説明

荷電粒子検出器

本発明は、(a)支持構造体(108)の第1の面上に配置されている第1の材料層(110)であって、この第1の材料層はこれに入射荷電粒子(104)が当るのに応答して二次電子を発生するように構成されているとともに、開口(112)を有しており、この開口は入射荷電粒子の一部がこの開口を通過するように構成されている当該第1の材料層と、(b)支持構造体の第2の面上に前記第1の材料層から例えば、0.5cm以上の距離だけ離間されて配置されている第2の材料層であって、この第2の材料層は、荷電粒子が前記開口を通過してこの第2の材料層に当るのに応答して二次電子を発生するように構成されている当該第2の材料層とを具える装置、システム及び方法を提供するものであり、装置は荷電粒子検出器とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、帯電粒子を検出することに関するものである。
【背景技術】
【0002】
エバハート・ソーンリー型検出器のような検出器は、荷電粒子ビームにさらされている試料の表面から放出される二次電子及び散乱イオンのような荷電粒子を測定するのに用いることができる。薄肉の試料が荷電粒子ビームにさらされると、入射される荷電粒子のうちの少なくとも一部分がこの試料を透過するおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第7,504,639号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここに開示する検出器は、種々に異なる荷電粒子を検出するのに用い得るようにするものである。例えば、ある例では、試料を透過した入射電子を検出するのに検出器を用いうるようにする。又、ある例では、試料を透過したか又は試料から発生したか或いは試料を透過するとともに試料から発生したイオン又は中性粒子を或いはこれらの双方を検出するのに検出器を用いうるようにする。又、ある例では、試料の表面から発生された二次電子を検出するのに検出器を用いうるようにする。この試料の表面には、荷電粒子ビーム(例えば、イオンビーム)が入射される表面と、この入射表面とは反対側の表面との双方又は何れか一方を含めることができる。
【0005】
ここに開示する検出器は、検出すべき透過粒子(例えば、イオン、中性粒子、電子)の幾つか又は全てを複数の二次電子に変換することにより信号を生ぜしめるものである。1つの粒子当り発生される二次電子の平均個数(例えば、変換係数)は、検出器における変換表面を形成するのに用いられる材料の二次電子収率を含む種々のファクタにより決定するようにする。変換係数は例えば、変換表面を二次電子収率が高い材料から形成することにより高めることができる。更に、透過粒子の伝搬方向に対して変換表面を傾けることにより変換係数を高めることができる。
【0006】
ここに開示する検出器は、効率的で、信頼性があり、廉価となるようにするとともに、種々のコントラスト機構を呈する試料画像(イメージ)を得るのに用い得るようにするものである。ここに開示する検出器は、ある種の従来のイオン検出器と相違して、一般的に飽和状態とならず、高透過荷電粒子電流により損傷されないようにする。これらの検出器は、エバハート・ソーンリー型検出器のような従来の検出器を用いて容易に検出された二次電子を有効に発生するものである。従って、ここに開示する検出器は、周知の粒子検出器と組み合わせて、透過荷電粒子に対する堅牢で有効な検出システムを形成しうるようにするものである。
【0007】
又、ここに開示する検出器は、画像中の特定の点(例えば、画素)における画像強度(例えば、グレースケール強度)が試料上の対応点における検出信号に関連している当該画像を発生させるのに用い得るようにする。特定の試料位置における検出信号はこの位置における試料の特性に応じて変えうるようにする。検出信号(例えば、検出信号の大きさ)に影響を及ぼし得る試料特性には、試料の厚さ、結晶構造、結晶配向、結晶欠陥及び元素組成を含めることができるが、これらに限定されるものではない。検出粒子の角度範囲を特定の範囲に選択することにより、ある例では、これらの試料特性の1つ以上に対応する情報を、測定された試料の画像において強調させるようにしうる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の観点によれば、一般に、
(a)支持構造体の第1の面上に配置されている第1の材料層であって、この第1の材料層はこれに入射荷電粒子が当るのに応答して二次電子を発生するように構成されているとともに、開口を有しており、この開口は入射荷電粒子の一部がこの開口を通過するように構成されている当該第1の材料層と、(b)支持構造体の第2の面上に前記第1の材料層から例えば、0.5cm以上の距離だけ離間されて配置されている第2の材料層であって、この第2の材料層は、荷電粒子が前記開口を通過してこの第2の材料層に当るのに応答して二次電子を発生するように構成されている当該第2の材料層とを具える装置を提供する。この装置は荷電粒子検出器である。
【0009】
他の観点によれば、(a)第1、第2及び第3の材料層であって、これら3つの材料層の各々が支持構造体の互いに異なる面上に配置されているとともに、軸線に沿って互いに離間されており、前記第1の材料層は、前記軸線に対し垂直な平面内に配置されており、前記第2及び第3の材料層は前記軸線に対しある角度で傾斜したそれぞれの平面内に配置されており、前記第1の材料層は第1の開口を有し、前記第2の材料層は、前記軸線に対し平行な方向に沿って前記第1の開口と整列された第2の開口を有しているとともに、前記第1の開口の最大寸法よりも小さい最大寸法を有しているこれら第1、第2及び第3の材料層と、(b)前記第1の材料層に対し平行な平面内に延在する第1の複数の導線であって、この第1の複数の導線は、入射荷電粒子が前記第1の材料層に到達する前にこの第1の複数の導線を通過するように配置されており、この第1の複数の導線の各構成部材は第1の電気端子に接続されている当該第1の複数の導線と、(c)前記軸線に対し平行な方向に延在するとともに前記第2の材料層の周縁の一部に沿って配置された第2の複数の導線であって、この第2の複数の導線の各構成部材は第2の電気端子に接続されている当該第2の複数の導線と、(d)前記軸線に対し平行な方向に延在するとともに前記第3の材料層の周縁の一部に沿って配置された第3の複数の導線であって、この第3の複数の導線の各構成部材は第3の電気端子に接続されている当該第3の複数の導線とを具える装置を提供する。この装置は荷電粒子検出器である。
【0010】
更に他の観点によれば、(a)第1の面とこの面から0.5cm以上離間した第2の面とを有する支持構造体と、(b)前記第1の面上に配置された第1の材料層であって、この第1の材料層は、荷電粒子がこの第1の材料層に入射された際に二次電子を発生させるように構成されているとともに、開口を有しており、この開口は入射荷電粒子の一部がこの開口を通過するように配置されている当該第1の材料層と、(c)第2の面上に配置されている第2の材料層であって、この第2の材料層は、前記開口を通過した荷電粒子がこの第2の材料層に入射した際に二次電子を発生するように構成されている当該第2の材料層と、(d)前記第1及び第2の材料層の1つ以上により発生された二次電子を検出するように構成された検出器とを具えるシステムを提供する。
【0011】
更に他の観点によれば、(a)試料からの荷電粒子を、支持構造体の第1の面上に配置されているとともに第1の開口を具える第1の材料層に入射されるように向けるステップと、(b)前記第1の開口を通過した透過荷電粒子を、前記支持構造体の第2の面上に配置されているとともに前記第1の開口よりも小さい最大寸法を有する第2の開口を具える第2の材料層に入射されるように向けるステップと、(c)前記第2の開口を通過した透過荷電粒子を、前記支持構造体の第3の面上に配置されている第3の材料層に入射されるように向けるステップと、(d)前記第1の材料層を囲む第1のスクリーンと、前記第2の材料層を囲む第2のスクリーンと、前記第3の材料層を囲む第3のスクリーンとに電位を印化して、これら第1、第2及び第3の材料層の1つで発生された二次電子を検出器に到達させるようにするとともに、他の材料層で発生された二次電子が前記検出器に到達する可能性を低減させるようにするステップと、(e)前記検出器に到達した二次電子を検出するステップと、(f)検出された二次電子に基づいて試料の画像を形成するステップとを具える方法を提供する。
【0012】
更に他の観点によれば、試料からの複数の荷電粒子を、これらの荷電粒子の各々の散乱角に基づいて第1の複数の粒子と第2の複数の粒子とに分離させるステップと、これら第1及び第2の複数の粒子の各々を互いに異なる電子発生面に入射させるステップと、前記第1の複数の粒子に対応する第1の信号と、前記第2の複数の粒子に対応する第2の信号とを測定するステップとを具える方法を提供する。
【0013】
更に他の観点によれば、(a)2度よりも大きい散乱角に対応する試料からの第1の複数の粒子を第1の面に入射させるように向けるとともに、前記第1の面で前記第1の複数の粒子により発生された電子を測定するステップと、(b)2度よりも小さい散乱角に対応する試料からの第2の複数の粒子を第2の面に入射させるように向けるとともに、前記第2の面で前記第2の複数の粒子により発生された電子を測定するステップと、(c)前記第1及び第2の複数の粒子のうちの少なくとも一方に対応する測定電子に基づいて試料の画像を形成するステップとを具える方法を提供する。
【0014】
更に他の観点によれば、試料から出る第1の角度範囲内で散乱されたこの試料からの第1の複数の粒子に対応する第1の電子信号と、試料から出る第2の角度範囲内で散乱されたこの試料からの第2の複数の粒子に対応する第2の電子信号とを測定するのに1つの共通の検出器を用いるステップを具える方法を提供する。
【0015】
更に他の観点によれば、試料内での異なる散乱角度範囲に対応して試料から出る第1及び第2の複数の荷電粒子に対応する電子信号を測定するのに1つの共通の検出器を用いるステップを具える方法を提供する。
【0016】
更に他の観点によれば、試料から出る第1の複数の荷電粒子を、第1の面に当るように向けることにより、この試料から出る第1の複数の荷電粒子に対応する第1の複数の電子を発生させるステップと、試料から出る第2の複数の荷電粒子を、第2の面に当るように向けることにより、この試料から出る第2の複数の荷電粒子に対応する第2の複数の電子を発生させるステップと、前記第1の面と検出器との間に配置された第1のスクリーンに第1の電位を印化するとともに、前記第2の面と検出器との間に配置された第2のスクリーンに第2の電位を印化することにより、前記検出器で前記第1の複数の荷電粒子又は前記第2の複数の荷電粒子を選択的に検出するステップとを具える方法を提供する。
【0017】
更に他の観点によれば、試料からの荷電粒子を1つ以上の開口に入射するように向けることによりこれらの荷電粒子を複数の群に空間的に分離するステップと、荷電粒子の各郡を、互いに異なる面であって荷電粒子がこれらの異なる面の各々に当ると二次電子を発生するように構成された面に入射させるように向けることにより、これらの群の各々に対応する電子信号を発生させるステップと、1つの共通の検出器を用いて各郡に対応する電子信号を選択的に検出するステップとを具える方法を提供する。
【0018】
本発明の例には以下の特徴事項の1つ以上を含めることができる。
【0019】
本発明の装置には、支持構造体の第3の面上に配置された第3の材料層であって、荷電粒子がこの第3の材料層に当るのに応答して二次電子を発生するように構成された当該第3の材料層を含め、この第3の材料層には第1の材料層における開口の最大寸法よりも大きな最大寸法を有する開口を設け、この第3の材料層は、荷電粒子の一部がこの第3の材料層の開口を通過して第1の材料層に到達するように配置されているようにしうる。第3の材料層における開口の幾何学的中心は、平均荷電粒子軌道に対し平行な軸線に沿って配置しうる。第1の材料層における開口の幾何学的中心と第3の材料層における開口の幾何学的中心とは平均荷電粒子軌道に対し平行な軸線に沿って整列させることができる。
【0020】
第2の材料層は、平均荷電粒子軌道に一致する軸線に対しある角度に向けることができる。第1の材料層は、平均荷電粒子軌道に一致する軸線に対し垂直に向けることができる。第2の材料層の平面は、第1の材料層の平面に対しある角度に向けることができる。第1及び第2の材料層は、平均荷電粒子軌道に一致する軸線に対しある角度に向けることができる。第3の材料層は、平均荷電粒子軌道に一致する軸線に対し垂直に向けることができる。
【0021】
第1及び第2の材料層は、垂直(法線)入射での25keVの平均エネルギーを有する入射Heイオンに対し2.0以上の二次電子収率を有する材料から形成しうる。又、第1、第2及び第3の材料層の各々を、垂直入射での25keVの平均エネルギーを有する入射Heイオンに対し2.0以上の二次電子収率を有する材料から形成しうる。第1及び第2の材料層は、1.0cm又はそれよりも大きい(例えば、2.0cm以上)距離だけ互いに分離させることができる。
【0022】
本発明の装置は、第2の材料層の少なくとも一部の周縁に沿って配置した複数の導線であって、荷電粒子の平均軌道に対し平行な方向に沿って第2の材料層よりも上方に延在するこれら導線を有するようにしうる。本発明の装置は、第2の材料層よりも上方に延在する複数の導線の各々に接続された共通の電気端子を有するようにしうる。本発明の装置は、荷電粒子の平均軌道に対し垂直な平面内に延在する複数の導線を有し、入射荷電粒子が第1の材料層に到達する前にこの平面を通過するようにしうる。本発明の装置は、第1の材料層に対し平行な平面内に延在する複数の導線の各々に接続された共通の電気端子を有するようにしうる。
【0023】
本発明の装置には、(a)第2の材料層の少なくとも一部の周縁に沿って配置した複数の導線であって、荷電粒子の平均軌道に対し平行な方向に沿ってこの第2の材料層よりも上方に延在するこれら導線と、(b)第2の材料層よりも上方に延在する複数の導線の各々に接続された共通の電気端子と、(c)第1の材料層の少なくとも一部の周縁に沿って配置した複数の導線であって、第2の材料層よりも上方に延在する部分の複数の導線の方向に対し平行な方向に沿って第1の材料層よりも上方に延在するこれら複数の導線と、(d)第1の材料層よりも上方に延在する複数の導線の各々に接続された共通の電気端子とを設けることができる。本発明の装置は、荷電粒子の平均軌道に対し垂直な平面内に延在する複数の導線であって、入射荷電粒子が第3の材料層に到達する前にこの平面を通過するようにしたこれら導線と、荷電粒子の平均軌道に対し垂直な平面内に延在するこれら複数の導線の各々に接続された共通の電気端子とを有するようにしうる。
【0024】
本発明の装置には、第1及び第2の材料層の何れか又は双方により発生された二次電子を検出するように構成した検出装置を設けることができる。本発明の装置には、第1、第2及び第3の材料層の何れかにより発生された二次電子を検出するように構成した検出装置を設けることができる。
【0025】
本発明の装置には、荷電粒子の平均軌道に対し垂直な平面内で、第2の材料層よりも上方に延在する複数の導線に接続された共通の電気端子に結合された電子プロセッサであって、これらの複数の導線の各々に異なる電位を印化するように構成された電子プロセッサを設けることができる。又、本発明の装置には、荷電粒子の平均軌道に対し垂直な平面内で、第1及び第2の材料層よりも上方に延在する複数の導線に接続された共通の電気端子に結合された電子プロセッサであって、これらの複数の導線の各々に異なる電位を印化するように構成された電子プロセッサを設けることができる。
【0026】
第1及び第2の材料層にはプラチナを含めることができる。又、第1、第2及び第3の材料層の各々にはプラチナを含めることができる。第1、第2及び第3の材料層のうちの少なくとも2つは互いに異なる材料から形成しうる。
【0027】
本発明の装置には、支持構造体に連結され、この支持構造体を入射荷電粒子の通路内に且つこの通路から移動させるように構成された並進機構を設けることができる。
【0028】
本発明の装置には、第1の材料層上で開口の周縁を囲んで位置する材料層を設けることができる。開口の周縁を囲んで位置するこの材料層は、25keVのエネルギーで垂直に入射される入射Heイオンに対する二次電子収率が1.5以下である材料を有するようにしうる。本発明の装置には、第1及び第2の材料層における開口の各々の周縁を囲んでこれらの第1及び第2の材料層上に配置された材料層を含めることができる。開口の周縁を囲んで配置されたこれらの材料層は、25keVのエネルギーで垂直に入射される入射Heイオンに対する二次電子収率が1.5以下である材料を有するようにしうる。
【0029】
本発明の装置には、第1及び第2の材料層の何れか一方又は双方により発生された二次電子を平行化させるように構成された磁界源を含めることができる。本発明の装置には、第1、第2及び第3の材料層の何れか1つ又は任意の組み合わせにより発生された二次電子を平行化させるように構成された磁界源を含めることができる。
【0030】
複数の導線の各々は金属から形成しうる。
【0031】
本発明の装置には、第1及び第2の材料層間に配置した1つ以上の追加の材料層を設けることができ、各追加の材料層は、入射荷電粒子がこの層に当るのに応答して二次電子を発生させるように構成され、各追加の材料層は、第1の材料層における開口の最大寸法よりも大きな最大寸法を有する開口を有し、各追加の材料層における開口は、入射荷電粒子の一部がこの開口を通過して第1の材料層に到達するように配置させる。
【0032】
前述した角度は45度以下としうる。第1及び第2の材料層の各々は、平均荷電粒子軌道に一致する軸線に対し45度以下の角度に向けることができる。
【0033】
本発明の装置には、第1、第2及び第3の材料層の各々に電位を印化するように構成された電子プロセッサを設けることができる。本発明の装置には、荷電粒子が第1、第2及び第3の材料層の1つ以上に当った際に第1、第2及び第3の材料層の1つ以上により発生された二次電子を検出するように構成した検出装置を含めることができる。
【0034】
第2及び第3の材料層は、前述した軸線に対し互いに異なる角度に向けることができる。
【0035】
第1及び第2の開口の周縁エッジには、25keVのエネルギーでの垂直入射Heイオンに対し1.5以下の二次電子収率を有する材料層を設けることができる。第1、第2及び第3の複数の導線の各々は金属から形成しうる。
【0036】
本発明のシステムには、第1の材料層の平面に対し平行な平面内に延在する第1の複数の導線を設けることができ、この第1の複数の導線は、入射荷電粒子が第1の材料層に当る前に第1の複数の導線の平面を通過するように配置する。このシステムには、第2の材料層の周縁の一部に沿って配置されているとともに第1の複数の導線の平面に対し垂直な方向に延在する第2の複数の導線を設けることができる。第1の複数の導線の各々は第1の共通電気接点に接続し、第2の複数の導線の各々は第2の共通電気接点に接続することができる。このシステムには、第1及び第2の共通電気接点の各々に互いに異なる電位を印化するように構成された電子プロセッサを設けることができる。第1の共通電気接点と外部接地点との間の電位差は、第2の共通電気接点と外部接地点との間の電位差とは逆の正負符号を有するようにする。
【0037】
本発明のシステムには、第1の面及び第2の面間の支持構造体の第3の面上に配置された第3の材料層を設けることができ、この第3の材料層には第1の材料層における開口の最大寸法よりも小さい最大寸法を有する開口を設け、この第3の材料層は、第1の材料層における開口を通過する荷電粒子が第3の材料層に入射された際に二次電子を発生するように構成する。第1及び第2の材料層における開口の幾何学的中心は共通軸線に沿って整列させ、入射荷電粒子の一部が第1及び第3の材料層の各々を通過して第2の材料層に入射されるようにしうる。第2の材料層の平面は第1の材料層の平面に対しある角度に向けることができる。第2の材料層及び第3の材料層の平面は第1の材料層の平面に対し共通の方向に向けることができる。第2の材料層及び第3の材料層のこれらの平面は第1の材料層の平面に対し共通の方向に向けることができる。
【0038】
第1及び第2の面は1.0cmの距離又はそれよりも大きい距離(例えば、2.0cm以上)だけ互いに離間させることができる。
【0039】
本発明の方法は、外部接地電位に比べて正の電位を印化して二次電子を検出器に到達させるステップと、外部接地電位に比べて負の電位を印化して二次電子が検出器に到達するのを阻止するステップとを具えることができる。正の電位の大きさは500V以下とし、負の電位の大きさは500V以下としうる。
【0040】
本発明の方法は、試料の種々の領域の各々に対応する荷電粒子を第1の材料層に入射させるように向けるステップを具えることができる。本発明の方法は、荷電粒子を荷電粒子源から試料上に入射させるように向けるステップを具えることができる。荷電粒子源にはガスフィールドイオン源を含めることができる。荷電粒子にはイオンを含めることができる。荷電粒子には希ガスイオンを含めることができる。荷電粒子にはヘリウムイオンを含めることができる。又、荷電粒子には電子を含めることができる。
【0041】
本発明の方法は、外部接地電位に比べて正の電位を試料に印加するステップを具えることができる。本発明の方法は、第1、第2及び第3の材料層の2つ以上からの二次電子の検出に基づいて画像を形成するステップを具えることができる。
【0042】
本発明の方法は、試料の一部の平均粒子寸法を画像に基づいて決定するステップを具えることができる。本発明の方法は、試料の一部が結晶構造を有するか否かを画像に基づいて決定するステップを具えることができる。本発明の方法は、試料の一部の結晶配向を画像に基づいて決定するステップを具えることができる。本発明の方法は、試料の厚さ変化を画像に基づいて識別するステップを具えることができる。本発明の方法は、試料の組成を画像に基づいて決定するステップを具えることができる。本発明の方法は、試料中の欠陥を画像に基づいて識別するステップを具えることができる。これらの欠陥には結晶格子欠陥を含めることができる。又、これらの欠陥には転位ループを含めることができる。
【0043】
その他の特徴及び利点は以下の図面に関する説明及び特許請求の範囲から明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】図1は、試料を透過した入射イオンの散乱状態を示す線図である。
【図2】図2は、透過した荷電粒子に対する検出システムの一実施例を示す線図である。
【図3】図3は、透過した荷電粒子に対する検出システムの他の実施例を示す線図である。
【図4】図4は、試料中の材料が異なることによる画像のコントラストを示す当該試料の明視野透過画像である。
【図5】図5は、互いに異なる向きにされた試料の部分を示す当該試料の明視野透過画像である。
【図6】図6は、試料の異なる部分における厚さ変化を示す当該試料の明視野透過画像である。
【図7】図7は、試料の欠陥を示す当該試料の暗視野透過画像である。
【図8】図8は、試料の欠陥を示す当該試料の明視野透過画像である。
【図9】図9は、イオン顕微鏡システムを示す線図である。
【図10】図10は、ガスフィールドイオン源を示す線図である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
透過顕微鏡法は、試料特性を測定するとともに特徴を明らかにするのに用いることができるものであり、これにより、荷電粒子ビームが入射される試料の表面から放出される二次電子と散乱荷電粒子との双方又は何れか一方を検出するような他の技術を用いて実行される測定を補足又は向上させる或いはその双方を行う。透過した荷電粒子を検出するのは、以下の種々の理由で困難となるおそれがある。ある種の荷電粒子検出器(例えば、マイクロチャネルプレート)は、試料を透過した粒子を検出するのに用いた場合、透過粒子により飽和されたり、場合によっては損傷されたりするおそれがあり、損傷しにくいある種の検出器(例えば、シンチレータ)は比較的非効率的であり、その結果画像の解像度を低減させるおそれがあり、ある種の検出器(例えば、固体検出器)は、低い透過粒子電流に対して比較的感応しにくく、このような検出器により測定された信号よりも暗雑音が優勢となるおそれがある。他の種類の検出器には、高価であるおそれがあるか、又は不利となりうる動作条件(例えば、能動冷却)があるおそれがあるか、或いはこれらの双方のおそれがある。
【0046】
電子や種々のイオン(例えば、ヘリウム、ネオン、キセノン、クリプトンのような希ガスイオン)を含みうる荷電粒子は、試料を透過する際のある角度範囲で散乱するおそれがある。図1は、荷電粒子ビーム12にさらされている試料14を示している。軸線10は荷電粒子ビーム12の平均軌道に一致している。透過した荷電粒子は、これらが試料14を透過する際の角度範囲で散乱する。例えば、荷電粒子16は軸線10に対する角度s(例えば、粒子16の散乱角)で散乱する。
【0047】
透過顕微鏡法では、散乱角sの関数として散乱粒子の占有密度(ポピュレーション)を測定することにより、試料の特性に関する重要な情報を得ることができる。試料の画像は、画素強度が特定の散乱角範囲内の散乱粒子の相対存在量に関連するように構成しうる。散乱角は、試料原子の原子番号、試料密度、試料の結晶配向及び試料の厚さを含む多数の特性に依存する為、角度分解測定又は角度ビニング(angle-binned)測定によりこれらの特性の幾つかを解明する。
【0048】
明視野透過画像は代表的に、粒子が試料を透過する際に比較的小さい角度で散乱したこれら透過粒子の検出に基づいて得られるものである。例えば、ある実施例では、明視野画像は0.75度又はそれよりも小さい角度(例えば、0.70度以下、0.65度以下、0.60度以下、0.55度以下、0.50度以下、0.45度以下、0.40度以下、0.30度以下、0.20度以下)で散乱された散乱荷電粒子に対応する。
【0049】
暗視野透過画像は代表的に、明視野画像におけるよりも大きな角度で散乱される透過粒子の検出に基づいて得られる。例えば、ある実施例では、暗視野画像は0.8度又はそれよりも大きい角度(例えば、1.0度以上、1.5度以上、2.0度以上、2.5度以上、3.0度以上、3.5度以上)と、6.0度又はそれよりも小さい角度(例えば、5.5度以下、5.0度以下、4.5度以下、4.0度以下)との双方又は何れか一方で散乱された散乱荷電粒子に対応する。
【0050】
高角度暗視野画像は代表的に、暗視野画像におけるよりも大きな角度で散乱された透過粒子の検出に基づいて得られる。例えば、ある実施例では、高角度暗視野画像は、6.0度又はそれよりも大きい角度(例えば、7.0度以上、8.0度以上、10.0度以上、15.0度以上、20.0度以上、25.0度以上、30.0度以上、35.0度以上、40.0度以上)で散乱された散乱荷電粒子に対応する。
【0051】
実際には、異なる種類の画像に対応する角度範囲は、特定の角度範囲内の散乱粒子を検出し、この散乱粒子に基づいて画像を形成し、異なる角度範囲でのこれらの散乱粒子に基づく画像を互いに比較することにより実験的に見つけることができる。明視野、暗視野及び高角度暗視野画像に対し適した角度範囲は、例えば、異なる情報(例えば、異なる強度有するか、又はある画像には現れるが他の画像には現れない画像特性)を有する画像に対応する。
【0052】
図2は、透過顕微鏡法で種々の散乱角で散乱する粒子を測定するのに用い得る荷電粒子検出システムの一実施例を示す。このシステム100は、材料層110及び114を支持する支持ブロック108を有する。これらの層110及び114の各々は、電子と、イオンと、中性粒子との何れか又は任意の組み合わせのような粒子が当たった際に二次電子を発生させる材料から成っている。層110には開口112が設けられている。又、荷電粒子ビーム128の平均軌道に対し垂直に向いた平面内には第1の複数の導線116が配置されている。これらの導線116は試料102と層110との間に配置されている。又、第2の複数の導線118が荷電粒子ビーム128の平均軌道に対し平行な方向に延在しているとともに、層114の周縁の少なくとも一部を囲むように配置されている。導線116は全て共通電気接点120に接続されており、導線118は全て他の共通電気接点122に接続されている。支持ブロック108には並進機構124が結合されている。接点120及び122と、並進機構124と、層110及び114により発生された二次電子を検出するように配置された検出器126とには、コントローラ(例えば、電子プロセッサ)106が電気接続されている。
【0053】
動作中は、試料102が荷電粒子128にさらされる。これらの荷電粒子128には、例えば、電子及びイオンの双方又は何れか一方を含めることができる。散乱された荷電粒子104の分布が、種々に異なる散乱角の範囲で試料の裏面から出現する。支持ブロック108は、開口112が散乱粒子の分布の中心部と一致するように配置されている。
【0054】
開口112は、分布された散乱粒子104の一部がこの開口を通過するとともにこの散乱粒子の他の一部がこの開口を通過しないような寸法とする。一般的に、開口112を通過しない粒子は、荷電粒子ビーム128の平均軌道により規定された軸線に対し大きな角度で散乱する。これらの散乱した粒子は、例えば、暗視野と高角度暗視野との双方又は何れか一方の粒子に対応しうる。これらの散乱粒子は層110の表面に当る。この層110に当った各粒子は1つ以上の二次電子を発生し、この二次電子を検出器126により検出しうる。
【0055】
開口112を通過した散乱粒子は、位置129において層114に当る。これらの粒子は、荷電粒子ビーム128の平均軌道により規定された軸線に対し小さい角度で散乱し、例えば、明視野粒子に対応しうる。これらの粒子の各々が層114に当ると、1つ以上の二次電子が発生され、この二次電子を検出器126により検出しうる。
【0056】
従って、開口112は、小さな角度及び大きな角度の散乱粒子104により検出信号を別々に発生させる。これらの異なる種類の粒子の各々に対応する信号を別々に検出するために、導線116及び118に互いに異なる電位を印化する。例えば、層110からの暗視野粒子に対応する信号を検出するために、コントローラ106は(外部接地電位に対し)正の電位を導線116に印加し、負の電位を導線118に印加する。導線116に印加された正の電位は、層110で発生された二次電子がこの層110を離れて導線116を通って検出器126に到達するのを促進させる。これに対し、導線118に印加された負の電位は、層114内で発生された二次電子を、この層114を囲む領域内に閉じ込め(例えば、二次電子が導線118を通って伝達されるのを防止し)、これら二次電子が層114上に再吸着され、従って、検出器126によるこれらの二次電子の検出を低減又は阻止するように或いはその双方を達成するようにする。これに代え、層114からの明視野粒子に対応する信号を検出するためには、コントローラ106が正の電位を導線118に印加するとともに、負の電位を導線106に印加し、これらの電位により、層114で発生された二次電子の流出及び検出と、層110で発生された二次電子の閉じ込めと、を促進させる。従って、導線116及び118に別々に印加される電位を調整することにより、コントローラ106が検出器126をもって明視野又は暗視野粒子を選択的に検出しうるようにする。
【0057】
検出器126により測定された、明視野散乱粒子か、暗視野散乱粒子か、これらの混合粒子の何れかに対応する二次電子信号は、試料102の画像を形成するのに用いることができる。例えば、測定された二次電子信号は、試料102上の荷電粒子ビーム128の位置に対応する画素に対する試料の画像における画素強度に対応する。ビーム128を試料102上の複数の位置に並進させることにより、複数の試料位置における画素強度を測定し、これらを試料102の画像を構成するのに用いることができる。各画素に対し複数の強度(例えば、明視野散乱粒子に対応する第1の強度及び暗視野散乱粒子に対応する第2の強度)を測定すると、複数の試料画像(例えば、明視野試料画像及び暗視野試料画像)を形成しうる。或いは、又はこれに加えて、明視野試料信号及び暗視野試料信号のような、散乱粒子の種々の角度範囲に対応して測定した信号を組み合わせて試料102の単一画像を形成することができる。
【0058】
層110及び114は、互いに同じ材料から、又は異なる材料から形成でき、代表的には比較的高い二次電子収率を有する材料から形成する。例えば、ある実施例では、垂直入射での25keVのHeイオンに対する層110及び114の何れか又は双方を形成するのに用いる材料に対する二次電子収率は、2.0又はそれよりも大きい値(例えば、2.5以上、3.0以上、3.5以上、4.0以上、5.0以上、6.0以上)とすることができる。層110及び114の双方又は何れか一方を形成するのに用い得る代表的な材料にはプラチナが含まれる。ある実施例では、検出器126により測定された、散乱粒子の異なる角度範囲に対応する異なる信号の大きさを調整するために、層110及び114を互いに異なる材料を用いて形成するのが有利である。
【0059】
代表的には、散乱粒子104が層114に当った際に二次電子の収率を(例えば、垂直入射での二次電子収率に比べて)高めるように、この層114(及び同様に配置された他の層)を粒子ビームの平均軌道に対しある角度に傾斜させる。例えば、ある実施例では、層114に対し垂直な面と粒子ビーム128の平均軌道との間の角度を、5度又はそれよりも大きい角度(例えば、10度以上、15度以上、20度以上、25度以上、30度以上)と、75度又はそれよりも小さい角度(例えば、70度以下、65度以下、60度以下、55度以下、50度以下、45度以下)との双方又は何れか一方とする。
【0060】
一般的には、層114を層110に対してある角度で傾ける。例えば、ある実施例では、層110の平面と層114の平面との間の角度を1度又はそれよりも大きい角度(例えば、2度以上、3度以上、5度以上、10度以上、15度以上、20度以上、25度以上、30度以上、40度以上、50度以上)と、89度又はそれよりも小さい角度(例えば、85度以下、80度以下、75度以下、70度以下、60度以下)との双方又は何れか一方としうる。
【0061】
代表的には、層114を粒子ビーム128の平均軌道の方向に沿って層110から分離させる。例えば、ある実施例では、粒子ビーム128の平均軌道の方向に沿う層110及び層114間の最小間隔は0.5cm又はそれよりも大きい間隔(例えば、1.0cm以上、1.5cm以上、2.0cm以上、2.5cm以上、3.0cm以上、4.0cm以上、5.0cm以上、6.0cm以上、7.0cm以上)と20cm又はそれよりも小さい間隔(例えば、18cm以下、16cm以下、14cm以下、12cm以下、10cm以下)との双方又は何れか一方とする。
【0062】
層110及び114の各々は種々の異なる形状としうる。例えば、図2では、層110及び114の各々は正方形又は長方形にする。しかし、より一般的には、円形、楕円形、三角形及びその他の規則的な辺の多角形を含む種々の異なる形状も可能である。層110及び114の何れか又は双方が不規則的な形状を有するようにすることもできる。層110及び114は、ある実施例では、互いに同じ形状を有するか又は互いに異なる形状を有するようにしうる。
【0063】
導線116及び118は代表的に、金属のような導体材料により形成し、これらの導線に印加される電位に応じて遮蔽及び加速の双方の電極として機能するようにする。図2では、導線116の各々を共通電気接点120に接続し、導線118の各々を共通電気接点122に接続する。しかし、より一般的には、導線116及び導線118の双方又は何れか一方を複数の導線群に分割し、各導線群が別々の接点に接続されるようにすることができる。例えば、層114の特定の辺に沿う導線の各々を共通電気接点に接続し、コントローラ106が層114の3つの辺の各々に沿って、独立的に電力を印化しうるようにする。このように電位を印化することにより(例えば、層114の1つの辺に沿う導線に正の電位を印化し、層114の他の辺に沿う導線に負の電位を印化することにより)、コントローラ106が二次電子を層114の特定の辺から流出させるのを促進させうるようにする。
【0064】
導線116及び118に印加される正及び負の電位は所望に応じて変更して、二次電子の流出及び二次電子の閉じ込めを適切に促進させるようにすることができる。ある実施例では、例えば、導線116及び118の双方又は何れか一方に印加される電位の大きさを10V又はそれよりも大きい値(例えば、20V以上、30V以上、40V以上、50V以上、75V以上、100V以上、150V以上)と、500V又はそれよりも小さい値(例えば、450V以下、400V以下、350V以下、300V以下、250V以下、200V以下)との双方又は何れか一方とする。
【0065】
図2に示す導線116及び118に加えて、他の種類の電極をも用いて導線の機能を実行させるようにすることができる。例えば、ある実施例では、導線116及び118の何れか又は双方に代えて、複数の孔を有する導電性グリッド又はメッシュを用い、これらの孔により二次電子がこの導電性グリッド又はメッシュを通過するようにすることができる。これらの孔は、二次電子が導電性グリッド又はメッシュを通過する所望の容易性に応じて種々の異なる形状及び寸法の何れのものにもすることができる。一般に、孔が大きくなればなる程、二次電子が導電性グリッド又はメッシュを通過する容易性が大きくなるとともに、導電性グリッド又はメッシュの二次電子閉じ込め能力が小さくなる。
【0066】
更に、層110及び114から生じる二次電子の流出及び検出を促進させるか、又は二次電子を閉じ込めるとともに二次電子の検出を阻止するために、ある実施例では、コントローラ106を層110及び114に接続してこれらの層に電位を印化しうるようにすることができる。例えば、コントローラ106により、(例えば、外部接地電位に対し)負の電位を層110及び114の双方又は何れか一方に印加して二次電子の流出を促進させるようにしうるとともに、正の電位を層110及び114の双方又は何れか一方に印加して二次電子の閉じ込めを促進させるようにしうる。層110及び114に印加する電位の大きさは一般に、導線116及び118に印加される電位の大きさに類似させることができる。
【0067】
入射荷電粒子128に応答して試料102で発生された二次電子を検出器126により検出されないようにするために、コントローラ106をある実施例では、電位を試料102に印加するように構成するようにしうる。例えば、コントローラ106により、(例えば、外部接地電位に対し)正の電位を試料102に印加して試料102からの二次電子の流出をより困難にするようにしうる。試料102に印加される電位の大きさは一般に、導線116及び118に印加される電位の大きさに類似させることができる。
【0068】
開口の形状は種々に変えることができる。例えば、代表的には、開口112を円形にする。しかし、より一般的には、開口112を正方形、長方形、楕円形又はその他の形状としうる。代表的には、開口112の寸法を選択して、散乱粒子の角度範囲を、層110及び114で信号が発生するように制御するようにする。例えば、開口112の最大寸法を減少させることにより、散乱粒子が層114に当りこの層114から二次電子信号を発生させるこれら散乱粒子の個数に比べて多数の散乱粒子が層110に当り、この層110から二次電子信号を発生させるようにする。図2では、開口112を固定寸法とする。しかし、より一般的には、開口112を調整しうるようにするとともに、明視野及び暗視野散乱粒子104間を適切に弁別するように調整しうるようにする。例えば、ある実施例では、層110を、異なる寸法の開口の範囲のうちの如何なるものをも受け入れるように構成できる。すなわち、種々の寸法の開口を所望通りに層110から除去したり層110に挿入したりして、層110の散乱粒子角フィルタリング特性を変更するようにしうる。
【0069】
ある実施例では、開口112のエッジを二次電子収率が比較的低い材料の層で被覆して、開口のエッジが試料画像においてイメージングアーティファクトとして現れるのを低減させるか又は阻止するか或いはこれらの双方を達成するようにすることができる。例えば、代表的には、開口112のエッジを、垂直入射でのエネルギー25keVのHeイオンに対する二次電子収率が1.5又はそれよりも小さい値(例えば、1.4以下、1.3以下、1.2以下、1.1以下、1.0以下、0.9以下、0.8以下)である材料で被覆することができる。開口112のエッジを被覆するのに適した代表的な材料には、炭素のような種々の低原子番号材料が含まれる。
【0070】
並進機構124は、コントローラ106に結合されており、支持ブロック108を散乱粒子104の通路内に入れるとともにこの通路から出すように移動させる。この並進機構124には例えば、回転軸に結合された電動式アクチュエータを含めることができる。コントローラ106からの電子信号は、層110及び114を散乱粒子の検出に用いる場合に、並進機構124が支持ブロック108を粒子104の通路内に移動させ、他の検出器を粒子検出に用いる場合に、並進機構124が支持ブロック108を粒子104の通路から引き離す命令を行う。
【0071】
システム100の特定の利点は、種々に異なる種類の検出器126とのこのシステムの適合性にある。例えば、代表的には、検出器126はエバハート・ソーンリー型検出器とする。しかし、マイクロチャネルプレート、固体検出器及びシンチレータを含む他の種類の検出器をも用い得る。種々の種類の適切な検出器は米国特許第7,504,639号明細書に開示されている。この米国特許明細書の内容は全て参考のために導入されるものである。
【0072】
ある実施例では、システム100に磁界源130を設けることができる。この磁界源130は、層110及び114の双方又は何れか一方により発生された二次電子を、検出器126により検出されるように平行化させるのに用いることができる。二次電子を平行化させることにより、ある実施例において検出効率を高めることができる。代表的には、磁界源130により発生される磁界を調節して、この磁界が散乱粒子104の軌道を著しく乱さないようにする。
【0073】
図2では、2つの層(例えば、層110及び114)を用いて散乱粒子104を検出している。しかし、より一般的には、任意の個数の層(例えば、3つの層、4つの層、5つの層、6つの層、7つの層又は7つよりも多い層)を、順次に小さくした開口と一緒に用いて、異なる散乱角度範囲に対応する散乱粒子を検出するようにすることができる。例えば、3つの互いに異なる材料の層210、214及び232を有するシステム200の実施例を図3に示してあり、各層は入射散乱粒子が当ると二次電子を発生する。層232の向き、組成及び構造は、図2に関連して上述した層114に類似する。システム200には、支持ブロック208に結合された並進機構224と組み合わせたコントローラ206をも有している。このコントローラ206は、導線216、218及び234にそれぞれ接続された電気接点220、222及び236の各々とも電気的に結合されている。導線216、218及び234により発生された二次電子を検出するように構成された検出器226もコントローラ206に接続されている。
【0074】
システム200の動作及びその種々の構成素子の機能は、前述したシステム100のものに類似している。試料202を荷電粒子ビーム228にさらし、散乱粒子204の分布を、散乱角度の範囲で試料202を通して伝達させる。層210には開口212を設け、層214には開口238を設ける。これらの開口212及び238は荷電粒子ビーム228の平均軌道の方向に沿って互いに整列させる。更に、開口212の最大寸法は開口238の最大寸法よりも大きい。
【0075】
散乱粒子204が層210上に入射されると、粒子204の一部(例えば、比較的大きな散乱角度で散乱された粒子)は開口212の周縁を越えて層210に当り、検出器226により検出しうる二次電子を発生する。粒子204の残りの部分は開口238を通過して層232に入射され、この部分の粒子が層232に当り、検出器226により検出しうる二次電子を発生させる。
【0076】
コントローラ206は前述したコントローラ106と同様に構成しうる。例えば、代表的には、このコントローラ206により導線216、218及び234に互いに異なる電位を印化して、検出器226により測定される二次電子信号が散乱粒子204の特定の角度範囲に対応するようにしうる。例えば、(外部接地電位に対し)正の電位を導線218に印加するとともに、負の電位を導線216及び234に印加することにより、検出器226により測定される二次電子信号を、試料202を透過した際に中間の角度範囲で散乱される粒子に対応させるようにする。検出器226により測定される二次電子信号を合成して、例えば、散乱粒子204の複数の異なる角度範囲に対応する試料202の画像を発生させるようにしうる。又、検出器226により測定される二次電子信号を用いて、試料202の異なる画像を構成し、これらの異なる画像の各々が散乱粒子204の異なる角度範囲に対応するようにすることもできる。例えば、ある実施例では、これらの異なる画像を、ここに開示した明視野画像と、暗視野画像と、高角度暗視野画像との何れか又は任意の組み合わせに対応するようにしうる。
【0077】
ある実施例では、合成した信号を検出器226により測定することができる。例えば、コントローラ206により正の電位を、導線216、218及び234のうちの任意の2つの(又は3つ全ての)群に印加しうる。従って、検出器226により測定される二次電子信号は層210、214及び232のうちの1つ以上から発生される二次電子信号に対応させることができ、試料202により形成される画像には、散乱粒子の複数の異なる角度範囲から取り出される情報を含めることができる。
【0078】
ある実施例では、複数の検出器を用いて複数の信号が同時に得られるようにしうる。例えば、図2を参照するに、システムには1つの検出器126ではなく2つ以上の検出器を設けることができる。第1の検出器を層114の近辺に配置し、この第1の検出器を用いて、明視野粒子が層114上に入射された際にこの層114により生ぜしめられた二次電子を測定するようにしうる。又、第2の検出器を層110の近辺に配置し、この第2の検出器を用いて、暗視野粒子が層110上に入射された際にこの層110により生ぜしめられた二次電子を測定するようにしうる。ある実施例では、動作中、2つの検出器のうちの1つのみが二次電子を能動的に検出しており、その際他の検出器は非動作状態にしておくようにしうる。或いはまた、ある実施例では、双方の検出器が同時に粒子を検出しているようにしうる。双方の検出器が粒子を能動的に検出している場合、システムは、明視野(例えば、小さい散乱角度)及び暗視野(例えば、大きい散乱角度)の粒子に対応する情報を同時に測定する。
【0079】
同様に、図3を参照するに、ある実施例では、図3に示すシステムに、2つの検出器又は3つの検出器或いは3つよりも多い検出器を設けることができる。例えば、第1の検出器は層232の近辺に配置し、この層232により発生された二次電子を検出するように構成することができる。第2の検出器は層214の近辺に配置し、この層214により発生された二次電子を検出するように構成することができる。第3の検出器は層210の近辺に配置し、この層210により発生された二次電子を検出するように構成することができる。これらの検出器のうちの何れか2つ又は3つ全ての検出器が二次電子を能動的に検出するように構成された場合、図3に示すシステムは、散乱粒子の互いに異なる角度範囲に対応する信号を同時に得ることができる。
【0080】
ある実施例では、複数の検出器を二次電子発生層に対して互いに異なるように配置するか又は互いに異なる向きにするか、或いはこれらの双方を達成させて、各検出器が1つのみの層により発生された二次電子を測定するようにする選択性を改善するようにすることができる。例えば、図3を参照するに、層232の近辺に配置した第1の検出器は、この検出器が、層232により発生されてy方向に沿って伝搬する粒子を検出するように配置しうる。層214の近辺に配置した第2の検出器は、この検出器が、層214により発生されて−y方向に沿って伝搬する粒子を検出するように配置しうる(例えば、第2の検出器は、第1の検出器が配置されている側とは反対側の支持ブロック208の側に配置することができる)。第3の検出器は層210の近辺に、例えば、層210の上方に配置し(例えば、−z方向で層210から分離させて配置し)、層210により発生された粒子を検出するようにしうる。これらの複数の検出器を支持ブロック208を囲む種々の位置に配置することにより、これらの検出器に関する寸法上の制限を緩和させることができる。
【0081】
ある実施例では、検出器を支持ブロック208の特定の側に配置した場合に、層の周りに配置された導線に印加される電位は、発生された二次電子を対応する検出器の方向に優先的に向けるように調整しうるようにする。例えば、第1の検出器を、層232により発生されy方向に伝搬される粒子を検出するように配置した場合、異なる電位を複数の導線234の幾つかに印加しうる。複数の導線232の幾つか又は全てをコントローラ206により個々にアドレス可能となるようにしうる。その結果、コントローラ206は例えば、y方向で層232と第1の検出器との間に配置された導線234のサブセットに正の電位を印化するように構成しうる。このコントローラ206は、層232の他の2つの側における導線のサブセットに負の電位を印化するように構成することもできる。その結果、層232により発生された二次電子は、優先的にy方向に沿って層232から離れて第1の検出器に向かようにすることができる。同様に、層214により発生されて−y方向に沿って伝搬する二次電子を検出するように第2の検出器を配置した場合、コントローラ206は、−y方向に沿って層214と第2の検出器との間に配置された複数の導線218のサブセットに正の電位を印化し、層214の他の2つの側における導線218のサブセットに負の電位を印化することができる。その結果、層214により発生された二次電子は、優先的に−y方向に沿って層214から離れて第2の検出器に向かうようになる。
【0082】
一般には、任意の個数の検出器を用いて、種々の層の1つ以上により発生された二次電子を測定することができる。ある実施例では、1つの検出器を、2つ以上の層により発生された二次電子を測定するように構成しうる。ある実施例では、1つの検出器を、1つの層により発生された二次電子を測定するように構成しうる。ある実施例では、複数の検出器を、1つの層により発生された二次電子を測定するように構成しうる。1つ以上の検出器の個数、配置位置及び向きは、特定の方法のイメージングや複数の条件に応じて所望通りに選択しうる。複数の検出器を用いることにより、1つの層又はそれよりも多い層(例えば、2つ以上の層、3つ以上の層、4つ以上の層、5つ以上の層)により発生された二次電子信号を同時に測定しうる。
【0083】
更に、一般には、上述した複数の導線の任意のものをコントローラ(例えば、コントローラ106及び206の双方又は何れか一方)に接続し、これら導線の何れか1本又は複数本をコントローラにより個別にアドレスしうるようにすることができる。ある実施例では、例えば、複数の導線の各々を共通電気接点に接続し、コントローラがこれらの導線の各々に共通の電位を印化するようにする。ある実施例では、複数の導線の任意のものを1つ以上のサブセットにグループ化し、各サブセットをコントローラにより個別にアドレスしうるようにすることができる。コントローラは導線のこれらサブセットの幾つか又は全てに異なる電位を印化しうる。例えば、図3では、層232を囲む複数の導線234を3つの異なるサブセットに分割し、各サブセットがこの層232の側部の1つに沿って配置された導線に対応するようにしうる。コントローラ206は、導線234の異なるサブセットの各々に同じ電位を印化するように構成することができる。或いはまた、上述したように、コントローラ206は、導線の幾つかのサブセットに異なる電位を印化し、例えば、層232により発生された二次電子を、特定の方向に沿って伝搬するように向けるように構成しうる。複数の導線218に対して同様な構造を適用することもできる。
【0084】
更に、ある実施例では、上述した何れの複数の導線の各部分をコントローラにより個別にアドレスしうるようにできる。コントローラは一般に、導線の何れか1本又はそれよりも多い導線に選択した如何なる電位をも印加しうるように構成できる。
【0085】
ある実施例では、追加の電極を用いて、任意の層によって発生される二次電子が検出器により検出される効率を高めるようにすることができる。例えば、図2では、支持ブロック108の表面119を金属のような導電性材料により被覆することができ、且つコントローラ106に電気接続することができる。コントローラ106は、表面119に電位を印化して、二次電子が層114から離間して検出器126に向かうように伝搬するのを促進させるように構成しうる。例えば、負の電位を表面119に印加することにより、層114により発生される二次電子がこの表面119から反発される。更に導線118に正の電位を印加することにより、発生された二次電子が層114から離間して検出器126に向かうように伝搬するのを促進させる。同様に、図3においては、表面219及び235の双方又は何れか一方を導電性材料で被覆するとともに、コントローラ206に電気接続することができる。コントローラ206は、表面219及び235の双方又は何れか一方に正の電位(これらの表面には同じ又は異なる電位)を印化して、二次電子が層214及び232からそれぞれ離れて検出器226の方向に伝搬するのを促進させるようにしうる。
【0086】
ここに開示する実施例の何れにも、種々の層の1つ以上により発生された二次電子の検出効率を更に高めるように配置された追加の電極を含めることができる。図3では、層210、214及び232の何れか又は任意の組み合わせにより発生された二次電子を検出器226に向けて更に指向されるように3つの電極227a〜227cを配置しうる。検出器と、この検出器が検出するように構成された二次電子を発生する1つ又は複数の層との間には1つ以上の電極を配置しうる。代表的には、電極227a〜227cは金属のような導電性材料から形成するとともに、二次電子を通過させる導電性グリッド又はメッシュとして構成する。コントローラ(例えば、コントローラ206)は代表的に正の電位を電極の各々に(例えば、同じ電位を各電極に又は異なる電位を電極のうちの少なくとも数個に又は全てに)印加する。二次電子は電極に引き寄せられ、これら電極を通過し、検出器に入射される。複数の電極を直列に用いたある実施例では、(例えば、二次時電子を発生する層から検出器に向かう方向で)順次の電極に印加される電位の大きさが増大しうるようにする。代表的には、電極に印加される電位は、10V又はそれよりも大きい値(例えば、20V以上、30V以上、40V以上、50V以上、75V以上、100V以上、200V以上、300V以上、400V以上、500V以上、750V以上、1kV以上)と、10kV又はそれよりも小さい値(例えば、9kV以下、8kV以下、7kV以下、6kV以下、5kV以下、4kV以下、3kV以下、2kV以下)との双方又は何れか一方の値を有する。
【0087】
散乱イオンの互いに異なる角度範囲に対応する測定信号及び情報を用いて、試料に関する種々の情報を決定することができる。決定しうる情報には、例えば、試料の元素組成に関する情報、試料の結晶特性に関する情報、試料の一部分の結晶配向に関する情報、試料の厚さにおける変化に関する情報及び試料における欠陥(結晶格子の欠陥を含む)に関する情報を含めることができる。
【0088】
図4は、100nmの厚さの半導体装置の明視野透過画像を示す。図4における画像は、平均エネルギーが30keVの入射Heイオンに装置をさらし且つ明視野透過イオンを検出することにより得たものである。この画像の暗領域は、入射Heイオンが止められたか又は大きな散乱角度で散乱された試料の部分に対応する。画像におけるより明るい領域は、入射Heイオンが散乱されなかったか、又は比較的小さい角度でのみ散乱された試料の部分に対応する。画像中の暗領域はタングステンから成る資料の部分に対応する。画像の最も明るい領域は、結晶シリコンより成る資料の部分に対応する。中間強度の画像領域は、銅、種々の誘電体材料及び金属酸化物よりなる資料の領域に対応する。従って、このような散乱角度分解透過測定に基づいて、試料中の互いに異なる材料より成る組成を識別することができる。
【0089】
図5は資料の明視野透過画像を示しており、この試料は数個の酸化マグネシウム結晶を上に支持している炭素支持フィルム(この画像の左上隅部に見得る)より成っている。この試料はHeイオンにさらされたものであり、0.5度〜2.0度の散乱角度範囲内の散乱イオンが検出され、検出された信号を用いて画像を形成した。この画像が示しているように、酸化マグネシウム結晶はほぼ立方形をしているとともに、種々に異なる方向に配向されている。例えば、この画像中で最も左側の結晶は、殆どの入射Heイオンが結晶内で止められているか又は2.0度よりも大きな角度で散乱されているように配向されている。しかし、左から3番目の結晶は最も左側の結晶よりも著しく明るく、画像ではほぼ透明に見える。この結晶は、殆どの入射ヘリウムイオンが偏向されずに又はほんの僅かな角度で散乱されてこの結晶を通過するように配向されていること明らかである。この画像からは、この結晶の原子がほぼ入射Heイオンの伝搬方向に向いた列に沿って整列されており、チャネリング効果を生ぜしめることが推測される。従って、これらの種類の散乱角度分解透過測定に基づいて、試料の種々の部分の結晶配向を決定することができる。
【0090】
図6は、図5の試料に類似する試料、すなわち複数の酸化マグネシウムを支持する炭素膜の明視野透過画像を示す。この図6では、試料はHeイオンにさらしたものであり、0.5度〜2.0度の散乱角度範囲内の散乱イオンが検出され、検出された信号を用いて画像を形成した。この画像中の結晶のうちの2つはストライプの強度パターンを呈している。このパターンに基づき、これらの結晶は(図5におけるほぼ透明な結晶のように)、殆どの入射Heイオンが偏向されずに又は比較的僅かな角度で散乱されてこれらの結晶を通過しうるように配向されていることを推論しうる。ストライプの強度パターンは、入射イオン結晶の種々の厚さを通過する際の、これら入射イオンの波の干渉特性により生じるものと考えられている。(例えば、入射イオンを有している)イオン波が、厚さが変化している試料中の領域を通過する際に、イオンの種々の軌道が建設的干渉又は相殺的干渉となるものと考えられている。又、ストライプは試料中の一定の厚さの部分の輪郭に対し平行に向いているものと考えられている。従って、ここで開示した散乱角度分解透過測定に基づいて、試料の異なる部分における厚さ変動を決定することができる。
【0091】
図7は、図6と同じ試料の他の部分の画像を示す。この図7では、画像の中央における結晶は、その立法形体の対角線がHeイオンの入射方向と整列されるように配向されている。図7では、結晶は六角形状で現れ、ストライプ状の厚さの輪郭は同心六角形特性として現れる。図7における画像は、2.0度よりも大きい角度で散乱されたHeイオンを測定することにより暗視野モードで得られた。厚さの輪郭は、試料の明視野及び暗視野の双方の画像で見ることができる。更に、中央の酸化マグネシウム結晶における格子欠陥に対応する試料中の欠陥は画像中に見ることができる。従って、ここで開示した散乱角度分解透過測定を用いて、格子欠陥のような試料欠陥を識別することができる。図8は、他の試料の明視野画像を示す。この画像では、丸で囲んである結晶は入射Heイオンに対する透過性が大きく、このことは、Heイオンが偏向されずに又は比較的僅かな角度で散乱されてこの結晶を通過するということを示している。しかし、格子欠陥(例えば、転位ループ)に対応する暗い糸状領域が結晶中に見られる。図7と図8とを比較することから明らかなように、試料欠陥は、明視野と暗視野との双方のイメージングモードで検出しうる。
【0092】
種々の異なる試料特性は図4〜8に示すような画像から定性的及び定量的の双方又は何れか一方で決定しうる。ある実施例では、例えば試料の領域中の平均粒子寸法を決定しうる。試料の1つ以上の画像であって、選択した試料領域における複数の異なる結晶粒子を示す画像を上述したようにして得ることができる。次に例えば、電子プロセッサで動作する画像解析ソフトウェアを用いて1つ以上の画像を解析して、画像中で識別された1つ以上の粒子の寸法を測定することができる。画素単位で測定しうる粒子の寸法は、電子プロセッサにより距離測定(例えば、ナノメートル)に変換しうる。複数の異なる粒子寸法の測定を平均化して、選択された試料領域における平均粒子寸法測定を行うことができる。
【0093】
ある実施例では、試料の画像を用いて、試料の選択領域が結晶質構造を有するか又は非晶質構造を有するかを決定する。例えば、第1の試料領域を測定することができ、試料の選択領域を画像中で識別しうる。この選択領域の平均強度は、この選択領域内の画素の強度の平均を計算することにより決定しうる。この場合、試料を荷電粒子の入射ビームに対して傾ける(又は他の傾斜角に調整する)ことができ、試料の1つ以上の追加の画像が得られるようにしうる。試料の選択領域は、1つ以上のこの又はこれらの追加の画像内で識別でき、選択領域内の平均画素強度はこの又はこれらの追加の画像から計算しうる。試料を傾けた際に、この平均画素強度が著しく変化しない場合には、試料の選択領域を、実質的に非晶質構造を有するものとして識別しうる。これとは逆に、試料を傾けた際に、この平均画素強度が著しく変化する場合には、試料の選択領域を、実質的に結晶質構造を有するものとして識別しうる。結晶質の試料を傾けることにより、試料構造中の原子の秩序正しい配列の、入射荷電粒子の方向に対する整列が変化し、これにより測定強度を変化させる。構造の秩序が著しく少ない非晶質の試料の場合、試料領域に対応する測定強度は、入射荷電粒子に対する試料の向きに著しく依存することはない。
【0094】
ある実施例では、試料(又はその一部)の元素組成を、1つ以上の試料画像に基づいて決定しうる。上述したように、ここに開示した検出器を用いて、散乱角度の特定の範囲内で試料から生じる粒子に対応する信号を測定しうる。代表的には、比較的小さい原子番号の試料原子が入射粒子を比較的小さい角度で散乱させ、一方、大きい原子番号の試料原子が入射粒子を大きい角度で散乱させる。例えば、散乱角度が小さい範囲内で生じる粒子に対応する1つ以上の試料画像を得ることにより、試料中の小さい原子番号の元素を識別しうる。大きな散乱角度の範囲内で生じる粒子に対応する試料画像も同様に用いて試料中の大きな原子番号の元素を識別することができる。一例として、小さな角度で散乱される粒子に基づく画像を用いて、試料中のシリコンのような原子番号の小さい元素を識別することができ、一方、大きな角度で散乱される粒子に基づく画像を用いて、試料中のタングステンのような原子番号の大きい元素を識別することができる。試料の画像を測定するのに用いる検出粒子の角度範囲を選択することにより、試料中の複数の異なる元素の存在を識別でき、試料内の元素の分布を測定しうる。
【0095】
代表的には、多目的の顕微鏡システムでガスイオンビームを発生させる。ガスフィールドイオン源を用いて試料解析(例えば、イメージング)に用い得るイオンを発生させる顕微鏡システムは、ガスフィールドイオン顕微鏡と称されている。ガスフィールドイオン源は、(代表的に10個の原子又はそれよりも少ない原子を有する先端を具える)チップを含む装置であり、この装置は、中性ガス種をチップの付近に(例えば、約4〜5オングストロームの距離内に)持ってくるとともに、正の高電位(例えば、抽出器(以下の説明を参照)と比べて1kV以上)をチップの先端に印加することにより、中性ガス種をイオン化してイオンを(例えば、イオンビームの形態で)発生させるのに用いることができる。
【0096】
図9は、ガスフィールドイオン顕微鏡システム1100を示すブロック線図であり、このガスフィールドイオン顕微鏡システム1100は、ガス源1110と、ガスフィールドイオン源1120と、イオン光学系1130と、試料マニピュレータ1140と、正面検出器1150と、背面検出器1160と、通信ライン1172a〜1172fを介してシステム100の種々の構成素子に電気接続された電子制御システム1170(例えば、コンピュータのような電子プロセッサ)とを有する。試料1180はイオン光学系1130と検出器1150、1160との間で試料マニピュレータ1140内/上に配置されている。使用に際しては、イオンビーム1192がイオン光学系1130を介して試料1180の表面1181に向けられ、試料1180とイオンビーム1192との相互作用により得られる粒子1194が検出器1150及び1160の双方又は何れか一方により測定される。
【0097】
一般には、システム1100を排気処理することにより、このシステム内にある種の不所望な化学種が存在するのを低減させるのが望ましい。代表的には、システム1100の種々の構成素子は互いに異なるバックグラウンド圧力に維持される。例えば、ガスフィールドイオン源1120は10-10 トル(1トル=133.322368Pa)の圧力に維持しうる。ガスフィールドイオン源1120内にガスが導入されると、バックグラウンド圧力は約10-5トルに上昇される。イオン光学系1130は、ガスフィールドイオン源1120内にガスが導入される前は約10-8トルのバックグラウンド圧力に維持されている。ガスが導入されると、イオン光学系1130内のバックグラウンド圧力は代表的に約10-7トルに増大する。試料1180は、代表的に10-6トルのバックグラウンド圧力に維持されている室内に配置されている。この圧力は、ガスフィールドイオン源1120内にガスが存在するか存在しないかによって著しく変化しない。
【0098】
図10に示すように、ガス源1110は1種類以上のガス1182をガスフィールドイオン源1120に送給するように構成されている。以下により詳細に説明するように、ガス源1110は、ガスを種々の純度、フローレート、圧力及び温度で送給するように構成しうる。一般には、ガス源1110により送給される少なくとも1種類のガスは希ガス(ヘリウム(He)、ネオン(Ne)、アルゴン(Ar)、クリプトン(Kr)、キセノン(Xe))とし、この希ガスのイオンがイオンビーム1192中の主成分となるようにするのが好ましい。一般には、試料1180の表面1181で測定されるように、イオンビーム1192におけるイオンの流れは、システム1100内の希ガスの圧力が増大するにつれて、単調増大する。ある実施例では、この関係は、ある範囲の希ガス圧力に対し、イオンの流れが一般にガス圧力に比例して増大するべき法則により説明しうる。動作中は、希ガスの圧力は、チップの先端に隣接して代表的に10-2トル又はそれよりも小さい値(例えば、10-3トル以下、10-4トル以下)と、10-7トル又はそれよりも大きい値(例えば、10-6トル以上、10-5トル以上)とする(後の説明を参照)。一般には、比較的高い純度のガスを用いる(例えば、システム中の不所望な化学種の存在を低減させる)のが望ましい。一例としては、Heを用いた場合、このHeを少なくとも99.99%の純度(例えば、99.995%の純度、99.999%の純度、99.9999%の純度)にしうる。同様に、他の希ガス(Neガス、Arガス、Krガス、Xeガス)を用いる場合、ガスの純度は高い純度の商用グレードとするのが望ましい。
【0099】
随意ではあるが、ガス源1110により、前記の希ガスに加えて、1種類以上のガスを送給するようにしうる。以下に詳細に説明するように、このようなガスの一例は窒素である。代表的に、このような追加のガスは前記の希ガス内の不純物のレベルよりも高いレベルで存在させうるが、このような追加のガスは依然としてガス源1110により導入される全混合ガスのうちのマイノリティ(僅かな)成分を構成するものである。一例として、Heガス及びNeガスをガス源1110によりガスフィールドイオン源1120内に導入する実施例では、全混合ガスに、20%又はそれよりも少ない(例えば、15%以下、12%以下の)Neと、1%又はそれよりも多い(例えば、3%以上、8%以上)のNeとの双方又は何れか一方を含めることができる。例えば、Heガス及びNeガスをガス源1110により導入する実施例では、全混合ガスに5%〜15%(例えば、8%〜15%、9%〜11%)のNeを含めることができる。他の例として、Heガス及び窒素をガス源1110により導入する実施例では、全混合ガスに、1%又はそれよりも少ない(例えば、0.5%以下、0.1%以下の)窒素と、0.01%又はそれよりも多い(例えば、0.05%以下の)窒素との双方又は何れか一方を含めることができる。例えば、Heガスと窒素ガスとをガス源1110により導入する実施例では、全混合ガスに、0.01%〜1%(例えば、0.05%〜0.5%、0.08%〜0.12%)の窒素を含めることができる。ある実施例では、追加のガスを(例えば、ガスを混合し、次にこの混合ガスを単一の注入口を介してシステム1100内に送給するガスマニホールドを使用することにより)システム1100に入れる前に希ガスと混合する。ある実施例では、追加のガスがシステム1100に入る前に希ガスと混合されないようにする(例えば、各ガスをシステム1100内に入れるのに別々の注入口を用いるが、これらの別々の注入口は、ガスがガスフィールドイオン源1120内の如何なる元素とも相互作用する前にこれらのガスが混合するのに充分に閉じるようにする)。
【0100】
ガスフィールドイオン源1120は、ガス源1110から1種類以上のガス1182を受けて、ガス1182からガスイオンを生ぜしめる。ガスフィールドイオン源1120は、チップ先端1187を有するチップ1186と、抽出器1190とを有し、随意ではあるが抑制器1188をも有する。代表的には、チップ先端1187から試料1180の表面1181(図10には図示せず)までの距離は5cm又はそれよりも長い値(例えば、10cm以上、20cm以上、25cm以上)と、100cm又はそれよりも短い値(例えば、80cm以下、60cm以下、60cm以下、50cm以下)との双方又は何れか一方とする。例えば、ある実施例では、チップ先端1187から試料1180の表面1181までの距離は5cm〜100cm(例えば、25cm〜75cm、40cm〜60cm、45cm〜55cm)とする。
【0101】
チップ1186は種々の材料から形成しうる。ある実施例では、チップ1186を金属(例えば、タングステン(W)、タンタル(Ta)、イリジウム(Ir)、レニウム(Rh)、ニオブ(Nb)、プラチナ(Pt)、モリブデン(Mo))から形成する。ある実施例では、チップ1186を合金から形成しうる。ある実施例では、チップ1186を他の材料(例えば、炭素(C))から形成しうる。
【0102】
使用中、チップ1186は抽出器1190に対して正(例えば、約20kV)にバイアスし、抽出器1190は外部接地電位に対して負又は正(例えば、−20kV〜+50kV)にバイアスし、随意の抑制器1188はチップ1186に対して正又は負(例えば、−5kV〜+5kV)にバイアスする。チップ1186は導電性材料から形成されている為、チップ先端1187におけるチップ1186の電界はこのチップ先端1187の表面から外方に向かう。電界は、チップ1186の形状の為にチップ先端1187の付近で最強となる。チップ1186の電界の強度は例えば、チップ1186に印加される正の電圧を変えることにより調整しうる。この構造によれば、ガス源1110により送給される非イオン化ガス原子1182がイオン化され、チップ先端1187の付近で正に荷電されたイオンとなる。これと同時に、正に荷電されたこれらのイオンは、正に荷電されたチップ1186により反発されるとともに負に荷電された抽出器1190により引き付けられ、正に荷電されたこれらのイオンがイオンビーム1192としてチップ1186からイオン光学系1130に向かうようになる。抑制器1188はチップ1186と抽出器1190との間の全電界を、従って、チップ1186からイオン光学系1130に向かう正に荷電されたイオンの軌道を制御する支援を行う。一般に、チップ1186と抽出器1190との間の全電界は、正に荷電されたイオンがチップ先端1187で生ぜしめられるレートと、正に荷電されたイオンがチップ1186からイオン光学系1130へ送給される効率とを制御するように調整しうる。
【0103】
一例として、理論に制約されるのを望まない場合には、Heイオンを以下のように生ぜしめうることが考えられる。ガスフィールドイオン源1120は、チップ先端1187の付近におけるチップ1186の電界が非イオン化Heガス原子1182のイオン化電界を超えるとともに、チップ1186が比較的低い温度に維持されるように構成する。非イオン化Heガス原子1182がチップ先端1187に極めて接近すると、He原子がチップの電界により分極され、He原子1182とチップ先端1187との間に弱い引力を生ぜしめる。従って、He原子1182はチップ先端1187と接触し、しばらくの間ここに固着する(例えば、物理吸着する)おそれがある。チップ先端1187の付近においては、電界を、チップ先端1187に吸着されたHe原子1182をイオン化するのに充分に高くし、正に荷電されたHeイオンを(例えば、イオンビームの形態で)発生させるようにする。
【0104】
一般に、イオン光学系1130は、イオンビーム1192を試料1180の表面1181上に向けるように構成される。以下に詳細に説明するように、イオン光学系1130は例えば、イオンビーム1192におけるイオンの集束、平行化、偏向、加速及び減速の何れか又は任意の組み合わせを行うことができる。イオン光学系1130は、イオンビーム1192におけるイオンの一部のみがイオン光学系1130を通過するようにすることもできる。イオン光学系1130は一般には、所望通りに構成された種々の静電気素子及びその他のイオン光学素子を有する。イオン光学系1130における1つ以上の構成素子(例えば、静電偏向器)の電界強度を操作することにより、Heイオンビーム1192を試料1180の表面1181にまたがるように走査しうる。イオン光学系1130には例えば、イオンビーム1192を互いに直交する2方向に偏向させる2つの偏向器を設けることができる。これらの偏向器は、イオンビーム1192が表面1181の領域にまたがってラスタ走査されるように電界強度を変化させることができる。
【0105】
イオンビーム1192が試料1180に当ると、種々に異なる種類の粒子1194が生じうる。これらの粒子には例えば、二次電子、オージェ電子、二次イオン、二次中性粒子、一次中性粒子、散乱イオン及び光子(例えば、X線光子、IR光子、可視光子、UV光子)が含まれる。検出器1150及び1160はそれぞれ、Heイオンビーム1192と試料1180との間の相互作用により生ぜしめられる1つ又は複数の異なる種類の粒子を測定するように配置及び構成されている。図9に示すように、検出器1150は、主として試料1180の表面1181から生じる粒子1194を検出するように配置されており、検出器1160は主として試料1180の面1183から出現する粒子(例えば、透過粒子)1194を検出するように配置されている。ある実施例では、検出器1160は、試料1180を透過する荷電粒子を検出するための、ここに開示した如何なる検出システムにも対応させることができる。
【0106】
ここに開示した顕微鏡システムには一般に、如何なる個数及び構造の検出器をも用いることができる。ある実施例では、複数の検出器を用い、これらの複数の検出器のうちの幾つかを異なる種類の粒子を測定するように構成する。ある実施例では、同じ種類の粒子に関する異なる情報(例えば、粒子のエネルギー、所定の粒子の角度分布、所定の粒子の全存在量)が得られるように検出器を構成する。随意ではあるが、このような検出器の構成配置の組み合わせを用いることができる。
【0107】
検出器により測定された情報は一般的に、試料1180に関する情報を決定するのに用いられる。この情報は代表的に、試料1180の1つ以上の画像を得ることにより決定される。イオンビーム1192を表面1181にまたがってラスタ走査することにより、試料1180に関する画素毎の情報を個別のステップで得ることができる。検出器1150及び1160の双方又は何れか一方は、1つ又は複数の異なる種類の粒子1194を各画素で検出するように構成しうる。画素は代表的に正方形であるが、ある実施例では、画素を他の形状(例えば、長方形)にすることができる。画素の辺に相当する画素寸法は、例えば、100pm〜2μm(例えば、1nm〜1μm)にすることができる。ある実施例では、隣接画素の配置を少なくとも200pm内に(例えば、少なくとも100pm内に、少なくとも75pm内に、少なくとも50pm内に)決定することができる。従って、システムのオペレータは、ビームスポットの中心の配置を少なくとも200pm内に(例えば、少なくとも100pm内に、少なくとも75pm内に、少なくとも50pm内に)決定することができる。ある実施例では、試料1180の視野(FOV)は、200nm又はそれよりも大きく(例えば、500nm以上、1μm以上、50μm以上、100μm以上、500μm以上、1mm以上、1.5mm以上に)するか、又は25mm又はそれよりも小さく(15mm以下、10mm以下、5mm以下に)するか、或いはこれらの双方にする。視野とは、イオン顕微鏡により結像される試料表面の領域を意味するものである。
【0108】
顕微鏡システム1100は代表的に電子制御システム1170により制御される。この電子制御システム1170は例えば、ガス源1110により送給されるガスと、チップ1186の温度と、チップ1186の電位と、抽出器1190の電位と、抑制器1188の電位と、イオン光学系1130の構成素子の設定と、試料マニピュレータ1140の位置と、検出器1150及び1160の配置及び設定との何れか又は任意の組み合わせを制御するように構成しうる。ある実施例では、例えば、電子制御システム1170はコントローラ106及び206の双方又は何れか一方と関連して前述した機能の幾つか又は全てを実行しうるように接続しうる。
【0109】
随意ではあるが、これらのパラメータの1つ以上を(例えば、電子制御システム1170と一体のユーザインタフェースを介して)手動制御しうる。これに加え又はこれに代えて、電子制御システムを(例えば、コンピュータのような電子プロセッサを介して)用いて、検出器1150及び1160により集められた情報を解析するとともに試料1180に関する情報(例えば、トポグラフィー情報、構成材料情報、結晶情報、電圧コントラスト情報、光学特性情報、磁気情報)を取り出すことができ、これらは随意ではあるが、画像、グラフ、表、スプレッドシート等の形態としうる。電子制御システム1170には代表的に、ディスプレイ又はその他の出力装置や、入力装置や、記憶媒体を特徴づけるユーザインタフェースが含まれる。
【0110】
検出器1150及び1160は図9に線図的に示してあり、検出器1150は試料1180の表面(イオンビームが当る表面)1181から生じる粒子を検出すうように配置されており、検出器1160は試料1180の面1183から生じる粒子を検出するように配置されている。一般に、顕微鏡システム1100に多種の異なる検出器を用いて種々の粒子を検出することができ、顕微鏡システム1100には代表的に所望の任意の個数の検出器を設けることができる。これらの種々の検出器の構造は、測定すべき粒子及び測定状態に応じて選択しうる。ある実施例では、スペクトル分解検出器を用いることができる。このような検出器は、異なるエネルギー及び波長の双方又は何れか一方の粒子を検出するとともに、検出された各粒子のエネルギー及び波長の双方又は何れか一方に基づいて粒子を分解しうるものである。ある実施例では、スペクトル分解検出器には、粒子のエネルギー及び波長の双方又は何れか一方に基づいて検出器の種々の領域に粒子を向けうる構成素子を含める。
【0111】
検出器1150及び1160の双方又は何れか一方には一般に、次の種類の1つ以上の如何なる検出器をも含めることができる。すなわち、これらの検出器には、二次電子と、イオンと、中性粒子との何れか又は任意の組み合わせを検出するのに用い得るエバハート・ソーンリー(ET)型検出器や、試料からの二次電子、中性原子又はイオンの流束を増幅するのに用い得るマイクロチャネルプレート検出器や、試料からのイオン(例えば、散乱イオン、二次イオン)又は試料からの中性粒子(例えば、一次中性He原子)を検出するのに用い得るコンバージョンプレートや、試料から放出される電子、イオン及び中性原子のような粒子を検出するのに用い得るチャンネルトロン検出器や、透明基板上に堆積された蛍光体材料の薄肉層と、CCDカメラ、PMT又は1つ以上のダイオードのような光子検出器とを有し、試料からの電子、イオン及び中性粒子の何れか又は任意の組み合わせを検出するのに用い得る蛍光体主体の検出器や、試料からの二次電子、イオン及び中性原子の何れか又は任意の組み合わせを検出するのに用い得る固体検出器や、入射粒子(電子、イオン又は中性原子)が当るのに応答して光子を発生するシンチレータ材料を有し、特に粒子のエネルギー測定に有効なシンチレータ主体の検出器や、イオン及び電子用の静電気及び磁気プリズム検出器や、二次電子、イオン及び中性原子に対する飛行時間型検出器や、イオン、電子及び中性原子に対する角度依存散乱情報を測定しうる角度分解検出器が存在する。
【0112】
[コンピュータハードウェア及びソフトウェア]
一般には、上述した何れの方法も、コンピュータハードウェア又はコンピュータソフトウェアで、或いはこれらの組み合わせで実行しうる。これらの方法は、ここに開示した図及び方法に続く標準のプログラミング技術を用いるコンピュータプログラムで実行しうる。入力データにはプログラムコードを適用し、ここに開示した機能を実行し、出力情報を発生するようにする。この出力情報はディスプレイモニタのような1つ以上の出力装置に供給される。各プログラムは、高水準手続き型言語又はオブジェクト指向プログラミング言語で実行してコンピュータシステムと通信するようにしうる。しかし、プログラムは所望に応じ、アセンブリ言語又はマシン語で実行しうる。如何なる場合にも、言語はコンパイラ型言語又はインタープリタ型言語としうる。更に、プログラムはこの目的のためにプログラミングされた専用の集積回路で実行しうる。
【0113】
このようなコンピュータプログラムの各々は、一般的な又は特別な目的のプログラマブルコンピュータにより読み出し得る記憶媒体又は記憶装置(例えば、ROM又は磁気ディスケット)に記憶させ、ここに開示した処置を実行するために記憶媒体又は記憶装置をコンピュータにより読み取る際にこのコンピュータを設定及び動作させるようにするのが好ましい。コンピュータプログラムは、プログラムの実行に際しキャッシュメモリ又はメインメモリ内に存在させることもできる。上述した方法を、コンピュータプログラムで構成されたコンピュータ可読記憶媒体として実行し、このように構成された記憶媒体によりコンピュータを特定の予め決定した方法で動作させてここに開示した機能を実行するようにすることもできる。
【0114】
他の実施例は特許請求の範囲に開示してある。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持構造体の第1の面上に配置された第1の材料層であって、この第1の材料層は、これに当る入射荷電粒子に応答して二次電子を発生するように構成されているとともに、この入射荷電粒子の一部を通すように構成された開口を有している当該第1の材料層と、
前記支持構造体の第2の面上に配置され、前記第1の材料層から0.5cm以上離間している第2の材料層であって、前記開口を通過してこの第2の材料層に当る荷電粒子に応答して二次電子を発生するように構成された当該第2の材料層と、
前記第1の材料層及び前記第2の材料層により発生された二次電子を検出するように構成された検出器と
を具える装置において、
この装置を荷電粒子検出器とした
装置。
【請求項2】
請求項1に記載の装置において、前記第1の材料層の前記開口の幾何学的中心が、この第1の材料層に当る入射荷電粒子の平均荷電粒子軌道に対し平行な軸線に沿って配置されている装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の装置において、前記第2の材料層が前記第1の材料層に対し傾斜配置されている装置。
【請求項4】
請求項1〜3の何れか一項に記載の装置において、前記第1の材料層が平均荷電粒子軌道に一致する軸線に対し垂直に配置されている装置。
【請求項5】
請求項1〜3の何れか一項に記載の装置において、前記第1及び第2の材料層が、前記第1の材料層に当る入射荷電粒子の平均荷電粒子軌道に一致する軸線に対しある角度で配置されている装置。
【請求項6】
請求項1〜5の何れか一項に記載の装置において、前記第1及び第2の材料層は、垂直入射で25keVの平均エネルギーを有する入射Heイオンに対し2.0以上の二次電子収率を有する材料から成っている装置。
【請求項7】
請求項1〜6の何れか一項に記載の装置において、この装置が更に、前記第2の材料層のうちの少なくとも一部の周縁に沿って配置された第1の複数の導線を有し、この第1の複数の導線は、前記開口を通過して前記第2の材料層に当る荷電粒子の平均軌道に対し平行な方向に沿って第2の材料層の上方に延在している装置。
【請求項8】
請求項1〜7の何れか一項に記載の装置において、この装置が更に、前記開口を通過して前記第2の材料層に当る荷電粒子の平均軌道に対し垂直な平面内で延在する第2の複数の導線を有し、入射荷電粒子が前記第1の材料層に到達する前にこの平面を通過するようになっている装置。
【請求項9】
請求項7に記載の装置において、この装置が更に、前記開口を通過して前記第2の材料層に当る荷電粒子の平均軌道に対し垂直な平面内で延在する第2の複数の導線を有し、入射荷電粒子が前記第1の材料層に到達する前にこの平面を通過するようになっており、前記装置が更に、前記第1及び第2の複数の導線に結合された電子プロセッサを有し、この電子プロセッサは前記第1及び第2の複数の導線の各々に異なる電位を印化するように構成されている装置。
【請求項10】
請求項1〜9の何れか一項に記載の装置において、前記第1及び第2の材料層は互いに異なる材料から成っている装置。
【請求項11】
請求項1〜10の何れか一項に記載の装置において、この装置が更に、前記支持構造体に連結された並進機構を具え、この並進機構は前記支持構造体を入射荷電粒子の通路内に入れるとともにこの通路から出すように移動させる構成となっている装置。
【請求項12】
請求項1〜10の何れか一項に記載の装置において、この装置が更に、前記開口の周縁を囲んで前記第1の材料層上に配置された材料の層を有し、この材料の層は、25keV及び垂直入射での入射Heイオンに対し前記第1の材料層よりも小さい二次電子収率を有する材料を含んでいる装置。
【請求項13】
請求項1〜12の何れか一項に記載の装置において、この装置が更に、前記第1及び第2の材料層の何れか1つ又は双方により発生された二次電子を平行化するように構成された磁界源を有している装置。
【請求項14】
請求項1〜13の何れか一項に記載の装置において、この装置が更に、前記第1及び第2の材料層間に配置された1つ以上の追加の材料層を有し、各追加の材料層はこの追加の層に当る入射荷電粒子に応答して二次電子を発生するように構成されているとともに、前記第1の材料層における前記開口の最大寸法よりも大きい最大寸法を有する開口を具えており、各追加の材料層における前記開口は、入射荷電粒子の一部がこの開口を通過して前記第2の材料層に到達するように配置されている装置。
【請求項15】
請求項1〜14の何れか一項に記載の装置において、この装置が更に、平均荷電粒子軌道を有する荷電粒子ビームを生じるとともに形成する荷電粒子源及び荷電粒子光学系を具える荷電粒子ビームシステムを具えており、前記荷電粒子源と前記第1の材料層との間に試料ステージが配置されている装置。
【請求項16】
第1、第2及び第3の材料層であって、これら3つの材料層の各々が支持構造体の互いに異なる面上に配置されているとともに、軸線に沿って互いに離間されており、前記第1の材料層は、前記軸線に対し垂直な平面内に配置されており、前記第2及び第3の材料層は前記軸線に対しある角度で傾斜したそれぞれの平面内に配置されており、前記第1の材料層は第1の開口を有し、前記第2の材料層は、前記軸線に対し平行な方向に沿って前記第1の開口と整列された第2の開口を有しているとともに、前記第1の開口の最大寸法よりも小さい最大寸法を有しているこれら第1、第2及び第3の材料層と、
前記第1の材料層に対し平行な平面内に延在する第1の複数の導線であって、この第1の複数の導線は、入射荷電粒子が前記第1の材料層に到達する前にこの第1の複数の導線を通過するように配置されており、この第1の複数の導線の各構成部材は第1の電気端子に接続されている当該第1の複数の導線と、
前記軸線に対し平行な方向に延在するとともに前記第2の材料層の周縁の一部に沿って配置された第2の複数の導線であって、この第2の複数の導線の各構成部材は第2の電気端子に接続されている当該第2の複数の導線と、
前記軸線に対し平行な方向に延在するとともに前記第3の材料層の周縁の一部に沿って配置された第3の複数の導線であって、この第3の複数の導線の各構成部材は第3の電気端子に接続されている当該第3の複数の導線と、
前記第1、第2及び第3の電気端子の各々に電位を印化するように構成された電子プロセッサと、
荷電粒子が前記第1、第2及び第3の材料層の1つ以上に当った際に、第1、第2及び第3の材料層の1つ以上により発生された二次電子を検出するように構成された検出装置と
を具える装置。
【請求項17】
請求項16に記載の装置において、前記第1、第2及び第3の材料層の各々は、25keVのエネルギーで垂直入射されるHeイオンに対する二次電子収率が2.0以上である材料から成っている装置。
【請求項18】
請求項16又は17に記載の装置において、前記第2及び第3の材料層が前記軸線に対し互いに異なる角度で配置されている装置。
【請求項19】
請求項16〜18の何れか一項に記載の装置において、前記第1及び第2の開口の周縁エッジが、25keVのエネルギーで垂直に入射されるHeイオンに対し、前記第1、第2及び第3の材料層の二次電子収率よりも小さい二次電子収率を有する材料の層を有している装置。
【請求項20】
請求項16〜19の何れか一項に記載の装置において、前記第1の電気端子と外部接地電位点との間の電位差が、前記第2の電気端子と前記外部接地電位点との間の電位差とは逆の正負符号を有している装置。
【請求項21】
請求項16〜20の何れか一項に記載の装置において、前記第1の材料層と前記第2の材料層とを且つ前記第2の材料層と前記第3の材料層とを1.0cm以上離間させた装置。
【請求項22】
請求項16〜21の何れか一項に記載の装置において、この装置が更に、平均荷電粒子軌道を有する荷電粒子ビームを生じ及び形成する荷電粒子源及び荷電粒子光学系を具える荷電粒子ビームシステムを具えており、前記荷電粒子源と前記第1の材料層との間に試料ステージが配置されている装置。
【請求項23】
試料からの荷電粒子を、支持構造体の第1の面上に配置されているとともに第1の開口を具える第1の材料層に入射させるように向けるステップと、
前記第1の開口を通過した透過荷電粒子を、前記支持構造体の第2の面上に配置されているとともに前記第1の開口よりも小さい最大寸法を有する第2の開口を具える第2の材料層に入射させるように向けるステップと、
前記第2の開口を通過した透過荷電粒子を、前記支持構造体の第3の面上に配置されている第3の材料層に入射させるように向けるステップと、
前記第1の材料層を囲む第1のスクリーンと、前記第2の材料層を囲む第2のスクリーンと、前記第3の材料層を囲む第3のスクリーンとに電位を印化して、これら第1、第2及び第3の材料層の1つで発生された二次電子を検出器に到達させるようにするとともに、他の材料層で発生された二次電子が前記検出器に到達する可能性を低減させるようにするステップと、
前記検出器に到達した二次電子を検出するステップと、
検出された二次電子に基づいて試料の画像を形成するステップと
を具える方法。
【請求項24】
請求項23に記載の方法において、この方法が更に、
外部接地電位に比べて正の電位を印化して二次電子を前記検出器に到達させるステップと、
外部接地電位に比べて負の電位を印化して二次電子が前記検出器に到達しないようにするステップと
を具える方法。
【請求項25】
請求項24に記載の方法において、前記正の電位の大きさを500V以下とする方法。
【請求項26】
請求項23〜25の何れか一項に記載の方法において、この方法が更に、
荷電粒子を、荷電粒子源から試料上に入射させるように向けるステップ
を具える方法。
【請求項27】
請求項26に記載の方法において、荷電粒子が、ガスフィールドイオン源により発生されたイオンを有するようにする方法。
【請求項28】
請求項26に記載の方法において、荷電粒子が電子を有するようにする方法。
【請求項29】
請求項23〜28の何れか一項に記載の方法において、この方法が更に、
外部接地電位に対し正の電位を試料に印加するステップ
を具える方法。
【請求項30】
請求項23〜29の何れか一項に記載の方法において、この方法が更に、
前記第1、第2及び第3の材料層から検出した二次電子に基づいて画像を形成するステップ
を具える方法。
【請求項31】
請求項23〜30の何れか一項に記載の方法において、この方法が更に、
試料の一部の平均粒子寸法を前記画像に基づいて決定するステップ
を具える方法。
【請求項32】
請求項23〜30の何れか一項に記載の方法において、この方法が更に、
試料の一部が結晶構造を有するか否かを前記画像に基づいて決定するステップ
を具える方法。
【請求項33】
請求項23〜30の何れか一項に記載の方法において、この方法が更に、
試料の一部の結晶配向を前記画像に基づいて決定するステップ
を具える方法。
【請求項34】
請求項23〜30の何れか一項に記載の方法において、この方法が更に、
試料の厚さの変化を前記画像に基づいて決定するステップ
を具える方法。
【請求項35】
請求項23〜30の何れか一項に記載の方法において、この方法が更に、
試料の組成を前記画像に基づいて決定するステップ
を具える方法。
【請求項36】
請求項23〜30の何れか一項に記載の方法において、この方法が更に、
結晶格子欠陥又は転位ループを含む試料中の欠陥を前記画像に基づいて決定するステップ
を具える方法。
【請求項37】
試料からの複数の荷電粒子を、これらの荷電粒子の各々の散乱角に基づいて第1の複数の粒子と第2の複数の粒子とに分離させるステップと、
これら第1及び第2の複数の粒子の各々を互いに異なる電子発生面に入射させるステップと、
前記第1の複数の粒子に対応する第1の信号と、前記第2の複数の粒子に対応する第2の信号とを、単一の検出器を用いて測定するステップと
を具える方法。
【請求項38】
2度よりも大きい散乱角に対応する試料からの第1の複数の粒子を第1の面に入射させるように向けるとともに、前記第1の面で前記第1の複数の粒子により発生された電子を測定するステップと、
2度よりも小さい散乱角に対応する試料からの第2の複数の粒子を第2の面に入射させるように向けるとともに、前記第2の面で前記第2の複数の粒子により発生された電子を測定するステップと、
前記第1及び第2の複数の粒子のうちの少なくとも一方に対応する測定電子に基づいて試料の画像を形成するステップと
を具え、前記第1の複数の粒子により発生された電子と、前記第2の複数の粒子により発生された電子とを単一の検出器を用いて測定する方法。
【請求項39】
試料から出る第1の角度範囲内で散乱されたこの試料からの第1の複数の粒子に対応する第1の電子信号と、試料から出る第2の角度範囲内で散乱されたこの試料からの第2の複数の粒子に対応する第2の電子信号とを測定するのに1つの検出器を用いるステップを具える方法。
【請求項40】
試料内での異なる散乱角度範囲に対応して試料から出る第1及び第2の複数の荷電粒子に対応する電子信号を測定するのに1つの検出器を用いるステップを具える方法。
【請求項41】
試料から出る第1の複数の荷電粒子を、第1の面に当るように向けることにより、この試料から出る第1の複数の荷電粒子に対応する第1の複数の電子を発生させるステップと、
試料から出る第2の複数の荷電粒子を、第2の面に当るように向けることにより、この試料から出る第2の複数の荷電粒子に対応する第2の複数の電子を発生させるステップと、
前記第1の面と検出器との間に配置された第1のスクリーンに第1の電位を印化するとともに、前記第2の面と検出器との間に配置された第2のスクリーンに第2の電位を印化することにより、前記検出器で前記第1の複数の荷電粒子又は前記第2の複数の荷電粒子を選択的に検出するステップと
を具える方法。
【請求項42】
試料からの荷電粒子を1つ以上の開口に入射するように向けることによりこれらの荷電粒子を複数の群に空間的に分離するステップと、
荷電粒子の各郡を、互いに異なる面であって荷電粒子がこれらの異なる面の各々に当ると二次電子を発生するように構成された面に入射させるように向けることにより、これらの群の各々に対応する電子信号を発生させるステップと、
1つの検出器を用いて各郡に対応する電子信号を選択的に検出するステップと
を具える方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2012−531710(P2012−531710A)
【公表日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−517620(P2012−517620)
【出願日】平成22年6月21日(2010.6.21)
【国際出願番号】PCT/US2010/039304
【国際公開番号】WO2011/005469
【国際公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【出願人】(510237435)カール ツァイス エヌティーエス エルエルシー (14)
【Fターム(参考)】