説明

茶抽出物の製造法

【課題】 バランスの良い香気とお茶らしい色を有し、皮膚外用剤に配合できる茶抽出物の製造法の提供。
【解決手段】 カメリア属に属する茶葉から茶抽出物を製造する方法であって、抽出溶媒としてエタノールを用い、該抽出溶媒55〜75重量%に対して茶葉を25〜45重量%用い、抽出する茶抽出物の製造法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、茶葉由来の自然な香気とお茶らしい色を有する茶抽出物の製造法及びそれを配合してなる皮膚外用剤に関する。
【背景技術】
【0002】
緑茶、半発酵又は発酵茶葉から安定した風味を有する抽出方法として、低温水で抽出を行い、昇温して再度抽出する2段階抽出法や、強酸性下での抽出方法が知られている(特許文献1〜3)。しかしながら、これらの抽出方法は、煩雑な工程を有しなおかつ茶葉からのカテキン抽出に限定されたものであった。
【特許文献1】特開2003−219799号公報
【特許文献2】特開2003−219800号公報
【特許文献3】特開2003−225053号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
お茶のフレーバー感は、ボディ感、フレッシュ感、焙焼香、発酵感等からなり、これらのバランスによりお茶らしい風味が得られる。ところが、温水抽出では焙焼香や発酵感は得られるが、フレッシュ感が得られにくく、一方フレッシュ感を得るために、しばしば高濃度のエタノールで抽出が行われるが、焙焼香や発酵感が得られにくく、いずれの場合もボディ感、フレッシュ感、焙焼香、発酵感等をバランス良く有するお茶独特のフレーバー感の良好な茶抽出物は得られなかった。
【0004】
従って、本発明の目的は、茶葉由来の自然なバランスの良い香気とお茶らしい色を有する、皮膚外用剤に配合できる茶抽出物の製造法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
そこで本発明者は、お茶らしい香気と色を基準として茶葉からの抽出手段について鋭意検討したところ、通常化粧品製造で用いられるエタノールの量を特定の範囲とすること、さらに、茶葉の90重量%が100メッシュ区分を通過するように微粉砕する工程を経ることでお茶らしい香気を有し、青臭さがなく、かつお茶らしい色の茶抽出物が得られ、これを用いれば天然感に富んだ香気を持ったボディ感のある皮膚外用剤が製造可能になることを見出した。
【0006】
すなわち、本発明は、カメリア属に属する茶葉から茶抽出物を製造する方法であって、抽出溶媒として通常化粧品製造で用いられるエタノールを用い、該抽出溶媒55〜75重量%に対して茶葉を25〜45重量%用い抽出する茶抽出物の製造法を提供するものである。
【0007】
また本発明は、前記方法により得られた茶抽出物を配合してなる皮膚外用剤を提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、茶葉由来の自然な香気を有し、青臭さなどがなく、お茶らしい色の茶抽出物が効率良く抽出され、これを用いれば天然感に富んだ香気を持ちボディ感のある皮膚外用剤が製造できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について説明する。なお、本発明は、下記実施形態の記載により限定して解釈するべきでなく、特許請求の範囲における記載の範囲内で種々の変更が可能である。
【0010】
本発明に用いられる茶葉としては、例えばカメリア・シネンシス(Camellia・sinensis)、カメリア・アッサミカ(Camellia・assamica)およびやぶきた種又はそれらの雑種から得られる茶葉が挙げられる。
【0011】
粉砕工程は、乾燥した緑葉をカッター、スライサー、ダイサーなどの当業者に公知の任意の機械または道具により、乾燥した緑葉を粉砕する工程である。次に、90重量%が100メッシュ区分を通過するように、微粉砕される。微粉砕は、例えば、クラッシャー、ミル、ブレンダー、石臼などの当業者が通常用いる任意の機械または道具を用いて行われる。
【0012】
抽出溶媒としては、通常化粧品製造で用いられる95%エタノールが使用出来る。茶葉の量は、抽出溶媒に対して、25〜45重量%、好ましくは30〜40重量%である。茶葉量が25重量%未満では、得られる茶抽出物の香気が十分でなく、45重量%を超えるとお茶らしい色調が十分に抽出されず、香気とのバランスが良くない。
【0013】
茶を抽出する方法は、撹拌抽出など従来の方法により行うことができる。また、抽出時、抽出溶媒にあらかじめアスコルビン酸ナトリウムなどの有機酸又は有機酸塩類を添加してもよい。また、煮沸脱気や窒素ガス等の不活性ガスを通気して溶存酸素を除去しつついわゆる非酸化的雰囲気下で抽出する方法も併用して良い。
【0014】
得られた抽出液は、減圧濃縮(薄膜濃縮、フラッシュ濃縮)、RO膜濃縮等の濃縮、遠心分離、濾過等の処理を行うことができる。
【0015】
皮膚外用剤を得る場合には、必要に応じて茶由来の成分に合わせて医薬部外品、化粧料などに通常使用される他の成分を、該皮膚外用剤の効果を損なわない範囲で含有してもよい。このような成分としては、例えば水、他の薬効成分、他の油剤、保湿剤、界面活性剤、紫外線吸収剤、吸収促進剤、香料、色素、保存剤、増粘剤、キレート剤、防腐防黴剤などを挙げることができる。ここで
他の薬効成分としては、活性酸素除去剤、抗酸化剤、消炎鎮痛剤、抗ヒスタミン剤、止痒剤、殺菌剤、ビタミン剤、ホルモン剤などが挙げられる。
【0016】
また、茶抽出物の安定性を高める目的で、酸化防止剤を添加しても良い。これにより、肌のタンパク質や油脂類の酸化を防止し、肌質を改善および保護する効果を得ることができる。
【0017】
酸化防止剤としては、ビタミンAなどのカロテノイド類、ビタミンB類、アスコルビン酸、ビタミンE、およびこれらの誘導体またはこれらの塩、L−システイン及びこれらの誘導体やその塩、リボフラビン、SOD、マンニトール、ハイドロキノン、トリプトファン、ヒスチジン、ケルセチン、没食子酸およびその誘導体、BHT、BHA、ならびにボタンピ抽出物、トマト抽出物、パセリ抽出物、メリッサ抽出物、オウゴン抽出物などの植物抽出物が挙げられる。
【0018】
この中でも、アスコルビン酸は、茶抽出物の安定性を高め、肌質の改善効果(例えば、ハリやツヤが良くなる効果)を高める。
【0019】
本発明の皮膚外用剤は、通常用いられる方法により、茶抽出物と他の成分とを混合して調製することができ、医薬品、医薬部外品、化粧品、トイレタリー用品として使用できる。例えば、化粧水、化粧クリーム、乳液、クリーム、パック、ヘアトニック、ヘアクリーム、シャンプー、ヘアリンス、トリートメント、ボディシャンプー、洗顔剤、石鹸、ファンデーション、白粉、口紅、リップグロス、頬紅、アイシャドー、整髪料、育毛剤、水性軟膏、油性軟膏、目薬、アイウォッシュ、歯磨剤、マウスウォッシュ、シップ、ゲルなどが挙げられる。また、シップやゲルのような担体や架橋剤に保持・吸収させ、局部へ貼付するなどの方法により、局所的な長時間投与を行うこともできる。
【実施例】
【0020】
以下、本発明の実施例について説明する。なお、本発明は、下記の実施例に限定して解釈すべきではなく、特許請求の範囲における記載の範囲内で種々の変更が可能である。
【0021】
調製したサンプルは、5名による官能評価法によって評価した。評価にあたって以下の基準によって評点をつけた。
【0022】
(お茶らしい香り)
−:香気が感じられない
△:香気がやや弱い
○:香気がやや強い
◎:香気が強い
(お茶らしい色)
−:鮮やかな緑色が見られない
△:鮮やかな緑色がやや弱い
○:鮮やかな緑色がやや強い
◎:鮮やかな緑色が強い
(総合評価)
×:バランスが非常に悪い
△:バランスが悪い
○:バランスが良い
◎:バランスが非常に良い
【0023】
(実施例1)
100メッシュ区分を通過した茶葉125gを500gの化粧品製造用エタノールにて15分間抽出し、ろ紙にてろ過後本溶液を減圧濃縮し粉末状の実施例1を得た。
【0024】
(実施例2)
100メッシュ区分を通過した茶葉150gを450gの化粧品製造用エタノールにて15分間抽出し、ろ紙にてろ過後本溶液を減圧濃縮し粉末状の実施例2を得た。
【0025】
(実施例3)
100メッシュ区分を通過した茶葉300gを700gの化粧品製造用エタノールにて15分間抽出し、ろ紙にてろ過後本溶液を減圧濃縮し粉末状の実施例3を得た。
【0026】
(実施例4)
100メッシュ区分を通過した茶葉300gを450gの化粧品製造用エタノールにて15分間抽出し、ろ紙にてろ過後本溶液を減圧濃縮し粉末状の実施例4を得た。
【0027】
(実施例5)
100メッシュ区分を通過した茶葉405gを495gの化粧品製造用エタノールにて15分間抽出し、ろ紙にてろ過後本溶液を減圧濃縮し粉末状の実施例5を得た。
【0028】
(実施例6)
100メッシュ区分を通過した茶葉500gを500gの化粧品製造用エタノールにて15分間抽出し、ろ紙にてろ過後本溶液を減圧濃縮し粉末状の実施例6を得た。
【0029】
(比較例1)
カッターにてカットした茶葉125gを500gの化粧品製造用エタノールにて15分間抽出し、ろ紙にてろ過後本溶液を減圧濃縮し粉末状の比較例1を得た。
【0030】
(比較例2)
カッターにてカットした茶葉150gを450gの化粧品製造用エタノールにて15分間抽出し、ろ紙にてろ過後本溶液を減圧濃縮し粉末状の比較例2を得た。
【0031】
(比較例3)
カッターにてカットした茶葉300gを700gの化粧品製造用エタノールにて15分間抽出し、ろ紙にてろ過後本溶液を減圧濃縮し粉末状の比較例3を得た。
【0032】
(比較例4)
カッターにてカットした茶葉300gを450gの化粧品製造用エタノールにて15分間抽出し、ろ紙にてろ過後本溶液を減圧濃縮し粉末状の比較例4を得た。
【0033】
(比較例5)
カッターにてカットした茶葉405gを495gの化粧品製造用エタノールにて15分間抽出し、ろ紙にてろ過後本溶液を減圧濃縮し粉末状の比較例5を得た。
【0034】
(比較例6)
カッターにてカットした茶葉500gを500gの化粧品製造用エタノールにて15分間抽出し、ろ紙にてろ過後本溶液を減圧濃縮し粉末状の比較例6を得た。
【0035】
(比較例7)
100メッシュ区分を通過した茶葉125gを500gの水にて15分間抽出し、ろ紙にてろ過後本溶液を減圧濃縮し粉末状の比較例7を得た。
【0036】
(比較例8)
100メッシュ区分を通過した茶葉150gを450gの水にて15分間抽出し、ろ紙にてろ過後本溶液を減圧濃縮し粉末状の比較例8を得た。
【0037】
(比較例9)
100メッシュ区分を通過した茶葉300gを700gの水にて15分間抽出し、ろ紙にてろ過後本溶液を減圧濃縮し粉末状の比較例9を得た。
【0038】
(比較例10)
100メッシュ区分を通過した茶葉300gを450gの水にて15分間抽出し、ろ紙にてろ過後本溶液を減圧濃縮し粉末状の比較例10を得た。
【0039】
(比較例11)
100メッシュ区分を通過した茶葉405gを495gの水にて15分間抽出し、ろ紙にてろ過後本溶液を減圧濃縮し粉末状の比較例11を得た。
【0040】
(比較例12)
100メッシュ区分を通過した茶葉500gを500gの水にて15分間抽出し、ろ紙にてろ過後本溶液を減圧濃縮し粉末状の比較例12を得た。
【0041】
(比較例13)
カッターにてカットした茶葉125gを500gの水にて15分間抽出し、ろ紙にてろ過後本溶液を減圧濃縮し粉末状の比較例13を得た。
【0042】
(比較例14)
カッターにてカットした茶葉150gを450gの水にて15分間抽出し、ろ紙にてろ過後本溶液を減圧濃縮し粉末状の比較例14を得た。
【0043】
(比較例15)
カッターにてカットした茶葉300gを700gの水にて15分間抽出し、ろ紙にてろ過後本溶液を減圧濃縮し粉末状の比較例15を得た。
【0044】
(比較例16)
カッターにてカットした茶葉300gを450gの水にて15分間抽出し、ろ紙にてろ過後本溶液を減圧濃縮し粉末状の比較例16を得た。
【0045】
(比較例17)
カッターにてカットした茶葉405gを495gの水にて15分間抽出し、ろ紙にてろ過後本溶液を減圧濃縮し粉末状の比較例17を得た。
【0046】
(比較例18)
カッターにてカットした茶葉500gを500gの水にて15分間抽出し、ろ紙にてろ過後本溶液を減圧濃縮し粉末状の比較例18を得た。
【0047】
上記実施例および比較例で得られた茶抽出物についての評価結果を表1および表2に示す。
(表1)

(表2)

【0048】
また、実施例2〜5の抽出物は、天然感に富んだ香気を持ちボディ感のある皮膚外用剤が製造できた。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明の茶抽出物は、茶葉由来の自然な香気を有し、青臭さなどがなく、かつお茶らしい色の茶抽出物が効率良く抽出され、これを用いれば天然感に富んだ香気を持ちボディ感のある皮膚外用剤が製造できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カメリア属に属する茶葉から茶抽出物を製造する方法であって、抽出溶媒としてエタノールを用い、該抽出溶媒55〜75重量%に対して茶葉を25〜45重量%用い、抽出する茶抽出物の製造法。
【請求項2】
90重量%が100メッシュ区分を通過するように微粉砕された茶葉を用いる、請求項1に記載の茶抽出物の製造法。
【請求項3】
請求項1乃至2に記載の方法により得られた茶抽出物を配合してなる皮膚外用剤。

【公開番号】特開2009−209047(P2009−209047A)
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−50553(P2008−50553)
【出願日】平成20年2月29日(2008.2.29)
【出願人】(398028503)株式会社東洋新薬 (182)
【Fターム(参考)】