説明

苦味マスク組成物

【課題】
服用時における薬物の苦味や不快臭をおさえるとともに、胃腸などの消化管では製剤からの薬物の放出が良好な経口投与製剤を提供すること。
【解決手段】
薬物粒子を胃溶性高分子で被覆し、さらに被覆層の内側に高分子の溶解を促進させる酸性物質を配する構造の被覆粒子となす。この被覆粒子をさらに細粒状または顆粒状に造粒するかあるいは賦形剤とともに錠剤に成形し、服用しやすくかつ薬物が放出されやすい形態をした経口投与製剤

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、服用時における薬物の苦味や不快臭を軽減した経口投与製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
苦味を有する薬物を含む芯物質に胃溶性高分子を基剤とする皮膜で被覆を施すことにより服用時口腔内での薬物の溶出を抑制し、苦味を軽減して服用しやすくする方法は種々知ら
れている。これらの方法によれば、胃溶性高分子は中性である口腔内では溶解しないため薬物の溶出を阻止して苦味を防止するが、胃内では胃酸によって皮膜が溶解し薬物を放出するため消化管からの良好な薬物の吸収が期待できるとされている。しかし食後投与においては摂食により胃内のpHは上昇するほか、高齢者においては無酸症や低胃酸の人の比率が高いといわれている。このような場合は胃溶性高分子を基剤とした皮膜が胃内で十分溶解せず、薬物が胃や腸内で十分放出されず吸収も不十分となる恐れがある。
【特許文献1】特開昭63-258809号公報
【特許文献2】特開2004−35518号公報
【特許文献3】特開平4-282312号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、服用時口腔内で十分な苦味隠蔽効果が得られ、かつ無酸や低胃酸状態においても胃内で速やかな薬物の放出が期待できる製剤を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、薬物及び酸性物質を含有する芯物質が、胃溶性高分子を基剤とする皮膜で被覆されてなる苦味マスク製剤及びその製法である。
【0005】
本発明における苦味を有する薬物とは、経口投与可能な医薬活性成分であれば特に限定されず、例えば抗生物質、合成抗菌剤、強心剤、不整脈治療剤、利尿剤、向精神薬剤、抗アレルギー剤、消化器官用薬剤、解熱鎮痛薬剤、血圧降下剤、睡眠導入剤、利尿剤などが挙げられる。
【0006】
芯物質中に薬物とともに含有される酸性物質としては、クエン酸、コハク酸、りんご酸、酒石酸、フタル酸、グルタル酸、グルコン酸、フマル酸、乳酸、酢酸などの有機酸や酸性アミノ酸もしくはアスコルビン酸などが挙げられ、なかでもコハク酸、フマル酸、りんご酸、クエン酸が望ましく、とりわけコハク酸がもっとも望ましい。
【0007】
また芯物質中には医薬上許容されうる添加剤成分、例えば賦形剤、結合剤、崩壊剤、コーティング剤、滑沢剤、凝集防止剤、流動化剤などが配合されていてもよい。
【0008】
本発明において、被覆される芯物質の形態としては、数十ミクロンの大きさの微粒子、細粒状の粒子、顆粒、丸剤、素錠などが挙げられるが、特に比表面積の大きい微粒子、細粒、顆粒の大きさに造粒したものが好ましい。芯物質の調製法としては、撹拌造粒法、流動層造粒法、乾式造粒法、押し出し造粒法などの通常使用される造粒法を用いることができる。
また、結晶セルロースや白糖・コーンスターチからなる核となる不活性担体粒子上に薬物と酸性物質、結合剤その他の医薬用添加剤成分の溶液を噴霧して付着造粒させる方法をとってもよい。さらにワースター型の流動造粒コーティング装置を用いて薬物のみを結合剤溶液で微粒子に造粒してもよい。
【0009】
芯物質中での酸性物質の存在形態としては、薬物との単なる混合物でも、薬物に被覆された形態でもよく、あるいは薬物と医薬用添加剤成分からなる核粒子の上に酸性物質層を配していてもよい。さらには、必要に応じ薬物あるいは薬物と医薬用添加剤成分からなる核の上に水溶性の医薬用添加剤成分からなる被覆層をもうけ、その上に酸性物質と結合剤からなる被覆層を形成することも可能である。
【0010】
胃溶性高分子を基剤とする皮膜は、流動層コーティング法やワースター型流動コーティング装置、回転流動コーティング装置などを用い、常法によりスプレーコーティングして形成することができる。すなわち、胃溶性高分子を可塑剤、凝集防止剤などとともに適当な溶媒に溶解あるいは分散させ、スプレーノズルから空気で流動させた状態の芯物質へ噴霧して被覆層を形成する。溶媒としてはアルコールやアルコールと水の混合液、可塑剤としてはトリアセチンやクエン酸トリエチル、ポリエチレングリコールなど、凝集防止剤としてはタルクやステアリン酸マグネシウムなどの適量を添加して用いるが、これらに限定されない。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、胃溶性高分子を基剤とする皮膜の内側に酸性物質が配されているため、粒の外部から皮膜を通して粒内部へ浸透した水分が酸性物質を溶かし、さらに胃溶性高分子を粒の内部から溶解する。したがって、内服時胃内pHが中性付近であっても確実に皮膜が溶解し、薬物の放出が期待できる。
【実施例】
【0012】
実施例1:
平均粒子径が約5ミクロンのアセトアミノフェン350gをワースター型流動層造粒コーティング装置(MP−01)に入れ、給気温度約65℃でコハク酸50gとヒドロキシプロピルセルロース15gを水500gに溶かした溶液を噴霧し、平均粒子径約200ミクロンの造粒された粒子を得た。これにヒドロキシプロピルセルロース30gとタルク15gを水500gによく分散させた溶液を噴霧したのち、さらにこの上にアミノアルキルメタクリレートコポリマーE(オイドラギットE)500gをエタノール3500gに溶解してタルク150gを加えよく分散させたコーティング液を、固形分として138gをスプレーした。 こうして得られた粒子の平均粒子径は約280ミクロンであり、口中で30秒間苦味を感じず、pH6.8の日局第2液への溶出は15分で約85%以上を示した。
【0013】
実施例2:
平均粒子径が約15ミクロンの無水カフェイン350gを用い、実施例1と同様に操作し、平均粒子径が約320ミクロンのコーティング粒を得た。このものの口中での苦味はやく30秒間感じず、pH6.8の日局第2液への溶出は15分で85%以上を示した。
【0014】
実施例3:
実施例1におけるコーティング液としてポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート(AEA)700gをエタノール700mLとアセトン300mLの混合液に溶かし、タルク300gを加えてよく分散させたコーティング液を固形分として115gをスプレーし被覆した。こうして得られた被覆粒は口中で30秒間苦味を感じず、pH6.8の日局第2液への溶出は15分で約85%以上を示した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬物及び酸性物質を含有する芯物質が、胃溶性高分子を基剤とする皮膜で被覆されてなる苦味マスク組成物。
【請求項2】
酸性物質がクエン酸、コハク酸、りんご酸、酒石酸、フタル酸、グルタル酸、グルコン酸、フマル酸、乳酸、酢酸などの有機酸や酸性アミノ酸もしくはアスコルビン酸などの1種または2種
以上の混合物であり、胃溶性高分子がアミノアルキルメタクリレートコポリマーEまたはポロビニルアセタールジエチルアミノアセテートである請求項1に記載の苦味マスク組成物。
【請求項3】
薬物及び酸性物質を含有する芯物質と胃溶性高分子を基剤とする皮膜の間が、水溶性高分子または実質的に薬物が透過溶出する妨げにならない厚みの水不溶性高分子で遮断された請求項1または2記載の組成物。
【請求項4】
芯物質の平均粒子径が500ミクロン以下である請求項1または2記載の組成物

【公開番号】特開2008−174511(P2008−174511A)
【公開日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−10918(P2007−10918)
【出願日】平成19年1月22日(2007.1.22)
【出願人】(306046069)有限会社アサクサ錠剤研究所 (4)
【Fターム(参考)】