説明

荷電粒子ビーム装置用モノクロメータ及びこれを用いた電子装置

【課題】一次電子ビームのエネルギー幅を低減し、低電圧SEMの解像度を改善するモノクロメーターを実現する。
【解決手段】光軸Zに添って、標準エネルギー及びエネルギー偏差を有する荷電粒子ビームを偏向させるための第1の分散ユニット200、第2の分散ユニット400、それらの中間面310に配置されたエネルギー制限アパーチャ300及び荷電粒子ビームの焦点を調整するためのビーム調整素子100を備えるモノクロメーター500を形成し、荷電粒子ビームの仮想的なクロスオーバーS6を第1の分散ユニット200とエネルギー制限アパーチャ300との間に形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷電粒子ビーム装置に関し、特に、荷電粒子ビームをフィルタリング(選別)して小さなエネルギー幅にするモノクロメータ(単色光分光器)に関する。本発明はまた、そのような装置の使用に適した荷電粒子ビーム装置に関する。しかしながら、本発明が、それよりも遙かに広い適用範囲を有することが認識されるであろう。
【背景技術】
【0002】
走査型電子顕微鏡(SEM、Scanning Electron Microscope)の分野や、試料を観察するために電子顕微鏡の原理を用いる関連産業分野、例えば半導体製造における歩留まり管理のための欠陥レビューや欠陥検査のような分野においては、高解像度で試料の像を取得することと照射ダメージ(損傷)が低いことが要求され、追求されてきた。
【0003】
試料への照射ダメージを低減させる唯一の改善策は、試料表面下への貫通及び試料表面上の残留帯電を抑制する(又は制限する)低エネルギー(又は、典型的にはSEMの分野で低電圧と呼ばれる)の電子ビーム走査(<5keV)を利用することである。しかしながら、低エネルギー電子ビームは、高エネルギー電子ビームよりも広いプローブスポット(又はプローブ領域)を形成するため、解像度は悪くなるであろう。
【0004】
試料上のプローブスポットの直径は、撮像系(又は結像系)における電子源のサイズ、球面収差及び色収差、回折及びクーロン効果により定められる。低エネルギー電子ビームに関しては、達成可能な最小のプローブスポットサイズは、その大きいド・ブロイ波長λによる回折ディスク(diffraction disc)及びその大きい相対エネルギー幅dV/Vによる色収差により制限される。回折ディスクDd及び色収差Dcの双方は、それぞれ方程式(1.1)及び(1.2)で示される。ここで、CCAは色収差係数であり、V及びdVは電子エネルギー及びエネルギー幅であり、αはビーム半角である。明らかに、プローブスポットサイズを減らすためには、色収差係数CCAを減少させることと同様に、エネルギー幅dV/Vを減少させることがもう1つの選択肢となる。
【0005】
【数1】


電子ビームのエネルギー幅は、電子が電子源から発射された時に発生した元々のエネルギー幅と、電子源から目的地に向かう途中で電子間の統計的相互作用により発生して負わされたエネルギー幅によりもたらされる(ベルシュ効果)。電子エネルギー分布は通常、長い尾を有する形状を有し、ビームのエネルギー幅は典型的にはFWHM(Full Width Half Maximum、半値全幅)で表現される。低電圧SEM(LVSEM、Low-Voltage SEM)で広く用いられているショットキーフィールドエミッション電子源に関しては、カソードの段階でのエネルギー幅dVは0.3eVであり、それが銃出口ではビーム電流に応じて0.5−1eVまで増加する。1keVのような低エネルギー電子ビームに関し、エネルギー幅の量は、10keVのような高エネルギービームよりもずっと大きい相対エネルギー幅dV/Vを意味する。
【0006】
電子が試料に達する前のエネルギー幅dVを減少させるため、多くの解決策が提案されてきた。これらの解決策においては、磁気及び/又は静電偏向器(例えば、アルファフィルタ、オメガフィルタ及びウィーンフィルタのような)及び静電円形レンズ(例えば、米国特許第7034315号のような)は、分散素子として採り上げられている。これらの素子は、一般的には電子ビームを偏向する際に偏向分散を発生させる。これら総ての解決策の中で、ウィーンフィルタのみが一直線の光学軸を有し、標準エネルギーを有する電子を光学軸から離れて偏向させない。この特性は、ウィーンフィルタを設けることを容易にし、実際には完全に補正することが困難な軸外収差を発生させず、それ故多くの解決策がウィーンフィルタを基にして提案されている。
【0007】
図1に示されるような標準的なウィーンフィルタの基本的構成において、X方向における静電双極子場E及びY方向における磁気双極子場Bは、互いに垂直に重畳され、双方とも一直線の光学軸Zに対して垂直である。光学軸Zに沿って伝搬する電子ビームはウィーンフィルタを通過する。ウィーン条件は、方程式(1.3)に示されるように、Z方向に速度vで移動する電子にのみ当てはまり、その場合には各々の電子への正味のローレンツ力Fはゼロである。速度vからの偏差δvを有してZ方向に移動する電子に関し、標準の電子エネルギーV及びエネルギー偏差δVで表現している方程式(1.4)又は(1.5)に示されるように、当該電子はX方向においてゼロでない正味のローレンツ力を取得してX方向に偏向され、それ故Z方向からそらされる。ここで、e及びmは、それぞれ電子の電荷と質量である。偏向角αは、方程式(1.6)に示されるように、エネルギー偏差δVと、磁場B及び標準エネルギーVに関連付けられた偏向力(deflection power)Kとに依存する。よって、ウィーンフィルタは、偏向分散を発生させ、偏向力Kは分散強さ(dispersion strength)を表す。明確性のため、ここでは、偏向力K及び偏向方向はそれぞれ分散能(dispersion power)及び分散方向(dispersion direction)と呼ばれる。この場合、軸外収差は、速度vを有する電子には発生しない。
【0008】
【数2】


標準エネルギーを有するがYOZ平面において移動しない各々の電子に関し、その電子は静電場からポテンシャルエネルギー変化を取得する。従って、その速度は、方程式(1.7)において示されるように、ウィーンフィルタを通過する際には異なり、方程式(1.8)に示されるように、ゼロではない正味のローレンツ力を取得するであろう。正味のローレンツ力は電子の位置xに比例し、それ故、X方向(分散方向)における集束効果が存在する。分散方向における集束効果は、非点集束を発生させ、同時に軸外電子の偏向角度を減少させる。後者は、分散能の低減を暗示している。
【0009】
【数3】


ウィーンフィルタは、多くの方法において、モノクロメータ又はエネルギーフィルタとして用いられてきており、エネルギーに応じたフィルタリング及びエネルギー角に応じたフィルタリングは2つの典型的な方法である。図2aに示されるように、エネルギーに応じたフィルタリングにおいては、電子源1からのビーム2は、円形レンズ10及び/又はウィーンフィルタ11自身(例えば、米国特許第6452169号、米国特許第6580073号、米国特許第6960763号及び米国特許第7507956号)により焦点が合わされ、エネルギー制限アパーチャ(又は開口)12上に非点収差を有する像を形成する。エネルギーVを有する電子はサブビーム3を形成し、光軸上に焦点が合わされ、一方で、エネルギーV±δVを有する電子は、サブビーム4、5を形成し、それぞれ±X方向へ偏向され、光軸外に焦点が合わされる。結果として、ビーム2の中に、エネルギー偏差が±δV以内の総ての電子はアパーチャ12を通過し、残りは遮断されるであろう。
【0010】
重要な利点として、エネルギーに応じたフィルタリングは、電子エネルギー分布の長い尾を完全に遮断するであろう。エネルギー分布の長い尾は、画像における背景を生成し、画像コントラストを悪化させる。無視できない不利な点として、エネルギーに応じたフィルタリングがソース(source)サイズを増加させることである。アパーチャ12上の電子源1の像は、後に続く電子光学系のためのソースとなり、そのサイズは、実際はアパーチャサイズにより定められる。しかしながら、現在の実施可能なアパーチャサイズ(≧100nm)は、元々のソース1のサイズよりもずっと大きい(ショットキーフィールドエミッションソースの仮想的なソースは約20nmである)。更に、アパーチャ12上の像は、総ての電子のクロスオーバーであり、追加的なエネルギー幅を発生させる電子相互作用を強める。しかしながら、非点収差の像は、電子相互作用の観点からは、無非点収差の像よりもよい。
【0011】
エネルギーと入射角に応じたフィルタリングにおいては(例えば、米国特許第6489621号、米国特許第7679054号及び米国特許第5838004号)、図2bに示されるように、電子源1からのビーム2がウィーンフィルタ11を通過する。エネルギーVを有する電子は一直線に進むサブビーム3を形成し、エネルギーV±δVを有する電子はそれぞれ、±X方向にそれぞれ偏向されるであろうサブビーム4、5を形成する。各ビームのエネルギーと入射角制限アパーチャ12上の位置は、それのエネルギーと、更にウィーンフィルタ11への入射角とに依存する。従って、アパーチャ12はエネルギー偏差が±δV以内でない総ての電子のみならず、それらのエネルギー偏差が±δV以内であっても大きな入射角を有する電子のいくつかも遮蔽する。
【0012】
エネルギー偏差δVに関する偏向角αは、エネルギー偏差δVを有する荷電粒子をきれいに除去するために、少なくとも入射半角βの2倍よりも大きくなければならない。このことは、ウィーンフィルタの分散能が十分強いか、又は入射ビームの発散(又は分岐)が十分に小さいことを要求する。増加するウィーンフィルタの分散能は偏向角を増加させるであろうが、同時に今度は偏向角を減少させるであろう集束効果を高め、偏向角の到達可能な最大値を制限する。入射ビームの発散を抑えるにおいては、ビーム電流を制限するか又は今度はビームのエネルギーの拡がりを増加させる電子相互作用を強めるであろう。別の無視できない不利な点は、元々のソース1が、後に続く電子光学系のために、より大きい仮想的なソース14から15までに変更されている点である。
【0013】
上述の問題点を解決するために、多くの改善方法が提案されてきた。エネルギーと入射角に応じたフィルタリングに関し、1つの方法は、元々のソースをウィーンフィルタの中心上に結像するために円形レンズを用いることである(例えば、米国特許第7468517号のように)。これは、ソースサイズへのウィーンフィルタ効果を最小にするが、実際のクロスオーバーを追加する。他の方法は、第1のフィーンフィルタの残留効果を補正するために第2のウィーンフィルタを用いることである(例えば、米国特許第6489621号、米国特許第7679054号のように)。この方法は、実際のクロスオーバーは生成しないが、後に続く光学系から遠く離れた仮想的なクロスオーバーを生成し、ビームサイズにおける大幅な増加のために大きな収差を受ける。
【0014】
エネルギーに応じたフィルタリングに関し、第1のウィーンフィルタ11の残留効果を補正するため、エネルギー制限アパーチャフィルタ12の後に、1又はそれ以上の追加的なウィーンフィルタ21を設ける方法(図3a及び図3bに示されるように)が多くの文献(例えば、米国特許第6960763号、米国特許第6580073号及び米国特許第7507956号のような)で提案されている。これらの解決策においては、無非点収差で分散の無いクロスオーバー7、即ち、追加的な実際のクロスオーバーが、エネルギー制限アパーチャ12における第1の実際の非点収差を有するクロスオーバー6の後に、最後のウィーンフィルタ21の後に形成されている。これは、電子相互作用の観点からエネルギーフィルタリング後にエネルギー幅を増加させるだけでなく、少なくともモノクロメータの長さ8によるSEMの合計長を長くする。
【0015】
本発明は、エネルギーに応じたフィルタリングとエネルギーと入射角に応じたフィルタリングにおける問題を解消する解決策を提供するであろう。モノクロメータの後に、入射した荷電粒子ビームの実際の無非点収差のクロスオーバーを形成する代わりに、本発明ではモノクロメータの内部に無非点収差で分散の無い仮想的なクロスオーバーを形成する。それから、本発明は、低電圧SEMとLVSEMに基づく関連装置の撮像分解能を向上させる効果的な方法を提供する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】米国特許第7034315号公報
【特許文献2】米国特許第6452169号公報
【特許文献3】米国特許第6580073号公報
【特許文献4】米国特許第6960763号公報
【特許文献5】米国特許第7507956号公報
【特許文献6】米国特許第6489621号公報
【特許文献7】米国特許第7679054号公報
【特許文献8】米国特許第5838004号公報
【特許文献9】米国特許第7468517号公報
【発明の概要】
【0017】
本発明の目的は、荷電粒子ビーム装置において、一次電子ビームのエネルギー幅を低減させるモノクロメータを提供することを目的とする。詳細には、偏向分散及び一直線の光学軸に沿った基礎的な軌道において、エネルギー制限アパーチャに関する二重対称を形成することにより、このモノクロメータが、荷電粒子源から来た入射荷電粒子ビームを低減したエネルギー幅で出射させるとともに、効果的なクロスオーバー直径と伝搬方向を変化させずに維持する。それ故、本発明は、低電圧SEMや、LVSEM(低電圧SEM)の原理に基づく、半導体歩留まり管理における欠陥検査や欠陥レビューのような関連装置の撮像解像度を改善する効果的な方法を提供する。
【0018】
従って、本発明は、一直線の光軸に揃えて配置され、標準エネルギー及びエネルギー幅を有する荷電粒子ビームを偏向するための第1の分散ユニット及び第2の分散ユニットと、前記第1及び第2の分散ユニットの間の中心面に配置され、エネルギー制限アパーチャを有するプレートと、前記エネルギー制限アパーチャにおいて前記荷電粒子ビームの実際のクロスオーバーを形成するように、前記荷電粒子ビームが前記第1の分散ユニットに入る前に前記荷電粒子ビームの焦点を合わせるためのビーム調整素子と、を有する。前記荷電粒子ビームは、光軸に沿って伝搬し、各分散ユニットを一直線に通過する標準エネルギーを有する荷電粒子と、分散方向と同じ方向に前記各分散ユニットにより偏向される標準エネルギーからのエネルギー偏差を有する荷電粒子と、を含む。前記各分散ユニットにより生成される各荷電粒子の偏向角は、その分散能と前記各荷電粒子のエネルギー偏差に依存する。前記第1及び第2の分散ユニットの前記分散能及び前記分散方向は、それぞれ等しい。エネルギー制限アパーチャは、前記一直線の光軸に揃えて配置されている。前記荷電粒子ビームが前記第2の分散ユニットから出た後に、仮想的なクロスオーバーが前記第1の分散ユニットと前記エネルギー制限アパーチャとの間に形成される。
【0019】
前記モノクロメータから出た後の前記荷電粒子ビームの出射エネルギー幅は、前記第1及び第2の分散ユニットと前記ビーム調整素子のフォーカス能力(focusing power)を同時に変化させることにより変更され得る。前記ビーム調整素子は、円形レンズである。前記エネルギー制限アパーチャの形状は円形、長方形、正方形、又は楕円形であり、前記プレートは、前記第1の分散ユニットの前記分散方向において異なるサイズを有する複数のエネルギー制限アパーチャを備え、前記モノクロメータから出た後の前記荷電粒子ビームの前記出射エネルギー幅は、前記プレート上の異なるエネルギー制限アパーチャを用いることにより変更され得る。
【0020】
本発明はモノクロメータを提供し、該モノクロメータは、第1のウィーンフィルタと該第1のウィーンフィルタにより発生した非点収差を補正する第1の非点収差補正装置(スティグメータ)とを含む第1の分散ユニットと、第2のウィーンフィルタと該第2のウィーンフィルタにより発生した非点収差を補正する第2の非点収差補正装置(スティグメータ)とを含む第2の分散ユニットと、前記第1及び第2の分散ユニットの間の中心面にあるエネルギー制限アパーチャを有するプレートと、を含む。前記第1及び第2の分散ユニットの双方とも、一直線の光軸に揃えて配置されている。入射荷電粒子ビームは、後に前記各分散ユニットを真っ直ぐ通過する標準エネルギーを有する粒子と、後に前記各分散ユニットにより分散方向と同じ方向に偏向される前記標準エネルギーからのエネルギー偏差を有する粒子と、を含む。各粒子の偏向角は、それのエネルギー偏差と前記各分散ユニットの分散能に依存する。前記第1及び第2の分散ユニットの分散能及び分散方向は、それぞれ等しい。前記エネルギー制限アパーチャは、前記一直線の光軸に揃えて配置される。
【0021】
前記第1のウィーンフィルタと前記第1の非点収差補正装置は、前記光軸に沿って重ね合わされ、前記第2のウィーンフィルタと前記第2の非点収差補正装置は前記光軸に沿って重ね合わされている。前記モノクロメータは、実際のクロスオーバーをエネルギー制限アパーチャ内に形成するように、前記荷電粒子ビームが前記第1の分散ユニットに入射する前に前記荷電粒子ビームの焦点を合わせるためのビーム調整素子を更に有し、該ビーム調整素子は円形レンズを有する。仮想的なクロスオーバーは、前記荷電粒子ビームが前記第2の分散ユニットを出た後、前記第1の分散ユニットと前記エネルギー制限アパーチャとの間に形成される。前記モノクロメータから出た後の前記荷電粒子ビームの出射エネルギー幅は、前記第1及び第2の分散ユニットの前記分散能及び前記ビーム調整素子の前記フォーカス能力を同時に調整することにより変更され得る。前記第1及び第2の分散ユニットの分散能は、前記第1及び第2の分散ユニット内の前記第1及び第2のウィーンフィルタに及ぼす電気的励磁を変化させることにより調整され得る。前記プレートは、前記第1の分散ユニットの前記分散方向において異なるサイズを有する複数のエネルギー制限アパーチャを有する。前記モノクロメータから出た後の荷電粒子ビームの出射エネルギー幅は、異なるエネルギー制限アパーチャを前記一直線の光軸に揃えて配列するように、前記一直線の光軸に垂直な方向に前記プレートを移動させることにより変更され得る。前記アパーチャは円形、長方形、正方形、又は楕円形である。
【0022】
本発明は更に電子装置を提供し、該電子装置は、一直線の光軸に沿って伝搬する一次電子ビームを供給するための電子源と、前記一次電子ビームの焦点を合わせるため、前記光軸に揃えて配置された集束レンズと、二次電子を放射する試料の表面上に前記一次電子ビームの焦点を合わせるため、前記光軸に揃えて配置された対物レンズと、試料を支持するためのステージと、前記二次電子を受けるための検出器と、前記一次電子ビームのエネルギー幅を減少させるため、前記電子源と前記対物レンズとの間に配置されたモノクロメータとを有し、前記モノクロメータは、第1のウィーンフィルタと該第1のウィーンフィルタにより発生した非点収差を補正する第1の非点収差補正装置(stigmator)とを含む第1の分散ユニットと、第2のウィーンフィルタと該第2のウィーンフィルタにより発生した非点収差を補正する第2の非点収差補正装置(stigmator)とを含む第2の分散ユニットと、前記第1及び第2の分散ユニットの間の中心面にあり、エネルギー制限アパーチャを有するプレートと、を含む。前記第1及び第2の分散ユニットの双方は、前記光軸に揃えて配置される。前記一次電子ビームの内部において、標準エネルギーを有する電子は前記各分散ユニットを真っ直ぐ通過し、前記標準エネルギーから偏差を有する電子は分散方向と同じ方向に偏向される。各電子の偏向角は、それのエネルギー偏差と前記各分散ユニットの分散能に依存する。前記第1及び第2の分散ユニットの分散能と分散方向は等しい。前記エネルギー制限アパーチャは、前記一直線の光軸に揃えて配置される。
【0023】
前記第1のウィーンフィルタ及び前記第1の非点収差補正装置は、前記一直線の光軸に沿って重ね合わされ、前記第2のウィーンフィルタ及び前記第2の非点収差補正装置は、前記一直線の光軸に沿って重ね合わされる。前記エネルギー制限アパーチャは円形、長方形、正方形、又は楕円形である。
【0024】
前記電子装置は、前記エネルギー制限アパーチャにおいて実際のクロスオーバーを形成するように、前記一次電子ビームが前記第1の分散ユニットに入射する前に前記一次電子ビームの焦点を合わせるため、前記光軸に揃えて配置されたビーム調整素子を更に含む。前記ビーム調整素子は、円形レンズである。仮想的なクロスオーバーが、前記一次電子ビームが前記モノクロメータを出た後に、前記第1の分散ユニットと前記エネルギー制限アパーチャとの間に形成される。出射エネルギー幅は、前記第1及び第2の分散ユニットの前記分散能と前記ビーム調整素子の前記フォーカス能力を同時に調整することにより変更され得る。前記第1及び第2の分散ユニットの分散能は、前記第1及び第2の分散ユニット内の前記第1及び第2のウィーンフィルタに与える電気的励磁を変化させることにより調整され得る。前記プレートは、前記第1の分散ユニットの前記分散方向において異なるサイズを有する2以上の(1より多い)エネルギー制限アパーチャを有する。前記モノクロメータから出た後の前記一次電子ビームの前記エネルギー幅は、異なるエネルギー制限アパーチャを前記一直線の光軸に揃えて配置するために、前記プレートを前記一直線の光軸に垂直な方向に移動させることにより変更され得る。
【0025】
前記電子装置は、前記電子源と前記集束レンズとの間にある第1のアパーチャを有する第1のプレートと、前記集束レンズと前記対物レンズの間にある第2のアパーチャを有する第2のプレートとを更に有する。前記モノクロメータは、前記第1のプレートと前記集束レンズとの間にあってもよく、又は前記モノクロメータは前記第2のプレートと前記対物レンズとの間にあってもよい。
【0026】
本発明はまた、荷電粒子ビームをフィルタリングするモノクロメータを提供し、該モノクロメータは、標準エネルギーとエネルギー幅を有する荷電粒子ビームを偏向させるために、一直線の光軸に揃えて配置された第1の分散ユニット及び第2の分散ユニットと、前記第1及び第2の分散ユニットの間の中心面にあり、エネルギー制限アパーチャを有するプレートとを含む。前記荷電粒子ビームは、前記光軸に沿って伝搬するとともに、前記第1の分散ユニット及び前記第2の分散ユニットの各分散ユニットを真っ直ぐ通過する前記標準エネルギーを有する荷電粒子と、前記各分散ユニットにより分散方向と同じ方向に偏向される前記標準エネルギーからエネルギー偏差を有する荷電粒子とを含む。前記各分散ユニットにより生成された各荷電粒子の偏向角は、その分散能と前記各荷電粒子のエネルギー偏差に依存する。前記第1及び第2の分散ユニットの前記分散能及び前記分散方向はそれぞれ等しい。前記エネルギー制限アパーチャは前記一直線の光軸に揃えて配置され、前記荷電粒子ビームの実際のクロスオーバーは前記エネルギー制限アパーチャに形成され、仮想的なクロスオーバーは、前記第2の分散ユニットから前記荷電粒子ビームが出た後に、前記第1の分散ユニットと前記エネルギー制限アパーチャとの間に形成される。
【図面の簡単な説明】
【0027】
本発明は、添付図面と併せて以下の詳細な説明により容易に理解されるであろう。また、添付図面において、類似の参照番号等が類似の構造的要素等を指定する。
【図1】ウィーンフィルタの基本的構成を示す図である。
【図2a】ウィーンフィルタを分散素子として用いるモノクロメータを示す略図である。
【図2b】ウィーンフィルタを分散素子として用いるモノクロメータを示す略図である。
【図3a】2つのウィーンフィルタを分散素子として用いるモノクロメータを示す略図である。
【図3b】2つのウィーンフィルタを分散素子として用いるモノクロメータを示す略図である。
【図4a】本発明による偏向分散の対称性を示す略図である。
【図4b】本発明による基本的軌道の反対称性を示す略図である。
【図5】本発明の第1の実施形態による荷電粒子装置用のモノクロメータを示す略図である。
【図6a】本発明による図5に示したモノクロメータの機能(XOZ、YOZ平面)を示す略図である。
【図6b】本発明による図5に示したモノクロメータの機能(XOZ、YOZ平面)を示す略図である。
【図6c】本発明による図5に示したモノクロメータの機能(XOZ、YOZ平面)を示す略図である。
【図6d】本発明による図5に示したモノクロメータの機能(XOZ、YOZ平面)を示す略図である。
【図6e】本発明による図5に示したモノクロメータの機能(XOZ、YOZ平面)を示す略図である。
【図6f】本発明による図5に示したモノクロメータの機能(XOZ、YOZ平面)を示す略図である。
【図7a】本発明の第2の実施形態によるSEMへのモノクロメータの組み込みを示す略図である。
【図7b】本発明の第2の実施形態によるSEMへのモノクロメータの組み込みを示す略図である。
【図7c】本発明の第2の実施形態によるSEMへのモノクロメータの組み込みを示す略図である。
【図8】本発明の第3の実施形態によるSEMへのモノクロメータの組み込みを示す略図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図面を参照して、本発明を実施するための形態の説明を行う。
【0029】
本発明の様々な実施形態が、発明のいくつかの例示的な実施形態が示された添付図面を参照し、これからより詳細に説明されるであろう。本発明の保護範囲を限定することなく、実施形態の総ての説明及び図面は、電子源及び走査型電子顕微鏡に例示的に言及するであろう。しかしながら、実施形態は、本発明を特定の荷電粒子源及び特定の電子顕微鏡の分野に限定するためには用いられない。
【0030】
以下の説明は、電子ビームを用いることに焦点を合わせるが、電子ビームは荷電粒子ビームの一種である。図面において、各構成要素及び総ての構成要素中での相対的寸法は、明確性のため誇張されているかも知れない。以下の図面の説明の中で、同じ参照番号は同じ構成要素又は実体を参照し、そして個々の実施形態の相違点に関してのみ説明される。
【0031】
この発明は、ウィーンフィルタ型の二重対称を有するモノクロメータを提供する。図4a及び図4bに示されるように、二重対称は、エネルギー制限アパーチャ(30)の両側(それぞれの側)に対称的に配置された2つの同一な分散ユニット(20及び40)により実現される。2つの同一の分散ユニットの各々は、標準エネルギーからエネルギー偏差を有する荷電粒子に偏向分散を発生させ、軸外の荷電粒子の焦点を合わせる。一方で、2つの同一の分散ユニットは、標準エネルギーからエネルギー偏差を有する荷電粒子に、同じ方向に2つの等しい偏向角(α1=α2)を発生させる。この場合、偏向分散は、図4aに示されるようなエネルギー制限アパーチャ(30)に関して対称性を示す。他方で、2つの同一の分散ユニットは、等しく軸外荷電粒子の焦点を合わせ、第1の分散ユニット(20)は、標準エネルギーを有する荷電粒子にエネルギー制限アパーチャ(30)の中心を通過させる。そのような場合において、標準エネルギーを有する各軸外粒子の軌道は、図4bに示されるように、エネルギー制限アパーチャ30に関し、反対称性を示す。二重対称は、エネルギーに応じたフィルタリングを実現し、同時に、出射の荷電粒子ビームが、モノクロメータの内側にあり、一次分散及び非点収差を含まない仮想的なクロスオーバーを有することを確実にする。
【0032】
各分散ユニットは、ウィーンフィルタ及び非点収差補正装置を含み、双方の静電場及び磁場は、光軸に沿って重畳される。標準エネルギーと一定のエネルギー幅を有する荷電粒子ビームに関し、ウィーンフィルタは、方程式(1.3)〜(1.8)で示されるように、その双極子磁場及び静電場の強さを変化させる所望の分散能と、その分散能とともに変化する不要な非点フォーカス能力とを発生させる。非点収差補正装置は、ウィーンフィルタの非点フォーカス能力を補正するために非点フォーカス能力を生成するように制御される。補正は、非点収差が生成された場合に丁度完成するため、各分散ユニットからの出射ビームは、非点収差を完全に含まないようにされ得る。その結果、各分散ユニットは、独立して変更可能な分散能と、依存的に変化する無非点収差のフォーカス能力とを有する。
【0033】
非点収差補正に従えば、分散方向における非点収差補正装置により生成された負のフォーカス能力のため、分散方向におけるウィーンフィルタフォーカス効果による分散能の減少が弱められる。エネルギー制限アパーチャを通過する荷電粒子ビームのエネルギー幅は、第1の分散ユニット(20)の分散能とエネルギー制限アパーチャ(30)のサイズ(分散方向における)により定まり、それ故、出射荷電粒子ビームのエネルギー幅は、分散能を変化させること、及び/又は分散ユニット内のエネルギー制限アパーチャサイズを変化させること、により変更され得る。前者は、ウィーンフィルタに与えられる電気的励磁を調整することにより実現され得、それ故、連続的であり得る。しかしながら、分散能の変化は、無非点収差のフォーカス能力の変化を受け、このことは基本的軌道における反対称性を壊し、それ故、2つの分散ユニット(20及び40)により生成された収差の相殺を台無しにする。
【0034】
二重対称を保つために、分散能が変更された又は入射荷電粒子ビームが変更された時に、一方のビーム調整素子は2つの分散ユニットの前に設置される。ビーム調整素子は、磁気又は静電円形レンズであり、そのフォーカス能力は可変である。ビーム調整素子は、可変ビームアダプタとして機能する。そのフォーカス能力は、入射荷電粒子ビームのクロスオーバー及び/又は標準エネルギーが何らかの正当な理由で変更されるかも知れないときに、及び/又は、前記第1の分散ユニットの分散能が、エネルギー制限アパーチャの特定のサイズに対して所望のエネルギー幅の減少を得るために変更されるかも知れないときに、エネルギー制限アパーチャの中心(図4b中のS71)に実際のクロスオーバーを有するように荷電粒子ビームを保つように調整される。
【0035】
その結果、入口側から出口側まで、本発明のモノクロメータ500は、図5に示すように、ビーム調整素子(100)と、第1の分散ユニット(200)と、エネルギー制限アパーチャ(300)と、第2の分散ユニット(400)と、を有する。2つの分散ユニット(200、400)は、同じ構造と配置を有し、同じ励磁を受け、及びエネルギー制限アパーチャ(300)の両側に対称的に配置される。総ての構成要素は、エネルギー制限アパーチャ(300)に関して、偏向分散と基本的軌道における対称性を確保するために設置され、励磁される。
【0036】
本発明のモノクロメータは一直線の光軸を有し、よって、標準エネルギーを有する荷電粒子は光軸からそれていない。この特徴は、モノクロメータが製造され、調整されることを簡素にするだけでなく、完全に補正されることが実際には不可能な軸外収差を発生させない。また、モノクロメータの出口側の荷電粒子ビームの実際の無非点収差のクロスオーバーの最終形成の代わりに、荷電粒子ビームの仮想的な無非点収差で分散を含まないクロスオーバーが形成され、そのクロスオーバーは第1の分散ユニット(200)とエネルギー制限アパーチャ(300)の間に位置する。この仮想的なクロスオーバーは、モノクロメータを必要とする装置の、後に続く光学系のためのソース(電子源)となるであろう。一方で、仮想的なクロスオーバーは、実際のクロスオーバーよりも少ないベルシュ効果を有する。他方で、仮想的なクロスオーバーは、元々の荷電粒子源により接近して位置し、それ故、モノクロメータが組み込まれる時に、LVSEMのような現存する電子顕微鏡のデザインの修正の要求が、実際のクロスオーバーの場合よりも少ない。上述の総ての態様によれば、本発明のモノクロメータは、低電圧(Low-Voltage)SEM及びLVSEMの原理に基づいた関連装置の撮像分解能を向上させるのに効果的な方法を提供する。
【0037】
この発明はまた、本発明のモノクロメータをSEMに用いた2つの例を提供する。図7aに示されるように、第1の例においては、モノクロメータは、電子源600と集束レンズ620との間に挿入され、電流制限アパーチャ610は、モノクロメータの内部で発生する電子相互作用を減少させるためにモノクロメータを通過するビーム電流を制御するのに用いられる。図8に示されるように、第2の例においては、モノクロメータは集束レンズと対物レンズの間に位置し、ビーム制限アパーチャ630は、モノクロメータの入射ビーム電流を制御する。
【0038】
この発明の詳細な説明及び機構は、次に述べられる。
【0039】
本発明は、SEM又は荷電粒子装置における一次電子ビームのエネルギー幅を減少させるためのウィーンフィルタ型のモノクロメータを提供する。モノクロメータは、一直線の光軸に沿って、入射ビームの偏向分散と基本的軌道の二重対称を形成する。その二重対称は、効果的なクロスオーバー径と伝搬方向を変化させずに保つこととともに、荷電粒子源出口から生じた入射荷電粒子ビームが、低減されたエネルギー幅を有するモノクロメータから抜け出ることを確実にする。
【0040】
本発明はまた、モノクロメータをSEMに組み込むための方法を提供する。本発明のモノクロメータは、一次ビーム又は撮像ビームと呼ばれるビームのエネルギー幅を減少させることにより、試料上の色収差ディスクを減少させるのに役立ち、その一方で目立ったソースサイズにおける増大は受けない。その結果、試料上のプローブスポットサイズは、収差、回折及びソースサイズによるぼけのバランスを再度とることにより、より低い値を達成するであろう。その結果として、モノクロメータは、SEM、特にLVSEMや、LVSEMの原理に基づく、半導体歩留まり管理における欠陥検査や欠陥レビューのような関連装置の撮像解像度を改善するのに効果的な方法を提供する。
【0041】
前記の二重対称は、本発明において提供されるモノクロメータが基礎としているのだが、偏向分散における対称性と基本的軌道における反対称性とを、それぞれエネルギー制限アパーチャに関して有している。偏向分散における対称性を示す図4aにおいて、標準エネルギーV及びエネルギー幅を有する軸上の電子ビーム50は、光軸Zに沿って2つの分散ユニット20及び40に連続的に入射する。2つの分散ユニット20及び40は、構成において同一であり、光軸Zに垂直な平面31に関して対称に位置し、配列されている。各分散ユニット20、40の位置は、フィールド領域の中心により規定されている。各分散ユニット20、40は、ウィーンフィルタと非点収差補正装置を含み、磁場と電場の双方とも互いに重畳されている。標準エネルギーV(例えば、61のような)を有する電子は偏向させないが、標準エネルギーV(例えば、71のような)からエネルギー偏差δVを有する電子は偏向させる所望の偏向力を発生させるために、同じ励磁が各々のウィーンフィルタに与えられる。方程式(1.6)で示したように、エネルギー偏差δVが大きくなればなる程、偏向角(例えば、α1及びα2のような)は大きくなるであろう。エネルギー偏差とともに変化する偏向角の特性は偏向分散と呼ばれ、偏向角αとエネルギー偏差δVとの比率Kは、分散能と呼ばれる。分散能は、標準エネルギーVと、ウィーンフィルタに与える電気的励磁を変化させることにより調整され得る磁気双極子場とともに変化する。
【0042】
プレートは平面31上に位置し、プレート上のアパーチャ30が光軸Zに揃えて配置される。図4aにおいて、エネルギー偏差δVを有する電子71についての偏向は、平面31に関して対称に存在する。第1の分散ユニット20及び第2の分散ユニット40内の2つのウィーンフィルタによりそれぞれ生成された偏向角α1及びα2は互いに等しく、即ちα1=α2であり、両方ともエネルギー偏差δVに比例する。第2の分散ユニット40から出た後の電子71の軌道の反対方向への延長線は、第2の分散ユニット40の中心から後方に距離L2の箇所において光軸と交差し、ここで、(2.1)式が成立する。
【0043】
【数4】


式(2.1)において、一次項よりも高次の総ての項が削除されるとすると、距離Lは偏向角α1とともには変化しない。よって、出射ビームの一次分散は消滅し、入射軸上ビームは、2つの分散ユニットの幾何学的中心点S71から発射されているように見える発散出射ビームとなる。
【0044】
基本的軌道における反対称性は、偏向分散対称に基づいている。図4aに示されているものに基づいて、図4bは基本的軌道における反対称性を示す。図4b内の各分散ユニット(20及び40)において、非点収差補正装置は、図4aに示されるように偏向分散対称を獲得するようにウィーンフィルタが作動する時に現れ、ウィーンフィルタの分散能の増加とともに増加する非点収差を補正するように励磁される。その結果、各分散ユニット(20及び40)は、X及びY方向の両方において等しいフォーカス能力fを有し、当該フォーカス能力fは、前記各分散ユニットの分散能における増加とともに増加する。
【0045】
図4bにおいて、標準エネルギーVを有する入射電子ビーム62が光軸の特定の位置62aに元々クロスオーバーを有する場合に、基本的軌道における反対称性が達成され得る。クロスオーバー62aは、第1及び第2の分散ユニット(20及び40)の幾何学的中心点S71よりも距離L3前方に位置する。距離L3は、以下の式(2.2)の条件を満たす。
【0046】
【数5】


ここで、fは各分散ユニットのフォーカス能力を示す。第1の分散ユニット20は、入射電子ビーム62の焦点を合わせ、それに応じてそのクロスオーバーを位置62aから後方に幾何学的中心点S71まで移動させる。そして、同じように、第2の分散ユニット40は電子ビーム62の焦点を合わせ、最終的にはS71におけるクロスオーバーを後方に距離L3移動させて位置62bにする。標準エネルギーVを有する電子ビーム62における電子の軌道は、第1及び第2の分散ユニット20及び40の幾何学的中間面31に関し、反対称性を有する。
【0047】
従って、図4a及び図4bに示される二重対称は、電子ビームが中間面31で実際のクロスオーバーを形成し、中間面31からある距離後方に仮想的なクロスオーバーを形成することを確実にする。実際のクロスオーバーの内部には、標準エネルギーを有する電子が光軸上の小さなディスク(円盤)内に集中し、標準エネルギーから同じエネルギー偏差を有する電子が、光軸から離れた位置にある小さなディスク内に集中する。エネルギー偏差が大きくなればなる程、ディスクは光軸から遠く離れる。アパーチャ30が実際のクロスオーバーが位置する中間面に設置された場合には、アパーチャ30の内径よりも大きな軸外距離を有する全てのディスク内の電子は遮断されるであろう。言い換えれば、アパーチャ30を通過する電子のエネルギー幅は、第1の分散ユニットの分散能とアパーチャ30の内径により定められる特定の値よりも小さいであろう。仮想的なクロスオーバーの内部では、総ての電子が光軸上の小さなディスクに集中する。第1の分散ユニットに入射するビームと比較して、第2の分散ユニット40から出射するビームは、小さなエネルギー幅、殆ど変化しないクロスオーバーサイズ、及びクロスオーバーの後方への移動を有する。
【0048】
図5は、図4a及び図4bに示される二重対称に基づく本発明の1つのモノクロメータの実施形態を示す。電子ビーム入射側から出射側まで、モノクロメータ500は、ビーム調整素子100と、第1の分散ユニット200と、エネルギー制限アパーチャ300と、第2の分散ユニット400とを含む。構成要素の総て(100−400)は、光軸Zに一直線に配列されるとともに、光軸Zに直交する。2つの分散ユニット200及び400は、構成において同一であり、光軸Zにやはり直交する平面310に関して対称に位置し、配列されている。エネルギー制限アパーチャ300は、平面310の箇所に位置する。図4a及び図4bと比較して、図5においては、入射ビームのクロスオーバー位置及び/又は標準エネルギーが、何らかの正当な理由で変更されたり、及び/又は第1の分散ユニット200の分散能がモノクロメータの後の電子ビームのエネルギー幅を変化させるために変更されたりしたときに、いつでも二重対称が維持されることを確保するために、ビーム調整素子100が追加されている。言い換えれば、ビーム調整素子は、モノクロメータの適用性と適応性を高める。
【0049】
図5において、ビーム調整素子100は、静電型又は磁気型のいずれか一方であり得る円形レンズを含む。各分散ユニット(200、400)は、ウィーンフィルタと、静電型又は磁気型のいずれか一方であり得る非点収差補正装置とを含み、両方とも光軸Zに沿って互いに重ね合わされる。エネルギー制限アパーチャ300の形状は、円形、楕円形、正方形又は長方形であり得る。アパーチャ形状が楕円形又は長方形の場合には、その短軸(短い方の軸)又は短辺(短い方の辺)が第1の分散ユニット200の分散方向に位置する。分散方向におけるアパーチャサイズは、所望のエネルギー幅と第1の分散ユニット200の分散能に応じて選択される。
【0050】
図5に示されるモノクロメータの作動方法は、図6a−6fにおいて段階的に示される。図6aは、ビーム調整素子100の機能を示す。S1は電子源又は標準エネルギーV及び元々のエネルギー幅±△Vを有する電子ビームクロスオーバーであり、そのエネルギー幅は±△Vまで低減されるであろう。S1が電子ビームクロスオーバーの場合には、当該電子ビームクロスオーバーはモノクロメータの入口又は出口側に位置する。S2は方程式(2.2)に示される方法により定められる位置であり、基本的軌道において反対称を形成することが要求される。従って、ビーム調整素子100は、第1の分散ユニット200に入る前にS2で収束するビームになるように、最初にソースS1からの電子ビームの焦点を合わせる。より詳細には、ビーム調整素子100のフォーカス能力は、入射電子ビームクロスオーバーS1の最初の位置における変化と第1の分散ユニット200のフォーカス能力fとともに変更される。後者のフォーカス能力は、第1の分散ユニット200の分散能に従い変化する。
【0051】
図6b及び図6cは、XOZ平面及びYOZ平面のそれぞれにおける第1分散ユニット200の入射ビームへの効果を示す。第1の分散ユニット200内のウィーンフィルタはウィーン条件を満たすために励磁され、入射電子ビームについての所望のX方向偏向分散を発生させる。第1の分散ユニット200内の非点収差補正装置は、第1の分散ユニット200内のウィーンフィルタにより生成された非点収差を補正するために励磁される。非点収差補正後の残留無非点収差フォーカス能力fは、実際のクロスオーバーを、図6aにおいてはS2から後方にある中間面310上に形成するために入射ビームの焦点を合わせる。ウィーンフィルタのX方向偏向分散のため、標準エネルギーを有する電子のみが軸上のディスクS3に集中する。磁気偏向方向に従えば、エネルギー偏差δV(>0)及び−δV(<0)を有する電子により形成されたディスクS4及びS5は、それぞれX及び(−X)方向に光軸から離れてそらされる。エネルギー偏差δVが大きくなればなる程、軸外変位(off-axis shift)は大きくなるであろう。Y方向においては、図6cに示されるように、ディスクS3、S4及びS5が総て光軸上に位置する。
【0052】
図6dは、エネルギー制限アパーチャ300上の電子分布を示す。図6dにおいて、標準エネルギーV及び6つの特定のエネルギー偏差を有する電子のみが示されており、円形アパーチャ300は例として挙げられている。エネルギー制限アパーチャ300の内径は、エネルギー偏差±△Vを有する電子の軸外変位に等しい。このように、X方向におけるサイズがエネルギー制限アパーチャ300の内径と等しい拡大されたクロスオーバーと、低減したエネルギー偏差±△Vとを有する電子ビームがアパーチャ300から出射する。低減したエネルギー偏差±△Vは、第1の分散ユニットの分散能及び第1の分散ユニットの分散方向におけるエネルギー制限アパーチャのサイズにより定められる。
【0053】
図6e及び図6fは、第2の分散ユニット400の入射ビームへの効果を示す。第2の分散ユニット400には、第1の分散ユニット200と同じ励磁が与えられる。よって、第2の分散ユニット400は、第1の分散ユニット200がアパーチャ300の前で電子ビームに行ったのと同様に、中間面310における実際のクロスオーバーから来た電子ビームを偏向させ、フォーカスする。図6eに示されるように、XOZ平面において、第2の分散ユニット400は、ディスクS3−S5を中間面310から等距離後方に移動させるだけでなく、実際のクロスオーバーに存在するX方向のディスク変位をも除去する(S3−S5については図6b及び図6c参照)。図6fに示されるように、YOZ平面において、第2の分散ユニット400は、ディスクS3−S5を後方に、XOZ平面におけるのと等距離移動させる。その結果、第2の分散ユニット400から出射した後、図6b及び図6cに示される3つのディスクS3−S5からの電子は、仮想的に殆ど光軸Z上の同じ平面で交わり、仮想的なクロスオーバーS6を形成する。仮想的なクロスオーバーS6は、第1の分散ユニット200と中間面310との間に位置し、図6dに示されるように、エネルギー制限アパーチャ300の内径よりもずっと小さいサイズか、又は一般的に言えば分散方向においてエネルギー制限アパーチャ300のサイズを有する。
【0054】
図7a及び図8はそれぞれ、上で述べるとともに図5及び図6a−6fに示したモノクロメータを用いたSEMの2つの実施形態を示す。簡素化のため、偏向走査は示されていない。図7aにおいて、電子源600は、光軸Zに沿って電子ビーム700を発射する。第1の電流制限アパーチャ610は、モノクロメータ500に入射する電子ビームの電流を制限するように、電子ビーム700の一定の部分を遮蔽する。モノクロメータ500における大きなビーム電流は、電子ビームのフォーカス範囲、特にエネルギー制限アパーチャ300の中心領域に位置する実際のクロスオーバーにおいて、強い電子相互作用を生み出すであろう。そうすると、モノクロメータにおいて、追加的なエネルギー幅とクロスオーバーサイズの増加が生じる。従って、ビーム電流は、電子相互作用の効果が顕著にならない程度まで制限されなければならない。
【0055】
図7aのモノクロメータ500において、最初に電子ビームは、所望の収束ビームとなるように、ビーム調整素子100によりフォーカスされる(焦点が合わされる)。次に、収束ビームは、第1の分散ユニット200により分散されて焦点が合わされる。具体的に言うと、標準エネルギーを有する電子は必然的に真っ直ぐ通過し、光軸上のエネルギー制限アパーチャ300の中心に無非点収差の実際のクロスオーバーを形成し、標準エネルギーに対して同じエネルギー偏差を有する電子は偏向され、光軸から離れているが、エネルギー制限アパーチャ300が位置する平面上に無非点収差の実際のクロスオーバーを形成する。電子のエネルギー偏差が大きくなればなる程、クロスオーバーは光軸から遠く離れてゆく。エネルギー制限アパーチャ300は、その際、出射電子ビームが低減されたエネルギー幅±△Vを有するように、所望の範囲±△Vから外れたエネルギー偏差を有する電子を遮蔽する。
【0056】
その後、図7aのモノクロメータ500において、エネルギー制限アパーチャ300から出射した電子は、第2の分散ユニット400に入射するであろう。第2の分散ユニット400は、第1の分散ユニット200と同じように動作する。それ故、第2の分散ユニット400は、第1の分散ユニット200が行ったように、エネルギー制限アパーチャ300上にあり、光軸から同じ角度を有してそれた各実際のクロスオーバーからの電子を偏向させ、そして仮想的なクロスオーバーを、対応する前記の実際のクロスオーバーから軸上で同じ距離後方の位置に形成するために、電子の焦点を合わせる。しかしながら、この時、総ての仮想的なクロスオーバーは、仮想的に光軸上の同じ場所に位置する。従って、モノクロメータから出射する総ての電子は、仮想的なソース602から発射するように見えるとともに、所望の範囲±△V以内のエネルギー偏差を有する。
【0057】
図7aにおいて、モノクロメータ500から出射する電子は、次いで後に続く従来のSEMの撮像系に入り、そして集束レンズ620及び対物レンズ640により試料650の表面上で焦点が合わされる。集束レンズ620及びビーム制限アパーチャ630は、ともに最終プローブ電流を制御する。実際、ビーム制限アパーチャ630は、図7bに示されるように、エネルギーと入射角に応じたフィルタリングと同じ追加的な効果を有する。モノクロメータ500から出た総ての電子は仮想的に光軸上の同じ場所602で交差するけれども、エネルギー偏差を有する電子は第1及び第2の分散ユニット200及び400で生成された偏向角を蓄積する。従って、同じエネルギー偏差を有する電子は、ビーム制限アパーチャ630上で等しい追加的な横軸の変位を有し、より大きい極角を有するいくつかの電子は、図7bにおける影の部分のように、ビーム制限アパーチャ630により阻止されるだろう。エネルギー偏差が大きくなる程、より多くの電子がビーム制限アパーチャ630を通過しないであろう。そして、ビーム制限アパーチャ630は、後に続く対物レンズ640に入射する電子ビームの有効エネルギー幅を、実際上更に低減させる。対物レンズ640は最終的にその電子ビームを試料650上にフォーカスする。このように、プローブスポット内の色収差は低減され、プローブスポットサイズは、モノクロメータを用いない場合のプローブスポットサイズよりも小さくなるであろう。
【0058】
よく知られているように、撮像分解能を向上させるためにモノクロメータを用いることは、制限値よりも大きいエネルギー偏差を有する電子を遮蔽するため、一部のプローブ電流を犠牲にするであろう。大きなプローブ電流を必要とする応用に関し、モノクロメータ500は、図7cに示されるように、ビーム調整素子100を除いて無能力とされ得る。この場合、ビーム調整素子100は、集束レンズとして動作するため、元々の集束レンズを元に戻す。普通は、電子源に接近し、ビーム制限アパーチャから離れた集束レンズは、反対のものよりも小さい収差しか発生させない。
【0059】
図8は、モノクロメータを用いたSEMの別の実施形態を示しており、この実施形態では、SEMが元々、対物レンズ640の前に固定された位置に実際のクロスオーバーを有する。図8において、電子源600は、光軸Zに沿って電子ビーム700を発射する。集束レンズ620及びビーム制限アパーチャ630は、モノクロメータに入るビームの電流を制御する。その後、モノクロメータ500において、電子ビームは図7aで説明されたのと同じエネルギーフィルタリング(エネルギー選別)を受けるであろう。モノクロメータ500からの出射ビームは、仮想的なクロスオーバー602及び低減されたエネルギー幅を有する。大きなプローブ電流を必要とする応用に関し、モノクロメータ500は、ビーム調整素子100を除いて無能力とされ得る。この場合、ビーム調整素子100は、実際のクロスオーバー620を同じ場所に有するように電子ビームの焦点を合わせる。対物レンズ640は、試料650の表面上に電子ビームの焦点を合わせるであろう。このように、プローブスポット内の色収差は低減され、プローブスポットサイズは、モノクロメータを用いない場合のプローブスポットサイズよりも小さくなるであろう。
【0060】
この発明において、SEMにおける一次電子ビームのエネルギー幅を低減させるためにモノクロメータが提供され、モノクロメータは、SEM、特に低電圧(Low-Voltage)SEM及びLVSEMの原理に基づく関連装置の最終的な撮像分解能を向上させるべく、撮像色収差を低減させるために用いられる。モノクロメータは、一直線の光軸に沿ってエネルギーに応じたフィルタリングを実現するためにウィーンフィルタを分散素子として用い、実際には補正され得ない軸外収差を受けることを根本的に回避する。モノクロメータにおいては、二重対称が形成され、二重対称はエネルギー制限アパーチャに関しての偏向分散における対称と基本的軌道における反対称とを含む。二重対称は、エネルギーに応じたフィルタリングを実現し、同時に出射荷電粒子ビームが、モノクロメータの内部にあり、一次の分散及び非点収差を含まない仮想的なクロスオーバーを有することを確保している。従来技術におけるモノクロメータの出射口側の実際のクロスオーバーと比較して、モノクロメータ内部の仮想的なクロスオーバーは、電子相互作用を受けることがより少なく、SEMの元々のデザインの修正要求がより少ない。また、本発明のモノクロメータは、装置内で用いられたときに、従来技術よりも広い適用性と強力な適応性を有する。本発明はまた、モノクロメータをSEMに組み込む2つの方法を提供する。即ち、1つはモノクロメータを電子源と集束レンズとの間に置くことであり、他の1つはモノクロメータをビーム制限アパーチャと対物レンズとの間に置くことである。前者は追加的なエネルギーと入射角に応じたフィルタリングを提供し、後者よりも小さい有効エネルギー幅を得る。
【0061】
本発明の特定の実施形態が詳述されてきたが、詳述された実施形態と同等の他の実施形態が存在することが当業者により理解されるであろう。従って、本発明は例示された特定の実施形態により限定されるべきではなく、添付のクレームの範囲によってのみ理解されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モノクロメータであって
一直線の光軸に揃えて配列され、標準エネルギー及びエネルギー幅を有する荷電粒子ビームを偏向させるための第1の分散ユニット及び第2の分散ユニットと、
前記第1の分散ユニットと前記第2の分散ユニットとの間の中心面にあり、前記一直線の光軸に揃えて配置されたエネルギー制限アパーチャを有するプレートと、
前記ビーム制限アパーチャに前記荷電粒子ビームの実際のクロスオーバーを形成するように、前記荷電粒子ビームが前記第1の分散ユニットに入射する前に前記荷電粒子ビームの焦点を合わせるためのビーム調整素子と、を有し、
前記荷電粒子ビームは、前記光軸に沿って伝搬するとともに、前記第1及び第2の分散ユニットの各分散ユニットを真っ直ぐ通過する標準エネルギーを有する荷電粒子と、前記各分散ユニットによりそれぞれの分散方向に偏向される前記標準エネルギーからのエネルギー偏差を有する荷電粒子とを含み、
前記各分散ユニットにより生成される各荷電粒子の偏向角は、前記各分散ユニットの分散能及び前記各荷電粒子のエネルギー偏差に依存し、
前記第1及び第2の分散ユニットの前記分散能及び前記分散方向はそれぞれ等しく、
前記荷電粒子ビームが前記第2の分散ユニットから出射した後、前記第1の分散ユニットと前記エネルギー制限アパーチャとの間に仮想的なクロスオーバーが形成されるモノクロメータ。
【請求項2】
前記モノクロメータから出射した後の前記荷電粒子ビームの出射エネルギー幅は、前記第1及び第2の分散ユニットの前記分散能と前記ビーム調整素子のフォーカス能力を同時に変化させることにより変更され得る請求項1に記載のモノクロメータ。
【請求項3】
前記ビーム調整素子は円形レンズであり、
前記エネルギー制限アパーチャの形状は円形、長方形、正方形、又は楕円形である請求項1又は2に記載のモノクロメータ。
【請求項4】
前記プレートは、前記第1の分散ユニットの前記分散方向において、異なるサイズを有する複数のエネルギー制限アパーチャを有する請求項1乃至3のいずれか一項に記載のモノクロメータ。
【請求項5】
前記モノクロメータから出射した後の前記荷電粒子ビームの出射エネルギー幅は、前記プレート上の異なるエネルギー制限アパーチャを用いることにより変更され得る請求項4に記載のモノクロメータ。
【請求項6】
モノクロメータであって、
第1のウィーンフィルタと、該第1のウィーンフィルタにより発生した非点収差を補正する第1の非点収差補正装置とを含む第1の分散ユニットと、
第2のウィーンフィルタと、該第2のウィーンフィルタにより発生した非点収差を補正する第2の非点収差補正装置とを含む第2の分散ユニットと、
前記第1及び第2の分散ユニットの間の中心面にあり、エネルギー制限アパーチャを有するプレートと、を有し、
前記第1及び第2の分散ユニットの双方は一直線の光軸に揃えて配置され、
入射荷電粒子ビームは、前記第1及び第2の分散ユニットの各分散ユニットを真っ直ぐ通過する標準エネルギーを有する荷電粒子と、前記各分散ユニットによりそれぞれの分散方向に偏向される前記標準エネルギーからのエネルギー偏差を有する荷電粒子とを含み、
前記各分散ユニットにより生成される各荷電粒子の偏向角は、前記荷電粒子のエネルギー偏差と前記各分散ユニットの分散能に依存し、
前記第1及び第2の分散ユニットの前記分散能及び前記分散方向はそれぞれ等しく、
前記エネルギー制限アパーチャは、前記一直線の光軸に揃えて配置されるモノクロメータ。
【請求項7】
前記第1のウィーンフィルタと前記第1の非点収差補正装置は前記光軸に沿って重ね合わされ、
前記第2のウィーンフィルタと前記第2の非点収差補正装置は前記光軸に沿って重ね合わされている請求項6に記載のモノクロメータ。
【請求項8】
前記ビーム制限アパーチャに実際のクロスオーバーを形成するように、前記荷電粒子ビームが前記第1の分散ユニットに入射する前に前記荷電粒子ビームの焦点を合わせるためのビーム調整素子を有する請求項6又は7に記載のモノクロメータ。
【請求項9】
前記荷電粒子ビームが前記第2の分散ユニットから出射した後、前記第1の分散ユニットと前記エネルギー制限アパーチャとの間に仮想的なクロスオーバーが形成される請求項6乃至8のいずれか一項に記載のモノクロメータ。
【請求項10】
前記プレートは、前記第1の分散ユニットの前記分散方向において、異なるサイズを有する複数のエネルギー制限アパーチャを有する請求項6乃至9のいずれか一項に記載のモノクロメータ。
【請求項11】
電子装置であって、
一直線の光軸に沿って伝搬する一次電子ビームを供給するための電子源と、
前記光軸に揃えて配置された前記一次電子ビームの焦点を合わせるための集束レンズと、
前記光軸に揃えて配置され、二次電子を放射する試料の表面に前記一次電子ビームの焦点を合わせるための対物レンズと、
前記試料を支持するためのステージと、
前記二次電子を受けるための検出器と、
前記電子源と前記対物レンズとの間に位置し、前記一次電子ビームのエネルギー幅を減少させるための請求項1乃至10のいずれか一項に記載のモノクロメータと、を有する電子装置。
【請求項12】
荷電粒子ビームをフィルタリングするためのモノクロメータであって、
一直線の光軸に揃えて配列され、標準エネルギー及びエネルギー幅を有する荷電粒子ビームを偏向させるための第1の分散ユニット及び第2の分散ユニットと、
前記第1の分散ユニットと前記第2の分散ユニットとの間の中心面にあり、前記一直線の光軸に揃えて配置されたエネルギー制限アパーチャを有するプレートと、を有し、
前記荷電粒子ビームは、前記光軸に沿って伝搬するとともに、前記第1及び第2の分散ユニットの各分散ユニットを真っ直ぐ通過する標準エネルギーを有する荷電粒子と、前記各分散ユニットによりそれぞれの分散方向に偏向される前記標準エネルギーからのエネルギー偏差を有する荷電粒子とを含み、
前記各分散ユニットにより生成される各荷電粒子の偏向角は、前記各分散ユニットの分散能及び前記各荷電粒子のエネルギー偏差に依存し、
前記第1及び第2の分散ユニットの前記分散能及び前記分散方向はそれぞれ等しく、
前記荷電粒子ビームの実際のクロスオーバーが前記ビーム制限アパーチャに形成され、前記荷電粒子ビームが前記第2の分散ユニットから出射した後、前記第1の分散ユニットと前記エネルギー制限アパーチャとの間に仮想的なクロスオーバーが形成されるモノクロメータ。

【図1】
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【図2a】
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【図2b】
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【図3a】
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【図3b】
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【図4a】
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【図4b】
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【図5】
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【図6a】
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【図6b】
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【図6c】
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【図6d】
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【図6e】
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【図6f】
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【図7a】
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【図7b】
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【図7c】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−243763(P2012−243763A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−108162(P2012−108162)
【出願日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【出願人】(512121875)エルメス マイクロビジョン,インコーポレーテッド (1)
【氏名又は名称原語表記】HERMES MICROVISION INC.
【住所又は居所原語表記】7F, No.18, Puding Rd., East Dist., Hsinchu City 300, Taiwan
【Fターム(参考)】