説明

荷役搬送用吊具及び荷役搬送装置

【課題】所定の搬送軌道に沿って作業エリアに搬出入する揚重物を、この作業エリアで2方向から安定して掛け替え懸吊することが可能であり、同時にその掛け替え作業が容易で安全である荷役搬送用吊具を提供する。
【解決手段】揚重物を所定の搬出入エリアから複数の作業エリアに搬送する際に、各作業エリアに搬送軌道を挟んで少なくとも一対の懸架部材を対向配置する。そしてこの第1第2懸架部材間に架橋支持する吊り天秤部材を、(1)その懸吊部に揚重物を支持する吊り下げ連結部と、巻上げ機に連結する吊上げ連結部を設ける。また(2)連結部を第懸架部材1に先端部が搬送軌道を横切るように摺動可能又は回動可能に支持する。更に(3)先端部は搬送軌道の反対側に位置する第2懸架部材に着脱可能に連結する。そして(4)上記懸吊部は第1第2懸架部材から分離可能に構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は大型機械、設備装置などの重量物を所定位置に吊り下げ搬送する荷役搬送装置及びこれに使用する荷役搬送用吊具に係わり、大型機械を所定の搬送エリアから作業エリアに搬送し、この重量物を分解修理などの作業に適した状態で吊り下げ支持する揚重構造の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、大型重量物(以下「揚重物」という)を所定の作業エリアに搬送し、この作業エリアで分解・修理などの作業に適した姿勢で吊り下げ支持する揚重構造は、例えば天井クレーンなどとして広く知られている。このような天井クレーンは重量物を所定の搬入エリアから作業エリアに吊下げ搬送する装置として広く知られている。
【0003】
例えば特許文献1には、工場などの建造物に左右一対のガーダを配置し、このガーダに横行レールを架橋し、この横行レールにトロリを装備して揚重物を吊り下げ搬送する揚重構造が開示されている。このように揚重物を走行レール方向と横行レール方向にX−Y両方向に移動する揚重構造は、揚重物を任意の位置から任意の位置に移動することが出来る特徴がある。また、工場その他の建造物の天井に走行レールを敷設して所定の搬送軌道を構成し、この軌道に沿って揚重物を吊り下げ搬送する設備装置も知られている。
【0004】
そしてこれらクレーンなどの揚重装置で重量物を搬送する場合には、例えば1基のクレーン装置で1つの重量物を搬入位置から作業位置に搬送し、その位置で所定の作業が終了した後、その重量物を搬出する。このような重量物の「搬入」、「作業(組立・分解など)」、「搬出」の一連の工程が終了した後、次の重量物を搬入する搬送方法が採られている。
【0005】
そこで、例えば工場などで複数の重量物を複数の作業エリアに搬入し、各作業エリアで所定の作業を並行して行う場合には、従来の天井クレーン構造を採用すると同一軌道或いは同一空間内で複数の重量物を移動しなければ成らず、その操縦が複雑で事故が発生する恐れがある。従って複数の作業エリアに同時に複数の重量物を搬出入する場合には作業エリア毎にそれぞれ搬出入口を設け、搬送用の天井クレーン或いはトレーラ軌道を配置している。
【特許文献1】特開平5−186182号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述のように、製造工場、修理工場などの建造物内に複数の作業エリアを配置し、各作業エリアで並行して製造或いは修理などの作業を行う場合には、従来は各作業エリアそれぞれに搬出入口を設け、重量物を搬送するクレーン、トレーラ軌道などの搬出入装置と、更に各作業エリアで重量物を吊り下げ支持する揚重設備を配置している。
【0007】
従って、設備スペースは製造或いは分解修理などの作業に要するスペースと重量物の搬出入に要するスペースが必要で膨大なものとなる。更に各作業エリアに搬出入装置(クレーン或いはトレーラ軌道)と重量物を吊り下げ支持する揚重設備が必要となり設備費用も膨大なものとなる問題があった。
【0008】
そこで本発明者は所定の搬入エリアから複数の作業エリアに重量物を搬送分配し、各作業エリアに配置した懸吊用の懸架部材に掛け替え懸吊することによって作業エリア毎に搬出入口と搬出入装置(クレーン設備など)を設ける必要がないとの知見に至った。この場合に作業エリアでは所定の搬送軌道に沿って移送された揚重物をこの軌道を挟んで左右2方向から牽引部材で安定した姿勢で懸吊する必要が生ずる。
【0009】
そこで本発明者は、揚重物を懸吊する吊り天秤部材を互いに分離可能に結合した第1、第2の吊り天秤部材で構成し、この両部材を結合した状態で揚重物を搬入エリアから作業エリアに搬入し、作業エリアで2つの天秤部材の一方を懸架部材に懸吊した後、これを分離することによって掛け替え懸吊することを案出し、先に特願2007−051864号として特許出願した。
【0010】
このように着脱自在の2つの吊り天秤部材を1セットとして揚重物の搬送(結合状態)と作業エリアでの懸吊(分離状態)に使い分けると広い工場設備内に天秤部材が散乱し、第1第2のセット状態が乱れて混乱することがある。
【0011】
そこで本発明者は、作業エリアで揚重物を2方向から安定して懸吊する際に、これを吊り下げ支持する吊り天秤構造を、搬送軌道を横切るように伸縮自在又は回動自在に構成して軌道を挟んで反対側に位置する懸架部材に連結することによって搬送軌道の両側2方向から揚重物を掛け替え懸吊することが可能との着想に至った。
【0012】
本発明は所定の搬送軌道に沿って作業エリアに搬出入する揚重物を、この作業エリアで2方向から安定して掛け替え懸吊することが可能であり、同時にその掛け替え作業が容易で安全である荷役搬送用吊具の提供をその主な課題としている。
更に本発明は、所定の搬出入エリアから複数の作業エリアに揚重物を分配搬送し、この作業エリアで作業に適した姿勢で懸吊支持することが可能な荷役搬送装置の提供をその課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を達成するため本発明は、揚重物を所定の搬出入エリアから複数の作業エリアに搬送する際に、各作業エリアに搬送軌道を挟んで少なくとも一対の懸架部材を対向配置する。そしてこの第1第2懸架部材間に架橋支持する吊り天秤部材を、(1)上記第1懸架部材に、先端部が上記搬送軌道を横切るように摺動可能又は回動可能に支持される基端部と、(2)上記搬送軌道の反対側に位置する上記第2懸架部材に着脱可能に連結支持される先端部と、(3)上記基端部と先端部との間に配置され、揚重物を連結支持する吊下げ連結部と、巻上げ機に連結する吊上げ連結部を有する懸吊部とから構成する。そして(4)この懸吊部を第1第2懸架部材から分離可能に構成する。これによって搬送軌道に沿って揚重物を搬出入する際には吊り天秤部材を搬送軌道の側部に位置する第1懸架部材に退避させ、揚重物が所定位置に搬入された後、この吊り天秤部材をスライド或いは回動させて先端部を搬送軌道の反対側に位置する第2懸架部材に連結する。この状態で揚重物を搬送軌道の走行トロリから吊り天秤部材に掛け替え懸吊することによって吊り天秤部材はこの作業エリアに格納され工場設備内に散乱することがない。以下その具体的構成について説明する。
【0014】
所定の搬送軌道に沿って搬入された揚重物(W)を作業エリア(B)で掛け替え懸吊する荷役搬送用吊具であって、上記搬送軌道(20)を挟んで対向配置された少なくとも一対の第1、第2懸架部材(30,35)と、この第1、第2懸架部材間に架橋支持される吊り天秤部材(40)とから構成する。この吊り天秤部材(40)を、(1)上記第1懸架部材(30)に、先端部が上記搬送軌道を横切るように摺動可能又は回動可能に支持する基端部(40a)と、(2)上記搬送軌道(20L)の反対側に位置する上記第2懸架部材(35)に着脱可能に連結支持される先端部(40b)と、(3)上記基端部と先端部との間に配置され、揚重物を連結支持する吊下げ連結部(40d)と、巻上げ機に連結する吊上げ連結部(40e)を有する懸吊部(40c)と、から構成する。そして(4)上記懸吊部(40c)は、上記第1懸架部材(30)及び第2懸架部材(35)から分離可能に構成する。
【0015】
前記第1、第2懸架部材(35)は、前記搬送軌道(20)と略々直交する方向で互いに対を形成するように配置し、この第1、第2懸架部材(35)は、前記搬送軌道(20)の方向に位置移動可能に固定レール部材(31、36)に支持する。
【0016】
前記第1懸架部材(30)には、前記搬送軌道(20)と略々直交する方向にカイドレールを設け、前記第2懸架部材(35)には、前記吊り天秤部材(40)の先端連結部と係合する連結支持部(38)を設け、前記吊り天秤部材(40)には、その連結部(40a)に上記ガイドレールと摺動自在に係合する基端連結部(41f)が、その先端部に上記連結支持部(38)に係脱可能に係合する先端連結部(42)を設け、この吊り天秤部材(40)は、前記吊下げ連結部(40d)と前記吊上げ連結部(40e)を有する懸吊部(40c)が上記基端連結部(41f)と先端連結部(42)から分離可能に構成する。
【0017】
前記吊り天秤部材(40)の懸吊部(40c)は、前記基端連結部(41f)と先端連結部(42)に、それぞれ係脱可能なジョイント手段を介して結合する。
【0018】
所定の搬入エリアから作業エリア(B)に揚重物(W)を吊り下げ搬送する搬送レールと、上記搬送レール(20L)に走行移動可能に装架された走行トロリ(21)と、上記作業エリア(B)に配置され上記搬送レール(20L)に沿って移送された揚重物(W)を掛け替え懸吊する吊り天秤部材(40)とを備え、上記作業エリア(B)には、上記搬送レール(20L)を挟んで対向配置された少なくとも一対の第1、第2の懸架部材を設ける。上記吊り天秤部材(40)は、(1)その連結部(40a)は、上記第1の懸架部材(30)に、先端部が上記搬送レール(20L)を横切るように摺動可能又は回動可能に支持し、(2)その先端部は、上記搬送レール(20L)の反対側に位置する上記第2の懸架部材(35)に結合及び離脱可能に連結し、(3)上記連結部(40a)は上記第1の懸架部材(30)から、上記先端部は上記第2の懸架部材(35)からそれぞれ分離可能に構成され、この吊り天秤部材(40)には上記揚重物(W)を連結支持する吊下げ連結部(40d)と、上記走行トロリ(21)に連結する吊上げ連結部(40e)を設ける。
【発明の効果】
【0019】
本発明は、揚重物の搬送軌道を挟んで対向配置された一対の懸架部材の一方に、吊り天秤部材の連結部を摺動可能又は回動可能に支持し、その先端部は搬送軌道を過ぎって反対側に位置する懸架部材に連結支持し、この状態で揚重物を掛け替え懸吊すると共に揚重物を吊り下げ支持する連結部と吊上げ連結部を有する天秤懸吊部を分離可能に構成したものであるから次の顕著な効果を奏する。
【0020】
揚重物を搬送軌道に沿って所定の作業エリアに搬入する際は、吊り天秤部材をこの軌道の一側部に位置する第1懸架部材に格納して(軌道から)退避させ、搬入後に吊り天秤部材を摺動又は回動することによって先端部が軌道を横過ぎって反対側に位置する第2懸架部材に連結支持し、この状態で揚重物を(搬送軌道の)走行トロリから吊り天秤部材に掛け替え懸吊することとなる。従って吊り天秤部材は作業エリアで搬送軌道の側部に退避した位置に格納され、揚重物の搬入後には軌道の左右2方向から揚重物を吊り下げ支持するため、大型大重量の揚重物を作業エリアで作業に適した個所を安定した姿勢で2方向から吊り下げ支持することが可能となる。
【0021】
また、揚重物の吊り換え作業は、例えば搬送軌道に沿って走行トロリで重心位置の1個所又は複数個所を吊り下げて搬入し、この状態で吊り天秤部材によって軌道を挟む2方向から揚重物を吊り下げ支持するため、安定した姿勢で安全に重量物を吊り換えることが出来る。
【0022】
このように本発明は揚重物を特定の搬入エリアから搬送軌道に沿って複数の作業エリアに分配搬送し、各作業エリアに配置された吊り天秤部材に吊り換え支持することが可能となり、作業エリアの省スペース化と同時に工場など建造物の敷地面積を効率的に活用することが可能となる。
【0023】
更に本発明は、複数の作業エリアでそれぞれ揚重物を吊り下げ支持する吊り天秤部材は、各作業エリアの天井部に配置された懸架部材に格納され、揚重物の搬出入の妨げとならず、搬入後には軌道を挟む2方向から揚重物を吊り下げ支持するため、吊り天秤部材が工場内に散乱することがない。
【0024】
また、吊り天秤部材は揚重物を連結支持する吊り下げ連結部と、巻き上げ機に連結する吊上げ連結部は、第1第2の懸架部材から分離可能に構成されているため、揚重物を第1第2懸架部材部材から切り離して例えば他の作業エリアに搬送することを至って簡単に行うことが出来る。
【0025】
尚、本発明にあって搬送軌道を挟んで対向する第1第2懸架部材を、適宜複数対配置することによって大型で長尺の揚重物を複数ユニットに分解する場合に各ユニットを個別に吊り下げ支持することが可能となる。これによって個別のユニットに解体する作業が容易であり、同時に個別のユニットを搬送軌道に沿って他の作業エリアに転送することも容易となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下図示の好適な実施の態様に基づいて本発明を詳述する。図1は本発明に係わる荷役搬送装置の全体レイアウト構成を示す概念説明図であり、図2はその要部の揚重物を吊り下げ搬送する搬送構造の正面説明図である。図3は作業エリアで揚重物Wを掛け替え懸吊する吊り天秤構造の説明図であり、天秤部材を搬送軌道外に退避させた状態を示す。図5は天秤部材を、搬送軌道を横切って架橋支持した状態を示す。
【0027】
[全体レイアウト構成]
まず本発明の荷役搬送装置を図1に示すレイアウト構成に基づいて説明する。図1は大型重量物を生産する生産工場、或いは大型重量物を分解、修理、保全する修理工場のレイアウトを示す。図示のレイアウト構成は、建造物10の所定位置に1個所(複数個所であっても良い)の搬出入エリアAを備え、この搬出入エリアAから搬入した揚重物Wを複数の作業エリアB1〜B4に分配搬送することを特徴としている。このため、搬出入エリアAから第1作業エリアB1、第2作業エリアB2など複数の作業エリアB1、B2、B3、B4に揚重物Wを搬送するための搬送軌道20が配置されている。この搬送軌道20は入出端20aから各作業エリアB1〜B4の搬送端20bに至る搬送レール20Lで構成され、この搬送レール20Lは例えば断面I型鋼で建造物10の天井などの堅牢な梁に敷設される。そしてこの搬送レール20Lに装架された走行トロリ21(その構造は後述する)で揚重物Wを搬送する。
【0028】
尚本発明にあって、搬出入エリアAから各作業エリアB1〜B4に所定の搬送軌道20に沿って揚重物Wを搬送するための搬送機構は、搬送レール20Lに嵌合した走行車輪を有する走行トロリ(例えばクラブトロリなど)21で構成するレール搬送機構か、或いは建造物10の天井に左右一対の走行レールを敷設し、この走行レールに架橋支持したガータを設け、このガーダに形成した横行レールに走行トロリを装架して揚重物WをY−Y方向に吊り下げ移送する天井クレーン機構であっても良い。以下前者のレール搬送機構について本発明を説明する。
【0029】
[荷役搬送装置の構成]
本発明の荷役搬送装置は、建造物10の搬出入エリアAと各作業エリアB1〜B4との間に敷設された搬送レール20Lと、この搬送レール20Lに装架された走行トロリ21と、この走行トロリ21に搭載された巻上機23と、各作業エリアB1〜B4に敷設された一対の懸架部材30、35と、この一対の懸架部材30、35間に架橋支持される吊り天秤部材40とから構成される。上記走行トロリ21と巻上機23の構成については後述する。
【0030】
そこで上記懸架部材30、35は搬送レール20Lに沿って吊り下げ搬送された揚重物Wを作業エリアBで吊り換え支持する為に各作業エリアB1〜B4に少なくとも一対装備(図示のものは4対)する。つまり揚重物Wはその重心位置が搬送軌道20の略々直下に位置するように上述の走行トロリ21で吊下げ搬送される。そこでこの揚重物Wを、搬送軌道20を挟んで左右2方向から懸吊することによって安定した姿勢が得られ、同時にその吊り換え作業も安全となる。このため図3に示すように懸架部材(以下「第1懸架部材」という)30は軌道右側に、懸架部材(以下「第2懸架部材」という)35は軌道左側に少なくとも一対配置されている。
【0031】
この第1,第2懸架部材30、35は建造物10の天井などに固定した梁状部材で構成しても良いが、図示のものは図2Y−Y方向(揚重物の長手方向)に敷設した固定レール(以下「作業レール」という)31、36に走行トロリ32、37で位置移動可能に装架してある。これは左右一対の懸架部材30、35の位置(吊下げ位置)を揚重物Wに付設されている牽引フックWfに位置合わせする為と、吊下げ後の揚重物WをY−Y方向に位置移動するためである。従って揚重物Wを吊下げ後に位置移動する必要のない場合には第1,第2懸架部材30,35を建造物10の天井などに固定(固定構造)して設置しても良い。
【0032】
上記作業レール31、36は各作業エリアB1、B2、B3、B4に搬送軌道20を挟んで右側に作業レール31a、31bが、左側に作業レール36a、36bが所定の間隔を隔てて敷設されている(図1及び図3参照)。この作業レール31、36は搬送軌道20と略々並行で、そのレール長さは作業エリアBでの作業に適した長さに形成する。この右側の作業レール31a、31bに第1懸架部材30が走行トロリ32a、32bで装架され、左側の作業レール36a、36bに第2懸架部材35が走行トロリ37a、37bで装架されている。
【0033】
このように第1懸架部材30と第2懸架部材35とは、搬送軌道20を挟んで軌道スパンSLを形成して左右対向配置されている。この第1,第2懸架部材30、35と上記作業レール31、36は適宜断面形状のビーム鋼で形成され、揚重物Wの重量を支えるように堅牢に建造物10の天井などに設置されている。そしてこの第1,第2懸架部材30、35に架橋支持した下記の吊り天秤部材40で揚重物Wを吊り下げ支持する。
【0034】
[吊り天秤部材の構成]
上述の第1,第2懸架部材30、35には次の吊り天秤部材40が架橋支持される。この吊り天秤部材40は、前述の軌道スパンSLより長いビーム鋼で構成され、その連結部40aを第1懸架部材30に、先端部40bを第2懸架部材35に連結支持される。そしてこの吊り天秤部材40は搬送軌道20に沿って揚重物Wを作業エリアBに搬出入するときは、この搬送軌道20から退避するように第1懸架部材30側に格納され、揚重物Wの搬入後は搬送軌道20を横切って反対側の第2懸架部材35にその先端部40bを連結するように構成される。
【0035】
そこで吊り天秤部材40は、(1)その連結部40aを第1懸架部材30に摺動自在又は回動自在に支持する。(2)その先端部40bを、搬送軌道20を横切って反対側の第2懸架部材35に離脱可能に連結する。(3)その懸吊部40cに揚重物を吊下げ支持する吊下げ連結部40dと、後述する巻上機23に連結する吊上げ連結部40eを設ける。そして(4)吊り天秤部材40は、その懸吊部40cを第1懸架部材30及び第2懸架部材35から分離可能に構成する。その各構成について図4に基づいて説明する。
【0036】
図4は吊り天秤部材(以下単に「天秤部材」という)40の連結部40aと第1懸架部材30の連結構造を示す。第1懸架部材30には軌道スパンSLより長いガイドレール(I形鋼の下端フランジ部)32gが一体に設けられ、このガイドレール32gに天秤部材40の連結部40aが第1トロリ41aと第2トロリ41bで摺動自在に嵌合支持されている。この第1、第2トロリ41a、41bはそれぞれの車輪41rがガイドレール32gに嵌合支持され、天秤部材40の連結部40aに結合されている。そして第1トロリ41aには高さ位置調整機構41eのアジャスタバネと位置決めボルトが設けられている。これは第1、第2トロリ41a、41bの高さ位置をガイドレール32gに適合させる為であり、いずれか一方側に配置すれば良い。また、上記第2トロリ41bは天秤部材40に取付けた基端ジョイント機構41fに連結してある。これは天秤部材40の懸吊部40cを連結部40aから分離(その構成は後述する)する為である。
【0037】
上述のように第1懸架部材30に摺動自在に装架した天秤部材40には、これを位置決めロックするロック機構33と、第1懸架部材30に沿って摺動移動する駆動操作機構34が備えられている。ロック機構33は上述の第2トロリ41bに設けたストッパ(折曲げ片)33aと、これに係脱自在に歯合するロック爪33bと、このロック爪33bを付勢する付勢バネ(不図示)とで構成されている。このロック爪33bは第1懸架部材30に揺動(回動)自在に軸支持され、第2トロリ41bに設けられたストッパ(第1トロリに設けても良い)33aに係合することによって天秤部材40をその位置に係止ロックする。そしてこのロック爪33bは天秤部材40の先端部40bが搬送軌道20から退避した格納位置でストッパ33aと係合する位置に配置されている。
【0038】
また、上記ロック爪33bにはストッパ33aとの係合を解除する操作ワイヤ33cが連結されハンドルレバー33d(図3参照)を握ることによってロック爪33bがストッパ33aから離脱するようになっている。従って第1懸架部材30に摺動自在に装備された天秤部材40は搬送軌道20から退避した格納位置(図3の状態)でロック機構33によって係止され、ハンドル操作でロック解除してこれを摺動すると先端部40bが搬送軌道20を横切って第2懸架部材35側に移動することとなる。この位置(吊り位置)では先端部40bが第2懸架部材35に連結されることによってその位置に保持される(図5の状態)。
【0039】
上記駆動操作機構34は天秤部材40を第1懸架部材30のガイドレール32gに沿って図4左右方向に移動するように構成される。図示のものは第1懸架部材30に滑車34aが設けられ、この滑車34aとオペレータの操作位置との間に操作紐(ワイヤ、チェンなど)34bが掛け渡してある。そして操作紐34bは第1トロリ41aのフレームに固定ボルト34cで連結され、ループ状の操作紐の引っ張り方向によって第1、第2トロリ41a、41bを図4左右いずれかの方向に移動するように構成されている。
【0040】
図5は天秤部材40の先端部40bを第2懸架部材35に連結した状態を示す。天秤部材40の先端部40bには先端ジョイント機構42が設けられ、第2懸架部材35にはジョイント受け機構38が設けられ、それぞれが着脱自在に連結及び離脱するように構成されている。先端ジョイント機構42はクランプ部材42aと、結合扞42bと着脱操作レバー42cで構成されている。またジョイント受け機構38は嵌合部38aと、ロック爪38bとインデックスプランジャ38cとで構成されている。
【0041】
上記先端ジョイント機構42は、連結扞42bの一端を天秤部材40の先端部40bに着脱自在に結合し、この連結扞42bの他端部を第2懸架部材35のジョイント受け機構38に着脱自在に連結するように構成されている。つまり図6(b)に示すように連結扞42bには上下端部に連結孔42x、42yが設けられ、その下端連結孔42xに天秤部材40のクランプピン42zが嵌合し、上端連結孔42yに第2懸架部材35の嵌合部38aが嵌合するようになっている。
【0042】
天秤部材40の先端部40bには連結用のブラケット42qが溶接などで一体成形され、このブラケット42qに連結扞42bの下端部を挿入する係合凹部が設けられている。そして天秤部材40の先端部40bにはブラケット42qと連結扞42bの連結孔42xを貫通するクランプピン42zが互いを連結するように設けられている。このクランプピン42zには操作レバー42cが設けられ図6(c)の連結状態から図8(a)の離脱状態にクランクピン42zが出没するように構成されている。図示42dはクランプピン42zの高さ位置を調整する高さ位置調整機構であり、アジャスタバネと位置決めボルトで構成されている。従って連結扞42bは、その下端連結孔42xで天秤部材40の先端部40bに着脱自在に結合されることとなる。
【0043】
一方、第2懸架部材35のジョイント受け機構38は、上述の連結扞42bの上端連結孔42yが嵌合する嵌合部38aで構成されている。この嵌合部38aには図6(a)に示すように上端連結孔42yの嵌合を案内する傾斜ガイド面38xが設けられている。また、第2懸架部材35には、ロック爪38bが連結扞42bを係止ロックするように揺動自在に配置されている。このロック爪38bには、図示しない付勢バネで図6(b)矢示方向に付勢され、このバネに抗して矢示反対方向に退避する傾斜カム面38yが設けられている。従って、連結扞42bがガイド面38xに沿って進入する際には、その上端縁がロック爪38bの傾斜カム面38yに係合し、このロック爪38bは上方に押し上げて退避する。そして互いに嵌合した後は、付勢バネ(不図示)で同図矢印方向に揺動して連結扞42bの上端部を係止ロックすることとなる。尚図示38cはインデックスプランジャであり、ロック爪38bと協働して連結扞42bの位置を規制する。上記ロック爪38bには、操作紐39が連結され、この操作紐39の先端レバー39rを操作することによってロック爪38bの係止を解除するようになっている。
【0044】
上述の天秤部材40の懸吊部40cには、揚重物Wを吊り下げ支持する吊下げ連結部40dと、巻上機23に連結する吊上げ連結部40eが設けられている。図5に示すように天秤部材40の略々懸吊部には第1懸吊部材46aが、左右端には第2、第3懸吊部材が46b、46cがボルトなどで一体形成されている。この各懸吊部材46a、46b、46cには吊下げ連結孔40dが設けられ、中央に位置する第1懸吊部材46aには吊上げ連結孔40eが設けられている。この吊下げ連結孔40dには揚重物Wに連結した牽引部材(ワイヤ、チェンなど)が例えばシャックルなどで連結される。また吊上げ連結孔40eは巻上機23の牽引部材に連結する。そして揚重物Wを1点で懸吊するときには第1懸吊部材46aの吊下げ連結孔40dで、また2点で懸吊するときには第2、第3懸吊部材46b、46cの吊下げ連結孔40dで吊り下げ支持する。
【0045】
[天秤部材の分割]
上記天秤部材40は、連結部40aを有する固定支持部材40Pと、懸吊部40cを有する可搬部材40Qとで分離可能に別部材で構成されている。つまり図7及び図8に示すように天秤部材40は2つの部材を連結して構成され、その一方の固定支持部材40Pは第1懸架部材30に摺動自在に支持され、他方の可搬部材40Qは、他の作業エリアBに搬送可能となっている。このため、固定支持部材40Pと可搬部材40Qとは基端ジョイント機構41fで離脱可能に連結されている。この基端ジョイント機構41fは、連結ピン41gと、この連結ピン41gを係脱するクランプ部材41hと、操作レバー41iで構成されている。
【0046】
つまり図8に示すように固定支持部材40Pにブラケット41jが固定され、このブラケット41jに前述の第2トロリ41bが連結されている。このブラケット41jには可搬部材40Qを表裏からクランプするクランプ部材41hが設けられ、このクランプ部材41hに連結ピン41gが植設されている。そして可搬部材40Qにはこの連結ピン41gと係合する嵌合孔(不図示)が穿設されている。また上記クランプ部材41hには操作レバー41iが設けられ連結ピン41gをクランプ状態(図8(a)と解除状態(図8(b)に切換えるように構成されている。
【0047】
[搬送レールのトロリ構造]
次に搬送レール20Lに揚重物Mを吊り下げ支持するクレーン構造について説明する。
図9に示すように、上述の搬送レール20Lは例えば断面I型鋼などでレール面20r、20qが設けられている。そこでこの搬送レール20Lに沿って揚重物Mを吊り下げた状態で走行トロリ21が装架される。この走行トロリ21としては種々の構造が知られているが図示のものは断面I型形状の搬送レール20Lのレール面20r、20qに装架された自走式トロリを示す。
【0048】
上記走行トロリ21は、ユニットフレーム26に一対の走行輪27a、27b及び27c、27dがそれぞれ回転軸に回動自在に軸受け支持され、この走行輪27a、27bがレール面20rに、走行輪27c、27dがレール面20qに係合支持されるようになっている。つまりユニットフレーム26はI型レール(搬送レール)を挟むように断面U字状に構成され、このユニットフレーム26の対向側壁にそれぞれ走行輪27a、27b及び27c、27dが軸受け支持されている。そしてユニットフレーム26には走行モータMO1が搭載され、この走行モータMO1は走行輪27aの回転軸を駆動回転するようになっている。尚、図示24a、24bは左右一対のガイドコロであり搬送レール20Lのレール側面に係合して摺動回転するように上記ユニットフレーム26に軸支持されている。図示24cは電装ボックスである。従って走行トロリ21は搬送レール20Lに走行輪27a、27b及び27c、27dで装架され、走行モータMO1でレール面20r、20qに沿って自走することなる。そして上記ユニットフレーム26には揚重物Mを吊り下げ支持する巻上機23が連結扞23Jを介して連結されている。
【0049】
[巻上機の構成]
上記巻上機23は、通常のホイストで構成されている。図9に示すようにこの巻上機23はユニットフレーム23Uに軸承した駆動回転軸(不図示)にロードシーブ23rが設けられ、この駆動回転軸に減速歯車を介して巻上げモータMO2を連結して構成し、図示しないブレーキ、リミットスイッチなどが内蔵されている。そしてユニットフレーム23Uは、その上方を前記走行トロリ21に連結してあり、上記ロードシーブ23rにはロードチェーン25が歯合してある。従って巻上げモータMO2を正逆転することによって駆動回転軸(不図示)が正逆転し、これに取付けたロードシーブ23rに歯合されたロードチェーン25が上下動することとなる。そこでロードチェーン25の下端部にはフック25fが連結され、上述の天秤部材40を掛け止め支持する。
【0050】
[荷役搬送装置の作用]
次に上述の荷役搬送装置及び吊具の作用について「揚重物の搬出入」「揚重物の吊り換え」「揚重物の分解・組立」「揚重物の転送」の順に説明する。
【0051】
「揚重物の搬出入」
図1で説明したレイアウト構成において、揚重物Wを搬出入エリアAから作業エリアBに搬入する場合を説明する。このとき、各作業エリアB1、B2、B3、B4に配置されている天秤部材40は第1懸架部材30側の格納位置に待機させる。この状態を図3に示すが、天秤部材40は第1懸架部材30に図示状態に操作紐34bで移動されロック機構33で係止ロックされている。この状態では天秤部材40の先端部40bは搬送軌道20から離れた位置に待機し、不用意に移動することはない。従って揚重物Wを走行トロリ21で移動しても揚重物Wが天秤部材40に衝突することがない
【0052】
尚、この格納位置で天秤部材40の先端ジョイント機構42の連結扞42bはその上端連結孔42yが第1懸架部材30の先端に設けられている傾斜嵌合部32kに嵌合して位置保持されている(図3参照)。
【0053】
そこで揚重物Wを搬送レール20Lに装備されている走行トロリ21の巻上機23にチェーンなどの牽引部材で吊り下げ支持する。そして走行トロリ21を駆動モータMO1で駆動し、所定の作業エリアBに移動する(図2の状態)。
【0054】
「揚重物の吊り換え」
所定の作業エリアBに揚重物Wが移送されると走行トロリ21を停止し、制動ブレーキで位置保持する。そこで揚重物Wを懸吊している牽引部材と緩衝しない位置に天秤部材40を作業レール31、36に沿って移動する。例えば図示のように揚重物Wを搬送方向前後4個所で吊り下げ支持するときには、各天秤部材40を揚重物Wに付設されている4個所の牽引フックWf位置に天秤部材40を図2Y−Y方向に移動する。この天秤部材40の移動はオペレータが手動で移動するか、或いは走行トロリ32、37に駆動モータを内蔵(不図示)して、これで移動する。
【0055】
次にオペレータは、ハンドルレバー33dを把持操作してロック爪33bを解除する。すると天秤部材40は第1懸架部材30のガイドレール32gに沿って移動可能(フリー)となる。そこで操作紐34bを操作して天秤部材40の先端部40bを、搬送軌道20を横切って反対側の第2懸架部材35側に移動する。
【0056】
この天秤部材40の先端部40bが搬送軌道20を横切った状態を図5に示すが、先端部40bはガイドレール32gに沿って移動する際に、前述の連結扞42bの上端連結孔42yが第2懸架部材35の嵌合部38aに嵌合する。そして連結扞42bはロック爪38bで係止ロックされる。この状態で天秤部材40は連結部40aを第1懸架部材30に第1,第2トロリ41a、41bを介して支持され、先端部40bを第2懸架部材35に連結扞42bを介して支持されることとなる。従って天秤部材40は第1,第2懸架部材30、35に架橋支持され、揚重物Wの重量は、懸吊部材46次いで天秤部材40、第1,第2懸架部材30、35更に作業レール31、36を介して建造物10の天井に支持されることとなる。
【0057】
そこで、作業者は天秤部材40の懸吊部40cに位置する吊下げ連結孔40dと揚重物Wに付設されている牽引フックWfをチェーンなどの牽引部材で連結する。このとき揚重物Wは搬送レール20Lの走行トロリ21に装備されている巻上機23で懸吊している。この天秤部材40の懸吊部材46と揚重物Wの1個所又は複数個所を牽引部材で連結する作業の後、走行トロリ21の巻上機23を操作して揚重物Wの荷重を走行トロリ21から天秤部材40に徐々にシフトする。
【0058】
これによって揚重物Wは走行トロリ21及び搬送レール20Lから天秤部材40に吊り換えられ、その荷重は懸吊部材46を介して天秤部材40と、これを架橋支持している第1、第2懸架部材30、35に支持されることとなる。そこで走行トロリ21の牽引部材を揚重物Wの牽引フックWfから取り外す。その後、走行トロリ21は搬出入エリアAに戻り、後続する次の揚重物Wを先と異なる作業エリアBに搬送する。その手順は上述と同様である。
【0059】
「揚重物の分解・組立」
図5に天秤部材40に揚重物Wを吊り下げ支持した状態を示すが、この状態で揚重物Wは1個所若しくは複数個所(図示のものは4個所)を天秤部材40に吊り下げ支持されている。そこで、例えば揚重物Wを分解修理する場合は、作業エリアBで分解作業を実施し、揚重物Wをユニットに分解する。また、作業エリアBで組立作業を実施する場合には前述した手順で搬出入エリアAから所定の作業エリアBに揚重物(ユニット)Wを搬送し、天秤部材40に掛け替え懸吊する。このように順次搬入された揚重物(ユニット)Wを組立てる。
【0060】
上述のように各作業エリアで分解或いは組立など所定の作業を実施する際に揚重物(ユニット)Wは作業レール31、36に沿って移動し、複数の揚重物(ユニット)相互の間隔を作業に適するように移動する。このときは各ユニットを吊下げ支持している天秤部材40を作業レール31、36に沿って例えば作業者が手動で移動する。
【0061】
「揚重物の転送」
そこで、分解或いは組立てた揚重物(ユニット)Wを別の作業エリアBに転送する場合、或いは修理・組立作業後の揚重物Wを搬出入エリアAに搬送する場合には、図7に示すように吊り天秤部材40を第1,第2懸架部材30,35から分離する。この分離作業は、揚重物(ユニット或いは完成物)Wの吊上げ連結孔40e(複数の場合は選択された1つ又は2つの連結孔)位置に、搬送レール20Lに装備されている走行トロリ21を移動する。そしてこの走行トロリ21の巻上機23と吊上げ連結孔40eとを牽引部材で連結する。この連結後に巻上機23で天秤部材40の懸吊部材46を吊上げる。すると天秤部材40と揚重物Wとを連結している牽引部材は緩み、揚重物Wの重量は巻上機23で吊り下げ支持される。
【0062】
次に天秤部材40と揚重物Wとを連結している牽引部材を取り外す。そして天秤部材40の連結部40aは、基端ジョイント機構41fの連結ピン41gを可搬部材40Qの係合孔から外してクランプ解除する。これと同時に天秤部材40の先端部40bは先端ジョイント機構42の連結扞42bの連結孔42xに嵌合連結しているクランプピン42zを取り外す。すると天秤部材40は図7の状態に可搬部材40Qのみが分離され、揚重物Wはこの可搬部材40Qに吊り下げ支持されることとなる。
【0063】
この状態で残りの天秤部材(揚重物の搬送に使用しない部材)40Pは、その先端部を搬送軌道20から第1懸架部材30側に退避させる。このため作業者はレバー39rを操作してロック爪38bを操作し、天秤部材40の先端ジョイント機構42(連結扞42bの係止)をロック解除する。このロック解除の後、使用者は操作紐34bを操作して天秤部材40を図3の格納位置に移動する。このように天秤部材40を可搬部材40Qに分離して揚重物Wを所定位置に移動した後、この可搬部材40Qは元の作業エリアに戻り、図3の状態に格納位置に格納される。
【0064】
尚、本発明にあって、吊り天秤部材40の先端部40bを搬送軌道20から退避させて格納し、揚重物Wの搬入後に搬送軌道20を横切って反対側に位置する第2懸架部材35に連結する際に、この天秤部材40の連結部40aを第1懸架部材30に摺動自在に連結する場合について説明したが、この吊り天秤部材40の連結部40aを第1懸架部材30に回動自在に軸支持しても良い。この場合には、例えば第1懸架部材30に軸受け部を設け、この軸受け部に吊り天秤部材40の連結部40aを回動ピンで軸支持する。これによって吊り天秤部材40は回動ピンを中心に所定角度(例えば90度〜180度)回転させることによって天秤先端部40bは搬送軌道20から退避した位置(格納位置)と搬送軌道20を横切って反対側に位置する第2懸架部材35に架橋(連結位置)させることが出来る。
【0065】
また、本発明にあって天秤部材40で揚重物Wを作業エリア以外の他の作業エリアに移送するために、天秤部材40を可搬部材40Qと固定支持部材40Pに分離する場合について説明したが、天秤部材全体を第1懸架部材30に例えば第1トロリ41aと第2トロリ41bに着脱自在に連結し、同様に第2懸架部材35のジョイント受け機構38に着脱自在に連結しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明に係わる荷役搬送装置の全体レイアウト構成を示す概念図。
【図2】図1の装置における搬送レール構造と作業レール構造を示す説明図であり揚重物を搬送軌道に沿って搬送する状態を示す。
【図3】図2の装置における搬送用吊具の構成を示す説明図であり、吊り天秤部材の格納状態を示す。
【図4】図3の装置における要部の拡大説明図。
【図5】図3の装置において揚重物を吊り天秤部材に掛け替え懸吊した状態の説明図であり、(a)はその全体構成図、(b)は先端連結部の連結状態の説明図。
【図6】図3の装置における吊り天秤部材の先端連結状態の説明図であり、(a)は懸架部材に結合した状態を、(b)はその結合状態の側面構成を、(c)は先端クランプ状態を示す。
【図7】図3の装置において吊り天秤部材(可搬部材)を第1第2懸架部材から分離した状態の説明図。
【図8】図7の装置状態における天秤部材(可搬部材)を分離可能に連結するジョイント構造の説明図であり、(a)は結合状態を、(b)は分離状態を示す。
【図9】図1の装置における搬送レールと走行トロリと巻上げ機の構成を示す説明図。
【符号の説明】
【0067】
A 搬出入エリア
B 作業エリア
W 揚重物
20 搬送軌道
20L 搬送レール
21 走行トロリ
23 巻上機
30 第1懸架部材
31 固定レール(作業レール)(31a、31b)
32 走行トロリ(32a、32b)
32g ガイドレール
33 ロック機構
33a ストッパ(折曲げ片)
33b ロック爪
33c 操作ワイヤ
33d ハンドルレバー
34 駆動操作機構
34b 操作紐
35 第2懸架部材
36 固定レール(作業レール)(36a、36b)
37 走行トロリ(37a、37b)
38 ジョイント受け機構
38a 嵌合部
38b ロック爪
38c インデックスプランジャ
38x 傾斜ガイド面
38y 傾斜カム面
40 吊り天秤部材(天秤部材)
40a 連結部
40b 先端部
40c 懸吊部
40P 固定支持部材
40Q 可搬部材
41a 第1トロリ
41b 第2トロリ
41e 高さ位置調整機構
41f 基端ジョイント機構
41g 連結ピン
41h クランプ部材
41i 操作レバー
41j ブラケット
42 先端ジョイント機構
42a クランプ部材
42b 結合扞
42c 着脱操作レバー
42d 高さ位置調整機構
42q ブラケット
42z クランプピン
46a 第1懸吊部材
46b 第2懸吊部材
46c 第3懸吊部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の搬送軌道に沿って搬入された揚重物を作業エリアで掛け替え懸吊する荷役搬送用吊具であって、
上記搬送軌道を挟んで対向配置された少なくとも一対の第1、第2懸架部材と、
この第1、第2懸架部材間に架橋支持される吊り天秤部材と、を備え、
上記吊り天秤部材は、
(1)上記第1懸架部材に、先端部が上記搬送軌道を横切るように摺動可能又は回動可能に支持される基端部と、
(2)上記搬送軌道の反対側に位置する上記第2懸架部材に着脱可能に連結支持される先端部と、
(3)上記基端部と先端部との間に配置され、揚重物を連結支持する吊下げ連結部と、巻上げ機に連結する吊上げ連結部を有する懸吊部と、
から構成され、
上記懸吊部は、上記第1懸架部材及び第2懸架部材から分離可能に構成されていることを特徴とする荷役搬送用吊具。
【請求項2】
前記第1、第2懸架部材は、前記搬送軌道と略々直交する方向で互いに対を形成するように配置され、
この第1、第2懸架部材は、前記搬送軌道の方向に位置移動可能に固定レール部材に支持されていることを特徴とする請求項1に記載の荷役搬送用吊具。
【請求項3】
前記第1懸架部材には、前記搬送軌道と略々直交する方向にガイドレールが設けられ、
前記第2懸架部材には、前記吊り天秤部材の先端部と係合する連結支持部が設けられ、
前記吊り天秤部材には、その基端部に上記ガイドレールと摺動自在に係合する基端連結部が、その先端部に上記連結支持部に係脱可能に係合する先端連結部が設けられ、
この吊り天秤部材は、前記吊下げ連結部と前記吊上げ連結部を有する懸吊部が上記基端連結部と先端連結部から分離可能に構成されていることを特徴とする請求項1に記載の荷役搬送用吊具。
【請求項4】
前記吊り天秤部材の懸吊部は、前記基端連結部と先端連結部に、それぞれ係脱可能なジョイント手段を介して結合されていることを特徴とする請求項3に記載の荷役搬送用吊具。
【請求項5】
所定の搬入エリアから作業エリアに揚重物を吊り下げ搬送する搬送レールと、
上記搬送レールに走行移動可能に装架された走行トロリと、
上記作業エリアに配置され上記搬送レールに沿って移送された揚重物を掛け替え懸吊する吊り天秤部材と、を備え、
上記作業エリアには、上記搬送レールを挟んで対向配置された少なくとも一対の第1、第2の懸架部材が設けられ、
上記吊り天秤部材は、
(1)上記第1懸架部材に、先端部が上記搬送軌道を横切るように摺動可能又は回動可能に支持される基端部と、
(2)上記搬送軌道の反対側に位置する上記第2懸架部材に着脱可能に連結支持される先端部と、
から構成され、
この吊り天秤部材には上記揚重物を連結支持する吊下げ連結部と、上記走行トロリに連結する吊上げ連結部が設けられていることを特徴とする荷役搬送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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