説明

荷電粒子エネルギー分析計

高透過およびエネルギー分解能を同時に可能にする荷電粒子エネルギー分析計が記載されている。この分析計は、内側電極表面および外側電極表面(IS、OS)それぞれを有する同軸の内側電極および外側電極(14、15)を含む電極構造(11)を有する。この内側電極表面および外側電極表面は、電極構造(11)の縦軸に対称に直交する子午表面を有する回転楕円体の表面によって、少なくとも部分的に画定されている。内側電極表面および外側電極表面は、それぞれ異なる半径RおよびR(RはRより大きい。)を有する2つの非同心円の弧の縦軸回りの回転により生成される。それぞれの子午面における縦軸からの外側電極表面の距離は、R01であり、そしてそれぞれの平面における縦軸からの内側電極表面の距離は、R02およびR、R、R01であり、そしてR02は、規定された関係を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分析計具類に関する。さらに具体的に言うと、本発明は、荷電粒子エネルギー分析計に関する。
【背景技術】
【0002】
荷電粒子エネルギー分析計は、研究および産業における用途を見いだされており、そして抽出された荷電粒子のエネルギースペクトルを記録することによって原子組成および物質特性を決定するために使用でき、例えば。荷電粒子エネルギー分析計の、(これらに限られないが)オージェ電子分光法(AES)を含むX線電子分光法(ESCA)における特別な用途が見いだされた。そうした分析において、真空中に配置され、そしてX線、電子またはイオンに曝された試料は、光電子、X線、二次電子オージェ電子(特別なクラスの二次電子)イオン、および一次電子源から弾性散乱した電子を放出する。
【0003】
試料の表面から放出された荷電粒子は、それらのエネルギーによって分離でき、そしてスペクトルの形態で検出できる。そうしたエネルギースペクトルは試料材料の特徴であり、したがって試料の組成について重要な情報を含む。
【0004】
粒子は、電気または電磁気エネルギー分析計を使用してエネルギーによって分離できる。最も一般的な分析計は、半球偏向分析計および円筒鏡型静電分析計である。半球偏向分析計は、通常、高分解能を必要とするX線またはUV電子分光法において使用される。半球偏向分析計と比較してより高い(higher)アクセプタンス立体角(acceptance solid angle)を提供する円筒鏡型分析計が、通常、電子衝突励起を用いた中程度の分解能のオージェ電子分光法に好ましい。
【0005】
公知の高アクセプタンスにおいて、円筒鏡型分析計では、分析される電子は、発散ビームの形態で試料から放出され、そして同軸の円筒型電極間の電界によって分析計の軸に対して偏向される。外側電極の電位および分析計の分解能によって規定された狭いエネルギー範囲内の電子は、軸上の特定点に、または軸の周りのリングに焦点を合わされる。電子のエネルギースペクトルは、電界電位を変えること、およびこの電位の関数としての電子を検出することによって得られる。典型的には2πステラジアン(sterradians)当り14%の、その高アクセプタンスである公知の円筒鏡型分析計の不都合点は、低いエネルギー分解能、典型的には、興味の対象のエネルギーの0.5%でのみ達成可能であることである。高アクセプタンスおよび高分解能の両方は、同時に達成できない。
【0006】
伝統的に、電子分光分析は、半球偏向分析計の場合におけるように、より低いアクセプタンス(そしてそれ故に、より低感度)を犠牲にした高分解能か、または円筒鏡型分析計の場合におけるように、高いアクセプタンス(高感度)かつ限られた分解能か、のいずれかで通常行われる。
【0007】
アクセプタンスおよびエネルギー分解能を別として、分析システムなどの平易さを含む研究活動の準備から生じる多くのほかの要求がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
高アクセプタンス立体角と高エネルギー分解能との両者を組み合わせる公知の分析計は、Siegbahn et al.Nucl.Instr.Meth.A 348(1997)563〜574に記載されている。この分析計は、円筒型の対称な分析計(スウェーデン国特許番号第512265号明細書、CHOlJ、49/40、1997)中で軸方向の電界と半径方向の電界との両者を組み合わせる。より内側の同軸電極表面およびより外側の同軸電極表面は、理論考察から得られる等電位表面に従う。この公知の分析計において、電界構造(field structure)および電極の等電位表面は、ラプラス式の解が、1つは半径方向の距離により、そしてもう1つは軸方向の距離による、2つの関数の合計であるという条件で、円筒型対称システムのためのラプラス式を解くことにより得られる。これば、軸方向および半径方向の電界勾配の両方を有する電界構造となる。そうした電界特性に基づく分析計は、古典的な円筒鏡の分析計より性能において確実に優れているが、半径方向および軸方向において独立して変化する別個の電界分布関数への要求により拘束された電界構造の限定された性質によって制約される。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明により、試料にエネルギー分析のための荷電粒子を放出することを生じさせるように、試料を照射するための照射手段、縦軸を有する電極構造、(この電極構造は、内側電極表面および外側電極表面をそれぞれ有する同軸の内側電極および外側電極を含む。)、入口開口(ここを通ってこの試料から放出された荷電粒子がエネルギー分析のために内側電極表面と外側電極表面との間の空間に入ることができる)および(荷電粒子がこの空間から出ることができる)出口開口、およびこの出口開口を通ってこの空間から出る荷電粒子を検出するための検出手段を含む、荷電粒子エネルギー分析計が提供され、ここで、この内側電極表面および外側電極表面は、縦軸に対称に直交する子午面(meridonal plane)を有する回転楕円体の表面によって、少なくとも部分的に画定されている、この内側電極表面および外側電極表面は、それぞれ異なる半径、RおよびR(Rは常にRより大きい)を有する2つの非同心円の弧の該縦軸周りの回転によって生成され、それぞれの子午面中の該縦軸から該外側電極表面への距離はR01であり、そしてそれぞれの子午面中の該縦軸から該内側電極表面への距離はR02であり、そして該半径RおよびRおよび該距離R02は、条件:
=K12
=K12
02=K12
(式中、R12=R01−R02およびK、KおよびKは、l<K<∞、l<K≦∞および0<K<∞である無次元パラメーターであり、このパラメーターの任意の選択された組はK≠1+KおよびK<KおよびK<Kを満たす。)
を満たす。
【0010】
この新規な様式の表現を適用して、K=1+KおよびK=Kである公知の半球偏向分析計(HDA)が電極表面を有することに注目する、他方では、公知の円筒鏡型分析計(CMA)は、K=K=∞である電極表面を有する。
【0011】
本発明は、これまで知られていなかった回転楕円体の電極表面を有する荷電粒子エネルギー分析計(以下、回転楕円体エネルギー分析計(SEA)と呼ばれるであろう)の範囲を提供する。
【0012】
同じ分析計においてHDAと通常関連する(典型的には、スペクトル線のベースで0.5%より良好である)高エネルギー分解能、および通常CMAと関連した(典型的には2πステラジアン当り14%より良好である)高アクセプタンス立体角の両方の利益を提供できるので、SEAの幾つかの好ましい態様は、特に好都合であることが見いだされた。
【0013】
さらに、SEAは、前記出版物中に記載された分析計の場合として、半径方向および軸方向において、独立して変化する別個の電界分布関数への要求によって拘束されない形状を有する。
【0014】
好ましい態様では、K、KおよびKの値は、好ましくは、条件:1<K≦10、1<K≦∞および0.1≦K<3を満たす。特に好ましい態様では、K=2.756、K=4.889およびK=0.944である分析計は、スペクトル線のベースにおいて少なくとも0.05%のエネルギー分解能ΔE/Eおよび2πステラジアン当り21%超のアクセプタンス立体角を同時に与えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
本発明の態様は、ここで以下の添付図を例としてのみで参照して記載される:
【図1】図1は、本発明による回転楕円体エネルギー分析計(SEA)の態様の簡素化した断面図を示す、
【図2】図2は、図1中に示したSEAの電極構造の詳細な縦断面図を示し、
【図3】図3は、図2中に示した電極構造の入口終端のさらに詳細な図を示し、
【図4】図4は、図2中に示す電極構造の出口終端のさらに詳細な図を示し、
【図5】図5は、エネルギー分析に従うSEAの縦軸を横切るエネルギーEおよびE±0.05%を有する電子の軌道を示し、そして、
【図6】図6は、内側電極表面が円錐形終端部分を有する改質された電極構造の出口終端の詳細な図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図中の図1を参照すると、荷電粒子エネルギー分析計10は、フランジが付いた支持プレート12上に取り付けられた電極構造11を有し。プレート12はまた、それがないと分析計を通るにつれて、荷電粒子の軌道を歪める場合がある外部からの磁場を遮断する電極構造11を取り囲む磁性シールド13を支える。
【0017】
電極構造11は、内側電極14および外側電極15を含む。この内側電極14は、内側電極表面ISを有し、そしてこの外側電極15は、外側電極表面OSを有し、この内側電極表面および外側電極表面IS、OSは、分析計の縦軸X−Xの回りで回転対称である。縦軸X−X上に配置された試料Sは、電子を照射される。その終端において、分析計は、その発生源によって生成された一次電子を試料Sの表面に向かわせるための電子銃17の一部である一次電子源16を含む。試料から放出された二次電子は、内側電極表面と外側電極表面IS、OSとの間の空間18に内側電極14中の入口開口19を経て入り、そして電子は、検出器21によって検出するための内側電極14の出口開口20を経て空間18を出る。図1は、内側電極表面と外側電極表面IS、OSとの間を通過する3つの例示的な軌道を示す。
【0018】
この態様において、試料Sは電子で照射される。しかし、当然のことながら、代わりの照射手段を用いることができるであろうし;例えば、試料を、正または陰に帯電したイオン、X線、レーザー光またはUV光で照射することができるであろう。
【0019】
負の荷電粒子のエネルギー分析(記載された態様におけるように、例えば、電子)のために、外側電極15は、内側電極14に対して負の電位で保たれ、一方、正の荷電粒子のエネルギー分析のために、この外側電極15は、内側電極14に対して正の電位に保たれる。この内側電極14は、接地電位で保たれることができるであろうし、そしてこの場合は、単一の電力供給のみが必要であろう。
【0020】
内側電極と外側電極14、15との間の電位差は、内側電極表面と外側電極表面IS、OSとの間の空間18中に作り出されたエネルギー発散型電界により検出器21における焦点に導かれる荷電粒子のエネルギーを決定する。スキャンモードの運転では、電位差エネルギースペクトルを生成するようにスキャンできる。
【0021】
図2〜4は、内側電極表面および外側電極表面IS、OSの形をより詳細に具体的に示す。終端部分を別として、この内側電極表面および外側電極表面IS、OSは、回転楕円体であり、それぞれの表面は、縦軸X−X回りに、円の弧を回転させることによって画定される。それぞれの回転楕円体の表面は、縦軸に直交する対称な子午面Mを有する。この態様において、内側電極表面および外側電極表面IS、OSの対称な子午面Mは一致している、当然のことながら、これは必ずしも必要ではない。図3を特に参照すると、この態様の外側電極表面OSは、分析計の入口終端において外側電極表面OSの回転楕円体の一部を切断する、平らな環状の終端部分を有する。この平らな環状の終端部分は、縦軸X−X上に中心を置き、そして外側半径r、および内側半径rを有する。
【0022】
内側電極表面ISは、分析計の入口終端において、内側電極表面ISの回転楕円体の一部を切断する同軸の円錐形終端部分を有する。円錐形終端部分は、(内側電極表面の回転楕円体部分に接線方向で(tangentially)接する)半径rおよび(内側電極表面の平らな終端面によって切断される)半径rを有する。同軸の円錐形終端部分は、半角αを定める。
【0023】
図4を特に参照すると、外側電極表面OSは、分析計の出口終端において、外側電極表面OSの回転楕円体の一部を切断する半径rの同軸の円筒型終端部分を有する。同様に、内側電極表面ISは、分析計の出口終端において、内側電極表面ISの回転楕円体の一部を切断する半径rの同軸の円筒型終端部分を有する。
【0024】
図1〜4に示すように、入口開口19は、内側電極表面ISの同軸の円錐形終端部分中に配置され、そして出口開口20は、内側電極表面ISの同軸の円筒型終端部分中に配置される。この態様において、入口開口および出口開口19、20は、典型的には、縦方向に伸びる導電性ワイヤーによって形成されている高透明性のグリッドによって覆われている。
【0025】
図2を参照すると、外側電極表面OSの回転楕円体の一部は、半径Rの円の弧の回転、および子午面Mにおいて測定された縦軸X−Xからのその弧の距離R01によって画定され、そして内側電極表面ISの回転楕円体の一部は、半径Rの円の弧の回転および子午面M中で再度測定された縦軸X−Xからの弧の距離R02によって画定される。R、RおよびR02は、条件:
=K12
=K12
およびR02=K12
【0026】
(式中、R12=R01−R02は、子午面Mにおける内側電極と外側電極表面IS、OSの間のギャップであり、そしてK、KおよびKは無次元パラメーターである。)を満たす。
図1〜3に示すように、試料Sは、電極構造11の境界の外側に位置する。相対的に容易に配置することを可能とし、そして1種または2種以上の追加の照射源の提供を促進する;例えば、X線照射源が、一次電子源に加えて提供できるであろうので、この配置は好都合である。当然のことながら、代わりに、より好ましくない態様として、試料Sは、電極構造の境界内に配置できるであろう。
【0027】
本発明の特に好ましい態様において、K=2.756、K=4.889およびK=0.944である。K、KおよびKのこれらの値のために外側電極表面OSの平らな環状の終端部分は、好ましくは、外側半径r=0.755R12および内側半径r=0.661R12を有し、そして内側電極表面ISの円錐形終端部分は、好ましくは半径r=0.818R12、半径r=0.515R12およびtan(α)=0.255の半角α≒14.3°を有する。
【0028】
分析計の出口終端では外側電極表面OSの同軸の円筒型終端部分は、好ましくは半径r=0.754R12を有し、そして内側電極表面ISの同軸の円筒型終端部分は、好ましくは半径r=0.704R12を有する。
【0029】
(K=2.756、K=4.889およびK=0.944である)好ましい態様の特定の例では、R12は、45mmに設定され、従ってRは、124mmの値を有し、Rは220mmの値を有し、R01は、87.5mmの値を有し、そしてR02は、43.5mmの値を有する。
【0030】
原点が試料における縦軸X−Xを中心とするこの例に円筒型の(XY)座標系を適用すると、Xは軸方向の距離であり、そしてYは縦軸に直交する方向における半径距離であり、分析計の作動距離(WD);すなわち、試料Sと分析計の正面22との間の軸上の距離は、7.6mmに設定される。この例において、分析計の入口終端における外側電極表面OSの環状終端部分は、X;Y座標=9.90mm;29.75mmにおける内側半径の端および0.40mmの軸方向深さを有し、そして分析計の入口終端において、内側電極表面ISの同軸の円錐形終端部分は、X;Y座標=8.50mm;23.150mmにおいて内側電極表面ISの平らな終端面によって切断している。外側電極表面OSの円筒型終端部分は、X;Y座標=214.05mm;33.95mmにおいて。外側電極表面OSの回転楕円体の一部を切断しており、そして6.90mmの軸方向の長さを有する。同様に、内側電極表面ISの円筒型終端部分は、X;Y座標=180.00mm;31.70mmにおいて、内側電極表面ISの回転楕円体の一部を切断しており、そしてX;Y座標=222.95mm;31.70mmにおいて分析計の出口終端で平らな終端面を横切っている。
【0031】
この例において、電子は、内側電極表面と外側電極表面IS、OSとの間の空間に、44°〜60°の範囲の発散角を有する軌道上で入口開口19を経由して入り、そして電子は、38.6°〜45.1°の範囲の発散角を有する軌道上で出口開口20を経由して空間18を出て、そしてX;Y座標=225.27mm;0.0mmを有する焦点fで焦点を合わせられる。
【0032】
電界パターンが、内側電極表面と外側電極表面IS、OSとの間で作り出され、そしてその場のエネルギー発散型特性および焦点特性が、例えば、SIMION3D等の荷電粒子光学シミュレーションプログラムを使用したシミュレーションによって決定できる。
【0033】
好ましい態様の記載された例は、公知の円筒鏡型分析計(典型的には0.5%)を使用して達成できるエネルギー分解能より遙かに高い、スペクトル線のベースにおける高エネルギー分解能ΔE/E、典型的には0.05%を与えることが見いだされた。
【0034】
この高エネルギー分解能は、図5により実際に説明され、図では、エネルギー0.9995E、Eおよび1.0005Eを有する電子の軌道が分析計によって、それらが縦軸エネルギー分析に従って縦軸を横切る3種の明らかな分解できる帯を示す。
【0035】
この記載された例はまた、公知の半球偏向分析計(典型的には1%)によって典型的に与えられるアクセプタンス立体角より遙かに高い、高アクセプタンス立体角、典型的には2πステラジアン当たり21%超を有する。したがって、同じ機器において、高エネルギー分解能および高アクセプタンス立体角の両方の利益を提供するので、記載された例は、特に好都合である。
【0036】
検出器21は、(multiplication function)乗算機能を提供するチャネルトロン(channeltron)または任意の他の荷電粒子検出機器(device)であることができる。図5から明らかなように、記載された分析計は、マルチチャネル機能(multi−channel function)を提供し、従って、この検出器は、位置敏感型検出(position−sensitive detection)を提供する、マルチチャネルプレート機器(multichannel plate device)または任意の他のマルチチャネル荷電粒子検出機器の形態を有することができる。荷電粒子光学シミュレーションの研究は、より高い値のエネルギー分解能が、条件:
1<K≦10、
1<K≦∞および
0.1≦K≦3
を満たすK、KおよびKの値を有する好ましい態様の範囲内で達成可能であることを示した。
【0037】
一例として、K=1.692、K=∞およびK=0.436である1つの好ましい態様は、スペクトル線のベースにおいて約0.3%のエネルギー分解能ΔE/Eを与え、そして2πステラジアン当たり約15%のアクセプタンス角を有し、そしてK=1.784、K=8.919およびK=0.514である別の好ましい態様は、スペクトル線のベースにおいて約0.3%のエネルギー分解能ΔE/Eを与え、そして2πステラジアン当たり約24%のアクセプタンス立体角を有する。
【0038】
既に記載したように、K=2.756、K=4.889およびK=0.944である特に好ましい態様は、スペクトル線のベースにおいて少なくとも0.05%のエネルギー分解能ΔE/E、および2πステラジアン当たり21%超のアクセプタンス角を与えることができる。この場合は、入口開口および出口開口のサイズを減少させることによってアクセプタンス立体角が2πステラジアン当たり約7%に減少した場合、0.0025%未満のより高いエネルギー分解能さえも達成できる。反対に、これは、エネルギー分解能を約0.07%に低下させるものの、2πステラジアン当たり約30%のより高いアクセプタンス角が、入口および出口スリットのサイズを増加させることによって達成できる。
【0039】
記載された内側電極表面および外側電極表面IS、OSの非回転楕円体の終端部分は、電極表面間の空間18内のフリンジ場の逆効果を低下させるように設計されている。当然のことながら、これらの部分は、代わりの形態を有することができる。例えば、内側電極表面の円錐形終端部分は、代わりに円筒型形等の非円錐形を有することができるであろうし、そして/または内側電極表面の円筒型終端部分は、代わりに非円筒型形であることができるであろう。特に、内側電極表面の円筒型終端部分は、切断された円錐形終端部分によって置き換えることができるであろう。この場合は、例えば、荷電粒子は、図6に示すように、縦軸X−Xを取り囲むリングにおいて焦点を合わせられるであろうし、そして検出器21は、リング状検出器の形態を有するであろう。電極構造11の外の照射源から分析計の縦軸に沿ってまたは近くに向けられた試料Sを、第1励起ビーム(例えば、電子ビーム)を使用して照射できる分析計の軸上の領域には機械的な障害物がないであろうので、縦軸X−Xを囲むリングにおいて焦点を合わせることは、好都合である。
【0040】
分析計の入口終端および出口終端における、そうした非回転楕円体の電極表面の提供は、最適な結果を与えると考えられているが、そうした非回転楕円体の表面は全く除外できるであろうし、そして依然有用な分析計を得ることができるであろう。
【0041】
追加の電極が(より望ましくないが)代わりに使用できるが、記載された電極構造11は、ただ2つの電極によって規定されるエネルギー発散型電界を有する簡素な組み立てを有する。
【0042】
縦軸回りに回転対称である内側電極表面および外側電極表面IS、OSを有する態様が記載され;すなわち、2つの電極表面が、全(360°)方位角の範囲にかけて伸びている。あるいは、これらの場合では極端な角度範囲における電極構造により作り出されたフリンジ場を補うために注意が必要であるが、内側電極表面および外側電極表面は、より小さい方位角の範囲、例えば、270°、180°またはそれら以下までもにかけて伸びることができる。
【0043】
本発明による2つまたは3つ以上の荷電粒子エネルギー分析計は、ダブルバス(double pass)またはマルチパス(multiple pass)の器具を作るために組み合わせることができる。この場合は、1つの分析計の出口の焦点を合わせた点が、次の分析計の源点を表わすような様式で、2つまたは3つ以上の分析計が、それらの対称の共通軸に沿って共に結合できるであろう。入口終端と出口終端とにおける発散角の一貫性を保つために、単一の分析計の入口を正面Fとし、そして出口を背面Bとして、個々の分析計は、ダブルパス分析計では、F−B−B−Fのように並べられることが好ましく、そして同様にマルチパス分析計では、それらはF−B−B−F−F−Bのように並べられることが好ましい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エネルギー分析のために試料に荷電粒子を放出させるために、試料を照射するための照射手段、
縦軸を有する電極構造、
該電極構造は、内側電極表面および外側電極表面をそれぞれ有する同軸の内側電極お
よび外側電極を含む、
エネルギー分析のために該試料から放出された荷電粒子が、該内側電極表面と該外側電極表面との間の空間に入ることができる、入口開口および、
荷電粒子が該空間から出ることができる出口開口、および
該出口開口を通って該空間から出た荷電粒子を検出するための検出手段、
を含んで成る、荷電粒子エネルギー分析計であって、
ここで、該内側電極表面および外側電極表面が、該縦軸に対称に直交する子午面を有する回転楕円体の表面によって、少なくとも部分的に画定されており、該内側電極表面および該外側電極表面が、異なる半径RおよびRをそれぞれ有する2つの非同心円の弧の該縦軸回りの回転によって生成されており、Rが常にRより大きく、該それぞれの子午面における該縦軸から該外側電極表面への距離がR01であり、そして該それぞれの子午面における該縦軸から該内側電極表面への距離がR02であり、そして該半径RおよびRおよび該距離R02が、条件:
=K12
=K12、
およびR02=K12
(式中、R12=R01−R02およびK、KおよびKは、1<K<∞、1<K≦∞であり、そして0<K<∞である無次元パラメーターであり、該パラメーターの任意の選択された組は、K≠1+KおよびK<KおよびK<Kを満たす。)
を満たす、荷電粒子エネルギー分析計。
【請求項2】
該回転楕円体の表面の該子午面が一致している、請求項1に記載の荷電粒子エネルギー分析計。
【請求項3】
1<K≦10、1<K≦∞および0.1≦K≦3である、請求項1または2に記載の荷電粒子エネルギー分析計
【請求項4】
=2.756、K=4.889およびK=0.944である、請求項3に記載の荷電粒子エネルギー分析計。
【請求項5】
該外側電極表面が、該電極構造の入口終端において平らで環状の終端部分を有する、請求項1〜4のいずれか一項に記載の荷電粒子エネルギー分析計。
【請求項6】
該環状の終端部分が、該縦軸に中心がある円形開口を有する平面リングを含む、請求項4に記載の荷電粒子エネルギー分析計。
【請求項7】
=2.756、K=4.889およびK=0.944であり、該平面リングが、該縦軸に対して動径座標0.755R12において該外側電極表面の該回転楕円体の表面と接し、そして該円形開口が半径0.661R12、および軸方向の深さ0.009R12を有する、請求項6に記載の荷電粒子エネルギー分析計。
【請求項8】
該内側電極表面が、該電極構造の入口終端において、同軸の円錐形終端部分を有し、該入口開口が該同軸の円錐形終端部分に位置する、請求項1〜7のいずれか一項に記載の荷電粒子エネルギー分析計。
【請求項9】
=2.756、K=4.889およびK=0.944であり、該同軸の円錐形終端部分が、該縦軸に対して動径座標0.818R12において該内側電極表面の該回転楕円体の一部と接線方向で接し、そしてtan(α)=0.255によって与えられる半角(α)を有する、請求項8に記載の荷電粒子エネルギー分析計。
【請求項10】
該内側電極表面が、該縦軸に対して、動径座標0.514R12において、該同軸の円錐形終端部分を切断する終端面を有する、請求項9に記載の荷電粒子エネルギー分析計。
【請求項11】
該内側電極表面が、該電極構造の出口終端において同軸の円筒型形の終端部分を有し、該出口開口が該円筒型形の終端部分中に配置されており、それによって該試料により放出される荷電粒子の焦点を合わせることが可能となる、請求項1〜10のいずれか一項に記載の荷電粒子エネルギー分析計。
【請求項12】
該外側電極表面が、該電極構造の該出口終端において、同軸の円筒型形の終端部分を有する、請求弧11に記載の荷電粒子エネルギー分析計。
【請求項13】
該外側電極表面および該内側電極表面の該同軸の円筒型形の終端部分が、0.754R12および0.704R12の半径をそれぞれ有する、請求項12に記載の荷電粒子エネルギー分析計。
【請求項14】
該内側電極表面が、該電極構造の出口終端において同軸の円錐形終端部分を有し、該出口開口が該同軸の円錐形終端部分中に位置しており、それによって該縦軸上の点において該試料から放出される荷電粒子が該縦軸上に中心があるリングにおいて焦点を合わせられ、該検出手段が、該焦点を合わされた荷電粒子を検出するためのリング検出器である、請求項1〜10のいずれか一項に記載された、荷電粒子エネルギー分析計。
【請求項15】
該試料が該縦軸方向で該終端面から0.169R12の距離に位置し、そして該入口開口が、該縦軸に対して44°〜60°の範囲にある発散角を有する該試料から放出された荷電粒子を収容できるような寸法である、請求項10に記載の荷電粒子エネルギー分析計。
【請求項16】
該出口開口が該縦軸に対して少なくとも38.6°〜45.1°の範囲にある発散角を有する荷電粒子を通すような寸法であり、該荷電粒子が該試料から5.006R12の焦点において該縦軸上に焦点を合わされる、請求項15に記載の荷電粒子エネルギー分析計。
【請求項17】
該入口開口および出口開口が、導電性グリッドによって被覆されている、請求項1〜16のいずれか一項に記載の荷電粒子エネルギー分析計。
【請求項18】
該導電性グリッドが、縦方向に伸びるワイヤーの形態を有する、請求項17に記載の荷電粒子エネルギー分析計。
【請求項19】
該出口開口が、該円筒型形の終端部分の全長に沿って伸びている、請求項11〜13のいずれか一項に記載の荷電粒子エネルギー分析計。
【請求項20】
該検出手段が、チャネルトロン機器である、請求項1〜19のいずれか一項に記載の荷電粒子エネルギー分析計。
【請求項21】
該検出手段が、マルチチャネルプレート機器である、請求項1〜19のいずれか一項に記載の荷電粒子エネルギー分析計。
【請求項22】
該検出手段が、位置敏感型検出機器である、請求項1〜19のいずれか一項に記載の荷電粒子エネルギー分析計。
【請求項23】
それぞれが、ダブルまたはマルチパス荷電粒子エネルギー分析を提供する共通縦軸上の請求項1〜22のいずれか一項による、2つまたは3つ以上の荷電粒子エネルギー分析計の直列配置を含む、荷電粒子エネルギー分析計。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公表番号】特表2011−501373(P2011−501373A)
【公表日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−530533(P2010−530533)
【出願日】平成20年3月31日(2008.3.31)
【国際出願番号】PCT/GB2008/001117
【国際公開番号】WO2009/053666
【国際公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【出願人】(500344585)シマヅ リサーチ ラボラトリー(ヨーロッパ)リミティド (8)
【Fターム(参考)】