説明

荷電ポリマーを含有する長時間制御放出性の薬学的組成物

本発明は、処置剤の放出を制御又は促進するための、イオン性相互作用に幾分か頼る薬学的組成物のためのデリバリーシステムに関する。より具体的には、本発明は、イオン性処置剤及びイオン性ポリマーを有する長時間の制御放出システムに関する(ここで、該ポリマーは、長時間に渡って制御様式で処置剤を放出するのに十分イオン化されており、且つ、組成物は処置剤の投与のためのエマルジョン系を必要としない)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、一部イオン性相互作用に頼って処置剤の放出を制御及び促進する薬学的組成物のためのデリバリーシステムに関する。より詳細には、本発明は、油相を含まず、イオン性処置剤及びイオン性ポリマーを有する長期制御放出システムに関する。
【0002】
本発明は、また、新規組成物を用いて、哺乳動物において疾患又は状態を処置又は予防する方法に関する。さらに、本発明は、子宮律動異常と関連する骨盤痛を処置又は予防するための薬学的組成物、並びに、このような痛みを処置又は予防する方法にも関する。この組成物及び方法は、一つには、原因に影響を及ぼすことなく生じた痛み又は不快感を単に緩和する又は覆い隠すよりもむしろ痛み又は不快感を引き起こす根底にある異常な又は望ましくない筋収縮を予防又は処置するために、局部組織への吸収のための処置剤の局部的、局所的な使用に焦点をおく。本発明は、また、子宮律動異常と関連する不妊症の処置又は改善のための薬学的組成物、並びに、このような不妊症を処置又は改善するための方法に関する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
本書において使用される場合、処置剤の「持続放出(sustained release)」は、処置剤が、ほぼ即座にというよりもむしろ所定時間に渡り(例えば、6時間、又は24時間、又は72時間に渡り)放出されることを意味する。「制御放出(controlled release)」は、異なる問題である。薬剤が72時間に渡り放出され得るが、放出速度における時間ごとの変化がランダムであり得る(例えば、600%又はそれより多い)。このような処方物は、(放出の特定のパターンがデザインによるものではなく、ランダムである限り)制御されたのではなく、持続されたとして特徴付けられるであろう。エマルジョン系を用いることによって満たされる目的は、効果を持続させることのみならず、それを制御すること(――制御様式における放出速度(しばしば、定常放出速度であるが、必要に応じて、時間に伴い放出速度における予め決定された意図された変化を伴う)を提供すること)でもある。結果は、持続され、制御される放出である。
【0004】
以前の処方物では、薬物放出を制御するためのエマルジョン系を用いて、ポリカルボフィル及び類似するポリマーが利用されて薬物の作用が持続されていた。硫酸テルブタリン及びプロゲステロンの場合、エマルジョン系の使用により、制御された持続放出が得られる。本発明者らは、以前、これらの処方物について、制御された見掛けゼロ次放出(apparent−zero−order−release)(即ち、単位時間当り一定量の薬物が放出される)を実証した。しかしながら、この以前の組成物は、全て、エマルジョン系を用い、油相を含んでいた。
【0005】
油相を含む本発明者らの先行処方物の例としては、以下が挙げられる:米国特許第6,126,959号及び米国特許出願第09/510,527号及び第09/877,218号に開示されるテルブタリン処方物;米国特許第5,543,150号; 第5,985,861号; 第6,054,447号; 第6,126,959号;及び第6,306,914号;並びに米国特許出願第09/510,527号; 第09/833,259号;及び第09/877,218号に開示されるプロゲステロン又はプロゲスチン処方物。
【0006】
油相及び水相の両方を含有するこれらの処方物の具体例は、以下に示される。
【0007】
プロゲステロン処方物は、以下のとおりである:
【0008】
【表1】

【0009】
テルブタリン処方物は、以下のとおりである:
【0010】
【表2】

【0011】
油相及び水相の両方を用いる処置剤を含有するポリカルボフィル処方物を開示する他の特許及び出願としては、米国特許第4,615,697号;第4,795,436号;第4,983,392; 第5,225,196号; 第5,474,768号; 第5,667,492号; 第5,968,500号;及び第6,248,358号;並びに米国特許出願第09/593,603号; 第09/596,073号; 第09/748,753号; 第10/089,796号;及び第10/278,910号が挙げられる。
【0012】
米国特許出願第09/877,218号は、油相を含まない幾つかのテルブタリン処方物を開示している。この出願において、テルブタリンは、湿った顆粒形態をとり、後に乾燥される。ポリマーは、顆粒が乾燥された後にのみ混合された。従って、テルブタリン処方物は、本発明の場合のように、水和してポリマーと処置剤との間で錯体を形成しない。従って、これらのテルブタリン処方物は、本発明と異なるメカニズムを介して、処置剤の持続され、制御される放出を提供する。
【0013】
ポリアクリル酸ポリマーは、従来、他の目的のための不溶性錯体を形成するため、使用されてきた。例えば、米国特許第3,427,379号には、不溶性の薬物には味がないので、デキストロメトルファンHClがポリアクリル酸ポリマー(特に、カルボマー934P)と錯体形成されて、その不快な苦味が克服され得ることが開示されている。この場合、錯体は、味のない薬学的処方物(懸濁液のような)に製造され、その後、服用される。製品が服用されて胃の酸性環境に到達するとすぐに、ポリアクリル酸ポリマーが再プロトン化(re−protonated)され、そして全てのデキストロメトルファンが直ぐに吸収されるようになる。‘379特許の発明の唯一の目的は、苦味を覆い隠すことである;それは、デキストロメトルファンの放出を持続又は制御しない。
【0014】
プロゲステロンは、懸濁液中の大半を占める油相及び水相において部分的に可溶性であり、制御放出系(controlled−release system)を創る。この例において、プロゲステロンは、親油性画分中で蓄えられ、また、ゲル中で懸濁されるため、長期放出のためのリザーバーが創られる。少量のプロゲステロンは、また、水相に溶解される。膣適用及び他の投与経路から、水性画分中の薬物のみが、子宮への拡散又は血流への吸収に利用され得る。水相に溶解されるプロゲステロンは直ぐに利用され得るので、プロゲステロンゲルからのプロゲステロンの吸収は、十分な局部的水和作用(hydration)の存在に依存しない。特に、プロゲステロンゲルからのプロゲステロン吸収は、油ベースのプロゲステロン製品及び他の非水和処方物の場合のように、非常に変動しやすい程度の膣分泌に依存しない。
【0015】
エマルジョン系において、油相及び水相は、動的平衡にある。例えば、プロゲステロンが水相から組織又は血液に拡散するので、油相又は懸濁リザーバーに蓄えられているプロゲステロンがこれに置き換わるため、プロゲステロンの一定且つ制御された放出が確実になる。プロゲステロンゲルにおけるポリカルボフィルベースの生体付着性デリバリーシステムは、プロゲステロンの持続放出を確実にする。図1Aを参照のこと。これらの処方物では、ポリカルボフィルではなく、エマルジョン系が、薬物の制御された放出を提供する。
【0016】
骨盤痛を処置する試みにおいて、幾つかの薬学的組成物が作製されたが、限られた成功しか得られなかった。骨盤痛は、間欠性又は再発性であり得、一定で重度であり得るが、しばしば、子宮律動異常−−異常、不調、又は障害を伴う子宮収縮と関連している。骨盤痛は、しばしば、月経(有痛性月経のような)又は月経困難の際に経験される。月経と関連する慢性的な骨盤痛をもつ女性は、しばしば、毎月1日をベットで過ごし、毎月さらなる日を痛みの強さゆえに活動を減らして過ごすかもしれない。骨盤痛は、骨盤の感染、及び、尿路又は腸の病気によっても引き起こされ得る。
【0017】
不妊症もまた、月経困難を含む子宮律動異常状態と関連しているかも知れない。例えば、米国特許出願第10/089,796号を参照のこと。子宮律動異常は、精子の急速な輸送に影響し、それゆえ受精率に影響するかも知れない。女性の管(子宮及びファローピウス管)に沿った収縮性は、頚部から受精が起こる管の遠位端までの精子の急速な輸送を確実にする主要な原動力のようである。逆行性の子宮収縮性は、正常な輸送メカニズムを妨げるようである。
【0018】
慢性的な骨盤痛は、生殖年齢群の女性によくみられる。これは、障害(disability)及び苦痛を引き起こし、結果的にヘルスサービスへの多大なコストをもたらす。全体的に、女性が、一生のうちある期間に慢性的な骨盤痛を患うリスクは、約5%である。以前に骨盤の炎症性疾患の診断を受けた患者において、このリスクは、約20%にまで4倍高まる。米国からの最近の疫学データにより、生殖年齢における女性の14.7%が慢性骨盤痛を報告していることが示された。慢性骨盤痛を患うこれらの女性の合計15%が、仕事から離れた期間があることを報告し、45%が、仕事の生産性の低下を報告した。米国では、外来患者の産婦人科診察の10%が慢性骨盤痛のためであり、ラパロスコピーの40%が慢性骨盤痛のために行われている。
【0019】
慢性骨盤痛の病因は、ほとんど分かっていない。しばしば、ラパロスコピーによる調査は、子宮内膜症(軽度から中度)を明らかにするかもしれないが、痛みに対する明白な原因を明らかにしないかもしれない。検出されていない腸過敏症、血流が著しく減少した拡張型骨盤静脈から痛みが生じていると考えられている血管仮説、並びに、慢性骨髄痛を患う女性における脊髄及び刺激の脳プロセッシングの変化を含む、幾つかの可能性のある説明が存在する。慢性骨盤痛の病態生理学が十分にわかっていないため、その処置は、しばしば、不満足であり、症状を軽減することに限られている。現在、処置の主なアプローチとしては、薬物適用、外科手術、或いは精神療法及びカウンセリングを用いた痛みの症状の処置が挙げられる。
【0020】
それが非常によくみられる慢性疼痛症候群であるという事実にもかかわらず、慢性骨盤痛のための有効な薬理学的処置については殆ど知られていない。慢性疼痛症候群の患者において、根底にある原因を処置又は予防するよりもむしろ症状的な痛み及び不快感を緩和するため、幾つかの異なる薬理学的クラスの薬物:非ステロイド抗炎症薬、鎮痙薬、局所麻酔薬及びオピオイドが使用されてきた。慢性骨盤痛を処置又は予防するための、根底にある原因−−子宮の運動異常収縮(dyskinetic contractions)−−の本当の処置又は予防に焦点を合わせた研究は非常に少ない。
【0021】
月経困難は、月経周期に典型的に関係のある痛みに関連し、且つ、原発性(primary)又は続発性(secondary)であり得る。ほとんどの女性が、一生の間のある時期に原発性月経困難を経験する。その痛みは、痙攣を起こさせ、又は鋭く、月経期の最初の数日間続く。それは、背部、大腿、又は深部子宮へ広がるかも知れない。時折、悪心又は嘔吐が起こる。続発性月経困難は、子宮内膜症又は頚部狭窄症に起因しているかも知れないし、或いは、もし月経の多量な出血と関連しているならば、類線維腫(fibroids)、腺筋症、又は大子宮内膜のポリープに起因しているかも知れない。
【0022】
長期間の局部的又は局所的な遮断を提供するため、臨床医は、現在、痛みが遮断されるべき部位へのカテーテル又はシリンジを通じて投与される局所麻酔薬を使用している。1日より長い期間に渡って痛みが遮断されるべき場合には、これは、ボーラスとして又は注入ポンプへ連結された留置カテーテルを通じて、繰返し投与することを必要とする。これらの方法は、麻酔薬の濃度における変化及び高いレベルに起因して、神経又は周辺組織への非可逆的な損傷を起こす可能性をもつという不利な点を有する。さらに、これらの方法により投与された麻酔薬は、概して、標的領域に留まりもしないし、直線的で連続的な様態で輸送されもしない。全ての場合において、鎮痛は、めったに6〜12時間(より典型的には、4〜6時間)より長く続かない。ポンプの場合、注入ラインを配置し且つ固定する(secure)ことが困難であり、患者は、制限され、動き易さを妨げられ、また、患者が幼い子供又は精神障害者である場合には、ポンプを偶然はずしてしまうかも知れない。
【0023】
米国特許第5,700,485号には、マイクロスフィアーへ取り込まれた生体分解性ポリマーと結合された局所麻酔薬を投与するための方法及びデバイスが開示されている。グルココルチコイドとともに投与することにより、麻酔薬の長時間放出が得られる。
【0024】
全身麻酔薬の高い濃度は、他の有害な副作用とともに、膣への刺激又は焼灼(burning)を引き起こし得るので、麻酔薬の全身の循環を低く保つことが必要である。それゆえ、全身の循環を低く保ちながら、局所麻酔薬が長時間頚部に優先的に拡散し、律動異常の状態に起因する骨盤痛を処置するのに十分な鎮痛を確実におこなう処方物が必要である。
【0025】
同様に、高い全身レベルの他の抗−律動異常処置剤も、また、不利な副作用をもたらすかもしれない(その幾つかは、重症かもしれない)。多くの古典的な抗−不整脈(及び、他の抗−律動異常)剤そのものは、冠動脈不整脈(coronary arrhythmia)を引き起こす能力をもつ。他の有害な副作用としては、悪心、かすみ目又は黄視、緑内障の沈着(precipitation of glaucoma)、便秘、発作、振せん、骨髄形成不全(bone marrow aplasia)、肺線維症(pulmonary fibrosis)、低血圧、運動心拍数の減少、下痢及び下痢誘導型低カリウム血症(diarrhea−induced hypokalemia)、並びに、免疫学的反応(例えば、血小板減少症、肝炎、又は、骨髄機能低下)が挙げられるがこれらに限定されない。従って、子宮の律動異常を処置又は予防するための抗律動異常剤の使用は、冠動脈の問題又は他の有害な副作用を促し得る全身レベルを注意深く避けなければならない。
【0026】
従って、律動異常に起因する骨盤痛を処置又は予防するために、或いは、律動異常に関連する不妊症を処置又は改善するために、抗律動異常処置剤を局部的且つ優先的に送達する処方物が必要である。この処方物は、不利な副作用を引き起こすのに十分高い処置剤の血中レベルを避けるべきであり、一方、所望の治療的な抗律動異常効果を提供するのに十分な処置剤の局部組織レベルを達成するべきである。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0027】
発明の要旨
本発明は、イオン性処置剤及びイオン性ポリマーを含有する生体付着性薬学的組成物に関する。この組成物はエマルジョン系に頼らず、且つ、該ポリマーは該処置剤との結合を提供するのに十分にイオン化され、長時間に渡り制御様式で該処置剤を放出する。好ましい実施形態において、イオン性ポリマーは、生体付着性で水膨潤性であるが水に不溶性である架橋されたポリカルボン酸ポリマー(例えば、ポリカルボフィル)を含有する。別の実施形態において、該処置剤は、アニオン性であり且つカチオン性錯化剤と錯体形成され、ここで、アニオン性ポリマーが使用される。これらの組成物において、該処置剤は、代表的に、少なくとも約6時間、好ましくは少なくとも約12時間、より好ましくは少なくとも約24時間、そして、さらにより好ましくは約2〜3日間に渡り放出される。特定の実施形態において、該処置剤は、約3.5日間に渡り放出される。本発明の組成物は、概して、ゲル又はタブレットの形態であるが、他の送達形態もまた、本発明に包含される。
【0028】
本発明の1つの特定の実施形態において、該薬学的組成物は、骨盤痛を処置又は予防するため、或いは子宮律動異常に関連する不妊症を処置又は改善するため、処方される。この実施形態において、該組成物は、治療有効量のイオン性抗律動異常処置剤及び生体付着性で水膨潤性であるが水に不溶性である架橋されたポリカルボン酸ポリマーを含有し、ここで、該組成物は、エマルジョン系を必要とし、また、該処置剤は、ポリマーとの化学結合を介して長時間に渡り制御様式で放出され、該ポリマーは、該処置剤との結合を提供するのに十分イオン化されている。
【0029】
本発明は、さらに、開示される組成物を用いて、哺乳動物における疾患又は状態を処置又は予防する方法に関する。特定の実施形態において、処置される疾患又は状態は、骨盤痛である。別の実施形態において、この方法は、不妊症を処置又は改善するため使用される。1つの実施形態において、処置剤は、投与後少なくとも1日間に渡り放出される。
【0030】
発明の詳細な説明
本発明は、油相を含まない生体付着性薬学的組成物に関する。生体付着性組成物は、イオン性ポリマー及びイオン性処置剤を含有する。イオン性ポリマーは、概して、処置剤との結合を可能にするほど十分にイオン化され、長時間に渡り制御様式で処置剤を放出する。
【0031】
イオン性ポリマーは、アニオン性またはカチオン性であり得る。代表的に、カチオン性ポリマーが使用される場合、該組成物は、さらに、生体付着剤を含有する。生体付着剤の例としては、カルボマー−高分子量の架橋されたアクリル酸ポリマーが挙げられる。Carbopol(登録商標)934、940、974及び980が、このようなカルボマーの具体例である。
【0032】
本発明の非限定的な例示的処方物において、ポリマーは、生体付着性で水膨潤性であるが水に不溶性である架橋されたポリカルボン酸ポリマーである。このようなポリマーの具体例は、ポリカルボフィルである。ポリカルボフィルは、ムチンを模倣するために使用され、下に存在する上皮表面への付着の原因となる粘液の負に荷電した糖タンパク質成分である。ポリカルボフィルは、軽度に架橋されたポリマーである。ポリカルボフィルは、また、複数のカルボキシル基(COO)−−負電荷の供給源を含有する弱いポリ酸である。これらの酸性基は、細胞表面との水素結合を可能にする。水素結合は弱いが、例えば、ポリカルボフィルの場合のように、水素結合が数多く存在するときには、長時間付着するための細胞表面上の水素原子への十分に強い親和性が存在する。負に荷電したポリマーは、細胞表面上の水素原子への強い親和性を示す。水に不溶性のポリマー(例えば、ポリカルボフィル)は、しばしば、ターンオーバーするまで(通常、3〜5日まで)粘膜上皮細胞に付着したまま留まる。負に荷電したポリマーは、水素結合によって細胞表面へ結合し、薬学的組成物の生体付着をもたらす。
【0033】
本発明は、概して、任意のイオン性処置剤の場合に有用である。典型的に、アニオン性処置剤はカチオン性ポリマーへ結合し、一方、典型的に、カチオン性処置剤はアニオン性ポリマーへ結合する。しかしながら、本発明の1つの実施形態において、アニオン性処置剤は、アニオン性ポリマーとともに使用される。このような実施形態において、該組成物はまた、処置剤(これは、単独の分子(separate molecule)となるか、又は単に錯化剤に付着する成分であり得る)との結合の後に利用可能なカチオン性部分を有する錯化剤を含有する。このカチオン性部分は、アニオン性ポリマーへ付着するのに利用され得る。しかしながら、錯化剤は、身体への吸収前であっても吸収後であっても、処置剤が生物学的に利用可能になるのを妨げない。このような適当な錯化剤としては、追加のアンモニウム部分を含有する又は有する化合物が挙げられる。
【0034】
本発明で使用され得るカチオン性処置剤としては、アニオンと塩又は錯体を形成し得るあらゆる薬剤が挙げられる。このようなカチオン性処置剤の非限定的な例としては、抗ヒスタミン剤、抗精神病薬、抗高血圧薬、制吐薬、抗不安薬、抗感染症薬、疼痛緩和剤、抗糖尿病薬、麻酔薬、抗コリン作動薬、抗ホルモン剤、又はホルモン剤が挙げられる。具体例としては、アミトリプチリン、アマンタジン、アミオダロン、メクリジン、ジフェンヒドラミン、ヒドロキシジン、アトロピン、リドカイン、ベンゾカイン、プロカイン、ブプレノルフィン、モルフィン、ブロモクリプチン、ブプロピオン、ブスピロン、ブトルファノール、クロルプロマジン、クリンダマイシン、クロニジン、クロミフェン、シクロベンザプリン、ドキサゾシン、フェンタニール、フルオキセチン、ロイプロリド、オクトレオチド、オンダンセトロン、ピオグリタゾン、オキシブチニン、ラロキシフェン、チクロピジン、及びテルブタリンが挙げられる。
【0035】
アニオン性処置剤としては、カチオンと塩又は錯体を形成し得るあらゆる薬剤が挙げられる。カチオン性ポリマーとともに使用されるアニオン性処置剤には、代表的に多くの水素結合は存在しないが、依然として制御された長時間の放出が存在する。しかしながら、水素結合及びそれと関連する関連生体付着特性(associated bioadhesive properties)は、代表的に、アニオン性処置剤がカチオン性錯化剤と錯体を形成する本発明のそれらの実施形態において存在する。
【0036】
本発明で有用なアニオン性処置剤の非限定的例示としては、ナプロキセン、フェノバルビタール、フォスカルネット(foscarnet)、ガンシクロビル、アシクロビル、シドフォビル、ファンシクロビル、ペンシクロビル、フォシノプリル、ジバルプロックス(divalproex)、セフロキシム、プラバスタチン、ラベプラゾール及びワルファリンが挙げられる。
【0037】
本発明の別の実施形態において、該組成物は、カチオン性及びアニオン性ポリマーの両方のブレンドを含む。これらの実施形態において、複数のポリマーを混合する前に、反対に荷電した薬物がポリマーへ結合される。本発明は、さらに、1種又はそれ以上の処置剤を含有する組成物を包含する。複数の処置剤が使用される場合、処置剤は、特定の組成物処方、及びそれと共に使用されるイオン性ポリマーの性質に依存して、同一または異なるイオン電荷であり得る。
【0038】
骨盤痛を処置するための特定の処方物を開発するに際し、エマルジョン系を使用せず、ポリアクリル酸ポリマーを用いて薬物の放出を制御する新規な方法が開発された。ポリアクリル酸ポリマーは、放出を持続させるだけでなく、本発明者らの新規な処方物において薬物の放出を制御する。有利には、これらの新規な処方物には油相が存在しない。これらの新規な処方物を用いると、処置剤は、少なくとも約6時間、好ましくは少なくとも約12時間、より好ましくは少なくとも約24時間に渡り放出される。代表的には、該処置剤は、2〜3日間ほどに渡り放出される。
【0039】
本発明の1つの実施形態において、該処方物は、油相を用いず、ポリアクリル酸ポリマー(例えば、ポリカルボフィル)を用いて抗律動異常剤の膣送達用にデザインされる。この実施形態の1つの具体例において、下記に詳細に示されるように、リドカインが処置剤であり、ポリカルボフィルが使用されるポリマーである:
【0040】
【表3】

【0041】
本発明のこの実施形態において、有効成分(リドカイン)の幾つかは、ポリアクリル酸ポリマー、ポリカルボフィルと不溶性錯体を形成し、幾らかは処方物において水溶液中のままである。この不溶性錯体は、ゲル中に懸濁される。溶液中に存在する部分は、直ちに放出され、ポリカルボフィルと錯体を形成している部分は、溶解している部分が処方物から拡散するにつれて、錯体からゆっくり放出される。任意のアニオン性ポリマーは、処方物において同様の役割を有する(例えば、Carbopol 974Pのように)。この場合、リドカインの制御された放出に関与するのは、ポリマー自体であってエマルジョン系ではない。
【0042】
図1A及び1Bは、エマルジョン型デリバリーシステム(図1Aに示される)と、本願のオイルフリーデリバリーシステムとの差異を図示する。図1Aにおけるエマルジョンデリバリーシステムは、油相20及び水相30に分散される処置剤10を含有する。処置剤10は、水相30から組織又は血液細胞40へ拡散する15。次いで、油相20は、水相30から拡散した15処置剤10の代わりにリザーバーとして働く(ここで、油相20からの処置剤10は、水相30へ拡散する25)。
【0043】
図1Aにおけるエマルジョンデリバリーシステムと対照的に、本発明のデリバリーシステム(図1B)は油相を有さない。本発明の組成物は、イオン性ポリマー35及びイオン性処置剤を含有する(ここで、一部の処置剤12は、イオン性ポリマー35に化学結合し、一部の処置剤14は未結合である)。未結合の処置剤14は、オイルを含有しない組成物(oil−less composition)の投与時に、放出され、組織又は血液細胞40によって吸収されるが、一方、結合した処置剤12は、持続且つ制御様式で、吸収された未結合の処置剤14の埋め合わせをする(replenishes)。
【0044】
図2は、さらに本発明の1つの実施形態の詳細図を示す。この実施形態において、組成物50は、カチオン性処置剤65を化学結合するアニオン性ポリマー60を含有する。アニオン性ポリマー60は、典型的には、軽く架橋され70、また、有利には、カチオン性処置剤65を結合するための多数のカルボキシル基60を有する。組成物50は、粘膜表面の上皮細胞へ付着するのにも十分なカルボキシル基60を有する。
【0045】
本発明は、薬物そのものだけでなく、薬物の塩にも適用され得る。塩は、製造プロセスの間又は患者への投与の際に、組成物の水和時にイオン化される。
【0046】
本発明の幾つかの利点が存在し、例えば、処方物においてどれくらいの量の薬物が即座の放出に利用され得るか、及び、どのような割合が持続され且つ制御されるか、を正確に決定するための能力を有することが挙げられる。水相のみを用いて油相を用いることなくゲルを製造することは、また、より簡単且つより安価である。
【0047】
本発明は、ポリマーが製造プロセスの間に水和されて、ポリマーと処置剤との間の錯体の形成が可能になるように、調製されたゲル処方物中で使用される。本書で使用される場合、用語「ゲル」は、代表的には高度な弾性を有する、ゲル様半固体物質(例えば、ゲル、ゼリー、ペースト、クリーム、軟膏、又は類似する物質)をいう。
【0048】
ゲル処方物の調製は、代表的に、十分に水和されるまで(均一で、滑らかで、均質で、塊りのないゲル様ポリマー混合物が得られるまで)、数時間、イオン性ポリマーを水と混合することによってポリマーを水和することを包含する。代表的には、他の賦形剤(例えば、ソルビン酸、グリセリン、及びメチルパラベン)が、混合の際に含有される。ポリマーが完全に水和されると、処置剤が添加され、そして、均質な懸濁液が得られるまで混合される。
【0049】
本発明の組成物は、また、タブレットの形態で送達されてもよい。本発明のタブレット製造は、タブレットを形成する「湿式(wet)」の方法を用いる当業者に知られている方法に従って達成され得る。適当な製造プロセスの決定は、湿度又はpHに対する処置剤の感受性を考慮することを必要とするかも知れない。湿度又はpHに対して感受性である処置剤は、湿度又はpHへの暴露(処置剤を、例えばゲル又はタブレットへ取り込ませる製造プロセスの間に起こり得るような)の際に代謝され得るか(metabolized)又は分解され得るものを意味する。湿度又はpHへの暴露の時間及び程度が、処置剤が分解されるか否か、或いは処置剤がどの程度分解されるかに影響を及ぼすかも知れない。従って、これらの事柄は、特定の製品のための製造プロセスにおいて考慮されなければならない。
【0050】
例えば、湿度に対して実質的に感受性でない処置剤については、処置剤をセルロース、デンプン、ラクトース及びポリマーと混合して湿顆粒(wet granulate)を形成し、顆粒を形成してもよい。組成物は、処置剤とポリマーが十分に水和されるまで混合される。顆粒は、温風で乾燥され、そしてタルク、二酸化ケイ素及びステアリン酸マグネシウムと混合されてもよい。混合物を圧縮すると、タブレットを形成する。水膨潤性ポリマー及び湿度に感受性の処置剤についての好ましい実施形態において、処置剤は、顆粒が乾燥された後に添加され、水へ暴露されないようにする。ポリマーもまた、顆粒が乾燥した後に、タルク、シリコン酸化物及びステアリン酸マグネシウムとともに添加されてもよい。この方法において、有効成分の均質な分散を得ることができる。この組成物は、次に、製造プロセスの間よりもむしろユーザーによって投与される際に、水和されるだろう。
【0051】
本発明は、製品が使用される際に錯体が形成される(即ち、製品が患者において使用される際に、処方物が水和され、ポリマー−処置剤錯体が形成される)タブレット処方物においても使用され得る。或いは、本発明は、ポリマーを水和し且つ製造の間にポリマー−処置剤錯体を形成させる様に製造されるタブレットにおいて実施され得る。
【0052】
関心のある特定の実施形態において、上記で簡単に述べられたように、本発明は、薬学的に許容される生体付着性キャリアとともに、異常な又は所望されない収縮を引き起こす神経インパルスまたは細胞と細胞の伝達並びに/或いは神経インパルスの伝達を正常化することにより(即ち、より速い、より遅い、又はより一貫性のある)子宮の律動異常を弱める又は和らげることが意図された有効量の処置剤を含有する、油相を含まない薬学的組成物に関する。このような抗律動異常処置剤としては、局所麻酔薬、冠動脈律動異常(coronary dysrhythmias)を処置するための使用に通常に関与する典型的な"抗−不整脈剤"、カルシウムチャンネルブロッカー、及びオータコイド剤(プロスタグランジン及びプロスタグランジンブロッカー)、非ステロイド抗炎症薬("NSAIDS")、COXインヒビター、トロンボキサンシンターゼインヒビター、ロイコトリエンインヒビターが挙げられる。この実施形態は、また、以下の説明の多くが援用される米国出願第10/089,796において詳細に述べられている。以下の記述は、本発明の例示であり、概してこの実施形態にのみ関する。それゆえ、この説明は、概して、本発明の範囲を限定することを意味しない。
【0053】
局所麻酔薬は、一般的に、痛みの感覚を中継する又は伝える神経インパルスの伝達を妨げることによって局部的な麻痺又は痛みの緩和を提供するために使用され得る薬物として定義される。本発明において有用な局所麻酔薬としては、当業者に知られている任意の麻酔薬が挙げられる。リドカインは、本発明における使用のための好ましい麻酔薬である。使用され得る他の局所麻酔薬としては、コカイン、クロロプロカイン、テトラカイン、プリロカイン、メピバカイン、ブピバカイン、レボブピバカイン、アーティカイン、ロピバカイン、フェノール、ベンゾカイン、プラモキシン、ジクロニン、エチドカイン、プロカイン、プロパラカイン、ジブカイン、及びプラモキシンが挙げられる。
【0054】
典型的な抗−不整脈剤は、概して、冠動脈不整脈を処置又は予防するために使用される。このような処置剤としては、例えば、リドカイン、フェニトイン、メキシレチン、トカイニド、プロカインアミド、キニジン、ジソピラミド、モリシジン、プロパフェノン、フレカイニド、ソタロール、ブレチリウム、アミオダロン、ベラパミル、ジルチアゼム、ジゴキシン、ジギトキシン、アデノシン、プロプラノロール、エスモロール、及びN−アセチルプロカインアミドが挙げられる。
【0055】
カルシウムチャンネルブロッカーは、それらのSA及びAV節(SA and AV nodes)へのそれらの作用に起因して、冠動脈抗不整脈剤として使用される。これらの薬剤は、また、冠動脈血管抵抗(coronary vascular resistance)を低下させ、冠動脈の血流を増大させる傾向にある。カルシウムチャンネルブロッカーの例としては、限定されないが、アムロジピン、ベプリジル、ジルチアゼム、フェロジピン、イスラジピン、ニカルジピン、ニフェジピン、ニモジピン、及びベラパミルが挙げられる。最もよくある副作用は、過度の血管拡張によって引き起こされる傾向にあり、めまい、低血圧、頭痛、指の知覚不全及び悪心であり得る。他の副作用としては、便秘、心筋虚血の悪化、及び末梢又は肺水腫が挙げられる。
【0056】
プロスタグランジン及び関連する化合物は、それらの共通する構造の誘導体ゆえに、エイコサノイドと呼ばれている。エイコサノイドとしては、また、ロイコトリエン及びトロンボキサンAを含む。プロスタグランジンは、しばしば、強力な血管拡張剤及び/又は血管収縮剤である。あるプロスタグランジンは、全身の血圧を低下させてほとんどの器官への血流を増大させるが、他のプロスタグランジンは、一般的に、心拍出量を増大させる。ロイコトリエンは、冠状動脈の血流を減少させる傾向にあり、トロンボキサンAは、強力な血管収縮剤である。
【0057】
エイコサノイド又はエイコサノイド生合成のインヒビターとしては、プロスタグランジンブロッカー、トロンボキサンシンターゼインヒビター、ロイコトリエンインヒビター、NSAIDS(非ステロイド抗炎症薬)、及びCOXインヒビターが挙げられる。種々のエイコサノイド又はエイコサノイド前駆体の生合成又は生物活性をブロックするか又は干渉することは、また、拍動(rhythm)に影響を与えることなく、収縮の数を増大又は減少させ得る。これは、末梢又はプレリミナリー活性又は合成に影響を及ぼすことによる間接的なメカニズムを通じて起こるのかも知れない。
【0058】
トロンボキサンシンターゼインヒビターとしては、例えば、ピルマグレル及びダゾキシベンが挙げられる。
【0059】
ロイコトリエンインヒビターとしては、例えば、ジロイトン(zileuton)が挙げられる。
【0060】
NSAIDSとしては、例えば、ジクロフェナク、エトドラク、フェノプロフェン、ルルビプロフェン(lurbiprofen)、イブプロフェン、インドメタシン、ケトプロフェン、ケトロラク、メクロフェナメート、フェナミン酸(fenamic acid)、メロキシカム、ナブメトン、ナプロキシン、オキサプロジン、ピロキシカム、スリンダク及びトルメチンが挙げられる。
【0061】
COXインヒビターとしては、例えば、アスピリン、セレコキシブ、ロフェコキシブ、及びバルデコキシブが挙げられる。
【0062】
生体付着性キャリアとしては、生体付着性で水膨潤性で水に不溶性である架橋されたポリカルボン酸ポリマーが挙げられる。ゲル処方物中に含まれ得る好ましいキャリアは、膣粘膜を通る局所麻酔薬の制御された長時間放出を与えるようにデザインされたポリカルボフィルベースを含有する。他の目的のための異なる処置剤の投与のための同様の処方物については、その内容が、それぞれ本書において参考として明白に援用される米国特許第5,543,150号及び第6,126,959号に開示される。
【0063】
米国特許第5,543,150号は、第一子宮通過効果(FIRST UTERINE PASS EFFECT):プロゲステロンの非常に低い血清レベルを維持しながら、子宮内膜の分泌トランスフォーメーションをもたらすためのプロゲステロンの有向性局所的送達(directed, local delivery)を提供するためのプロゲステロンを含む同様の徐放性膣処方物の使用を開示し、特許請求している。同様に、米国特許第6,126,959号は、処置剤の有害な血中レベルを引き起こすことなく局部的効能をもたらす処置剤の膣送達のための他の同様の徐放性処方物の使用及び組成物を開示し、特許請求している。
【0064】
本発明は、また、組成物を膣に投与することを包含する骨盤痛を処置又は予防するための方法にも関する。このような投与は、子宮の律動異常と関連する骨盤痛を処置又は予防することについての治療的利益を明らかにする。
【0065】
本発明は、また、組成物を膣に投与することを包含する不妊症を処置又は改善するための方法にも関する。このような投与は、子宮の律動異常と関連する不妊症を処置又は予防することについての治療的利益を明らかにする。
【0066】
好ましくは、この実施形態において、組成物は、使用される処置剤に依存して、約0.1%〜12.5%の濃度の処置剤を含有する用量で投与される。例えば、リドカインは、2%、5%、及び10%の用量濃度の処置剤として投与され得、テルブタリンは、代表的に、0.1%〜1%の用量濃度で投与される。
【0067】
本発明の組成物は、粘膜表面(例えば、膣、頬、直腸、眼(occular)又は他の表面)へ有利に送達される。該組成物は、膣に適用されてもよいし、任意の適当な膣組成物(例えば、限定されないが、ゲル又はクリーム、或いは、投与のためのゲル化タブレット(gelifying tablet))として処方されてもよい。投与されると、該組成物は、膣粘膜を通じて標的組織へ拡散する。痛みの原因又は根源(例えば、増大された又は律動異常の収縮性)の処置又は予防によって、痛みからの解放がもたらされる。
【0068】
本発明のこの実施形態の組成物における処置剤は、関与する痛みを制御する目的で、機能不全の子宮収縮性を改めるため、高濃度で子宮筋層へ拡散する。処置剤の全身循環は低いレベルのままであり、不利な全身の副作用を避けるための処置が可能となる。処置剤及び処方物(これは、処置剤の放出の持続時間が延長されるか又は短縮されるように改変され得る)の両方に依存して、処置剤の放出及び効能が、少なくとも約48時間又はそれ以上の間、容易に続き得る。
【0069】
本発明における使用のための好ましい局所麻酔薬は、リドカインである。リドカインは、最もよい局所麻酔薬であるとともに、抗律動異常剤である。化学式は、2−(ジエチルアミノ)―N−(2,6−ジメチルフェニル)アセトアミドである。その分子量は、234.34である。その構造式は、以下のとおりである:
【0070】
【化1】

【0071】
リドカインは、作用部位へ局部的に送達されるとき、極めて安全で効果的な麻酔薬である−−顕著な血清レベルのリドカインは、不利な副作用をも引き起こすかも知れないが。それは、約1.5〜2時間の半減期(これは、徐放性処方物において使用するために実用化するには十分に長い)を有する。
【0072】
選択される特定の薬物送達処方物は、米国特許第4,615,697号(「‘697特許」)(その内容は、本書において参照として明白に援用される)に一般的に記載される架橋されたポリカルボン酸ポリマー処方物を含んでもよい。一般的に、このような処方物中のポリマーの少なくとも約80%のモノマーは、少なくとも1つのカルボキシル官能価(functionality)を含む。架橋剤は、該システムが所望の投薬が行われるのを可能にするのに十分な時間標的上皮表面へ付着されたまま留まることを可能にするに十分な生体付着性をもたらすような量で存在する。勿論、より多くの用量が当業者によって容易に処方され、より長時間に渡って更にゆっくり放出されるであろう;重要なファクターは、単位時間当たりに投与される処置剤の量であるが、一方、処方物の濃度は、単位用量当たりの処方物の量に伴って反比例で変化し得るか、又は処置剤の放出の持続時間に伴って直接に変化し得る。言い換えると、処方物中のより高い濃度の処置剤は、よりゆっくり及び/又はより少ない用量の処方物において送達され、処置剤の同じ全体送達速度を達成し得る。
【0073】
本発明のこの実施形態の膣投与について、処方物は、好ましくは、約24時間〜48時間に渡り上皮表面へ付着されたまま留まる。このような結果は、ポリマーが継続して存在することに起因するpH減少について膣からのサンプルを試験することによって、様々な時間に渡って臨床的に測定され得る。この生体付着のレベルは、概して、架橋剤がポリマーの約0.1〜6重量パーセント、好ましくは約1〜2重量パーセント存在する場合に、達成される。生体付着は、付着力を測定するために利用される市販の表面張力計(surface tensiometers)を用いて測定され得る。
【0074】
ポリマー処方物は、ポリマー中の架橋剤の量を変動させることによって、局所麻酔薬(例えば、リドカイン)の放出速度を制御するよう調整され得る。適当な架橋剤としては、ジビニルグリコール、ジビニルベンゼン、N,N−ジアリルアクリルアミド、3,4−ジヒドロキシ−1,5−ヘキサジエン、2,5−ジメチル―1,5−ヘキサジエン及び類似する薬剤が挙げられる。
【0075】
このような処方物における使用のための好ましいポリマーは、商品名NOVEON(登録商標)−AA1でオハイオ州クリーヴランドのNoveon, Incから市販されているポリカルボフィル(U.S.P.)である。ポリカルボフィルは、ジビニルグリコールで架橋されたポリアクリル酸である。
【0076】
このようなドラッグデリバリーシステム処方物において使用され得る他の有用な生体付着性ポリマーは、‘697特許において言及されている。例えば、これらとしては、3,4−ジヒドロキシ−1,5−ヘキサジエンで架橋されたポリアクリル酸ポリマー、並びに、ジビニルベンゼンで架橋されたポリメタクリル酸ポリマーが挙げられる。
【0077】
代表的に、これらのポリマーは、塩形態がポリマーの生体付着能を低下させ、またイオン性薬剤の結合を阻害するため、塩形態で使用されないであろう。2価の塩(例えば、カルシウム塩)は、生体付着の最も大きな低下を引き起こす。1価の塩(例えば、ナトリウム塩)は、代表的に、そこまで生体付着を低下させない。
【0078】
このような生体付着性ポリマーは、過酸化ベンゾイル、アゾビスイソブチロニトリルなどを利用する従来のフリーラジカル重合技術によって調製され得る。有用な生体付着剤の例示的な調製は、‘697特許において提供される。
【0079】
この生体付着性処方物は、ゲル、クリーム、タブレット、ピル、カプセル、坐薬、フィルム、又は粘膜に付着し且つ簡単には洗い流されない任意の他の薬学的に許容される形態であってもよい。本発明の好ましい処方物は、ゲルの形態である。
【0080】
さらに、デリバリーシステムの最大の所望効能又は患者の心地良さのために、処方物中の架橋されたポリマーとともに、‘697特許に開示される添加物が混合されてもよい。このような添加物としては、限定されないが、以下の1種又はそれ以上である:滑沢剤、可塑剤、保存剤、ゲル形成剤、タブレット形成剤、ピル形成剤、坐剤形成剤、フィルム形成剤、クリーム形成剤、崩壊剤、コーティング、バインダー、ビヒクル、着色剤、香り調整剤、湿潤剤(humectants)、粘度調整剤、pH調整剤、及び他の類似のよく使用される剤。
【0081】
本発明の組成物のこの実施形態は、当業者に知られている様々なやり方(例えば、限定されないが、プランジャー、灌注、及び手)で膣へ送達され得る。送達の1つの方法は、米国意匠特許第D345,211号及びD375,352号に記載されるものに類似するデバイスを使用することである。これらのデバイスは、患者によって比較的容易に使用され得る、開くことができる一端と密閉された容器中に送達される組成物の大部分を含む他端とを備える楕円形の中空チューブ容器(oblong hollow tube containers)である。前記容器は、また、処方物及び処置剤を、使用まで、密閉された無菌環境で維持する。使用時に、このような容器が開けられ、開口端(open end)が膣へ挿入され、一方、容器の内容物を膣へ送達するために他端が絞られる(squeezed)。
【0082】
このように、本発明のこの実施形態を使用し、十分な量の処置剤を長時間のあいだ患部組織(affected tissue)へ送達することによって、痛みの根底にある原因を処置することができる。デリバリーシステムは、不利な効果を回避するのに十分低い全身濃度を保ちながら、組織の収縮性に影響を与える濃度を達成する薬物の一定の供給源を提供する。
【0083】
局所麻酔薬は、概して、塩基性又はプロトン化されていない形態で使用されるであろう。この形態において、麻酔薬は、ほんの少しだけ水に溶解性である。別の形態において、麻酔薬は、水溶性塩(例えば、塩酸塩)として使用されてもよい。麻酔薬のプロトン化されていない形態は、細胞膜を通る拡散を作用部位に到達させるのに必要である。カチオン種は、Naチャンネルと優先的に相互作用する。好ましい実施形態において、麻酔薬は、その塩基性形態で使用されるか、或いは送達のためのゲル又はゲル化タブレットに懸濁される。
【0084】
局所麻酔薬(例えば、リドカイン)は、抗不整脈剤として子宮筋に作用し、また、収縮の頻度よりもむしろ運動異常(dyskinesia)と関連する子宮痙攣の痛みを予防する手段として子宮運動異常を後退させる(reverse)。麻酔薬は、律動異常収縮によって引き起こされる逆行性月経(retrograde menses)を制限することによって、子宮内膜症を予防するし、また、律動異常と関連する軽度の子宮内膜症と関係する不妊症を患う女性において、精子の輸送を助け得る。
【0085】
典型的な経口又は注射形態の麻酔薬は、抗律動異常の効能を実現するのに十分な子宮組織レベルに到達するためには、高い血中レベルを達成する必要があるだろう。いわゆる「トリガーポイント(trigger point)」注射は、より高い血中レベルを引き起こす傾向にあり、また、本発明の処方物と比べると、投与の利便性及び快適さに関して明らかに不利な点を示す。
【実施例】
【0086】
以下の例示的な処方物は、本発明に従って製造され得る。それらは、米国出願第10/089,796号にも存在する。全ての成分は、重量%で表されている。
【0087】
【表4】

【0088】
【表5】

【0089】
【表6】

【0090】
【表7】

【0091】
【表8】

【0092】
【表9】

【0093】
テルブタリン処方の実施例は、以下の通りである:
【0094】
【表10】

【0095】
抗律動異常薬の膣送達のための適当な処方物の非限定的な例は、抗律動異常薬(好ましくは、リドカイン又はイブプロフェン)と混合されるポリカルボフィル、carbopol、NATROSOL(登録商標)250HHX、グリセロール、ソルビン酸、メチルヒドロキシベンゾエート、及び精製水を含む。
【0096】
ソルビン酸及びメチルヒドロキシベンゾエートは、保存剤であり、他の既知の保存剤(例えば、安息香酸、プロピルパラベン、又はプロピオン酸)で代用され得る。
【0097】
Carbopol(登録商標)は、ゲル形成剤(好ましくはCarbopol(登録商標)974P)であるが、他のゲル形成剤(例えば、Carbopol(登録商標)934P、Carbopol(登録商標)940又はCarbopol(登録商標)980が挙げられるが、これらに限定されない)で代用され得る。実際、ゲルを形成するとして当業者に知られている任意のカルボマーが、本発明で使用され得る。
【0098】
NATROSOL(登録商標)250HHXは、増粘剤であるが、他の増粘剤(例えば、メチルセルロース又はプロピルセルロース)で代用され得る。
【0099】
グリセロールは、湿潤剤である;代替的な湿潤剤としては、例えば、プロピレングリコール及びジプロピレングリコールが挙げられる。
【0100】
当業者に明らかであるように、組成を変えて、特定の性質に影響を及ぼすことができる。例えば、生体付着性ポリマーの濃度を調整して、より高い又は低い生体付着性を提供することができる。粘度は、pHを変化させることにより或いはポリマー又はゲル形成剤の濃度を変化させることにより、変えられ得る。pHもまた、必要に応じて、処方物の放出速度又は生体付着性に影響を及ぼすように変えられ得る。全ての成分は、周知であり、この産業において知られている供給業者から容易に入手可能である。
【0101】
このように、この実施形態において、本発明は、律動異常に関連する骨盤痛を処置するための抗律動異常剤の、膣投与のための使用及び組成物を提供する。この長時間放出性の処方物は、不利な副作用を誘導するのに十分の血中レベルをもたらすことなく、有効な局部的処置を可能にする。
【0102】
この明細書中で述べられている全ての公報及び特許出願は、本発明が属する分野の当業者のレベルを示唆している。本書において述べられている全ての公報及び特許出願は、それぞれの個々の公報又は出願が具体的且つ個別に参照として援用されたのと同じ程度に、参照として援用される。
【0103】
本発明が、本書において図示及び記載されるような正確な形態(configuration)に限定されないことが理解されるはずである。従って、本書において前述された開示から当業者によって、或いはそこからのルーチンな実験によって容易に達成され得る全ての好都合な改変は、添付の特許請求の範囲によって規定される本発明の精神及び権利範囲に含まれると考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0104】
【図1A】図1Aは、処置剤(プロゲステロン)が、水相から組織へ拡散し且つ油リザーバー中に蓄えられたプロゲステロンによって水相において置換され、処置剤の一定且つ制御された放出を確実にする、水相及び油相ポリカルボフィルデリバリーシステムを示す。
【図1B】図1Bは、油相を含まずイオン性処置剤及びイオン性ポリマーを有するデリバリーシステムを示す(ここで、一部の処置剤は、長期間送達のためポリマーと錯体を形成し、別の一部の処置剤は、送達時に即座に放出するため溶液中に存在する)。
【図2】図2は、カチオン性処置剤又はカチオン性錯体の結合に加えて膣上皮への水素結合を可能にするアニオン性ポリマーの複数の負電荷を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオン性処置剤及びイオン性ポリマーを含有する生体付着性薬学的組成物であって、ここで、該ポリマーは、該処置剤との結合を付与するのに十分イオン化されて、該組成物が長時間に渡り制御様式で該処置剤を放出することを可能にし、且つ、該組成物は処置剤を投与するためのエマルジョン系を必要としない、組成物。
【請求項2】
該ポリマーがアニオン性である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
該ポリマーがカチオン性であり、且つ、該組成物がさらに生体付着剤を含有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
該処置剤がアニオン性であり、且つ、該組成物が、該処置剤と錯体を形成するカチオン性錯化剤をさらに含有し、該錯体がアニオン性ポリマーに結合する、請求項2に記載の組成物。
【請求項5】
該ポリマーが、該処置剤錯体と結合し且つ該組成物の生体付着を提供するのに十分、イオン化されている、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
該ポリマーが、生体付着を提供するのに十分、イオン化されている、請求項2に記載の組成物。
【請求項7】
該ポリマーが、生体付着性で水膨潤性であるが水に不溶性である架橋されたポリカルボン酸ポリマーである、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
該ポリマーがポリカルボフィルを含有する、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
該処置剤が、少なくとも約6時間に渡り放出される、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
該処置剤が、少なくとも約12時間に渡り放出される、請求項2に記載の組成物。
【請求項11】
該処置剤が、少なくとも約24時間に渡り放出される、請求項7に記載の組成物。
【請求項12】
該処置剤が、2〜3日間に渡り放出される、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
該処置剤が、約3.5日間に渡り放出される、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
該処置剤がカチオン性処置剤である、請求項1に記載の組成物。
【請求項15】
該処置剤が、アミトリプチリン、アマンタジン、アミオダロン、メクリジン、ジフェンヒドラミン、ヒドロキシジン、又はアトロピンの1種又はそれ以上を含有する、請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
該処置剤が、リドカイン、ベンゾカイン、プロカイン、ブプレノルフィン、モルフィン、ブロモクリプチン、ブプロピオン、ブスピロン、ブトルファノール、クロルプロマジン、クリンダマイシン、クロニジン、又はクロミフェンの1種又はそれ以上を含有する、請求項14に記載の組成物。
【請求項17】
該処置剤が、シクロベンザプリン、ドキサゾシン、フェンタニール、フルオキセチン、ロイプロリド、オクトレオチド、オンダンセトロン、ピオグリタゾン、オキシブチニン、ラロキシフェン、チクロピジン、又はテルブタリンの1種又はそれ以上を含有する、請求項14に記載の組成物。
【請求項18】
該処置剤が、アニオン性処置剤である、請求項3に記載の組成物。
【請求項19】
該処置剤が、ナプロキセン、フェノバルビタール、フォスカルネット、ガンシクロビル、アシクロビル、シドフォビル、ファンシクロビル、ペンシクロビル、フォシノプリル、ジバルプロックス、セフロキシム、プラバスタチン、ラベプラゾール、又はワルファリンの1種又はそれ以上を含有する、請求項18に記載の組成物。
【請求項20】
該組成物がゲルの形態である、請求項2に記載の組成物。
【請求項21】
該組成物がタブレットの形態である、請求項2に記載の組成物。
【請求項22】
該タブレットが、タブレットの製造の間に水和して該ポリマーと該処置剤との間で錯体を形成するよう処方される、請求項21に記載の組成物。
【請求項23】
該タブレットが、患者への投与の際に水和して該ポリマーと該処置剤との間で錯体を形成するよう処方される、請求項21に記載の組成物。
【請求項24】
処置剤及び生体付着性で水膨潤性であるが水に不溶性である架橋されたポリカルボン酸ポリマーを含有する薬学的組成物であって、ここで、該処置剤は、アミトリプチリン、アマンタジン、アミオダロン、メクリジン、ジフェンヒドラミン、ヒドロキシジン、アトロピン、リドカイン、ベンゾカイン、プロカイン、ブプレノルフィン、モルフィン、ブロモクリプチン、ブプロピオン、ブスピロン、ブトルファノール、クロルプロマジン、クリンダマイシン、クロニジン、クロミフェン、シクロベンザプリン、ドキサゾシン、フェンタニール、フルオキセチン、ロイプロリド、オクトレオチド、オンダンセトロン、ピオグリタゾン、オキシブチニン、ラロキシフェン、チクロピジン、又はテルブタリンの1種又はそれ以上を含有し、且つ、長時間に渡り制御様式で放出され、ここで、該組成物は、該処置剤を投与するためのエマルジョン系を必要としない、組成物。
【請求項25】
該ポリマーがポリカルボフィルを含有する、請求項24に記載の組成物。
【請求項26】
処置剤及び生体付着性で水膨潤性であるが水に不溶性である架橋されたポリカルボン酸ポリマーを含有する薬学的組成物であって、ここで、該処置剤は、ナプロキセン、フェノバルビタール、フォスカルネット、ガンシクロビル、アシクロビル、シドフォビル、ファンシクロビル、ペンシクロビル、フォシノプリル、ジバルプロックス、セフロキシム、プラバスタチン、ラベプラゾール、又はワルファリンの1種又はそれ以上を含有し、且つ、長時間に渡り制御様式で放出され、ここで、該組成物は、該処置剤を投与するためにエマルジョン系を必要としない、組成物。
【請求項27】
該ポリマーがポリカルボフィルを含有する、請求項26に記載の組成物。
【請求項28】
骨盤痛を処置又は予防するため、或いは、子宮律動異常と関連する不妊症を処置又は改善するための薬学的組成物であって、処置剤が長時間に渡り制御様式で放出されるよう、治療有効量のイオン性抗律動異常処置剤及び生体付着性で水膨潤性であるが水に不溶性である架橋されたポリカルボン酸ポリマーを含有し、且つ、該組成物は、該処置剤を投与するためのエマルジョン系を必要としない、組成物。
【請求項29】
該ポリマーがポリカルボフィルを含有し、該処置剤がリドカインである、請求項28に記載の組成物。
【請求項30】
治療有効量のイオン性処置剤及びイオン性ポリマーを含有する組成物を投与することを包含する、哺乳動物における疾患又は状態を処置又は予防する方法であって、ここで、該ポリマーは、該処置剤との結合を提供するのに十分イオン化されており、該処置剤は、ポリマーとの化学結合を介して長時間に渡り制御様式で放出され、並びに、該組成物は、該処置剤を投与するためのエマルジョン系を必要としない、方法。
【請求項31】
該ポリマーがアニオン性であり、且つ、組成物が、該処置剤と錯体を形成し且つアニオン性ポリマーへも結合するカチオン性錯化剤をさらに含有する、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
該処置剤が、少なくとも約6時間に渡り放出される、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
該処置剤が、アミトリプチリン、アマンタジン、アミオダロン、メクリジン、ジフェンヒドラミン、ヒドロキシジン、アトロピン、リドカイン、ベンゾカイン、プロカイン、ブプレノルフィン、モルフィン、ブロモクリプチン、ブプロピオン、ブスピロン、ブトルファノール、クロルプロマジン、クリンダマイシン、クロニジン、クロミフェン、またはシクロベンザプリン、ドキサゾシン、フェンタニール、フルオキセチン、ロイプロリド、オクトレオチド、オンダンセトロン、ピオグリタゾン、オキシブチニン、ラロキシフェン、チクロピジン、又はテルブタリンの1種又はそれ以上を含有する、請求項31に記載の方法。
【請求項34】
該ポリマーがカチオン性であり、且つ、組成物がさらに生体付着剤を含有する、請求項30に記載の方法。
【請求項35】
該処置剤が、ナプロキセン、フェノバルビタール、フォスカルネット、ガンシクロビル、アシクロビル、シドフォビル、ファンシクロビル、ペンシクロビル、フォシノプリル、ジバルプロックス、セフロキシム、プラバスタチン、ラベプラゾール、又はワルファリンの1種又はそれ以上を含有する、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
治療有効量のイオン性抗律動異常処置剤及び生体付着性で水膨潤性であるが水に不溶性である架橋されたポリカルボン酸ポリマーを含有する組成物を膣投与することを包含する、骨盤痛を処置又は予防する、或いは、不妊症を処置又は改善する方法であって、ここで、該処置剤は、長時間に渡り制御様式で放出され、及び、該組成物は、該処置剤を投与するためのエマルジョン系を必要としない、方法。
【請求項37】
該ポリマーがポリカルボフィルを含有し、且つ、該組成物が、投与後少なくとも1日間に渡り該処置剤を放出するよう処方される、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
イオン性処置剤及びイオン性ポリマーを含有する生体付着性組成物であって、ここで、該組成物は、処置剤を放出するためのエマルジョン系を必要とせず、且つ、該ポリマーは、該処置剤が長時間に渡り制御様式で放出されるよう、処置剤との結合を提供するのに十分イオン化されており、該組成物は、治療によりヒト又は動物の身体を処置する方法において使用される、組成物。
【請求項39】
処置剤及び生体付着性で水膨潤性であるが水に不溶性である架橋されたポリカルボン酸ポリマーを含有する組成物であって、ここで、該組成物は、該処置剤を放出するためのエマルジョン系を必要とせず、及び、該処置剤は、アミトリプチリン、アマンタジン、アミオダロン、メクリジン、ジフェンヒドラミン、ヒドロキシジン、アトロピン、リドカイン、ベンゾカイン、プロカイン、ブプレノルフィン、モルフィン、ブロモクリプチン、ブプロピオン、ブスピロン、ブトルファノール、クロルプトマジン、クリンダマイシン、クロニジン、クロミフェン、シクロベンザプリン、ドキサゾシン、フェンタニール、フルオキセチン、ロイプロリド、オクトレオチド、オンダンセトロン、ピオグリタゾン、オキシブチニン、ラロキシフェン、チクロピジン、又はテルブタリンの1種又はそれ以上を含有し、且つ、長時間に渡り制御様式で放出され、該組成物は、治療によりヒト又は動物の身体を処置する方法において使用される、組成物。
【請求項40】
処置剤及び生体付着性で水膨潤性であるが水に不溶性である架橋されたポリカルボン酸ポリマーを含有する組成物であって、ここで、該組成物は、処置剤を放出するためのエマルジョン系に頼らず、及び、該処置剤は、ナプロキセン、フェノバルビタール、フォスカルネット、ガンシクロビル、アシクロビル、シドフォビル、ファンシクロビル、ペンシクロビル、フォシノプリル、ジバルプロックス、セフロキシム、プラバスタチン、ラベプラゾール、又はワルファリンの1種又はそれ以上を含有し、且つ、長時間に渡り制御様式で放出され、該組成物は、治療によりヒト又は動物の身体を処置する方法において使用される、組成物。
【請求項41】
骨盤痛の処置又は予防、或いは、子宮律動異常と関連する不妊症の処置又は改善における使用のための薬剤の製造における、イオン性抗律動異常処置剤及び生体付着性で水膨潤性であるが水に不溶性である架橋されたポリカルボン酸ポリマーの使用であって、ここで、該薬剤は、該処置剤の放出のためのエマルジョン系に頼らず、且つ、該処置剤が長時間に渡り制御様式で放出されるよう処方される、使用。
【請求項42】
粘膜表面へ投与するための薬剤の製造におけるイオン性処置剤及びイオン性ポリマーの使用であって、ここで、該薬剤は、該処置剤の放出のためのエマルジョン系に頼らず、且つ、ポリマーとの化学結合を介して長時間に渡り制御様式で該処置剤を放出するよう処方され、ここで、該ポリマーは、該処置剤との結合を提供するのに十分イオン化されている、使用。
【請求項43】
該薬剤が、子宮律動異常と関連する又は子宮律動異常によって引き起こされる病状を処置又は予防するためのものである、請求項42に記載の使用。
【請求項44】
骨盤痛の処置又は予防、或いは、不妊症の処置又は改善における膣投与のための薬剤の製造における、イオン性抗律動異常処置剤及び生体付着性で水膨潤性であるが水に不溶性である架橋されたポリカルボン酸ポリマーの使用であって、ここで、該薬剤は、該処置剤の放出のためのエマルジョン系に頼らず、且つ、処置剤が長時間に渡り制御様式で放出されるよう処方される、使用。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【公表番号】特表2006−506453(P2006−506453A)
【公表日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−501510(P2005−501510)
【出願日】平成15年4月25日(2003.4.25)
【国際出願番号】PCT/EP2003/004316
【国際公開番号】WO2004/037229
【国際公開日】平成16年5月6日(2004.5.6)
【出願人】(399055579)コロンビア・ラボラトリーズ・(バミューダ)・リミテッド (5)
【Fターム(参考)】