説明

荷箱の天蓋装置

【課題】手動で行う天蓋フレームの回動操作性を向上し、作業者及び周囲への安全性能も向上することのできる荷箱の天蓋装置とする。
【解決手段】サイドゲート上部に設けた軸受け部材と、軸受け部材に軸支された支軸と、支軸を有してサイドゲートの外側方と内側方との間で手動回動される荷箱の天蓋フレームとを備えており、天蓋フレームは、支軸に連結された基端フレームと、基端フレームの回動側先端部に配されたシャフトと、シャフトに軸支された先端フレームとを有し、先端フレームと基端フレームとには、シャフトを回動中心として先端フレームが基端フレームに折り畳まれた状態を保持する保持部材が設けられた構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に架装された荷箱の上方開口部を開閉自在に覆う天蓋装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ダンプカー等の車両の荷箱には、サイドゲートの上部に軸支された天蓋装置が設けられている。天蓋装置は、サイドゲート上端に設けられた軸受け部に例えば金属製の天蓋フレームが軸支された構成を有している。この天蓋フレームにはシート等が掛けられており、その軸支部を回動中心としてサイドゲートの外側方と内側方との間で回動される。天蓋フレームが閉状態の位置まで回動されると、シート等で荷箱の上方開口部の多くが覆われた状態になり、荷箱に積まれた土砂等の飛散を防止することができる。
【0003】
こうした天蓋装置を備えた車両の中でも、土砂等を大量に積載する比較的大型な車両は天蓋装置を構成するフレームの重量が大きくなる。フレームの回動は、サイドゲート上端を中心として、サイドゲート下方からサイドゲート上端を跨ぐようにして荷箱上方まで行われるため、電動モータ等の駆動力を利用した回動操作により、高い作業効率を有するものが多い(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−126877号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
その一方で、比較的小型で軽量な車両の場合、天蓋フレームの重量が小さく、荷箱設置高さやサイドゲートの高さも低いため、手動で天蓋フレームの回動操作を行うことが可能と考えられる。そこで、本発明者は、さらに手軽で操作し易い天蓋装置を備えるために、以下の点に着目した。
【0006】
手動で天蓋フレームの回動操作を行う場合、天蓋フレームを把持する位置によっては作業者が感じる天蓋フレームの重さが異なる。そのため、作業者によっては回動操作が非常に困難になる場合がある。回動中心から離れた先端側を持つほど天蓋フレーム重さは軽く感じるが、回動中心からの距離が長くなり、天蓋フレームが鉛直方向に沿った状態(起立状態)のときに把持位置が高くなってしまう。一方で、回動中心に近い基端側を持つほど天蓋フレーム重さは重たく感じてしまう。つまり、手動回動させる天蓋装置としては、作業者によっては非常に操作し難い装置となってしまう。また、中間部付近を把持しても、天蓋フレームの重心位置がその把持位置と比較して回動中心位置より離れている場合、作業者は回動操作に大きな負荷を感じることになる。さらに、起立状態を越えて天蓋フレームをさらに外側に回動させると、把持位置よりも高い位置に重心があることで、天蓋フレームの下方回動の速度が不意に増加してしまう恐れがあり、作業者や周囲への安全面で改善の余地がある。
【0007】
さらに、天蓋フレームの回動中心となる支軸は車両幅方向において最も外側に位置し、天蓋フレームの回動軌跡が車両外側に大きく張り出した領域まで達するため、予め車両外側に大きなスペースも必要となる。
【0008】
本発明は、これらの点を鑑みてなされており、手動で行う天蓋フレームの回動操作性を向上し、作業者及び周囲への安全性能も向上することのできる荷箱の天蓋装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために車両に搭載された荷箱に、以下の天蓋装置が設けられた構成とする。
【0010】
荷箱のサイドゲート上部に設けた軸受け部材と、当該軸受け部材に軸支された支軸と、当該支軸を有して前記サイドゲートの外側方と内側方との間で手動回動される荷箱の天蓋フレームと、を備えており、前記天蓋フレームは、前記支軸に連結された基端フレームと、当該基端フレームの回動側先端部に配されたシャフトと、当該シャフトに軸支された先端フレームとを有し、前記先端フレームと前記基端フレームとには、前記シャフトを回動中心として前記先端フレームが前記基端フレームに折り畳まれた状態を保持する保持部材が設けられている「荷箱の天蓋装置」とする。
この「荷箱の天蓋装置」はさらに次の特徴を有する。
【0011】
前記手動回動の際に把持される把持部が前記天蓋フレームの車両後方側に設けられており、当該把持部は、前記先端フレームのうち前記シャフトを回動中心とした回動先端側に設けられた第1把持部と、前記基端フレームのうち前記支軸を回動中心とした回動先端側に設けられた第2把持部とを含む構成を有する。
【0012】
そして、前記基端フレームと前記先端フレームとの一方には、前記先端フレームが前記シャフトを中心に手動回動される際に、前記基端フレームと前記先端フレームとの他方が収容される収容部が設けられている構成としても良い。ここで、用いる「収容」は、折り畳まれた天蓋装置の厚みを小さくすることを主な目的としており、厚みを小さくできる場合には先端フレーム全体が基端フレームに重なるようにならなくても、その一部が重なるように折り畳まれている状態も含まれるものとする。
【0013】
さらに前記天蓋フレームは、前記先端フレームが、前記基端フレームに対して前記サイドゲートの外側方から内側方へ手動回動されて張り出す構成を有しており、前記先端フレームが張り出した際に前記先端フレームの手動回動を規制する規制部材が、前記基端フレームの先端部に配されている。
【発明の効果】
【0014】
本発明の構成とすることで、先端フレームを基端フレームに対して回動させて天蓋フレームを折り畳むことができる。折り畳むことで天蓋フレームの回動領域を小さくすることができる。したがって、天蓋フレームの回動軌跡における最高位置が低くなるので、重さをあまり感じることなく、作業者の操作性、及び作業者又は周囲への安全性が向上される。
【0015】
また、保持部材によって天蓋フレームを折り畳んだ状態のまま回動させることができる。そのため、手動回動途中で先端フレームの揺動によって天蓋フレームの重心が変動することがなく、天蓋フレームが全開される際(サイドゲート外側方に回動される際)でも作業者が不意な重量変化を感じないで手動回動を安定して行うことができる。その他、先端フレームが基端フレームに垂れ下がることもないので、先端フレームが揺動して作業者や周囲の人に衝突することもなく、安全面でも好ましい。
【0016】
天蓋フレームの折り畳みによりその回動半径が短くなるので車両外側への張り出し領域も小さくなる。特に、先端フレームが基端フレームの収容部に収容されるので、折り畳み状態の天蓋フレームにおける厚みを小さくすることができるので天蓋フレームを展開した際の車両幅方向の長さも抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るサイドゲート及び天蓋装置を示す車両の側面図である。
【図2】第1の実施形態に係る天蓋フレームを車両側方から見た側面図である。
【図3】第1の実施形態に係る天蓋フレームの回動操作を示す車両後方から見た天蓋フレームの模式図である。
【図4】第1の実施形態に係る天蓋フレームのロック装置の平面図および側面図である。
【図5】第2の実施形態に係る天蓋装置を示す車両の側面図である。
【図6】第3の実施形態に係るサイドゲート及び天蓋装置を示す車両の側面図である。
【図7】第3の実施形態に係る天蓋フレームを車両側方から見た側面図である。
【図8】第3の実施形態に係る天蓋フレームの回動操作を示す車両後方から見た天蓋フレームの模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明に係る荷受台昇降装置について、図面を用いて実施形態の一例を説明する。
(第1の実施形態)
【0019】
図1(a)は本実施形態の荷箱10とその天蓋装置20とを示しており、車両を左側から見た側面図である。説明の便宜上、天蓋装置20は、荷箱10における起立状態のサイドゲート1と同様に鉛直方向に沿って立ち上がった状態で示している。
【0020】
荷箱10は、ダンプカー等の車両(不図示)に架装されており、車両前後方向に延びた車体枠上11で後ろ下がり状態に傾動自在な構成となっている。荷箱10は、車両後方端部(図中の右側端部)における下部にブラケット12を有しており、ブラケット12が車体枠11の後端部に対してピン13を介して軸支されている。また、図示はしないが、ブラケット12よりも前方側(図中の左側)で、荷箱10と車体枠11との間に傾動装置が配されている。この傾動装置は、周知の装置であり、油圧ポンプからの圧油により伸縮する油圧シリンダによって構成されている。油圧シリンダは、一端部が車体枠11に連結されて他端部が荷箱10に連結されており、油圧シリンダが伸長するとピン13を中心に荷箱10が傾動し、油圧シリンダが収縮すると荷箱10は水平状態に戻る。
【0021】
荷箱10は、床面3に対して車両側方側で立設する左右一対のサイドゲート1と、車両後方側で立設するテールゲート2と、車両前方側で立設するフロントパネル(不図示)とで囲まれてなる構成を有する。
【0022】
テールゲート2は床面3の後端部に設けられた下部ヒンジ21を中心として車両後方で矢印R1の方向に回動可能に構成されている。テールゲート2の高さは、図示のとおり、サイドゲート1よりも低く設定されており、車両後方から見て荷箱10には、テールゲート2の上方に後方開口部が形成されている。本実施形態に係る荷箱10は、その後端部が車体枠11の後端部と略一致するように架装されており、いわゆる軽自動車(道路運送車両法の施行規則で定められている軽自動車)仕様のものである。そのため、荷箱10の傾動中心となるピン2aまでの地上高も比較的低く、上述のようにテールゲート2の高さをサイドゲート1よりも低く設定することで矢印R1に沿って後方に回動(上開き)させた際に、上端部2bが地面に衝突することを防止できる。
サイドゲート1は、床面3に対して固定した状態で配されている。
【0023】
天蓋装置20は、サイドゲート1の上端部で回動可能に軸支されており、所定の枠形状を有する天蓋フレーム200と、天蓋フレーム200に掛けられるシート22と、天蓋フレーム200をサイドゲート1に対して回動可能に軸支する軸受け部材23と、天蓋フレーム200の回動を規制するロック装置24とを有する構成である。この天蓋装置20は、天蓋フレーム200の一部がサイドゲート1に対して、ストッパ部材25を介して取り付けられている。
【0024】
天蓋フレーム200は、車両前後方向に沿ってサイドゲート1と同程度の長さを有する。軸受け部材23はサイドゲート1の上端部に3つ配されている。天蓋フレーム200においてサイドゲート1に近接した位置に配された支軸21aが、軸受け部材23に軸支されており、天蓋フレーム200はサイドゲート1の外側方(図1紙面手前側)と内側方(図1紙面奥側)との間を回動可能となっている。本実施形態に係る天蓋フレーム200は、上述のとおり、軽自動車に架装される荷箱10に設けられる大きさなので、作業者が直接手で把持して回動させることができる程度の重量となっている。
【0025】
シート22は、図示のとおり、天蓋フレーム200が外側から見えるように天蓋フレーム200に対して荷箱の内方側に掛けられており、この掛けられた状態で荷箱10の上方を覆う上方被覆部と、それ以外の後方被覆部とで形成されている。上方被覆部の端部には天蓋フレーム200に沿って複数の穴部211aが設けられている。図示は省略するが、紐をこれらの穴部211aに通して天蓋フレーム200に括り付けることで、シート22が天蓋フレーム200に掛けられている。なお、荷箱10の上方開口部を覆うように天蓋フレーム200を回動させた状態で、シート22の後方被覆部で荷箱10の後方開口部を覆うように、シート22(後方被覆部)を下方に張架させる。後方被覆部の張架は、端部に配されたゴム212等をテールゲート2の所定位置に設けられたフック(不図示)等に掛けることで行われる。シート22が荷箱10に対して掛けられることで、荷箱10の上方開口部や後方開口部から積み込まれた土砂や塵等の飛散を防止できる。
【0026】
軸受け部材23はサイドゲート1の上端部に配された頂板23aに溶着されている。この頂板23aは車両前後方向に沿って見ると、L字状の断面形状を有しており、サイドゲート1の上面部全体を覆うように配されている。頂板23aには、車両前後方向に沿って、所定間隔だけ離れた2本の連結シャフト23bが溶着されている。
【0027】
連結シャフト23bは、図1(b)及び図1(b)中となるA−A断面の図1(c)に示すように、サイドゲート1の外側面1aに設けられた筒状部材14に挿通されている。連結シャフト23bは、先端231bが筒状部材14から突出しており、その先端231bがストッパ部材25によってサイドゲート1に固定されている。ストッパ部材25は、断面凹形状のプレート25aと、このプレート25aに対して連結シャフト23bの先端231bを固定するボルト25b、ナット25cとで構成されている。
【0028】
つまり、図2(a)で示すように、天蓋フレーム200は、支軸21aが軸受け部材23に軸支された状態で一体的にサイドゲート1に取り付けられる構成である。なお、図1中のストッパ部材25を解除することで、天蓋フレーム200等は簡単にサイドゲート1から取り外すことができる。また、取り付けることも簡単に行うことができる。
次に、天蓋フレーム200の構成について説明する。
【0029】
天蓋フレーム200は、支軸21aに連結された基端フレーム201と、基端フレーム201の先端部に配されたシャフト202と、シャフト202に軸支された先端フレーム203とを有し、シャフト202を回動中心として、先端フレーム203が基端フレーム201に対して折り畳み可能な構成となっている。
【0030】
基端フレーム201は、図2(a)の状態で車両外側方(紙面手前側)に開口した断面略コ字状のチャンネル材で構成されている。車両前後方向(図中の左右方向)を長手方向とする第1基端フレーム201aと、鉛直方向(図中の上下方向)を長手方向とする3本の第2基端フレーム201bとを有している。
【0031】
シャフト202は、車両前後方向を長手方向とする延伸部材であり、第2基端フレーム201bの先端部に配されている。第2基端フレーム201bの先端部にボスが配されており、当該ボスにシャフト202が挿通された構成となっている。なお、シャフト202に関しては、車両前後方向に沿って天蓋フレーム200と同等の長さを有するように延伸した形状ではなく、それぞれの第2基端フレーム201bの幅と略同等長さに延伸した形状でも構わない。
【0032】
先端フレーム203は、シャフト202の周面を覆っているボスに連結されており、シャフト203を中心軸として基端フレーム201に回動自在に配されている。先端フレーム203はパイプ状部材で構成されており、車両前後方向を長手方向とする第1先端フレーム203aと、鉛直方向を長手方向とする3本の第2先端フレーム203bとを有しており、第2先端フレーム203bが上記のボスに連結されている。
【0033】
基端フレーム201とシャフト202と先端フレーム203とを組み付けることで、天蓋フレーム200は、図示のとおり、略四角形の外枠を有するとともに格子状の内枠とを有する。なお、ボスに先端フレーム203が連結されているが、基端フレーム201に対して先端フレーム203が回動自在であればこれに限定されず、例えば基端フレーム201がボスに固定されている構成でも構わない。
【0034】
天蓋フレーム200の折り畳みに関しては、図2(b)のように基端フレーム201のコ字状断面の内方側に形成される収容部210に収容されるようにして行われる。先端フレーム203が収容部210に収容されることで、天蓋フレーム200が折り畳み状態であっても、天蓋フレーム200の車両幅方向の厚みを小さくすることができる。その結果、車両全体の幅も小さくすることができる。
【0035】
先端フレームの回動操作は作業者が天蓋フレーム200のうち車両後方側に設けられた把持部を直接把持することで行われる。具体的には、先端フレーム203の側方部には第1把持部204が配されており、作業者は第1把持部204を把持してシャフト202を中心とした回動操作(天蓋フレーム200の折り畳み)を行う。第1把持部204にはピン状部材206が配されており、天蓋フレーム200が折り畳まれた際に、ピン状部材206が基端フレーム201の側方部に固定されたキャッチ部材207と係合される。キャッチ部材207にはピン状部材206と嵌合可能な断面Ω状の係合部を有する。上述したピン状部材206とキャッチ部材207とが天蓋フレーム200の折り畳み状態を保持する保持部材として機能する。これら保持部材によって、作業者は天蓋フレーム200を折り畳み状態のままサイドゲート1の内側方から外側方まで回動させることができる。
【0036】
荷箱10の上方の開口部に対する天蓋フレーム200の開閉操作について図3を用いて説明する。図3は、車両後方から見た車両左側の天蓋フレーム200の模式図である。説明の便宜上、公報から見える他部材の図示は省略している。
本実施形態の特徴部分となる「折り畳み状態を保持した天蓋フレーム200の手動回動」効果について、図3(a)を用いて説明する。
【0037】
略一直線状で閉状態の天蓋フレーム200を回動させてサイドゲート1の外側方で開状態(図3(a)の二点鎖線部の状態)にする際、先ず先端フレーム203を基端フレーム201の収容部210(図2参照)に収容する(矢印R3)。この先端フレーム203の回動操作R3は、実線で示されている閉状態の天蓋フレーム200に対して行う(第1把持部204を把持して行う)ため、比較的低い位置で行うことができる。ここで、第1把持部204は先端フレーム203のうち回動先端側(シャフト202を中心とする回動半径においてシャフト202に対して遠方側)に設けられているので、比較的重量を感じることなく矢印R3の手動回動を行うことができる。また、ピン状部材206とキャッチ部材207との係合も図示のとおり、サイドゲート1の高さと略同等の高さ位置(高さH1)の場所で行うことができるため、作業者にとっては作業し易い。
【0038】
次に、折り畳み状態の天蓋フレーム200をサイドゲートの外側に回動させて開状態(矢印R4、R5)とする際、基端フレーム201に設けられた第2把持部205を作業者が直接把持して行う。第2把持部205は、基端フレーム201のうち回動先端側(支軸21aを中心とする回動半径において支軸21aに対して遠方側)に設けられている。よって、折り畳み状態の天蓋フレーム200を比較的重量を感じることなく矢印R4、R5の手動回動を行うことができる。また、第2把持部205が設けられている位置は、天蓋フレーム200が略一直線状のときに、中間部となる位置であり、天蓋フレーム200の回動を手動で行う作業者にとっては比較的低い高さ位置(高さH2)となっている。したがって、天蓋フレーム200の回動中心となる支軸23aに近い位置を把持する場合よりも小さい力で天蓋フレーム200を回動させることができる。これは、第2把持部205と天蓋フレーム200の重心位置との位置の違いが要因となる。天蓋フレーム200が略一直線状であれば、重心位置はシャフト202と同等の距離だけ回動中心となる支軸21aから離れた位置となる。第2把持部205は支軸21aから近い位置にあるので、矢印R5への回動操作の際に作業者は大きな負荷を感じることになる。一方で、本実施形態に係る回動操作は、先端フレーム203を基端フレーム201に折り畳むので、折り畳まれた天蓋フレーム200の重心位置は第2把持部205よりも支軸21aに近い位置となる。したがって、作業者は回動操作に比較的大きな負荷を感じることはない。さらに、矢印R6のように下方回動させる際にも、第2把持部205よりも支軸21aに近い位置に重心があることから、回動速度が不意に大きくなることはなく、安定した回動操作をすることができる。同時に、天蓋フレーム200が折り畳まれていることで回動半径が小さく、車両外方に必要なスペースも抑制することもできる。また、保持部材によって天蓋フレーム200の折り畳み状態が保持されるので、手動回動中に先端フレーム203が揺動して基端フレーム201に垂れ下がるようなこともないので、周囲に対する安全面も確保することができる。
【0039】
開状態の天蓋フレーム200を閉状態にするには、上述した作業(矢印R3、R4、R5)の作業を反対に順次行えばよい。この場合も、天蓋フレーム200は折り畳み状態を保持したままなので高い位置まで手を伸ばした手動回動を回避することができる。また、仮に図3(b)のように、基端フレーム201と先端フレーム203とが略一直線状に伸びた状態で両フレーム201、203を一体的に回動操作させることもできる(矢印R6)。基端フレーム201の先端部で、かつ、シャフト202に対して荷箱内方側(図中の右側)にはプレート208が固着されている。先端フレーム203はシャフト202を中心に回動可能となっているが、基端フレーム201に対して荷箱外方側から荷箱内方側へ回動された後で基端フレーム201とともに略一直線状となれば、さらに荷箱内方側に回動されることがプレート208によって規制される。つまり、プレート208は基端フレーム201に対する先端フレーム203の回動を規制するために配されており、天蓋フレーム200が閉状態(図中の二点鎖線部の状態)のときに、天蓋フレーム200が略一直線状を維持することができる。
【0040】
本実施形態に係る天蓋装置は、閉状態となった際にロック装置24によってその回動が規制されて閉状態が維持される。ロック装置24は、図1(a)に示されており、車両後方側のサイドゲート1上端部に配されている。天蓋フレーム200が閉状態に回動されると、支軸21aの後方側に設けられた筒状の被係合部241とロック装置24とが略同じ高さとなる。このようにサイドゲート1の上部に配されたロック装置24は、作業者が回動操作時に注視する天蓋フレーム200の近傍に配されているので、作業者が目視し易い。特に、操作スペース上、天蓋フレーム200の回動操作を行い易い車両後方にロック装置24が配されているので、作業者は天蓋フレーム200の回動操作に引き続いて、その場でロック装置24の操作を行うことができる。
【0041】
図4を用いてロック装置24を具体的に説明する。図4(a)は左側を車両前方側とするロック装置24の平面図で、図4(b)は車両左側から見たロック装置24の側面図である。ロック装置24は、車両前後方向に伸びる筒状カバー24aと、筒状カバー24aに内装されたシャフト24bと、バネ部材24cと、シャフト24bに取り付けられて筒状カバー24aに設けられた切欠き部241aから上方に突出したハンドル24dとを備えている。なお、バネ部材24cは、筒状カバー24aの内方端部に一端が固定されて、シャフト24bを車両前方側に付勢するように設けられている。切欠き部241aは、筒状カバー24aの上方側で車両前後方向を長手方向とする上方切欠き部2411aと、上方切欠き部2411aの後端部から筒状カバー24aの側方部にかけて形成された側方切欠き部2412aとを有する。
【0042】
図4のロック装置24は、サイドゲート1の内側方に倒して閉状態とした際の被係合部241に対して、シャフト24bの先端部241bを車両前方に突出させて係合した状態である。反対に、閉状態の天蓋フレーム200を開状態とするため回動させる際には、ハンドル24dを把持し、バネ部材24cの付勢力に抗して車両後方にシャフト24bをスライドさせる。このとき、シャフト24bの先端部241bと被係合部241との係合状態が解除され、ハンドル24dを側方切欠き部2412aの領域に回転させることでロック装置24によるロック解除状態を維持することができる。筒状カバー24aと被係合部241とは、天蓋フレーム200が閉状態のとき、高さは略一致するが、車両後方から見て中心位置は車両幅方向に少しだけずれた状態となる。筒状カバー24aが被係合部241に対して荷箱内方側に位置していることで、シャフト24b外周面が被係合部241の内周面のうち荷箱内方側と当接し、天蓋フレーム200の起立方向への回動が規制される。ロック装置24による天蓋フレーム200の回動規制(ロック)は、ハンドル24dを車両前方にスライドさせるだけで良いので簡単である。
【0043】
フロントパネル等で天蓋フレーム200の回動作業にスペースの点で制限がある車両前方側よりも、作業者が作業を行い易い車両後方側からロック装置24も視認し易く、天蓋フレーム200の回動作業後のロック装置24の操作も簡易であり、作業効率の面で大きな効果がある。また、側方切欠き部2412aの位置にハンドル24dが配されているときは、ハンドル24dがサイドゲート1の外側方に突出するので、天蓋フレーム200の回動が規制されていない(非ロック)状態であることを作業者が視認しやすい。
【0044】
なお、基端フレーム201に先端フレーム203を収容する収容部210を有する構成としたが、基端フレーム201をパイプ状部材からなる構成とするとともに先端フレーム203をチャンネル材からなる構成とし、先端フレーム203に収容部210を有する構成としても良い。また、両フレーム201、203ともチャンネル材からなる構成としても良い。
収容部210の形状に関しては、チャンネル材が断面コ字状とすることで設定されるが、チャンネル材の断面形状は略L字状等でも構わない。
【0045】
収容部210に収容された先端フレーム203に関しては、折り畳み状態の天蓋フレーム200の車両幅方向への厚みを低減できる効果があれば収容部210に完全に収容されていなくても構わない。
(第2の実施形態)
【0046】
本実施形態では第1の実施形態と異なり、先端フレームと基端フレームが車両前後方向に沿って異なる位置に配された構成を有している。第1の実施形態と異なる部分を中心に図5を用いて説明する。
【0047】
先端フレーム303は、図5に示すように、2つの略コ字状のフレームが車両前後方向に並んで組み付けられてなる。この略コ字状フレームはそれぞれ、車両前後方向(図中左右方向)に伸びる第1先端フレーム303aと、第1先端フレーム303aと交差する方向(図中上下方向)に伸びてシャフト302に連結されてなる第2先端フレーム303bとで構成されている。2つの略コ字状フレームは図示するように互いの第2先端フレームにプレート部材306が架設されている。
基端プレート301は第1の実施形態に係る基端プレート201と同様の形状を有している。
【0048】
先端フレーム303が連結されるボスは基端フレーム301のうちの隣り合う2本の第2基端フレーム301bの内側に配されている。つまり、先端フレーム303のうちの1つのコ字状フレームにおける車両前後方向に沿った外側寸法L1は、隣り合う第2基端フレーム301bの間の寸法L2よりも短く設定されている。また、第2先端フレーム303bの延伸方向の長さは第2基端フレーム301bの延伸方向の長さよりも短く設定されている。このような構成により、先端フレーム303を基端フレーム301に対して折り畳むように回動操作(矢印R7)した際、先端フレーム303は基端フレーム301(第1基端フレーム301a及び第2基端フレーム301b)とシャフト302とで囲まれてなる収容部307に収容される。この収容部307に収容されることで、折り畳まれた状態の天蓋フレーム300の車両幅方向への厚みを上記の天蓋フレーム200と同様に抑制することができる。天蓋フレーム300が折り畳まれた際、プレート部材306が2本の第2基端フレーム301bに当接して、先端フレーム303の回動が規制される。
【0049】
第1の実施形態と異なり、収容部307に先端フレーム303が収容される構成とすることで、仮に基端フレーム201がチャンネル材で構成されていて損傷等によりそのチャンネル形状が変形しても、確実に収容部307には先端フレーム303を収容できる。なお、車両全長を越えない設定であれば、図5のように先端フレーム303が第2基端フレーム301b同士の内側に収容される構成ではなく、外側に収容されるような構成にしても良い。つまり、基端フレーム301の枠内に先端フレーム303が収容される場合、又は先端フレーム303の枠内に基端フレーム301が収容される場合のいずれでも、天蓋フレーム300を折り畳んで回動操作性が向上し、天蓋フレームにおける車両幅方向の厚みが抑制されていれば同様の効果を得ることができる。
【0050】
なお、図示は省略しているが第1の実施形態と同様に、天蓋フレーム300が折り畳まれた状態の際に天蓋フレーム300の折り畳み状態を保持する保持部材(ピン状部材とキャッチ部材)が配された構成とすることで、折り畳み状態を保持したままサイドゲートの外側方と内側方との間における手動回動を簡易に行うことができる。
(第3の実施形態)
本実施形態では、第1及び第2の実施形態と異なる部分を中心に説明する。なお、第1の実施形態と同じ構成を有するものについては同じ符号が付されている。
【0051】
図6に示すように、シート220が天蓋フレーム400上に配されている。天蓋フレーム400はサイドゲート1に配されてその外側方と内側方との間を手動回動可能である。
【0052】
シート220は、支軸42を除いた天蓋フレーム400に被さるように配されており、図中の下端部220aは複数設けられた孔部220b等を用いてサイドゲート1に固縛する。天蓋フレーム400が閉じた状態(サイドゲート1の内側方に手動回動した状態)のとき、シート220のうちの後方被覆部が車両後方に垂れ下げて荷箱の開口部分を覆うことができる。天蓋フレーム200を手動回動する際には、シート220の後方被覆部を上方被覆部側に折り返し、第1把持部404と第2把持部405とを露出させる。その後、作業者が第1把持部404、第2把持部405を順次把持して手動回動を操作する。本実施形態のように、シート220を天蓋フレーム400上に配することで、天蓋フレーム400が閉じた状態のときに天蓋フレーム400の下に配される状態と比較してシートが撓みにくいので雨水等も溜まりにくく好適である。
【0053】
天蓋フレーム400は、基端フレーム401が4本の第2基端フレーム401bを有し、先端フレーム403が3本の第2基端フレーム403bを有する構成となっている。先端フレーム403の第2先端フレーム403bの長さL43は、基端フレーム401の第2基端フレーム401bの長さL41よりも長く設定されている。したがって、図7(b)のように先端フレーム403を基端フレーム401に折り畳んだ際に、先端フレーム403の第1先端フレーム403aは基端フレーム401の第1基端フレーム401aよりも下側に位置する。
【0054】
本実施形態に係る天蓋フレーム400にも、手動回動の際にその折り畳み状態を保持することができる保持部材が設けられている。具体的には、この保持部材は、先端フレーム403の第1先端フレーム403aにおいて車両後方側(図中右側部分)に細径部403cが設けられるとともに、基端フレーム401の第1基端フレーム401aの下側にキャッチ部401cが設けられてなる構成を有している。キャッチ部401cには車両前後方向に伸びる溝部が形成されており、当該溝部は細径部403cが嵌合される大きさに設定されている。したがって、天蓋フレーム400が折り畳まれた際に細径部403cがキャッチ部401cに嵌合されることで、天蓋フレーム400の折り畳み状態が保持される。また、先端フレーム403のうち車両前方側の第2先端フレーム403dにはクッション部材403dが取付けられており、基端フレーム401の第1基端フレーム401aの下側にもクッション部材401dが取付けられている。これらのクッション部材401d、403dは、天蓋フレーム400が折り畳まれた際に相対するフレーム403a、401bに当接するので、折り畳み時の衝撃を抑制することができる。なお、保持部材401c、403cやクッション部材401d、403dは、上述した位置に限定されることなく、天蓋フレーム400の形状によって適宜変更可能である。
天蓋フレーム400は図8で示すような状態で手動回動される。図8は車両後方から見た天蓋フレーム400を示している。
【0055】
車両前後方向に沿った両端に位置する基端フレーム401の第2基端フレーム401bと先端フレーム403の第2先端フレーム403bとには、それぞれシャフト402側の端部にプレート状のストッパ部材4011、4031が固設されている。図8(a)のように先端フレーム403を基端フレーム401に回動(矢印R31)させた状態では、シャフト402を挟んで上下に基端側ストッパ4011と先端側ストッパ4031とが位置する。実線部分のように天蓋フレーム400が折り畳まれた状態では、先端フレーム403は車両後方から見て大部分が基端フレーム401と重ならないように位置している。これにより、第1把持部404と基端フレーム401との間で一定距離を保つことができるので、第1把持部4040を把持した作業者の安全性を高めることができる。なお、矢印R31とは反対側に回動させて先端フレーム403が基端フレーム401とともに略一直線状に伸びた状態(一点鎖線部分)では、先端側ストッパ4031が基端側ストッパ4011に当接する。両ストッパ4011、4031が当接することで、先端フレーム403が基端フレームに対して約180度以上に回動することを防止することができる。
【0056】
折り畳まれた状態の天蓋フレーム400は、図8(b)のようにサイドゲート1の内側方から外側方に回動(矢印R41)される。先端フレーム403表面にはサイドゲート1との干渉を抑制するためのクッション部材406が配されている。特に、本実施形態では第1実施形態と比較して折り畳み状態の天蓋フレーム400の厚みが大きくなるのでサイドゲート1と接触し易くなるが、上記のクッション部材406によってサイドゲート1に対する天蓋フレーム400の衝撃力を低減することができる。
(その他の実施形態)
【0057】
天蓋フレーム200の折り畳みに関する構成については、先端フレーム203が基端フレーム201に対して折り畳まれるように回動する構成としたが、先端フレーム203と基端フレーム201との間に中間フレーム等を設けてさらに複数に折り畳まれる構成としても良い。
【0058】
また、天蓋フレーム200は、左右のサイドゲート1にそれぞれ設ける構成としたが、いずれか一方のみに設ける構成とし、1つの天蓋フレームのみで荷箱10上方をシートで覆う構成としても良い。
【0059】
その他、ロック装置24、240に関しては、サイドゲート1の上部であれば、上面に限らず、その近傍でも構わない。さらに、車両後端部に限らず、作業者の作業効率が低下しない範囲であれば、異なる場所に配しても構わない。特に軽自動車の場合、車両前後方向におけるサイドゲート1の長さも制限されるため、作業者が早期に操作できる場合には車両前方に設けていても構わない。
【0060】
上述した荷箱10は、後ろ下がりに傾動操作されるダンプカー等に架装されるものとしたが、傾動装置を備えていない車両や軽自動車以外の車両等でも手動操作される天蓋装置が配されたものにも適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明は、車両に架装された全ての種類の荷箱に対して有用である。
【符号の説明】
【0062】
1 サイドゲート
2 テールゲート
3 床面
10 荷箱
11 車体枠
20 天蓋装置
22 シート
23 軸受け部材
24 ロック装置
25 ストッパ部材
200 天蓋フレーム
201 基端フレーム
202 シャフト
203 先端フレーム
204 第1把持部
205 第2把持部
206 ピン状部材
207 キャッチ部材
208 プレート(規制部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷箱のサイドゲート上部に設けた軸受け部材と、
当該軸受け部材に軸支された支軸と、
当該支軸を有して前記サイドゲートの外側方と内側方との間で手動回動される荷箱の天蓋フレームと、
を備えており、
前記天蓋フレームは、前記支軸に連結された基端フレームと、当該基端フレームの回動側先端部に配されたシャフトと、当該シャフトに軸支された先端フレームとを有し、
前記先端フレームと前記基端フレームとには、前記シャフトを回動中心として前記先端フレームが前記基端フレームに折り畳まれた状態を保持する保持部材が設けられている
ことを特徴とする荷箱の天蓋装置。
【請求項2】
前記手動回動の際に把持される把持部が前記天蓋フレームの車両後方側に設けられており、
当該把持部は、前記先端フレームのうち前記シャフトを回動中心とした回動先端側に設けられた第1把持部と、前記基端フレームのうち前記支軸を回動中心とした回動先端側に設けられた第2把持部とを含む構成を有する
ことを特徴とする請求項1に記載の荷箱の天蓋装置。
【請求項3】
前記基端フレームと前記先端フレームとの一方には、前記先端フレームが前記シャフトを中心に手動回動される際に、前記基端フレームと前記先端フレームとの他方が収容される収容部が設けられている
ことを特徴とする請求項1または2に記載の荷箱の天蓋装置。
【請求項4】
前記天蓋フレームは、前記先端フレームが、前記基端フレームに対して前記サイドゲートの外側方から内側方へ手動回動されて張り出す構成を有しており、
前記先端フレームが張り出した際に前記先端フレームの手動回動を規制する規制部材が、前記基端フレームの先端部に配されている
ことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の荷箱の天蓋装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−28327(P2013−28327A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−259716(P2011−259716)
【出願日】平成23年11月29日(2011.11.29)
【出願人】(000002358)新明和工業株式会社 (919)