説明

荷台振動情報提示装置

【課題】 車両走行中に生じ得る積荷の荷傷みを防止するための荷台振動情報提示装置を提供する。
【解決手段】 荷台振動情報提示装置(10)は、積荷の荷傷みを防止すべく車両の荷台に配置された振動検出手段(11)と、所定時間(Δt)毎の平均振動値を演算する制御部(24)と、平均振動値を記憶する記憶部(26)と、平均振動値の変化を運転者等に提示する情報提示部(30)とを有する。荷台振動情報提示装置(10)は又、荷台振動と関連した走路情報を記憶した警告制御部(43)を備え、GPSの車両位置情報が警告制御部に入力される。情報提示部は、振動発生の可能性が高い走路部分に車両が到達する前にその情報を運転者等に与える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷台振動情報提示装置に関するものであり、より詳細には、荷台の積荷の荷傷みを防止するための荷台振動情報を運転者等の乗員に提示する荷台振動情報提示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
トラック輸送等による荷物の車両輸送では、積荷保護の対策として、サスペンション装置の振動低減効果によって輸送振動を緩和する対策、荷物を梱包又は包装する梱包・包装材料の工夫、或いは、荷物の設置方法の工夫によって積荷の荷崩れを阻止する対策等が一般に採用されている。他の積荷保護策として、車両操作又は積荷状態等に起因した車両の挙動又は荷重不均衡を検出し、或いは、積荷の状況を視覚的に監視することによって、荷崩れを未然に防止しようとする各種対策が提案されてきた。
【0003】
例えば、特開平5-213108号公報に開示された積載異常検知装置は、荷台、車体フレーム等の適所に感圧センサを配置し、局部的な積載荷重超過や、積載重量の不均衡を検出するように構成されている。この積載異常検知装置は、感圧センサの検出結果に基づいて積載異常を検知することにより、荷台に積載した荷物の荷崩れや、車体横転等を防止することを意図したものである。
【0004】
また、特開平7-186832号公報には、密閉した荷台内部に収容した積荷を運転席に画像表示する荷崩れ監視装置が開示されている。荷崩れ監視装置は、急停車時、急発進時、バンプ時等に過大な衝撃を加速度センサで検出すると、積荷の状態を運転席に画像表示する。運転者等は、積荷の状況を画像表示で視覚的に監視し、荷崩れの可能性を事前に察知することができる。
【0005】
更に、トレーラの荷崩れを防止するための荷崩れ警報装置が特開平10-175476号公報に開示されている。荷崩れ警報装置は、トラクタの車輪速度を検出して車両加速度を演算するとともに、車両加速度、エンジン駆動力、トレーラ質量及びトレーラ重心位置を検出し、トレーラ重心位置と、その基準値との差が拡大すると、警報を発する。運手者は、荷崩れの可能性を警報音で認識し、これに対する人為的対策を比較的迅速に採ることができる。
【特許文献1】特開平5-213108号公報
【特許文献2】特開平7-186832号公報
【特許文献3】特開平10-175476号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、生卵、魚、野菜等の生鮮食品、菓子類、生花、精密機器、或いは、オーディオ製品等の積荷については、商品又は製品の性質上、荷崩れ以前の損傷、即ち、輸送時の振動等による荷傷みの発生を極力防止する必要が生じる。一般に、運転者は、この種の商品又は製品を輸送する際、車速を低下した慎重な運転を余儀なく強いられる。
【0007】
また、この種の商品又は製品の運送業務に従事する多くの運転者は、積荷を荷台又は荷室に隙間なく積込んで輸送効率を高めた状態の運送を比較的頻繁に経験する。このような近年の輸送事情の下では、荷崩れの問題よりも、むしろ、荷崩れ以前の問題、即ち、輸送時の荷傷みの問題が顕在化するので、運転者は、積荷の輸送に過剰な神経を費やさなければならない。
【0008】
このような事情より、積荷の荷傷み防止に費やす運転者の神経又は運転負荷を軽減するとともに、積荷の荷傷みを確実に防止する対策が、近年殊に必要とされている。
【0009】
しかるに、上記特開平5-213108号公報に記載された積載異常検知装置は、荷台に配置した感圧センサが荷物の挙動又は荷重変化を検出した後に警報器を作動させるように構成されたものにすぎない。荷崩れが発生した後に初めて荷物の異常を警報したとしても、荷崩れ以前の問題として把握すべき荷傷み、即ち、積荷の荷重変化が生じなくとも発生し得る積荷の傷みを防止することはできない。
【0010】
特開平7-186832号公報の荷崩れ監視装置は、車両の急峻な挙動や、衝撃等を加速度センサによって検出すると、荷台の状況を撮像し、積荷の映像を運転席に画像表示するように構成されている。しかし、この種の監視装置を実現するには、比較的高価且つ複雑な撮像ステムを車載する必要が生じる。また、この監視装置は、運転者が直に視覚観察できない荷台の状況を撮像システムを介して間接的に視認できるようにするにすぎず、荷崩れ防止は、あくまで運転者自身の経験や直感、更には、車両操作上の判断、配慮、熟練性等に依存したものである。即ち、特開平7-186832号公報の荷崩れ監視装置は、積荷の状態を見ながら車両を運転できる環境を提供し得るにすきず、これに対し、荷傷みは、視覚的に認識可能な積荷全体の変位が生じない状態であっても生じ得る。従って、このような監視装置では、積荷の傷みを監視することはできない。
【0011】
特開平10-175476号公報の装置は、カプラを介して連結されるトラクタ及びトレーラの挙動不一致により、運転者がトレーラの積荷の荷崩れを察知し難い点を考慮したものであり、トラクタの重心位置の変化に基づいて荷崩れの危険を検出するように構成される。しかしながら、積荷の傷みは、このような重心変化が生じない状況であっても発生し得るので、この装置によっても、積荷の傷みを防止することはできない。
【0012】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、積荷の荷傷み防止に費やす運転者の神経又は運転負荷を軽減するとともに、車両走行中に生じ得る積荷の荷傷みを確実に防止可能にする荷台振動情報提示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成すべく、本発明は、積荷の荷傷みを防止すべく車両の荷台に配置された振動検出手段を有する荷台振動情報提示装置であって、
前記振動検出手段の検出結果に基づいて荷台の振動情報を検出し、振動情報を所定の時間間隔で時間平均することによって、所定時間毎の平均振動値を演算する制御部と、
前記平均振動値を記憶する記憶部と、
最新の平均振動値と直前の平均振動値又は所定の振動値とを比較し、平均振動値の変化を視覚情報又は聴覚情報として乗員に提示する情報提示部とを有することを特徴とする荷台振動情報提示装置を提供する。
【0014】
本発明の上記構成によれば、運転者等の乗員は、情報提示部に表示された視覚情報又は聴覚情報によって荷台振動の変化を簡単に認識できる。視覚情報として、簡単な数値表示、彩色グラフ表示、或いは、バーインジケータ等の画像表示を好ましく使用することができ、聴覚情報として、音声出力や音響効果音等を好ましく使用し得る。この種の情報提示においては、運転動作や安全確認動作等に影響を与えずに簡易に状況把握できるようにすることが重要であるが、本発明によれば、所定時間毎(例えば、毎分)の平均振動値が情報提示され、しかも、平均振動値の変化が運転者等に情報提示されるので、運転者等は、比較的簡易に現状を把握し又は変化を予測することができる。また、比較的経験が浅い運転者の場合であっても、振動増大を抑制し又は過大な振動を回避するように運転操作し、車速又は加減速を調整すれば良く、従って、運転者は、本発明の荷台振動情報提示装置の情報提示を参照することにより、積荷の荷傷みを防止する現実的な運転操作を遂行し易い。
【0015】
好ましくは、荷台振動情報提示装置は、平均振動値の変化が所定範囲を超えたとき、或いは、所定値を超える過大な平均振動値が検出されたとき、乗員に視覚的又は聴覚的な警報を発する警報装置を備える。
【0016】
本発明は又、上記構成の荷台振動情報提示装置において、振動情報及び/又は平均振動値を系時的に記録する記録装置を更に備えた荷台振動情報提示装置を提供する。
【0017】
このような荷台振動情報提示装置によれば、目的地に到着した積荷の状況と、輸送中に発生した荷台振動との関係を分析し又はデータ処理することができる。好ましくは、車速、シフト操作、走行時刻、走行距離等の運行情報を自動記録するデジタル式タコグラフ等の運行記録計が上記記録装置として使用され、荷台振動の系時的情報が、運行情報とともに記録装置に蓄積される。記録装置の情報は、運行終了時に運行データ管理システム等にデータ移管され、これにより、運行情報と関連した荷台振動のデータベースが構築され又は更新される。
【0018】
本発明は又、積荷の荷傷みを防止すべく車両の荷台に配置された振動検出手段を有する荷台振動情報提示装置であって、
前記振動検出手段の検出結果に基づいて荷台の振動情報を検出し、振動情報を所定の時間間隔で時間平均することによって、所定時間毎の平均振動値を演算する制御部と、
前記平均振動値を記憶する記憶部と、
荷台振動防止のための視覚情報又は聴覚情報を乗員に通知する情報提示部と、
荷台振動と関連した運行情報を記憶するとともに、GPSの車両位置情報が入力される警告制御部とを有し、
前記情報提示部は、振動発生の可能性が高い走路部分に車両が接近したことを前記警告制御部が検知すると、該走路部分に到達する前に前記視覚情報又は聴覚情報を乗員に通知することを特徴とする荷台振動情報提示装置を提供する。
【0019】
多くの場合、製品又は商品は、予め予定された特定の輸送経路を輸送される。本発明の上記構成によれば、警告制御部は、GPSの車両位置情報より車両の現在位置を認識し、荷台振動と関連した過去の運行情報に基づき、荷台振動発生の可能性が高い走路部分に車両が接近したことを事前に予測することができる。このような走路部分に車両が接近したことを警告制御部が検知すると、情報提示部は、到達前に荷台振動防止のための情報(例えば、減速の指示)を乗員に通知する。
【0020】
好ましくは、荷台振動情報提示装置は、車速、走行時刻、シフト操作、走行距離等の運行情報を自動記録するデジタル式タコグラフ等の運行記録計を備える。運行記録計は、これらの運行情報とともに荷台振動情報を系時的に記録する。運行記録計の荷台振動情報及び運行情報は、運行終了後に運行データ管理システム等にデータ移管され、振動発生の可能性が高い走路部分に関する情報データベースが構築され又は更新される。
【0021】
本発明の好適な実施形態において、上記振動検出手段は、荷台の適所に配置された加速度センサからなり、加速度センサは、荷台の前部、中央部及び後部等に夫々配置される。振動検出手段として、レートジャイロ(3軸ジャイロ)、速度計、変位計等を使用しても良い。
【0022】
本発明の他の好適な実施形態において、上記制御部は、車速センサ等の車速検出手段の検出結果に基づいて車速を検出するとともに、車高センサの検出結果に基づいて積荷の積載荷重を検出するように構成される。制御部は、車速及び積載荷重の情報と、振動検出手段の検出結果とに基づき、予め記憶部等に記憶された関数等を用いて荷台の振動情報及び平均振動値を得る。
【発明の効果】
【0023】
本発明の荷台振動情報提示装置によれば、荷台振動防止のための視覚情報又は聴覚情報を運転者等に随時通知し、或いは、振動発生の可能性が高い走路部分に車両が到達する前に、荷台振動防止のための視覚情報又は聴覚情報を運転者等に通知することができる。従って、本発明によれば、積荷の荷傷み防止に費やす運転者の神経又は運転負荷を軽減するとともに、車両走行中に生じ得る積荷の荷傷みを確実に防止可能にする荷台振動情報提示装置が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0025】
図1は、本発明の荷台振動情報提示装置を車載した大型車両の全体構成を概略的に示す側面図である。
【0026】
前1軸及び後2軸を備えた6×2後2軸方式の駆動系を有する大型車両1が、図1に例示されている。車両1は、キャブ2の下部にエンジン(図示せず)を搭載し、荷台(ボディ)4をシャシフレーム3に装架した構造を有する。荷台4内の荷室には、積荷(図示せず)が積載される。荷室には、例えば、生鮮食品、菓子類、生花、精密機器、オーディオ製品等の如く、比較的荷傷みし易い積荷が積み込まれる。
【0027】
キャブ2内のインストルメントパネル6には、荷台振動情報提示装置10(以下、「情報提示装置10」という。)が配置される。鉛直方向の加速度を検出する加速度センサ(Gセンサ)11が、荷台4の前部、中央部及び後部に配置される。加速度センサ11は、振動検出手段を構成する。加速度センサ11の検出信号は、制御信号線12を介して情報提示装置10に入力される。車速センサ14及び車高センサ15が、車両1の所定部位に配設される。車速センサ14及び車高センサ15の検出信号は、制御信号線16、17を介して情報提示装置10に入力される。
【0028】
情報提示装置10は、運行記録計及びGPS(Global Positioning System)受信機を備える。運行記録計は、好ましくは、ディジタル式タコグラフからなり、車両速度、走行距離、走行時刻、エンジン回転数、シフト操作等を自動的に記録するとともに、GPS受信機と連携し、車両1の現在位置や、走行経路、走行距離等を記録する。GPS受信機は、人工衛星からの信号Sを受信して受信位置を求め、車両1の地理的現在位置を随時検出する。
【0029】
図2は、情報提示装置10を含む制御システムの全体構成を示すシステム構成図である。
【0030】
情報提示装置10は、作動スイッチ21、電源回路22、入力部23、制御部24、出力部25、記憶部26、情報提示部30及び警告制御部43を備えるとともに、上述の運行記録計41及びGPS受信機42を備える。情報提示部30は、モニター部31及び警報装置32を有する。モニター部31は、荷台の平均振動値の変化を視覚情報として表示するディスプレイから構成される。警報装置32は、積荷の荷傷みが生じ得る過大な振動が荷台4に発生する場合、警報音を発し又は警報表示等を表示し、運転者等の注意を喚起する。警告制御部43は、荷台振動発生と関連した過去の走路情報等の運行データを記憶する。警告制御部43には、GPS受信機42の車両位置情報が入力される。警告制御部43は、振動発生の可能性が高い走路部分に車両1が接近したことを検知すると、このような走路部分に到達する前にモニター部31に減速等の警告を表示する。
【0031】
情報提示装置10は、作動スイッチ21の手動操作に従って起動し又は作動停止する。モニター部28は、荷台4の振動を表示し、警報装置32は、積荷の荷傷みが生じ得る過大な振動が荷台4に発生する場合、警報音を発し又は警報表示等を表示する。
【0032】
加速度センサ11、車速センサ14及び車高センサ15の制御信号線12、16、17は、入力部23に接続され、制御部24は、入力部23に入力した各センサ11、14、15の検出信号に基づいて加速度、車速及び車高を検出する。加速度センサ11は、荷台4の前部、中央部及び後部の振動把握のために、これらの部位の鉛直方向(上下方向)加速度を夫々検知する。車速センサ14は、関数計算によって荷台振動を把握するために車速を検知し、車高センサ15は、荷台4の積荷荷重を検出するために車高を検知する。
【0033】
図3は、情報提示装置10の制御形態を示すフローチャートである。図3に示す制御形態では、荷台の振動は、加速度センサ11の検出結果に基づいて把握される。
【0034】
情報提示装置10は、作動スイッチ21の手動操作(電源ON)によって作動する。制御部24は、カウント値を初期化(n=1)するとともに、加速度X0を初期値Xminに設定する(S1)。初期値Xminは、例えば、車両固有の振動特性等に相応して予め定められており、積荷の荷傷みが発生する可能性がないと考えられる加速度として規定される。初期値Xminを加速度=0に設定しても良い。
【0035】
制御部24は、調時手段のタイマー機能を作動させ(S2)、調時手段に予め設定したサンプリング区間(時間)Δtnの加速度を検出する(S3)。荷台前部、中央部及び後部の各加速度センサ11の検出結果は、制御信号線12を介して入力部23に入力され、制御部24は、各加速度センサ11の検出結果に基づいて各部の鉛直方向加速度を検出する。制御部24の演算回路は、荷台前部、中央部及び後部の加速度を時間平均し、サンプリング区間(時間Δtn)における加速度平均値Xnを演算する(S4)。荷台前部、中央部及び後部の加速度平均値Xnは、記憶部26に夫々記憶される。制御部24は、加速度を振動情報として把握し、加速度平均値Xnを所定時間Δtn毎の平均振動値として取り扱う。
【0036】
制御部24の演算回路は更に、加速度平均値Xnが大きく変化したか否かを判定すべく、加速度変化(Xn− X(n-1))の絶対値を演算する。加速度変化(Xn− X(n-1))の絶対値が所定値ΔX以下である場合、制御部24の発信回路は、X(n-1) (=Xmin)を出力部25からモニター部31及び運行記録計41に出力する(S5、S6)。他方、加速度変化(Xn− X(n-1))の絶対値が所定値ΔXを超える場合、発信回路は、検出された加速度Xnを出力部25からモニター部31及び運行記録計41に出力する(S5、S10)。
【0037】
記憶部26は、過大な振動の発生を規定する最大加速度Xmax を予め記憶しており、加速度Xnが所定値Xmaxを超える場合、制御部24の発信回路は、出力部25を介して警報作動信号を警報装置32に出力し、警報装置32は、視覚的又は聴覚的な警報を発する(S11,S12)。
【0038】
加速度検出(S3)、加速度平均値Xnの演算・記憶(S4)、加速度変化(Xn− X(n-1))と所定値ΔXとの比較判定(S5)、加速度Xnと所定値Xmax との比較判定(S11)、加速度Xn又はX(n-1)の出力(S6、S10)および警報装置作動(S12)の各作業は、予め設定されたサンプリング区間Δt1・・・Δtnについて調時手段の制御下に反復実行される(S7、S8)。
【0039】
任意のサンプリング区間Δtnにおいて加速度平均値Xnが所定値ΔXの範囲を超えて変動すると、モニター部31に表示される加速度の値は、加速度平均値Xnに更新され、加速度の変化は、運行記録計41に記録される。従って、情報提示装置10は、サンプリング区間Δtnの加速度平均値Xnを継続的に監視し、所定値ΔXを超える比較的大きな加速度平均値Xnの変動が生じた場合にモニター部31の表示を更新するので、モニター部31は、運転者の車両操作を阻害しない簡易判断可能な表示が運転者等に示される。簡易に判断可能なモニター部31の表示として、例えば、簡素な数値表示、色彩グラフ表示、バーインジケータ、或いは、図又はイラスト表示等の如く、視覚的に簡易判断可能な表示を例示し得る。情報提示装置10は、モニター部31の画像表示に換えて、加速度平均値Xnの変動の情報を音声や効果音等で聴覚的に運転者等に提示する音源を備えても良い。いずれの情報提示手段を用いる場合であっても、特定レンジを超える加速度変化が生じた場合のみに情報を更新する上記構成の情報提示装置10によれば、運転者の運転動作や、安全確認を阻害しない簡易な情報提示を行うことができる。
【0040】
また、情報提示装置10は、荷台4の前部、中央部及び後部の加速度情報を運転者等に与えるので、運転者は、運転中の定常的な振動に対する荷台4の各部の振動を把握することができる。従って、運転者は、積荷の荷傷みを防止すべく、積荷の積載状況(荷台4の積荷配置等)を考慮した車両操作を行うことができる。
【0041】
なお、荷台4に発生する振動は、路面性状により大きく相違する。運転者は、走行路面環境を熟知していない地域・地区で車両1を運転する場合、一般には、路面環境に適した速度調整や、加減速操作を行うことができず、この結果、積荷の荷傷みが生じ易い。しかしながら、そのような場合であっても、運転者は、情報提示装置10から得た加速度情報に基づいて速度調整や加減速を行うことにより、積荷の荷傷みを回避することができるであろう。
【0042】
図4は、情報提示装置10の他の制御形態を示すフローチャートである。
【0043】
図4に示す制御形態では、荷台の振動は、加速度、積荷荷重及び車速に基づいて把握される。記憶部26(図2)は、車両固有の情報(空積時の車高;ホイールベース値;荷台積載荷重及び車高の相関関係;空積時の車体の振動特性等)を予め記憶するとともに、荷台振動把握のための情報(荷台積載荷重、車速及び加速度の相関関係)を予め記憶している。
【0044】
情報提示装置10は、作動スイッチ21の手動操作(電源ON)で作動し、制御部24は、初期化(n=1、加速度X0=初期値Xmin)設定(S1)を行い、調時手段のタイマー機能作動(S2)を行った後、車高センサ15の検出値を読込む(S20)。制御部24の演算回路は、記憶部26に予め記憶された車体情報に基づき、荷台4の積荷荷重を演算する(S21)。車高センサ14の位置及び設置数は、車体の荷重応答特性に相応して定められ、車両1の適所、例えば、キャブ2の下部及び荷台後部に配設され、或いは、荷台の後部及び前部に配設される。
【0045】
制御部24の演算回路は、加速度センサ11及び車速センサ14の検出値を読込み(S22)、これら実測値より、サンプリング区間(時間)Δtnの平均振動(振動平均値Yn)を得る(S3)。例えば、演算回路は、記憶装置に記憶された上述の車体情報(ホイールベース値;空積時の車体の振動特性等)、荷台振動把握のための情報(荷台積載荷重、車速及び加速度の相関関係)、そして、荷台の積荷荷重(S21)に基づき、予め規定された関数式又は制御マップ等を用いて荷台前部、中央部及び後部の振動平均値Ynを演算し、記憶部26に記憶する。
【0046】
制御部24は、予め設定されたサンプリング区間(時間)Δtnの平均振動(振動平均値Yn)を順次、演算又は推定し、記憶部26は、サンプリング区間(時間)Δtn毎に生じた振動平均値Ynを記憶する。制御部24は、振動平均値Ynの変動を判定し(S5)、振動平均値Ynの変化が所定範囲(所定値ΔY)を超える場合、モニター部31に表示される振動平均値Ynを更新し(S10)、変動が所定範囲(所定値ΔY)内のものであれば、モニター部31に示された振動平均値の表示を維持する(S6)。また、制御部24は、過大な振動が発生した場合、警報装置32を作動させ、運転者等に警報を発する(S11,S12)。
【0047】
図2に示す如く、制御部24は、出力部25を介して運行記録計41に接続されているので、いずれの制御形態(図3及び図4)を採用した場合であっても、サンプリング区間(時間)Δtnの振動情報(加速度平均値Xn又は振動平均値Yn)は、運行記録計41に記録される。運行記録計41は、GPS受信機42に接続されているので、車両1の地理的位置情報を運行情報及び振動情報とともに記録することができる。
【0048】
ここに、運行記録計41は、車両速度、走行距離、走行時刻等の運行情報を系時的に自動記録し、所望により、荷台(ボディ)内の温度、湿度や、車外の温度、湿度等の環境情報又は外部情報等をも系時的に自動記録する。運行管理者は、運行記録計41に記録された運行記録を運行終了時に専用読取機等で取り出し、運行管理システム等の情報処理手段によってデータ移動することができる。
【0049】
本実施形態の情報提示装置10によれば、運行中の振動情報(加速度平均値Xn又は振動平均値Yn)が運行記録計41に随時記録されるとともに、GPS受信機42で得た正確な車両位置情報も又、運行記録計41に随時記録される。従って、運行管理者は、運行中の振動情報及び車両位置情報を通常の運行データ(車両速度、走行距離、走行時刻等)と一緒に運行終了後に情報処理又は統計処理し、積荷の荷傷みの有無又は荷傷みの状況と、運行記録、車両位置及び振動情報との関係を分析し、これにより、走行経路、車両位置及び振動情報等をデータベース化することができる。このようなデータベースは、積荷の荷傷みに影響する振動が生じ易い走路部分の特定や、荷傷みが生じる傾向がある走路部分の特定、更には、振動以外の他の要因をも含めた荷傷み対策を可能にする。これにより、例えば、この種の走路部分に接近した車両の運転者等に予め振動発生を予告したり、振動発生を回避するための減速操作又は運転注意を警告することが可能となる。
【0050】
本実施形態では、図2に示す警告制御部43は、このようなデータベースより読み込んだデータに基づいて、振動発生の可能性が高い走路部分に車両1が接近したことを検知すると、このような走路部分に到達する前にモニター部31に減速等の警告を表示する。
【0051】
なお、荷台の振動は、走路の性状のみによって定まるものではなく、車速、積荷荷重等の影響を受ける。このため、上記データベースを用いて車速、積荷荷重等のデータを位置情報及び振動状況のデータと関連付け、同一路面を走行中であっても、車速が低い場合には、振動発生の警告を行わず、車速が比較的高い場合には、振動発生を警告し、或いは、自動的に減速するような運行管理システムを構築することも可能である。
【0052】
以上、本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の範囲内で種々の変形又は変更が可能である。
【0053】
例えば、上記実施形態では、荷台の前部、中央部及び後部に加速度センサを配置しているが、例えば、更に多数の加速度センサを荷台等に配置したり、或いは、任意の場所に取付け可能な可搬式加速度せンサを用意し、これを荷台の所望の部位に適宜取付けるようにしても良い。
【0054】
また、振動検出手段として、レートジャイロ(3軸ジャイロ)、速度計、変位計等を使用しても良い。上述の加速度センサ11は、鉛直方向(上下方向)の加速度を検出するように構成されているが、例えば、レートジャイロを用いた場合、荷台の振動を主に制御するサスペンション装置の振動周波数範囲(25Hz以下の範囲)において、主要方向(上下方向、前後方向、左右方向、ピッチ方向、ヨー方向及びロール方向)の振動変化を夫々検出し、詳細な検出結果に基づく荷台振動情報を提示することが可能となる。
【0055】
更に、振動数及び振幅を指標とする振動データ、或いは、IRI値(IRI: International Roughness Index(国際ラフネス指数))等を指標とした振動値等を荷台振動情報として使用することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明は、荷台の積荷の荷傷みを防止するための荷台振動情報を運転者等に提示する荷台振動情報提示装置として、商品又は製品を輸送するトラック等の車両に車載される。本発明は、鉄道輸送等によって輸送される製品又は商品の荷傷みを防止するための装置に適用することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の荷台振動情報提示装置を車載した大型車両の全体構成を概略的に示す側面図である。
【図2】荷台振動情報提示装置を含む制御システムの全体構成を示すシステム構成図である。
【図3】荷台振動情報提示装置の制御形態を示すフローチャートである。
【図4】荷台振動情報提示装置の他の制御形態を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0058】
1 車両
2 キャブ
3 シャシフレーム
4 荷台(ボディ)
6 インストルメントパネル
10 荷台振動情報提示装置
11 加速度センサ(Gセンサ)
14 車速センサ
15 車高センサ
24 制御部
26 記憶部
30 情報提示部
31 モニター部
32 警報装置
41 運行記録計
42 GPS受信機
43 警告制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
積荷の荷傷みを防止すべく車両の荷台に配置された振動検出手段を有する荷台振動情報提示装置であって、
前記振動検出手段の検出結果に基づいて荷台の振動情報を検出し、振動情報を所定の時間間隔で時間平均することによって、所定時間毎の平均振動値を演算する制御部と、
前記平均振動値を記憶する記憶部と、
最新の平均振動値と直前の平均振動値又は所定の振動値とを比較し、平均振動値の変化を視覚情報又は聴覚情報として乗員に提示する情報提示部とを有することを特徴とする荷台振動情報提示装置。
【請求項2】
積荷の荷傷みを防止すべく車両の荷台に配置された振動検出手段を有する荷台振動情報提示装置であって、
前記振動検出手段の検出結果に基づいて荷台の振動情報を検出し、振動情報を所定の時間間隔で時間平均することによって、所定時間毎の平均振動値を演算する制御部と、
前記平均振動値を記憶する記憶部と、
荷台振動防止のための視覚情報又は聴覚情報を乗員に通知する情報提示部と、
荷台振動と関連した運行情報を記憶するとともに、GPSの車両位置情報が入力される警告制御部とを有し、
前記情報提示部は、振動発生の可能性が高い走路部分に車両が接近したことを前記警告制御部が検知すると、該走路部分に到達する前に前記視覚情報又は聴覚情報を乗員に通知することを特徴とする荷台振動情報提示装置。
【請求項3】
前記平均振動値の変化が所定範囲を超えたとき、或いは、所定値を超える過大な平均振動値が検出されたとき、乗員に視覚的又は聴覚的な警報を発する警報装置を更に有することを特徴とする請求項1又は2に記載の荷台振動情報提示装置。
【請求項4】
前記振動情報及び/又は前記平均振動値を系時的に記録する記録装置を更に備えることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の荷台振動情報提示装置。
【請求項5】
前記記録装置は、前記振動情報及び/又は前記平均振動値を運行情報とともに自動記録する運行記録計からなることを特徴とする請求項4に記載の荷台振動情報提示装置。
【請求項6】
前記振動検出手段は、荷台の所定位置に配置された複数の加速度センサからなり、前記平均振動値として、加速度センサの検出結果に基づいて検出された上下方向の加速度を時間平均した平均加速度が用いられることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の荷台振動情報提示装置。
【請求項7】
前記制御部は、車速センサ等の車速検出手段の検出結果に基づいて車速を検出するとともに、車高センサの検出結果に基づいて積荷の積載荷重を検出し、
車速及び積載荷重の情報と、前記振動検出手段の検出結果とに基づき、前記振動情報を検出し、前記平均振動値を演算することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の荷台振動情報提示装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2006−1292(P2006−1292A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−176479(P2004−176479)
【出願日】平成16年6月15日(2004.6.15)
【出願人】(000000170)いすゞ自動車株式会社 (1,721)