説明

荷電粒子ビームのビーム分解能測定方法及び荷電粒子ビーム装置

【目的】高精度なビーム分解能を測定する方法、および方法を具現化する描画装置を提供することを目的とする。
【構成】本発明の一態様のビーム分解能測定方法は、マーク上を荷電粒子ビームで照射しながら走査する走査工程(S102)と、マークからの反射信号を計測する計測工程(S104)と、所定のマーク形状関数と誤差関数とを用いて定義された近似式を用いて反射信号に基づく波形をフィッティングして、ビーム分解能を測定するビーム分解能測定工程(S108)と、を備えたことを特徴とする。本発明によれば、高精度なビーム分解能を得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷電粒子ビームのビーム分解能測定方法及び荷電粒子ビーム装置に係り、例えば、電子ビームを可変成形させながら試料に電子ビームを照射する荷電粒子ビーム描画装置における電子ビームのビーム分解能測定方法、及びかかる方法等を具現する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの微細化の進展を担うリソグラフィ技術は半導体製造プロセスのなかでも唯一パターンを生成する極めて重要なプロセスである。近年、LSIの高集積化に伴い、半導体デバイスに要求される回路線幅は年々微細化されてきている。これらの半導体デバイスへ所望の回路パターンを形成するためには、高精度の原画パターン(レチクル或いはマスクともいう。)が必要となる。ここで、電子線(電子ビーム)描画技術は本質的に優れた解像性を有しており、高精度の原画パターンの生産に用いられる。
【0003】
図11は、従来の可変成形型電子線描画装置の動作を説明するための概念図である。
可変成形型電子線描画装置(EB(Electron beam)描画装置)における第1のアパーチャ410には、電子線330を成形するための矩形例えば長方形の開口411が形成されている。また、第2のアパーチャ420には、第1のアパーチャ410の開口411を通過した電子線330を所望の矩形形状に成形するための可変成形開口421が形成されている。荷電粒子ソース430から照射され、第1のアパーチャ410の開口411を通過した電子線330は、偏向器により偏向され、第2のアパーチャ420の可変成形開口421の一部を通過して、所定の一方向(例えば、X方向とする)に連続的に移動するステージ上に搭載された試料340に照射される。すなわち、第1のアパーチャ410の開口411と第2のアパーチャ420の可変成形開口421との両方を通過できる矩形形状が、X方向に連続的に移動するステージ上に搭載された試料340の描画領域に描画される。第1のアパーチャ410の開口411と第2のアパーチャ420の可変成形開口421との両方を通過させ、任意形状を作成する方式を可変成形方式という。
【0004】
上述した電子ビーム描画装置を使用して形成されたパターンの精度や最小解像寸法はビーム分解能と密接な関係にある。一方、基板を描画する場合に基板上に塗布されたレジストのレジストコントラストや化学増幅型レジストの酸拡散などといったプロセスによる実効的に分解能を劣化させる要因が存在する(プロセス分解能)。近年の描画装置では、描画装置自身のビーム分解能が向上して(小さくなり)、計算上ではプロセス分解能と同等、或いはより小さい値にまでなってきた。
【0005】
ここで、試料340に照射される電子線330のビーム強度分布は、電子線330を走査して、電子線330のビームサイズに比べ十分小さな金属マークに電子線330を照射する。そして、金属マークからの反射電子を計測することで測定する手法がある(例えば、特許文献1参照)。そして、これらによって得られた電子線330のビーム強度分布から電子線330のビーム分解能を得ることができる。
【特許文献1】特開平4−242919号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このようにして得たビームの強度分布は、誤差関数の波形とはかなりずれてしまっていた。
図12は、ビームの強度分布の一例を示す図である。
図12において、ビームの強度分布は、金属マーク上に電子ビームを走査して、金属マークからの反射電子を計測することで測定した結果を示している。ここで、ビームの強度分布は、理想的には誤差関数F(x)で定義される。しかしながら、得られたビームの強度分布(測定値)は、誤差関数の波形とはかなりずれてしまっていた。これは、1つに測定に用いた金属マークからの散乱による分布が合成されてしまうためである。その他にも、金属マークの形状に起因するものと考えられる。そのため、求められたビーム分解能は、本来のビーム分解能に比べ大きな値となってしまうといった問題があった。その結果、測定結果が頭打ちとなり測定できる範囲にも限界が生じてしまう。そのため、小さな分解能を測定することができなかった。
【0007】
そこで、本発明は、上述した問題点を克服し、高精度なビーム分解能を測定する方法、および方法を具現化する描画装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様の荷電粒子ビームのビーム分解能測定方法は、
マーク上を荷電粒子ビームで照射しながら走査する走査工程と、
荷電粒子ビームの照射によるマークからの反射信号を計測する計測工程と、
所定のマーク形状関数と誤差関数とを用いて定義された近似式を用いて反射信号に基づく波形をフィッティングして、反射信号に基づく波形からビーム分解能を測定するビーム分解能測定工程と、
を備えたことを特徴とする。
【0009】
発明者は、得られた反射信号が示す波形が実際にはマークの形状に依存することを見出した。そこで、所定のマーク形状関数と誤差関数とを用いて定義された近似式を用いて反射信号をフィッティングすることで、よりフィッティング精度を向上させることができる。このように、マーク形状に基づく関数を用いてフィッティング精度を向上させることで、マーク形状の依存性を排除した誤差関数内のビーム分解能の値σを求めることができる。
【0010】
そして、所定のマーク形状関数に定義されるマークの形状として、荷電粒子ビームの走査方向前後の各側面がそれぞれ末広がりに傾斜したマークの形状を用いると好適である。
【0011】
さらに、所定のマーク形状関数に定義されるマークの形状として、上面の端部が上述した側面に向かって傾斜したマークの形状を用いると好適である。
【0012】
或いは、所定のマーク形状関数に定義されるマークの形状として、上面が曲面のマークの形状を用いても好適である。
【0013】
上述した方法を具現化する本発明の一態様の荷電粒子ビーム装置は、
荷電粒子ビームを照射する照射部と、
マーク上を荷電粒子ビームで照射しながら走査することによって得られるマークからの反射信号を計測する計測部と、
所定のマーク形状関数と誤差関数とを用いて定義された近似式を用いて反射信号に基づいて得られる波形をフィッティングして、反射信号に基づいて得られる波形から誤差関数のパラメータとなるビーム分解能を測定する測定部と、
を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、得られた測定データの波形からマーク形状の依存性を排除した高精度なビーム分解能を測定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、実施の形態では、荷電粒子ビームの一例として、電子ビームを用いた構成について説明する。但し、荷電粒子ビームは、電子ビームに限るものではなく、イオンビーム等の荷電粒子を用いたビームでも構わない。
【0016】
また、ビーム分解能は、定義次第であるが、強度分布誤差関数で近似し、そのパラメータσをもって、分解能と定義する場合もある。又は、最大ビーム強度の10%となる位置から90%となる位置までの幅(長さ)、或いは最大ビーム強度の20%となる位置から80%となる位置までの幅(長さ)等で定義される場合もある。以下、実施の形態では、強度分布誤差関数で近似し、そのパラメータσをもって、ビーム分解能と定義する。
【0017】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1における電子ビームのビーム分解能測定方法の要部工程の一例を示すフローチャート図である。
図1において、電子ビームのビーム強度分布測定方法は、走査工程(S102)、反射電子計測工程(S104)、ビーム分解能測定工程(S108)という一連の工程を実施する。
【0018】
図2は、実施の形態1における描画装置の構成を示す概念図である。
図2において、荷電粒子ビーム描画装置の一例となる描画装置100は、描画部150を構成する電子鏡筒102、XYステージ105、電子銃201(照射部)、照明レンズ202、第1のアパーチャ203、投影レンズ204、偏向器205、第2のアパーチャ206、対物レンズ207、偏向器208、検出器218(測定部)を備え、制御部160として、制御コンピュータ(CPU)310、インターフェース回路320、メモリ312、増幅器326、A/D変換器328を備えている。
【0019】
そして、電子鏡筒102内には、電子銃201、照明レンズ202、第1のアパーチャ203、投影レンズ204、偏向器205、第2のアパーチャ206、対物レンズ207、偏向器208、検出器218が配置されている。CPU310には、インターフェース回路320、メモリ312、A/D変換器328が接続されている。インターフェース回路320は、偏向器208に接続されている。また、A/D変換器328は、増幅器326に接続され、増幅器326は、検出器218に接続されている。図1では、本実施の形態1を説明する上で必要な構成部分以外については記載を省略している。描画装置100にとって、通常、必要なその他の構成が含まれることは言うまでもない。また、図2では、コンピュータの一例となるCPU310で、計測部314、測定部316といった各機能の処理を実行するように記載しているがこれに限るものではなく、電気的な回路によるハードウェアとソフトウェアとの組み合わせにより実施させても構わない。或いは、かかるハードウェアとファームウェアとの組み合わせでも構わない。或いは、CPU310の代わりに電気的な回路によるハードウェアで構成しても構わない。
【0020】
電子銃201から出た荷電粒子ビームの一例となる電子ビーム200は、照明レンズ202により矩形例えば長方形の穴を持つ第1のアパーチャ203全体を照明する。ここで、電子ビーム200をまず矩形例えば長方形に成形する。そして、第1のアパーチャ203を通過した第1のアパーチャ像の電子ビーム200は、投影レンズ204により第2のアパーチャ206上に投影される。かかる第2のアパーチャ206上での第1のアパーチャ像の位置は、偏向器205によって制御され、ビーム形状と寸法を変化させることができる。そして、第2のアパーチャ206を通過した第2のアパーチャ像の電子ビーム200は、対物レンズ207により焦点を合わせ、偏向器208により偏向され、移動可能に配置されたXYステージ105上のシリコン(Si)基板20上の金属マークとなるドットマーク10上を走査するように照射される。偏向器208は、インターフェース回路320を介して制御コンピュータ310によって制御される。制御コンピュータ310により演算された結果等の出入力データは、メモリ312に格納される。
【0021】
かかる描画装置100を用いて、描画装置100で照射される電子ビームのビーム強度分布ならびにビーム分解能を測定する。以下、ビーム強度分布ならびにビーム分解能を測定する手法について説明する。また、以下の各工程における各動作及び演算処理は、制御コンピュータ310によって制御される。
【0022】
まず、試料の一例となるドットマーク10が表面に形成されたSi基板20をXYステージ105上に配置する。そして、電子ビーム200がSi基板20を照射するようにXYステージ105を移動させて調整しておく。Si基板20は、装置外部からXYステージ105上に搬送されても構わないし、予め、XYステージ105上に固定されていてもよい。予め、XYステージ105上に固定しておく場合には、本来の描画されるマスクブランクス等の配置の邪魔にならない位置に固定して配置されるとよい。
【0023】
S(ステップ)102において、走査工程として、Si基板20上に形成されたドットパターンの一例となる例えば四角形のドットマーク10を用いて、ドットマーク10の幅寸法より小さいビームサイズの電子ビーム200を走査してドットマーク10の手前からドットマーク10上へと移動するように照射しながら走査する。
【0024】
図3は、実施の形態1における電子ビームの走査の仕方を説明するための概念図である。
Si基板20には、金属マークの一例となる例えば四角形のドットマーク10が形成されている。そして、ドットマーク10の外周のあるエッジと直交する方向から成形された電子ビーム200をドットマーク10に向かって走査する。
【0025】
ドットマーク10は、Si基板20の材料として使用されるSiよりも反射率の大きい材料を用いる。例えば、タングステン(W)、タンタル(Ta)等の高融点金属や、金(Au)、白金(Pt)等の重金属を用いると好適である。ドットマーク10は、半導体製造プロセスにて製造することができるので、機械加工するナイフエッジ部品に比べ、パターン形状を精度よく形成することができる。その結果、エッジの直線性とラフネス等を機械加工するナイフエッジ部品に比べ向上させることができる。そして、半導体製造プロセスにて製造することができるので、ナイフエッジに比べ大量に安く生産することができる。ここでは、ドットマーク10は、成形された電子ビーム200に対して十分大きなマークを用いると好適である。
【0026】
S104において、反射電子計測工程として、電子ビーム200の照射によりドットマーク10から反射した反射電子を計測する。
図4は、実施の形態1における反射電子を計測する様子を説明するための概念図である。
図3に示すような例えば四角形に成形された電子ビーム200をドットマーク10に向かって走査していき、図4に示すように、電子ビーム200が断面が例えば長方形のドットマーク10に当たると電子ビーム200の照射によりドットマーク10から反射電子12が飛び出す。そして、飛び出した反射電子12を検出器218で検出する。検出器218で検出された反射信号は、増幅器326で増幅され、A/D変換器328でデジタル情報に変換され、制御コンピュータ310に送られる。そして、計測部314が、入力した反射信号を微分演算し、その絶対値をとることで、ビーム強度分布波形のデータが計測される。
【0027】
しかしながら、上述したように、得られた微分波形は強度分布誤差関数が示す波形とは大きくずれが生じてしまう。これは、ドットマーク10の形状が、実際には図4に示すような長方形に精度良くは形成されていないこともあるだろうし、ドットマーク10による電子ビーム200の散乱も影響していると考えられる。ここで、発明者は、得られた波形に合った近似式を得るためには、ドットマーク10の形状を考慮することで解決可能であることを見出した。
【0028】
S108において、ビーム分解能測定工程として、測定部316は、以下に示すマーク形状関数と強度分布誤差関数とを用いて定義された近似式を用いて、測定された反射信号に基づく波形をフィッティングして、反射信号に基づく波形からビーム分解能を測定する。
上述したように、得られた波形に合った近似式を得るためには、ドットマーク10の形状を考慮することで解決可能である。すなわち、近似式は、以下の式1で示すようにドットマーク10の形状関数と強度分布誤差関数とのコンボリュートした関数で定義することにより、計測して得られた波形に合った近似関数R(x)を得ることができる。
【0029】
【数1】

【0030】
ここでは、マーク形状関数をP(x)、強度分布誤差関数をF(x)とする。また、強度分布誤差関数F(x)は、ビーム分解能をσとする。ビーム幅を2Wとしたとき、以下の式2で示すことができる。
【0031】
【数2】

【0032】
図5は、実施の形態1におけるマーク形状断面の一例を示す図である。
ここで、発明者は、マーク形状関数P(x)に定義するマーク形状として、図5に示すように、電子ビーム200の走査方向前後の各側面がそれぞれ末広がりに傾斜したマークの形状を用いると好適であることを見出した。すなわち、図5に示すP1とP2で結ぶ側面のラインとP5とP6で結ぶ側面のラインとが上面から下面に向かって広がるように傾斜する形状を用いる。そして、上面の端部となるP3とP2で結ぶラインが側面に向かって傾斜したマークの形状を用いると好適であることを見出した。すなわち、図5に示すP3からP2に向かってP1とP2で結ぶ側面に向かって下向きに傾斜する形状を用いる。同様に、上面の端部となるP4とP5で結ぶラインが側面に向かって傾斜したマークの形状を用いると好適であることを見出した。すなわち、図5に示すP4からP5に向かってP5とP6で結ぶ側面に向かって下向きに傾斜する形状を用いる。このようなマーク形状を表すマーク形状関数P(x)を以下の式3に示す。各位置x〜xの2点間の関数は、それぞれパラメータa〜a、b〜bで定義され、このパラメータを合わせ込む。
【0033】
【数3】

【0034】
このように、側面のラインを傾斜させ、上面についても端部を傾斜させたマーク形状関数P(x)と微分した強度分布誤差関数F(x)の積の積分関数を近似関数R(x)として、測定部316で測定された波形をフィッティングすると次のようになった。フィッティング演算は最小二乗法を用いた。各位置x〜xの2点間の関数は、マーク形状関数P(x)では、パラメータa〜a、b〜bで定義され、強度分布誤差関数F(x)では、パラメータσ、wで定義され、これらのパラメータを合わせ込む。
図6は、実施の形態1におけるビーム強度分布波形と近似式による波形の一例を示す図である。
図6に示すように、上述した近似関数R(x)(近似式1)で測定された波形をフィッティングした結果、測定値と近似式とを精度よく合わせることができた。そして、フィッティングされた状態での強度分布誤差関数F(x)のパラメータとなるビーム分解能σの値は、マーク形状の依存性が排除された描画装置100単体での電子ビーム200が持つ本来のビーム分解能σとなる。よって、かかる近似関数R(x)と強度分布誤差関数F(x)とを用いて定義された近似式でフィッティングすることで、高精度なビーム分解能σを測定することができる。
【0035】
図7は、実施の形態1におけるマーク形状断面の他の一例を示す図である。
発明者は、マーク形状関数P(x)に定義するマーク形状として、図7に示すように、上面について、上面が曲面のマークの形状を用いると好適であることを見出した。すなわち、Q2とQ3で結ぶ上面のラインが曲線となるようマークの形状を用いる。そして、側面のラインについては、上述したように、電子ビーム200の走査方向前後の各側面がそれぞれ末広がりに傾斜したマークの形状を用いると好適である点は同様である。すなわち、図5に示すP1とP2で結ぶ側面のラインとP3とP4で結ぶ側面のラインとが上面から下面に向かって広がるように傾斜する形状を用いる。このようなマーク形状を表すマーク形状関数P(x)を以下の式4に示す。
【0036】
【数4】

【0037】
このように、側面のラインを傾斜させ、上面についても曲面に形成させたマーク形状関数P(x)と微分した強度分布誤差関数F(x)の積の積分関数を近似関数R(x)として、測定部316で測定された波形をフィッティングすると次のようになった。フィッティングは最小二乗法を用いた。各位置x〜xの2点間の関数は、マーク形状関数P(x)では、パラメータa〜a、b〜b、dで定義され、強度分布誤差関数F(x)では、パラメータσ、wで定義され、これらのパラメータを合わせ込む。
図8は、実施の形態1におけるビーム強度分布波形と近似式による波形の一例を示す図である。
図8に示すように、上述した近似関数R(x)(近似式2)で測定された波形をフィッティングした結果、測定値と近似式とを精度よく合わせることができた。よって、フィッティングされた状態での強度分布誤差関数F(x)のパラメータとなるビーム分解能σの値は、マーク形状の依存性が排除された描画装置100単体での電子ビーム200が持つ本来のビーム分解能σとなる。したがって、かかる近似関数R(x)と強度分布誤差関数F(x)とを用いて定義された近似式でフィッティングすることで、高精度なビーム分解能σを測定することができる。
【0038】
実施の形態2.
実施の形態1では、電子ビーム200をドットマーク10に向かって走査していき、図4に示すように、電子ビーム200がドットマーク10に当たって飛び出した反射電子12を検出器218で検出していたが、測定方法はこれに限るものではない。実施の形態2では、電子ビーム200をドットマーク10に向かって走査していき、電子ビーム200がドットマーク10に当たらずに透過した電子を検出器で検出してもよい。
【0039】
図9は、実施の形態2における描画装置の構成を示す概念図である。
図9において、荷電粒子ビーム描画装置の一例となる描画装置100は、描画部150を構成する電子鏡筒102、XYステージ105、電子銃201(照射部)、照明レンズ202、第1のアパーチャ203、投影レンズ204、偏向器205、第2のアパーチャ206、対物レンズ207、偏向器208を備え、制御部160として、制御コンピュータ(CPU)310、インターフェース回路320、メモリ312、増幅器326、A/D変換器328を備えている。
【0040】
そして、電子鏡筒102内には、電子銃201、照明レンズ202、第1のアパーチャ203、投影レンズ204、偏向器205、第2のアパーチャ206、対物レンズ207、偏向器208が配置されている。そして、XYステージ105には、検出器214(測定部)が組み込まれ、配置されている。図9では、本実施の形態2を説明する上で必要な構成部分以外については記載を省略している。描画装置100にとって、通常、必要なその他の構成が含まれることは言うまでもない。また、図9では、コンピュータの一例となるCPU310で、計測部314、測定部316といった各機能の処理を実行するように記載しているがこれに限るものではなく、実施の形態1と同様、電気的な回路によるハードウェアとソフトウェアとの組み合わせにより実施させても構わない。或いは、かかるハードウェアとファームウェアとの組み合わせでも構わない。或いは、CPU310の代わりに電気的な回路によるハードウェアで構成しても構わない。
【0041】
図9では、検出器218がXYステージ105に組み込まれた検出器214に代わった点、Si基板20がSi基板22に代わった点以外は、図1と同様である。よって、実施の形態1と同様である部分については説明を省略する。
【0042】
まず、試料の一例となるドットマーク10が表面に形成されたSi基板22をXYステージ105上の特に検出器214上に配置する。そして、電子ビーム200がSi基板22を照射するようにXYステージ105を移動させて調整しておく。Si基板22は、装置外部からXYステージ105上に搬送されても構わないし、予め、XYステージ105上に固定されていてもよい。Si基板22を予め、XYステージ105上に固定しておく場合には、検出器214を本来の描画されるマスクブランクス等の配置の邪魔にならない位置に固定して配置し、その上部に配置されるとよい。
【0043】
実施の形態2では、透過型の検出手法であるため、ドットマーク10の下地となるSi基板22のSiの厚さは、1μm以下になるようにすると好適である。また、Si基板22は、薄膜が残ったメンブレン型でも、ドットマーク10との境界部分が貫通したステンシル型でも構わない。
【0044】
そして、図3に示したような例えば四角形に成形された電子ビーム200をドットマーク10に向かって走査していき、電子ビーム200がドットマーク10に当たる直前まで透過した電子ビーム200を検出器214で検出する。検出器214で検出された信号は、増幅器326で増幅され、A/D変換器328でデジタル情報に変換され、制御コンピュータ310に送られる。実施の形態2では、ドットマーク10に当たっている間は、電子ビーム200を検出器214で検出できないので、実施の形態1と信号検出の有無を逆にして以降演算すればよい。
【0045】
実施の形態3.
図10は、実施の形態3における電子顕微鏡の構成を示す概念図である。
図10において、荷電粒子ビーム装置の一例となる電子顕微鏡(SEM)500は、光学系550を構成する電子鏡筒522、XYステージ525、電子銃501(照射部)、照明レンズ502、投影レンズ504、偏向器505、対物レンズ507、検出器518を備え、制御部160として、制御コンピュータ(CPU)510、メモリ512、増幅器526、A/D変換器528、モニタ524を備えている。
【0046】
そして、電子鏡筒522内には、電子銃501、照明レンズ502、投影レンズ504、偏向器505、対物レンズ507、検出器518が配置されている。そして、XYステージ525上には、実施の形態1と同様、ドットマーク10が配置されたSi基板20を載置している。図10では、本実施の形態3を説明する上で必要な構成部分以外については記載を省略している。電子顕微鏡500にとって、通常、必要なその他の構成が含まれることは言うまでもない。また、図10では、コンピュータの一例となるCPU310で、計測部514、測定部516といった各機能の処理を実行するように記載しているがこれに限るものではなく、実施の形態1と同様、電気的な回路によるハードウェアとソフトウェアとの組み合わせにより実施させても構わない。或いは、かかるハードウェアとファームウェアとの組み合わせでも構わない。或いは、CPU310の代わりに電気的な回路によるハードウェアで構成しても構わない。
【0047】
電子銃501から出た荷電粒子ビームの一例となる電子ビーム200は、照明レンズ502や投影レンズ504により下流側に投影される。そして、偏向器505によって位置が制御され、対物レンズ507により焦点を合わせ、移動可能に配置されたXYステージ525上のSi基板20上の金属マークとなるドットマーク10上を走査するように照射される。制御コンピュータ510により演算された結果等の出入力データは、メモリ512に格納される。
【0048】
電子ビーム200がドットマーク10に当たると電子ビーム200の照射によりドットマーク10から反射電子が飛び出す。そして、飛び出した反射電子を検出器518で検出する。検出器518で検出された信号は、増幅器526で増幅され、A/D変換器528でデジタル情報に変換され、制御コンピュータ510に送られる。そして、かかる信号は画像として、モニタ524に表示される。ここでは、A/D変換器528での検出結果から上述した実施の形態と同様、電子ビーム200のビーム強度Iを演算することで、電子ビームのビーム強度分布やかかるビーム強度分布からビーム分解能を得ることができる。
【0049】
以上のように、上述した実施の形態のような描画装置に限らず、本実施の形態のような電子顕微鏡においても、同様に、本手法を取り入れることができる。
【0050】
以上、具体例を参照しつつ実施の形態について説明した。しかし、本発明は、これらの具体例に限定されるものではない。例えば、上述した実施の形態では、ビーム分解能を誤差関数のパラメータである値σと定義しているが、ビーム分解能を最大ビーム強度の10%となる位置xから90%となる位置xまでの幅(長さ)で定義する場合、ビーム分解能(x−x)は、1.8σと表すこともできる。よって、誤差関数のパラメータである値σ以外でビーム分解能を定義する場合には、値σに適当な係数を乗じて見積もることができる。
【0051】
また、マーク形状関数P(x)に用いるマーク形状は、上述した形状に限るものではなく、その他、種々選択しても構わない。上述したように測定して得られた波形をマーク形状関数がコンボリュートされた関数で近似するように構成するものは本発明に含まれる。
【0052】
また、装置構成や制御手法等、本発明の説明に直接必要しない部分等については記載を省略したが、必要とされる装置構成や制御手法を適宜選択して用いることができる。例えば、描画装置100を制御する制御部構成については、記載を省略したが、必要とされる制御部構成を適宜選択して用いることは言うまでもない。
【0053】
その他、本発明の要素を具備し、当業者が適宜設計変更しうる全ての荷電粒子ビームのビーム強度分布測定方法及び荷電粒子ビームのビーム分解能測定方法及び荷電粒子ビーム描画方法及び荷電粒子ビーム描画装置や電子顕微鏡を含む荷電粒子ビーム装置は、本発明の範囲に包含される。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】実施の形態1における電子ビームのビーム分解能測定方法の要部工程の一例を示すフローチャート図である。
【図2】実施の形態1における描画装置の構成を示す概念図である。
【図3】実施の形態1における電子ビームの走査の仕方を説明するための概念図である。
【図4】実施の形態1における反射電子を計測する様子を説明するための概念図である。
【図5】実施の形態1におけるマーク形状断面の一例を示す図である。
【図6】実施の形態1におけるビーム強度分布波形と近似式による波形の一例を示す図である。
【図7】実施の形態1におけるマーク形状断面の他の一例を示す図である。
【図8】実施の形態1におけるビーム強度分布波形と近似式による波形の一例を示す図である。
【図9】実施の形態2における描画装置の構成を示す概念図である。
【図10】実施の形態3における電子顕微鏡の構成を示す概念図である。
【図11】従来の可変成形型電子線描画装置の動作を説明するための概念図である。
【図12】ビームの強度分布の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0055】
10 ドットマーク
12 反射電子
20,22 Si基板
100 描画装置
102,522 電子鏡筒
105,525 XYステージ
150 描画部
160,560 制御部
200 電子ビーム
201,501 電子銃
202,502 照明レンズ
203,410 第1のアパーチャ
204,504 投影レンズ
205,208,505 偏向器
206,420 第2のアパーチャ
207,507 対物レンズ
214,218,518 検出器
310,510 制御コンピュータ
312,512 メモリ
314,514 計測部
316,516 測定部
320 インターフェース回路
326,526 増幅器
328,528 A/D変換器
330 電子線
340 試料
411 開口
421 可変成形開口
430 荷電粒子ソース
500 電子顕微鏡
524 モニタ
550 光学系

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マーク上を荷電粒子ビームで照射しながら走査する走査工程と、
前記荷電粒子ビームの照射による前記マークからの反射信号を計測する計測工程と、
所定のマーク形状関数と誤差関数とを用いて定義された近似式を用いて前記反射信号に基づく波形をフィッティングして、前記反射信号に基づく波形からビーム分解能を測定するビーム分解能測定工程と、
を備えたことを特徴とする荷電粒子ビームのビーム分解能測定方法。
【請求項2】
前記所定のマーク形状関数に定義されるマークの形状として、前記荷電粒子ビームの走査方向前後の各側面がそれぞれ末広がりに傾斜したマークの形状を用いることを特徴とする請求項1記載の荷電粒子ビームのビーム分解能測定方法。
【請求項3】
前記所定のマーク形状関数に定義されるマークの形状として、上面の端部が前記側面に向かって傾斜したマークの形状を用いることを特徴とする請求項2記載の荷電粒子ビームのビーム分解能測定方法。
【請求項4】
前記所定のマーク形状関数に定義されるマークの形状として、上面が曲面のマークの形状を用いることを特徴とする請求項2記載の荷電粒子ビームのビーム分解能測定方法。
【請求項5】
荷電粒子ビームを照射する照射部と、
マーク上を荷電粒子ビームで照射しながら走査することによって得られる前記マークからの反射信号を計測する計測部と、
所定のマーク形状関数と誤差関数とを用いて定義された近似式を用いて前記反射信号に基づいて得られる波形をフィッティングして、前記反射信号に基づいて得られる波形から前記誤差関数のパラメータとなるビーム分解能を測定する測定部と、
を備えたことを特徴とする荷電粒子ビーム装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate


【公開番号】特開2008−21435(P2008−21435A)
【公開日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−190128(P2006−190128)
【出願日】平成18年7月11日(2006.7.11)
【出願人】(504162958)株式会社ニューフレアテクノロジー (669)
【Fターム(参考)】