説明

荷電粒子の輸送・貯蔵機構

【課題】極子の組立精度を保ち、極子間の電位差を大きく取っても軸方向に排出されるイオンの量が減少することのない荷電粒子の輸送・貯蔵機構を提供する。
【解決手段】4本以上の偶数本の棒状電極から成る多重極電極を備えた荷電粒子の輸送・貯蔵機構において、前記棒状電極のうち、少なくとも対向する1対2本には、多重極電極の中心軸と正対する側に前記空間の入口側または出口側に向けて前記中心軸から離れる方向に所定の角度ないし段階的変化で傾斜した深さの底を有する溝を持ち、前記溝を持った電極には、三角関数的に増減する高周波電圧、マスフィルター機能用直流電圧、軸方向電場形成用直流電圧、軸電位設定用直流電圧が重畳されて印加され、前記軸方向電場形成用直流電圧によって軸方向に形成される電場勾配で荷電粒子が前記多重極電極の上流から下流に向けて加速されるように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、「Paul Trap」と呼ばれる荷電粒子の輸送・貯蔵機構の中で、2次元の高周波の振動場を利用する四重極、六重極、八重極といった多極子で構成されるイオンガイドやイオントラップに関するものである。
【背景技術】
【0002】
2次元の高周波の振動場を利用する四重極、六重極、八重極といった多極子で構成されるイオンガイドやイオントラップを利用するに際しては、イオンが真空下で残留ガス分子と衝突することにより、運動エネルギーを失ってイオンの進行速度が低下するという不具合があり、その問題に対する対策として、図1(米国特許第5847386号公報のFig.2〜9)に示すように、本来ならば平行に配置される電極棒を傾斜させたり、入射側と出射側で異なる径を持つ電極棒を使用したりすることにより、光軸方向に電場勾配を生じさせる方法でイオンを加速させて問題を解決していた。
【0003】
【特許文献1】米国特許第5847386号公報
【特許文献2】特開2000−231900号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
図2は、イオンが真空中でガス分子と衝突することによってイオンの運動エネルギーを低下させるように構成された四重極型の「Paul Trap」内でのイオンの挙動を、市販の電磁場・軌道解析ソフトでシミュレーションした結果を示したものである。
【0005】
図中1はイオン源である。イオン源1で生成したイオンは、入口電極2を通過して、四重極3の内部に導かれる。四重極3の内部に導かれたイオン6は、やがて出口電極4を通過して、イオン検出部5に到達する。
【0006】
極子である電極棒を光軸(中心軸7)に対して平行に配置する通常の構造では、ガス分子との衝突による運動エネルギーの低下により、図に示すように光軸上近傍で軸方向の広範囲に亘ってイオンが滞留することになる。
【0007】
ここに捕捉されているイオンは、この四重極3の極子に囲まれた領域から外部へと排出させて利用されるが、速やかに排出させようとしても、このままでは数ミリ〜数十ミリ秒、あるいはそれ以上の長い時間を要しないと、シミュレーションでも、また実際的にも、イオンは取り出せない。
【0008】
そこで、これらイオンを排出させるために、滞留状態にあるイオンに軸方向のエネルギーを付与する方法が、光軸方向に電場勾配を生じさせる構造である。光軸方向に電場勾配が形成されていると、イオンの持つ電荷に作用して、軸方向への力が生じる。その結果、滞留状態にあるイオン粒子6は、軸方向へと移動する。
【0009】
これを実現するものとして、先に従来技術の例として上げた極子を用いるものがある。しかしながら、図1中のFig.2〜5に例示されている四重極では、極子を支持する絶縁部材と接する部分が傾斜しているために、精度良く加工することがむつかしかったり、径の大きい端面を有するために、イオンが通過ないし捕捉され得る空間のサイズを決める内接円を大きく取り難かったりする。
【0010】
図1中のFig.6〜9に例示されている四重極でも、絶縁部材と接する部分に傾斜があるため、部品加工や位置決めの精度に難点があることは、図1中のFig.2〜5に例示されている四重極の場合と同様である。
【0011】
また、米国特許第5847386号公報の事例では、極子間の電位差が1Vだとイオンの排出時間を10ミリ秒程度までに短くでき、3Vにすれば、2ミリ秒程度にまで短くできるが、更に電位差を大きく取りすぎると、例えば3V以上の場合、半径方向の電場も増大するため、逆に軸方向に排出されるイオンの量が減少し、それ以上の高速でのイオン排出は、イオン輸送効率の低下になる。
【0012】
本発明の目的は、上述した点に鑑み、極子の組立精度を保ち、極子間の電位差を大きく取っても軸方向に排出されるイオンの量が減少することのない荷電粒子の輸送・貯蔵機構を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この目的を達成するため、本発明にかかる荷電粒子の輸送・貯蔵機構は、
4本以上の偶数本の棒状電極から成り、中心軸から互いに等角度、等間隔に平行配置された多重極電極を備え、該多重極電極によって囲まれた空間の両端にこの空間への荷電粒子の出し入れ用穴を有する電極部材が配置された荷電粒子の輸送・貯蔵機構において、
前記棒状電極のうち、少なくとも対向する1対2本には、前記中心軸と正対する側に前記空間の入口側または出口側に向けて前記中心軸から離れる方向に所定の角度ないし段階的変化で傾斜した深さの底を有する溝を持ち、
前記溝を持った電極には、三角関数的に増減する高周波電圧、マスフィルター機能用直流電圧、軸方向電場形成用直流電圧、軸電位設定用直流電圧が重畳されて印加され、
前記軸方向電場形成用直流電圧によって軸方向に形成される電場勾配で荷電粒子が前記多重極電極の上流から下流に向けて加速されるように構成されていることを特徴している。
【0014】
また、前記多重極電極が四重極電極であり、前記対向する1対2本の電極が2対設けられ、隣り合う電極対同士で前記溝の傾斜方向が逆方向になっていることを特徴としている。
【0015】
また、前記多重極電極が四重極電極であり、前記対向する1対2本の電極が2対設けられ、隣り合う電極対同士で前記高周波電圧、前記マスフィルター機能用直流電圧、前記軸方向電場形成用直流電圧がそれぞれ逆極性となるように重畳印加されていることを特徴としている。
【0016】
また、前記軸電位設定用直流電圧は、すべての電極で互いに同極性となるような電圧が印加されていることを特徴としている。
【0017】
また、前記軸方向電場形成用直流電圧は、正の荷電粒子の輸送・貯蔵時には、荷電粒子の輸送方向に負の電場勾配、負の荷電粒子の輸送・貯蔵時には、荷電粒子の輸送方向に正の電場勾配を生じるような極性の電圧が印加されることを特徴としている。
【0018】
また、前記棒状電極は、断面形状が円形、双曲線形、四角形、または多角形であることを特徴としている。
【0019】
また、前記溝は、断面形状が円弧形、楕円弧形、三角形、四角形、台形、または多角形であることを特徴としている。
【発明の効果】
【0020】
本発明の荷電粒子の輸送・貯蔵機構によれば、
4本以上の偶数本の棒状電極から成り、中心軸から互いに等角度、等間隔に平行配置された多重極電極を備え、該多重極電極によって囲まれた空間の両端にこの空間への荷電粒子の出し入れ用穴を有する電極部材が配置された荷電粒子の輸送・貯蔵機構において、
前記棒状電極のうち、少なくとも対向する1対2本には、前記中心軸と正対する側に前記空間の入口側または出口側に向けて前記中心軸から離れる方向に所定の角度ないし段階的変化で傾斜した深さの底を有する溝を持ち、
前記溝を持った電極には、三角関数的に増減する高周波電圧、マスフィルター機能用直流電圧、軸方向電場形成用直流電圧、軸電位設定用直流電圧が重畳されて印加され、
前記軸方向電場形成用直流電圧によって軸方向に形成される電場勾配で荷電粒子が前記多重極電極の上流から下流に向けて加速されるように構成されているので、
極子の組立精度を保ち、極子間の電位差を大きく取っても軸方向に排出されるイオンの量が減少することのない荷電粒子の輸送・貯蔵機構を提供することが可能になった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。以下の全ての実施例では、正イオンを測定することを考えている。負イオンの測定には、電圧の極性を逆にすれば良い。
【0022】
[実施例1]
図3に本発明にかかる荷電粒子の輸送・貯蔵機構の一実施例を示す。図3は、図2の四重極3に対して、置き換えることを前提に構成された、新しい四重極電極である。この四重極電極は、電導性材料で作られた4本の丸棒電極(極子とも呼ぶ)から成り、中心軸から互いに等角度、等間隔に平行配置された四重極電極を構成している。そして図3に破線で示したように、それぞれ中心軸7に面した表面に溝8が設けられている。
【0023】
本実施例では、その溝8は、中心軸7に対して該四重極電極の入口側または出口側に向かって所定の角度を持って傾斜した状態で、丸やすりで擦り落としたように、やすりの外形跡を残した形に窪んで形成されている。つまり、溝8の深さが軸方向に異なっているということである。
【0024】
さらに言い換えると、溝の底と四重極電極の中心軸との距離が該四重極電極の入口側または出口側に向かって互いに離れるように、対向する2対の電極棒の前記中心軸に正対する側に傾斜した溝が設けられているとも言える。
【0025】
この溝8の形状と深さは、対向する上下、および左右の極子間で、中心軸7を挟んで対称である。溝8が次第に深くなる側は、上下の極子対で出口電極4側(右側)、左右の極子対で入口電極2側(左側)の方向になる。
【0026】
この四重極電極が図2の四重極3と置き換えられることにより、荷電粒子の輸送・貯蔵機構として動作する。尚、図2の構成の中で、イオン源1とイオン検出部5は、本発明に直接的な効果を及ぼさない部分であり、これに供給される電圧、電流等の電源その他については省略する。更に、この四重極電極は、真空容器内に格納、設置され、この空間に任意のガス成分が種類、量を制御されて供給され得るものとする。
【0027】
本四重極電極には、図4に示すような三角関数的に増減する高周波電圧V0・cos(ωt+θ)、マスフィルター機能用直流電圧U1、軸方向電場形成用直流電圧U2、軸電位設定用直流電圧U3が重畳されて印加されている。
【0028】
このうち高周波電圧V0・cos(ωt+θ)、マスフィルター機能用直流電圧U1、軸方向電場形成用直流電圧U2としては、隣り合う極子で互いに逆極性となるような電圧が印加されている。また、軸電位設定用直流電圧U3としては、すべての極子で互いに同極性となるような電圧が印加されている。また、軸方向電場形成用直流電圧U2としては、正イオンの輸送・貯蔵時には、イオンの輸送方向に負の電場勾配、負イオンの輸送・貯蔵時には、イオンの輸送方向に正の電場勾配を生じるような極性の電圧が印加される。
【0029】
また、図には例示されていないが、構成される電極に供給される各電圧は、印加するタイミングや設定値制御のためのシーケンサやコンピュータ等の制御系とユニットを備えている。
【0030】
本実施例は以下のように動作する。まず図5に示すように、出口電極4の電位(例えば10V)を上げて、イオンの持つエネルギーよりも高いエネルギー障壁を設けた条件下で、時刻t0(例えば0μs)において、イオン源1からのイオンを高周波電圧V0・cos(ωt+θ)が印加された四重極3の領域へ導入する。
【0031】
このとき、四重極3の極子に囲まれたこの領域には、例えばヘリウムガスが供給されていて、導入されたイオンと衝突が起こる真空度になっている。その平均自由行程は0.1〜10mm程度(例えば1mm)である。
【0032】
イオンが導入されている期間は、入口電極2の電位(例えば−2V)と四重極3の軸電位U3(例えば−8V)は、低い電位に設定されている。四重極3には、更に直流成分として、軸方向に電場勾配を発生するために、上下の極子に+U2(例えば10Vだと軸方向に約0.0278V/mmの電位勾配)、左右の極子に−U2が印加されている。
【0033】
任意の時間t2(例えば250μs)を経過後、入口電極2の電位は、通常だと出口電極4の電位と等しい値に設定される。この間、四重極3の領域に導入されたイオンは、短期的には半径方向に、長期的には軸方向にも振動しながら、ヘリウムガスの粒子との衝突で次第に運動エネルギーを減じながら、中心軸7付近の位置に集まってくると同時に、軸方向にも電場勾配があるため、電荷を持ったイオンは、四重極3に囲まれた空間領域の中でも出口電極4寄りの付近にその集団の中心位置が移動してくる。
【0034】
その状況をシミュレーションで示した例が図5であるが、「イオン粒子6」として記した矢印の先に、中心軸7付近に集まって少し横に広がった点の集団が確認できる。この様子は、先に上げた図2の例とは違って、横方向の広がりも狭く、出口電極4寄りに固まって分布している。
【0035】
この状態に至った頃のt3(例えば300μs)の時刻に、四重極3の軸電位と出口電極4の電位とで軸電位の方が高くなるように電位差を(例えば3V)設定すると、先の「イオン粒子6」の集団は、出口電極4の方向に速やかに移動し、更に先に位置するイオン検出部5へと飛行して検出される。
【0036】
この様子を図6にシミュレーションで示す。このときの排出に要する時間は、t3を起点にしてイオン粒子6の群がイオン検出部5に全て到達し終わるまでとすると、従来例と比較して短くなる(例えば25μs)。
【0037】
以上の過程を通して、導入から排出までのイオン1個の軌跡を記録した例を図7に示す。イオンが四重極3の領域を進むに従って振動の周期が短く振幅が小さくなり、出口付近では折り返しの繰り返しを起こして中心軸7付近で細かく振動し、最後にイオン検出部5に当たっている様子を確認できる。
【0038】
尚、図3では、四重極電極に丸棒電極を使用したが、これは必ずしも丸棒に限られるものではなく、例えば双曲線形の断面形状を有する電極や、四角形など多角形の断面形状を有する電極であっても良い。
【0039】
また、図3では、溝のある極子の数を2対4本としたが、これを1対2本のみとし、他の1対2本には溝の無い極子を採用しても良い。
【0040】
また、所定の角度で傾斜した溝に代えて、階段状の段階的変化により四重極電極の軸方向に電場勾配を発生させても良い。
【0041】
[実施例2]
本実施例は、実施例1の四重極電極を図8のような構造に置き換えた構成である。本実施例でも図8に破線で示したように、図3と同様な溝8があるが、終端部付近では、その溝8が形成されていない。この違いが、先の実施例1とは異なる。
【0042】
本実施例でも実施例1と同様な操作並びに動作となるが、四重極3の終端付近に軸方向電場の勾配が形成されていないので、この付近に至ったイオンは、四重極3の領域から自らは出て行きがたくなり、ガス成分との衝突による運動エネルギーの低下がより進むことになって、イオンは中心軸7付近に集まりやすくなる。
【0043】
イオンの排出時は、先の実施例と同じように、四重極3の軸電位と出口電極4の電位差の電位勾配で速やかに移動する。
【0044】
[実施例3]
本実施例は、実施例1の四重極電極を図9のような構造に置き換えた構成である。この例の場合、四重極3の極子表面に作る溝8の断面形状を実施例1の半円型から別の形に変更したものである。図9の上の例は、楔型の断面、すなわち三角形のやすりで削り落としたような形になっているが、図9の下の例では、断面形状が台形になっている。
【0045】
このように極子に設けられる溝8の断面形状は、実施例1に示した円弧形以外に、楕円弧形、三角形、四角形、台形、多角形などさまざまな変形が可能である。動作は実施例1と同じである。
【0046】
[実施例4]
先に示した例で「四重極3」とした部分は、六重極や八重極等、4本以上の偶数本の極子から成る多極子構造のものであっても良い。隣り合う極子で、軸方向の溝の傾斜が実施例1と同様、逆の関係にあり、隣り合う極子に印加される電圧の関係も実施例1と同様である。
【0047】
尚、多重極電極に使用される極子としては、丸棒電極ばかりでなく、例えば双曲線形の断面形状を有する電極や、四角形など多角形の断面形状を有する電極を使用しても良い。
【0048】
また、極子に設けられる溝の断面形状は、円弧形以外に、楕円弧形、三角形、四角形、台形、多角形などさまざまな変形が可能である。
【0049】
また、溝のある極子の数を1対2本(六重極と八重極の場合)、2対4本(六重極と八重極の場合)、3対6本(八重極の場合)とし、それ以外の極子には溝の無い極子を採用しても良い。
【0050】
また、所定の角度で傾斜した溝に代えて、階段状の段階的変化により多重極電極の軸方向に電場勾配を発生させても良い。
【産業上の利用可能性】
【0051】
荷電粒子の輸送・貯蔵機構に広く利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】従来の荷電粒子の輸送・貯蔵機構の一例を示す図である。
【図2】従来の荷電粒子の輸送・貯蔵機構によるシミュレーションの一例を示す図である。
【図3】本発明にかかる荷電粒子の輸送・貯蔵機構の一実施例を示す図である。
【図4】本発明にかかる荷電粒子の輸送・貯蔵機構の電圧印加方法の一実施例を示す図である。
【図5】本発明にかかる荷電粒子の輸送・貯蔵機構によるシミュレーションの一実施例を示す図である。
【図6】本発明にかかる荷電粒子の輸送・貯蔵機構によるシミュレーションの一実施例を示す図である。
【図7】本発明にかかる荷電粒子の輸送・貯蔵機構によるシミュレーションの一実施例を示す図である。
【図8】本発明にかかる荷電粒子の輸送・貯蔵機構の別の実施例を示す図である。
【図9】本発明にかかる荷電粒子の輸送・貯蔵機構の別の実施例を示す図である。
【符号の説明】
【0053】
1:イオン源、2:入口電極、3:四重極、4:出口電極、5:イオン検出部、6:イオン粒子、7:中心軸、8:溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
4本以上の偶数本の棒状電極から成り、中心軸から互いに等角度、等間隔に平行配置された多重極電極を備え、該多重極電極によって囲まれた空間の両端にこの空間への荷電粒子の出し入れ用穴を有する電極部材が配置された荷電粒子の輸送・貯蔵機構において、
前記棒状電極のうち、少なくとも対向する1対2本には、前記中心軸と正対する側に前記空間の入口側または出口側に向けて前記中心軸から離れる方向に所定の角度ないし段階的変化で傾斜した深さの底を有する溝を持ち、
前記溝を持った電極には、三角関数的に増減する高周波電圧、マスフィルター機能用直流電圧、軸方向電場形成用直流電圧、軸電位設定用直流電圧が重畳されて印加され、
前記軸方向電場形成用直流電圧によって軸方向に形成される電場勾配で荷電粒子が前記多重極電極の上流から下流に向けて加速されるように構成されていることを特徴とする荷電粒子の輸送・貯蔵機構。
【請求項2】
前記多重極電極が四重極電極であり、前記対向する1対2本の電極が2対設けられ、隣り合う電極対同士で前記溝の傾斜方向が逆方向になっていることを特徴とする請求項1記載の荷電粒子の輸送・貯蔵機構。
【請求項3】
前記多重極電極が四重極電極であり、前記対向する1対2本の電極が2対設けられ、隣り合う電極対同士で前記高周波電圧、前記マスフィルター機能用直流電圧、前記軸方向電場形成用直流電圧がそれぞれ逆極性となるように重畳印加されていることを特徴とする請求項1記載の荷電粒子の輸送・貯蔵機構。
【請求項4】
前記軸電位設定用直流電圧は、すべての電極で互いに同極性となるような電圧が印加されていることを特徴とする請求項1記載の荷電粒子の輸送・貯蔵機構。
【請求項5】
前記軸方向電場形成用直流電圧は、正の荷電粒子の輸送・貯蔵時には、荷電粒子の輸送方向に負の電場勾配、負の荷電粒子の輸送・貯蔵時には、荷電粒子の輸送方向に正の電場勾配を生じるような極性の電圧が印加されることを特徴とする請求項1記載の荷電粒子の輸送・貯蔵機構。
【請求項6】
前記棒状電極は、断面形状が円形、双曲線形、四角形、または多角形であることを特徴とする請求項1記載の荷電粒子の輸送・貯蔵機構。
【請求項7】
前記溝は、断面形状が円弧形、楕円弧形、三角形、四角形、台形、または多角形であることを特徴とする請求項1記載の荷電粒子の輸送・貯蔵機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−152088(P2009−152088A)
【公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−329553(P2007−329553)
【出願日】平成19年12月21日(2007.12.21)
【出願人】(000004271)日本電子株式会社 (811)
【Fターム(参考)】