説明

荷重巻上げワイヤーロープ用のドラム張力印加方法及び装置

【課題】対象物を降ろさなければならない場合の持上げを、必要な作業現場のクレーンが実行することを可能にするロープ張力システム。
【解決手段】ドラム張力印加方法は、前記荷重巻上げライン24の第1端部が第1ドラムに連結され、前記荷重巻上げラインの第2端部が第2ドラムに連結され、前記荷重巻上げラインがブームシーブとフックブロック26を通して掛け回される。引止め力を第2ドラムに加えるステップと、第2ドラムへの引止め力より大きい巻回力を第1ドラムに加えるステップと、フックブロックの移動を制限しながら、巻上げ力と引止め力を加えるステップとを含み、それにより、荷重巻上げラインを、第2ドラムからブームシーブとフックブロックを通り第1ドラムまで荷重巻上げラインの張力を維持しながら巻き取り、その結果荷重巻上げラインが、あらかじめ第2ドラムに巻回されていたものよりも大きい張力で第1ドラムに巻回される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クレーンの荷重巻上げラインとして使用されるワイヤーロープに張力を印加する方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
クレーンの最も一般的な使用法は、対象物を地表面から高い位置に持上げることである。地面から持上げるとき、クレーン総負荷は、対象物と、フックブロックおよび対象物との間の索具と、フックブロックと、ブームトップの下方のワイヤーロープの重さとの合計である。荷重巻上げラインの各部分によって分配された重さの総和は、荷重巻上げラインの引張り力(荷重巻上げ平均ライン引張り力)に等しい。ドラムでの荷重巻上げラインの実際の張力である荷重巻上げリードラインの引張り力は、滑車における摩擦と他の僅かな不具合により、平均のラインの引張り力より若干強い。対象物が持上げられ索具がまずピンと張られると、対象物の重量がリードラインの引張り力を増し、対象物が持上げられるとき、荷重巻上げロープがドラムにしっかりと確実に巻き取られる。
【0003】
長尺のロープを巻き取るとき、適切なリードライン張力を維持することが現状の問題となっている。ワイヤーロープが初めにドラムに取り付けられるとき(工場でクレーンが製作されるとき、又は現場で新しいラインが取付けられるときのいずれにおいてでも)、工場又は現場の取付け作業員は、「引止め」装置を使用してドラムに巻き取られるときのワイヤーロープに張力をかける。このことは、ワイヤーロープがドラムに堅く巻きつけられ、後に荷重がラインにかけられたとき、ロープはその下の層に食い込むことにはならないということを確実にする。
【0004】
しかしながら、クレーンの中には、持上げの初めより持上げの後のより低い高さに最終的に行く対象物を巻上げるために使用されるものがある。幾つかのこのような典型的な例は、クレーンが対象物を地下道の立抗に降ろす場合である。他の例は、機器の一部を修理する、又は取替える必要がある場合であり、その機器の一部は、移動する必要がある場所に比べて高い位置にあり、例えば、風力発電組立品であり、一般に、支持タワー上のナセルと呼ばれる。ナセルは、構成要素の故障のために、又はナセルをより強力な或いはより効率的なユニットに変更するために、取り外して降ろす必要があり得る。ナセルをタワーから取り外し、地面に降ろすために使用され得るクレーンは、90メートル(295フィート)のメインブームに7メートル(23フィート)伸長された上部ブームポイントを加えて装備されてもよい。フックブロックは荷重巻上げラインの6つの部分で装備されてもよい。この状態で必要とされる荷重巻上げワイヤーロープ長は700メートル(2300フィート)である。クレーンが長さ700メートルの最小荷重巻上げワイヤーロープを装備して、ドラム上に巻き取られたロープを最小にし、ドラムのロープの層を最小にしたとしても、700メートルのワイヤーロープを有する標準的な最小荷重巻上げドラムは、6層のロープを有し得る。
【0005】
対象物をより高い高さからより低い高さに移動する巻上げ操作を考慮すると、まず、フックブロックと索具を、最小の荷重巻上げリードラインの引張のみがある間に、吊上げなければならない。フックブロックが高い高さに吊上げられると、ドラムはその上に、極めてゆるく巻き取られた6層のロープを有する。対象物がフックブロック索具に取り付けられ、その支柱から持上げられるとき、荷重巻上げリードラインの引張り力は大きく増加する。巻取り問題は、対象物が地面に降ろされるときのこれらのある種の持上げにおいて報告されている。ドラム上のロープの間隙は、フランジの近く及び重なり部分で生じるように思われる。低位の層に引き込んでいるロープも報告されている。
【0006】
最終の層の巻付けが、ドラムフランジ及び既にドラム上にあるロープの間の空間に収まる限り、ロープの直径が大きいほど、うまく巻き取る。最大でラギング溝間のピッチまで、ロープの直径が大きいほど、ロープはより密接にドラムに詰められ、間隙ができる空間がより小さくなる。また、ロープの密接な巻付けにより、対象物を持上げるとき、層の上部に割り込む可能性が減少する。しかしながら、ロープの直径はあまり大きくはできない。もし、ラギング溝間のピッチより大きければ、ラギングに適切に収まることはできない。また、ロープは、そのまま形を崩して(楕円形になる)、ドラムの周りに巻きつけられ、そうするとこのことはドラム上のロープの有効幅を増す。この増加した幅は、最終の巻付けがフランジに隣接したドラムに適切に収まらない可能性があり、これはロープが早く次の層に上がる原因になるであろう。
【0007】
(低い張力で巻き取られた)張りの緩いロープは、低い層であっても巻き取りの問題を起こす。荷重巻上げロープの緩く巻き取られた層は、増加したリードラインの引張り力を支えることができない。リードラインは、ロープの幾つかの層を通りぬけ、それ自体を下方に追いやる(傷つける)であろう。最悪の場合には、リードラインは外側の層の下に追いやられてしまう。そのとき、外側の層はリードラインをからませて、該リードラインを解かせなくする。ここで、対象物は空中で動きがとれなくなる。
【0008】
緩く巻き取られたロープの問題に対する多くの異なる解決法が提案されてきた。もし、より大きいドラムの直径が、ロープのより少ない層の状態で使用されるなら、ラインが、その下方の層に食い込む機会はより少なくなるであろう。しかしながら、このやり方は、作業現場間の公道を通る運搬のため、部分的に分解されるように製作されている、特に大型クレーンにとって、それらのクレーンは、典型的には既に最大公道制限に合わせて設計されているので実際的でないかもしれない。加えてより大きなドラムはより高価で、クレーンの他の構成要素の寸法を増し、クレーンの現場での扱いをより難しくする。
【0009】
その他の提案は、摩擦力を、ロープ自体又はロープと係合するプーリーのどちらかにかける動きを含み、フックブロックが、それに取り付けられる対象物なしに吊上げられているときのロープの張力を増す。この範疇の考案は、クレーンの牽引ウインチ(ロープが2つのホイールの周りに複数回巻き付く)を含み、ブレーキ片又はホイールがロープを締め付ける。これらの構想の各々が難点を有する。ロープに対する摩擦力の係合は、ロープの摩耗を増し、次にロープの耐用年数を減らす。追加プーリーの周りに巻付けるシステムは、ロープにさらに屈曲を作り出し、特にプーリーの直径が小さいとき、さらに、ロープの耐用年数を減らす。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
このようにして、特に長いロープ長を使用するとき、対象物が降ろされる前に何らかの形で荷重巻上げラインをドラムに密着させるために、ロープの移動経路において余分な屈曲動作を追加することなく、又はロープを摩擦力で係合することなく、対象物を降ろさなければならない場合の持上げを、必要な作業現場のクレーンが実行することを可能にするロープ張力システムが開発され得るなら、大きな利点があるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0011】
フックブロックが、対象物に容易に取り付けられる地点まで吊上げられた後、対象物を降ろすために使用されることになるロープが、張力をかけた方法で巻上げドラムに巻回されることを可能にする装置と方法が発明された。クレーンは2つのドラムを使用し、荷重巻上げラインは、連続的に掛け回され、単一のラインの両端が2つの異なるドラムに取付けられる。フックブロックが所望の位置に吊上げられ、引止め力が第1ドラムに加えられ(ラインは巻き取られ中である)ており、一方、第2ドラムは自身にラインを巻き取るために回転させられ、従って引止め力は、適切な張力を第2ドラムにラインを堅く巻回するために加える。
【0012】
第1の態様において、本発明は連続的に掛け回された荷重巻上げラインを有するクレーンを操作する方法であり、荷重巻上げラインの第1端部が第1ドラムに連結され、荷重巻上げラインの第2端部が第2ドラムに連結され、荷重巻上げラインがブームシーブとフックブロックを通して掛け回されており、本方法は、a)引止め力を第2ドラムに加えるステップと、b)第2ドラムへの引止め力より大きい巻回力を第1ドラムに加えるステップと、c)フックブロックの移動を制限する一方、該巻回及び引止め力を加えるステップであって、それにより、荷重巻上げラインを、第2ドラムからブームシーブとフックブロックを通り第1ドラムまで荷重巻上げラインの張力を維持しながら巻き取り、その結果荷重巻上げラインが、あらかじめ第2ドラムに巻回されていたものよりも大きい張力で第1ドラムに巻回される。
【0013】
第2の態様において、本発明は、地面係合部材を有する下部体と、地面係合部材に対して旋回できるように下部体に回転可能に連結されている上部体と、上部体に第1端部で枢動可能に装着されたブームと、荷重巻上げラインであって、第1端部がクレーンの第1ドラムに連結され、第2端部がクレーンの第2ドラムに連結されており、ブームの第2端部にあるシーブを通され、更にブームから吊るされたフックブロック中のシーブを通されている、荷重巻上げラインと、荷重巻上げラインの張力に関する状態を検知するクレーンのセンサーと、センサーと接続され、クレーンの少なくとも幾つかの操作を制御するコンピュータプロセッサーと、コンピュータ読み取り可能記憶媒体であって、その中に組み込まれ、コンピュータプロセッサーによって実行可能であるプログラミングコードを含み、荷重巻上げラインが第2ドラムから第1ドラム上に巻き取られる間、荷重巻上げラインの張力に関連する状態を示すセンサーからの信号を受け取り、且つ第1ドラムに加えられる巻回力を制御する、記憶媒体とを、含むクレーン。
【0014】
フックブロックの移動の制限は多くの異なる方法で実現し得る。1つの可能性は、最終的に持上げられることになるフックブロックを対象物に取付けるが、荷重巻上げラインに、対象物を持上げることを必要とされるものより小さい張力を保つことである。別の可能性は、フックブロックを一塊のカウンターウェイトなど別の対象物に連結することであり、該対象物は地面に留まることができ、又は僅かに地面から持上げられてでもよい。或いは、クレーンの前方に装着されたウインチが、フックブロック上に引下げるために使用されこともできる。これらの全ての技法で、ロープは、対象物が持上げられるとき使用されるものより小さいライン引張で、第2ドラムに巻き取られることができる。この低量のライン引張は、ロープに、ロープが取り出されるドラム上のロープに割込むようにさせるほど十分でない。しかしながら、ロープはその後、第1ドラムに密着できるように十分な張力で第1ドラムに巻回され、対象物が降ろされるときには、該第1ドラムから取り出されることになる。その張力は、ロープが第1ドラムに堅く巻回されることを可能にし、その結果、対象物が一度持上げられると、ロープが下に横たわる層に食い込むことはない。これらの及び他の本発明の利点、並びに本発明それ自体は、添付の図面を考慮すれば、一層容易に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明のドラム張力印加の装置及び方法を利用している移動式リフトクレーンの第1の実施形態の側面図である。
【図2】本発明のドラム張力印加の装置及び方法を利用している移動式リフトクレーンの第2の実施形態の側面図であり、降ろされる必要がある対象物が置かれているところへ、吊上げられているフックブロックを示している。
【図3】図2のクレーンの側面図であり、対象物に取付けたフックブロックと、一方のドラムからもう一つのドラムに巻き取られている荷重巻上げラインを示す。
【図4】図2のクレーンの側面図であり、対象物に取付けたフックブロックと、支柱から吊上げられている対象物を示す。
【図5】図2のクレーンの側面図であり、フックブロックと、地面に降ろされている対象物を示す。
【図6】本発明のドラム張力印加の装置及び方法を利用している移動式リフトクレーンの第3の実施形態の側面図であり、ブームトップを示す。
【図7】図6のクレーンの上端部分の側面図であり、ブームトップに追加された上部ブームと、装備されたフックブロックを示す。
【図8】本発明のドラム張力印加の装置及び方法を利用している移動式リフトクレーンの第4の実施形態の側面図であり、伸張した上部ブームポイントを有するブームトップと、フックブロックとブームトップの間に収まるように追加されたフレームとを示す。
【図9】図8のクレーンの側面図であり、ブームトップと、伸張した上部ブームポイントと、フレームとを示し、ブームトップとフレームが、さらにフックブロックを吊上げることを制限する所まで、フックブロックが吊上げられた状態を示す。
【図10】図1から図9のクレーンのいずれかと共に使用され得るベイルリミットセンサーの斜視図である。
【図11】図10のベイルリミットセンサーの上面図である。
【図12】コンピュータプログラムサブルーチンの主な機能を示す第1フローチャートであり、本発明の方法を実行するとき、クレーンの制御に使用され得るフローチャートを示す。
【図13】コンピュータプログラムサブルーチンの主な機能の代替一式を示す第2フローチャートであり、本発明の方法を実行するとき、クレーンの制御に使用され得るフローチャートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
ここで本発明がさらに説明される。以下の節では、本発明の種々の態様がさらに詳細に定義される。そのように定義される各態様は、明確にそれに反する旨が示されない限り、任意の他の1つ又は複数の態様と組み合わされてもよい。特に、好ましい、又は有利であるとして示される任意の特徴が、好ましい、又は有利であるとして示される任意の他の1つ又は複数の特徴と組み合わされてもよい。
【0017】
本明細書及び特許請求の範囲において使用されるいくつかの用語は、以下のとおり定義される意味を有する。
【0018】
用語「地面係合部材」はクレーンの下部体を支持する構造を意味する。移動式リフトクレーンにおいて、地面係合部材は、典型的には軌道を有するクローラ又はタイヤである。他のクレーンは台座又は他の固定構造物に取り付けられてもよく、この場合、地面係合部材は地面に固定された固定構造物の各部である。台船搭載クレーン上で、クレーンを台船に固定しているクレーンの各部分は本発明に関する地面係合部材と考えられる。
【0019】
用語「ブームトップ(boom top)」又は「ブームのトップ(top of boom)」は、フックブロックと共に掛け回される前に、荷重巻上げラインが通る滑車又はプーリーを支持するブームの一部分を意味する。従って、ブームトップは、使用される場合、上部ブームポイントと、伸張した上部ブームポイントと、ジブ(固定された又は起伏する)又は中間フォールとを備えていてもよい。典型的には補巻きロープのために使用されるが、本発明では連続して掛け回される荷重巻上げラインのために使用される上部ブームポイント上の滑車は、ブームトップの一部分と見なされる。また、語句「ブームの第2端部にあるシーブ」の中の、ブームの第2端部は、ブームの極端な端部に限定されるものではなく、フックブロックに通す前に荷重巻上げラインが掛け回されるシーブを支持するのに使用されるブームの一部分を指している。例えば、タワークレーンでは、シーブであって荷重巻上げラインがそこからフックブロックまで下方に移動するシーブは、ブームに沿ってどの点に有ってもよいので、トロリはブーム上の前後に移動する。
【0020】
所定の長さに亘って均一の直径を有するワイヤーロープを記述している用語「均一な」は、直径が商業上受け入れ可能な限界内で均一である、即ち市販されているロープは直径の小さいばらつき、通常は0%から+5%、を有するであろう。このようなワイヤーロープは、均一の直径を有すると見なされる。このことは、2つの異なるワイヤーロープが、端と端を結合され、例えば、8mmのロープに結合された28mmのロープなどの、異なる商業上の指定直径を有する状態と区別される。このように結合された組み合わせのロープは、たとえ1つの連続したロープであると見なされても、ロープ間の結合部を含む全長に亘って均一の直径を有することにならない。
【0021】
用語「高さ」は、対象物に言及する時、対象物が吊るされる時の対象物の底部の位置、又は対象物の地面上若しくは他の何らかの支持物上にあるときの対象物の底部の位置を意味する。
【0022】
語句「所定の張力範囲」の中の用語「所定の」は、巻取り操作の前に決定される値を意味する。その値は、オペレータによって設定される値でよい。より典型的には、コンピュータプログラムにより設定された範囲から、クレーン設置のパラメータを考慮している値を選定してもよく、その値は例えば、ドラム上のロープの長さ、ドラムの寸法、ロープの寸法及びフックブロック索具で使用されるライン部分の数である。
【0023】
本発明は、多くの種類のクレーンへの適用の可能性を有するが、付属の図に種々のブーム構成で示されている、移動式リフトクレーンに関連して説明するものとする。図示される4つの異なる構成のクレーンがあり、それらは、図1におけるクレーン10、図2−5におけるクレーン110、図6−7に見られるクレーン210の各部分、及び図8−9に見られるクレーン310の各部分である。また、本発明のいくつかの方法は、それらが連続的な掛け回しで装備される限り、従来技術のクレーンを使用して実施され得ることを留意されたい。そのことは、本発明の利点の一つであり、それは、多くの既存のクレーンに大幅な修正することなしに実施され得る。もちろん、本発明の方法は、以下で考察される追加の特徴を、修正し含むクレ-ンで、より容易に実行され得る。
【0024】
クレーン10は図1で操作形態として示される。従来型の移動式リフトクレーンと同様に、クレーン10は、下部体とも称される下部構造体を含み、該構造体はカーボディ12およびクローラ14の形態の可動地面係合部材を含む。2つのクローラ14があり、図1の側面図では、そのうちの1つだけ見ることができる。クレーン10において、地面係合部材は、各側にフロントクローラ及びリアクローラの、二組のクローラを備えることもできる。もちろん、図示されるもの以外の追加のクローラを使用することができ、さらには、タイヤなどの別の種類の地面係合部材を使用することもできる。
【0025】
回転台20は、上部体とも称されるクレーン10の上部構造体の一部分であり、回転台が、地面係合部材に対して旋回できるように、回転自在にカーボディ12に連結される。クレーン10において、回転台は、旋回リングを有するカーボディ12に装着され、該リングはリングギアを含んでおり、その結果、回転台20は地面係合部材14に対して軸線を中心に旋回することができる。回転台は、その前方部に枢動自在に装着されたブーム22と、ライブマスト28であってその第1の端部で装着されたライブマスト28と、該マストと回転台の後方部との間に接続されたブーム巻上げ索具と、カウンターウェイトユニット34とを支持している。カウンターウェイトは、個々のカウンターウェイト部材が支持部材上に複数積み重ねられた形態であってもよい。
【0026】
ブーム巻上げ索具は、ワイヤーロープ25の形態のブーム巻上げラインを備え、該ラインはブーム巻き上げドラム30に巻回され、下部イコライザ37及び上部イコライザ38の滑車に掛け回される。ブーム巻上げドラムは、回転台に接続されたフレームに装着される。索具はまた、ブーム上端と上部イコライザ38との間に接続された固定長ペンダント21も備え、ライブマスト28の上端に装着される。下部イコライザ37は回転台20に直接接続される。この構成により、ブーム巻上げドラム30を回転させると下部イコライザ37と上部イコライザ38との間のブーム巻上げライン25の長さが変化し、それにより回転台20とライブマスト28との間の角度を変え、次に回転台20とブーム22との間の角度を変えることが可能となる。ライブマスト28を使用するのではなく、クレーンには固定マスト又はデリックマストを、固定マスト又はデリックマスト及びブームとの間の角度を変えられるようにイコライザを再配置する状態で、装備することもできる。或いは、ブーム角度をブーム巻上げ機構用の油圧シリンダを使用して制御することもできる。
【0027】
荷重巻上げライン24は、回転台に接続された第1の荷重巻上げ主ドラム40に巻回される。荷重巻上げライン24の第2の端部は第2の主荷重巻上げドラムに巻回され、該ドラムはブームに装着され、それにより回転台に間接的に装着される。荷重巻上げライン24はブーム上のロープガイド27を通過し、且つブームのトップ及びフックブロック26の滑車に掛け回される。回転台20は、移動式リフトクレーンに一般的に存在する運転室などの他の要素を備える。必要であれば、図1に示されるように、ブーム22は伸張した上部ブームポイント29を含んでもよい。或いは、起伏ジブが主ブームの上端に枢動自在に装着されることもできるし、別のブーム構成が使用されてもよい。伸張した上部ブームポイント29が使用されるとき、荷重巻上げライン24がブームの上端において掛け回される滑車が、実際は、伸張した上部ブームポイント上に配置される。荷重巻上げライン24は連続して掛け回されるので、2つの滑車の組44、46がブームの上端にあり、該滑車の組を通して荷重巻上げラインがフックブロック26の滑車と共に掛け回される。しかしながら、シーブの組44、46の一方は1つのシーブを有するだけでもよく、該シーブは、荷重巻上げラインがフックブロックに移動する前にブームトップにおいて通過するプーリーの役を果たす。
【0028】
クレーン10は、本発明の好ましい方法に有用である2つの主要な機能を有する。すなわち、1)荷重巻上げラインの張力と関連する状態を検知するクレーンのセンサー、及び、2)クレーンのコンピュータプロセッサーであって、該センサーと接続され、コンピュータプログラム又は作動可能な他のコンピュータ実行可能コードを実行し、荷重巻上げラインの張力に関連する状態を示す信号をセンサーから受け取り、且つドラム40、42の一方に加えた巻回力を制御し、その間、荷重巻上げラインを他のドラムから巻き取るためのコンピュータプロセッサー、である。本明細書では、語句「と連結された」は直接的に連結される又は1つ以上の中間構成要素を介して間接的に連結されることを意味する。そのような中間構成要素には、機械的なコンピュータハードウェア及びコンピュータソフトウェアベースの構成要素が挙げられ得る。センサーは、移動式クローラクレーンに月並みに見られないが、それ自体必ずしも独自である必要はない。
荷重巻上げライン張力センサーは公知であり、この点に関して、公知のタイプのセンサーが使用されてよい。クレーン10では、1つの実施形態によると、センサーは荷重巻上げラインが通過するブームトップに装着された荷重検知シーブ48を含む。センサーは、荷重巻上げラインによって荷重検知シーブに加えられた圧縮力を検知することによって、荷重巻上げラインの張力を測定する。この点に関して、荷重巻上げラインは、第1ドラムから、荷重シーブを越えて、第2ドラムの周囲に送られ、荷重シーブはリードラインの引張り力に関するデータを提供する。
【0029】
クレーンのコンピュータプロセッサーであって、該クレーンの少なくともいくつかの操作を制御するコンピュータプロセッサーもまた公知である。このようなコンピュータプロセッサーは、コンピュータ使用可能媒体と接続されてもよく、該媒体は、そこに含まれたコンピュータ読み込み可能プログラムコードを有する。荷重巻上げライン張力センサーなどのセンサーに接続されたコンピュータプロセッサーもまた公知である。この点に関してもまた、本発明は公知のクレーンの構成要素を使用してもよい。しかし、好ましい実施形態においては、プログラムコードは、コンピュータプロセッサーによって実行され、荷重巻上げライン張力に関する状態を示す信号をセンサーから受け取り、その後、ドラム40、42の一方に加えられた巻回力を制御し、その間、荷重巻上げラインが、その張力に基づき他方のドラムから巻き取られる。
【0030】
クレーン10に見られる幾つかの別の構成要素があり、それらは本発明の好ましい実施形態に対して特に有用である。好ましくは、ドラム40及び42は、ベイルリミットセンサーを各々備えている。図10と図11は、例示的なベイルリミットセンサーアセンブリ50を示し、該アセンブリはクレーン10,110のいずれに使用されてもよく、図は特にクレーン10のドラム40に関連して示されている。ベイルリミットセンサーアセンブリ50は、その設計において従来型であり得る。ベイルリミットセンサーアセンブリ50はベースプレート52と、ベースプレート52に枢動可能に装着されたアーム54と、アーム54の端部に回転可能に装着されたローラー56とを含む。ベースプレート52は、ベイルリミットセンサーをドラム40に近接してクレーンに装着する。ベースプレート52とアーム54の間に装着されたスプリング58は、図11に示すように、ドラムのワイヤーロープ又はドラム自体に接触して、ローラー56を保持する。ワイヤーロープ24は、ドラムに巻回されると、ドラム40のラギング溝43に収まり、ローラー56をドラムから離れる方向に押すことになる。ワイヤーロープ24の層毎に、ローラー56及びアーム54をドラム40からますます離れる方向に押すことになる。当然ながら、ワイヤーロープ24がドラム40から取り除かれると、ローラー56及びアーム54はドラム40にますます近づき得る。センサー60は、ベースプレート52とアーム54上の伸張部57の間に連結されて、ローラー56の下部の、ワイヤーロープの最後の層がドラム40から無くなると検知する。センサー60はこの状態を検出するリミットスイッチを含む。ベイルリミットセンサーアセンブリ50は、ドラム40の側部から内向きに3本のロープ直径周囲に配置されることにより、ロープ24の最後の層がドラム40から無くなり、且つローラー56がドラム40の表面に接触するとき、ドラムには少なくとも3巻き、好ましくは4巻きのロープ24がいまだ有ることになる。センサー60は、従来の方法でインターフェース(図示せず)に接続されることにより、ローラー56の位置は、コンピュータ用の入力として使用することができ、該コンピュータはクレーンの他の機能を制御するのを補助するベイルリミットセンサーの位置を使用する。センサー60は、代わりに、ベースプレートに対するアームの複数の相対位置を検出するように設計されることもでき、当然、該相対位置はドラム40のワイヤーロープ24の層数に直接関連付けられ、この情報はコンピュータに提供される。
【0031】
本発明は、ドラム40及び42それぞれが荷重巻上げラインの長さに直径に対比したある直径と長さを有するとき、最も有用であり、それは、フックブロックがブームトップに出来る限り近接しているとき、ワイヤーロープが一方のドラムに少なくとも3層の深さであるようになっている。追加の層、例えば1つのドラムに6又は7層により、本発明の利点は増す。
【0032】
荷重巻上げライン24は、好ましくは均一の直径を有するワイヤーロープより成り、該均一の直径は該ロープのドラム40に連結された第1端部からドラム42に連結された第2端部までその長さ全体に亘っている。荷重巻上げライン24は、型圧縮された外側ストランド(die−compacted outer strands)を有するワイヤーロープから成ってもよい。ワイヤーロープは、典型的には約16mmと約50mmの間の直径を有する。
【0033】
巻回力は、好ましくは油圧油の加圧源により生成され、コンピュータ読み込み可能プログラムコードは、好ましくは油圧モータに加えられた油圧油の圧力を制御するために実行されるようになされている。機上のコンピュータ内に埋め込まれたクレーン制御は、オペレータの制御操作入力に基づいた巻上げ機能を制御するのに利用されてもよい。コンピュータは、一般に移動式リフトクレーンに使用されている電気油圧制御を使用して油圧装置を制御してもよく、その結果、例えば、該コンピュータはソレノイドの作動の信号を送り、該ソレノイドはパイロットバルブを開閉し、次に該バルブは別の油圧バルブを開閉することになる。即ち、該コンピュータは油圧ポンプ制御又は電気変位制御の一回の動作を制御して圧力を制御してもよい。好ましくは、引張工程の間ラインを巻き取っているドラムの引止め力もまた、油圧油の加圧源に接続された油圧式モータによって発生させられ、コンピュータ読み込み可能プログラムコードもまた、好ましくは、引止め力を生じさせる油圧モータに加えられた油圧油の圧力を制御するために実行されるようになされている。油圧モータの代わりに、電気モータもまたドラム上の力を提供するために使用されることもできる。コンピュータはこうしたモータを操作する電気信号の制御に使用されることも容易にできる。或いは、第2ドラムの引止め力は、機械的ブレーキにより提供される。
【0034】
ワイヤーロープの製造業者はワイヤーロープ破断力の2%から5%の力でドラムにロープを巻き取ることを推奨している。しかしながら時には、巻き取りは破断力の1%の力でなされてもよい。定格ライン引張り力とロープ破断力の間の5から1の設計安全係数を使用するとき、これは、巻き取り力が定格ライン引張り力の5%から25%であるべきことを意味することになる。定格ライン引張り力は、クレーンが所定の作業のために設置されるときの公知のパラメータであるので、第1ドラムに加えられた巻回力は制御され、巻回力が加えられる前に決められた所定の張力範囲内で荷重巻上げラインを第2ドラムから第1ドラム上に巻き取るのが好ましい。好ましくは、所定の張力範囲は、荷重巻上げラインの定格ライン引張り力の約5%と約25%の範囲で抑えられる。
【0035】
本発明の方法を、クレーン110の第2の実施形態を示す図2から図5に関連付けて説明してゆく。クレーン110は、ブーム122がより長いことを除きクレーン10と同じ物である。風力タービンを支持するのに使用されているタワー102の隣に設置されたクレーン110を示す。描かれた方法では、荷重巻上げライン124は、風力発電ナセル104を降ろすのに使用されることになる(タービンブレードは既に取り外されており、図示されていない)。より詳細に説明されるとおり、該方法の基本的なステップは、a)第2ドラムに引止め力を加えるステップと、b)第2ドラムの引止め力よりも大きい巻回力を第1ドラムに加えるステップと、c)フックブロックの移動を制限しながら、巻回力と引止め力を加えるステップであって、それにより、荷重巻上げラインを、第2ドラムからブームトップとフックブロックのシーブを通り第1ドラムまで荷重巻上げラインの張力を維持しながら巻き取り、その結果荷重巻上げラインが、あらかじめ第2ドラムに巻回されていたものよりも大きい張力で第1ドラムに巻回される。図示した方法の実施形態において、第1ドラムはブームに装着されたドラム142であり、第2ドラムは回転台に装着されたドラム140である。当然、両ドラムを逆に使用することもでき、第1ドラムはドラム140となり、第2ドラムはドラム142となる。
【0036】
好ましい手順は、上記に列挙したものに加えて追加のステップを含む。図2に示す好ましい手順の第1のステップは、フックブロック126と索具をドラム140を使用して所望の高さまで吊上げることである。この場合、フックブロックを実質的に荷重の無い状態で荷重巻上げラインを第2ドラムに巻回することにより、対象物に取り付けることができる高さまでフックブロックを吊上げる。矢印111は荷重巻上げライン124がドラム140によって巻き取られているのを示し、フックブロックが吊上げられているのを矢印112によって示す。この第1ステップの間、ドラム142は止まったままであるのが好ましい。フックブロック126の吊上げから生じるリードラインの引張り力は、定格ライン引張り力の5%未満が好ましく、定格ライン引張り力の3%前後がより好ましい。
【0037】
次に、図3に示すように、フックブロック126を、持ち上げる対象物、この場合ナセル104に索具131によって取り付ける。ドラム140は、索具131がぴったり合うまで荷重巻上げラインを引き続ける。次に、ドラム140を繰り出し引止めとして使用して、ロープ124をドラム142に巻き取る。ドラム140は引止め力を維持するので、ドラム142でのリードライン引張り力は定格ライン引張り力の5%と25%の間にあり、その間、フックブロックの移動は制限される。フックブロックは対象物に取り付けられて所定位置に保持され、該対象物、この場合持ち上げられるナセル104は最終的には吊上げられるであろう。この操作中、2つのドラム140と142からの合計の力はナセル104を持上げるには不十分であることを理解されるであろう。矢印113は荷重巻上げライン124がドラム140に引き込まれるのを示し、一方矢印114は荷重巻上げラインがドラム140から引き出されるのを示す。
【0038】
次に、図4に示すように、ロープをドラム142に堅く巻き取る状態で、持上げたナセル104を支柱102から持上げることができる。矢印116はフックブロックが吊上げられるのを示す。このことは、図示した方法において、矢印115によって示すように、ドラム142に荷重巻上げラインを巻回することにより行われる。このようにして、荷重巻上げラインを第1ドラムに巻回することにより、対象物を持上げる。或いは、このステップにおいて対象物を持上げるために、第2ドラム又は同時に両方のドラムを使用することもできる。
【0039】
最後に、図5に示すように、ナセル104を地面に降ろすことができる。これは、矢印117に示す、第1ドラム142に巻き付けられる荷重巻上げライン124を巻き戻すことによって行われ、それによって、矢印118に示す、フックブロックと対象物が降ろされる。このステップにおいて、ドラム140は静止状態に保持される。
【0040】
図6と図7は、本発明の方法を実施するのに特に適したクレーン210の上端部分の詳細を示す。図6に、ブーム222の上端にあるブラケットを、明確にするために、取り付けられているシーブ又は上部ブームポイントの無い状態で示す。図7はプーリー246を備える上部ブームポイント223とブラケットに取り付けられたブームトップシーブ244とを示す。
【0041】
図6のブームトップ上のブラケットは、起伏ジブ(図示せず)又はブームの上端に伸張する上部ブームポイントを連結するために使用される2組の雌型ブラケット232と、伸張する上部ブームポイントが使用されないときは、下部ブームポイントのシーブ244を保持するフレームを装着しているブラケット234とを含む。ブラケット236は複数のラグを支持し、該ラグのそれぞれは上部ブームポイントを連結してもよい穴238を含む。図6はまた、ワイヤーロープガイド227、229及びブームの上端222に装着されている荷重検知シーブ248を示す。これらは、その作業位置で示されているが、ピン連結で連結されているので、それらを、ブームトップが作業現場間で運搬されるときに、収容できる位置へと前方に折り畳むことができる。
【0042】
図7は、荷重巻上げライン224の連続的な掛け回し及び荷重検知シーブ248を使用する方法を示す。ライン224は回転台(図示せず)上の第1ドラムから第1ワイヤーロープガイド227まで進み、それから上部ブームポイント223のプーリー246を通過する。そこから、荷重巻上げライン224を、フックブロック226内のシーブまで通し、下部ブームポイント内のシーブ244でラインの多くの部分を使用して掛け回す。ラインの最後の部分を、シーブ224から荷重検知シーブ248及びワイヤーロープガイド229を越えて通し、その後ブーム(図示せず)に装着されたドラムまで下方に進める。荷重巻上げライン224の張力は、それに正比例する力でシーブ248を下方に押すであろうことが分かり得る。荷重検知シーブに組み込まれたセンサーは従来の方法(図示せず)で支援し、信号をコンピュータへの入力(直接に又はインターフェースを介してのどちらか)として提供する。
【0043】
図8と図9はクレーン310の上端部分を示し、図は伸張する上部ブームポイント323がブラケット332に取り付けられている以外クレーン210と同様である。ワイヤーロープガイド327と329はなおブーム322の上端のブラケットに取り付けられている一方、荷重検知シーブ348は伸張する上部ブームポイントに取り付けられている。伸張した上部ブームポイントはシーブ344と346を含み、それを通過して荷重巻上げラインはフックブロック326内のシーブで連続的に掛け回される。
【0044】
高い高さから地面への対象物の移動に加えて、本方法は、ドラムにロープを堅く巻き取るために使用され、対象物をクレーンの高さから地下道の立抗へなど、より低い高さに降下させることができる。本発明は地面を動き回る移動式クローラクレーン以外の用途、例えば深海の石油掘削装置上のプラットホームクレーンなど、を有するので、対象物を持ち上げつつある高さと、対象物を降ろしつつある高さであって、地面の高さを参照するのではなく、i)カーボディ12などのクレーンの地面係合部材を備える下部機構と、ii)上部機構であって、回転台20など下部機構に対して旋回できるように下部機構に回転可能に接続された上部機構との間の、連結部の平面の高さを参照した高さの比較が参考になる。ナセル104を移動するような吊り上げに関しては、この平面は基本的に地面の高さにある。このようにして、いくつかの操作では、図2から図5に図示されるように、持上げの初めに対象物はクレーン上部機構とクレーン下部機構間の連結部上方の高さにあり、それから、上部機構と下部機構間の連結部に近接した高さまで降ろされる。一方、他の時点で、対象物は上部機構と下部機構間の連結部の下方の高さまで降ろされる。
【0045】
本発明の好ましい工程の基本的なステップの一つは、巻回力及び引止め力を加える一方、フックブロックの移動を制限し、1つのドラムから他のドラムにワイヤーロープを移すことである。もし、このステップにおいて、引止め力が第2ドラムに加えられた状態で、フックブロックの移動が制限されなければ、ワイヤーロープが第1ドラムに巻回されたとき、ワイヤーロープが第2ドラムから離れ落ちるよりむしろ、フックブロックがブームトップにより近くに引き寄せられるであろう。フックブロックは、本ステップにおいて、完全に静止している必要はないが、その動きは制限されなければならないことを留意されたい。持上げられる対象物にフックブロックを取付けることに加えて、フックブロックの移動を制限するために意図された、いくつかの他の方法がある。初めに、フックブロックは、その移動を制限するために、持上げられるべき対象物とは異なる対象物に取付けられてもよい。例えば、一塊のクレーンカウンターウェイトが使用されてもよい。この第1の代替方法を使用して、引張操作(それは、所望のライン引張張力が、荷重巻上げラインに引張りステップのためにかけられると生成される持上げ力より対象物が重いとき、生じる)の間、対象物は地面(又は他の何らかの支持物)に留まっていてもよいし、或いは、第2ドラムから第1ドラムへ所定の張力で、荷重巻上げラインを巻き取る操作の間対象物が持上げられて、ほぼ一定の高さに吊るされていてもよい。対象物が持上げられる場合、荷重巻上げラインが第1ドラムに巻回される張力は、対象物の重量に基づくことになり、引止め力と巻回力は、対象物があまりにも高く吊上げられないように確実に制御されなければならない。こうした第1の代替方法は、荷重巻上げラインが第1ドラムへの所定の張力で巻き取られた後、地下道の立杭に対象物を降下させるために使用される操作に、特に有用であり得る。こうした操作において、ブームはかなり短くてもよく、フックブロックを引張操作の間、空中に極めて高く上昇させる必要はない。
【0046】
フックブロックの移動を制限する第2の方法は、クレーンで持上げることができ、荷重巻上げラインに引張操作のために望まれるよりも高い張力を、必要とするであろう対象物とは違って、事実上静止している対象物にクレーンによってフックブロックを取付けることである。それによって、フックブロックは、クレーンが持上げるには重すぎる対象物に、又はクレーンが、地面から引き離すことができない方法で地面に固定されている部材に、取付けられてもよい。クレーン転倒支点からの荷重の範囲は、この方法で考慮され、対象物の重量により生じた荷重モーメント、又は地面から対象物を引き離すことを必要とされるであろう力が大変大きいので、クレーンは、対象物が持上げられるか引き離される前に、転倒することになるであろう。
【0047】
フックブロックの移動が制限される第3の代替方法は、フックブロックを、ブームトップが干渉してフックブロックがさらに吊上げられるのを防ぐ位置まで、吊り上げることである。この方法は、フックブロックとブームトップ間に間隙体(スペーサ)が配置されるときに、フックブロックが干渉する位置まで吊り上げられてもよく、荷重巻上げラインは第2ドラムから第1ドラムに巻き取られる一方、該間隙体はフックブロックとブームップの構成要素を互いに損傷しないように構成される。図8と図9はこの機構を示す。クレーン310は間隙体としての役目を果たすフレーム342が収容されている。本発明の方法を実施するのに、フックブロック326は、図9に示すように、フレーム342に接触するまで吊上げられる。フックブロックは、引止め力が加えられている状態で、荷重巻上げラインが一方のドラムから他方のドラムまで巻き取られる間、この位置に維持される。フレーム342は十分頑丈に構築されているので、ライン324の複数部分の引止め力及び巻回張力により生成された力がフレームを圧壊することはない。フレームはクレーン操作全体を通して、ブームトップに取付けられたままでよい。代わりに、フレームはフックブロックの上端に取り付けることもでき、その場合、該フレームは、フックブロックが地面に近づいた状態で取付けることもできる。その場合、該フレームは引張操作の間取り付けられたままとなるであろうが、その間、荷重は高い高さから地面に降ろされ、別の引張操作が直ちに続こうとしなかった場合、対象物がフックから取り外された後、該フレームが取り除かれることも可能である。
【0048】
フックブロックの移動を制限する第4の代替方法は、フックブロックをクレーンの別の部分に取付けることである。例えば、各クローラーフレーム間の梁は、フックブロックが、張力操作の間、その移動を制限するために取付けられる、結合点を装備されることもできる。
【0049】
荷重巻上げラインの張力に関することを検知できるクレーン内の幾つかの状態がある。例えば、モータにトルクを与え第1ドラムを回転させる油圧油の流体圧力が、(ロープの層がドラム上にあるという印とともに)検知されて、リードラインの引張り力に関する情報の提供に使用されてもよい。ブームがブーム懸架部で支持されているときは、クレーンは、ブーム懸架部の張力を測定するために、ブーム懸架部の荷重ピンを提供され、測定された張力は、(ブーム角度、及びフックブロック索具中のラインの多くの部分の情報とともに、)リードラインの引張に関する情報の提供に使用される。もし、フックブロックの移動がフックブロックを対象物に取付けることにより制限され、また、クレーンがフックブロック中に荷重センサーを提供されるなら、その荷重ピンセンサーは、リードラインの引張り力に関する情報を提供するために使用されてもよい。或いは、荷重センサーが、フックブロックを対象物に取り付けている索具中に設けられ、リードラインの引張り力に関する情報を提供するために使用されてもよい。荷重センサーは、荷重リンクの形態、必要に応じて、荷重ピン又は幾つかの他の荷重セルの形態であってもよい。
【0050】
先に述べたように、荷重巻上げライン中のリードラインの引張り力が計算され得る情報が、巻き取り操作の間収集されるのが好ましく、該情報は、巻き取り操作の間定格ライン引張り力の約5%と25%の間の範囲に、ライン引張り力を維持するために使用される。
【0051】
本発明のクレーンオペレータによって使用される好ましいステップは、下記のごとくである。オペレータは、ドラムの一つを制御し、フックブロックを停止位置まで引張る。前述したように、停止位置は、該ブロックを、吊り上げ対象物、又は他の対象物若しくはクレーン自体に取付ける位置であってもよく、又は該ブロックをブームトップに取付けられた間隙体まで持ってきた位置であってもよい。次に、オペレータは図12に関連して以下に述べる制御プログラム内のロープ引張モードを選択する。次に、コンピュータ制御は、ドラム2を働かせ、ドラム1からドラム2にロープを引張ることになる。制御プログラムの指示で、ドラム1はロープを「引き止め」し、ロープが、ドラム2に巻き取られると、所望の張力を提供するであろう。オペレータが、荷重巻上げラインの十分な長さが移動したと判断したとき、又はベイルリミットセンサーが、ラインの最大量がドラム1から巻き取られたことを知らせたとき、オペレータは、通常の巻上げモード操作を選択し、対象物を取付けてドラム2から降ろすために普通に操作する。その所定の手順は、ベイルリミットに至る前に終えることができる。いったん、ドラム1のロープが第1層まで下がると、必要なら、所定の張力でロープを巻回しながらドラムに巻き戻すことは、望ましい状況であろう。ドラムが終端まで巻き取られないことを確実にするために、第一にベイルリミットがある。
【0052】
図12は第1のコンピュータプログラムサブルーチンのフローチャートを示し、クレーンオペレータが本発明の方法を実施できるようにするために使用されてもよい。サブルーチンが開始すると、プログラムは初めにブロック71で、ロープ引張モードが有効であるかどうか問い合わせる。有効でないなら、クレーンは、標準ロジックで、ポンプと、モータと、ドラム40のブレーキとを制御する操作を続け(ブロック76)、サブルーチンを終了する。サブルーチンは頻繁に繰り返される(例えば、30ミリセカンド毎)ので、ロープ引張モードがオペレータによって有効にされるとすぐに、ブロック71の条件は満たされ、ブロック72でプログラムは、どちらか一方のドラム停止スイッチが開であるかどうかを問い合わせるが、このスイッチが開であることは、オペレータが操作卓のスイッチを、ドラムが使用されるべきであるかどうかを表示するために使用したことを意味する。もし、スイッチが開なら、それは、開回路があることを意味し、ドラムが使用されようとしていなく、「止められた状態」であることを示す。もし、どちらの停止スイッチも開でないなら、ブロック73で、プログラムは、一方のドラムだけが操作命令を有しているかどうかを問い合わせるが、それは、該スイッチがその中立の位置から動かされていることを意味し、オペレータがドラムを回転させようとしていることを示す。もしそうであるなら、ブロック74でプログラムは操作命令がゼロ未満であるかどうかを問い合わせるが、該ゼロ未満は、信号が巻下げ操作を命令していることを意味し、その操作ではワイヤーロープがドラムから巻き解かれる。もし操作命令がゼロ未満であるか、又はブロック73の条件が満たされないなら、又はブロック72で、どちらのドラム停止スイッチも開でないなら、プログラムは実際のライン張力を読み取り、現在の張力が定格ライン引張り力目標の5%から25%を満たすかどうかを判定するために使用される。この実際の張力は、ブロック75で、ブロック81で使用されるメモリに書き込まれ、クレーンはブロック76で標準ロジックを使用し続け、サブルーチンが終了する。
【0053】
もし、一方のドラムだけが操作命令を有し、該操作命令がブロック74でゼロ未満でない(その制御はワイヤーロープをドラムに巻き取る操作を示している)なら、プログラムはブロック77で、どちらかのドラムが、非2ブロック(anti−two block)(ATB)、ベイルリミット、又は荷重モーメントなどの操作限界に達しているかどうかを問い合わせる。もし達していれば、警報がオペレータに送られて、ポンプと、モータと、ブレーキとが、ブロック86で安全な状態に設定され(ポンプはゼロ出力になり、モータは最大押しのけ容積に設定され、ブレーキは作動状態に設定され)、サブルーチンは終了する。しかしながら、もし操作限界がブロック77で事実上達していないなら、サブルーチンは、ブロック78で両方のドラムのブレーキが離されているかどうかを問い合わせる。もし、離されていなければ、モータはブロック84で最大押しのけ容積に調整され(ストローク調整され)、圧力メモリ基準が満たされるまで、圧力フィードバックがブロック85でポンプ制御に使用されて、サブルーチンが終了する。当然、サブルーチンは、再びすぐに走ることになり、このとき、圧力メモリ基準が満たされると、ブレーキは離された状態にあるであろう。
【0054】
もし、両方のドラムのブレーキがブロック78で離された状態にあるなら、サブルーチンはロープ引張操作に進むであろう。ブロック79で、操作命令を有するドラムは、巻き取られるべきドラムとして設定され、もう一方のドラムは引止めドラムとして設定される。ブロック80で、圧力フィードバックは、各モータを目標モータ位置(最小押しのけ容積)まで駆動するために使用され、それは速度を最大にし、且つ最大の制御性を一定のモータ変位を維持することにより提供する。ブロック81で、サブルーチンは、ブロック75で書き込まれた張力を読み取り、それが目標限度(定格ライン引張り力の5%から25%)内にあるかどうかを評価する。もし限度内でなければ、ブロック82で、張力目標が算出されるが、それはライン張力を増加させるか減少させるか、或いは他の方法で操作することを意味し、その結果、該張力目標が限度内に持ってこられる。もし限度内であるなら、又は張力目標が一旦算出されると、ブロック83で、プログラムは、ポンプ命令を所望のライン張力を維持するように制御する。ロープ引張シーケンスは、オペレータが巻上げ制御ハンドルをニュートラルに戻すまで、入力の何かに状態変化があるまで、又はベイルリミットに達するまで、継続するであろう。フローチャートに要点を述べたサブルーチンは、繰り返して呼び出される。従って、もしいずれの判定ブロックの入力に変化があっても、プログラムのフロー及び結果としてもたらされる出力は、サブルーチンの呼び出し毎に変化することができるであろう。巻き取り操作はこのようにして、どの入力(例えば、停止スイッチ、ハンドル、ベイル限度を含む操作限度など)の状態変化によってでも終了することができる。
【0055】
図13は第2のコンピュータプログラムサブルーチンのフローチャートを示し、該サブルーチンは、クレーンオペレータに本発明の方法を実施できるようにするために使用されてもよい。図13のサブルーチンは、図12のサブルーチンに極めて似ている。主な相違は、オペレータのインターフェースに二つの変更を示し、それらは、システムを操作しやすくするように構成された。図12のフローチャートにおいて、一方の荷重ドラムから他方へロープを移動させる間望まれるライン張力は、二つの荷重ドラムのただ一方のみが動作している間、連続的にアップデートされた。図13のフローチャートにおいては、所望のライン張力は、サブルーチンが走るのに先立って、オペレータの入力としてディスプレイのスクリーン(図示せず)を介して処理される。従って、張力をアップデートするいかなる記載も、第2のフローチャートから削除された。第2に、図12のフローチャートは、(ハンドルの値)>0、即ち、意図したドラムが巻き取られ、意図しないドラムが引止めドラムとなるであろうことを示したときだけロープ引張制御は機能している。図13のフローチャートにおいて、ハンドルはどちらの方向にも作動することができ、制御システムは、意図された動きを認識することになり、巻き取りドラムと引止めドラムを適切に割り当てる。
【0056】
図13のサブルーチンが始まると、プログラムは初めに、ブロック171でロープ引張モードが有効であるかどうか問い合わせる。もし、有効でないなら、クレーンは標準ロジックで操作を続けることで、ポンプと、モータ及びドラム40(ブロック176)のブレーキとを制御して、サブルーチンを終了する。しかしながら、ロープ引張モードがオペレータによって有効にされるとすぐに、ブロック171の条件は満たされて、ブロック172でプログラムは、どちらか一方のドラム停止スイッチが開であるかどうかを問い合わせる。もし、開でなければ、プログラムは、一方のドラムだけがハンドル命令を有するかどうか問い合わせる。もし、ブロック173の条件が満たされないなら、又はどちらのドラム停止スイッチもブロック172で開なら、クレーンは標準ロジックをブロック176で使用し続けて、サブルーチンを終了する。
【0057】
もし、一方のドラムだけが操作命令を有するなら、プログラムはブロック177で、どちらか一方のドラムが操作限度を有するかどうかを問い合わせる。もし有するなら、警報がオペレータに送られ、ポンプと、モータ及びブレーキは、ブロック186で安全な状態に設定されて、サブルーチンを終了する。しかしながら、もしブロック177で、実際には操作限度がないなら、サブルーチンはブロック178で、両方のドラムのブレーキが離されているかどうかを問い合わせる。もしそうでないなら、モータはブロック184で最大押しのけ容積に調整され(ストローク調整され)、圧力メモリ基準が満たされるまで、圧力フィードバックがブロック185でポンプ制御に使用されて、サブルーチンが終了する。当然、サブルーチンは、再びすぐに走ることになり、このとき、圧力メモリ基準が満たされると、ブレーキは離された状態にあるであろう。
【0058】
もし、両方のドラムのブレーキがブロック178で離された状態にあるなら、サブルーチンはロープ引張操作に進むであろう。ブロック179で、操作命令が使用され、どのドラムが巻き取られるべきか、及びどのドラムが引き止めドラムであることになるかを決定する。ブロック180で、圧力フィードバックが使用され、各モータを目標モータ位置の状態に駆動する。ブロック183で、プログラムは、ポンプ命令を所望のライン張力を維持するように制御し、該命令はオペレータによって入力された後、ロープ引張シーケンスが始められる。このようにして、コンピュータはポンプを制御し、所望の張力を実現する。図12のサブルーチンのように、ロープ引張シーケンスは、オペレータが巻上げ制御ハンドルをニュートラルに戻すまで、停止スイッチを開くか、ベイル限度に達するかなど入力の何かに状態変化があるまで、継続するであろう。
【0059】
記載された実施形態の幾つかの態様は、ソフトウェアモジュールまたは構成要素として示されている。ここに使用されるとき、ソフトウェアモジュール又は構成要素は、どのような形式のコンピュータ命令又はコンピュータ実行可能コードを含んでもよく、該命令又はコードはメモリ装置内に置かれ、及び/又はシステムバス又は有線若しくは無線ネットワークに電気信号として送信される。ソフトウェアモジュールは、例えば、1つ以上のコンピュータ命令の物理又は論理ブロックを含んでもよく、それは、1つ以上の特定の抽象データ型のタスク又はインプリメントを実行するルーチン、プログラム、コンポーネント、データ構造体などとして纏められてもよい。
【0060】
ある実施形態では、特定のソフトウェアモジュールが、メモリ装置の異なる位置に記憶された異種の命令を含んでもよく、該メモリ装置は、記述されたモジュールの機能を一堂に実装している。実際、モジュールは単一の命令又は多数の命令を含んでもよく、幾つかの異なるコードセグメントに亘って、異なるプログラムの間で、及び幾つかの記憶装置のいたるところに割り当てられてもよい。いくつかの実施形態は、タスクが通信ネットワークを介してリンクされた遠隔処理装置によって実行される、分散型のコンピュータ環境で実施されてもよい。分散型のコンピュータ環境で、ソフトウェアモジュールは、ローカルの、及び/又はリモートのメモリ記憶装置に置かれてもよい。
【0061】
開示された実施形態は、さまざまなステップを含んでもよく、該ステップは、機械実行可能命令に組み込まれ、汎用コンピュータ又は専用コンピュータ(又は他の電子装置)によって実行されてもよい。或いは、該複数のステップは、それらを実行するための特定のロジックを備えるハードウェア構成要素によって、又はハ−ドウェア、ソフトウェア、及び/又はファームウェアの任意の組み合わせによって、実行されてもよい。実施形態はまた、コンピュータ・プログラム・プロダクトとして提供されてもよく、該プロダクトは、機械又はコンピュータ読み取り可能媒体を含み、該媒体はそこに、コンピュータ(又は他の電子装置)をプログラムして、本明細書に記述された処理を実行するのに使用され得る命令を記憶している。機械又はコンピュータ読み取り可能媒体には、限定されないが、フロッピー(登録商標)ディスク、光ディスク、CD−ROMs、DVD ROMs、ROMs、RAMs、EPROMs、EEPROMs、磁気又は光カード、普及媒体又は他の形式の媒体/電子命令を記憶するために適した機械読み取り可能媒体、が挙げられる。例えば、記述された処理を実行する命令は、リモートコンピュータ(例えば、サーバー)から要求をするコンピュータ(例えば、クライアント)に、搬送波に含まれたデータ信号又は通信リンク(例えば、ネットワーク接続)による別の普及媒体によって送られてもよい。
【0062】
本発明は、ドラムに漫然と巻き取られた長尺のワイヤーロープで、重い荷重を降下させることに伴う問題を解決するのに、好都合である。その方法は、ブレーキ片或いは他の装置同士の間で、ワイヤーロープを、ロープに摩擦摩耗をもたらしやすいことになる摩擦により係合することなく、且つロープの移動経路で余分なたわみ動作が加わることなく実施できる。また、本発明は、クレーンに通常あるもの以外の極僅かの追加構成要素で利用され得る。実際、クレーンが2つのドラムを有し、荷重巻上げラインが連続して掛け回される限り、当該方法は、ロープの追加が、2つのロープがブームトップを越えて適切に連続して掛け回されるように誘導するなど、クレーンへの最小変更で実施され得る。本発明の好ましい実施形態を実施するための他の最小の変更は、ベイルリミット及び荷重検知シーブを含む。コンピュータプログラムは、巻き取り操作中ドラム操作を同期するために使用されてもよい。荷重巻上げラインの張力に関する状態を検知するセンサーがクレーンで使用されるなら、本方法は、新規のサブルーチンを走らせるコンピュータ処理を使用して実施され得て、荷重巻上げラインが一方のドラムから他方へ巻き取られるとき、適切な張力を維持することを支援する。このことは、既存のクレーンに容易に適合され得るようにし、その結果、それら最小の変更は本発明を実施するために使用され得る。
【0063】
本明細書に記載された現下の好ましい実施形態への種々の変更及び修正は当業者には明らかであろうことが理解されるべきである。例えば、張力のある状態で巻き取られてきた荷重巻上げラインを使用して、取り外されている蒸留塔を降ろすなど、多くの他のリフト操作に、本発明を利用することができる。また、本発明は、タワークレーン、トラック搭載クレーン、伸縮式クレーン及びその他のラチスクレーンなど、別の形式のクレーンに使用することができる。そのような変更及び修正は、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、且つその意図した利点を損なうことなく行うことができる。従って、そのような変更及び修正は、添付の特許請求の範囲に包含されることが意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続的に掛け回された荷重巻上げラインを有するクレーンを操作する方法であって、前記荷重巻上げラインの第1端部は、第1ドラムに連結され、且つ前記荷重巻上げラインの第2端部は、第2ドラムに連結されており、前記荷重巻上げラインは、ブームシーブ及びフックブロックを通して掛け回される方法であって、
a)引止め力を前記第2ドラムに加えるステップと、
b)前記第2ドラムへの前記引止め力より大きい巻回力を前記第1ドラムに加えるステップと、
c)前記フックブロックの移動を制限する一方、前記巻回力及び引止め力を加え、それによって、前記荷重巻上げラインの張力を維持しながら、前記荷重巻上げラインを前記第2ドラムから前記ブームシーブ及びフックブロックを通し前記第1ドラムに巻き取り、その結果、前記荷重巻上げラインは、あらかじめ前記第2ドラムに巻回されているよりも大きい張力のもと前記第1ドラムに巻回されるステップと、を含む方法。
【請求項2】
前記フックブロックの移動が、前記フックブロックを対象物に取り付けることによって、ステップc)で制限される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記2つのドラムからの合計の力が、前記対象物を持上げるには不十分である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記対象物を、前記荷重巻上げラインを巻き取る操作の間、前記第2ドラムから前記第1ドラムまで所定の張力のもと持上げて吊るす、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記巻き取りステップの間、前記フックブロックが取付けられた前記対象物が、事実上前記クレーンによって静止している、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記第2ドラムから前記第1ドラムに荷重巻上げラインを巻き取るステップの後、
d)対象物を持上げるステップと、
e)その後、前記第1ドラムの周りに巻付けられる荷重巻上げラインを巻き戻して、前記フックブロック及び前記対象物が降下されるようにするステップと、
を有する、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記フックブロックはまた、前記対象物に取り付けられ、ステップc)において前記フックブロックの移動を制限する、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記フックブロックは、前記対象物とは異なる対象物に取り付けられ、ステップc)において前記フックブロックの移動を制限するために持上げられる、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
1塊のクレーンカウンターウェイトが前記対象物として使用され、ステップc)において前記フックブロックの移動を制限する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記ブームシーブは、ブームトップに装着され、前記フックブロックの移動は、前記フックブロックが前記ブームトップと干渉してさらに吊上げられることを阻止される位置まで、前記フックブロックを吊上げることによって制限される、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記フックブロックが、前記干渉位置に吊上げられるときに、間隙体が前記フックブロックと前記ブームトップの間に配置され、前記間隙体は、前記荷重巻上げラインが前記第2ドラムから前記第1ドラムに巻き取られる間、前記フックブロック及びブームトップの構成要素が互いに損傷しないように構成されている、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記巻き取りステップの間、前記フックブロックが取り付けられている前記対象物が、前記クレーンの別の部分である、請求項2に記載の方法。
【請求項13】
前記荷重巻上げラインは、定格ライン引張り力を有し、前記定格ライン引張り力の約5%と約25%の間にある張力で、ステップc)で第1ドラムに巻き取られる、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記クレーンは、i)地面係合部材を備える下部体と、ii)前記下部体に対して旋回できるように前記下部体に回転可能に連結されている上部体と、を備え、前記対象物はステップc)の間、前記上部体と前記下部体の間の前記連結部の上方の高さにある、請求項2に記載の方法。
【請求項15】
前記第2ドラムから前記第1ドラムに荷重巻上げラインを巻き取るステップの後、
d)対象物を持上げるステップと、
e)その後、前記第1ドラムの周りに巻付けられる荷重巻上げラインを巻き戻すステップと、をさらに含み、前記フックブロック及び前記対象物は、前記上部体及前記下部体の間の前記連結部に近接した高さに降ろされる、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記クレーンは、i)地面係合部材を備える下部体と、ii)前記下部体に対して旋回できるように前記下部体に回転可能に連結されている上部体と、を備え、前記対象物は、ステップe)の間、前記上部体と前記下部体の間の前記連結部の下方の高さに降ろされる、請求項6に記載の方法。
【請求項17】
前記荷重巻上げラインのリードラインの引張り力が計算され得る情報が、前記巻き取り操作の間収集され、前記情報は、前記巻き取り操作の間前記定格ライン引張り力の約5%と25%の間の範囲に、前記ライン引張り力を維持するために使用される、請求項1から16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記荷重巻上げラインは、前記第1ドラムから、荷重シーブを越えて、前記第2ドラムの周囲に送られ、前記荷重シーブは前記リードラインの引張り力に関するデータを提供する、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
モータにトルクを与え、前記第1ドラムを回転させるために使用される油圧油の流体圧力が検知されて、前記リードラインの引張り力に関する情報の提供に使用される、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記ブームが、ブーム懸架部により支持され、前記クレーンが、前記ブーム懸架部の張力を測定するために、前記ブーム懸架部の荷重ピンを提供され、前記測定された張力は、前記リードラインの引張に関する情報の提供に使用される、請求項17に記載の方法。
【請求項21】
ステップc)の前記フックブロックの前記移動は、対象物に前記フックブロックを取付けることにより制限され、且つ前記クレーンは、前記フックブロック中の荷重センサーを提供され、前記荷重センサーは、前記リードライン引張り力に関する情報を提供するために使用される、請求項17に記載の方法。
【請求項22】
ステップc)の前記フックブロックの前記移動は、対象物に前記フックブロックを取付けることにより制限され、荷重センサーは、前記対象物に前記フックブロックを取付けている索具に設けられ、前記荷重センサーは、前記リードライン引張り力に関する情報を提供するために使用される、請求項17に記載の方法。
【請求項23】
前記荷重巻上げラインが、前記第1ドラム上に所定の張力で巻き取られた後、前記荷重巻上げラインは、風力発電ナセルを降ろすために使用される、請求項1から22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記荷重巻上げラインが、前記第1ドラム上に所定の張力で巻き取られた後、前記荷重巻上げラインは、蒸留塔を降ろすために使用される、請求項1から22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記荷重巻上げラインが、前記第1ドラム上に所定の張力で巻き取られた後、前記荷重巻上げラインは、対象物を地下道の立坑に降ろすために使用される、請求項1から22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
ステップa)、b)、c)に先立ち、前記フックブロックを実質的に荷重の無い状態で前記荷重巻上げラインを前記第2ドラム上に巻回することにより、前記対象物に取り付けることができる高さまで当該フックブロックを吊上げる、請求項2に記載の方法。
【請求項27】
前記荷重巻上げラインは、定格ライン引張り力を有し、ステップa)、b)、c)に先立ち前記フックブロックが吊上げられているとき、前記荷重巻上げラインの前記張力は、前記定格ライン引張り力の5%未満である、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記対象物が、ステップd)で、荷重巻上げラインを前記第1ドラムに巻回することによって持上げられる、請求項6に記載の方法。
【請求項29】
前記第2ドラム上の前記引止め力は、油圧モータによって提供される、請求項1から28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記第2ドラム上の前記引止め力は、機械的ブレーキによって提供される、請求項1から28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
クレーンであって、
a)地面係合部材を有する下部体と、
b)前記地面係合部材に対して旋回できるように前記下部体に回転可能に連結されている上部体と、
c)前記上部体に、第1端部で枢動可能に装着されたブームと、
d)荷重巻上げラインであって、第1端部が前記クレーンの第1ドラムに連結され、第2端部が前記クレーンの第2ドラムに連結されており、前記ブームの第2端部にあるシーブに通され、更に、前記ブームから吊るされているフックブロック中のシーブを通して掛け回されている、荷重巻上げラインと、
e)前記荷重巻上げラインの張力に関する状態を検知する前記クレーンのセンサーと、
f)前記センサーと接続され、前記クレーンの少なくとも幾つかの操作を制御するコンピュータプロセッサーと、
g)コンピュータ読み取り可能記憶媒体であって、その中に組み込まれ、前記コンピュータプロセッサーによって実行可能であるプログラミングコードを含み、前記荷重巻上げラインが前記第2ドラムから前記第1ドラム上に巻き取られる間、前記荷重巻上げラインの張力に関連する前記状態を示す前記センサーからの信号を受け取り、且つ前記第1ドラムに加えられる巻回力を制御する、記憶媒体とを、含むクレーン。
【請求項32】
前記第1ドラムに加えられた巻回力が制御され、該巻回力が加えられる前に決められた所定の張力範囲内で前記荷重巻上げラインを前記第2ドラムから前記第1ドラム上に巻き取る、請求項51に記載のクレーン。
【請求項33】
前記荷重巻上げラインは定格ライン引張り力を有し、前記所定の張力範囲は前記荷重巻上げラインの前記定格ライン引張り力の約5%と約25%の範囲に入っている、請求項32に記載のクレーン。
【請求項34】
前記センサーは、前記荷重巻上げラインが通過する荷重検知シーブを含み、前記センサーは、前記荷重巻上げラインの前記張力を、前記荷重巻上げラインによって前記荷重検知シーブに加えられる圧縮力を検知して測定する、請求項31から33のいずれか一項に記載のクレーン。
【請求項35】
前記荷重検知シーブが前記ブームの第2端部に装着されている、請求項34に記載のクレーン。
【請求項36】
前記第1ドラム及び第2ドラムが、各々ベイルリミットセンサーを装備されている、請求項36に記載のクレーン。
【請求項37】
前記第1ドラム及び第2ドラムは、各々前記荷重巻上げラインの長さと直径に対比したある直径と長さを有し、前記フックブロックが前記ブームトップに最も近接しているとき、前記ワイヤーロープは前記少なくとも一方のドラム上で、少なくとも3層の深さである、請求項31から36のいずれか一項に記載のクレーン。
【請求項38】
前記第1ドラムは前記ブームに装着され、前記第2ドラムは回転台に装着される、請求項31から37のいずれか一項に記載のクレーン。
【請求項39】
前記クレーンは移動式リフトクレーンであり、前記地面係合部材は移動可能な地面係合部材を構成する、請求項31から38のいずれか一項に記載のクレーン。
【請求項40】
前記巻回力は、油圧油の加圧源に連結された油圧モータにより生成され、コンピュータ読み込み可能プログラムコードは、前記油圧モータに加えられた前記油圧油の圧力を制御するために実行されるようになされている、請求項31から39のいずれか一項に記載のクレーン。
【請求項41】
前記荷重巻上げラインは、型圧縮された外側ストランドを有するワイヤーロープから成っている、請求項31から40のいずれか一項に記載のクレーン。
【請求項42】
前記荷重巻上げラインは、均一の直径を有するワイヤーロープより成り、該均一の直径は、前記第1ドラムに連結された該ロープの第1端部から前記第2ドラムに連結された該ロープの第2端部まで、その長さ全体に亘っている、請求項31から41のいずれか一項に記載のクレーン。
【請求項43】
前記コンピュータプログラムコードはさらに、前記荷重巻上げラインが前記第2ドラムから前記第1ドラム上に巻き取られる間、前記第2ドラム上に引止め力を生じるように構成されている、請求項31から42のいずれか一項に記載のクレーン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−26129(P2011−26129A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−168857(P2010−168857)
【出願日】平成22年7月28日(2010.7.28)
【出願人】(510051082)マニタウォック クレイン カンパニーズ, エルエルシー (13)
【氏名又は名称原語表記】MANITOWOC CRANE COMPANIES, LLC