説明

荷重補償装置

【課題】作動リンク自体に与える補償力の影響を少なくし、効率のよい簡易的構成の荷重補償装置。
【解決手段】基台2に回転可能に支持される作動リンク3と、作動リンク3と共に回転する作動リンク回転部材6と、作動リンク回転部材6に対する回転数の比が2対1であるクランク回転部材7と、クランク回転部材7と共に回転可能な第1のクランク部材9と、第1のクランク部材9と同じ長第2のクランク部材10と、第1のクランク部材9の他端と第2のクランク部材10の一端を回転可能に連結するクランク連結部材11と、第2のクランク部材10の他端を回転可能に支持するスライダ13と、スライダ13を案内する案内部材14と、スライダ13に一端を取り付けられ、基台2に他端を取り付けられた弾性部材15と、を備え、作動リンク3が鉛直方向に位置する時、第1のクランク部材9と第2のクランク部材10が直線上に位置し、弾性部材15が自然長となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、マニピュレータ、荷役機械、建設機械、ロボットアーム、ヒューマノイド等に用いる荷重補償装置に関する。
【背景技術】
【0002】
物資運搬作業、土木作業、組み付け作業等では、垂直平面内で回動する作動リンクを備えた機器が広く利用されている。これらの機器は、重力に逆らって作動リンクの自重を支える自重トルクをアクチュエータが負担する必要があるため、駆動効率が低下する問題があった。
【0003】
このため、バネやリンク機構を用いて機械的に作動リンクの角度に関係なく自重トルクを相殺する技術が開示されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4144021号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
現在開発されている機械的な自重補償装置は、作動リンク途中に取り付けられた力点を牽引又は押し上げることで補償トルクを発生している。そのため、作動リンクに直接補償するための力を加える必要があり、その補償力を得るには、モータ等を用いた駆動力の他に、バネやシリンダー等を用いた別の補償力を伝達する力伝達機構を追加する場合がある。このように複数の力伝達機構を追加することで重量の増加、可動範囲の制限や機構自体の複雑化を招く可能性があった。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためのものであって、上記の補償力機構を含む,複数の力伝達機構を1つにまとめることが可能となるため、作動リンク自体に与える補償力の影響を少なくし、効率が良く、簡易的構成の荷重補償装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そのために本発明の荷重補償装置は、基台と、前記基台に回転可能に支持される作動リンクと、前記基台に支持されて前記作動リンクと共に回転する作動リンク回転部材と、前記基台に支持されて前記作動リンク回転部材の回転に対応して回転数の比が2対1で回転するクランク回転部材と、一端を前記基台に支持されて前記クランク回転部材と共に回転可能な第1のクランク部材と、前記第1のクランク部材と同じ長さであって前記第1のクランク部材に対して回転可能な第2のクランク部材と、前記第1のクランク部材の他端と前記第2のクランク部材の一端を回転可能に連結するクランク連結部材と、前記第2のクランク部材の他端を回転可能に支持するスライダと、前記スライダを案内する案内部材と、前記スライダに一端を取り付けられ、前記基台に他端を取り付けられた弾性部材と、を備え、前記作動リンクが鉛直方向に位置する時、前記第1のクランク部材と前記第2のクランク部材が直線上に位置し、前記弾性部材が自然長となることを特徴とする。
【0008】
また、前記作動リンク回転部材は、作動リンクギヤであり、前記クランク回転部材は、前記作動リンクギヤに噛み合うクランクギヤであることを特徴とする。
【0009】
また、前記作動リンクギヤ及び前記クランクギヤは、傘歯歯車であることを特徴とする。
【0010】
また、前記作動リンク回転部材は、作動リンクスプロケットであり、前記クランク回転部材は、クランクスプロケットであり、前記作動リンクスプロケット及び前記クランクスプロケットの外周に巻き掛けられるスプロケット連結部材を有することを特徴とする。
【0011】
また、前記弾性部材は、引っ張りバネであることを特徴とする。
【0012】
また、前記弾性部材は、押しバネであることを特徴とする。
【0013】
また、前記クランク回転部材の回転中心に対して前記第1のクランク部材とは反対側に設置されて前記クランク回転部材と共に回転する第1のカウンタウェイトを有することを特徴とする。
【0014】
また、前記第2のクランク部材を前記スライダに支持するクランク軸部材を有し、前記クランク軸部材に対して前記第2のクランク部材とは反対側に設置されて前記第2のクランク部材と共に回転する第2のカウンタウェイトを有することを特徴とする。
【0015】
また、前記クランクギヤの回転中心と前記クランク軸部材とを結んだ直線に対して、前記第1のクランク部材に線対称な第1のリンク式カウンタウェイトと、前記クランクギヤの回転中心と前記クランク軸部材とを結んだ直線に対して、前記第2のクランク部材に線対称な第2のリンク式カウンタウェイトと、前記クランクギヤの回転中心と前記クランク軸部材とを結んだ直線に対して、前記クランク連結部材に線対称な第1のリンク式カウンタウェイト連結部材と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明では,作動リンク自体に与える補償力の影響を少なくし、効率が良く、簡易的構成の荷重補償装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】第1実施形態の荷重補償装置を示す図である。
【図2】第1実施形態の荷重補償装置の平面図である。
【図3】第1実施形態の荷重補償装置の作動状態を示す図である。
【図4】第2実施形態の荷重補償装置1の作動状態を示す図である。
【図5】第2実施形態の荷重補償装置1の平面図である。
【図6】第3実施形態の荷重補償装置1の作動状態を示す図である。
【図7】第4実施形態の荷重補償装置1の作動状態を示す図である。
【図8】第5実施形態の荷重補償装置1の作動状態を示す図である。
【図9】第6実施形態の荷重補償装置1の作動状態を示す図である。
【図10】第7実施形態の荷重補償装置1の作動状態を示す図である。
【図11】第8実施形態の荷重補償装置1の作動状態を示す図である。
【図12】第9実施形態の荷重補償装置1の作動状態を示す図である。
【図13】第10実施形態の荷重補償装置1の作動状態を示す図である。
【図14】第11実施形態の荷重補償装置1の作動状態を示す図である。
【図15】第12実施形態の荷重補償装置1の作動状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0019】
図1は第1実施形態の荷重補償装置1を示す図、図2は第1実施形態の荷重補償装置1の平面図である。
【0020】
第1実施形態の荷重補償装置1は、基台2と、基台2に対して所定の角度範囲で回転可能に支持される作動リンク3と、作動リンク3の一端に取り付けられる荷重4と、作動リンク3の他端を基台2に軸支する作動リンク軸部材5と、作動リンク軸部材5に軸支されて作動リンク3と共に回転可能な作動リンクギヤ6と、作動リンクギヤ6に噛み合うクランクギヤ7と、クランクギヤ7を軸支するクランクギヤ軸部材8と、クランクギヤ軸部材8に一端を軸支されてクランクギヤ7と共に回転可能な第1のクランク部材9と、第1のクランク部材9に対して回転可能な第2のクランク部材10と、第1のクランク部材9の他端と第2のクランク部材10の一端を回転可能に連結するクランク連結部材11と、第2のクランク部材10の他端に設けられたクランク軸部材12と、クランク軸部材12を支持するスライダ13と、スライダ13を案内する案内部材14と、スライダ13に一端を取り付けられた弾性部材としての引っ張りバネ15と、基台2に引っ張りバネ15の他端を取り付ける引っ張りバネ支持部16と、を備える。
【0021】
基台2は、作動リンク軸部材5、クランクギヤ軸部材8、案内部材14、及び引っ張りバネ支持部16を支持する部材である。
【0022】
作動リンク3は、一端に取り付けられた荷重4を基台2に対して回転可能に取り付けている。作動リンク軸部材5は、基台2に固定されて、作動リンク3及び作動リンクギヤ6を回転可能に支持している。なお、作動リンク軸部材5は、作動リンク3及び作動リンクギヤ6に対して固定し、基台2に対して回転可能に支持される構成としてもよい。
【0023】
作動リンクギヤ6は、作動リンク3と共に回転し、クランクギヤ7と噛み合う。作動リンクギヤ6とクランクギヤ7のギヤ比は1対2であり、回転数の比が2対1で連結される。
【0024】
クランクギヤ軸部材8は、基台2に固定されて、クランクギヤ7及び第1のクランク部材9を回転可能に支持している。なお、クランクギヤ軸部材8は、クランクギヤ7及び第1のクランク部材9に対して固定し、基台2に対して回転可能に支持される構成としてもよい。
【0025】
第1のクランク部材9は、クランクギヤ軸部材8に一端を軸支されてクランクギヤ7と共に回転可能となっており、他端を第2のクランク部材10の一端に対して回転可能に連結されている。クランク連結部材11は、第1のクランク部材9と第2のクランク部材10を回転可能に連結する部材である。第1のクランク部材9と第2のクランク部材10は、同じ長さを有する。
【0026】
第2のクランク部材10は、一端をクランク連結部材11に回転可能に連結され、他端をクランク軸部材12に回転可能に連結され、第1のクランク部材9と同じ長さを有する。クランク軸部材12は、スライダ13に固定されて、第2のクランク部材10を回転可能に支持している。なお、クランク軸部材12は、第2のクランク部材10に対して固定し、スライダ13に対して回転可能に支持される構成としてもよい。
【0027】
スライダ13は、基台2に固定された案内部材14に対して移動可能に取り付けられている。スライダ13には、引っ張りバネ15の一端が固着されている。引っ張りバネ15の他端は、基台2に固定された引っ張りバネ支持部16に取り付けられている。
【0028】
次に、第1実施形態の荷重補償装置1の作動状態について説明する。
【0029】
図3は、第1実施形態の荷重補償装置1の作動状態を示す図である。
【0030】
第1実施形態の荷重補償装置1の第1の状態としての初期状態は、図1に示した状態とする。初期状態では、荷重4が作動リンク軸部材5に対して鉛直方向の上方に位置している。また、初期状態では、クランクギヤ軸部材8、第1のクランク部材9、クランク連結部材11、第2のクランク部材10、及びクランク軸部材12は、直線上に並ぶ上死点位置となり、引っ張りバネ15が自然長となっていることが好ましい。
【0031】
この初期状態から荷重4の位置が移動して、図3に示すような第2の状態としての作動状態となった場合、作動リンク3が角度θで傾いたとする。作動リンク3と共に回転する作動リンクギヤ6とクランクギヤ7のギヤ比は、1対2なので、クランクギヤ7及び第1のクランク部材9は初期状態と比較してθ/2回転する。なお、図3の2点鎖線は、初期状態での作動リンク3の位置を示す仮想線である。
【0032】
この時、重力により働く作動リンク軸部材5の周りの自重トルクτ1は、以下の式(1)で表される。
【数1】


ただし、
mは荷重、
gは重力、
lは作動リンク3の長さ、
である。
【0033】
また、この時の引っ張りバネ15の伸びsは、以下の式(2)で表される。
【数2】


ただし、
sは引っ張りバネ15の伸び、
aは第1のクランク部材9及び第2のクランク部材10の長さ、
である。
【0034】
したがって、引っ張りバネ15にかかる移動方向の力fは、以下の式(3)で表される。
【数3】


ただし、
fは引っ張りバネ15にかかる移動方向の力、
kは引っ張りバネ15のバネ定数、
である。
【0035】
この引っ張りバネ15にかかる力fによってクランクギヤ軸部材8の周りのトルクτ2は、第1のクランク部材9、クランク連結部材11、及び第2のクランク部材10の自重、並びに、スライダ13の摩擦を無視すれば、以下の式(4)で表される。

【数4】

【0036】
式(4)を変形すれば、以下の式(5)で表される。
【数5】

【0037】
ここで、バネ定数kを以下の式(6)のように設定する。
【数6】

【0038】
すると、作動リンク3を保持するために必要な荷重補償トルクτgravは、作動リンク軸部材5の周りのトルクの釣り合いを考えると、以下の式(7)のように表される。
【数7】

【0039】
したがって、作動リンク3自体に与える補償力の影響を少なくし、効率が良く、簡易的構成の荷重補償装置を提供することが可能となる。
【0040】
また、作動リンク軸部材5を図示しない駆動モータ等の出力軸とすると、駆動する作動リンク3に対して、荷重補償装置1がそのまま組み入れられているので、駆動系と荷重補償装置1が一体となり、構造が簡略化される。
【0041】
次に、第2実施形態について説明する。
【0042】
図4は第2実施形態の荷重補償装置1の作動状態を示す図、図5は第2実施形態の荷重補償装置1の平面図である。
【0043】
図4及び図5に示した第2実施形態の荷重補償装置1は、弾性部材としての押しバネ15’を用いたものである。例えば、図4及び図5に示すように、押しバネ15’の一端をスライダ13に対して第1実施形態とは反対側に設置し、他端を基台2に取り付けたものである。なお、図4の2点鎖線は、初期状態での作動リンク3の位置を示す仮想線である。
【0044】
このように、押しバネ15’を用いることによって、荷重補償装置1をコンパクトにすることが可能となる。
【0045】
次に、第3実施形態について説明する。
【0046】
図6は、第3実施形態の荷重補償装置1の作動状態を示す図である。
【0047】
図6に示した第3実施形態の荷重補償装置1は、第1のクランク部材9と第2のクランク部材10を用いて平行リンクLを形成したものである。例えば、図6に示すように、第1のクランク部材9に対して平行な第1のクランクリンク部材19と、第2のクランク部材10に対して平行な第2のクランクリンク部材20と、を有する。なお、図6の2点鎖線は、初期状態での作動リンク3の位置を示す仮想線である。
【0048】
また、平行リンクLは、第1のクランクリンク部材19及び第2のクランクリンク部材20を有するため、クランクギヤ軸部材8に対応するように基台2に支持されて第1のクランクリンク部材19を回転可能に支持する第1のクランクリンク支持部材18と、クランク連結部材11に対応するように第1のクランクリンク部材19と第2のクランクリンク部材20とを連結するクランクリンク連結部材21と、クランク軸部材12に対応するように第2のクランクリンク部材20を回転可能に支持する第2のクランクリンク支持部材22と、クランクギヤ軸部材8と第1のクランクリンク支持部材18とを連結する第1の軸連結部材23と、クランク連結部材11とクランクリンク連結部材21とを連結する第2の軸連結部材24と、クランク軸部材12とクランクリンク支持部材22とを連結する第3の軸連結部材25と、を有する。なお、案内部材14には、第3の軸連結部材25が移動可能に貫通するための図示しない長孔を有する。
【0049】
このように、平行リンクLを形成することによって、荷重補償装置1の強度を高めることができ、荷重4が重い場合にも対応することが可能となる。
【0050】
次に、第4実施形態について説明する。
【0051】
図7は、第4実施形態の荷重補償装置1の作動状態を示す図である。
【0052】
第4実施形態の荷重補償装置1は、初期状態のクランクギヤ軸部材8、第1のクランク部材9、クランク連結部材11、第2のクランク部材10、及びクランク軸部材12を鉛直方向の直線上に配置したものである。例えば、第4実施形態の荷重補償装置1は、初期状態で、荷重4、作動リンク3、作動リンク軸部材5、第1のクランク部材9、クランク連結部材11、第2のクランク部材10、及び引っ張りバネ支持部16が直線上に並ぶ上死点位置となり、引っ張りバネ15が自然長となっている。なお、図7の2点鎖線は、初期状態での作動リンク3の位置を示す仮想線である。
【0053】
第4実施形態の荷重補償装置1の荷重4が移動しても、荷重4及び作動リンク3が引っ張りバネ15の力と釣り合い、図7に示すように、荷重補償される。
【0054】
このように、第4実施形態の荷重補償装置1は、初期状態のクランクギヤ軸部材8、第1のクランク部材9、クランク連結部材11、第2のクランク部材10、及びクランク軸部材12を鉛直方向の直線上に配置しても荷重補償することができるので、設計の自由度を高めることが可能となる。
【0055】
次に、第5実施形態について説明する。
【0056】
図8は、第5実施形態の荷重補償装置1の作動状態を示す図である。
【0057】
第5実施形態の荷重補償装置1は、初期状態では、荷重4及び作動リンク3を鉛直方向に位置させて、クランクギヤ軸部材8、第1のクランク部材9、クランク連結部材11、第2のクランク部材10、及びクランク軸部材12を傾斜した直線上に配置する。作動リンク軸部材5、第1のクランク部材9、クランク連結部材11、第2のクランク部材10、及び引っ張りバネ支持部16が直線上に並ぶ上死点位置となり、引っ張りバネ15が自然長となっている。なお、図8の2点鎖線は、初期状態での作動リンク3の位置を示す仮想線である。
【0058】
第5実施形態の荷重補償装置1の荷重4が移動しても、荷重4及び作動リンク3が引っ張りバネ15の力と釣り合い、図8に示すように、荷重補償される。
【0059】
このように、第5実施形態の荷重補償装置1は、初期状態のクランクギヤ軸部材8、第1のクランク部材9、クランク連結部材11、第2のクランク部材10、及びクランク軸部材12を傾斜した直線上に配置しても荷重補償することができるので、設計の自由度を高めることが可能となる。
【0060】
次に、第6実施形態について説明する。
【0061】
図9は、第6実施形態の荷重補償装置1の作動状態を示す図である。
【0062】
第6実施形態の荷重補償装置1では、作動リンク3の移動面と、第1のクランク部材9及び第2のクランク部材10の移動面とが、直交する関係にある。そのため、作動リンクギヤ6及びクランクギヤ7を傘歯歯車として連結している。
【0063】
第6実施形態の荷重補償装置1は、初期状態では、荷重4及び作動リンク3を鉛直方向に位置させて、クランクギヤ軸部材8、第1のクランク部材9、クランク連結部材11、第2のクランク部材10、及びクランク軸部材12を直線上に配置する。作動リンク軸部材5、第1のクランク部材9、クランク連結部材11、第2のクランク部材10、及び引っ張りバネ支持部16が直線上に並ぶ上死点位置となり、引っ張りバネ15が自然長となっている。なお、図9の2点鎖線は、初期状態での荷重4の位置を示す仮想線である。
【0064】
第6実施形態の荷重補償装置1の荷重4が移動しても、荷重4及び作動リンク3が引っ張りバネ15の力と釣り合い、荷重補償される。
【0065】
このように、第6実施形態の荷重補償装置1は、作動リンク3の移動面と、第1のクランク部材9及び第2のクランク部材10の移動面とが、直交する関係に配置しても荷重補償することができるので、設計の自由度を高めることが可能となる。
【0066】
なお、第6実施形態の荷重補償装置1のクランクギヤ軸部材8、第1のクランク部材9、クランク連結部材11、第2のクランク部材10、及びクランク軸部材12は、初期状態で、鉛直方向の直線上にあっても、傾斜した直線上にあってもよい。
【0067】
次に、第7実施形態について説明する。
【0068】
図10は、第7実施形態の荷重補償装置1の作動状態を示す図である。
【0069】
第7実施形態の荷重補償装置1では、作動リンク軸部材5とクランクギヤ軸部材8とを、作動リンクスプロケット31、クランクスプロケット32、及びスプロケット連結部材としてのチェーン33によって連結し、トルクを伝達するものである。
【0070】
第7実施形態の荷重補償装置1は、初期状態では、荷重4及び作動リンク3を鉛直方向に位置させて、クランクギヤ軸部材8、第1のクランク部材9、クランク連結部材11、第2のクランク部材10、及びクランク軸部材12を直線上に配置する。作動リンク軸部材5、第1のクランク部材9、クランク連結部材11、第2のクランク部材10、及び引っ張りバネ支持部16が直線上に並ぶ上死点位置となり、引っ張りバネ15が自然長となっている。なお、図10の2点鎖線は、初期状態での荷重4の位置を示す仮想線である。
【0071】
第7実施形態の荷重補償装置1の荷重4が移動しても、荷重4及び作動リンク3が引っ張りバネ15の力と釣り合い、荷重補償される。
【0072】
このように、第7実施形態の荷重補償装置1は、作動リンク軸部材5とクランクギヤ軸部材8とを、作動リンクスプロケット31、クランクスプロケット32、及びチェーン33によって連結し、トルクを伝達するので、荷重4とスライダ13等を離れた位置に設置することができ、設計の自由度を高めることが可能となる。
【0073】
なお、第7実施形態では、作動リンクスプロケット31とクランクスプロケット32とをチェーン33によって連結したが、スプロケット連結部材としてのベルト等によって連結してもよい。
【0074】
また、第7実施形態の荷重補償装置1のクランクギヤ軸部材8、第1のクランク部材9、クランク連結部材11、第2のクランク部材10、及びクランク軸部材12は、初期状態で、鉛直方向の直線上にあっても、傾斜した直線上にあってもよい。
【0075】
次に、第8実施形態について説明する。
【0076】
図11は、第8実施形態の荷重補償装置1の作動状態を示す図である。
【0077】
第8実施形態の荷重補償装置1では、第1のクランク部材9及び第2のクランク部材10のそれぞれの部材自身の重さの影響を低減するためにカウンタウェイト41,42を用いるものである。
【0078】
第1のカウンタウェイト41は、第1のクランク部材9に相当する重さであって、クランクギヤ軸部材8に対して第1のクランク部材9の反対側の位置に設置し、共に回転することが好ましい。なお、第1のカウンタウェイト41は、クランクギヤ7の表面に設置してもよい。また、第2のカウンタウェイト42は、第2のクランク部材10に相当する重さであって、クランク軸部材12に対して第2のクランク部材10の反対側の位置に設置し、共に回転することが好ましい。
【0079】
このように、第8実施形態の荷重補償装置1は、カウンタウェイト41,42を用いることによって、第1のクランク部材9及び第2のクランク部材10のそれぞれの部材自身の重さの影響を低減することが可能となる。
【0080】
また、第8実施形態の荷重補償装置1のクランクギヤ軸部材8、第1のクランク部材9、クランク連結部材11、第2のクランク部材10、及びクランク軸部材12は、初期状態で、鉛直方向の直線上にあっても、傾斜した直線上にあってもよい。
【0081】
次に、第9実施形態及び第10実施形態について説明する。
【0082】
図12は第9実施形態の荷重補償装置1の作動状態を示す図、図13は第10実施形態の荷重補償装置1の作動状態を示す図である。
【0083】
第9実施形態及び第10実施形態の荷重補償装置1では、第1のクランク部材9及び第2のクランク部材10のそれぞれの部材自身の重さの影響を低減するためにカウンタウェイト41,42を用いるものである。
【0084】
第8実施形態の荷重補償装置1は、第1のカウンタウェイト41及び第2のカウンタウェイト42の2つを用いたが、第9実施形態及び第10実施形態の荷重補償装置1では、図12及び図13に示すように、第1のカウンタウェイト41のみ又は第2のカウンタウェイト42のみを用いる。
【0085】
図12に示した第9実施形態の第1のカウンタウェイト41は、クランクギヤ軸部材8に対して第1のクランク部材9の反対側の位置に設置し、共に回転することが好ましい。なお、第1のカウンタウェイト41は、クランクギヤ7の表面に設置してもよい。この場合、第1のカウンタウェイト41は、第1のクランク部材9及び第2のクランク部材10の両方の重さに相当する重さであることが好ましい。
【0086】
図13に示した第10実施形態の第2のカウンタウェイト42は、クランク軸部材12に対して第2のクランク部材10の反対側の位置に設置し、共に回転することが好ましい。この場合、第2のカウンタウェイト42は、第1のクランク部材9及び第2のクランク部材10の両方の重さに相当する重さであることが好ましい。
【0087】
このように、第9実施形態及び第10実施形態の荷重補償装置1は、カウンタウェイト41,42を用いることによって、第1のクランク部材9及び第2のクランク部材10のそれぞれの部材自身の重さの影響を低減することが可能となる。
【0088】
また、第9実施形態及び第10実施形態の荷重補償装置1のクランクギヤ軸部材8、第1のクランク部材9、クランク連結部材11、第2のクランク部材10、及びクランク軸部材12は、初期状態で、鉛直方向の直線上にあっても、傾斜した直線上にあってもよい。
【0089】
次に、第11実施形態について説明する。
【0090】
図14は第11実施形態の荷重補償装置1の作動状態を示す図である。
【0091】
第11実施形態の荷重補償装置1では、第1のクランク部材9及び第2のクランク部材10のそれぞれの部材自身の重さの影響を低減するためにリンク式カウンタウェイト50を用いるものである。
【0092】
図14に示した第11実施形態の荷重補償装置1は、クランクギヤ軸部材8とクランク軸部材12とを結んだ直線に対して、第1のクランク部材9、クランク連結部材11、及び第2のクランク部材10と線対称なリンク式カウンタウェイト50を設置する。
【0093】
図14に示した第11実施形態のリンク式カウンタウェイト50は、第1のリンク式カウンタウェイト51と、第2のリンク式カウンタウェイト52と、第1のリンク式カウンタウェイト51と第2のリンク式カウンタウェイト52とを連結するリンク式カウンタウェイト連結部材53とを有する。
【0094】
第1のリンク式カウンタウェイト51は、クランクギヤ軸部材8とクランク軸部材12とを結んだ直線に対して、常に第1のクランク部材9と線対称であり、同じ重さであることが好ましい。また、第2のリンク式カウンタウェイト52は、クランクギヤ軸部材8とクランク軸部材12とを結んだ直線に対して、常に第2のクランク部材10と線対称であり、同じ重さであることが好ましい。さらに、リンク式カウンタウェイト連結部材53は、クランクギヤ軸部材8とクランク軸部材12とを結んだ直線に対して、常にクランク連結部材11と線対称であり、同じ重さであることが好ましい。
【0095】
このように、第11実施形態の荷重補償装置1は、リンク式カウンタウェイト50を用いることによって、第1のクランク部材9及び第2のクランク部材10のそれぞれの部材自身の重さの影響を低減することが可能となる。
【0096】
また、第11実施形態の荷重補償装置1のクランクギヤ軸部材8、第1のクランク部材9、クランク連結部材11、第2のクランク部材10、及びクランク軸部材12は、初期状態で、鉛直方向の直線上にあっても、傾斜した直線上にあってもよい。
【0097】
次に、第12実施形態について説明する。
【0098】
図15は、第12実施形態の荷重補償装置1の作動状態を示す図である。
【0099】
第12実施形態の荷重補償装置1では、第1のクランク部材9及び第2のクランク部材10のそれぞれの部材自身の重さの影響を低減するためにクランク自重補償装置60を用いるものである。
【0100】
図15に示した第12実施形態のクランク自重補償装置60は、第2のクランク部材10とスライダ13とを連結する。
【0101】
クランク自重補償装置60は、スライダ13に支持される基部61と、第2のクランク部材10に回転可能に支持される作用点としてのクランク取付部62と、基部61に回転可能に支持される移動部材63と、一方をクランク取付部62に回転可能に支持され、移動部材63に摺動可能に支持される連結アーム64と、一方で移動部材63に支持されるバネ65と、連結アーム64の他方に取り付けられ、バネ65の他方を支持するバネ受け部材66と、を有する。なお、案内部材14には、クランク自重補償装置60の連結アーム64及びバネ65が移動可能に貫通するための図示しない長孔を有する。
【0102】
このように、第12実施形態の荷重補償装置1は、クランク自重補償装置60を用いることによって、第1のクランク部材9及び第2のクランク部材10のそれぞれの部材自身の重さの影響を低減することが可能となる。
【0103】
また、第12実施形態の荷重補償装置1のクランクギヤ軸部材8、第1のクランク部材9、クランク連結部材11、第2のクランク部材10、及びクランク軸部材12は、初期状態で、鉛直方向の直線上にあっても、傾斜した直線上にあってもよい。
【0104】
以上、本発明の種々の実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態のみに限られるものではなく、それぞれの実施形態の構成を適宜組み合わせて構成した実施形態も本発明の範疇となるものである。
【符号の説明】
【0105】
1…荷重補償装置
2…基台
3…作動リンク
4…荷重
5…作動リンク軸部材
6…作動リンクギヤ(作動リンク回転部材)
7…クランクギヤ(クランク回転部材)
8…クランクギヤ軸部材
9…第1のクランク部材
10…第2のクランク部材
11…クランク連結部材
12…クランク軸部材
13…スライダ
14…案内部材
15…引っ張りバネ(弾性部材)
15’…押しバネ(弾性部材)
16…バネ支持部
18…第1のクランクリンク支持部材
19…クランクリンク部材
20…第2のクランクリンク部材
21…クランクリンク連結部材
22…第2のクランクリンク支持部材
23…第1の軸連結部材
24…第2の軸連結部材
25…第3の軸連結部材
31…作動リンクスプロケット(作動リンク回転部材)
32…クランクスプロケット(クランク回転部材)
33…チェーン(スプロケット連結部材)
41…第1のカウンタウェイト
41…第2のカウンタウェイト
50…リンク式カウンタウェイト
51…第1のリンク式カウンタウェイト
52…第2のリンク式カウンタウェイト
53…リンク式カウンタウェイト連結部材
60…クランク自重補償装置
61…基部
62…クランク取付部
63…移動部材
64…連結アーム
65…バネ
66…バネ受け部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基台と、
前記基台に回転可能に支持される作動リンクと、
前記基台に支持されて前記作動リンクと共に回転する作動リンク回転部材と、
前記基台に支持されて前記作動リンク回転部材の回転に対応して回転数の比が2対1で回転するクランク回転部材と、
一端を前記基台に支持されて前記クランク回転部材と共に回転可能な第1のクランク部材と、
前記第1のクランク部材と同じ長さであって前記第1のクランク部材に対して回転可能な第2のクランク部材と、
前記第1のクランク部材の他端と前記第2のクランク部材の一端を回転可能に連結するクランク連結部材と、
前記第2のクランク部材の他端を回転可能に支持するスライダと、
前記スライダを案内する案内部材と、
前記スライダに一端を取り付けられ、前記基台に他端を取り付けられた弾性部材と、
を備え、
前記作動リンクが鉛直方向に位置する時、前記第1のクランク部材と前記第2のクランク部材が直線上に位置し、前記弾性部材が自然長となる
ことを特徴とする荷重補償装置。
【請求項2】
前記作動リンク回転部材は、作動リンクギヤであり、
前記クランク回転部材は、前記作動リンクギヤに噛み合うクランクギヤである
ことを特徴とする請求項1に記載の荷重補償装置。
【請求項3】
前記作動リンクギヤ及び前記クランクギヤは、傘歯歯車である
ことを特徴とする請求項2に記載の荷重補償装置。
【請求項4】
前記作動リンク回転部材は、作動リンクスプロケットであり、
前記クランク回転部材は、クランクスプロケットであり、
前記作動リンクスプロケット及び前記クランクスプロケットの外周に巻き掛けられるスプロケット連結部材を有する
ことを特徴とする請求項1に記載の荷重補償装置。
【請求項5】
前記弾性部材は、引っ張りバネである
ことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1つに記載の荷重補償装置。
【請求項6】
前記弾性部材は、押しバネである
ことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1つに記載の荷重補償装置。
【請求項7】
前記クランク回転部材の回転中心に対して前記第1のクランク部材とは反対側に設置されて前記クランク回転部材と共に回転する第1のカウンタウェイトを有する
ことを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか1つに記載の荷重補償装置。
【請求項8】
前記第2のクランク部材を前記スライダに支持するクランク軸部材を有し、
前記クランク軸部材に対して前記第2のクランク部材とは反対側に設置されて前記第2のクランク部材と共に回転する第2のカウンタウェイトを有する
ことを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれか1つに記載の荷重補償装置。
【請求項9】
前記クランクギヤの回転中心と前記クランク軸部材とを結んだ直線に対して、前記第1のクランク部材に線対称な第1のリンク式カウンタウェイトと、
前記クランクギヤの回転中心と前記クランク軸部材とを結んだ直線に対して、前記第2のクランク部材に線対称な第2のリンク式カウンタウェイトと、
前記クランクギヤの回転中心と前記クランク軸部材とを結んだ直線に対して、前記クランク連結部材に線対称な第1のリンク式カウンタウェイト連結部材と、
を有することを特徴とする請求項1乃至請求項8のいずれか1つに記載の荷重補償装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2013−91144(P2013−91144A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−236252(P2011−236252)
【出願日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【出願人】(899000079)学校法人慶應義塾 (742)
【Fターム(参考)】