項55ないし58のいずれか一項に記載の方法において、前記鉄代謝の疾患が成人発症ヘモクロマトーシスであることを特徴とする方法。
【請求項60】
請求項55ないし58のいずれか一項に記載の方法において、前記鉄代謝の疾患が若年性ヘモクロマトーシスであることを特徴とする方法。
【請求項61】
請求項55ないし58のいずれか一項に記載の方法において、前記鉄代謝の疾患がI型糖尿病、II型糖尿病、およびインスリン抵抗性から選択されることを特徴とする方法。
【請求項62】
HFE2A活性を調節することができる化合物を同定するための方法であって、前記方法が、(a)試験化合物を、HFE2Aを発現する細胞と接触させ、(b)前記試験化合物の、HFE2A核酸の転写あるいはHFE2Aポリペプチドの活性を調節する能力を測定することを含み、それによりHFE2A活性を調節することができる化合物を同定することを特徴とする方法。
【請求項63】
請求項62に記載の方法において、前記化合物が抗HFE2Aポリペプチド抗体であることを特徴とする方法。
【請求項64】
請求項62に記載の方法において、前記化合物がアンチセンスHFE2A核酸分子であることを特徴とする方法。
【請求項65】
請求項62に記載の方法において、前記化合物がHFE2Aリボザイムであることを特徴とする方法。
【請求項66】
請求項62に記載の方法において、前記化合物が有機小分子であることを特徴とする方法。
【請求項67】
配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、19、20、21および22より成るグループから選択された配列と最低60%のパーセント同一性を持つヌクレオチド配列を持つポリヌクレオチドを含む単離されたポリヌクレオチド。
【請求項68】
請求項67に記載の単離されたポリヌクレオチドにおいて、前記パーセント同一性が最低70%であることを特徴とする単離されたポリヌクレオチド。
【請求項69】
請求項67に記載の単離されたポリヌクレオチドにおいて、前記パーセント同一性が最低78%であることを特徴とする単離されたポリヌクレオチド。
【請求項70】
請求項67に記載の単離されたポリヌクレオチドにおいて、前記パーセント同一性が最低90%であることを特徴とする単離されたポリヌクレオチド。
【請求項71】
請求項67に記載の単離されたポリヌクレオチドにおいて、前記パーセント同一性が最低95%であることを特徴とする単離されたポリヌクレオチド。
【請求項72】
請求項67に記載の単離されたポリヌクレオチドにおいて、前記パーセント同一性が最低98%であることを特徴とする単離されたポリヌクレオチド。
【請求項73】
請求項67に記載の単離されたポリヌクレオチドにおいて、前記ヌクレオチド配列が、配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、19、20、21および22より成るグループから選択されたものであることを特徴とする。
【請求項74】
配列番号10、11、12、23、24、25、26、27および28より成るグループから選択されたアミノ酸配列と最低90%のパーセント同一性を持つアミノ酸配列を持つポリペプチドを含む単離されたポリペプチド。
【請求項75】
請求項74に記載の単離されたポリペプチドにおいて、前記パーセント同一性が最低95%であることを特徴とする単離されたポリペプチド。
【請求項76】
請求項74に記載の単離されたポリペプチドにおいて、前記パーセント同一性が最低98%であることを特徴とする単離されたポリペプチド。
【請求項77】
請求項74に記載の単離されたポリペプチドにおいて、前記アミノ酸配列が、配列番号10、11、12、23、24、25、26、27および28より成るグループから選択されることを特徴とする単離されたポリペプチド。
【請求項78】
請求項67に記載のポリヌクレオチドの組換え型を含む細胞系。
【請求項79】
請求項74に記載のポリペプチドの組換え型を含む細胞系。
【請求項80】
ヘモジュヴェリンの発現あるいは活性を調節する組成物を同定するための方法における、請求項78あるいは79に記載の細胞系の使用法。
【請求項81】
鉄代謝の疾患を処置するための組成物であって、前記組成物が、薬剤として許容される担体中の治療上効果的な量の請求項74に記載のポリペプチドを含むことを特徴とする組成物。
【請求項82】
鉄代謝の疾患を処置するための方法であって、前記方法が、必要とする患者に、薬剤として許容される担体中の治療上効果的な量の請求項81に記載の組成物を投与することを含むことを特徴とする方法。
【請求項83】
請求項82に記載の方法であって、前記疾患が若年性ヘモクロマトーシスであることを特徴とする方法。
【請求項84】
化合物によるHFE2A遺伝子発現の調節に関する試験情報を生成するための方法であって、前記方法が、
(a)試験化合物を、HFE2Aプロモーターに動作可能に結合するレポーター遺伝子の発現を支持する条件下で、前記レポーター遺伝子を含む遺伝子構成体と接触させ、
(b)前記接触の結果としての前記レポーター遺伝子の発現の変化を測定し、ここで前記変化は調節を示し、
(c)遺伝子調節活性を示す、測定された遺伝子の発現の変化に基づく前記試験化合物の遺伝子調節活性に関する試験情報を生成することを含むことを特徴とする方法。
【請求項85】
化合物によるHFE2Aポリペプチド活性の調節に関する試験情報を生成するための方法であって、前記方法が、
(a)試験化合物を、HFE2Aポリペプチドの活性を促進する条件下で、前記HFE2Aポリペプチドと接触させ、
(b)前記接触の結果としての前記ポリペプチドの活性の変化を測定し、ここで前記変化は調節を示し、
(c)調節活性を示す、HFE2Aポリペプチド活性の変化に基づく前記試験化合物のHFE2Aポリペプチド調節活性に関する試験情報を生成することを含むことを特徴とする方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
HFE2A遺伝子発現を調節する物質を同定するための方法であって、前記方法が、
(a)試験化合物を、HFE2Aプロモーターと動作可能に連結するレポーター遺伝子の発現を支持する条件下で、前記レポーター遺伝子を含む遺伝子構成体と接触させ、
(b)前記接触の結果としての前記レポーター遺伝子の発現の変化を測定することを含み、
ここで発現の変化が、前記試験化合物を、HFE2A遺伝子発現を調節する物質として同定することを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、前記調節が前記レポーター遺伝子の発現の増加であることを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項1に記載の方法において、前記調節が前記レポーター遺伝子の発現の減少であることを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項1に記載の方法において、前記HFE2Aプロモーターが哺乳類HFE2Aプロモーターであることを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項4に記載の方法において、前記哺乳類がマウス、ラットおよびヒトより成るグループから選択されたものであることを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項1に記載の方法において、前記プロモーターが配列番号19のヌクレオチド配列を持つことを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項1に記載の方法において、前記遺伝子構成体が細胞中にあることを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項7に記載の方法において、前記細胞が哺乳類細胞であることを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項7に記載の方法において、前記細胞が前記遺伝子を発現するように処理された組換え細胞であり、またここで前記細胞が、前記処理がなければ前記遺伝子を発現しないことを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項8に記載の方法において、前記哺乳類細胞が、マクロファージ、炎症細胞、肝臓細胞、肝細胞、腸細胞、造血性細胞、膵臓細胞、骨格筋細胞あるいは神経系細胞のいずれかであることを特徴とする方法。
【請求項11】
請求項1に記載の方法において、前記試験化合物が鉄代謝の制御に有用であることを特徴とする方法。
【請求項12】
請求項1に記載の方法において、前記試験化合物が、前記方法を用いてHFE2A遺伝子発現を調節する物質として最初に同定されることを特徴とする方法。
【請求項13】
請求項1に記載の方法において、前記変化が酵素活性の変化を測定することにより測定されることを特徴とする方法。
【請求項14】
HFE2A遺伝子発現を調節する物質を同定するための方法であって、前記方法が、
a)試験化合物を、HFE2A遺伝子を発現する細胞と接触させ、
b)前記接触の結果としての前記HFE2A遺伝子の発現の変化を測定することを含み、
ここで発現の変化が、前記試験化合物を、HFE2A遺伝子発現を調節する物質として同定することを特徴とする方法。
【請求項15】
HFE2Aポリペプチドの活性を調節する物質を同定するための方法であって、前記方法が、
a)試験化動物を、HFE2Aポリペプチドの活性を支持する条件下で、HFE2Aポリペプチドと接触させ、
b)前記接触の結果としての前記ポリペプチドの前記活性の変化を測定することを含み、
ここで活性の変化が、前記試験化合物を、HFE2Aポリペプチドの活性を調節する物質として同定することを特徴とする方法。
【請求項16】
請求項15に記載の方法において、前記HFE2Aポリペプチドが哺乳類HFE2Aポリペプチドであることを特徴とする方法。
【請求項17】
請求項16に記載の方法において、前記哺乳類がマウス、ラットおよびヒトより成るグループから選択されたものであることを特徴とする方法。
【請求項18】
請求項15に記載の方法において、前記変化が前記活性の減少であることを特徴とする方法。
【請求項19】
請求項15に記載の方法において、前記変化が前記活性の増加であることを特徴とする方法。
【請求項20】
請求項15に記載の方法において、前記ポリペプチドが細胞の一部であることを特徴とする方法。
【請求項21】
請求項20に記載の方法において、前記細胞が哺乳類細胞であることを特徴とする方法。
【請求項22】
請求項20に記載の方法において、前記細胞が前記ポリペプチドを包含するように処理されていることを特徴とする方法。
【請求項23】
請求項22に記載の方法において、前記細胞が遺伝子操作により処理されたことを特徴とする方法。
【請求項24】
請求項23に記載の方法において、前記細胞が、前記処理がなければ前記ポリペプチドを包含しないことを特徴とする方法。
【請求項25】
請求項20に記載の方法において、前記細胞が、マクロファージ、炎症細胞、肝臓細胞、肝細胞、腸細胞、造血性細胞、膵臓細胞、骨格筋細胞あるいは神経系の細胞のいずれかであることを特徴とする方法。
【請求項26】
請求項15に記載の方法において、前記HFE2Aポリペプチドが高度に精製されることを特徴とする方法。
【請求項27】
請求項15に記載の方法において、前記HFE2Aポリペプチドが半精製ポリペプチドであることを特徴とする方法。
【請求項28】
請求項15に記載の方法において、前記HFE2Aポリペプチドが固体表面に付着されることを特徴とする方法。
【請求項29】
請求項28に記載の方法において、前記固体表面が樹脂であることを特徴とする方法。
【請求項30】
請求項15に記載の方法において、前記HFE2Aポリペプチドが抽出物の一部であることを特徴とする方法。
【請求項31】
請求項15に記載の方法において、前記ポリペプチドが、配列番号1、2、3、4、5、6、7、8および9より成るグループから選択された配列を持つポリヌクレオチドによりエンコードされることを特徴とする方法。
【請求項32】
請求項15に記載の方法において、前記ポリペプチドが、配列番号10、11および12から選択されたアミノ酸配列を含むことを特徴とする方法。
【請求項33】
疾患を処置するための方法であって、前記方法が、前記疾患に苦しむ動物に、治療上効果的な量のHFE2A調節因子を投与することを含むことを特徴とする方法。
【請求項34】
請求項33に記載の方法において、前記HFE2A調節因子が、請求項1、14あるいは15のいずれか一項に記載の方法において調節活性を示すことを特徴とする方法。
【請求項35】
請求項34に記載の方法において、前記調節因子が前記方法を用いてHFE2A調節因子として最初に同定されたことを特徴とする方法。
【請求項36】
請求項33に記載の方法において、前記HFE2A調節因子が、選択的HFE2Aアゴニスト、選択的HFE2Aアンタゴニスト、それらの薬剤として許容される塩、およびこれらの組み合わせより成るグループから選択されたものであることを特徴とする方法。
【請求項37】
請求項36に記載の方法において、前記選択されたものが薬剤として許容される担体中にあることを特徴とする方法。
【請求項38】
請求項33に記載の方法において、前記HFE2A調節因子が、抗体、アンチセンス分子、リボザイムおよび薬剤様有機小分子から選択されることを特徴とする方法。
【請求項39】
請求項33に記載の方法において、前記疾患が鉄代謝の疾患であることを特徴とする方法。
【請求項40】
請求項39に記載の方法において、前記鉄代謝の疾患が、鉄過剰疾患および鉄欠乏症より成るグループから選択されたものであることを特徴とする方法。
【請求項41】
請求項39に記載の方法において、前記鉄代謝の疾患が、ヘモクロマトーシス、輸血関連鉄過剰状態、サラセミア、ポルフィリン症、および若年性ヘモクロマトーシスより成るグループから選択されたものであることを特徴とする方法。
【請求項42】
請求項39に記載の方法において、前記鉄代謝の疾患が、貧血および慢性疾患に伴う貧血より成るグループから選択されたものであることを特徴とする方法。
【請求項43】
請求項39に記載の方法において、前記鉄代謝の疾患が、I型糖尿病、II型糖尿病、およびインスリン抵抗性から選択されたものであることを特徴とする方法。
【請求項44】
疾患を予防するための方法であって、前記方法は、前記疾患を発症する恐れのある動物に、治療上効果的な量のHFE2A調節因子を投与することを含むことを特徴とする方法。
【請求項45】
請求項44に記載の方法において、前記HFE2A調節因子が請求項1、14あるいは15のいずれか一項に記載の方法において調節活性を示すことを特徴とする方法。
【請求項46】
請求項45に記載の方法において、前記調節因子が、前記方法を用いてHFE2A調節因子として最初に同定されたことを特徴とする方法。
【請求項47】
請求項44に記載の方法において、前記HFE2A調節因子が、選択的HFE2Aアゴニスト、選択的HFE2Aアンタゴニスト、それらの薬剤として許容される塩、およびこれらの組み合わせより成るグループから選択されたものであることを特徴とする方法。
【請求項48】
請求項47に記載の方法において、前記選択されたものが薬剤として許容される担体中にあることを特徴とする方法。
【請求項49】
請求項44に記載の方法において、前記HFE2A調節因子が、抗体、アンチセンス分子、リボザイムおよび薬剤様有機小分子から選択されることを特徴とする方法。
【請求項50】
請求項44に記載の方法において、前記疾患が鉄代謝の疾患であることを特徴とする方法。
【請求項51】
請求項50に記載の方法において、前記鉄代謝の疾患が、鉄過剰疾患および鉄欠乏症より成るグループから選択されたものであることを特徴とする方法。
【請求項52】
請求項50に記載の方法において、前記鉄代謝の疾患が、ヘモクロマトーシス、輸血関連鉄過剰状態、サラセミア、ポルフィリン症、および若年性ヘモクロマトーシスより成るグループから選択されたものであることを特徴とする方法。
【請求項53】
請求項50に記載の方法において、前記鉄代謝の疾患が、貧血および慢性疾患に伴う貧血より成るグループから選択されたものであることを特徴とする方法。
【請求項54】
請求項50に記載の方法において、前記鉄代謝の疾患が、I型糖尿病、II型糖尿病、およびインスリン抵抗性から選択されたものであることを特徴とする方法。
【請求項55】
鉄代謝の疾患に冒されているか、あるいは発症する恐れのある個人を診断するための方法であって、前記方法が、前記個人のHFE2A遺伝子の核酸配列における突然変異あるいは多型を測定することを含み、ここで前記遺伝子における前記突然変異あるいは多型が、前記個人を鉄代謝の疾患に冒されているか、あるいは発症する恐れがあるとして同定することを特徴とする方法。
【請求項56】
請求項55に記載の方法において、前記突然変異あるいは多型が、表1に示す突然変異あるいは多型であることを特徴とする方法。
【請求項57】
鉄代謝の疾患に冒されているか、あるいは発症する恐れのある個人を診断するための方法であって、前記方法が、前記個人のHFE2Aポリペプチドのアミノ酸配列における突然変異あるいは多型を測定することを含み、ここで前記HFE2Aポリペプチドの突然変異あるいは多型が、前記個人を鉄代謝の疾患に冒されているか、あるいは発症する恐れがあるとして同定することを特徴とする方法。
【請求項58】
鉄代謝の疾患に冒されているか、あるいは発症する恐れのある個人を診断するための方法であって、前記方法が、前記個人のHFE2Aポリペプチドのレベルあるいは量の変化を測定することを含み、ここで前記変化が、前記個人を鉄代謝の疾患に冒されているか、あるいは発症する恐れがあるとして同定することを特徴とする方法。
【請求項59】
請求項55ないし58のいずれか一項に記載の方法において、前記鉄代謝の疾患が成人発症ヘモクロマトーシスであることを特徴とする方法。
【請求項60】
請求項55ないし58のいずれか一項に記載の方法において、前記鉄代謝の疾患が若年性ヘモクロマトーシスであることを特徴とする方法。
【請求項61】
請求項55ないし58のいずれか一項に記載の方法において、前記鉄代謝の疾患がI型糖尿病、II型糖尿病、およびインスリン抵抗性から選択されることを特徴とする方法。
【請求項62】
HFE2A活性を調節することができる化合物を同定するための方法であって、前記方法が、(a)試験化合物を、HFE2Aを発現する細胞と接触させ、(b)前記試験化合物の、HFE2A核酸の転写あるいはHFE2Aポリペプチドの活性を調節する能力を測定することを含み、それによりHFE2A活性を調節することができる化合物を同定することを特徴とする方法。
【請求項63】
請求項62に記載の方法において、前記化合物が抗HFE2Aポリペプチド抗体であることを特徴とする方法。
【請求項64】
請求項62に記載の方法において、前記化合物がアンチセンスHFE2A核酸分子であることを特徴とする方法。
【請求項65】
請求項62に記載の方法において、前記化合物がHFE2Aリボザイムであることを特徴とする方法。
【請求項66】
請求項62に記載の方法において、前記化合物が有機小分子であることを特徴とする方法。
【請求項67】
配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、19、20、21および22より成るグループから選択された配列と最低60%のパーセント同一性を持つヌクレオチド配列を持つポリヌクレオチドを含む単離されたポリヌクレオチド。
【請求項68】
請求項67に記載の単離されたポリヌクレオチドにおいて、前記パーセント同一性が最低70%であることを特徴とする単離されたポリヌクレオチド。
【請求項69】
請求項67に記載の単離されたポリヌクレオチドにおいて、前記パーセント同一性が最低78%であることを特徴とする単離されたポリヌクレオチド。
【請求項70】
請求項67に記載の単離されたポリヌクレオチドにおいて、前記パーセント同一性が最低90%であることを特徴とする単離されたポリヌクレオチド。
【請求項71】
請求項67に記載の単離されたポリヌクレオチドにおいて、前記パーセント同一性が最低95%であることを特徴とする単離されたポリヌクレオチド。
【請求項72】
請求項67に記載の単離されたポリヌクレオチドにおいて、前記パーセント同一性が最低98%であることを特徴とする単離されたポリヌクレオチド。
【請求項73】
請求項67に記載の単離されたポリヌクレオチドにおいて、前記ヌクレオチド配列が、配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、19、20、21および22より成るグループから選択されたものであることを特徴とする。
【請求項74】
配列番号10、11、12、23、24、25、26、27および28より成るグループから選択されたアミノ酸配列と最低90%のパーセント同一性を持つアミノ酸配列を持つポリペプチドを含む単離されたポリペプチド。
【請求項75】
請求項74に記載の単離されたポリペプチドにおいて、前記パーセント同一性が最低95%であることを特徴とする単離されたポリペプチド。
【請求項76】
請求項74に記載の単離されたポリペプチドにおいて、前記パーセント同一性が最低98%であることを特徴とする単離されたポリペプチド。
【請求項77】
請求項74に記載の単離されたポリペプチドにおいて、前記アミノ酸配列が、配列番号10、11、12、23、24、25、26、27および28より成るグループから選択されることを特徴とする単離されたポリペプチド。
【請求項78】
請求項67に記載のポリヌクレオチドの組換え型を含む細胞系。
【請求項79】
請求項74に記載のポリペプチドの組換え型を含む細胞系。
【請求項80】
ヘモジュヴェリンの発現あるいは活性を調節する組成物を同定するための方法における、請求項78あるいは79に記載の細胞系の使用法。
【請求項81】
鉄代謝の疾患を処置するための組成物であって、前記組成物が、薬剤として許容される担体中の治療上効果的な量の請求項74に記載のポリペプチドを含むことを特徴とする組成物。
【請求項82】
鉄代謝の疾患を処置するための方法であって、前記方法が、必要とする患者に、薬剤として許容される担体中の治療上効果的な量の請求項81に記載の組成物を投与することを含むことを特徴とする方法。
【請求項83】
請求項82に記載の方法であって、前記疾患が若年性ヘモクロマトーシスであることを特徴とする方法。
【請求項84】
化合物によるHFE2A遺伝子発現の調節に関する試験情報を生成するための方法であって、前記方法が、
(a)試験化合物を、HFE2Aプロモーターに動作可能に結合するレポーター遺伝子の発現を支持する条件下で、前記レポーター遺伝子を含む遺伝子構成体と接触させ、
(b)前記接触の結果としての前記レポーター遺伝子の発現の変化を測定し、ここで前記変化は調節を示し、
(c)遺伝子調節活性を示す、測定された遺伝子の発現の変化に基づく前記試験化合物の遺伝子調節活性に関する試験情報を生成することを含むことを特徴とする方法。
【請求項85】
化合物によるHFE2Aポリペプチド活性の調節に関する試験情報を生成するための方法であって、前記方法が、
(a)試験化合物を、HFE2Aポリペプチドの活性を促進する条件下で、前記HFE2Aポリペプチドと接触させ、
(b)前記接触の結果としての前記ポリペプチドの活性の変化を測定し、ここで前記変化は調節を示し、
(c)調節活性を示す、HFE2Aポリペプチド活性の変化に基づく前記試験化合物のHFE2Aポリペプチド調節活性に関する試験情報を生成することを含むことを特徴とする方法。
【請求項86】
単離されたポリペプチドあるいはその断片であって、前記ポリペプチドが、配列番号10、11および12より成るグループから選択されたアミノ酸配列と最低90%のパーセント同一性を持つアミノ酸配列を含み、前記断片が最低10個のアミノ酸残基を含むことを特徴とする単離されたポリペプチド。
【請求項87】
請求項86に記載の単離されたポリペプチドあるいはその断片において、前記パーセント同一性が最低95%であることを特徴とする単離されたポリペプチドあるいはその断片。
【請求項88】
請求項86に記載の単離されたポリペプチドあるいはその断片において、前記パーセント同一性が最低98%であることを特徴とする単離されたポリペプチドあるいはその断片。
【請求項89】
請求項86に記載の単離されたポリペプチドあるいはその断片において、前記ポリペプチドが配列番号10、11および12より成るグループから選択されたアミノ酸配列を含むことを特徴とする単離されたポリペプチドあるいはその断片。
【請求項90】
請求項86、87、88あるいは89のいずれか一項に記載のポリペプチドを発現するように処理されたことを特徴とする組換え細胞系。
【請求項91】
ヘモジュヴェリンの発現あるいは活性を調節する組成物を同定することへの、請求項90に記載の細胞系の使用。
【請求項92】
鉄代謝の疾患を処置するための組成物であって、前記組成物が、薬剤として許容される担体中の治療上効果的な量の請求項86、87、88あるいは89のいずれか一項に記載のポリペプチドを含むことを特徴とする組成物。
【請求項93】
鉄代謝の疾患を処置するための方法であって、前記方法が、必要とする患者に、薬剤として許容される担体中の治療上効果的な量の請求項86、87、88あるいは89のいずれか一項に記載の組成物を投与することを含むことを特徴とする方法。
【請求項94】
請求項93に記載の方法において、前記疾患が若年性ヘモクロマトーシスであることを特徴とする方法。
【請求項95】
請求項93に記載の方法において、前記疾患が成人発症ヘモクロマトーシスであることを特徴とする方法。
【請求項96】
請求項93に記載の方法において、前記疾患が慢性疾患に伴う貧血であることを特徴とする方法。
【請求項97】
請求項93に記載の方法において、前記疾患が鉄欠乏性貧血であることを特徴とする方法。
【請求項98】
請求項67に記載の単離されたポリヌクレオチドにおいて、前記ヌクレオチド配列が配列番号7、8および9より成るグループから選択され、前記単離されたポリヌクレオチドが、ポリペプチドの13kDaから40kDaの分解産物をエンコードすることを特徴とする単離されたポリヌクレオチド。
【請求項99】
請求項68に記載の単離されたポリヌクレオチドにおいて、前記ヌクレオチド配列が配列番号7、8および9より成るグループから選択され、前記単離されたポリヌクレオチドがHFE2Aポリペプチドの分解産物をエンコードし、前記分解産物がおおよそ13kDaから40kDaであることを特徴とする単離されたポリヌクレオチド。
【請求項100】
請求項69に記載の単離されたポリヌクレオチドにおいて、前記ヌクレオチド配列が配列番号7、8および9より成るグループから選択され、前記単離されたポリヌクレオチドがHFE2Aポリペプチドの分解産物をエンコードし、前記分解産物がおおよそ13kDaから40kDaであることを特徴とする単離されたポリヌクレオチド。
【請求項101】
請求項70に記載の単離されたポリヌクレオチドにおいて、前記ヌクレオチド配列が配列番号7、8および9より成るグループから選択され、前記単離されたポリヌクレオチドがHFE2Aポリペプチドの分解産物をエンコードし、前記分解産物がおおよそ13kDaから40kDaであることを特徴とする単離されたポリヌクレオチド。
【請求項102】
請求項71に記載の単離されたポリヌクレオチドにおいて、前記ヌクレオチド配列が配列番号7、8および9より成るグループから選択され、前記単離されたポリヌクレオチドがHFE2Aポリペプチドの分解産物をエンコードし、前記分解産物がおおよそ13kDaから40kDaであることを特徴とする単離されたポリヌクレオチド。
【請求項103】
請求項72に記載の単離されたポリヌクレオチドにおいて、前記ヌクレオチド配列が配列番号7、8および9より成るグループから選択され、前記単離されたポリヌクレオチドがHFE2Aポリペプチドの分解産物をエンコードし、前記分解産物がおおよそ13kDaから40kDaであることを特徴とする単離されたポリヌクレオチド。
【請求項104】
請求項73に記載の単離されたポリヌクレオチドにおいて、前記ヌクレオチド配列が配列番号7、8および9より成るグループから選択され、前記単離されたポリヌクレオチドがHFE2Aポリペプチドの分解産物をエンコードし、前記分解産物がおおよそ13kDaから40kDaであることを特徴とする単離されたポリヌクレオチド。
【請求項105】
請求項98、99、100、101、102、103あるいは104のいずれか一項に記載の単離されたポリヌクレオチドにおいて、前記分解産物が約26kDaのポリペプチドを含むことを特徴とする単離されたポリヌクレオチド。
【請求項106】
請求項58に記載の方法において、前記変化が減少であることを特徴とする方法。
【請求項107】
請求項58に記載の方法において、前記変化が増加であることを特徴とする方法。
【請求項108】
慢性疾患に伴う貧血を診断するための方法であって、前記方法が、個人におけるHFE2Aポリペプチドのレベルあるいは量の変化を測定することを含み、前記変化が前記個人を慢性疾患に伴う貧血に冒されているか、あるいは発症する恐れがあるとして同定することを特徴とする方法。
【請求項109】
鉄欠乏性貧血を診断するための方法であって、前記方法が、個人におけるHFE2Aポリペプチドのレベルあるいは量の変化を測定することを含み、前記変化が前記個人を鉄欠乏性貧血に冒されているか、あるいは発症する恐れがあるとして同定することを特徴とする方法。
【請求項110】
請求項108または109に記載の方法において、前記変化が減少であることを特徴とする方法。
【請求項111】
請求項108または109に記載の方法において、前記変化が増加であることを特徴とする方法。
【請求項112】
請求項57に記載の方法において、前記突然変異あるいは多型が前記ポリペプチドの断片の存在を測定することにより測定されることを特徴とする方法。
【請求項113】
請求項112に記載の方法において、前記診断が、前記断片の大きさを測定することに基づくことを特徴とする方法。
【請求項114】
請求項58に記載の方法において、前記変化が前記ポリペプチドの断片の存在を検出することにより測定されることを特徴とする方法。
【請求項115】
請求項114に記載の方法において、前記診断が、前記断片の大きさを測定することに基づくことを特徴とする方法。
【請求項116】
請求項108または109に記載の方法において、前記変化が前記ポリペプチドの断片のレベルあるいは量を測定することにより測定されることを特徴とする方法。
【請求項117】
請求項116に記載の方法において、前記診断が、前記断片の大きさを測定することに基づくことを特徴とする方法。
【図1】
【図2】
【図7B】
【図7C】
【図7D】
【図7E】
【図8A】
【図8B】
【図9】
【図9A】
【図9B】
【図9C】
【図9D】
【図9E】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図7A】
【図2】
【図7B】
【図7C】
【図7D】
【図7E】
【図8A】
【図8B】
【図9】
【図9A】
【図9B】
【図9C】
【図9D】
【図9E】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図7A】
【公表番号】特表2006−523440(P2006−523440A)
【公表日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−504100(P2006−504100)
【出願日】平成16年4月8日(2004.4.8)
【国際出願番号】PCT/CA2004/000522
【国際公開番号】WO2004/092405
【国際公開日】平成16年10月28日(2004.10.28)
【出願人】(303036142)ゼノン ファーマスーティカルス,インコーポレイテッド (2)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年4月8日(2004.4.8)
【国際出願番号】PCT/CA2004/000522
【国際公開番号】WO2004/092405
【国際公開日】平成16年10月28日(2004.10.28)
【出願人】(303036142)ゼノン ファーマスーティカルス,インコーポレイテッド (2)
【Fターム(参考)】
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