説明

荷電制御剤及びその製造方法

【課題】堅牢性が高く、熱可塑性樹脂に対する相溶性が向上した、簡便に製造できるものであり、帯電の立ち上がりが速く、優れた帯電特性を発現させる芳香族オキシカルボン酸金属化合物を有効成分として含有する荷電制御剤を提供する。
【解決手段】荷電制御剤は、下記化学式(1)
【化1】


(Rは独立して水素原子、水酸基、ハロゲン原子、カルボキシル基、アルキル基またはアルコキシ基であり、Rは水素原子、水酸基、ハロゲン原子、アルキル基またはアルコキシ基であり、g及びhは独立して1〜3の数、Mは水素原子、アルカリ金属、アンモニウム原子団及びそれらの混合物から選ばれる何れかである)で示される少なくとも1種類の芳香族オキシカルボン酸類が2価金属、3価金属、及び4価金属から選ばれる金属で、金属錯体化及び/または金属塩化されている芳香族オキシカルボン酸金属化合物を、有効成分として含有するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷電制御用途に有用な新規化合物である置換基を有する芳香族オキシカルボン酸金属化合物を有効成分として含有する荷電制御剤、及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
置換基を有してもよい、サリチル酸、オキシナフトエ酸、サリチルアルデヒド、芳香族ジオール、フタル酸などの有機酸を配位子とするキレート化合物(金属塩や金属錯塩)は、工業的に重要な材料であり、広い用途に用いられている。このような用途としては、感圧紙、感熱紙、感光感圧紙、通電感熱記録紙、感熱転写紙など記録材料の顕色剤や潤滑油など液状組成物の摩擦調整剤などが挙げられる。
【0003】
摩擦帯電させたトナーにより感光体上の静電潜像を現像し、記録紙上に転写し定着させる電子写真システムは、複写機、プリンター、ファクシミリなどに利用されている。トナーの帯電の立ち上がり速度を速めたり、トナーを十分に帯電させ、その荷電量を適切に制御しつつ安定化させて帯電特性を高めたり、静電潜像の現像速度を早めつつ鮮明な画像を形成したりするため、予めトナーに荷電制御剤が添加される。このような負帯電性荷電制御剤として、芳香族オキシカルボン酸、グリコール酸、ジカルボン酸、芳香族ジオールの金属塩や金属錯塩などが知られている。
【0004】
上記の荷電制御剤は、画像濃度とカブリとのバランスが取り難い、高湿環境下で良好な画像濃度を得にくい、樹脂への分散性が悪い、保存安定性、定着性及び耐オフセット性に十分でないなどの改善の余地を有している。
【0005】
このような改善の取り組みとして、例えば、特許文献1には、置換基を有するサリチル酸の亜鉛錯化合物を荷電制御剤として含有する静電荷像現像用トナーが記載されている。特許文献2には、サリチル酸と金属とが3:2型であって置換基を有するサリチル酸金属化合物を荷電制御剤として含有する静電荷像現像用トナーが記載されている。特許文献3には、長径/短径が特定されたサリチル酸金属塩を帯電制御剤として含有する静電荷像現像用トナーが記載されている。特許文献4には、特定のヒドロキシカルボン酸アルミニウムを帯電制御剤として含有する静電荷像現像用トナーが記載されている。特許文献5には、特定のヒドロキシ芳香族カルボン酸のカルシウム塩とヒドロキシ芳香族カルボン酸とからなる組成物を含有する静電荷像現像用トナーが記載されている。
【0006】
近年の複写機やプリンターの解像度向上などの高性能化、電子写真システムでの高速現像のみならず低速現像などの用途の拡大に伴い、トナーの帯電の立ち上がりをより速くし、より優れた帯電特性を発現させ、鮮明で高解像度の画像を形成させることができ、簡便に製造できる荷電制御剤が求められていた。また、構造体表面の電荷に、静電気帯電した粉体塗料を引き付け、焼き付ける静電粉体塗装に使用される粉体塗料にも用いることができる荷電制御剤が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭61−069073号公報
【特許文献2】特開平9−124659号公報
【特許文献3】特開2001−356529号公報
【特許文献4】特開2004−271795号公報
【特許文献5】特開2002−363124号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は前記の課題を解決するためになされたもので、堅牢性が高く、熱可塑性樹脂に対する相溶性が向上した、簡便に製造できるものであり、帯電の立ち上がりが速く、優れた帯電特性を発現させる芳香族オキシカルボン酸金属化合物を有効成分として含有する荷電制御剤、及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記の目的を達成するためになされた、本発明の荷電制御剤は、下記化学式(1)
【化1】

(式中、Rは、それぞれ独立して同一または異なり、水素原子、水酸基、ハロゲン原子、カルボキシル基、炭素数1〜18で直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基、または炭素数1〜18で直鎖若しくは分岐鎖のアルコキシ基であり、Rは、水素原子、水酸基、ハロゲン原子、炭素数1〜18で直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基、または炭素数1〜18で直鎖若しくは分岐鎖のアルコキシ基であり、g及びhは、それぞれ独立して同一または異なり、1〜3の数であり、Mは、水素原子、アルカリ金属、アンモニウム原子団及びそれらの混合物から選ばれる何れかである)で示される少なくとも1種類の芳香族オキシカルボン酸類が2価金属、3価金属、及び4価金属から選ばれる金属で、金属錯体化及び/または金属塩化されている芳香族オキシカルボン酸金属化合物を、有効成分として含有することを特徴とする。
【0010】
荷電制御剤は、前記芳香族オキシカルボン酸金属化合物が、前記化学式(1)で示される芳香族オキシカルボン酸類と、前記金属を含有する金属化剤との反応によって得られた金属錯体及び/または金属塩であることが好ましい。
【0011】
荷電制御剤は、前記芳香族オキシカルボン酸金属化合物が、前記化学式(1)で示される芳香族オキシカルボン酸類と前記金属を含有する金属化剤とのモル比が2:1である前記金属錯体及び/または金属塩であること、前記化学式(1)で示される芳香族オキシカルボン酸類と前記金属を含有する金属化剤とのモル比が3:2である前記金属錯体及び/または金属塩であること、前記化学式(1)で示される芳香族オキシカルボン酸類と前記金属を含有する金属化剤とのモル比が3:1である前記金属錯体及び/または金属塩であることから選ばれる何れかであることが好ましい。
【0012】
荷電制御剤は、前記金属がZn、Al、Si、B、Fe、Cr、及びZrから選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。更に前記金属がAl及び/またはZrであると好適である。
【0013】
荷電制御剤は、前記芳香族オキシカルボン酸金属化合物が、下記化学式(2)
【化2】

(式中、Rは、それぞれ独立して同一または異なり、水素原子、水酸基、ハロゲン原子、カルボキシル基、炭素数1〜18で直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基、または炭素数1〜18で直鎖若しくは分岐鎖のアルコキシ基であり、Rは、水素原子、水酸基、ハロゲン原子、炭素数1〜18で直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基、または炭素数1〜18で直鎖若しくは分岐鎖のアルコキシ基であり、g及びhは、それぞれ独立して同一または異なり、1〜3の数であり、Mは、Zn、Al、Si、B、Fe、Cr、及びZrから選ばれる何れかの金属原子であり、p及びrは、それぞれ独立して同一または異なり、0〜6の数であり、pとrとが共に0であることを除く、qは1〜4の数であり、k及びaは、それぞれ独立して同一または異なり、0〜3の数であり、bは1〜2の数であり、(T)b+はカチオンである)または、下記化学式(3)
【化3】

(式中、Rは、それぞれ独立して同一または異なり、水素原子、水酸基、ハロゲン原子、カルボキシル基、炭素数1〜18で直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基、または炭素数1〜18で直鎖若しくは分岐鎖のアルコキシ基であり、Rは、水素原子、水酸基、ハロゲン原子、炭素数1〜18で直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基、または炭素数1〜18で直鎖若しくは分岐鎖のアルコキシ基であり、g及びhは、それぞれ独立して同一または異なり、1〜3の数であり、Mは、Zn、Al、Si、B、Fe、Cr、及びZrから選ばれる何れかの金属原子であり、v及びwは、それぞれ独立して同一または異なり、0〜6の数であり、vとwとが共に0であることを除く、sは1〜4の数であり、m及びcは、それぞれ独立して同一または異なり、0〜3の数であり、dは1〜2の数であり、(Z)d−はアニオンである)で示されることが好ましい。また、式(2)及び(3)中、破線は、配位結合、または非結合を示している。なお、B(ホウ素)やSi(ケイ素)のような半金属も金属として表記する。
【0014】
荷電制御剤は、前記化学式(1)、(2)または(3)中、Rがそれぞれ独立して同一または異なり、水素原子、ハロゲン原子または炭素数1〜18で直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基であり、且つ、Rが水素原子であることが好ましい。
【0015】
荷電制御剤は、前記芳香族オキシカルボン酸金属化合物が、X線回折スペクトルにおいて、アモルファス状であり、多重ピーク分離法による結晶化度を、2θ=5°〜40°の範囲(θはブラッグ角)において0〜50%とするものである。更に好ましくは、多重ピーク分離法による結晶化度を、2θ=5°〜40°の範囲(θはブラッグ角)において0〜30%とするものである。前記金属がAlまたはZrである芳香族オキシカルボン酸金属化合物を選択することが更に好ましい。
【0016】
本発明の荷電制御剤の製造方法は、下記化学式(1)
【化4】

(式中、Rは、それぞれ独立して同一または異なり、水素原子、水酸基、ハロゲン原子、カルボキシル基、炭素数1〜18で直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基、または炭素数1〜18で直鎖若しくは分岐鎖のアルコキシ基であり、Rは、水素原子、水酸基、ハロゲン原子、炭素数1〜18で直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基、または炭素数1〜18で直鎖若しくは分岐鎖のアルコキシ基であり、gは1〜3の数であって、好ましくは1であり、hは1〜3の数であり、Mは、水素原子、アルカリ金属、アンモニウム原子団及びそれらの混合物から選ばれる何れかである)で示される少なくとも1種類の芳香族オキシカルボン酸類と、Zn、Al、Si、B、Fe、Cr、及びZrから選ばれる少なくとも1種の金属を含有する金属化剤とを反応させ、金属錯体化及び/または金属塩化することで芳香族オキシカルボン酸金属化合物を合成する工程を包含することを特徴とする方法である。
【0017】
荷電制御剤の製造方法は、前記化学式(1)中、Rが、それぞれ独立して同一または異なり、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜18で直鎖または分岐鎖のアルキル基であり、且つ、Rが水素原子であることが好ましい。
【0018】
荷電制御剤の製造方法は、前記芳香族オキシカルボン酸類と前記金属がZn、Al、及びZrから選ばれる金属化剤とを水中で反応させることが好ましい。前記金属がAl及び/またはZrであるとより好ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明の荷電制御剤は、有効成分として含有される芳香族オキシカルボン酸金属化合物により、優れた帯電付与性、荷電制御性を示すことができる。
【0020】
本発明の荷電制御剤及びその有効成分である芳香族オキシカルボン酸金属化合物は、環境安定性が高く、帯電立ち上がりが速く、負電荷に帯電し均一で高い荷電量のまま長時間安定して維持できる。そのため、低速複写から高速複写に至る幅広い用途に、使用される。また、静電粉体塗装に使用される粉体塗料にも使用できる。
【0021】
本発明の荷電制御剤の製造方法によれば、簡便に荷電制御機能を有し荷電制御剤の有効成分となる芳香族オキシカルボン酸金属化合物を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明を適用する荷電制御剤の有効成分となる実施例1の原料である芳香族オキシカルボン酸類の核磁気共鳴スペクトルのチャートを示す図である。
【図2】本発明を適用する荷電制御剤の有効成分となる実施例1の原料である芳香族オキシカルボン酸類の赤外吸収スペクトルのチャートを示す図である。
【図3】本発明を適用する荷電制御剤の有効成分となる実施例1の原料である芳香族オキシカルボン酸類の示差熱−熱重量分析のチャートを示す図である。
【図4】本発明を適用する荷電制御剤の有効成分となる実施例1の原料である芳香族オキシカルボン酸類の液体クロマトグラフ質量分析のチャートを示す図である。
【図5】本発明を適用する荷電制御剤の有効成分となる実施例1の芳香族オキシカルボン酸金属化合物の示差熱−熱重量分析のチャートを示す図である。
【図6】本発明を適用する荷電制御剤の有効成分となる実施例2の原料である芳香族オキシカルボン酸類の核磁気共鳴スペクトルのチャートを示す図である。
【図7】本発明を適用する荷電制御剤の有効成分となる実施例2の原料である芳香族オキシカルボン酸類の赤外吸収スペクトルのチャートを示す図である。
【図8】本発明を適用する荷電制御剤の有効成分となる実施例2の原料である芳香族オキシカルボン酸類の示差熱−熱重量分析のチャートを示す図である。
【図9】本発明を適用する荷電制御剤の有効成分となる実施例2の原料である芳香族オキシカルボン酸類のX線回折のチャートを示す図である。
【図10】本発明を適用する荷電制御剤の有効成分となる実施例2の芳香族オキシカルボン酸金属化合物の示差熱−熱重量分析のチャートを示す図である。
【図11】本発明を適用する荷電制御剤の有効成分となる実施例2の芳香族オキシカルボン酸金属化合物のX線回折のチャートを示す図である。
【図12】本発明を適用する荷電制御剤の有効成分となる実施例3の原料である芳香族オキシカルボン酸類のX線回折のチャートを示す図である。
【図13】本発明を適用する荷電制御剤の有効成分となる実施例3の芳香族オキシカルボン酸金属化合物の示差熱−熱重量分析のチャートを示す図である。
【図14】本発明を適用する荷電制御剤の有効成分となる実施例3の芳香族オキシカルボン酸金属化合物のX線回折のチャートを示す図である。
【図15】本発明を適用する荷電制御剤の有効成分となる実施例5の原料である芳香族オキシカルボン酸類のX線回折のチャートを示す図である。
【図16】本発明を適用する荷電制御剤の有効成分となる実施例5の芳香族オキシカルボン酸金属化合物のX線回折のチャートを示す図である。
【図17】本発明を適用する荷電制御剤の有効成分となる実施例6の芳香族オキシカルボン酸金属化合物の示差熱−熱重量分析のチャートを示す図である。
【図18】本発明を適用する荷電制御剤の有効成分となる実施例6の芳香族オキシカルボン酸金属化合物のX線回折のチャートを示す図である。
【図19】本発明を適用する荷電制御剤の有効成分となる実施例13の芳香族オキシカルボン酸金属化合物のX線回折のチャートを示す図である。
【図20】本発明を適用する荷電制御剤の有効成分となる実施例15の芳香族オキシカルボン酸金属化合物のX線回折のチャートを示す図である。
【図21】本発明を適用する荷電制御剤の有効成分となる実施例19の芳香族オキシカルボン酸金属化合物のX線回折のチャートを示す図である。
【図22】本発明を適用する荷電制御剤及び比較化合物から得られる各荷電制御剤の帯電性試験Aにおける帯電量を示す図である。
【図23】本発明を適用する荷電制御剤及び比較化合物から得られる各荷電制御剤の帯電性試験Aにおける帯電量を示す図である。
【図24】本発明を適用する荷電制御剤及び比較化合物から得られる各荷電制御剤の帯電性試験Bにおける帯電量を示す図である。
【図25】本発明を適用する荷電制御剤及び比較化合物から得られる各荷電制御剤の帯電性試験Bにおける帯電量を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明するが、本発明の範囲はこれらの形態に限定されるものではない。
【0024】
本発明の荷電制御剤は、下記化学式(1)で示される芳香族オキシカルボン酸類が2価金属、3価金属、及び4価金属から選ばれる金属または半金属である金属で金属錯体化及び/または金属塩化されている芳香族オキシカルボン酸金属化合物を、有効成分として含有するものである。
【0025】
【化5】

【0026】
式(1)中、置換基Rは、それぞれ独立して同一または異なり、例えば水素原子;水酸基;F、Cl、Brなどのハロゲン原子;COOH、COONaやCOOKなどのアルカリ金属塩、COONHまたはそれらの混合物などのカルボオキシ含有基;メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、iso−ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基などの炭素数1〜18で直鎖または分岐鎖のアルキル基;メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、iso−プロポキシ基、n−ブトキシ基、iso−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、n−ペントキシ基、iso−ペントキシ基、ヘキシルオキシ基、ヘプトキシ基、オクチルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基などの炭素数1〜18で直鎖または分岐鎖のアルコキシ基である。なかでも炭素数1〜8で直鎖または分岐鎖のアルキル基が好ましい。具体的に、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、iso−ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基が挙げられる。
【0027】
同じく置換基Rは、例えば水素原子;水酸基;F、Cl、Brなどのハロゲン原子;COOH、COONaやCOOKなどのアルカリ金属塩、COONHまたはそれらの混合物などのカルボオキシ含有基;メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、iso−ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基などの炭素数1〜18で直鎖または分岐鎖のアルキル基;メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、iso−プロポキシ基、n−ブトキシ基、iso−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、n−ペントキシ基、iso−ペントキシ基、ヘキシルオキシ基、ヘプトキシ基、オクチルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基などの炭素数1〜18で直鎖または分岐鎖のアルコキシ基である。なかでも水素原子が好ましい。
gは1〜3の数であり、帯電制御性を考慮すると1が好ましい。
hは1〜3の数であり、立体障害などの反応性を考慮すると、低コストである1が好ましい。
は、水素原子(H)、Li、Na、Kなどアルカリ金属、NHや炭素数1〜12のアルキル基を有するモノ−,ジ−,トリ−若しくはテトラアルキルアンモニウムイオンで例示されるアンモニウム原子団、またはそれらの混合物から選ばれる何れかである。
【0028】
この芳香族オキシカルボン酸金属化合物は、溶媒中で、前記化学式(1)で示される芳香族オキシカルボン酸類と、2価金属、3価金属、及び4価金属から選ばれる金属を含有する金属化剤とを反応させることで製造することができる。その反応例を下記化学反応式(I)に示す。
【0029】
【化6】

式(I)中、R、R、g、h、Mは、それぞれ独立して同一または異なり、前記で例示したものと同様である。M及びMは、それぞれ、2価金属、3価金属、4価金属から選ばれる金属原子であり、q及びsは、それぞれ1〜4の数である。また、p、r、v、及びwは、それぞれ0〜6の数であり、そのうちpとrとが共に0であることを除き、且つvとwとが共に0であることを除くものである。(T)b+はカチオンであり、その価数bは1〜2である。(Z)d−はアニオンであり、その価数dは1〜2である。a及びcは、それぞれ0または3以下の正数であり、m及びkは、それぞれ0または3以下の正数である。但し、式(I)中、破線は、配位結合、または非結合を示している。なお、B(ホウ素)やSi(ケイ素)のような半金属も金属として表記する。
【0030】
(T)b+のカチオンとしては、具体的に、水素原子、アルカリ金属、またはアルカリ土類金属からのカチオン、アンモニウムイオン、(Me−(A)n1b+、(Me−(B)n2b+のような錯イオンが挙げられる。ここで、Meは、2価金属、3価金属、及び4価金属から選ばれる何れかの金属である。また、Aは水酸化物イオン、硫酸イオン、炭酸イオン、炭酸水素イオン、酢酸イオン、乳酸イオン、及びハロゲンイオンなどから選ばれるアニオンであって、nは1または2の数である。Bは水酸化物イオン、硫酸イオン、炭酸イオン、炭酸水素イオン、酢酸イオン、乳酸イオン、ハロゲンイオンなどから選ばれるアニオンであって、nは1/2または1の数である。
【0031】
(Z)d−のアニオンとしては、具体的に、水酸化物イオン、硫酸イオン、炭酸イオン、炭酸水素イオン、酢酸イオン、乳酸イオン、ハロゲンイオンなどのアニオンが挙げられる。
【0032】
この金属化反応において、芳香族オキシカルボン酸類の金属化合物を形成する2価金属(カチオン表記)として、例えば、Mg2+、Ca2+、Sr2+、Pb2+、Fe2+、Co2+、Ni2+、Zn2+、Cu2+が挙げられ、中でもZn2+、Ca2+、Mg2+、Sr2+であると好ましい。同じく、3価金属(カチオン表記)としては、例えば、Al3+、B3+、Cr3+、Fe3+、Ni3+が挙げられ、中でもAl3+、B3+、Cr3+、Fe3+であると好ましい。また、4価金属(カチオン表記)としては、例えば、Si4+、Zr4+、Ti4+が挙げられ、中でもSi4+、Zr4+であると好ましい。これらの金属の中で特に好ましくは、Zn2+、Al3+、B3+、Fe3+、Cr3+、Si4+、Zr4+であり、更に好ましくはAl3+である。
【0033】
このように、金属化反応によって芳香族オキシカルボン酸金属化合物を形成させる金属M,Mを含有する金属化剤として、具体的に、塩化亜鉛、硫酸亜鉛、n−プロポキシ亜鉛、n−ブトキシ亜鉛などの亜鉛化剤;塩化カルシウム、炭酸水素カルシウムなどのカルシウム化剤;塩化マグネシウム、炭酸水素マグネシウム、炭酸マグネシウムなどのマグネシウム化剤;水酸化ストロンチウム、硝酸ストロンチウムなどのストロンチウム化剤;塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム、塩基性硫酸アルミニウム、酢酸アルミニウム、塩基性酢酸アルミニウム、硝酸アルミニウム、乳酸アルミニウム、アルミニウムn−プロポキシド、アルミニウムイソプロポキシド、t−ブトキシアルミニウムなどのアルミニウム化剤;塩化チタン、硫酸チタン、n−プロポキシチタン、イソプロポキシチタン、n−ブトキシチタンなどのチタン化剤;塩化ジルコニウム、硫酸ジルコニウム、n−プロポキシジルコニウム、エトキシジルコニウム、イソプロポキシジルコニウム、ブトキシジルコニウムなどのジルコニウム化剤;乳酸クロム、蟻酸クロム、硫酸クロム、塩化クロム、及び硝酸クロムなどのクロム化剤;塩化第二鉄、硫酸第二鉄、硫酸第一鉄、硝酸第二鉄、塩化第一鉄第二鉄(FeCl・xHO、FeCl・xHO)などの鉄化剤;ホウ酸、三塩化ホウ素、トリメトキシボラン、トリエトキシボランなどのホウ素化剤;四塩化ケイ素、エトキシシラン、メトキシシラン、ブトキシシラン、イソプロポキシシランなどのケイ素化剤などが挙げられる。この金属化剤は、配位子となる前記化学式(1)で示される芳香族オキシカルボン酸類に対して、1/5〜5原子当量、好ましくは1/3〜3原子当量用いられる。本発明に用いる金属化剤は1種類選択して反応させたり、または各成分を、2種類以上組合せて、混合して反応させたりすることができる。
【0034】
この金属化反応に用いる溶媒として、芳香族オキシカルボン酸類及び金属化剤を溶解させる溶媒であれば、水を含め公知の有機溶媒を使用することができる。安い製造コストで芳香族オキシカルボン酸金属化合物を製造する場合は、溶媒として水を用いることが好ましい。また、容易に芳香族オキシカルボン酸金属化合物を合成する場合は、芳香族オキシカルボン酸類に対する溶解性が高い有機溶媒を用いることが好ましい。有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、tert−ブタノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル(モノグライム)、エチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル(ジグライム)、トリエチレングリコールジメチルエーテル(トリグライム)、テトラエチレングリコールジメチルエーテル(テトラグライム)、エチレングリコール、プロピレングリコールなどのアルコール系、エーテル系、またはグリコール系有機溶媒;テトラヒドロフラン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルスホキシドなどの非プロトン性極性溶媒などのような、水に可溶な有機溶媒が挙げられる。これら溶媒は、単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。水と前記の親水性有機溶剤との混合で用いてもよい。
【0035】
この有機溶媒及び水の使用量は、特に限定されるものではないが、前記配位子として用いる前記化学式(1)で示される芳香族オキシカルボン酸類に対して、重量比で2〜10倍量である。
【0036】
有機溶媒、水、または水と有機溶媒との混合溶媒中、金属化反応で得られた反応生成物がその溶媒に溶解しているときは、適当量の水や反応生成物に対して溶解性の低い有機溶媒などに分散させて反応生成物を析出させ、または、減圧下、溶媒を適当量留去させて、反応生成物を析出させて、析出物を濾取して水洗し、乾燥させることにより取り出すことができる。反応生成物が反応液中で析出しているときは、直接析出物を濾取して洗浄し、乾燥させて取り出すことができる。反応生成物中に不純物を多く含むとその荷電制御機能が低下することから、反応生成物を再結晶や再沈殿精製して使用することができる。
【0037】
この金属化反応における、芳香族オキシカルボン酸類と金属化剤との組合せについて表1に示す。表中、テトラヒドロフランをTHF、N,N−ジメチルホルムアミドをDMFとして略記する。
【0038】
【表1】

【0039】
有機金属化合物は、金属と配位子の種類により配位の価数、配位数が様々であり、金属錯体の中心金属は、2〜12程度までの多様な配位数をとることができる。例えば、中心金属をAlとしたとき、塩化アルミニウムやトリアルキルアルミニウムの場合、4配位数をとり、トリス(8−キノリノラト)アルミニウムの場合、6配位数をとる。
【0040】
本発明の荷電制御剤の有効成分である芳香族オキシカルボン酸金属化合物は、前記化学反応式(I)で示すように、金属化剤による金属錯体化や金属塩化により、下記化学式(2)及び(3)で示される構造を取りうると推定される。
【0041】
【化7】

式(2)中、R、R、g、h、M、p、q、r、a、b、k、Tb+は、前記と同定義である。
【0042】
【表2】

【0043】
【化8】

式(3)中、R、R、g、h、M、v、s、w、c、d、m、Zd-は、前記と同定義である。
【0044】
【表3】

【0045】
前記化学式(2)及び(3)について、金属原子であるM及びMをそれぞれMeとして、2価金属〜4価金属において推定される構造式を下記化学式(4)〜(19)に示す。
【0046】
金属Meが、3価の金属(Al3+、B3+、Cr3+、Fe3+、Ni3+)の場合に、推定される構造式を下記化学式(4)〜(12)に示す。
【0047】
【化9】

式(4)中、R、R、g、h、Meは、前記と同定義であり、kは1または1/2であり、bは1または2であり、(T)b+は、水素原子、アルカリ金属、若しくはアルカリ土類金属からのカチオン、またはアンモニウムイオンである。
【0048】
【化10】

式(5)中、R、R、g、h、Meは、前記と同定義である。
【0049】
【化11】

式(6)中、R、R、g、h、Meは、前記と同定義である。
【0050】
【化12】

式(7)中、R、R、g、h、Meは、前記と同定義である。
【0051】
【化13】

式(8)中、R、R、g、h、Meは、前記と同定義であり、kは3または3/2、bは1または2、(T)b+は、水素原子、アルカリ金属、若しくはアルカリ土類金属からのカチオン、またはアンモニウムイオンである。
【0052】
【化14】

式(9)中、R、R、g、h、Meは、前記と同定義である。
【0053】
【化15】

式(10)中、R、R、g、h、Meは、前記と同定義であり、mは1または1/2、dは1または2、(Z)d−は、水酸化物イオン、硫酸イオン、炭酸イオン、炭酸水素イオン、酢酸イオン、乳酸イオン、またはハロゲンイオンである。
【0054】
【化16】

式(11)中、R、R、g、h、Meは、前記と同定義であり、kは3または3/2、bは1または2、(T)b+は、水素原子、アルカリ金属、若しくはアルカリ土類金属からのカチオン、またはアンモニウムイオンである。
【0055】
【化17】

式(12)中、R、R、g、h、Meは、前記と同定義であり、kは1または1/2であり、bは1または2であり、(T)b+は(Me−(A)nb+である。ここで、Aは水酸化物イオン、硫酸イオン、炭酸イオン、炭酸水素イオン、酢酸イオン、乳酸イオン、及びハロゲンイオンなどから選ばれるアニオンであって、nは1または2の数である。
【0056】
前記金属Meが、2価の金属(Mg2+、Ca2+、Sr2+、Pb2+、Fe2+、Co2+、Ni2+、Zn2+、Cu2+)の場合に推定される構造式を下記化学式(13)〜(16)に示す。
【0057】
【化18】

式(13)中、R、R、g、h、Meは、前記と同定義である。
【0058】
【化19】

式(14)中、R、R、g、h、Meは、前記と同定義である。
【0059】
【化20】

式(15)中、R、R、g、h、Meは、前記と同定義であり、mは1または1/2、dは1または2、(Z)d−は、水酸化物イオン、硫酸イオン、炭酸イオン、炭酸水素イオン、酢酸イオン、乳酸イオン、またはハロゲンイオンである。
【0060】
【化21】

式(16)中、R、R、g、h、Meは、前記と同定義であり、kは1、bは1であり、(T)b+は(Me−(B)nb+である。ここで、Bは水酸化物イオン、硫酸イオン、炭酸イオン、炭酸水素イオン、酢酸イオン、乳酸イオン、ハロゲンイオンなどから選ばれるアニオンであって、nは1/2または1の数である。
【0061】
前記金属Meが、4価の金属(Si4+、Zr4+、Ti4+)の場合に推定される構造式を下記化学式(17)〜(19)に示す。
【0062】
【化22】

式(17)中、R、R、g、h、Meは、前記と同定義である。
【0063】
【化23】

式(18)中、R、R、g、h、Meは、前記と同定義であり、mは1または1/2であり、dは1または2であり、(Z)d−は、水酸化物イオン、硫酸イオン、炭酸イオン、炭酸水素イオン、酢酸イオン、乳酸イオン、またはハロゲンイオンである。
【0064】
【化24】

式(19)中、R、R、g、h、Meは、前記と同定義であり、mは1または2であり、dは1または2であり、(Z)d−は、水酸化物イオン、硫酸イオン、炭酸イオン、炭酸水素イオン、酢酸イオン、乳酸イオン、またはハロゲンイオンである。
【0065】
本発明の荷電制御剤に用いられる芳香族オキシカルボン酸金属化合物の配位子となりうる芳香族オキシカルボン酸類は、公知の方法を用い、例えば、実験化学講座第4版(日本化学会編、丸善株式会社発行)第187頁記載のWilliamson反応にて合成できる。芳香族オキシカルボン酸類の合成工程は、例えば、溶媒中で、置換基を有するまたは有しないビニルフェニルハロゲン化アルキレンと、置換基を有するまたは有しないヒドロキシサリチル酸とを、反応させることよって芳香族オキシカルボン酸類を合成するものである。その一例を下記化学反応式(II)に示す。
また、置換基を有するまたは有しないビニルフェニルハロゲン化アルキレンと、置換基を有するまたは有しないヒドロキシサリチル酸とは、各成分を、1種類選択して反応させたり、または各成分を、2種類以上組合せて、混合して反応させたりすることができる。
【0066】
【化25】

式(II)中、R、R、g、h、Mは、前記と同じであり、Xはハロゲン原子である。
【0067】
置換基を有するまたは有しないビニルフェニルハロゲン化アルキレンは、具体的に、4−(クロロメチル)スチレン、4−(ブロモメチル)スチレン、3−メトキシ−4−(クロロメチル)スチレン、3−メトキシ−4−(ブロモメチル)スチレン、2−ヒドロキシ−4−(クロロメチル)スチレン、2−ヒドロキシ−4−(ブロモメチル)スチレン、3−ブロモ−4−(クロロメチル)スチレン、3−ブロモ−4−(ブロモメチル)スチレン、2−メトキシ−4−(クロロメチル)スチレン、2−メトキシ−4−(ブロモメチル)スチレン、2−クロロ−4−(クロロメチル)スチレン、2−クロロ−4−(ブロモメチル)スチレン、3−フルオロ−4−(クロロメチル)スチレン、3−フルオロ−4−(ブロモメチル)スチレン、2−ブロモ−4−(クロロメチル)スチレン、2−ブロモ−4−(ブロモメチル)スチレン、3−tert−ブチル−4−(クロロメチル)スチレン、3−tert−ブチル−4−(ブロモメチル)スチレン、3−イソオクチル−4−(クロロメチル)スチレン、3−イソオクチル−4−(ブロモメチル)スチレン、3−イソプロピル−4−(クロロメチル)スチレン、3−イソプロピル−4−(ブロモメチル)スチレン、3−メチル−4−(クロロメチル)スチレン、3−メチル−4−(ブロモメチル)スチレン、3−エトキシ−4−(クロロメチル)スチレン、3−エトキシ−4−(ブロモメチル)スチレン、3−カルボキシ−4−(クロロメチル)スチレン、3−カルボキシ−4−(ブロモメチル)スチレン、3−(クロロメチル)スチレン、3−(ブロモメチル)スチレン、5−メチル−3−(クロロメチル)スチレン、5−メチル−3−(ブロモメチル)スチレン、5−イソプロピル−3−(クロロメチル)スチレン、5−イソプロピル−3−(ブロモメチル)スチレン、5−イソオクチル−3−(クロロメチル)スチレン、5−イソオクチル−3−(ブロモメチル)スチレン、5−メトキシ−3−(クロロメチル)スチレン、5−メトキシ−3−(ブロモメチル)スチレン、4−エトキシ−3−(クロロメチル)スチレン、4−エトキシ−3−(ブロモメチル)スチレン、4−カルボキシ−3−(クロロメチル)スチレン、4−カルボキシ−3−(ブロモメチル)スチレン、5−ヒドロキシ−3−(クロロメチル)スチレン、5−ヒドロキシ−3−(ブロモメチル)スチレン、4−ヒドロキシ−3−(クロロメチル)スチレン、4−ヒドロキシ−3−(ブロモメチル)スチレン、4−メトキシ−3−(クロロメチル)スチレン、4−メトキシ−3−(ブロモメチル)スチレン、5−クロロ−3−(クロロメチル)スチレン、5−クロロ−3−(ブロモメチル)スチレン、4−ブロモ−3−(クロロメチル)スチレン、4−ブロモ−3−(ブロモメチル)スチレン、2−ブロモ−3−(クロロメチル)スチレン、2−ブロモ−3−(ブロモメチル)スチレン、5−tert−ブチル−3−(クロロメチル)スチレン、5−tert−ブチル−3−(ブロモメチル)スチレン、2−(クロロメチル)スチレン、2−(ブロモメチル)スチレン、3−tert−ブチル−2−(クロロメチル)スチレン、3−tert−ブチル−2−(ブロモメチル)スチレン、4−クロロ−2−(クロロメチル)スチレン、4−クロロ−2−(ブロモメチル)スチレン、4−(2’−ブロモエチル)スチレン、4−(2’−クロロエチル)スチレン、3−メトキシ−4−(2’−ブロモエチル)スチレン、3−メトキシ−4−(2’−クロロエチル)スチレン、2−ヒドロキシ−4−(2’−ブロモエチル)スチレン、2−ヒドロキシ−4−(2’−クロロエチル)スチレン、3−エトキシ−4−(2’−ブロモエチル)スチレン、3−エトキシ−4−(2’−クロロエチル)スチレン、3−ブロモ−4−(2’−ブロモエチル)スチレン、3−ブロモ−4−(2’−クロロエチル)スチレン、3−tert−ブチル−4−(2’−ブロモエチル)スチレン、3−tert−ブチル−4−(2’−クロロエチル)スチレン、3−(2’−ブロモエチル)スチレン、3−(2’−クロロエチル)スチレン、5−イソプロピル−3−(2’−ブロモエチル)スチレン、5−イソプロピル−3−(2’−クロロエチル)スチレン、5−クロロ−3−(2’−ブロモエチル)スチレン、5−クロロ−3−(2’−クロロエチル)スチレン、5−ヒドロキシ−3−(2’−ブロモエチル)スチレン、5−ヒドロキシ−3−(2’−クロロエチル)スチレン、4−ヒドロキシ−3−(2’−ブロモエチル)スチレン、4−ヒドロキシ−3−(2’−クロロエチル)スチレン、4−ブロモ−3−(2’−ブロモエチル)スチレン、4−ブロモ−3−(2’−クロロエチル)スチレン、2−(2’−ブロモエチル)スチレン、2−(2’−クロロエチル)スチレン、3−tert−ブチル−2−(2’−ブロモエチル)スチレン、3−tert−ブチル−2−(2’−クロロエチル)スチレン、4−(3’−ブロモプロピル)スチレン、4−(3’−クロロプロピル)スチレン、2−メトキシ−4−(3’−ブロモプロピル)スチレン、2−メトキシ−4−(3’−クロロプロピル)スチレン、2−イソプロピル−4−(3’−ブロモプロピル)スチレン、2−イソプロピル−4−(3’−クロロプロピル)スチレン、2−イソオクチル−4−(3’−ブロモプロピル)スチレン、2−イソオクチル−4−(3’−クロロプロピル)スチレン、3−メトキシ−4−(3’−ブロモプロピル)スチレン、3−メトキシ−4−(3’−クロロプロピル)スチレン、3−(3’−ブロモプロピル)スチレン、3−(3’−クロロプロピル)スチレン、5−イソオクチル−3−(3’−ブロモプロピル)スチレン、5−イソオクチル−3−(3’−クロロプロピル)スチレン、5−メトキシ−3−(3’−ブロモプロピル)スチレン、5−メトキシ−3−(3’−クロロプロピル)スチレン、2−(3’−ブロモプロピル)スチレン、2−(3’−クロロプロピル)スチレンなどが挙げられる。これらビニルフェニルハロゲン化アルキレンは、単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0068】
置換基を有するまたは有しないジヒドロキシ芳香族カルボン酸は、具体的に、2,3−ジヒドロキシ安息香酸、5−メチル−2,3−ジヒドロキシ安息香酸、5−エチル−2,3−ジヒドロキシ安息香酸、5−イソプロピル−2,3−ジヒドロキシ安息香酸、5−n−ブチル−2,3−ジヒドロキシ安息香酸、5−tert−ブチル−2,3−ジヒドロキシ安息香酸、5−sec−ブチル−2,3−ジヒドロキシ安息香酸、5−イソヘプチル−2,3−ジヒドロキシ安息香酸、5−イソヘキシル−2,3−ジヒドロキシ安息香酸、5−イソオクチル−2,3−ジヒドロキシ安息香酸、5−フルオロ−2,3−ジヒドロキシ安息香酸、5−クロロ−2,3−ジヒドロキシ安息香酸、5−ブロモ−2,3−ジヒドロキシ安息香酸、5−フルオロ−4−メトキシ−2,3−ジヒドロキシ安息香酸、4−エチル−2,3−ジヒドロキシ安息香酸、4−カルボキシ−2,3−ジヒドロキシ安息香酸、4−メトキシ−2,3−ジヒドロキシ安息香酸、4−エトキシ−2,3−ジヒドロキシ安息香酸、2,3,4−トリヒドロキシ安息香酸、4−フルオロ−5−メトキシ−2,3−ジヒドロキシ安息香酸、6−イソプロピル−2,3−ジヒドロキシ安息香酸、6−ブトキシ−2,3−ジヒドロキシ安息香酸、6−ヒドロキシ−2,3−ジヒドロキシ安息香酸、
2,4−ジヒドロキシ安息香酸、6−メチル−2,4−ジヒドロキシ安息香酸、6−エチル−2,4−ジヒドロキシ安息香酸、6−イソプロピル−2,4−ジヒドロキシ安息香酸、6−tert−ブチル−2,4−ジヒドロキシ安息香酸、6−sec−ブチル−2,4−ジヒドロキシ安息香酸、6−イソヘキシル−2,4−ジヒドロキシ安息香酸、6−イソヘプチル−2,4−ジヒドロキシ安息香酸、6−イソオクチル−2,4−ジヒドロキシ安息香酸、5−メトキシ−2,4−ジヒドロキシ安息香酸、6−ブトキシ−2,4−ジヒドロキシ安息香酸、6−クロロ−2,4−ジヒドロキシ安息香酸、6−ブロモ−2,4−ジヒドロキシ安息香酸、6−ヨード−2,4−ジヒドロキシ安息香酸、6−カルボキシ−2,4−ジヒドロキシ安息香酸、5−n−プロピル−2,4−ジヒドロキシ安息香酸、5−エトキシ−2,4−ジヒドロキシ安息香酸、5−クロロ−2,4−ジヒドロキシ安息香酸、5−ブロモ−2,4−ジヒドロキシ安息香酸、6−メチル−2,4,5−トリヒドロキシ安息香酸、5,6−ジ−tert−ブチル−2,4−ジヒドロキシ安息香酸、3−tert−ブチル−2,4−ジヒドロキシ安息香酸、3−イソオクチル−2,4−ジヒドロキシ安息香酸、3−クロロ−2,4−ジヒドロキシ安息香酸、3−フルオロ−2,4−ジヒドロキシ安息香酸、3−ブロモ−2,4−ジヒドロキシ安息香酸、
2,5−ジヒドロキシ安息香酸、3−メチル−2,5−ジヒドロキシ安息香酸、3−エチル−2,5−ジヒドロキシ安息香酸、3−イソプロピル−2,5−ジヒドロキシ安息香酸、3−tert−ブチル−2,5−ジヒドロキシ安息香酸、3−sec−ブチル−2,5−ジヒドロキシ安息香酸、3−イソヘキシル−2,5−ジヒドロキシ安息香酸、3−イソヘプチル−2,5−ジヒドロキシ安息香酸、3−イソオクチル−2,5−ジヒドロキシ安息香酸、3−カルボキシ−2,5−ジヒドロキシ安息香酸、3−tert−ブトキシ−2,5−ジヒドロキシ安息香酸、3−クロロ−2,5−ジヒドロキシ安息香酸、3−ブロモ−2,5−ジヒドロキシ安息香酸、3−ヨード−2,5−ジヒドロキシ安息香酸、3−フルオロ−2,5−ジヒドロキシ安息香酸、6−メトキシ−2,5−ジヒドロキシ安息香酸、6−エトキシ−2,5−ジヒドロキシ安息香酸、3−メチル−2,5,6−トリヒドロキシ安息香酸、6−フルオロ−4−メトキシ−2,5−ジヒドロキシ安息香酸、3,4−ジイソプロピル−2,5−ジヒドロキシ安息香酸、3,4−ジ−tert−ブチル−2,5−ジヒドロキシ安息香酸、4−クロロ−3−tert−ブチル−2,5−ジヒドロキシ安息香酸、4−フルオロ−2,5−ジヒドロキシ安息香酸、
2,6−ジヒドロキシ安息香酸、3−ブロモ−2,6−ジヒドロキシ安息香酸、4−ブロモ−2,6−ジヒドロキシ安息香酸、5−ブロモ−2,6−ジヒドロキシ安息香酸、3−クロロ−2,6−ジヒドロキシ安息香酸、4−クロロ−2,6−ジヒドロキシ安息香酸、5−クロロ−2,6−ジヒドロキシ安息香酸、3−イソプロピル−2,6−ジヒドロキシ安息香酸、4−tert−ブチル−2,6−ジヒドロキシ安息香酸、5−メチル−2,6−ジヒドロキシ安息香酸などが挙げられる。これらジヒドロキシ安息香酸は、単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0069】
反応溶媒としては、具体的に、メタノール、エタノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル(モノグライム)、ジエチレングリコールジメチルエーテル(ジグライム)、エチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル(トリグライム)、テトラエチレングリコールジメチルエーテル(テトラグライム)、エチレングリコール、プロピレングリコールなどのアルコール系、エーテル系、またはグリコール系有機溶媒;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルスホキシドなどの非プロトン性極性溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピオン酸エチル、セロソルブアセテートなどのエステル類;ヘキサン、オクタン、石油エーテル、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの炭化水素類;トリクロロエチレン、ジクロロメタン、クロロホルムなどのハロゲン化炭化水素類などの有機溶媒が挙げられる。これら溶媒は、単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0070】
また、前記化学式(1)で示される芳香族オキシカルボン酸類の合成反応では、反応の促進とエーテル結合形成の際に複成するハロゲン化水素を捕捉するために塩基を添加することが好ましい。
【0071】
この合成で用いることのできる塩基としては、溶媒や基質と反応し、反応系を複雑化させないものであれば特に限定されず、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属の水酸化物;炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなどのアルカリ金属の炭酸塩を挙げることができる。前記反応式(II)中のMは、このWilliamson合成の際のアルカリ金属であってもよく、それを遊離させたものであってもよく、カチオン交換したものであってもよい。
【0072】
この様にして得られる前記化学式(1)で示される芳香族オキシカルボン酸類のより具体的な例を、下記化学式(1−a)〜(1−i)に示す。ここで、各化学式中における、R、R、g、h、Mは、それぞれ前記と同定義である。なお、本発明の範囲はこれらに限定されるものではない。
【0073】
【化26】

【0074】
【表4】

【0075】
【化27】

【0076】
【表5】

【0077】
【化28】

【0078】
【表6】

【0079】
【化29】

【0080】
【表7】

【0081】
【化30】

【0082】
【表8】

【0083】
【化31】

【0084】
【表9】

【0085】
【化32】

【0086】
【表10】

【0087】
【化33】

【0088】
【表11】

【0089】
【化34】

【0090】
【表12】

【0091】
前記表4〜12において、置換基Rが水素原子のみである場合をHと表記し、水素原子以外を含む場合は、水素原子以外の置換基を表記している。また、hの数値は、置換基Rが水素原子のみである場合には1とし、その他の場合は、置換基である水素原子を数えずに記載している。
【0092】
前記化学式(1)で示される芳香族オキシカルボン酸類は、同一分子内にビニル基を有するフェニル骨格即ちスチレン構造、及びオルト位関係の−COOM基(カルボキシル基)と水酸基とを有するフェニル骨格即ちサリチル酸構造を共に有するものである。この芳香族オキシカルボン酸類は、フェニル骨格同士が、−CH−O−、−CHCH−O−、−CHCHCH−O−で結合されている構造である。
【0093】
芳香族オキシカルボン酸金属化合物は、その芳香族オキシカルボン酸類が−COOM基(カルボキシル基)及び水酸基を有するフェニル骨格による金属錯体化及び/または金属塩化の機能、また、−COOM基(カルボキシル基)及び水酸基を有するフェニル骨格と−CH−O−、−CHCH−O−、またはCHCHCH−O−との組合せにより発現される帯電付与機能を有しており、荷電制御用途適性を示す。この芳香族オキシカルボン酸金属化合物は、有効成分として荷電制御剤に用いられる。
【0094】
本発明の荷電制御剤は、前記芳香族オキシカルボン酸金属化合物を1種単独で用いてもよく、2種以上を合わせて用いてもよい。また、前記芳香族オキシカルボン酸金属化合物から選ばれた1種のアモルファス状の芳香族オキシカルボン酸金属化合物からなるものであってもよい。
【0095】
荷電制御剤の機能は、用いる樹脂への分散性が良好であるほど、例えば用いる樹脂に対して相溶性が高ければ高いほど、より好ましくは、分子レベルで樹脂へ分散させるほど、その機能を最大限に発揮させることになる。
【0096】
荷電制御剤に含有される芳香族オキシカルボン酸金属化合物は、X線回折スペクトルにおいて、アモルファス状であることを示すものであると好ましい。X線回折スペクトルがアモルファス状であることを示すというのは、X線回折パターンの2θ=5°〜40°(θはブラッグ角)の範囲における芳香族オキシカルボン酸金属化合物のX線回折スペクトルにおいて、多重ピーク分離法により算出した全体の強度の総計に対する結晶部分の強度の総計の比率が0〜50%であると定義することができる。芳香族オキシカルボン酸金属化合物は、その結晶化度が0〜50%のものであると好ましい。更に好ましくは、多重ピーク分離法による結晶化度が、2θ=5°〜40°の範囲(θはブラッグ角)において、0〜30%である。
【0097】
前記芳香族オキシカルボン酸金属化合物が、その金属錯体化及び/または金属塩化している金属がAlまたはZrであり、X線回折スペクトルにおいて、多重ピーク分離法による結晶化度が、2θ=5°〜40°の範囲(θはブラッグ角)にあって、0〜30%であることが更に好適である。
【0098】
本発明の荷電制御剤に用いられる芳香族オキシカルボン酸金属化合物は、アモルファス状であることにより、樹脂との相溶性が良好で、樹脂へ分子レベルで均一に分散させることができ、即ち、芳香族オキシカルボン酸金属化合物の持つ帯電能力を最小添加量にて最大限に発揮することが可能である。このため、荷電制御剤として用いられた場合、より格段に向上し、帯電能力をいままでの荷電制御剤と比較して、大きく発揮することが可能である。また、帯電が安定し、堅牢性が向上する。
【0099】
合成により得られた芳香族オキシカルボン酸金属化合物が結晶性の場合、これを有機溶剤(例えば、イソプロパノールのようなアルコール系溶剤)中で、湿式ミリングするか、DMF等の有機溶媒に溶解させた後、これを水に再分散させることにより、アモルファス状の芳香族オキシカルボン酸金属化合物に変換して用いることもできる。
【0100】
結晶性の芳香族オキシカルボン酸金属化合物を湿式ミリング又は溶解後の再分散によりアモルファス状の芳香族オキシカルボン酸金属化合物に変換するための有機金属溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、tert−ブタノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル(モノグライム)、エチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル(ジグライム)、トリエチレングリコールジメチルエーテル(トリグライム)、テトラエチレングリコールジメチルエーテル(テトラグライム)、エチレングリコール、プロピレングリコールなどのアルコール系、エーテル系、またはグリコール系有機溶媒;テトラヒドロフラン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルスホキシドなどの非プロトン性極性溶媒などのような、水に可溶な有機溶媒が挙げられる。これら溶媒は、単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。水と前記の親水性有機溶剤との混合で用いてもよい。
【0101】
前記のような溶剤を用いる湿式ミリング(湿式分散)においては、顔料分散等に使用する各種の分散機(例えば、ボールミル、コロイダルミン、ペイントシェーカー、サンドミル、ビーズミル(商品名)、スーパーミル(商品名)、アジテータミル(商品名)、ダイノーミル(商品名)を用いることができる。湿式ミリングの際の摩擦媒体としては、例えば、ガラスビーズ、ジルコニアビーズ、磁性ビーズ、または、タングステンカーバイト製若しくはステンレススチール製ビーズ等を使用することができる。
【0102】
本発明の荷電制御剤は、芳香族オキシカルボン酸金属化合物から調製されており、静電荷像現像用トナーや粉体塗料などに含有させるものである。用いられる樹脂100重量部に対して、0.1〜10重量部配合されたものであることが望ましい。更に荷電制御剤のより好ましい配合量は、用いられる樹脂100重量部に対して0.5〜7重量部である。
【0103】
トナー用樹脂の例としては、次のような公知のトナー用樹脂(結着樹脂)を挙げることができる。すなわち、スチレン樹脂、スチレン−アクリル樹脂、スチレン−ブタジエン樹脂、スチレン−マレイン酸樹脂、スチレン−ビニルメチルエーテル樹脂、スチレン−メタアクリル酸エステル共重合体、ポリエステル樹脂、ポリプロピレン樹脂などの熱可塑性樹脂である。これらの樹脂は、単独でまたは数種をブレンドして用いることもできる。なお、本発明の荷電制御剤は、静電粉体塗料に含有させて樹脂粉体の電荷の制御(増強)のために用いることもできる。その場合の塗料用樹脂としては、例えば、アクリル系、ポリオレフィン系、ポリエステル系、またはポリアミド系などの熱可塑性樹脂、及びフェノール系、エポキシ系、またはポリエステル系などの熱硬化性樹脂を挙げることができる。これらは、それぞれ単独でまたは複数種をブレンドして用いることができる。
【0104】
トナーに用い得る着色剤として公知の種々の有機染料、無機顔料及び有機顔料を、それぞれ単独でまたは2種以上配合して使用することができる。用い得る着色剤としては、例えば、キノフタロンイエロー、イソインドリノンイエロー、キノリンイエロー、ペリノンオレンジ、ペリノンレッド、ペリレンマルーン、ローダミン6Gレーキ、キナクリドンレッド、アンスアンスロンレッド、ローズベンガル、銅フタロシアニンブルー、銅フタロシアニングリーン、ジケトピロロピロール系顔料などの有機顔料;カーボンブラック、チタンホワイト、チタンイエロー、群青、コバルトブルー、べんがら、アルミニウム粉、ブロンズなどの無機顔料及び金属粉;アゾ染料、キノフタロン系染料、アントラキノン系染料、フタロシアニン系染料、インドフェノール系染料、インドアニリン系染料などの各種の油溶性染料や分散染料の他、ロジン、ロジン変性フェノール、ロジン変性マレイン酸などの樹脂により変性されたトリアリールメタン系染料及びキサンテン系染料などを挙げることができる。
【0105】
静電荷像現像用トナーは、例えば次のように製造することができる。前記のようなトナー用樹脂、着色剤、及び本発明の荷電制御剤、並びに必要に応じて磁性材料(例えば、鉄、コバルト、フェライトなどの強磁性材料製の微粉体)、流動性改質剤(例えば、シリカ、酸化アルミニウム、酸化チタン)、オフセット防止剤(例えば、ワックス、低分子量のオレフィンワックス)などをボールミルその他の混合機により十分混合する。その後、その混合物を加熱ロール、ニーダー、エクストルーダーなどの熱混練機を用いて溶融混練し、その混練物を冷却固化させた後、その固化物を粉砕及び分級することにより、平均粒径5〜20μmのトナーを得ることができる。
【0106】
本発明の荷電制御剤及びその有効成分である芳香族オキシカルボン酸金属化合物を、荷電制御または増強の目的で増強剤として、また前記増強剤及び樹脂を含んでなる静電塗装用粉体塗料として提供することができる。静電塗装用粉体塗料は、この増強剤を1種単独で含むものであってもよく、複数種を含むものであってもよい。増強剤の好ましい配合量は、樹脂100重量部に対し、0.1〜10重量部、そのより好ましい配合量は、樹脂100重量部に対し、0.5〜5重量部である。その他、この静電塗装用粉体塗料に含有される樹脂及び着色剤は、前記トナーで記載したものを例示できる。
【0107】
この静電塗装用粉体塗料は、耐環境安定性及び耐久性に優れ、この粉体塗料によれば、塗着効率がほぼ100%に近く、しかも塗膜性能が向上し、塗膜欠陥のない厚膜を形成することができる。増強剤が無色または淡色であるため、塗膜の色調障害が生じ難い。
【0108】
この静電塗装用粉体塗料は、例えば次のように製造することができる。前記増強剤及び樹脂、並びにその用途・目的に応じ、着色剤、流動性改質剤、充填剤、硬化剤及び可塑剤などを添加し、ボールミルその他の混合機で均一に混合する。その混合物を、加熱ロール、ニーダー、エクストルーダーなどの熱混練機を用いて溶融混練し、冷却固化後、粉砕及び分級することにより、粒度範囲10〜250μmなどの所要粒径の静電塗装用粉体塗料を得ることができる。
【0109】
この静電塗装用粉体塗料による塗装は、コロナ印荷方式、摩擦帯電方式、及びハイブリッド方式のような一般の静電粉体塗装法を用いて塗装することができる。
【実施例】
【0110】
以下、本発明の実施例を詳細に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0111】
本発明の荷電制御剤の有効成分である芳香族オキシカルボン酸金属化合物、及びその原料となる芳香族オキシカルボン酸類の合成例を実施例1〜20に示す。
【0112】
(実施例1)
A−1 芳香族オキシカルボン酸類の合成
2,5−ジヒドロキシ安息香酸100.0gをメタノール2Lに溶解させ、炭酸カリウム88.3gを加えて67℃に加熱した。この反応液に4−(クロロメチル)スチレン102.0gを22分間で滴下し、67℃にて12時間反応させた。得られた反応液を冷却後、減圧下メタノールを留去し、ヘキサンを加えて洗浄した。濾過後、残渣をメタノールに溶解させ水に滴下し、再沈殿させ析出物を濾過した。この再沈殿操作を2回繰り返し、得られた残渣を80℃にて48時間乾燥させ、下記化学式(A1)に示す芳香族オキシカルボン酸類を48.7g得た。
【0113】
【化35】

【0114】
得られた芳香族オキシカルボン酸類(A1)の純度を、高速液体クロマトグラフィー(HPLC 株式会社島津製作所製 検出器:SPD−M20A、カラムオーブン:CTO−20A、ポンプ:LC−20AT、デガッサー:DGU−20A)により、以下の測定条件で測定を行い、純度=94.6%であることを確認した。
HPLC測定条件:サンプル3mgをTHF(テトラヒドロフラン)10mLに溶解させ、30分間超音波し、ポア径が0.5μmの耐溶剤性メンブランフィルターで濾過してサンプル溶液とし、以下の条件で測定した。
カラム:L−Column ODS (4.6×250mm)、カラムオーブン温度:40℃、流速:1.0mL/分、試料注入量:3μL、検出波長:254nm、
溶離液A:THF:0.05M−CHCOONH水溶液=4:6
溶離液B:THF:0.05M−CHCOONH水溶液=6:4
グラジュエント条件 溶離液A:溶離液B=100:0→(20分)→0:100
【0115】
得られた芳香族オキシカルボン酸類(A1)について、H−核磁気共鳴装置(NMR 日本電子株式会社製 FT−NMR JNM−AL300)を用い、共鳴周波数:300MHz 測定核種:1H、使用溶媒:重DMSO、測定温度:室温の条件で測定した。H−NMRスペクトルデータは、下記の通りであり、前記化学式(A1)で示す構造を支持する。H−NMRの測定結果を図1に示す。
δ(ppm)=5.06(2H、s、−CH−)、5.27(1H、d、C−H)、5.84(1H、d、C−H)、6.74(1H、d−d、−CH=)、6.91(1H、d、Ar−H)、7.23(1H、d−d、Ar−H)、7.35(1H、d、Ar−H)、7.41(1H、d、Ar−H)、7.49(1H、d、Ar−H)
前記H−NMRにおいて、5.06ppm(2H、s、−OCH−)のプロトンに照射したところ、7.35(1H、d、Ar−H)の芳香族プロトンに16.9%の核オーバーハウザー効果(NOE)が観測された。
【0116】
得られた芳香族オキシカルボン酸類(A1)について、元素分析測定器(CHNS/O分析 パーキンエルマー社製 2400II全自動元素分析装置)にて、炭素(C)、水素(H)、窒素(N)の重量比率を測定した。以下に元素分析の理論値及び実測値を示す。
実測値 C:71.61 H:4.90 N:0.00
理論値 C:71.10 H:5.22 N:0.00
【0117】
得られた芳香族オキシカルボン酸類(A1)について、フーリエ変換赤外分光光度計(FT−IR 日本電子株式会社製 JIR−SPX60S)を使用し、KBr法にて測定したところ、
ν(cm−1)=3132、3088、2924、2877、1680、1614、1593、1516、1487、1471、1443、1408、1379、1250、1196、1011、906、860、831、808、789、775、744、715、675、559、492、472を観測した。FT−IRの測定結果を図2に示す。
【0118】
得られた芳香族オキシカルボン酸類(A1)について、示差熱熱重量同時測定装置(TG/DTA エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社製 TG/DTA6200 EXSTAR6000)を用い、昇温条件:30−550℃ 昇温速度:10℃/分で測定した。熱重量分析−示差熱分析(TG−DTA)の測定結果を図3に示す。その測定の結果、融点168℃、発熱温度:551℃、重量減少温度:210℃、404℃、521℃を観測した。
【0119】
得られた芳香族オキシカルボン酸類(A1)について、液体クロマトグラフ質量分析装置(LC/MS 株式会社日立ハイテクノロジーズ製 LC/3DQMSシステム M−8000)にて、以下の条件にて測定した。
イオン化源:ESIイオン化源(FI法により測定)
キャリア:電子工業用メタノール
試料の調製方法:試料各1mgを電子工業用メタノールにて溶解し、完全に溶解しなかった試料に関しては、THFを溶解するまで加えた。
第一細孔温度:120℃ 第二細孔温度:100℃ 脱溶媒温度:150℃ 補助ガス温度:150℃ フォーカス電圧:20V ドリフト電圧:20V
液体クロマトグラフ質量分析の測定結果を図4に示す。また、質量分析の理論値及び実測値を以下に示す。
実測値:LC/MS m/z=269.00 [M−H]
芳香族オキシカルボン酸類の理論分子量: 270.09
【0120】
B−1 芳香族オキシカルボン酸類の金属化合物の合成
25.7%硫酸アルミニウム水溶液77.2gを水440mLに加え、90℃まで加熱した。これに、20.5%水酸化ナトリウム水溶液16.2gと芳香族オキシカルボン酸類(A1)10.8gとを水130mLに加え、90℃まで加熱、溶解した溶液を30分間で滴下し、95℃まで加熱した。その後、95℃で2時間反応させ、室温まで冷却後、濾過し、電気伝導度が300μS/cm以下になるまで水洗した。80℃で14時間乾燥後、薄茶色の芳香族オキシカルボン酸金属化合物(B1)を10.5g得た。
【0121】
得られた芳香族オキシカルボン酸金属化合物(B1)について、元素分析測定器(CHNS/O分析 パーキンエルマー社製 2400II全自動元素分析装置)にて、炭素(C)、水素(H)、窒素(N)の重量比率を測定した。以下に元素分析の実測値を示す。
実測値 C:64.12 H:4.67 N:0.00
【0122】
得られた芳香族オキシカルボン酸金属化合物(B1)について、原子吸光分析装置(Varian社製 SpectrAA−220FS)にて、含有する金属の重量%を測定した。以下に、原子吸光分析の実測値を示す。
実測値 Al=4.13%、Na=0.1%
【0123】
得られた芳香族オキシカルボン酸金属化合物(B1)について、フーリエ変換赤外分光光度計(FT−IR 日本電子株式会社製 JIR−SPX60S)を使用し、KBr法にて測定したところ、
ν(cm−1)=3388、3088、1630、1566、1514、1489、1464、1448、1383、1281、1248、1228、1144、1117、1041、1016、991、908、829、731、685、588、553、467を観測した。
【0124】
得られた芳香族オキシカルボン酸金属化合物(B1)について、示差熱熱重量同時測定装置(TG/DTA エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社製 TG/DTA6200 EXSTAR6000)を用い、昇温条件:30−550℃ 昇温速度:10℃/分で測定した。熱重量分析−示差熱分析(TG−DTA)の測定結果を図5に示す。その測定の結果、吸熱温度:198℃、発熱温度:460℃、重量減少温度:182℃、327℃、431℃を観測した。
【0125】
得られた芳香族オキシカルボン酸金属化合物(B1)について、X線回折装置(株式会社リガク製 試料水平型強力X線回折装置 RINT−TTRIII)にて以下の条件にて測定した。測定試料サンプルの作製:試料をX線回折装置専用ガラス台にのせ、別のガラス板にて平らに試料を延ばして試料を作製した。
測定範囲:2θ=5°〜40°
結晶化度の求め方:得られた芳香族オキシカルボン酸金属化合物について、前記の条件でX線回折を測定後、得られたX線回折スペクトルをスムージング処理した。更に得られたデータを、Materials Data社製の解析ソフト「JADE XRD Pattern Processing Identification & Quantification ver.7.5.2」を用い、以下の条件にて解析し結晶化度を求めた。プロファイリングフィッティング条件:PSF;pseudo−Voigt、バックグラウンド:水平、現在のプロファイル更新:有り、Kα2ピーク:有り、初期半価幅曲線指定値=0.2、ピークサーチ:有り。
得られた芳香族オキシカルボン酸金属化合物(B1)について、前記の条件にてX線回折を測定し、結晶化度を算出した結果を示す。結晶化度=54.7%
【0126】
得られた芳香族オキシカルボン酸金属化合物(B1)について、液体クロマトグラフ質量分析装置(LC/MS 株式会社日立ハイテクノロジーズ製 LC/3DQMSシステム M−8000)にて、以下の条件にて測定した。
イオン化源:ESIイオン化源(FI法により測定)
キャリア:電子工業用メタノール
試料の調製方法:試料各1mgを電子工業用メタノールにて溶解し、完全に溶解しなかった試料に関してはTHFを溶解するまで加えた。
第一細孔温度:120℃ 第二細孔温度:100℃ 脱溶媒温度:150℃ 補助ガス温度:150℃ フォーカス電圧:20V ドリフト電圧:20V
得られた芳香族オキシカルボン酸金属化合物(B1)について、前記の条件でLC/MS分析測定した。そのLC/MS分析の測定結果から、分子量が563.2と832.2とであり、芳香族オキシカルボン酸類(A1)とAlとが、それぞれ2:1、3:1である構造を推定できるデータを得た。下記に取り得ると考えられる化学式(M−1)及び(M−2)を示す。
【0127】
【化36】

【0128】
【化37】

【0129】
(実施例2)
A−2 芳香族オキシカルボン酸類の合成
2,5−ジヒドロキシ安息香酸100gと80%硫酸1441gとを50℃に加熱混合し、この分散液にtert−ブタノール144gを加えて50℃で30分間撹拌した。その後、分散液にtert−ブタノール144gを加え30分間撹拌する操作を3回行った。反応液を室温まで冷却し、氷水1kgに徐々に注ぎ、析出物を濾過、水洗し、更にヘキサン洗浄した。得られた析出物をメタノール200mLに溶解させ、水3.6Lに再沈殿させた。濾過後、80℃にて24時間乾燥させtert−ブチル化された芳香族オキシカルボン酸中間体74.9gを得た。
【0130】
得られた芳香族オキシカルボン酸中間体25.0gをメタノール150mLに溶解させ、炭酸カリウム36.9gを加えて65℃に加熱した。この反応液に4−(クロロメチル)スチレン18.7gとメタノール100mLに混合溶解させた溶解液を滴下し、65℃にて3時間反応させた。得られた反応液を冷却後、濾過し、濾液中のメタノールを減圧留去して析出物を得た。
【0131】
得られた析出物をpH=2の水1.5Lに分散させ、酢酸エチルを加えて抽出した。その後、水洗し、硫酸マグネシウムで乾燥させ、減圧下、酢酸エチルを留去して析出物を得た。得られた析出物をヘキサン洗浄後、トルエンと酢酸エチルにて再結晶し、下記化学式(A2)に示す芳香族オキシカルボン酸類を20.1g得た。
【0132】
【化38】

【0133】
得られた芳香族オキシカルボン酸類(A2)について、HPLC純度を実施例1のA−1に記載の条件で測定したところ、98.6%だった。
【0134】
得られた芳香族オキシカルボン酸類(A2)について、測定溶媒をCDClに変えた以外は、実施例1のA−1と同様の条件でH−NMRを測定した。H−NMRスペクトルデータは、下記の通りであり、前記化学式(A2)で示す構造を支持する。また、H−NMRの測定結果を図6に示す。
δ(ppm)=1.37(9H、s、−C(CH)、5.00(2H、s、−OCH−)、5.26(1H、d、−C=C−H)、5.76(1H、d、−C=C−H)、6.68−6.77(1H、m、−C=C−H)、6.73(2H、d−d、Ar−H)、7.28(2H、d−d、Ar−H)、7.42(2H、d−d、Ar−H)
前記H−NMRにおいて、5.00(2H、s、−OCH−)のプロトンに照射したところ、7.28(2H、d−d、Ar−H)の芳香族プロトンに8.1%の核オーバーハウザー効果が観測された。
【0135】
得られた芳香族オキシカルボン酸類(A2)について、FT−IRを実施例1のA−1に記載の条件で測定したところ、
ν(cm−1)=3419、3004、2866、1660、1608、1429、1330、1224、1120、1066、908、794、721、680、493を観測した。FT−IRの測定結果を図7に示す。
【0136】
得られた芳香族オキシカルボン酸類(A2)について、TG−DTAを実施例1のA−1に記載の条件で測定し、その結果を図8に示す。その測定の結果、融点183℃、発熱温度:517℃、563℃、重量減少温度:161℃、386℃、489℃、553℃を観測した。
【0137】
得られた芳香族オキシカルボン酸類(A2)について、元素分析を実施例1のA−1に記載の条件で測定した。以下に、元素分析の理論値及び実測値を示す。
実測値 C:74.29 H:6.71 N:0.00
理論値 C:73.60 H:6.79 N:0.00
【0138】
得られた芳香族オキシカルボン酸類(A2)について、X線回折を実施例1のB−1に記載の条件で測定した。そのX線回折スペクトルを図9に示す。
【0139】
得られた芳香族オキシカルボン酸類(A2)について、LC/MS分析を実施例1のA−1に記載の条件で測定した。また、質量分析の理論値及び実測値を以下に示す。
実測値:LC/MS m/z=324.86[M−H]
芳香族オキシカルボン酸類の理論分子量:326.15
【0140】
B−2 芳香族オキシカルボン酸類の金属化合物の合成
水400mLに20%水酸化ナトリウム水溶液70.4gを加え、次いで芳香族オキシカルボン酸類(A2)を40.0g加え、90℃に加熱した。この液に、水340mLに25.7%の硫酸アルミニウム水溶液60.0gを加え、90℃に加熱した溶液を30分間で加え、95℃で2時間加熱撹拌した。その後、濾過し濾液の電気伝導度が300μS/cm以下になるまで水道水で水洗し、80℃にて48時間乾燥し、白色の芳香族オキシカルボン酸金属化合物(B2)を40.1g得た。
【0141】
得られた芳香族オキシカルボン酸金属化合物(B2)について、元素分析を実施例1のB−1に記載の条件で測定した。以下に、元素分析の実測値を示す。
実測値 C:63.77 H:6.09 N:0.00
【0142】
得られた芳香族オキシカルボン酸金属化合物(B2)について、含有する金属の重量%を実施例1のB−1に記載の条件で測定した。以下に、原子吸光分析の実測値を示す。
実測値 Al=5.50%、Na=0.07%
【0143】
得られた芳香族オキシカルボン酸金属化合物(B2)について、FT−IRを実施例1のB−1に記載の条件で測定したところ、
ν(cm−1)=3431、2958、1583、1473、1435、1406、1375、1308、1228、1201、1122、1043、1016、989、908、812、744、669を観測した。
【0144】
得られた芳香族オキシカルボン酸金属化合物(B2)について、TG−DTAを実施例1のB−1に記載の条件で測定し、その測定結果を図10に示す。その測定の結果、発熱温度:362℃、463℃、重量減少温度:234℃、402℃を観測した。
【0145】
得られた芳香族オキシカルボン酸金属化合物(B2)について、X線回折を実施例1のB−1に記載の条件で測定し、結晶化度を算出した結果を示す。結晶化度=0.8%。そのX線回折スペクトルを図11に示す。
【0146】
得られた芳香族オキシカルボン酸金属化合物(B2)について、LC/MS分析を実施例1のB−1に記載の条件で測定した。そのLC/MS分析の測定結果から、分子量が675.3と1025.1とであり、芳香族オキシカルボン酸類(A2)とAlとが、それぞれ2:1、3:2である構造を推定できるデータを得た。下記に取り得ると考えられる化学式(M−3)及び(M−4)を示す。
【0147】
【化39】

【0148】
【化40】

【0149】
(実施例3)
A−3 芳香族オキシカルボン酸類の合成
2,4−ジヒドロキシ安息香酸78.63gをメタノール400mLに溶解させ、炭酸カリウム152.03gを加えて60℃に加熱した。この反応液に4−(クロロメチル)スチレン87.88gをメタノール100mLに混合溶解させた溶解液を滴下し、60℃にて2.5時間反応させた。得られた反応液を冷却後、濾過し、メタノールで洗浄した。
【0150】
得られた析出物を塩酸により、pH=1の水1Lに分散させた。その後、濾過水洗し、80℃で乾燥し、白色の下記化学式(A3)に示す芳香族オキシカルボン酸類を55.71g得た。
【0151】
【化41】

【0152】
得られた芳香族オキシカルボン酸類(A3)について、HPLC純度を実施例1のA−1に記載の条件で測定したところ、97.7%だった。
【0153】
得られた芳香族オキシカルボン酸類(A3)について、H−NMRを実施例1のA−1に記載の条件で測定した。H−NMRスペクトルデータは、下記の通りであり、前記化学式(A3)で示す構造を支持する。
δ(ppm)=5.09(2H、s、−CH−)5.27(1H、d、C−H)、5.85(1H、d、C−H)、6.38−6.41(2H、m、Ar−H)、6.74(1H、dd、C−H)、7.41(2H、d、Ar−H)、7.49(2H、d、Ar−H)、7.61(2H、d、Ar−H)
前記H−NMRにおいて、5.09(2H、s、−OCH−)のプロトンに照射したところ、6.38−6.41(2H、m、Ar−H)の芳香族プロトンに17.2%の核オーバーハウザー効果が観測された。
【0154】
得られた芳香族オキシカルボン酸類(A3)について、FT−IRを実施例1のA−1に記載の条件で測定したところ、
ν(cm−1)=3085、3004、1639、1598、1513、1502、1450、1379、1288、1254、1182、1157、1105、1095、1014、904、827、779、729、698、649、595、532、471を観測した。
【0155】
得られた芳香族オキシカルボン酸類(A3)について、TG−DTAを実施例1のA−1に記載の条件で測定し、その測定の結果、融点184℃、発熱温度:571℃、重量減少温度:216℃、430℃、554℃を観測した。
【0156】
得られた芳香族オキシカルボン酸類(A3)について、元素分析を実施例1のA−1に記載の条件で測定した。以下に元素分析の理論値及び実測値を示す。
実測値 C:64.65 H:4.23 N:0.00
理論値 C:71.10 H:5.22 N:0.00
【0157】
得られた芳香族オキシカルボン酸類(A3)について、X線回折を実施例1のB−1に記載の条件で測定した。そのX線回折スペクトルを図12に示す。
【0158】
得られた芳香族オキシカルボン酸類(A3)について、LC/MS分析を実施例1のA−1の条件で測定した。以下に質量分析の理論値及び実測値を示す。
実測値:LC/MS m/z=269.07 [M−H]
芳香族オキシカルボン酸類の理論分子量:270.09
【0159】
B−3 芳香族オキシカルボン酸類の金属化合物の合成
水519mLに25.7%の硫酸アルミニウム水溶液90.6gを加え、95℃に加熱した。この液に、水500mLに20%水酸化ナトリウム水溶液73.7gを加え、次いで芳香族オキシカルボン酸類(A3)を50.0g加え、95℃に加熱した溶液を25分間で加え、95℃で3時間加熱撹拌した。その後、濾過し濾液の電気伝導度が300μS/cm以下になるまで水道水で水洗し、80℃にて48時間乾燥し、薄桃色の芳香族オキシカルボン酸金属化合物(B3)を57.2g得た。
【0160】
得られた芳香族オキシカルボン酸金属化合物(B3)について、元素分析を実施例1のB−1に記載の条件で測定した。以下に、元素分析の実測値を示す。
実測値 C:61.55 H:5.58 N:0.00
【0161】
得られた芳香族オキシカルボン酸金属化合物(B3)について、含有する金属の重量%を実施例1のB−1に記載の条件で測定した。以下に、原子吸光分析の実測値を示す。
実測値 Al=5.61%、Na=0.03%
【0162】
得られた芳香族オキシカルボン酸金属化合物(B3)について、FT−IRを実施例1のB−1に記載の条件で測定したところ、
ν(cm−1)=3425、1616、1513、1460、1383、1265、1194、1161、1107、1014、991、908、835、773、677、480を観測した。
【0163】
得られた芳香族オキシカルボン酸金属化合物(B3)について、TG−DTAを実施例1のB−1に記載の条件で測定し、その測定結果を図13に示す。その測定の結果、吸熱温度:190℃、発熱温度:350℃、456℃、重量減少温度:170℃、319℃、423℃を観測した。
【0164】
得られた芳香族オキシカルボン酸金属化合物(B3)について、X線回折を実施例1のB−1に記載の条件で測定し、結晶化度を算出した結果を示す。結晶化度=46.8%。そのX線回折スペクトルを図14に示す。
【0165】
得られた芳香族オキシカルボン酸金属化合物(B3)について、LC/MS分析を実施例1のB−1に記載の条件で測定した。そのLC/MS分析の測定結果から、分子量が563.5と832.1とであり、芳香族オキシカルボン酸類(A3)とAlとが、それぞれ2:1、3:1である構造を推定できるデータを得た。下記に取り得ると考えられる化学式(M−5)及び(M−6)を示す。
【0166】
【化42】

【0167】
【化43】

【0168】
(実施例4)
A−4 芳香族オキシカルボン酸類の合成
4−メチル−2,6−ジヒドロキシ安息香酸25.0gをメタノール450mLに溶解させ、炭酸カリウム40.5gを加えて65℃に加熱した。この反応液に4−(クロロメチル)スチレン23.4gをメタノール100mLに混合溶解させた溶解液を滴下し、65℃にて5時間反応させた。得られた反応液を冷却後、濾過し、濾液中のメタノールを減圧留去して析出物を得た。
【0169】
得られた析出物をpH=2の水1.5Lに分散させ、酢酸エチルを加えて抽出した。その後、水洗し、硫酸マグネシウムで乾燥させ、減圧下、酢酸エチルを留去して析出物を得た。得られた析出物をヘキサン洗浄後、トルエンと酢酸エチルにて再結晶し、下記化学式(A4)に示す芳香族オキシカルボン酸類を27.3g得た。
【0170】
【化44】

【0171】
得られた芳香族オキシカルボン酸類(A4)について、HPLC純度を実施例1のA−1に記載の条件で測定したところ、93.7%だった。
【0172】
得られた芳香族オキシカルボン酸類(A4)について、測定溶媒をCDClに変えた以外は、実施例1のA−1と同様の条件でH−NMRを測定した。H−NMRスペクトルデータは、下記の通りであり、前記化学式(A4)で示す構造を支持する。
δ(ppm)=2.18(3H、s、−CH)、4.39(2H、s、−OCH−)、5.32(1H、d、−C=C−H)、5.83(1H、d、−C=C−H)、6.68−6.79(1H、m、−C=C−H)、7.29(2H、d、Ar−H)、7.45(4H、d−d、Ar−H)
前記H−NMRにおいて、4.39ppm(2H、s、−OCH−)のプロトンに照射したところ、7.34(2H、d−d、Ar−H)の芳香族プロトンに15.3%の核オーバーハウザー効果が観測された。
【0173】
得られた芳香族オキシカルボン酸類(A4)について、FT−IRを実施例1のA−1に記載の条件で測定したところ、
ν(cm−1)=3417、3097、3007、2969、2863、2621、1664、1611、1516、1434、1371、1333、1295、1279、1228、1202、1114、1064、973、911、854、836、809、805、724、684、496、467を観測した。
【0174】
得られた芳香族オキシカルボン酸類(A4)について、TG−DTAを実施例1のA−1に記載の条件で測定した結果、融点156℃、発熱温度:509℃、559℃、重量減少温度:163℃、390℃、476℃、549℃を観測した。
【0175】
得られた芳香族オキシカルボン酸類(A4)について、元素分析を実施例1のA−1に記載の条件で測定した。以下に元素分析の理論値及び実測値を示す。
実測値C:69.93 H:5.33 N:0.00
理論値C:71.82 H:5.67 N:0.00
【0176】
得られた芳香族オキシカルボン酸類(A4)について、LC/MS分析を実施例1のA−1に記載の条件で測定した。質量分析の理論値及び実測値を示す。
実測値:LC/MS m/z=283.2[M−H]
芳香族オキシカルボン酸類の理論分子量:284.1
【0177】
B−4 芳香族オキシカルボン酸類の金属化合物の合成
水200mLに25.7%の硫酸アルミニウム水溶液34.4gを加え95℃に加熱した。この液に、水200mLに20%水酸化ナトリウム水溶液28.0gを加え、次いで芳香族オキシカルボン酸類(A4)を20.0g加え、95℃に加熱した溶液を30分間で加え、95℃で3時間加熱撹拌した。その後、濾過し濾液の電気伝導度が300μS/cm以下になるまで水道水で水洗し、80℃にて48時間乾燥し、白色の芳香族オキシカルボン酸金属化合物(B4)を18.6g得た。
【0178】
得られた芳香族オキシカルボン酸金属化合物(B4)について、元素分析を実施例1のB−1に記載の条件で測定した。以下に、元素分析の実測値を示す。
実測値 C:64.32 H:5.21 N:0.00
【0179】
得られた芳香族オキシカルボン酸金属化合物(B4)について、含有する金属の重量%を実施例1のB−1に記載の条件で測定した。以下に、原子吸光分析の実測値を示す。
実測値 Al=5.10%、Na=0.01%
【0180】
得られた芳香族オキシカルボン酸金属化合物(B4)について、FT−IRを実施例1のB−1に記載の条件で測定したところ、
ν(cm−1)=3425、1616、1513、1460、1383、1265、1194、1161、1107、1014、991、908、835、773、677、480を観測した。
【0181】
得られた芳香族オキシカルボン酸金属化合物(B4)について、TG−DTAを実施例1のB−1に記載の条件で測定した。その測定の結果、吸熱温度:190℃、発熱温度:350℃、456℃、重量減少温度:170℃、319℃、423℃を観測した。
【0182】
得られた芳香族オキシカルボン酸金属化合物(B4)について、LC/MS分析を実施例1のB−1に記載の条件で測定した。そのLC/MS分析の測定結果から、分子量が591.1で、芳香族オキシカルボン酸類(A4)とAlとが2:1で反応している構造と推定された。
【0183】
(実施例5)
A−5 芳香族オキシカルボン酸類の合成
5−tert−ブチル−2,3−ジヒドロキシ安息香酸5.53gをメタノール30mLに溶解させ、炭酸カリウム8.02gを加えて65℃に加熱した。この反応液に4−(クロロメチル)スチレン4.12gを15分間で滴下し、65℃にて3時間反応させた。得られた反応液を冷却後、濾過し、濾液中のメタノールを減圧留去して析出物を得た。得られた析出物をpH=2の水に分散させ、酢酸エチルを加えて抽出した。その後、水洗し、硫酸マグネシウムで乾燥させ、減圧下、酢酸エチルを留去後、析出物をトルエン洗浄し、下記化学式(A5)に示す芳香族オキシカルボン酸類を4.55g得た。
【0184】
【化45】

【0185】
得られた芳香族オキシカルボン酸類(A5)について、HPLC純度を実施例1のA−1に記載の条件で測定したところ、99.3%だった。
【0186】
得られた芳香族オキシカルボン酸類(A5)について、H−NMRを実施例1のA−1に記載の条件で測定した。H−NMRスペクトルデータは、下記の通りであり、前記化学式(A5)で示す構造を支持する。
δ(ppm)=1.21(1H、s、−C(CH)5.14(2H、s、−CH2−)5.25(1H、d、C−H)、5.83(1H、d、C−H)、6.73(1H、dd、C−H)、7.28(1H、d、Ar−H)、7.32(1H、d、Ar−H)、7.43(1H、d、Ar−H)、7.49(1H、d、Ar−H)
前記H−NMRにおいて、5.14(2H、s、−CH−)のプロトンに照射したところ、7.28(1H、d、Ar−H)の芳香族プロトンに8.5%の核オーバーハウザー効果が観測された。
【0187】
得られた芳香族オキシカルボン酸類(A5)について、FT−IRを実施例1のA−1に記載の条件で測定したところ、
ν(cm−1)=3093、3052、2964、2865、2632、1654、1616、1513、1483、1450、1406、1303、1277、1238、1198、1120、1080、1016、982、958、919、893、858、829、817、792、709、687、644、490を観測した。
【0188】
得られた芳香族オキシカルボン酸類(A5)について、TG−DTAを実施例1のA−1に記載の条件で測定した。測定の結果、融点142℃、発熱温度:592℃、分解点:201℃、411℃、555℃を観測した。
【0189】
得られた芳香族オキシカルボン酸類(A5)について、元素分析を実施例1のA−1に記載の条件で測定した。以下に元素分析の理論値及び実測値を示す。
実測値 C:73.92 H:6.64 N:0.00
理論値 C:73.60 H:6.79 N:0.00
【0190】
得られた芳香族オキシカルボン酸類(A5)について、X線回折を実施例1のB−1に記載の条件で測定した。そのX線回折スペクトルを図15に示す。
【0191】
得られた芳香族オキシカルボン酸類(A5)について、LC/MS分析を実施例1のA−1の条件にて測定した。以下に質量分析の理論値及び実測値を示す。
実測値:LC/MS m/z=324.73[M−H]
芳香族オキシカルボン酸類の理論分子量:326.15
【0192】
B−5 芳香族オキシカルボン酸類の金属化合物の合成
水440mLに25.7%の硫酸アルミニウム水溶液77.2gを加え90℃に加熱した。この液に、水130mLに20%水酸化ナトリウム水溶液16.2gを加え、次いで芳香族オキシカルボン酸類(A5)を13.1g加え、90℃に加熱した溶液を30分間で加え、95℃で2時間加熱撹拌した。その後、濾過し濾液の電気伝導度が300μS/cm以下になるまで水道水で水洗し、80℃にて24時間乾燥し、芳香族オキシカルボン酸金属化合物(B5)を13.3g得た。
【0193】
得られた芳香族オキシカルボン酸金属化合物(B5)について、元素分析を実施例1のB−1に記載の条件で測定した。以下に、元素分析の実測値を示す。
実測値 C:68.4 H:6.12 N:0.00
【0194】
得られた芳香族オキシカルボン酸金属化合物(B5)について、含有する金属の重量%を実施例1のB−1に記載の条件で測定した。以下に、原子吸光分析の実測値を示す。
実測値 Al=3.70%、Na=0.36%
【0195】
得られた芳香族オキシカルボン酸金属化合物(B5)について、FT−IRを実施例1のB−1に記載の条件で測定したところ、
ν(cm−1)=3423、2960、1630、1570、1485、1439、1404、1369、1271、1246、1117、1055、1016、989、908、852、825、812、729、648、438を観測した。
【0196】
得られた芳香族オキシカルボン酸金属化合物(B5)について、TG−DTAを実施例1のB−1に記載の条件で測定し、その測定の結果、発熱温度:367℃、458℃、重量減少温度:254℃、429℃を観測した。
【0197】
得られた芳香族オキシカルボン酸金属化合物(B5)について、X線回折を実施例1のB−1に記載の条件で測定し、結晶化度を算出した結果を示す。結晶化度=6.2%。そのX線回折スペクトルを図16に示す。
【0198】
得られた芳香族オキシカルボン酸金属化合物(B5)について、LC/MS分析を実施例1のB−1に記載の条件で測定した。そのLC/MS分析の測定結果から、分子量が676.7と1002.4とであり、芳香族オキシカルボン酸類(A5)とAlとが、それぞれ2:1、3:1である構造を推定できるデータを得た。下記に取り得ると考えられる化学式(M−7)及び(M−8)を示す。
【0199】
【化46】

【0200】
【化47】

【0201】
(実施例6)
A−6 芳香族オキシカルボン酸類の合成
メタノール100mLに5−ブロモ−2,4−ジヒドロキシ安息香酸23.8gを溶解させ、これに炭酸カリウム30.4gを加え、加熱し、62℃で30分間分散した。これに4−クロロメチルスチレン17.6gを1時間で滴下し、還流下、2.5時間反応させた。反応後、室温まで冷却し、濾過後、残渣をメタノールで洗浄し、次いで水300mLに加え、塩酸にてpH=1に調整し、30分間分散後、濾過水洗した。80℃で48時間乾燥させ白色固体で下記化学式(A6)に示す芳香族オキシカルボン酸類を13.5g得た。
【0202】
【化48】

【0203】
得られた芳香族オキシカルボン酸類(A6)について、HPLC純度を実施例1のA−1に記載の条件で測定したところ、96.7%だった。
【0204】
得られた芳香族オキシカルボン酸類(A6)について、H−NMRを実施例1のA−1に記載の条件で測定した。H−NMRスペクトルデータは、下記の通りであり、前記化学式(A6)で示す構造を支持する。
δ(ppm)=5.27(2H、s、−OCH−)、5.30(1H、d、−C=C−H)、5.86(1H、d、−C=C−H)、6.70−6.76(1H、m、−C=C−H)、6.79(1H、s、Ar−H)、7.49(4H、d−d、Ar−H)、7.90(1H、s、Ar−H)、11.54(1H、broad、OH)
前記H−NMRにおいて、5.00(2H、s、−OCH−)のプロトンに照射したところ、6.79(1H、s、Ar−H)の芳香族プロトンに8.9%の核オーバーハウザー効果が観測された。
【0205】
得られた芳香族オキシカルボン酸類(A6)について、FT−IRを実施例1のA−1に記載の条件で測定したところ、
ν(cm−1)=3004、2557、1651、1612、1513、1454、1439、1383、1354、1257、1192、1049、1016、1005、904、895、842、821、787、715、683、606、496、455を観測した。
【0206】
得られた芳香族オキシカルボン酸類(A6)について、TG−DTAを実施例1のA−1に記載の条件で測定した。測定の結果、融点232℃、発熱温度:257℃、560℃、重量減少温度:227℃、510℃を観測した。
【0207】
得られた芳香族オキシカルボン酸類(A6)について、元素分析を実施例1のA−1に記載の条件で測定した。以下に元素分析の理論値及び実測値を示す。
実測値 C:55.35 H:3.41 N:0.00
理論値 C:55.04 H:3.75 N:0.00
【0208】
得られた芳香族オキシカルボン酸類(A6)について、LC/MS分析を実施例1のA−1の条件にて測定した。以下に質量分析の理論値及び実測値を示す。
実測値:LC/MS m/z=348.80[M−H]
芳香族オキシカルボン酸類の理論分子量:348.0
【0209】
B−6 芳香族オキシカルボン酸金属化合物の合成
水440mLに25.7%の硫酸アルミニウム水溶液77.2gを加え90℃に加熱した。この溶液に、水130mLに20%水酸化ナトリウム水溶液16.2gを加え、次いで芳香族オキシカルボン酸類(A6)を14.0g加え、90℃に加熱した溶液を30分間で加え、95℃で2時間加熱撹拌した。その後、濾過し濾液の電気伝導度が300μS/cm以下になるまで水道水で水洗し、80℃にて24時間乾燥し、白色の芳香族オキシカルボン酸金属化合物(B6)を11.8g得た。
【0210】
得られた芳香族オキシカルボン酸金属化合物(B6)について、元素分析を実施例1のB−1に記載の条件で測定した。以下に、元素分析の実測値を示す。
実測値 C:47.4 H:3.07 N:0.00
【0211】
得られた芳香族オキシカルボン酸金属化合物(B6)について、含有する金属の重量%を実施例1のB−1に記載の条件で測定した。以下に、原子吸光分析の実測値を示す。
実測値 Al=3.74%、Na=0.04%
【0212】
得られた芳香族オキシカルボン酸金属化合物(B6)について、FT−IRを実施例1のB−1に記載の条件で測定したところ、
ν(cm−1)=3346、3086、1603、1514、1460、1373、1327、1294、1267、1227、1117、1051、1016、987、906、837、789、698、675、640、559、480、453、401を観測した。
【0213】
得られた芳香族オキシカルボン酸金属化合物(B6)について、TG−DTAを実施例1のB−1に記載の条件で測定した。その測定結果を図17に示す。その測定の結果、吸熱温度:207℃、発熱温度:506℃、重量減少温度:194℃、258℃、460℃を観測した。
【0214】
得られた芳香族オキシカルボン酸金属化合物(B6)について、X線回折を実施例1のB−1に記載の条件で測定し、結晶化度を算出した結果を示す。結晶化度=37.7%。そのX線回折スペクトルを図18に示す。
【0215】
得られた芳香族オキシカルボン酸金属化合物(B6)について、LC/MS分析を実施例1のB−1に記載の条件で測定した。そのLC/MS分析の測定結果から、分子量が1094.4で、芳香族オキシカルボン酸類(A6)とAlとが3:1で反応している構造と推定された。
【0216】
(実施例7)
A−7 芳香族オキシカルボン酸類の合成
2,3−ジヒドロキシ安息香酸53.9gをメタノール280mLに溶解させ、これにKCOを106g加え、65℃で、30分間撹拌した。これに4−クロロメチルスチレン61.7gを1時間で滴下した。還流下、3時間反応後、室温まで放冷し、析出物を濾過後、メタノールで洗浄した。濾液中のメタノールを減圧下除去し、茶色半固体を得た。この茶色半固体を酢酸エチル、水に分散し、塩酸でpH=1に調整した。酢酸エチル相を飽和食塩水で洗浄後、硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧下溶媒を除去し、淡黄色固体124.3gを得た。この淡黄色固体をトルエンで再結晶し、淡黄色固体で下記化学式(A7)に示す芳香族オキシカルボン酸類を54.5g得た。
【0217】
【化49】

【0218】
得られた芳香族オキシカルボン酸類(A7)について、HPLC純度を実施例1のA−1に記載の条件で測定したところ、95.0%だった。
【0219】
得られた芳香族オキシカルボン酸類(A7)について、H−NMRを実施例1のA−1に記載の条件で測定した。H−NMRスペクトルデータは、下記の通りであり、前記化学式(A7)で示す構造を支持する。
δ(ppm)=5.11(2H、s、−OCH−)、5.25(1H、d、−C=C−H)、5.86(1H、d、−C=C−H)、6.73(1H、d−d、−C=C−H)、6.80(1H、t、Ar−H)、7.22(1H、d、Ar−H)、7.34−7.49(5H、m、Ar−H)
前記H−NMRにおいて、5.11(2H、s、−OCH−)のプロトンに照射したところ、7.22(1H、d、Ar−H)の芳香族プロトンに9.9%の核オーバーハウザー効果が観測された。
【0220】
得られた芳香族オキシカルボン酸類(A7)について、FT−IRを実施例1のA−1に記載の条件で測定したところ、
ν(cm−1)=3236、3031、2879、2719、2593、1667、1612、1581、1463、1442、1384、1305、1245、1234、1178、1162、1087、1025、1018、908、862、836、827、781、748、696、653、607、480を観測した。
【0221】
得られた芳香族オキシカルボン酸類(A7)について、TG−DTAを実施例1のA−1に記載の条件で測定した。測定の結果、融点177℃、発熱温度:613℃、重量減少温度:181℃、413℃、593℃を観測した。
【0222】
得られた芳香族オキシカルボン酸類(A7)について、元素分析を実施例1のA−1に記載の条件で測定した。以下に元素分析の理論値及び実測値を示す。
実測値 C:71.70 H:4.75 N:0.00
理論値 C:71.10 H:5.22 N:0.00
【0223】
得られた芳香族オキシカルボン酸類(A7)について、LC/MS分析を実施例1のA−1に記載の条件で測定した。以下に質量分析の理論値及び実測値を示す。
実測値:LC/MS m/z=268.8[M−H]
芳香族オキシカルボン酸類の理論分子量:270.09
【0224】
B−7 芳香族オキシカルボン酸類の金属化合物の合成
水440mLに25.7%の硫酸アルミニウム水溶液77.2gを加え90℃に加熱した。この溶液に、水130mLに20%水酸化ナトリウム水溶液16.2gを加え、次いで芳香族オキシカルボン酸類(A7)を10.8g加え、90℃に加熱した溶液を30分間で加え、95℃で2時間加熱撹拌した。その後、濾過し濾液の電気伝導度が300μS/cm以下になるまで水道水で水洗し、80℃にて24時間乾燥し、白色の芳香族オキシカルボン酸金属化合物(B7)を10.8g得た。
【0225】
得られた芳香族オキシカルボン酸金属化合物(B7)について、元素分析を実施例1のB−1に記載の条件で測定した。以下に、元素分析の実測値を示す。
実測値 C:63.58 H:4.58 N:0.00
【0226】
得られた芳香族オキシカルボン酸金属化合物(B7)について、含有する金属の重量%を実施例1のB−1に記載の条件で測定した。以下に、原子吸光分析の実測値を示す。
実測値 Al=4.37%、Na=0.03%
【0227】
得られた芳香族オキシカルボン酸金属化合物(B7)について、FT−IRを実施例1のB−1に記載の条件で測定したところ、
ν(cm−1)=3361、3086、1736、1614、1592、1556、1512、1493、1470、1406、1383、1244、1205、1167、1117、1086、1051、1016、989、906、870、825、754、737、692、673、633、559、482、463を観測した。
【0228】
得られた芳香族オキシカルボン酸金属化合物(B7)について、TG−DTAを実施例1のB−1に記載の条件で測定した。その測定の結果、発熱温度:354℃、455℃、重量減少温度:152℃、213℃、332℃、426℃を観測した。
【0229】
得られた芳香族オキシカルボン酸金属化合物(B7)について、LC/MS分析を実施例1のB−1に記載の条件で測定した。そのLC/MS分析の測定結果から、分子量が563.2と832.2で、芳香族オキシカルボン酸類(A7)とAlとが、それぞれ2:1、3:1である構造を推定できるデータを得た。
【0230】
(実施例8)
A−8 芳香族オキシカルボン酸類の合成
4−(4’−ビニルベンジルオキシ)−2−ヒドロキシ安息香酸と4−(3’−ビニルベンジルオキシ)−2−ヒドロキシ安息香酸との混合物の合成である。
2,4−ジヒドロキシ安息香酸78.6gをメタノール400mLに溶解させ、これに炭酸カリウム152.0gを加え、60℃で30分間撹拌した。これに、メタノール50mLに溶解したクロロメチルスチレン(AGCセイケミカル株式会社製、商品名:CMS−P)83.5gを1時間で滴下した。還流下、3時間反応後、室温まで放冷し、析出物を濾過後、メタノールで洗浄した。析出物を水1Lに加え、塩酸にてpH=1に調整して、30分間撹拌後、濾過、水洗した。80℃で48時間乾燥し、白色固体で下記化学式(A8)に示す芳香族オキシカルボン酸類を76.2g得た。
【0231】
【化50】

【0232】
得られた芳香族オキシカルボン酸類(A8)について、HPLC純度を実施例1のA−1に記載の条件で測定したところ、混合物として、97.7%だった。
【0233】
得られた芳香族オキシカルボン酸類(A8)について、H−NMRを実施例1のA−1に記載の条件で測定した。H−NMRスペクトルデータは、下記の通りであり、前記化学式(A8)で示す構造を支持する。
δ(ppm)=5.14(2H、s、−CH−)5.25−5.30(1H、dX2、C−H)、5.81−5.88(1H、dX2、C−H)、6.34−6.57(2H、m、Ar−H)、6.68−6.79(1H、ddX2、C−H)、7.32−7.54(4H、m、Ar−H)、7.67−7.70(1H、dX2、Ar−H)
前記H−NMRにおいて、5.14(2H、s、−OCH−)のプロトンに照射したところ、6.5〜6.6の芳香族プロトンに16.8%の核オーバーハウザー効果が観測された。
【0234】
得られた芳香族オキシカルボン酸類(A8)について、FT−IRを実施例1のA−1に記載の条件で測定したところ、
ν(cm−1)=3510、3448、3007、2864、2551、2362、1655、1622、1514、1454、1437、1383、1350、1250、1192、1151、1095、1036、1014、991、980、910、852、835、823、793、777、681、648、606、532、496、461を観測した。
【0235】
得られた芳香族オキシカルボン酸類(A8)について、TG−DTAを実施例1のA−1に記載の条件で測定した。測定の結果、吸熱温度157℃、発熱温度:440℃、570℃、重量減少温度:216℃、434℃、542℃を観測した。
【0236】
得られた芳香族オキシカルボン酸類(A8)について、元素分析を実施例1のA−1に記載の条件で測定した。以下に元素分析の理論値及び実測値を示す。
実測値 C:71.71 H:5.01 N:0.15
理論値 C:71.10 H:5.22 N:0.00
【0237】
得られた芳香族オキシカルボン酸類(A8)について、LC/MS分析を実施例1のA−1の条件にて測定した。以下に質量分析の理論値及び実測値を示す。
実測値:LC/MS m/z=269.0[M−H]
芳香族オキシカルボン酸類の理論分子量:270.09
【0238】
B−8 芳香族オキシカルボン酸類の金属化合物の合成
水440mLに25.7%の硫酸アルミニウム水溶液77.2gを加え90℃に加熱した。この溶液に、水130mLに20%水酸化ナトリウム水溶液16.2gを加え、次いで芳香族オキシカルボン酸類(A8)を10.8g加え、90℃に加熱した溶液を30分間で加え、95℃で2時間加熱撹拌した。その後、濾過し濾液の電気伝導度が300μS/cm以下になるまで水道水で水洗し、80℃にて24時間乾燥し、薄桃色の芳香族オキシカルボン酸金属化合物(B8)を11.7g得た。
【0239】
得られた芳香族オキシカルボン酸金属化合物(B8)について、元素分析を実施例1のB−1に記載の条件で測定した。以下に、元素分析の実測値を示す。
実測値 C:64.16 H:4.57 N:0.00
【0240】
得られた芳香族オキシカルボン酸金属化合物(B8)について、含有する金属の重量%を実施例1のB−1に記載の条件で測定した。以下に、原子吸光分析の実測値を示す。
実測値 Al=4.47%、Na=0.05%
【0241】
得られた芳香族オキシカルボン酸金属化合物(B8)について、FT−IRを実施例1のB−1に記載の条件で測定したところ、
ν(cm−1)=3386、3086、1616、1554、1460、1387、1267、1196、1165、1109、1011、989、904、835、771、706、679、627、478を観測した。
【0242】
得られた芳香族オキシカルボン酸金属化合物(B8)について、TG−DTAを実施例1のB−1に記載の条件で測定した。その測定の結果、吸熱温度:179℃、発熱温度:350℃、458℃、重量減少温度:163℃、320℃、427℃を観測した。
【0243】
得られた芳香族オキシカルボン酸金属化合物(B8)について、X線回折を実施例1のB−1に記載の条件で測定し、結晶化度を算出した結果を示す。結晶化度=94.0%。
【0244】
(実施例9)
A−9 芳香族オキシカルボン酸類の合成
実施例2のA−2と同様に、芳香族オキシカルボン酸類(A2)を合成した。
【0245】
B−9 芳香族オキシカルボン酸類の金属化合物の合成
水500mLに20%水酸化ナトリウム水溶液16.2g及び芳香族オキシカルボン酸類(A2)を13.1g加え、90℃に加熱した。この水溶液に26.8%塩化亜鉛水溶液59.4gを30分間で加え95℃に加熱し2時間反応した。その後、室温まで冷却し、濾過し、濾液の電気伝導度が300μS/cm以下になるまで水道水で水洗し、80℃にて24時間乾燥し、薄桃色の芳香族オキシカルボン酸金属化合物(B9)を11.5g得た。
【0246】
得られた芳香族オキシカルボン酸金属化合物(B9)について、元素分析を実施例1のB−1に記載の条件で測定した。以下に、元素分析の実測値を示す。
実測値 C:56.74 H:3.44 N:0.00
【0247】
得られた芳香族オキシカルボン酸金属化合物(B9)について、含有する金属の重量%を実施例1のB−1に記載の条件で測定した。以下に、原子吸光分析の実測値を示す。
実測値 Zn=17.20%、Na<0.01%
【0248】
得られた芳香族オキシカルボン酸金属化合物(B9)について、FT−IRを実施例1のB−1に記載の条件で測定したところ、
ν(cm−1)=3564、3458、3259、3089、3003、2956、2906、2872、1558、1527、1514、1435、1390、1365、1325、1230、1201、1120、1045、1018、991、970、910、860、831、808、744、708、671、542、478、409を観測した。
【0249】
得られた芳香族オキシカルボン酸金属化合物(B9)について、TG−DTAを実施例1のB−1に記載の条件で測定した。その測定の結果、吸熱温度:184℃、発熱温度:443℃、520℃、重量減少温度:177℃、239℃、302℃、412℃、503℃を観測した。
【0250】
得られた芳香族オキシカルボン酸金属化合物(B9)について、LC/MS分析を実施例1のB−1に記載の条件で測定した。そのLC/MS分析の測定結果から、分子量が388.4と714.7とであり、芳香族オキシカルボン酸類(A2)とZnとが、それぞれ1:1、2:1である構造を推定できるデータを得た。下記に取り得ると考えられる化学式(M−9)及び(M−10)を示す。
【0251】
【化51】

【0252】
【化52】

【0253】
(実施例10)
A−10 芳香族オキシカルボン酸類の合成
実施例1のA−1と同様に、芳香族オキシカルボン酸類(A1)を合成した。
【0254】
B−10 芳香族オキシカルボン酸類の金属化合物の合成
水500mLに20%水酸化ナトリウム水溶液16.2g及び芳香族オキシカルボン酸類(A1)10.8gを加え、90℃に加熱した。この水溶液に26.8%塩化亜鉛水溶液59.4gを30分間で加え95℃に加熱し2時間反応した。その後、室温まで冷却し、濾過し、濾液の電気伝導度が300μS/cm以下になるまで水道水で水洗し、80℃にて24時間乾燥し、薄茶色の芳香族オキシカルボン酸金属化合物(B10)を13.1g得た。
【0255】
得られた芳香族オキシカルボン酸金属化合物(B10)について、元素分析を実施例1のB−1に記載の条件で測定した。以下に、元素分析の実測値を示す。
実測値 C:56.50 H:3.21 N:0.00
【0256】
得られた芳香族オキシカルボン酸金属化合物(B10)について、含有する金属の重量%を実施例1のB−1に記載の条件で測定した。以下に、原子吸光分析の実測値を示す。
実測値 Zn=14.99%、Na=0.101%
【0257】
得られた芳香族オキシカルボン酸金属化合物(B10)について、FT−IRを実施例1のB−1に記載の条件で測定したところ、
ν(cm−1)=3442、3088、3043、3005、2906、2864、2440、1626、1578、1533、1487、1437、1377、1325、1284、1227、1157、1117、1090、1012、991、960、906、868、822、796、731、704、687、654、590、569、525、505、465を観測した。
【0258】
得られた芳香族オキシカルボン酸金属化合物(B10)について、TG−DTAを実施例1のB−1に記載の条件で測定した。その測定の結果、発熱温度:369℃、462℃、重量減少温度:354℃、459℃を観測した。
【0259】
(実施例11)
A−11 芳香族オキシカルボン酸類の合成
実施例3のA−3と同様に、芳香族オキシカルボン酸類(A3)を合成した。
【0260】
B−11 芳香族オキシカルボン酸金属化合物の合成
水500mLに20%水酸化ナトリウム水溶液16.2g及び芳香族オキシカルボン酸類(A3)を10.8g加え、90℃に加熱した。この水溶液に26.8%塩化亜鉛水溶液59.4gを30分間で加え95℃に加熱し2時間反応した。その後、室温まで冷却し、濾過し、濾液の電気伝導度が300μS/cm以下になるまで水道水で水洗し、80℃にて24時間乾燥し、白色の芳香族オキシカルボン酸金属化合物(B11)を13.1g得た。
【0261】
得られた芳香族オキシカルボン酸金属化合物(B11)について、元素分析を実施例1のB−1に記載の条件で測定した。以下に、元素分析の実測値を示す。
実測値 C:56.26 H:3.21 N:0.00
【0262】
得られた芳香族オキシカルボン酸金属化合物(B11)について、含有する金属の重量%を実施例1のB−1に記載の条件で測定した。以下に、原子吸光分析の実測値を示す。
実測値 Zn=11.75%、Na<0.01%
【0263】
得られた芳香族オキシカルボン酸金属化合物(B11)について、FT−IRを実施例1のB−1に記載の条件で測定したところ、
ν(cm−1)=3855、3651、3629、3448、3084、3007、2980、2904、2868、1622、1572、1520、1487、1443、1383、1342、1282、1254、1213、1196、1113、1016、991、904、856、827、779、766、729、704、677、604、546、494、415を観測した。
【0264】
得られた芳香族オキシカルボン酸金属化合物(B11)について、TG−DTAを実施例1のB−1に記載の条件で測定した。その測定の結果、発熱温度:381℃、440℃、重量減少温度:375℃、416℃を観測した。
【0265】
得られた芳香族オキシカルボン酸金属化合物(B11)について、LC/MS分析を実施例1のB−1に記載の条件で測定した。そのLC/MS分析の測定結果から、分子量が332.0と602.2とであり、芳香族オキシカルボン酸類(A3)とZnとが、それぞれ1:1、2:1である構造を推定できるデータを得た。下記に取り得ると考えられる化学式(M−11)及び(M−12)を示す。
【0266】
【化53】

【0267】
【化54】

【0268】
(実施例12)
A−12 芳香族オキシカルボン酸類の合成
80%硫酸1201gに2,5−ジヒドロキシ安息香酸154.1gとイソプロパノール210gとを加え、75℃にて8時間撹拌した。放冷し、氷水2Lとヘキサン140mLとを加え氷浴下、撹拌した。析出している結晶を濾過し、残渣をヘキサンで洗浄した。更にメタノール:水=6:4の混合液に分散し、濾過した。60℃にて48時間乾燥し、イソプロピル化された芳香族オキシカルボン酸中間体65.4gを得た。イソプロピル化された芳香族オキシカルボン酸中間体22.5gをメタノール450mLに溶解させ、炭酸カリウム60gを加えて65℃に加熱した。この反応液にPolymer Bulletin(ポリマー ブレティン),第19巻,p.111−117(1988年)に記載の方法で合成した4−(2−クロロエチル)スチレン96.8gを滴下し、65℃にて3時間反応させた。得られた反応液を冷却後、濾過し、濾液中のメタノールを減圧留去して析出物を得た。得られた析出物をpH=2の水1.5Lに分散させ、酢酸エチルを加えて抽出した。その後、水洗し、硫酸マグネシウムで乾燥させ、減圧下、酢酸エチルを留去して析出物を得た。得られた析出物をヘキサン洗浄後、トルエンと酢酸エチルにて再結晶し、下記化学式(A12)に示す芳香族オキシカルボン酸類を26.3g得た。
【0269】
【化55】

【0270】
得られた芳香族オキシカルボン酸類(A12)について、HPLC純度を実施例1のA−1に記載の条件で測定したところ、96.6%だった。
【0271】
得られた芳香族オキシカルボン酸類(A12)について、H−NMRを実施例1のA−1に記載の条件で測定した。H−NMRスペクトルデータは、下記の通りであり、前記化学式(A12)で示す構造を支持する。
δ(ppm)=1.24(6H、d、−(CH)、2.88(1H、m、−C−(CH)、4.07(2H、t、−O−CH−)、2.77(2H、t、−O−CH−C−)、5.25(1H、d、−C=C−H)、6.73、5.83(1H、d、−CH=C)、6.94(1H、d、Ar−H)、7.32(2H、d、Ar−H)、7.26(1H、d、Ar−H)、7.46(2H、d、Ar−H)
前記H−NMRにおいて、4.07(2H、t、−O−CH−)のプロトンに照射したところ、6.94(1H、d、Ar−H)の芳香族プロトンに9.1%の核オーバーハウザー効果が観測された。
【0272】
得られた芳香族オキシカルボン酸類(A12)について、FT−IRを実施例1のA−1に記載の条件で測定したところ、
ν(cm−1)=3431、3018、2878、1679、1620、1455、1345、1236、1132、1236、1132、1078、930、810、740、700、506を観測した。
【0273】
得られた芳香族オキシカルボン酸類(A12)について、元素分析を実施例1のA−1に記載の条件で測定した。以下に元素分析の理論値及び実測値を示す。
理論値 C:73.60 H:6.79 N:0.00
実測値 C:75.60 H:6.57 N:0.00
【0274】
得られた芳香族オキシカルボン酸類(A12)について、LC/MS分析を実施例1のA−1の条件で測定した。以下に質量分析の理論値及び実測値を示す。
実測値:LC/MS m/z=325.8[M−H]
芳香族オキシカルボン酸類の理論分子量:326.15
【0275】
B−12 芳香族オキシカルボン酸類の金属化合物の合成
水400mLに20%水酸化ナトリウム水溶液48.8gを加え、次いで芳香族オキシカルボン酸類(A12)を40.0g加え、90℃に加熱した。この液に、水275mLに25.7%の硫酸アルミニウム水溶液48.0gを加え、90℃に加熱した溶液を30分間で加え、95℃で2時間加熱撹拌した。その後、濾過し濾液の電気伝導度が300μS/cm以下になるまで水道水で水洗し、80℃にて48時間乾燥し、白色の芳香族オキシカルボン酸金属化合物(B12)を39.7g得た。
【0276】
得られた芳香族オキシカルボン酸金属化合物(B12)について、元素分析を実施例1のB−1に記載の条件で測定した。以下に、元素分析の実測値を示す。
実測値 C:71.22 H:6.54 N:0.00
【0277】
得られた芳香族オキシカルボン酸金属化合物(B12)について、含有する金属の重量%を実施例1のB−1に記載の条件で測定した。以下に、原子吸光分析の実測値を示す。
実測値 Al=4.25%、Na=0.06%
【0278】
得られた芳香族オキシカルボン酸金属化合物(B12)について、FT−IRを実施例1のB−1に記載の条件で測定したところ、
ν(cm−1)=3429、2966、1591、1443、1493、1424、1410、1358、1378、1310、1233、1200、1146、1050、1013、998、920、814、745、671を観測した。
【0279】
得られた金属化合物(B12)について、TG−DTAを実施例1のB−1に記載の条件で測定した。その測定の結果、発熱温度:357℃、477℃、重量減少温度:221℃、398℃を観測した。
【0280】
(実施例13)
A−13 芳香族オキシカルボン酸類の合成
実施例2のA−2と同様に、芳香族オキシカルボン酸類(A2)を合成した。
【0281】
B−13 芳香族オキシカルボン酸類の金属化合物の合成
トルエン100mLに芳香族オキシカルボン酸類(A2)13.1gと四塩化ケイ素2.2gとを加え、50℃にて1時間反応させた。その後、95℃まで加熱し、95℃で2時間反応させ室温まで冷却した。濾過し、濾液の電気伝導度が300μS/cm以下になるまで水道水で水洗し、80℃にて15時間乾燥し、肌色の芳香族オキシカルボン酸金属化合物(B13)を5.2g得た。
【0282】
得られた芳香族オキシカルボン酸金属化合物(B13)について、元素分析を実施例1のB−1に記載の条件で測定した。以下に、元素分析の実測値を示す。
実測値 C:61.21 H:5.71 N:0.00
【0283】
得られた芳香族オキシカルボン酸金属化合物(B13)について、含有する金属の重量%を実施例1のB−1に記載の条件で測定した。以下に、原子吸光分析の実測値を示す。
実測値 Si=6.50%、Na=0.05%
【0284】
得られた芳香族オキシカルボン酸金属化合物(B13)について、FT−IRを実施例1のB−1に記載の条件で測定したところ、
ν(cm−1)=3425、3419、3126、3089、3052、3022、3003、2960、2916、2872、2713、2598、1657、1608、1512、1483、1433、1392、1362、1286、1269、1201、1107、1059、1030、1018、974、943、933、914、895、877、856、800、729、717、696、665、638、606、580、575、542、534、486、478、467、438を観測した。
【0285】
得られた芳香族オキシカルボン酸金属化合物(B13)について、TG−DTAを実施例1のB−1に記載の条件で測定した。その測定の結果、発熱温度:276℃、534℃、重量減少温度:105℃、194℃、359℃、503℃を観測した。
【0286】
得られた芳香族オキシカルボン酸金属化合物(B13)について、X線回折を実施例1のB−1に記載の条件で測定し、結晶化度を算出した結果を示す。結晶化度=43.8%。そのX線回折スペクトルを図19に示す。
【0287】
得られた芳香族オキシカルボン酸金属化合物(B13)について、LC/MS分析を実施例1のB−1に記載の条件で測定した。そのLC/MS分析の測定結果から、分子量が675.4であり、芳香族オキシカルボン酸類(A2)とSiとが、2:1である構造を推定できるデータを得た。下記に取り得ると考えられる化学式(M−13)を示す。
【0288】
【化56】

【0289】
(実施例14)
A−14 芳香族オキシカルボン酸類の合成
実施例2のA−2と同様に、芳香族オキシカルボン酸類(A2)を合成した。
【0290】
B−14 芳香族オキシカルボン酸類の金属化合物の合成
20%水酸化ナトリウム水溶液16.2g、芳香族オキシカルボン酸類(A2)10.8g及びホウ酸1.2gを水100mLに加え50℃に加熱した。50℃にて3時間反応させた後、室温まで冷却し、濾過し、濾液の電気伝導度が300μS/cm以下になるまで水道水で水洗し、80℃にて15時間乾燥し、薄桃色の芳香族オキシカルボン酸金属化合物(B14)を7.1g得た。
【0291】
得られた芳香族オキシカルボン酸金属化合物(B14)について、元素分析を実施例1のB−1に記載の条件で測定した。以下に、元素分析の実測値を示す。
実測値 C:70.30 H:5.77 N:0.00
【0292】
得られた芳香族オキシカルボン酸金属化合物(B14)について、含有する金属の重量%を実施例1のB−1に記載の条件で測定した。以下に、原子吸光分析の実測値を示す。
実測値 B=2.88%、Na=1.89%
【0293】
得られた芳香族オキシカルボン酸金属化合物(B14)について、FT−IRを実施例1のB−1に記載の条件で測定したところ、
ν(cm−1)=3475、3088、3005、2956、2912、2870、2740、2710、1664、1639、1610、1572、1514、1475、1450、1429、1408、1390、1358、1313、1244、1223、1203、1194、1117、1097、1041、1016、987、908、895、860、829、796、766、756、739、723、683、654、604、579、559、532、494、465、440を観測した。
【0294】
得られた芳香族オキシカルボン酸金属化合物(B14)について、TG−DTAを実施例1のB−1に記載の条件で測定した。その測定の結果、吸熱温度:183℃、発熱温度:298℃、519℃、532℃、重量減少温度:193℃、290℃、349℃、513℃を観測した。
【0295】
得られた芳香族オキシカルボン酸金属化合物(B14)について、X線回折を実施例1のB−1に記載の条件で測定し、結晶化度を算出した結果を示す。結晶化度=85.1%。
【0296】
得られた芳香族オキシカルボン酸金属化合物(B14)について、LC/MS分析を実施例1のB−1に記載の条件で測定した。そのLC/MS分析の測定結果から、分子量が659.4であり、芳香族オキシカルボン酸類(A2)とBとが、2:1である構造を推定できるデータを得た。下記に取り得ると考えられる化学式(M−14)を示す。
【0297】
【化57】

【0298】
(実施例15)
A−15 芳香族オキシカルボン酸類の合成
実施例2のA−2と同様に、芳香族オキシカルボン酸類(A2)を合成した。
【0299】
B−15 芳香族オキシカルボン酸類の金属化合物の合成
トルエン100mLに芳香族オキシカルボン酸類(A2)10.8gとジルコニウム(IV)エトキシド3.5gとを加え、95℃まで加熱し3時間反応させた。その後、減圧下で77.0gの溶媒を留去し、残りの溶液をメタノール200mLに加えた。析出物を濾過後、トルエンで振り掛け洗浄し、残渣を減圧下、80℃にて24時間乾燥させ、黄色の芳香族オキシカルボン酸金属化合物(B15)を9.1g得た。
【0300】
得られた芳香族オキシカルボン酸金属化合物(B15)について、元素分析を実施例1のB−1に記載の条件で測定した。以下に、元素分析の実測値を示す。
実測値 C:63.24 H:5.86 N:0.00
【0301】
得られた芳香族オキシカルボン酸金属化合物(B15)について、含有する金属の重量%を実施例1のB−1に記載の条件で測定した。以下に、原子吸光分析の実測値を示す。
実測値 Zr=5.69%、Na=0.05%
【0302】
得られた芳香族オキシカルボン酸金属化合物(B15)について、FT−IRを実施例1のB−1に記載の条件で測定したところ、
ν(cm−1)=3670、3656、3651、3629、3620、3608、3589、3568、3255、3088、3053、3041、3005、2958、2912、2870、2742、1628、1572、1545、1514、1468、1435、1404、1392、1371、1317、1277、1228、1201、1120、1043、1016、989、908、843、825、804、783、760、737、717、692、660、640、609、540、492、467、407を観測した。
【0303】
得られた芳香族オキシカルボン酸金属化合物(B15)について、TG−DTAを実施例1のB−1に記載の条件で測定した結果、発熱温度:341℃、485℃、重量減少温度:133℃、212℃、295℃、464℃を観測した。
【0304】
得られた芳香族オキシカルボン酸金属化合物(B15)について、X線回折を実施例1のB−1に記載の条件で測定し、結晶化度を算出した結果を示す。結晶化度=23.9%。そのX線回折スペクトルを図20に示す。
【0305】
得られた芳香族オキシカルボン酸金属化合物(B15)について、LC/MS分析を実施例1のB−1に記載の条件で測定した。そのLC/MS分析の測定結果から、分子量が739.2であり、芳香族オキシカルボン酸類(A2)とZrとが、2:1である構造を推定できるデータを得た。下記に取り得ると考えられる化学式(M−15)を示す。
【0306】
【化58】

【0307】
(実施例16)
A−16 芳香族オキシカルボン酸類の合成
実施例3のA−3と同様に、芳香族オキシカルボン酸類(A3)を合成した。
【0308】
B−16 芳香族オキシカルボン酸類の金属化合物の合成
水500mLに20%水酸化ナトリウム水溶液16.2g及び芳香族オキシカルボン酸類(A3)を10.8g加え、90℃に加熱した。この水溶液に26%の硫酸アルミニウム水溶液77.2gを30分間で加え95℃に加熱し2時間反応した。その後、室温まで冷却し、濾過し、濾液の電気伝導度が300μS/cm以下になるまで水道水で水洗し、80℃にて24時間乾燥し、白色の芳香族オキシカルボン酸金属化合物(B16)を11.4g得た。
【0309】
得られた芳香族オキシカルボン酸金属化合物(B16)について、元素分析を実施例1のB−1に記載の条件で測定した。以下に、元素分析の実測値を示す。
実測値 C:63.91 H:4.63 N:0.00
【0310】
得られた芳香族オキシカルボン酸金属化合物(B16)について、含有する金属の重量%を実施例1のB−1に記載の条件で測定した。以下に、原子吸光分析の実測値を示す。
実測値 Al=4.50%、Na=0.04%
【0311】
得られた芳香族オキシカルボン酸金属化合物(B16)について、FT−IRを実施例1のB−1に記載の条件で測定したところ、
ν(cm−1)=3361、3207、3086、3053、3007、2980、2945、2873、2362、1907、1892、1616、1554、1514、1460、1387、1321、1267、1200、1163、1109、1026、1014、991、976、947、906、835、771、729、704、677、644、623、582、524、480、455、408を観測した。
【0312】
得られた芳香族オキシカルボン酸金属化合物(B16)について、TG−DTAを実施例1のB−1に記載の条件で測定した。その測定の結果、吸熱温度:194℃、発熱温度:347℃、460℃、重量減少温度:177℃、321℃、427℃を観測した。
【0313】
得られた芳香族オキシカルボン酸金属化合物(B16)について、X線回折を実施例1のB−1に記載の条件で測定し、結晶化度を算出した結果を示す。結晶化度=69.6%。
【0314】
(実施例17)
A−17 芳香族オキシカルボン酸類の合成
実施例3のA−3と同様に、芳香族オキシカルボン酸類(A3)を合成した。
【0315】
B−17 芳香族オキシカルボン酸類の金属化合物の合成
メタノール200mLに20%水酸化ナトリウム水溶液16.2g及び芳香族オキシカルボン酸類(A3)を10.8g加え、60℃に加熱した。この水溶液に26%の硫酸アルミニウム水溶液77.2gを30分間で加え67℃に加熱し2時間反応した。その後、室温まで冷却し、濾過し、濾液の電気伝導度が300μS/cm以下になるまで水道水で水洗し、80℃にて15時間乾燥し、白色の芳香族オキシカルボン酸金属化合物(B17)を13.3g得た。
【0316】
得られた芳香族オキシカルボン酸金属化合物(B17)について、元素分析を実施例1のB−1に記載の条件で測定した。以下に、元素分析の実測値を示す。
実測値 C:52.93 H:4.18 N:0.00
【0317】
得られた金芳香族オキシカルボン酸属化合物(B17)について、含有する金属の重量%を実施例1のB−1に記載の条件で測定した。以下に、原子吸光分析の実測値を示す。
実測値 Al=6.72%、Na=0.48%
【0318】
得られた芳香族オキシカルボン酸金属化合物(B17)について、FT−IRを実施例1のB−1に記載の条件で測定したところ、
ν(cm−1)=3458、1907、1616、1554、1514、1460、1385、1267、1196、1161、1107、1028、1014、991、906、835、771、704、677、625、480、455を観測した。
【0319】
得られた芳香族オキシカルボン酸金属化合物(B17)について、TG−DTAを実施例1のB−1に記載の条件で測定した。その測定の結果、吸熱温度:186℃、発熱温度:348℃、463℃、重量減少温度:173℃、324℃、429℃を観測した。
【0320】
得られた芳香族オキシカルボン酸金属化合物(B17)について、X線回折を実施例1のB−1に記載の条件で測定し、結晶化度を算出した結果を示す。結晶化度=15.0%。
【0321】
(実施例18)
A−18 芳香族オキシカルボン酸類の合成
実施例2のA−2と同様に、芳香族オキシカルボン酸類(A2)を合成した。
【0322】
B−18 芳香族オキシカルボン酸類の金属化合物の合成
水100mLに20%水酸化ナトリウム水溶液12.2g及び芳香族オキシカルボン酸類(A2)10.0gを加え、90℃に加熱した。この水溶液に、25.7%硫酸アルミニウム水溶液30.4gを水87mL加えた90℃の溶液に10分間で加え95℃に加熱し2時間反応した。その後、室温まで冷却し、濾過し、濾液の電気伝導度が300μS/cm以下になるまで水道水で水洗し、80℃にて76時間乾燥し、白色の芳香族オキシカルボン酸金属化合物(B18)を10.8g得た。
【0323】
得られた芳香族オキシカルボン酸金属化合物(B18)について、元素分析を実施例1のB−1に記載の条件で測定した。以下に、元素分析の実測値を示す。
実測値 C:67.08 H:5.82 N:0.00
【0324】
得られた芳香族オキシカルボン酸金属化合物(B18)について、含有する金属の重量%を実施例1のB−1に記載の条件で測定した。以下に、原子吸光分析の実測値を示す。
実測値 Al=3.61%、Na=0.13%
【0325】
得られた芳香族オキシカルボン酸金属化合物(B18)について、FT−IRを実施例1のB−1に記載の条件で測定したところ、
ν(cm−1)=3431、3261、3088、3055、3005、2958、2912、2872、2561、1628、1581、1514、1473、1435、1406、1394、1373、1308、1228、1201、1122、1043、1016、989、908、825、810、783、744、679、669、575、482、438を観測した。
【0326】
得られた芳香族オキシカルボン酸金属化合物(B18)について、TG−DTAを実施例1のB−1に記載の条件で測定した。その測定の結果、発熱温度:371℃、463℃、重量減少温度:200℃、432℃観測した。
【0327】
得られた芳香族オキシカルボン酸金属化合物(B18)について、X線回折を実施例1のB−1に記載の条件で測定し、結晶化度を算出した結果を示す。結晶化度=13.3%。
【0328】
(実施例19)
A−19 芳香族オキシカルボン酸類の合成
実施例2のA−2と同様に、芳香族オキシカルボン酸類(A2)を合成した。
【0329】
B−19 芳香族オキシカルボン酸類の金属化合物の合成
水200mLに20%水酸化ナトリウム水溶液12.2g及び芳香族オキシカルボン酸類(A2)10.0gを加え、90℃に加熱した。この水溶液に、25.7%硫酸アルミニウム水溶液15.2gに水179mL加えた90℃の溶液に21分間で加え95℃に加熱し2時間反応した。その後、室温まで冷却し、濾過し、濾液の電気伝導度が300μS/cm以下になるまで水道水で水洗し、80℃にて76時間乾燥し、白色の芳香族オキシカルボン酸金属化合物(B19)を11.1g得た。
【0330】
得られた芳香族オキシカルボン酸金属化合物(B19)について、元素分析を実施例1のB−1に記載の条件で測定した。以下に、元素分析の実測値を示す。
実測値 C:63.62 H:5.65 N:0.00
【0331】
得られた芳香族オキシカルボン酸金属化合物(B19)について、含有する金属の重量%を実施例1のB−1に記載の条件で測定した。以下に、原子吸光分析の実測値を示す。
実測値 Al=5.50%、Na=0.02%
【0332】
得られた芳香族オキシカルボン酸金属化合物(B19)について、FT−IRを実施例1のB−1に記載の条件で測定したところ、
ν(cm−1)=3423、3255、3088、3005、2958、2912、2872、1630、1581、1514、1475、1454、1435、1406、1394、1373、1308、1228、1201、1122、1043、1016、989、908、858、825、810、783、744、681、609、573、515、488、480、464、428、411を観測した。
【0333】
得られた芳香族オキシカルボン酸金属化合物(B19)について、TG−DTAを実施例1のB−1に記載の条件で測定した。その測定の結果、発熱温度:360℃、462℃、重量減少温度:200℃、428℃観測した。
【0334】
得られた芳香族オキシカルボン酸金属化合物(B19)について、X線回折を実施例1のB−1に記載の条件で測定し、結晶化度を算出した結果を示す。結晶化度=30.2%。そのX線回折スペクトルを図21に示す。
【0335】
(実施例20)
A−20 芳香族オキシカルボン酸類の合成
実施例2のA−2と同様に、芳香族オキシカルボン酸類(A2)を合成した。
【0336】
B−20 芳香族オキシカルボン酸類の金属化合物の合成
水50mLに20%水酸化ナトリウム水溶液12.2g及び芳香族オキシカルボン酸類(A2)10.0gを加え、90℃に加熱した。この水溶液に、25.7%硫酸アルミニウム水溶液15.2gに水45mL加えた90℃の溶液に6分間で加え95℃に加熱し2時間反応した。その後、室温まで冷却し、濾過し、濾液の電気伝導度が300μS/cm以下になるまで水道水で水洗し、80℃にて76時間乾燥し、白色の芳香族オキシカルボン酸金属化合物(B20)を11.1g得た。
【0337】
得られた芳香族オキシカルボン酸金属化合物(B20)について、元素分析を実施例1のB−1に記載の条件で測定した。以下に、元素分析の実測値を示す。
実測値 C:63.12 H:5.63 N:0.00
【0338】
得られた芳香族オキシカルボン酸金属化合物(B20)について、含有する金属の重量%を実施例1のB−1に記載の条件で測定した。以下に、原子吸光分析の実測値を示す。Al=5.26%、Na=0.12%
【0339】
得られた芳香族オキシカルボン酸金属化合物(B20)について、FT−IRを実施例1のB−1に記載の条件で測定したところ、
ν(cm−1)=3427、3255、3088、3005、2958、2912、2872、1630、1581、1514、1475、1435、1406、1394、1373、1309、1228、1201、1122、1043、1016、989、908、858、825、810、783、744、679、667、611、573を観測した。
【0340】
得られた芳香族オキシカルボン酸金属化合物(B20)について、TG−DTAを実施例1のB−1に記載の条件で測定した。その測定の結果、発熱温度:365℃、462℃、重量減少温度:202℃、432℃観測した。
【0341】
得られた芳香族オキシカルボン酸金属化合物(B20)について、X線回折を実施例1のB−1に記載の条件で測定し、結晶化度を算出した結果を示す。結晶化度=13.0%。
【0342】
得られた芳香族オキシカルボン酸金属化合物(B20)について、LC/MS分析を実施例1のB−1に記載の条件で測定した。そのLC/MS分析の測定結果から、分子量が675.3と1025.1とであり、芳香族オキシカルボン酸類(A2)とAlとが、それぞれ2:1、3:2である構造を推定できるデータを得た。下記に取り得ると考えられる化学式(M−16)及び(M−17)を示す。
【0343】
【化59】

【0344】
【化60】

【0345】
(比較例1)
3,5−ジ−tert−ブチルサリチル酸に代えて、3−フェノキシサリチル酸を用い、特開2004−205894号公報に記載の含金属有機化合物例に従い、下記の構造に推定できる金属化合物(X1)を合成した。
【0346】
【化61】

【0347】
(比較例2)
4−(クロロメチル)スチレンを臭化ベンジルに代えたこと以外は実施例1のA−1と同様の方法により、特開2001−343787号公報に記載の芳香族オキシカルボン酸(Y1)を合成した。
【0348】
2,5−ジヒドロキシ安息香酸100.0gをメタノール440mLに溶解させ、炭酸カリウム122.2gを加えて65℃に加熱した。この反応液にベンジルブロミド79.1gを滴下し、65℃にて8時間反応させた。得られた反応液を冷却後、濾過し、濾液中のメタノールを減圧留去して析出物を得た。
【0349】
得られた析出物をpH=2の水3Lに分散させ、酢酸エチルを加えて酢酸エチル相を抽出した。その後、水洗し、硫酸マグネシウムで乾燥させ、減圧下、酢酸エチルを留去して析出物を得た。得られた析出物をヘキサン洗浄後、トルエンと酢酸エチルにて再結晶し、下記化学式(Y1)に推定できる芳香族オキシカルボン酸を62.3g得た。
【0350】
【化62】

【0351】
得られた芳香族オキシカルボン酸(Y1)について、HPLC純度を実施例1のA−1に記載の条件で測定したところ、98.7%だった。
【0352】
得られた芳香族オキシカルボン酸(Y1)について、元素分析を実施例1のA−1に記載の条件で測定した。以下に、元素分析の理論値及び実測値を示す。
実測値 C:68.79 H:4.87 N:0.00
理論値 C:68.85 H:4.95 N:0.00
【0353】
得られた芳香族オキシカルボン酸(Y1)について、LC/MS分析を実施例1のA−1に記載の条件で測定した。また、質量分析の理論値及び実測値を以下に示す。
実測値:LC/MS m/z=243.67[M−H]
芳香族オキシカルボン酸の理論分子量:244.07
【0354】
水467mLに25.7%の硫酸アルミニウム水溶液101.5gを加え、90℃に加熱した。この溶液に、水500mLに20%水酸化ナトリウム水溶液81.5gと芳香族オキシカルボン酸(Y1)を50.0g加え、90℃に加熱した溶液を25分間で加え、95℃で2時間加熱撹拌した。その後、濾過し濾液の電気伝導度が300μS/cm以下になるまで水道水で水洗し、80℃にて48時間乾燥し、白色の芳香族オキシカルボン酸の金属化合物(X2)を55.5g得た。
【0355】
得られた金属化合物(X2)について、元素分析を実施例1のB−1に記載の条件で測定した。以下に、元素分析の実測値を示す。
実測値 C:62.51 H:5.87 N:0.00
【0356】
得られた金属化合物(X2)について、含有する金属の重量%を実施例1のB−1に記載の条件で測定した。以下に、原子吸光分析の実測値を示す。
実測値 Al=5.31%、Na=0.04%
【0357】
得られた金属化合物(X2)について、TG−DTAを実施例1のB−1に記載の条件で測定した。その測定の結果、発熱温度:506℃、重量減少温度:188℃、491℃を観測した。
【0358】
(比較例3)
比較例2で合成した芳香族オキシカルボン酸(Y1)を用いて、特開2001−249500号公報に記載の芳香族オキシカルボン酸金属化合物(X3)を合成した。
【0359】
水100mLに20%水酸化ナトリウム水溶液13.3gを加え、次いで比較例2で得られた芳香族オキシカルボン酸(Y1)を10.0g加え、90℃に加熱した。この液に、水30mLにオキシ塩化ジルコニウム8水和物6.3gを加え、90℃に加熱した溶液を5分間で加え、95℃で2時間加熱撹拌した。その後、濾過し濾液の電気伝導度が300μS/cm以下になるまで水道水で水洗し、80℃にて48時間乾燥し、白色の芳香族オキシカルボン酸の金属化合物(X3)を11.1g得た。
【0360】
得られた金属化合物(X3)について、元素分析を実施例1のB−1に記載の条件で測定した。以下に、元素分析の実測値を示す。
実測値 C:63.6 H:5.42 N:0.00
【0361】
得られた金属化合物(X3)について、含有する金属の重量%を実施例1のB−1に記載の条件で測定した。以下に、原子吸光分析の実測値を示す。
実測値 Zr=12.3%、Na=0.04%
【0362】
得られた金属化合物(X3)について、FT−IRを実施例1のB−1に記載の条件で測定したところ、
ν(cm−1)=3260、3053、3030、3029、3000、2978、2913、2869、1625、1571、1543、1510、1468、1433、1399、1389、1370、1315、1269、1230、1199、1118、1042、1015、990、904、839、820、805、759、732、625、610、537、469、410を観測した。
【0363】
得られた金属化合物(X3)について、TG−DTAを実施例1のB−1に記載の条件で測定した。その測定の結果、発熱温度:343℃、480℃、重量減少温度:461℃を観測した。
【0364】
得られた金属化合物(X3)について、LC/MS分析を実施例1のB−1に記載の条件で測定した。そのLC/MS分析の測定結果から、分子量が738.2であり、芳香族オキシカルボン酸(Y1)とZrとが、2:1である構造を推定できるデータを得た。下記に取り得ると考えられる化学式(X3)を示す。
【0365】
【化63】

【0366】
(比較例4)
4−(クロロメチル)スチレンを4−フェニルブチルブロミドに代えたこと以外は実施例1のA−1と同様の方法により、芳香族オキシカルボン酸(Y4)を合成した。
【0367】
2,5−ジヒドロキシ安息香酸20.0gをメタノール140mLに溶解させ、炭酸カリウム21.2gを加えて65℃に加熱した。この反応液に4−フェニルブチルブロミド(東京化成工業株式会社製、製品コード:P1388)28.5gを滴下し、65℃にて12時間反応させた。得られた反応液を冷却後、濾過し、濾液中のメタノールを減圧留去して析出物を得た。
【0368】
得られた析出物をpH=2の水1.5Lに分散させ、酢酸エチルを加えて酢酸エチル相を抽出した。その後、水洗し、硫酸マグネシウムで乾燥させ、減圧下、酢酸エチルを留去して析出物を得た。得られた析出物をヘキサン洗浄後、トルエン及び酢酸エチルにて再結晶し、下記化学式(Y4)に示す芳香族オキシカルボン酸を12.4g得た。
【0369】
【化64】

【0370】
得られた芳香族オキシカルボン酸(Y4)について、HPLC純度を実施例1のA−1に記載の条件で測定したところ、96.7%だった。
【0371】
得られた芳香族オキシカルボン酸(Y4)について、元素分析を実施例1のA−1に記載の条件で測定した。以下に、元素分析の理論値及び実測値を示す。
実測値 C:70.74 H:6.25 N:0.00
理論値 C:71.31 H:6.34 N:0.00
【0372】
得られた芳香族オキシカルボン酸(Y4)について、LC/MS分析を実施例1のA−1に記載の条件で測定した。また、質量分析の理論値及び実測値を以下に示す。
実測値:LC/MS m/z=285.64[M−H]
芳香族オキシカルボン酸の理論分子量:286.12
【0373】
水220mLに39.4%の塩化鉄(III)水溶液42.6gを加え、90℃に加熱した。この溶液に、水100mLに20%水酸化ナトリウム水溶液15.4gと芳香オキシカルボン酸(Y4)とを10.0g加え、90℃に加熱した溶液を12分間で加え、95℃で2時間加熱撹拌した。その後、濾過し濾液の電気伝導度が300μS/cm以下になるまで水道水で水洗し、80℃にて48時間乾燥し、濃青色の芳香族オキシカルボン酸の金属化合物(X4)を9.9g得た。
【0374】
得られた金属化合物(X4)について、元素分析を実施例1のB−1に記載の条件で測定した。以下に、元素分析の実測値を示す。
実測値 C:65.95 H:5.70 N:0.00
【0375】
得られた金属化合物(X4)について、含有する金属の重量%を実施例1のB−1に記載の条件で測定した。以下に、原子吸光分析の実測値を示す。
実測値 Fe=6.22%、Na=0.02%
【0376】
得られた金属化合物(X4)について、TG−DTAを実施例1のB−1に記載の条件で測定した。その測定の結果、発熱温度:530℃、重量減少温度:210℃、523℃を観測した。
【0377】
得られた金属化合物(X4)について、LC/MS分析を実施例1のB−1に記載の条件で測定した。そのLC/MS分析の測定結果から、分子量が911.8であり、芳香族オキシカルボン酸(Y4)とFeとが、3:1である構造を推定できるデータを得た。下記に取り得ると考えられる化学式(X4)を示す。
【0378】
【化65】

【0379】
(比較例5)
4−(クロロメチル)スチレンを1−ブロモプロパンに、2,5−ジヒドロキシ安息香酸を2,3−ジヒドロキシ安息香酸に代えたこと以外は実施例1のA−1と同様の方法により、芳香族オキシカルボン酸(Y5)を合成した。
【0380】
2,3−ジヒドロキシ安息香酸25.0gをメタノール160mLに溶解させ、炭酸カリウム40.00gを加えて65℃に加熱した。この反応液に1−ブロモプロパン(東京化成工業株式会社製、製品コード:B0638)39.9gを滴下し、65℃にて12時間反応させた。得られた反応液を冷却後、濾過し、濾液中のメタノールを減圧留去して析出物を得た。
【0381】
得られた析出物をpH=2の水2.0Lに分散させ、酢酸エチルを加えて酢酸エチル相を抽出した。その後、水洗し、硫酸マグネシウムで乾燥させ、減圧下、酢酸エチルを留去して析出物を得た。得られた析出物をヘキサン洗浄後、トルエンと酢酸エチルにて再結晶し、下記化学式(Y5)に示す芳香族オキシカルボン酸を22.1g得た。
【0382】
【化66】

【0383】
得られた芳香族オキシカルボン酸(Y5)について、HPLC純度を実施例1のA−1に記載の条件で測定したところ、95.7%だった。
【0384】
得られた芳香族オキシカルボン酸(Y5)について、元素分析を実施例1のA−1に記載の条件で測定した。以下に、元素分析の理論値及び実測値を示す。
実測値 C:62.00 H:5.99 N:0.00
理論値 C:61.22 H:6.16 N:0.00
【0385】
得られた芳香族オキシカルボン酸(Y5)について、LC/MS分析を実施例1のA−1に記載の条件で測定した。また、質量分析の理論値及び実測値を以下に示す。
実測値:LC/MS m/z=195.6[M−H]
芳香族オキシカルボン酸の理論分子量:196.07
【0386】
水145mLに25.7%の硫酸アルミニウム水溶液25.7g加え、90℃に加熱した。この溶液に、水100mLに20%水酸化ナトリウム水溶液24.1gと芳香オキシカルボン酸(Y5)を10.0g加え、90℃に加熱した溶液を13分間で加え、95℃で2時間加熱撹拌した。その後、濾過し濾液の電気伝導度が300μS/cm以下になるまで水道水で水洗し、80℃にて48時間乾燥し、白色の芳香族オキシカルボン酸の金属化合物(X5)を10.0g得た。
【0387】
得られた金属化合物(X5)について、元素分析を実施例1のB−1に記載の条件で測定した。以下に、元素分析の実測値を示す。
実測値 C:56.92 H:5.02 N:0.00
【0388】
得られた金属化合物(X5)について、含有する金属の重量%を実施例1のB−1に記載の条件で測定した。以下に、原子吸光分析の実測値を示す。
実測値 Al=4.81%、Na=0.02%
【0389】
得られた金属化合物(X5)について、TG−DTAを実施例1のB−1に記載の条件で測定した。その測定の結果、発熱温度:550℃、重量減少温度:194℃、543℃を観測した。
【0390】
得られた金属化合物(X5)について、LC/MS分析を実施例1のB−1に記載の条件で測定した。そのLC/MS分析の測定結果から、分子量が570.48であり、芳香族オキシカルボン酸(Y5)とAlとが、3:2である構造を推定できるデータを得た。下記に取り得ると考えられる化学式(X5)を示す。
【0391】
【化67】

【0392】
(実施例C1)
(1−a)荷電制御剤の帯電性試験Aにおける荷電制御特性の評価
前記実施例で得られた芳香族オキシカルボン酸金属化合物(B1)1重量部、スチレン−アクリル共重合樹脂(三井化学株式会社製、商品名:CPR−100)100重量部を予備混合したのち、加熱ロール(株式会社栗本鐵工所製、商品名:S−1、KRCニーダ)で溶融混練した。冷却後、超遠心粉砕機(Retsch社製、商品名:ULTRA CENTRIFUGAL MILL、スクリーン目開き1.5mm)で粗粉砕し、分級機付きエアージェットミル(株式会社セイシン企業製、商品名:CO−JET)により、平均粒径をレーザ回折/散乱式粒子径分布測定装置(株式会社堀場製作所製、商品名:Partica LA−950)にて測定し、9.5〜10.5μmになるよう微粉砕を行った。この樹脂粒子2.5重量部と、鉄粉キャリア(パウダーテック株式会社製、商品名:TEFV200/300)50.0重量部とを100mLの軟膏瓶にいれ、ボールミル回転架台(株式会社アサヒ理化製作所製、商品名:小型ボールミル回転架台 AV−1)で100rpmにて回転させながら、設定した時間毎に得られる混合物を採取し、ブローオフ帯電量測定機(東芝ケミカル株式会社製、商品名:TB−200)を使用して、以下の条件にて帯電量を測定した。得られた負帯電性確認データの結果を表13と図22に示した。
【0393】
測定条件:金属メッシュ目開き34μm 圧力10.0kPa 吸引力10.0kPa 吸引時間10.0秒
【0394】
更に、実施例で得られた芳香族オキシカルボン酸金属化合物B2、B3、B9、B10、B11、B13、B14、B15、B20と比較化合物例X1、X2、X3、X4、X5とを芳香族オキシカルボン酸金属化合物B1と同様に、帯電性試験Aを行った。得られた負帯電性確認データの結果を表13及び表14と、図22とに示した。
【0395】
【表13】

【0396】
【表14】

【0397】
(1−b)荷電制御剤の帯電性試験Aにおける荷電制御特性の評価
各実施例で得られた芳香族オキシカルボン酸金属化合物B1、B2、B3、B4、B5、B6、B7、B8、B12と比較化合物例X1、X2、X3、X4、X5とを、実施例C1と同様にして樹脂粒子を得て、荷電制御特性の評価を行った。得られた負帯電性確認データの結果を表15及び表16と、図23とに示した。
【0398】
【表15】

【0399】
【表16】

【0400】
(実施例C2)
(2)芳香族オキシカルボン酸金属化合物の負帯電性確認データの環境安定性評価
各実施例で得られた芳香族オキシカルボン酸金属化合物B1、B2、B3、B4、B5、B6、B7、B8、B9、B10、B11、B12、B13、B14、B15、B20と比較化合物例X1、X2、X3、X4、X5とで得られた樹脂粒子を用い、下記の環境安定性評価を行った。表17に結果を示した。
【0401】
鉄粉キャリア(パウダーテック株式会社製、商品名:TEFV200/300)50.0重量部と前記帯電性試験Aの条件にて作製した各樹脂粒子を100mL軟膏瓶にいれ、中央に1cmの穴の空いた蓋をした。これを恒温恒湿器(東京理化機械株式会社製、商品名:エンビロスKCL−2000W)中のボールミル機(株式会社アサヒ理化製作所製、商品名:小型ボールミル回転架台 AV−1)にセットし、各設定された温度と湿度の環境下で24時間放置した。24時間後、100mL軟膏瓶を100rpmにて回転させながら、15分間撹拌後、混合物を採取し、ブローオフ帯電量測定機(東芝ケミカル株式会社製、商品名:TB−200)を使用して、以下の条件にて帯電量を測定した。
【0402】
測定条件:金属メッシュ目開き34μm 圧力10.0kPa 吸引力10.0kPa 吸引時間10.0秒
【0403】
【表17】

ここで、LLは低温低湿、HHは高温高湿を示すものとする。
【0404】
(実施例C3)
(3−a)荷電制御剤の帯電性試験Bにおける荷電制御特性の評価
前記実施例で得られた芳香族オキシカルボン酸金属化合物(B1)1重量部、ポリエステル樹脂(三菱レーヨン株式会社製、商品名:ER−508)100重量部を予備混合したのち、加熱ロール(株式会社栗本鐵工所製、商品名:S−1、KRCニーダ)で溶融混練した。冷却後、超遠心粉砕機(Retsch社製、商品名:ULTRA CENTRIFUGAL MILL、スクリーン目開き1.5mm)で粗粉砕し、分級機付きエアージェットミル(株式会社セイシン企業製、商品名:CO−JET)により、平均粒径をレーザ回折/散乱式粒子径分布測定装置(株式会社堀場製作所製、商品名:Partica LA−950)にて測定し、9.5〜10.5μmになるよう微粉砕を行った。この樹脂粒子2.5重量部と、鉄粉キャリア(パウダーテック株式会社製、商品名:TEFV200/300)50.0重量部とを100mLの軟膏瓶にいれ、ボールミル回転架台(株式会社アサヒ理化製作所製、商品名:小型ボールミル回転架台 AV−1)で100rpmにて回転させながら、設定した時間毎に得られる混合物を採取し、ブローオフ帯電量測定機(東芝ケミカル株式会社製、商品名:TB−200)を使用して、以下の条件にて帯電量を測定した。得られた負帯電性確認データの結果を表18及び図24に示した。
【0405】
測定条件:金属メッシュ目開き34μm 圧力10.0kPa 吸引力10.0kPa 吸引時間10.0秒
【0406】
更に、実施例で得られた芳香族オキシカルボン酸金属化合物B2、B3、B9、B10、B11、B13、B14、B15、B20と比較化合物例X1、X2、X3、X4、X5とを芳香族オキシカルボン酸金属化合物B1と同様に、帯電性試験Bを行った。得られた負帯電性確認データの結果を表18及び表19と、図24とに示した。
【0407】
【表18】

【0408】
【表19】

【0409】
(3−b)荷電制御剤の帯電性試験Bにおける荷電制御特性の評価
各実施例で得られた芳香族オキシカルボン酸金属化合物B1、B2、B3、B4、B5、B6、B7、B8、B12と比較化合物例X1、X2、X3、X4、X5を、実施例C3と同様にして樹脂粒子を得て、荷電制御特性の評価を行った。得られた負帯電性確認データの結果を表20及び表21と、図25とに示した。
【0410】
【表20】

【0411】
【表21】

【0412】
(実施例C4)
(4)芳香族オキシカルボン酸金属化合物の負帯電性確認データの環境安定性評価
各実施例で得られた芳香族オキシカルボン酸金属化合物B1、B2、B3、B4、B5、B6、B7、B8、B9、B10、B11、B12、B13、B14、B15、B20と比較化合物例X1、X2、X3、X4、X5とで得られた樹脂粒子を用い、下記の環境安定性評価を行った。表22に結果を示した。
【0413】
鉄粉キャリア(パウダーテック株式会社製、商品名:TEFV200/300)50.0重量部と前記(帯電性試験Bの条件)にて作製した各樹脂粒子を100mL軟膏瓶にいれ、中央に1cmの穴の空いた蓋をした。これを恒温恒湿器(エンビロスKCL−2000W 東京理化機械株式会社製の商品名)中のボールミル機(株式会社アサヒ理化製作所製、商品名:小型ボールミル回転架台 AV−1)にセットし、各設定された温度と湿度の環境下で24時間放置した。24時間後、100mL軟膏瓶を100rpmにて回転させながら、15分間撹拌後、混合物を採取し、ブローオフ帯電量測定機(東芝ケミカル株式会社製、商品名:TB−200)を使用して、以下の条件にて帯電量を測定した。
【0414】
測定条件:金属メッシュ目開き34μm 圧力10.0kPa 吸引力10.0kPa 吸引時間10.0秒
【0415】
【表22】

ここで、LLは低温低湿、HHは高温高湿を示すものとする。
【0416】
図及び表から明らかなとおり、本発明の荷電制御剤は、帯電の立ち上がりが速く、更に、環境の変化に対して帯電値が安定しており良好である。
【産業上の利用可能性】
【0417】
本発明の荷電制御剤は、帯電付与剤及び荷電制御剤の有効成分として有用である芳香族オキシカルボン酸金属化合物を含有しており、耐熱性、帯電特性、環境安定性に優れているので、各種の電荷や帯電を利用する産業、例えば静電粉体塗料、電子写真トナー、静電インクジェット記録用途、電子ペーパー、感圧複写紙、顕色剤などで使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式(1)
【化1】

(式中、Rは、それぞれ独立して同一または異なり、水素原子、水酸基、ハロゲン原子、カルボキシル基、炭素数1〜18で直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基、または炭素数1〜18で直鎖若しくは分岐鎖のアルコキシ基であり、Rは、水素原子、水酸基、ハロゲン原子、炭素数1〜18で直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基、または炭素数1〜18で直鎖若しくは分岐鎖のアルコキシ基であり、g及びhは、それぞれ独立して同一または異なり、1〜3の数であり、Mは、水素原子、アルカリ金属、アンモニウム原子団及びそれらの混合物から選ばれる何れかである)で示される少なくとも1種類の芳香族オキシカルボン酸類が2価金属、3価金属、及び4価金属から選ばれる金属で、金属錯体化及び/または金属塩化されている芳香族オキシカルボン酸金属化合物を、有効成分として含有することを特徴とする荷電制御剤。
【請求項2】
前記芳香族オキシカルボン酸金属化合物が、前記化学式(1)で示される芳香族オキシカルボン酸類と、前記金属を含有する金属化剤との反応によって得られた金属錯体及び/または金属塩であることを特徴とする請求項1に記載の荷電制御剤。
【請求項3】
前記芳香族オキシカルボン酸金属化合物が、前記化学式(1)で示される芳香族オキシカルボン酸類と、前記金属を含有する金属化剤とのモル比が2:1である前記金属錯体及び/または金属塩であることを特徴とする請求項2に記載の荷電制御剤。
【請求項4】
前記芳香族オキシカルボン酸金属化合物が、前記化学式(1)で示される芳香族オキシカルボン酸類と、前記金属を含有する金属化剤とのモル比が3:2である前記金属錯体及び/または金属塩であることを特徴とする請求項2に記載の荷電制御剤。
【請求項5】
前記芳香族オキシカルボン酸金属化合物が、前記化学式(1)で示される芳香族オキシカルボン酸類と、前記金属を含有する金属化剤とのモル比が3:1である前記金属錯体及び/または金属塩であることを特徴とする請求項2に記載の荷電制御剤。
【請求項6】
前記金属がZn、Al、Si、B、Fe、Cr、及びZrから選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載の荷電制御剤。
【請求項7】
前記芳香族オキシカルボン酸金属化合物が、下記化学式(2)
【化2】

(式中、Rは、それぞれ独立して同一または異なり、水素原子、水酸基、ハロゲン原子、カルボキシル基、炭素数1〜18で直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基、または炭素数1〜18で直鎖若しくは分岐鎖のアルコキシ基であり、Rは、水素原子、水酸基、ハロゲン原子、炭素数1〜18で直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基、または炭素数1〜18で直鎖若しくは分岐鎖のアルコキシ基であり、g及びhは、それぞれ独立して同一または異なり、1〜3の数であり、Mは、Zn、Al、Si、B、Fe、Cr、及びZrから選ばれる何れかの金属原子であり、p及びrは、それぞれ独立して同一または異なり、0〜6の数であり、pとrとが共に0であることを除く、qは1〜4の数であり、k及びaは、それぞれ独立して同一または異なり、0〜3の数であり、bは1〜2の数であり、(T)b+はカチオンである)
または、下記化学式(3)
【化3】

(式中、Rは、それぞれ独立して同一または異なり、水素原子、水酸基、ハロゲン原子、カルボキシル基、炭素数1〜18で直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基、または炭素数1〜18で直鎖若しくは分岐鎖のアルコキシ基であり、Rは、水素原子、水酸基、ハロゲン原子、炭素数1〜18で直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基、または炭素数1〜18で直鎖若しくは分岐鎖のアルコキシ基であり、g及びhは、それぞれ独立して同一または異なり、1〜3の数であり、Mは、Zn、Al、Si、B、Fe、Cr、及びZrから選ばれる何れかの金属原子であり、v及びwは、それぞれ独立して同一または異なり、0〜6の数であり、vとwとが共に0であることを除く、sは1〜4の数であり、m及びcは、それぞれ独立して同一または異なり、0〜3の数であり、dは1〜2の数であり、(Z)d−はアニオンである)
で示されることを特徴とする請求項1〜6の何れかに記載の荷電制御剤。
【請求項8】
前記化学式(1)、(2)または(3)中、Rがそれぞれ独立して同一または異なり、水素原子、ハロゲン原子または炭素数1〜18で直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基であり、且つ、Rが水素原子であることを特徴とする請求項1〜7の何れかに記載の荷電制御剤。
【請求項9】
前記芳香族オキシカルボン酸金属化合物が、X線回折スペクトルにおいて、アモルファス状であり、多重ピーク分離法による結晶化度が、2θ=5°〜40°の範囲(θはブラッグ角)にあって、0〜50%であることことを特徴とする請求項1〜8の何れかに記載の荷電制御剤。
【請求項10】
前記芳香族オキシカルボン酸金属化合物が、前記金属がAlまたはZrであり、X線回折スペクトルにおいて、多重ピーク分離法による結晶化度が、2θ=5°〜40°の範囲(θはブラッグ角)にあって、0〜30%であることを特徴とする請求項9に記載の荷電制御剤。
【請求項11】
下記化学式(1)
【化4】

(式中、Rは、それぞれ独立して同一または異なり、水素原子、水酸基、ハロゲン原子、カルボキシル基、炭素数1〜18で直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基、または炭素数1〜18で直鎖若しくは分岐鎖のアルコキシ基であり、Rは、水素原子、水酸基、ハロゲン原子、炭素数1〜18で直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基、または炭素数1〜18で直鎖若しくは分岐鎖のアルコキシ基であり、g及びhは、それぞれ独立して同一または異なり、1〜3の数であり、Mは、水素原子、アルカリ金属、アンモニウム原子団及びそれらの混合物から選ばれる何れかである)
で示される少なくとも1種類の芳香族オキシカルボン酸類と、Zn、Al、Si、B、Fe、Cr、及びZrから選ばれる少なくとも1種の金属を含有する金属化剤とを反応させ、金属錯体化及び/または金属塩化することで芳香族オキシカルボン酸金属化合物を合成する工程を包含することを特徴とする荷電制御剤の製造方法。
【請求項12】
前記化学式(1)中、Rが、それぞれ独立して同一または異なり、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜18で直鎖または分岐鎖のアルキル基であり、且つ、Rが水素原子であることを特徴とする請求項11に記載の荷電制御剤の製造方法。
【請求項13】
前記芳香族オキシカルボン酸類と前記金属がZn、Al、及びZrから選ばれる金属化剤とを水中で反応させることを特徴とする請求項11または12に記載の荷電制御剤の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【公開番号】特開2013−68944(P2013−68944A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−195288(P2012−195288)
【出願日】平成24年9月5日(2012.9.5)
【出願人】(000103895)オリヱント化学工業株式会社 (59)
【Fターム(参考)】