説明

荷役搬送用吊具及び荷役搬送装置

【課題】所定の搬送軌道に沿って作業エリアに搬出入する揚重物を、この作業エリアで2方向から安定して掛け替え懸吊することが可能であり、同時にその掛け替え作業が容易で安全である荷役搬送用吊具を提供する。
【解決手段】揚重物を所定の搬出入エリアから複数の作業エリアに搬送する際に、各作業エリアに搬送軌道を挟んで少なくとも一対の懸架部材を対向配置する。そして揚重物を吊り下げ支持する吊り天秤部材を、第1第2の懸架部材間に架橋支持する架橋部材と、揚重物を吊下げ支持する懸吊部材で構成する。そして架橋部材は、その基端部を第1懸架部材に先端部が搬送軌道を横切るように摺動自在又は回動自在に支持すると共にその先端部を上記搬送軌道の反対側に位置する第2懸架部材に着脱可能に連結支持する。そこでこの架橋部材に懸吊部材を離脱(分離)可能に連結し、これに揚重物を連結支持する吊下げ連結部と巻上げ機に連結する吊上げ連結部を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は大型機械、設備装置などの重量物を所定位置に吊り下げ搬送する荷役搬送装置及びこれに使用する荷役搬送用吊具に係わり、大型機械を所定の搬送エリアから作業エリアに搬送し、この重量物を分解修理などの作業に適した状態で吊り下げ支持する揚重構造の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、大型重量物(以下「揚重物」という)を所定の作業エリアに搬送し、この作業エリアで分解・修理などの作業に適した姿勢で吊り下げ支持する揚重構造は、例えば天井クレーンなどとして広く知られている。このような天井クレーンは重量物を所定の搬入エリアから作業エリアに吊下げ搬送する装置として広く知られている。
【0003】
例えば特許文献1には、工場などの建造物に左右一対のガーダを配置し、このガーダに横行レールを架橋し、この横行レールにトロリを装備して揚重物を吊り下げ搬送する揚重構造が開示されている。このように揚重物を走行レール方向と横行レール方向にX−Y両方向に移動する揚重構造は、揚重物を任意の位置から任意の位置に移動することが出来る特徴がある。また、工場その他の建造物の天井に走行レールを敷設して所定の搬送軌道を構成し、この軌道に沿って揚重物を吊り下げ搬送する設備装置も知られている。
【0004】
そしてこれらクレーンなどの揚重装置で重量物を搬送する場合には、例えば1基のクレーン装置で1つの重量物を搬入位置から作業位置に搬送し、その位置で所定の作業が終了した後、その重量物を搬出する。このような重量物の「搬入」、「作業(組立・分解など)」、「搬出」の一連の工程が終了した後、次の重量物を搬入する搬送方法が採られている。
【0005】
そこで、例えば工場などで複数の重量物を複数の作業エリアに搬入し、各作業エリアで所定の作業を並行して行う場合には、従来の天井クレーン構造を採用すると同一軌道或いは同一空間内で複数の重量物を移動しなければ成らず、その操縦が複雑で事故が発生する恐れがある。従って複数の作業エリアに同時に複数の重量物を搬出入する場合には作業エリア毎にそれぞれ搬出入口を設け、搬送用の天井クレーン或いはトレーラ軌道を配置している。
【特許文献1】特開平5−186182号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述のように、製造工場、修理工場などの建造物内に複数の作業エリアを配置し、各作業エリアで並行して製造或いは修理などの作業を行う場合には、従来は各作業エリアそれぞれに搬出入口を設け、重量物を搬送するクレーン、トレーラ軌道などの搬出入装置と、更に各作業エリアで重量物を吊り下げ支持する揚重設備を配置している。
【0007】
従って、設備スペースは製造或いは分解修理などの作業に要するスペースと重量物の搬出入に要するスペースが必要で膨大なものとなる。更に各作業エリアに搬出入装置(クレーン或いはトレーラ軌道)と重量物を吊り下げ支持する揚重設備が必要となり設備費用も膨大なものとなる問題があった。
【0008】
そこで本発明者は所定の搬入エリアから複数の作業エリアに重量物を搬送分配し、各作業エリアに配置した懸吊用の懸架部材に掛け替え懸吊することによって作業エリア毎に搬出入口と搬出入装置(クレーン設備など)を設ける必要がないとの知見に至った。この場合に作業エリアでは所定の搬送軌道に沿って移送された揚重物をこの軌道を挟んで左右2方向から牽引部材で安定した姿勢で懸吊する必要が生ずる。
【0009】
そこで本発明者は、揚重物を懸吊する吊り天秤部材を互いに分離可能に結合した第1、第2の吊り天秤部材で構成し、この両部材を結合した状態で揚重物を搬入エリアから作業エリアに搬入し、作業エリアで2つの天秤部材の一方を懸架部材に懸吊した後、これを分離することによって掛け替え懸吊することを案出し、先に特願2007−051864号として特許出願した。
【0010】
このように着脱自在の2つの吊り天秤部材を1セットとして揚重物の搬送(結合状態)と作業エリアでの懸吊(分離状態)に使い分けると広い工場設備内に天秤部材が散乱し、第1第2のセット状態が乱れて混乱することがある。
【0011】
そこで本発明者は、作業エリアで揚重物を2方向から安定して懸吊する際に、これを吊り下げ支持する吊り天秤構造を、搬送軌道を横切るように伸縮自在又は回動自在に構成して軌道を挟んで反対側に位置する懸架部材に連結することによって搬送軌道の両側2方向から揚重物を掛け替え懸吊することが可能との着想に至った。
【0012】
更に、本発明者はこの場合に作業エリアで搬送軌道の左右2方向から揚重物を支持する部材と、揚重物を吊下げ搬送する部材を分離して離脱可能に連結することにより、作業エリアから揚重物を搬出する際にその作業が容易であるとの着想に至った。
【0013】
本発明は所定の搬送軌道に沿って作業エリアに搬出入する揚重物を、この作業エリアで2方向から安定して掛け替え懸吊することが可能であり、同時にその掛け替え作業が容易で安全である荷役搬送用吊具の提供をその主な課題としている。
更に本発明は、作業エリアに搬入された揚重物を安定した2方向から作業レールに吊り換え支持すると共に揚重物をこの作業エリアから搬出する際に搬送レールに容易に吊り換えることが可能な荷役搬送用吊具の提供をその課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を達成するため本発明は、揚重物を所定の搬出入エリアから複数の作業エリアに搬送する際に、各作業エリアに搬送軌道を挟んで少なくとも一対の懸架部材を対向配置する。そして揚重物を吊り下げ支持する吊り天秤部材を、第1第2の懸架部材間に架橋支持する架橋部材と、揚重物を吊下げ支持する懸吊部材で構成する。そして架橋部材は、その基端部を第1懸架部材に先端部が搬送軌道を横切るように摺動自在又は回動自在に支持すると共にその先端部を上記搬送軌道の反対側に位置する第2懸架部材に着脱可能に連結支持する。そこでこの架橋部材に懸吊部材を離脱(分離)可能に連結し、これに揚重物を連結支持する吊下げ連結部と、巻上機に連結する吊上げ連結部を設ける。以下その具体的構成について説明する。
【0015】
所定の搬送軌道に沿って搬入された揚重物を作業エリアで掛け替え懸吊する荷役搬送用吊具であって、上記搬送軌道を挟んで対向配置された少なくとも一対の第1、第2懸架部材(30、35)と、この第1、第2懸架部材間に架橋支持される吊り天秤部材(40)(40)とを備える。上記吊り天秤部材(40)は、上記第1、第2懸架部材間に架橋支持される架橋部材(40A)と、揚重物を吊下げ支持する懸吊部材(40B)とで構成する。この架橋部材(40A)は、その基端部を上記第1懸架部材に先端部が上記搬送軌道を横切るように摺動自在又は回動自在に支持すると共に、その先端部を上記搬送軌道の反対側に位置する上記第2懸架部材に着脱可能に連結支持する。また上記懸吊部材(40B)には架橋部材(40A)に離脱可能に連結され、上記揚重物を連結支持する吊下げ連結部と、巻上げ機に連結する吊上げ連結部を設ける。
【0016】
上記第1、第2懸架部材(31、35)は、搬送軌道(20)と略々直交する方向で互いに対を形成するように配置し、この第1、第2懸架部材は、上記搬送軌道の方向に位置移動可能に固定レール部材(31、36)に移動可能に支持する。
【0017】
上記架橋部材(40A)には懸吊部材(40B)を載置支持するフランジ面が、上記懸吊部材(40B)にはこのフランジ面に載置して揚重物の重量を支える接合面をそれぞれ備え、このフランジ面と接合面には、一方に突起部材が、他方にこの突起部材に適合する嵌合凹部を設け、懸吊部材(40B)の吊上げ連結部を上方に吊上げることによってフランジ面と嵌合凹部との結合が解除されるようにする。
【0018】
上記第1懸架部材(30)には、搬送軌道(20)と略々直交する方向にガイドレール(32g)を設け、上記第2懸架部材には、架橋部材(40A)の先端部を連結支持する連結支持部を設ける。そして架橋部材(40A)は、その基端部(40a)に上記ガイドレール(32g)に摺動自在に係合するトロリ部材(41a、41b)が、その先端部(40b)に連結支持部に係脱可能に係合する先端連結部(42)をそれぞれ設ける。
【0019】
所定の搬入エリア(A)から作業エリア(B)に揚重物を吊り下げ搬送する搬送レール(20L)と、搬送レールに走行移動可能に装架された走行トロリ(21)と、作業エリア(B)に配置され、搬送レール(20L)を挟んで対向配置された少なくとも一対の第1、第2の懸架部材(30、35)と、この第1、第2懸架部材間に架橋支持され、搬送レールに沿って移送された揚重物を掛け替え懸吊する吊り天秤部材(40)とを備える。そして上記吊り天秤部材(40)は、上記第1、第2懸架部材間に架橋支持される架橋部材(40A)と、揚重物を吊下げ支持する懸吊部材(40B)とで構成する。この架橋部材(40A)は、その基端部(40a)を第1懸架部材(30)に先端部(40b)が搬送レール(20L)を横切るように摺動自在又は回動自在に支持すると共に、その先端部を上記搬送軌道の反対側に位置する上記第2懸架部材(35)に着脱可能に連結支持する。上記懸吊部材(40B)は、上記架橋部材(40A)に離脱可能に連結し、これに揚重物を連結支持する吊下げ連結部(40d)と、巻上げ機(35)に連結する吊上げ連結部(40e)を設ける。
【発明の効果】
【0020】
本発明は、揚重物を吊り下げ支持する吊り天秤部材を架橋部材と懸吊部材とで構成し、作業エリアに揚重物を搬入する搬送軌道を挟んで対向配置された一対の懸架部材の一方に、架橋部材の基端部を摺動可能又は回動可能に支持し、その先端部は搬送軌道を横切って反対側に位置する懸架部材に連結支持し、この架橋部材に離脱可能に連結した懸吊部材に揚重物を吊下げ支持する吊下げ連結部と、巻き上げ機に連結する吊上げ連結部を設けたものであるから次の顕著な効果を奏する。
【0021】
揚重物を搬送軌道に沿って所定の作業エリアに搬入する際は、架橋部材をこの軌道の一側部に位置する第1懸架部材に格納して(軌道から)退避させ、搬入後にこの架橋部材を摺動又は回動することによって先端部を、軌道を横切って反対側に位置する第2懸架部材に連結支持し、この状態で架橋部材に連結した懸吊部材に揚重物を(搬送軌道の)走行トロリから掛け替え懸吊することとなる。従って吊り天秤部材(架橋部材と懸吊部材)は作業エリアで搬送軌道の側部に退避した位置に格納され、揚重物の搬入後には軌道の左右2方向から揚重物を吊り下げ支持するため、大型大重量の揚重物を作業エリアで作業に適した個所を安定した姿勢で2方向から吊り下げ支持することが可能となる。
【0022】
更に本発明は、架橋部材と懸吊部材を着脱自在に連結するに際に、架橋部材に設けたフランジ面(載置面)に懸吊部材に設けた接合面を載置支持し、その一方に突起を、他方に嵌合凹部(孔又は溝)を設けることによって懸吊部材を巻上げ機などで吊上げると架橋部材から懸吊部材を切り離すことが可能となる。従って例えば作業エリアで作業レールに吊下げ支持している揚重物を搬送レールに簡単に吊り換えることが可能となり、搬送レールに沿って他の作業エリアに移送することが可能となる。この場合に作業エリアで揚重物を吊り換える必要がなくその作業が至って容易となる。
【0023】
このように本発明は揚重物を特定の搬入エリアから搬送軌道に沿って複数の作業エリアに分配搬送し、各作業エリアに配置された吊り天秤部材に吊り換え支持することが可能となり、作業エリアの省スペース化と同時に工場など建造物の敷地面積を効率的に活用することが可能となる。
【0024】
更に本発明は、複数の作業エリアでそれぞれ揚重物を吊り下げ支持する吊り天秤部材(架橋部材と懸吊部材)は、各作業エリアの天井部に配置された懸架部材に格納され、揚重物の搬出入の妨げとならず、搬入後には軌道を挟む2方向から揚重物を吊り下げ支持するため、吊り天秤部材が工場内に散乱することがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下図示の好適な実施の態様に基づいて本発明を詳述する。図1は本発明に係わる荷役搬送装置の全体レイアウト構成を示す概念説明図であり、図2はその要部の揚重物を吊り下げ搬送する搬送構造の正面説明図である。図3は作業エリアで揚重物Wを掛け替え懸吊する吊り天秤構造の説明図であり、天秤部材を搬送軌道外に退避させた状態を示す。図5は天秤部材を、搬送軌道を横切って架橋支持した状態を示す。
【0026】
[全体レイアウト構成]
まず本発明の荷役搬送装置を図1に示すレイアウト構成に基づいて説明する。図1は大型重量物を生産する生産工場、或いは大型重量物を分解、修理、保全する修理工場のレイアウトを示す。図示のレイアウト構成は、建造物10の所定位置に1個所(複数個所であっても良い)の搬出入エリアAを備え、この搬出入エリアAから搬入した揚重物Wを複数の作業エリアBに分配搬送することを特徴としている。このため、搬出入エリアAから第1作業エリアB1、第2作業エリアB2など複数の作業エリアB1、B2、B3、B4に揚重物Wを搬送するための搬送軌道20が配置されている。この搬送軌道20は入出端20aから各作業エリアの搬送端20bに至る搬送レール20Lで構成され、この搬送レール20Lは例えば断面I型鋼で建造物10の天井などの堅牢な梁に敷設される。そしてこの搬送レール20Lに装架された走行トロリ21(その構造は後述する)で揚重物Wを搬送する。
【0027】
尚本発明にあって、搬出入エリアAから作業エリアBに所定の搬送軌道20に沿って揚重物Wを搬送するための搬送機構は、搬送レール20Lに嵌合した走行車輪を有する走行トロリ(例えばクラブトロリなど)21で構成する(レール搬送機構)か、或いは建造物10の天井に左右一対の走行レールを敷設し、この走行レールに架橋支持したガータを設け、このガーダに形成した横行レールに走行トロリを装架して揚重物WをY−Y方向に吊り下げ移送する天井クレーン機構であっても良い。以下前者のレール搬送機構について本発明を説明する。
【0028】
[荷役搬送装置の構成]
本発明の荷役搬送装置は、建造物10の搬出入エリアAと作業エリアBとの間に敷設された搬送レール20Lと、この搬送レール20Lに装架された走行トロリ21と、この走行トロリ21に搭載された巻上機23と、各作業エリアBに敷設された一対の懸架部材30、35と、この一対の懸架部材30、35間に架橋支持される吊り天秤部材(以下「吊り天秤組」という)40とから構成される。更に吊り天秤組40は架橋部材40Aと懸吊部材40Bとで構成される。上記走行トロリ21と巻上機23の構成については後述する。
【0029】
そこで上記懸架部材30、35は搬送レール20Lに沿って吊り下げ搬送された揚重物Wを作業エリアBで吊り換え支持する為に各作業エリアに少なくとも一対装備(図示のものは4対)する。つまり揚重物Wはその重心位置が搬送軌道20の略々直下に位置するように上述の走行トロリ21で吊下げ搬送される。そこでこの揚重物Wを、搬送軌道20を挟んで左右2方向から懸吊することによって安定した姿勢が得られ、同時にその吊り換え作業も安全となる。このため図3に示すように第1の懸架部材(以下「第1懸架部材」という)30は軌道20の右側に、第2の懸架部材(以下「第2懸架部材」という)35は軌道左側に左右一対をなすように配置されている。
【0030】
この第1、第2懸架部材30、35は建造物10の天井などに固定した梁状部材で構成しても良いが、図示のものは図2Y−Y方向(揚重物の長手方向)に敷設した固定レール(以下「作業レール」という)31、36に走行トロリ32、37で位置移動可能に装架してある。これは左右一対の懸架部材30、35の位置(吊下げ位置)を揚重物Wに付設されている牽引フックWfに位置合わせする為と、吊下げ後の揚重物WをY−Y方向に位置移動するためである。従って揚重物Wを吊下げ後に位置移動する必要のない場合には懸架部材30、35を建造物10の天井などに固定(固定構造)して設置しても良い。
【0031】
上記作業レール31、36は各作業エリアB1、B2、B3、B4に搬送軌道20を挟んで右側に作業レール31a、31bが、左側に作業レール36a、36bが所定の間隔を隔てて敷設されている(図1及び図3参照)。この作業レール31、36は搬送軌道20と略々並行で、そのレール長さは作業エリアBでの作業に適した長さに形成する。この右側作業レール31a、31bに第1懸架部材30が走行トロリ32a、32bで装架され、左側作業レール36に第2懸架部材35が走行トロリ37a、37bで装架されている。
【0032】
このように第1懸架部材30と第2懸架部材35とは、搬送軌道20を挟んで軌道スパンSLを形成して左右対向配置されている。この懸架部材30、35と上記作業レール31、36は適宜断面形状のビーム鋼で形成され、揚重物Wの重量を支えるように堅牢に建造物10の天井などに設置されている。そしてこの第1第2懸架部材30、35間に架橋支持した下記の吊り天秤組40で揚重物Wを吊り下げ支持する。
【0033】
[吊り天秤組の構成]
上述の第1第2懸架部材30、35には次の吊り天秤組40が架橋支持される。この吊り天秤組40は、図3に示すように架橋部材40Aと懸吊部材40Bで構成されている。この架橋部材40Aは、前述の軌道スパンSLより長いビーム鋼で構成され、その基端部40aを第1懸架部材30に摺動自在又は回動自在に支持されている。また先端部40bは、搬送軌道20から第1懸架部材30側に退避した位置(図3の格納位置)と、搬送軌道20を横切って反対側の第2懸架部材35に連結した位置(図5の連結状態)との間で移動可能に構成される。このように構成される架橋部材40Aに対して上記懸吊部材40Bは着脱自在に結合され、この懸吊部材40Bには揚重物Wを吊下げ支持する吊下げ連結部40dと、吊上げ連結部40eが設けられる。以下、架橋部材40A、懸吊部材40Bの構成について説明する。
【0034】
[架橋部材の構成]
架橋部材401Aは前述したように軌道スパンSLより長いビーム鋼で構成され、その基端部40aは前述の第1懸架部材30に摺動自在(又は回動自在)に支持される。図4にその連結支持構造を示す。同図において第1懸架部材30には軌道スパンSLより長いガイドレール(I形鋼の下端フランジ部)32gが一体に設けられ、このガイドレール32gに架橋部材40Aの基端部40aが第1トロリ41aと第2トロリ41bで摺動自在に嵌合支持されている。この第1、第2トロリ41a、41bはそれぞれの車輪41rがレール30gに嵌合支持され、架橋部材40Aの基端部40aに結合されている。そして第1トロリ41aには高さ位置調整機構41eのアジャスタバネと位置決めボルトが設けられている。これは第1、第2トロリ41a、41bの高さ位置をガイドレール32gに適合させる為であり、第1、第2トロリのいずれか一方側に配置すれば良い。
【0035】
上述のように第1懸架部材30に摺動自在に装架した架橋部材40Aには、これを位置決めロックするロック機構33と、懸架部材30に沿って摺動移動する駆動操作機構34が備えられている。ロック機構33は上述の第2トロリ41bに設けたストッパ(折曲げ片)33aと、これに係脱自在に歯合するロック爪33bと、このロック爪33bを付勢する付勢バネ(不図示)とで構成されている。このロック爪33bは第1懸架部材30に揺動(回動)自在に軸支持され、第2トロリに設けられたストッパ33a(第1トロリに設けても良い)に係合することによって架橋部材40Aをその位置に係止ロックする。そしてこのロック爪33bは架橋部材40Aの先端部40bが搬送軌道20から退避した格納位置でストッパ33aと係合する位置に配置されている。
【0036】
また、上記ロック爪33bにはストッパ33aとの係合を解除する操作ワイヤ33cが連結されハンドルレバー33d(図3参照)を握ることによってロック爪33bがストッパ33aから離脱するようになっている。従って第1懸架部材30に摺動自在に装備された架橋部材40Aは搬送軌道20から退避した格納位置(図3の状態)でロック機構33によって係止され、ハンドル操作でロック解除してこれを摺動すると先端部40bが軌道20を横切って第2懸架部材35側に移動することとなる。この位置(吊り位置)では先端部40bが第2懸架部材35に連結されることによってその位置に保持される(図5の状態)。
【0037】
上記駆動機構34は架橋部材40Aを第1懸架部材30のガイドレール32gに沿って図4左右方向に移動するように構成される。図示のものは第1懸架部材30に滑車34aが設けられ、この滑車34aとオペレータの操作位置との間に操作紐(ワイヤ、チェンなど)34bが掛け渡してある。そして操作紐34bは第1トロリ41aのフレームに固定ボルト34cで連結され、ループ状の操作紐の引っ張り方向によってトロリを図4左右いずれかの方向に移動するように構成されている。
【0038】
図5は架橋部材40Aの先端部40bを第2懸架部材35に連結した状態を示す。架橋部材40Aの先端部40bには先端ジョイント機構42が設けられ、第2懸架部材35にはジョイント受け機構38が設けられ、それぞれが着脱自在に連結及び離脱するように構成されている。先端ジョイント機構42はクランプ部材42aと、結合扞42bと着脱操作レバー42cで構成されている。またジョイント受け機構38は嵌合部38aと、ロック爪38bとインデックスプランジャ38cとで構成されている。
【0039】
上記先端ジョイント機構42は、連結扞42bの一端を架橋部材40Aの先端部に着脱自在に結合し、この連結扞42bの他端部を第2懸架部材35のジョイント受け機構38に着脱自在に連結するように構成されている。つまり図6(b)に示すように連結扞42bには上下端部に連結孔42x、42yが設けられ、その下端連結孔42xに天秤部材40のクランプピン42zが嵌合し、上端連結孔42yに第2懸架部材35の嵌合部38aが嵌合するようになっている。
【0040】
つまり架橋部材40Aの先端部40bには連結用のブラケット42qが溶接などで一体成形され、このブラケット42qに連結扞42bの下端部を挿入する係合凹部が設けられている。そして架橋部材40Aの先端部にはブラケット42qと連結扞42bの連結孔42xを貫通するクランプピン42zが互いを連結するように設けられている。尚、この連結扞42bをクランクピン42zで着脱する構成を図示するが、連結扞42bは架橋部材40Aの先端部に溶接などで一体に形成しても良い。
【0041】
一方、第2懸架部材35のジョイント受け機構38は、上述の連結扞42bの上端連結孔42yが嵌合する嵌合部38aで構成されている。この嵌合部38aには図6(b)に示すように上端連結孔42yの嵌合を案内する傾斜ガイド面38xが設けられている。また、第2懸架部材35には、ロック爪38bが連結扞42bを係止ロックするように揺動自在に配置されている。このロック爪38bには、図示しない付勢バネで図6(b)矢示方向に付勢され、このバネに抗して矢示反対方向に退避する傾斜カム面38yが設けられている。従って、連結扞42bがガイド面38xに沿って進入する際には、その上端縁がロック爪38bの傾斜カム面38yに係合し、このロック爪38bは上方に押し上げて退避する。そして互いに嵌合した後は、付勢バネ(不図示)で同図矢印方向に揺動して連結扞42bの上端部を係止ロックすることとなる。尚図示38cはインデックスプランジャであり、ロック爪38bと協働して連結扞42bの位置を規制する。上記ロック爪38bには、操作紐39が連結され、この操作紐39先端のレバー39rを操作することによってロック爪38bの係止を解除するようになっている。
【0042】
[懸吊部材の構成(第1実施形態)]
上述の架橋部材40Aには、揚重物Wを吊り下げ支持する懸吊部材40Bが次のように着脱自在に連結され、図8、図9にその構成を示す。図8(a)は懸吊部材40Bの第1の実施形態を、(b)は第2の実施形態を、図9は第3の実施形態をそれぞれ示す。
【0043】
[第1実施形態]
図8(a)に示す懸吊部材40Bは、所定長さのビーム鋼で構成され、その左右に一対の吊下げ連結部40dが設けられている。図示の吊下げ連結部40dは、揚重物Wを牽引するワィヤ、チェンなどの牽引部材をシャックルなどで掛け止めする連結孔で構成されている。そしてこの懸吊部材40Bには左右一対の連結部材40xが溶接などで一体形成され、この各連結部材40xには接合面40y(その機能は後述する)が設けられている。この左右一対の連結部材40xには吊下げ連結部40dが連結孔で形成されている。この左右一対の連結孔には図示のように2又状に分岐した牽引部材40zが架け渡され、この牽引部材40zの他端(図面上端)が巻上げ機に連結されるようになっている。
【0044】
上記接合面40yは前述の架橋部材40Aの上面フランジ40fに載置支持される。つまり架橋部材40Aの上に懸吊部材40Bの連結部が支持され、互いに上下接合されたフランジ面40fと接合面40yには、一方に位置決め用の突起40tが、他方にこれと適合する嵌合凹部40uが設けられている。そしてこの突起40tと嵌合凹部40uとは鉛直方向に嵌合及び離脱するように形成されている。従って架橋部材40Aに懸吊部材40Bを上方から載置すると互いが嵌合(結合)し、懸吊部材40Bを上方に吊上げると嵌合離脱(分離)することとなる。
【0045】
[第2実施形態]
図8(b)に示す懸吊部材40Bは、上述の第1実施形態と同様に揚重物Wの形状(吊り幅)に応じて所定長さのビーム鋼で構成され、その中央部には巻上げ機23に連結する吊上げ連結部40eと、揚重物Wを吊下げ支持する吊下げ連結部40dが設けられる。図示の吊下げ連結部40dは、左右2個所に一対形成され、中央部には吊上げ連結部40eが一体形成されている。この吊下げ連結部40dは、第1実施形態と同様に連結孔で構成され、この連結孔に牽引部材(チェン、ワイヤなど)を掛け止めして揚重物Wを支持するようになっている。上記吊上げ連結部40eは懸吊部材40Bの中央部に逆T字状に溶接などで一体化されている。この連結部材40xには接合面40yが設けられている。そして連結部材40の上端部には巻上げ機23に連結する連結孔が設けられ、この連結孔で吊下げ連結部が構成されている。
【0046】
上記接合面40yは架橋部材40Aの上面フランジ40fに載置支持され、第1実施形態と同様に構成されている。この上面フランジ40fと接合面40yには一方に位置決め用の突起40tが、他方にこれと適合する嵌合凹部40uが設けられている。そしてこの突起40tと嵌合凹部40uとは鉛直方向に嵌合及び離脱するように形成されている。
【0047】
[第3実施形態]
また、図9に示す懸吊部材40Bは、前述の架橋部材40Aに連結される縦長鋼で構成されている。つまり略々水平方向に配置された架橋部材40Aに対してこの懸架部材40Bは垂直方向に連結される。この懸吊部材40Bには前述のものと同様に揚重物Wを吊下げ支持する吊下げ連結部40dと吊上げ連結部40eが、それぞれシャックルなどを掛け止めする連結孔で形成されている。
【0048】
図示の吊下げ連結部40dは懸吊部材40Bの下端部に1個所設けられ、揚重物Wを1点で吊り下げ支持するように構成されている。そして懸吊部材40Bの上端部には巻上げ機23に連結する連結孔が設けられ、この連結孔で吊上げ連結部40eが構成されている。また懸吊部材40Bには接合面40yが前述の第1、第2実施形態と同様に設けられ、この接合面40yで架橋部材40Aの上面フランジ40fに載置支持されるようになっている。この上面フランジ40fと接合面40yには一方に位置決め用の突起40tが、他方にこれと適合する嵌合凹部40uが設けられている。そしてこの突起40tと嵌合凹部40uとは鉛直方向に嵌合及び離脱するように形成されている。
【0049】
従って上記第1乃至第3、いずれの実施形態においても、揚重物Wは懸吊部材40Bに吊下げ支持され、この懸吊部材40Bは上記架橋部材40Aを介して第1第2の懸架部材30、35に支持される。そして各懸吊部材40Bの吊上げ連結部40eを巻上げ機23に連結して上方に吊上げれば懸吊部材40Bは架橋部材40Aから離脱し、揚重物Wを他の作業エリアB或いは搬出入エリアAに搬送することが可能となる。
【0050】
そこで、この揚重物Wを支持した懸吊部材40Bを巻上げ機23で上方に吊上げて架橋部材40Aから分離するとき上述の懸吊部材40Bでは次の問題が起きる。例えば架橋部材40Aをビーム鋼で構成し、懸吊部材40Bを断面コの字状の鋼材で構成すると吊下げ連結部40dの上縁部Hが架橋部材40Aの下縁部Jと衝合することとなる。そこで作業者が巻上げ機(不図示)の操作を誤って切り離し高さLより過剰に吊上げると架橋部材40Aの下縁部Jを持ち上げる。このとき架橋部材40Aが前述の第2懸架部材35に連結されているため、その連結部を破損する恐れがある。
【0051】
このような懸吊部材40Bの切り離しの際に、上述の連結部の破損を防ぐため、図10(b)に示す装置は、架橋部材40Aの下縁部Jと懸吊部材40Bの上縁部Hのいずれか一方に傾斜面(緩衝面)kを形成してある。これと同時に架橋部材40Aは図示矢印a方向に揺動するように第2架橋部材40A、40Bにピン連結してある。このような構造を採用することにより、懸吊部材40Bを誤って過剰に吊上げても同図(c)に示すように傾斜面kの作用で懸吊部材40Bは矢印b方向に、また架橋部材40Aは矢印a方向に、互いに逃げる方向に揺動することとなる。この傾斜面kによる衝合で吊り下げ部材40や巻上機23等に過負荷がかかることがない。
【0052】
[搬送レールのトロリ構造]
次に搬送レール20Lに揚重物Mを吊り下げ支持するクレーン構造について説明する。
図11に示すように、上述の搬送レール20Lは例えば断面I型鋼などでレール面20r、20qが設けられている。そこでこの搬送レール20Lに沿って揚重物Mを吊り下げた状態で走行するトロリ21が装架される。この走行トロリ21としては種々の構造が知られているが図示のものは断面I型形状の搬送レール20Lのレール面20r、20qに装架された自走式トロリを示す。
【0053】
上記走行トロリ21は、ユニットフレーム26に一対の走行輪27a、27b及び27c、27dがそれぞれ回転軸に回動自在に軸受け支持され、この走行輪27a、27bがレール面20rに、走行輪27c、27dがレール面20qに係合支持されるようになっている。つまりユニットフレーム26はI型レール(搬送レール)を挟むように断面U字状に構成され、このユニットフレーム26の対向側壁にそれぞれ走行輪27a、27b及び27c、27dが軸受け支持されている。そしてユニットフレーム26には走行モータMO1が搭載され、この走行モータMO1は走行輪27aの回転軸を駆動回転するようになっている。尚、図示24a、24bは左右一対のガイドコロであり搬送レール20Lのレール側面に係合して摺動回転するように上記ユニットフレーム26に軸支持されている。図示24cは電装ボックスである。従って走行トロリ21は搬送レール20Lに走行輪27a、27b及び27c、27dで装架され、走行モータMO1でレール面20r、20qに沿って自走することなる。そして上記ユニットフレーム26には揚重物Mを吊り下げ支持する巻上げ機23が連結扞23jを介して連結されている。
【0054】
[巻上機の構成]
上記巻上機23は、通常のホイストで構成されている。図11に示すようにこの巻き上げ機23はユニットフレーム23Uに軸承した駆動回転軸23x(不図示)にロードシーブ23rが設けられ、この駆動回転軸23xに減速歯車を介して巻上げモータMO2を連結して構成し、図示しないブレーキ、リミットスイッチなどが内蔵されている。そしてユニットフレーム23Uは、その上方を前記走行トロリ21に連結してあり、上記ロードシーブ23rにはロードチェーン25が歯合してある。従って巻上げモータMO2を正逆転することによって駆動回転軸23x(不図示)が正逆転し、これに取付けたロードシーブ23rに歯合されたロードチェーン25が上下動することとなる。そこでロードチェーン25の下端部にはフック25fが連結され、後述する吊り天秤部材40を掛け止め支持する。
【0055】
[荷役搬送装置の作用]
次に上述の荷役搬送装置及び吊具の作用について「揚重物の搬出入」「揚重物の吊り換え」「揚重物の分解・組立」「揚重物の転送」の順に説明する。
【0056】
「揚重物の搬出入」
図1で説明したレイアウト構成において、揚重物Wを搬入エリアAから作業エリアBに搬入する場合を説明する。このとき、各作業エリアB1、B2、B3、B4に配置されている吊り天秤組40は第1懸架部材30側の格納位置に待機させる。この状態を図2に示すが、天秤組40を構成する架橋部材40Aは第1懸架部材30に図示状態に操作紐34bで移動されロック機構33で係止ロックされている。この状態では架橋部材40Aの先端部42bは搬送軌道20から離れた位置に待機し、この架橋部材40Aに懸吊部材40Bが連結されている。従ってこの架橋部材40Aと懸吊部材40Bが不用意に移動することはなく、揚重物Wを走行トロリ21で移動しても揚重物が天秤組40に衝突することがない
【0057】
尚、この格納位置で架橋部材40Aの先端ジョイント機構42の連結扞42bはその上端連結孔42yが第1懸架部材30の先端に設けられている傾斜嵌合部32kに嵌合して位置保持されている(図3参照)。
【0058】
そこで揚重物Wを搬送レール20Lに装備されている走行トロリ21の巻上げ機23にチェンなどの牽引部材で吊り下げ支持する。そして走行トロリ21を駆動モータMO1で駆動し、所定の作業エリアBに移動する(図2の状態)。
【0059】
「揚重物の吊り換え」
所定の作業エリアBに揚重物Wが移送されると走行トロリ21を停止し、制動ブレーキで位置保持する。そこで揚重物Wを懸吊している牽引部材と緩衝しない位置に天秤組40を作業レール31、36に沿って移動する。例えば図示のように揚重物Wを搬送方向前後4個所で吊り下げ支持するときには、各天秤組40を揚重物Wに付設されている4個所の牽引フックWf位置に図2Y−Y方向に移動する。この天秤組40の移動はオペレータが手動で移動するか、或いはトロリ32、37に駆動モータを内蔵(不図示)して、これで移動する。
【0060】
次にオペレータは、操作ハンドル33dを把持操作してロック爪33bを解除する。すると天秤組40の架橋部材40Aは第1懸架部材30のガイドレール30Gに沿って移動可能(フリー)となる。そこで操作紐34bを操作して架橋部材40Aの先端部40bを、搬送軌道20を横切って反対側の第2懸架部材35側に移動する。
【0061】
この架橋部材40Aの先端部40bが搬送軌道を横切った状態を図5に示すが、先端部40bはガイドレール30Gに沿って移動する際に、前述の連結扞42bの上端連結孔42yが第2懸架部材35の嵌合部38xに嵌合する。そして連結扞42bはロック爪38bで係止ロックされる。この状態で天秤組40は基端部40aを第1懸架部材30に第1第2トロリ41a、41bを介して支持され、先端部40bを第2懸架部材35に連結扞42bを介して支持されることとなる。従って天秤組40は第1第2懸架部材30、35に架橋支持され、揚重物Wの重量は、懸吊部材40B、次いで架橋部材40A、第1第2懸架部材30、35更に作業レール31、36を介して建造物10の天井に支持されることとなる。
【0062】
そこで、作業者は懸吊部材40Bの中央部40cに位置する吊下げ連結孔40dと揚重物Wに付設されている牽引フックWfをチェンなどの牽引部材で連結する。このとき揚重物Wは搬送レール20Lの走行トロリ21に装備されている巻上げ機23で懸吊している。この懸吊部材40Bと揚重物Wの1個所又は複数個所を牽引部材で連結する作業の後、走行トロリ21の巻上げ機23を操作して揚重物Wの荷重を走行トロリ21から天秤組40に徐々にシフトする。
【0063】
これによって揚重物Wは走行トロリ21及び搬送レール20Lから懸吊部材40Bに吊り換えられ、その荷重は懸吊部材40Bを介して架橋部材40Aと、これを架橋支持している第1、第2懸架部材30、35に支持されることとなる。そこで走行トロリ21の牽引部材を揚重物WのフックWfから取り外す。その後、走行トロリ21は搬出入エリアAに戻り、後続する次の揚重物Wを先と異なる作業エリアBに搬送する。その手順は上述と同様である。
【0064】
「揚重物の分解・組立」
図5に天秤組40に揚重物Wを吊り下げ支持した状態を示すが、この状態で揚重物Wは1個所若しくは複数個所(図示のものは4個所)を懸吊部材40Bに吊り下げ支持されている。そこで、例えば揚重物Wを分解修理する場合は、作業エリアBで分解作業を実施し、揚重物Wをユニットに分解する。また、作業エリアBで組立作業を実施する場合には前述した手順で搬出入エリアAから所定の作業エリアBに揚重物(ユニット)を搬送し、懸吊部材40Bに掛け替え懸吊する。このように順次搬入された揚重物(ユニット)を組立てる。
【0065】
上述のように各作業エリアBで分解或いは組立など所定の作業を実施する際に揚重物(ユニット)Wは作業レール31、36に沿って移動し、複数の揚重物(ユニット)W相互の間隔を作業に適するように移動する。このときは各ユニットを吊下げ支持している天秤組40を作業レール31、36に沿って例えば作業者が手動で移動する。
【0066】
「揚重物の転送」
そこで、分解或いは組立てた揚重物(ユニット)を別の作業エリアBに転送する場合、或いは修理・組立作業後の揚重物Wを搬出入エリアAに搬送する場合には、図7に示すように懸吊部材40Bを架橋部材40Aから分離する。この分離作業は、揚重物(ユニット或いは完成物)の吊上げ連結孔40e(複数の場合は選択された1つ又は2つの連結孔)位置に、搬送レール20Lに装備されている走行トロリ21を移動する。そしてこのトロリ21の巻上げ機23と吊上げ連結孔40eとを牽引部材で連結する。この連結後に巻上げ機23で懸吊部材40Bを吊上げる。すると懸吊部材40Bは架橋部材40Aから上方に分離して揚重物Wの重量は巻上げ機23で吊り下げ支持される。
【0067】
次に架橋部材40Aの先端部40bを搬送軌道20から第1懸架部材30側に退避させる。このため作業者はレバー39rを操作してロック爪38bを操作し、架橋部材40Aの先端ジョイント機構42(連結扞42bの係止)をロック解除する。このロック解除の後、使用者は操作紐34bを操作して架橋部材40Aを図3の格納位置に移動する。このように懸吊部材40Bを架橋部材40Aから分離して揚重物Wを所定位置に移動した後、この懸吊部材40Bは元の作業エリアに戻り、図3の状態に格納位置に格納される。
【0068】
尚、本発明にあって、懸吊部材40Aの先端部40bを搬送軌道20から退避させて格納し、揚重物Wの搬入後に搬送軌道を横切って反対側に位置する第2懸架部材35に連結する際に、この懸吊部材40Bの基端部40aを第1懸架部材30に摺動自在に連結する場合について説明したが、この懸吊部材40Aの基端部40aを第1懸架部材30に回動自在に軸支持しても良い。この場合には、例えば第1懸架部材30に軸受け部を設け、この軸受け部に懸吊部材40Aの基端部40aを回動ピンで軸支持する。これによって懸吊部材40Aは回動ピンを中心に所定角度(例えば90度〜180度)回転させることによって天秤先端部40bは搬送軌道20から退避した位置(格納位置)と軌道20を横切って反対側に位置する第2懸架部材35に架橋(連結位置)させることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明に係わる荷役搬送装置の全体レイアウト構成を示す概念図。
【図2】図1の装置における搬送レール構造と作業レール構造を示す説明図であり揚重物を搬送軌道に沿って搬送する状態を示す。
【図3】図2の装置における搬送用吊具(第1の実施形態)の構成を示す説明図であり、吊り天秤部材の格納状態を示す。
【図4】図3の装置における要部の拡大説明図。
【図5】図3の装置において揚重物を吊り天秤部材(天秤組)に掛け替え懸吊した状態の説明図であり、(a)はその全体構成図、(b)は先端連結部の連結状態の説明図。
【図6】図3の装置における架橋部材の先端連結状態の説明図であり、(a)は懸架部材に結合した状態を、(b)はその結合状態の側面構成を、(c)は先端クランプ状態を示す。
【図7】図3の装置において懸吊部材を架橋部材から分離した状態の説明図。
【図8】図3の装置における懸吊部材の実施形態を示し、(a)はその第1実施形態を、(b)は第2実施形態をそれぞれ示す。
【図9】図3の装置における懸吊部材の第3実施形態を示す。
【図10】図8及び図9に示す懸吊部材の各実施形態における断面構造の説明図であり、(a)はその一断面構造を、(b)は異なる断面構造を、(c)は(b)の断面構造における作用を示す説明図。
【図11】図1の装置における搬送レールと走行トロリと巻上げ機の構成を示す説明図。
【符号の説明】
【0070】
A 搬出入エリア
B 作業エリア
W 揚重物
20 搬送軌道
20L 搬送レール
21 走行トロリ
23 巻上機
30 第1懸架部材
30G ガイドレール
31 固定レール(作業レール)
32(32a、32b)走行トロリ
33 ロック機構
33a ストッパ(折曲げ片)
33b ロック爪
33c 操作ワイヤ
33d ハンドルレバー
34 駆動操作機構
34a 滑車
34b 操作紐
34c 固定ボルト
35 第2懸架部材
36 固定レール(作業レール)
36a、36b 左側作業レール
37(37a、37b)走行トロリ
38 ジョイント受け機構
38a 嵌合部
38b ロック爪
38c インデックスプランジャ
38x 傾斜ガイド面
38y 傾斜カム面
40 吊り天秤部材(天秤部材)
40A 架橋部材
40B 懸吊部材
40a 基端部
40b 先端部
40c 中央部
40P 固定支持部材
40Q 過搬部材
41a 第1トロリ
41b 第2トロリ
41e 高さ位置調整機構
41f 基端ジョイント機構
41g 連結ピン
41h クランプ部材
41i 操作レバー
41j ブラケット
41r 車輪
42 先端ジョイント機構
42a クランプ部材
42b 結合扞
42c 着脱操作レバー
42d 高さ位置調整機構
42q ブラケット
42x 連結孔
42y 連結孔
42z クランプピン
46a 第1懸吊部材
46b 第2懸吊部材
46c 第3懸吊部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の搬送軌道に沿って搬入された揚重物を作業エリアで掛け替え懸吊する荷役搬送用吊具であって、
上記搬送軌道を挟んで対向配置された少なくとも一対の第1、第2懸架部材と、
この第1、第2懸架部材間に架橋支持される吊り天秤部材と、
を備え、
上記吊り天秤部材は、上記第1、第2懸架部材間に架橋支持される架橋部材と、揚重物を吊下げ支持する懸吊部材とで構成され、
上記架橋部材は、
その基端部を上記第1懸架部材に先端部が上記搬送軌道を横切るように摺動自在又は回動自在に支持すると共に、
その先端部を上記搬送軌道の反対側に位置する上記第2懸架部材に着脱可能に連結支持し、
上記懸吊部材には、上記架橋部材に離脱可能に連結され、上記揚重物を連結支持する吊下げ連結部と、巻上げ機に連結する吊上げ連結部が設けられている
ことを特徴とする荷役搬送用吊具。
【請求項2】
前記第1、第2懸架部材は、前記搬送軌道と略々直交する方向で互いに対を形成するように配置され、
この第1、第2懸架部材は、前記搬送軌道の方向に位置移動可能に固定レール部材に支持されていることを特徴とする請求項1に記載の荷役搬送用吊具。
【請求項3】
前記架橋部材には前記懸吊部材を載置支持するフランジ面が、前記懸吊部材にはこのフランジ面に載置して揚重物の重量を支える接合面がそれぞれ備えられ、
上記フランジ面と接合面には、一方に突起部材が、他方にこの突起部材に適合する嵌合凹部が設けられ、
上記懸吊部材の吊上げ連結部を上方に吊上げることによって上記フランジ面と嵌合凹部との結合が解除されることを特徴とする請求項1に記載の荷役搬送用吊具。
【請求項4】
前記第1懸架部材には、前記搬送軌道と略々直交する方向にガイドレールが設けられ、
前記第2懸架部材には、前記架橋部材の先端部を連結支持する連結支持部が設けられ、
前記架橋部材は、その基端部に上記ガイドレールに摺動自在に係合するトロリ部材が、その先端部に上記連結支持部に係脱可能に係合する先端連結部がそれぞれ設けられ、
ていることを特徴とする請求項1に記載の荷役搬送用吊具。
【請求項5】
所定の搬入エリアから作業エリアに揚重物を吊り下げ搬送する搬送レールと、
上記搬送レールに走行移動可能に装架された走行トロリと、
上記作業エリアに配置され、上記搬送レールを挟んで対向配置された少なくとも一対の第1、第2の懸架部材と、
上記第1、第2懸架部材間に架橋支持され、上記搬送レールに沿って移送された揚重物を掛け替え懸吊する吊り天秤部材と、
を備え、
上記吊り天秤部材は、上記第1、第2懸架部材間に架橋支持される架橋部材と、揚重物を吊下げ支持する懸吊部材とで構成され、
上記架橋部材は、
その基端部を上記第1懸架部材に先端部が上記搬送軌道を横切るように摺動自在又は回動自在に支持すると共に、
その先端部を上記搬送軌道の反対側に位置する上記第2懸架部材に着脱可能に連結支持し、
上記懸吊部材は、上記架橋部材に離脱可能に連結され、上記揚重物を連結支持する吊下げ連結部と、巻上げ機に連結する吊上げ連結部が設けられている
ことを特徴とする荷役搬送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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