説明

荷電粒子ビーム出射装置及び荷電粒子ビーム出射方法

【課題】異なる照射方式の照射装置を有する場合であっても、照射精度及び安全性を確保
する。
【解決手段】荷電粒子ビームを照射対象に対して出射する荷電粒子ビーム出射装置におい
て、
荷電粒子ビームを発生する荷電粒子ビーム発生装置1と、荷電粒子ビームを照射対象に
照射する、散乱体方式の照射装置3p及びスキャニング方式の照射装置3sと、荷電粒子
ビーム発生装置1から出射された荷電粒子ビームを2つの照射装置3p,3sのうちの選
択された1つの照射装置へ輸送するビーム輸送系2と、荷電粒子ビーム発生装置1の運転
条件を、選択された照射装置の照射方式に応じて変更する中央制御装置23とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、陽子及び炭素イオン等の荷電粒子ビームを患部に照射して治療する荷電粒子
ビーム出射装置及び荷電粒子ビーム出射方法に関する。
【背景技術】
【0002】
癌などの患者の患部に陽子及び炭素イオン等の荷電粒子ビームを照射する治療方法が知
られている。この治療に用いる荷電粒子ビーム出射装置のうち大規模なものは、荷電粒子
ビーム発生装置、ビーム輸送系、及び複数の照射装置を備えている。荷電粒子ビーム発生
装置で加速された荷電粒子ビームは、ビーム輸送系を経て複数の照射装置のうちの選択さ
れた1つの照射装置に達し、照射装置のノズルから治療ベッド上の患者の患部に照射され
る。一般に、このような複数の照射装置を有する荷電粒子ビーム出射装置では、1つの荷
電粒子ビーム発生装置に対して複数の照射装置が接続されており、ビーム輸送系の設定を
変えることで対象となる照射装置へとビームを輸送する(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
照射装置の照射方式としては、散乱体によってビームを広げた後に患部形状に合わせて
切り出す照射手法(散乱体方式)や、細いビームを患部領域内に走査させる照射手法(ス
キャニング方式)が知られている(例えば、特許文献2参照。)。
【0004】
【特許文献1】特表平11−501232号公報
【特許文献2】特許第2833602号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般に、スキャニング方式は散乱体方式に比べて患部形状により合致した線量分布を得
ることができるという特徴があり、近年、医療分野における実用化が進んでいる。従来、
複数の照射装置を備える荷電粒子ビーム出射装置においては、散乱体方式の照射装置を複
数備えるのが一般的であったが、上記のように近年スキャニング方式の実用化が進んでお
り、今後は例えば散乱体方式とスキャニング方式といったように異なる照射方式を含む複
数の照射装置を備えた荷電粒子ビーム出射装置が実用化されることが考えられる。
【0006】
発明者らがスキャニング方式および散乱体方式を検討したところ、下記の課題が有るこ
とを発見した。すなわち、スキャニング方式は、積算照射量に対応して機器設定を変更し
つつ照射位置、エネルギーといった照射条件を順次変更する方式であるため、照射装置に
輸送されるビームのビーム電流が大き過ぎると機器設定変更が追従できなくなり、照射精
度が悪化する可能性がある。また、細いビームを使用するため各瞬間のピーク線量率が高
く、治療照射における安全性の観点からもビーム電流を適度に小さくしておくのが望まし
い。さらに、細いビームを使用する方式であるため、輸送されるビームサイズについても
抑制する必要がある。
【0007】
一方、散乱体方式では、ビームは散乱体によって広げられ、走査されずに照射されるた
め、照射装置に輸送されるビームのビーム電流、ビームサイズを抑制しなくとも、照射精
度及び安全性に対する影響は少ない。治療時間を短くするためには、適度にビーム電流を
大きくして線量率を高めることが望ましい。したがって、例えば上記したような散乱体方
式とスキャニング方式の双方の照射装置を備えた荷電粒子ビーム出射装置において、照射
精度及び安全性を満足しつつ効率の良い治療照射を行うためには、照射装置に異なる条件
のビームを輸送することが望ましい。すなわち、荷電粒子ビームを発生する荷電粒子ビー
ム発生装置の設定を治療照射がどの照射装置(照射方式)で行われるかによって変更する
ことが望ましい。
【0008】
しかしながら、従来の複数の照射装置を有する荷電粒子ビーム出射装置の場合には、通
常、荷電粒子ビーム発生装置はどの照射装置へビームを輸送する場合にもビーム電流、ビ
ームサイズ等について同等の条件のビームを出射していた。このため、従来の荷電粒子ビ
ーム出射装置の場合、散乱体方式とスキャニング方式といったような異なる照射方式の照
射装置を設けた場合に、それぞれの照射方式に適したビームを照射装置に供給することが
できなかった。したがって、照射精度及び安全性の確保の観点で改善の余地があった。
【0009】
本発明は、上記従来技術の問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、異なる照射
方式の照射装置を有する場合であっても、照射精度及び安全性を確保することができる荷
電粒子ビーム出射装置及び荷電粒子ビーム出射方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記した目的を達成する本発明の特徴は、荷電粒子ビームを照射対象に対して出射する
荷電粒子ビーム出射装置において、前記荷電粒子ビームを発生する荷電粒子ビーム発生装
置と、前記荷電粒子ビームを照射対象に照射する複数の照射装置であって、少なくとも一
部が異なる照射方式を適用している前記複数の照射装置と、前記荷電粒子ビーム発生装置
から出射された前記荷電粒子ビームを前記複数の照射装置のうちの選択された1つの照射
装置へ輸送するビーム輸送系と、前記荷電粒子ビーム発生装置の運転条件を、前記選択さ
れた照射装置の照射方式に応じて変更する制御装置とを備えたことにある。
【0011】
本発明は、選択された照射装置の照射方式に応じて荷電粒子ビーム発生装置の運転条件
を変更するため、選択された照射装置の照射方式に好適な荷電粒子ビームを照射装置に輸
送することができる。これにより、照射精度及び安全性を確保することができる。
【0012】
好ましくは、前記荷電粒子ビーム発生装置から出射された前記荷電粒子ビームのビーム
状態を検出する検出装置と、前記検出されたビーム状態が正常であるかどうかを判定する
判定装置とを備え、前記判定装置の判定条件を前記選択された照射装置の照射方式に応じ
て変更することである。これにより、選択された照射装置に輸送される荷電粒子ビームが
その照射方式に好適なビームであるか、的確に判定することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、異なる照射方式の照射装置を有する場合であっても、照射精度及び安
全性を確保することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を図面を用いて詳細に説明する。
(実施形態1)
本発明の好適な一実施形態である荷電粒子ビーム出射装置を、図1を用いて説明する。
【0015】
本実施形態の荷電粒子ビーム出射装置100は、荷電粒子ビーム発生装置1、荷電粒子
ビーム発生装置1の下流側に接続されたビーム輸送系2、及び照射野形成装置である2つ
の照射装置3s,3pを備えている。本実施形態の荷電粒子ビーム出射装置100は、具
体的には陽子線出射装置である。
【0016】
荷電粒子ビーム発生装置1は、イオン源(図示せず)、前段加速器(例えば線形加速器
)4及び主加速器であるシンクロトロン5を有する。シンクロトロン5は、一対の電極に
よって構成された出射用高周波印加装置6及び高周波加速空胴7をイオンビームの周回軌
道上に設置している。出射用高周波印加装置6の電極には第1高周波電源(図示せず)が
接続され、高周波加速空胴7には第2高周波電源(図示せず)が別途設けられる。イオン
源で発生したイオン(例えば、陽イオン(または炭素イオン))は前段加速器4で加速さ
れる。前段加速器4から出射されたイオンビーム(荷電粒子ビーム)はシンクロトロン5
に入射される。荷電粒子ビームであるイオンビームは、第2高周波電源からの高周波電力
の印加によって高周波加速空胴7内に発生する電磁場に基づいてエネルギーを与えられて
加速される。シンクロトロン5内を周回するイオンビームは、設定されたエネルギー(例
えば100〜200MeV)まで加速された後、シンクロトロン5から出射される。すな
わち、第1高周波電源からの高周波が出射用高周波印加装置6より周回しているイオンビ
ームに印加される。このため、安定限界内で周回しているイオンビームは、安定限界外に
移行し、出射用デフレクタ8を通って出射される。イオンビームの出射の際には、シンク
ロトロン5に設けられた四極電磁石(図示せず)及び偏向電磁石10に導かれる電流が電
流設定値に保持され、安定限界もほぼ一定に保持されている。出射用高周波印加装置6へ
の高周波電力の印加を停止することによって、シンクロトロン5からのイオンビームの出
射が停止される。また、出射用高周波印加装置6に接続された第1高周波電源が、ビームエネルギーとビーム電流に対応して予め記憶した設定値に基づいて制御されることで、所望のビーム電流のイオンビームがシンクロトロン5から出射される。
【0017】
2つの照射装置3s,3pはそれぞれ異なる治療室に配置されており、ビーム輸送系2
によって荷電粒子ビーム発生装置1からのイオンビームが選択された治療室へと輸送され
る。2つの照射装置のうち、照射装置3pは散乱体方式の照射装置、照射装置3sはスキ
ャニング方式の照射装置であり、以下ではそれぞれの照射装置3p,3sが配置された治
療室を散乱体式治療室11p、スキャニング式治療室11sと呼ぶ。特に図示しないが、
これらの治療室11p,11s内には、患者を適切な位置に固定する治療ベッド、患者の
透視画像を得る為のX線透視装置等が配置される。
【0018】
また、シンクロトロン5は、そのイオンビームの周回軌道上にスクレーパ装置15を有
している。スクレーパ装置15は、ビーム周回軌道からの距離を調整できる金属製のブロ
ックであるスクレーパ(図示せず)を備えており、スクレーパをビーム周回軌道に近づけ
ていくことでビームの一部を削り取り、ビームサイズを細くする。さらに、シンクロトロ
ン5は、ビームの周回周波数を計測する周波数モニタ(検出装置)16、周回軌道位置を
計測する周回軌道位置モニタ(検出装置)17、及びシンクロトロン偏向電磁石の磁場強
度を計測する磁場モニタ(図示せず)を有する。イオンビームの加速後のこれらモニタ1
6,17の計測結果は、後述の加速器制御装置24に出力され、これらの出力値と予め記
憶した設定値との偏差が許容範囲内であるか否かが判定される。このようにして、加速器
制御装置24はシンクロトロン5を周回中のイオンビームが所望のビームエネルギーであ
るか否かを判定する。許容範囲を超える出力がある場合には、加速器制御装置24は後述
の中央制御装置23に異常信号を出力する。これにより、中央制御装置23は加速器制御
装置24を介して荷電粒子ビーム発生装置1を制御し、ビーム出射をせずにそのままビー
ムを減速させる。全ての出力が許容範囲内に入っていると判定された場合には、出射用高
周波印加装置6へ高周波電力を印加し、シンクロトロン5からのイオンビームの出射が開
始される。
【0019】
シンクロトロン5から出射されたイオンビームは、ビーム輸送系2により下流側に輸送
される。ビーム輸送系2は、複数の偏向電磁石(図示せず)及び四極電磁石(図示せず)
と、2つの治療室11p,11s内にそれぞれ配置された散乱体式照射装置3p、スキャ
ニング式照射装置3sに連絡されるビーム経路2p、2sとを備える。ビーム輸送系2を
構成する四極電磁石及び偏向電磁石は、後述の輸送系制御装置25からの指令に従い、シ
ンクロトロン5から出射されたイオンビームを散乱体式照射装置3p又はスキャニング式
照射装置3sのいずれか選択された側の照射装置に輸送するように設定される。ビーム輸
送系2へ導入されたイオンビームは、ビーム経路2pを通って散乱体式照射装置3pへ、
又はビーム経路2sを通ってスキャニング式照射装置3sへと輸送される。
【0020】
ビーム輸送系2は、輸送するイオンビームの位置、幅を計測するプロファイルモニタ(
検出装置)20、及び輸送ビームの電流を計測するビーム電流モニタ(検出装置)21を
有する。輸送系制御装置25は、出射開始直後から一定のサンプリング時間間隔で上記プ
ロファイルモニタ20の出力とビーム電流モニタ21の出力を取り込み、プロファイルモ
ニタ20の出力から計算されるビーム重心位置及びビームサイズとビーム電流モニタ21
の出力が、予め記憶した設定値から許容範囲を超えてずれているか否かを判定する。許容
範囲を超えた出力がある場合には、中央制御装置23に異常信号を出力し、これによりビ
ーム出射が停止される。
【0021】
散乱体式治療室11pに設けられた散乱体式照射装置3pは、特に図示して説明はしな
いが、ビームを散乱する為の散乱体、散乱されたビームの分布を計測する分布モニタ、照
射ビーム量を計測する線量モニタ、深さ方向線量分布を調整する為のエネルギー分布調整
器、ビームを必要な形状に切り出すコリメータ等を備えている。ビーム輸送系2pを経由
して供給されたイオンビームは、散乱体によってビーム進行方向と垂直な方向へ拡大され
、エネルギー分布調整器にて適切なエネルギー分布に調整された後、コリメータで標的と
なる患部の形状に合わせて切り出され、照射対象である患者へと照射される。照射量の積
算値が予め計画され、設定された値に達すると、後述の中央制御装置23へ照射終了の信
号を送信し、これにより照射が終了する。
【0022】
スキャニング式照射装置3sは、特に図示して説明はしないが、ビームを走査するため
の走査電磁石、走査されたビームの位置を計測する位置モニタ、照射ビーム量を計測する
線量モニタ等を備えている。ビーム輸送系2sを経由して供給されたイオンビームは、走
査電磁石によって照射位置を調整され、照射対象である患者へと照射される。イオンビー
ムの照射位置、エネルギーは、照射量の積算値に対応したパラメータリストとして予め計
画、設定されている。照射量の積算値が増していくのに対応して照射位置、エネルギーを
変更していき、予め計画され設定された積算値に達すると、後述の中央制御装置23へ照
射終了の信号を送信し、これにより照射が終了する。
【0023】
本実施形態の荷電粒子ビーム出射装置100は、制御システム101を備える。この制
御システム101は、治療管理システム22、中央制御装置(制御装置、第2制御装置)
23、荷電粒子ビーム発生装置1の制御を行う加速器制御装置(判定装置)24、ビーム
輸送系2の制御を行う輸送系制御装置(判定装置)25、散乱体式照射装置3pの制御を
行う散乱体式照射制御装置26p、スキャニング式照射装置3sの制御を行うスキャニン
グ式照射制御装置26sを有する。
【0024】
治療管理システム22は、照射条件データや照射スケジュールを管理するデータベース
機能を有する。治療管理システム22に記憶されている照射条件データは照射方式により
異なる。散乱体方式の場合、例えばイオンビームのエネルギー、照射方向、照射範囲、照
射量等がある。スキャニング方式の場合は、イオンビームのエネルギー、ビームサイズ、
照射位置等が、積算照射量に対応したリストデータになっている。なお、治療管理システ
ム22は、CT等診断に使う画像を取得する撮像装置(図示せず)、患者に関するデータ
を管理する患者情報管理データベース(図示せず)等に接続されている。
【0025】
以上のような構成である本実施形態の荷電粒子ビーム出射装置100による治療照射の
手順について、図2を用いて説明する。図2は治療照射までの手順を表すフローチャート
である。
【0026】
まず中央制御装置23は、治療室からのユーザー操作(ステップ31)により、治療管
理システム22から次の照射に必要な照射条件データを読み込む(ステップ32)。照射
条件データは事前に治療計画装置(図示せず)により作成されて治療管理システム22に
登録されている。この際、中央制御装置23は、上記のユーザー操作が散乱体式治療室1
1pからの操作であれば散乱体式照射装置3p用の照射条件データを、スキャニング式治
療室11sからの操作であればスキャニング式照射装置3s用の照射条件データを読み込
む。このようにして、照射条件データが散乱体式照射装置3p用かスキャニング式照射装
置3s用かを判別する。なお、照射条件データ自身に照射装置(或いは照射方法)に関する
情報を持たせ、その情報を基に中央制御装置23が判別するようにしてもよい。
【0027】
照射条件データの照射装置に関する情報とユーザーの操作場所とが矛盾していないかを
判定し(ステップ33、ステップ34又はステップ35)、矛盾があれば(例えば散乱体
式治療室11pからスキャニング式照射装置3s用照射条件データが呼び出された場合。
或いはその反対の場合。)処理を中断する(ステップ36)。
【0028】
次に中央制御装置23は、読み込んだ照射条件データを元に荷電粒子ビーム発生装置1
(シンクロトロン5)等の運転条件データを予め登録されたデータリストから選択し、各
制御装置(加速器制御装置24、輸送系制御装置25、及び照射制御装置26s,26p
)へ送信する(ステップ37、ステップ38又はステップ39、ステップ40)。例えば
加速器制御装置24に着目した場合、送信されるデータリストとしては、本実施形態では
スキャニング用と散乱体用とがある。このデータリストには、各エネルギーに対応したシ
ンクロトロン5の運転パターンデータ(電磁石パターンID等)、及び出射用高周波印加装
置6に印加する高周波電力出力等の情報が含まれている(後述の図3参照)。中央制御装
置23は、照射条件データが散乱体用であれば散乱体用データリストを、スキャニング用
であればスキャニング用データリストを使い、照射条件データにて指定されたビームエネ
ルギーから、各電磁石パターンID等の運転条件データを取得する。取得した運転条件デー
タは、加速器制御装置24へと送信される。
【0029】
各制御装置は中央制御装置23から送信された運転条件データに基づいて各機器を設定
する。各制御装置が設定完了を確認すると、照射準備完了信号を中央制御装置23に送信
する(ステップ41、ステップ42)。これにより、中央制御装置23は照射開始操作を
有効とし、準備完了を各治療室11s,11pの端末に出力する。そして、ユーザーの操
作により照射開始信号が出力されると、シンクロトロン5の運転が開始され、設定値に基
づいた治療照射が開始される。なお、各制御装置による各機器の設定が正常に終了しなか
った場合には、照射準備エラーとなり処理を中断する(ステップ43)。
加速器制御装置24は、中央制御装置23から送信された高周波電力の情報(運転条件データの一種)に基づいて、第1高周波電源から出力される高周波電力が所定値になるように、第1高周波電源を設定する。このような設定により、スキャニング式照射装置3sが選択された場合は、散乱体式照射装置3pが選択された場合よりも第1高周波電源から出力される高周波電力が小さくなる。この小さな高周波電力が高周波印加装置6に印加されるため、シンクロトロン5から出射されたビーム電流の小さなイオンビームが、スキャニング式照射装置3sに供給される。また、加速制御装置24は、スキャニング式照射装置3sが選択された場合には、中央制御装置23から送信された運転条件データに基づいて、ビームサイズが小さくなるようにスクレーパ装置15のスクレーパを所定の位置に設定する。
【0030】
図3に、上記図2のステップ38又はステップ40において中央制御装置23により選
択され加速器制御装置24へ送信される運転条件データリストの一例を示す。本実施形態
のシンクロトロン5では、前述したように周回しているイオンビームの広がりを、出射用
高周波印加装置6による出射用高周波電力の印加によって大きくし、デフレクタ8から出
射する。このように高周波電界を使った出射方法を採用することで、位置、サイズの安定
なビームを出射できると共に、ビーム電流の調整が容易になる。出射用高周波電力が大き
いほどイオンビームが広がっていく速さが大きくなり、デフレクタ8に入る割合も増える
ために、出射ビーム電流が大きくなる。また、ビームエネルギーが低いほど出射用高周波
の影響が大きいので、出射用高周波電力が同じであれば、ビームエネルギーが低いほど出
射ビーム電流が大きい。この図3に示すように、散乱体用データリストでは、ビームエネ
ルギーが低いほど出射用高周波電力を小さくしており、エネルギーによらずほぼ一定のビ
ーム電流が出射されるように設定されている。これに対応して、ビーム電流上限設定値も
一定値となっている。一方、スキャニング用データリストでは、散乱体用に比べて出射用
高周波電力が小さく、ビームエネルギーが低いほど出射ビーム電流が少なくなるように設
定されている。これに対応してビーム電流上限値は、散乱体用に比べて全体的に小さく、
ビームエネルギーが低いほど低く設定されている。
【0031】
また、図3に示すスクレーパ位置は前述したようにスクレーパのビーム周回軌道からの
距離であり、数値が大きいほどビームを削る量が小さいことを意味する。本実施形態では
、散乱体用ではビームサイズを制限しない程度の設定値に、スキャニング用ではビームを
削ってビームサイズを細くする設定値となっている。このようにして、多くのビームを必
要とする散乱体法での照射ではビームを削らず、細いビームを必要とするスキャニング法
での照射ではビームを細くする。
【0032】
また、周回周波数範囲の設定値を散乱体用では大きく、スキャニング用では小さい設定
値としている。このようにして、ビームエネルギーの変化に対して照射精度悪化の度合い
が少ない散乱体用ではエネルギー許容範囲を広く取り、スキャニング用ではエネルギー許
容範囲を狭めている。なお、図3には特に記載しなかったが、中央制御装置23から輸送
系制御装置25へ送信される運転条件データリストにおいては、ビーム位置の設定値の許
容範囲が、散乱体用では大きく、スキャニング用では小さく設定されている。
【0033】
図4は、以上説明した本実施形態における加速器制御装置24及び輸送系制御装置25
に送信される運転条件データリストの特徴部分を、散乱体照射方式とスキャニング照射方
式との差異が分かりやすいように表した図である。この図4に示すように、加速器制御装
置24へのビーム電流設定値、及び、ビームサイズ設定値は、散乱体式治療室11pへの
照射の場合の方がスキャニング式治療室11sへの照射の場合よりも大きな値となってい
る。また加速器制御装置24へのエネルギー許容範囲及び輸送系制御装置25へのビーム
位置許容範囲は、散乱体式治療室11pの方がスキャニング式治療室11sへの照射の場
合よりも大きな値となっている。
【0034】
本実施形態の荷電粒子ビーム出射装置100によれば、以下の効果が得られる。すなわ
ち、一般に散乱体照射方式では、患者へ照射されるビームの状態(広がり、エネルギー分
布)を散乱体、エネルギー分布調整器、コリメータ等照射装置に配置された機器によって
決める為、照射精度は荷電粒子ビーム発生装置1からのビーム電流に大きく依存していな
い。また、ビームエネルギーの変動に対する線量分布の変化も小さい。その為、ビーム電
流を大きくした場合や、ビームエネルギーが多少揺らいだとしても照射精度はほとんど悪
化しない。
【0035】
これに対し、スキャニング照射方式では、積算照射量に対応して機器設定を変更しつつ
照射位置、エネルギーといった照射条件を順次変更する方式であるため、照射装置に輸送
されるビームのビーム電流が大き過ぎると機器設定変更が追従できなくなり、照射精度が
悪化する可能性がある。また、細いビームを使用するため各瞬間のピーク線量率が高く、
治療照射の安全性の観点からもビーム電流を適度に小さくしておくのが望ましい。さらに
、細いビームを使用する方式であるため、輸送されるビームサイズについても抑制する必
要がある。
【0036】
以上のことから、本実施形態のように散乱体方式とスキャニング方式の双方の照射装置
3s,3pを備えた荷電粒子ビーム出射装置100において、照射精度及び安全性を満足
する治療照射を行うためには、照射装置3s,3pに対してその照射方式に応じて異なる
条件のビームを供給する必要がある。
【0037】
そこで、本実施形態の荷電粒子ビーム出射装置100においては、以上説明してきたよ
うに、選択された照射装置3s,3pの照射方式に応じて荷電粒子ビーム発生装置1の運
転条件を変更するため、選択された照射装置の照射方式に好適な荷電粒子ビームを照射装
置3s,3pに対して供給することができる。これにより、照射精度及び安全性を確保す
ることができる。さらに、周回周波数範囲の設定値を散乱体用では大きく、スキャニング
方式では小さい設定値とすることにより、ビームエネルギーの変化に対して照射精度悪化
の度合いが少ない散乱体方式ではエネルギー許容範囲を広く取って照射効率を上げ、スキ
ャニング方式ではエネルギー許容範囲を狭めて必要な照射精度を確保するよう監視するこ
とができ、照射精度及び安全性を確実に確保することができる。
【0038】
また本実施形態においては、前述したようにスキャニング用データリストをビームエネ
ルギーが低いほどビーム電流が低くなるように設定する。図5に散乱体用運転条件データ
リストとスキャニング用運転条件データリストにおけるビームエネルギーと出射ビーム電
流の関係を示す。このように、スキャニング用データリストをビームエネルギーが低いほ
どビーム電流が低くなるように設定することにより、細いビームを用いる為にビーム電流
を低く抑える必要のあるスキャニング方式での照射に際して、適切にビーム電流を設定、
監視することができ、照射精度及び安全性をさらに確実に確保することができる。
【0039】
なお、以上では、出射用高周波印加装置6により印加される出射用高周波電力に上限値
を設けなかったが、スキャニング式照射装置3sでの照射の場合の出射用高周波電力の上
限を、散乱体式照射装置3pでの照射の場合の出射用高周波電力の上限よりも小さく設定
するようにしてもよい。これにより、スキャニング方式の場合の出射電流を確実に制限す
ることができ、安全性をさらに向上させることができる。
【0040】
また、以上では、出射用高周波電力によりビーム電流を、スクレーパ装置15によりビ
ームサイズを調整するようにしたが、スクレーパを挿入してビームを削る場合、ビームが
細くなると同時にシンクロトロン5内のビーム量が減り出射ビーム電流が小さくなる。こ
れを利用して、スクレーパ装置15によるスクレーパの挿入量でビーム電流とビームサイ
ズを同時に調整するようにしてもよい。
【0041】
また図3では、各ビームエネルギーに対して1種類のビーム電流に相当する設定パラメ
ータしか記載していないが、複数のビーム電流を用意して、照射条件データの指示、或い
は、操作者の選択によってビーム電流を選択してもよい。この場合、選択されるビーム電
流に応じて出射用高周波電力を変えるが、それと同時にビーム電流上限値、スクレーパ位
置等を変更してもよい。これにより、治療照射の高度な要求に対応する自由度を得ること
が出来ると同時に、照射精度及び安全性を向上させることができる。
【0042】
また本実施形態では、スキャニング照射用と散乱体照射用の二種類のデータリストを持
つ例を示しているが、照射野サイズの異なる照射装置用など、より多くのデータリストを
持ってもよいし、治療室ごとに持ってもよい。これにより、異なる条件のビームを必要す
るシステムにおいても、各条件を自動且つ適切に実現すると共に精度及び安全性を向上さ
せることができる。
シンクロトロン5から出射されるイオンビームがスキャニング照射に使用できるほどに細い場合には、スキャニング式照射装置3s及び散乱体式照射装置3pに導くイオンビームのサイズを同じくし、前者の照射装置に導くイオンビームのビーム電流を後者の照射装置に導くイオンビームのそれよりも小さくすることが可能である。具体的には、前者の照射装置に導くイオンビームのビーム電流を後者の照射装置に導くイオンビームのそれよりも小さくすることは、前述したように、加速器制御装置24が、出力する高周波電力を小さくするように第1高周波電源を設定することによって実現される。
そのように、スキャニング式照射装置3sが選択された場合に、ビームサイズ及びビーム電流のうちでビーム電流だけを散乱体式照射装置3pが選択された場合に比べて小さくすることは、後述のサイクロトロンを用いた荷電粒子ビーム出射装置にも適用できる。
【0043】
(実施形態2)
本発明の他の実施形態である荷電粒子ビーム出射装置を、図6を用いて以下に説明する
。本実施形態の荷電粒子ビーム出射装置100Aは、荷電粒子ビーム出射装置100にお
ける、シンクロトロン5を有する荷電粒子ビーム発生装置1を、サイクロトロン5Aを有
する荷電粒子ビーム発生装置1Aに置き替え、散乱体式治療室をさらに1室付加し、制御
システム101を、運転状態監視装置(判定装置)45及び付加した治療室用の散乱体式
照射制御装置付加した制御システム101Aに置き替えた構成を有する。
【0044】
荷電粒子ビーム出射装置100Aは、イオン源(図示せず)から入射されたビームを所
定のエネルギーまで加速するサイクロトロン5Aを有する荷電粒子ビーム発生装置1Aと
、その下流側に接続されるビーム輸送系2Aと、スキャニング式照射装置3sを設置した
スキャニング式治療室11s、及び散乱体式照射装置3p1,3p2をそれぞれ設置した
散乱体式治療室11p1,11p2からなる3つの治療照射室とを備える。また、サイク
ロトロン5Aは固定エネルギーのビームをほぼ直流の荷電粒子ビームとして発生するが、
そのビームを減速し、選別するエネルギー調整器(エネルギー変更装置)46を備える。
以下、エネルギー調整器46は荷電粒子ビーム発生装置1Aに含まれるものとして説明す
るが、ビーム輸送系2に含まれる構成としても構わない。
【0045】
サイクロトロン5Aからデフレクタ47を通して出射された一定エネルギーのビームは
、ディグレーダ48でエネルギーを吸収され、照射に必要な所望のエネルギーとなる。続
いて角度アパーチャ49で大きく散乱されたビームをカットされ、分析電磁石50で偏向
され、エネルギーアパーチャ(アパーチャ装置)51で所望のエネルギーからずれたビー
ムをカットされる。これらディグレーダ48、角度アパーチャ49、分析電磁石50、及
びエネルギーアパーチャ51がビームのエネルギーを選別し、ビームサイズを調整するエ
ネルギー調整器46を構成する。エネルギーアパーチャ51には開口の大きさの異なる複
数種類のアパーチャが切り替え可能に設けられており、加速器制御装置24によってアパ
ーチャの切り替えが行われ、ビームサイズが制御される。分析電磁石50には分析電磁石
磁場モニタ(図示せず)が設けられ、この分析電磁石磁場モニタによりビームのエネルギ
ーが監視される。
【0046】
ビーム輸送系2Aは、3つの治療室11p1,11p2,11s内にそれぞれ配置され
た散乱体式照射装置3p1,3p2、及びスキャニング式照射装置3sにそれぞれ連絡さ
れるビーム経路2p1,2p2,2sを備える。また、ビーム輸送系2Aには、実施形態
1と同様にプロファイルモニタ20及びビーム電流モニタ21が配置され、ビームの状態
を監視する。
【0047】
制御システム101Aは、実施例1の制御システム構成に加えて運転状態監視装置45
を有する。運転状態監視装置45は、一定のサンプリング時間間隔で、分析電磁石50に
設置された分析電磁石磁場モニタ(図示せず)出力、ビーム輸送系2Aのプロファイルモ
ニタ20の出力とビーム電流モニタ21の出力を読み、磁場モニタ出力と、プロファイル
モニタ出力から計算されるビーム重心位置及びビームサイズとビーム電流モニタ出力が、
予め記憶した設定値から許容範囲を超えているか否かを判定する。許容範囲を超えた出力
がある場合には、中央制御装置23に異常信号を出力し、これによりサイクロトロン5A
からのビーム供給が停止される。
【0048】
以上説明した機器以外の構成及び照射手順は、実施形態1と基本的に同様である。ただ
し、本実施形態では、荷電粒子ビーム発生装置1Aがサイクロトロン5A及びエネルギー
調整器46を有した構成であるため、中央制御装置23から加速器制御装置24へ送信さ
れる運転条件データ項目が異なる。以下、この点について説明する。
【0049】
中央制御装置23は、実施形態1と同様に、読み込んだ照射条件データを元に荷電粒子
ビーム発生装置1(サイクロトロン5A)等の運転条件データを予め登録されたデータリ
ストから選択し、各制御装置(加速器制御装置24、輸送系制御装置25、照射制御装置
26s,26p1,26p2)へ送信する。加速器制御装置24に送信されるデータリス
トにはスキャニング用と散乱体用とがあり、このデータリストには、各エネルギーに対応
したイオン源の電流設定データ、分析電磁石50の運転データ、及びエネルギーアパーチ
ャ51のアパーチャの種類等の情報が含まれている。
【0050】
特に図を用いて詳細には説明しないが、本実施形態では、散乱体方式ではイオン源の電
流設定データを比較的大きく、スキャニング方式ではイオン源の電流設定データを比較的
小さく設定している。また、エネルギーアパーチャ51でのアパーチャの種類は、散乱体
方式では開口の大きいアパーチャとなる設定に、スキャニング方式ではよりビームを削っ
てビームサイズを細くするような開口の大きさのアパーチャとなる設定となっている。
【0051】
これにより、散乱体方式ではエネルギー許容範囲を広く取り、スキャニング方式ではエ
ネルギー許容範囲を狭めている。また、中央制御装置23から輸送系制御装置25へ送信
されるデータリストにおいては、ビーム位置の設定値の許容範囲が、散乱体方式では大き
く、スキャニング方式では小さく設定されている。
【0052】
以上から、実施形態1と同様に、図4に示すように、加速器制御装置24へのビーム電
流設定値、及び、ビームサイズ設定値は、散乱体式治療室11p1,11p2への照射の
場合の方がスキャニング式治療室11sへの照射の場合よりも大きな値となっている。ま
た加速器制御装置24へのエネルギー許容範囲及び輸送系制御装置25へのビーム位置許
容範囲は、散乱体式治療室11p1,11p2の方がスキャニング式治療室11sへの照
射の場合よりも大きな値となっている。
【0053】
したがって、本実施形態においても、照射精度及び安全性を確保することができる。さ
らに本実施の形態によれば、エネルギー、ビーム電流、ビーム位置、幅といった運転状態
を表すパラメータを、加速器制御装置24、輸送系制御装置25とは別に単独で設けた運
転状態監視装置45によって監視する。これにより、例えば加速器制御装置24の誤動作
といった単一故障時にも所望の運転状態になっていることを監視することができ、安全性
を一層向上することができる。
【0054】
なお、以上説明した2つの実施形態では、出射用高周波電力、ビーム電流上限、スクレ
ーパ位置、周波数範囲、イオン源電流設定値、アパーチャの種類について運転条件を変更
するようにしたが、これに限らず、その他の運転条件についても変更するようにしてもよ
い。その他の条件についても散乱体法とスキャニング法でそれぞれ適切な値を設定するこ
とにより、照射精度及び安全性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の好適な一実施形態である荷電粒子ビーム出射装置の全体構成を表す図である。
【図2】治療照射までの手順を表すフローチャートである。
【図3】図2に示すステップ38又はステップ40において中央制御装置により選択され加速器制御装置へ送信される運転条件データリストの一例を示す図である。
【図4】本実施形態の荷電粒子ビーム出射装置において、中央制御装置から加速器制御装置に送信される運転条件データリストの特徴を、散乱体照射方式とスキャニング照射方式との差異が分かりやすいように表した図である。
【図5】散乱体用運転条件データリストとスキャニング用運転条件データリストにおけるビームエネルギーと出射ビーム電流の関係を示す図である。
【図6】本発明の他の実施形態である荷電粒子ビーム出射装置の全体構成を表す図である。
【符号の説明】
【0056】
1 荷電粒子ビーム発生装置
1A 荷電粒子ビーム発生装置
2 ビーム輸送系
2A ビーム輸送系
3p 散乱体式照射装置
3s スキャニング式照射装置
5 シンクロトロン
5A サイクロトロン
6 出射用高周波印加装置
15 スクレーパ装置
16 周波数モニタ(検出装置)
17 周回軌道位置モニタ(検出装置)
20 プロファイルモニタ(検出装置)
21 ビーム電流モニタ(検出装置)
23 中央制御装置(制御装置、第2制御装置)
24 加速器制御装置(判定装置)
25 輸送系制御装置(判定装置)
45 運転状態監視装置(判定装置)
46 エネルギー調整器(エネルギー変更装置)
51 エネルギーアパーチャ(アパーチャ装置)
100 荷電粒子ビーム出射装置
100A 荷電粒子ビーム出射装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷電粒子ビームを照射対象に対して出射する荷電粒子ビーム出射装置において、
前記荷電粒子ビームを発生する荷電粒子ビーム発生装置と、
前記荷電粒子ビームを照射対象に照射する複数の照射装置であって、少なくとも一部が
異なる照射方式を適用している前記複数の照射装置と、
前記荷電粒子ビーム発生装置から出射された前記荷電粒子ビームを前記複数の照射装置
のうちの選択された1つの照射装置へ輸送するビーム輸送系と、
前記荷電粒子ビーム発生装置の運転条件を、前記選択された照射装置の照射方式に応じ
て変更する制御装置とを備えたことを特徴とする荷電粒子ビーム出射装置。
【請求項2】
前記選択された照射装置の照射方式に応じて前記荷電粒子ビームのビーム電流またはビ
ームサイズが変更されるように、前記荷電粒子ビーム発生装置の運転条件を変更する前記
制御装置を備えたことを特徴とする請求項1記載の荷電粒子ビーム出射装置。
【請求項3】
前記荷電粒子ビーム発生装置から出射された前記荷電粒子ビームのビーム状態を検出す
る検出装置と、前記検出されたビーム状態が正常であるかどうかを判定する判定装置と、
前記判定装置の判定条件を前記選択された照射装置の照射方式に応じて変更する前記制御
装置とを備えたことを特徴とする請求項2記載の荷電粒子ビーム出射装置。
【請求項4】
前記荷電粒子ビームのビームエネルギー及びビーム位置を検出する前記検出装置と、前
記検出装置の検出結果が許容範囲内であるかどうかを判定する前記判定装置と、前記判定
装置の許容範囲を前記選択された照射装置の照射方式に応じて変更する前記制御装置とを
備えたことを特徴とする請求項3記載の荷電粒子ビーム出射装置。
【請求項5】
前記複数の照射装置は、スキャニング照射方式の照射装置を含むことを特徴とする請求
項4記載の荷電粒子ビーム出射装置。
【請求項6】
前記スキャニング照射方式の照射装置が選択された場合における前記荷電粒子ビームの
ビーム電流及びビームサイズが、他の照射方式の照射装置が選択された場合のビーム電流
及びビームサイズよりも小さくなるように、前記荷電粒子ビーム発生装置の運転条件を変
更する前記制御装置を備えたことを特徴とする請求項5記載の荷電粒子ビーム出射装置。
【請求項7】
前記スキャニング照射方式の照射装置が選択された場合における前記判定装置のビーム
エネルギー及びビーム位置の許容範囲が、他の照射方式の照射装置が選択された場合の許
容範囲よりも小さくなるように、前記判定装置の判定条件を変更する前記制御装置を備え
たことを特徴とする請求項6記載の荷電粒子ビーム出射装置。
【請求項8】
前記荷電粒子ビーム発生装置がシンクロトロンを含んでいることを特徴とする請求項7
記載の荷電粒子ビーム出射装置。
【請求項9】
前記荷電粒子ビームに高周波を印加することにより出射させる高周波印加装置を有する
前記シンクロトロンを含む前記荷電粒子ビーム発生装置と、前記スキャニング照射方式の
照射装置が選択された場合の前記高周波印加装置に印加する電圧を、他の照射方式の照射
装置が選択された場合の電圧よりも小さくする前記制御装置とを備えたことを特徴とする
請求項8記載の荷電粒子ビーム出射装置。
【請求項10】
スクレーパを挿入することで前記シンクロトロンを周回中の前記荷電粒子ビームの一部
をカットするスクレーパ装置を有する前記シンクロトロンを含む前記荷電粒子ビーム発生
装置と、前記スキャニング照射方式の照射装置が選択された場合の前記スクレーパ装置に
よるスクレーパ挿入量を、他の照射方式の照射装置が選択された場合のスクレーパ挿入量
よりも大きくする前記制御装置とを備えたことを特徴とする請求項8記載の荷電粒子ビー
ム出射装置。
【請求項11】
前記判定装置により、前記荷電粒子ビーム発生装置から出射された前記荷電粒子ビーム
のビーム状態が正常でないと判定された場合に、前記荷電粒子ビーム発生装置からの前記
荷電粒子ビームの出射を停止させる第2制御装置を備えたことを特徴とする請求項3記載
の荷電粒子ビーム出射装置。
【請求項12】
荷電粒子ビームを照射対象に対して出射する荷電粒子ビーム出射装置において、
前記荷電粒子ビームを加速するサイクロトロンを含む荷電粒子ビーム発生装置と、
前記荷電粒子ビームを照射対象に照射する複数の照射装置であって、少なくとも一部が
異なる照射方式を適用している前記複数の照射装置と、
前記荷電粒子ビーム発生装置から出射された前記荷電粒子ビームを前記複数の照射装置
のうちの選択された1つの照射装置へ輸送するビーム輸送系と、
前記荷電粒子ビーム発生装置及び前記ビーム輸送系の運転条件を、前記選択された照射
装置の照射方式に応じて変更する制御装置とを備えたことを特徴とする荷電粒子ビーム出
射装置。
【請求項13】
前記サイクロトロンから出射された前記荷電粒子ビームのエネルギーを変更するエネル
ギー変更装置と、前記荷電粒子ビーム発生装置または前記エネルギー変更装置の運転条件
を、前記選択された照射装置の照射方式に応じて変更する前記制御装置とを備えたことを
特徴とする請求項12記載の荷電粒子ビーム出射装置。
【請求項14】
前記サイクロトロンに前記荷電粒子ビームを入射するイオン源を含む前記荷電粒子ビー
ム発生装置と、前記スキャニング照射方式の照射装置が選択された場合の前記イオン源の
ビーム電流設定値が他の照射方式の照射装置が選択された場合の設定値よりも小さくなる
ように、前記イオン源の設定を変更する前記制御装置を備えたことを特徴とする請求項1
3記載の荷電粒子ビーム出射装置。
【請求項15】
前記サイクロトロンから出射された前記荷電粒子ビームの一部をカットする複数種類の
アパーチャを切り替え可能に備えたアパーチャ装置を含む前記エネルギー変更装置及び前
記ビーム輸送系のうちの一方と、前記スキャニング照射方式の照射装置が選択された場合
のビームカット量が他の照射方式の照射装置が選択された場合のビームカット量より大き
くなるように、前記アパーチャを切り替える前記制御装置とを備えたことを特徴とする請
求項13記載の荷電粒子ビーム出射装置。
【請求項16】
荷電粒子ビーム発生装置で発生した荷電粒子ビームを、異なる照射方式を含む複数の照
射装置のうちの選択された1つの照射装置に輸送して出射させる荷電粒子ビーム出射方法
において、
前記荷電粒子ビーム発生装置の運転条件を、前記選択された照射装置の照射方式に応じ
て変更することを特徴とする荷電粒子ビーム出射方法。
【請求項17】
前記選択された照射装置の照射方式に応じて前記荷電粒子ビームのビーム電流及びビー
ムサイズが変更されるように、前記荷電粒子ビーム発生装置の運転条件を変更することを
特徴とする請求項16記載の荷電粒子ビーム出射方法。
【請求項18】
前記荷電粒子ビーム発生装置から出射された前記荷電粒子ビームのビーム状態が正常で
あるかどうかを判定するための判定条件を、前記選択された照射装置の照射方式に応じて
変更することを特徴とする請求項17記載の荷電粒子ビーム出射方法。
【請求項19】
前記荷電粒子ビームのビームエネルギー及びビーム位置が正常であるかどうかを判定す
るための許容範囲を、前記選択された照射装置の照射方式に応じて変更することを特徴と
する請求項18記載の荷電粒子ビーム出射方法。
【請求項20】
サイクロトロンを含む荷電粒子ビーム発生装置で発生した荷電粒子ビームを、異なる照
射方式を含む複数の照射装置のうちの選択された1つの照射装置に輸送して出射させる荷
電粒子ビーム出射方法において、
前記荷電粒子ビーム発生装置及び前記ビーム輸送系の運転条件を、前記選択された照射
装置の照射方式に応じて変更することを特徴とする荷電粒子ビーム出射方法。
【請求項21】
前記スキャニング照射方式の照射装置が選択された場合における前記荷電粒子ビームのビーム電流が、他の照射方式の照射装置が選択された場合のビーム電流よりも小さくなるように、前記荷電粒子ビーム発生装置の運転条件を変更する前記制御装置を備えたことを特徴とする請求項1記載の荷電粒子ビーム出射装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−128087(P2006−128087A)
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−274380(P2005−274380)
【出願日】平成17年9月21日(2005.9.21)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】