説明

荷電制御剤及びその製造方法

【課題】堅牢性が高く、熱可塑性樹脂に対する相溶性が向上されており、荷電制御用途として用いた場合に、帯電の立ち上がりが速く、優れた帯電特性を発現させることができ、簡便に製造できる芳香族オキシカルボン酸金属化合物を有効成分として含む荷電制御剤を提供する。
【解決手段】荷電制御剤は、下記化学式(1)
【化1】


(式中、A及びBは、前記Aがアルキル基で前記Bがアルキル鎖を含有してもよいベンジルオキシ基、または前記Aがアルキル鎖を含有してもよいベンジルオキシ基で前記Bがアルキル基、Mは水素原子、アルカリ金属、アンモニウム原子団及びそれらの混合物から選ばれる何れか)で示される少なくとも1種類の芳香族オキシカルボン酸が、アルミニウムで金属錯体化及び/または金属塩化されており、そのX線回折スペクトルがアモルファス状である芳香族オキシカルボン酸金属化合物を有効成分として含有するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、芳香族オキシカルボン酸金属化合物を荷電制御用途に使用する荷電制御剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
置換基を有してもよい、サリチル酸、オキシナフトエ酸、サリチルアルデヒド、芳香族ジオール、フタル酸などの有機酸を配位子とするキレート化合物(金属塩や金属錯塩)は、工業的な重要な材料であり、広い用途に用いられている。このような用途としては、感圧紙、感熱紙、感光感圧紙、通電感熱記録紙、感熱転写紙など記録材料の顕色剤や潤滑油など液状組成物の摩擦調整剤などが挙げられる。
【0003】
摩擦帯電させたトナーにより感光体上の静電潜像を現像し、記録紙上に転写し定着させる電子写真システムは、複写機、プリンター、ファクシミリなどに利用されている。トナーの帯電の立ち上がり速度を速めたり、トナーを十分に帯電させその荷電量を適切に制御しつつ安定化させて帯電特性を高めたり、静電潜像の現像速度を早めつつ鮮明な画像を形成したりするため、予めトナーに荷電制御剤が添加される。このような負帯電性荷電制御剤として、芳香族オキシカルボン酸、グリコール酸、ジカルボン酸、芳香族ジオールの金属塩や金属錯塩などが知られている。
【0004】
これらの荷電制御剤は、画像濃度とカブリとのバランスが取り難い、高温高湿環境下で良好な画像濃度を得にくい、低温低湿環境下と高温高湿環境下での帯電レベルの差が大きい、樹脂への分散性が悪い、保存安定性、定着性及び耐オフセット性に十分でないなどの改善の余地を有している。
【0005】
このような改善の取り組みとして、例えば、特許文献1には、置換基を有するサリチル酸の亜鉛錯化合物を荷電制御剤として含有する静電荷像現像用トナーが記載されている。特許文献2には、サリチル酸と金属とが3:2型であって置換基を有するサリチル酸金属化合物を荷電制御剤として含有する静電荷像現像用トナーが記載されている。特許文献3には、長径/短径が特定されたサリチル酸金属塩を帯電制御剤として含有する静電荷像現像用トナーが記載されている。特許文献4には、特定のヒドロキシカルボン酸アルミニウムを帯電制御剤として含有する静電荷像現像用トナーが記載されている。特許文献5には、特定のヒドロキシカルボン酸カルシウム塩含有組成物を含有する静電荷像現像用トナーが記載されている。
【0006】
近年の複写機やプリンターの解像度向上などの高性能化、電子写真システムでの高速現像のみならず低速現像などの用途の拡大に伴い、トナーの帯電の立ち上がりをより速くし、より優れた帯電特性を発現させ、鮮明で高解像度の画像を形成させることができ、簡便に製造できる荷電制御剤が求められていた。また、構造体表面の電荷に、静電気帯電した粉体塗料を引き付け、焼き付ける静電粉体塗装に使用される粉体塗料にも用いることができる荷電制御剤が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭61−069073号公報
【特許文献2】特開平9−124659号公報
【特許文献3】特開2001−356529号公報
【特許文献4】特開2004−271795号公報
【特許文献5】特開2002−363124号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は前記の課題を解決するためになされたもので、堅牢性が高く、熱可塑性樹脂に対する相溶性が向上されており、荷電制御用途として用いた場合に、帯電の立ち上がりが速く、優れた帯電特性を発現させることができ、簡便に製造できる芳香族オキシカルボン酸金属化合物を有効成分として含む荷電制御剤及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記の目的を達成するためになされた、特許請求の範囲の請求項1に記載された荷電制御剤は、下記化学式(1)
【化1】

(式中、置換基であるA及びBは、前記Aが炭素数1〜8で直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基で前記Bがアルキル鎖を含有してもよいベンジルオキシ基、または前記Aがアルキル鎖を含有してもよいベンジルオキシ基で前記Bが炭素数1〜8で直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基であり、Mは、水素原子、アルカリ金属、アンモニウム原子団及びそれらの混合物から選ばれる何れかである)で示される少なくとも1種類の芳香族オキシカルボン酸が、アルミニウムで、金属錯体化及び/または金属塩化されており、そのX線回折スペクトルにおいて、アモルファス状である芳香族オキシカルボン酸金属化合物を有効成分として含有することを特徴とする。
【0010】
前記の目的を達成するためになされた、特許請求の範囲の請求項2に記載された荷電制御剤は、下記化学式(2)
【化2】

(式中、Rは、炭素数1〜8で直鎖または分岐鎖のアルキル基であり、Mは、水素原子、Li、Na、Kなどのアルカリ金属、アンモニウム原子団及びそれらの混合物から選ばれる何れかである)で示される少なくとも1種類の芳香族オキシカルボン酸が、アルミニウムで、金属錯体化及び/または金属塩化されており、そのX線回折スペクトルにおいて、アモルファス状である芳香族オキシカルボン酸金属化合物を有効成分として含有することを特徴とする。
【0011】
本発明の荷電制御剤は、前記芳香族オキシカルボン酸金属化合物が、前記化学式(1)または(2)で示される芳香族オキシカルボン酸と、アルミニウムを含有する金属化剤との反応によって得られた金属錯体及び/または金属塩であることが好ましい。
【0012】
本発明の荷電制御剤は、塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム、塩基性硫酸アルミニウム、酢酸アルミニウム、塩基性酢酸アルミニウム、硫酸アルミニウムカリウム、硝酸アルミニウム、乳酸アルミニウム、アルミニウムn−プロポキシド、アルミニウムイソプロポキシド及びt−ブトキシアルミニウムから選ばれるアルミニウム化剤であることが好ましい。
【0013】
本発明の荷電制御剤は、前記芳香族オキシカルボン酸金属化合物のX線回折スペクトルにおいて、多重ピーク分離法による結晶化度が、2θ=5°〜40°の範囲(θはブラッグ角)にあって、0〜50%であることが好ましい。更に好ましくは、多重ピーク分離法による結晶化度が、2θ=5°〜40°の範囲(θはブラッグ角)において0〜30%である。
【0014】
本発明の荷電制御剤は、前記化学式(1)または前記化学式(2)で示される芳香族オキシカルボン酸と、前記アルミニウムを含有する金属化剤とのモル比が2:1である前記金属錯体及び/または金属塩であること、前記化学式(1)または前記化学式(2)で示される芳香族オキシカルボン酸と、前記アルミニウムを含有する金属化剤とのモル比が3:2である前記金属錯体及び/または金属塩であること、並びに前記化学式(1)または前記化学式(2)で示される芳香族オキシカルボン酸と、前記アルミニウムを含有する金属化剤とのモル比が3:1である前記金属錯体及び/または金属塩であることから選ばれる何れかであると好ましい。
【0015】
本発明の荷電制御剤の製造方法は、下記化学式(1)
【化3】

(式中、置換基であるA及びBは、前記Aが炭素数1〜8で直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基で前記Bがアルキル鎖を含有してもよいベンジルオキシ基、または前記Aがアルキル鎖を含有してもよいベンジルオキシ基で前記Bが炭素数1〜8で直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基であり、Mは、水素原子、アルカリ金属、アンモニウム原子団及びそれらの混合物から選ばれる何れかである)で示される少なくとも1種類の芳香族オキシカルボン酸と、アルミニウムを含有する金属化剤とを反応させ、金属錯体化及び/または金属塩化し、そのX線回折スペクトルにおいてアモルファス状である芳香族オキシカルボン酸金属化合物とする工程を有することを特徴とする。
【0016】
本発明の荷電制御剤の製造方法は、下記化学式(2)
【化4】

(式中、Rは、炭素数1〜8で直鎖または分岐鎖のアルキル基であり、Mは、水素原子、Li、Na、Kなどのアルカリ金属、アンモニウム原子団及びそれらの混合物から選ばれる何れかである。)で示される少なくとも1種類の芳香族オキシカルボン酸と、アルミニウムを含有する金属化剤とを反応させ、金属錯体化及び/または金属塩化し、そのX線回折スペクトルにおいてアモルファス状である芳香族オキシカルボン酸金属化合物とする工程を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明の荷電制御剤は、優れた帯電付与性、荷電制御性を示す芳香族オキシカルボン酸金属化合物を有効成分として含有するものである。芳香族オキシカルボン酸金属化合物を含有する荷電制御剤は、環境安定性が高く、帯電立ち上がりが速く、負電荷に帯電し均一で高い荷電量のまま長時間安定して維持できる。そのため、低速複写から高速複写に至る幅広い用途に、使用される。また、静電粉体塗装に使用される粉体塗料にも使用することができる。
【0018】
本発明の荷電制御剤の製造方法によれば、簡便に優れた荷電制御機能を有するアモルファス状の芳香族オキシカルボン酸金属化合物を有効成分として含有する荷電制御剤を製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明を適用する実施例1の原料である芳香族オキシカルボン酸の核磁気共鳴スペクトルのチャートを示す図である。
【図2】本発明を適用する実施例1の原料である芳香族オキシカルボン酸の赤外吸収スペクトルのチャートを示す図である。
【図3】本発明を適用する実施例1の原料である芳香族オキシカルボン酸の示差熱−熱重量分析のチャートを示す図である。
【図4】本発明を適用する実施例1の原料である芳香族オキシカルボン酸のX線回折のチャートを示す図である。
【図5】本発明を適用する実施例1の芳香族オキシカルボン酸金属化合物の赤外吸収スペクトルのチャートを示す図である。
【図6】本発明を適用する実施例1の芳香族オキシカルボン酸金属化合物の示差熱−熱重量分析のチャートを示す図である。
【図7】本発明を適用する実施例1の芳香族オキシカルボン酸金属化合物のX線回折のチャートを示す図である。
【図8】本発明を適用する荷電制御剤と適用外の荷電制御剤との帯電性試験Aにおける帯電量を示す図である。
【図9】本発明を適用する荷電制御剤と適用外の荷電制御剤との帯電性試験Bにおける帯電量を示す図である。
【図10】本発明を適用する荷電制御剤と適用外の荷電制御剤との帯電性試験Aにおける帯電量を示す図である。
【図11】本発明を適用する荷電制御剤と適用外の荷電制御剤との帯電性試験Bにおける帯電量を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明するが、本発明の範囲はこれらの形態に限定されるものではない。
【0021】
本発明の荷電制御剤は、前記化学式(1)または(2)で示される芳香族オキシカルボン酸がアルミニウムで金属錯体化及び/または金属塩化されている芳香族オキシカルボン酸金属化合物を有効成分として含有しているものである。その芳香族オキシカルボン酸金属化合物は、X線回折スペクトルにおいて、アモルファス状態を示すものである。
【0022】
X線回折スペクトルがアモルファス状態であることを示すというのは、X線回折パターンの2θ=5°〜40°(θはブラッグ角)の範囲における芳香族オキシカルボン酸金属化合物のX線回折スペクトルにおいて多重ピーク分離法により算出した全体の強度の総計に対する結晶部分の強度の総計の比率が0〜50%であると定義することができる。本発明の荷電制御剤に含有される芳香族オキシカルボン酸金属化合物は、その結晶化度が0〜50%のものである。好ましくは、多重ピーク分離法による結晶化度が、2θ=5°〜40°の範囲(θはブラッグ角)において0〜30%である。
【0023】
アモルファス状の芳香族オキシカルボン酸金属化合物は、樹脂との相溶性が良好で、樹脂へ分子レベルで均一に分散させることができる。このことにより、芳香族オキシカルボン酸金属化合物の持つ帯電能力を最小添加量にて最大限に発揮することが可能である。このため、荷電制御剤として用いられた場合、より格段に高く、帯電能力を従来の荷電制御剤と比較して、大きく発揮することが可能である。また、帯電が安定し、堅牢性が向上する。
【0024】
この芳香族オキシカルボン酸金属化合物は、前記化学式(1)または(2)で示される芳香族オキシカルボン酸が、アルミニウムを含有する金属化剤により金属錯体化や金属塩化された金属錯体や金属塩である。芳香族オキシカルボン酸が金属化剤により金属錯体化や金属塩化されることにより、下記化学式(3)〜(6)で示される構造を取りうると推定される。
【0025】
【化5】

式(3)中、置換基Aが炭素数1〜8で直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基である場合、置換基Bはベンジルオキシ基であり、一方、置換基Aがベンジルオキシ基である場合、置換基Bは炭素数1〜8で直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基である。aは0〜6の数、bは0〜6の数、qは1〜4の数、gは0〜3の数、kは0〜3の数を示し、(X)n+はカチオンを示す。但し、a及びbが共に0である場合を除く。また、破線は、配位結合または非結合を示している。
【0026】
炭素数1〜8で直鎖または分岐鎖のアルキル基としては、具体的に、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、iso−ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基などが挙げられる。
【0027】
ベンジルオキシ基は、未置換であってもよく、その一部にアルキル鎖を含有していてもよい。アルキル鎖は、置換基として含有されるものであって、炭素数1〜8で直鎖または分岐鎖のアルキル基が挙げられる。ベンジルオキシ基として好ましくは、未置換のベンジルオキシ基、または炭素数1〜3で直鎖または分岐鎖のアルキル基で置換されているベンジルオキシ基である。
【0028】
(X)n+のカチオンとしては、具体的に、水素原子、Li、K、Naなどのアルカリ金属、若しくはCa、Ba、Mgなどのアルカリ土類金属からのカチオン、NHや炭素数1〜12のアルキル基を有するモノ−,ジ−,トリ−若しくはテトラアルキルアンモニウム、(Al−(Z)n+のような錯イオンが挙げられる。ここで、Zは水酸化物イオン、硫酸イオン、炭酸イオン、炭酸水素イオン、酢酸イオン、乳酸イオン、及びハロゲンイオンなどから選ばれるアニオンであって、nは1または2の数である。
【0029】
【化6】

式(4)中、置換基Aが炭素数1〜8で直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基である場合、置換基Bはベンジルオキシ基であり、一方、置換基Aがベンジルオキシ基である場合、置換基Bは炭素数1〜8で直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基である。vは0または1の数、wは0〜2の数、hは1または2の数、kは0〜3の数、pは1/2、1または2から選ばれる何れかの数、mは1または2の数を示し、(Y)m−はアニオンを示す。また、破線は、配位結合または非結合を示している。
【0030】
炭素数1〜8で直鎖または分岐鎖のアルキル基及びベンジルオキシ基は、それぞれ前記化学式(3)と同じである。
【0031】
(Y)m−のアニオンとしては、具体的に、水酸化物イオン、硫酸イオン、炭酸イオン、炭酸水素イオン、酢酸イオン、乳酸イオン、ハロゲンイオンなどのアニオンが挙げられる。
【0032】
【化7】

式(5)中、置換基Rは炭素数1〜8で直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基であり、置換基Eはアルキル鎖を含有してもよいベンジルオキシ基である。aは0〜6の数、bは0〜6の数、qは1〜4の整数、gは0〜3の数、kは0〜3の数を示し、(X)n+はカチオンを示す。但し、a及びbが共に0である場合を除く。また、破線は、配位結合または非結合を示している。
【0033】
置換基Rの炭素数1〜8で直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、iso−ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基などが挙げられる。
【0034】
置換基Eのベンジルオキシ基は、未置換であってもよく、その一部にアルキル鎖を含有していてもよい。アルキル鎖は、置換基として含有されるものであって、炭素数1〜8で直鎖または分岐鎖のアルキル基が挙げられる。ベンジルオキシ基として好ましくは、未置換のベンジルオキシ基である。
【0035】
(X)n+のカチオンとしては、具体的に、水素原子、Li、K、Na等のアルカリ金属、若しくはCa、Ba、Mg等のアルカリ土類金属からのカチオン、NHや炭素数1〜12のアルキル基を有するモノ−,ジ−,トリ−若しくはテトラアルキルアンモニウム、(Al−(Z)n+のような錯イオンが挙げられる。ここで、Zは水酸化物イオン、硫酸イオン、炭酸イオン、炭酸水素イオン、酢酸イオン、乳酸イオン、及びハロゲンイオン等から選ばれるアニオンであって、nは1または2の数である。
【0036】
【化8】

式(6)中、置換基Rは炭素数1〜8で直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基であり、置換基Eはアルキル鎖を含有してもよいベンジルオキシ基である。vは0または1の数、wは0〜2の数、hはまたは2の数、kは0〜3の数、pは1/2、1または2から選ばれる何れかの数、mは1または2の数を示し、(Y)m−はアニオンを示す。
また、破線は、配位結合または非結合を示している。
【0037】
炭素数1〜8で直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基は、それぞれ前記化学式(5)と同じものが挙げられる。同様に、アルキル鎖を含有してもよいベンジルオキシ基も前記化学式(5)と同じものが挙げられる。
【0038】
(Y)m−のアニオンとしては、具体的に、水酸化物イオン、硫酸イオン、炭酸イオン、炭酸水素イオン、酢酸イオン、乳酸イオン、ハロゲンイオン等のアニオンが挙げられる。
【0039】
前記化学式(1)で示される芳香族オキシカルボン酸が金属塩化及び/または金属塩化された場合を代表して、芳香族オキシカルボン酸金属化合物として推定できる具体的な構造式を下記化学式(7)〜(17)に示す。
【0040】
【化9】

式(7)中、A及びBは、前記と同定義であり、kは1または1/2であり、nは1または2であり、(X)n+は水素原子、アルカリ金属、若しくはアルカリ土類金属からのカチオン、またはアンモニウムイオンを示す。
【0041】
【化10】

式(8)中、A及びBは前記と同定義である。
【0042】
【化11】

式(9)中、A及びBは前記と同定義である。
【0043】
【化12】

式(10)中、A及びBは前記と同定義である。
【0044】
【化13】

式(11)中、A及びBは前記と同定義である。
【0045】
【化14】

式(12)中、A及びBは前記と同定義であり、kは3または3/2であり、nは1または2であり、(X)n+は、水素原子、アルカリ金属、若しくはアルカリ土類金属からのカチオン、またはアンモニウムイオンを示す。
【0046】
【化15】

式(13)中、A及びBは前記と同定義であり、kは1または1/2であり、nは1または2であり、(X)n+は(Al−(Z)n+である。ここで、Zは水酸化物イオン、硫酸イオン、炭酸イオン、炭酸水素イオン、酢酸イオン、乳酸イオン、またはハロゲンイオンなどのアニオンを示し、rは1または2の数を示す。
【0047】
【化16】

式(14)中、A及びBは前記と同定義であり、pは1または1/2であり、mは1または2であり、(Y)m−は、水酸化物イオン、硫酸イオン、炭酸イオン、炭酸水素イオン、酢酸イオン、乳酸イオン、ハロゲンイオンなどのアニオンを示す。
【0048】
【化17】

式(15)中、A及びBは前記と同定義であり、pは1または1/2であり、mは1または2であり、(Y)m−は、水酸化物イオン、硫酸イオン、炭酸イオン、炭酸水素イオン、酢酸イオン、乳酸イオン、ハロゲンイオンなどのアニオンを示す。
【0049】
【化18】

式(16)中、A及びBは前記と同定義であり、pは2または1であり、mは1または2であり、(Y)m−は、水酸化物イオン、硫酸イオン、炭酸イオン、炭酸水素イオン、酢酸イオン、乳酸イオン、ハロゲンイオンなどのアニオンを示す。
【0050】
【化19】

式(17)中、A及びBは前記と同定義である。
【0051】
この芳香族オキシカルボン酸金属化合物は、溶媒中で、下記化学式(1)で示される芳香族オキシカルボン酸と、アルミニウムである金属を含有する金属化剤とを反応させることで製造することができる。その反応式を下記化学式(I)に示す。
【0052】
【化20】

式(I)中、芳香族オキシカルボン酸及びその金属化合物において、置換基Aが炭素数1〜8で直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基である場合、置換基Bがアルキル鎖を含有してもよいベンジルオキシ基であり、一方、置換基Aがアルキル鎖を含有してもよいベンジルオキシ基である場合、置換基Bが炭素数1〜8で直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基である。また、芳香族オキシカルボン酸のMは、水素原子、Li、Na、Kなどのアルカリ金属、NHや炭素数1〜12のアルキル基を有するモノ−,ジ−,トリ−若しくはテトラアルキルアンモニウムイオンで例示されるアンモニウム原子団及びそれらの混合物から選ばれる何れかである。ここで、芳香族オキシカルボン酸金属化合物において、a、b、q、g、k、(X)n+、v、w、h、k、p、m、(Y)m−は、それぞれ、前記と同定義である。また、破線は、配位結合または非結合を示している。
【0053】
同様に、前記化学式(5)及び(6)で示される構造の芳香族オキシカルボン酸金属化合物の場合も、溶媒中で、芳香族オキシカルボン酸と、アルミニウムである金属を含有する金属化剤とを反応させることで製造することができる。その反応式を下記化学式(II)に示す。
【0054】
【化21】

式(II)中、芳香族オキシカルボン酸及びその金属化合物において、置換基Rが炭素数1〜8で直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基であり、置換基Eがアルキル鎖を含有してもよいベンジルオキシ基であり、芳香族オキシカルボン酸のMは、水素原子、Li、Na、Kなどのアルカリ金属、NHや炭素数1〜12のアルキル基を有するモノ−,ジ−,トリ−若しくはテトラアルキルアンモニウムイオンで例示されるアンモニウム原子団及びそれらの混合物から選ばれる何れかである。ここで、芳香族オキシカルボン酸金属化合物において、a、b、q、g、k、(X)n+、v、w、h、k、p、m、(Y)m−は、それぞれ、前記と同定義である。また、破線は、配位結合または非結合を示している。式(II)に示す芳香族オキシカルボン酸金属化合物も、上記に示した推定できる具体的な構造式である化学式(7)〜(17)と同等に、式(2)で示す芳香族オキシカルボン酸とAlとの配位子と金属と比で構成される構造を取り得る。
【0055】
この金属化反応において、芳香族オキシカルボン酸の金属化合物を形成する金属(カチオン表記)としては、Al3+である。このように、金属化反応によって芳香族オキシカルボン酸金属化合物を形成させるアルミニウムを含有する金属化剤として、具体的に、塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム、塩基性硫酸アルミニウム、酢酸アルミニウム、塩基性酢酸アルミニウム、硫酸アルミニウムカリウム、硝酸アルミニウム、乳酸アルミニウム、アルミニウムn−プロポキシド、アルミニウムイソプロポキシド、t−ブトキシアルミニウムなどのアルミニウム化剤などが挙げられる。ここで、硫酸アルミニウムを正塩とし、塩基性硫酸アルミニウムを塩基性塩とする。同様に、酢酸アルミニウムを正塩とし、塩基性酢酸アルミニウムを塩基性塩とする。この金属化剤は、配位子となる前記芳香族オキシカルボン酸に対して、1/5〜5原子当量、好ましくは1/3〜3原子当量用いられる。
【0056】
この金属化反応に用いる溶媒としては、芳香族オキシカルボン酸及び金属化剤を溶解させる溶媒であれば、水を含め公知の有機溶媒を使用することができる。安い製造コストで芳香族オキシカルボン酸金属化合物を製造する場合は、溶媒として水を用いることが好ましい。また、容易に芳香族オキシカルボン酸金属化合物を合成する場合は、芳香族オキシカルボン酸に対する溶解性が高い有機溶媒を用いることができる。有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、tert−ブタノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル(モノグライム)、エチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル(ジグライム)、トリエチレングリコールジメチルエーテル(トリグライム)、テトラエチレングリコールジメチルエーテル(テトラグライム)、エチレングリコール、プロピレングリコールなどのアルコール系、エーテル系、またはグリコール系有機溶媒;テトラヒドロフラン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルスホキシドなどの非プロトン性極性溶媒などのような、水に可溶な有機溶媒が挙げられる。これら溶媒は、単独で用いてもよく、複数種を混合して用いてよい。また、水と前記の親水性有機溶剤との混合で用いてもよい。
【0057】
この有機溶媒及び水の使用量は、特に限定されるものではないが、前記配位子として用いる前記芳香族オキシカルボン酸に対して、重量比で2〜10倍量である。
【0058】
有機溶媒、水、または水と有機溶媒との混合溶媒中、金属化反応で得られた反応生成物は、反応生成物が溶媒に溶解しているときは、適当量の水や反応生成物に対して溶解性の低い有機溶媒などに分散させて反応生成物を析出させ、または、減圧下、溶媒を適当量留去させて、反応生成物を析出させて、析出物を濾取して水洗し、乾燥させることにより取り出すことができる。反応生成物が反応液中で析出しているときは、直接析出物を濾取して洗浄し、乾燥させて取り出すことができる。反応生成物中に不純物を多く含むとその荷電制御機能が低下することから、反応生成物を再結晶や再沈殿精製して使用することができる。
【0059】
この金属化反応における、芳香族オキシカルボン酸と金属化剤との組合せについて表1に示す。
【0060】
【表1】

【0061】
一般的に有機金属化合物は、金属と配因子の種類により配位の価数、配位数が様々であり、金属錯体の中心金属は、2〜12程度までの多様な配位数をとることができる。中心金属がAlであるとき、塩化アルミニウムやトリアルキルアルミニウムの場合、4配位数をとり、トリス(8−キノリノラト)アルミニウムの場合、6配位数をとる。
【0062】
この金属化合物の配位子となりうる芳香族オキシカルボン酸は、公知の方法を用い、例えば、実験化学講座第4版(日本化学会編、丸善株式会社発行)第187頁記載のWilliamson反応にて合成できる。その一例としては、下記反応式(III)及び(IV)に示すように、溶媒中で、置換基を有する、または置換基を有さないハロゲン化ベンジルと、特定位置のアルキル基を有するジヒドロキシサリチル酸とを、反応させることよって芳香族オキシカルボン酸を合成するものである。
【0063】
また、置換基を有するハロゲン化ベンジルと、特定位置のアルキル基を有するヒドロキシサリチル酸とは、各成分を、1種類選択して反応させたり、または、2種類以上組合せて、混合して反応させたりすることができる。その具体的反応例を下記化学式(III)及び(IV)に示す。
【0064】
【化22】

式(III)中、Xはハロゲン原子であり、R及びRはそれぞれ炭素数1〜8で直鎖または分岐鎖のアルキル基である。
【0065】
【化23】

式(IV)中、Xはハロゲン原子であり、Rは炭素数1〜8で直鎖または分岐鎖のアルキル基である。
【0066】
特定位置のアルキル基を有するヒドロキシサリチル酸は、具体的に、5−メチル−2,3−ジヒドロキシ安息香酸、5−エチル−2,3−ジヒドロキシ安息香酸、5−イソプロピル−2,3−ジヒドロキシ安息香酸、5−n−ブチル−2,3−ジヒドロキシ安息香酸、5−tert−ブチル−2,3−ジヒドロキシ安息香酸、5−sec−ブチル−2,3−ジヒドロキシ安息香酸、5−イソヘプチル−2,3−ジヒドロキシ安息香酸、5−イソヘキシル−2,3−ジヒドロキシ安息香酸、5−イソオクチル−2,3−ジヒドロキシ安息香酸、
3−メチル−2,5−ジヒドロキシ安息香酸、3−エチル−2,5−ジヒドロキシ安息香酸、3−イソプロピル−2,5−ジヒドロキシ安息香酸、3−tert−ブチル−2,5−ジヒドロキシ安息香酸、3−sec−ブチル−2,5−ジヒドロキシ安息香酸、3−イソヘキシル−2,5−ジヒドロキシ安息香酸、3−イソヘプチル−2,5−ジヒドロキシ安息香酸、3−イソオクチル−2,5−ジヒドロキシ安息香酸、3−カルボキシ−2,5−ジヒドロキシ安息香酸、
5−メチル−2,4−ジヒドロキシ安息香酸、5−エチル−2,4−ジヒドロキシ安息香酸、5−イソプロピル−2,4−ジヒドロキシ安息香酸、5−n−ブチル−2,4−ジヒドロキシ安息香酸、5−tert−ブチル−2,4−ジヒドロキシ安息香酸、5−sec−ブチル−2,4−ジヒドロキシ安息香酸、5−イソヘプチル−2,4−ジヒドロキシ安息香酸、5−イソヘキシル−2,4−ジヒドロキシ安息香酸、5−イソオクチル−2,4−ジヒドロキシ安息香酸などが挙げられる。
【0067】
反応溶媒としては、具体的に、メタノール、エタノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル(モノグライム)、ジエチレングリコールジメチルエーテル(ジグライム)、エチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル(トリグライム)、テトラエチレングリコールジメチルエーテル(テトラグライム)、エチレングリコール、プロピレングリコールなど、アルコール系、エーテル系、またはグリコール系有機溶媒;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルスホキシドなどの非プロトン性極性溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピオン酸エチル、セロソルブアセテートなどのエステル類;ヘキサン、オクタン、石油エーテル、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの炭化水素類;トリクロロエチレン、ジクロロメタン、クロロホルムなどのハロゲン化炭化水素類などの有機溶媒を挙げることができる。
【0068】
また、前記化学式(1)で示される芳香族オキシカルボン酸の合成反応では、反応の促進とエーテル結合形成の際に複成するハロゲン化水素を捕捉するために塩基を添加することが好ましい。この合成で用いることのできる塩基としては、溶媒や基質と反応し、反応系を複雑化させないものであれば特に限定されず、例えば、水素化リチウム、水素化ナトリウム、水素化カリウムなどの水素化アルカリ金属;炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなどのアルカリ金属の炭酸塩を挙げることができる。
【0069】
この様にして得られる前記化学式(1)で示される芳香族オキシカルボン酸のより具体的な例を下記化合物(1−a)及び(1−b)に示す。なお、本発明の範囲はこれらに限定されるものではない。
【0070】
【化24】

式(1−a)中、Rは、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、iso−ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基などの炭素数1〜8で直鎖または分岐鎖のアルキル基であり、Mは、水素原子、Li、Na、Kなどのアルカリ金属、アンモニウム原子団及びそれらの混合物から選ばれる何れかである。
【0071】
前記化学式(1−a)で示される芳香族オキシカルボン酸の置換基RとMとの具体例を表2に示す。
【0072】
【表2】

【0073】
【化25】

式(1−b)中、Rは、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、iso−ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基などの炭素数1〜8で直鎖または分岐鎖のアルキル基であり、Mは、水素原子、Li、Na、Kなどのアルカリ金属、アンモニウム原子団及びそれらの混合物から選ばれる何れかである。
【0074】
前記化学式(1−b)で示される芳香族オキシカルボン酸の置換基RとMとの具体例を表3に示す。
【0075】
【表3】

【0076】
同様に、前記化学式(2)で示される芳香族オキシカルボン酸のより具体的な例を下記化合物(1−c)に示す。
【0077】
【化26】

式(1−c)中、Rは、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、iso−ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基などの炭素数1〜8で直鎖または分岐鎖のアルキル基であり、Mは、水素原子、Li、Na、Kなどのアルカリ金属、アンモニウム原子団及びそれらの混合物から選ばれる何れかである。
【0078】
前記化学式(1−c)で示される芳香族オキシカルボン酸の置換基RとMとの具体例を表4に示す。
【0079】
【表4】

【0080】
本発明の荷電制御剤は、前記芳香族オキシカルボン酸金属化合物が、結晶性化合物で有る場合、結晶性の芳香族オキシカルボン酸金属化合物を有機溶媒中で湿式ミリング、または、有機溶媒に溶解させた後、水に再分散させてアモルファスとする工程を有してもよい。
結晶性の芳香族オキシカルボン酸金属化合物を湿式ミリングまたは溶解後の再分散によりアモルファス芳香族オキシカルボン酸金属化合物に変換するための有機金属溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、tert−ブタノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル(モノグライム)、エチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル(ジグライム)、トリエチレングリコールジメチルエーテル(トリグライム)、テトラエチレングリコールジメチルエーテル(テトラグライム)、エチレングリコール、プロピレングリコールなどのアルコール系、エーテル系、またはグリコール系有機溶媒;テトラヒドロフラン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルスホキシドなどの非プロトン性極性溶媒などのような、水に可溶な有機溶媒が挙げられる。これら溶媒は、単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。水と前記の親水性有機溶剤との混合で用いてもよい。
【0081】
前記のような溶剤を用いる湿式ミリング(湿式分散)においては、顔料分散等に使用する各種の分散機(例えば、ボールミル、コロイダルミン、ペイントシェーカー、サンドミル、ビーズミル(商品名)、スーパーミル(商品名)、アジテータミル(商品名)、ダイノーミル(商品名)を用いることができる。湿式ミリングの際の摩擦媒体としては、例えば、ガラスビーズ、ジルコニアビーズ、磁性ビーズ、或いは、タングステンカーバイト製若しくはステンレススチール製ビーズ等を使用することができる。
【0082】
前記芳香族オキシカルボン酸は、同一分子内にフェニル骨格構造、及びオルト位関係のカルボキシル基と水酸基とを有するフェニル骨格即ちサリチル酸構造を共に有するものである。この芳香族オキシカルボン酸は、フェニル骨格同士が、−CH−O−で結合されている構造である。そのため、その芳香族オキシカルボン酸がアルミニウム金属により金属錯体化や金属塩化された金属化合物は、カルボキシル基及び水酸基を有するフェニル骨格による金属錯体化及び/または金属塩化の機能、また、カルボキシル基及び水酸基を有するフェニル骨格と−CH−O−との組合せにより発現される帯電付与機能を有しており、荷電制御用途適性を示す。
【0083】
本発明の荷電制御剤は、この芳香族オキシカルボン酸金属化合物を有効成分として含有するものであり、芳香族オキシカルボン酸金属化合物を1種単独で用いてもよく、2種以上を合わせて用いてもよい。
【0084】
荷電制御剤に含有される芳香族オキシカルボン酸金属化合物は、X線回折スペクトルにおいて、アモルファス状であることを示すものである。X線回折スペクトルがアモルファス状であることを示すというのは、X線回折パターンの2θ=5°〜40°(θはブラッグ角)の範囲における芳香族オキシカルボン酸金属化合物のX線回折スペクトルにおいて、多重ピーク分離法により、その結晶化度が0〜50%のものであると好ましい。更に好ましくは、0〜30%である。
【0085】
芳香族オキシカルボン酸金属化合物は、アモルファス状であることにより、樹脂との相溶性が良好で、樹脂へ分子レベルで均一に分散させることができる。荷電制御剤の機能は、用いる樹脂への分散性が良好であるほど、例えば用いる樹脂に対して相溶性が高ければ高いほど、より良く樹脂へ分散させるほど、その機能を最大限に発揮させることになる。このため、本発明の荷電制御剤は、従来の荷電制御剤と比較して、より格段に向上し、帯電制御性が高く、一定に発揮することが可能であり、帯電が安定し、堅牢性が向上する。
【0086】
芳香族オキシカルボン酸金属化合物から調製した荷電制御剤は、静電荷像現像用トナーや粉体塗料などに含有させるものである。用いられる樹脂100重量部に対して、0.1〜10重量部配合されたものであることが望ましい。更に荷電制御剤のより好ましい配合量は、用いられる樹脂100重量部に対して0.5〜7重量部である。
【0087】
トナー用樹脂の例としては、次のような公知のトナー用樹脂(結着樹脂)を挙げることができる。すなわち、スチレン樹脂、スチレン−アクリル樹脂、スチレン−ブタジエン樹脂、スチレン−マレイン酸樹脂、スチレン−ビニルメチルエーテル樹脂、スチレン−メタアクリル酸エステル共重合体、ポリエステル樹脂、ポリプロピレン樹脂などの熱可塑性樹脂である。これらの樹脂は、単独で用いてもよく、複数種を混合して用いてもよい。なお、本発明の荷電制御剤は、静電粉体塗料に含有させて樹脂粉体の電荷の制御(増強)のために用いることもできる。その場合の塗料用樹脂としては、例えば、アクリル系、ポリオレフィン系、ポリエステル系、またはポリアミド系などの熱可塑性樹脂、及びフェノール系、エポキシ系またはポリエステル系などの熱硬化性樹脂を挙げることができる。これらは、それぞれ単独で用いることもでき、また、複数種を混合して用いることもできる。
【0088】
トナーに用い得る着色剤として公知の種々の染料や顔料を、それぞれ単独でまたは2種以上配合して使用することができる。用い得る着色剤の具体例は次のとおりである。すなわち、キノフタロンイエロー、イソインドリノンイエロー、キノリンイエロー、ペリノンオレンジ、ペリノンレッド、ペリレンマルーン、ローダミン6Gレーキ、キナクリドンレッド、アンスアンスロンレッド、ローズベンガル、銅フタロシアニンブルー、銅フタロシアニングリーン、ジケトピロロピロール系顔料などの有機顔料;カーボンブラック、チタンホワイト、チタンイエロー、群青、コバルトブルー、べんがら、アルミニウム粉、ブロンズなどの無機顔料及び金属粉;アゾ染料、キノフタロン系染料、アントラキノン系染料、フタロシアニン系染料、インドフェノール系染料、インドアニリン系染料などの各種の油溶性染料や分散染料の他、ロジン、ロジン変性フェノール、ロジン変性マレイン酸などの樹脂により変性されたトリアリールメタン系染料及びキサンテン系染料などを例示することができる。
【0089】
トナーは、例えば次のように製造され、前記のようなトナー用樹脂、着色剤、及び本発明の荷電制御剤、並びに必要に応じて磁性材料(例えば、鉄、コバルト、フェライトなどの強磁性材料製の微粉体)、流動性改質剤(例えば、シリカ、酸化アルミニウム、酸化チタン)、オフセット防止剤(例えば、ワックス、低分子量のオレフィンワックス)などをボールミルその他の混合機により十分混合した後、その混合物を加熱ロール、ニーダー、エクストルーダーなどの熱混練機を用いて溶融混練し、その混練物を冷却固化させた後、その固化物を粉砕及び分級することにより、平均粒径5〜20μmのトナーを得ることができる。
【0090】
本発明の荷電制御剤は、荷電制御または増強の目的で増強剤として、樹脂を含んでなる静電塗装用粉体塗料を提供することができる。この増強剤を1種単独で含むものであってもよく、複数種を含むものであってもよい。増強剤の好ましい配合量は、樹脂100重量部に対し、0.1〜10重量部、そのより好ましい配合量は、樹脂100重量部に対し、0.5〜5重量部である。その他、この静電塗装用粉体塗料に含有される樹脂及び着色剤としては、前記トナーで記載したものを例示することができる。
【0091】
この静電塗装用粉体塗料は、耐環境安定性及び耐久性に優れ、この粉体塗料によれば、塗着効率がほぼ100%に近く、しかも塗膜性能が向上し、塗膜欠陥のない厚膜を形成することができる。増強剤が無色または淡色であるため、塗膜の色調障害が生じ難い。この静電塗装用粉体塗料による塗装は、コロナ印荷方式、摩擦帯電方式、及びハイブリッド方式のような一般の静電粉体塗装法を用いて塗装することができる。
【0092】
この静電塗装用粉体塗料は、例えば次のように製造することができる。すなわち、前記の増強剤及び樹脂、並びにその用途・目的に応じ、着色剤、流動性改質剤、充填剤、硬化剤及び可塑剤などを添加し、ボールミルその他の混合機で均一に混合する。その混合物を、加熱ロール、ニーダー、エクストルーダーなどの熱混練機を用いて溶融混練し、冷却固化後、粉砕及び分級することにより、粒度範囲10〜250μmなどの所要粒径の静電塗装用粉体塗料を得ることができる。
【実施例】
【0093】
以下、本発明を適用する荷電制御剤を製造した実施例を詳細に説明する。
【0094】
本発明の荷電制御剤に含有される芳香族オキシカルボン酸金属化合物の合成例を実施例1〜6に示す。
【0095】
(実施例1)
A−1 芳香族オキシカルボン酸の合成
2,5−ジヒドロキシ安息香酸100gと80%硫酸1441gとを50℃に加熱混合し、この分散液にtert−ブタノール144gを加えて50℃で30分間撹拌した。その後、分散液にtert−ブタノール144gを加え30分間撹拌する操作を3回行った。反応液を室温まで冷却し、氷水1kgに徐々に注ぎ、析出物を濾過、水洗し、更にヘキサン洗浄した。得られた析出物をメタノール200mLに溶解させ、水3.6Lに再沈殿させた。濾過後、80℃にて24時間乾燥させtert−ブチル化された芳香族オキシカルボン酸中間体74.9gを得た。
【0096】
3−tert−ブチル−2,5−ジヒドロキシ安息香酸50.0gをメタノール220mLに溶解させ、炭酸カリウム61.1gを加えて65℃に加熱した。この反応液にベンジルブロミド39.5gを滴下し、65℃にて8時間反応させた。得られた反応液を冷却後、濾過し、濾液中のメタノールを減圧留去して析出物を得た。
【0097】
得られた析出物をpH=2の水3Lに分散させ、酢酸エチルを加えて酢酸エチル相を抽出した。その後、水洗し、硫酸マグネシウムで乾燥させ、減圧下、酢酸エチルを留去して析出物を得た。得られた析出物をヘキサン洗浄後、トルエンと酢酸エチルにて再結晶し、下記化学式(A1)に示す芳香族オキシカルボン酸を31.0g得た。
【0098】
【化27】

【0099】
得られた芳香族オキシカルボン酸(A1)の純度を、高速液体クロマトグラフィー(HPLC 株式会社島津製作所製 検出器:SPD−M20A、カラムオーブン:CTO−20A、ポンプ:LC−20AT、デガッサー:DGU−20A)により、以下の測定条件で測定を行い、純度=97.6%であることを確認した。
HPLC測定条件:サンプル3mgをTHF(テトラヒドロフラン)10mLに溶解させ、30分間超音波照射処理し、ポア径が0.5μmの耐溶剤性メンブランフィルターで濾過してサンプル溶液とし、以下の条件で測定した。
カラム:L−Column ODS (4.6×250mm)、カラムオーブン温度:40℃、流速:1.0mL/分、試料注入量:3μL、検出波長:254nm、
溶離液A:THF:0.05M−CHCOONH水溶液=4:6
溶離液B:THF:0.05M−CHCOONH水溶液=6:4
グラジュエント条件 溶離液A:溶離液B=100:0→(20分)→0:100
【0100】
得られた芳香族オキシカルボン酸(A1)について、H−核磁気共鳴装置(NMR 日本電子株式会社製 FT−NMR JNM−AL300)を用い、共鳴周波数:300MHz 測定核種:1H、使用溶媒:重DMSO、測定温度:室温の条件で測定した。H−NMRスペクトルデータは、下記の通りであり、前記化学式(A1)で示す構造を支持する。H−NMRの測定結果を図1に示す。
δ(ppm)=1.36(9H、s、−C(CH)、5.04(2H、s、−OCH−)、7.11(1H、d、Ar−H)、7.26(1H、d、Ar−H)、7.30−7.46(5H、m、Ar−H)
【0101】
得られた芳香族オキシカルボン酸(A1)について、フーリエ変換赤外分光光度計(FT−IR 日本電子株式会社製 JIR−SPX60S)を使用し、KBr法にて測定したところ、
ν(cm−1)=3003、2954、2900、2862、2629、1643、1608、1481、1446、1431、1394、1375、1336、1304、1284、1227、1201、1115、1045、1028、1018、962、895、854、843、806、793、748、727、696、503を観測した。FT−IRの測定結果を図2に示す。
【0102】
得られた芳香族オキシカルボン酸(A1)について、示差熱熱重量同時測定装置(TG/DTA エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社製 TG/DTA6200 EXSTAR6000)を用い、昇温条件:30−550℃ 昇温速度:10℃/分で測定した。熱重量分析−示差熱分析(TG−DTA)の測定結果を図3に示す。測定の結果、融点190℃、重量減少温度:231℃、468℃を観測した。
【0103】
得られた芳香族オキシカルボン酸(A1)について、元素分析測定器(CHNS/O分析 パーキンエルマー社製 2400II全自動元素分析装置)にて、炭素(C)、水素(H)、窒素(N)の重量比率を測定した。以下に元素分析の理論値及び実測値を示す。
実測値 C:72.71 H:6.74 N:0.00
理論値 C:71.98 H:6.71 N:0.00
【0104】
得られた芳香族オキシカルボン酸(A1)について、X線回折装置(株式会社リガク製 試料水平型強力X線回折装置 RINT−TTRIII)にて以下の条件にて測定した。測定試料サンプルの作製:試料をX線回折装置専用ガラス台にのせ、別のガラス板にて平らに試料を延ばして試料を作製した。
測定範囲:2θ=5°〜40°
結晶化度の求め方:得られた芳香族オキシカルボン酸について、前記の条件でX線回折を測定後、得られたX線回折スペクトルをスムージング処理した。更に得られたデータを、Materials Data社製の解析ソフト「JADE XRD Pattern Processing Identification & Quantification ver.7.5.2」を用い、以下の条件にて解析し結晶化度を求めた。プロファイリングフィッティング条件:PSF;pseudo−Voigt、バックグラウンド:水平、現在のプロファイル更新:有り、Kα2ピーク:有り、初期半価幅曲線指定値=0.2、ピークサーチ:有り。
得られた芳香族オキシカルボン酸(A1)について、前記の条件にてX線回折を測定し、結晶化度を算出した結果を示す。結晶化度=88.6%。その結果を図4に示す。
【0105】
得られた芳香族オキシカルボン酸(A1)について、液体クロマトグラフ質量分析装置(LC/MS 株式会社日立ハイテクノロジーズ製 LC/3DQMSシステム M−8000)にて、以下の条件にて測定した。
イオン化源:ESIイオン化源(FI法により測定)
キャリア:電子工業用メタノール
試料の調製方法:試料各1mgを電子工業用メタノールにて溶解し、完全に溶解しなかった試料に関しては、THFを溶解するまで加えた。
第一細孔温度:120℃ 第二細孔温度:100℃ 脱溶媒温度:150℃ 補助ガス温度:150℃ フォーカス電圧:20V ドリフト電圧:20V
液体クロマトグラフ質量分析の測定結果より、質量分析の理論値及び実測値を以下に示す。
実測値:LC/MS m/z=299.07[M−H]
芳香族オキシカルボン酸の理論分子量:300.14
【0106】
B−1 芳香族オキシカルボン酸の金属化合物の合成
水500mLに20%水酸化ナトリウム水溶液66.3gを加え、次いで芳香族オキシカルボン酸(A1)を50.0g加え、90℃に加熱した。この液に、水467mLと25.7%の硫酸アルミニウム水溶液81.5gを加え、90℃に加熱した溶液を25分間で加え、90℃で2時間加熱撹拌した。その後、濾過し濾液の電気伝導度が300μS/cm以下になるまで水道水で水洗し、80℃にて48時間乾燥し、白色の芳香族オキシカルボン酸の金属化合物(B1)を55.5g得た。
【0107】
得られた芳香族オキシカルボン酸金属化合物(B1)について、元素分析測定器(CHNS/O分析 パーキンエルマー社製 2400II全自動元素分析装置)にて、炭素(C)、水素(H)窒素(N)の重量比率を測定した。以下に元素分析の実測値を示す。
実測値 C:63.77 H:6.09 N:0.00
【0108】
得られた芳香族オキシカルボン酸金属化合物(B1)について、原子吸光分析装置(Valian社製 SpectrAA−220FS)にて、含有する金属の重量%を測定した。以下に原子吸光の実測値を示す。Al=5.31%、Na=0.04%
【0109】
得られた芳香族オキシカルボン酸金属化合物(B1)について、フーリエ変換赤外分光光度計(FT−IR 日本電子株式会社製 JIR−SPX60S)を使用し、KBr法にて測定したところ、
ν(cm−1)=3431、3265、3091、3066、3034、3003、2958、2912、2872、1579、1475、1454、1435、1394、1375、1308、1228、1201、1122、1080、1045、1030、1020、974、931、897、866、845、810、783、744、696、600、426、409を観測した。FT−IRの測定結果を図5に示す。
【0110】
得られた芳香族オキシカルボン酸金属化合物(B1)について、示差熱熱重量同時測定装置(TG/DTA エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社製 TG/DTA6200 EXSTAR6000)を用い、昇温条件:30−550℃ 昇温速度:10℃/分で測定した。熱重量分析−示差熱分析(TG−DTA)の測定結果を図6に示す。その測定の結果、発熱温度:506℃、重量減少温度:188℃、491℃を観測した。
【0111】
得られた芳香族オキシカルボン酸金属化合物(B1)について、X線回折装置(株式会社リガク製 試料水平型強力X線回折装置 RINT−TTRIII)にて以下の条件にて測定した。測定試料サンプルの作製:試料をX線回折装置専用ガラス台にのせ、別のガラス板にて平らに試料を延ばして試料を作製した。
測定範囲:2θ=5°〜40°
結晶化度の求め方:得られた芳香族オキシカルボン酸金属化合物について、前記の条件でX線回折を測定後、得られたX線回折スペクトルをスムージング処理した。更に得られたデータを、Materials Data社製の解析ソフト「JADE XRD Pattern Processing Identification & Quantification ver.7.5.2」を用い、以下の条件にて解析し結晶化度を求めた。プロファイリングフィッティング条件:PSF;pseudo−Voigt、バックグラウンド:水平、現在のプロファイル更新:有り、Kα2ピーク:有り、初期半価幅曲線指定値=0.2、ピークサーチ:有り。
得られた芳香族オキシカルボン酸金属化合物(B1)について、前記の条件にてX線回折を測定し、結晶化度を算出した結果を示す。結晶化度=10.3%。
その結果を図7に示す。
【0112】
得られた芳香族オキシカルボン酸金属化合物(B1)について、液体クロマトグラフ質量分析装置(LC/MS 株式会社日立ハイテクノロジーズ製 LC/3DQMSシステム M−8000)にて、以下の条件にて測定した。
イオン化源:ESIイオン化源(FI法により測定)
キャリア:電子工業用メタノール
試料の調製方法:試料各1mgを電子工業用メタノールにて溶解し。完全に溶解しなかった試料に関してはTHFを溶解するまで加えた。
第一細孔温度:120℃ 第二細孔温度:100℃ 脱溶媒温度:150℃ 補助ガス温度:150℃ フォーカス電圧:20V ドリフト電圧:20V
得られた芳香族オキシカルボン酸金属化合物(B1)について、前記の条件でLC/MS分析測定した。そのLC/MS分析の測定結果から、分子量が623.4と、948.1とであり、芳香族オキシカルボン酸(A1)とAlとが、それぞれ2:1、3:2である構造を推定できるデータを得た。下記に取り得ると考えられる化学式(M−1)及び(M−2)を示す。
【0113】
【化28】

【0114】
【化29】

【0115】
(実施例2)
A−2 芳香族オキシカルボン酸の合成
5−メチル−2,3−ジヒドロキシ安息香酸(東京化成工業株式会社製、製品コードD2770)25.0gをメタノール500mLに溶解させ、炭酸カリウム20.2gを加えて65℃に加熱した。この反応液に1−クロロメチルベンゼン19.4gとメタノール100mLの混合溶解液を滴下し、65℃にて5時間反応させた。得られた反応液を冷却後、濾過し、濾液中のメタノールを減圧留去して析出物を得た。
【0116】
得られた析出物をpH=2の水3Lに分散させ、酢酸エチルを加えて、水洗し、酢酸エチル相を抽出し、硫酸マグネシウムで乾燥させ、減圧下、酢酸エチルを留去して析出物を得た。得られた析出物をヘキサン洗浄後、トルエンと酢酸エチルにて再結晶し、下記化学式(A2)に示す芳香族オキシカルボン酸を24.1g得た。
【0117】
【化30】

【0118】
得られた芳香族オキシカルボン酸(A2)について、HPLC純度を実施例1のA−1に記載の条件で測定したところ、95.3%だった。
【0119】
得られた芳香族オキシカルボン酸(A2)について、測定溶媒をCDClに変えた以外は、実施例1のA−1と同様の条件でH−NMRを測定した。H−NMRスペクトルデータは、下記の通りであり、前記化学式(A2)で示す構造を支持する。
δ(ppm)=2.20(3H、s、−CH)、4.41(2H、s、−OCH−)、7.24−7.51(7H、m、Ar−H)
【0120】
得られた芳香族オキシカルボン酸(A2)について、FT−IRを実施例1のA−1に記載の条件で測定したところ、
ν(cm−1)=3416、3100、3010、29659、2856、2622、1670、1609、1511、1428、1369、1336、1301、1281、1232、1200、1121、1063、969、901、853、835、810、803、726、687、468を観測した。
【0121】
得られた芳香族オキシカルボン酸(A2)について、TG−DTAを実施例1のA−1に記載の条件で測定した結果、融点161℃、発熱温度:513℃、562℃、重量減少温度:171℃、401℃、481℃、543℃を観測した。
【0122】
得られた芳香族オキシカルボン酸(A2)について、元素分析を実施例1のA−1に記載の条件で測定した。以下に元素分析の理論値及び実測値を示す。
実測値C:69.30 H:5.37 N:0.00
理論値C:69.76 H:5.46 N:0.00
【0123】
得られた芳香族オキシカルボン酸(A2)について、LC/MS分析を実施例1のA−1に記載の条件で測定した。質量分析の理論値及び実測値を示す。
実測値:LC/MS m/z=257.7[M−H]
芳香族オキシカルボン酸の理論分子量:258.27
【0124】
B−2 芳香族オキシカルボン酸の金属化合物の合成
水100mLに25.7%の硫酸アルミニウム水溶液18.6gを加え90℃に加熱した。この液に、水100mLに20%水酸化ナトリウム水溶液14.9g及び芳香族オキシカルボン酸(A2)を10.0g加え、90℃に加熱した溶液を20分間で加え、95℃で2時間加熱撹拌した。その後、濾過し濾液の電気伝導度が300μS/cm以下になるまで水道水で水洗し、80℃にて48時間乾燥し、白色の芳香族オキシカルボン酸の金属化合物(B2)を9.7g得た。
【0125】
得られた芳香族オキシカルボン酸金属化合物(B2)について、元素分析を実施例1のB−1に記載の条件で測定した。以下に、元素分析の実測値を示す。
実測値 C:67.1 H:4.69 N:0.00
【0126】
得られた芳香族オキシカルボン酸金属化合物(B2)について、含有する金属の重量%を実施例1のB−1に記載の条件で測定した。以下に原子吸光の実測値を示す。Al=4.15%、Na=0.01%
【0127】
得られた芳香族オキシカルボン酸金属化合物(B2)について、FT−IRを実施例1のB−1に記載の条件で測定したところ、
ν(cm−1)=3430、1621、1523、1462、1385、1266、1201、1159、1110、1012、999、905、832、769、679、485を観測した。
【0128】
得られた芳香族オキシカルボン酸金属化合物(B2)について、TG−DTAを実施例1のB−1に記載の条件で測定した。その測定の結果、吸熱温度:196℃、発熱温度:362℃、460℃、重量減少温度:175℃、324℃、443℃を観測した。
【0129】
得られた芳香族オキシカルボン酸金属化合物(B2)について、X線回折を実施例1のB−1に記載の条件で測定し、結晶化度を算出した結果を示す。結晶化度=23.7%。
【0130】
得られた芳香族オキシカルボン酸金属化合物(B2)について、LC/MS分析を実施例1のB−1に記載の条件で測定した。そのLC/MS分析の測定結果から、分子量が539.8であり、芳香族オキシカルボン酸(A2)とAlとが、2:1である構造を推定できるデータを得た。下記に取り得ると考えられる化学式(M−3)を示す。
【0131】
【化31】

【0132】
(実施例3)
A−3 芳香族オキシカルボン酸の合成
5−tert−ブチル−2,3−ジヒドロキシ安息香酸25.0gをメタノール365mLに溶解させ、炭酸カリウム16.2gを加えて65℃に加熱した。この反応液に1−クロロメチルベンゼン15.5gを20分間で滴下し、65℃にて3時間反応させた。得られた反応液を冷却後、濾過し、濾液中のメタノールを減圧留去して析出物を得た。得られた析出物をpH=2の水に分散させ、酢酸エチルを加え、水洗し、酢酸エチル相を抽出した。硫酸マグネシウムで乾燥させ、減圧下、酢酸エチルを留去後、析出物をトルエン洗浄し、トルエンにて再結晶し、下記化学式(A3)に示す芳香族オキシカルボン酸を22.7g得た。
【0133】
【化32】

【0134】
得られた芳香族オキシカルボン酸(A3)について、HPLC純度を実施例1のA−1に記載の条件で測定したところ、99.1%だった。
【0135】
得られた芳香族オキシカルボン酸(A3)について、H−NMRを実施例1のA−1に記載の条件で測定した。H−NMRスペクトルデータは、下記の通りであり、前記化学式(A3)で示す構造を支持する。
δ(ppm)=1.23(1H、s、−C(CH)5.22(2H、s、−CH2−)、7.29−7.55(7H、m、Ar−H)
【0136】
得られた芳香族オキシカルボン酸(A3)について、FT−IRを実施例1のA−1に記載の条件で測定したところ、
ν(cm−1)=3090、3055、2966、2870、2629、1655、1619、1512、1481、1448、1409、1299、1275、1237、1200、1117、1083、1015、985、960、917、894、856、830、820、721、642を観測した。
【0137】
得られた芳香族オキシカルボン酸(A3)について、TG−DTAを実施例1のA−1に記載の条件で測定した。測定の結果、融点137℃、発熱温度:567℃、分解点:199℃を観測した。
【0138】
得られた芳香族オキシカルボン酸(A3)について、元素分析を実施例1のA−1に記載の条件で測定した。以下に元素分析の理論値及び実測値を示す。
実測値 C:70.97 H:6.49 N:0.00
理論値 C:71.98 H:6.71 N:0.00
【0139】
得られた芳香族オキシカルボン酸(A3)について、X線回折を実施例1のA−1に記載の条件で測定し、結晶化度を算出した結果を示す。結晶化度=64.2%。
【0140】
得られた芳香族オキシカルボン酸(A3)について、LC/MS分析を実施例1のA−1の条件にて測定した。以下に質量分析の理論値及び実測値を示す。
実測値:LC/MS m/z=298.9[M−H]
芳香族オキシカルボン酸の理論分子量:300.35
【0141】
B−3 芳香族オキシカルボン酸の金属化合物の合成
水94mLに25.7%の硫酸アルミニウム水溶液16.4gを加え90℃に加熱した。この液に、水100mLに20%水酸化ナトリウム水溶液13.2gを加え、次いで芳香族オキシカルボン酸(A3)を10.0g加え、90℃に加熱した溶液を30分間で加え、95℃で2時間加熱撹拌した。その後、濾過し濾液の電気伝導度が300μS/cm以下になるまで水道水で水洗し、80℃にて24時間乾燥し、芳香族オキシカルボン酸の金属化合物(B3)を12.3g得た。
【0142】
得られた芳香族オキシカルボン酸金属化合物(B3)について、元素分析を実施例1のB−1に記載の条件で測定した。以下に、元素分析の実測値を示す。
実測値 C:69.84 H:5.80 N:0.00
【0143】
得られた芳香族オキシカルボン酸金属化合物(B3)について、含有する金属の重量%を実施例1のB−1に記載の条件で測定した。以下に原子吸光の実測値を示す。Al=3.51%、Na=0.03%
【0144】
得られた芳香族オキシカルボン酸金属化合物(B3)について、FT−IRを実施例1のB−1に記載の条件で測定したところ、
ν(cm−1)=3425、2959、1632、1574、1486、1440、1404、1369、1273、1250、1120、1056、998、912、849、822、815、645、441を観測した。
【0145】
得られた芳香族オキシカルボン酸金属化合物(B3)について、TG−DTAを実施例1のB−1に記載の条件で測定し、その測定の結果、発熱温度:371℃、462℃、重量減少温度:261℃、439℃を観測した。
【0146】
得られた芳香族オキシカルボン酸金属化合物(B3)について、X線回折を実施例1のB−1に記載の条件で測定し、結晶化度を算出した結果を示す。結晶化度=27.4%。
【0147】
得られた芳香族オキシカルボン酸金属化合物(B3)について、LC/MS分析を実施例1のB−1に記載の条件で測定した。そのLC/MS分析の測定結果から、分子量が622.7と、947.7とであり、芳香族オキシカルボン酸(A3)とAlとが、それぞれ2:1、3:2である構造を推定できるデータを得た。下記に取り得ると考えられる化学式(M−4)及び(M−5)を示す。
【0148】
【化33】

【0149】
【化34】

【0150】
(実施例4)
A−4 芳香族オキシカルボン酸の合成
3−tert−ブチル−2,5−ジヒドロキシ安息香酸10.0gをメタノール200mLに溶解させ、炭酸カリウム6.6gを加えて65℃に加熱した。この反応液に、テトラヘドロン(Tetrahedron),2009年,第65巻,第22号,4429−4439頁に記載の方法で合成した1−tert−ブチル−4−ブロモエチルベンゼン12gとメタノール100mLとの混合溶液を20分間で滴下し、65℃にて8時間反応させた。得られた反応液を冷却後、濾過し、濾液中のメタノールを減圧留去して析出物を得た。得られた析出物をpH=2の水1.5Lに分散させ、酢酸エチルを加えて水洗し、酢酸エチル相を抽出し、硫酸マグネシウムで乾燥させ、減圧下、酢酸エチルを留去して析出物を得た。得られた析出物をヘキサン洗浄濾過後、析出物をトルエンと酢酸エチルの混合溶液を用い、再結晶し、80℃で40時間乾燥後、下記化学式(A4)に示す芳香族オキシカルボン酸誘導体を12.7g得た。
【0151】
【化35】

【0152】
得られた芳香族オキシカルボン酸(A4)について、HPLC純度を実施例1のA−1に記載の条件で測定したところ、98.6%だった。
【0153】
得られた芳香族オキシカルボン酸(A4)について、H−NMRを実施例1のA−1に記載の条件で測定した。H−NMRスペクトルデータは、下記の通りであり、前記化学式(A4)で示す構造を支持する。
δ(ppm)=1.37(9H、s、−C(CH)1.44(9H、s、−C(CH)、5.10(2H、s、−OCH−)、7.20−7.45(6H、m、Ar−H)
【0154】
得られた芳香族オキシカルボン酸(A4)について、FT−IRを実施例のA−1と同様の条件で測定したところ、
ν(cm−1)=3422、3096、3004、2966、2869、2619、1661、1609、1516、1430、1411、1376、1362、1330、1292、1278、1225、1199、1181、1116、1066、1016、985、970、908、851、832、819、806、795、722、681、658、606、493、465を観測した。
【0155】
得られた芳香族オキシカルボン酸(A4)について、TG−DTAを実施例のA−1に記載の条件で測定した。その測定の結果、融点:192℃、発熱温度:526℃、571℃、重量減少温度:165℃、231℃、387℃、490℃、553℃を観測した。
【0156】
得られた芳香族オキシカルボン酸(A4)について、元素分析を実施例のA−1に記載の条件で測定した。以下に、元素分析の理論値及び実測値を示す。
実測値C:73.97 H:7.88 N:0.00
理論値C:74.13 H:7.92 N:0.00
【0157】
得られた芳香族オキシカルボン酸(A4)について、X線回折を実施例1のA−1に記載の条件で測定し、結晶化度を算出した結果を示す。結晶化度=72.7%。
【0158】
得られた芳香族オキシカルボン酸(A4)について、液体クロマトグラフ質量分析を実施例のA−1に記載の条件で測定した。質量分析の理論値及び実測値を示す。
実測値:LC/MS m/z=355.3[M−H]
理論値:m/z=356.46
【0159】
B−4 芳香族オキシカルボン酸の金属化合物の合成
水130mLに20%水酸化ナトリウム水溶液57.0gを加え、次いで芳香族オキシカルボン酸(A4)を10.0g加え、90℃に加熱した。この液に、水100mLに25.7%の硫酸アルミニウム水溶液14.0gを加え、90℃に加熱した溶液を30分間で加え、95℃で2時間加熱撹拌した。その後、濾過し濾液の電気伝導度が300μS/cm以下になるまで水道水で水洗し、80℃にて48時間乾燥し、白色の芳香族オキシカルボン酸の金属化合物(B4)を10.1g得た。
【0160】
得られた芳香族オキシカルボン酸金属化合物(B4)について、元素分析を実施例1のB−1に記載の条件で測定した。以下に、元素分析の実測値を示す。
実測値 C:63.77 H:6.09 N:0.00
【0161】
得られた芳香族オキシカルボン酸金属化合物(B4)について、含有する金属の重量%を実施例1のB−1に記載の条件で測定した。以下に原子吸光の実測値を示す。Al=4.40%、Na=0.02%
【0162】
得られた芳香族オキシカルボン酸金属化合物(B4)について、FT−IRを実施例1のB−1に記載の条件で測定したところ、
ν(cm−1)=3433、2957、1585、1473、1435、1406、1375、1307、1228、1201、1122、1043、1015、989、908、811、744を観測した。
【0163】
得られた芳香族オキシカルボン酸金属化合物(B4)について、TG−DTAを実施例1のB−1に記載の条件で測定した結果、発熱温度:363℃、465℃、重量減少温度:235℃、420℃を観測した。
【0164】
得られた芳香族オキシカルボン酸金属化合物(B4)について、X線回折を実施例1のB−1に記載の条件で測定し、結晶化度を算出した結果を示す。結晶化度=35.1%。
【0165】
得られた芳香族オキシカルボン酸金属化合物(B4)について、LC/MS分析を実施例1のB−1に記載の条件で測定した。そのLC/MS分析の測定結果から、分子量が735.5であり、芳香族オキシカルボン酸(A4)とAlとが、2:1である構造を推定できるデータを得た。下記に取り得ると考えられる化学式(M−6)を示す。
【0166】
【化36】

【0167】
(実施例5)
A−5 芳香族オキシカルボン酸の合成
80%硫酸1201gに2,4−ジヒドロキシ安息香酸とイソプロパノール210gとを加え、75℃にて8時間撹拌した。放冷し、氷水2Lとヘキサン140mLとを加え氷浴下、撹拌した。析出している結晶を濾過し、残渣をヘキサンで洗浄した。更にメタノール:水=6:4の混合液に分散し、濾過した。60℃にて48時間乾燥し、イソプロピル化された芳香族オキシカルボン酸中間体65.4gを得た。イソプロピル化された芳香族オキシカルボン酸中間体20.0gをメタノール310mLに溶解させ、炭酸カリウム14.0gを加えて65℃に加熱した。この反応液に1−クロロメチルベンゼン13.3gとメタノール100mLに混合溶解させた溶解液を滴下し、8時間反応させた。得られた反応液を冷却後、濾過し、濾液中のメタノールを減圧留去して析出物を得た。得られた析出物をpH=2の水1.5Lに分散させ、酢酸エチルを加えた後に水洗した。酢酸エチル層を抽出し、硫酸マグネシウムで乾燥させ、減圧下、酢酸エチルを留去して析出物を得た。得られた析出物をヘキサン洗浄濾過後、析出物をトルエンと酢酸エチルの混合溶液を用い、再結晶し、80℃で40時間乾燥後、下記化学式(A5)に示す芳香族オキシカルボン酸誘導体を17.7g得た。
【0168】
【化37】

【0169】
得られた芳香族オキシカルボン酸(A5)について、HPLC純度を実施例1のA−1に記載の条件で測定したところ、97.9%だった。
【0170】
得られた芳香族オキシカルボン酸(A5)について、H−NMRを実施例1のA−1に記載の条件で測定した。H−NMRスペクトルデータは、下記の通りであり、前記化学式(A5)で示す構造を支持する。
δ(ppm)=1.25(6H、d、−C(CH)、2.90(1H、m、−C−C(CH)、5.20(2H、s、−OCH−)、6.39(1H、s、Ar−H)、7.08−7.35(5H、m、Ar−H)、7.62(1H、s、Ar−H)
【0171】
得られた芳香族オキシカルボン酸(A5)について、FT−IRを実施例のA−1と同様の条件で測定したところ、
ν(cm−1)=3432、3018、2879、1677、1616、1455、1345、1236、1134、1238、1132、1076、930、813、742、706、506を観測した。
【0172】
得られた芳香族オキシカルボン酸(A5)について、TG−DTAを実施例のA−1に記載の条件で測定した。その測定の結果、融点:167℃、発熱温度:574℃、重量減少温度:209℃、388℃を観測した。
【0173】
得られた芳香族オキシカルボン酸(A5)について、元素分析を実施例のA−1に記載の条件で測定した。以下に、元素分析の理論値及び実測値を示す。
実測値C:72.00 H:6.29 N:0.00
理論値C:71.31 H:6.34 N:0.00
【0174】
得られた芳香族オキシカルボン酸(A5)について、X線回折を実施例1のA−1に記載の条件で測定し、結晶化度を算出した結果を示す。結晶化度=86.4%。
【0175】
得られた芳香族オキシカルボン酸(A5)について、液体クロマトグラフ質量分析を実施例のA−1に記載の条件で測定した。質量分析の理論値及び実測値を示す。
実測値:LC/MS m/z=285.4[M−H]
理論値:m/z=286.32
【0176】
B−5 芳香族オキシカルボン酸の金属化合物の合成
水100mLに20%水酸化ナトリウム水溶液13.8gを加え、次いで芳香族オキシカルボン酸(A5)を10.0g加え、90℃に加熱した。この液に、水100mLに25.7%の硫酸アルミニウム水溶液14.0gを加え、90℃に加熱した溶液を30分間で加え、95℃で2時間加熱撹拌した。その後、濾過し濾液の電気伝導度が300μS/cm以下になるまで水道水で水洗し、80℃にて48時間乾燥し、白色の芳香族オキシカルボン酸の金属化合物(B5)を9.9g得た。
【0177】
得られた芳香族オキシカルボン酸金属化合物(B5)について、元素分析を実施例1のB−1に記載の条件で測定した。以下に、元素分析の実測値を示す。
実測値 C:68.42 H:5.50 N:0.00
【0178】
得られた芳香族オキシカルボン酸金属化合物(B5)について、含有する金属の重量%を実施例1のB−1に記載の条件で測定した。以下に原子吸光の実測値を示す。Al=4.99%、Na=0.01%
【0179】
得られた芳香族オキシカルボン酸金属化合物(B5)について、FT−IRを実施例1のB−1に記載の条件で測定したところ、
ν(cm−1)=3420、3110、2965、2929、2868、2659、1827、1770、1666、1607、1522、1457、1409、1379、1327、1278、1211、1154、1041、967、900、844、823、795、688、606、527、465を観測した。
【0180】
得られた芳香族オキシカルボン酸金属化合物(B5)について、TG−DTAを実施例1のB−1に記載の条件で測定した結果、発熱温度:374℃、471℃、重量減少温度:222℃、431℃を観測した。
【0181】
得られた芳香族オキシカルボン酸金属化合物(B5)について、X線回折を実施例1のB−1に記載の条件で測定し、結晶化度を算出した結果を示す。結晶化度=28.1%。
【0182】
得られた芳香族オキシカルボン酸金属化合物(B5)について、LC/MS分析を実施例1のB−1に記載の条件で測定した。そのLC/MS分析の測定結果から、分子量が595.4と881.9であり、芳香族オキシカルボン酸(A5)とAlとが、それぞれ2:1、3:1である構造を推定できるデータを得た。下記に取り得ると考えられる化学式(M−7)及び(M−8)を示す。
【0183】
【化38】

【0184】
【化39】

【0185】
(実施例6)
A−6 芳香族オキシカルボン酸の合成
2,4−ジヒドロキシ安息香酸46.23gと80%硫酸460gとを70℃に加熱混合し、この分散液に2−オクタノール78.15gを10分間で加えて70℃で30分間撹拌した。その後、分散液に2−オクタノール78.15gを加え30分間撹拌する操作を2回行った。30分間撹拌後、反応液を室温まで冷却し、氷水3kgに徐々に注ぎ、析出物を濾過、水洗し、更にヘキサン洗浄した。得られた析出物をメタノール500mLに溶解させ、水4.5Lに再沈殿させた。濾過後、80℃にて24時間乾燥させ、反応物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーに付し、ヘキサン:トルエン留分にて、オクチル化されたサリチル酸中間体24.5gを得た。
【0186】
得られたサリチル酸中間体20.0gをメタノール400mLに溶解させ、炭酸カリウム22.9gを加えて65℃に加熱した。この反応液に1−クロロメチルベンゼン22.9gとメタノール100mLに混合溶解させた溶解液を滴下し、65℃にて3時間反応させた。得られた反応液を冷却後、濾過し、濾液中のメタノールを減圧留去して析出物を得た。
【0187】
得られた析出物をpH=2の水2.0Lに分散させ、酢酸エチルを加えて抽出した。その後、水洗し、酢酸エチル層を分離し硫酸マグネシウムで乾燥させ、減圧下、酢酸エチルを留去して析出物を得た。得られた析出物をヘキサン洗浄後、濾過し、残渣をトルエンと酢酸エチルの混合溶液にて再結晶した。析出物を濾過後、80℃にて48時間乾燥させ、下記化学式(A6)に示す芳香族オキシカルボン酸誘導体を15.8g得た。
【0188】
【化40】

【0189】
得られた芳香族オキシカルボン酸(A6)について、HPLC純度を実施例1のA−1に記載の条件で測定したところ、95.7%だった。
【0190】
得られた芳香族オキシカルボン酸(A6)について、H−NMRを実施例1のA−1に記載の条件で測定した。H−NMRスペクトルデータは、下記の通りであり、前記化学式(A6)で示す構造を支持する。
δ(ppm)=0.97(3H、t、−CH)、1.17−1.60(15H、broad、−(CH−、−CH)、5.00(2H、s、−OCH−)、7.30−7.46(7H、m、Ar−H)
【0191】
得られた芳香族オキシカルボン酸(A6)について、FT−IRを実施例のA−1と同様の条件で測定したところ、
ν(cm−1)=3422、3108、3010、3000、2935、2877、2871、2735、2655、1920、1826、1800、1768、1711、1700、1624、1607、1525、1502、1466,1415、1410、1366、1318、1292、1275、1224、1181、1158、1043、991、965、942、899、894、845、827、810、799、725、686、614、528、500、421を観測した。
【0192】
得られた芳香族オキシカルボン酸(A6)について、TG−DTAを実施例のA−1に記載の条件で測定した。その測定の結果、融点:146℃、発熱温度:509℃、重量減少温度:175℃、356℃を観測した。
【0193】
得られた芳香族オキシカルボン酸(A6)について、元素分析を実施例のA−1に記載の条件で測定した。以下に、元素分析の理論値及び実測値を示す。
実測値C:73.79 H:7.97 N:0.00
理論値C:74.13 H:7.92 N:0.00
【0194】
得られた芳香族オキシカルボン酸(A6)について、X線回折を実施例1のA−1に記載の条件で測定し、結晶化度を算出した結果を示す。結晶化度=63.6%。
【0195】
得られた芳香族オキシカルボン酸(A6)について、液体クロマトグラフ質量分析を実施例のA−1に記載の条件で測定した。質量分析の理論値及び実測値を示す。
実測値:LC/MS m/z=355.8[M−H]
理論値:m/z=356.46
【0196】
B−6 芳香族オキシカルボン酸の金属化合物の合成
水100mLに20%水酸化ナトリウム水溶液11.1gを加え、次いで芳香族オキシカルボン酸(A6)を10.0g加え、90℃に加熱した。この液を、水80mLに25.7%の硫酸アルミニウム水溶液14.0gを加え、90℃に加熱した溶液に27分間で加え、95℃で2時間加熱撹拌した。その後、濾過し濾液の電気伝導度が300μS/cm以下になるまで水道水で水洗し、80℃にて48時間乾燥し、白色の芳香族オキシカルボン酸の金属化合物(B6)を9.6g得た。
【0197】
得られた芳香族オキシカルボン酸金属化合物(B6)について、元素分析を実施例1のB−1に記載の条件で測定した。以下に、元素分析の実測値を示す。
実測値 C:72.11 H:7.41 N:0.00
【0198】
得られた芳香族オキシカルボン酸金属化合物(B6)について、含有する金属の重量%を実施例1のB−1に記載の条件で測定した。以下に原子吸光の実測値を示す。Al=3.74%、Na=0.02%
【0199】
得られた芳香族オキシカルボン酸金属化合物(B6)について、FT−IRを実施例1のB−1に記載の条件で測定したところ、
ν(cm−1)=3422、3109、2969、2930、2867、2660、1829、1771、1667、1609、1524、1458、1410、1377、1323、1279、1212、1158、1049、964、910、847、826、799、689、610、525、464を観測した。
【0200】
得られた芳香族オキシカルボン酸金属化合物(B6)について、TG−DTAを実施例1のB−1に記載の条件で測定した結果、発熱温度:436℃、重量減少温度:199℃、410℃を観測した。
【0201】
得られた芳香族オキシカルボン酸金属化合物(B6)について、X線回折を実施例1のB−1に記載の条件で測定し、結晶化度を算出した結果を示す。結晶化度=30.1%。
【0202】
得られた芳香族オキシカルボン酸金属化合物(B6)について、LC/MS分析を実施例1のB−1に記載の条件で測定した。そのLC/MS分析の測定結果から、分子量が735.7であり、芳香族オキシカルボン酸(A6)とAlとが、2:1である構造を推定できるデータを得た。下記に取り得ると考えられる化学式(M−9)を示す。
【0203】
【化41】

【0204】
(比較例1)
3−tert−ブチル−2,5−ジヒドロキシ安息香酸を2,5−ジヒドロキシ安息香酸に代えたこと以外は実施例1のA−1と同様の方法により、5−ベンジロキシ−2−ヒドロキシ安息香酸(Y1)を合成した。
【0205】
2,5−ジヒドロキシ安息香酸100.0gをメタノール440mLに溶解させ、炭酸カリウム122.2gを加えて65℃に加熱した。この反応液にベンジルブロミド79.1gを滴下し、65℃にて8時間反応させた。得られた反応液を冷却後、濾過し、濾液中のメタノールを減圧留去して析出物を得た。
【0206】
得られた析出物をpH=2の水3Lに分散させ、酢酸エチルを加えて酢酸エチル相を抽出した。その後、水洗し、硫酸マグネシウムで乾燥させ、減圧下、酢酸エチルを留去して析出物を得た。得られた析出物をヘキサン洗浄後、トルエンと酢酸エチルにて再結晶し、下記化学式(Y1)に示す芳香族オキシカルボン酸を62.3g得た。
【0207】
【化42】

【0208】
得られた芳香族オキシカルボン酸(Y1)について、HPLC純度を実施例1のA−1に記載の条件で測定したところ、98.7%だった。
【0209】
得られた芳香族オキシカルボン酸(Y1)について、元素分析を実施例1のA−1に記載の条件で測定した。以下に、元素分析の理論値及び実測値を示す。
実測値 C:68.79 H:4.87 N:0.00
理論値 C:68.85 H:4.95 N:0.00
【0210】
得られた芳香族オキシカルボン酸(Y1)について、LC/MS分析を実施例1のA−1に記載の条件で測定した。また、質量分析の理論値及び実測値を以下に示す。
実測値:LC/MS m/z=243.67[M−H]
芳香族オキシカルボン酸の理論分子量:244.24
【0211】
水467mLに25.7%の硫酸アルミニウム水溶液101.5gを加え、90℃に加熱した。この溶液に、水500mLに20%水酸化ナトリウム水溶液81.5gと芳香族オキシカルボン酸(Y1)を50.0g加え、90℃に加熱した溶液を25分間で加え、95℃で2時間加熱撹拌した。その後、濾過し濾液の電気伝導度が300μS/cm以下になるまで水道水で水洗し、80℃にて48時間乾燥し、白色の芳香族オキシカルボン酸の金属化合物(X1)を55.5g得た。
【0212】
得られた金属化合物(X1)について、元素分析を実施例1のB−1に記載の条件で測定した。以下に、元素分析の実測値を示す。
実測値 C:62.51 H:5.87 N:0.00
【0213】
得られた金属化合物(X1)について、含有する金属の重量%を実施例1のB−1に記載の条件で測定した。以下に原子吸光の実測値を示す。Al=5.31%、Na=0.04%
【0214】
得られた金属化合物(X1)について、TG−DTAを実施例1のB−1に記載の条件で測定した。その測定の結果、発熱温度:506℃、重量減少温度:188℃、491℃を観測した。
【0215】
(比較例2)
比較例1で合成した芳香族オキシカルボン酸(Y1)を用いて、特開2001−249500記載の芳香族オキシカルボン酸金属化合物(X2)を合成した。
【0216】
水100mLに20%水酸化ナトリウム水溶液13.3gを加え、次いで比較例1で得られた芳香族オキシカルボン酸(Y1)を10.0g加え、90℃に加熱した。この液に、水30mLにオキシ塩化ジルコニウム8水和物6.3gを加え、90℃に加熱した溶液を5分間で加え、95℃で2時間加熱撹拌した。その後、濾過し濾液の電気伝導度が300μS/cm以下になるまで水道水で水洗し、80℃にて48時間乾燥し、白色の芳香族オキシカルボン酸の金属化合物(X2)を11.1g得た。
【0217】
得られた金属化合物(X2)について、元素分析を実施例1のB−1に記載の条件で測定した。以下に、元素分析の実測値を示す。
実測値 C:63.6 H:5.42 N:0.00
【0218】
得られた金属化合物(X2)について、含有する金属の重量%を実施例1のB−1に記載の条件で測定した。以下に原子吸光の実測値を示す。Zr=12.3%、Na=0.04%
【0219】
得られた金属化合物(X2)について、FT−IRを実施例1のB−1に記載の条件で測定したところ、
ν(cm−1)=3260、3053、3030、3029、3000、2978、2913、2869、1625、1571、1543、1510、1468、1433、1399、1389、1370、1315、1269、1230、1199、1118、1042、1015、990、904、839、820、805、759、732、625、610、537、469、410を観測した。
【0220】
得られた金属化合物(X2)について、TG−DTAを実施例1のB−1に記載の条件で測定した。その測定の結果、発熱温度:343℃、480℃、重量減少温度:461℃を観測した。
【0221】
得られた金属化合物(X2)について、LC/MS分析を実施例1のB−1に記載の条件で測定した。そのLC/MS分析の測定結果から、分子量が738.2であり、芳香族オキシカルボン酸(Y1)とZrとが、2:1である構造を推定できるデータを得た。下記に取り得ると考えられる化学式(X2)を示す。
【0222】
【化43】

【0223】
(比較例3)
2,3−ジヒドロキシ安息香酸25.0gをメタノール300mLに溶解させ、これに炭酸カリウム22.1gを加え、65℃で、30分間撹拌した。これにベンジルクロライド21.1gを30分間で滴下した。還流下、5時間反応後、室温まで放冷し、析出物をろ過後、メタノールで洗浄した。ろ液中のメタノールを減圧下除去し、茶色の半固体を得た。この茶色半固体をpH=1の水2Lに分散させ、酢酸エチルを加え、酢酸エチル相を飽和食塩水で洗浄後、酢酸エチル相を抽出し硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧下酢酸エチルを除去し、淡黄色固体を得た。この淡黄色固体をトルエンで再結晶し、析出物を濾過後、80℃にて40時間乾燥させ、下記化学式(X3)に示す芳香族オキシカルボン酸を26.0g得た。
【0224】
【化44】

【0225】
得られた芳香族オキシカルボン酸(X3)について、HPLC純度を実施例1のA−1に記載の条件で測定したところ98.1%だった。
【0226】
得られた芳香族オキシカルボン酸(X3)について、H−NMRを実施例1のA−1に記載の条件で測定した。H−NMRスペクトルデータは、下記の通りであり、前記化学式(X3)で示す構造を支持する。
δ(ppm)=5.20(2H、s、−OCH−)、6.83−7.49(7H、m、Ar−H)
【0227】
得られた芳香族オキシカルボン酸(X3)について、FT−IRを実施例1のA−1に記載の条件で測定したところ、
ν(cm−1)=3237、3036、2880、2721、2597、2528、1670、1612、1581、1465、1443、1385、1306、1247、1234、1178、1163、1088、1026、1018、1001、8908、862、837、827、781、748、696、653、608、480を観測した。
【0228】
得られた芳香族オキシカルボン酸(X3)について、TG−DTAを実施例1のA−1に記載の条件で測定して、その測定の結果、融点:177℃、重量減少温度:185℃、を観測した。
【0229】
得られた芳香族オキシカルボン酸(X3)について、元素分析を実施例1のA−1に記載の条件で測定した。以下に元素分析の理論値及び実測値を示す。
実測値C:67.35 H:4.55 N:0.00
理論値C:68.85 H:4.95 N:0.00
【0230】
得られた芳香族オキシカルボン酸(X3)について、液体クロマトグラフ質量分析を実施例1のA−1に記載の条件で測定した。以下に質量分析の理論値及び実測値を示す。
実測値:LC/MS m/z=243.8[M−H]
理論値:m/z=244.24
【0231】
(比較例4)
2,3−ジヒドロキシ安息香酸25.0gをメタノール160mLに溶解させ、炭酸カリウム40.00gを加えて65℃に加熱した。この反応液に1−ブロモプロパン(東京化成工業株式会社製、製品コード:B0638)39.9gを滴下し、65℃にて12時間反応させた。得られた反応液を冷却後、濾過し、濾液中のメタノールを減圧留去して析出物を得た。
【0232】
得られた析出物をpH=2の水2.0Lに分散させ、酢酸エチルを加えて酢酸エチル相を抽出した。その後、水洗し、硫酸マグネシウムで乾燥させ、減圧下、酢酸エチルを留去して析出物を得た。得られた析出物をヘキサン洗浄後、トルエンと酢酸エチルにて再結晶し、下記化学式(Y4)に示す芳香族オキシカルボン酸を22.1g得た。
【0233】
【化45】

【0234】
得られた芳香族オキシカルボン酸(Y4)について、HPLC純度を実施例1のA−1に記載の条件で測定したところ、95.7%だった。
【0235】
得られた芳香族オキシカルボン酸(Y4)について、元素分析を実施例1のA−1に記載の条件で測定した。以下に、元素分析の理論値及び実測値を示す。
実測値 C:62.00 H:5.99 N:0.00
理論値 C:61.22 H:6.16 N:0.00
【0236】
得られた芳香族オキシカルボン酸(Y4)について、LC/MS分析を実施例1のA−1に記載の条件で測定した。また、質量分析の理論値及び実測値を以下に示す。
実測値:LC/MS m/z=195.6[M−H]
芳香族オキシカルボン酸の理論分子量:196.2
【0237】
水145mLに25.7%の硫酸アルミニウム水溶液25.7加え、90℃に加熱した。この溶液に、水100mLに20%水酸化ナトリウム水溶液24.1gと芳香オキシカルボン酸(Y4)を10.0g加え、90℃に加熱した溶液を13分間で加え、95℃で2時間加熱撹拌した。その後、濾過し濾液の電気伝導度が300μS/cm以下になるまで水道水で水洗し、80℃にて48時間乾燥し、白色の芳香族オキシカルボン酸の金属化合物(X4)を10.0g得た。
【0238】
得られた金属化合物(X4)について、元素分析を実施例1のB−1に記載の条件で測定した。以下に、元素分析の実測値を示す。
実測値 C:56.92 H:5.02 N:0.00
【0239】
得られた金属化合物(X4)について、含有する金属の重量%を実施例1のB−1に記載の条件で測定した。以下に、原子吸光分析の実測値を示す。
実測値 Al=4.81%、Na=0.02%
【0240】
得られた金属化合物(X4)について、TG−DTAを実施例1のB−1に記載の条件で測定した。その測定の結果、発熱温度:550℃、重量減少温度:194℃、543℃を観測した。
【0241】
得られた金属化合物(X4)について、LC/MS分析を実施例1のB−1に記載の条件で測定した。そのLC/MS分析の測定結果から、分子量が570.48であり、芳香族オキシカルボン酸(Y4)とAlとが、3:2である構造を推定できるデータを得た。下記に取り得ると考えられる化学式(X4)を示す。
【0242】
【化46】

【0243】
(実施例C1)荷電制御剤の帯電性試験Aにおける荷電制御特性の評価
前記実施例で得られた芳香族オキシカルボン酸金属化合物(B1)1重量部、スチレン−アクリル共重合樹脂(三井化学株式会社製、商品名:CPR−100)100重量部を予備混合したのち、加熱ロール(株式会社栗本鐵工所製、商品名:S−1、KRCニーダ)で溶融混練した。冷却後、超遠心粉砕機(Retsch社製、商品名:ULTRA CENTRIFUGAL MILL、スクリーン目開き1.5mm)で粗粉砕し、分級機付きエアージェットミル(株式会社セイシン企業製、商品名:CO−JET)により、平均粒径をレーザ回折/散乱式粒子径分布測定装置(株式会社堀場製作所製、商品名:Partica LA−950)にて測定し、9.5〜10.5μmになるよう微粉砕を行った。この樹脂粒子2.5重量部と、鉄粉キャリア(パウダーテック株式会社製、商品名:TEFV200/300)50.0重量部とを100mLの軟膏瓶にいれ、ボールミル回転架台(株式会社アサヒ理化製作所製、商品名:小型ボールミル回転架台 AV−1)で100rpmにて回転させながら、設定した時間毎に得られる混合物を採取し、ブローオフ帯電量測定機(東芝ケミカル株式会社製、商品名:TB−200)を使用して、以下の条件にて帯電量を測定した。得られた負帯電性確認データを表5と図8とに示した。
【0244】
測定条件:金属メッシュ目開き34μm 圧力10.0kPa 吸引力10.0kPa 吸引時間10.0秒
【0245】
更に、実施例で得られた芳香族オキシカルボン酸金属化合物B2、B3、B4と比較例化合物例X1、X2、X3、X4とを芳香族オキシカルボン酸金属化合物B1と同様に、帯電性試験Aを行った。得られた負帯電性確認データを表5と図8とに示した。
【0246】
【表5】

【0247】
(実施例C2)実施例C1で得られた樹脂粒子である荷電制御剤の環境安定性評価
実施例で得られた芳香族オキシカルボン酸金属化合物B1、B2、B3、B4、と比較化合物例X1、X2、X3、X4で得られた樹脂粒子を用い、下記の環境安定性評価を行った。表6に結果を示した。
【0248】
鉄粉キャリア(パウダーテック株式会社製、商品名:TEFV200/300)50.0重量部と前記帯電性試験Aの条件にて作製した各樹脂粒子を100mL軟膏瓶にいれ、中央に1cmの穴の空いた蓋をした。これを恒温恒湿器(東京理化機械株式会社製、商品名:エンビロスKCL−2000W)中のボールミル機(株式会社アサヒ理化製作所製、商品名:小型ボールミル回転架台 AV−1)にセットし、各設定された温度と湿度の環境下で24時間放置した。24時間後、100mL軟膏瓶を100rpmにて回転させながら、15分間撹拌後、混合物を採取し、ブローオフ帯電量測定機(東芝ケミカル株式会社製、商品名:TB−200)を使用して、以下の条件にて帯電量を測定した。
測定条件:金属メッシュ目開き34μm 圧力10.0kPa 吸引力10.0kPa 吸引時間10.0秒
【0249】
【表6】

【0250】
(実施例C3)荷電制御剤の帯電性試験Bにおける荷電制御特性の評価
前記実施例で得られた芳香族オキシカルボン酸金属化合物(B1)1重量部、ポリエステル樹脂(三菱レーヨン株式会社製、商品名:ER−508)100重量部を予備混合したのち、加熱ロール(株式会社栗本鐵工所製、商品名:S−1、KRCニーダ)で溶融混練した。冷却後、超遠心粉砕機(Retsch社製、商品名:ULTRA CENTRIFUGAL MILL、スクリーン目開き1.5mm)で粗粉砕し、分級機付きエアージェットミル(株式会社セイシン企業製、商品名:CO−JET)により、平均粒径をレーザ回折/散乱式粒子径分布測定装置(株式会社堀場製作所製、商品名:Partica LA−950)にて測定し、9.5〜10.5μmになるよう微粉砕を行った。この樹脂粒子2.5重量部と、鉄粉キャリア(パウダーテック株式会社製、商品名:TEFV200/300)50.0重量部とを100mLの軟膏瓶にいれ、ボールミル回転架台(株式会社アサヒ理化製作所製、商品名:小型ボールミル回転架台 AV−1)で100rpmにて回転させながら、設定した時間毎に得られる混合物を採取し、ブローオフ帯電量測定機(東芝ケミカル株式会社製、商品名:TB−200)を使用して、以下の条件にて帯電量を測定した。得られた負帯電性確認データの結果を表7と図9に示した。
測定条件:金属メッシュ目開き34μm 圧力10.0kPa 吸引力10.0kPa 吸引時間10.0秒
【0251】
更に、実施例で得られた芳香族オキシカルボン酸金属化合物B2、B3、B4と比較化合物例X1、X2、X3、X4を芳香族オキシカルボン酸金属化合物B1と同様に、帯電性試験Bを行った。得られた負帯電性確認データの結果を表7と図9とに示した。
【0252】
【表7】

【0253】
(実施例C4)実施例C3で得られた樹脂粒子である荷電制御剤の環境安定性評価
実施例で得られた芳香族オキシカルボン酸金属化合物B1、B2、B3、B4と比較化合物例X1、X2、X3、X4とで得られた樹脂粒子を用い、下記の環境安定性評価を行った。表8に結果を示した。
【0254】
鉄粉キャリア(パウダーテック株式会社製、商品名:TEFV200/300)50.0重量部と前記帯電性試験Bの条件にて作製した各樹脂粒子を100mL軟膏瓶にいれ、中央に1cmの穴の空いた蓋をした。これを恒温恒湿器(東京理化機械株式会社製、商品名:エンビロスKCL−2000W)中のボールミル機(株式会社アサヒ理化製作所製、商品名:小型ボールミル回転架台 AV−1)にセットし、各設定された温度と湿度の環境下で24時間放置した。24時間後、100mL軟膏瓶を100rpmにて回転させながら、15分間撹拌後、混合物を採取し、ブローオフ帯電量測定機(東芝ケミカル株式会社製、商品名:TB−200)を使用して、以下の条件にて帯電量を測定した。
測定条件:金属メッシュ目開き34μm 圧力10.0kPa 吸引力10.0kPa 吸引時間10.0秒
【0255】
【表8】

【0256】
図及び表から明らかなとおり、本発明の芳香族オキシカルボン酸金属化合物である荷電制御剤は、帯電の立ち上がりが速く、更に、環境の変化に対して帯電値が安定しており良好である。
【0257】
(実施例C5)荷電制御剤の帯電性試験Aにおける荷電制御特性の評価
実施例で得られた芳香族オキシカルボン酸金属化合物B5、B6と比較化合物例X1、X2、X3、X4を実施例C1に記載の芳香族オキシカルボン酸金属化合物B1と同様に、帯電性試験Aを行った。得られた負帯電性確認データの結果を表9と図10とに示した。
【0258】
【表9】

【0259】
(実施例C6)実施例C5で得られた樹脂粒子である荷電制御剤の環境安定性評価
実施例で得られた芳香族オキシカルボン酸金属化合物B5、B6と比較化合物例X1、X2、X3、X4とで得られた樹脂粒子を用い、下記の環境安定性評価を行った。表10に結果を示した。
【0260】
【表10】

【0261】
図及び表から明らかなとおり、本発明の芳香族オキシカルボン酸金属化合物である荷電制御剤は、帯電の立ち上がりが速く、更に、環境の変化に対して帯電値が安定しており良好である。
【0262】
(実施例C7)荷電制御剤の帯電性試験Bにおける荷電制御特性の評価
実施例で得られた芳香族オキシカルボン酸金属化合物B5、B6と比較化合物例X1、X2、X3、X4を実施例C3に記載の芳香族オキシカルボン酸金属化合物B1と同様に、帯電性試験Bを行った。得られた負帯電性確認データの結果を表11と図11とに示した。
【0263】
【表11】

【0264】
(実施例C8)実施例C7で得られた樹脂粒子である荷電制御剤の環境安定性評価
実施例で得られた芳香族オキシカルボン酸金属化合物B5、B6と比較化合物例X1、X2、X3、X4とで得られた樹脂粒子を用い、下記の環境安定性評価を行った。表12に結果を示した。
【0265】
【表12】

【0266】
図及び表から明らかなとおり、本発明の芳香族オキシカルボン酸金属化合物である荷電制御剤は、帯電の立ち上がりが速く、更に、環境の変化に対して帯電値が安定しており良好である。
【産業上の利用可能性】
【0267】
本発明の荷電制御剤は芳香族オキシカルボン酸金属化合物を有効成分として含有しており、耐熱性、帯電特性、環境安定性に優れているので、各種の電荷や帯電を利用する産業、例えば静電粉体塗料、電子写真トナー、静電インクジェット記録用途、電子ペーパーなどで使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式(1)
【化1】

(式中、置換基であるA及びBは、前記Aが炭素数1〜8で直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基で前記Bがアルキル鎖を含有してもよいベンジルオキシ基、または前記Aがアルキル鎖を含有してもよいベンジルオキシ基で前記Bが炭素数1〜8で直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基であり、Mは、水素原子、アルカリ金属、アンモニウム原子団及びそれらの混合物から選ばれる何れかである)
で示される少なくとも1種類の芳香族オキシカルボン酸が、アルミニウムで、金属錯体化及び/または金属塩化されており、そのX線回折スペクトルにおいて、アモルファス状である芳香族オキシカルボン酸金属化合物を有効成分として含有することを特徴とする荷電制御剤。
【請求項2】
下記化学式(2)
【化2】

(式中、Rは、炭素数1〜8で直鎖または分岐鎖のアルキル基であり、Mは、水素原子、Li、Na、Kなどのアルカリ金属、アンモニウム原子団及びそれらの混合物から選ばれる何れかである)
で示される少なくとも1種類の芳香族オキシカルボン酸が、アルミニウムで、金属錯体化及び/または金属塩化されており、そのX線回折スペクトルにおいて、アモルファス状である芳香族オキシカルボン酸金属化合物を有効成分として含有することを特徴とする荷電制御剤。
【請求項3】
前記芳香族オキシカルボン酸金属化合物が、前記化学式(1)または(2)で示される芳香族オキシカルボン酸と、アルミニウムを含有する金属化剤との反応によって得られた金属錯体及び/または金属塩であることを特徴とする請求項1または2に記載の荷電制御剤。
【請求項4】
前記金属化剤が塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム、塩基性硫酸アルミニウム、酢酸アルミニウム、塩基性酢酸アルミニウム、硫酸アルミニウムカリウム、硝酸アルミニウム、乳酸アルミニウム、アルミニウムn−プロポキシド、アルミニウムイソプロポキシド及びt−ブトキシアルミニウムから選ばれるアルミニウム化剤であることを特徴とする請求項3に記載の荷電制御剤。
【請求項5】
前記芳香族オキシカルボン酸金属化合物のX線回折スペクトルにおいて、多重ピーク分離法による結晶化度が、2θ=5°〜40°の範囲(θはブラッグ角)にあって、0〜50%であることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の荷電制御剤。
【請求項6】
前記化学式(1)または前記化学式(2)で示される芳香族オキシカルボン酸と、前記アルミニウムを含有する金属化剤とのモル比が2:1である前記金属錯体及び/または金属塩であることを特徴とする請求項3〜5の何れかに記載の荷電制御剤。
【請求項7】
前記化学式(1)または前記化学式(2)で示される芳香族オキシカルボン酸と、前記アルミニウムを含有する金属化剤とのモル比が3:2である前記金属錯体及び/または金属塩であることを特徴とする請求項3〜5の何れかに記載の荷電制御剤。
【請求項8】
前記化学式(1)または前記化学式(2)で示される芳香族オキシカルボン酸と、前記アルミニウムを含有する金属化剤とのモル比が3:1である前記金属錯体及び/または金属塩であることを特徴とする請求項3〜5の何れかに記載の荷電制御剤。
【請求項9】
下記化学式(1)
【化3】

(式中、置換基であるA及びBは、前記Aが炭素数1〜8で直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基で前記Bがアルキル鎖を含有してもよいベンジルオキシ基、または前記Aがアルキル鎖を含有してもよいベンジルオキシ基で前記Bが炭素数1〜8で直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基であり、Mは、水素原子、アルカリ金属、アンモニウム原子団及びそれらの混合物から選ばれる何れかである)
で示される少なくとも1種類の芳香族オキシカルボン酸と、アルミニウムを含有する金属化剤とを反応させ、金属錯体化及び/または金属塩化し、そのX線回折スペクトルにおいてアモルファス状である芳香族オキシカルボン酸金属化合物とする工程を有することを特徴とする荷電制御剤の製造方法。
【請求項10】
下記化学式(2)
【化4】

(式中、Rは、炭素数1〜8で直鎖または分岐鎖のアルキル基であり、Mは、水素原子、Li、Na、Kなどのアルカリ金属、アンモニウム原子団及びそれらの混合物から選ばれる何れかである。)
で示される少なくとも1種類の芳香族オキシカルボン酸と、アルミニウムを含有する金属化剤とを反応させ、金属錯体化及び/または金属塩化し、そのX線回折スペクトルにおいてアモルファス状である芳香族オキシカルボン酸金属化合物とする工程を有することを特徴とする荷電制御剤の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−57908(P2013−57908A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−197590(P2011−197590)
【出願日】平成23年9月9日(2011.9.9)
【出願人】(000103895)オリヱント化学工業株式会社 (59)
【Fターム(参考)】