説明

荷電粒子ビーム・システムにおいて大電流モードと小電流モードとを高速に切り替える方法

【課題】荷電粒子システムにおいて異なるビーム電流を有する動作モードを高速に切り替える方法を提供する。
【解決手段】実施しようとする加工に応じてFIBカラム内の電極電圧の設定を行い(2608,2624)、小径のビーム画定絞り(BDA)を選択し(2610、2626)、小電流で整列マークを画像化し(2612,2628)、前記マークの位置を決定する。次いで、ミリング用のBDA(大または中間の径)を選択し(2614、2630)、前記位置情報に基づいて大または中の電流でミリングを行う(2616,2632)。前記画像化からミリングへの切換えの際には、BDAだけを変更し、FIBカラム内の電極電圧は変更せず、ビームの位置変更もしない。これにより、電源設定時間に起因する遅延を回避する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に荷電粒子ビーム・システムに関し、具体的には、異なるビーム電流を有する動作モード間の高速切替えに関する。
【背景技術】
【0002】
電子顕微鏡、集束イオン・ビーム(FIB)システムなどの荷電粒子ビーム・システムでは一般に、画像化し、かつ/または処理するターゲットの表面に荷電粒子ビームを集束させるためにカラムが使用される。FIBカラムでは、イオン源(一般に液体金属イオン源すなわちLMIS)が初期イオン・ビームを発生させ、発生した初期イオン・ビームは次いで「銃」に入り、銃は一般に、これらのイオンを集束させて概ね平行なビームとし、この概ね平行なビームはカラムの本体部分に入る。このカラムでは、このビームをブランキングし(すなわちオンおよびオフにし)、偏向させ(ターゲット表面のさまざまな位置に移動させ)、ターゲットの表面に集束させることができる。いくつかのケースでは、このイオン・ビームを使用して、ターゲットの表面から、制御されたパターンに従って、材料をミリング(milling)する(スパッタリングする)。これらの用途ではミリング速度がビーム電流にほぼ比例し、したがって、工程スループットを向上させるためには一般に、ビーム電流が大きいことが好ましい。他のケースでは、このイオン・ビームを使用してターゲットを画像化する。この場合には、イオン・ビームの衝突が2次電子の放出を引き起こし、この2次電子を検出、使用して画像を形成することができる。大まかに言って、これらの用途では、ビームの直径によって画像分解能が決まる。より小さいビーム電流を有するビームは一般に、より大きな電流を有するビームよりも小さな直径に集束させることができ、より小さなビーム電流を有するビームは、ターゲットに与える損傷も小さい。全てのイオンが所望のビーム直径内に均一に分布しているのが理想的なビームであろうが、実際には、ビーム電流の分布は多少なりとも釣鐘形であり、ビームの中心から離れるにつれて漸減する。集束イオン・ビームが長い「尾(tail)」を有する場合には、画像コントラストが低下することがある。
【0003】
いくつかの用途は、画像化とミリングの両方を必要とする。具体的には、ターゲット上の既存のフィーチャに対して、ミリングされたパターンが正確に配置されている必要があるときには、最初に、より小電流のFIBを用いてターゲットを画像化し、次いで、より大電流の(一般により大きな直径の)FIBに切り替えて、ミリングを実行する必要がある。このような画像化/ミリング工程の1つの重要な例が、半導体デバイス、低温凍結生体試料などのさまざまなタイプの試料の薄い「ラメラ」(lamella)の作製である。半導体デバイスの故障解析の場合には、通常は解析する欠陥のあるデバイス(以後、欠陥デバイス)を含む集積回路内の特定の関心領域(region of interest)(RoI)を、両側をFIBミリングすることによって露出させ、欠陥デバイスを含む残りの材料の薄い切片(ラメラ)を残す。このラメラは、原則として原子分解能が利用可能な高電圧透過型電子顕微鏡(TEM)または走査透過型電子顕微鏡(STEM)で十分に使用できる薄さを有する。ラメラの厚さは数十ナノメートルでしかなく、観察している欠陥は数ナノメートル程度であるため、ラメラを作製するためのミリングは極めて正確である。
【0004】
ラメラの作製時には、高速ミリングに適した大電流の大径のビームの使用と、微細なミリングまたは画像化に適したより小電流のより小径のビームの使用とを切り替える必要がある。この切替えは一般に、ビームが通過するビーム画定絞り(beam−defining aperture)(BDA)を変更することによって実施される。BDAは一般に、金属ストリップ(strip)の穴であり、その穴を通過した荷電粒子だけがビームを形成することができる。金属ストリップには一般にいくつかのBDA、すなわち穴があり、絞りの切替えは一般に、異なる直径を有する穴がビームの経路上に配置されるようにストリップを動かすことを含む。絞りストリップの機械的な移動の正確さは一般にせいぜい数ミクロンであり、そのため、絞りを変更した後にはビームを再整列させる必要があると考えられている。
【0005】
絞りを変更すると、ビームを再整列させることが必要となるだけでなく、レンズの調整も必要となる。大電流の大径のビームを形成するのに必要な光学的条件と、より小電流のより小径のビームを形成するのに必要な光学的条件は同じではない。図28は、試料上のビームのスポット・サイズの対数2810を、ビーム収束角の対数2812に対して示したグラフである。収束角は、ビームを形成するイオンの、ターゲット位置における広がりの角度である。ビーム収束角は、ビーム経路上の絞りによって決定される。より大きな絞りは、より広い角度から荷電粒子を受け入れる。
【0006】
絞りのサイズは、ビームのいくつかの特性に影響を及ぼす。より大きな絞りは、光軸からより離れた荷電粒子を通過させ、それにより、ビーム内の球面収差(収束角の3乗に比例する)を増大させ、直線2802に示されているように、ビーム・スポット・サイズ、すなわち試料位置におけるビームの直径を増大させる。より大きな絞りは、直線2804によって示されているように、(収束角に比例する)色収差も増大させる。
【0007】
多くの荷電粒子システムは、源の縮小された像を形成することによって試料上にスポットを形成し、スポット・サイズは、直線2806によって示されているように、倍率の低下(縮小の増大)とともに小さくなる。光学システムの倍率は、収束角の増大とともに低下する。したがって、収束角の増大は、収差および源の縮小に影響を与え、収差は、収束の増大とともにスポット・サイズを増大させる傾向を有し、源の縮小は、収束角の増大とともにスポット・サイズを小さくする傾向を有する。
【0008】
図28は、収束角が変化したときの、球面収差、色収差および源縮小のスポット・サイズに対する合併効果2808を示す。図28のグラフのビーム設定では、曲線2808の最下点における最も小さなスポット・サイズAが、ビーム収束角Bで生成される。より大きな絞りまたはより小さな絞りを使用して、収束角を大きくし、または小さくした場合、スポット・サイズは大きくなり、曲線2808の最下点から離れることを、図28は示している。より理想的なスポット・サイズに戻すために、FIBのユーザは、絞りを変更するときにレンズ電圧を変更して、倍率を変化させ、ビームのスポット・サイズを、変更後の曲線上の新たな最下点に戻すであろう。
【0009】
したがって、先行技術の大電流モードと小電流モードの切替えでは、これらの2つのモードのそれぞれのモードに対してカラムのイオン光学部品を別々に最適化するために、ビーム画定絞りを切り替える必要があるだけでなく、ビームを再整列させ、多数のレンズ電圧を変更する必要もある。残念なことに、いくつかのカラム電圧は、大幅に(>100V)変化させる必要があることがあるため、モードを変更するとき、例えばミリングと画像化とを切り替えるときには、カラムが機能する準備が整うまでに、長い電源整定時間(power supply settling time)が必要となることがある。したがって、薄いラメラを作製する際のスループットを向上させるためには、ミリング・モードと画像化モードとを切り替える切替え時間を短縮することが望ましいであろう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、荷電粒子ビーム・システムにおいて大電流モードと小電流モードとをより高速に切り替えることにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
いくつかの実施形態において、本発明は、大電流モードと小電流モードとの切替えの際にビーム画定絞りを変更するときに、かなりの整定時間を要する十分に大きなレンズ電圧の変更を回避することによって、処理速度を向上させる。いくつかの実施形態において、本発明は、ビーム画定絞りを変更した後のビームの再配置を回避する。
【0012】
例えば、電源電圧を変化させず、初期設定のビーム位置を変更することなしに、大電流集束イオン・ビーム・ミリング・モードおよび小電流集束イオン・ビーム画像化モードから変更することができる。透過型電子顕微鏡で観察するためのラメラの作製では、集束イオン・ビームの複数のビーム電流レベルを使用することができ、それぞれのラメラを作製するのに要する時間を短縮することが望ましいため、本発明は、そのようなラメラを作製するのに特に有用である。
【0013】
以上では、以下の本発明の詳細な説明をより十分に理解できるように、本発明の特徴および技術上の利点をかなり広く概説した。以下では、本発明の追加の特徴および利点を説明する。開示される着想および特定の実施形態を、本発明の同じ目的を達成するために他の構造を変更しまたは設計するベースとして容易に利用することができることを当業者は理解すべきである。さらに、このような等価の構造は、添付の特許請求の範囲に記載された本発明の趣旨および範囲を逸脱しないことを当業者は理解すべきである。
【0014】
次に、本発明および本発明の利点のより完全な理解のため、添付図面に関して書かれた以下の説明を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】キャッシュ・メモリおよび欠陥セルを含む集積回路の概略図である。
【図2】欠陥セルを含む図1のキャッシュ・メモリの詳細図である。
【図3A】図2のキャッシュ・メモリの欠陥セルの詳細上面図である。
【図3B】図3Aの欠陥セルの詳細な等角投影図である。
【図4】先行技術の場合のように厚い保護付着を形成する、図3Aおよび3Bの欠陥セル位置におけるFIB支援付着工程の等角投影概略図である。
【図5】図4に示した工程による厚い付着の上面X線概略図である。
【図6】図4で形成した先行技術の厚い付着に2つの基準マーク(fiducial mark)を形成するFIBミリング工程の等角投影概略図である。
【図7】本発明のいくつかの実施形態の場合のように薄い保護付着を形成する、図3Aの欠陥セル位置におけるFIB支援付着工程の等角投影概略図である。
【図8】図7で形成した本発明の一実施形態のための薄い付着に2つの基準マークを形成するFIBミリング工程の等角投影概略図である。
【図9】図7で形成した本発明の一実施形態のための薄い付着にFIBによってミリングした基準マークのFIB画像化工程を示す図である。
【図10】FIBボックス・ミリング(box milling)工程の開始を示す図である。
【図11】FIBボックス・ミリング工程の完了を示す図である。
【図12】FIBクリーニング工程を示す図である。
【図13】本発明の一実施形態の画像化およびミリング工程を実現することができる例示的なFIBカラムの側断面図である。
【図14】本発明の一実施形態のバルク・ミリング工程Aおよび粗画像化工程Bのイオン軌道の側面図である。
【図15】先行技術のバルク・ミリング工程Aおよび微細画像化工程Dのイオン軌道の側面図である。
【図16】本発明の一実施形態の微細ミリング工程Dおよび微細画像化工程Eのイオン軌道の側面図である。
【図17】先行技術の微細ミリング工程Dおよび微細画像化工程Fのイオン軌道の側面図である。
【図18】6つの動作モードA〜Fについて、放出器先端(tip)におけるビーム半角を、ビーム電流に対して示したグラフである。
【図19】6つの動作モードA〜Fについて、ビーム画定絞り(BDA)の直径を、ビーム電流に対して示したグラフである。
【図20】6つの動作モードA〜Fについて、銃レンズの集束電圧を、ビーム電流に対して示したグラフである。
【図21】6つの動作モードA〜Fについて、主レンズの集束電圧を、ビーム電流に対して示したグラフである。
【図22】6つの動作モードA〜Fについて、半値全幅(FWHM)ビーム直径を、ビーム電流に対して示したグラフである。
【図23】6つの動作モードA〜Fについて、全ビーム電流の50%を含むビーム直径(d50)を、ビーム電流に対して示したグラフである。
【図24】6つの動作モードA〜Fについて、源−ターゲット倍率を、ビーム電流に対して示したグラフである。
【図25】6つの動作モードA〜Fについて、ビーム画定絞り(BDA)の不整列感度(misalignment sensitivity)を、ビーム電流に対して示したグラフである。
【図26】本発明の一実施形態の2ステップ画像化およびミリング工程の流れ図である。
【図27】図26の画像化およびFIBミリング工程を実行する前に、関心領域(RoI)を集束イオン・ビームの下に配置する、「ビット・ウォーキング工程(bit walking process)」の流れ図である。
【図28】試料上のビームのスポット・サイズの対数を、ビーム収束角の対数に対して示したグラフである。
【図29】理想的なシステム内における異なる絞り位置のビーム位置に対する影響を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
荷電粒子ビームの大電流と小電流をより高速に切り替えることによって、処理動作と画像化動作の間の交互使用を容易にすることができ、したがって、ターゲットをより高いスループットで正確に処理することを可能にすることができる。
【0017】
このような工程の1つの用途は、TEMまたはSTEMでの高空間分解能画像化を可能にする試料からのラメラの製造である。具体的には、ムーアの法則に従ってよりいっそう小さなデバイス・ジオメトリを求めている半導体産業における最近の進歩は、デバイス故障解析に対する走査型電子顕微鏡(SEM)の使用から、より高分解能のTEMおよびSTEMの使用への切替えを必要としている。そのため、TEMまたはSTEM解析用に半導体デバイスを準備する手段を改良することが必要になっている。これは、しばしばデバイス故障のために解析することとなったデバイスを含む半導体デバイスの関心領域(RoI)の両側を下方へ切削するミリング工程によりFIBを使用して製造するラメラの作製を含む。
【0018】
集束イオン・ビーム・システムは一般に、イオン源(通常は液体金属イオン源、すなわちLMIS)から放出されたイオンをターゲットの表面に集束させるカラムを備える。集束カラムの制御は、いくつかの電極電圧を設定し、それによってイオン・ビームを集束させ、オン/オフし、集束させたイオン・ビームを偏向させてターゲットへ導く、レンズ、ブランカおよび偏向器の強度を制御することを含む。さらに、ターゲットに到達する電流の量は一般に、ビーム画定絞り(BDA)を(機械的にまたは電気的に)選択することによって制御される。先行技術では、カラムが一般に、最適なBDAを選択し、さまざまな電圧を変化させ、ビームを再配置することによって、ミリング工程および画像化工程に対して別々に最適化される。ミリングまたは画像化を実行する前にレンズ電圧を安定させる必要があるため、この最適化工程にはかなりの時間がかかることがある。BDA選択工程にかかる時間はしばしば、電源設定時間よりも短い。
【0019】
その上、BDAの位置が少しずれても、ビーム位置が同じだけずれるわけではないことを本出願の出願人は理解した。これは、理論上、BDAの位置がずれても、レンズは依然として、同じ点に荷電粒子を集束させる傾向を有するためである。図29は、基板2916上にビームを集束させている荷電粒子カラムの3つの図2900である。図(A)では、軸2902を有するカラム(図示せず)が、オンアクシス(on−axis)の荷電粒子ビーム2904を生成し、このオンアクシスの荷電粒子ビーム2904が、オンアクシスの(整列した)絞り2906に照射し、絞りを通過したオンアクシスのビーム2908を生成している。ビーム2908は、集束ビーム2912を形成するレンズ2910によって、ターゲット2916の表面の位置2914に集束している。図(A)では、絞り2906の中心がカラム軸2902上にあるため、絞り2906の照射は軸2902の両側で対称である。
【0020】
図29の図(B)には、オフセット矢印2927によって示されているオフアクシス(off−axis)の(整列していない)絞り2926を有する図(A)のカラムと同じカラムが示されている。絞り2926は、図(A)のビームと同じビーム2904によって照射されて、カラム軸2902の左側へずれた、絞りを通過したオフアクシスのビーム2928を生成している。カラム軸2902に対する絞り2926のこの不整列の結果、ビーム2928は、図(A)の設定と同じ設定を有するレンズ2910にオフアクシスで入射している。ビーム2928がオフアクシスである結果、集束ビーム2932は、図示されているように、ターゲット2916の表面に対して傾いている。レンズ2910に収差がない場合、位置2934は、図(A)の位置2914と同じである。レンズ2910の収差のレベルが一般的な荷電粒子カラムのそれであり、絞り2926の不整列が一般的な5から10μmの範囲にあるとき、位置2914に対する位置2934の変位は一般に数nmを超えない可能性があり、この値は、多くのビーム処理用途に対して許容される位置の誤差である。
【0021】
図29の図(C)は、図(B)の変位ベクトル2927とは反対向きの変位ベクトル2947を有する整列していない絞り2946を示す。図(B)と比較すると、同じ要件が全て図(C)にもあてはまる。図(B)の集束ビーム2832とは反対の方向に集束ビーム2952が傾くような態様で、オフアクシスのビーム2948がレンズ2910を照射している。絞り2946の不整列が一般的な5から10μmの範囲にあると仮定すると、位置2954も、位置2914から数nm以内にあるはずである。予測されるこれらのビームのずれは、多くの用途に対して無視できることを、本出願の出願人は確かめた。
【0022】
本発明のいくつかの実施形態は、FIBミリングとFIB画像化の切替えの際にBDAだけを変更し、電源電圧は一切変更せず、ビームの再整列も実施しないことによって、電源設定時間に起因する遅延を回避する。本発明のさまざまな実施形態のこの簡略化された方法の利点および欠点については後に論じる。より低速の先行技術の十分に最適化された工程と、本発明のいくつかの実施形態のより高速な最適化されていない工程の両方について、一般的なFIBカラムのイオン光学性能の特徴を詳細に説明する。ラメラ作製手順の全体的な説明とともに、2ステップFIBミリング/画像化法の流れ図を提供する。
【0023】
本発明のいくつかの実施形態は、集束イオン・ビームを使用する集束イオン・ビーム(FIB)システムを使用して、ターゲットを画像化し、ミリングする。これらのシステムは一般に、液体金属イオン源(LMIS)を使用して初期イオン・ビームを形成し、この初期イオン・ビームは次いで、レンズ、ブランカ、偏向器などのFIBカラム内の静電要素によって加速され、集束し、ブランキングされ、偏向される。レンズ電圧および位置は、例えば大きな絞り、小さな絞り、またはその工程で使用される実際の複数の絞りの間の任意の場所に対して最適化することができる。最後のケースでは、ビームは、実際のどの動作に対しても最適化されず、全ての動作に対して最適化されているのに近い。最適化の選択は用途に依存する。
【0024】
ターゲット上の関心領域(RoI)の位置決定
図1は、キャッシュ・メモリ106内に欠陥セル110を含む集積回路(IC)100の概略図である。欠陥デバイス(この例ではセル)を含むICのエリアはしばしば「関心領域」(RoI)と呼ばれる。IC100の周囲には一般に多数の接続パッド102がある。IC100の別のエリアが論理回路104または入力/出力回路を含むことがある。製造業者はしばしば、RoI内の欠陥デバイス、この例ではキャッシュ・メモリのセル110を調査することによって、ICの機能不良の原因を突き止めることが必要となる。ICデバイスは、パターニングされた複数の導体層、半導体層および絶縁層を含む3次元構造であるため、この調査工程では、デバイスをミリングして、下にある層を露出させることが必要となることがあり、このミリングではしばしば、図13に示した集束イオン・ビーム(FIB)カラムによって生み出すことができる、Ga+イオン・ビームなどのFIBが使用される。先行技術では、RoIの片側をFIBでミリングし、続いて、露出したデバイス構造を走査型電子顕微鏡(SEM)で調査して、コンタクトとトランジスタ・ゲートの間の汚染、相互接続メタライゼーション層間の不完全なバイア接続など、デバイスの欠陥動作の原因を決定する。ICの寸法は、ムーアの法則の進行に伴って2、3年で約40%ずつ小さくなり続けているため、欠陥デバイスを観察するのに必要な画像化分解能を、SEMを使用して達成することはますます困難になっている。そのため、IC内のRoIを画像化する目的に関して、半導体業界は、SEMよりも空間分解能が高い透過型電子顕微鏡(TEM)にますます注目している。SEMは一般に、2次電子および後方散乱電子を使用して表面を画像化する。そのため、RoIの片側を1回切削することによってデバイス構造を可視化することができる。一方、TEMは、試料を透過した電子を画像化する。そのため、欠陥デバイスのTEM調査では、RoIの両側をミリングして、試料内を下方へ延びる一般に深さ5から15μm、厚さ100nm未満の「ラメラ」すなわち薄い切片を形成する必要がある。
【0025】
図2は、欠陥セル110を含む図1のIC100のキャッシュ・メモリ106の詳細図、ならびにメモリ106内のセルのX−Y配向に対応するX軸202およびY軸204を有する座標系を示す。本質的に全てのメモリと同様に、キャッシュ・メモリ106も多数(>105)のセルを含むことがあり、セルはそれぞれ、少数(しばしば6つ)のトランジスタを含むフリップ−フロップ回路に単一のビットを格納する。この多数のメモリ・セルは通常、X−Yアレイとして配置され、IC100の上面から見たときには一般に、これらのセルは同一である(普通は、鏡像関係にある4つの向きに配列されている)。デバイス欠陥によって表面に特徴的なパターンが生じることは通常ないため、欠陥セル110を含むRoIがメモリ106の中のどこかにある場合には、RoIの位置を決定することが難しいことがある。例えば、トランジスタ・ゲート用の不完全なコンタクト・プラグは、誘電絶縁層と互層をなすいくつかの相互接続金属層の下に完全に埋まっていると考えられる。そのため、デバイス欠陥の原因を突き止める際には通常、これらの埋込み層を露出させるために、下方へ垂直にミリングすることが必要となる。その結果、ミリング用のFIBの下にRoIを配置する唯一の方法は、図2に示し、図27の流れ図2700に概要を示す「ビット・ウォーキング」と呼ばれる先行技術の工程を実行することである。
【0026】
ビット・ウォーキングを実行するためには最初に、IC100を画像化するように、ラメラ作製システムを設定する。これは、試料表面を高い空間分解能で画像化することを可能にするためにより小さなビーム電流およびより小さなビーム直径を有するように構成された内部SEMカラムまたはFIBカラムの使用を含むことがある。画像化信号は通常、電子ビームまたはイオン・ビームが試料表面に衝突することによって生成された2次電子または後方散乱電子を使用する。この電子ビームまたはイオン・ビームは「画像化ビーム」と呼ばれることがある。図27の流れ図2700のブロック2702で、ターゲットをラメラ作製システムに挿入し、次いでロードロック内で真空排気し、続いてブロック2704でステージに載せた後、ブロック2706で、FIBカラムの下に試料を配置する。ブロック2708で、画像化用にFIBカラムを設定する。この設定は、図13に示した電極などのFIBカラムのさまざまな電極に印加するさまざまな加速電圧、集束電圧、ブランキング電圧および偏向電圧を設定することを含むことがある。放出器先端において集束イオン・ビームが形成する半角を小さな半角に制限するため、したがって全ビーム電流をより小さくするため、ブロック2710で、小径のビーム画定絞り(BDA)を、機械的にまたは電気的に選択する。可動「絞りストリップ」内にいくつかのBDAが取り付けられたシステムでは、BDAを機械的に選択することができる。このストリップは、カラム軸に対して移動して、ストリップに含まれるBDAのうちの任意の1つのBDAを、カラム軸上に、一般に5から20μm以内の正確さで配置することができる。あるいは、一組がBDAアレイの上、もう一組がBDAの下に配置された2組の絞り整列偏向器を有するシステムでは、BDAを電気的に選択することもできる(BDAアレイは直線アレイである必要は必ずしもない。BDAは任意の配置とすることができる)。この電気式選択方式では、上偏向器によってビームを移動させてオフアクシスとして、BDAのうちの1つのBDAを通過させ、次いで下偏向器によってオンアクシスに戻すことができる。BDAの機械式選択は、偏向収差が回避されるため、カラム光学部品に対する影響がより小さいという利点を有する。BDAの電気式選択は、より高速であるという利点を有し、機械的故障の可能性がなく、粒子発生の可能性が相対的に低い。
【0027】
次に、ブロック2712で、キャッシュ・メモリ106の右上隅(「起点」)108で、この小電流画像化ビームを図2の206においてラスタ走査して、画像を形成する。事前に実施したIC100の電気的試験から、キャッシュ・メモリ106内の欠陥メモリ・セル110の正確なX−Y座標は分かっていると仮定する。一般に、メモリ106内には非常に多くのセルがあるため、セル110のX座標およびY座標はともに非常に大きい可能性がある(ほとんどの場合に>100)。起点108とRoI110の両方を含む単一の画像を得ることができるほど、欠陥セル110が、キャッシュ・メモリ座標系の起点108に近いことはほとんどない。したがって、最初にブロック2714まで進んだときに、FIBはRoIの上にはなく、そのため、経路2716を辿ってブロック2718へ進み、ステージによってIC100をRoIの方向へ移動させる。このビット・ウォーキング手順は、先行技術において、起点108を画像化する最初のラスタ206を含む、図2に示すようなキャッシュ・メモリ106上の部分的に重なり合った一連の画像を利用するために開発された。ラスタ走査207は、ブロック2718から経路2720を辿った後のブロック2712におけるメモリ106の後続の画像化を示す。分かりやすくするためにこの例では、これらのラスタ走査207が、最初のラスタ208から下方へまっすぐに延びているが、必ずそうしなければならないというわけではなく、起点108からRoI110までの距離をメモリ106に亘って走査するのに必要なラスタ走査の総数を減らすために、隣接するラスタ走査207を、この例では下方向と右方向の両方向へ変位させることもできることに留意されたい。
【0028】
ラスタ走査208は、RoI110のY位置にあるが、図2に示されているように左側へずれている。したがって、図27のブロック2712では、欠陥セル110を取り囲む最終的なラスタ210に向かって右へ移動する追加の走査209が必要である。ラスタ走査206〜210を得たら、それぞれの画像内に含まれるメモリ・セルの数を慎重に数え、隣接する画像間の重なりを考慮して、垂直のY方向(ラスタ206〜208)、次いで水平のX方向(ラスタ208〜210)のセルの総数の適正な計算が記録されるようにすることが必要である。ステージ(図示せず)によってIC100を移動させて、FIBラスタ210を欠陥セル110の上に配置すると、判断ブロック2714の判定は「イエス」となり、経路2722を辿って、図26のFIBミリング工程(下記参照)に対応するブロック2724へ進む。
【0029】
図3Aは、ラスタ210などの画像内において見られるであろう詳細な上面図である。図1および2のキャッシュ・メモリ106のRoI110を含むIC100のエリア300が示されている。表面位置306は欠陥セル110の真上にある(印「+」は図示だけが目的であり、実際のデバイス上で見られるわけではない)。見られるであろう一般的なフィーチャには、長い相互接続304、短い接続302および絶縁エリア308などがある。
【0030】
図3Bは、図3Aの上面図に示されたIC100の領域の詳細な等角投影図である。
【0031】
RoI位置における先行技術の保護構造および基準マークの形成
図2および27において、ターゲット内のRoIは、FIBカラムの下に配置されているため、ラメラ作製工程を開始することができる。図4は、先行技術の場合のように厚い保護付着408を形成する、図3Aおよび3BのRoI位置におけるFIB支援付着工程の等角投影概略図400である。ガス噴射器のノズル402を、集束イオン・ビーム(FIB)406がターゲットIC100の表面に衝突する位置の近くに配置する。ノズル402の端部から、付着前駆体ガス404の雲(cloud)が出てくる。その結果、ターゲット表面の欠陥セル110の真上の位置306および位置306の周囲のIC100の表面に、前駆体ガス404が吸着する。ターゲット表面に亘ってFIB406を走査すると、FIB406と前駆体ガス404とが相互に作用して、図5の「X線」上面図に示されているような厚い付着408を形成する。この厚い付着408は一般に、作製するラメラの計画された壁に対して平行な向きに形成される。付着408の2つの端を使用して、図6に示すような基準マークをミリングすることができる。または、その代わりに、付着408の2つの端から離隔した追加の厚い付着(図示せず)を付着させてもよい。付着408の目的は、1)ミリング(図10〜12参照)に使用する集束イオン・ビームの「尾」によって生じることがある意図しないミリングからその下のデバイス層を保護すること、および2)位置基準マークをミリングすることができる材料を提供すること(図6参照)である。
【0032】
図5は、図3Aの向きと同じ向きに示した、図4に示した工程による厚い付着408の上面X線概略図500である。
【0033】
図6は、図4で形成した先行技術のための厚い付着408に2つの基準マーク606および608を形成するFIBミリング工程の等角投影概略図600である。付着408の位置604に衝突するFIB602が示されている。FIB602を、ある制御されたパターンに従って移動させて、付着408の左下の端にマーク606をミリングする。付着408の右上の端には、以前にミリングした別のマーク608がある。マーク608の切欠図は、基準マークの深さに関する2つの重要な要件を示している:1)マークは、付着408内においてできるだけ深くなければならないが、2)欠陥デバイスに損傷を与え、デバイス故障の原因を突き止めることを不可能にする(デバイスの損傷がFIBによる可能性もあるため)ことがあるため、付着の下のデバイス層内へ延びてはならない。先行技術では、ラメラを形成するミリングの際にビームを再整列させるのに必要な画像化走査の最中の材料の過度の損失を防ぐため、付着408がかなり厚くなければならない。厚い付着408は、必然的に、図4における、より長い付着時間と、図6において基準マーク606および608をミリングするためのより長いミリング時間の両方を必要とする。付着を厚くする理由は、先行技術のいくつかのシステムでは、ミリングと画像化の両方に対して同じFIBが使用され、したがって、画像化ビーム電流が、本発明のいくつかの実施形態の画像化ビーム電流よりもかなり大きいためである。
【0034】
RoI位置における本発明の一実施形態の保護構造および基準マークの形成
本発明の一実施形態のための変更された付着手順およびミリング手順を図7および8に示す。後に論じるが、本発明のいくつかの実施形態は、基準マークを画像化するのに、より小ビーム電流の集束イオン・ビームを使用することができ、そのため、これに対応して、RoIの上の付着から失われる材料の量が低減すると考えられる。図7は、本発明の一実施形態では薄い保護付着708を形成する、図3Aおよび3BのRoI位置におけるFIB支援付着工程の等角投影概略図700である。ガス噴射器のノズル702を、集束イオン・ビーム(FIB)706がターゲットIC100の表面に衝突する位置の近くに配置する。ノズル702の端部から、付着前駆体ガス704の雲が出てくる。その結果、ターゲット表面の欠陥セル110の真上の位置306および位置306の周囲のIC100の表面に、前駆体ガス704が吸着する。ターゲット表面に亘ってFIB706を走査すると、FIB706と前駆体ガス704とが相互に作用して、薄い付着708を形成する。図5の「X線」上面図で見て、付着708は、図4の先行技術の付着408と同じIC100のエリアを覆うことができる。この薄い付着708は一般に、作製するラメラの計画された壁に対して平行な向きに形成される。付着708の2つの端を使用して、図8に示すような基準マークをミリングすることができる。または、その代わりに、付着708の2つの端から離隔した追加の厚い付着(図示せず)を付着させてもよい。付着708の目的は、先行技術の付着408に対するものと同じであり、1)ミリング(図10〜12参照)に使用する集束イオン・ビームの「尾」によって生じることがある意図しないミリングからその下のデバイス層を保護すること、および2)基準マーク806および808をミリングすることができる材料を提供すること(図8参照)である。
【0035】
図8は、図7で形成した本発明の一実施形態のための薄い付着708に2つの基準マーク806および808を形成するFIBミリング工程の等角投影概略図800である。付着708の位置804に衝突するFIB802が示されている。FIB802を、ある制御されたパターンに従って移動させて、付着708の左下の端にマーク806をミリングする。付着708の右上の端には、以前にミリングした別のマーク808がある。本発明の一実施形態のための基準マーク806および808の深さに関しても、先行技術のための図6のマーク606および608に関して説明した2つの重要な要件と同じ2つの重要な要件があてはまる:1)マークは、付着708内おいてできるだけ深くなければならないが、2)欠陥デバイスに損傷を与え、デバイス故障の原因を突き止めることを不可能にする(デバイスの損傷がFIBによる可能性もあるため)ことがあるため、付着の下のデバイス層内へ延びてはならない。本発明のいくつかの実施形態では、先行技術で基準マーク606および608を画像化する場合よりも小さいFIB電流を使用して、基準マーク806および808を画像化することができるため、付着708を、付着408よりもかなり薄くすることができる。画像化電流がより小さいため、それに対応して、マークの画像化中に生じる意図しないFIBミリングの速度が低下し、したがって、画像化中のミリングによって除去される材料が減る。薄い付着708は、図7における、より短い付着時間と、図8において基準マーク806および808をミリングするためのより短いミリング時間の両方を可能にする。
【0036】
ボックス・ミリング工程
図9は、薄い付着708にFIBによってミリングした基準マーク806および808のFIB画像化工程900を示す。基準マーク806と基準マーク808の両方に亘って、画像化集束イオン・ビーム912を、一般にX−Yラスタ・パターンに従って走査する(マーク806の走査が図示されている)。マーク806に亘ってFIBを走査すると、2次電子(secondary electron)(SE)が放出され、この2次電子をSE検出器によって集めて画像を形成する。次いで、画像処理を使用して、マーク806の正確な位置を知ることができる。マークの位置は例えば、示されている「X」パターンの中心と定義することができる。図10および11のボックス・ミリング工程では、エリア902をミリングによって除去する。
【0037】
図10は、FIBボックス・ミリング工程の開始1000を示す図である。「ボックス」ミリングは、解析対象のデバイスを含むRoIの両側に大きな(約5〜20μm)トレンチを切削する工程に対する用語である。より大電流の集束イオン・ビーム1012を、付着708の片側のパターン1016に沿って走査して、表面の位置1014に当てる。図11に示されているように、ビーム1012によって、材料1012がミリングされて除かれる。付着708の片側をミリングした後、付着708のもう一方の側に対して、同様のボックス・ミリング・パターン1018を実行する。このビーム走査工程の詳細は知られている。しかしながら、必然的に、エリア902の付着708からより遠い部分よりも、エリア902の付着708により近い部分の上に、FIB1012がより長くとどまらなければならないことは、図11から明白である。この方法は、図11に示す三角形のトレンチを形成する。
【0038】
図11は、付着708の両側に三角形のトレンチを形成するFIBボックス・ミリング工程の完了1100を示す。エリア1108にビーム1012が衝突することによって、深さが概ね5から15μm、横断距離(幅)も同じくらいのトレンチが刻まれている。トレンチの底1110の上方には、ほぼ垂直な壁1114が露出している。壁1114と付着708の縁の間にギャップ1130があることに留意されたい。このギャップは、後続のより微細なミリング・ステップおよび研磨ステップを可能にし、これらのステップは、ラメラの最終的な壁を、RoI内の解析対象のデバイスに対して高い精度(2〜4nm)で位置決めすることを可能にする。場合によっては、画像化ビームに再び切り替えて、図9の場合と同様に基準マーク806および808を再走査することを可能にするために、ボックス・ミリング工程を1回または数回、中断することができる。このことは、FIBカラムに対するターゲットのドリフトによって、ミリング・ビームがRoIに衝突し、それによって解析対象のデバイスに損傷を与えることがないことを保証する。
【0039】
クリーニング・ミリング工程
図12は、一般に図10〜11のボックス・ミリング工程の後に実施されるFIBクリーニング工程1200を示す。この工程では、より小さい電流を有するより小さなFIB1208を表面の位置1206に当てて、欠陥デバイスが露出した最終的な壁1214が形成されるまで、壁1114をミリングする。場合によっては、画像化ビームに再び切り替えて、図10〜11のボックス・ミリング工程の場合と同様に基準マーク806および808を再走査することを可能にするために、クリーニング・ミリング工程を1回または数回、中断することができる。このミリング工程では、図11に示したボックス・ミリング工程後に残った突き出た材料1130上で、ビーム1208を前後1210に移動させる。
【0040】
先行技術および本発明の一実施形態の多ステップ式画像化およびミリング工程
先行技術では一般に、FIBカラムのパラメータを、画像化とミリングの両方に対して最適化する。この最適化は、カラム内のさまざまな電極電圧の設定、およびビーム画定絞り(BDA)の(機械的または電気的(上記参照))選択を含む。表Iは、カラム設定のタイプ(最適化または非最適化)、および6つのシステム動作モードAからFのそれぞれのモードの用途をまとめたものである。この場合、「最適化」は、カラム電圧とBDAの両方が、ターゲットにおけるビーム直径を最小にすることによってビーム電流密度を最大にするように選択されていることを意味する。「非最適化」は、BDAだけが変更され、カラム電圧は変更されていないこと、したがって、ビーム直径が最適直径よりも大きいために、その結果として生じるビーム電流密度がより低いことを意味する。例えば、本発明のいくつかの実施形態では、粗画像化に対してモードBまたはCを使用することができる。モードBおよびCは、先行技術のモードDほど高い空間分解能は持たないが、カラムの電圧供給が落ち着くのを待つ必要がないため、モード間切替え(A←→またはA←→C)ははるかに高速であると考えられる。同様に、本発明のいくつかの実施形態では、微細ミリングに対して、最適化モードDを、微細画像化用の非最適化モードEと交互に使用することができる。このことは、最適化モードDと最適化モードFを交互に使用し、切替え(D←→F)時にカラム電圧とBDAの変更が必要な先行技術と対照をなす。
【0041】
表IIは、先行技術(表IIの上)と本発明のいくつかの実施形態(表IIの下)の両方について、デュアルモード工程ステップにおいて表Iのさまざまな動作モードA〜Fをどのように組み合わせることができるのかを概略的に示す。例えば、先行技術では、図11および12に示した三角形のトレンチを形成するバルク・ミリング工程に対して、最適化モードAと最適化モードDを交互に使用する。本発明のいくつかの実施形態では、バルク・ミリング工程が、最適化バルク・ミリング・モードAを、非最適化粗画像化モードBと交互に使用することを含む。モードA←→モードBまたはモードA←→モードCの切替え時間は、モードA←→モードDの切替え時間よりも短いため、非最適化モードBの空間分解能が、基準マーク806および808(図9参照)の位置を決定する目的に対して十分である限りにおいて、本発明のこの実施形態は先行技術よりも優れている。
【0042】
【表1】

【0043】
表I.先行技術および本発明の一実施形態に対する集束イオン・ビーム(FIB)カラムの動作モード
【0044】
【表2】

【0045】
表II.先行技術および本発明の一実施形態における3つのそれぞれの工程ステップ(バルク・ミリング、微細ミリング、研磨)に対する表Iの動作モードの組合せ
本発明の一実施形態を実現する集束イオン・ビーム(FIB)カラム
図13は、本発明の一実施形態の多ステップ式画像化およびミリング工程を実現することができる例示的なFIBカラム1300の側断面図である。X−Y−Z座標系が示されており、X軸1304は、カラム1300の光軸を表すZ軸1302に対して垂直である。Y軸(図示せず)は図の平面に対して垂直である。イオン放出を誘起させるため、源1306と引出し電極1308の間に「引出し」電圧が印加される。源1306が正イオンを放出する液体金属イオン源(LMIS)である場合、このバイアス電圧は一般に−7000から−15000Vである。源1306からの初期イオン放出は一般に、半角が約30°[すなわち立体角がπ(π30°/180°)2≒0.86ステラジアン]の円錐形になる。イオン「銃」は、源1306、抽出器1308、銃集束電極1312および銃出口電極1314を備える。銃出口電極1314内に取り付けられたビーム画定絞り(BDA)1316も銃の部分である。銃集束電極1312に集束電圧が印加され、銃出口電極1314がグランド電位(0V)にバイアスされる。したがって、この例では、ターゲットもグランド電位にバイアスされているため、銃を出たイオンは既に、その最終的なビーム・エネルギーを有する。抽出器1308、集束電極1312および出口電極1314上の異なる電圧は、銃内のカラム軸上およびカラム軸の近くに電界を誘導する。この電界は、図14〜17の軌道図に示されているように、イオン・ビーム1310を偏向させ、集束させる。ある場合、特に、ターゲット位置においてより小さなビームが望ましく、したがってより高い源−ターゲット縮小が必要とされる場合には、銃内において、最小集束(minimal focusing)の効果がある。他の場合には、銃が、概ね平行なビームを形成し、形成されたビームは次いで、主レンズによって、より低い縮小でターゲット上に集束され、より大きな電流を有するより大きなビームを生成する。銃の下方には、電極1318および1320を備えるビーム・ブランカがある。ビームがオンのとき、電極1318および1320はともに一般に0Vであり、したがってビーム1310は、偏向されずにブランカおよびビーム・ブランキング絞り(beam−blanking aperture)(BBA)1322を通過する。ビームをオフにするためには、電極1318に正電圧を、電極1320に負電圧を印加し、それによって、ビーム1310が偏向されて軸を外れ、BBA1322に当たるようにする。一般的なブランキング電圧は5Vから10Vである。
【0046】
BBA1322の下方には、上偏向器1324および下偏向器1326がある。これらの偏向器はともに一般に4極子または8極子である(静電および/または磁気)。全ての場合に、偏向は、回転可能な双極子場(すなわちX−Yオフアクシス平面内の任意の方向に偏向させること)を必要とし、当業者にはよく知られているとおり、より均一な場を生成することによって偏向収差を低減させる目的には、8極子など、より高次の電極構成が使用される。偏向器1324および1326は「2重偏向器」を構成し、この2重偏向器は、主レンズに入るビームの位置と傾きの両方を制御することができ、それによって画像化およびミリング中のオフアクシス収差の低減を可能にする。電極1328、1330および1332は、ターゲット1334の表面の位置1336にビーム1310を集束させる主レンズを構成する。ここに示した例では、電極1328上の電圧と電極1332上の電圧が同じであり、グランドに対して0Vである。次いで、集束させるために、電極1330上の電圧を0Vとは異なる電圧にして、電極1328、1330および1332間に必要な集束電界を発生させる。正イオンついて言うと、電極1330上の電圧が>0Vである場合には、主レンズは「減速レンズ」であり、電極1330上の電圧が<0Vである場合には、主レンズは「加速レンズ」である。本発明のいくつかの実施形態の多ステップ式画像化およびミリング工程とともに使用する目的には、両方の主レンズ構成が適している。
【0047】
先行技術および本発明の一実施形態のさまざまな動作モードに対する集束イオン・ビームの軌道
この項において、図14〜17は、本発明のいくつかの実施形態(図14および16)と先行技術(図15および17)の両方に対する集束イオン・ビームのさまざまな軌道を示す。これらの軌道は、先行技術のFIBカラム設定と本発明のいくつかの実施形態のFIBカラム設定の間の動作の違い、具体的には異なるビーム直径(半値全幅「FWHM」とビーム電流の1/2を含む直径「d50」の両方)および源−ターゲット縮小の起源、を理解する基礎を提供する。これらの図は、例示のため同じ図に並置されて示された異なる軌道を示しており、動作時には、それぞれのモードが光軸を中心に対称であることが理解される。また、軌道の線は、特定の荷電粒子数に対応しているわけではなく、そのため、より狭い間隔で描かれた線が、より高い電流密度を示しているわけではない。
【0048】
図14は、本発明の一実施形態のバルク・ミリング・モードAのイオン軌道1420(光軸1404の上側)および粗画像化モードBの軌道1430の側面図1400である。モードAでもモードBでも、イオンはともに、図13の源1306に対応する源1402から放出される。次いで、図13の電極1308、1312および1314に対応する銃レンズ1406が、これらのイオンを集束させる。軌道1420および1430は次いで、主レンズ1408によってターゲット上の位置1410で結像する。この構成では、モードAとモードBの間で、銃レンズ電極上の電圧および主レンズ電極上の電圧は変更されず、より大電流のバルク・ミリング・モードAとより小電流の粗画像化モードBとの間で異なるのは、ビーム画定絞り(BDA)1424とBDA1434だけである。このことは、モードAのBDA1424(軸1404の上側)の半径と、モードBのBDA1434(軸1404の下側)の半径とを比較すると分かる。BDA1424の半径およびBDA1434の半径はともに、ターゲットに到達し、位置1410においてモードAおよびモードに対する集束イオン・ビームを形成する源1402からの放出の最大半角を決定することに留意されたい。銃レンズ位置における軌道1420の最大半径1422と軌道1430の最大半径1432の比は、主レンズ位置における最大半径1426と最大半径1436の比と同じである。このことは、軸1404に沿った全ての点における軌道1420および軌道1430内の個々の粒子線の全てのオフアクシス半径が互いに同じ比で比例しており、X軸および/またはY軸に沿ったそれらの全体的な尺度だけが異なっていることを示している。軌道1420と軌道1430の間にこの比例関係が存在する理由は、本発明のいくつかの実施形態では、バルク・ミリング・モードAと粗画像化モードBの間のカラム構成の違いがBDAの選択だけであるためである。レンズ電圧の設定はどれも変更されず、したがって、モードAに対するカラムの全体的な集束特性とモードBに対するカラムの全体的な集束特性は同じである。代替実施態様では、粗画像化用のモードBの代わりに、中程度の画像化を提供するモードCを利用することができる。モードAとモードBを使用する利点は、(BDA1434の半径の方が、モードCで使用されるBDAの半径よりもBDA1424の半径に近いため)BDAの不整列に対する感度がより低いことであり、モードAとモードCを使用する利点は、中程度の画像化モードCの方が、粗画像化モードBよりも小さいビーム電流を有し、そのため、付着708(図7参照)をより薄くし、基準マーク806および808(図8参照)をより浅くすることができ、その結果、付着時間およびミリング時間を節約し、ラメラ作製のスループットをより高くすることができることである。
【0049】
図15は、図14と同じバルク・ミリング・モードAのイオン軌道1420(光軸1504の上側)および先行技術の微細画像化モードDの軌道1530の側面図1500である。モードAでもモードDでも、イオンはともに、図13の源1306に対応する源1502から放出される。次いで、図13の電極1308、1312および1314に対応する銃レンズ1506が、これらのイオンを集束させる。軌道1420は、図14と同じく、主レンズ1508によってターゲット上の位置1410で結像する。軌道1530は、やはり主レンズ1508によって、ターゲット上の位置1510で結像する。位置1510は、位置1410と同じ位置であることもあり、または位置1410の近傍の別の位置であることもある。この先行技術の構成では、モードAとモードDの間で、銃レンズ電極上の電圧、主レンズ電極上の電圧およびビーム画定絞り(BDA)の全てが変更されることがある。このことは、モードAのBDA1424(軸1504の上側)の半径と、モードDのBDA1534(軸1504の下側)の半径とを比較すると分かる。BDA1424の半径およびBDA1534の半径はともに、ターゲットに到達し、それぞれ位置1410および位置1510において集束イオン・ビームを形成する源1502からの放出の最大半角を決定することに留意されたい。銃レンズ位置における軌道1420の最大半径1422と軌道1530の最大半径1532の比は、主レンズ位置における最大半径1426と最大半径1536の比とは異なる。このことは、2つのモードAとモードDが、表IIIに示されている銃レンズ電極の異なる電圧設定および主レンズ電極の異なる電圧設定に起因する異なる源−ターゲット倍率に対応していることを示している。電圧およびBDAがこのように変更される理由は、先行技術では、バルク・ミリング・モードAと微細画像化モードDの両方に対して光学設定を最適化しようとするためである。表IIIは、モードAからDのさまざまな動作パラメータについて、先行技術(図15)と本発明の一実施形態(図14)の比較を示している。
【0050】
図16は、本発明の一実施形態の微細ミリング・モードDのイオン軌道1530(光軸1604上側)および微細画像化モードEの軌道1630の側面図1600である。モードDでもモードEでも、イオンはともに源1602から放出される。源1602は、図14の源1402に対応することがある。次いで、銃レンズ1606がこれらのイオンを集束させる。銃レンズ1606は、図6の銃レンズ1406に対応することがある。軌道1530および1630は次いで、主レンズ1608によって、それぞれターゲット上の位置1510および1610で結像する。主レンズ1608は、図14の主レンズ1408に対応することがある。この構成では、モードDとモードEの間で、銃レンズ電極上の電圧および主レンズ電極上の電圧は変更されず、より大電流の微細ミリング・モードDとより小電流の微細画像化モードEの間で異なるのは、ビーム画定絞り(BDA)だけである。このことは、モードDのBDA1534(軸1604の上側)の半径と、モードEのBDA1634(軸1604の下側)の半径とを比較すると分かる。BDA1534の半径およびBDA1634の半径はともに、ターゲットに到達し、位置1510および1610において集束イオン・ビームを形成する源1602からの放出の最大半角を決定することに留意されたい。銃レンズ位置における軌道1530の最大半径1532と軌道1630の最大半径1632の比は、主レンズ位置における最大半径1536と最大半径1636の比と同じである。このことは、軸1604に沿った全ての点における軌道1530および軌道1630内の個々の粒子線の全てのオフアクシス半径が互いに同じ比で比例しており、X軸およびY軸に沿ったそれらの全体的な尺度だけが異なっていることを示している。軌道1530と軌道1630の間にこの比例関係が存在する理由は、本発明のこの実施形態では、微細ミリング・モードDと微細画像化モードEの間のカラム構成の違いがBDAの選択だけであるためである。レンズ電圧の設定はどれも変更されず、したがって、モードDに対するカラムの全体的な集束特性とモードEに対するカラムの全体的な集束特性は同じである。モードDおよびEの軌道とモードAおよびBの軌道とは質的に異なるが、この違いは、表IIIに示されているように、銃レンズの集束電圧の設定および主レンズの集束電圧の設定が、これらの2対の動作モードで異なることに起因することに留意されたい。モードAおよびBでは、より大きな電流を有するより大きなビームが望ましいため、源−ターゲット縮小がより小さい。しかしながら、モードDおよびEについては、より小さな電流を有するより小さなビームが必要である。倍率およびBDAの直径の比較が表IIIに示されている。
【0051】
図17は、図16と同じ微細ミリング・モードDのイオン軌道1530(光軸1704の上側)および先行技術の最良画像化モードFの軌道1730の側面図1700である。モードDでもモードFでも、イオンはともに、図13の源1306に対応する源1702から放出される。次いで、図13の電極1308、1312および1314に対応する銃レンズ1706が、これらのイオンを集束させる。軌道1530は、図15および16と全く同じに、主レンズ1708によってターゲット上の位置1510で結像する。軌道1730は、やはり主レンズ1708によって、ターゲット上の位置1710で結像する。位置1710は、位置1510と同じ位置であることもあり、または位置1510の近傍の別の位置であることもある。この先行技術の構成では、モードDとモードFの間で、銃レンズ電極上の電圧、主レンズ電極上の電圧およびビーム画定絞り(BDA)の全てが変更されることがある。このことは、モードDのBDA1534(軸1704の上側)の半径と、モードFのBDA1734(軸1704の下側)の半径とを比較すると分かる。BDA1534の半径およびBDA1734の半径はともに、ターゲットに到達し、それぞれ位置1510および位置1710において集束イオン・ビームを形成する源1702からの放出の最大半角を決定することに留意されたい。銃レンズ位置における軌道1530の最大半径1532と軌道1730の最大半径1732の比は、主レンズ位置における最大半径1536と最大半径1736の比とは異なる。このことは、2つのモードDとモードFが、表IIIに示されている銃レンズ電極の異なる電圧設定および主レンズ電極の異なる電圧設定に起因する異なる源−ターゲット倍率に対応していることを示している。電圧およびBDAがこのように変更される理由は、先行技術では、微細ミリング・モードDおよび微細画像化モードFの両方に対して光学設定を最適化しようとするためである。表IIIは、モードD、EおよびFのさまざまな動作パラメータについて、先行技術(図17)と本発明の一実施形態(図16)の比較を示している。
【0052】
本発明の実施形態および先行技術の6つの動作モードの動作パラメータおよびビーム特性の比較
この項において、図18〜25は、表Iに概要を示した6つのモードA〜Fのさまざまなシステム動作パラメータを示す。動作パラメータの詳細は表IIIに示されている。表IIには、先行技術と本発明の一実施形態の両方において使用されるモードの組合せの概要が示されている。図14に示すように、本発明のいくつかの実施形態では、バルク・ミリング工程および粗画像化工程に対して、モードAとモードBが交互に使用される。あるいは、本発明のいくつかの実施形態では、バルク・ミリングおよび改良された画像化のために、モードAとモードCが使用される。先行技術では、バルク・ミリング工程に対して、モードAとモードDが交互に使用される(図15)が、モード間でより多くのパラメータ(電極電圧)を変更する必要があるため、ミリング・モード(モードA)と画像化モード(モードD)の間の切替え時間はより長くなる。図16に示すように、本発明の一実施形態では、微細ミリングおよび微細画像化においてモードDとモードEが交互に使用される。先行技術では、微細ミリング工程および最良画像化工程に対して、モードDとモードFが交互に使用される(図17)が、この場合もやはり、切替え時間がより長くなる。図18〜25の全ての図において、グラフ上の点にはモードA〜Fの符号が付けられている。
【0053】
【表3】

【0054】
表III.モードA〜FのFIBカラム動作パラメータ。先端に対する電圧とグランド電位に対する電圧の両方が示されている。
【0055】
図18は、6つの動作モードA〜Fについて、放出器先端におけるビーム半角1804を、ビーム電流1802に対して示したグラフ1800である。モードAは、バルク・ミリング速度を最大にするため、最も大きなビーム電流を有する(13.7nA。表III参照)。源の角強度が22.5μA/srであると仮定すると、モードAでは、先端におけるビーム半角が0.8°である必要がある。
【0056】
【数1】

【0057】
モードBとモードDは、先端におけるビーム半角が同じ(0.25°)であり(ただしBDAの直径は同じではない。図19参照)、したがって同じビーム電流を有し、上に示したとおりに計算した同じビーム電流は1.34nAである。モードC、モードEおよびモードFも同じビーム半角(0.075°)を有し(ただしBDAの直径は同じではない。図19参照)、したがって同じビーム電流121pAを有する。モードA、モードB、D、およびモードC、E、Fのビーム電流は、BDAの直径を適切に選択する(直径比をおよそ1/√10にする)ことによって、差が大体1/10になるように設定されていることに留意されたい。表III参照。
【0058】
図19は、6つの動作モードA〜Fについて、ビーム画定絞り(BDA)の直径1904を、ビーム電流1902に対して示したグラフ1900である。モードBとモードDは、源先端における同じ放出半角に対応する(それによって同じビーム電流を与える)が、モードBとモードDは異なるBDA直径を必要とすることに留意されたい。これは、モードBとモードDが異なるレンズ設定を有し(表III参照)、したがって、先端における半角とBDAが位置する銃の出口におけるビーム直径との間の相関が異なるためである。なぜそうなるのかを見るために、図14の軌道1430(モードB)と図15の軌道1530(モードD)とを比較する。銃レンズ1406と主レンズ1408の間の軌道1430と銃レンズ1506と主レンズ1508の間の軌道1530とでは、軌道1430の方が明らかにより平行である。これは、モードBの方がモードDよりも小さい源−ターゲット縮小を有することに対応する。一般に、大きな縮小は、より小さなビーム直径およびより小さなビーム電流を可能にする。グラフ1900から、本発明の一実施形態では、バルク・ミリングおよび画像化(モードAおよびB。表II参照)を実現するに2つのBDAが必要であり、微細ミリングおよび画像化(モードDおよびE。表II参照)のためにもう一組のBDAが必要であることが分かる。先行技術では、必要なBDAが、バルク・ミリングおよび画像化(モードAおよびD。表II参照)を実現するための2つのBDAと、微細ミリングおよび画像化(モードDおよびF。表II参照)のための追加の1つのBDAの3つだけである。これは、これらの2つのミリング工程間でモードDが共通であるためである。
【0059】
図20は、6つの動作モードA〜Fについて、銃レンズの集束電圧2004を、ビーム電流2002に対して示したグラフ2000である。本発明について言えば、モードA、BおよびCは全て、曲線2006に沿って、同じ銃集束電圧値2008、2010および2012を有する。これは、本発明のいくつかの実施形態は、バルク・ミリング工程(モードA←→モードBまたはモードA←→モードCを使用)の間、全てのFIBカラム電圧設定を変えないためである。同様に、本発明に関して、モードDとモードEは、微細ミリング工程ステップ(モードD←→モードEを使用)の間、曲線2014に沿って、同じ銃集束電圧値2016および2018を有する。曲線2020は先行技術に対応し、バルク・ミリング工程に対してはモードAおよびモードDが使用され、微細ミリング工程に対してはモードDおよびモードFが使用される。
【0060】
図21は、6つの動作モードA〜Fについて、主レンズの集束電圧2104を、ビーム電流2102に対して示したグラフ2100である。本発明について言えば、モードA、BおよびCは全て、曲線2106に沿って、同じ主レンズ集束電圧値2108、2110および2112を有する。これは、本発明のこの実施形態が、バルク・ミリング工程ステップ(モードA←→モードBまたはモードA←→モードCを使用)の間、全てのFIBカラム電圧設定を変えないためである。同様に、本発明に関して、モードDとモードEは、微細ミリング工程ステップ(モードD←→モードEを使用)の間、曲線2114に沿って、同じ主レンズ集束電圧値2116および2118を有する。曲線2120は先行技術に対応し、バルク・ミリング工程に対してはモードAおよびモードDが使用され、微細ミリング工程に対してはモードDおよびモードFが使用される。
【0061】
図22は、6つの動作モードA〜Fについて、半値全幅(FWHM)ビーム直径2204を、ビーム電流2202に対して示したグラフ2200である。本発明のこの実施形態の曲線2206は、モードAのFWHMビーム直径2208、モードBのFWHMビーム直径2210およびモードCのFWHMビーム直径2212を結んでいる。モードAからモードBへビーム電流2202が小さくなると、FWHMビーム直径も75nmから65nmまで小さくなり、モードCではさらに60nmまで小さくなることに留意されたい。先行技術に関しては、曲線2220が、モードAのFWHMビーム直径2208、モードDのFWHMビーム直径2216およびモードFのFWHMビーム直径2222を結んでいる。このグラフから、本発明のこの実施形態が先行技術よりも不利な点が分かる。すなわち、モードBのFWHMビーム直径2210は、モードDのFWHMビーム直径2216の2倍よりも大きい。この欠点は、本発明のこの実施形態が先行技術よりも有利な点、すなわち、BDA直径の機械的な変更だけを使用することによって、BDAの機械的変更だけではなく、(固有の設定時間を有する)FIBカラム電圧の切替えが必要な先行技術と比較して、FIBバルク・ミリング(モードA)と粗画像化(モードB)の間の切替えがより高速である点とバランスがとれていなければならない。先行技術の代わりに本発明の一実施形態を使用できるかどうかは、モードDに比べて画像化分解能に劣るモードBが、モードAのFIBミリング・ビームの配置精度に大きな影響を与えないかどうかにかかっている。同様に、モードDおよびモードEを含む本発明のこの実施形態の微細ミリング工程を、先行技術のモードDおよびFと比較すると、モードEのFWHMビーム直径は、モードFのFWHMビーム直径に比べて2倍以上大きい。モードDで正確な微細なミリングを達成するのに、29nmのFWHMビーム直径が許容される場合、モードFのより小さなFWHMビーム直径は不要である。時間に関してモードEがモードFよりも有利なことは、モードBとモードDの間の関係と同様である。モードCは、上の図14で論じたように、FIBミリング用のモードAおよび中程度の画像化用のモードCを使用してバルク・ミリング工程を実現する場合に備えて示されている。
【0062】
図23は、6つの動作モードA〜Fについて、ビーム直径(d50)2304を、ビーム電流2302に対して示したグラフ2300である。モードA 2308、モードB 2310およびモードC 2312を結ぶ曲線2306の比較は、d50ビーム直径に関しては、モードAからモードBおよびモードCへ向かうにつれての分解能の向上が、ビーム直径を特徴づけるのにFWHMを使用した図22の場合よりもかなり大きいことを示している。この違いの理由は、d50直径が、モードAのビーム直径などのより大きなビーム直径に対して生じるより大きなビームの「尾」を考慮に入れているためである。したがって、モードBおよびモードCの場合のようなより小さなビーム電流に関しては、これらの尾が、FWHM直径に反映される中心のビームの直径よりも急速に低下する。モードBのd50値(65nm)とモードDのd50値(44nm)とを比較すると、図22のFWHM値では50%超であるのに対して、違いは約30%だけである。曲線2314は、本発明のこの実施形態のモードD 2316とモードE 2318を結んでいる。モードF 2322はモードE 2318と同じd50値を有し、したがって、本発明のこの実施形態における微細ミリング工程(D←→E)および先行技術における微細ミリング工程(D←→F)に関して、d50ビーム直径の差はない(ただし、図22によれば、モードEとモードFのFWHM直径の差はかなりある)。画像化中のビームの尾の影響は主に、得られる画像コントラストを低下させることであり、一方、FWHMビーム直径は中心のビームの寸法である。より低いコントラストが許容される場合には、コントラストは高いが低速である先行技術の微細ミリング工程よりも、モードE(ミリング←→画像化切替え時間がより短い)の方が好ましいことがある。反対に、基準マーク(例えば図8の806および808等)を正確に画像化するために最も高い画像コントラストが必要な場合には、スループットについては不利であるにもかかわらず、先行技術の微細ミリング工程が必要になることがある。
【0063】
図24は、6つの動作モードA〜Fについて、源−ターゲット倍率2404を、ビーム電流2402に対して示したグラフ2400である。モードA、BおよびCは全て、曲線2406に沿って、同じ倍率値2408、2410および2412を有する。これは、本発明のこの実施形態が、バルク・ミリング工程ステップ(モードA←→モードBまたはモードA←→モードCを使用)の間、全てのFIBカラム電圧設定を変えず、レンズ電圧が倍率を決定するためである。同様に、モードDとモードEは、微細ミリング工程ステップ(モードD←→モードEを使用)の間、曲線2414に沿って、同じ倍率値2416および2418を有する。曲線2420は先行技術に対応し、バルク・ミリング工程に対してはモードAおよびモードDが使用され、微細ミリング工程に対してはモードDおよびモードFが使用される。
【0064】
図25は、6つの動作モードA〜Fについて、ビーム画定絞り(BDA)の不整列感度2504を、ビーム電流2502に対して示したグラフ2500である。BDA不整列感度は、BDA不整列1μm当たりのターゲット位置におけるFIBカラムの光軸に対するビームの移動量ないし変位量(nm)に対応する。モードA、BおよびCは全て、曲線2506に沿って、同じ不整列感度値2508、2510および2512を有する。これは、本発明のこの実施形態が、バルク・ミリング工程ステップ(モードA←→モードBまたはモードA←→モードCを使用)の間、全てのFIBカラム電圧設定を変えず、レンズ電圧がBDA不整列感度を決定するためである。同様に、モードDとモードEは、微細ミリング工程ステップ(モードD←→モードEを使用)の間、曲線2514に沿って、同じBDA不整列感度値2516および2518を有する。曲線2520は先行技術に対応し、バルク・ミリング工程に対してはモードAおよびモードDが使用され、微細ミリング工程に対してはモードDおよびモードFが使用される。グラフ2500は、本発明のこの実施形態が先行技術よりも不利な別の点を示している。すなわち、BDA不整列感度がより大きいため、BDAの機械的移動の精度が約30%高くなければならない。BDA不整列感度がより大きいのは、図24のグラフ2400に示されているように源−ターゲット倍率がより大きい(縮小がより小さい)ことによる。これは、グラフ2400の曲線の形状とグラフ2500の曲線の形状が非常によく似ていることによって示されているように、BDA不整列感度が、倍率に密接に関連しているためである。
【0065】
本発明の一実施形態の2ステップ・ミリング工程の工程流れ図
図26は、本発明の一実施形態に対して使用可能な2ステップ画像化およびミリング工程の流れ図である。最初のステップは、バルク・ミリング工程を構成する粗画像化モードとバルク・ミリング・モードの一連の交互使用を含む。このステップに続いて、微細ミリング工程を構成する微細画像化モードと微細ミリング・モードの一連の交互使用を含む第2のステップを実行する。本発明のこの実施形態のこれらの2つの工程の完了後、後続の研磨ステップを使用して、加工ムラ(curtaining)および完了した画像化モードおよびミリング・モード中に傷ついた層を最終的に除去することができる。
【0066】
最初に、ブロック2602で、集束イオン・ビーム(FIB)カラムの軸上に、関心領域(RoI)を、ステージによって機械的に配置する。ブロック2602は、図27で概説した工程2700の使用を表すことがある。いくつかの場合には、RoIが例えば、図1〜図3Bに示したマイクロプロセッサ・チップ100上のSRAMキャッシュ・メモリ106内の(単一のビットを記憶する)欠陥メモリ・セル110を表すことがある。次に、ブロック2604で、保護層708を付着させる。ブロック2604は、図7に示したFIB支援付着工程に対応する。続くブロック2606は、図8に示した基準マーク806および808のFIBミリングに対応する。これらのマークは、ステージの移動、カラム制御電子回路内の電圧の変更、ターゲットの熱膨張などのさまざまなドリフトの原因を補償する、RoIに対する集束イオン・ビームの正確な再位置決めを可能にするために、後続のブロックで使用される。次いで、バルク・ミリング・モードで使用するようにFIBカラムを構成するブロック2608から、バルク・ミリング工程が始まる。ブロック2608は、モードA〜Cに対応するFIBカラム内の全ての電極(図13に示したレンズ、ブランカおよび偏向器)上の必要な電圧を設定することからなる。次いで、ブロック2610で、小径のビーム画定絞り(BDA)を選択することによって、これらの3つの可能なモードの中から選択する特定のモードを決定する。ブロック2610では、バルク・ミリング・モードAが提供するビーム直径よりも小さなビーム直径をターゲット位置に与えるモードBまたはCを使用するように、カラムを設定する。
【0067】
ブロック2608および2610で、カラムは、ターゲット902において粗画像化ビーム912を形成するように構成されているので、次に、ブロック2612で、図9に示した画像化工程910を開始する。画像化工程910は、図8で保護層708にミリングした基準マーク806および808の正確な位置決め(および経路2620の後の再位置決め)を可能にする。ブロック2612で、基準マーク806および808を画像化しておけば、画像処理を使用して、基準マーク806および808の中心の位置(例えば図9に示された「X」パターンの中心と定義される)を正確に決定することができる。これらの位置は、図10に示したパターン1016および1018をミリングする(ブロック2616(後述))ためにバルク・ミリング・ビーム1012を適切に配置することを可能にする情報を、FIBカラム・コントローラに提供する。ブロック2612で基準マークの位置を決定した後、ブロック2614で大径のBDAを選択し、続くブロック2616で、大電流ビームを使用して、制御された量のバルク・ミリングを実行する。次に、判断ブロック2618へ進み、バルク・ミリングが完了したかどうかを判断する。この判断は、予め決められたバルク・ミリング速度と累積ミリング時間とに基づく。バルク・ミリングがまだ完了していない場合には、経路2620を辿ってブロック2610へ戻り、バルク・ミリングが完了したと判断ブロック2618が判定するまで、ブロック2610〜2616の画像化/ミリング・シーケンスを繰り返す。次いで、経路2622を辿ってブロック2624へ進む。このバルク・ミリング工程は、全体として、図10〜11に示したボックス・ミリング手順に対応することがある。
【0068】
次いで、微細ミリングを実施するようにFIBカラムを構成するブロック2624から、微細ミリング工程が始まる。このステップは、動作モードDおよびEに対応するFIBカラム内の全ての電極(図13に示したレンズ、ブランカおよび偏向器)上の必要な電圧を設定することからなる。次いで、ブロック2610で、小径のビーム画定絞り(BDA)を選択することによって、これらの2つの可能な動作モードの中から選択する特定の動作モードを決定する。これにより、微細ミリング・モードDが提供するビーム直径よりも小さなビーム直径をターゲット位置に与える微細画像化モードEを使用するように、カラムが設定される。
【0069】
ブロック2624および2626で、カラムは、ターゲット902において微細画像化ビーム912を形成するように構成されているので、次に、ブロック2612で、図9に示したような画像化工程910を開始する。画像化工程910は、図8で保護層708にミリングした基準マーク806および808の正確な位置決め(および経路2636の後の再位置決め)を可能にする。ブロック2628で、基準マーク806および808を画像化しておけば、画像処理を使用して、基準マーク806および808の中心の位置(例えば図9に示された「X」パターンの中心と定義される)を正確に決定することができる。これらの位置は、図12に示したクリーニング・ミリング(ブロック2632(後述))のために微細ミリング・ビーム1208を適切に配置することを可能にする情報を、FIBカラム・コントローラに提供する。ブロック2628で基準マークの位置を決定した後、ブロック2630で中間の直径のBDAを選択し、続くブロック2632で、中間の電流のビームを使用して、制御された期間の微細ミリングを実行する。次に、判断ブロック2634へ進み、微細ミリングが完了したかどうかを判断する。この判断は、予め決められた微細ミリング速度に基づく。微細ミリングがまだ完了していない場合には、経路2636を辿ってブロック2626へ戻り、微細ミリングが完了したと判断ブロック2634が判定するまで、ブロック2626〜2632の画像化/ミリング・シーケンスを繰り返す。この微細ミリング工程は、全体的として、図12に示したクリーニング・ミリング手順に対応することがある。次いで、経路2638を辿ってブロック2640へ進む。ブロック2640は、ラメラ作製を完了するのに必要な残りの全てのFIB研磨ステップを含み、それらのFIB研磨ステップは、潜在的により低電圧のFIBおよび/または加工ムラの除去を助けるさまざまな角度のFIBを含む。
【0070】
本発明のいくつかの実施形態によれば、イオン・カラムおよび複数のビーム画定絞りを備える集束イオン・ビーム・システムを使用して、1つまたは複数の基準マークを関心領域の近くに含むターゲット内の構造をミリングする方法は、第1の電流を有するイオン・ビームを生成するための第1のビーム画定絞りを選択するステップと、第1の電流を有するイオン・ビームをターゲット上へ集束させるように、イオン・カラム内の電極電圧を設定するステップと、第1の電流を有するイオン・ビームをターゲット上へ導くステップと、第1の電流を有するイオン・ビームを基準マークに亘って走査して、イオン・カラムの軸に対する基準マークの位置を決定するステップと、第1の電流よりも大きい第2の電流を有するイオン・ビームを生成するための第2のビーム画定絞りを選択するステップと、イオン・カラム内の電極電圧を再設定せずに、第2の電流を有するイオン・ビームをターゲット上へ導くステップと、第2の電流を有するイオン・ビームを所定のパターンに従って偏向させて、関心領域においてミリング工程を実行するステップであり、そのビーム偏向が、第1の電流を有するイオン・ビームによって決定したイオン・カラムの軸に対する基準マークの位置を考慮して行われるステップとを含む。
【0071】
いくつかの実施形態では、構造をミリングする前記方法がさらに、第2の電流を有するイオン・ビームを所定のパターンに従って偏向させて関心領域においてミリング工程を実行した後に、第1の電流を有するイオン・ビームを生成するための第1のビーム画定絞りを再び選択して、ターゲットを画像化するステップを含む。
【0072】
いくつかの実施形態では、構造をミリングする前記方法がさらに、第1のビーム電流よりも小さい第3の電流を有するイオン・ビームを生成するための第3のビーム画定絞りを選択するステップと、第3の電流を有するイオン・ビームをターゲット上へ集束させるように、イオン・カラム内の電極電圧を設定するステップと、第3の電流を有するイオン・ビームをターゲット上へ導くステップと、第3の電流を有するイオン・ビームを基準マークに亘って走査して、イオン・カラムの軸に対する基準マークの位置を決定するステップであり、第3の電流を有するイオン・ビームの前記位置決定が、第1の電流を有するイオン・ビームの前記位置決定よりも正確なステップと、第3の電流よりも大きく、第1の電流よりも小さい第4の電流を有するイオン・ビームを生成するための第4のビーム画定絞りを選択するステップと、イオン・カラム内の電極電圧を再設定せずに、第4の電流を有するイオン・ビームをターゲット上へ導くステップと、第4の電流を有するイオン・ビームを所定のパターンに従って偏向させて、関心領域において微細ミリング工程を実行するステップであり、前記ビーム偏向が、第3の電流を有するイオン・ビームによって決定したイオン・カラムの軸に対する基準マークの位置を考慮して行われるステップとを含む。
【0073】
いくつかの実施形態では、構造をミリングする前記方法がさらに、第4の電流を有するイオン・ビームを所定のパターンに従って偏向させて関心領域において微細ミリング工程を実行した後に、第3の電流を有するイオン・ビームを生成するための第3のビーム画定絞りを再び選択して、ターゲットを画像化するステップを含む。
【0074】
いくつかの実施形態では、第1のビーム画定絞りを選択する前記ステップが、前記複数の絞りのうちの第1の絞りをイオン・カラムの軸上に機械的に移動させるステップを含み、第2のビーム画定絞りを選択する前記ステップが、前記複数の絞りのうちの第2の絞りをイオン・カラムの軸上に機械的に移動させるステップを含む。
【0075】
いくつかの実施形態では、第1のビーム画定絞りを選択する前記ステップが、前記複数の絞りのうちの第1の絞りをイオン・カラムの軸上に機械的に移動させるステップを含み、第2のビーム画定絞りを選択する前記ステップが、前記複数の絞りのうちの第2の絞りをイオン・カラムの軸上に機械的に移動させるステップを含み、第3のビーム画定絞りを選択する前記ステップが、前記複数の絞りのうちの第3の絞りをイオン・カラムの軸上に機械的に移動させるステップを含み、第4のビーム画定絞りを選択する前記ステップが、前記複数の絞りのうちの第4の絞りをイオン・カラムの軸上に機械的に移動させるステップを含む。
【0076】
いくつかの実施形態では、構造をミリングする前記方法がさらに、前記複数のビーム画定絞りの上方に第1の偏向器を配置するステップと、前記複数のビーム画定絞りの下方に第2の偏向器を配置するステップとを含む。
【0077】
いくつかの実施形態では、第1のビーム画定絞りを選択する前記ステップが、イオン・ビームを、前記複数のビーム画定絞りのうちの第1の絞り上へ偏向させるように、第1の偏向器を作動させるステップと、イオン・ビームを、イオン・カラムの軸上へ、かつ、イオン・カラムの軸に対して平行に偏向させるように、第2の偏向器を作動させるステップとを含み、第2のビーム画定絞りを選択する前記ステップが、イオン・ビームを、前記複数のビーム画定絞りのうちの第2の絞り上へ偏向させるように、第1の偏向器を作動させるステップと、イオン・ビームを、イオン・カラムの軸上へ、かつ、イオン・カラムの軸に対して平行に偏向させるように、第2の偏向器を作動させるステップとを含む。
【0078】
いくつかの実施形態では、構造をミリングする前記方法がさらに、前記複数のビーム画定絞りの上方に第1の偏向器を配置するステップと、前記複数のビーム画定絞りの下方に第2の偏向器を配置するステップとを含む。
【0079】
いくつかの実施形態では、第1のビーム画定絞りを選択する前記ステップが、イオン・ビームを、前記複数のビーム画定絞りのうちの第1の絞り上へ偏向させるように、第1の偏向器を作動させるステップと、イオン・ビームを、イオン・カラムの軸上へ、かつ、イオン・カラムの軸に対して平行に偏向させるように、第2の偏向器を作動させるステップとを含み、第2のビーム画定絞りを選択する前記ステップが、イオン・ビームを、前記複数のビーム画定絞りのうちの第2の絞り上へ偏向させるように、第1の偏向器を作動させるステップと、イオン・ビームを、イオン・カラムの軸上へ、かつ、イオン・カラムの軸に対して平行に偏向させるように、第2の偏向器を作動させるステップとを含み、第3のビーム画定絞りを選択する前記ステップが、イオン・ビームを、前記複数のビーム画定絞りのうちの第3の絞り上へ偏向させるように、第1の偏向器を作動させるステップと、イオン・ビームを、イオン・カラムの軸上へ、かつ、イオン・カラムの軸に対して平行に偏向させるように、第2の偏向器を作動させるステップとを含み、第4のビーム画定絞りを選択する前記ステップが、イオン・ビームを、前記複数のビーム画定絞りのうちの第4の絞り上へ偏向させるように、第1の偏向器を作動させるステップと、イオン・ビームを、イオン・カラムの軸上へ、かつ、イオン・カラムの軸に対して平行に偏向させるように、第2の偏向器を作動させるステップとを含む。
【0080】
いくつかの実施形態では、構造をミリングする前記方法が、前記ミリング工程の後に実行されるイオン・ビーム研磨工程をさらに含む。いくつかの実施形態では、構造をミリングする前記方法が、前記微細ミリング工程の後に実行されるイオン・ビーム研磨工程をさらに含む。
【0081】
本発明のいくつかの実施形態によれば、イオン・カラムおよび複数のビーム画定絞りを備える集束イオン・ビーム・システムを使用して、1つまたは複数の基準マークを関心領域の近くに含むターゲット内の構造をバルク・ミリングし、微細ミリングする方法は、第1の電流を有するイオン・ビームを生成するための第1のビーム画定絞りを選択するステップと、第1の電流を有するイオン・ビームをターゲット上へ集束させるように、イオン・カラム内の電極電圧を設定するステップと、第1の電流を有するイオン・ビームをターゲット上へ導くステップと、イオン・カラムの軸に対する基準マークの位置を決定するために、第1の電流を有するイオン・ビームを基準マークに亘って走査するステップと、第1の電流よりも大きい第2の電流を有するイオン・ビームを生成するための第2のビーム画定絞りを選択するステップと、イオン・カラム内の電極電圧を再設定せずに、第2の電流を有するイオン・ビームをターゲット上へ導くステップと、第2の電流を有するイオン・ビームを所定のパターンに従って偏向させて、関心領域においてバルク・ミリング工程を実行するステップであり、前記ビーム偏向が、第1の電流を有するイオン・ビームによって決定したイオン・カラムの軸に対する基準マークの位置を考慮して行われるステップと、前記バルク・ミリング工程が完了したかどうかを判断し、前記バルク・ミリング工程が完了していない場合に、第1のビーム画定絞りを選択する前記ステップに戻るステップと、第1のビーム電流よりも小さい第3の電流を有するイオン・ビームを生成するための第3のビーム画定絞りを選択するステップと、第3の電流を有するイオン・ビームをターゲット上へ集束させるように、イオン・カラム内の電極電圧を設定するステップと、第3の電流を有するイオン・ビームをターゲット上へ導くステップと、イオン・カラムの軸に対する基準マークの位置を決定するために、第3の電流を有するイオン・ビームを基準マークに亘って走査するステップであり、第3の電流を有するイオン・ビームの前記位置決定が、第1の電流を有するイオン・ビームの前記位置決定よりも正確なステップと、第3の電流よりも大きく、第1の電流よりも小さい第4の電流を有するイオン・ビームを生成するための第4のビーム画定絞りを選択するステップと、イオン・カラム内の電極電圧を再設定せずに、第4の電流を有するイオン・ビームをターゲット上へ導くステップと、第4の電流を有するイオン・ビームを所定のパターンに従って偏向させて、関心領域において微細ミリング工程を実行するステップであり、前記ビーム偏向が、第3の電流を有するイオン・ビームによって決定したイオン・カラムの軸に対する基準マークの位置を考慮して行われるステップと、前記微細ミリング工程が完了したかどうかを判断し、前記微細ミリング工程が完了していない場合に、第3のビーム画定絞りを選択する前記ステップに戻るステップとを含む。
【0082】
いくつかの実施形態では、第1のビーム画定絞りを選択する前記ステップが、前記複数の絞りのうちの第1の絞りをイオン・カラムの軸上に機械的に移動させるステップを含み、第2のビーム画定絞りを選択する前記ステップが、前記複数の絞りのうちの第2の絞りをイオン・カラムの軸上に機械的に移動させるステップを含み、第3のビーム画定絞りを選択する前記ステップが、前記複数の絞りのうちの第3の絞りをイオン・カラムの軸上に機械的に移動させるステップを含み、第4のビーム画定絞りを選択する前記ステップが、前記複数の絞りのうちの第4の絞りをイオン・カラムの軸上に機械的に移動させるステップを含む。
【0083】
いくつかの実施形態では、前記方法がさらに、前記複数のビーム画定絞りの上方に第1の偏向器を配置するステップと、前記複数のビーム画定絞りの下方に第2の偏向器を配置するステップとを含む。
【0084】
いくつかの実施形態では、第1のビーム画定絞りを選択する前記ステップが、イオン・ビームを、前記複数のビーム画定絞りのうちの第1の絞り上へ偏向させるように、第1の偏向器を作動させるステップと、イオン・ビームを、イオン・カラムの軸上へ、かつ、イオン・カラムの軸に対して平行に偏向させるように、第2の偏向器を作動させるステップとを含み、第2のビーム画定絞りを選択する前記ステップが、イオン・ビームを、前記複数のビーム画定絞りのうちの第2の絞り上へ偏向させるように、第1の偏向器を作動させるステップと、イオン・ビームを、イオン・カラムの軸上へ、かつ、イオン・カラムの軸に対して平行に偏向させるように、第2の偏向器を作動させるステップとを含み、第3のビーム画定絞りを選択する前記ステップが、イオン・ビームを、前記複数のビーム画定絞りのうちの第3の絞り上へ偏向させるように、第1の偏向器を作動させるステップと、イオン・ビームを、イオン・カラムの軸上へ、かつ、イオン・カラムの軸に対して平行に偏向させるように、第2の偏向器を作動させるステップとを含み、第4のビーム画定絞りを選択する前記ステップが、イオン・ビームを、前記複数のビーム画定絞りのうちの第4の絞り上へ偏向させるように、第1の偏向器を作動させるステップと、イオン・ビームを、イオン・カラムの軸上へ、かつ、イオン・カラムの軸に対して平行に偏向させるように、第2の偏向器を作動させるステップとを含む。
【0085】
いくつかの実施形態では、前記方法が、前記微細ミリング工程の後に実行されるイオン・ビーム研磨工程をさらに含む。
【0086】
いくつかの実施形態では、前記方法が、保護層の付着ステップをさらに含み、この付着ステップが前記ミリング工程の前に実行される。いくつかの実施形態では、前記方法が、保護層の付着ステップをさらに含み、この付着ステップが前記バルク・ミリング工程の前に実行される。
【0087】
本発明のいくつかの実施形態によれば、粒子源と、複数のビーム画定絞りと、少なくとも1つの集束レンズとを有する荷電粒子ビーム・システムを動作させる方法は、荷電粒子源から荷電粒子を引き出すステップと、荷電粒子をビームに形成するステップと、第1の直径を有する第1のビーム画定絞りを通過するように荷電粒子ビームを導くステップであり、第1のビーム画定絞りを出た荷電粒子ビームが第1の電流を有するステップと、ターゲット表面のスポットに荷電粒子を収束させるように、集束レンズを調整するステップと、第1の直径とは異なる第2の直径を有する第2のビーム画定絞りを通過するように荷電粒子ビームを導くステップであり、第2のビーム画定絞りを出た荷電粒子ビームが第2の電流を有するステップと、集束レンズの集束強度を変更せずに、荷電粒子を、集束レンズを通過するように導くステップとを含む。
【0088】
いくつかの実施形態では、集束レンズの集束強度を変更せずに、荷電粒子を、集束レンズを通過するように導くステップが、ビームを再整列させることなく、荷電粒子を、集束レンズを通過するように導くステップを含む。
【0089】
本発明のいくつかの実施形態およびそれらの実施形態の利点を詳細に説明したが、添付の特許請求の範囲によって定義された本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、本明細書に記載された実施形態に、さまざまな変更、置換および改変を加えることができることを理解すべきである。上記の電極に対する電圧源は、単一の電源に由来するものとし、分圧器を使用することができるが、それぞれの電極に対して別個の電源を使用することもでき、または分圧器と電源の何らかの組合せを使用することもできる。上記の例は、2次粒子の軌道を変化させるのに電界を提供するが、磁界を使用することもできる。ただし、その場合には、1次ビームに対する磁場の影響を考慮しなければならない。さらに、本出願の範囲が、本明細書に記載された工程、機械、製造、組成物、手段、方法およびステップの特定の実施形態に限定されることは意図されていない。当業者なら本発明の開示から容易に理解するように、本明細書に記載された対応する実施形態と実質的に同じ機能を実行し、または実質的に同じ結果を達成する既存のまたは今後開発される工程、機械、製造、組成物、手段、方法またはステップを、本発明に従って利用することができる。したがって、添付の特許請求の範囲は、その範囲内に、このような工程、機械、製造、組成物、手段、方法またはステップを含むことが意図されている。
【符号の説明】
【0090】
2902 軸
2904 荷電粒子ビーム
2906 絞り
2910 レンズ
2912 集束ビーム
2916 ターゲット(基板)
2926 絞り
2932 集束ビーム
2946 絞り

【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオン・カラムおよび複数のビーム画定絞りを備える集束イオン・ビーム・システムを使用して、1つまたは複数の基準マークを関心領域の近くに含むターゲット内の構造をミリングする方法であって、
第1の電流を有するイオン・ビームを生成するための第1のビーム画定絞りを選択するステップと、
前記第1の電流を有する前記イオン・ビームを前記ターゲット上へ集束させるように、前記イオン・カラム内の電極電圧を設定するステップと、
前記第1の電流を有する前記イオン・ビームを前記ターゲット上へ導くステップと、
前記イオン・カラムの軸に対する前記基準マークの位置を決定するために、前記第1の電流を有する前記イオン・ビームを前記基準マークに亘って走査するステップと、
前記第1の電流よりも大きい第2の電流を有するイオン・ビームを生成するための第2のビーム画定絞りを選択するステップと、
前記イオン・カラム内の前記電極電圧を再設定せずに、前記第2の電流を有する前記イオン・ビームを前記ターゲット上へ導くステップと、
前記第2の電流を有する前記イオン・ビームを所定のパターンに従って偏向させて、前記関心領域においてミリング工程を実行するステップであり、このビーム偏向が、前記第1の電流を有する前記イオン・ビームによって決定した前記イオン・カラムの軸に対する前記基準マークの位置を考慮して行われるステップと
を含む方法。
【請求項2】
前記第2の電流を有する前記イオン・ビームを所定のパターンに従って偏向させて前記関心領域においてミリング工程を実行した後に、前記第1の電流を有する前記イオン・ビームを生成するための前記第1のビーム画定絞りを再び選択して、前記ターゲットを画像化するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1のビーム電流よりも小さい第3の電流を有するイオン・ビームを生成するための第3のビーム画定絞りを選択するステップと、
前記第3の電流を有する前記イオン・ビームを前記ターゲット上へ集束させるように、前記イオン・カラム内の前記電極電圧を設定するステップと、
前記第3の電流を有する前記イオン・ビームを前記ターゲット上へ導くステップと、
前記イオン・カラムの軸に対する前記基準マークの位置を決定するために、前記第3の電流を有する前記イオン・ビームを前記基準マークに亘って走査するステップであり、前記第3の電流を有する前記イオン・ビームの前記位置決定が、前記第1の電流を有する前記イオン・ビームの前記位置決定よりも正確なステップと、
前記第3の電流よりも大きく、前記第1の電流よりも小さい第4の電流を有するイオン・ビームを生成するための第4のビーム画定絞りを選択するステップと、
前記イオン・カラム内の前記電極電圧を再設定せずに、前記第4の電流を有する前記イオン・ビームを前記ターゲット上へ導くステップと、
前記第4の電流を有する前記イオン・ビームを所定のパターンに従って偏向させて、前記関心領域において微細ミリング工程を実行するステップであり、このビーム偏向が、前記第3の電流を有する前記イオン・ビームによって決定した前記イオン・カラムの軸に対する前記基準マークの位置を考慮して行われるステップと
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記第4の電流を有する前記イオン・ビームを所定のパターンに従って偏向させて前記関心領域において前記微細ミリング工程を実行した後に、前記第3の電流を有する前記イオン・ビームを生成するための前記第3のビーム画定絞りを再び選択して、前記ターゲットを画像化するステップをさらに含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
第1のビーム画定絞りを選択する前記ステップが、前記複数の絞りのうちの第1の絞りを前記イオン・カラムの軸上に機械的に移動させるステップを含み、
第2のビーム画定絞りを選択する前記ステップが、前記複数の絞りのうちの第2の絞りを前記イオン・カラムの軸上に機械的に移動させるステップを含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項6】
第1のビーム画定絞りを選択する前記ステップが、前記複数の絞りのうちの第1の絞りを前記イオン・カラムの軸上に機械的に移動させるステップを含み、
第2のビーム画定絞りを選択する前記ステップが、前記複数の絞りのうちの第2の絞りを前記イオン・カラムの軸上に機械的に移動させるステップを含み、
第3のビーム画定絞りを選択する前記ステップが、前記複数の絞りのうちの第3の絞りを前記イオン・カラムの軸上に機械的に移動させるステップを含み、
第4のビーム画定絞りを選択する前記ステップが、前記複数の絞りのうちの第4の絞りを前記イオン・カラムの軸上に機械的に移動させるステップを含む、
請求項3に記載の方法。
【請求項7】
前記複数のビーム画定絞りの上方に第1の偏向器を配置するステップと、
前記複数のビーム画定絞りの下方に第2の偏向器を配置するステップと
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
第1のビーム画定絞りを選択する前記ステップが、
前記イオン・ビームを、前記複数のビーム画定絞りのうちの第1の絞り上へ偏向させるように、前記第1の偏向器を作動させるステップと、
前記イオン・ビームを、前記イオン・カラムの軸上へ、かつ、前記イオン・カラムの軸に対して平行に偏向させるように、前記第2の偏向器を作動させるステップと
を含み、
第2のビーム画定絞りを選択する前記ステップが、
前記イオン・ビームを、前記複数のビーム画定絞りのうちの第2の絞り上へ偏向させるように、前記第1の偏向器を作動させるステップと、
前記イオン・ビームを、前記イオン・カラムの軸上へ、かつ、前記イオン・カラムの軸に対して平行に偏向させるように、前記第2の偏向器を作動させるステップと
を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記複数のビーム画定絞りの上方に第1の偏向器を配置するステップと、
前記複数のビーム画定絞りの下方に第2の偏向器を配置するステップと
をさらに含む、請求項3に記載の方法。
【請求項10】
第1のビーム画定絞りを選択する前記ステップが、
前記イオン・ビームを、前記複数のビーム画定絞りのうちの第1の絞り上へ偏向させるように、前記第1の偏向器を作動させるステップと、
前記イオン・ビームを、前記イオン・カラムの軸上へ、かつ、前記イオン・カラムの軸に対して平行に偏向させるように、前記第2の偏向器を作動させるステップと
を含み、
第2のビーム画定絞りを選択する前記ステップが、
前記イオン・ビームを、前記複数のビーム画定絞りのうちの第2の絞り上へ偏向させるように、前記第1の偏向器を作動させるステップと、
前記イオン・ビームを、前記イオン・カラムの軸上へ、かつ、前記イオン・カラムの軸に対して平行に偏向させるように、前記第2の偏向器を作動させるステップと
を含み、
第3のビーム画定絞りを選択する前記ステップが、
前記イオン・ビームを、前記複数のビーム画定絞りのうちの第3の絞り上へ偏向させるように、前記第1の偏向器を作動させるステップと、
前記イオン・ビームを、前記イオン・カラムの軸上へ、かつ、前記イオン・カラムの軸に対して平行に偏向させるように、前記第2の偏向器を作動させるステップと
を含み、
第4のビーム画定絞りを選択する前記ステップが、
前記イオン・ビームを、前記複数のビーム画定絞りのうちの第4の絞り上へ偏向させるように、前記第1の偏向器を作動させるステップと、
前記イオン・ビームを、前記イオン・カラムの軸上へ、かつ、前記イオン・カラムの軸に対して平行に偏向させるように、前記第2の偏向器を作動させるステップと
を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記ミリング工程の後に実行されるイオン・ビーム研磨工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記微細ミリング工程の後に実行されるイオン・ビーム研磨工程をさらに含む、請求項3に記載の方法。
【請求項13】
イオン・カラムおよび複数のビーム画定絞りを備える集束イオン・ビーム・システムを使用して、1つまたは複数の基準マークを関心領域の近くに含むターゲット内の構造をバルク・ミリングし、微細ミリングする方法であって、
第1の電流を有するイオン・ビームを生成するための第1のビーム画定絞りを選択するステップと、
前記第1の電流を有する前記イオン・ビームを前記ターゲット上へ集束させるように、前記イオン・カラム内の電極電圧を設定するステップと、
前記第1の電流を有する前記イオン・ビームを前記ターゲット上へ導くステップと、
前記イオン・カラムの軸に対する前記基準マークの位置を決定するために、前記第1の電流を有する前記イオン・ビームを前記基準マークに亘って走査するステップと、
前記第1の電流よりも大きい第2の電流を有するイオン・ビームを生成するための第2のビーム画定絞りを選択するステップと、
前記イオン・カラム内の前記電極電圧を再設定せずに、前記第2の電流を有する前記イオン・ビームを前記ターゲット上へ導くステップと、
前記第2の電流を有する前記イオン・ビームを所定のパターンに従って偏向させて、前記関心領域においてバルク・ミリング工程を実行するステップであり、このビーム偏向が、前記第1の電流を有する前記イオン・ビームによって決定した前記イオン・カラムの軸に対する前記基準マークの位置を考慮して行われるステップと、
前記バルク・ミリング工程が完了したかどうかを判断し、前記バルク・ミリング工程が完了していない場合に、第1のビーム画定絞りを選択する前記ステップに戻るステップと、
前記第1のビーム電流よりも小さい第3の電流を有するイオン・ビームを生成するための第3のビーム画定絞りを選択するステップと、
前記第3の電流を有する前記イオン・ビームを前記ターゲット上へ集束させるように、前記イオン・カラム内の前記電極電圧を設定するステップと、
前記第3の電流を有する前記イオン・ビームを前記ターゲット上へ導くステップと、
前記イオン・カラムの軸に対する前記基準マークの位置を決定するために、前記第3の電流を有する前記イオン・ビームを前記基準マークに亘って走査するステップであり、前記第3の電流を有する前記イオン・ビームの前記位置決定が、前記第1の電流を有する前記イオン・ビームの前記位置決定よりも正確なステップと、
前記第3の電流よりも大きく、前記第1の電流よりも小さい第4の電流を有するイオン・ビームを生成するための第4のビーム画定絞りを選択するステップと、
前記イオン・カラム内の前記電極電圧を再設定せずに、前記第4の電流を有する前記イオン・ビームを前記ターゲット上へ導くステップと、
前記第4の電流を有する前記イオン・ビームを所定のパターンに従って偏向させて、前記関心領域において微細ミリング工程を実行するステップであり、このビーム偏向が、前記第3の電流を有する前記イオン・ビームによって決定した前記イオン・カラムの軸に対する前記基準マークの位置を考慮して行われるステップと、
前記微細ミリング工程が完了したかどうかを判断し、前記微細ミリング工程が完了していない場合に、前記第3のビーム画定絞りを選択する前記ステップに戻るステップと
を含む方法。
【請求項14】
第1のビーム画定絞りを選択する前記ステップが、前記複数の絞りのうちの第1の絞りを前記イオン・カラムの軸上に機械的に移動させるステップを含み、
第2のビーム画定絞りを選択する前記ステップが、前記複数の絞りのうちの第2の絞りを前記イオン・カラムの軸上に機械的に移動させるステップを含み、
第3のビーム画定絞りを選択する前記ステップが、前記複数の絞りのうちの第3の絞りを前記イオン・カラムの軸上に機械的に移動させるステップを含み、
第4のビーム画定絞りを選択する前記ステップが、前記複数の絞りのうちの第4の絞りを前記イオン・カラムの軸上に機械的に移動させるステップを含む、
請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記複数のビーム画定絞りの上方に第1の偏向器を配置するステップと、
前記複数のビーム画定絞りの下方に第2の偏向器を配置するステップと
をさらに含む、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
第1のビーム画定絞りを選択する前記ステップが、
前記イオン・ビームを、前記複数のビーム画定絞りのうちの第1の絞り上へ偏向させるように、前記第1の偏向器を作動させるステップと、
前記イオン・ビームを、前記イオン・カラムの軸上へ、かつ、前記イオン・カラムの軸に対して平行に偏向させるように、前記第2の偏向器を作動させるステップと
を含み、
第2のビーム画定絞りを選択する前記ステップが、
前記イオン・ビームを、前記複数のビーム画定絞りのうちの第2の絞り上へ偏向させるように、前記第1の偏向器を作動させるステップと、
前記イオン・ビームを、前記イオン・カラムの軸上へ、かつ、前記イオン・カラムの軸に対して平行に偏向させるように、前記第2の偏向器を作動させるステップと
を含み、
第3のビーム画定絞りを選択する前記ステップが、
前記イオン・ビームを、前記複数のビーム画定絞りのうちの第3の絞り上へ偏向させるように、前記第1の偏向器を作動させるステップと、
前記イオン・ビームを、前記イオン・カラムの軸上へ、かつ、前記イオン・カラムの軸に対して平行に偏向させるように、前記第2の偏向器を作動させるステップと
を含み、
第4のビーム画定絞りを選択する前記ステップが、
前記イオン・ビームを、前記複数のビーム画定絞りのうちの第4の絞り上へ偏向させるように、前記第1の偏向器を作動させるステップと、
前記イオン・ビームを、前記イオン・カラムの軸上へ、かつ、前記イオン・カラムの軸に対して平行に偏向させるように、前記第2の偏向器を作動させるステップと
を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記微細ミリング工程の後に実行されるイオン・ビーム研磨工程をさらに含む、請求項13に記載の方法。
【請求項18】
保護層の付着ステップをさらに含み、前記付着ステップが前記ミリング工程の前に実行される、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
保護層の付着ステップをさらに含み、前記付着ステップが前記バルク・ミリング工程の前に実行される、請求項13に記載の方法。
【請求項20】
粒子源と、複数のビーム画定絞りと、少なくとも1つの集束レンズとを有する荷電粒子ビーム・システムを動作させる方法であって、
前記荷電粒子源から荷電粒子を引き出すステップと、
前記荷電粒子をビームに形成するステップと、
第1の直径を有する第1のビーム画定絞りを通過するように前記荷電粒子ビームを導くステップであり、前記第1のビーム画定絞りを出た前記荷電粒子ビームが第1の電流を有するステップと、
ターゲット表面のスポットに前記荷電粒子を収束させるように、前記集束レンズを調整するステップと、
前記第1の直径とは異なる第2の直径を有する第2のビーム画定絞りを通過するように前記荷電粒子ビームを導くステップであり、前記第2のビーム画定絞りを出た前記荷電粒子ビームが第2の電流を有するステップと、
前記集束レンズの集束強度を変更せずに、前記荷電粒子を、前記集束レンズを通過するように導くステップと
を含む方法。
【請求項21】
前記集束レンズの集束強度を変更せずに、前記荷電粒子を、前記集束レンズを通過するように導くステップが、前記ビームを再整列させることなく、前記荷電粒子を、前記集束レンズを通過するように導くステップを含む、請求項20に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【公開番号】特開2012−178347(P2012−178347A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−31773(P2012−31773)
【出願日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【出願人】(501419107)エフ・イ−・アイ・カンパニー (78)
【Fターム(参考)】