説明

茶のクリームダウン防止法およびその茶

【課題】茶を煎じ、冷却した時に生ずる、茶のクリームダウンを防止し、茶に含まれるカフェインを保持し、好まれない香気成分を除去し、渋味成分を重合カテキンに転換させる茶の製造方法および製造した茶
【解決手段】
茶を圧力容器に入れ、圧力容器に蒸気を吹き込み加熱し、茶に含まれる空気を蒸気と置換し、好ましくない成分を蒸発させ、この好ましくない香気を排除する。排気弁を閉じ、所定の圧力、温度で加熱処理を行い、茶の渋味を構成する成分:クリームダウンの原因となるカテキンガレートを分解し、没食子酸を解離させ、爽やか風味の茶を作る。さらに加熱温度を上げ、渋味成分のカテキンを機能性の重合カテキンに転換させ、渋味を減少させる。
茶を炭酸カルシュウム共存下で加圧加熱処理を行うと、渋味成分のカテキンの重合反応は促進され、カテキン重合物に転換し、抽出した茶の冷却時に生ずるクリームダウンを起こさない茶を製造することが出来る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、茶の加工方法に関し、茶を浸出した時の、茶のクリームダウンを防止し、渋味成分を減少した茶の製造方法およびその方法により製造した茶に関するものである。
【背景技術】
【0002】
茶を煎じた液を冷却すると固形物が沈殿する、この現象を茶のクリームダウンと称し、好ましくない現象で、このクリームダウンを防止する茶の加工方法の開発が望まれている。
【0003】
茶を煎じて得た茶浸出液に含まれる固形物を酵素製剤により可溶化することが、提案されている(特公昭48−24754)。クリームダウンした固形物をタンナーゼにより、可溶化させ除去する方法である。茶飲料を製造する食品加工には利用できるが、日常の家庭で簡単に利用することができない。
【0004】
茶葉を加工する前に、原茶葉あるいは磨砕した茶葉にタンナーゼを作用させ、クリームダウンの原因となるカテキンガレートを分解させ、常法により茶を製造加工し、クリームダウンを起こさない茶の製造法が提案されている(特公昭52−42877)。この方法はインスタントティーの加工法に適しているが、リーフの茶の製造加工には適さない。
【0005】
クリームダウンの現象は研究の結果、茶の中に含まれるカフェインとカテキンガレートが包接化合物をつくり、固形物を作ることが解明された。製茶中のカテキンガレートを分解、重合により消去することにより、カフェインとカテキンガレートの結合を阻止し、固形物を形成させないことが有効であることを見出した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特公昭48−24754
【特許文献2】特公昭52−42877
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
この発明は、茶葉を加工して製造した茶に含まれる機能性成分であるカフェインを保持し、クリームダウンの生成の原因となる渋味成分のカテキンガレートを分解あるいは重合カテキンに転換させ、茶を煎じ、冷却した時に、クリームダウン現象を起こさない茶の製造方法およびその方法により製造した茶に関するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明は原茶葉を加工して製造した茶を加圧、加熱加工して、クリームダウンの原因のカテキンガレートを分解させ、さらに重合カテキンに転換させ、クリ−ムダウンの現象の生成を防止する。この加工処理は高圧容器中で加圧することにより達成できることを見出した。本発明で使用する加熱容器の温度調整は、器内の圧力を微細に調整設定することにより行われる。加圧下の加熱水蒸気は熱容量が高く、速やかに被加熱体に熱を伝導することができ、均一に熱処理が行われる。常法により作られた荒茶を圧力容器に入れ、圧力容器に蒸気を吹き込み、荒茶に含まれる空気を蒸気と置換し加熱を行い、荒茶に含まれる好ましくない成分を蒸発させ、この好ましくない香気物質を容器外に排除する。
【0009】
好ましくない香気成分を排除後、排気弁を閉じ、所定の圧力、温度で加熱処理を行い、茶の強い渋味を構成する成分のカテキンガレートのエステル結合を分解させ、没食子酸を解離させ、EGC、GCに転換させ、爽やか風味の茶を作ることができる。
【0010】
さらに処理圧力を調整し加熱温度を高めると、カテキンは熱分解ならびに重合し、カテキンは重合カテキンに転換し渋味を減少させる。カフェインは加圧、飽和水蒸気下の加熱で、昇華、あるいは熱分解することなく保持される。
【0011】
荒茶に炭酸カルシュウム添加し圧力容器に入れ、(0008)(0009)と同様の手法により、蒸気を吹き込み、炭酸カルシュウム共存下で荒茶を加圧加熱処理すると、カテキンの分解、重合反応は促進され、カテキン重合物に転換し、色調は濃くなり風味はマイルドになる。
【発明の効果】
【0012】
この発明によれば荒茶に含まれるクリームダウンの原因となるカテキンガレートを分解、さらに重合カテキンに転換させ、カテキンガレートは除去され、クリームダウウンを起こさない茶を提供することができる。
【0013】
本発明によれば、茶を耐圧容器内で加湿加熱処理を行い、一般生菌、耐熱性細菌が完全に除菌されるので、通常の抽出処理により、衛生的な茶飲料に加工することができる。
【0014】
上質の茶の生産は渋味の少ない春先の新芽の茶葉を利用する。成長の盛んな夏の茶は渋味が多く、夏茶特有の香りを有し、夏茶は利用されない。しかし、評価の低い夏茶には春茶とほぼ同量のカフェインが含まれており、茶を耐圧容器内で加湿加熱処理を行うことにより、好ましくない香気を除去し、クリームダウンの原因となるカテキンガレートを含まない、爽やかな風味の茶に加工することができる。
【0015】
茶に含まれる特有の機能性成分のカフェインは閉鎖容器内で湿熱加圧加熱するので、カフェインの昇華性は抑えられ、加工した茶中に保持される。
【0016】
茶に含まれる渋味成分のカテキン類は閉鎖容器内で湿熱加圧加熱処理が行われ、まず、設定温度(100℃)の処理で茶の成分のカテキンガレートのエステル結合を分解させ、没食子酸を解離し、EGC、GCに転換し爽やか風味の茶を作る。ついで設定温度を上げると、カテキン類は重合カテキン類に転換する。重合カテキン類は多数の混合物で、特殊の機能性が見出され、詳細な研究が行われている。重合カテキンの色調は低温度(100℃)処理されたものは黄金色で、中温度(115℃)処理ではテアフラビン様の紅茶様の色調で、高温度(130℃)処理になると紅色に褐色味を帯びる。
【0017】
原料茶に炭酸カルシウムを添加混合し、炭酸カルシウム共存下で処理すると、同一条件で処理した処理茶の抽出液と比較すると色調は深い。このことによりカテキンの重合反応が促進されたことが確認される。
【0018】
本発明により加工された茶は原料茶には存在しなかった没食子酸が生成し、渋味成分の減少し、重合カテキンが生成する。研究の結果、処理条件の設定により重合カテキンの種類と機能性は異なることが解り、加工条件を微細に調整することにより希望する重合カテキンを作り出すことができる。
【0019】
処理された茶のクリームダウンの防止効果試験:
1:クリームダウンの防止効果試験の条件:
a:試料:未処理の紅茶(対象):処理紅茶
b:熱水抽出茶葉濃度:2%茶葉(通常の飲料の濃度)
(試験区8点) 4%(濃い目):
6%(重度の濃い目)、
c:熱抽出(98℃熱水):10分保持後、濾過後、2分画(試験区16点)
高温度保持、
冷却保持(10℃冷蔵庫)。
2:検査方法:
濁度試験:(ストライプ紙透視試験):
風味試験:(香り:味覚:色調):(標品と比較五感、目視)
3:判定結果:
a:濁度試験:未処理:高温度抽出液:クリヤー(抽出色調は濃度に従い濃紅色)
冷却した液はいずれもクリームダウンした。
処 理:高温度抽出液:クリリヤー(抽出色調は濃度に従い濃紅色)
冷却保存したもの:いずれもクリームダウンを認めなかった。
b:風味試験;未処理2%(色調良:風味良):未処理4%(色調濃い:味覚渋く)
未処理6%(色調きわめて濃く:渋くて風味不良)
処理2%(色調良:風味良):処理4%(色調濃い:味覚やや渋い)
処理6%(色調濃い:味覚渋い)
c:同一濃度のものを比較すると、処理品の方が色調は濃いが、風味はまろやか。
加工処理したものは冷却時にクリームダウン現象は認められない。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明では茶葉を常法により加工処理した茶を原料とする。茶の種類は緑茶、紅茶、烏龍茶など茶葉を原料として加工した茶を利用することが出来、その茶の種類は限定するものではない。使用する耐圧加熱装置は必要とする温度を保持できる、殺菌機、レトルト装置を利用することができる。
【0021】
原料の茶葉を層状に展開して耐圧加熱装置に挿入する。必要に応じて、事前に原料の茶葉を加湿、あるいは炭酸カルシウムを添加混合調整する。
【0022】
原料の茶葉を耐圧加熱装置に挿入した後、圧力装置の処理温度(第一段温度:第二段温度)を設定する。温度調整は圧力調整弁を設定することにより微細に調整できる。
圧力容器に蒸気を吹き込み、荒茶に含まれる空気を蒸気と置換し、荒茶に含まれる好ましくない成分を蒸発させ分離し、この好ましくない香気物質を容器外に排除する。
【0023】
好ましくない香気成分を排除後、排気弁を閉じ、第二設定温度で加熱処理を行い、茶の強い渋味を構成する成分のカテキンガレートのエステル結合を分解させ、没食子酸を解離させ、EGC、GCに転換し爽やか風味の茶を作る。
【実施例1】
【0024】
第一段温度85℃、第二段温度115℃、第二段加熱時間15分に設定した耐圧加熱装置に、原料紅茶2kgを層状に展開し、各段に温度計を装着し、5段に重ね挿入する。圧力容器の戸を完全にロックし、加圧蒸気を吹き込む、加圧加湿蒸気は各段の原料茶葉に均一に散布され、均一加熱を確認する、排気口より原料茶葉に含まれる好ましくない香気物質は過剰の蒸気と共に排除される。品温が第一段温度に到達すると、排気弁を閉じ、第二段温度115℃に加熱する。容器内蒸気圧力設定を調節することにより、温度制御を行うので、常圧で茶を火入れする時とは異なり、各段の茶葉は115℃で均等に加熱処理される。第二段の加熱時間が終了すると加熱蒸気の弁を閉じ、排気弁を開き耐圧容器を常圧し、容器の戸を開く、挿入した茶を取り出し、冷却除湿乾燥装置に移し、加工した茶の乾燥を行う。
処理茶の分析の結果、一般生菌数は0、耐熱性菌数は0であった。カフェインは原料茶1.0:処理茶1・0で保持され、カテキンは重合ポリフェノールに転換し、原料茶には存在しなかった没食子酸はガレート型カテキンの分解により生成検出された。
渋味を構成するカテキンのガレートは分解し、さらに重合ポリフェノールに転換し、加工した茶を煎じて冷却した時、クリームダウンを起こさない黄金色の爽やかな風味の茶を作ることができた。
【実施例2】
【0025】
原料紅茶10kgに水300gと炭酸カルシウム20gを加え均一に攪拌する。
第一段温度100℃、第二段温度125℃、第二段加熱時間15分に設定した耐圧加熱装置に、処理した原料茶葉2kgを層状に展開し、温度計を装着し、5段を重ね挿入する。圧力容器の戸を完全にロックし、加圧蒸気を吹き込む、加圧加湿蒸気は各段の原料茶葉に均一に散布され、加熱され、排気口より原料茶葉に含まれる好ましくない香気物質は過剰の蒸気と共に排除される。品温が第一段温度に到達すると、排気弁を閉じ外部と隔離され、第二段温度125℃に加熱する。容器内蒸気圧力を調節することにより、温度制御を行うので、常圧で茶を火入れする時とは異なり、各段の茶葉は125℃で均等に加熱処理される。第二段の加熱時間が終了すると加熱蒸気の弁は閉じ、排気弁は開き耐圧容器を常圧し、容器の戸を開く、段状に挿入した茶を取り出し、冷却除湿乾燥装置に移し、加工した茶の乾燥を行う。処理茶の分析の結果、一般生菌数は0、耐熱性菌数は0であった。原料茶を炭酸カルシウム共存下で処理を行うことにより、カルシウムが渋味成分のタンニンの分解重合を促進する。渋味を構成するカテキンのガレートは分解して没食子酸を分離し、渋味を低減し、さらに重合ポリフェノールに転換し紅色を呈し、茶特有のカフェイン機能性を保持した爽やかな風味の茶を作ることができた。
カテキンは重合ポリフェノールに転換し、原料茶には存在しなかった没食子酸は検出された、分析の結果、カフェインは原料茶1.0:処理茶1・0で保持され、渋味を構成するカテキンのガレートは分解して没食子酸を分離し、渋味を低減し、さらに重合ポリフェノールに転換し紅色を呈し、茶特有のカフェイン機能性を保持した爽やかな風味の茶を作ることができた。




【特許請求の範囲】
【請求項1】
茶を圧力容器に入れ、加熱蒸気を吹き込み好ましくない香気を排除し、排気弁を閉じ閉鎖系で加熱をし、クリームダウンの原因となるカテキンガレートを分解させ、クリームダウンを防止する茶の製法。
【請求項2】
茶に炭酸カルシウムを添加し、加熱蒸気を吹き込み好ましくない香気を排除し、排気弁を閉じ閉鎖系で加熱をし、クリームダウンの原因となるカテキンガレート分解させクリームダウンを防止する茶の製法。
【請求項3】
請求項1、2の方法により製造した茶。








【公開番号】特開2013−51894(P2013−51894A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−190731(P2011−190731)
【出願日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【出願人】(711007884)
【Fターム(参考)】