説明

荷電リポタンパク質複合体およびその使用

【課題】荷電リポタンパク質複合体、その複合体を含む医薬組成物、その複合体を使用する方法の提供。
【解決手段】本開示は、荷電リポタンパク質複合体を提供し、それは1つの構成成分として陰性に荷電したリン脂質を含み、それは複合体に改善した治療的性質を与えることが期待される。本発明によって、アポリポタンパク質画分および脂質画分を含む、再構築された円盤状の荷電リポタンパク質複合体が提供され、ここでこの脂質画分は、中性リン脂質および約0.2〜3wt%の荷電したリン脂質を含む。1つの実施形態において、この中性リン脂質は、レシチンまたはスフィンゴミエリンを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(1.関連出願の引用)
本出願は、米国仮特許出願第60/665,180号(2005年3月24日出願)に対する米国特許法第119条(e)の下の優先権を主張し、この内容は、本明細書中でその全体が参考として援用される。
【0002】
(2.技術的分野)
本開示は、荷電リポタンパク質複合体、その複合体を含む医薬組成物、および脂質代謝異常および/またはそれに関連する疾患、異常、および/または状態を含む、様々な状態または異常を治療または予防するために、その複合体を使用する方法を提供する。
【背景技術】
【0003】
(3.背景)
循環コレステロールは、血漿リポタンパク質−−血中で脂質を運ぶ脂質およびタンパク質組成物の複合体粒子によって運ばれる。血漿中を循環し、そして脂肪運搬システムに関与する、リポタンパク質粒子の4つの主なクラス:キロミクロン、超低密度リポタンパク質(VLDL)、低密度リポタンパク質(LDL)、および高密度リポタンパク質(HDL)。キロミクロンは、腸管脂肪吸収の短命な産物を構成する。VLDL、および特にLDLは、肝臓(ここで合成される、または食事性供給源から得られる)から、動脈壁を含む肝臓外組織へのコレステロールの伝達を司る。対照的に、HDLはコレステロール逆輸送(RCT)、特に肝臓外組織から肝臓への、コレステロール脂質の除去を媒介し、肝臓でそれは貯蔵、異化、排泄、または再利用される。HDLはまた、炎症、酸化脂質およびインターロイキンの輸送に役割を果たす。
【0004】
リポタンパク質粒子は、コレステロール(通常コレステロールエステルの形式で)およびトリグリセリドから成る疎水性のコアを有する。そのコアは、リン脂質、非エステル化コレステロール、およびアポリポタンパク質を含む表面コートに囲まれている。アポリポタンパク質は、脂質の輸送を媒介し、そして脂質代謝に関与する酵素と相互作用し得るものもある。ApoA−I、ApoA−II、ApoA−IV、ApoA−V、ApoB、ApoC−I、ApoC−II、ApoC−III、ApoD、ApoE、ApoJ、およびApoHを含む、少なくとも10個のアポリポタンパク質が同定された。LCAT(レシチン:コレステロールアシルトランスフェラーゼ)、CETP(コレステロールエステル輸送タンパク質)、PLTP(リン脂質輸送タンパク質)、およびPON(パラオキソナーゼ)のような他のタンパク質も、リポタンパク質と関連することが見出された。
【0005】
冠動脈心疾患、冠動脈疾患およびアテローム性動脈硬化症のような循環器疾患は、血清コレステロールレベルの上昇と圧倒的に関連している。例えば、アテローム性動脈硬化症は、動脈壁内のコレステロールの蓄積によって特徴付けられる、ゆっくりと進行する疾患である。抗しがたい証拠が、アテローム性動脈硬化症の病変に沈着した脂質は、主に血漿LDLに由来するという理論を支持する;従って、LDLは一般に「悪玉」コレステロールとして知られるようになった。対照的に、HDL血清レベルは、冠動脈心疾患と逆比例する。実際、高いHDLの血清レベルは、負の危険因子であると考えられる。高レベルの血漿HDLは、冠動脈心疾患に対して保護的であるだけでなく、実際アテローム性動脈硬化症のプラークの退縮を誘発し得るという仮説が立てられる(例えば非特許文献1;非特許文献2;Tangiralaら、1999、Circulation 100(17):1816−22;Fanら、1999、Atherosclerosis 147(1):139−45;Deckertら、1999、Circulation 100(11):1230−35;Boisvertら、1999、Arterioscler.Thromb.Vasc.Biol.19(3):525−30;Benoitら、1999、Circulation 99(1):105−10;Holvoetら、1998、J.Clin.Invest.102(2):379−85;Duvergerら、1996、Circulation 94(4):713−17;Miyazakiら、1995、Arterioscler.Thromb.Vasc.Biol.15(11):1882−88;Mezdourら、1995、Atherosclerosis 113(2):237−46;Liuら、1994、J.Lipid Res.35(12):2263−67;Plumpら、1994、Proc.Nat.Acad.Sci.USA 91(20):9607−11;Pasztyら、1994、J.Clin.Invest.94(2):899−903;Sheら、1992、Clin.Med.J.(Engl).105(5):369−73;Rubinら、1991、Nature 353(6341):265−67;Sheら、1990、Ann.NY Acad.Sci.598:339−51;Ran、1989、Chung Hua Ping Li Hsueh Tsa Chih(Zhonghua Bing Li Xue Za Zhiとも翻訳される)18(4):257−61;Quezadoら、1995、J.Pharmacol.Exp.Ther.272(2):604−11;Duvergerら、1996、Arterioscler.Thromb.Vasc.Biol.16(12):1424−29;Kopflerら、1994、Circulation 90(3):1319−27;Millerら、1985、Nature 314(6006):109−11;Haら、1992、Biochim.Biophys.Acta 1125(2):223−29;Beitzら、1992、Prostaglandins Leukot.Essent.Fatty Acids 47(2):149−52を参照のこと)。結果として、HDLは一般に「善玉」コレステロールとして知られるようになった(例えば非特許文献3)を参照のこと)。
【0006】
HDLの「保護的」な役割は、多くの研究において確認された(例えば非特許文献4;非特許文献5)。これらの研究において、LDLレベルの上昇は、心血管リスクの増加と関連しているようであり、一方高いHDLレベルは、心血管の保護を与えるようである。インビボでの研究がさらに、HDLのウサギへの注入が、コレステロール誘発動脈病変の発生を阻害し得る(Badimonら、1989、Lab.Invest.60:455−61)および/またはその退縮を誘発し得る(Badimonら、1990、J.Clin.Invest.85:1234−41)ことを示して、HDLの保護的役割を証明した。
【0007】
(3.1 コレステロール逆輸送、HDL、およびアポリポタンパク質A−I)
コレステロール逆輸送(RCT)経路は、ほとんどの肝臓外組織からコレステロールを除去するよう機能し、そして体内のほとんどの細胞の構造および機能を維持するために非常に重要である。RCTは、主に3つの工程から成る:(a)コレステロールの流出、すなわち様々な末梢細胞のプールからのコレステロールの最初の除去;(b)流出したコレステロールの細胞への再流入を防止する、レシチン:コレステロールアシルトランスフェラーゼ(LCAT)の作用によるコレステロールのエステル化;および(c)加水分解、次いで再利用、貯蔵、胆汁への排泄または胆汁酸への異化のための、HLDコレステロールおよびコレステロールエステルの肝臓細胞への取り込み。
【0008】
RCTの重要な酵素であるLCATは、肝臓によって産生され、そしてHDL画分に付随して血漿中を循環する。LCATは、細胞由来のコレステロールをコレステロールエステルに変換し、それは除去される運命にあるHDL中に隔離される(Jonas 2000、Biochim.Biophys.Acta 1529(1−3):245−56を参照のこと)。コレステロールエステル輸送タンパク質(CETP)およびリン脂質輸送タンパク質(PLTP)は、循環HDL集団をさらにリモデリングするために寄与する。
CETPは、LCATによって作られたコレステロールエステルを、他のリポタンパク質、特にVLDLおよびLDLのような、ApoBを含むリポタンパク質に移す。PLTPはレシチンをHDLに供給する。HDLトリグリセリドは、細胞外肝臓トリグリセリドリパーゼによって異化され、そしてリポタンパク質コレステロールは、いくつかのメカニズムで肝臓によって除去される。
【0009】
HDL粒子の機能的な特徴は、ApoA−IおよびApoA−IIのような、その主なアポリポタンパク質の構成成分によって主に決定される。少量のApoC−I、ApoC−II、ApoC−III、ApoD、ApoA−IV、ApoE、ApoJも、HDLに付随して観察された。HDLは、代謝RCTカスケードまたは経路の間のリモデリングの状態に依存して、広く様々な異なるサイズおよび上記で述べた成分の異なる混合物で存在する。
【0010】
各HDL粒子は通常、少なくとも1分子、そして通常2から4分子のApoA−Iを含む。HDL粒子はまた、ApoEのみを含み得(ガンマ−LpE粒子)、それはまたProf.Gerd Assmannによって記載されたように、コレステロールの流出を司ることが知られている(例えばvon Eckardsteinら、1994、Curr.Opin.Lipidol.5(6):404−16を参照のこと)。ApoA−Iは、肝臓または小腸によって、プレプロアポリポタンパク質A−Iとして合成され、それはプロアポリポタンパク質A−I(proApoA−I)として分泌され、そして迅速に切断されて血漿形式のApoA−I、243アミノ酸の単一ポリペプチド鎖を生ずる(Brewerら、1978、Biochem.Biophys.Res.Commun.80:623−30)。実験的に、直接血流に注入されたプレプロApoA−Iも、血漿形式のApoA−Iに切断される(Klonら、2000、Biophys.J.79(3):1679−85;Segrestら、2000、Curr.Opin.Lipidol.11(2):105−15;Segrestら、1999、J.Biol.Chem.274(45):31755−58)。
【0011】
ApoA−Iは、多くの場合プロリンであるリンカー部分によって隔てられた、6から8個の異なる22アミノ酸のアルファへリックスまたは機能的リピートを含む。リピート単位は、両親媒性のらせんコンフォメーションで存在し(Segrestら、1974、FEBS Lett.38:247−53)、そしてApoA−Iの主な生物学的活性、すなわち脂質結合およびレシチンコレステロールアシルトランスフェラーゼ(LCAT)活性を与える。
【0012】
ApoA−Iは、脂質と3つの型の安定な複合体を形成する:プレ−ベータ−1HDLと呼ばれる、小さい、脂質の少ない複合体;プレ−ベータ−2HDLと呼ばれる、極性脂質(リン脂質およびコレステロール)を含む平板化した円盤状の粒子;および球状または成熟HDLと呼ばれる、極性および非極性脂質を両方含む球状粒子(HDLおよびHDL)。循環集団中のほとんどのHDLは、ApoA−IおよびApoA−IIを両方含む(「AI/AII−HDL画分」)。しかし、ApoA−Iのみを含むHDLの画分(「AI−HDL画分」)は、RCTにおいてより有効であるようである。ある疫学的研究は、Apo−AI−HDL画分は、アテローム産生抑制性であるという仮説を支持する(Parraら、1992、Arterioscler.Thromb.12:701−07;Decossinら、1997、Eur.J.Clin.Invest.27:299−307)。
【0013】
HDLは、異なる大きさ、脂質組成物、およびアポリポタンパク質組成物を有する粒子の、いくつかの集団から成る。それらを、その水和密度、アポリポタンパク質組成、および電荷の特徴を含むその性質によって分離し得る。例えば、プレ−ベータ−HDLは、成
熟アルファHDLよりも低い表面電荷によって特徴付けられる。この電荷の差異のために、プレ−ベータ−HDLおよび成熟アルファHDLは、アガロースゲルにおいて異なる電気泳動の移動度を有する(Davidら、1994、J.Biol.Chem.269(12):8959−8965)。
【0014】
プレ−ベータ−HDLおよび成熟アルファHDLの代謝も異なる。プレ−ベータ−HDLは、2つの代謝運命:血漿からの除去および腎臓による異化、または肝臓によって優先的に分解される中程度のサイズのHDLへのリモデリングのいずれかを有する(Leeら、2004、J.Lipid Res.45(4):716−728)。
【0015】
細胞表面からのコレステロール転移(すなわちコレステロール流出)のメカニズムは未知であるが、脂質の少ない複合体、プレ−ベータ−1HDLが、RCTに関与する末梢組織からのコレステロールの転移の好ましいアクセプターであると考えられる(Davidsonら、1994、J.Biol.Chem.269:22975−82;Bielickiら、1992、J.Lipid Res.33:1699−1709;Rothblatら、1992、J.Lipid Res.33:1091−97;およびKawanoら、1993、Biochemistry 32:5025−28;Kawanoら、1997、Biochemistry 36:9816−25を参照のこと)。この細胞表面からのコレステロールの動員の過程の間に、プレ−ベータ−1HDLは、急速にプレ−ベータ2HDLへ変換される。PLTPが、プレ−ベータ−2HDLの円盤形成の速度を増加させ得るが、RCTにおけるPLTPの役割を示すデータは無い。LCATは、円盤状で小さい(プレ−ベータ)および球状(すなわち成熟)HDLと優先的に反応し、レシチンまたは他のリン脂質の2−アシル基を、コレステロールの遊離の水酸基に転移して、コレステロールエステル(HDLに保持される)およびリゾレシチンを産生する。LCAT反応は、活性化剤としてApoA−Iを必要とする;すなわち、ApoA−Iは、LCATの天然の補助因子である。HDL中に隔離されたコレステロールの、そのエステルへの変換は、コレステロールの細胞への再流入を防ぎ、最終的な結果としてコレステロールは細胞から除去される。
【0016】
ApoA−I−HDL画分(すなわち、ApoA−Iを含み、そしてApoA−IIを含まない)中の成熟HDL粒子におけるコレステロールエステルは、ApoA−IおよびApoA−IIの両方を含むHDL(AI/AII−HDL画分)由来のものより効率的に、肝臓によって除去され、そして胆汁へ処理される。これは、部分的には、ApoAI−HDLの肝細胞膜へのより効率的な結合により得る。HDL受容体の存在が仮説となり、そしてスカベンジャー受容体、クラスB、I型(SR−BI)が、HDL受容体として同定された(Actonら、1996、Science 271:518−20;Xuら、1997、Lipid Res.38:1289−98)。SR−BIは、ステロイド産生組織(例えば副腎)および肝臓において最も多く発現する(Landschulzら、1996、J.Clin.Invest.98:984−95;Rigottiら、1996、J.Biol.Chem.271:33545−49)。HDL受容体の概説に関しては、Broutinら、1988、Anal.Biol.Chem.46:16−23を参照のこと。
【0017】
ATP結合カセットトランスポーターAIによる最初の脂質付加が、血漿HDLの形成およびコレステロール流出に関するプレ−ベータ−HDL粒子の能力に非常に重要であるようである(LeeおよびParks、2005、Curr.Opin.Lipidol.16(1)19−25)。これらの著者によると、この最初の脂質付加が、プレ−ベータ−HDLがコレステロールアクセプターとしてより効率的に機能することを可能にし、そしてApoA−Iが、先在する血漿HDL粒子と迅速に会合することを防いで、コレステロール流出のためにより多くのプレ−ベータ−HDL粒子が利用可能であるようにする

【0018】
CETPも、RCTにおいて役割を果たし得る。CETP活性、またはそのアクセプター、VLDLおよびLDLの変化は、HDL集団の「リモデリング」に役割を果たす。例えば、CETP非存在下で、HDLは除去されない肥大した粒子になる。(RCTおよびHDLの概説に関しては、FieldingおよびFielding、1995、J.Lipid Res.36:211−28;Barransら、1996、Biochem.Biophys.Acta 1300:73−85;Hiranoら、1997、Arterioscler.Thromb.Vasc.Biol.17(6):1053−59を参照のこと)。
【0019】
HDLはまた、他の脂質および無極性分子の逆輸送、および解毒、すなわち異化および排泄のための脂質の細胞、臓器、および組織から肝臓への輸送に役割を果たす。そのような脂質は、スフィンゴミエリン(SM)、酸化脂質、およびリゾホスファチジルコリンを含む。例えば、RobinsおよびFasulo(1997、J.Clin.Invest.99:380−84)は、HDLは植物ステロールの肝臓による胆汁分泌への輸送を刺激することを示した。
【0020】
HDLの主な構成成分であるApoA−Iは、インビトロでSMと会合し得る。ApoA−1をインビトロでウシ脳SM(BBSM)と再構築する場合、再構築の最高速度は28℃で起こり、それはBBSMの相転移温度に近い温度である(Swaney、1983、J.Biol.Chem.258(2)、1254−59)。BBSM:ApoA−Iの比が7.5:1またはそれより低い場合(wt/wt)、単一の再構築された均一なHDL粒子が形成され、それは1粒子あたり3つのApoA−I分子を含み、そして360:1のBBSM:ApoA−Iモル比を有する。それは電子顕微鏡で、ApoA−Iとホスファチジルコリンの高い比のリン脂質/タンパク質における再結合によって得られるものと同様の円盤状の複合体として見える。しかし15:1(wt/wt)のBBSM:ApoA−I比においては、より高いリン脂質:タンパク質モル比(535:1)を有する、より大きな直径の円盤状複合体が形成される。これらの複合体はホスファチジルコリンと形成されたApoA−I複合体より、有意に大きく、より安定であり、そして変性に対してより抵抗性である。
【0021】
スフィンゴミエリンは(SM)は、初期コレステロールアクセプター(プレ−ベータ−HDLおよびガンマ移動性ApoE含有リポタンパク質)において上昇しており、それはSMがこれらの粒子のコレステロール流出を促進する能力を増強し得ることを示唆する(DassおよびJessup、2000、J.Pharm.Pharmacol.52:731−61;Huangら、1994、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 91:1834−38;FieldingおよびFielding 1995、J.Lipid Res.36:211−28)。
【0022】
(3.2 HDLおよびApoA−Iの保護メカニズム)
HDLの保護メカニズムの最近の研究は、HDLの主な構成要素であるアポリポタンパク質A−I(ApoA−I)に注目した。ApoA−Iの高い血漿レベルは、冠動脈病変の欠如または減少と関連している(Maciejkoら、1983、N.Engl.J.Med.309:385−89;Sedlisら、1986、Circulation 73:978−84)。
【0023】
実験動物におけるApoA−IまたはHDLの注入は、有意な生化学的変化を発現し、およびアテローム性動脈硬化症の病変の程度および重症度を減少させる。MaciejkoおよびMao(1982、Arteriosclerosis 2:407a)による最初の報告の後、Badimonら(1989、Lab.Invest.60:455−61;1989、J.Clin.Invest.85:1234−41)は、コレステロールを与えたウサギにおいて、HDL(d=1.063−1.325g/ml)を注入することによって、それらがアテローム性動脈硬化症の病変の程度(45%の減少)、およびそのコレステロールエステル含有量(58.5%の減少)を有意に減少させ得ることを見出した。彼らはまた、HDLの注入は、確立した病変の50%近い退縮を引き起こすことを見出した。Esperら(1987、Arteriosclerosis 7:523a)は、HDLの注入は、初期動脈病変を発症する、遺伝性高コレステロール血症を有するWatanabeウサギの血漿リポタンパク質組成を顕著に変化させ得ることを示した。これらのウサギにおいて、HDLの注入は、保護HDLおよびアテローム生成LDLの間の比を2倍以上にし得る。
【0024】
動物モデルにおいてHDLが動脈疾患を予防する可能性は、ApoA−Iがインビトロにおいて線維素溶解活性を発現し得るという観察によってさらに強調された(Sakuら、1985、Thromb.Res.39:1−8)。Ronneberger(1987、Xth Int.Congr.Pharmacol.、Sydney、990)は、ApoA−Iは、ビーグル犬およびカニクイザルにおいて線維素溶解を増加させ得ることを示した。ヒト血漿においてインビトロで同様の活性が注目され得る。Ronnebergerは、ApoA−I処理動物において、脂質の沈着および動脈プラークの形成の減少を確認し得た。
【0025】
インビトロにおける研究は、ApoA−Iおよびレシチンの複合体は、培養動脈平滑筋細胞からの遊離コレステロールの流出を促進し得ることを示す(Steinら、1975、Biochem.Biophys.Acta、380:106−18)。このメカニズムによって、HDLもまたこれらの細胞の増殖を抑制し得る(Yoshidaら、1984、Exp.Mol.Pathol.41:258−66)。
【0026】
ApoA−IまたはApoA−I模倣ペプチドを含むHDLによる注入治療も、ABC1トランスポーターによって血漿HDLレベルを調節し、心血管疾患の治療における有効性をもたらすことが示された(例えばBrewerら、2004、Arterioscler.Thromb.Vasc.Biol.24:1755−1760を参照のこと)。
【0027】
2つの天然に存在するApoA−Iのヒト変異が同定され、そこではアルギニン残基がシステインに変異している。アポリポタンパク質A−IMilano(ApoA−I)において、この置換は残基173で起こり、一方アポリポタンパク質A−IParis(ApoA−I)では、この置換は残基151で起こる(Franceschiniら、1980、J.Clin.Invest.66:892−900;Weisgraberら、1983、J.Biol.Chem.258:2508−13;Bruckertら、1997、Atherosclerosis 128:121−28;Daumら、1999、J.Mol.Med.77:614−22;Klonら、2000、Biophys.J.79(3):1679−85)。ApoA−IまたはApoA−Iいずれかのジスルフィド結合ホモダイマーを含む、再構築HDL粒子は、ジミリストイルホスファチジルコリン(DMPC)エマルションを除去する能力、およびコレステロール流出を促進する能力において、野生型ApoA−Iを含む再構築HDL粒子と同様である(Calabresiら、1997b、Biochemistry 36:12428−33;Franceschiniら、1999、Arterioscler.Thromb.Vasc.Biol.19:1257−62;Daumら、1999、J.Mol.Med.77:614−22)。両方の変異において、ヘテロ接合性の個体は、減少したレベルのHDLを有するが、逆説的に、アテローム性動脈硬化症のリスクは低い(Franceschiniら、1980、J.Clin.Invest.66:892−900;Weisgraberら、1983、J.Biol.Chem.258:2508−13;Bruckertら、1997、Atherosclerosis 128:121−28)。いずれかの変異体を含む再構築HDL粒子は、LCATを活性化し得るが、野生型ApoA−Iを含む再構築HDLと比較した場合には効率が低い(Calabresiら、1997a、Biochem.Biophys.Res.Commun.232:345−49;Daumら、1999、J.Mol.Med.77:614−22)。
【0028】
ApoA−I変異は、常染色体優性形質として伝達される;家族内で8世代の保因者が同定された(Gualandriら、1984、Am.J.Hum.Genet.37:1083−97)。ApoA−I保因者の個体の状態は、HDLコレステロールレベルの顕著な減少によって特徴付けられる。これにもかかわらず、保因者の個体は動脈疾患のリスクの明らかな増加を示さない。実際、系図学的記録の調査によって、これらの被験体はアテローム性動脈硬化症から「保護」され得るようである(Sirtoriら、2001、Circulation、103:1949−1954;Romaら、1993、J.Clin.Invest.91(4):1445−520)。
【0029】
変異の保因者におけるApoA−Iの潜在的な保護効果のメカニズムは、1つのアルファへリックスの喪失および疎水性残基の増加した露出を有する、変異ApoA−Iの構造における修飾と関連するようである(Franceschiniら、1985、J.Biol.Chem.260:1632−35)。複数のアルファへリックスの堅固な構造の喪失は、分子の柔軟性の増加を引き起こし、それは正常ApoA−Iと比較して、脂質とより容易に会合する。さらに、アポリポタンパク質−脂質複合体は、変性に対してより感受性が高く、従って変異の場合には脂質の伝達も改善されることを示唆する。
【0030】
Bielickiら(1997、Arterioscler.Thromb.Vasc.Biol.17(9):1637−43)は、ApoA−Iは、野生型ApoA−Iと比較して、限られた膜コレステロールを動員する能力を有することを示した。それに加えて、ApoA−Iと膜脂質の会合によって形成された新生HDLは、野生型ApoA−Iによって形成されるより大きな9および11nmの複合体ではなく、主に7.4nmの粒子であった。これらの観察は、ApoA−I一次配列におけるArg173→Cys173置換は、細胞コレステロール動員および新生HDLの構築に干渉することを示す。その変異は明らかにコレステロールの細胞からの除去の効率の減少に関連する。従って、そのアテローム産生抑制性質は、RCTと無関係であり得る。
【0031】
Arg173→Cys173置換に起因する最も著しい構造変化は、ApoA−Iのダイマー化である(Bielickiら、1997、Arterioscler.Thromb.Vasc.Biol.17(9):1637−43)。ApoA−Iは、それ自身とホモダイマーを、そしてApoA−IIとヘテロダイマーを形成し得る。アポリポタンパク質の混合物を含む血液画分の研究は、循環中のダイマーおよび複合体の存在は、アポリポタンパク質の消失半減期の増加の原因であり得ることを示す。そのような消失半減期の増加は、変異の保因者の臨床研究において観察された(Greggら、1988、NATO ARW on Human Apolipoprotein Mutants:From Gene Structure toPhenotypic Expression、Limone S G)。他の研究は、ApoA−Iダイマー(ApoA−I/ApoA−I)は、インビトロにおいてHDL粒子の相互変換における阻害因子として作用することを示す(Francischiniら、1990、J.Biol.Chem.265:12224−31)。
【0032】
(3.3 脂質代謝異常および関連する異常の現在の治療)
脂質代謝異常障害は、上昇した血清コレステロールおよびトリグリセリドレベルおよび低下した血清HDL:LDL比に関連する疾患であり、そして高脂血症、特に高コレステロール血症、冠動脈心疾患、冠動脈疾患、血管および血管周囲疾患、およびアテローム性動脈硬化症のような心血管疾患を含む。動脈不全によって引き起こされる、間欠性跛行のようなアテローム性動脈硬化症に関連する症候群も含まれる。現在、脂質代謝異常障害に関連する上昇した血清コレステロールおよびトリグリセリドを低下させるために、多くの治療が利用可能である。しかし、有効性、副作用、および資格のある患者集団に関して、それぞれそれ自身の欠点および限界を有する。
【0033】
胆汁酸結合樹脂は、小腸から肝臓への胆汁酸の再利用を妨害する薬物の種類、例えばコレスチラミン(Questran Light(登録商標)、Bristol−Myers Squibb)および塩酸コレスチポール(Colestid(登録商標)、The
Upjohn Company)である。経口で摂取した場合、これらの正に荷電した樹脂は、小腸で負に荷電した胆汁酸と結合する。樹脂は小腸から吸収され得ないので、それらは胆汁酸を運んで排泄される。しかし、そのような樹脂の使用は、よくて血清コレステロールレベルを約20%下げるのみであり、そして便秘およびあるビタミンの欠乏を含む、胃腸管の副作用と関連する。さらに、樹脂は他の薬物と結合するので、他の経口薬剤は、樹脂の摂取の少なくとも1時間前、または4から6時間後に摂取しなければならず、したがって心臓病患者の薬剤レジメを複雑にする。
【0034】
スタチン系薬剤は、コレステロール生合成経路に関与する重要な酵素であるHMGCoA還元酵素を阻害することによってコレステロール合成を阻害する、コレステロール低下薬剤である。スタチン系薬剤、例えばロバスタチン(Mevacor(登録商標))、シンバスタチン(Zocor(登録商標))、プラバスタチン(Pravachol(登録商標))、フルバスタチン(Lescol(登録商標))、およびアトロバスタチン(Lipitor(登録商標))は、胆汁酸結合樹脂と組み合わせて使用する場合もある。スタチン系薬剤は、血清コレステロールおよびLDL−血清レベルを有意に抑制し、そして冠動脈のアテローム性動脈硬化症の進行を遅らせる。しかし、血清HDLコレステロールレベルは、中程度に増加するのみである。LDL低下効果のメカニズムは、LDLの産生の抑制および/または異化の増加を引き起こす、VLDL濃度の抑制およびLDL受容体の細胞発現の誘導の両方を含み得る。肝臓および腎臓機能不全を含む副作用が、これらの薬剤と関連する(The Physicians Desk Reference、第56版、2002、Medical Ecocnomics)。
【0035】
ナイアシン(ニコチン酸)は、栄養補助食品および抗高脂血症薬として使用される、水溶性のビタミンB複合体である。ナイアシンは、VLDLの産生を抑制し、そしてLDLの低下に有効である。いくつかの場合には、それは胆汁酸結合樹脂と組み合わせて使用される。ナイアシンは、適当な投与量で使用された場合にHDLを増加させ得るが、その有用性は、そのような高用量で使用された場合の重篤な副作用によって制限される。Niaspan(登録商標)は、純粋なナイアシンよりも少ない副作用を生ずる、徐放性ナイアシンの形式である。ナイアシン/ロバスタチン(Nicostatin(登録商標))は、ナイアシンおよびロバスタチンを両方含む処方であり、そして各薬剤の利点を合わせる。
【0036】
フィブラート系薬剤は、高コレステロール血症にも関連し得る、様々な形式の高脂血症(すなわち上昇した血清トリグリセリド)を治療するために使用される脂質低下薬剤の種類である。フィブラート系薬剤は、VLDL画分を減少させ、そしてHDLを中程度に増加させるようであるが、これらの薬剤の血清コレステロールに対する効果は不定である。米国において、クロフィブラート(Atromid−S(登録商標))、フェノフィブラート(Tricor(登録商標))およびベザフィブラート(Bezalip(登録商標))のようなフィブラート系薬剤が、抗高脂血薬として認可されたが、高コレステロール血症薬剤としては認可されなかった。例えば、クロフィブラートは、VLDL画分を減少
させることによって、(未知のメカニズムによって)血清トリグリセリドを低下させるよう作用する抗高脂血薬である。血清コレステロールをある患者亜集団において減少させ得るが、薬剤に対する生化学的反応は不定であり、そしてどの患者が好ましい結果を得るかを予測するのはいつも可能なわけではない。Atromid−S(登録商標)は、冠動脈心疾患の予防に有効であることは示されていない。化学的および薬理学的に関連する薬剤、ゲムフィブロジル(Lopid(登録商標))は、血清トリグリセリドおよびVLDLコレステロールを中程度に減少させ、そしてHDLコレステロール−HDLおよびHDL細画分およびApoA−IおよびA−IIの両方(すなわち、AI/AMT−HDL画分)を中程度に増加させる、脂質調節薬剤である。しかし、脂質の反応は、特に異なる患者集団の間で不均一である。さらに、冠動脈心疾患の予防が既存の冠動脈心疾患の既往歴または症状を有さない40−55歳の間の男性患者において観察されたが、どの程度これらの発見を他の患者集団(例えば女性、より高齢または若年の男性)に外挿し得るかは不明である。実際、確立した冠動脈心疾患を有する患者においては、効果は観察されなかった。悪性腫瘍(特に消化器癌)、胆嚢疾患、および非冠動脈死亡率の増加のような毒性を含む、重篤な副作用が、フィブラート系薬剤の使用と関連する。
【0037】
閉経後女性における中程度の高コレステロール血症に関して、経口エストロゲン補充療法を考慮し得る。しかし、HDLの増加は、トリグリセリドの増加を伴い得る。もちろん、エストロゲン治療は特定の患者集団(閉経後女性)に限られ、そして悪性新生物、胆嚢疾患、血栓塞栓性疾患、肝腺腫、血圧の上昇、耐糖能障害、および高カルシウム血症の誘発を含む、重篤な副作用と関連する。
【0038】
高脂血症の治療に有用な他の薬剤は、エゼチミブ(Zetia(登録商標);Merck)を含み、それはコレステロールの吸収を遮断または阻害する。しかし、エゼチミブの阻害剤は、ある毒性を示すことが示された。
【0039】
従って、血清コレステロールを低下させ、HDL血清レベルを増加させ、脂質代謝異常および/または脂質代謝異常に関連する疾患、状態、および/または異常を予防および/または治療するのにより有効な、より安全な薬剤に対する必要性が存在する。
【0040】
例えば、HDL、およびリン脂質と複合体化した組み換え形式のApoA−Iは、無極性または両親媒性分子、例えばコレステロールおよび誘導体(オキシステロール、酸化ステロール、植物ステロール等)、コレステロールエステル、リン脂質および誘導体(酸化リン脂質)、トリグリセリド、酸化産物、およびリポポリサッカライド(LPS)の吸い込み装置/スカベンジャーとして作用し得る(例えば、Casasら、1995、J.Surg.Res.Nov59(5):544−52を参照のこと)。HDLはまた、TNF−アルファおよび他のリンホカインのスカベンジャーとしても作用し得る。HDLはまた、ヒト血清パラオキソナーゼ、例えばPON−1、2、3の担体としても作用し得る。HDLに付随するエステラーゼであるパラオキソナーゼは、酸化に対して細胞構成成分を保護するために重要である。酸化ストレスの間に起こるLDLの酸化は、アテローム性動脈硬化症の発生に直接関係するようである(Aviram、2000、Free Radic.Res.33 Suppl:S85−97)。パラオキソナーゼは、アテローム性動脈硬化症および心血管疾患に対する感受性に役割を果たしているようである(Aviram、1999、Mol.Med.Today 5(9):381−86)。ヒト血清パラオキソナーゼ(PON−1)は、高密度リポタンパク質(HDL)に結合する。その活性は、アテローム性動脈硬化症と逆比例する。PON−1は、有機リン酸を加水分解し、そしてHDLおよび低密度リポタンパク質(LDL)の酸化の阻害によって、アテローム性動脈硬化症に対して保護し得る(Aviram、1999、Mol.Med.Today 5(9):381−86)。実験的研究が、この保護は、酸化リポタンパク質中の特定の脂質過酸化物を加水分解するPON−1の能力に関連することを示唆する。PON−1活性を保存または増強する介入が、アテローム性動脈硬化症および冠動脈心疾患の発症を遅らせるのに役立ち得る。
【0041】
HDLはさらに、抗血栓剤およびフィブリノーゲン縮小剤としての、および出血性ショックにおける薬剤としての役割を有する(Cockerillら、WO01/13939、2001年3月1日公開)。HDL、および特にApoA−1は、敗血症によって産生されたリポポリサッカライドの、ApoA−Iを含む脂質粒子への変換を促進し、リポポリサッカライドの機能的中和を引き起こすことが示された(Wrightら、WO9534289、1995年12月21日公開;Wrightら、米国特許第5,928,624号、1999年7月27日発行;Wrightら、米国特許第5,932,536号、1999年8月3日発行)。
【0042】
しかし、治療的投与のために必要な大量のアポリポタンパク質によって、および産生の最終的な収率の低いことを考慮して、タンパク質産生のコストによって、ApoA−I、ApoA−I、ApoA−Iおよび他の変異体、および再構築HDLの治療的利用は、現在限られている。初期の臨床試験によって、心血管疾患の治療に関して、投与量範囲は注入あたり1.5−4gの間のタンパク質であることが示唆された。完全な治療に必要な注入の回数は不明である(例えば、Erikssonら、1999、Circulation 100(6):594−98;Carlson、1995、Nutr.Metab.Cardiovasc.Dis.5:85−91;Nanjeeら、2000、Arterioscler.Thromb.Vasc.Biol.20(9):2148−55;Nanjeeら、1999、Arterioscler.Thromb.Vasc.Biol.19(4):979−89;Nanjeeら、1996、Arterioscler.Thromb.Vasc.Biol.16(9):1203−14を参照のこと)。従って、脂質代謝異常の疾患、状態、および/または異常を治療および/または予防する新規の方法を開発する必要性が存在する。
【0043】
本申請の第2項または他のあらゆる項における、あらゆる参考文献の引用または同定は、そのような参考文献が本発明に対する従来技術として利用可能であることの承認と解釈されない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0044】
【非特許文献1】Badimonら、1992、Circulation 86(Suppl.III):86−94
【非特許文献2】DanskyおよびFisher、1999、Circulation 100:1762−63
【非特許文献3】Zhangら、2003、Circulation 108:661−663
【非特許文献4】Millerら、1977、Lancet 1(8019):965−68
【非特許文献5】Whayneら、1981、Atherosclerosis 39:411−19
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0045】
(4.概要)
本開示は、荷電リポタンパク質複合体、その複合体を含む組成物、およびその複合体を使用して、脂質代謝異常、および/またはそれに伴う様々な疾患、異常および/または状態を含む、様々な異常および状態を治療および/または予防する方法を提供する。その複合体は、一般的に2つの画分、アポリポタンパク質画分および脂質画分を含み、そして重要な成分として特定の量の荷電したリン脂質(または2つまたはそれ以上の異なる、典型的には同様に荷電したリン脂質)を含むリポタンパク質である。荷電したリン脂質は、生理学的pHで正または負に荷電し得るが、多くの実施態様において負に荷電している。いくつかの実施態様において、荷電したリン脂質は、1つまたはそれ以上のホスファチジルイノシトール、ホスファチジルセリン、ホスファチジルグリセロール、および/またはホスファチジン酸を含む。
【0046】
アポリポタンパク質画分は、複合体に含まれた場合にコレステロールを可動化し得る、1つまたはそれ以上のタンパク質、ペプチドまたはペプチドアナログ(「アポリポタンパク質」と呼ばれる)を含む。そのようなアポリポタンパク質の特定の例は、ApoA−Iである。他の特定の例が、本明細書中の下記でさらに記載される。
【0047】
脂質画分は一般的に、1つまたはそれ以上の中性リン脂質および荷電したリン脂質を含み、そして任意で、例えばトリグリセリド、コレステロール、コレステロールエステル、リゾリン脂質、およびその様々なアナログおよび/または誘導体のような、さらなる脂質を含み得る。いくつかの実施態様において、荷電リポタンパク質複合体は、そのような任意の脂質を含まない。
【0048】
中性リン脂質は、生理学的pHで約ゼロの有効電荷を有するあらゆるリン脂質であり得る。いくつかの実施態様において、中性リン脂質は、生理学的pHで約ゼロの有効電荷を有する双性イオンである。いくつかの実施態様において、中性リン脂質は、レシチン(ホスファチジルコリンまたは「PC」としても知られる)を含む。いくつかの実施態様において、中性リン脂質はスフィンゴミエリン(「SM」)を含む。いくつかの実施態様において、中性リン脂質はレシチンおよびSMの混合物を含む。脂質画分がレシチンまたはSMのいずれか、少なくとも1つの荷電したリン脂質、および任意で他の脂質を含む荷電リポタンパク質複合体の実施態様は、3つの「主な」構成成分:アポリポタンパク質、レシチンまたはスフィンゴミエリン、および荷電したリン脂質を含むので、「三元」複合体と呼ばれる。脂質画分がレシチンおよびSMの両方、少なくとも1つの荷電したリン脂質、および任意で他の脂質を含む荷電リポタンパク質複合体の実施態様は、「四元」複合体と呼ばれる。
【0049】
荷電リポタンパク質複合体の脂質画分を構成する荷電したリン脂質の全量は変動し得るが、典型的には約0.2から10wt%の範囲である。いくつかの実施態様において、脂質画分は、約0.2から2wt%、0.2から3wt%、0.2から4wt%、0.2から5wt%、0.2から6wt%、0.2から7wt%、0.2から8wt%、または0.2から9wt%の合計の、荷電したリン脂質を含む。いくつかの実施態様において、脂質画分は、約0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9または3.0wt%、および/またはこれらの値のいずれかを終了点として含む範囲の合計の荷電したリン脂質を含む。いくつかの実施態様において、脂質画分は、約0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9または3.0wt%から、約4、5、6、7、8、9、または10wt%までの合計の荷電したリン脂質を含む。
【0050】
脂質画分を構成する中性リン脂質の全量も変動し得、そして荷電したリン脂質および含まれるあらゆる任意の脂質の量に依存する。任意の脂質を含まない実施態様において、脂質画分は一般的に、約90から99.8wt%の全中性リン脂質を含む。
【0051】
上記で述べたように、中性リン脂質はレシチン、SM、またはレシチンおよびSMの混合物を含み得る。レシチンおよび/またはSMは、中性リン脂質の大部分を構成し得る、またはあるいは、中性リン脂質はレシチンおよび/またはSMに加えて中性リン脂質を含み得る。中性リン脂質がレシチンを含むがSMは含まない実施態様において、中性リン脂質は典型的には約5から100wt%のレシチンを含む。いくつかの実施態様において、中性リン脂質は100wt%のレシチンを含む。
【0052】
中性リン脂質がSMを含むがレシチンは含まない実施態様において、中性リン脂質は一般的に約5から100wt%のSMを含む。いくつかの実施態様において、中性リン脂質は100wt%のSMを含む。
【0053】
中性リン脂質がレシチンおよびSMの混合物を含む実施態様において、全中性リン脂質を構成する混合物の量、および混合物を構成するレシチンおよびSMの相対的な量(すなわち、レシチン:SMモル比)は両方とも変動し得る。典型的には、中性リン脂質は約5から100wt%のレシチン/SM混合物を含む。いくつかの実施態様において、中性リン脂質は全部レシチンおよびSMから成る(すなわち、100wt%のレシチンおよびSMの混合物)。
【0054】
レシチン対SMのモル比(レシチン:SM)は変動し得るが、典型的には約20:1から1:20の範囲である。いくつかの実施態様において、レシチン:SMモル比は、約10:3から10:6の範囲である。他の実施態様において、レシチン:SMモル比は約1:20から3:10の範囲である。
【0055】
任意の脂質は、もし含まれるなら、一般的に脂質画分の約50wt%またはそれ以下を構成する。いくつかの実施態様において、脂質画分は約30wt%より少ない全任意脂質を含む。特定の実施態様において、脂質画分は約5wt%、10wt%、または20wt%より少ない全任意脂質を含む。
【0056】
荷電リポタンパク質複合体の脂質対アポリポタンパク質モル比も変動し得る。いくつかの実施態様において、荷電リポタンパク質複合体は、約2:1から約200:1の範囲の脂質:アポリポタンパク質モル比を含む。いくつかの実施態様において、脂質:アポリポタンパク質モル比は約50:1である。
【0057】
本明細書中で記載された荷電リポタンパク質複合体は、ミセル構造から、天然に存在するプレ−ベータHDL粒子に類似した小さい円盤状粒子、天然に存在するアルファ−HDL粒子に類似したより大きな円盤状粒子、天然に存在するHDLまたはHDLに類似した大きな球状粒子まで、様々な形、大きさ、および形式をとり得る。本明細書中で記載された荷電リポタンパク質複合体の望ましい大きさおよび形は、当該分野で公知であるように、脂質画分を構成する脂質の構成成分および重量(またはモル)比、および脂質:アポリポタンパク質モル比を調節することによってコントロールし得る(例えば、Barterら、1996、J.Biol.Chem.271:4243−4250を参照のこと)。
【0058】
いくつかの実施態様において、荷電リポタンパク質複合体は、円盤状粒子の形式であり、ここで脂質画分は実質的に合計で約90から99.8wt%の中性リン脂質、および合計で約0.2から10wt%の負に荷電したリン脂質から成る。その円盤状粒子は、大きく(例えば約10から14nmの扁平の直径を有する)、または小さく(例えば約5から10nmの扁平の直径を有する)あり得る。円盤状粒子の大きさは、当該分野で公知であるように、脂質:アポリポタンパク質モル比を調節することによってコントロールし得る(例えばBarterら、1996、前出を参照のこと)。粒子の大きさを、例えばサイズ排除カラムクロマトグラフィーを用いて決定し得る。
【0059】
医薬組成物は一般的に、本明細書中で記載されたような荷電リポタンパク質複合体を含み、そして任意で1つまたはそれ以上の薬学的に許容可能な担体、賦形剤、および/または希釈剤を含み得る。いくつかの実施態様において、医薬組成物は、投与に適当な、単位投与量で包装される。例えば、いくつかの実施態様において、組成物は、密閉バイアル中に包装された単位投与量の乾燥(例えば凍結乾燥)荷電リポタンパク質複合体を含む。そのような組成物は水、生理学的溶液(生理食塩水のような)、または緩衝液による再構築、および注射による投与に適当である。そのような組成物は任意で、荷電複合体の再構築を促進するために、1つまたはそれ以上の抗固化および/または抗凝集剤を、または再構築した懸濁液のpH、浸透圧、および/または塩分を調節するためにデザインされた1つまたはそれ以上の緩衝化剤、糖または塩(例えば塩化ナトリウム)を含み得る。
【0060】
本明細書中で記載された荷電リポタンパク質複合体および組成物は、コレステロールの流出および/または除去をもたらす、および/または促進することが期待され、そして従って例えば脂質代謝異常、および/または脂質代謝異常に関連する、または脂質または毒素、生体異物等のような無極性分子の消費、蓄積、または除去(例えば脂肪の沈着、細胞分解)に関連する疾患、状態および/または異常を含む、様々な状態および異常の治療および/または予防に有用であることが期待される。本明細書中で記載された荷電リポタンパク質複合体および組成物で治療または予防し得る、そのような疾患、異常、および/または関連する状態の制限しない例は、末梢血管疾患、高血圧、炎症、アルツハイマー病、再狭窄、アテローム性動脈硬化症、および例えば脳卒中、虚血発作、一過性虚血発作、心筋梗塞、急性冠動脈症候群、狭心症、腎血管性高血圧、腎血管不全、間欠性跛行、重症虚血肢、休息痛、および壊疽のような、アテローム性動脈硬化症の種々の臨床症状を含む。
【0061】
その方法は一般的に、特定の適応症を治療または予防するのに有効な量の、本明細書中で記載された荷電リポタンパク質複合体または医薬品複合体を被験体に投与することを含む。その複合体および/または組成物を、単独で(単独療法として)投与し得る、またはあるいは脂質代謝異常および/またはその関連する状態、疾患および/または異常を治療および/または予防するのに有用な他の治療薬剤と付属的に投与し得る。本明細書中で記載された荷電リポタンパク質複合体および組成物を付属的に投与し得る治療薬剤の制限しない例は、胆汁酸結合樹脂、HMGCoA−還元酵素阻害剤(スタチン系薬剤)、ナイアシン、樹脂、コレステロール吸収の阻害剤およびフィブラート系薬剤を含む。
【0062】
いかなる作動の理論にも拘束されることを意図しないが、脂質画分を構成する荷電したリン脂質は、本明細書中で記載された荷電リポタンパク質複合体および組成物に、従来のリポタンパク質複合体より改善された治療的性質を与えると考えられる。腎臓で分解される小さい円盤状プレ−ベータHDLおよび肝臓によって認識され、そこでそのコレステロールが保存、再利用、代謝(胆汁酸として)、または除去(胆汁中に)される大きな円盤状および/または球状HDLの間の重要な違いの一つは、粒子の電荷である。小さい円盤状プレ−ベータHDLは、負に荷電した大きな円盤状および/または球状HDLより低い負の表面電荷を有する。いかなる作動の理論にも拘束されることを意図しないが、より高い負の荷電は、肝臓による粒子の認識を引き起こし、そして従って腎臓による粒子の異化を回避する因子の1つであると考えられる。部分的には荷電したリン脂質の存在のために、本明細書中で記載された荷電リポタンパク質複合体および組成物は、従来のリポタンパク質複合体よりも長く循環中に留まる、または電荷は電荷依存性の方式でリポタンパク質の半減期に影響を与えると考えられる。そのより長い循環(存在)時間が、コレステロールの可動化(複合体にコレステロールを蓄積するより長い時間を与えることによって)およびエステル化(LCATにエステル化反応を触媒するより長い時間を提供することによって)を促進することが期待される。電荷はまた、コレステロールの捕獲および/または除去の速度を増加させ、それによってより多い量でコレステロールの除去を促進し得る。結果として、本明細書中で記載された荷電リポタンパク質複合体および組成物は、より少ない複合体および/または組成物しか投与する必要がなく、そしてより少ない頻度であるので、従来のリポタンパク質治療に対して治療的有用性を提供することが期待される。
例えば、本願発明は以下の項目を提供する。
(項目1)
アポリポタンパク質画分および脂質画分を含む、再構築された荷電リポタンパク質複合体であって、該脂質画分は、中性リン脂質および約0.2〜3wt%の荷電したリン脂質を含む、再構築された荷電リポタンパク質複合体。
(項目2)
前記中性リン脂質は、レシチンまたはスフィンゴミエリンを含む、項目1に記載の再構築された荷電リポタンパク質複合体。
(項目3)
前記中性リン脂質は、レシチンとスフィンゴミエリンとの混合物を含む、項目1に記載の再構築された荷電リポタンパク質複合体。
(項目4)
レシチン:スフィンゴミエリンのモル比は、約100:5〜5:100の範囲内である、項目3に記載の再構築された荷電リポタンパク質複合体。
(項目5)
前記脂質画分は、任意の脂質をさらに含む、項目1に記載の再構築された荷電リポタンパク質複合体。
(項目6)
脂質:アポリポタンパク質モル比が、約2:1〜200:1の範囲に及び、ここで該アポリポタンパク質値はApoA−I当量で表される、項目1に記載の再構築された荷電リポタンパク質複合体。
(項目7)
前記脂質:アポリポタンパク質モル比が、約20:1〜60:1の範囲に及ぶ、項目6に記載の再構築された荷電リポタンパク質複合体。
(項目8)
前記脂質:アポリポタンパク質モル比が、約50:1の範囲内である、項目6に記載の再構築された荷電リポタンパク質複合体。
(項目9)
約2〜4ApoA−I当量、約1分子の荷電したリン脂質および約400分子の中性リン脂質を含む、項目1に記載の再構築された荷電リポタンパク質複合体。
(項目10)
約2〜4ApoA−I当量、約1分子の荷電したリン脂質および約200分子の中性リン脂質を含む、項目1に記載の再構築された荷電リポタンパク質複合体。
(項目11)
前記荷電したリン脂質は、ホスファチジルイノシトールを含む、項目1に記載の再構築された荷電リポタンパク質複合体。
(項目12)
前記荷電したリン脂質は、ホスファチジルセリンを含む、項目1に記載の再構築された荷電リポタンパク質複合体。
(項目13)
前記荷電したリン脂質は、ホスファチジン酸を含む、項目1に記載の再構築された荷電リポタンパク質複合体。
(項目14)
前記荷電したリン脂質は、ホスファチジルグリセロールを含む、項目1に記載の再構築された荷電リポタンパク質複合体。
(項目15)
前記荷電したリン脂質は、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルセリン、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジン酸およびこれらの混合物より選択される、項目1に記載の再構築された荷電リポタンパク質複合体。
(項目16)
前記スフィンゴミエリンは、D−エリトロース−スフィンゴミエリンおよび/またはD−エリトロース−ジヒドロスフィンゴミエリンを含む、項目1に記載の再構築された荷電リポタンパク質複合体。
(項目17)
中性リン脂質および/または荷電したリン脂質のアシル鎖は、各々互いに独立して、6〜24個の炭素原子を含む飽和炭化水素、モノ不飽和炭化水素およびポリ不飽和炭化水素から選択される、項目1に記載の再構築された荷電リポタンパク質複合体。
(項目18)
前記中性および/または荷電したリン脂質の各アシル鎖は同じである、項目17に記載の再構築された荷電リポタンパク質複合体。
(項目19)
前記中性リン脂質および/または荷電したリン脂質の各アシル鎖は異なっている、項目17に記載の再構築された荷電リポタンパク質複合体。
(項目20)
前記中性リン脂質および荷電したリン脂質のアシル鎖は、同じ数の炭素原子を含む、項目17に記載の再構築された荷電リポタンパク質複合体。
(項目21)
前記中性リン脂質および荷電したリン脂質のアシル鎖は、異なる飽和の程度を有する、項目17に記載の再構築された荷電リポタンパク質複合体。
(項目22)
前記アポリポタンパク質は、プレプロアポリポタンパク質、プレプロApoA−I、プロApoA−I、ApoA−I、プレプロApoA−II、プロApoA−II、ApoA−II、プレプロApoA−IV、プロApoA−IV、ApoA−IV、ApoA−V、プレプロApoE、プロApoE、ApoE、プレプロApoA−IMilano、プロApoA−IMilano、ApoA−IMilano、プレプロApoA−IParis、プロApoA−IParis、およびApoA−IParisならびにこれらの混合物より選択される、項目1に記載の再構築された荷電リポタンパク質複合体。
(項目23)
前記アポリポタンパク質は、ホモダイマーおよび/またはヘテロダイマーを含む、項目22に記載の再構築された荷電リポタンパク質複合体。
(項目24)
前記アポリポタンパク質は、モノマーを含む、項目22に記載の再構築された荷電リポタンパク質複合体。
(項目25)
前記アポリポタンパク質は、ApoAIペプチド模倣物を含む、項目1に記載の再構築された荷電リポタンパク質複合体。
(項目26)
アポリポタンパク質画分および脂質画分を含む、再構築された荷電リポタンパク質複合体であって、該脂質画分は、実質的にレシチン、スフィンゴミエリンおよび約1〜10wt%の荷電したリン脂質からなる、再構築された荷電リポタンパク質複合体。
(項目27)
前記脂質画分は、約1〜4wt%の荷電したリン脂質を含む、項目26に記載の再構築された荷電リポタンパク質複合体。
(項目28)
前記脂質画分は、約1〜3wt%の荷電したリン脂質を含む、項目26に記載の再構築された荷電リポタンパク質複合体。
(項目29)
前記脂質画分は、約1〜2wt%の荷電したリン脂質を含む、項目26に記載の再構築された荷電リポタンパク質複合体。
(項目30)
前記荷電したリン脂質は、ホスファチジルイノシトールを含む、項目26に記載の再構築された荷電リポタンパク質複合体。
(項目31)
前記荷電したリン脂質は、ホスファチジルセリンを含む、項目26に記載の再構築された荷電リポタンパク質複合体。
(項目32)
前記荷電したリン脂質は、ホスファチジン酸を含む、項目26に記載の再構築された荷電リポタンパク質複合体。
(項目33)
前記荷電したリン脂質は、ホスファチジルグリセロールを含む、項目26に記載の再構築された荷電リポタンパク質複合体。
(項目34)
前記荷電したリン脂質は、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルセリン、ホスファチジン酸、ホスファチジルグリセロールおよびこれらの混合物より選択される、項目26に記載の再構築された荷電リポタンパク質複合体。
(項目35)
脂質:アポリポタンパク質モル比が、約2:1〜200:1であり、ここで該アポリポタンパク質についての値は、ApoA−I当量で表される、項目26に記載の再構築された荷電リポタンパク質複合体。
(項目36)
前記脂質:アポリポタンパク質モル比は、約50:1である、項目35に記載の再構築された荷電リポタンパク質複合体。
(項目37)
前記アポリポタンパク質は、プレプロアポリポタンパク質、プレプロApoA−I、プロApoA−I、ApoA−I、プレプロApoA−II、プロApoA−II、ApoA−II、プレプロApoA−IV、プロApoA−IV、ApoA−IV、ApoA−V、プレプロApoE、プロApoE、ApoE、プレプロApoA−IMilano、プロApoA−IMilano、ApoA−IMilano、プレプロApoA−IParis、プロApoA−IParis、ApoA−IParisおよびこれらの混合物より選択される、項目26に記載の再構築された荷電リポタンパク質複合体。
(項目38)
前記アポリポタンパク質は、ホモダイマーおよび/またはヘテロダイマーである、項目37に記載の再構築された荷電リポタンパク質複合体。
(項目39)
前記アポリポタンパク質は、モノマーである、項目37に記載の再構築された荷電リポタンパク質複合体。
(項目40)
前記アポリポタンパク質は、ApoAI模倣物を含む、項目26に記載の再構築された荷電リポタンパク質複合体。
(項目41)
実質的に2〜4ApoA−I当量、2分子の荷電したリン脂質、50〜80分子のレシチンおよび20〜50分子のSMからなる、項目26に記載の再構築された荷電リポタンパク質複合体。
(項目42)
実質的に2〜4ApoA−I当量、2分子の荷電したリン脂質、50分子のレシチンおよび50分子のSMからなる、項目41に記載の再構築された荷電リポタンパク質複合体。
(項目43)
実質的に2〜4ApoA−I当量、2分子の荷電したリン脂質、80分子のレシチンおよび20分子のSMからなる、項目41に記載の再構築された荷電リポタンパク質複合体。
(項目44)
実質的に2〜4ApoA−I当量、2分子の荷電したリン脂質、70分子のレシチンおよび30分子のSMからなる、項目41に記載の再構築された荷電リポタンパク質複合体。
(項目45)
実質的に2〜4ApoA−I当量、2分子の荷電したリン脂質、60分子のレシチンおよび40分子のSMからなる、項目41に記載の再構築された荷電リポタンパク質複合体。
(項目46)
前記2〜4ApoA−I当量は、2〜4分子のApoA−Iである、項目41に記載の再構築された荷電リポタンパク質複合体。
(項目47)
前記2〜4ApoA−I当量は、1〜2分子のApoA−Iダイマーである、項目41に記載の再構築された荷電リポタンパク質複合体。
(項目48)
前記2〜4ApoA−I当量は、12〜40分子の単一へリックスApoA−I模倣物ペプチドである、項目41に記載の再構築された荷電リポタンパク質複合体。
(項目49)
前記レシチンは、POPC、DPPCおよびこれらの混合物より選択される、項目41に記載の再構築された荷電リポタンパク質複合体。
(項目50)
前記SMは、D−エリトロース−スフィンゴミエリン、D−エリトロース−ジヒドロスフィンゴミエリンおよびこれらの混合物より選択される、項目41に記載の再構築された荷電リポタンパク質複合体。
(項目51)
前記荷電したリン脂質は、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルセリン、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジン酸およびこれらの混合物より選択される、項目41に記載の再構築された荷電リポタンパク質複合体。
(項目52)
項目1〜51のいずれか1項に記載の荷電リポタンパク質複合体および薬学的に許容可能な担体、希釈剤および/または賦形剤を含む、医薬組成物。
(項目53)
被験体における脂質代謝異常または脂質代謝異常に関連する疾患を処置する方法であって、該方法は、有効量の項目1〜51のいずれか1項に記載の荷電リポタンパク質複合体を該被験体に投与する工程を包含する、方法。
(項目54)
前記投与される荷電リポタンパク質複合体の量は、前記被験体の遊離のアポリポタンパク質または複合体化アポリポタンパク質の血清レベルをベースラインレベルと比較して約10〜300mg/dL上昇させるために有効である、項目53に記載の方法。
(項目55)
前記投与される荷電リポタンパク質複合体の量は、注射1回あたり約1〜100mg/kgApoA−I当量の範囲におよぶ、項目53に記載の方法。
(項目56)
前記荷電リポタンパク質複合体は、静脈内投与される、項目53に記載の方法。
(項目57)
脂質代謝異常を処置するために実施される、項目53に記載の方法。
(項目58)
脂質代謝異常に関連する疾患を処置するために実施される、項目53に記載の方法。
(項目59)
前記荷電リポタンパク質複合体は、胆汁酸樹脂、ナイアシン、スタチン、フィブラートおよび/またはコレステロール吸収阻害剤と一緒に投与される、項目53に記載の方法。
(項目60)
前記荷電リポタンパク質複合体は、該荷電複合体ならびに薬学的に許容可能な担体、希釈剤および/または賦形剤を含む医薬組成物の形態で投与される、項目53に記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】図1は、プロApo−AI(33wt%)およびスフィンゴミエリン(67wt%)から成る無電荷リポタンパク質複合体のクロマトグラムを提供する;
【図2】図2は、プロApo−AI(33wt%)、スフィンゴミエリン(65wt%)およびホスファチジルグリセロール(2wt%)から成る荷電リポタンパク質複合体の実施態様のクロマトグラムを提供する;
【図3】図3は、ウサギにおいて、コントロール、無電荷リポタンパク質複合体(IIAと表示された曲線)、または本明細書中で記載されたような荷電リポタンパク質複合体の実施態様(IIBと表示された曲線)を投与した後、時間の関数として測定された、HDL中の遊離コレステロールの全量を図示するグラフを提供する;および
【図4】図4は、コントロール、無電荷リポタンパク質複合体(グループIIA;2匹の動物)、または本明細書中で記載されたような荷電リポタンパク質複合体の実施態様(グループIIB;2匹の動物)を投与したウサギにおいて、時間の関数として測定された、HDL中の遊離コレステロールの平均量を図示するグラフを提供する。
【発明を実施するための形態】
【0064】
(6.詳細な説明)
本開示は、特に脂質代謝異常および/または脂質代謝異常に関連する疾患、異常および/または状態の治療および/または予防に有用な、荷電リポタンパク質複合体および組成物を提供する。概要の項で議論したように、荷電リポタンパク質複合体は、2つの主な画分、アポリポタンパク質画分および脂質画分を含み、そして重要な成分として特定の量の1つまたはそれ以上の荷電したリン脂質を含む。
【0065】
荷電リポタンパク質複合体は、ヒト血清のような天然の供給源から単離し得る(本明細書中で「単離荷電リポタンパク質複合体」と呼ばれる)、またはその個々の成分から作成または再構築し得る(本明細書中で「再構築荷電リポタンパク質複合体」と呼ばれる)。当業者によって認識されるように、再構築荷電リポタンパク質複合体は、その様々な成分の正体および量を、選択的にコントロールし得るので、多くの適用において有利であり得る。
【0066】
(6.1 アポリポタンパク質およびアポリポタンパク質ペプチド)
荷電リポタンパク質複合体のアポリポタンパク質画分を構成するアポリポタンパク質の性質は、成功のために決定的ではない。実質的に、本明細書中で記載されたような治療的および/または予防的利点を提供する、あらゆるアポリポタンパク質および/またはその誘導体またはアナログを、荷電複合体中に含み得る。さらに、あらゆるアルファへリックスペプチドまたはペプチドアナログ、またはアポリポタンパク質(例えばApoA−Iのような)の活性を「模倣」して、LCATを活性化し得る、および脂質と会合した場合に円盤状粒子を形成し得る、あらゆる他の型の分子が、荷電複合体を構成し得、そして従って「アポリポタンパク質」の定義に含まれる。適当なアポリポタンパク質の例は、ApoA−I、ApoA−II、ApoA−IV、ApoA−V、およびApoEのプレプロアポリポタンパク質形式;ヒトApoA−I、ApoA−II、ApoA−IV、およびApoEのプロ−および成熟形式;および活性な多型形式、アイソフォーム、変種および変異体および短縮形式を含むがこれに限らず、その最もよくあるものはApoA−I(ApoA−I)およびApoA−I(ApoA−I)である。システイン残基を含むアポリポタンパク質変異体も知られており、そしてそれも使用し得る(例えば米国2003/0181372を参照のこと)。アポリポタンパク質は、モノマーまたはダイマーの形式であり得、それはホモダイマーまたはヘテロダイマーであり得る。例えば、プロ−および成熟ApoA−I(Duvergerら、1996、Arterioscler.Thromb.Vasc.Biol.16(12):1424−29)、ApoA−I(Franceschiniら、1985、J.Biol.Chem.260:1632−35)、ApoA−I(Daumら、1999、J.Mol.Med.77:614−22)、ApoA−II(Shelnessら、1985、J.Biol.Chem.260(14):8637−46;Shelnessら、1984、J.Biol.Chem.259(15):9929−35)、ApoA−IV(Duvergerら、1991、Euro.J.Biochem.201(2):373−83)、ApoE(McLeanら、1983、J.Biol.Chem.258(14):8993−9000)、ApoJおよびApoHのホモおよびヘテロダイマー(可能な場合には)を使用し得る。アポリポタンパク質は、アポリポタンパク質が複合体に含まれた場合にいくらかの生物学的活性を保持する限り、Hisタグのような、その単離を促進するエレメント、または他の目的のためにデザインされた他のエレメントに対応する残基を含み得る。
【0067】
そのようなアポリポタンパク質を、動物供給源(および特にヒト供給源)から精製し得る、または当該分野で周知であるように組み換え的に産生し得る、例えばChungら、1980、J.Lipid Res.21(3):284−91;Cheungら、1987、J.Lipid Res.28(8):913−29を参照のこと。米国特許第5,059,528、5,128,318、6,617,134号、および米国公開第2002/0156007、2004/0067873、2004/0077541、および2004/0266660号も参照のこと。
【0068】
本明細書中で記載される荷電複合体および組成物におけるアポリポタンパク質として使用するために適当な、アポリポタンパク質に対応するペプチドおよびペプチドアナログ、およびApoA−I、ApoA−I、ApoA−II、ApoA−IV、およびApoEの活性を模倣するアゴニストの制限しない例は、米国特許第6,004,925、6,037,323および6,046,166号(Dasseuxらに対して発行)、米国特許第5,840,688号(Tsoに対して発行)、米国公開第2004/0266671、2004/0254120、2003/0171277および2003/0045460号(Fogelmanに対して)、および米国公開第2003/0087819号(Bielickiに対して)において開示され、その開示は本明細書中でその全体として参考文献に組み込まれる。これらのペプチドおよびペプチドアナログは、L−アミノ酸またはD−アミノ酸またはL−およびD−アミノ酸の混合物から構成され得る。それらはまた、1つまたはそれ以上の周知のペプチド/アミドアイソスターのような、1つまたはそれ以上の非ペプチドまたはアミド結合を含み得る。そのような「ペプチドおよび/またはペプチド模倣物」アポリポタンパク質を、例えば米国特許第6,004,925、6,037,323および6,046,166号において記載された技術を含む、当該分野で公知のペプチド合成のあらゆる技術を用いて合成または製造し得る。
【0069】
荷電複合体は、単一の型のアポリポタンパク質、または同じまたは異なる種由来であり得る2つまたはそれ以上の異なるアポリポタンパク質の混合物を含み得る。必要ではないが、荷電リポタンパク質複合体は、好ましくは、治療に対する免疫反応を誘発するのを回避するために、治療される動物種由来の、またはそれにアミノ酸配列が対応するアポリポタンパク質を含む。ペプチド模倣物アポリポタンパク質の使用も、免疫反応を抑制または回避し得る。
【0070】
(6.2 リン脂質)
荷電複合体および組成物の脂質画分は、2つの型のリン脂質:中性リン脂質および荷電したリン脂質を含む。本明細書中で使用される場合、「中性リン脂質」は、生理学的pHで約ゼロの有効電荷を有するリン脂質である。多くの実施態様において、中性リン脂質は双性イオンであるが、他の型の正味中性リン脂質が公知であり、そして使用し得る。中性リン脂質は、レシチンおよび/またはSMの1つまたは両方を含み、そして任意で他の中性リン脂質を含み得る。いくつかの実施態様において、中性リン脂質はレシチンを含むがSMは含まない。他の実施態様において、中性リン脂質はSMを含むがレシチンは含まない。さらに他の実施態様において、中性リン脂質はレシチンおよびSMを両方含む。これら特定の例示実施態様は全て、レシチンおよび/またはSMに加えて中性リン脂質を含み得るが、多くの実施態様において、そのようなさらなる中性リン脂質は含まない。
【0071】
使用されるSMの正体は、成功のために決定的ではない。従って、本明細書中で使用される場合、「SM」という表現は、天然の供給源由来のスフィンゴミエリンだけではなく、天然に存在するSMのように、LCATによる加水分解を受けない、天然に存在するSMのアナログおよび誘導体も含む。SMは、構造がレシチンに非常に類似したリン脂質であるが、レシチンと異なり、グリセロールバックボーンを持たず、そして従ってアシル鎖を結合するエステル結合を有さない。それより、SMはセラミドバックボーンを有し、アミド結合がアシル鎖をつなぐ。SMはLCATの基質ではなく、そして一般的にそれによって加水分解されない。しかし、それはLCATの阻害剤として作用し得る、または基質リン脂質の濃度を希釈することによってLCAT活性を減少させ得る。SMは加水分解さ
れないので、それは循環中により長く留まる。この特徴が、SMを含む荷電リポタンパク質複合体が、SMを含まないアポリポタンパク質複合体より長い期間の薬理学的効果(コレステロールの可動化)を有し、そしてより多くの脂質、特にコレステロールを集めることを可能にすることが期待される(例えば米国公開第2004/0067873号において記載されたアポリポタンパク質複合体を参照のこと、その開示は本明細書中でその全体として参考文献に組み込まれる)。この効果は、治療のために、SMを含まないリポタンパク質複合体に関して必要であるよりも、より少ない頻度または少ない投与量が必要であることを引き起こし得る。
【0072】
SMは、実質的にあらゆる供給源由来であり得る。例えば、SMは乳、卵、または脳から得ることができる。SMアナログまたは誘導体も使用し得る。有用なSMアナログおよび誘導体の制限しない例は、パルミトイルスフィンゴミエリン、ステアロイルスフィンゴミエリン、D−エリトロ−N−16:0−スフィンゴミエリンおよびそのジヒドロアイソマー、D−エリトロ−N−16:0−ジヒドロ−スフィンゴミエリンを含むがこれに限らない。
【0073】
天然の供給源から単離されたスフィンゴミエリンを、1つの特定の飽和または不飽和アシル鎖において人工的に濃縮し得る。例えば、乳スフィンゴミエリン(Avanti Phospholipid、Alabaster、Ala.)は、長い飽和アシル鎖(すなわち、20またはそれ以上の炭素原子を有するアシル鎖)によって特徴付けられる。対照的に、卵スフィンゴミエリンは、短い飽和アシル鎖(すなわち、20より少ない炭素原子を有するアシル鎖)によって特徴付けられる。例えば、乳スフィンゴミエリンの約20%しかC16:0(16炭素、飽和)アシル鎖を持たない一方、卵スフィンゴミエリンの約80%がC16:0アシル鎖を含む。溶媒抽出を用いて、乳スフィンゴミエリンの構成成分を、卵スフィンゴミエリンのものに匹敵するアシル鎖構成成分を有するよう濃縮し得、逆も同じである。
【0074】
SMは、それが特定のアシル鎖を有するよう、半合成であり得る。例えば、乳スフィンゴミエリンを、まず乳から精製し得、次いで1つの特定のアシル鎖、例えばC16:0アシル鎖を切断して、そして別のアシル鎖と置換し得る。SMをまた、例えば大規模合成によって、完全に合成し得る。例えば1993年6月15日に発行された、Synthesis of D−erythro−sphingomyelinsと題された、Dongら、米国特許第5,220,043号;Weis、1999、Chem.Phys.Lipids 102(1−2):3−12を参照のこと。
【0075】
半合成または合成SMを構成するアシル鎖の長さおよび飽和レベルは、選択的に変化させ得る。アシル鎖は、飽和または不飽和であり得、そして約6から約24までの炭素原子を含み得る。各鎖は、同じ数の炭素原子を含み得る、またはあるいは、各鎖は異なる数の炭素原子を含み得る。いくつかの実施態様において、半合成または合成SMは、1つの鎖は飽和しており、そして1つの鎖は不飽和であるような、混合アシル鎖を含む。そのような混合アシル鎖SMにおいて、鎖の長さは同じまたは異なり得る。他の実施態様において、半合成または合成SMのアシル鎖は、どちらも飽和しているか、またはどちらも不飽和であるかのいずれかである。再び、その鎖は同じまたは異なる数の炭素原子を含み得る。いくつかの実施態様において、半合成または合成SMを構成するアシル鎖はどちらも同じである。特定の実施態様において、その鎖は、例えばオレイン酸、パルミチン酸、またはステアリン酸のような、天然に存在する脂肪酸のアシル鎖に対応する。別の特定の実施態様において、両方のアシル鎖が飽和しており、そして6から24の炭素原子を含む。半合成および合成SMに含まれ得る、一般に存在する脂肪酸に存在するアシル鎖の制限しない例を、下記の表1で提供する:
【0076】
【表1】

SMと同様に、使用されるレシチンの正体は成功のために決定的でない。また、SMと同様に、レシチンは天然の供給源由来である、またはそれから単離し得る、または合成的に得ることができる。天然の供給源から単離される適当なレシチンの例は、卵ホスファチジルコリンおよびダイズホスファチジルコリンを含むがこれに限らない。適当なレシチンのさらなる制限しない例は、ジパルミトイルホスファチジルコリン、ジミリストイルホスファチジルコリン、ジステアロイルホスファチジルコリン、1−ミリストイル−2−パルミトイルホスファチジルコリン、1−パルミトイル−2−ミリストイルホスファチジルコリン、1−パルミトイル−2−ステアロイルホスファチジルコリン、1−ステアロイル−2−パルミトイルホスファチジルコリン、1−パルミトイル−2−オレオイルホスファチジルコリン、1−オレオイル−2−パルミトイルホスファチジルコリン、ジオレオイルホスファチジルコリン、およびそのエーテル誘導体またはアナログを含む。
【0077】
SMと同様に、天然の供給源由来またはそれから単離されたレシチンを、特定のアシル鎖を含むように濃縮し得る。半合成または合成レシチンを採用する実施態様において、SMに関連して上記で議論したように、アシル鎖の正体を選択的に変化させ得る。本明細書中で記載された荷電複合体のいくつかの実施態様において、レシチンの両方のアシル鎖は同一である。SMおよびレシチンを両方含む荷電リポタンパク質複合体のいくつかの実施態様において、SMおよびレシチンのアシル鎖は全て同一である。特定の実施態様において、アシル鎖はミリスチン酸、パルミチン酸、オレイン酸、またはステアリン酸のアシル鎖に対応する。
【0078】
脂質画分は、荷電したリン脂質も含む。本明細書中で使用される場合、「荷電したリン脂質」は、生理学的pHにおいて有効電荷を有するリン脂質である。荷電したリン脂質は、単一の型の荷電したリン脂質、または2つまたはそれ以上の異なる、典型的には同様の電荷のリン脂質の混合物を含み得る。いくつかの実施態様において、荷電したリン脂質は、負に荷電したグリセロリン脂質である。荷電したリン脂質の正体は、成功のために決定的ではない。適当な負に荷電したリン脂質の特定の例は、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルセリン、およびホスファチジン酸を含むがこれに限らない。いくつかの実施態様において、負に荷電したリン脂質は、1つまたはそれ以上のホスファチジルイノシトール、ホスファチジルセリン、ホスファチジルグリセロール、および/またはホスファチジン酸を含む。
【0079】
SMおよびレシチンと同様に、負に荷電したリン脂質は、天然の供給源由来であり得る、または化学合成によって調製し得る。合成の負に荷電したリン脂質を採用する実施態様において、SMに関連して上記で議論したように、アシル鎖の正体を選択的に変化させ得る。本明細書中で記載された荷電リポタンパク質複合体のいくつかの実施態様において、負に荷電したリン脂質上のアシル鎖はどちらも同一である。本明細書中で記載された三元および四元荷電リポタンパク質複合体のいくつかの実施態様において、SM、レシチン、および負に荷電したリン脂質上のアシル鎖は全て同一である。特定の実施態様において、荷電したリン脂質および/またはSMは全て、C16:0またはC16:1アシル鎖を有する。別の特定の実施態様において、荷電したリン脂質、レシチンおよび/またはSMのアシル鎖は、パルミチン酸のアシル鎖に対応する。さらに別の特定の実施態様において、荷電したリン脂質、レシチンおよび/またはSMのアシル鎖は、オレイン酸のアシル鎖に対応する。
【0080】
荷電複合体を構成する負に荷電したリン脂質の全量は、変動し得る。典型的には、脂質画分は、約0.2から10wt%の負に荷電したリン脂質を含む。いくつかの実施態様において、脂質画分は、約0.2から1wt%、0.2から2wt%、0.2から3wt%、0.2から4wt%、0.2から5wt%、0.2から6wt%、0.2から7wt%、0.2から8wt%、または0.2から9wt%の合計の、負に荷電したリン脂質を含む。いくつかの実施態様において、脂質画分は、約0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、または3.0wt%、および/またはこれらの値のいずれかを終点として含む範囲の合計の、負に荷電したリン脂質を含む。いくつかの実施態様において、脂質画分は、約0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、または3.0wt%の合計の、負に荷電したリン脂質から、約4、5、6、7、8、9または10wt%の合計の、負に荷電したリン脂質を含む。
【0081】
本明細書中で記載された荷電リポタンパク質複合体に負に荷電したリン脂質を含むことは、従来の複合体と比較して、その複合体により高い安定性(溶液中)およびより長い製品有効期間を与えることが期待される。それに加えて、負に荷電したリン脂質の使用は、粒子の凝集を最低限にし(例えば電荷の反発によって)、それによって所定の投与レジメ中に存在する利用可能な複合体の数を効果的に増加させ、そして腎臓ではなく肝臓による認識のための複合体のターゲティングを助けることが期待される。
【0082】
いくつかのアポリポタンパク質は、インビボにおいて1つのリポタンパク質複合体から別のものへと交換する(これはアポリポタンパク質ApoA−Iに関して事実である)。そのような交換の過程の間、アポリポタンパク質は、典型的にはそれとともに1つまたはそれ以上のリン脂質分子を運ぶ。この性質のために、本明細書中で記載された荷電リポタンパク質複合体が、内因性HDLに負に荷電したリン脂質を「播種(seed)」し、それによってそれらを腎臓による除去に対してより抵抗性のアルファ粒子へ変換することが期待される。従って、本明細書中で記載された荷電リポタンパク質複合体および組成物の投与は、HDLの血清レベルを増加させる、および/または内因性HDLの半減期および内因性HDLの代謝を変化させることが期待される。これはコレステロール代謝および脂質逆輸送の変化を引き起こすことが期待される。
【0083】
中性および荷電したリン脂質に加えて、脂質画分は、任意でさらなる脂質を含み得る。リゾリン脂質、ガラクトセレブロシド、ガングリオシド、セレブロシド、グリセリド、トリグリセリド、およびコレステロールおよびその誘導体を含むがこれに限らない、実質的にあ
らゆる型の脂質を使用し得る。
【0084】
含まれる場合には、そのような任意の脂質は、典型的には脂質画分の約50wt%未満を構成するが、いくつかの例ではより多くの任意の脂質が含まれ得る。いくつかの実施態様において、荷電リポタンパク質複合体の脂質画分は、任意の脂質を含まない。
【0085】
概要の項で示したように、荷電リポタンパク質複合体の脂質画分を構成する中性リン脂質の全量は変動し得、そして含まれる荷電したリン脂質の全量、および任意の脂質が含まれるかどうかに依存して、典型的には約50から99.8wt%の範囲である。任意の脂質が含まれない特定の実施態様は、典型的には約90から99.8wt%の全中性リン脂質を含む。レシチンおよびSMを両方含む脂質画分の適当なレシチン:SMモル比は、概要の項に記載されている。
【0086】
特定の実施態様において、荷電リポタンパク質複合体は三元複合体であり、そこで脂質画分は実質的には約90から99.8wt%のSMおよび約0.2から10wt%の負に荷電したリン脂質、例えば約0.2−1wt%、0.2−2wt%、0.2−3wt%、0.2−4wt%、0.2−5wt%、0.2−6wt%、0.2−7wt%、0.2−8wt%、0.2−9wt%、または0.2−10wt%の合計の、負に荷電したリン脂質から成る。別の特定の実施態様において、荷電リポタンパク質複合体は三元複合体であり、そこで脂質画分は、実質的には約90から99.8wt%のレシチンおよび約0.2から10wt%の合計の、負に荷電したリン脂質、例えば約0.2−1wt%、0.2−2wt%、0.2−3wt%、0.2−4wt%、0.2−5wt%、0.2−6wt%、0.2−7wt%、0.2−8wt%、0.2−9wt%、または0.2−10wt%の合計の負に荷電したリン脂質から成る。
【0087】
さらに別の特定の実施態様において、荷電リポタンパク質複合体は四元複合体であり、そこで脂質画分は実質的には約9.8から90wt%のSM、約9.8から90wt%のレシチン、および約0.2−10wt%の負に荷電したリン脂質、例えば約0.2−1wt%から、0.2−2wt%、0.2−3wt%、0.2−4wt%、0.2−5wt%、0.2−6wt%、0.2−7wt%、0.2−8wt%、0.2−9wt%、0.2−10wt%までの合計の、負に荷電したリン脂質から成る。
【0088】
その複合体はまた、任意で例えばパラオキソナーゼ(PON)またはLCATのような他のタンパク質、抗酸化剤、シクロデキストリン、および/またはコレステロールを複合体のコアまたは表面に捕獲するのに役立つ他の物質を含み得る。その複合体は、任意で循環半減期を増加させるためにペグ化され得る(例えばポリエチレングリコールまたは他のポリマーで覆われる)。
【0089】
当業者によって認識されるように、本明細書中で記載された荷電リポタンパク質複合体のアポリポタンパク質画分に対する脂質画分のモル比は変動し得、そして他の因子の中でも、アポリポタンパク質画分を構成するアポリポタンパク質の正体、脂質画分を構成する荷電したリン脂質の正体および量、および荷電リポタンパク質複合体の望ましい大きさに依存する。ApoA−Iのようなアポリポタンパク質の生物学的活性は、アポリポタンパク質を構成する両親媒性のへリックスによって媒介されると考えられるので、ApoA−Iタンパク質当量を用いて脂質:アポリポタンパク質モル比のアポリポタンパク質画分を表すのが便利である。へリックスを計算するために使用する方法に依存して、ApoA−Iは6−10の両親媒性へリックスを有することが一般的に受け入れられている。他のアポリポタンパク質を、それらが含む両親媒性へリックスの数に基づいて、ApoA−I当量に置き換えて表現し得る。例えば、典型的にはジスルフィド架橋ダイマーとして存在するApoA−Iは、ApoA−Iの各分子がApoA−Iの分子の2倍の数の両親媒性へリックスを含むので、2ApoA−I当量として表現し得る。逆に、単一の両親媒性へリックスを含むペプチドアポリポタンパク質は、各分子はApoA−Iの分子の1/10−1/6の数の両親媒性へリックスを含むので、1/10−1/6ApoA−I当量として表現し得る。一般的に、荷電リポタンパク質複合体の脂質:ApoA−I当量モル比(本明細書中で「R」として定義される)は、約2:1から100:1の範囲である。いくつかの実施態様において、Rは約50:1である。約650−800のリン脂質のMWを用いて、重量の比を得ることができる。
【0090】
荷電リポタンパク質複合体の大きさを、Rを変化させることによってコントロールし得る。すなわち、Rが小さいほど、円盤も小さい。例えば、大きな円盤は典型的には約200:1から100:1の範囲のRを有し、一方小さい円盤は典型的には約100:1から30:1の範囲のRを有する。
【0091】
いくつかの特定の実施態様において、荷電リポタンパク質複合体は、2−4ApoA−I当量(例えば、2−4分子のApoA−I、1−2分子のApoA−Iダイマー、または6−10の単一へリックスペプチド分子)、1分子の荷電したリン脂質、および400分子の全中性リン脂質を含む大きな円盤である。別の特定の実施態様において、荷電リポタンパク質複合体は、2−4ApoA−I当量、1分子の荷電したリン脂質、および200分子の全中性リン脂質を含む小さい円盤である。
【0092】
荷電リポタンパク質複合体を構成する様々なアポリポタンパク質および/またはリン脂質分子を、安定な同位元素(例えば13C、15N、H等);放射性同位元素(例えば14C、H、125I等);フルオロフォア;化学発光物質;または酵素マーカーを含む、あらゆる当該分野で公知の検出可能なマーカーで標識し得る。
【0093】
(6.3 荷電リポタンパク質複合体を作成する方法)
本明細書中で記載された荷電リポタンパク質複合体を、小胞、リポソーム、タンパクリポソーム、ミセル、および円盤状粒子を含むがこれに限らない、様々な形式で調製し得る。当業者に周知の様々な方法を使用して、荷電リポタンパク質複合体を調製し得る。リポソームまたはタンパクリポソームを調製するために利用可能な多くの技術を使用し得る。例えば、アポリポタンパク質を適当なリン脂質と同時超音波処理して(槽またはプローブ超音波処理器を用いて)複合体を形成し得る。あるいは、アポリポタンパク質を、前もって形作った脂質小胞と組み合わせ、荷電リポタンパク質複合体の自発的な形成を引き起こし得る。荷電リポタンパク質複合体をまた、界面活性剤透析法によって形成し得る;例えばアポリポタンパク質、荷電したリン脂質、SMおよび/またはレシチン、およびコール酸塩のような界面活性剤の混合物を透析して界面活性剤を除去し、そして再構築して荷電リポタンパク質複合体を形成する(例えばJonasら、1986、Methods in Enzymol.128:553−82を参照のこと)、または押し出し装置を用いることによって、またはホモジナイゼーションによって形成し得る。
【0094】
いくつかの実施態様において、荷電リポタンパク質複合体を、米国公開第2004/0067873号の実施例1において記載された、コール酸塩分散法によって調製し得、その開示は本明細書中で参考文献に組み込まれる。簡単には、乾燥脂質をNaHCO緩衝液中で水和し、次いで全ての脂質が分散するまでボルテックスおよび超音波処理する。コール酸塩溶液を加え、定期的にボルテックスおよび超音波処理して、それが透明になって脂質コール酸塩ミセルが形成されたことを示すまで、混合物を30分間インキュベートする。NaHCO緩衝液中のプロApoA−Iを加え、そして溶液を約37℃−50℃で1時間インキュベートする。溶液中の脂質:プロApoA−Iの比は、1:1から200:1(モル/モル)であり得るが、いくつかの実施態様において、その比は約2:1の脂質重量対タンパク質重量(wt/wt)である。
【0095】
コール酸塩を、当該分野で周知の方法によって除去し得る。例えば、透析、限外ろ過によって、または親和性ビーズまたは樹脂に対する吸着によるコール酸塩分子の除去によって、コール酸を除去し得る。1つの実施態様において、親和性ビーズ、例えばBIO−BEADS(登録商標)(Bio−Rad Laboratories)を荷電リポタンパク質複合体およびコール酸塩の調節物に加えてコール酸塩を吸着する。別の実施態様において、調製物、例えば荷電リポタンパク質複合体およびコール酸塩のミセル調製物を、親和性ビーズを充填したカラムに通す。
【0096】
特定の実施態様において、調製物をシリンジ中のBIO−BEADS(登録商標)に添加することによって、コール酸塩を荷電リポタンパク質複合体の調製物から除去する。次いでシリンジをバリアフィルムで密閉し、そして振とうしながら4℃で一晩インキュベートする。使用前に、コール酸塩がビーズによって吸着されるBIO−BEADS(登録商標)に溶液を注入することによって、コール酸塩を除去する。
【0097】
荷電リポタンパク質複合体は、複合体がHDL、特にプレ−ベータ−1またはプレ−ベータ−2HDL集団中のHDLに類似した大きさおよび密度を有する場合、循環中で増加した半減期を有することが期待される。長い有効期間を有する安定な調製物を、凍結乾燥によって産生し得る。例えば、下記で記載される同時凍結乾燥手順は、安定な処方および簡単な処方/粒子調製過程を提供する。同時凍結乾燥法は、米国特許第6,287,590号(2001年9月11日発行、Dasseuxによる、Peptide/lipid complex formation by co−lyophilizationと題された)においても記載され、それは本明細書中でその全体として参考文献に組み込まれる。凍結乾燥荷電リポタンパク質複合体を、医薬品の再処方のために大量の供給を調製するために、または被験体への投与の前に、滅菌水または適当な緩衝化溶液で再水和することによって再構築し得る、個々のアリコートまたは投与量単位を調製するために使用し得る。
【0098】
米国特許第6,004,925、6,037,323、6,046,166および6,287,590号(本明細書中でその全体として参考文献に組み込まれる)は、HDLに類似した特徴を有する荷電リポタンパク質複合体を調製するための簡単な方法を開示する。この方法は、有機溶媒(または溶媒混合物)中での、アポリポタンパク質および脂質溶液の同時凍結乾燥、および凍結乾燥粉末の水和の間の荷電リポタンパク質複合体の形成を含み、以下の利点を有する:(1)その方法は、非常に少ない工程しか必要でない;(2)その方法は、安価な溶媒を使用する;(3)含まれる成分のほとんどまたは全てを、計画された複合体を形成するために使用し、従って他の方法によくある、開始材料の無駄を回避する;(4)保存の間非常に安定であり、できた複合体を使用の直前に再構築し得る凍結乾燥複合体を形成する;(5)できた複合体は通常、形成後および使用前にさらに精製する必要がない;(6)コール酸塩のような界面活性剤を含む毒性化合物が回避される;および(7)産生方法を容易にスケールアップし得、そしてGMP生産(すなわち、エンドトキシン遊離の環境における)に適当である。
【0099】
いくつかの実施態様において、当該分野において通常公知である同時凍結乾燥法を使用して、荷電リポタンパク質複合体を調製する。簡単には、その同時凍結乾燥工程は、有機溶媒または溶媒混合物中で、アポリポタンパク質(「Apo」)およびリン脂質を共に可溶化すること、またはApoおよびリン脂質を別々に可溶化し、そしてそれらを混合することを含む。溶媒または溶媒混合物の望ましい特徴は:(i)疎水性の脂質および両親媒性のタンパク質を溶解し得る、中程度の相対的な極性;(ii)溶媒は、残留有機溶媒に関連する潜在的な毒性を回避するために、FDA溶媒ガイドライン(Federal Register、第62巻247号)によってクラス2または3の溶媒であるべきである、(iii)凍結乾燥中の簡単な溶媒除去を保証するために、低い沸点、(iv)凍結をより速く、冷却器の温度をより高くし、および従って凍結乾燥機の浪費をより少なくするために、高い融点。好ましい実施態様において、氷酢酸を使用する。例えばメタノール、氷酢酸、キシレン、またはシクロヘキサンの組み合わせも使用し得る。
【0100】
次いでApo/脂質溶液を凍結乾燥して、均一なApo/脂質粉末を得る。凍結乾燥条件を最適化して、凍結乾燥Apo/脂質粉末中の残留溶媒の量を最少にして溶媒の蒸発を迅速にすることができる。凍結乾燥条件の選択は、当業者によって決定し得、そして溶媒の性質、容器、例えばバイアルの型および寸法、保持溶液、充填容積、および使用する凍結乾燥機の特徴に依存する。有機溶媒の除去および複合体をうまく形成するために、凍結乾燥前の脂質/Apo溶液の濃度は、10から50mg/mlの濃度のApoA−I当量および20から100mg/mlの濃度の脂質の範囲であり得る。
【0101】
適当なpHおよび浸透圧の水性溶媒でApo−脂質凍結乾燥粉末を水和した後、Apo−脂質複合体が自然に形成される。いくつかの実施態様において、その溶媒はスクロース、トレハロース、グリセリンおよび他のような安定化剤も含み得る。いくつかの実施態様において、脂質が複合体を形成するために、溶液を転移温度より上の温度に数回加熱しなければならない。荷電リポタンパク質複合体をうまく形成するために、脂質のタンパク質に対するモル比は、2:1から200:1までであり得(ApoA−I当量で表現される)、そして好ましくは約2:1の脂質重量対タンパク質重量(wt/wt)である。粉末を水和して、ApoA−Iタンパク質当量で表現される約5−30mg/mlの最終的な複合体濃度を得る。
【0102】
いくつかの実施態様において、NHCO水性溶液中のApo溶液を凍結乾燥することによって、Apo粉末を得る。Apoおよび脂質の均一な溶液を、その粉末およびApoを氷酢酸に溶解することによって形成する。次いでその溶液を凍結乾燥し、そして凍結乾燥粉末を水性溶媒で水和することによって、HDL様の荷電リポタンパク質複合体が形成される。
【0103】
いくつかの実施態様において、Apo−脂質複合体を調製するためにホモジナイゼーションを使用する。この方法を使用して、ApoダイズPC複合体を調製し得、そしてApoA−I−POPC複合体の処方に通常使用する。ホモジナイゼーションを、荷電リポタンパク質複合体の形成に容易に適応させ得る。簡単には、この方法は、UltraturexTMによるApoの水性溶液中の脂質懸濁液の形成、および高圧ホモジナイザーを用いて、懸濁液が透明−乳白色の溶液になり、そして複合体が形成されるまで、形成された脂質−タンパク質懸濁液をホモジナイズすることを含む。ホモジナイゼーション中、脂質転移より上の高い温度を使用する。1−14時間の長時間、そして高圧で溶液をホモジナイズする。
【0104】
いくつかの実施態様において、荷電リポタンパク質複合体を、リン脂質と、ペプチドまたはタンパク質溶液または懸濁液の同時凍結乾燥によって形成し得る。ペプチド/タンパク質、荷電したリン脂質、SMおよび/またはレシチン(プラスあらゆる他の選択されたリン脂質)の、有機溶媒または有機溶媒混合物中の均一な溶液を、凍結乾燥し得、そして凍結乾燥粉末の水性緩衝液による水和によって、荷電リポタンパク質複合体が自発的に形成し得る。有機溶媒またはその混合物の例は、酢酸、酢酸およびキシレン、酢酸およびシクロヘキサン、およびメタノールおよびキシレンを含むがこれに限らない。
【0105】
脂質に対するタンパク質(ペプチド)の適当な割合は、できた複合体が適当な物理的および化学的性質、すなわち通常(しかし必ずしもそうではない)HDLと同様の大きさを有するよう、経験的に決定し得る。溶媒中のできたApoおよび脂質の混合物を凍結し、そして乾燥するまで凍結乾燥する。凍結乾燥を促進するために、さらなる溶媒を混合物に加えなければならない場合もある。この凍結乾燥産物を、長期間保存することができ、そして安定なままであることが期待される。
【0106】
荷電リポタンパク質複合体の溶液または懸濁液を得るために、凍結乾燥産物を再構築し得る。この目的のために、凍結乾燥粉末を適当な容積まで水性溶液で再水和し(典型的には5−20mgの荷電リポタンパク質複合体/ml)、それは例えば静脈内注射に便利である。好ましい実施態様において、凍結乾燥粉末を、リン酸緩衝化生理食塩水、炭酸水素生理食塩水、または生理食塩水溶液で再水和する。混合物を攪拌またはボルテックスして、再水和を促進する。一般的に、再構築工程を、複合体の脂質成分の相転移温度と同じまたはそれより高い温度で行うべきである。再構築数分以内に、再構築荷電リポタンパク質複合体の透明な調製物が生じる。
【0107】
他の方法は、溶液をスプレーし、そして溶媒を蒸発させるスプレー乾燥を含む(高温または減圧のいずれかにおいて)。脂質およびアポリポタンパク質を、同じ溶媒または異なる溶媒に可溶化し得る。次いでバイアルに充填するために粉末充填物を使用し得る。
【0108】
アポリポタンパク質および脂質由来の凍結乾燥粉末を、機械的にも混合し得る。アポリポタンパク質および脂質を含む均一な粉末を、次いで水和して、適当な大きさおよび適当な脂質:アポリポタンパク質モル比の複合体が自発的に形成し得る。
【0109】
できた再構築調製物のアリコートを特徴付けて、調製物中の複合体が望ましいサイズ分布、例えばHDLのサイズ分布を有することを確認し得る。再構築調製物の特徴付けは、サイズ排除ろ過、ゲルろ過、カラムろ過、ゲル浸透クロマトグラフィー、および非変性ゲル電気泳動を含むがこれに限らない、当該分野で公知のあらゆる方法を用いて行い得る。
【0110】
例えば、凍結乾燥荷電リポタンパク質粉末の水和後、またはホモジナイゼーションまたはコール酸透析の最後に、形成されたApo−脂質HDL様粒子を、その大きさに関して特徴付け、できた溶液の濃度、最終的なpH、および浸透圧、ある場合には脂質および/またはアポリポタンパク質の完全性を特徴付ける。できた荷電リポタンパク質粒子の大きさは、その有効性の決定要因であり、従ってこの測定は、典型的には粒子の特徴付けに含まれる。
【0111】
いくつかの実施態様において、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)、例えば1×30cmのSuperdexTMカラム(Pharmacia Biotech)を備えた高速液体クロマトグラフィーシステムおよびUV検出器を使用し得る。0.5ml/分の流速で送達される140mMのNaClおよび20mMの炭酸水素ナトリウムから成る炭酸水素緩衝化生理食塩水で、複合体を溶出する。注入する複合体の典型的な量は、タンパク質重量に基づいて0.1から1mgである。複合体を、280nmにおける吸収によってモニターし得る。
【0112】
荷電リポタンパク質粒子溶液のタンパク質および脂質濃度を、タンパク質およびリン脂質アッセイ、およびHPLC、ゲルろ過クロマトグラフィー、質量分析、UVまたはダイオードアッセイ、蛍光、弾性光散乱および他を含む様々な検出器と組み合わせたGCのようなクロマトグラフィー法を含むがこれに限らない、当該分野で公知のあらゆる方法によって測定し得る。脂質およびタンパク質の完全性も、同じクロマトグラフィー技術およびペプチドマッピング、SDS−pageゲル、タンパク質のN−およびC−末端配列決定、および脂質に関して脂質酸化を決定するための標準的なアッセイによって決定し得る。
【0113】
本明細書中で記載された荷電リポタンパク質複合体または組成物の均一性および/または安定性を、ゲルろ過クロマトグラフィーのようなクロマトグラフィー法を含むがこれに限らない、当該分野で公知のあらゆる方法によって測定し得る。例えば、いくつかの実施態様において、単一のピークまたは限られた数のピークが安定な複合体と関連し得る。複合体の安定性を、時間につれて新しいピークの出現をモニターすることによって決定し得る。新しいピークの出現は、粒子の不安定性による複合体間の再編成の徴候である。
【0114】
荷電複合体におけるアポリポタンパク質に対するリン脂質の最適な比を、ゲル電気泳動移動度アッセイ、サイズ排除クロマトグラフィー、HDL受容体との相互作用、ATP結合カセット輸送体(ABCA1)による認識、肝臓による取り込み、および薬物動態学/薬力学を含むがこれに限らない、当該分野で公知の多くの機能的アッセイを用いて決定し得る。例えば、ゲル電気泳動移動度アッセイを用いて、荷電複合体におけるアポリポタンパク質に対するリン脂質の最適な比を決定し得る。本明細書中で記載された荷電複合体は、天然のプレ−ベータ−HDLまたはアルファ−HDL粒子と同様の電気泳動移動度を示すべきである。従って、いくつかの実施態様において、天然プレ−ベータ−HDLまたはアルファ−HDL粒子を、荷電複合体の移動度を決定するための基準として使用し得る。
【0115】
別の例として、サイズ排除クロマトグラフィーを使用して、天然プレ−ベータ−HDL粒子と比較した、本明細書中で記載された荷電複合体の大きさを決定し得る。天然プレ−ベータ−HDL粒子は一般的に、10−12nmより大きくなく、そして円盤状粒子は通常約7−10nmである。
【0116】
別の例として、どの複合体が天然プレ−ベータ−HDL粒子と一番近いかを同定する、またはどの複合体が、コレステロールまたは脂質を細胞から除去および/または可動化するのに最も有効であるかを同定するために、HDL受容体を機能的アッセイにおいて使用し得る。1つのアッセイにおいて、複合体をABCA−1受容体に結合するその能力に関して試験し得る。そのようなアッセイは、ABCA−1依存または非依存のコレステロールの除去を区別し得る。ApoA−Iはそのようなアッセイのために最もよいリガンドであると考えられるが、小さいミセルまたは小さい円盤状粒子のような複合体も、強力なABCA−1リガンドである。使用し得るABCA−1結合アッセイは、Brewerら、2004、Arterioscler.Thromb.Vasc.Biol.24:1755−1760において記載される。
【0117】
別の例として、ABCA−1発現細胞は、遊離のApoA−Iを、そしてより低い程度に天然プレ−ベータ−HDL粒子を認識することが公知である(Brewerら、2004、Arterioscler.Thromb.Vasc.Biol.24:1755−1760)。これらの実施態様において、天然プレ−ベータ−HDL粒子のABCA−1細胞の認識を、本明細書中で記載された荷電複合体のいずれか一つと比較して、天然プレ−ベータ−HDL粒子に最もよく似ている複合体を同定し得る。
【0118】
天然プレ−ベータ−HDL粒子に最もよく似ている荷電複合体を同定するための、比較的単純なアプローチは、肝臓に再構築荷電複合体を含む溶液を灌流し、そして肝臓によって取り込まれた量を測定することである。
【0119】
いくつかの実施態様において、荷電複合体の薬物動態学/薬力学(PK/PD)を、ウサギにおける単回の注射後に測定し得る。これらの実施態様において、ApoA−Iの濃度を、動態のマーカーとして使用する。薬力学を、単回の注射後にベースラインを超えて可動化したコレステロールの量、およびHDL画分中のコレステロールの量として測定し得る。PKおよびPDは、リン脂質の性質、リン脂質の組成、脂質:アポリポタンパク質のモル比および複合体のリン脂質濃度に依存する。例えば、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)/ApoA−I複合体は、卵ホスファチジルコリン(EPC)/ApoA−I複合体より長い半減期を有する。スフィンゴミエリン/ApoA−I複合体は、EPC/ApoA−I複合体よりも長い半減期を有する。ヒトにおけるヒトApoA−Iの半減期は、約5から6日である。
【0120】
別の実施態様において、荷電複合体の薬力学を、時間につれたHDL画分におけるコレステロールエステル化の速度をフォローすることによって測定し得る。LCATは、血液中でコレステロールエステル化の原因である唯一の酵素である。コレステロールエステル化の速度は、粒子の質を評価する良いパラメーターである。LCATが分子プローブとして作用し、四元複合体がLCATによって認識されるなら、エステル化の速度はより高い。これは、表面が理想的、荷電が理想的、形態が理想的であり、そして2つの基質(LCATはまずアシル鎖をリン脂質から加水分解し(エステラーゼ活性)、そして次いでコレステロールの遊離OHをエステル化して(エステラーゼ活性)コレステロールエステルを形成する)が接近可能および正しい濃度であることを意味する。また、それはその粒子が、反応の産物:リゾリン脂質およびコレステロールエステルを可溶化および捕捉するためによい大きさおよび構成であることを意味し、そうでなければ反応は停止する。
【0121】
(6.4 医薬組成物)
開示によって企図される医薬組成物は、インビボでの投与および伝達に適当な、薬学的に許容可能な担体中に、活性成分として荷電リポタンパク質複合体を含む。ペプチドは酸性および/または塩基性末端および/または側鎖を含み得るので、ペプチド模倣物アポリポタンパク質は、遊離の酸または塩基の形式、または薬学的に許容可能な塩の形式で組成物に含まれ得る。アミド化、アシル化、アセチル化、またはペグ化タンパク質のような修飾タンパク質も使用し得る。
【0122】
注射可能な組成物は、水性または油性媒体中の活性成分の滅菌懸濁液、溶液、またはエマルションを含む。組成物はまた、懸濁剤、安定化剤、および/または分散剤のような、処方薬剤も含み得る。注射のための組成物を、単位投与量形式、例えばアンプルまたは複数回投与容器で提示し得、そしてさらに保存剤を含み得る。注入のために、組成物を、エチレン酢酸ビニルまたは当該分野で公知のあらゆる他の適合性物質のような、荷電リポタンパク質複合体と適合性の物質で作られた注入バッグで供給し得る。
【0123】
あるいは、注射可能な組成物を、使用前に、滅菌パイロジェン遊離水、緩衝液、デキストロース溶液等を含むがこれに限らない適当な媒体で再構築するために、粉末形式で提供し得る。このために、Apoを凍結乾燥し得る、または同時凍結乾燥した荷電リポタンパク質複合体を調製し得る。保存した組成物を、単位投与量形式で供給し、そしてインビボで使用する前に再構築し得る。
【0124】
延長した伝達のために、活性成分を、埋め込み、例えば皮下、皮内、または筋肉内注射による投与のためにデポー組成物として処方し得る。従って、例えば、Apo−脂質複合体またはアポリポタンパク質単独を、適当なポリマーまたは疎水性物質(例えば許容可能な油中のエマルションとして)と、またはリン脂質気泡またはイオン交換樹脂中に処方し得る。
【0125】
あるいは、皮下吸収のために活性成分をゆっくりと放出する、接着性のディスクまたはパッチとして製造された経皮伝達システムを使用し得る。このために、透過増強剤を使用して、活性成分の経皮浸透を促進し得る。本明細書中で記載された荷電複合体を、虚血性心疾患および高コレステロール血症を有する患者で使用するためのニトログリセリンパッチに組み込むことによって、特別の利点を達成し得る。
【0126】
あるいは、カテーテルまたはパーフューザー(perfusor)を用いて、局所的または壁内(血管壁内)に伝達をし得る(例えば米国公開2003/0109442号を参照のこと)。
【0127】
もし望ましいなら、組成物を、活性成分を含む1つまたはそれ以上の単位投与量形式を含み得る、包装または分注装置中で提示し得る。例えば、包装は、ブリスター包装のような、金属またはプラスチック箔を含み得る。その包装または分注装置は、投与の指示を伴い得る。
【0128】
(6.5 治療の方法)
本明細書中で記載された荷電リポタンパク質複合体および組成物を、リポタンパク質複合体が有用であることが示された、実質的に全ての目的のために使用し得る。特定の実施態様において、その複合体および組成物を、脂質代謝異常および/または脂質代謝異常に関連する実質的にあらゆる疾患、状態および/または異常を治療または予防するために使用し得る。本明細書中で使用される場合、「脂質代謝異常」または「脂質代謝異常の」という用語は、以下の状態:冠動脈心疾患;冠動脈疾患;心血管疾患、高血圧、再狭窄、血管または血管周囲疾患;脂質代謝異常障害;異リポタンパク血症;高レベルの低密度リポタンパク質コレステロール;高レベルの超低密度リポタンパク質コレステロール;低レベルの高密度リポタンパク質;高レベルのリポタンパク質Lp(a)コレステロール;高レベルのアポリポタンパク質B;アテローム性動脈硬化症(アテローム性動脈硬化症の治療および予防を含む);高脂血症;高コレステロール血症;家族性高コレステロール血症(FH);家族性複合型高脂血症(FCH);高トリグリセリド血症、低アルファリポタンパク血症、および高コレステロール血症リポタンパク質(hypercholesterolemialipoprotein)のような、リポタンパク質リパーゼ欠損症に関連する、変化したレベルの脂質を含むがこれに限らない、血漿中の脂質の異常に上昇したまたは減少したレベルを指す。
【0129】
脂質代謝異常に関連する疾患は、冠動脈心疾患、冠動脈疾患、急性冠症候群、心血管疾患、高血圧、再狭窄、血管または血管周囲疾患、脂質代謝異常障害;異リポタンパク血症;高レベルの低密度リポタンパク質コレステロール;高レベルの超低密度リポタンパク質コレステロール;低レベルの高密度リポタンパク質;高レベルのリポタンパク質Lp(a)コレステロール;高レベルのアポリポタンパク質B;アテローム性動脈硬化症(アテローム性動脈硬化症の治療および予防を含む);高脂血症;高コレステロール血症;家族性高コレステロール血症(FH);家族性複合型高脂血症(FCH);高トリグリセリド血症、低アルファリポタンパク血症、および高コレステロール血症リポタンパク質(hypercholesterolemialipoprotein)のような、リポタンパク質リパーゼ欠損症を含むがこれに限らない。
【0130】
本明細書中で記載された荷電リポタンパク質複合体および組成物を使用して、現在当該分野において公知である有効投与量より約2から25倍少ない(ApoA−I当量で)範囲のリン脂質の投与量が、疾患を治療または予防するのに、または寛解性効果をもたらすのに有効であると期待される。
【0131】
1つの実施態様において、本方法は、本明細書中で記載された荷電リポタンパク質複合体または組成物を、少なくとも投与後1日間、投与前のベースライン(最初の)レベルより約10mg/dLから300mg/dL高い範囲の、遊離または複合体アポリポタンパク質の血清レベルを達成するために有効な量で被験体に投与することを含む、脂質代謝異常に関連する疾患を治療または予防する方法を含む。
【0132】
別の実施態様において、本方法は、本明細書中で記載された荷電リポタンパク質複合体または組成物を、少なくとも投与後1日間、投与前の最初のHDL−コレステロール画分より少なくとも約10%高いHDL−コレステロール画分の循環血漿濃度を達成するために有効な量で被験体に投与することを含む、脂質代謝異常に関連する疾患を治療または予防する方法を含む。
【0133】
別の実施態様において、本方法は、本明細書中で記載された荷電リポタンパク質複合体または組成物を、投与後5分および1日の間に、30および300mg/dLの間のHDL−コレステロール画分の循環血漿濃度を達成するために有効な量で被験体に投与することを含む、脂質代謝異常に関連する疾患を治療または予防する方法を含む。
【0134】
別の実施態様において、本方法は、本明細書中で記載された荷電リポタンパク質複合体または組成物を、投与後5分および1日の間に、30および300mg/dLの間のコレステロールエステルの循環血漿濃度を達成するために有効な量で被験体に投与することを含む、脂質代謝異常に関連する疾患を治療または予防する方法を含む。
【0135】
さらに別の実施態様において、本方法は、本明細書中で記載された荷電リポタンパク質複合体または組成物を、少なくとも投与後1日間、投与前のベースライン(最初の)レベルより少なくとも約10%高い便コレステロール排泄の増加を達成するために有効な量で被験体に投与することを含む、脂質代謝異常に関連する疾患を治療または予防する(protecting)方法を含む。
【0136】
本明細書中で記載された荷電リポタンパク質複合体または組成物を、単独で、または前述の状態を治療または予防するために使用される他の薬剤との併用療法において使用し得る。そのような治療は、関与する薬剤の同時または連続的な投与を含むがこれに限らない。例えば、高コレステロール血症またはアテローム性動脈硬化症の治療において、荷電リポタンパク質処方を、いずれか1つまたはそれ以上の、現在使用されているコレステロール低下療法、例えば胆汁酸樹脂、ナイアシン、スタチン系薬剤、コレステロール吸収の阻害剤および/またはフィブラート系薬剤と共に投与し得る。そのような併用レジメは、各薬剤がコレステロール合成および輸送の異なる標的に対して作用するので、特に有用な治療効果を生じ得る;すなわち、胆汁酸樹脂はコレステロール再利用、キロミクロンおよびLDL集団に影響を与える;ナイアシンは主にVLDLおよびLDL集団に影響を与える;スタチン系薬剤は、コレステロール合成を阻害し、LDL集団を減少させる(およびおそらくLDL受容体発現を増加させる);一方本明細書中で記載された荷電リポタンパク質複合体は、RCTに影響を与え、HDLを増加させ、そしてコレステロールの流出を促進する。
【0137】
別の実施態様において、本明細書中で記載された荷電リポタンパク質または組成物を、冠動脈心疾患;冠動脈疾患;心血管疾患、高血圧、再狭窄、血管または血管周知疾患、脂質代謝異常障害;異リポタンパク血症;高レベルの低密度リポタンパク質コレステロール;高レベルの超低密度リポタンパク質コレステロール;低レベルの高密度リポタンパク質;高レベルのリポタンパク質Lp(a)コレステロール;高レベルのアポリポタンパク質B;アテローム性動脈硬化症(アテローム性動脈硬化症の治療および予防を含む);高脂血症;高コレステロール血症;家族性高コレステロール血症(FH);家族性複合型高脂血症(FCH);高トリグリセリド血症、低アルファリポタンパク血症、および高コレステロール血症リポタンパク質のような、リポタンパク質リパーゼ欠損症を治療または予防するために、フィブラート系薬剤と組み合わせて使用し得る。典型的な処方および治療レジメを下記で説明する。
【0138】
本明細書中で記載された荷電リポタンパク質複合体または組成物を、循環中での生物学的利用能を保証するあらゆる適当な経路によって投与し得る。SMを含む実施態様の重要な特徴は、単独で投与されるアポリポタンパク質(Apo)またはApoペプチドに関しては、有効であると期待される有効投与量の1−10%より少ない投与量で、およびApo−ダイズPC(またはApo−卵PCまたはApo−POPC)投与のために必要である有効投与量より2−25倍少ない投与量で、荷電リポタンパク質複合体を投与し得ることである。現在利用可能な治療レジメに必要な大量のアポリポタンパク質(2から5日ごとに1回の投与あたり20mg/kgから100mg/kg、平均サイズのヒトあたり1.4から8g)ではなく、2から10日ごとに約40mgから2g/人くらい低い投与量(静脈内注射)のアポリポタンパク質の投与が必要である。
【0139】
本明細書中で記載された荷電リポタンパク質複合体または組成物を、小さいHDL画分、例えばプレ−ベータ、プレ−ガンマおよびプレ−ベータ様HDL画分、アルファHDL画分、HDL3および/またはHDL2画分を増加させる投与量で投与し得る。いくつかの実施態様において、投与量は、例えば磁気共鳴画像法(MRI)または血管内超音波検査(IVUS)のような画像化技術によって測定されるような、アテローム性動脈硬化症のプラークの減少を達成するために有効である。IVUSによってフォローされるパラメーターは、ベースラインからのアテローム体積のパーセントにおける変化、および全アテローム体積の変化を含むがこれに限らない。MRIによってフォローされるパラメーターは、IVUSに関するもの、および脂質の構成およびプラークの石灰化を含むがこれに限らない。
【0140】
プラークの退縮を、それ自身のコントロールとして患者を使用して測定し得る(時間ゼロ対最後の注入の最後、または最後の注入後数週間以内、または治療の開始後3ヶ月、6ヶ月、または1年以内における時間t)。
【0141】
静脈内(IV)、筋肉内(IM)、皮内、皮下(SC)、および腹腔内(IP)注射を含む、非経口投与経路によって、最もよい投与を達成し得る。ある実施態様において、投与は、パーフューザー(perfusor)、インフィルトレーター(infiltrator)またはカテーテルによる。いくつかの実施態様において、荷電リポタンパク質複合体を、注射によって、皮下埋め込みポンプによって、またはデポー調製物によって、非経口投与によって得られるものと同等の循環血漿濃度を達成する量で投与する。その複合体はまた、例えばステントまたは他の装置に吸収させ得る。
【0142】
様々な異なる治療レジメによって投与を達成し得る。例えば、注射の累積の全量が1日の毒性投与量に達しないように、1日の間に、数回の静脈内注射を定期的に投与し得る。あるいは、1回の静脈内注射を、約3から15日ごとに、好ましくは約5から10日ごとに、そして最も好ましくは約10日ごとに投与し得る。さらに別の選択肢では、投与あたり(50−200mg)の間の投与量で約1−5投与から始めて、次いで投与あたり200mgおよび1gの間の反復投与が続く、増加する投与量を投与し得る。患者の必要性に依存して、投与は1時間以上の間の遅い注入による、1時間より短い速い注入による、または単回のボーラス注射により得る。
【0143】
いくつかの実施態様において、一式の注射として投与し、そして次いで6ヶ月から1年間停止し、そして次いで別の一続きを開始し得る。次いで注射の維持シリーズを毎年または3から5年ごとに投与し得る。一連の注射を、1日で(複合体の特定の血漿レベルを維持するための注入)、数日(例えば8日間の期間で4回の注射)、または数週間(例えば4週間の期間で4回の注射)で行い、そして次いで6ヶ月から1年後に再開し得る。
【0144】
他の投与経路を使用し得る。例えば経口粘膜、胃および/または小腸の厳しい環境における活性成分の分解を回避または最低限にするために、適当な処方(例えば腸溶コーティング)を使用するなら、例えば経口投与経路(経口摂取、頬側、および舌下経路を含むがこれに限らない)によって、胃腸管からの吸収を達成し得る。あるいは、膣および直腸投与形式のような、粘膜組織による投与を、胃腸管における分解を回避または最低限にするために利用し得る。他の実施態様において、本発明の処方を、経皮的に(transcutaneously)(例えば経皮的に(transdermally))、または吸入によって投与し得る。好ましい経路は、レシピエントの状態、年齢およびコンプライアンスによって変化し得ることが認識される。
【0145】
本明細書中で記載された荷電リポタンパク質複合体または組成物の実際の投与量は、投与経路によって変化し得る。
【0146】
米国特許第6,004,925、6,037,323、および6,046,166号(Dasseuxらに対して発行された、本明細書中でその全体として参考文献に組み込まれる)において記載された動物モデルシステムで得られたデータは、ApoA−IペプチドはHDL成分に付随し、そしてヒトにおいて約5日間の予測半減期を有することを示す。従って、いくつかの実施態様において、荷電リポタンパク質複合体を、平均サイズのヒトあたり、2から10日ごとに、投与あたり約0.1g−1gの間の荷電リポタンパク質複合体の投与量で、静脈内注射によって投与し得る。
【0147】
様々な荷電リポタンパク質複合体の毒性および治療的有効性を、LD50(集団の50%に対して致死的な投与量)およびED50(集団の50%において治療的に有効な投与量)を決定するための、細胞培養または実験動物における標準的な薬学的手順を用いて決定し得る。毒性および治療的効果の間の投与量比は治療係数であり、そしてそれをLD50/ED50比として表し得る。大きな治療係数を示す荷電リポタンパク質複合体が好ましい。フォローし得るパラメーターの制限しない例は、肝機能トランスアミナーゼ(正常ベースラインレベルの2倍以下)を含む。これは、多すぎるコレステロールが肝臓に運ばれ、そしてそのような量を同化できないことを示す。赤血球からのコレステロールの可動化は、それらを脆弱にする、またはその形に影響を与えるので、赤血球に対する影響もモニターし得る。
【0148】
医療行為の前数日から数週間(例えば予防的治療)、または医療行為の間または後に患者を治療し得る。投与は、血管形成、頚動脈アブレーション、rotobladerまたは臓器移植(例えば心臓、腎臓、肝臓等)のような、他の侵襲的治療に付随し得る、または同時であり得る。
【0149】
ある実施態様において、荷電リポタンパク質複合体を、コレステロール合成がスタチン系薬剤またはコレステロール合成阻害剤によってコントロールされている患者に投与する。他の実施態様において、荷電リポタンパク質複合体を、結合樹脂、例えばコレスチラミンのような半合成樹脂による、または胆汁酸塩およびコレステロールを捕捉するため、胆汁酸排泄を増加させ、そして血中コレステロール濃度を低下させるために繊維、例えば植物繊維による治療を受けている患者に投与する。
【0150】
(6.6 他の使用法)
本明細書中で記載された荷電リポタンパク質複合体および組成物を、例えば診断的目的のために、血清HDLを測定するためのインビトロにおけるアッセイにおいて使用し得る。ApoA−I、ApoA−IIおよびApoペプチドは、血清のHDL画分に付随するので、荷電リポタンパク質複合体を、HDL集団、およびプレ−ベータ1およびプレ−ベータ2HDL集団の「マーカー」として使用し得る。さらに、荷電リポタンパク質複合体を、RCTにおいて有効なHDLの亜集団のマーカーとして使用し得る。このために、荷電リポタンパク質複合体を、患者の血清サンプルに加え得、または混合し得、適当なインキュベーション時間の後、組み込まれた荷電リポタンパク質複合体を検出することによって、HDL成分をアッセイし得る。標識荷電リポタンパク質複合体(例えば放射性標識、蛍光標識、酵素標識、色素等)を用いて、または荷電リポタンパク質複合体に特異的な抗体(または抗体断片)を用いたイムノアッセイによって、これを達成し得る。
【0151】
あるいは、標識荷電リポタンパク質複合体を、循環器系を視覚化するための、またはR
CTをモニターするための、またはHDLがコレステロール流出に活性であるべき脂肪線条、アテローム性動脈硬化症の病変等におけるHDLの蓄積を視覚化するためのイメージング手順(例えばCATスキャン、MRIスキャン)において使用し得る。
【0152】
あるプロApoA−I脂質複合体の調製および特徴付けに伴う例およびデータが、米国特許公開第2004/0067873号において記載され、その開示は本明細書中でその全体として参考文献に組み込まれる。
【0153】
あるプロApoA−I脂質複合体を用いて動物モデルシステムにおいて得られたデータが、米国特許公開第2004/0067873号において記載され、その開示は本明細書中でその全体として参考文献に組み込まれる。
【実施例】
【0154】
(7.実施例)
実施例1:プロApoA−I、スフィンゴミエリン、およびホスファチジルグリセロールの調製
タンパク質プロApoA−Iは、Unite de Biotechnologie、Institut Meurice、 Hte Ecole Lucia De Brouckere、1 Avenue Emile Gryzon、B−1070 Anderlecht、 Belgiumによって、約90mgのタンパク質を含む凍結乾燥した個々の100mLフラスコで供給された。バッチ番号は20060202であった。タンパク質を、使用まで約4℃で保存した。凍結乾燥前、プロApoA−Iの含量は、3.225mg/mLであり、尿素含量は約0.011mg/mLであった。約630mgのプロApoA−Iを25.6mLの酢酸/水5%に溶解することによって、プロApoA−Iの溶液を作成した。溶液の最終的な濃度は25mg/mLであった。
【0155】
卵由来のスフィンゴミエリン(Coatsome(登録商標)NM−10)は、NOF Corporation、1−56、Oohama−Cho、Amagasaki−Shi、660−0095、Japanによって供給された。バッチ番号は0502ES1であった。スフィンゴミエリンを、使用まで約−20℃で保存した。スフィンゴミエリンの純度は、99.1%であった。799.4mgの精製スフィンゴミエリンを、16mLの酢酸/水5%に溶解して、最終的な濃度を50mg/mLにすることによって、スフィンゴミエリンの溶液を作成した。
【0156】
ナトリウム塩としての1,2−ジパルミトイル−SN−グリセロ−3−ホスファチジルグリセロール(DPPG−Na、Coatsome(登録商標)MG−6060LS)は、NOF Corporation、1−56、Oohama−Cho、Amagasaki−Shi、660−0095、Japanによって供給された。バッチ番号は0309651Lであった。DPPG−Naを、使用まで約−20℃で保存した。DPPG−Naの純度は、99.2%であった。49.1mgのDPPG−Naを、1mLの酢酸/水5%に溶解して、最終的な濃度を50mg/mLにすることによって、DPPG−Naの溶液を作成した。
【0157】
実施例2:コントロール無電荷リポタンパク質複合体の調製
プロApoA−I(33wt%)およびスフィンゴミエリン(67wt%)から成るコントロール無電荷リポタンパク質複合体を、下記で記載するように調製した。
【0158】
コントロール無電荷リポタンパク質複合体の処方を、25mg/mLのプロApoA−I5.6mLを、50mg/mLのスフィンゴミエリン約5.6mLと、100mLのガラスフラスコ中で混合することによって調製した。できた混合物を、0.22μmのナイロンフィルターを通してろ過した。混合物を約50℃で加熱し、そして次いで手で攪拌しながら液体窒素中で凍結した。凍結の直後、フラスコを凍結乾燥器に15時間置いた。凍結乾燥後、フラスコを約40℃で4時間減圧下に置いた。できた処方を、使用まで約4℃で保存した。
【0159】
140mMのNaClおよび20mMのNaHCOを含む14mLの溶液を、コントロール無電荷リポタンパク質複合体の凍結乾燥処方を含むガラスフラスコに加えた。できた溶液を、20mLの溶液中の1M NaOHを0.75mL加えることによって塩基性pHに調整した。溶液を手で攪拌し、約50℃で加熱し、そして次いで少なくとも1時間超音波槽に置いた。できた処方中のプロApoA−Iの濃度は、10mg/mLであった。処方をHPLCシステムに注入して、無電荷リポタンパク質複合体の存在を確認した。図1は、本明細書中で記載されたように作成した無電荷リポタンパク質複合体のHPLCクロマトグラムの例を提供する。
【0160】
実施例3:テスト荷電リポタンパク質複合体の調製
プロApoA−I(33wt%)、スフィンゴミエリン(65wt%)、およびホスファチジルグリセロール(2wt%)から成る荷電リポタンパク質複合体を、下記で記載するように調製した。
【0161】
荷電リポタンパク質複合体の処方を、25mg/mLのプロApoA−I5.6mLを、50mg/mLのスフィンゴミエリン約5.6mL、および50mg/mLのDPPG−NA約0.15mLと、100mLのガラスフラスコ中で混合し、そして次いでできた混合物を0.22μmのナイロンフィルターを通してろ過することによって調製した。混合物を約50℃で加熱し、そして手で攪拌しながら液体窒素中で凍結した。凍結の直後、フラスコを凍結乾燥器に15時間置いた。凍結乾燥後、フラスコを約40℃で4時間減圧下に置いた。できた処方を、使用まで約4℃で保存した。
【0162】
14mLの140mMのNaClおよび20mMのNaHCOを、上記で記載した凍結乾燥処方を含むガラスフラスコに加えた。できた溶液を、20mLの溶液中1MのNaOHを0.75mL加えることによって塩基性pHに調整した。溶液を手で攪拌し、約50℃で加熱し、そして次いで少なくとも1時間超音波槽に置いた。できた処方中のプロApoA−Iの濃度は、10mg/mLであった。処方をHPLCシステムに注入して、非荷電リポタンパク質複合体の存在を確認した。図2は、本明細書中で記載されたように作成した荷電リポタンパク質複合体のHPLCクロマトグラムの例を提供する。
【0163】
実施例4:動物モデルシステム
3から4kgの間のNew Zealandオスウサギを、上記で記載した無電荷および荷電複合体によるコレステロールの可動化を試験するために使用した。動物は、CEGAV、Franceによって供給され、そして個々に独特の耳の刺青で同定された。ウサギを、Avogadro(France)動物施設で、個々のケージに収容した。動物の収容場所および世話は、Directive86/609/EECの勧告に従った。Avogadroの動物施設は、French Veterinary Authoritiesから得た協定番号B3118801を有する。Avogadroにおける一般的な実施および現在の標準的な操作手順(SOP)に従って、全ての動物を同様に、健康に注意を払って管理した。
【0164】
動物室の条件は以下のようであった:温度:22±2℃、相対湿度:55±15%、および12時間の光/12時間の闇のサイクル。温度および相対湿度を毎日記録し、そして研究の生データと共に保存した。各ウサギを1日1回観察し、あらゆる異常な発見を観察したように記録し、そしてStudy Directorに報告した。
【0165】
研究の開始前少なくとも7日間、動物を順応させた。動物に、毎日コントロールされたペレットの食餌を自由に与えた。水は、研究を通して自由に摂取可能であった。
【0166】
複合体を投与する前に、動物を一晩絶食させた。複合体の投与直前に動物の体重を測定した。複合体を、1.5mL/kgに対応する、15mg/kgの投与量比率で静脈内投与した。投与した容積は、体重に基づいた。複合体の投与の約6時間後に摂食を再開した。記録した治療の詳細は、投与量の計算、投与した投与量、日付、および投与時間を含んでいた。
【0167】
血液サンプルの採取前に、動物を一晩絶食させた。血液サンプルを、頚静脈または耳の辺縁静脈から採った。EDTAを含む針を装着したシリンジを用いて、血液を頚静脈から採った(サンプリング時間あたり約1mLの血液)。採取後すぐ、血液サンプルを約4℃に保って血液サンプルの変質を避けた。血液試料を遠心した(約5℃で、3500gで10分間)。血漿試料を分離およびアリコートに分け(少なくとも200μLの3つのアリコート(アリコートA、B、C))、そして約−80℃で保存した。残った血液塊は廃棄した。
【0168】
実施例5:荷電リポタンパク質複合体はコレステロールを可動化する
コントロールリポタンパク質複合体(処方IIA)または荷電リポタンパク質複合体(処方IIB)を、上記で記載されたように調製し、そしてグループあたり2匹のウサギに投与した(15mgの複合体/kg体重)。
【0169】
血液サンプル(1ml)を、投与前、投与の5分、15分、30分、1時間、2時間、3時間および6時間後に採った。血漿サンプルを、発表された方法(例えばUsui,S.ら、2002、J.Lipid Res.43:805−14を参照のこと)によって、全コレステロール、遊離コレステロールおよびトリグリセリドに関して分析した。エステル化されたコレステロールの濃度を、全コレステロール含量から遊離コレステロール含量を引くことによって計算した。各動物に関するHDL結果中の遊離コレステロールを図3に図示する。コントロールグループ(グループIIA)およびテストグループ(グループIIB)を構成する2匹の動物の平均値を、図4に図示する。
【0170】
予測されたように、コントロールおよびテストリポタンパク質複合体はどちらもコレステロールを可動化し、テストグループの平均がコントロールグループの平均と比較して増加した可動化を示した。
【0171】
全ての引用された文献は、個々の出版物、特許または特許申請それぞれが、明確におよび個々に、全ての目的のためにその全体として本明細書中で参考文献に組み込まれることが示されたように同じ程度、その全体としておよび全ての目的のために本明細書中で参考文献に組み込まれる。
【0172】
あらゆる出版物の引用は、提出日より前の開示に関するものであり、そして本発明が以前の発明によってそのような出版物に先立つ権利がないことを承認するとは解釈されない。
【0173】
当業者に明らかであるように、本発明の多くの修飾およびバリエーションが、その意図および範囲から離れることなくなされ得る。記載された特定の実施態様は、例のためにのみ提供され、そして本発明は、そのような請求が権利のある同等物の全範囲とともに、添付の請求の用語によってのみ制限される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本願明細書に記載された発明。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−121928(P2012−121928A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−63853(P2012−63853)
【出願日】平成24年3月21日(2012.3.21)
【分割の表示】特願2008−502504(P2008−502504)の分割
【原出願日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【出願人】(507318059)セレニス セラピューティクス ホールディング エスア (3)
【Fターム(参考)】