説明

苦味抑制剤

【課題】苦味物質の苦味の低減に有効であり、食品や医薬品に配合可能な、苦味抑制剤の提供。
【解決手段】ナツメグ、サンブンサン、ホルトソウ、ヒヨドリジョウゴ、セッコツボク、エゾウコギ、ゴマ、マグワ、スオウ、ベニコウジ、シソ、ニラ、バジル、イヌナズナ、ホウセンカ及びこれらの抽出物から選ばれる1種以上を有効成分とする苦味抑制剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬品や食品等に含まれる苦味物質の苦味を抑制するための苦味抑制剤に関する。
【背景技術】
【0002】
苦味物質を含有する食品、医薬品、あるいは化粧品は数多く存在する。特に、医薬品においては、その殆どが苦味物質を有しており、経口摂取に際して苦痛を伴うものである。従って、苦味の低減は製剤上の大きな課題となっている。
【0003】
現在行われている製剤における苦味低減化法としては、例えば、甘味剤及び香料剤を添加する方法(特許文献1)、マイクロカプセル化、及び胃溶性コーティング剤による粉末コーティング剤を用いる方法、薬物を化学修飾する方法、包接化合物を添加する方法(特許文献2)など様々な方法が挙げられる。しかし、いずれの方法でも、苦味を充分に抑制することが難しく、また限られた薬物にしか用いることができないなどの問題がある。
【0004】
さらに、上記の方法の他に、苦味を有する薬物に、油脂成分を添加する方法、特にレシチン(ホスファチジルコリン)又はケファリンの単独又は混合物を添加する方法(特許文献3)やレシチン(ホスファチジルコリン)を添加する方法(特許文献4)も提案されている。しかしながら、これらの方法でも依然として充分な苦味低減化には至らない。特に、幼児及び高齢者においては、薬剤の服用に際して固形製剤での服用が困難な場合が多く、そのような場合には、シロップ剤等の液状形態での服用が利用される。しかし、シロップ剤などの液状である薬物の苦味を除去する有効な方法がないのが現状である。
【0005】
食品においても、蛋白質分解物から得られるアミノ酸、ペプチドの有する苦味や、果汁中に存在する苦味、添加フレーバーに由来する苦味などの様々な苦味物質が含まれる場合があり、これらの苦味物質の存在は、食品の品質を低下させることが多い。食品中における苦味を除去する方法としては、例えば、吸着体を用いる方法(特許文献5)、包接化合物を用いる方法(特許文献6)、及び甘味剤を添加する方法(特許文献7)などが知られている。しかしながら、これらの方法では苦味を充分に抑えられないことが多く、また食品の味の質を変化させやすいなどの問題点は多い。
【0006】
更に、顔面に用いられる化粧水、口腔内で用いられるマウスウォッシュ、あるいは歯磨き等の化粧品類は通常は苦味を呈さないことが好ましい。しかしながらその成分である界面活性剤や香料(フレーバー)には苦味を呈するものがあり、使用に際してその苦味のためにその種類や量が限定されることがある。従来、苦味の除去には、甘味剤や特定の香料を添加して苦味の緩和を行っているが、このような手段が不適当な場合も多く、また強い苦味を呈する成分については充分な効果が得られないことが多い。
【0007】
一方、ナツメグは香辛料として、ゴマ、ニラ及びバジルは食用として、セッコツボク、ホルトソウ、ヒヨドリジョウゴ、エゾウコギ、イヌナズナは薬用として、シソは薬用又は食用として、スオウ、ベニコウジ、マグワ、ホウセンカ、サンブンサンは着色料として使用されている。
【0008】
しかしながら、これらの植物等に苦味物質の苦味を抑制する作用があることは全く知られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平2−56416号公報
【特許文献2】特開平3−236316号公報
【特許文献3】特公昭55−8966号公報
【特許文献4】特開昭62−265234号公報
【特許文献5】特開昭55−108254号公報
【特許文献6】特開昭61−40260号公報
【特許文献7】特開昭60−9774号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、苦味物質の苦味の低減に有効であり、食品や医薬品に配合可能な、苦味抑制剤を提供することに関する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、苦味物質、特にカテキン由来の苦味を抑制する物質について検討を行ったところ、特定の植物若しくは微生物又はこれらの抽出物に苦味抑制作用があり、苦味抑制剤として使用できることを見出した。
【0012】
すなわち、本発明は、以下の1)〜5)に係るものである。
1) ナツメグ、サンブンサン、ホルトソウ、ヒヨドリジョウゴ、セッコツボク、エゾウコギ、ゴマ、マグワ、スオウ、ベニコウジ、シソ、ニラ、バジル、イヌナズナ、ホウセンカ及びこれらの抽出物から選ばれる1種以上を有効成分とする苦味抑制剤。
2)カテキン類に基づく苦味を抑制する、上記1)の苦味抑制剤。
3)上記1)の苦味抑制剤を用いることを特徴とする、苦味物質含有組成物の苦味抑制方法。
4)苦味物質含有組成物が、カテキン類を含有する医薬品、口腔用組成物、化粧品又は食品である上記3)の苦味抑制方法。
5)苦味抑制剤を苦味物質含有組成物に添加する、上記3)又は4)の苦味抑制方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明の苦味抑制剤は、苦味物質を含有した医薬品、口腔用組成物、化粧品又は食品等に使用することにより、安全性を害することなく、苦味を低減できることから、当該医薬品等の服用を容易にする、食品の味を向上させる等の効果を発揮し、それらの製品価値を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】AR42J細胞におけるエピガロカテキンガレート(EGCg)応答性を示すグラフ。
【図2】AR42J細胞のカテキン応答性とヒト官能評価の相関性を示すグラフ。
【図3】抽出物の苦味抑制効果(AR42J細胞におけるEGCg応答抑制率)を示すグラフ。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明において、ナツメグとは、ニクズク科のニクズク(Myristica fragrans)を、サンブンサンとは、ナス科のサンブンサン(Scopolia acutangula)を、ホルトソウとは、トウダイグサ科のホルトソウ(Euphorbia lathyris LINN.)を、ヒヨドリジョウゴとは、ナス科のヒヨドリジョウゴ(Solanum lyratum)を、セッコツボク(接骨木)とは、スイカズラ科のニワトコ(Sambucus williamsii)を、エゾウコギとは、ウコギ科のエゾウコギ(Eleutherococcus senticosus)を、ゴマとは、ゴマ科のゴマ(Sesamum indicum)を、マグワとは、クワ科のカラヤマグワ(Morus alba)を、スオウとは、マメ科のスオウ(Caesalpinia sappan L.)を、ベニコウジとは、ベニコウジ菌(Monascus purpureus)を、シソとは、シソ科のシソ(Perilla frutescens var. crispa)を、ニラとは、ユリ科のニラ(Allium tuberosum Rottler ex Spreng)を、バジルとは、シソ科のメボウキ(Ocimum basilicum)を、イヌナズナとは、アブラナ科のイヌナズナ(Draba nemorosa)を、ホウセンカとはツリフネソウ科のホウセンカ(Impatiens balsamina)を意味する。
【0016】
上記のうち、ナツメグについてはその種子を、サンブンサンについては根を、ホルトソウについては種子を、ヒヨドリジョウゴについては全草を、セッコツボクについては全株を、エゾウコギについては根を、ゴマについては種子を、マグワについては葉を、スオウについては心材を、シソについては葉を、ニラについては種子を、バジルについては葉を、イヌナズナについては種子を、ホウセンカについては種子を用いることができる。また、ベニコウジについては菌体又は菌体が産生する色素を用いることができる。
【0017】
本発明の抽出物としては、前記植物又は菌体の用部を、そのままあるいは乾燥した後に適当な大きさに切断したり、粉砕加工したりしたものを抽出して得られる抽出エキスの他、さらに分離精製して得られるより活性の高い画分(成分)が包含される。
【0018】
抽出は、室温又は加熱した状態で溶剤に含浸させるか又はソックスレー抽出器等の抽出器具を用いて行われる溶剤抽出の他に、水蒸気蒸留等の蒸留法を用いて抽出する方法、炭酸ガスを超臨界状態にして行う超臨界抽出法、あるいは圧搾して抽出物を得る圧搾法等を用いることができる。
【0019】
溶剤抽出に用いられる抽出溶剤としては、極性溶剤、非極性溶剤のいずれをも使用することができ、これらを混合して用いることもできる。例えば、水;メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール類;エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール等の多価アルコール類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;酢酸メチル、酢酸エチル等のエステル類;テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル等の鎖状及び環状エーテル類;ポリエチレングリコール等のポリエーテル類;ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素等のハロゲン化炭化水素類;ヘキサン、シクロヘキサン、石油エーテル等の炭化水素類;ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素類;ピリジン類;超臨界二酸化炭素;油脂、ワックス、その他オイル等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上を組み合わせて使用でき、溶剤を変えて繰り返し行うことも可能である。このうち、水、エタノール、プロピレングリコール、ブチレングリコール等を用いるのが好ましく、特に水・エタノール混液、例えば50〜95%エタノールを用いるのが好ましい。また、抽出手段として、固液抽出、液液抽出、浸漬、煎出、浸出、還流抽出、超音波抽出、マイクロ波抽出、攪拌、水蒸気蒸留、超臨界抽出等の手段を用いることができる。
【0020】
抽出は、例えば植物又は菌体1質量部に対して1〜50質量部の溶剤を用い、3〜100℃、好ましくは10〜70℃で数時間〜数週間、好ましくは30分〜50日間、浸漬又は加熱還流することにより行うことができる。なお、水蒸気蒸留によって得ることもできる。
【0021】
当該溶剤抽出のより好適な態様としては、植物又は菌体1質量部に対して5〜15質量部の50〜95%エタノールを用い、室温(10〜40℃)で、1〜7日間、浸漬することが挙げられる。
【0022】
また、抽出物の分離精製手段としては、例えば、抽出物を、濾過、活性炭処理、液液分配、カラムクロマトグラフィー、液体クロマトグラフィー、ゲル濾過、精密蒸留等を挙げることができる。
【0023】
本発明の抽出物は、斯くして得られる植物又は菌体の抽出液や画分をそのまま用いてもよく、適宜な溶媒で希釈した希釈液として用いてもよく、或いは濃縮エキスや乾燥粉末としたり、ペースト状に調製したものでもよい。また、凍結乾燥し、用時に、通常抽出に用いられる溶剤、例えば水、エタノール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、水・エタノール混液、水・プロピレングリコール混液、水・ブチレングリコール混液等の溶剤で希釈して用いることもできる。また、リポソーム等のベシクルやマイクロカプセル等に内包させて用いることもできる。
【0024】
本発明の植物若しくは微生物又はこれらの抽出物は、後記実施例に示すように、ラット膵臓癌細胞AR42Jのカテキンに対する応答を抑制する。
AR42J細胞は、味細胞の膜表面に発現している苦味受容体T2R(Taste type 2 receptor)を発現し、シクロヘキシミド(CYX)、フェニルチオカルバミド(PTC)、安息香酸デナトニウム(DB)などの苦味物質に対し応答することが報告されている細胞である(S. Vincent Wu, Monica C. Physiol Genomics 22: 139-149, 2005.)。本発明者等は、参考例に示すとおり、当該AR42J細胞が、カテキン類に対して応答し、AR42J細胞のカテキン類に対する応答性がヒト官能評価の苦味スコアと相関することを見出した。従って、AR42J細胞のカテキンに対する応答を抑制する物質は、カテキン類を含めた苦味物質の苦味抑制物質となり得る。
【0025】
斯くして、本発明の植物若しくは微生物又はこれらの抽出物は、苦味抑制剤となり得、苦味を呈する組成物、すなわち、苦味物質を含有する組成物、例えば医薬品、化粧品、口腔用組成物、食品等に対して、苦味を抑制するために使用できる。
ここで、「苦味抑制」とは、苦味物質とT2Rとの結合抑制、苦味物質によるT2Rの活性化の抑制、または、活性化したT2Rにより誘導される細胞内シグナル伝達の抑制を意味し、例えばカテキン類によるT2Rの活性化を抑制することを意味する。従って、苦味をマスキングすることとは相違する。
【0026】
苦味物質としては、苦味を呈する天然物質、薬物、化学物質等の何れでもよいが、T2Rを活性化することにより苦味を呈する物質であるのが好ましく、例えば、シクロヘキシミド(CYX)、フェニルチオカルバミド、安息香酸デナトニウム等の薬物、カテキン、ガロカテキン、カテキンガレート、ガロカテキンガレート、エピカテキン、エピガロカテキン、エピカテキンガレート、エピガロカテキンガレート等のカテキン類などが挙げられる。このうち、本発明の苦味抑制剤は、カテキン類による苦味に対して特に有効である。
【0027】
本発明の苦味抑制剤の使用態様は、当該苦味抑制剤を、苦味物質含有組成物に配合すること、苦味物質含有組成物と併用すること等が主として挙げられる。
苦味物質含有組成物との併用には、例えば、当該苦味抑制剤の水溶液を調製し、これを予め口腔に含み、その後に苦味を有する食品等を経口摂取等する方法、又は当該苦味抑制剤の水溶液と苦味を有する食品等を同時に経口摂取等する方法が挙げられる。
【0028】
本発明の苦味抑制剤は、上記植物若しくは微生物又はこれらの抽出物のみを単独又は2種以上で含むものでものよく、例えば、水、澱粉質、蛋白質、繊維質、糖質、脂質、脂肪酸、ビタミン、ミネラル、着香料、着色料、甘味料、調味料、防腐剤、保存料、酸化防止剤のごとき医薬品や食品に通常用いられる原料及び/又は素材の1又は複数を配合するものでもよい。また、その形態は、任意であり、溶液状、懸濁状、シロップ状、粉末状、顆粒状、粒子状等の何れもでもよく、所望の形状に成形することができる。
【0029】
上記苦味物質含有組成物(例えば、医薬品、口腔用組成物、化粧品、食品等)の形態は、水溶液、懸濁物、乳化物等の液状又はペースト状、あるいは粉末状、顆粒状、粒子状等の固形物のいずれでもよいが、好適には、カテキン類を含有する食品(飲料)、歯磨剤、洗口液等が挙げられる。適用に際しては、これらの形態が、水溶液、懸濁物、乳化物等の液状又はペースト状の場合には、本発明の苦味抑制剤を添加し、充分に攪拌、分散する方法を適用することができる。苦味を有する対象物の形態が、粉末等の固形物の場合には、本発明の苦味抑制剤を単に添加、混合する方法を適用することができる。
【0030】
本発明の苦味抑制剤を、苦味物質含有組成物に添加して使用する場合、苦味抑制剤は、苦味物質1質量部に対して、本発明の植物若しくは微生物又はこれらの抽出物(乾燥物換算)を、10-4〜1質量部用いるのが好ましく、10-2〜10-1質量部用いるのがより好ましい。
【0031】
参考例1 AR42J細胞のカテキン応答性
細胞を6×104 cells/cm2で96穴プレート(BD)に播き3日間培養した。培養液を除いた後、細胞内カルシウム感受性蛍光指示薬を含むクエンチャー溶液(1mM Fura 2-AM 50μl、Quenching Buffer 5ml、Hank's HEPES Buffer(10×) 0.5ml (Calcium Kit II-Fura 2,triral 同仁化学)、Ringer液10mlを全量が20mlになるように蒸留水を加え混合した。)を200μlずつ、各ウェルへ添加した。
※Ringer液組成は以下の通りである。
5mM HEPES、140mM NaCl、5.6mM KCl、2mM ピルビン酸Na、2mM MgCl2
1.5mM EGTA、9.4mM Glucose、1.25mM KH2PO4、pH7.4
【0032】
クエンチャー溶液添加後、1時間37℃でインキュベートした後、ハイスループット蛍光プレートリーダー(FDSS3000;Functional Drug Screening System、浜松ホトニクス)を用いて励起波長340nm、380nmにおける検出波長510nmの蛍光強度を4分間(2秒ごとに記録)測定することにより、細胞内カルシウム濃度の変化を測定した。測定開始から75秒後に、10mM EGCg 50μl(最終濃度:2mM)を細胞に添加した。測定は37℃で行った。
その結果、図1に示すように、AR42J細胞がEGCgに応答することが示された。
【0033】
参考例2 AR42J細胞のカテキン応答性とヒト官能評価の相関性
(1)参考例1と同様にして、8種のカテキン類(カテキン、エピカテキン、ガロカテキン、エピガロカテキン、カテキンガレート、エピカテキンガレート、ガロカテキンガレート、エピガロカテキンガレート)について、AR42J細胞の応答を測定した。
(2)8種のカテキン(カテキン、エピカテキン、ガロカテキン、エピガロカテキン、カテキンガレート、エピカテキンガレート、ガロカテキンガレート、エピガロカテキンガレート)の苦味スコアをパネラー5名により評価した。硫酸キニーネを表1のような苦味強度の異なる10段階に調製し、各種カテキン(評価濃度:2 mM)の苦味強度と同等の苦味強度を示す硫酸キニーネの苦味スコアを、そのカテキンの苦味スコアと判定し、5名の平均値を求めた。評価は被験サンプル5mlを口に含む方法で行った。
【0034】
【表1】

【0035】
図2に示すように、AR42J細胞のカテキン類に対する応答(Ratio)と苦味スコアとの間に相関関係が認められたことから、AR42J細胞のカテキンに対する応答はヒトの苦味を反映することが示唆された。
【0036】
実施例1 抽出物の製造
(1)ナツメグ抽出物の調製
ナツメグリキッド SP-77543(商品名、三栄源エフエフアイ)を試験用試料として使用した。
【0037】
(2)サンブンサン抽出物の製造
サンブンサン(Scopolia acutangula)の根(新和物産)40gに50体積%エタノール水溶液を400ml加え、室温で21日間浸漬後、ろ過してサンブンサン抽出物を得た(固形分 0.96質量%、抽出液量 313mL)。
【0038】
(3)ホルトソウ抽出物の製造
ホルトソウ(Euphorbia lathyris L)の種子(新和物産)40gに95体積%エタノール水溶液を400ml加え、室温で26日間浸漬後、ろ過してホルトソウ抽出物を得た(固形分 0.63質量%、抽出液量 358mL)。
【0039】
(4)ヒヨドリジョウゴ抽出物の製造
ヒヨドリジョウゴ(Solanum lyratum)の全草(新和物産)40gに50体積%エタノール水溶液を400ml加え、室温で42日間浸漬後、ろ過してヒヨドリジョウゴ抽出物を得た(固形分 0.66質量%、抽出液量 329mL)。
【0040】
(5)セッコツボク抽出物の製造
セッコツボク(Sambucus williamsii)の全株(新和物産)40gに50体積%エタノール水溶液を400ml加え、室温で43日間浸漬後、ろ過し、濃縮してセッコツボク抽出物を得た(固形分 0.69質量%、抽出液量 310mL)。
【0041】
(6)エゾウコギ抽出物の製造
エゾウコギパウダー(商品名、日本粉末薬品)を50体積%のエタノール水溶液に1質量%の濃度で溶解し、試験用試料を調製した。
【0042】
(7)ゴマ抽出物の製造
ゴマ(Sesamum indicum)の種子(新和物産)40gに95体積%エタノール水溶液を400ml加え、室温で16日間浸漬後、ろ過してゴマ抽出物を得た(固形分 0.60質量%、抽出液量 384mL)。
【0043】
(8)マグワ抽出物の製造
マグワ(Morus alba)の葉(新和物産社)40gに95体積%エタノール水溶液を400ml加え、室温で15日間浸漬後、ろ過し、濃縮して和名抽出物を得た(固形分0.60質量%、抽出液量334mL)。
【0044】
(9)スオウ抽出物の製造
スオウ(Caesalpinia sappan)の心材(新和物産)40gに50体積%エタノール水溶液を400ml加え、室温で23日間浸漬後、ろ過してスオウ抽出物を得た(固形分 1.07質量%、抽出液量 353mL)。
【0045】
(10)ベニコウジ抽出物の製造
ベニコウジ黄色素(三栄源エフエフアイより入手)を50体積%のエタノール水溶液に1質量%の濃度で溶解し、試験用試料を調製した。
【0046】
(11)シソ抽出物の調製
シソSP-61509(商品名、三栄源エフエフアイ)を試験用試料として使用した。
【0047】
(12)ニラ抽出物の製造
ニラ(Allium tuberosum)の種子(新和物産)40gに95体積%エタノール水溶液を400ml加え、室温で23日間浸漬後、ろ過してニラ抽出物を得た(固形分 0.20質量%、抽出液量 376mL)。
【0048】
(13)バジル抽出物の調製
バジルSP71887(商品名、三栄源エフエフアイ)を試験用試料として使用した。
【0049】
(14)イヌナズナ抽出物の製造
イヌナズナ(Draba nemorosa)の種子(新和物産)40gに50体積%エタノール水溶液を400ml加え、室温で27日間浸漬後、ろ過してイヌナズナ抽出物を得た(固形分 0.50質量%、抽出液量 361mL)。
【0050】
(15)ホウセンカ抽出物の製造
ホウセンカ(Impatiens balsamina)の種子(新和物産社)40gに50体積%エタノール水溶液を400ml加え、室温で35日間浸漬後、ろ過し、濃縮して和名抽出物を得た(固形分0.60質量%、抽出液量337mL)。
【0051】
実施例3 AR42J細胞を用いた苦味抑制評価
細胞を6×104 cells/cm2で96穴プレート(BD)に播き3日間培養した。培養液を除いた後、細胞内カルシウム感受性蛍光指示薬を含むクエンチャー溶液(1mM Fura 2-AM 50μl、Quenching Buffer 5ml、Hank's HEPES Buffer(10×) 0.5ml (Calcium Kit II-Fura 2,triral 同仁化学)、Ringer液10mlを全量が20mlになるように蒸留水を加え混合した。)を200μlずつ、各ウェルへ添加した。
※Ringer液組成は以下の通りである。
5mM HEPES、140mM NaCl、5.6mM KCl、2mM ピルビン酸Na、2mM MgCl2
1.5mM EGTA、9.4mM Glucose、1.25mM KH2PO4、pH7.4
【0052】
クエンチャー溶液添加後、1時間37℃でインキュベートした後、ハイスループット蛍光プレートリーダー(FDSS3000;Functional Drug Screening System、浜松ホトニクス)を用いて励起波長340nm、380nmにおける検出波長510nmの蛍光強度を4分間(2秒ごとに記録)測定することにより、細胞内カルシウム濃度の変化を測定した。測定開始から75秒後に、10mM EGCg、もしくは実施例1及び2で調製した各サンプル(最終濃度:0.01質量%)を混合した10mM EGCgを50μl(最終濃度:2mM)添加した。測定は37℃で行った。
【0053】
<EGCgに対する苦味抑制率の算出方法>
細胞内カルシウム濃度変化は、励起波長340nmおよび380nmに対する510nmにおける蛍光強度の比(Ratio340/380)で示した。
(数1)
各ウェルにおけるEGCgに対する応答強度は、以下の通りに算出した。
EGCg細胞応答強度= (EGCg添加後のRatio340/380最大値)−(EGCg添加後のRatio340/380最小値)
各被験物質によるEGCg応答抑制効果(苦味抑制率)は、
(数2)
苦味抑制率(%)=[1−(被験物質存在下EGCg応答強度)/(被験物質非存在下EGCg応答強度)]×100
とし、データは3ウェルの平均値±標準偏差で示した。
結果を図3に示す。本発明の植物抽出物は、EGCgの細胞応答に対する抑制活性が示された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナツメグ、サンブンサン、ホルトソウ、ヒヨドリジョウゴ、セッコツボク、エゾウコギ、ゴマ、マグワ、スオウ、ベニコウジ、シソ、ニラ、バジル、イヌナズナ、ホウセンカ及びこれらの抽出物から選ばれる1種以上を有効成分とする苦味抑制剤。
【請求項2】
カテキン類に基づく苦味を抑制する、請求項1記載の苦味抑制剤。
【請求項3】
請求項1記載の苦味抑制剤を用いることを特徴とする、苦味物質含有組成物の苦味抑制方法。
【請求項4】
苦味物質含有組成物が、カテキン類を含有する医薬品、口腔用組成物、化粧品又は食品である請求項3記載の苦味抑制方法。
【請求項5】
苦味抑制剤を苦味物質含有組成物に添加する、請求項3又は4記載の苦味抑制方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−121869(P2012−121869A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−275901(P2010−275901)
【出願日】平成22年12月10日(2010.12.10)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】