荷電粒子ビーム生成装置及び荷電粒子ビーム生成方法
【課題】細い荷電粒子ビームを安定して発生させること。
【解決手段】イオンビーム生成装置1は、ガス流を発生させるガス源7と、基端部21がガス源7に接続され、先端部25がテーパー状に形成されたキャピラリーチューブ9と、キャピラリーチューブ9の側面35を外側から囲むように設けられた板状電極19と、板状電極19にパルス電圧を印加するパルス電圧源11と、イオンビームの照射対象のターゲットTに負の直流バイアスを印加するバイアス電圧源13とを備え、キャピラリーチューブ9の側面36には複数の側孔37a,37bが形成されている。
【解決手段】イオンビーム生成装置1は、ガス流を発生させるガス源7と、基端部21がガス源7に接続され、先端部25がテーパー状に形成されたキャピラリーチューブ9と、キャピラリーチューブ9の側面35を外側から囲むように設けられた板状電極19と、板状電極19にパルス電圧を印加するパルス電圧源11と、イオンビームの照射対象のターゲットTに負の直流バイアスを印加するバイアス電圧源13とを備え、キャピラリーチューブ9の側面36には複数の側孔37a,37bが形成されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷電粒子ビームを発生させる荷電粒子ビーム生成装置及び荷電粒子ビーム生成方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、プラズマエッチングやプラズマCVD等の各種プロセスにおいてプラズマが用いられている。このようなプロセスにおいてはプラズマを生成するプラズマ発生装置が利用されている。例えば、下記特許文献1には、放電管とソレノイドアンテナと高周波電源から構成されている高周波誘導結合式のプラズマ発生装置が開示されている。また、下記特許文献2には、ガラスチューブとその先端部分の周囲に巻回された高周波コイルとを備え、ガラスチューブ内にArガスを導入し、高周波コイルによって高周波電力を加えることによって誘導結合プラズマを生成するプラズマ発生装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−109777号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した従来のプラズマ発生装置では、誘導結合プラズマを利用しているために細い荷電粒子ビームを安定して生成させるには限界が生じていた。
【0005】
そこで、本発明は、かかる課題に鑑みて為されたものであり、細い荷電粒子ビームを安定して発生させることが可能な荷電粒子ビーム生成装置及び荷電粒子ビーム生成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明の一側面に係る荷電粒子ビーム生成装置は、ガス流を発生させるガス源と、基端部がガス源に接続され、先端部がテーパー状に形成された管状部材と、管状部材の側面を外側から囲むように設けられた板状電極と、板状電極にパルス電圧を印加するパルス電圧源と、荷電粒子ビームの照射対象のターゲットに負の直流バイアスを印加するバイアス電圧源と、を備え、管状部材の側面には、1以上の側孔が形成されており、管状部材には、基端部から先端部にかけて、板状電極及び側孔がこの順で配置されている。
【0007】
或いは、本発明の一側面に係る荷電粒子ビーム生成方法は、先端部がテーパー状に形成され、基端部と先端部との間の側面に1以上の側孔が形成された管状部材を用意して、管状部材の基端部にガス源からガス流を流入させ、管状部材の側面の基端部と側孔との間を外側から囲むように設けられた板状電極にパルス電圧を印加し、荷電粒子ビームの照射対象のターゲットに負の直流バイアスを印加する。
【0008】
なお、ここでいう「テーパー状」とは、直線状に細くなる断面形状には限定されず、先端に向かうほど管状部材の中心軸に対する傾斜が急になる形状(先端が丸まった形状)や、先端に向かうほど管状部材の中心軸に対する傾斜が緩やかになる形状(先端が尖った形状)等の曲線状に細くなる断面形状をも含む。
【0009】
本発明の上記態様によれば、管状部材の内部において基端部から先端部に向けてガス流が均一に安定して形成される。さらに、このガス流に板状電極を介してパルス電圧が印加されると共にターゲットに負の直流バイアスが印加されることにより、管状部材の内部に変位電流に伴ったイオン流が断続的に形成され、そのイオン流がイオンビームとしてターゲットに向けて断続的に出射される。これにより、ターゲットに向かう細いイオンビームを安定して生成することができる。それと同時に、管状部材の先端部におけるガス圧を適切に調整することによって管状部材の破損を防止することもできる。
【0010】
上記一側面に係る荷電粒子ビーム生成装置においては、管状部材は、直線状に延びる基端部と、テーパー状に形成された先端部と、基端部と先端部とを接続する中継部と、を有しており、側孔は、中継部に形成されている、ことが好適である。かかる構成を採れば、管状部材における側孔の加工が容易となる。
【0011】
また、板状電極は、管状部材の外側面を囲むような曲板形状を有する、ことも好適である。かかる板状電極の形状によれば、管状部材の内部に形成されるイオン流の均一性が向上し、ターゲットに照射されるイオンビームの均一性をより向上させることができる。
【0012】
さらに、板状電極は、管状部材の中心軸に沿って並んで2枚設けられ、パルス電圧源は、2枚の板状電極の間に接続されている、ことも好適である。この場合、ターゲットの位置に左右されずにターゲットに向けて安定してイオンビームを照射することができる。
【0013】
またさらに、側孔は、管状部材の中心軸の周りに等間隔に並ぶように複数配置されている、ことが好適である。この場合、管状部材の内部においてガス流のゆらぎが低減され、ターゲットに向かうイオンビームの径をより小さくすることが可能になる。さらに、管状部材の先端部でのガス圧の調整が容易となる。
【0014】
さらにまた、板状電極はターゲットとの間に容量結合プラズマを生成する、ことも好適である。こうすれば、ターゲットに向けて均一なイオンビームを断続的に照射することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、細い荷電粒子ビームを安定して発生させることが可能な荷電粒子ビーム生成装置及び荷電粒子ビーム生成方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の好適な一実施形態であるイオンビーム生成装置1を示す概略構成図である。
【図2】図1のキャピラリーチューブ9を拡大して示す側面図である。
【図3】図2のキャピラリーチューブ9のIII-III線に沿った断面図である。
【図4】図1のパルス電圧源11によって印加されるパルス電圧の波形と、図1のキャピラリーチューブ9の先端23から放出されるイオンビームの計測結果とを示すグラフである。
【図5】図4の一部を拡大して示すグラフである。
【図6】図1のキャピラリーチューブ9の先端23から放出されるイオンビームの強度の位置依存性を示すグラフである。
【図7】図1のキャピラリーチューブ9の先端23からの距離zとイオンの輸送時間TTとの関係を示すグラフである。
【図8】図1のキャピラリーチューブ9の先端23からの距離zとイオンの輸送時間TTとの関係を示すグラフである。
【図9】図1のキャピラリーチューブ9の先端23から放出される粒子の性質を測定する測定系の構成図である。
【図10】図9の測定系によって計測された電流IPのバイアス電圧VBに対する依存性を示すグラフである。
【図11】図1のキャピラリーチューブ9において観測される発光スペクトルの分光特性を示すグラフである。
【図12】図1のイオンビーム生成装置1によってエッチング加工が施されたターゲットTの撮影画像を示す図である。
【図13】図1のイオンビーム生成装置1によってアッシング加工が施されたターゲットTの顕微鏡による表面画像及び断面画像を示す図である。
【図14】アッシング加工の微細化のためのイオンビーム生成装置1の構成を示す図である。
【図15】図14の構成のイオンビーム生成装置1によってアッシング加工が施されたターゲットTの顕微鏡による表面画像及び断面画像を示す図である。
【図16】シリコン基板に対して図1のイオンビーム生成装置1を用いてCVD加工を施した場合の表面画像を示す図である。
【図17】ポリカーボネート基板に対して図1のイオンビーム生成装置1を用いてCVD加工を施した場合の表面画像を示す図である。
【図18】図1のイオンビーム生成装置1によってアミノ基修飾加工が施された基板の表面を蛍光顕微鏡によって観察した画像を示す図である。
【図19】本発明の変形例におけるキャピラリーチューブ9の径方向の断面図である。
【図20】本発明の変形例にかかるイオンビーム生成装置101を示す概略構成図である。
【図21】図20のイオンビーム生成装置101によってアミノ基修飾加工が施された基板の表面を蛍光顕微鏡によって観察した画像を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面とともに本発明による荷電粒子ビーム生成装置及び荷電粒子ビーム生成方法の一形態について詳細に説明する。なお、図面の説明においては同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。また、各図面は説明用のために作成されたものであり、説明の対象部位を特に強調するように描かれている。そのため、図面における各部材の寸法比率は、必ずしも実際のものとは一致しない。
【0018】
(イオンビーム生成装置の構成)
図1は、本発明の好適な一実施形態であるイオンビーム生成装置1を示す概略構成図である。同図に示すイオンビーム生成装置1は、内部に大気圧非平衡プラズマを発生させることにより、外部に配置されたターゲットTに向けて荷電粒子ビームであるイオンビームを照射する装置である。イオンビーム生成装置1は、主要な構成要素として、ガスボンベ3、レギュレータ4、及び流量制御部5を含むガス源7と、ガス源7からガスが供給されて内部にプラズマを発生させるキャピラリーチューブ(管状部材)9と、キャピラリーチューブ9に接続されたパルス電圧源11と、イオンビームの照射対象であるターゲットTに接続されたバイアス電圧源13とを含んでいる。
【0019】
ガスボンベ3は、レギュレータ4、流量制御部5、及びチューブ15を介してキャピラリーチューブ9の基端17に接続されており、ヘリウム(He)、メタン(CH4)、アンモニア(NH3)等のガスをキャピラリーチューブ9の内部に供給する。レギュレータ4は、ガスボンベ3からのガス流量を調整する調整弁であり、流量制御部5は、レギュレータ4を制御してガスボンベ3からキャピラリーチューブ9に導入されるガスの流量を調整するための装置であり、例えば、マスフローコントローラである。パルス電圧源11は、キャピラリーチューブ9の外側に配置された板状電極19に接続されて板状電極19に周期的な矩形波であるパルス電圧を印加する電源である。バイアス電圧源13は、ターゲットTに接続されてターゲットTに負の直流バイアス電圧を印加する電源である。
【0020】
次に、図2及び図3を参照しながら、キャピラリーチューブ9の構成について詳細に説明する。図2は、図1のキャピラリーチューブ9を拡大して示す側面図、図3は、図2のキャピラリーチューブ9のIII-III線に沿った断面図である。
【0021】
キャピラリーチューブ9は、基端17から直線状に延びたガラス製チューブである基端部21と、先端23にかけてテーパー状に形成されたガラス製キャピラリーチューブである先端部25と、基端部21と先端部25とを接続する樹脂製チューブである中継部27とによって構成されている。ここで、キャピラリーチューブ9の材料は、ガラスには限定されず、プラスチックに代表される樹脂等の他の材料であってもよい。このような構成のキャピラリーチューブ9の内部には、基端17から先端23にかけてまっすぐ延びる空洞29が形成されており、キャピラリーチューブ9は、ガス源7から発生したガス流を基端17から先端23まで繋がる空洞29内に導くことができる。
【0022】
詳細には、先端部25は、中継部27と接続される基端31から先端23に向かって外径及び内径が徐々に小さくなるようなテーパー状に形成されている。ここでは、先端部25は、基端31から先端23にかけて径が急に小さくなり先端23が非常に細長くなるように、その外側面33が曲面形状に形成されている。先端部25の大きさは、例えば、基端31の外径が約1mm、先端23の外径が100nm〜1μmである。このような先端部25は、例えば、外径約1mm、内径0.6mmのガラスチューブをマイクロピペットプラーによって加工することによって作製される。
【0023】
また、中継部27にはその外側面36から内部の空洞29に貫通する2つの側孔37a,37bが形成されている。この2つの側孔37a,37bは、キャピラリーチューブ9の中心軸の周りに外側面36に沿って等間隔で並ぶように、すなわち、キャピラリーチューブ9の中心軸の垂直方向に互いに向かい合う位置に形成されている。
【0024】
さらに、基端部21の外側面35の長手方向の中央部には、全体として円筒形状を有する金属製の板状電極19が固定されている。この板状電極19は、外側面35に沿って基端部21を外側から囲むように固定されている。なお、板状電極19は、円筒状電極の一部が切欠かれたような断面C字状や、断面半円状の曲板形状であってもよい。
【0025】
上記のような構成のキャピラリーチューブ9に対して、ガス源7からガス流が供給されると、基端31から先端23にかけて空洞29内にガス流が形成され、一部のガス流は側孔37a,37bから外部に排出される。これにより、キャピラリーチューブ9の先端23を細線化した場合であっても安定して空洞29内にガス流が形成される。また、キャピラリーチューブ9の先端23を細線化しても先端23に過度のガス圧が加わることが防止され、キャピラリーチューブ9の耐久性も向上する。このように、キャピラリーチューブ9内にガス流が形成された状態で、パルス電圧源11によって板状電極19にパルス電圧が印加可能にされるとともに、キャピラリーチューブ9の中心軸の先端23側の延長線上にターゲットTを配置させた状態で、ターゲットTにバイアス電圧源13から直流バイアス電圧が印加可能にされる。これにより、板状電極19とターゲットTとが相対した電極のように作用し、キャピラリーチューブ9の空洞29内に、大気圧の容量結合プラズマが周期的パルス電圧に同期して断続的に生成される。さらに、その結果空洞29内に生じた容量結合プラズマに含まれるイオンは、空洞29内の電界の作用で先端23に向けて加速されることにより、先端23から外部に断続的なイオンビームとして放出された後、負のバイアス電圧が印加されたターゲットTに向けてさらに加速される。
【0026】
(各種測定結果)
ここで、イオンビーム生成装置1によって生成されるイオンビームの評価結果について示す。図4及び図5には、パルス電圧源11によって印加されるパルス電圧の波形と、キャピラリーチューブ9の先端23から放出されるイオンビームの計測結果とを示している。図5には、図4における一部の時間範囲での計測結果を示している。ここでは、キャピラリーチューブ9の先端23の前面にターゲットTの代わりに微小電極である静電プローブを配置し、この静電プローブを流れる電流の検出信号SP1と、板状電極19とパルス電圧源11の間を流れる電流の検出信号SP2とを計測した。また、同グラフには、パルス電圧源11によって印加されるパルス電圧の波形SP0も併せて示している。この検出信号SP1がイオンビームの強度変化を表すと考えられ、検出信号SP2がキャピラリーチューブ9の空洞29内を流れる電流の大きさを表すと考えられる。この結果によれば、パルス電圧の立ち上がりに同期した時刻TIで、検出信号SP2にピークが見られ、キャピラリーチューブ9の空洞29内に変位電流が生じている。この変位電流の発生により空洞29内に容量結合プラズマが生成され、このプラズマ生成に伴ってキャピラリーチューブ9から放出されるイオンビームが、時刻TIの直後の時刻TPで、検出信号SP1のピークとして検出されていることがわかる。このことから、パルス電圧源11によって周期的なパルス電圧を印加した場合には、イオンビーム生成装置1によって断続的なパルス状のイオンビームが生成されることが理解される。
【0027】
次に、イオンビーム生成装置1によって生成されるイオンビームの速度について評価した。図6には、キャピラリーチューブ9の先端23から放出されるイオンビームの計測結果の位置依存性を示している。ここでは、キャピラリーチューブ9の先端23の前面に静電プローブを配置し、静電プローブの先端23からの距離zを様々変えながら、この静電プローブを流れる電流の検出信号SP1と、板状電極19とパルス電圧源11の間を流れる電流の検出信号SP2とを計測した。この計測結果から、キャピラリーチューブ9の先端23からの距離がz=1.5mm、2.5mm、3.5mm、4.5mmと離れるに従って、検出されるイオンビームのタイミングが徐々に遅れることがわかった。このことは、先端23からキャピラリーチューブ9の長手方向に沿ってイオンビームが放出されていることを示している。そして、距離Zの差と検出信号SP1のピークのタイミング差を計算することによって、イオンビーム生成装置1によって生成されるイオンビームの進展速度を評価することができる。
【0028】
例えば、図7及び図8には、距離zと輸送時間TTとの関係を示している。輸送時間TTは、検出信号SP2のピーク時間TIと、それぞれの距離zにおける検出信号SP1のピーク時間TPとから、
TT=TP−TI
によって計算され、板状電極19から静電プローブまでのイオンの輸送時間を示している。図7は、ガスとしてヘリウムを用い、キャピラリーチューブ9の先端23の外径1μm、パルス電圧の大きさを±5kV、パルス電圧の周波数を5kHzとした場合、図8は、ガスとしてヘリウムを用い、キャピラリーチューブ9の先端23の外径100nm、パルス電圧の大きさを±5kV、パルス電圧の周波数を5kHzとした場合の計測結果である。図7の結果から、距離zが約1mm〜約3.5mmの範囲ではイオンビームの進展速度が約1.1×104m/sと見積もられ、距離zが約3.5mm〜約6.0mmの範囲ではイオンビームの進展速度が約0.5×104m/sと見積もられた。また、図8の結果から、距離zが0mm〜約0.7mmの範囲ではイオンビームの進展速度が約0.3×104m/sと見積もられ、距離zが約0.7mm〜約1.3mmの範囲ではイオンビームの進展速度が約530m/sと見積もられ、距離zが約1.3mm〜約1.5mmの範囲ではイオンビームの進展速度が約58m/sと見積もられた。これらの結果より、イオンビームが大気中を進むうちに速度が遅くなることが理解され、イオンビーム中の荷電粒子群は最初はイオン化フロントを維持しているが、大気中を進むにつれて荷電粒子群が再結合していることが予測される。
【0029】
さらに、イオンビーム生成装置1のキャピラリーチューブ9の先端23から放出される粒子の性質に関する測定結果を示す。このとき、図9に示すように、キャピラリーチューブ9の前面に静電プローブ39を配置し、この静電プローブ39にバイアス電源41を接続して可変バイアス電圧VBを印加すると共に、静電プローブ39を流れる電流IPを、静電プローブ39に接続された直列抵抗43と、直列抵抗43の両端に接続されたオシロスコープ45を用いて測定した。図10には、このような測定系によって計測された電流IPのバイアス電圧VBに対する依存性を示す。この結果から、負のバイアス電圧VBを印加した場合には電流IPが大きくなり、バイアス電圧VBを変えてもほとんど変化しない飽和状態であり、正のバイアス電圧VBを印加した場合にはバイアス電圧VBが大きくなるに従って電流IPが減少することがわかる。このことは、キャピラリーチューブ9の先端23から放出される粒子の大部分は窒素イオンやヘリウムイオン等の正イオンであることを示している。
【0030】
次に、イオンビーム生成装置1のキャピラリーチューブ9において発生するプラズマの成分についての測定結果を示す。図11には、キャピラリーチューブ9において観測される発光スペクトルの分光特性を示している。同図には、上から順に、キャピラリーチューブ9の板状電極19の近傍での分光特性、キャピラリーチューブ9の中継部27近傍での分光特性、及びキャピラリーチューブ9の先端23近傍での分光特性を示している。この場合、供給ガスとしてヘリウムを使用した。この測定結果から、ヘリウムの発光スペクトル(587.6nm、706.5nm)のほか、OH分子の発光スペクトル(308.9nm)や酸素(O)の発光スペクトル(777.2nm)が観測されている。これにより、イオンビーム生成装置1をレジスト膜エッチング等の様々なプロセスに応用できることがわかる。
【0031】
(応用例)
イオンビーム生成装置1の応用例としては、エッチング、アッシング、CVD、表面修飾等の各種プロセスが上げられる。
【0032】
例えば、ターゲットTとして表面にフォトレジスト膜が形成された半導体基板を準備し、そのターゲットTの表面にイオンビーム生成装置1を用いてイオンビームを照射することで、エッチング加工を実現できる。図12には、イオンビーム生成装置1によってエッチング加工が施されたターゲットTをCCDカメラで撮影した画像を示している。この場合、ターゲットTとして、シリコン基板上に膜厚650nm、平均表面粗さRa:1〜3nmのアクリル系樹脂をフォトレジスト膜としてコーティングされたものを用い、キャピラリーチューブ9の先端23の外径を100nmに設定した。このとき、イオンビーム生成装置1によってターゲットTに形成される微細パターンのサイズは、底部における幅約100nm、フォトレジスト膜の表面における幅500〜700nm、深さ30〜50nmで形成されていることが確認された。このように、イオンビーム生成装置1によれば、超微細大気圧イオンビームにより、ナノスケールのパターニングが実現される。
【0033】
また、ターゲットTとしてフォトレジスト膜が形成された半導体基板を対象に、ターゲットTの表面にイオンビーム生成装置1を用いてイオンビームを照射することで、アッシング加工も実現できる。図13には、イオンビーム生成装置1によってアッシング加工が施されたターゲットTの顕微鏡による表面画像及び断面画像を示している。この場合、ターゲットTとして、基板上にアクリル系樹脂をフォトレジスト膜としてコーティングされたものを用い、キャピラリーチューブ9の先端23の外径を100nmに設定し、先端23とターゲットTとの距離を500μm以下に設定した。この場合、ターゲットTに形成される除去パターンの大きさは4.0μmと評価された。また、ターゲットTに形成される除去パターンを微細化したい場合には、図14に示すように、キャピラリーチューブ9の先端の前面にターゲットTを挟んで磁石を配置してもよい。図14においては、ターゲットTと、ターゲットTを移動させるXYステージ47との間に、ターゲットTの表面においてキャピラリーチューブ9の中心軸に沿った磁場を発生させる例えばネオジウム磁石等の磁石49が配置される。図15には、図14のような構成のイオンビーム生成装置1によってアッシング加工が施されたターゲットTの顕微鏡による表面画像及び断面画像を示している。この場合、ターゲットTに形成される除去パターンの大きさは1.75μmと評価された。このように、イオンビーム生成装置1によれば、超微細大気圧イオンビームにより、アッシング加工の超微細化が実現される。
【0034】
さらに、イオンビーム生成装置1において供給ガスとしてヘリウムとメタンの混合ガスを用いて、CVDプロセスを実現することもできる。図16には、シリコン基板に対してイオンビーム生成装置1を用いて3点のCVD加工を施した場合の表面画像を示す。この場合、キャピラリーチューブ9の先端23の外径を100nmに設定した。また、図17には、
ポリカーボネート基板上にCVD加工を施した場合の表面画像を示す。このように、直径6〜9μm、膜厚300〜400nmの範囲で微細加工が可能であることがわかった。また、ポリカーボネートのような熱可塑性基板に対するデポジションも可能であることが明らかになった。
【0035】
また、イオンビーム生成装置1において供給ガスとしてヘリウム、酸素、アンモニアを用いて、表面修飾プロセスを実現することもできる。例えば、アンモニアを用いた場合には、アミノ基修飾を実現することができる。処理条件の一例としては、前処理として、イオンビーム生成装置1においてガス源7からヘリウムを供給してターゲットTにイオンビームを照射する。この場合、キャピラリーチューブ9の先端23の外径を1μm、印加するパルス電圧の大きさを±6.5kV、その電圧の周波数を5kHz、デューティ比を50%、直流バイアス電圧の大きさを-500V、先端23とターゲットTとの距離を250μmに設定し、処理時間を0.01秒〜0.1秒とする。その後、後処理として、イオンビーム生成装置1においてガス源7からヘリウムとアンモニアの混合ガスを供給してターゲットTにイオンビームを照射する。この場合、処理時間を3.0秒とした以外は前処理と同じ条件とする。図18には、イオンビーム生成装置1によってアミノ基修飾加工が施された基板の表面を蛍光顕微鏡によって観察した画像を示しており、(a)は前処理の処理時間を0.1秒に設定した場合、(b)は前処理の処理時間を0.01秒に設定した場合を示している。これらの評価結果により、イオンビーム生成装置1によって微細な表面修飾加工が実現されることがわかった。
【0036】
以上説明したイオンビーム生成装置1及びそれを用いたイオンビーム生成方法によれば、キャピラリーチューブ9の空洞29内において基端部21から先端部25に向けてガス流が均一に安定して形成される。すなわち、基端部21から側孔37a,37bに抜ける流路も設けることで空洞29内での線速を大きくすることができる。さらに、この線速が大きくされたガス流に板状電極19を介してパルス電圧が印加されると共にターゲットTに負の直流バイアスが印加されることにより、キャピラリーチューブ9の空洞29内に変位電流に伴ったイオン流が断続的に形成され、そのイオン流がイオンビームとしてターゲットTに向けて断続的に出射される。これにより、ターゲットTに向かう細いイオンビームを安定して生成することができる。それと同時に、キャピラリーチューブ9の先端部25におけるガス圧を適切に調整することによってキャピラリーチューブ9の破損を防止することもできる。
【0037】
また、イオンビーム生成装置1においては、2つの側孔37a,37bが、キャピラリーチューブ9の中心軸の周りに等間隔に並ぶように配置されている。これにより、キャピラリーチューブ9の内部においてガス流のゆらぎが低減され、ターゲットTに向かうイオンビームの径をより小さくすることが可能になる。さらに、キャピラリーチューブ9の先端部25でのガス圧の調整が容易となる。
【0038】
また、キャピラリーチューブ9は、基端部21と先端部25とを繋ぐ中継部27を有しており、2つの側孔37a,37bは中継部27に形成されているので、キャピラリーチューブ9における側孔37a,37bの加工が容易となる。
【0039】
さらに、板状電極19は、キャピラリーチューブ9の外側面35を囲むような円筒形状を有するので、キャピラリーチューブ9の空洞29内に形成されるイオン流の均一性が向上し、ターゲットTに照射されるイオンビームの均一性をより向上させることができる。
【0040】
なお、本発明は、前述した実施形態に限定されるものではない。例えば、中継部27に形成される側孔の数は1以上であれば特定数には限定されない。例えば、図19に示すように、4つの側孔37a〜37dが、キャピラリーチューブ9の中心軸の周りに等間隔に並ぶように形成されてもよい。ただし、側孔の配置は必ずしも等間隔でなくてもよい。このように側孔の数を増加させることで、キャピラリーチューブ9から放出されるイオンビームの揺らぎが抑えられてターゲットTに照射されるビームの径を小さくすることができる。
【0041】
また、板状電極19に印加するパルス電圧は矩形波には限定されず、正弦波のパルス電圧であってもよい。この場合も、キャピラリーチューブ9の空洞29内に変位電流に伴ったイオン流が断続的に形成される。
【0042】
また、図20に示す本発明の変形例であるイオンビーム生成装置101のように、板状電極19と同一形状を有する2つの板状電極19a,19bをキャピラリーチューブ9の基端部21の中心軸に沿って並ぶように固定し、パルス電圧源11を2つの板状電極19a,19bの間を接続するようにしてもよい。このような構成によっても、パルス電圧源11によって2つの板状電極19a,19bの間にパルス電圧が印加されることにより、キャピラリーチューブ9の空洞29内に変位電流に伴ったイオン流が断続的に形成される。図21には、イオンビーム生成装置101によってアミノ基修飾加工が施された基板の表面を蛍光顕微鏡によって観察した画像を示している。この場合、図18(b)に示す観察結果が得られたときと処理条件を同一に設定した。この結果により、イオンビーム生成装置101を利用すれば、表面修飾加工の更なる微細化が実現されることがわかった。
【符号の説明】
【0043】
1,101…イオンビーム生成装置、7…ガス源、9…キャピラリーチューブ(管状部材)、11…パルス電圧源、13…バイアス電圧源、17…基端、19,19a,19b…板状電極、21…基端部、23…先端、25…先端部、27…中継部、29…空洞、33,35,36…外側面、37a〜37d…側孔。
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷電粒子ビームを発生させる荷電粒子ビーム生成装置及び荷電粒子ビーム生成方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、プラズマエッチングやプラズマCVD等の各種プロセスにおいてプラズマが用いられている。このようなプロセスにおいてはプラズマを生成するプラズマ発生装置が利用されている。例えば、下記特許文献1には、放電管とソレノイドアンテナと高周波電源から構成されている高周波誘導結合式のプラズマ発生装置が開示されている。また、下記特許文献2には、ガラスチューブとその先端部分の周囲に巻回された高周波コイルとを備え、ガラスチューブ内にArガスを導入し、高周波コイルによって高周波電力を加えることによって誘導結合プラズマを生成するプラズマ発生装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−109777号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した従来のプラズマ発生装置では、誘導結合プラズマを利用しているために細い荷電粒子ビームを安定して生成させるには限界が生じていた。
【0005】
そこで、本発明は、かかる課題に鑑みて為されたものであり、細い荷電粒子ビームを安定して発生させることが可能な荷電粒子ビーム生成装置及び荷電粒子ビーム生成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明の一側面に係る荷電粒子ビーム生成装置は、ガス流を発生させるガス源と、基端部がガス源に接続され、先端部がテーパー状に形成された管状部材と、管状部材の側面を外側から囲むように設けられた板状電極と、板状電極にパルス電圧を印加するパルス電圧源と、荷電粒子ビームの照射対象のターゲットに負の直流バイアスを印加するバイアス電圧源と、を備え、管状部材の側面には、1以上の側孔が形成されており、管状部材には、基端部から先端部にかけて、板状電極及び側孔がこの順で配置されている。
【0007】
或いは、本発明の一側面に係る荷電粒子ビーム生成方法は、先端部がテーパー状に形成され、基端部と先端部との間の側面に1以上の側孔が形成された管状部材を用意して、管状部材の基端部にガス源からガス流を流入させ、管状部材の側面の基端部と側孔との間を外側から囲むように設けられた板状電極にパルス電圧を印加し、荷電粒子ビームの照射対象のターゲットに負の直流バイアスを印加する。
【0008】
なお、ここでいう「テーパー状」とは、直線状に細くなる断面形状には限定されず、先端に向かうほど管状部材の中心軸に対する傾斜が急になる形状(先端が丸まった形状)や、先端に向かうほど管状部材の中心軸に対する傾斜が緩やかになる形状(先端が尖った形状)等の曲線状に細くなる断面形状をも含む。
【0009】
本発明の上記態様によれば、管状部材の内部において基端部から先端部に向けてガス流が均一に安定して形成される。さらに、このガス流に板状電極を介してパルス電圧が印加されると共にターゲットに負の直流バイアスが印加されることにより、管状部材の内部に変位電流に伴ったイオン流が断続的に形成され、そのイオン流がイオンビームとしてターゲットに向けて断続的に出射される。これにより、ターゲットに向かう細いイオンビームを安定して生成することができる。それと同時に、管状部材の先端部におけるガス圧を適切に調整することによって管状部材の破損を防止することもできる。
【0010】
上記一側面に係る荷電粒子ビーム生成装置においては、管状部材は、直線状に延びる基端部と、テーパー状に形成された先端部と、基端部と先端部とを接続する中継部と、を有しており、側孔は、中継部に形成されている、ことが好適である。かかる構成を採れば、管状部材における側孔の加工が容易となる。
【0011】
また、板状電極は、管状部材の外側面を囲むような曲板形状を有する、ことも好適である。かかる板状電極の形状によれば、管状部材の内部に形成されるイオン流の均一性が向上し、ターゲットに照射されるイオンビームの均一性をより向上させることができる。
【0012】
さらに、板状電極は、管状部材の中心軸に沿って並んで2枚設けられ、パルス電圧源は、2枚の板状電極の間に接続されている、ことも好適である。この場合、ターゲットの位置に左右されずにターゲットに向けて安定してイオンビームを照射することができる。
【0013】
またさらに、側孔は、管状部材の中心軸の周りに等間隔に並ぶように複数配置されている、ことが好適である。この場合、管状部材の内部においてガス流のゆらぎが低減され、ターゲットに向かうイオンビームの径をより小さくすることが可能になる。さらに、管状部材の先端部でのガス圧の調整が容易となる。
【0014】
さらにまた、板状電極はターゲットとの間に容量結合プラズマを生成する、ことも好適である。こうすれば、ターゲットに向けて均一なイオンビームを断続的に照射することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、細い荷電粒子ビームを安定して発生させることが可能な荷電粒子ビーム生成装置及び荷電粒子ビーム生成方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の好適な一実施形態であるイオンビーム生成装置1を示す概略構成図である。
【図2】図1のキャピラリーチューブ9を拡大して示す側面図である。
【図3】図2のキャピラリーチューブ9のIII-III線に沿った断面図である。
【図4】図1のパルス電圧源11によって印加されるパルス電圧の波形と、図1のキャピラリーチューブ9の先端23から放出されるイオンビームの計測結果とを示すグラフである。
【図5】図4の一部を拡大して示すグラフである。
【図6】図1のキャピラリーチューブ9の先端23から放出されるイオンビームの強度の位置依存性を示すグラフである。
【図7】図1のキャピラリーチューブ9の先端23からの距離zとイオンの輸送時間TTとの関係を示すグラフである。
【図8】図1のキャピラリーチューブ9の先端23からの距離zとイオンの輸送時間TTとの関係を示すグラフである。
【図9】図1のキャピラリーチューブ9の先端23から放出される粒子の性質を測定する測定系の構成図である。
【図10】図9の測定系によって計測された電流IPのバイアス電圧VBに対する依存性を示すグラフである。
【図11】図1のキャピラリーチューブ9において観測される発光スペクトルの分光特性を示すグラフである。
【図12】図1のイオンビーム生成装置1によってエッチング加工が施されたターゲットTの撮影画像を示す図である。
【図13】図1のイオンビーム生成装置1によってアッシング加工が施されたターゲットTの顕微鏡による表面画像及び断面画像を示す図である。
【図14】アッシング加工の微細化のためのイオンビーム生成装置1の構成を示す図である。
【図15】図14の構成のイオンビーム生成装置1によってアッシング加工が施されたターゲットTの顕微鏡による表面画像及び断面画像を示す図である。
【図16】シリコン基板に対して図1のイオンビーム生成装置1を用いてCVD加工を施した場合の表面画像を示す図である。
【図17】ポリカーボネート基板に対して図1のイオンビーム生成装置1を用いてCVD加工を施した場合の表面画像を示す図である。
【図18】図1のイオンビーム生成装置1によってアミノ基修飾加工が施された基板の表面を蛍光顕微鏡によって観察した画像を示す図である。
【図19】本発明の変形例におけるキャピラリーチューブ9の径方向の断面図である。
【図20】本発明の変形例にかかるイオンビーム生成装置101を示す概略構成図である。
【図21】図20のイオンビーム生成装置101によってアミノ基修飾加工が施された基板の表面を蛍光顕微鏡によって観察した画像を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面とともに本発明による荷電粒子ビーム生成装置及び荷電粒子ビーム生成方法の一形態について詳細に説明する。なお、図面の説明においては同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。また、各図面は説明用のために作成されたものであり、説明の対象部位を特に強調するように描かれている。そのため、図面における各部材の寸法比率は、必ずしも実際のものとは一致しない。
【0018】
(イオンビーム生成装置の構成)
図1は、本発明の好適な一実施形態であるイオンビーム生成装置1を示す概略構成図である。同図に示すイオンビーム生成装置1は、内部に大気圧非平衡プラズマを発生させることにより、外部に配置されたターゲットTに向けて荷電粒子ビームであるイオンビームを照射する装置である。イオンビーム生成装置1は、主要な構成要素として、ガスボンベ3、レギュレータ4、及び流量制御部5を含むガス源7と、ガス源7からガスが供給されて内部にプラズマを発生させるキャピラリーチューブ(管状部材)9と、キャピラリーチューブ9に接続されたパルス電圧源11と、イオンビームの照射対象であるターゲットTに接続されたバイアス電圧源13とを含んでいる。
【0019】
ガスボンベ3は、レギュレータ4、流量制御部5、及びチューブ15を介してキャピラリーチューブ9の基端17に接続されており、ヘリウム(He)、メタン(CH4)、アンモニア(NH3)等のガスをキャピラリーチューブ9の内部に供給する。レギュレータ4は、ガスボンベ3からのガス流量を調整する調整弁であり、流量制御部5は、レギュレータ4を制御してガスボンベ3からキャピラリーチューブ9に導入されるガスの流量を調整するための装置であり、例えば、マスフローコントローラである。パルス電圧源11は、キャピラリーチューブ9の外側に配置された板状電極19に接続されて板状電極19に周期的な矩形波であるパルス電圧を印加する電源である。バイアス電圧源13は、ターゲットTに接続されてターゲットTに負の直流バイアス電圧を印加する電源である。
【0020】
次に、図2及び図3を参照しながら、キャピラリーチューブ9の構成について詳細に説明する。図2は、図1のキャピラリーチューブ9を拡大して示す側面図、図3は、図2のキャピラリーチューブ9のIII-III線に沿った断面図である。
【0021】
キャピラリーチューブ9は、基端17から直線状に延びたガラス製チューブである基端部21と、先端23にかけてテーパー状に形成されたガラス製キャピラリーチューブである先端部25と、基端部21と先端部25とを接続する樹脂製チューブである中継部27とによって構成されている。ここで、キャピラリーチューブ9の材料は、ガラスには限定されず、プラスチックに代表される樹脂等の他の材料であってもよい。このような構成のキャピラリーチューブ9の内部には、基端17から先端23にかけてまっすぐ延びる空洞29が形成されており、キャピラリーチューブ9は、ガス源7から発生したガス流を基端17から先端23まで繋がる空洞29内に導くことができる。
【0022】
詳細には、先端部25は、中継部27と接続される基端31から先端23に向かって外径及び内径が徐々に小さくなるようなテーパー状に形成されている。ここでは、先端部25は、基端31から先端23にかけて径が急に小さくなり先端23が非常に細長くなるように、その外側面33が曲面形状に形成されている。先端部25の大きさは、例えば、基端31の外径が約1mm、先端23の外径が100nm〜1μmである。このような先端部25は、例えば、外径約1mm、内径0.6mmのガラスチューブをマイクロピペットプラーによって加工することによって作製される。
【0023】
また、中継部27にはその外側面36から内部の空洞29に貫通する2つの側孔37a,37bが形成されている。この2つの側孔37a,37bは、キャピラリーチューブ9の中心軸の周りに外側面36に沿って等間隔で並ぶように、すなわち、キャピラリーチューブ9の中心軸の垂直方向に互いに向かい合う位置に形成されている。
【0024】
さらに、基端部21の外側面35の長手方向の中央部には、全体として円筒形状を有する金属製の板状電極19が固定されている。この板状電極19は、外側面35に沿って基端部21を外側から囲むように固定されている。なお、板状電極19は、円筒状電極の一部が切欠かれたような断面C字状や、断面半円状の曲板形状であってもよい。
【0025】
上記のような構成のキャピラリーチューブ9に対して、ガス源7からガス流が供給されると、基端31から先端23にかけて空洞29内にガス流が形成され、一部のガス流は側孔37a,37bから外部に排出される。これにより、キャピラリーチューブ9の先端23を細線化した場合であっても安定して空洞29内にガス流が形成される。また、キャピラリーチューブ9の先端23を細線化しても先端23に過度のガス圧が加わることが防止され、キャピラリーチューブ9の耐久性も向上する。このように、キャピラリーチューブ9内にガス流が形成された状態で、パルス電圧源11によって板状電極19にパルス電圧が印加可能にされるとともに、キャピラリーチューブ9の中心軸の先端23側の延長線上にターゲットTを配置させた状態で、ターゲットTにバイアス電圧源13から直流バイアス電圧が印加可能にされる。これにより、板状電極19とターゲットTとが相対した電極のように作用し、キャピラリーチューブ9の空洞29内に、大気圧の容量結合プラズマが周期的パルス電圧に同期して断続的に生成される。さらに、その結果空洞29内に生じた容量結合プラズマに含まれるイオンは、空洞29内の電界の作用で先端23に向けて加速されることにより、先端23から外部に断続的なイオンビームとして放出された後、負のバイアス電圧が印加されたターゲットTに向けてさらに加速される。
【0026】
(各種測定結果)
ここで、イオンビーム生成装置1によって生成されるイオンビームの評価結果について示す。図4及び図5には、パルス電圧源11によって印加されるパルス電圧の波形と、キャピラリーチューブ9の先端23から放出されるイオンビームの計測結果とを示している。図5には、図4における一部の時間範囲での計測結果を示している。ここでは、キャピラリーチューブ9の先端23の前面にターゲットTの代わりに微小電極である静電プローブを配置し、この静電プローブを流れる電流の検出信号SP1と、板状電極19とパルス電圧源11の間を流れる電流の検出信号SP2とを計測した。また、同グラフには、パルス電圧源11によって印加されるパルス電圧の波形SP0も併せて示している。この検出信号SP1がイオンビームの強度変化を表すと考えられ、検出信号SP2がキャピラリーチューブ9の空洞29内を流れる電流の大きさを表すと考えられる。この結果によれば、パルス電圧の立ち上がりに同期した時刻TIで、検出信号SP2にピークが見られ、キャピラリーチューブ9の空洞29内に変位電流が生じている。この変位電流の発生により空洞29内に容量結合プラズマが生成され、このプラズマ生成に伴ってキャピラリーチューブ9から放出されるイオンビームが、時刻TIの直後の時刻TPで、検出信号SP1のピークとして検出されていることがわかる。このことから、パルス電圧源11によって周期的なパルス電圧を印加した場合には、イオンビーム生成装置1によって断続的なパルス状のイオンビームが生成されることが理解される。
【0027】
次に、イオンビーム生成装置1によって生成されるイオンビームの速度について評価した。図6には、キャピラリーチューブ9の先端23から放出されるイオンビームの計測結果の位置依存性を示している。ここでは、キャピラリーチューブ9の先端23の前面に静電プローブを配置し、静電プローブの先端23からの距離zを様々変えながら、この静電プローブを流れる電流の検出信号SP1と、板状電極19とパルス電圧源11の間を流れる電流の検出信号SP2とを計測した。この計測結果から、キャピラリーチューブ9の先端23からの距離がz=1.5mm、2.5mm、3.5mm、4.5mmと離れるに従って、検出されるイオンビームのタイミングが徐々に遅れることがわかった。このことは、先端23からキャピラリーチューブ9の長手方向に沿ってイオンビームが放出されていることを示している。そして、距離Zの差と検出信号SP1のピークのタイミング差を計算することによって、イオンビーム生成装置1によって生成されるイオンビームの進展速度を評価することができる。
【0028】
例えば、図7及び図8には、距離zと輸送時間TTとの関係を示している。輸送時間TTは、検出信号SP2のピーク時間TIと、それぞれの距離zにおける検出信号SP1のピーク時間TPとから、
TT=TP−TI
によって計算され、板状電極19から静電プローブまでのイオンの輸送時間を示している。図7は、ガスとしてヘリウムを用い、キャピラリーチューブ9の先端23の外径1μm、パルス電圧の大きさを±5kV、パルス電圧の周波数を5kHzとした場合、図8は、ガスとしてヘリウムを用い、キャピラリーチューブ9の先端23の外径100nm、パルス電圧の大きさを±5kV、パルス電圧の周波数を5kHzとした場合の計測結果である。図7の結果から、距離zが約1mm〜約3.5mmの範囲ではイオンビームの進展速度が約1.1×104m/sと見積もられ、距離zが約3.5mm〜約6.0mmの範囲ではイオンビームの進展速度が約0.5×104m/sと見積もられた。また、図8の結果から、距離zが0mm〜約0.7mmの範囲ではイオンビームの進展速度が約0.3×104m/sと見積もられ、距離zが約0.7mm〜約1.3mmの範囲ではイオンビームの進展速度が約530m/sと見積もられ、距離zが約1.3mm〜約1.5mmの範囲ではイオンビームの進展速度が約58m/sと見積もられた。これらの結果より、イオンビームが大気中を進むうちに速度が遅くなることが理解され、イオンビーム中の荷電粒子群は最初はイオン化フロントを維持しているが、大気中を進むにつれて荷電粒子群が再結合していることが予測される。
【0029】
さらに、イオンビーム生成装置1のキャピラリーチューブ9の先端23から放出される粒子の性質に関する測定結果を示す。このとき、図9に示すように、キャピラリーチューブ9の前面に静電プローブ39を配置し、この静電プローブ39にバイアス電源41を接続して可変バイアス電圧VBを印加すると共に、静電プローブ39を流れる電流IPを、静電プローブ39に接続された直列抵抗43と、直列抵抗43の両端に接続されたオシロスコープ45を用いて測定した。図10には、このような測定系によって計測された電流IPのバイアス電圧VBに対する依存性を示す。この結果から、負のバイアス電圧VBを印加した場合には電流IPが大きくなり、バイアス電圧VBを変えてもほとんど変化しない飽和状態であり、正のバイアス電圧VBを印加した場合にはバイアス電圧VBが大きくなるに従って電流IPが減少することがわかる。このことは、キャピラリーチューブ9の先端23から放出される粒子の大部分は窒素イオンやヘリウムイオン等の正イオンであることを示している。
【0030】
次に、イオンビーム生成装置1のキャピラリーチューブ9において発生するプラズマの成分についての測定結果を示す。図11には、キャピラリーチューブ9において観測される発光スペクトルの分光特性を示している。同図には、上から順に、キャピラリーチューブ9の板状電極19の近傍での分光特性、キャピラリーチューブ9の中継部27近傍での分光特性、及びキャピラリーチューブ9の先端23近傍での分光特性を示している。この場合、供給ガスとしてヘリウムを使用した。この測定結果から、ヘリウムの発光スペクトル(587.6nm、706.5nm)のほか、OH分子の発光スペクトル(308.9nm)や酸素(O)の発光スペクトル(777.2nm)が観測されている。これにより、イオンビーム生成装置1をレジスト膜エッチング等の様々なプロセスに応用できることがわかる。
【0031】
(応用例)
イオンビーム生成装置1の応用例としては、エッチング、アッシング、CVD、表面修飾等の各種プロセスが上げられる。
【0032】
例えば、ターゲットTとして表面にフォトレジスト膜が形成された半導体基板を準備し、そのターゲットTの表面にイオンビーム生成装置1を用いてイオンビームを照射することで、エッチング加工を実現できる。図12には、イオンビーム生成装置1によってエッチング加工が施されたターゲットTをCCDカメラで撮影した画像を示している。この場合、ターゲットTとして、シリコン基板上に膜厚650nm、平均表面粗さRa:1〜3nmのアクリル系樹脂をフォトレジスト膜としてコーティングされたものを用い、キャピラリーチューブ9の先端23の外径を100nmに設定した。このとき、イオンビーム生成装置1によってターゲットTに形成される微細パターンのサイズは、底部における幅約100nm、フォトレジスト膜の表面における幅500〜700nm、深さ30〜50nmで形成されていることが確認された。このように、イオンビーム生成装置1によれば、超微細大気圧イオンビームにより、ナノスケールのパターニングが実現される。
【0033】
また、ターゲットTとしてフォトレジスト膜が形成された半導体基板を対象に、ターゲットTの表面にイオンビーム生成装置1を用いてイオンビームを照射することで、アッシング加工も実現できる。図13には、イオンビーム生成装置1によってアッシング加工が施されたターゲットTの顕微鏡による表面画像及び断面画像を示している。この場合、ターゲットTとして、基板上にアクリル系樹脂をフォトレジスト膜としてコーティングされたものを用い、キャピラリーチューブ9の先端23の外径を100nmに設定し、先端23とターゲットTとの距離を500μm以下に設定した。この場合、ターゲットTに形成される除去パターンの大きさは4.0μmと評価された。また、ターゲットTに形成される除去パターンを微細化したい場合には、図14に示すように、キャピラリーチューブ9の先端の前面にターゲットTを挟んで磁石を配置してもよい。図14においては、ターゲットTと、ターゲットTを移動させるXYステージ47との間に、ターゲットTの表面においてキャピラリーチューブ9の中心軸に沿った磁場を発生させる例えばネオジウム磁石等の磁石49が配置される。図15には、図14のような構成のイオンビーム生成装置1によってアッシング加工が施されたターゲットTの顕微鏡による表面画像及び断面画像を示している。この場合、ターゲットTに形成される除去パターンの大きさは1.75μmと評価された。このように、イオンビーム生成装置1によれば、超微細大気圧イオンビームにより、アッシング加工の超微細化が実現される。
【0034】
さらに、イオンビーム生成装置1において供給ガスとしてヘリウムとメタンの混合ガスを用いて、CVDプロセスを実現することもできる。図16には、シリコン基板に対してイオンビーム生成装置1を用いて3点のCVD加工を施した場合の表面画像を示す。この場合、キャピラリーチューブ9の先端23の外径を100nmに設定した。また、図17には、
ポリカーボネート基板上にCVD加工を施した場合の表面画像を示す。このように、直径6〜9μm、膜厚300〜400nmの範囲で微細加工が可能であることがわかった。また、ポリカーボネートのような熱可塑性基板に対するデポジションも可能であることが明らかになった。
【0035】
また、イオンビーム生成装置1において供給ガスとしてヘリウム、酸素、アンモニアを用いて、表面修飾プロセスを実現することもできる。例えば、アンモニアを用いた場合には、アミノ基修飾を実現することができる。処理条件の一例としては、前処理として、イオンビーム生成装置1においてガス源7からヘリウムを供給してターゲットTにイオンビームを照射する。この場合、キャピラリーチューブ9の先端23の外径を1μm、印加するパルス電圧の大きさを±6.5kV、その電圧の周波数を5kHz、デューティ比を50%、直流バイアス電圧の大きさを-500V、先端23とターゲットTとの距離を250μmに設定し、処理時間を0.01秒〜0.1秒とする。その後、後処理として、イオンビーム生成装置1においてガス源7からヘリウムとアンモニアの混合ガスを供給してターゲットTにイオンビームを照射する。この場合、処理時間を3.0秒とした以外は前処理と同じ条件とする。図18には、イオンビーム生成装置1によってアミノ基修飾加工が施された基板の表面を蛍光顕微鏡によって観察した画像を示しており、(a)は前処理の処理時間を0.1秒に設定した場合、(b)は前処理の処理時間を0.01秒に設定した場合を示している。これらの評価結果により、イオンビーム生成装置1によって微細な表面修飾加工が実現されることがわかった。
【0036】
以上説明したイオンビーム生成装置1及びそれを用いたイオンビーム生成方法によれば、キャピラリーチューブ9の空洞29内において基端部21から先端部25に向けてガス流が均一に安定して形成される。すなわち、基端部21から側孔37a,37bに抜ける流路も設けることで空洞29内での線速を大きくすることができる。さらに、この線速が大きくされたガス流に板状電極19を介してパルス電圧が印加されると共にターゲットTに負の直流バイアスが印加されることにより、キャピラリーチューブ9の空洞29内に変位電流に伴ったイオン流が断続的に形成され、そのイオン流がイオンビームとしてターゲットTに向けて断続的に出射される。これにより、ターゲットTに向かう細いイオンビームを安定して生成することができる。それと同時に、キャピラリーチューブ9の先端部25におけるガス圧を適切に調整することによってキャピラリーチューブ9の破損を防止することもできる。
【0037】
また、イオンビーム生成装置1においては、2つの側孔37a,37bが、キャピラリーチューブ9の中心軸の周りに等間隔に並ぶように配置されている。これにより、キャピラリーチューブ9の内部においてガス流のゆらぎが低減され、ターゲットTに向かうイオンビームの径をより小さくすることが可能になる。さらに、キャピラリーチューブ9の先端部25でのガス圧の調整が容易となる。
【0038】
また、キャピラリーチューブ9は、基端部21と先端部25とを繋ぐ中継部27を有しており、2つの側孔37a,37bは中継部27に形成されているので、キャピラリーチューブ9における側孔37a,37bの加工が容易となる。
【0039】
さらに、板状電極19は、キャピラリーチューブ9の外側面35を囲むような円筒形状を有するので、キャピラリーチューブ9の空洞29内に形成されるイオン流の均一性が向上し、ターゲットTに照射されるイオンビームの均一性をより向上させることができる。
【0040】
なお、本発明は、前述した実施形態に限定されるものではない。例えば、中継部27に形成される側孔の数は1以上であれば特定数には限定されない。例えば、図19に示すように、4つの側孔37a〜37dが、キャピラリーチューブ9の中心軸の周りに等間隔に並ぶように形成されてもよい。ただし、側孔の配置は必ずしも等間隔でなくてもよい。このように側孔の数を増加させることで、キャピラリーチューブ9から放出されるイオンビームの揺らぎが抑えられてターゲットTに照射されるビームの径を小さくすることができる。
【0041】
また、板状電極19に印加するパルス電圧は矩形波には限定されず、正弦波のパルス電圧であってもよい。この場合も、キャピラリーチューブ9の空洞29内に変位電流に伴ったイオン流が断続的に形成される。
【0042】
また、図20に示す本発明の変形例であるイオンビーム生成装置101のように、板状電極19と同一形状を有する2つの板状電極19a,19bをキャピラリーチューブ9の基端部21の中心軸に沿って並ぶように固定し、パルス電圧源11を2つの板状電極19a,19bの間を接続するようにしてもよい。このような構成によっても、パルス電圧源11によって2つの板状電極19a,19bの間にパルス電圧が印加されることにより、キャピラリーチューブ9の空洞29内に変位電流に伴ったイオン流が断続的に形成される。図21には、イオンビーム生成装置101によってアミノ基修飾加工が施された基板の表面を蛍光顕微鏡によって観察した画像を示している。この場合、図18(b)に示す観察結果が得られたときと処理条件を同一に設定した。この結果により、イオンビーム生成装置101を利用すれば、表面修飾加工の更なる微細化が実現されることがわかった。
【符号の説明】
【0043】
1,101…イオンビーム生成装置、7…ガス源、9…キャピラリーチューブ(管状部材)、11…パルス電圧源、13…バイアス電圧源、17…基端、19,19a,19b…板状電極、21…基端部、23…先端、25…先端部、27…中継部、29…空洞、33,35,36…外側面、37a〜37d…側孔。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス流を発生させるガス源と、
基端部が前記ガス源に接続され、先端部がテーパー状に形成された管状部材と、
前記管状部材の側面を外側から囲むように設けられた板状電極と、
前記板状電極にパルス電圧を印加するパルス電圧源と、
荷電粒子ビームの照射対象のターゲットに負の直流バイアスを印加するバイアス電圧源と、を備え、
前記管状部材の側面には、1以上の側孔が形成されており、
管状部材には、前記基端部から前記先端部にかけて、前記板状電極及び前記側孔がこの順で配置されている、
ことを特徴とする荷電粒子ビーム生成装置。
【請求項2】
前記管状部材は、直線状に延びる前記基端部と、テーパー状に形成された前記先端部と、前記基端部と前記先端部とを接続する中継部と、を有しており、
前記側孔は、前記中継部に形成されている、
ことを特徴とする請求項1記載の荷電粒子ビーム生成装置。
【請求項3】
前記板状電極は、前記管状部材の外側面を囲むような曲板形状を有する、
ことを特徴とする請求項1〜2のいずれか1項に記載の荷電粒子ビーム生成装置。
【請求項4】
前記板状電極は、前記管状部材の中心軸に沿って並んで2枚設けられ、
前記パルス電圧源は、前記2枚の板状電極の間に接続されている、
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の荷電粒子ビーム生成装置。
【請求項5】
前記側孔は、前記管状部材の中心軸の周りに等間隔に並ぶように複数配置されている、
ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の荷電粒子ビーム生成装置。
【請求項6】
前記板状電極は前記ターゲットとの間に容量結合プラズマを生成する、
ことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の荷電粒子ビーム生成装置。
【請求項7】
先端部がテーパー状に形成され、基端部と先端部との間の側面に1以上の側孔が形成された管状部材を用意して、前記管状部材の前記基端部にガス源からガス流を流入させ、
前記管状部材の側面の前記基端部と前記側孔との間を外側から囲むように設けられた板状電極にパルス電圧を印加し、
荷電粒子ビームの照射対象のターゲットに負の直流バイアスを印加する、
ことを特徴とする荷電粒子ビーム生成方法。
【請求項1】
ガス流を発生させるガス源と、
基端部が前記ガス源に接続され、先端部がテーパー状に形成された管状部材と、
前記管状部材の側面を外側から囲むように設けられた板状電極と、
前記板状電極にパルス電圧を印加するパルス電圧源と、
荷電粒子ビームの照射対象のターゲットに負の直流バイアスを印加するバイアス電圧源と、を備え、
前記管状部材の側面には、1以上の側孔が形成されており、
管状部材には、前記基端部から前記先端部にかけて、前記板状電極及び前記側孔がこの順で配置されている、
ことを特徴とする荷電粒子ビーム生成装置。
【請求項2】
前記管状部材は、直線状に延びる前記基端部と、テーパー状に形成された前記先端部と、前記基端部と前記先端部とを接続する中継部と、を有しており、
前記側孔は、前記中継部に形成されている、
ことを特徴とする請求項1記載の荷電粒子ビーム生成装置。
【請求項3】
前記板状電極は、前記管状部材の外側面を囲むような曲板形状を有する、
ことを特徴とする請求項1〜2のいずれか1項に記載の荷電粒子ビーム生成装置。
【請求項4】
前記板状電極は、前記管状部材の中心軸に沿って並んで2枚設けられ、
前記パルス電圧源は、前記2枚の板状電極の間に接続されている、
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の荷電粒子ビーム生成装置。
【請求項5】
前記側孔は、前記管状部材の中心軸の周りに等間隔に並ぶように複数配置されている、
ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の荷電粒子ビーム生成装置。
【請求項6】
前記板状電極は前記ターゲットとの間に容量結合プラズマを生成する、
ことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の荷電粒子ビーム生成装置。
【請求項7】
先端部がテーパー状に形成され、基端部と先端部との間の側面に1以上の側孔が形成された管状部材を用意して、前記管状部材の前記基端部にガス源からガス流を流入させ、
前記管状部材の側面の前記基端部と前記側孔との間を外側から囲むように設けられた板状電極にパルス電圧を印加し、
荷電粒子ビームの照射対象のターゲットに負の直流バイアスを印加する、
ことを特徴とする荷電粒子ビーム生成方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図14】
【図19】
【図20】
【図12】
【図13】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図21】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図14】
【図19】
【図20】
【図12】
【図13】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図21】
【公開番号】特開2013−109961(P2013−109961A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−254205(P2011−254205)
【出願日】平成23年11月21日(2011.11.21)
【出願人】(304023318)国立大学法人静岡大学 (416)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年11月21日(2011.11.21)
【出願人】(304023318)国立大学法人静岡大学 (416)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]