荷電粒子ビーム描画方法および荷電粒子ビーム描画装置
【課題】描画中の電流密度分布の自動調整が可能な荷電粒子ビーム描画装置および荷電粒子ビーム描画方法を提供する。
【解決手段】本発明の荷電粒子ビーム描画方法は、荷電粒子銃より荷電粒子ビームを照射し、荷電粒子ビームを第1のアパーチャで第1の成形を行い、第1の成形がなされた荷電粒子ビームを、第2のアパーチャのエッジのいずれかに所定の面積がかかるように照射することにより第2の成形を行い、第2の成形がなされた荷電粒子ビームの電流値を測定し、第2の成形および電流値の測定を、複数のエッジについて同様に行うことにより得られた各電流値より、荷電粒子ビームの中心位置のズレ情報を取得し、ズレ情報に基づき、アライメント調整を行う。
【解決手段】本発明の荷電粒子ビーム描画方法は、荷電粒子銃より荷電粒子ビームを照射し、荷電粒子ビームを第1のアパーチャで第1の成形を行い、第1の成形がなされた荷電粒子ビームを、第2のアパーチャのエッジのいずれかに所定の面積がかかるように照射することにより第2の成形を行い、第2の成形がなされた荷電粒子ビームの電流値を測定し、第2の成形および電流値の測定を、複数のエッジについて同様に行うことにより得られた各電流値より、荷電粒子ビームの中心位置のズレ情報を取得し、ズレ情報に基づき、アライメント調整を行う。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばマスクパターンの形成などに用いられる荷電粒子ビーム描画方法、荷電粒子ビーム描画装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体デバイスの微細化に伴い、LSI等のマスクパターンの微細化が要求されている。そして、この微細なマスクパターンの形成に、優れた解像度を有する荷電粒子ビーム描画装置が利用されている。このような荷電粒子ビーム描画装置には、例えば荷電粒子銃としてカソードフィラメントを用いた熱電子放射型などの電子銃が用いられる。この場合、熱電子放射型の電子銃により、フィラメント電力によりカソードを加熱することにより電子が放出される。そして、放出された電子をバイアス電圧により集束し、加速電圧により加速させる。このようにして電子ビームが形成され、アパーチャ、偏向器などの光学系を経て試料に照射され、所定の電流密度でパターンの描画が行われる(例えば特許文献1など参照)。
【0003】
このような電子ビームにおいて、電流密度分布の変動は、描画精度を劣化させる一因となる。そこで、通常、定期的に電流密度分布の測定を行い、均一性が劣化すると警告を発し、補正するなどの手法が採られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−166481号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
半導体デバイスのさらなる微細化に伴い、電流密度分布の変動をより抑える必要が生じる。あるいは、描画装置の光学系の距離を短くした場合などにおいても、照射分布の変動が試料上での大きな電流密度分布の変動となる。このような場合、電流密度分布の調整頻度を上げる必要がある。しかしながら、電流密度分布の測定には、電子ビームの照射位置を移動させながら、アパーチャに別途形成された微小な穴を通して、マトリックス状に多数のポイントにおける電流値を測定することが必要である。従って、描画中に電流密度分布を測定し、調整を行うことは困難である。
【0006】
そこで、本発明は、電流密度分布の自動調整を行いながら描画を行うことが可能な荷電粒子ビーム描画方法、および描画中の電流密度分布の自動調整が可能な荷電粒子ビーム描画装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様の荷電粒子ビーム描画方法は、荷電粒子銃より荷電粒子ビームを照射し、荷電粒子ビームを第1のアパーチャで第1の成形を行い、第1の成形がなされた荷電粒子ビームを、第2のアパーチャのエッジのいずれかに所定の面積がかかるように照射することにより第2の成形を行い、第2の成形がなされた荷電粒子ビームの電流値を測定し、第2の成形および電流値の測定を、複数のエッジについて同様に行うことにより得られた各電流値より、荷電粒子ビームの中心位置のズレ情報を取得し、ズレ情報に基づき、前記荷電粒子ビームのアライメント調整を行うことを特徴とするものである。
【0008】
本発明の一態様の荷電粒子ビーム描画方法において、各前記電流値が等しくなるように前記荷電粒子ビームのアライメント調整を行うことが好ましい。
【0009】
また、本発明の一態様の荷電粒子ビーム描画方法において、第2の成形において、荷電粒子ビームを2軸方向にスキャンし、スキャン位置に対応した電流値を測定し、測定された各電流値の変動より、ズレ情報を取得することが好ましい。このとき、さらにズレ情報に基づき、アライメント調整量を算出することが好ましい。
【0010】
また、本発明の一態様の荷電粒子ビーム描画装置は、荷電粒子ビームを照射する荷電粒子銃と、荷電粒子ビームのアライメント調整を行うアライナと、荷電粒子ビームを偏向させる偏向器と、荷電粒子ビームを成形する第1のアパーチャと、第1のアパーチャにより成形された荷電粒子ビームを成形する第2のアパーチャと、荷電粒子ビームが第2のアパーチのいずれかのエッジにかかるように照射されることにより成形された荷電粒子ビームの各電流値を測定する検出器と、測定された各電流値より荷電粒子ビームの中心位置のズレ情報を取得するズレ情報取得機構と、ズレ情報に基づきアライナの調整量を算出する調整量算出機構と、を備えることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、荷電粒子ビーム描画装置および荷電粒子ビーム描画方法において、描画中の電流密度分布の自動調整が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一態様の電子ビーム描画装置の概念図である。
【図2】本発明の一態様におけるアライメント調整のフローチャートである。
【図3】本発明の一態様におけるアパーチャの形状と照射位置を示す図である。
【図4】本発明の一態様における照射位置による電流値の一例を示す図である。
【図5】本発明の一態様における照射位置による電流値の一例を示す図である。
【図6】本発明の一態様における電子ビームの中心位置のずれを示す図である。
【図7】本発明の一態様におけるアライメント調整のフローチャートである。
【図8】本発明の一態様におけるアパーチャの形状と照射位置を示す図である。
【図9】本発明の一態様におけるスキャン量に対する電流値を示す図。
【図10】本発明の一態様におけるスキャン量に対する電流値を示す図。
【図11】本発明の一態様における電流値の変化量とスキャン位置の関係を示す図である。
【図12】本発明の一態様における電子ビームの中心位置のずれを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について、図を参照して説明する。
【0014】
(実施形態1)
図1に、本実施形態の荷電粒子ビーム描画装置である電子ビーム描画装置の概念図を示す。図1に示すように、電子ビーム10を照射する電子銃11の下方に、電子ビーム10を制御する制御系として、電子ビームのアライメント調整を行うアライナ12と、電子ビーム10を偏向させる偏向器13と、電子ビーム10を成形するアパーチャ14a、14bなどが配置されている。
【0015】
アライナ12は、これを制御し、電源、アンプなどを備えるアライナドライバ22aと接続され、偏向器13は、これを制御する偏向器ドライバ23が接続されている。
【0016】
ここで、上方のアパーチャ14aには、正方形の開口部が形成されている。下方のアパーチャ14bは、二組の平行なエッジを有し、さらにこれらのエッジと45°の角度を有する一組の平行なエッジと、これと垂直なエッジを有する開口部が形成されている。
【0017】
これらから構成される制御系の下方には、さらに描画に供される試料15が載置されるステージ16が設置されている。ステージ15の下方には、二つのアパーチャ14a、14bを経て成形された電子ビーム10が照射され、電流を測定するためのファラデーカップ17aと、電流計17bを備える検出器17が設置されている。
【0018】
このような検出器17は、電子ビーム10の中心位置のズレ情報を取得するズレ情報取得機構18と接続されている。さらに、取得されたズレ情報に基づきアライナの調整量を算出する調整量算出機構19と接続されている。そして、調整量算出機構19は、アライナドライバ22と接続されている。
【0019】
このような電子ビーム描画装置を用いて、試料15上に描画が行われる。先ず、電子銃11において、カソード(図示せず)より電子が放射され、制御、加速されることにより、電子ビーム10が照射される。
【0020】
照射された電子ビーム10は、先ず、アライナ12において、XY方向にアライメントが初期調整される。そして、アパーチャ14a、14bにより成形され、偏光器13において、位置が調整された後、ステージ16をXY方向に走査させ、載置された試料15上の所望の位置に照射されることにより、描画が行われる。
【0021】
描画が行われる間、例えば、所定時間毎にアライメント調整が行われる。
【0022】
図2にフローチャートを示すように、電子銃11より電子ビーム10が照射される(Step1−1)。このとき、アライナドライバ22により制御されたアライナ12により、XY方向にアライメントの初期調整が行われる。そして、アライメント調整が行われた電子ビーム10は、アパーチャ14aに照射される。アパーチャ14aにおいて、正方形に成形された電子ビーム10は、図3に示すように、偏向器ドライバ23により制御された偏向器13により、アパーチャ14bの二組の平行なエッジにその中心がかかるように、a、b、c、dの各位置に照射され、測定形状に成形される(Step1−2)。
【0023】
a、b、c、dの各位置に照射され、成形された電子ビームは、それぞれ検出器17において、ファラデーカップ17aに捕集され、電流計17bによりそれぞれの電流値が測定される(Step1−3)。このとき、電子ビームの中心位置がアパーチャ14aにおいて成形された正方形の中心(正しい位置)にある場合、図4に示すように、これらの電流値は、ほぼ等しくなる。
【0024】
しかしながら、中心からずれている場合、これらの電流値は、ばらつきが生じる。例えば、図5に示すように、aが大きく、cが小さくなっている場合、電子ビームの中心位置10cは、図6に示すように、アパーチャ14aにおいて成形された正方形においてずれている(10c’)ことになる。従って、これを矢印分補正する必要がある。
【0025】
そこで、測定されたそれぞれの電流値の差がスペック内であるかどうかを判断する(Step1−4)。スペック内であれば、アライメント調整は行われない。一方、スペックを超えた場合、ズレ情報取得機構18において、ズレの方向やおよそのズレ量などのズレ情報が取得される(Step1−5)。
【0026】
そして、そのズレ情報に基づき、調整量算出機構19において、アライナ12におけるXY制御のための電流の調整量が算出される(Step1−6)。さらに、算出された調整量によりアライナドライバ22によりアライナ12が制御され、アライメント調整が行われる(Step1−7)。
【0027】
このようにしてアライメント調整された電子ビームが、再度同様にアパーチャ14bのエッジにかかるように照射される(Step1−2)。そして、同様にして、電流値の差がスペック以内に抑えられたとき、終了する。
【0028】
このようにして、電子ビームをアパーチャにより4つの形状に成形し、それぞれの電流値を測定することにより、従来のように、多くの点における電流値を測定することなく、簡易にズレの有無を検出することができるとともに、ズレ情報を取得することが可能となる。従って、上述のように、描画中、所定時間毎に電子ビームのアライメント調整を行うことが可能となる。
【0029】
本実施形態において、アパーチャ14bのエッジに、アパーチャ14aにより成形された電子ビームの対角線がかかるように成形されているが、それぞれの位置で同じ角度に回転した状態で成形されてもよい。例えば、45°回転させ、長方形となるように成形されてもよい。また、アパーチャ14bにおける二組の平行したエッジは、二軸方向に形成されていれば、必ずしも垂直でなくてもよい。
【0030】
(実施形態2)
本実施形態において、実施形態1と同様の装置により、同様に描画中に電子ビームの中心位置のズレを調整するが、上方のアパーチャで成形された電子ビームをスキャンさせて電流値を測定する点で異なっている。
【0031】
実施形態1と同様に、描画中、所定時間毎にアライメント調整が行われる。
【0032】
図7にフローチャートを示すように、電子銃11より電子ビーム10が照射される(Step2−1)。同様にアライメントの初期調整が行われ、アパーチャ14aに照射されて正方形に成形された電子ビーム10は、図8に示すように、アパーチャ14bの位置a、dにおいて、偏向器ドライバ23により制御された偏向器13により、それぞれアパーチャ14のエッジとの角度が45°となる方向に(矢印方向)スキャン照射される(Step2−2)。
【0033】
照射された電子ビームは、同様に検出器17において、それぞれの電流値が測定される(Step2−3)。例えば、位置aにおけるスキャン方向を電流値は、図9に示すようになり、位置dにおけるスキャン量に対する電流値は、図10に示すようになる。
【0034】
このとき、電子ビームの中心位置がアパーチャ14aにおいて成形された正方形の中心(正しい位置)にある場合、それぞれの電流値の変化量(電流の微分波形)のピークが中心の位置となる。
【0035】
しかしながら、中心からずれている場合、少なくともいずれかのピーク位置が中心からずれる。例えば、図11に電流値の変化量とスキャン位置の関係を示すように、位置aにおけるピークはずれていないのに、位置dにおけるピークがずれている場合、電子ビームの中心位置10cは、図12のようにずれている(10c”)ことになる。従って、これを矢印分補正する必要がある。
【0036】
このように、測定されたそれぞれの電流値より、ズレ情報取得機構18において、ズレ量、ズレ方向などのズレ情報が取得される(Step2−4)。そして、そのズレ量がスペック内であるかどうかを判断する(Step2−5)。スペック内であれば、アライメント調整は行われない。一方、スペックを超えた場合、ズレ情報に基づき、調整量算出機構19において、アライナ12におけるXY制御のための電流の調整量が算出され(Step2−6)、アライメント調整が行われる(Step2−7)。
【0037】
このようにして、成形された電子ビームを、アパーチャのエッジにかかるように2軸方向にスキャンし、スキャン位置に対応するそれぞれの電流値を測定することにより、従来のように、多くの点における電流値を測定することなく、簡易にズレ情報を取得し、アライメント調整することが可能となる。従って、上述のように、描画中、所定時間毎にアライメント調整を行うことが可能となる。
【0038】
本実施形態において、アパーチャ14bのエッジとの角度が45°となるようにスキャンしたが、スキャン方向は特に限定されるものではなく、任意の2軸方向であればよい。
【0039】
また、これら実施形態において、描画中の所定時間毎にアライメント調整を行ったが、描画完了時あるいは描画前に行ってもよく、あるいは、位置ズレの警告に伴い行われてもよい。
【0040】
また、これら実施形態において、荷電粒子ビームとして電子ビームを用いたが、電子ビームに限定されるものではなく、イオンビームなど、他の荷電粒子ビームを用いることも可能である。イオンビームを用いる場合、カソードで発生した熱電子がイオン銃内に導入されたArガスなどと衝突することにより、Ar+イオンが形成される。形成されたAr+イオンは、電子ビームと同様に加速され、試料上に照射され、所定のパターンが描画される。その際、同様にして、アライメント調整を行うことができる。
【0041】
尚、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではない。その他要旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【符号の説明】
【0042】
10…電子ビーム
11…電子銃
12…アライナ
13…偏向器
14a、14b…アパーチャ
15…試料
16…ステージ
17…検出器
17a…ファラデーカップ
17b…電流計
18…ズレ情報取得機構
19…調整量算出機構
22…アライナドライバ
23…偏向器ドライバ
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばマスクパターンの形成などに用いられる荷電粒子ビーム描画方法、荷電粒子ビーム描画装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体デバイスの微細化に伴い、LSI等のマスクパターンの微細化が要求されている。そして、この微細なマスクパターンの形成に、優れた解像度を有する荷電粒子ビーム描画装置が利用されている。このような荷電粒子ビーム描画装置には、例えば荷電粒子銃としてカソードフィラメントを用いた熱電子放射型などの電子銃が用いられる。この場合、熱電子放射型の電子銃により、フィラメント電力によりカソードを加熱することにより電子が放出される。そして、放出された電子をバイアス電圧により集束し、加速電圧により加速させる。このようにして電子ビームが形成され、アパーチャ、偏向器などの光学系を経て試料に照射され、所定の電流密度でパターンの描画が行われる(例えば特許文献1など参照)。
【0003】
このような電子ビームにおいて、電流密度分布の変動は、描画精度を劣化させる一因となる。そこで、通常、定期的に電流密度分布の測定を行い、均一性が劣化すると警告を発し、補正するなどの手法が採られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−166481号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
半導体デバイスのさらなる微細化に伴い、電流密度分布の変動をより抑える必要が生じる。あるいは、描画装置の光学系の距離を短くした場合などにおいても、照射分布の変動が試料上での大きな電流密度分布の変動となる。このような場合、電流密度分布の調整頻度を上げる必要がある。しかしながら、電流密度分布の測定には、電子ビームの照射位置を移動させながら、アパーチャに別途形成された微小な穴を通して、マトリックス状に多数のポイントにおける電流値を測定することが必要である。従って、描画中に電流密度分布を測定し、調整を行うことは困難である。
【0006】
そこで、本発明は、電流密度分布の自動調整を行いながら描画を行うことが可能な荷電粒子ビーム描画方法、および描画中の電流密度分布の自動調整が可能な荷電粒子ビーム描画装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様の荷電粒子ビーム描画方法は、荷電粒子銃より荷電粒子ビームを照射し、荷電粒子ビームを第1のアパーチャで第1の成形を行い、第1の成形がなされた荷電粒子ビームを、第2のアパーチャのエッジのいずれかに所定の面積がかかるように照射することにより第2の成形を行い、第2の成形がなされた荷電粒子ビームの電流値を測定し、第2の成形および電流値の測定を、複数のエッジについて同様に行うことにより得られた各電流値より、荷電粒子ビームの中心位置のズレ情報を取得し、ズレ情報に基づき、前記荷電粒子ビームのアライメント調整を行うことを特徴とするものである。
【0008】
本発明の一態様の荷電粒子ビーム描画方法において、各前記電流値が等しくなるように前記荷電粒子ビームのアライメント調整を行うことが好ましい。
【0009】
また、本発明の一態様の荷電粒子ビーム描画方法において、第2の成形において、荷電粒子ビームを2軸方向にスキャンし、スキャン位置に対応した電流値を測定し、測定された各電流値の変動より、ズレ情報を取得することが好ましい。このとき、さらにズレ情報に基づき、アライメント調整量を算出することが好ましい。
【0010】
また、本発明の一態様の荷電粒子ビーム描画装置は、荷電粒子ビームを照射する荷電粒子銃と、荷電粒子ビームのアライメント調整を行うアライナと、荷電粒子ビームを偏向させる偏向器と、荷電粒子ビームを成形する第1のアパーチャと、第1のアパーチャにより成形された荷電粒子ビームを成形する第2のアパーチャと、荷電粒子ビームが第2のアパーチのいずれかのエッジにかかるように照射されることにより成形された荷電粒子ビームの各電流値を測定する検出器と、測定された各電流値より荷電粒子ビームの中心位置のズレ情報を取得するズレ情報取得機構と、ズレ情報に基づきアライナの調整量を算出する調整量算出機構と、を備えることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、荷電粒子ビーム描画装置および荷電粒子ビーム描画方法において、描画中の電流密度分布の自動調整が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一態様の電子ビーム描画装置の概念図である。
【図2】本発明の一態様におけるアライメント調整のフローチャートである。
【図3】本発明の一態様におけるアパーチャの形状と照射位置を示す図である。
【図4】本発明の一態様における照射位置による電流値の一例を示す図である。
【図5】本発明の一態様における照射位置による電流値の一例を示す図である。
【図6】本発明の一態様における電子ビームの中心位置のずれを示す図である。
【図7】本発明の一態様におけるアライメント調整のフローチャートである。
【図8】本発明の一態様におけるアパーチャの形状と照射位置を示す図である。
【図9】本発明の一態様におけるスキャン量に対する電流値を示す図。
【図10】本発明の一態様におけるスキャン量に対する電流値を示す図。
【図11】本発明の一態様における電流値の変化量とスキャン位置の関係を示す図である。
【図12】本発明の一態様における電子ビームの中心位置のずれを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について、図を参照して説明する。
【0014】
(実施形態1)
図1に、本実施形態の荷電粒子ビーム描画装置である電子ビーム描画装置の概念図を示す。図1に示すように、電子ビーム10を照射する電子銃11の下方に、電子ビーム10を制御する制御系として、電子ビームのアライメント調整を行うアライナ12と、電子ビーム10を偏向させる偏向器13と、電子ビーム10を成形するアパーチャ14a、14bなどが配置されている。
【0015】
アライナ12は、これを制御し、電源、アンプなどを備えるアライナドライバ22aと接続され、偏向器13は、これを制御する偏向器ドライバ23が接続されている。
【0016】
ここで、上方のアパーチャ14aには、正方形の開口部が形成されている。下方のアパーチャ14bは、二組の平行なエッジを有し、さらにこれらのエッジと45°の角度を有する一組の平行なエッジと、これと垂直なエッジを有する開口部が形成されている。
【0017】
これらから構成される制御系の下方には、さらに描画に供される試料15が載置されるステージ16が設置されている。ステージ15の下方には、二つのアパーチャ14a、14bを経て成形された電子ビーム10が照射され、電流を測定するためのファラデーカップ17aと、電流計17bを備える検出器17が設置されている。
【0018】
このような検出器17は、電子ビーム10の中心位置のズレ情報を取得するズレ情報取得機構18と接続されている。さらに、取得されたズレ情報に基づきアライナの調整量を算出する調整量算出機構19と接続されている。そして、調整量算出機構19は、アライナドライバ22と接続されている。
【0019】
このような電子ビーム描画装置を用いて、試料15上に描画が行われる。先ず、電子銃11において、カソード(図示せず)より電子が放射され、制御、加速されることにより、電子ビーム10が照射される。
【0020】
照射された電子ビーム10は、先ず、アライナ12において、XY方向にアライメントが初期調整される。そして、アパーチャ14a、14bにより成形され、偏光器13において、位置が調整された後、ステージ16をXY方向に走査させ、載置された試料15上の所望の位置に照射されることにより、描画が行われる。
【0021】
描画が行われる間、例えば、所定時間毎にアライメント調整が行われる。
【0022】
図2にフローチャートを示すように、電子銃11より電子ビーム10が照射される(Step1−1)。このとき、アライナドライバ22により制御されたアライナ12により、XY方向にアライメントの初期調整が行われる。そして、アライメント調整が行われた電子ビーム10は、アパーチャ14aに照射される。アパーチャ14aにおいて、正方形に成形された電子ビーム10は、図3に示すように、偏向器ドライバ23により制御された偏向器13により、アパーチャ14bの二組の平行なエッジにその中心がかかるように、a、b、c、dの各位置に照射され、測定形状に成形される(Step1−2)。
【0023】
a、b、c、dの各位置に照射され、成形された電子ビームは、それぞれ検出器17において、ファラデーカップ17aに捕集され、電流計17bによりそれぞれの電流値が測定される(Step1−3)。このとき、電子ビームの中心位置がアパーチャ14aにおいて成形された正方形の中心(正しい位置)にある場合、図4に示すように、これらの電流値は、ほぼ等しくなる。
【0024】
しかしながら、中心からずれている場合、これらの電流値は、ばらつきが生じる。例えば、図5に示すように、aが大きく、cが小さくなっている場合、電子ビームの中心位置10cは、図6に示すように、アパーチャ14aにおいて成形された正方形においてずれている(10c’)ことになる。従って、これを矢印分補正する必要がある。
【0025】
そこで、測定されたそれぞれの電流値の差がスペック内であるかどうかを判断する(Step1−4)。スペック内であれば、アライメント調整は行われない。一方、スペックを超えた場合、ズレ情報取得機構18において、ズレの方向やおよそのズレ量などのズレ情報が取得される(Step1−5)。
【0026】
そして、そのズレ情報に基づき、調整量算出機構19において、アライナ12におけるXY制御のための電流の調整量が算出される(Step1−6)。さらに、算出された調整量によりアライナドライバ22によりアライナ12が制御され、アライメント調整が行われる(Step1−7)。
【0027】
このようにしてアライメント調整された電子ビームが、再度同様にアパーチャ14bのエッジにかかるように照射される(Step1−2)。そして、同様にして、電流値の差がスペック以内に抑えられたとき、終了する。
【0028】
このようにして、電子ビームをアパーチャにより4つの形状に成形し、それぞれの電流値を測定することにより、従来のように、多くの点における電流値を測定することなく、簡易にズレの有無を検出することができるとともに、ズレ情報を取得することが可能となる。従って、上述のように、描画中、所定時間毎に電子ビームのアライメント調整を行うことが可能となる。
【0029】
本実施形態において、アパーチャ14bのエッジに、アパーチャ14aにより成形された電子ビームの対角線がかかるように成形されているが、それぞれの位置で同じ角度に回転した状態で成形されてもよい。例えば、45°回転させ、長方形となるように成形されてもよい。また、アパーチャ14bにおける二組の平行したエッジは、二軸方向に形成されていれば、必ずしも垂直でなくてもよい。
【0030】
(実施形態2)
本実施形態において、実施形態1と同様の装置により、同様に描画中に電子ビームの中心位置のズレを調整するが、上方のアパーチャで成形された電子ビームをスキャンさせて電流値を測定する点で異なっている。
【0031】
実施形態1と同様に、描画中、所定時間毎にアライメント調整が行われる。
【0032】
図7にフローチャートを示すように、電子銃11より電子ビーム10が照射される(Step2−1)。同様にアライメントの初期調整が行われ、アパーチャ14aに照射されて正方形に成形された電子ビーム10は、図8に示すように、アパーチャ14bの位置a、dにおいて、偏向器ドライバ23により制御された偏向器13により、それぞれアパーチャ14のエッジとの角度が45°となる方向に(矢印方向)スキャン照射される(Step2−2)。
【0033】
照射された電子ビームは、同様に検出器17において、それぞれの電流値が測定される(Step2−3)。例えば、位置aにおけるスキャン方向を電流値は、図9に示すようになり、位置dにおけるスキャン量に対する電流値は、図10に示すようになる。
【0034】
このとき、電子ビームの中心位置がアパーチャ14aにおいて成形された正方形の中心(正しい位置)にある場合、それぞれの電流値の変化量(電流の微分波形)のピークが中心の位置となる。
【0035】
しかしながら、中心からずれている場合、少なくともいずれかのピーク位置が中心からずれる。例えば、図11に電流値の変化量とスキャン位置の関係を示すように、位置aにおけるピークはずれていないのに、位置dにおけるピークがずれている場合、電子ビームの中心位置10cは、図12のようにずれている(10c”)ことになる。従って、これを矢印分補正する必要がある。
【0036】
このように、測定されたそれぞれの電流値より、ズレ情報取得機構18において、ズレ量、ズレ方向などのズレ情報が取得される(Step2−4)。そして、そのズレ量がスペック内であるかどうかを判断する(Step2−5)。スペック内であれば、アライメント調整は行われない。一方、スペックを超えた場合、ズレ情報に基づき、調整量算出機構19において、アライナ12におけるXY制御のための電流の調整量が算出され(Step2−6)、アライメント調整が行われる(Step2−7)。
【0037】
このようにして、成形された電子ビームを、アパーチャのエッジにかかるように2軸方向にスキャンし、スキャン位置に対応するそれぞれの電流値を測定することにより、従来のように、多くの点における電流値を測定することなく、簡易にズレ情報を取得し、アライメント調整することが可能となる。従って、上述のように、描画中、所定時間毎にアライメント調整を行うことが可能となる。
【0038】
本実施形態において、アパーチャ14bのエッジとの角度が45°となるようにスキャンしたが、スキャン方向は特に限定されるものではなく、任意の2軸方向であればよい。
【0039】
また、これら実施形態において、描画中の所定時間毎にアライメント調整を行ったが、描画完了時あるいは描画前に行ってもよく、あるいは、位置ズレの警告に伴い行われてもよい。
【0040】
また、これら実施形態において、荷電粒子ビームとして電子ビームを用いたが、電子ビームに限定されるものではなく、イオンビームなど、他の荷電粒子ビームを用いることも可能である。イオンビームを用いる場合、カソードで発生した熱電子がイオン銃内に導入されたArガスなどと衝突することにより、Ar+イオンが形成される。形成されたAr+イオンは、電子ビームと同様に加速され、試料上に照射され、所定のパターンが描画される。その際、同様にして、アライメント調整を行うことができる。
【0041】
尚、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではない。その他要旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【符号の説明】
【0042】
10…電子ビーム
11…電子銃
12…アライナ
13…偏向器
14a、14b…アパーチャ
15…試料
16…ステージ
17…検出器
17a…ファラデーカップ
17b…電流計
18…ズレ情報取得機構
19…調整量算出機構
22…アライナドライバ
23…偏向器ドライバ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷電粒子銃より荷電粒子ビームを照射し、
前記荷電粒子ビームを第1のアパーチャで第1の成形を行い、
前記第1の成形がなされた前記荷電粒子ビームを、第2のアパーチャのエッジのいずれかに所定の面積がかかるように照射することにより第2の成形を行い、
前記第2の成形がなされた前記荷電粒子ビームの電流値を測定し、
前記第2の成形および前記電流値の測定を、複数の前記エッジについて同様に行うことにより得られた各前記電流値より、前記荷電粒子ビームの中心位置のズレ情報を取得し、
前記ズレ情報に基づき、前記荷電粒子ビームのアライメント調整を行うことを特徴とする荷電粒子ビーム描画方法。
【請求項2】
各前記電流値が等しくなるように前記荷電粒子ビームのアライメント調整を行うことを特徴とする請求項1に記載の荷電粒子ビーム描画方法。
【請求項3】
前記第2の成形において、前記荷電粒子ビームを2軸方向にスキャンし、
スキャン位置に対応した前記電流値を測定し、
測定された各前記電流値の変動より、前記ズレ情報を取得することを特徴とする請求項1に記載の荷電粒子ビーム描画方法。
【請求項4】
前記ズレ情報に基づき、アライメント調整量を算出することを特徴とする請求項3に記載の荷電粒子ビーム描画方法。
【請求項5】
荷電粒子ビームを照射する荷電粒子銃と、
前記荷電粒子ビームのアライメント調整を行うアライナと、
前記荷電粒子ビームを偏向させる偏向器と、
前記荷電粒子ビームを成形する第1のアパーチャと、
前記第1のアパーチャにより成形された前記荷電粒子ビームを成形する第2のアパーチャと、
前記荷電粒子ビームが前記第2のアパーチャのいずれかのエッジにかかるように照射されることにより成形された前記荷電粒子ビームの各電流値を測定する検出器と、
測定された前記各電流値より前記荷電粒子ビームの中心位置のズレ情報を取得するズレ情報取得機構と、
前記ズレ情報に基づきアライナの調整量を算出する調整量算出機構と、を備えることを特徴とする荷電粒子ビーム描画装置。
【請求項1】
荷電粒子銃より荷電粒子ビームを照射し、
前記荷電粒子ビームを第1のアパーチャで第1の成形を行い、
前記第1の成形がなされた前記荷電粒子ビームを、第2のアパーチャのエッジのいずれかに所定の面積がかかるように照射することにより第2の成形を行い、
前記第2の成形がなされた前記荷電粒子ビームの電流値を測定し、
前記第2の成形および前記電流値の測定を、複数の前記エッジについて同様に行うことにより得られた各前記電流値より、前記荷電粒子ビームの中心位置のズレ情報を取得し、
前記ズレ情報に基づき、前記荷電粒子ビームのアライメント調整を行うことを特徴とする荷電粒子ビーム描画方法。
【請求項2】
各前記電流値が等しくなるように前記荷電粒子ビームのアライメント調整を行うことを特徴とする請求項1に記載の荷電粒子ビーム描画方法。
【請求項3】
前記第2の成形において、前記荷電粒子ビームを2軸方向にスキャンし、
スキャン位置に対応した前記電流値を測定し、
測定された各前記電流値の変動より、前記ズレ情報を取得することを特徴とする請求項1に記載の荷電粒子ビーム描画方法。
【請求項4】
前記ズレ情報に基づき、アライメント調整量を算出することを特徴とする請求項3に記載の荷電粒子ビーム描画方法。
【請求項5】
荷電粒子ビームを照射する荷電粒子銃と、
前記荷電粒子ビームのアライメント調整を行うアライナと、
前記荷電粒子ビームを偏向させる偏向器と、
前記荷電粒子ビームを成形する第1のアパーチャと、
前記第1のアパーチャにより成形された前記荷電粒子ビームを成形する第2のアパーチャと、
前記荷電粒子ビームが前記第2のアパーチャのいずれかのエッジにかかるように照射されることにより成形された前記荷電粒子ビームの各電流値を測定する検出器と、
測定された前記各電流値より前記荷電粒子ビームの中心位置のズレ情報を取得するズレ情報取得機構と、
前記ズレ情報に基づきアライナの調整量を算出する調整量算出機構と、を備えることを特徴とする荷電粒子ビーム描画装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2010−183004(P2010−183004A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−27363(P2009−27363)
【出願日】平成21年2月9日(2009.2.9)
【出願人】(504162958)株式会社ニューフレアテクノロジー (669)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年2月9日(2009.2.9)
【出願人】(504162958)株式会社ニューフレアテクノロジー (669)
【Fターム(参考)】
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