説明

荷電粒子癌治療システムと併用されるX線方法及び装置

本発明は、癌腫瘍に対する荷電粒子照射治療と併用されるX線方法及び装置を有する。そのシステムは、陽子ビーム癌治療システムの陽子ビーム経路と実質的に同じ経路に位置し、長い寿命を有し、及び又は、患者の呼吸と同期するX線を使用する。そのシステムは、陽子ビーム経路に近接したところに配置されたX線発生源を叩く電子ビームを生成する。陽子ビーム経路の近傍にX線を発生することによって、実質的に陽子ビーム経路であるX線経路が生成される。そのシステムは、発生されたX線を用いて、癌腫瘍のまわりの局部的な体の組織範囲のX線画像を収集し、そのX線画像は、陽子ビーム経路に対する体の位置合わせを細かく調整すること、及び又は陽子ビーム経路を正確且つ精密に目標の腫瘍に制御すること、に使用できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的には強力な癌の治療に関する。さらに詳しくは、本発明は、癌腫瘍の放射線治療と併用するX線方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
(癌)
腫瘍は異常な組織のかたまりである。腫瘍には良性のもの又は悪性のものがある。良性の腫瘍は局部的に成長するが、体の他の部分に広がることはない。良性の腫瘍は、広がるときに正常な組織を押しのけたり、取って代わったりするので、問題を引き起こす。良性の腫瘍は、頭蓋骨などの限られた場所では危険である。悪性の腫瘍は、体の他の領域を浸食する能力がある。転移とは、癌が正常な組織を浸食することであり、且つ離れた組織に広がることである。
【0003】
(癌の治療)
癌の治療には、小源照射治療、電磁石X線治療、陽子治療を含め、種々の形態の照射治療がある。陽子治療は、通常、ビーム発生器、加速器、及び、患者の体の腫瘍に陽子を配送する複数の治療室に加速された陽子を移動させるビーム搬送システムを備えている。
【0004】
陽子治療は、粒子加速器で加速された陽子などのエネルギー値の高いイオン化粒子を目標の腫瘍に向けることによって機能する。これらの粒子は、細胞のDNAを破壊し、ついには細胞を死滅させる。癌細胞は、急速な分裂及び破壊されたDNAを回復する能力が低下しているので、癌細胞のDNAは攻撃を特に受けやすい。
【0005】
(荷電粒子癌治療)
本発明に関連する特許の概要について、以下説明する。
(陽子ビーム治療システム)
Linda University Medical CenterのF. Cole等に対して1989年9月26日に付与された特許文献1「Multi-Station Proton Beam Therapy System(多元陽子ビーム治療システム)」には、単一の陽子源及び加速器から選択的に発生する陽子ビームを、複数の患者治療室の中から選択された治療室に搬送する陽子ビーム治療システムが記載されている。
【0006】
(加速/シンクロトロン)
S. Peggs等に対して2008年10月7日に付与された特許文献2「Rapid Cycling Medical Synchrotron and Beam Delivery System (急速周回の医療用シンクロトロン及びビーム配送システム)」には、結合された作用磁石及び高周波(RF)空洞加速器を有するシンクロトロンが記載されている。結合された作用磁石は、最初に粒子ビームを軌道経路に沿って偏向するように作用し、次にその粒子ビームをフォーカスするように作用する。RF空洞加速器は、急速周回の粒子加速器に対して揺り動く高速周波数に適応した空洞である。
【0007】
H. Tanaka等に対して2007年8月21日に付与された特許文献3「Charged Particle Accelerator(荷電粒子加速器)」には、第1の加速期間及びその後の第2の加速期間に印加される固定の電場によって2つの期間の加速処理を有し、コンパクトでハイパワーの荷電粒子加速を実現する荷電粒子加速器が記載されている。
【0008】
T. Haberer等に対して2004年1月27日に付与された特許文献4「Ion Beam Therapy System and Method for Operating the System(イオン・ビーム治療システム及びそのシステムの動作方法)」には、イオン・ビーム治療システム及びそのシステムの稼働方法が記載されている。そのイオン・ビーム・システムは、エッジ・フォーカス効果から生じる平行スキャン・モードの結果を得る最後の偏向磁石の前に、垂直偏向システム及び水平偏向システムが配置された移動保持台(ガントリー)を使用する。
【0009】
V. Kulish等に対して2002年8月13日に付与された特許文献5「Inductional Undulative EH-Accelerator(誘導波動のEH加速器)」には、荷電粒子ビームの加速のための誘導波動のEH加速装置が記載されている。その装置は電磁波動システムで構成され、その電磁石用駆動システムは、約100kHzから10GHzまでの範囲の周波数で動作する高周波発振器の形態で作られている。
【0010】
K. Saito等に対して1999年6月29日に付与された特許文献6「Radio-Frequency Accelerating System and Ring Type Accelerator Provided with the Same(高周波加速システム及びそのシステムを用いたリングタイプ加速器)」には、磁気コア群に結合されたループ・アンテナ及びループ・アンテナに接続されたインピーダンス調整手段を有する高周波加速システムが記載されている。そのインピーダンス調整手段には比較的低い電圧が供給されるので、小型構造の調整手段を実現している。
【0011】
J. Hirota等に対して1997年8月26日に付与された特許文献7「Ion Beam Accelerating Device Having Separately Excited Magnetic Cores (分離して励磁された磁気コアを有するイオン・ビーム加速装置)」には、複数の高周波磁場誘導ユニット及び磁気コアを有するイオン・ビーム加速装置が記載されている。
【0012】
J. Hirota等に対して1992年12月1日に付与された特許文献8「Acceleration Device for Charged Particles (荷電粒子の加速装置)」には、結合定数及び又は再調整を制御するために組み合わされた高周波電力源及び制御の下に動作するループ導体を備え、粒子に対して電力をより効率的に送信できる加速空洞が記載されている。
【0013】
(抽出)
T. Nakanishi等に対して2006年10月17日に付与された特許文献9「Charged-Particle Beam Accelerator, Particle Beam Radiation Therapy System Using the Charged-Particle Accelerator, and Method of Operating the Particle Beam Radiation Therapy System(荷電粒子ビーム加速器、その荷電粒子ビーム加速器を用いた粒子ビーム照射治療システム、及びその粒子ビーム照射治療システムの稼働方法)」には、安定した共鳴の領域内の荷電粒子ビームのベータトロン振動の振幅を増加するRF−KOユニット、及び、安定した共鳴の領域を変化させる抽出用4極電磁石を備える荷電粒子ビーム加速器が記載されている。RF−KOユニットは、周回ビーム線量が安定した共鳴の領域の限界を超えない周波数範囲内で稼働され、抽出用4極電磁石は、ビーム抽出が必要な時間に稼働される。
【0014】
T. Haberer等に対して2006年8月15日に付与された特許文献10「Method and Device for Controlling a Beam Extraction Raster Scan Irradiation Device for Heavy Ions or Protons(重イオン又は陽子のビーム抽出ラスター・スキャン照射装置を制御する方法及び装置)」には、すべての加速周期におけるビーム・エネルギー、ビーム・フォーカス、及びビーム強度の観点から、ビーム抽出照射を制御する方法が記載されている。
【0015】
K. Hiramoto等に対して2002年10月29日に付与された特許文献11「Accelerator and Medical System and Operating Method of the Same(加速器及び医療システム、及びその稼働方法)」には、荷電粒子ビームの周回を形成するための偏向電磁石及び4極電磁石を有する周期型加速器、ベータトロン振動の安定した共鳴限界を生成するための多極電磁石、並びに、高周波の電磁場をビームに与えて安定限界の外にビームを移動する高周波電源が記載されている。高周波電源は、時間に対する瞬間周波数が変化し、且つ、時間に対する瞬間周波数の平均値が異なる複数の交流(AC)信号の加算信号を生成する。システムは、電極を介してビームに加算信号を供給する。
【0016】
K. Hiramoto等に対して2000年7月11日に付与された特許文献12「Synchrotron Type Accelerator and Medical Treatment System Employing the Same(シンクロトロン型加速器及びそれを使用した医療システム)」及びK. Hiramoto等に対して1999年12月28日に付与された特許文献13「Synchrotron Type Accelerator and Medical Treatment System Employing the Same」には、高周波の電磁場を周回している荷電粒子ビームに供給するため、及び、粒子ビームのベータトロン振動の振幅を安定した共鳴限界を超えるレベルまで増加するための周回軌道上に設けられた高周波供給ユニットを備えるシンクロトロン型加速器が記載されている。さらに、ビーム放出のために、発散用4極電磁石が、(1)第1の偏向器に対しては下流に、(2)偏向電磁石に対しては上流に、(3)偏向電磁石に対しては下流に、及び(4)第2の偏向器に対しては上流に、配置されている。
【0017】
K. Hiramoto等に対して1994年11月8日に付与された特許文献14「Circular Accelerator and Method and Apparatus for Extracting Charged-Particle Beam in Circular Accelerator(円形加速器及びその円形加速器における荷電粒子ビームの抽出方法及び入射装置)」には、(1)ベータトロン振動共鳴の効果によってビーム変位を向上するため、(2)安定した共鳴限界内で最初のベータトロン振動を有する粒子のベータトロン振動を向上するため、及び(3)共鳴安定限界を超えることで、安定した共鳴限界を超える粒子を抽出するために、荷電粒子ビームを抽出する円形加速器が記載されている。
【0018】
K. Hiramoto等に対して1994年2月8日に付与された特許文献15「Method of Extracting Charged Particles from Accelerator, and Accelerator Capable Carrying Out the Method, by Shifting Particle Obit(加速器から荷電粒子を抽出する方法、及び、粒子軌道を変位することによって、その方法を実行することができる加速器)」には、荷電粒子を抽出する方法が記載されている。偏向磁石及び6極の要素よりも多い多極の要素を有する磁石によって維持されている荷電粒子の均衡な軌道は、荷電粒子の周回軌道一周あたりの振動数(チューン)を変更する磁石とは異なる方法で、加速器の構成要素によって変位される。
【0019】
(搬送/スキャン制御)
K. Matsuda等に対して2007年6月5日に付与された特許文献16「Particle Beam Irradiation Apparatus, Treatment Planning Unit, and Particle Irradiation Method(粒子ビーム照射装置、治療方針ユニット、及び粒子ビーム照射方法)」、K. Matsuda等に対して2006年10月17日に付与された特許文献17「Particle Beam Irradiation Treatment Planning Unit, and Particle Irradiation Method」、及びK. Matsuda等に対して2006年9月5日に付与された「Particle Beam Irradiation Apparatus, Treatment Planning Unit, and Particle Irradiation Method(粒子ビーム照射装置、治療方針ユニット、及び粒子ビーム照射方法)」の各々には、イオン・ビームの出力を停止し、スキャン電磁石の制御によって照射位置を変更し、治療方針情報に基づいて治療を再開するスキャン制御部を備える粒子ビーム照射装置が記載されている。
【0020】
T. Norimine 等に対して2006年6月13日に付与された特許文献18「Particle Therapy System Apparatus(粒子治療システム装置)」、T. Norimine 等に対して2005年8月30日に付与された特許文献19「Particle Therapy System Apparatus」、及びT. Norimine 等に対して2004年8月10日に付与された特許文献20「Particle Therapy System Apparatus」の各々には、第1及び第2のビーム位置監視部によって制御されるシンクロトロンの後に、荷電粒子ビーム経路に配置された第1の操縦磁石及び第2の操縦磁石を備える粒子治療システムが記載されている。
【0021】
K. Moriyama等に対して2006年3月14日に付与された特許文献21「Particle Beam Therapy System(粒子ビーム治療システム)」には、患者へのイオン・ビームの搬送について準備が完了したことを示す準備信号に対するマニュアル入力が記載されている。
【0022】
H. Harada等に対して2006年1月10日に付与された特許文献22「Irradiation Apparatus and Irradiation Method(照射装置及び照射方法)」には、照射野装置の性能を強化することなく、多葉コリメータを使用した複数回の放射線ビームの照射により重畳領域を含む位置制御部によって、線量分布の一様性を確保できる大照射野を有する照射方法が記載されている。
【0023】
H. Akiyama等に対して2005年6月7日に付与された特許文献23「Charged Particle Beam Irradiation Equipment Having Scanning Electromagnet Power Supplies(スキャン用電磁石に対する電源を有する荷電粒子ビーム照射装置)」、H. Akiyama等に対して2005年5月31日に付与された特許文献24「Charged Particle Beam Irradiation Equipment Having Scanning Electromagnet Power Supplies」、及び、H. Akiyama等に対して2005年4月19日に付与された特許文献25「Charged Particle Beam Irradiation Equipment Having Scanning Electromagnet Power Supplies」のすべてには、荷電粒子ビームを偏向するスキャン用電磁石に対する電圧を印可する電源、及び、パルス性部品を用いることなくスキャン用電磁石を制御して、照射対象に対するより精密な照射一様性を可能にする第2の電源が記載されている。
【0024】
K. Amemiya等に対して2004年10月5日に付与された特許文献26「Accelerator System and Medical Accelerator Facility(加速システム及び医療用加速器設備)」には、低電力消費で動作可能な広いイオン・ビームの制御電流範囲を有し、且つ、長い保守間隔を有する加速システムが記載されている。
【0025】
A. Dolinskii等に対して2002年11月5日に付与された特許文献27「Gantry with an Ion-Optical System(イオン光学システムのガントリー)」には、イオン源及び回転軸のまわりでイオン・ビームを偏向する3つの偏向磁石を有するイオン光学システムのための支持台が記載されている。複数の4極磁石がビーム経路に沿って設けられて、完全に色収差を補正したビームの搬送及び水平面及び垂直面において異なる射出をするイオン・ビームを生成する。さらに、2つのスキャン用磁石が第2の偏向磁石及び第3の偏向磁石の間に設けられて、ビームを導いている。
【0026】
H. Akiyama 等に対して2001年4月17日に付与された特許文献28「Charged Particle Beam Irradiation Apparatus(荷電粒子ビーム照射装置)」には、複数のスキャン用電磁石及びその複数のスキャン用電磁石の間に4極電磁石を備え、目標に対して荷電粒子ビームを照射する荷電粒子ビーム照射装置が記載されている。
【0027】
K. Matsuda 等に対して2000年7月11日に付与された特許文献29「Charged Particle Beam Irradiation System and Method Thereof(荷電粒子ビーム照射システム及びその方法)」には、目標の細い範囲に対応する領域において、荷電粒子ビームの一部を遮蔽する遮蔽素子を有するリッジ・フィルタを備える荷電粒子ビーム照射システムが記載されている。
【0028】
P. Young 等に対して1991年5月21日に付与された特許文献30「Raster Scan Control System for a Charged-Particle Beam(荷電粒子ビーム用のラスター・スキャン制御システム)」には、荷電粒子ビームが通過するノズルを有する荷電粒子ビーム配送システムと併用するラスター・スキャン制御システムが記載されている。ノズルは、プログラマブル・ラスター発生器、並びに、目標において所望のラスター・スキャン・パターンに沿ってビームを駆動する掃引磁界を生成するための速い掃引スキャン用電磁石及び遅い掃引スキャン用磁石の双方を備えている。
【0029】
(ビーム・エネルギー/強度)
M. Yanagisawa 等に対して2008年4月8日に付与された特許文献31「Charged Particle Therapy System, Range Modulation Wheel Device, and Method of Installing Range Modulation Wheel Device(荷電粒子線治療システム、飛程補償装置、及び飛程補償装置を導入する方法)」及びM. Yanagisawa 等に対して2008年5月30日に付与された特許文献32「Charged Particle Therapy System, Range Modulation Wheel Device, and Method of Installing Range Modulation Wheel Device」の双方には、飛程補償体を有する粒子線治療システムが記載されている。イオン・ビームが飛程補償体を通過して、飛程補償体の複数の段階的な厚さに対応する複数のエネルギーレベルを得る結果になる。
【0030】
M. Yanagisawa 等に対して2007年11月20日に付与された特許文献33「Particle Beam Irradiation System and Method of Adjusting Irradiation Apparatus(粒子ビーム照射システム及び照射装置の調整方法)」、M. Yanagisawa 等に対して2006年7月4日に付与された特許文献34「Particle Beam Irradiation System and Method of Adjusting Irradiation Apparatus」、M. Yanagisawa 等に対して2006年4月11日に付与された特許文献35「Particle Beam Irradiation System and Method of Adjusting Irradiation Apparatus」、及びM. Yanagisawa 等に対して2004年8月17日に付与された特許文献36「Particle Beam Irradiation System and Method of Adjusting Irradiation Apparatus」のすべてには、散乱装置、飛程調整装置、ピーク拡散装置が記載されている。散乱装置及び飛程調整装置は互いに組み合わされて、ビーム軸に沿って移動される。拡散装置は軸に沿って独立に移動され、イオン・ビーム散乱の度合いを調整する。組み合わせることによって、装置は、低下した組織に対する照射線量分布の均一性の度合いを向上させる。
【0031】
A. Sliski等に対して2007年4月24日に付与された特許文献37「Programmable Particle Scatter for Radiation Therapy Beam Formation(照射治療ビーム形成のためのプログラマブル粒子散乱)」には、所定の方法において散乱角度及びビーム飛程を補償するために、粒子ビームの中に配置する液体のプログラム可能な経路長が記載されている。荷電粒子ビーム散乱部/飛程補償部は、粒子ビーム経路内において対面する壁を有する液体貯蔵部、及び、プログラム可能な制御部の制御の下に液体貯蔵部の壁の間の距離を調整する駆動部を備えて、組織内の所定の深さに所定の拡散ブラッド・ピークを形成する。ビームの散乱及び補償は、腫瘍の治療の期間に連続的且つ動的に調整されて、目標になっている所定の3次元の体に線量を堆積する。
【0032】
M. Tadokoro 等に対して2007年7月24日に付与された特許文献38及び2006年12月26日に付与された特許文献39「Particle Therapy System(粒子線治療システム)」の各々には、照射の使用期間中に荷電粒子ビームのエネルギーを測定可能な粒子線治療システムが記載されている。そのシステムは、ビームが間を通過する一対のコリメータ、エネルギー検出器、及び検出器に取り付けられた信号処理ユニットを備えている。
【0033】
G. Kraft等に対して2005年5月10日に付与された特許文献40「Ion Beam Scanner System and Operating Method(イオン・ビーム・スキャン・システム及び稼働方法)」には、スキャンされる目標の体に対する機械的位置合わせシステムを有すると共に、目標の体の要素の深度ずれスキャンが得られるリニアモータによるイオン・ビームの深度調整及びエネルギー吸収手段の横の変位を可能にするイオン・ビーム・スキャン・システムが記載されている。
【0034】
G. Hartmann等に対して2004年5月18日に付与された特許文献41「Method for Operating an Ion Beam Therapy System by Monitoring the Distribution of the Radiation Dose(照射線量の分布を監視することによってイオン・ビーム治療システムを稼働させる方法)」には、格子スキャナーを備え、治療焦点(アイソセンタ)周辺の領域に照射し且つスキャンするイオン・ビーム治療システムの稼働方法が記載されている。アイソセンタの領域の変化する位置において、格子スキャナー装置の深度線量分布及び横方向線量分布の両方とも、測定され且つ評価される。
【0035】
Y. Jongen 等に対して2004年4月6日に付与された特許文献42「Method for Treating a Target Volume with a Particle Beam and Device Implementing Same(粒子ビームによって目標の体を治療する方法及びそれを実施する装置)」には、目標の部位に向けて照射される細いスポットを粒子ビームから生成する方法において、そのスポットの走査速度及び粒子ビームの強度が同時に変化されることが記載されている。
【0036】
G. Kraft等に対して2004年3月23日に付与された特許文献43「Device for Irradiating a Tumor Tissue(腫瘍組織を照射する装置)」には、腫瘍組織を照射する方法及び装置が記載され、その照射においては、イオン・ビームの方向及びイオン・ビームの飛程を共に調整する陽子ビームの深度切換のために、陽子ビーム経路においてイオン制動装置を電磁的に駆動している。
【0037】
K. Matsuda等に対して2003年9月9日に付与された特許文献44「Charged Particle Beam Irradiation Apparatus(荷電粒子ビーム照射装置)」には、複数のフィルタ素子の各々のイオン・ビームの通過位置の違いによって生じるエネルギーが異なる3つのイオン・ビーム成分を有する拡大装置を介して、イオン・ビームがブラッグ・ピークを通過することによって、ブラッグ・ピークの深さ方向における幅を増大する荷電粒子ビーム照射装置が記載されている。
【0038】
H. Stelzer 等に対して2002年8月20日に付与された特許文献45「Ionization Chamber for Ion Beams and Method for Monitoring the Intensity of an Ion Beam(イオン・ビームに対するイオン化容器及びイオン・ビーム強度を監視する方法)」には、イオン・ビームに対するイオン化容器及びイオン・ビーム強度を監視する方法が記載されている。イオン化容器は、容器筐体、ビーム入口窓、ビーム出口窓、ビーム出口窓、及び計数ガスで満たされた容器体を有する。
【0039】
H. Akiyama 等に対して2002年8月13日に付与された特許文献46「Charged-Particle Beam Irradiation Method and System(荷電粒子ビーム照射方法及びシステム)」及びH. Akiyama 等に対して2001年7月24日に付与された特許文献47「Charged-Particle Beam Irradiation Method and System」には共に、粒子のエネルギーを変更する変更部及び荷電粒子ビームの強度を制御する制御部を有する荷電粒子ビーム照射システムが記載されている。
【0040】
Y. Pu等に対して2000年3月7日に付与された特許文献48「Charged Particle Beam Irradiation Apparatus and Method of Irradiation with Charged-Particle Beam(荷電粒子ビーム照射装置及び荷電粒子ビームを用いた照射方法)」には、(1)ある長さの円筒部品、及び(2)回転軸のまわりの円周方向において、照射ビームのエネルギー低下を決定す壁厚の配分を有するエネルギー低下部を備える荷電粒子ビーム照射装置が記載されている。
【0041】
(照射開始/照射停止)
K. Hiramoto 等に対して2001年11月13日に付与された特許文献49「Charged Particle Beam Apparatus and Method for Operating the Same(荷電粒子ビーム装置及びその動作方法)」には、荷電粒子ビームが位置決めされ、開始され、停止され、且つ、繰り返し再位置決めされる荷電粒子ビーム装置が記載されている。十分な帯電が可能な場合には、新たな粒子を供給することなく、残りの粒子が加速器において使用される。
【0042】
K. Matsuda 等に対して2002年10月8日に付与された特許文献50「Method and Apparatus for Controlling Circular Accelerator(円形加速器の制御方法及び装置)」には、射出される荷電粒子のタイミングを制御する円形加速器の制御方法及び装置が記載されている。荷電粒子の流れの配送後に一時停止されたクロック・パルスが、照射される対象の状態に基づいて再開される。
【0043】
(ガントリー)
T. Yamashita 等に対して2008年6月3日に付与された特許文献51「Rotating Irradiation Apparatus(回転照射装置)」には、各々が放射状の支持装置を有するが前輪及び後輪を備える回転ガントリーが記載され、それらの支持装置がリニア・ガイドを有する。そのシステムは、回転本体の回転軸の方向に回転本体の移動を制限するための信頼支持装置を備えている。
【0044】
T. Yamashita等に対して2008年5月13日に付与された特許文献52「Rotating Gantry of Particle Beam Therapy System(荷電粒子ビーム治療システムの回転ガントリー)」には、治療中において迅速に移動、制動、及び停止が可能なエア・ブレーキ・システムによって支持される回転ガントリーが記載されている。
【0045】
M. Yanagisawa等に対して2006年1月31日に付与された特許文献53「Medical Charged Particle Irradiation Apparatus(医療用荷電粒子照射装置)」、M. Yanagisawa等に対して2005年12月27日に付与された特許文献54「Medical Charged Particle Irradiation Apparatus」、及びM. Yanagisawa等に対して2005年10月11日に付与された特許文献55「Medical Charged Particle Irradiation Apparatus」のすべてには、上方向及び水平方向から照射可能な装置が記載されている。照射野装置が偏心して配置されているガントリーが回転軸のまわりに回転可能であるので、照射の軸が回転軸とは異なる位置を通る。
【0046】
H. Kaercher等に対して2005年5月24日に付与された特許文献56「Isokinetic Gantry Arrangement for the Isocentric Guidance of a Particle Beam And a Method for Constructing Same(粒子ビームの照射中心ガイドのための照射速動性のガントリー配置)」には、水平長手軸のまわりに回転できる粒子ビームの照射中心ガイドのための照射速動性のガントリー配置が記載されている。
【0047】
G. Kraft等に対して2004年5月4日に付与された特許文献57「Ion Beam System for Irradiating Tumor Tissues(腫瘍組織を照射するイオン・ビーム・システム)」には、水平に配置された患者の治療台に対して様々な角度で腫瘍組織を照射するイオン・ビーム・システムが記載され、そのシステムおいて、患者の治療台は、中心軸のまわりりに回転可能であり、放射状の支持装置を有するリフト機構を備え、放射状の支持装置がリニア・ガイドを備えている。そのシステムは、水平方向に対して±15度まで中心イオン・ビームを偏向する。
【0048】
M. Pavlovic 等に対して2003年10月21日に付与された特許文献58「Gantry System and Method for Operating Same(ガントリー・システム及びその動作方法)」には、自由に決定できる効率的治療角度から、目標に対するイオン・ビームの調整及び位置合わせを行うガントリー・システムが記載されている。イオン・ビームは、ガントリー回転軸のまわりに0から360度の調整可能な角度及びガントリー回転軸からはずれた45乃至90度の角度で目標に位置合わせされるので、ガントリー回転軸のまわりに全回転されたときの照射の円錐を発生させる。
【0049】
(移動可能な患者)
N. Rigney 等に対して2007年4月3日に付与された特許文献59「Patient Alignment System with External Measurement and Object Coordination for Radiation Therapy System(外部測定による患者位置合わせシステム及び放射線治療システムのための物体配置)」には、放射線治療システムのために、放射線治療システムの可動部品の位置測定を取得する多数の外部測定装置を備える患者位置合わせシステムが記載されている。その位置合わせシステムは、補正位置フィードバックを提供するために外部測定装置を使用して、さらに精密に患者を放射線ビームに位置合わせする。
【0050】
Y. Muramatsu等に対して2006年4月18日に付与された特許文献60「Medical Particle Irradiation Apparatus(医療用粒子照射装置)」、Y. Muramatsu等に対して2005年6月7日に付与された特許文献61「Medical Particle Irradiation Apparatus」、及びY. Muramatsu等に対して2004年10月12日に付与された特許文献62「Medical Particle Irradiation Apparatus」のすべてには、回転ガントリー、回転ガントリーに対して回転できるようにガントリー内に配置された環状フレーム、ガントリーによる回転に伴ってフレームが連動するのを阻止する連動阻止機構、及び、ガントリーの回転中に下側が実質的に水平となって自由に移動する方法でフレームに結合された屈曲自在な移動床を備える医療用粒子照射装置が記載されている。
【0051】
H. Nonaka等に対して1999年11月30日に付与された特許文献63「Rotating Radiation Chamber for Radiation therapy(放射線治療の回転放射線室)」には、自由且つ柔軟な方法で結合された一連の多数のプレートで構成された水平に移動自在な床が記載されている。その移動自在な床は、放射ビームの照射部の回転に同期して移動する。
【0052】
(呼吸)
K. Matsuda等に対して1996年7月23日に付与された特許文献64「Radioactive Beam Irradiation Method and Apparatus Taking Movement of the Irradiation Area Into Consideration(照射領域の移動を考慮した放射性のビーム照射方法及び装置)」には、呼吸及び心臓の鼓動などの身体的作用のために患部の位置が変化した場合であっても、照射が可能な方法及び装置が記載されている。最初に、患者の患部の位置変化及び身体的作用が同時に測定されて、それらの間の関係が関数として定義される。照射治療は、その関数に応じて実施される。
【0053】
(患者位置決め)
Y. Nagamine等に対して2007年5月1日に付与された特許文献65「Patient Positioning Device and Patient Positioning Method(患者位置決め装置及び患者位置決め方法)」及びY. Nagamine等に対して2007年5月1日に付与された特許文献66「Patient Positioning Device and Patient Positioning Method」には、基準のX線画像の比較領域と現在の患者位置を示す現在のX線画像とを、パターン・マッチングによって比較する患者位置決めシステムが記載されている。
【0054】
D. Miller等に対して2007年2月6日に付与された特許文献67「Modular Patient Support System(モジュール方式の患者サポート・システム)」には、モジュール的に拡がる格納部及び塑造可能な構造の籠などの少なくとも1つの固定装置を有する患者サポート・システムを備える照射治療システムが記載されている。
【0055】
K. Kato等に対して2005年8月16日に付与された特許文献68「Multi-Leaf Collimator and Medical System Including Accelerator(マルチ・リーフ・コリメータ及び加速器を備える医療システム)」、及びK. Kato等に対して2004年11月23日に付与された特許文献69「Multi-Leaf Collimator and Medical System Including Accelerator」、及びK. Kato等に対して2004年11月16日に付与された特許文献70「Multi-Leaf Collimator and Medical System Including Accelerator」、及びK. Kato等に対して2004年9月14日に付与された特許文献71「Multi-Leaf Collimator and Medical System Including Accelerator」のすべてには、照射治療において患者を短時間で位置決めするのに使用されるリーフ・プレートのシステムが記載されている。モータの駆動力が、小歯車によって複数のリーフ・プレートに同時に伝達される。そのシステムはまた、上側及び下側の空気シリンダー並びに上側及び下側のガイドを使用して、患者を位置決めする。
【0056】
(コンピュータ制御)
A. Beloussov 等に対して2008年5月6日に付与された特許文献72「Configuration Management and Retrieval System for Proton Beam Therapy System(構造管理及び陽子ビーム治療システムのための検索システム)」、及びA. Beloussov 等に対して2006年8月1日に付与された特許文献73「Configuration Management and Retrieval System for Proton Beam Therapy System」、及びA. Beloussov 等に対して2004年11月23日に付与された特許文献74「Configuration Management and Retrieval System for Proton Beam Therapy System」のすべてには、公認のユーザによって容易に修正できる治療の構成的なパラメータを有するマルチ・プロセッサ・ソフトウェア制御による陽子ビーム・システムが記載され、そのシステムにおいては、様々な手術の形態に対応するソフトウェア制御のシステムを用意して、データベースの中に単一障害点がある場合でも、データ及び構造的なパラメータがアクセスできることを保証するようになっている。
【0057】
J. Hirota等に対して1997年12月16日に付与された特許文献75「Automatically Operated Accelerator Using Obtained Operating Patterns(取得された動作パターンによって自動的に動作される加速器)」には、動作パターンから得られる制御によって、加速器本体のすべての部品の制御の量及び制御のタイミングを判断する主制御部が記載されている。
【0058】
(画像処理)
P. Adamee等に対して2007年9月25日に付与された特許文献76「Charged Particle Beam Apparatus and Method for Operating the Same(荷電粒子ビーム装置及びその動作方法)」、及びP. Adamee等に対して2006年5月16日に付与された特許文献77第7,045,781「Charged Particle Beam Apparatus and Method for Operating the Same」には、対象の直列及び並列の画像処理のために構成された荷電粒子ビーム装置が記載されている。
【0059】
K. Hiramoto等に対して2007年3月20日に付与された特許文献78「Ion Beam Therapy System and its Couch Positioning System(イオン・ビーム治療システム及びその治療台の位置合わせシステム)」には、回転ガントリーと共に移動するX線画像システムを備えるイオン・ビーム治療システムが記載されている。
【0060】
C. Maurer 等に対して2003年5月6日に付与された特許文献79「Apparatus and Method for Registration of Images to Physical Space Using a Weighted Combination Points and Surfaces(点及び表面の重み付け結合によって物理空間に対する画像位置合わせの装置及び方法)」には、患者の体で取得された物理測定に対して位置合わせされたX線コンピュータ断層撮影法の処理が記載されている。重み付けが反復位置合わせ処理に使用されて、固定された体の変換処理を測定する。その変換処理においては、変換関数が使用されて手術の空間立体的な手順を支援する。
【0061】
M. Blair等に対して1998年10月20日に付与された特許文献80「Proton Beam Digital Imaging System(陽子ビームのデジタル画像システム)」には、体の範囲の中にX線ビームを投射できる治療ビーム・ラインにおいて移動可能なX線源を備える陽子ビームのデジタル画像システムが記載されている。患者指向の画像におけるビームの中心と、選択された患者像に関係するマスター処方画像における照射中心との、相対的な位置を比較することによって、目標の照射中心に対応する最善のビーム中心を作るための患者の動きの量及び方向が測定される。
【0062】
S. Nishihara等に対して1991年8月13日に付与された特許文献81「Therapeutic Apparatus(治療装置)」には、第1の画像に基づいて第1の距離が測定され、第2の画像に基づいて第2の距離が測定され、第1及び第2の距離に基づいて治療ビーム照射位置に患者が移動される、治療ビームの位置決めの方法及び装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0063】
【特許文献1】米国特許第4,870,287号明細書
【特許文献2】米国特許第7,432,516号明細書
【特許文献3】米国特許第7,259,529号明細書
【特許文献4】米国特許第6,683,318号明細書
【特許文献5】米国特許第6,433,494号明細書
【特許文献6】米国特許第5,917,293号明細書
【特許文献7】米国特許第5,661,366号明細書
【特許文献8】米国特許第5,168,241号明細書
【特許文献9】米国特許第7,122,978号明細書
【特許文献10】米国特許第7,091,478号明細書
【特許文献11】米国特許第6,472,834号明細書
【特許文献12】米国特許第6,087,670号明細書
【特許文献13】米国特許第6,008,499号明細書
【特許文献14】米国特許第5,363,008号明細書
【特許文献15】米国特許第5,285,166号明細書
【特許文献16】米国特許第7,227,161号明細書
【特許文献17】米国特許第7,122,811号明細書
【特許文献18】米国特許第7,060,997号明細書
【特許文献19】米国特許第6,936,832号明細書
【特許文献20】米国特許第6,774,383号明細書
【特許文献21】米国特許第7,012,267号明細書
【特許文献22】米国特許第6,984,835号明細書
【特許文献23】米国特許第6,903,351号明細書
【特許文献24】米国特許第6,900,436号明細書
【特許文献25】米国特許第6,881,970号明細書
【特許文献26】米国特許第6,800,866号明細書
【特許文献27】米国特許第6,476,403号明細書
【特許文献28】米国特許第6,218,675号明細書
【特許文献29】米国特許第6,087,672号明細書
【特許文献30】米国特許第5,017,789号明細書
【特許文献31】米国特許第7,355,189号明細書
【特許文献32】米国特許第7,053,389号明細書
【特許文献33】米国特許第7,297,967号明細書
【特許文献34】米国特許第7,071,479号明細書
【特許文献35】米国特許第7,026,636号明細書
【特許文献36】米国特許第6,777,700号明細書
【特許文献37】米国特許第7,208,748号明細書
【特許文献38】米国特許第7,247,869号明細書
【特許文献39】米国特許第7,154,108号明細書
【特許文献40】米国特許第6,891,177号明細書
【特許文献41】米国特許第6,736,831号明細書
【特許文献42】米国特許第6,717,162号明細書
【特許文献43】米国特許第6,710,362号明細書
【特許文献44】米国特許第6,617,598号明細書
【特許文献45】米国特許第6,437,513号明細書
【特許文献46】米国特許第6,433,349号明細書
【特許文献47】米国特許第6,265,837号明細書
【特許文献48】米国特許第6,034,377号明細書
【特許文献49】米国特許第6,316,776号明細書
【特許文献50】米国特許第6,462,490号明細書
【特許文献51】米国特許第7,381,979号明細書
【特許文献52】米国特許第7,372,053号明細書
【特許文献53】米国特許第6,992,312号明細書
【特許文献54】米国特許第6,979,832号明細書
【特許文献55】米国特許第6,953,943号明細書
【特許文献56】米国特許第6,897,451号明細書
【特許文献57】米国特許第6,730,921号明細書
【特許文献58】米国特許第6,635,882号明細書
【特許文献59】米国特許第7,199,382号明細書
【特許文献60】米国特許第7,030,396号明細書
【特許文献61】米国特許第6,903,356号明細書
【特許文献62】米国特許第6,803,591号明細書
【特許文献63】米国特許第5,993,373号明細書
【特許文献64】米国特許第5,538,494号明細書
【特許文献65】米国特許第7,212,609号明細書
【特許文献66】米国特許第7,212,608号明細書
【特許文献67】米国特許第7,173,265号明細書
【特許文献68】米国特許第6,931,100号明細書
【特許文献69】米国特許第6,823,045号明細書
【特許文献70】米国特許第6,819,743号明細書
【特許文献71】米国特許第6,792,078号明細書
【特許文献72】米国特許第7,368,740号明細書
【特許文献73】米国特許第7,084,410号明細書
【特許文献74】米国特許第6,822,244号明細書
【特許文献75】米国特許第5,698,954号明細書
【特許文献76】米国特許第7,274,018号明細書
【特許文献77】米国特許第7,045,781号明細書
【特許文献78】米国特許第7,193,227号明細書
【特許文献79】米国特許第6,560,354号明細書
【特許文献80】米国特許第5,825,845号明細書
【特許文献81】米国特許第5,039,867号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0064】
癌腫瘍の粒子ビーム治療の技術分野においては、癌腫瘍に対して目標にされ且つ制御されるエネルギーを配送すること及び周辺の患者の正常組織への破壊を最小限にすること保証するために、粒子ビーム治療照射の直前及び又は期間中の患者を位置決めすると共に、患者の適切な位置決めを確認することが求められている。また、粒子ビーム治療の技術分野においては、X線源が切れることに起因する粒子ビーム治療の故障時間を最小又は除去するために、長い寿命を持つX線源が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0065】
本発明は、癌腫瘍に対する荷電粒子ビーム照射治療と併用されるX線の方法及び装置に関する。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】粒子ビーム治療システムの構成の接続を示す図である。
【図2】荷電粒子治療システムを示す図である。
【図3】イオン・ビーム発生システムを示す図である。
【図4】シンクロトロンの直線部及び方向転換部を示す図である。
【図5】シンクロトロンの偏向磁石を示す図である。
【図6】偏向磁石の斜視図である。
【図7】偏向磁石の断面図である。
【図8】偏向磁石の断面図である。
【図9】シンクロトロンの磁気的方向転換部を示す図である。
【図10】(A)はRF加速器を示す図であり、(B)はRF加速器のサブシステムを示す図である。
【図11】磁場制御システムを示す図である。
【図12】荷電粒子の抽出及び強度の制御システムを示す図である。
【図13】陽子ビームの位置確認システムを示す図である。
【図14】患者位置決めシステムを示し、(A)は正面図、(B)は上面図である。
【図15】X線及び陽子ビームの線量分布を示す図である。
【図16】(A)乃至(E)はフォーカス照射の制御された深さを示す図である。
【図17】(A)乃至(E)は多磁場照射を示す図である。
【図18】多磁場照射の使用によって向上された線量効率を示す図である。
【図19】多磁場照射の実施を示す図である。
【図20】荷電粒子ビーム・スポット・スキャン・システムの多次元スキャンを示す図であり、(A)は腫瘍の2次元の輪切りスキャンで動作する図、(B)は3次元の体積スキャンで動作する図である。
【図21】粒子線治療システムに結合されたX線を発生する際に使用される電子銃源を示す図である。
【図22】粒子ビーム経路に近接するX線源を示す図である。
【図23】X線ビーム経路を示す拡大図である。
【図24】X線断層撮影システムを提供する図である。
【図25】半垂直患者位置決めシステムを示す図である。
【図26】患者の呼吸によるX線収集の調整方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0067】
本発明は、癌腫瘍に対する荷電粒子ビームの照射治療と併用されるX線方法及びX線装置を備えている。
【0068】
一実施形態において、本発明のシステムは、癌腫瘍に対する荷電粒子又は陽子ビームの照射治療と併用されるX線方法及びX線装置を備えている。体内組織の腫瘍に対する陽子の正確且つ精密な配送は、荷電粒子ビーム治療において重要である。正確且つ精密な配送を複雑にするのは、体の自然な動きである。体の動きは多様なレベルを引き起こし、(1)一般的な動き、(2)立位、座位、又は横臥の位置の変化、及び(3)器官などの体内部位の相対的な動きを、含んでいる。これらの動きのすべては、同時に変化する。したがって、例えば、荷電粒子ビームに対して体が位置決めされた後に、荷電粒子治療において又は極めて近い時間に体の要素の位置を測定する方法が求められている。本発明の実施形態においては、照射治療と併用されるX線位置決め及び又は確認の方法及び装置について説明する。この実施形態において、本発明のシステムは、粒子ビーム癌治療システムの陽子ビーム経路とおおむね同じ経路に位置するX線ビームを使用する。本発明のシステムは、陽子ビーム経路に近接して配置されたX線発生源を叩く電子ビームを生成する。陽子ビーム経路の近傍にX線を発生することによって、基本的に陽子ビーム経路となるX線経路が生成される。発生されたX線を使用して、システムは、癌腫瘍の近くに位置づけされた体内組織の範囲のX線画像を収集する。撮像された画像は、陽子ビーム経路に対する体の位置合わせを細かく調整することに、目標の腫瘍に対して陽子ビーム経路を正確且つ精密に制御するために、及び又はシステム検査及び確認に使用できる。
【0069】
他の実施形態においては、本発明のシステムは、長い寿命のX線画像を使用する。そのX線画像は、必要な保守を少なくする。
【0070】
さらに他の実施形態においては、本発明のシステムは、陽子治療ビームによって見られる方向と同じ方向における患者のX線画像を得るために方向付けられ、患者の呼吸に同期され、陽子治療のために配置された患者が移動可能にされ、及び、陽子ビーム治療の経路を遮ることがないX線システムを使用する。好ましくは、その同期されたシステムは、陰イオン源、シンクロトロン、及び又は、目標の方法装置と併用されて、患者の呼吸に合わせて、且つ、粒子線治療の照射の直前及び又は同時に実行されるX線を提供して、患者位置に対して目標にされ及び制御されたエネルギーの配送を保証することにより、陽子ビーム位置検証システムを用いて、患者の正常な組織の周囲に対する破壊を最小にしつつ、強力な癌腫瘍の効率的な、精密な、及び又は正確な無痛の生体治療を得ることができる。
【0071】
さらに他の実施形態においては、本発明のシステムは、患者の呼吸を監視及び又は制御することによって、X線画像及び陽子治療のタイミングを患者の呼吸に合わせる。呼吸監視システムは、温度センサ及び又は力センサを使用して、呼吸制御が必要である時を患者に通知するために、患者に配送されるフィードバック信号の制御と組み合わせて、患者が呼吸の周期のどの位置であるかを測定する。呼吸制御とX線画像及び又は腫瘍に対する荷電粒子の配送とのタイミングを合わせることで、腫瘍治療の正確さ、精密さ、及び又は効率を高めることができる。
【0072】
本発明と組み合わせて使用する、荷電粒子ビーム癌治療システムの新しい設計の特徴について説明する。特に、陰イオン源、イオン源真空システム、イオン・ビーム・フォーカス・レンズ、及び2連型加速器における新しい特徴を有する陰イオン・ビーム源について説明する。さらに、シンクロトロンの全体のサイズを最小にし、厳しく制御された陽子ビームを供給し、必要な磁場のサイズを直接低減し、必要な動作電力を直接低減し、シンクロトロンから陽子を抽出する処理中であってもシンクロトロンにおける陽子の連続的な加速を可能にする方向転換磁石、エッジ・フォーカス磁石、磁場収束磁石、巻線補正コイル、平坦磁場入力表面、及び抽出要素を説明する。イオン・ビーム源システム及びシンクロトロンは、好ましくは、患者画像システム並びに呼吸監視センサ及び患者位置決め要素を有する患者インターフェースを統合したコンピュータである。さらに、癌腫瘍に対する荷電粒子ビーム照射治療と併用される荷電粒子ビーム加速の強度制御、抽出、及び又は目標の方法及び装置について説明する。特に、シンクロトロンの荷電粒子の流れの強度、エネルギー、及びタイミング制御について説明する。シンクロトロンの制御要素は荷電粒子ビームの厳密な制御を可能にし、その厳密な制御が患者の位置決めの厳密な制御を高めて腫瘍の周囲の正常組織に対する組織破壊を低減して強力な腫瘍の効率的な治療を可能にする。さらに、システムは、シンクロトロンの全体のサイズを小さくし、厳密に制御された陽子ビームを供給し、必要な磁場のサイズを直接低減し、必要な動作電力を直接低減し、シンクロトロンからの陽子の抽出の処理中であってもシンクロトロンにおける陽子の連続的な加速を可能にする。これらのシステムのすべては、(1)陽子治療のための位置決めシステムにおいて、及び(2)患者の呼吸の周期の特定の瞬間において、患者のX線を収集することが可能なX線システムと併用されることが好ましい。併用することによって、システムは、効率的な、正確な、及び精密な無痛の腫瘍治療を、周囲の正常な組織の破壊を最小にしつつ、実現することができる。
【0073】
(サイクロトロン/シンクロトロン)
サイクロトロンは、一定の電場及び一定の周波数の印加された電場を使用する。磁場及び電場の1つはシンクロサイクロトロンの中で変化する。磁場及び電場の双方はシンクロトロンの中で変化する。このように、シンクロトロンは特定のタイプの周回粒子加速器であり、そこで磁場は粒子を偏向するのに使用されてその粒子が周回し、電場は粒子を加速するのに使用される。シンクロトロンは、印加された磁場及び電場を周回する粒子ビームに精密に同期させる。
【0074】
磁場及び電場を適切に増加することにより、粒子がエネルギーを得るにしたがって、荷電粒子経路が一定に保持されることが可能になり粒子は次第に加速される。このことにより、粒子にとって真空室を大きな細い円環にすることができる。実際は、偏向磁石及びいくつかの方向転換部の間にいくつかの直線部分を使用して、角の丸い八角形の形をした円環が容易に実現される。このため、サイクロトロン型の装置の円盤型の室とは異なり、大きな有効半径の経路が単純な直線パイプ要素及び曲がったパイプ要素を使用して構成される。その形状により、粒子ビームを曲げるための多数の磁石の使用が可能にもなり必要にもなる。
【0075】
周回加速器が与え得る最大のエネルギーは、通常、磁場の強度及び粒子経路の最小半径/最大曲率によって制限される。サイクロトロンにおいては、最大半径は粒子が中央でスタートし外側に向かって螺旋状になるので非常に制限され、このため、全体の経路は、自己支持型の円盤形状の真空排気室でなければならない。半径が制限されるので、装置の電力は磁場の強さによって制限される。通常の電磁石の場合においては、すべての磁気領域が並んでいる場合には磁場がそれ以上の実質的な範囲には増加しないので、磁場の強さはコアの飽和によって制限される。磁石の一対の配列によっても、装置のサイズが経済的観点から制限される。
【0076】
シンクロトロンは、非常に小さくて且つより厳格にフォーカスする磁石によって囲まれた細いビームパイプを使用して、これらの制限を解決する。粒子を加速するこの装置の能力は、加速される粒子が荷電されなければならないのは確かであるが、加速された荷電粒子は陽子を放出するのでエネルギーを失うという事実によって、制限される。円形のビーム経路を維持するために必要な横方向の加速で失われたエネルギーが、各周期で加算されたエネルギーと等しくなった時、ビーム・エネルギーは限界に達する。さらに強力な加速器は、大きな半径路を使用することによって、且つ、多くの且つさらに強力なマイクロ波空洞を使用することによって構築されて、コーナーとコーナーとの間の粒子ビームを加速する。電子のようにより軽い粒子は、偏向するときにそのエネルギーの大部分を失う。実用的な観点から言えば、電子/陽電子・加速器のエネルギーはこの半径損失によって制限されるけれども、エネルギーの制限が陽子又はイオンの加速器の力学的な性能に大きな作用を及ぼすものではない。これらのエネルギーは、磁石の強さによって且つコストによって厳しく制限される。
【0077】
(荷電粒子ビーム治療)
この明細書を通じて、陽子ビーム、水素イオン・ビーム、又はカーボン・イオン・ビームなどの、荷電粒子線治療について説明する。この実施形態では、陽子ビームを用いる荷電粒子線治療について説明する。しかしながら、陽子ビームの観点から教示し説明する態様は、陽子ビームの態様に限定されるものではなく、荷電粒子ビーム・システムを説明するためのものである。任意の荷電粒子ビーム・システムも、この実施形態に記載された技術に等しく応用することができる。
【0078】
図1には、荷電粒子ビーム・システム100が示されている。荷電粒子ビーム・システムは、好ましくは、主制御部110、入射システム120、(1)加速器システム132及び(2)抽出システム134を通常有するシンクロトロン130、スキャン/目標/配送システム140、患者インターフェース・モジュール150、表示システム160、及び又は、画像システム170のうち任意のものを有するいくつかのサブシステムを備えている。
【0079】
一実施形態においては、1つ以上のサブシステムがクライアントに収容されている。クライアントは、例えば、パーソナル・コンピュータ、デジタル媒体プレーヤ、パーソナル・デジタル・アシスタント、その他のクライアント装置として動作するために構成されたコンピュータ・プラットホームである。クライアントは、例えば、マウス、キーボード、表示装置、その他のいくつかの外部又は内部の入力装置に接続されるプロセッサを備えている。プロセッサはまた、情報を表示するコンピュータ・モニタ等の出力装置に接続されている。一実施形態においては、主制御部110がプロセッサである。他の実施形態においては、主制御部110は、メモリに格納されてプロセッサによって実行される一組の命令である。
【0080】
クライアントは、コンピュータ読取可能な記憶媒体すなわちメモリを有する。メモリは、コンピュータ読取可能な命令を記憶する電子記憶媒体、光記憶媒体、磁気記憶媒体、若しくは他の記憶媒体、又は、コンピュータ読取可能な命令を有するプロセッサに接続できる送信装置、例えば、タッチ・センサ入力装置と併用されるプロセッサを備えているが、これらに限定されるものではない。適切な媒体の他の実施例には、例えば、フラッシュ・メモリ、CD−ROM、読取専用メモリ(ROM)、ランダム・アクセス・メモリ(RAM)、特定用途向け集積回路(ASIC)、DVD、磁気ディスク、メモリ・チップその他が含まれる。プロセッサは、メモリに記憶された一組の読取可能なプログラム・コードの命令を実行する。その命令は、例えば、C、C++、C#、Visual Basic、Java(登録商標)、及びJavaScriptを含む任意のコンピュータ・プログラミング言語からのコードを有することができる。
【0081】
荷電粒子ビーム・システム100を使用する方法の一実施例を提供する。主制御部110は、1つ以上のサブシステムを制御して、陽子を患者の患部に正確に且つ精密に配送する。例えば、主制御部110は、体及び又は腫瘍の位置などの画像を画像システム170から取得する。また、主制御部110は、位置情報及び又はタイミング情報を患者インターフェース・システム・モジュール150から取得する。次に、主制御部110は、入射システム120を任意に制御してシンクロトロン130の中に陽子を入射する。シンクロトロンは、通常、少なくとも加速システム132及び抽出システム134を有する。主制御部は、好ましくは、例えば、陽子ビームの速度、軌道、及びタイミングを制御することにより、加速システム内の陽子ビームを制御する。次に、主制御部は、抽出システム134によって加速器からの陽子ビームの抽出を制御する。例えば、制御部は、抽出されたビームのタイミング、エネルギー、及び又は強度を制御する。また、制御部110は、好ましくは、スキャン/目標/配送システム140によって、陽子ビームの目標を患者インターフェース・モジュール150にするように制御する。患者インターフェース・モジュール150の1つ以上の要素は、好ましくは、主制御部110によって制御される。さらに、表示システム160の表示要素は、好ましくは、主制御部110を介して制御される。表示スクリーン等の表示要素は、通常、一人以上のオペレータ及び又は一人以上の患者に対して提供される。一実施形態においては、主制御部110は、陽子が最適な治療方法で患者に配送されるように、すべてのシステムからの陽子ビームの配送のタイミングを測る。
【0082】
この実施形態において、主制御部110は、荷電粒子ビーム・システム100を制御する単一のシステム、荷電粒子ビーム・システム100を制御する複数のサブシステムを制御する単一のシステム、又は、荷電粒子ビーム・システム100の1つ若しくは複数のサブシステムを制御する複数の個々の制御部を指す。
【0083】
(シンクロトロン)
この実施形態において、シンクロトロンという用語は、周回経路において荷電粒子ビームを維持するシステムを指すのに使用されるけれども、サイクロトロンは、そのエネルギー、強度、及び抽出制御の固有の限界にもかかわらず、シンクロトロンの代わりに使用される。さらに、この実施形態では、荷電粒子ビームは、シンクロトロンの中央点の周りに周回経路に沿って周回するビームと称される。あるいは周回経路は軌道経路と称されるが、軌道路は完全な円又は楕円を指すものではなく、それはむしろ中央点又は中央領域の周囲の陽子の循環を指すものである。
【0084】
図2は、荷電粒子ビーム・システム100の1つのバージョンの実施例を説明する図である。構成要素の番号、位置、及び記載されたタイプは、説明をするためのものであり、何らこれらに限定されるものではない。図に示された実施形態において、入射システム210又はイオン源又は荷電粒子ビーム源は、陽子を発生する。陽子は、シンクロトロンの中に延びて、そこを通って、そこから出る真空管の中に配送される。発生された陽子は、最初の経路262に沿って配送される。4極磁石又は入射用4極磁石などのフォーカス用磁石230は、陽子ビーム経路をフォーカスするのに使用される。4極磁石は、フォーカス磁石である。入射用偏向磁石232は、陽子ビームをシンクロトロン130の平面の方向に偏向する。初期のエネルギーを持つフォーカスされた陽子は、入射用磁石240の中に誘導され、その入射用磁石は、好ましくは、入射用ラムバーソン磁石である。通常、最初のビーム経路262は、シンクロトロン130の周回面から外れた上側の軸に沿っている。入射用偏向磁石232及び入射用磁石240は組み合わされて、陽子をシンクロトロン130の中に移動する。主偏向磁石250又は双極磁石若しくは周回磁石は、陽子を周回ビーム経路264に沿って向きを変えるのに使用される。双極磁石は偏向磁石である。主偏向磁石250は、最初のビーム経路262を周回ビーム経路264の中に偏向する。この実施例においては、主偏向磁石250又は周回磁石は、4個の磁石の4組として表され、周回ビーム経路264を安定した周回ビーム経路に維持する。しかしながら、任意の数の磁石又は任意の組の磁石が、周回プロセスにおいて単一の軌道の周りに陽子を移動するために任意に使用されてもよい。陽子は、加速器270の中を通り抜ける。加速器は、周回ビーム経路264の中で陽子を加速する。陽子が加速されるときには、磁石によって供給される磁場が増加される。特に、加速器270によって達成される陽子の速度は、主偏向磁石250又は周回磁石の磁場に同期してシンクロトロンの中央点又は中央領域280のまわりで陽子の安定した周回を維持する。周回経路又は軌道の中に陽子を維持する間、加速器270/主偏向磁石250が連携して時分割で使用され、陽子を加速及び又は減速する。予備加速器/偏向器システム290の抽出要素は、ランバーソン抽出磁石292と組み合わせて使用されて、シンクロトロン130内において周回ビーム経路264から陽子を離反させる。偏向器要素の一例がランバーソン磁石である。通常、偏向器は、陽子を周回面から例えばその上方の周回面から外れた軸に移動する。抽出された陽子は、好ましくは、配送路268に沿った4極磁石などの抽出用偏向磁石237及び抽出用フォーカス磁石235を用いて、スキャン/目標/配送システム140の中に導かれ及び又はフォーカスされる。スキャン・システム140又は目標システムの2つの要素は、通常、垂直制御部などの第1の軸制御部142、及び水平制御部などの第2の軸制御部144を有する。一実施形態において、第1の軸制御部142は、陽子ビーム268の垂直又はy軸の約100mmをスキャンすることが可能であり、第2の軸制御部144は、陽子ビーム268の水平又はx軸の約700mmをスキャンすることが可能である。ノズル・システム146は、陽子ビームの像を作るのに使用され、及び又は、シンクロトロンの低圧ビーム経路と大気圧との間の真空障壁として使用される。制御によって配送された陽子は、患者インターフェース・モジュール150及び患者の腫瘍に配送される。上記に掲げたすべての要素は任意のものであり、種々の置き換え及び組合せにおいても使用することができる。
【0085】
(イオン・ビーム発生システム)
イオン・ビーム発生システムは、水素陰イオンすなわちHビームなどの陰イオン・ビームを発生し、好ましくは、その陰イオン・ビームをフォーカスし、その陰イオン・ビームを陽子又はHビームなどの陽イオン・ビームに変換し、その陽イオン・ビームをシンクロトロン130の中に照射する。イオン・ビーム経路の陽子は、好ましくは、軽度の真空のもとにある。以下、これらのシステムの各々について説明する。
【0086】
図3には、イオン・ビーム発生システム300の一実施例が示されている。図に示すように、イオン・ビーム発生システム300は、4個の主要な要素として、陰イオン源310、第1の部分真空システム330、任意の陰イオン・フォーカス・システム350、及び2連型加速器390を有する。
【0087】
図3において、陰イオン源310は、好ましくは、高温プラズマ室314の中に水素ガスを入射するための入力口312を有する。一実施形態において、プラズマ室は磁性材料316を有し、その磁性材料は高温プラズマ室314とその反対側の低温プラズマ領域との間に磁場障壁317を設けている。抽出パルスは、陰イオン抽出電極318に印加されて、陰イオン・ビーム経路319の中に陰イオン・ビームを引き出す。その陰イオン・ビームは、第1の部分真空システム330の中に進み、イオン・ビーム・フォーカス・システム350の中を通って、2連型加速器390の中に進む。
【0088】
図3において、第1の部分真空システム330は、水素ガスの入力口312から2連型加速器390の変換箔395に延びる密閉されたシステムである。箔395は、箔395の第1の部分真空システム330側に維持される約10−5トール(torr)などの高圧、及び、箔390のシンクロトロン側に印加される約10−7トールなどの低圧を提供する真空管320の端に直接的又は間接的に封止されている。第1の部分真空システム330を励起し、且つ、センサの読取に基づいてイオン・ビーム源真空を半連続的に動作させるだけで、半連続的に動作するポンプの寿命が延びる。以下、センサの読取についてさらに説明する。
【0089】
図3において、第1の部分真空システム330は、好ましくは、連続的に動作されるポンプ及び又はターボ分子ポンプなどの第1のポンプ332、大容積保持体334、及び半連続的に動作されるポンプ336を有する。ポンプ制御部340は、好ましくは、大容積保持体334内の圧力を監視する圧力センサ342から信号を受信する。大容積保持体334において十分な圧力を表す信号を受信したときは、ポンプ制御部340はアクチュエータ345に指示して大容積保持体と半連続的動作ポンプ336との間のバルブ346を開けさせ、且つ、半連続的動作ポンプに指示して残留媒体ガスを荷電粒子の流れのまわりの真空ライン320の外に排気させる。この方法において、半連続的動作ポンプの寿命は、必要に応じて半連続的に動作させるだけで延びる。一実施例において、半連続的動作ポンプ336は、4時間ごとに5分間などのように、数時間ごとに数分間動作すると、これにより約2,000時間のポンプの寿命が約96,000時間に延びる。
【0090】
さらに、シンクロトロン真空システムから入力ガスを分離することにより、ターボ分子ポンプなどのシンクロトロン真空ポンプは、シンクロトロン真空ポンプが処理するガス分子が少なくなるので、長い寿命で動作することができる。例えば、入力ガスは主として水素ガスであるが、二酸化窒素及び二酸化炭素などの不純物を含んでいることもある。陰イオン源システム310、第1の部分真空システム330、イオン・フォーカス・システム350、及び2連型加速器390側の陰イオン・ビームにおける入力ガスを分離することによって、シンクロトロン真空ポンプは低圧で長時間動作することができ、これによりシンクロトロン130の効率が向上する。
【0091】
図3において、イオン・ビーム・フォーカス・システム350は、1つ以上の電極を有し、各電極対の1つの電極は導電メッシュなどの導電路372でイオン・ビーム経路を部分的に遮蔽する。図に示す例においては、2電極イオン・フォーカス部360、第1の3電極イオン・フォーカス部370、及び第2の3電極イオン・フォーカス部380の3つのイオン・ビーム・フォーカス・システム部が示されている。所定の電極対において、電場線は、第1の電極及び第2の電極の導体メッシュの間に延びて、陰イオン・ビームをフォーカスする内向きの力を与える。このような多数の電極対は、多数の陰イオン・フォーカス領域を実現する。好ましくは、2電極イオン・フォーカス部360、第1の3電極イオン・フォーカス部370、及び第2の電極イオン・フォーカス部380は、陰イオン源の後、且つ、2連型加速器の前に配置され、及び又は、イオン・ビーム経路に沿って約0.5、1、又は2メートルの空間を覆う。イオン・ビーム・フォーカス・システムについては、さらに後述する。
【0092】
図3において、2連型加速器390は、好ましくは、カーボン箔などの箔395を有する。陰イオン・ビーム経路319における陰イオンは、陽子などの陽イオンに変換されて、その結果、最初のイオン・ビーム経路262が生じる。箔395は、好ましくは、陰イオン・ビーム経路319を有する箔395の側に維持される約10−5トールなどの高圧、及び、陽子イオン・ビーム経路262を有する箔390の側に維持される約10−7トールなどの低圧を提供する真空管320の端に直接的又は間接的に封止されている。2つの圧力領域の中で真空室320を物理的に分離する箔395を有することにより、より少数及び又はより小型のポンプを有するシステムにとって、入力水素及びその残留が分離した密閉され且つ分離された空間の中で第1の部分真空システム330によって抽出されるので、シンクロトロン130の中で低圧システムを維持することが可能になる。
【0093】
再び図1を参照して、荷電粒子ビーム・システム100を使用する他の実施例について説明する。主制御部110又は1つ以上の副制御部は、患者の腫瘍に陽子を正確且つ精密に配送するために、1つ以上のサブシステムを制御する。例えば、主制御部は、患者にメッセージを送信して呼吸をいつするか又はどのようにするかを指示する。主制御部110は、対象が呼吸を繰り返している状態を示す温度呼吸センサ又は力呼吸センサの読取など、患者インターフェース・モジュールからのセンサの読取を取得する。主制御部は、画像システム170から体及び又は腫瘍の位置などの画像を収集する。また、主制御部110は、患者インターフェース・モジュール150から位置情報及び又はタイミング情報を取得する。次に、主制御部110は、入射システム120を任意に制御して、陰イオン・ビーム源310の中に水素ガスを入射し、陰イオン・ビーム源310からの陰イオンの抽出のタイミングを制御する。主制御部は、イオン・ビーム・フォーカス・レンズ・システム350、2連型加速器390による陽子ビームの加速、及び又は、シンクロトロン130の中への陽子の入射を用いて、イオン・ビーム・フォーカスを任意に制御する。シンクロトロンは、通常、少なくとも加速器システム132及び抽出システム134を備えている。シンクロトロンは、1つ以上の方向転換磁石、エッジ・フォーカス磁石、磁場収束磁石、巻線磁石及び補正磁石、及び平坦磁場入力面を有することが好ましく、それらのいくつかは主制御部110によって制御される要素を含んでいる。主制御部は、例えば、陽子ビームの速度、軌道、及び又はタイミングを制御することによって、加速器システム内の陽子ビームを制御することが好ましい。次に、主制御部は、抽出システム134によって加速器からの陽子ビームの抽出を制御する。例えば、制御部は、抽出されたビームのタイミング、エネルギー、及び又は強度を制御する。また、主制御部110は、目標/配送システム140によって患者インターフェース・モジュール150への陽子ビームの目標を制御することが好ましい。患者インターフェース・モジュール150の1つ以上の要素、例えば、患者の垂直位置、患者の回転位置、及び患者の椅子の位置/安定/制御部品は、主制御部110によって制御されることが好ましい。さらに、表示システム160の表示要素は、主制御部110を介して制御されることが好ましい。表示スクリーンなどの表示装置は、一般的には一人以上のオペレータ及び又は一人以上の患者に提供される。一実施形態においては、主制御部110は、すべてのシステムからの陽子ビームの配送の時間を調整するので、陽子は最適な治療方法で患者に配送される。
【0094】
(周回システム)
シンクロトロン130は、直線部410及びイオン・ビームの方向転換部420を備えることが好ましい。したがって、陽子の周回経路は、シンクロトロンの中の円というよりも、むしろ角が丸い多角形である。
【0095】
一実施形態においては、シンクロトロン130は、加速器システムと同じものを意味することもあり、4個の直線部及び4個の方向転換部を有する。直線部410の実施例は、予備加速器240、加速器270、抽出システム290、及び偏向器292を備えている。4個の直線部に加えてイオン・ビームの方向転換部420があり、それは磁石部又は方向変換部を意味することもある。方向転換部についてはさらに後述する。
【0096】
図4を参照して、シンクロトロンの例について説明する。この実施例においては、最初の陽子ビーム経路262に沿って配送された陽子は、周回ビーム経路の中で予備加速器240によって予備加速されて、加速後は偏向器292を介してビーム搬送路268に抽出される。この実施例においては、シンクロトロン130は、4個の直線部410及び4個の方向転換部420を備え、4個の方向転換部420の各々は、1つ以上の磁石を使用して陽子ビームを約90度偏向する。さらに後で説明するように、方向変更部の間隔を小さくできること及び陽子ビームを効率的に偏向できることで、より短い直線部が実現する。直線部を短くすることで、シンクロトロンの周回経路内にフォーカス4極磁石を使用せずに、シンクロトロンの設計をすることができる。周回陽子ビーム経路からフォーカス4極磁石を取り除く結果、さらに小型の設計ができる。この実施例においては、図示されたシンクロトロンは、周回経路内にフォーカス4極磁石を使用しているシステムが8メートルの直径及び大きな断面直径を持っているのに対して、約5メートルの直径を持っている。
【0097】
参照する図5においては、第1の方向転換部420のさらに詳細な図が示されている。各方向転換部は、約2、4、6、8、10、又は12個の磁石のように多数の磁石を有することが好ましい。この実施例において、第1の方向転換部420における4個の方向転換磁石510、520、530、540は、基本的な原理を示すのに使用されており、各方向転換部420における磁石の使用個数は同じである。方向転換磁石510は、主偏向磁石又は周回磁石250の特定のタイプである。
【0098】
物理学においては、ローレンツ力は、電磁場の作用で点荷電に働く力である。ローレンツの力は、電場の用語を含まずに磁場の用語で式1によって与えられる。
F=q(v×B) (1)
式1において、Fは力で単位はニュートン、Bは磁場で単位はテスラ、vは瞬間速度で単位はメートル/秒である。
【0099】
図6においては、単一磁石偏向又は方向転換部510の一実施例が拡大して示されている。方向転換部は、陽子が中を周回するギャップ610を有する。ギャップ610は、ギャップ610にかかる磁場が均一、平坦、強力になるように、平らなギャップであることが好ましい。磁場は磁場入射面を通ってギャップ610に入り、磁場出力面を通って出る。ギャップ610は、半分の2つの磁石の間の真空管の中に延びている。ギャップ610は、少なくとも2つのパラメータ、すなわち、(1)陽子の損失を最小にするためギャップ610ができるだけ大きく保たれるパラメータ、及び(2)磁石サイズ及び関連する物のサイズ及び磁石に供給する必要電力を最小にするためギャップ610ができるだけ小さく保たれるパラメータ、によって規制される。ギャップ610の平らな性質によって、ギャップ610を横断する磁場を圧縮されたより均一なものにできる。ギャップの一実施例は、大きさが約2cmの垂直ビームので、大きさが約5乃至6cmの水平ビームを収容する寸法になっている。
【0100】
上述したように、ギャップサイズが大きいほど、より大きな電力供給が必要になる。具体的には、ギャップ610の垂直のサイズが2倍になると、必要な電力供給は約4倍に増加する。ギャップ610の平坦さも重要である。例えば、ギャップ610の平らな性質は、抽出された陽子のエネルギーが約250から330MeVまで増加できる。特に、ギャップ610が極めて平らな表面を持つならば、鉄の磁石の磁場は限界に達し得る。ギャップ610の表面を極めて高精度にする一実施例では、約5ミクロンより小さく、約1乃至3ミクロンの研磨が好ましい。表面が不均一の場合には、供給される磁場に不具合が生じる。研磨された平らな表面は、供給される磁場の不均一を緩和する。
【0101】
図6において、荷電粒子ビームは、ギャップ610を通って瞬間速度vで移動する。第1の磁気コイル620及び第2の磁気コイル630は、それぞれギャップ610の上側及び下側に延びている。電流がコイル620、630の中を流れると、単一磁石方向転換部510を通って延びる磁場Bを発生する。この実施例においては、磁場Bは上方に延びて、荷電粒子ビームをシンクロトロンの内側の中央点に向けて押す力Fを発生して、荷電粒子ビームを円弧の形に偏向する。
【0102】
さらに、図6には、別の第2の磁石偏向又は方向転換部520の一部が示されている。コイル620、630は、通常、第1の磁石方向転換部510の端などの1つの磁石の端に、折り返し部分640、650又は屈曲部を有する。屈曲部640、650は空間を必要とする。その空間は、方向転換磁石によって覆われるシンクロトロンの1つの軌道のまわりの経路の割合を低下させる。このことは、陽子が偏向又はフォーカスされない周回経路の部分をもたらし、陽子経路がデフォーカスする周回経路の部分を生じることになる。このため、その空間は大きなシンクロトロンを生じる結果になる。したがって、磁石方向転換部660の間の空間は、小さくすることが好ましい。2、3、4、5、6個、又はそれ以上の磁石などの複数の磁石に沿って任意に延びるコイル620、630を説明するために、第2の方向転換磁石が使用される。多数の方向転換部磁石にわたって延びるコイル620、630によって、方向転換部の立体構造の制約を取り除き、空間的に互いに接近して2つの偏向磁石を配置できるので、2つの方向転換部磁石の間の空間660を低減化及び又は最少化できる。
【0103】
図7及び図8には、単一磁石偏向又は方向転換部510の断面を90度回転した2つの図が示されている。図8を参照すると、磁石アセンブリは、第1の磁石810及び第2の磁石820を有する。コイルによって誘発された磁場は、後述するように、ギャップ610を横断して第1の磁石810と第2の磁石820との間に延びる。戻りの磁場は、第1のヨーク812及び第2のヨーク822の中を延びる。戻りヨークの組み合わされた断面領域は、第1の磁石810又は第2の磁石820の断面領域とほぼ同じである。荷電粒子ビームは、ギャップ610における真空管を通過する。すでに説明したように、図8において、陽子はギャップ610及び磁場の中を通って進み、ベクトルBは陽子に力Fを与えて、シンクロトロンの中央に向かって陽子を押し出すが、これは図8において右側の頁の外になっている。磁場は、巻線を用いて生成される。第1のコイルは第1の巻線コイル850を構成し、第2のコイルは第2の巻線コイル860を構成する。空気のギャップなどの、分離用又は収束用ギャップ830、840は、鉄基材のヨークをギャップ610から分離する。ギャップ610は、上述したように、ギャップ610にわたって均一な磁場を発生させるために、ほぼ平らになっている。
【0104】
図7において、単一偏向又は方向転換磁石の両端は、面取りがされていることが好ましい。方向転換磁石510のほぼ直角のエッジは、破線774、784によって表されている。破線774、784は、シンクロトロンの中心280を過ぎて点790で交差する。方向転換磁石のエッジは、角度アルファα及び角度ベータβで面取りされていることが好ましく、角度アルファ及び角度ベータは、方向転換磁石510及び中心280から延びる第1の線772、782、及び、同じ方向転換磁石のエッジ及び交差点790から延びる第2の線774、784によって形成される。角度アルファはその効果を記述するために用いられ、角度アルファの記述は角度ベータに適用するが、角度アルファは角度ベータとは異なる任意の角度でもよい。角度アルファは、エッジ・フォーカス効果を実現する。方向転換磁石510のエッジを角度アルファで面取りすることで、陽子ビームをフォーカスする。
【0105】
多数の方向転換磁石は、シンクロトロン130において各々がエッジ・フォーカス効果を有する多数の方向転換磁石エッジを実現する。方向転換磁石が1つだけ使用された場合には、ビームは角度アルファで1回又は角度アルファ及び角度ベータで2回だけフォーカスされる。しかしながら、より小さな方向転換磁石を用いることによって、さらに多くの方向転換磁石がシンクロトロン130の方向転換部420の中に収まる。例えば、4個の磁石がシンクロトロンの方向転換部420の中に使用された場合には、単一の方向転換部において、1個の磁石に対して2つのエッジにより、8個のエッジ・フォーカス効果面が可能になる。8個のフォーカス面は、より小さな断面ビームサイズをもたらす。このことは、より小さなギャップ610の使用を可能にする。
【0106】
方向転換磁石においてマルチ・エッジ・フォーカス効果を使用することにより、より小さなギャップ610を実現するだけでなく、より小さな磁石及びより小さな電力供給も実現できる。各方向転換部が4個の方向転換磁石を有し、且つ、各方向転換磁石が2つのエッジを有する方向転換磁石を4個備えるシンクロトロン130においては、シンクロトロン130の周回経路の中の陽子の各軌道に対して、合計32のフォーカス・エッジが存在する。同様に、2、6、又は8個の磁石が所定の方向転換部に使用され、又は、2、3、5、若しくは6個の方向転換部が使用された場合には、エッジ・フォーカス面の数は、式2に応じて拡大又は縮小する。
TFE=NTS*(M/NTS)*(FE/M) (2)
ここで、TFEはフォーカス・エッジの数、NTSは方向転換部の数、Mは磁石の数、FEはフォーカス・エッジの数である。もちろん、すべての磁石が面取りされる必要はなく、いくつかの磁石は1つのエッジだけを任意に面取りをしてもよい。
【0107】
発明者らは、多数のより小さな磁石が、少数のより大きな磁石よりも利益があることを突き止めた。例えば、4個の大きな磁石を使用した場合には8フォーカス・エッジしかもたらさないのに対して、16個の小さな磁石を使用した場合には32フォーカス・エッジをもたらす。さらに多くのフォーカス・エッジを有するシンクロトロンは、フォーカス4極磁石を使用しなくても、シンクロトロンの周回経路をつくることができる。従来技術のすべてのシンクロトロンは、シンクロトロンの周回経路に4極磁石を使用している。さらに、周回経路において4極磁石を使用した場合には、シンクロトロンの周回経路に直線部を追加する必要がある。このため、シンクロトロンの周回経路に4極磁石を使用することは、その結果、より大きな直径、周回ビーム経路長、及び又はより大きな円周を有するシンクロトロンになってしまう。
【0108】
この明細書に記載されたシステムの様々な実施形態において、シンクロトロンは以下の任意の組合せを備えている。
・4つの方向転換部を有するシンクロトロンにおける荷電粒子ビームの90度の方向転換部ごとに少なくとも4個、好ましくは6、8、10個、又はそれ以上のエッジのフォーカス・エッジ、
・シンクロトロンにおける荷電粒子ビームの軌道ごとに少なくとも約16個、好ましくは24、32個、又はそれ以上のエッジ・フォーカス・エッジ、
・少なくとも4個、好ましくは8個のエッジ・フォーカス・エッジを各方向転換部が有する4個だけの方向転換部、
・同数の直線部及び方向転換部、
・正確に4個の方向転換部、
・方向転換部ごとに少なくとも4個のエッジ・フォーカス・エッジ、
・4極磁石を有しないシンクロトロンの周回経路、
・丸い角の多角形の構造、
・60メートル未満の円周、
・60メートル未満の円周及び32個のフォーカス・エッジ面、及び又は
・シンクロトロンの各周回経路においてフォーカス・エッジのエッジを有しない4極磁石からなる約8、16、24、又は32個の4極磁石を持たない構造。
【0109】
図8を参照して、第1の磁石810の入射磁場面870についてさらに説明する。図8は、目盛りがなく、基本的なものを示している。入射面870の仕上げの質の局部的な不具合又は不均一は、ギャップ610に加えられる磁場に不均質又は不具合を生じる結果となる。入射面870は、好ましくは、平らであり、例えば、約0から3ミクロンの仕上げ研磨の範囲内、あるいは10ミクロン未満の仕上げ研磨の範囲内であることが好ましい。
【0110】
図8を参照して、追加される磁石要素について説明する。第1の磁石810は、鉄基材コアの第1の断面距離890を有することが好ましい。磁場の外周は、磁石810、820及びヨーク812、822によって共有されている。鉄基材コアは、第2の断面距離892に向かってテーパー状になっている。磁石内の磁場は、ギャップ830、840に対向するように、鉄基材コア内に偏った状態で存在している。断面距離が最初の断面距離890から第2の断面距離892へと小さくなっているので、磁場は収束する。磁石の形状が長い距離890から短い距離892に変化することで、増幅器として働くことになる。磁場の収束は、最初の断面距離890における磁場ベクトル894の密度から、最後の断面距離892における磁場ベクトル896の高い密度に至ることで表現されている。磁場の収束は、方向転換磁石の形状で決まるので、巻線コイル850、860の数をより少なくすることが要求され、コイルに対する電力供給も小さくすることが要求される。
【0111】
一実施例においては、最初の断面距離890は、約15cmであり、最後の断面距離892は、約10cmである。その与えられた数値を用いると、磁場の収束は、ギャップ610の入射面870において約15/10又は1.5倍であるが、その関係はリニアではない。テーパー842は、約20、40、又は60度の傾斜を持っている。例えば1.5倍の磁場の収束は、その分だけ磁石に必要な電力消費の減少を実現する。
【0112】
図8において、第1の磁石810は、鉄基材コアの第1の断面距離890を有することが好ましい。磁場の外周は、磁石810、820及びヨーク812、822によって共有されている。この実施例においては、コアは、小さい角度θで第2の断面距離1420に向かってテーパー状になっている。上述したように、磁石内の磁場は、ギャップ830、840に対向するように、鉄基材コア内に偏った状態で存在している。断面距離が最初の断面距離890から最後の断面距離892へと小さくなっているので、磁場は収束する。角度θが小さくなればなるほど、長い距離890から短い距離892に進む磁場の増幅は次第に大きくなる。磁場の収束は、第1の断面距離890における磁場ベクトル894の最初の密度から、第2の断面距離892における磁場ベクトル896の収束された密度に至ることで表現されている。磁場の収束は、方向転換磁石の形状で決まるので、巻線コイル850、860の数をより少なくすることが要求され、巻線コイル850、860に対する電力供給もより小さくすることが要求される。
【0113】
図8において、1つ以上の方向転換磁石の強度を補正するのに使用される追加のコイル852、862が示されている。補正コイル852、862は、巻線コイル850、860を補うものである。補正コイル852、862は、巻線コイル850、860で使用される巻線コイルの電力供給から分離している補正コイル電源を有する。補正コイルの電源は、巻線コイルの電源と比較すると、それに必要な電源のほんの何分の1、例えば、その電源の約1、2、3、5、7、又は10%で、約1又は2%で動作が可能であることが好ましい。補正コイル852、862に供給される動作電力が小さくなればなるほど、補正コイルをさらに正確及び又は精密に制御することが可能になる。補正コイルは、方向転換磁石510、520、530、540における不具合を調整するのに使用される。分離した補正コイルは、各方向転換磁石に対して任意に使用されて、各方向転換磁石に対する磁場の個々の方向転換ができるので、各方向転換磁石の製造における品質要求を容易に叶えることができる。
【0114】
図9には、イオン・ビームの方向転換部420における複数の方向転換磁石510、520、530、540のまわりの巻線コイル及び補正コイルの一実施例が示されている。1つ以上の高精密部材は、シンクロトロンの中に配置されて、陽子ビーム経路において又はその近傍で磁場を測定するのに使用される。例えば、磁気センサ950は、ギャップ610若しくはその近傍又は磁石若しくはヨーク若しくはその近傍など、方向転換磁石の間又は方向転換磁石の内部に任意に配置される。センサは、補正コイルに対するフィードバック・システムの一部である。このため、システムは、好ましくは、磁石に供給される電流を安定化するというよりむしろ、シンクロトロンの要素における磁場を適切に安定化する。磁場の安定化によって、シンクロトロンは新たなエネルギーレベルに迅速に到達できる。このことにより、システムは、オペレータ又はアルゴリズムによって、シンクロトロンの各パルス及び又は患者の各呼吸によって選択されたエネルギーレベルを制御する。
【0115】
巻線コイル及び又は補正コイルは、1、2、3、又は4個の方向転換磁石を補正し、好ましくは、2つの方向転換磁石によって発生される磁場を補正する。多数の磁石をカバーする巻線コイル又は補正コイルによって、巻線コイル又は補正コイルの両端が少なくなり、両端が占有する必要な空間すなわち磁石の間の空間を小さくする。
【0116】
図10(A)及び図10(B)には、高周波(RF)加速システムなどの加速システム270がさらに示されている。その加速器は、鉄コイル又はフェライト・コイルなどの一連のコイル1010乃至1019を備え、各コイルが、シンクロトロン130において陽子ビーム264が中を通過する真空システム320を円周状に取り囲む。図10(B)を参照して、第1のコイル1010についてさらに説明する。基準巻線1030のループは、第1の巻線1010について少なくとも1回の折り返し(ターン)を完成する。そのループはマイクロ回路1020に接触する。図10(A)において、RFシンセサイザ1040は、好ましくは、主制御部110に接続されており、陽子ビーム経路264における陽子の周回の周期に同期される低電圧RF信号を提供する。RFシンセサイザ1040、マイクロ回路1020、ループ1030、及びコイル1010は結合して、陽子ビーム経路における陽子に対して加速電圧を与える。例えば、RFシンセサイザ1040がマイクロ回路1020に信号を送ると、マイクロ回路がその低電圧のRF信号を増幅し、約10ボルトのような加速電圧を出力する。単一のマイクロ回路/ループ/コイルの組合せによる実際の加速電圧は、約5、10、15、又は20ボルトであるが、好ましくは、約10ボルトである。好ましくは、RF増幅マイクロ回路及び加速コイルは、統合される。
【0117】
図10(B)に提示された統合されたRF増幅マイクロ回路及び加速コイルは、図10(A)において繰り返され、真空管320を取り囲む一組のコイル1010乃至1019として示されている。例えば、RFシンセサイザ1040は、主制御部130の支持に従って、コイル1010乃至1019に接続されているマイクロ回路1020乃至1029に対してそれぞれ信号を送る。マイクロ回路/ループ/コイルの組合せの各々は、約10ボルトなどの陽子加速電圧を発生する。したがって、5組のコイルの組合せは、陽子加速のための約50ボルトの電圧を発生する。好ましくは、約5乃至20個のマイクロ回路/ループ/コイルの組合せが、さらに好ましくは、約9乃至10個のマイクロ回路/ループ/コイルの組合せが、加速器システム270に使用される。
【0118】
さらに明確な実施例として、RFシンセサイザ1040が、シンクロトロン130のまわりにおける陽子の周回の周期と同一の周期で、RF信号を10組のマイクロ回路/ループ/コイルの組合せに送るならば、その結果、陽子ビーム経路264における陽子の加速のために約100ボルトを供給することになる。低エネルギーの陽子ビームについて約1MHzなどの周波数の範囲に対して100ボルトが発生されると、約15MHzの高エネルギーの陽子ビームが生じる。RF信号は、シンクロトロンの周回経路のまわりの陽子の周回の周期の任意の整数倍に設定される。マイクロ回路/ループ/コイルの組合せの各々は、加速電圧及び周波数に関して任意に独立して制御される。
【0119】
各マイクロ回路/ループ/コイルの組合せにおいて、RFマイクロ回路及び加速コイルを統合することによって、3つの多大な利点が得られる。第1に、従来の技術は、シンクロトロンにおいて、対応する一組のコイルに電力を供給するために、加速コイルと統合されたマイクロ回路を使用せずに、一組の長いケーブルを使用している。長いケーブルにはインピーダンス/抵抗があるので、高周波のRF制御用としては問題がある。この結果、従来技術のシステムは、例えば、約10MHzを超える高周波では動作できない。RF増幅マイクロ回路/加速コイルを統合したシステムは、約10MHzを超える場合でも動作が可能であり、従来技術のシステムにおける長いケーブルのインピーダンス及び又は抵抗のために、陽子加速の制御不良又は制御不能が生じる15MHzの場合であっても動作が可能である。第2に、長いケーブルのシステムは、低い周波数で動作する場合でも、約50,000ドルのコストがかかるが、統合されたマイクロ回路のシステムは、約1,000ドルのコストしかかからず、50倍のコストダウンになる。第3に、RF増幅器と連携したマイクロ回路/ループ/コイルの組合せは、小型で低消費電力の製造が可能な設計をもたらすと共に、上述したように、小さい空間で陽子癌治療システムを使用でき、また、経済的に優れた方法で使用できる。
【0120】
図11は、フィードバック・ループ1100を用いて磁場制御を明確にして、配送時間及び又は陽子パルス配送の間隔を変更する一実施例である。1つ場合においては、呼吸センサ1110は、患者の呼吸の周期を感知する。呼吸センサは、通常、患者インターフェース・モジュール150を介して、及び又は、主制御部110若しくはその副制御部を介して、磁場制御部1120のアルゴリズムに情報を送信する。アルゴリズムは、患者が呼吸の周期において、呼吸の底などの特異なポイントになるときを予測し及び又は測定する。磁場センサ1130は、磁場制御部への入力として使用され、シンクロトロン130の第1の方向転換磁石内などの所定の磁場1150に対する磁気電力供給1140を制御する。制御フィードバック・ループは、このように選択されたエネルギーレベルをシンクロトロンにダイヤルするのに使用され、また、呼吸が底の時などの選択された時点の時間内に、所望のエネルギーレベルで陽子を配信するのに使用される。特に、主制御部は、シンクロトロンの中に陽子を入射し、呼吸の周期における選択された時点で陽子を腫瘍に配送する抽出と組み合わせた方法において、その陽子を加速する。陽子ビームの強度もこの段階で主制御部によって選択可能になり、制御可能になる。補正コイルに対するフィードバック制御によって、患者の呼吸の周期に連動したシンクロトロンのエネルギーレベルの迅速な選択が可能になる。このシステムは、電流が一定の値に安定化され、且つ、固定した周期で1秒間に10又は20サイクルのように、1つの周期でシンクロトロンがパルスを配送するようなシステムとは、全く対照的である。補正コイルと結合されたフィードバック又は磁場の任意の設計によって、抽出の周期を患者の呼吸の変化速度に合わせたが可能になる。
【0121】
従来の抽出システムがこの制御をすることができないのは、正弦波の大きさ及び増幅の双方に関するメモリを磁石が持っているからである。したがって、従来のシステムにおいては、周波数を変更するために、電流の緩やかな変化を採用しなければならない。これにひきかえ、磁場センサを用いたフィードバックを使用する場合には、シンクロトロンの周波数及びエネルギーレベルを素早く調整することができる。さらに、この処理を支援することで、後述するように、抽出処理の期間中に陽子の加速ができる新しい抽出システムを使用できる。
【0122】
<実施例III>
再び図9を参照すると、2つの方向転換磁石510、520を覆う巻線コイル930の一実施例が示されている。あるいは任意に、第1の巻線コイル940が1つの磁石を覆い、又は第2の巻線コイル920が2つの磁石510、520を覆ってもよい。上述したように、このシステムは、方向転換部の間の空間を小さくして、方向転換の角度ごとにさらに多くの磁場を供給する。第1の補正コイル910は、第1の方向転換磁石510に対する磁場を補正するのに使用されることを示している。第2の補正コイル920は、2つの方向転換磁石のまわりの巻線コイル930に対する磁場を補正するのに使用されることを示している。各方向転換磁石に対する個々の補正コイルは、各方向転換部において最も精密な及び又は最も正確な磁場を発生させるのに好適な個々の補正コイルである。特に、個々の補正コイル910は、所定の方向転換部の個々の磁石の不具合を補償するのに使用される。したがって、磁場監視システムにおける一連の磁場センサによれば、独立したコイルが各方向変更部に対して使用されるので、対応する磁場は一連のフィードバック・ループにおいて個々に調整できる。あるいは、他の実施例においては、多数の磁石補正コイルは、複数の方向転換部磁石に対する磁場を補正するのに使用される。
【0123】
(平らなギャップ表面)
第1の方向転換磁石510の観点からギャップ表面を説明しながら、シンクロトロン内の方向転換磁石の各々について説明する。同様に、磁場入射表面670の観点からギャップ610を説明しながら、磁場出射表面680について追加的に任意に説明する。
【0124】
第1の磁石810の磁場入射表面870はほぼ平坦であることが好ましく、例えば、ほぼ0から3ミクロンの仕上げ研磨又は約10ミクロン未満の仕上げ研磨であることが好ましい。極めて平坦にすることによって、研磨された表面は、ギャップ610を横断して供給される磁場の不均一性を解消する。約0、1、2、4、6、8、10、15、又は20ミクロンの仕上げ表面などの極めて平坦な表面によって、ギャップサイズをより小さくすること、供給される磁場をより小さくすること、供給電力をより小さくすること、及び、陽子ビームの断面面積をより厳密に制御することを可能にする。磁場出射表面880も、平坦であることが好ましい。
【0125】
(陽子ビーム抽出)
図12には、シンクロトロン130からの陽子抽出処理の一実施例が示されている。明確にするために、図12では、図2に示した方向転換磁石などの要素を取り除くことで、時間の関数としての陽子ビーム経路の表現を非常に明確にすることができる。一般的には、陽子を遅くすることにより、シンクロトロン130から陽子が抽出される。上述したように、陽子は周回経路264の中で最初に加速されて、複数の主偏向磁石250によりその加速された陽子が維持される。周回経路は、この実施形態では最初の中心のビームライン264と呼ばれる。陽子は、シンクロトロンの中心280のまわりを繰り返し周回する。陽子経路は、高周波(RF)空洞システム1210の中で向きを変える。抽出を開始するために、RF空洞システム1210において、第1の羽根1212及び第2の羽根1214にわたってRF磁場が供給される。第1の羽根1212及び第2の羽根1214は、この実施形態では第1の対の羽根と呼ばれる。
【0126】
陽子抽出処理においては、第1の対の羽根にわたってRF電圧が供給され、そこでは第1の対の羽根の第1の羽根1212は周回陽子ビーム経路264の一方の側にあり、第1の対の羽根の第2の羽根1214は周回陽子ビーム経路264の反対側にある。供給されたRF磁場は、周回する荷電粒子ビームに対してエネルギーを与える。供給されたRF磁場は、軌道又は周回ビーム経路をわずかに変更して、最初の中心のビームライン264から周回ビーム経路265にする。RF空洞システムの中で陽子が第2の経路に移動すると、RF磁場は、最初のビームライン264からはずれた陽子をさらに移動する。例えば、最初のビームラインが円形の経路であるとすると、変更されたビームラインはわずかに楕円形の経路になる。供給されるRF磁場はタイミングを合わせて、シンクロトロン加速器の中で周回する陽子の所定の軌道を内側又は外側に移動させる。陽子の各軌道は、最初の周回ビーム経路264と比べて少しずつさらに外れた軸になっている。RF空洞システムを通る陽子の連続する通過は、RF磁場を通る陽子ビームの連続する各通過に伴って、RF磁場の方向及び又は強度を変更することによって、最初の中心のビームライン264から次第に移動を強いられる。
【0127】
RF電圧は、1回の回転に対してシンクロトロンのまわりを周回する1つの陽子の周期にほぼ等しい周波数で周波数変調されるか、又は、シンクロトロンのまわりを周回する1つの陽子の周期の積分乗算器よりも高い周波数で周波数変調される。供給されたRF周波数変調電圧は、ベータトロン振動を励起する。例えば、その振動は陽子の正弦波の動きになっている。RF空洞システム内の所定の陽子ビームに対するRF磁場タイミングの処理は、陽子が最初の中心ビームライン264からさらにほぼ1マイクロメーター離れて動く連続する各通過で数千倍繰り返される。明確にするために、RF磁場を通る陽子の所定の軌道の連続する各経路と共にほぼ1000回変化するビーム経路が、変更されたビーム経路265として図示されている。
【0128】
正弦波のベータトロンの十分な振幅がある場合には、変更された周回ビーム経路265は、箔又は箔のシートなどの部材1230に接触する。箔は、軽量の材料、例えば、ベリリウム、水素化リチウム、カーボン・シート、又は低い核電荷の物質であることが好ましい。低い核電荷の物質は、実質的には6個又はそれより少ない個数の陽子を持つ原子で構成された物質である。箔は、好ましくは、約10乃至150ミクロンの厚さであり、さらに好ましくは、30乃至100ミクロンの厚さであり、さらにいっそう好ましくは、40乃至60ミクロンの厚さである。一実施例では、箔は、約50ミクロンの厚さのベリリウムである。陽子が箔の中を通り抜けると、陽子のエネルギーが失われ、陽子の速度が低下される。後述するように、通常、電流も発生される。低速度で動く陽子は、最初の中央ビームライン264又は変更された周回経路265のいずれかと比べて、小さくなった曲率半径266でシンクロトロン内を移動する。小さくなった曲率半径266の経路についても、ここでは、より小さい直径の軌道を有する経路又は低エネルギーの陽子を有する経路という。小さくなった曲率半径266は、通常、変更された陽子ビーム経路265に沿った陽子の最後の通過の曲率半径よりも約2ミリメートル小さい。
【0129】
部材1230の厚さは、曲率半径における変化が、例えば、陽子の最後の通過路265又は最初の曲率半径264よりも約1/2、1、2、3、又は4mm小さく形成されるように任意に調整される。より小さな曲率半径で動く陽子は、第2の対の羽根の間を移動する。1つの場合においては、第2の対の羽根は、第1の対の羽根とは物理的に別個のもの及び又は分離したものになっている。第2の場合においては、第1の対の羽根の1つが第2の対の羽根の要素にもなっている。例えば、第2の対の羽根は、RF空洞1210内の第2の羽根1214及び第3の羽根1216である。ここで、約1乃至5kVなどの高電圧のDC信号が第2の対の羽根の両端に印加されると、ラムバーソン抽出磁石などの抽出磁石292によって、陽子をシンクロトロンの外の輸送路268に導く。
【0130】
加速器によるシンクロトロン内の荷電粒子ビーム経路の加速の制御によって、及び又は、上述した抽出システムと組み合わされた方向転換磁石に対して供給された磁場によって、抽出された陽子の強度を制御することができる。そこでは、強度は単位時間における陽子の束又は時間の関数として抽出された陽子の数である。例えば、閾値を超えた電流が計測されたときは、RF空洞内のRF磁場変調が終了又は起動停止がなされて、陽子ビーム抽出の十分な周期を確立する。この処理は繰り返されて、シンクロトロン加速器からの陽子ビーム抽出を多く繰り返すことができる。
【0131】
抽出システムは、磁場の性質のいかなる変化にも依存していないので、シンクロトロンは加速モード又は減速モードにおける動作を継続することができる。言い換えれば、抽出処理は、シンクロトロン加速器に干渉することはない。これと極めて対照的に、従来の抽出システムは、抽出処理の期間中に、6極磁石などによる新たな磁場を採用している。特に、従来のシンクロトロンは、加速段階の期間中はオフとなる6極磁石などの磁石を備えている。抽出段階の期間中は、6極磁石の磁場がシンクロトロンの周回経路に導入される。磁場の導入は、2つの別個のモード、加速モード及び抽出モードを強いられて、2つのモードは同じ時間においては相互に排他的なものとなる。
【0132】
(荷電粒子ビームの強度制御)
高周波(RF)磁場などの磁場の制御によって、RF空洞1210内の周波数及び振幅は抽出された陽子ビームの強度制御を可能にし、その制御では、強度は単位時間に抽出された陽子の束又は時間の関数として抽出された陽子の数となる。
【0133】
さらに図12を参照する。陽子ビーム内の陽子が部材1230にぶつかると、電子が放出されて電流が発生する。発生した電流は、電圧に変換されて、イオン・ビーム強度監視システムの要素として、又は、ビーム強度制御のためのイオン・ビーム・フィードバック・ループの要素として用いられる。その電圧は、任意に測定されて、主制御部110又は制御部のサブシステムに任意に送られる。特に、荷電粒子ビーム経路内の陽子が部材1230を通過すると、いくつかの陽子はほんの何分の1のエネルギー、例えば、約10分の1の割合のエネルギーを失って、その結果2次電子が発生する。すなわち、荷電粒子ビーム内の陽子は、部材1230を通過するときに2次放出を生じるに十分なエネルギーの電子を与えることで、いくつかの電子を放出する。発生した電子の流れは、目標の部材1230を通過する陽子の数に比例する電流又は信号を発生する。発生した電流は、電圧に変換されて増幅されることが好ましい。発生した信号は、測定された強度信号と呼ばれる。
【0134】
陽子が部材1230を通過した結果得られた増幅された信号又は測定された強度信号は、抽出された陽子の強度を制御するのに使用されることが好ましい。例えば、測定された強度信号は、腫瘍面1260の照射においてあらかじめ設定される目標信号と比較される。一実施例において、腫瘍面1260は、患者のx位置、y位置、時間、及び又は回転位置の関数として、配送される陽子ビームの目標の又は対象にされたエネルギー及び強度を有する。測定された強度信号と予定された目標信号との間の差分が計算される。その差分がRF発生器に対する制御として使用される。したがって、陽子が部材1230を通過した結果生じて測定された電流の流れは、RF発生器において、ベータトロン振動を受け且つ部材1230に衝突する陽子の数の増加又は減少を制御するのに使用される。したがって、部材1230の電圧のうち差し引いて算出された電圧は、軌道経路の測定として使用され、且つ、RF空洞システムを制御するためのフィードバック制御として使用される。あるいは、他の実施例として、測定された強度信号はフィードバック制御には使用されず、抽出された陽子の強度の監視としてだけ使用される。
【0135】
上述したように、陽子が部材1230に衝突することは、シンクロトロン130から陽子を抽出する中での工程である。したがって、測定された強度信号は、抽出される単位時間に対する陽子の数を変化するのに使用され、陽子ビームの強度と呼ばれる。このため、陽子ビームの強度は、アルゴリズム制御に従うことになる。さらに、陽子ビームの強度は、シンクロトロン130における陽子の速度から分離して制御される。したがって、抽出された陽子の強度及び抽出された陽子のエネルギーは独立して変化する。
【0136】
例えば、陽子はシンクロトロン130の中で最初は平衡状態の軌道で移動する。RF磁場は、ベータトロン振動の中に陽子を励起するのに使用される。1つの場合では、陽子の軌道の周波数は約10MHzである。一実施例においては、約1ミリ秒間において又は約10,000回の軌道の後において、最初の陽子が目標の部材130の外側のエッジを叩く。その特定の周波数は、軌道の周期に依存している。陽子が部材130を叩くと、陽子は箔によって電子を放出て電流を生成する。その電流は電圧に変換されて増幅され、測定された強度信号を取得できる。測定された強度信号は、供給されるRFの大きさ、RFの周波数、又はRF磁場を制御するためのフィードバック入力として使用される。好ましくは、測定された強度信号は、目標信号と比較され、測定された強度信号と目標信号との差分の測定値は、抽出の工程で陽子の強度を制御するための抽出システムにおいてRF空洞システム1210に供給されるRF磁場を調整するのに使用される。繰り返して言及すると、陽子が、部材130を叩くことによって及び又は通過することによって発生する信号は、RF磁場変調への入力として使用される。RF変調の大きさを増加するほど、その結果、陽子が箔又は部材130を叩くのが次第に遅くなる。RFを増加することによって、より多くの陽子が箔の中に放出され、その結果、シンクロトロン130から抽出される陽子の強度又は単位時間当たりの陽子の数が増加する。
【0137】
他の実施例において、シンクロトロン130の外部の検出器1250は、シンクロトロンから抽出された陽子の束を測定するのに使用され、外部の検出器からの信号は、RF空洞システム1210におけるRF磁場又はRF変調を変更するのに使用される。ここで、外部の検出器は外部信号を発生し、その信号は、前の段落において説明した測定された強度信号と同じ方法によって使用される。特に、測定された強度信号は、フィードバック強度制御部1240における照射面1260からの所望の信号と比較され、上述したように、抽出処理における第1のプレート1212及び第2のプレート1214の間のRF磁場を調整する。
【0138】
さらに他の実施例において、陽子が部材を通過すること又は部材を叩くことで生じる部材130からの電流が閾値を超えたことが測定されたときは、RF空洞システム内のRF磁場変調は、終了又は起動停止がなされて、陽子ビーム抽出の十分な周期が確立される。この処理は繰り返されて、シンクロトロン加速器からの陽子ビーム抽出を多く繰り返すことができる。
【0139】
さらにまた他の実施例において、抽出された陽子ビームの強度変調は、主制御部110によって制御される。主制御部110は、荷電粒子ビームの抽出のタイミング及び抽出された陽子ビームのエネルギーを任意に及び又は補足的に制御する。
【0140】
システムの利点には、多次元のスキャン・システムが含まれる。特に、システムは、(1)抽出された陽子のエネルギー、及び(2)抽出された陽子の強度に、独立性を持たせることができる。すなわち、抽出された陽子のエネルギーは、エネルギー制御システムによって制御され、抽出された陽子の強度は、強度制御システムによって制御される。エネルギー制御システム及び強度制御システムは、任意に且つ独立して制御される。好ましくは、主制御部110は、エネルギー制御システムを制御し、また、主制御部は、強度制御システムを同時に制御して、制御されたエネルギー及び制御された強度が独立して変化する中で、制御されたエネルギー及び制御された強度によって抽出される陽子ビームが得られる。このように、腫瘍をたたく照射スポットは、
・時間、
・エネルギー、
・強度、
・患者に対する陽子ビームの水平方向の移動を表すx軸の位置、
・患者に対する陽子ビームの垂直方向の移動を表すy軸の位置、
に関して独立した制御下におかれる。
さらに、患者は、同じ時間における陽子ビームの変換軸に対して任意に且つ独立して回転される。システムは、パルスからパルスへのエネルギー多様性の能力がある。さらに、システムは、パルスの期間中にダイナミックにエネルギーを調整できるので、エネルギー及び強度の調整によって実に3次元の陽子ビームのスキャンが可能になる。
【0141】
図13を参照して、陽子ビーム位置検証システム1300について説明する。ノズル1310は、2連型加速器390の箔395に始まり、シンクロトロン130の中を通って、ノズル1310の端部を覆うノズル箔1320に至る第2の低圧の圧力真空システムの出口を提供する。ノズルは、陽子ビーム経路268のz軸に沿って断面領域が拡がっているので、陽子ビーム268は、垂直制御要素142及び水平制御要素144のそれぞれによって、x軸及びy軸に沿ったスキャンが行われる。ノズル箔1320は、ノズル1310の出口の外縁によって機械的に支持されることが好ましい。ノズル箔1320の一実施例は、約0.1インチの厚さのアルミ箔のシートである。一般的には、ノズル箔は、ノズル箔1320の患者側における大気圧を、ノズル箔1320のシンクロトロン130側における約10−5乃至10−7トールの領域のような低圧領域から分離する。低圧領域は、陽子ビーム264、268の散乱を抑制するために維持される。
【0142】
図13において、陽子ビーム検証システム1300は、陽子ビームを破壊することなく、陽子ビーム位置268、269の監視をリアルタイムで行うことが可能なシステムである。陽子ビーム検証システム1300は、好ましくは、陽子ビーム位置検証層1330を備え、その陽子ビーム位置検証層1330は、この実施形態においては、コーティング層、発光層、蛍光層、リン光層、放射光層、又は視野層を指す。検証層又はコーティング層1330は、ノズル箔1320の内側表面におおむね接触しているコーティング層又は薄い層で、その内側表面がノズル箔1320のシンクロトロン側にあることが好ましい。検証層又はコーティング層1330がノズル箔1320の外側表面におおむね接触しているコーティング層又は薄い層で、その外側表面がノズル箔1320の患者の治療側にあることは好ましくない。ノズル箔1320は、コーティング層によってコーティングする下地の表面を有することが好ましいが、ノズル箔1320が、コーティング1330を上に形成した分離したコーティング層の支持要素であり、陽子ビーム経路268のいずれの位置にでも任意に配置してよい。
【0143】
図13において、コーティング1330は、陽子ビーム268が通過したことで、検出器1340によって空間的に観察できる測定可能な分光反応を生じる。コーティング1330は、蛍光体であることが好ましいが、陽子ビーム経路268がコーティング1330を叩いたことで又は通過したことで分光的に変化する部材であって、検出器によって観察され又は撮像されるものであれば、どんな部材であってもよい。検出器又はカメラ1340は、コーティング1330を観察して、陽子がコーティング層を通過することで得られる分光差によって、陽子ビーム268の現在位置を測定する。例えば、カメラ1340は、腫瘍1420の治療期間中に、水平位置制御要素144及び垂直位置制御要素142によって陽子ビーム268がスキャンされているときに、コーティング表面1330を観察する。カメラ1340は、分光反応によって測定されている陽子ビーム268の現在位置を観察する。コーティング層1330は、蛍光体又は発光部材であって、陽子ビーム268によって励起された結果、50%の発光強度で、例えば5秒よりも短い短時間の間に発光するものが好ましい。複数のカメラ又は検出器1340が任意に使用されて、各検出器がコーティング層1330のすべての又は1つの陽子を観察する。例えば、2つの検出器1340が使用された場合には、第1の検出器が第1の半分のコーティング層を観察し、第2の検出器が第2の半分のコーティング層を観察する。検出器1340は、好ましくは、ノズル1310の中に設けられて、第1の軸及び第2の軸の制御部142、144を通過した後の陽子ビーム位置を観察する。コーティング層1330は、陽子ビーム経路268において、陽子が患者1430を打つ前の位置に配置されることが好ましい。
【0144】
図13において、主制御部110は、カメラ又は検出器1340の出力に接続されており、実際の陽子ビームの位置268を計画された陽子ビーム位置及び又は較正された基準位置と比較して、実際の陽子ビームの位置268が許容内にあるかどうかを測定する。陽子ビーム検証システム1300は、較正フェーズ及び陽子ビーム治療フェーズの少なくとも2つのフェーズにおいて使用されることが好ましい。較正フェーズは、患者インターフェースにおける陽子ビームの実際のx位置、y位置に反応して発光するx位置、y位置の関数として、相互関係を取るために使用される。陽子ビーム治療フェーズの期間中は、陽子ビーム位置が監視されると共に、較正及び又は治療方針と比較されて、腫瘍1420に対する正確な陽子配送を検証し、及び又は、陽子ビーム位置が陽子ビーム遮断の安全標識になる。
【0145】
(患者位置決め)
図14において、患者は、好ましくは、患者インターフェース・モジュール150の患者位置システム1410の上又は内部に置かれる。患者位置システム1410は、後述するように、スキャン・システム140又は陽子目標システムを用いて陽子ビームが腫瘍をスキャンできる範囲の中に患者を移送するため及び又はその範囲の中で回転するのに使用される。実際のところ、患者位置システム1410は、患者の大きな移動を実行して陽子ビーム経路268の中心近くに腫瘍を位置させ、陽子スキャン又は目標システム140は、腫瘍1420を目標にする一時的なビーム位置269の細かい移動を実行する。説明のために、図14は、一時的な陽子ビーム位置269及び陽子スキャン又は目標システム140を用いてスキャンできる位置1440を示している。そこでは、スキャンできる位置1440は、患者1430の腫瘍1420の周囲になっている。この実施例において、スキャンできる位置は、x軸及びy軸に沿っているけれども、スキャンは、後述するように、z軸に沿って任意且つ同時に実行される。この図に示すように、患者のy軸の移動は体の規模で生じ、例えば、約1、2、3、又は4フィートの調整であり、一方、陽子ビーム268のスキャンできる範囲は体の部分をカバーし、例えば、約1、2、4、6、8、10、又は12インチの領域になっている。患者位置システム及び患者の回転及び又は配送は陽子目標システムと組み合って、腫瘍に対する陽子の精密且つ正確な配送を実現する。
【0146】
図14において、患者位置システム1410は、ディスク又は載置台などの下部ユニット1412及び上部ユニット1414を任意に有する。図14(A)に示すように、患者位置ユニット1410は、好ましくは、y軸調整可能1416になっていて、陽子線治療ビーム268に対して患者の垂直の昇降が可能である。好ましくは、患者位置ユニット1410の垂直動作は、1分間に約10、20、30、又は50センチメートルである。図14(B)に示すように、患者位置システムユニット1410も、好ましくは、下部ユニット1412の中心を通り抜けるy軸又は腫瘍1420を通り抜けるy軸のまわりなどの回転軸のまわりの回転1417が可能になっていて、陽子ビーム経路268に対して患者の回転制御及び位置決めが可能である。好ましくは、患者位置ユニット1410の回転動作は、1分間に約360度である。あるいは、患者位置決めユニットは、約45、90、又は180度に任意に回転する。またあるいは、患者位置決めユニット1410は、1分間に約45、90、180、360、720、又は1080度の速度で任意に回転する。位置決めユニットの回転1417は、2つの異なる時間t及びtについて回転軸のまわりに示されている。陽子は、腫瘍1420にn回任意に配送される場合に、n回の各々は、回転軸のまわりの患者の回転1417によって、患者1430を叩く入射陽子ビーム269の異なる方向を表している。
【0147】
以下に説明する半垂直、着座、横臥の患者位置決めのすべての実施形態は、y軸に沿って垂直に任意に配送可能であり、又は、回転若しくはy軸のまわりに任意に回転可能である。
【0148】
好ましくは、上部ユニット及び下部ユニット1412、1414は同時に移動するので、同じ速度で回転し、同じ速度で平行移動する。上部ユニット及び下部ユニット1412、1414は、y軸に沿って独立して任意に調整可能であるので、上部ユニット及び下部ユニット1412、1414の間を異なる距離にすることができる。上部ユニット及び下部ユニット1412、1414を動かすためのモータ、電源、及び機械部品は、下部ユニット1412の下側及び又は上部ユニット1414の上側など、陽子ビーム経路269の外に配置されることが好ましい。このことが好ましいのは、患者位置決めユニット1410が、360度に任意に回転可能であるので、モータ、電源、及び機械部品が、陽子ビーム経路269において位置が変化した陽子の妨げになるからである。
【0149】
(陽子配送効率)
図15は、X線及び陽子照射の双方について関係する線量の共通の分散を示している。図に示されているように、X線は、目標の組織の表面近傍で最大の線量を堆積し、ついで、組織の深度の関数として指数的に減少している。組織の表面近傍におけるX線エネルギーの堆積は、体内の深い位置にある腫瘍に対しては理想的ではなく、腫瘍1420の周囲の柔らかな組織層に対して過度の破壊が行われるのと同様に、普通のことである。陽子の利点として、飛翔軌道の終わり近くで最大のエネルギーを堆積するのは、陽子が移動することで吸収体の単位深度当たりのエネルギー損失が粒子速度の低下のために増加するからであり、ここではブラッグ・ピークとして示されている。さらに、陽子の飛翔軌道が陽子の最初の運動エネルギー又は初速度の増加又は減少によって変化するので、最大エネルギーに対応するピークを組織の内部で移動することができる。このため、浸透の陽子深度をz軸で制御することは、上述したように、加速処理/抽出処理によって可能になる。陽子線量分散の特性の結果として、照射の専門医は、腫瘍1420に対する線量を適正化できると共に、周囲の正常な組織に対する線量を最小にできる。
【0150】
ブラッグ・ピークのエネルギー分布は、最大の浸透の深さまで達した陽子によって浸透された体の全長にわたって、陽子がそのエネルギーを配送することを示している。この結果、正常組織、骨、及び他の体の構成要素に、ブラッグ・ピークのエネルギー分布の遠位部分(distal portion)にエネルギーが配送された後に、陽子ビームが腫瘍を叩くことになる。当然ながら、それは、腫瘍より前の体内の通過距離が短ければ短いほど、陽子配送効率は高くなり、陽子配送効率は、患者の正常な部分と比較して腫瘍に配送されるエネルギーがどれほど多いかで測定されることになる。陽子配送効率のいくつかの実施例は、(1)腫瘍に配送される陽子エネルギーと腫瘍でない組織に配送される陽子エネルギーとの比、(2)腫瘍内での陽子の通過距離対腫瘍でない組織内での陽子の通過距離、及び(3)正常な体の部分に対する破壊と比較される腫瘍に対する破壊、の測定を含んでいる。これらの測定のいずれにおいても、神経過敏な器官要素、心臓、脳、又は他の臓器など、繊細な組織に応じて任意に重み付けされる。横臥位置の患者が治療中にy軸のまわりに回転される場合を説明すると、心臓の近くの腫瘍は、場合によっては、頭から心臓への経路、脚から心臓への経路、又は尻から心臓への経路の中を通る陽子によって治療されるであろう。これらは、より短い経路である胸から心臓への経路、体の横から心臓への経路、又は背中から心臓への経路の中を陽子が通ってすべて配送される座位位置又は半垂直位置の患者の場合と比較すると、すべて非効率的である。特に、座位位置又は半垂直位置を患者に用いた場合には、横臥位置を用いた場合と比較すると、体を通って腫瘍に至るより短い経路長が胴体又は頭部に位置する腫瘍に提供されるので、より高い又はより良好な陽子配送効率が得られる。
【0151】
この実施形態においては、陽子配送効率は、時間効率又はシンクロトロンの利用効率とは切り離して説明される。陽子配送効率は、荷電粒子ビーム装置が動作中である時間のうちのほんのわずかな時間のことに過ぎないからである。
【0152】
(深度の目標)
図16(A)乃至(E)は、陽子ビームのz軸のエネルギーが制御されたバリエーション1600を受けて腫瘍1430の輪切りの照射ができる間の陽子ビームのx軸のスキャンを示している。説明を明確にするために、同時に実行されるy軸のスキャンについては示されていない。図16(A)において、第1の輪切りの開始における一時的な陽子ビーム位置269と共に照射が始まる。図16(B)において、一時的な陽子ビーム位置は、最初の輪切りの最後のところにある。重要なことは、照射の所定の輪切りの期間中に、好ましくは、陽子ビーム・エネルギーは、腫瘍1420の前の組織の密度に応じて連続的に制御され、偏向されることである。このため、組織の密度に応じた陽子ビーム・エネルギーのバリエーションによって、ビーム停止点、又はブラッグ・ピークが、組織の輪切りの内面に留まることができる。スキャン中の陽子ビーム・エネルギーのバリエーションは、上述したように、加速/抽出の技術によって可能になり、そのことで抽出中における陽子の加速を可能にする。図16(C)、(D)、及び(E)は、一時的な陽子ビーム位置が、それぞれ、第2の輪切りの中央、第3の輪切りの中の途中の3分の2、及び所定の方向からの最後の照射の後であることを示している。この手法によって、腫瘍1420、指定された腫瘍の細部、又は腫瘍層に対する制御された正確且つ精密な陽子照射エネルギーの配送が遂行される。腫瘍に対する陽子エネルギーの堆積の効率は、上述したように、正常な組織への陽子照射エネルギーに対する腫瘍への陽子照射エネルギーの比として定義される。
【0153】
(多磁場照射)
正常な組織への陽子照射エネルギーに対する腫瘍1420への陽子照射エネルギーの比を最大にすることで定義される、腫瘍1420に対する陽子エネルギーの堆積の効率を最大にすることが望ましい。1、2、又は3方向から体の中に照射すること、例えば、照射の小期間の間に体を約90度回転することによって、ブラッグ・ピークの遠位部分からの陽子照射が、それぞれ1、2、又は3つの正常な組織の中に集中する結果となる。腫瘍1420の周囲の正常な体積の組織を通るブラッグ・ピークの遠位部分を、さらに均一に分散することが望ましい。
【0154】
多磁場照射は、複数の入力点から体の中に陽子ビームを照射することである。例えば、患者1430は回転されるが、照射源点は一定に保たれる。例えば、患者1430が360度回転されて、多数の角度から陽子治療が施されると、わずかな照射が腫瘍のまわりに円周状に散乱して、陽子照射の効率を高めることができる。1つの場合では、体が3、5、10、15、20、25、30、又は35の位置よりも多い位置に回転されて、陽子照射が各回転位置で発生する。陽子治療又はX線撮像のためには患者の回転は、約45、90、135、180、270、又は360度であることが好ましい。患者の回転は、患者位置決めシステム1410及び又は、上述したように、下部ユニット1412又は円板によって実行することが好ましい。相対的に固定された方向において陽子ビーム268の配送が維持されている間での患者1430の回転は、多方向から腫瘍1420に対する照射を可能にし、各方向において新たにコリメータを使用しなくてもよい。さらに、患者1430の各回転位置に対して新たな設定をする必要がないので、システムは、治療台の取り替え又は患者の位置決めをすることなく、多方向から腫瘍1420の治療と行うことができ、これにより腫瘍1420の再治療の時間を最小にできると共に、患者1430の癌治療の処理量を高めることができる。
【0155】
患者が、下部ユニット1412の中心に配置されるか否かは任意であり、あるいは、腫瘍1420が、下部ユニット1412の中心に配置されるか否かは任意である。患者が、下部ユニット1412の中心に配置された場合には、第1の軸制御要素142及び第2の軸制御要素144は、腫瘍1420の回転変化位置の中心軸から外れることを補償するようにプログラムされる。
【0156】
図17(A)乃至(E)は、多磁場照射1700の実施例を示す図である。この実施例においては、5個の患者回転位置が示されているが、その5個の患者回転位置は、約36個の患者回転位置のうちの離散的な回転位置であり、体は各位置で約10度回転される。図17(A)には、第1の体回転位置に対する照射ビーム位置269の範囲が示され、患者1430は陽子照射ビームに面しており、第1の正常な組織の体積1711は、ブラッグ・ピークのエネルギー分布の近位部分(ingress portion)又は遠位部分によって照射される。図17(B)においては、患者1430は約40度回転されて、照射が繰り返される。その第2の位置において、腫瘍1420は照射エネルギーの大部分を受け、第2の正常な組織の体積1712は、ブラッグ・ピークのエネルギー分布の近位部分又は遠位部分によって小さな照射を受ける。図17(C)乃至(E)では、患者1430は、約90、130、及び180度にそれぞれ回転される。第3、第4、及び第5の回転位置の各々において、腫瘍1420は照射エネルギーの大部分を受け、第3、第4、及び第5の正常な組織の体積1713、1714、及び1715は、それぞれブラッグ・ピークのエネルギー分布の近位部分又は遠位部分によって小さな照射を受ける。このように、陽子治療の期間に患者を回転することで、配送される陽子エネルギーのうちピークから外れたエネルギーが、1乃至5個の範囲のように腫瘍1420のまわりに分散されて、所定の軸に沿ってエネルギーの少なくとも約75、80、85、90、又は95パーセントが腫瘍1420に配送される。
【0157】
所定の回転位置において、腫瘍のすべて又は一部が照射される。例えば、一実施形態において、腫瘍1420の遠位領域又は遠位の輪切りだけが各回転位置で照射され、その遠位領域は、患者143の中では陽子ビームの入力点から最も遠い領域である。例えば、その末端領域は、患者1430が陽子ビームに面している場合には、腫瘍の背面側であり、患者1430が陽子ビームと反対側に面している場合には、腫瘍の正面側である。
【0158】
図18には、陽子源が固定で、患者1430が回転される場合の第2の実施例である多磁場照射1800が示されている。図の簡略化のために、陽子ビーム経路269は、時間t、t、t、t、…、tn+1で変化する側から患者1430に入力するように示されている。第1の時間tにおいては、ブラッグ・ピーク分布の遠位部分が第1の領域1810、Aを叩く。患者が回転されて、陽子ビーム経路が第2の時間tに示される場合には、ブラッグ・ピーク分布の遠位部分が第2の領域1820、Aを叩く。第3の時間においては、ブラッグ・ピーク分布の遠位部分が第3の領域1830、Aを叩く。この回転及び照射処理がn回繰り返される。nは4より大きい正の数であり、好ましくは、約10、20、30、100、又は300より大きい数である。n番目の時間には、ブラッグ・ピーク分布の遠位端がn番目の領域1840を叩く。図に示すように、n番目の時間tにおいて、患者1430がさらに回転された場合には、陽子ビームは、脊髄組織又は目などの繊細な体の器官1450を叩くことになる。照射は、繊細な体の器官が陽子ビーム経路から外れた位置に回転されるまで、一時的に停止することが好ましい。照射は、繊細な体の器官が陽子ビーム経路から外れた位置に回転された後、tn+1の時間に再開される。時間tn+1においては、ブラッグ・ピーク分布の遠位部分がtn+1領域1450を叩く。この方法においては、ブラッグ・ピークのエネルギーは常に腫瘍内に存在し、ブラッグ・ピークのエネルギー分布の遠位部分は腫瘍1420のまわりの正常な組織に分散され、繊細な体の器官1450は、最小の陽子ビーム照射を受けるか又は全く受けない。
【0159】
多磁場照射の一実施例において、環の直径が60メートルよりも小さいシンクロトロンを用いた粒子治療システムは、以下の能力を有する。
・約360度にわたって患者を回転すること、
・約0.1乃至10秒で照射を抽出すること、
・約100ミリメートルを垂直にスキャンすること、
・約700ミリメートルを水平にスキャンすること、
・照射期間中に約30MeV/秒から330MeV/秒までビーム・エネルギーを変化させること、
・腫瘍に対する陽子ビームを約2ミリメートルから20ミリメートルまでフォーカスすること、
・患者1430への陽子配送の開始時間から測定して、約1、2、4、又は6分で腫瘍の磁場照射を完了させること。
【0160】
図19を参照して、2つの多磁場照射方法1900について説明する。第1の方法においては、主制御部110は、患者1430を回転自在に位置決めし1910、引き続き腫瘍1420を照射する1920。その処理は、多磁場照射計画が完了するまで繰り返される。第2の方法においては、主制御部110は、回転することと患者1430内の腫瘍1420を照射すること1930を、多磁場照射計画が完了するまで同時に行う。特に、陽子ビーム照射が発生するのは、患者1430が回転されている期間である。
【0161】
陽子スポット焦点の3次元スキャン・システムは、この実施形態に記載されるように、回転/走査画面の方法と併用されることが好ましい。その方法は、多方向からの腫瘍照射に関する階層を有する。所定の輪切り照射の期間中、陽子ビームのエネルギーは、腫瘍の前の組織の密度に応じて連続的に変化されて、ブラッグ・ピークによって定義されたビーム停止点をもたらし、常に腫瘍の内側及び照射輪切りの内側に存在する。その新しい方法は、この実施形態において多磁場照射と称される、多方向からの照射を可能にし、腫瘍レベルにおいて最大の効率的な線量を実現し、その一方で、同時に、周辺の正常な組織に対する横の影響の可能性を、従来の方法と比較して、大きく低減することができる。本質的に、多磁場照射システムは、まだ腫瘍に達しない組織の深さにおいて線量の分布を散乱する。
【0162】
(陽子ビームの位置制御)
図20には、ビーム配送及び腫瘍体積スキャンのシステムが示されている。現在、世界照射線治療界では、ペンシル・ビーム・スキャン・システムを用いて、線量磁場形成の方法を使用している。これと極めて対照的に、図20は、スポット・スキャン・システム又は腫瘍体積スキャン・システムを示している。腫瘍体積スキャン・システムにおいては、安価で精密なスキャン・システムを用いて、輸送及び分配という観点から陽子ビームが制御される。そのスキャン・システムは能動的なシステムであり、そのシステムでは、直径が約1/2、1、2、又は3ミリメートルのスポット焦点の中にビームがフォーカスされる。陽子ビームの供給エネルギーを同時に変更する期間に、焦点は2つの軸に沿って平行移動され、そのことが焦点の第3の範囲を効果的に変化させる。そのシステムは、上述した体の回転と併用して適用することが可能であり、その併用は腫瘍に対する陽子の配送の個々の瞬間に又は周期の間に発生することが好ましい。任意ではあるが、上述のシステムによる体の回転は、腫瘍に対する陽子の配送と共に連続的に且つ同時に発生する。
【0163】
例えば、図20(A)に示すように、スポットは水平に平行移動され、垂直に下に移動され、次に、水平軸に沿って戻る。この実施例においては、電流が使用されて、少なくとも1つの磁石を有する垂直スキャン・システムを制御する。供給された電流は、垂直スキャン・システムの磁場を変更して、陽子ビームの垂直な偏向を制御する。同様に、水平スキャン磁石システムは、陽子ビームの水平な偏向を制御する。各軸に沿った平行移動の程度は制御されて、所定の深さの腫瘍断面に一致する。その深さは、陽子ビームのエネルギーを変化することによって制御される。例えば、陽子ビームのエネルギーは、新たに浸透する深さを限定するように減少され、水平軸及び垂直軸に沿ってスキャン処理が繰り返され、腫瘍の新たな断面領域をカバーする。制御の3つの軸を組み合わせた場合には、癌の腫瘍の全体の体積にわたって陽子ビームの焦点のスキャン及び移動が可能になる。各スポットの時間及び各スポットに対する体内の方向が制御されて、分散エネルギーが腫瘍の外側を叩く間に、癌の体積の各部分に所望の照射線量を与えることができる。
【0164】
フォーカスされたビーム・スポットの面の大きさは、好ましくは、約0.5、1、又は2ミリメートルの直径に厳しく制御されるが、あるいは数センチメートルの直径に制御される。好ましい設計制御により、2つの方向、すなわち、(1)約100mmの垂直振幅及び200Hzまでの周波数、並びに(2)約700mmの水平振幅及び1Hzまでの周波数で、スキャンすることが可能になる。
【0165】
図27(A)には、ビーム・エネルギーによって制御されてz軸に沿った、水平移動がx軸に沿った、垂直方向がy軸に沿った陽子が示されている。z軸に沿って組織の中に移動する陽子の距離は、この実施例においては、陽子の運動エネルギーによって制御される。この座標システムは、決まったものではなく例示に過ぎない。陽子ビームの実際の制御は、2つのスキャン磁石システムを用いて3次元の空間の中で、陽子ビームの運動エネルギーを制御することによって制御される。抽出システムを使用することによって、上述したように、異なるスキャンのパターンが可能になる。特に、このシステムによれば、強力な腫瘍に対する照射においてx軸、y軸、及びz軸を同時に調整することができる。繰り返し言及すると、回転式飛程補償体(range modulation wheel :RMW)を用いた場合のように、xy面に沿ったスキャン及びその後の陽子のエネルギーの調整をする代わりに、このシステムでは、x軸又はy軸を同時に調整する間に、z軸に沿って移動することができる。したがって、腫瘍の輪切りが照射されるのでなく、腫瘍は3次元同時に任意に照射される。例えば、腫瘍は、腫瘍の外縁のまわりを3次元において照射される。次に、腫瘍は、腫瘍の内部の外縁のまわりを照射される。この処理は、腫瘍全体が照射されるまで繰り返される。外縁の照射は、例えば、垂直なy軸のまわりで、対象を回転するのと同時に連動して行われることが好ましい。このシステムによれば、ブラッド・ピークを用いて定義されているように、腫瘍に対する陽子の照射の最大の効率が可能になり、周辺の正常組織に対する陽子の配送を最少にすると共に、腫瘍自体に対する陽子の照射が可能になる。
【0166】
組み合わされた場合には、システムは小さな電力供給で小さな空間における荷電粒子ビーム・システムの多軸制御を可能にする。例えば、上述したように、システムは、シンクロトロンの各方向転換内において各磁石が少なくとも1つのエッジ・フォーカス効果を有する多数の磁石、及び又は、収束した磁場の形状を有する多数の磁石を使用する。磁石の収束形状及び上記した抽出システムと組み合わされたシンクロトロンの周回ビーム経路における多数のエッジ・フォーカス効果は、下記の構成を有するシンクロトロンを可能にする。
・例えば、約50メートルよりも小さい小型の円周のシステム、
・約2cmの垂直陽子ビームサイズのギャップ、
・低減されたギャップサイズと関連した対応する低減された必要な電源供給、
・新たに導入する磁場を必要としない抽出システム、
・抽出の期間中の陽子の加速又は減速、及び
・抽出の期間中のz軸エネルギーの制御
この結果、3次元スキャン・システム及びx軸、y軸、及びz軸の制御が可能となり、そこでは、シンクロトロンの中でz軸制御が可能であり、また、シンクロトロン内の抽出処理の期間中にz軸エネルギーが可変に制御される。
【0167】
図27(B)においては、4次元のスキャン制御により腫瘍に対して陽子を導くのに使用された陽子スキャン・システム又は目標システム140の一実施例が示され、その中では、上述した強度制御を伴った、4次元のスキャン制御がx軸、y軸、及びz軸に沿っている。5番目の軸は時間である。通常、搬送路268に沿って移動する荷電粒子は、垂直制御などの第1の軸制御要素142、及び、水平制御などの第2の軸制御要素144によって、腫瘍1420の中に照射される。上述したように、抽出システムも、z軸における同時の変化を可能にする。さらに、上述したように、抽出されたビームの強度及び線量は、任意に、同時に、且つ独立に制御され、変化される。このように、腫瘍の輪切りを照射する代わりに、図27(A)に示すように、腫瘍における陽子配送の目標スポットを限定するすべての4次元が同時に変化する。陽子配送のスポットの同時の変化は、図27(B)においてスポット配送路269によって示されている。図示された場合において、陽子は最初に腫瘍の外縁のあたりに照射され、次に、腫瘍の内部の範囲に照射される。垂直軸のまわりに対象を回転させることと組み合わせると、体中の陽子の入力点からさらに離れた腫瘍において、まだ照射されていない腫瘍の部分が適切に照射される位置で多磁場の照射処理が使用される。このことは、ブラッド・ピークを用いて定義されているように、腫瘍の中への陽子配送の最大の割合を可能にし、周辺の正常組織に対する破壊が最少になる。
【0168】
(画像/X線システム)
この実施形態において、X線システムは、画像システムを説明するために用いられる。
【0169】
(タイミング)
X線は、2つの理由のために、(1)直前の又は(2)現在のいずれかの陽子線治療で患者を治療することと組み合わせることが好ましい。第1に、上述したように、体の移動は、体の他の構成要素に関連する体内の腫瘍の局部位置を変化させる。対象がX線をすでに照射されていて、対象が体ごと治療室に移動されている場合には、腫瘍に対して陽子ビームの正確な位置合わせは困難である。1つ以上のX線を用いた腫瘍に対する陽子ビームの位置合わせは、陽子配送の時間に、又は、陽子配送の直前の数秒若しくは数分で且つ治療できる体の位置に患者が配置された後において最善に実行され、その位置は、通常、固定された位置又は部分的な移動ができない位置である。第2に、位置決め後の患者が照射されるX線は、腫瘍及び又は内部の臓器の位置などの、目標にされた位置に対する陽子ビーム位置合わせの確認として使用される。
【0170】
(位置決め)
X線は、好ましくは、対象を治療する直前に照射され、患者の位置決めを支援する。位置決めの目的のためには、大きな体の領域は必要ではない。一実施形態においては、局部領域だけのX線が集められる。X線を集めるときのそのX線はX線経路を保持している。陽子は陽子ビーム経路を保持している。陽子ビーム経路にX線経路を重ねることは、腫瘍に対して陽子ビームを位置合わせする1つの方法である。しかしながら、この方法は、陽子ビーム経路の中にX線装置を配置することを伴うことになり、X線を照射した後に、X線装置をビーム経路の外に移動することになる。この処理には時間がかかる。X線装置が移動する間の経過時間は、好ましくない影響を及ぼす。第1に、X線装置を移動するに必要な時間の間に、患者が動いてしまう。移動の結果、腫瘍に対する陽子ビームの実質的な位置合わせの精密さ及び又は正確さが低下する。第2に、X線装置を移動するに必要な時間は、陽子線治療システムが使用されない時間であり、そのことは、陽子線治療システムの全体的な効率を低下させる。
【0171】
(X線源の寿命)
陽子線治療システムの寿命の上では、最小限のメンテナンス又はメンテナンスの無いことを要求する要素が陽子線治療システム内にあることが好ましい。例えば、約20年の寿命などの長い寿命の光源を有するX線システムを備える陽子線治療システムを装備することが望ましい。
【0172】
1つのシステムにおいては、後述するように、X線を生成するのに電子が使用される。電子は、寿命が温度に依存するカソードで発生される。フィラメントが平衡状態に維持される電球に似て、カソードの温度は、摂氏約200、500、又は1000度の温度で平衡状態に維持される。カソードの温度を低下させると、カソードの寿命を延ばすことができる。したがって、電子を発生するのに使用されるカソードは、できる限り低い温度に保たれることが好ましい。しかしながら、カソードの温度が低下した場合には、電子の放出も低下することになる。低い温度で多くの電子の必要性を満たすためには、大きなカソードを使用して、発生する電子を収束させることである。その処理は、電子銃において電子を圧縮することに似ているが、この実施形態では、X線管の寿命の強化に利用するために圧縮技術が適用される。
【0173】
図21には、強化された寿命のX線発生装置2100の一実施例が示されている。電子2120は、カソード2110で発生され、制御電極2112によってフォーカスされ、一連の加速電極2140によって加速される。加速された電子2150はX線発生源2148に衝突して、その結果、発生されたX線がX線経路2270に沿って対象1430に導かれる。第1の直径2115から第2の直径2116への電子の収束によって、カソードは、低下された温度で動作することができる上、さらにX線発生源2148において電子の必要な増幅レベルを与えることができる。一実施例においては、X線発生源はカソード2110と対をなすアノードであり、及び又は、X線発生源は実質的にタングステンで構成されている。
【0174】
図21には、X線発生装置2100がさらに詳細に記載されている。一対のアノード2114/カソード2110が、電子を発生するのに使用されている。電子2120は、符号dで表された第1の直径2115を有するカソード2110で発生される。制御電極2112は、発生された電子2120を引き寄せる。例えば、カソードが−150kVに維持され、且つ、制御電極が−149kVに維持されている場合には、発生された電子は、制御電極2112の方に引き寄せられて、フォーカスされる。一連の加速電極2140は、符号dで表されたさらに小さな直径2116を有する実質的に平行な通路2150の中で電子を加速するのに使用される。例えば、カソードが−150kVに維持される場合には、第1、第2、第3、及び第4の加速電極2142、2144、2146、2148は、それぞれ−120、−90、−60、及び−30kVに維持される。もっと薄い体の部分が解析される場合には、カソード2110は、約−90kVなどのもっと小さいレベルに維持され、また、制御電極、第1、第2、第3、及び第4の電極の各々は、もっと低いレベルに調整される。一般に、カソードから第4の電極までの電圧差は、カソードにおけるもっと小さいマイナスの電圧に対して小さいし、逆の場合も同様である。加速された電子2150は、シリンドリカル磁界レンズなどのビームサイズを調整するための磁界レンズ2160を任意に通過する。電子はまた、4極磁石2170を用いて任意にフォーカスされる。その4極磁石2170は1つの方向にフォーカスし、別の方向にはデフォーカスする。加速された電子2150は、ビームサイズが調節され、且つ、フォーカスされて、タングステンなどのX線発生源2148を叩くので、その結果、発生されたX線が遮蔽物2262を通過し、X線経路2170に沿って進んで、対象に達する。X線発生源2148は、水冷又はX線発生源2148の後側における熱結合などの冷却要素2149によって任意に冷却される。第1の直径2115から第2の直径2116への電子の収束によって、カソードは、低下された温度で動作することができる上、さらにX線発生源2148において電子の必要な増幅レベルを実現することができる。
【0175】
さらに、一般的には、X線発生装置2100は、初期ベクトルを持つ電子を生成する。1つ以上の制御電極2112、加速電極2140、磁界レンズ2160、及び4極磁石2170は組み合わされて、初期電子ベクトルを、実質的に平行な経路を持つ縮小された断面領域の平行な、加速された電子2150と呼ばれる経路に変更する。その処理により、X線発生装置2100は、より低い温度で動作することができる。特に、必要な電子ビームのサイズのカソードを使用する代わりに、もっと大きなカソードを使用することで、その結果、電子2120はフォーカスされ及び又は収束されて必要なビームサイズになる。おおまかに言って、寿命は電流密度の逆数になるので、電流密度の収束によりX線発生装置の寿命が長くなる。明確にするため、特定の実施例を提供する。カソードが半径15mmを有するか又はdが約30mmの場合には、面積(πr)は約255mmにパイを乗じた値になる。電子の収束が5mmの半径に達するか又はdが約10mmの場合には、面積(πr)は約25mmにパイを乗じた値になる。2つの面積の比は約9(225π/25π)である。このように、大きなカソードにおける電流密度は、所定の電子ビームの面積を有する従来のカソードと比較して約9倍小さくなる。したがって、大きなカソードと従来のカソードとを流れる実際の電流がほぼ同じである場合であっても、大きなカソードの寿命は従来のカソードの寿命のほぼ9倍になる。カソード2110の面積は、好ましくは、実質的に平行な電子ビーム2150の断面積の約2、4、6、8、10、15、20、又は25倍である。
【0176】
本発明の他の実施形態においては、4極磁石2170によって、電子ビーム2150の断面形状を長楕円形にすることができる。電子ビーム2150の長楕円の断面形状がX線発生源2148の上に投射されると、その結果、断面図が小さなスポットを有するX線ビームが発生し、そのX線ビームは断面形状が実質的に円形であるので、患者2130を通り抜ける。小さなスポットを使用することで、患者に高い解像度のX線を与える。
【0177】
図22に示す1つの実施形態において、X線は陽子ビーム経路の近くで発生されるが、陽子ビーム経路の中には入らない。陽子線治療システム及びX線システムの併用システム2200が図22に示されている。陽子線治療システムは、シンクロトロン130のランバーソン抽出磁石292の後の輸送システムに、陽子ビーム268を有する。陽子ビームは、スキャン/目標/配送システム140によって、患者1430の腫瘍1420に向けられる。X線システム2205は、電子ビーム2150を発生する電子ビーム源2105を備えている。電子ビームは、1つのタングステンなどのX線発生源2148に向けられる。タングステンX線源は、好ましくは、陽子ビーム経路268から約1、2、3、5、10、15、20、又は40ミリメートル離れて配置される。陽子ビーム2150がタングステンを叩くと、すべての方向にX線が発生される。X線は、入口2262で遮蔽され、X線ビーム経路2270の方に選択される。X線ビーム経路2270及び陽子ビーム経路268は、実質的に平行に延びて、腫瘍1420に向かって進む。X線ビーム経路2270及び陽子ビーム経路268の間の距離は、好ましくは、ゼロ近くまで小さくなり、及び又は、X線ビーム経路2270及び陽子ビーム経路268は腫瘍1420に到達する時間までには重なり合う。タングステンと腫瘍1420との間が少なくとも1メートルの所定の長い距離の場合の単純な幾何学的配置がここに示されている。図22において、その距離は、ギャップ2280として示されている。X線はX線検出器2290で検出されて、腫瘍1420及び又は患者1430の位置の画像を形成するのに使用される。
【0178】
全体として、システムは、陽子線治療ビームと実質的に同じ経路に位置するX線ビームを発生する。X線ビームは、タングステン又は同等の物質を電子ビームが叩くことによって発生される。X線ビーム発生源は、陽子ビーム経路のすぐ近くに配置される。入射する電子、X線発生物質、及びX線ビーム遮蔽物262の形状は、陽子ビームと実質的に平行に延びるX線ビームを形成するか、又は、陽子ビーム経路に近い位置からスタートし、且つ、腫瘍の断面領域をカバーすると共に腫瘍の断面領域を通過して、陽子線治療ビームの方向及び位置合わせから腫瘍の画像形成が可能なX線検出アレイ又はフィルムを叩くために広がるX線ビーム経路を形成する。次に、X線画像は、荷電粒子ビーム経路を制御して、精密且つ正確に腫瘍を目標にするのに使用され、及び又は、システムの検査及び確認に使用される。
【0179】
陽子ビーム経路268に近接したX線発生源2148を備えると、陽子治療の前にX線発生源2148を機械的に移動させる必要がないので、患者1430に対するX線が腫瘍1420の治療のための陽子ビームの使用に近い時間に集めることができる。具体的には、腫瘍1420に対する陽子照射は、約1、5、10、20、30、又は60秒内に発生する。
【0180】
図23においては、電子ビーム経路2150及びX線ビーム経路2270の他の形状が示されている。特に、電子ビーム350は、広がった電子ビーム経路2152、2154として示されている。同様に、X線ビーム経路2270は、広がったX線ビーム経路2272、2274として示されている。
【0181】
図24には、3次元(3−D)X線断層撮影システム2400が示されている。通常のX線断層撮影システムにおいては、X線源及び検出器が固定した対象のまわりに回転自在に移動する。この実施形態において説明するX線断層撮影システムにおいては、X線源及び検出器が固定され、患者1430が回転する。X線源を固定することによって、上述したように、X線源2148が陽子ビーム経路268に近接したシステムが可能になる。さらに、患者1430を回転することによって、陽子線量及びX線を、体の1つの固定した入口側に集中させずに、それらを体のまわりに分散させることができる。また、3−DX線断層撮影システムは、患者1430の腫瘍1420に対する陽子治療の期間中に、体の器官に関係して同時に起こる腫瘍位置の変化にリアルタイムで対応できる。以下、X線断層撮影システムについてさらに説明する。
【0182】
X線断層撮影システム2400の第1のステップでは、後述する患者半固定システム/配置システムを使用して、X線ビーム経路2270及び陽子ビーム経路268に対応して患者1430が位置決めされる。患者1430の位置決め後は、対象がy軸1417のまわりに回転するにしたがって、患者1430及び腫瘍1420の一連の基準の2−DX線画像が、検出器アレイ2290又はフィルム上に集められる。例えば、患者の一連の約50、100、200、又は400のX線画像が、患者の回転にしたがって集められる。第2の実施例においては、X線画像は、患者1430のn度の回転ごとに集められる。ここで、nは約1/2、1、2、3、又は5度の回転である。患者の1回の回転が360度にわたって全回転する間に、約200の画像が収集されることが好ましい。その後、基準の2−DのX線画像を用いて、アルゴリズムは、患者の器官の体の部分に関係する腫瘍1420の基準の3−D画像を生成する。腫瘍1420の治療方針は、その腫瘍1420の3−D画像及び患者の器官の体の部分によって立案される。陽子治療方針の立案は、患者がX線画像領域から出た後に任意に行われる。
【0183】
第2のステップにおいては、患者半固定システム/配置システムを使用して、患者1430は、X線ビーム経路2270及び陽子ビーム経路268に関係して位置決めされる。陽子照射治療方針を実施する直前に、X線断層撮影システム2400の設定に使用するため、患者1430及び腫瘍1420の少数の比較対象のX線画像が、限られた数の位置において収集される。例えば、陽子ビーム経路268に対して、その直線上、±45度の角度、及び又は±90度の角度における患者位置の単一のX線画像が収集される。陽子ビーム経路268に関係する患者1430の実際の向きは、どのような向きでも任意である。比較対象のX線画像の実際の数も、いかなる画像の数でも任意であるが、比較対象のX線画像の数は、約2乃至5の比較画像であることが好ましい。比較対象のX線画像は、基準のX線画像と比較されて、差が検出される。専門医又はアルゴリズムは、基準画像及び比較画像の差が大きいかどうかを判断する。専門医又はアルゴリズムは、差に基づいて、陽子治療を開始すべきか、停止すべきか、又はリアルタイムで対応するかどうかを判断する。例えば、X線画像に大きな差が観察された場合には、治療を停止することが好ましく、患者の腫瘍の基準の3−D画像の収集処理が再開される。第2の実施例において、X線画像における差が小さいことが観察された場合には、陽子治療方針が開始される。第3の実施例において、アルゴリズム又は専門医は、患者1430の腫瘍1420の位置の変化に起因した、又は、患者1430の配置の差に起因した、腫瘍位置の差をリアルタイムで調整できる場合には、陽子照射方針を適切に実行することができる。第3の実施例においては、適切な陽子治療によって、患者の治療時間を向上させ、患者1430の正常な組織に対する腫瘍1420の陽子照射の精密さ及び正確さを高めることができる。
【0184】
(患者の固定)
患者の腫瘍に対する正確且つ精密な陽子ビームの配送のためには、(1)陽子ビームの位置制御、及び(2)患者の位置制御が必要である。上述したように、陽子ビームは、アルゴリズム及び磁場を用いて、約0.5、1、又は2ミリメートルの直径に制御される。このセクションでは、部分的な固定、固定、及び又は、患者の位置合わせに取り組んで、患者が移動した場合でも、厳しく制御された陽子ビームが効率的に目標の腫瘍を叩くと共に、周辺の正常組織を叩かないことを保証する。
【0185】
このセクションにおいては、x軸、y軸、及びz軸の座標システム及び回転軸を使用して、陽子ビームに対する患者の向きについて説明する。z軸は、患者の中の陽子ビームの深さなどの陽子ビームの進行を表している。陽子ビームが進行するz軸から患者を見下ろした場合には、x軸は患者が横切って右又は左に移動することを示し、y軸は患者が横切って上又は下に移動することを示す。第1の回転軸は、y軸のまわりの患者の回転であり、この実施形態においては、回転軸、下部ユニット1412の回転軸、又は回転のy軸と称する。なお、チルト(tilt)はx軸のまわりの回転であり、ヨウ(yaw)はy軸のまわりの回転であり、ロール(role)はz軸のまわりの回転である。この座標システムにおいては、陽子ビーム経路269はすべての方向に任意に延びる。ある治療室を通って延びる陽子ビーム経路は、その治療室を水平に通って延びるものとして説明する。
【0186】
このセクションにおいては、半垂直患者固定システム2500について説明し、座位部分固定システム又は横臥位置決めシステムについても説明する。
【0187】
(垂直の患者位置決め/固定)
図25は、半垂直患者位置決めシステム2500であり、胴体における腫瘍の陽子治療と併用されることが好ましい。患者位置決め及び又は固定システムは、陽子治療の期間中において、患者の動きを制御し、及び又は制限する。第1の部分固定の実施形態においては、患者は、陽子治療システムにおいて半垂直位置に位置決めされる。図に示すように、患者は、患者の頭から足に延びる軸によって定義されたy軸から、約45度の角度アルファ(α)に傾斜されている。さらに一般的には、患者は、y軸からゼロ度の垂直位置に、又は、y軸からz軸の方に向かって、約5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、若しくは65度傾斜したアルファの半垂直位置に、任意に自立している。
【0188】
患者位置決め固定システム2515は、治療位置における患者を維持するのに使用され、1つ以上の座位支持部2520、背中支持部2530、頭部支持部2540、腕支持部2550、膝支持部2560、及び足支持部2570を備えている。その固定部は、任意に且つ独立して剛性又は半剛性になっている。半剛性の材料の実施例には、高密度若しくは低密度の発泡樹脂又は粘弾性の発泡樹脂がある。例えば、足支持部は剛性であるほうが好ましく、背中支持部は高密度の発泡樹脂などの半剛性であるほうが好ましい。1つ以上の位置決め固定部2515は、移動可能であり、及び又は、患者を迅速に位置決め及び固定するためコンピュータで制御される。例えば、座位支持部2520は、座席調整軸2522に沿って調整され、その軸は好ましくはy軸である。背中支持部2530は、背中調整軸2532に沿って調整され、その軸は好ましくはy軸要素と共に移動するz軸によって支配される軸である。頭部支持部2540は、頭調整軸2542に沿って調整され、その軸は好ましくはy軸要素と共に移動するz軸によって支配される軸である。腕支持部2550は、腕調整軸2552に沿って調整され、その軸は好ましくはy軸要素と共に移動するz軸によって支配される軸である。膝支持部2560は、膝調整軸2562に沿って調整され、その軸は好ましくはz軸要素と共に移動するy軸によって支配される軸である。足支持部2570は、足調整軸2572に沿って調整され、その軸は好ましくはz軸要素と共に移動するy軸によって支配される軸である。
【0189】
入ってくる陽子ビームに患者が面していない場合には、軸に沿った支持部の要素の移動についての説明は変わるが、固定要素についての説明は同じである。
【0190】
任意のカメラ2580が患者固定システムと共に使用される。カメラは、ビデオ画像を生成する対象を捉える。画像は、荷電粒子ビーム・システムの一人以上のオペレータに提供されて、対象が移動したか又は対象が陽子線治療処置の終了を希望しているかを判断する安全手順をオペレータに委ねる。ビデオ画像に基づいて、オペレータは、陽子線治療処置の一時停止又は終了をすることができる。例えば、オペレータがビデオ画像を通じて患者が動いていることを発見した場合には、オペレータは陽子線治療処置を終了するか又は一時停止するかを選択できる。
【0191】
任意のビデオ表示装置2590が患者に提供される。ビデオ表示装置は、オペレータの指示、システムの指示、治療の状態、又は娯楽のいずれでも患者に任意に提供する。
【0192】
固定部2515、カメラ2580、及びビデオ表示装置2590の位置決め用のモータは、好ましくは、陽子ビーム経路の上又は下に取り付けられる。
【0193】
呼吸制御は、ビデオ表示装置を用いることにより任意に実行される。患者が呼吸をするときには、体の内部及び外部の組織が、絶対的にも及び相対的にも動く。例えば、胸の空洞の外側及び内部の臓器は共に呼吸に伴って動く。さらに、体の外側の領域、骨、支持組織、他の臓器などの体の他の要素に関係する内部の臓器の相対的位置は、各呼吸に伴って動く。したがって、さらに正確且つ精密な腫瘍を目標にするためには、陽子ビームは、好ましくは、各呼吸の底などのように、内部組織又は腫瘍の位置がよく限定される1点に遅れずに配送される。ビデオ表示装置は、患者の呼吸の周期に陽子ビーム配送を整合させるのを補助するのに使用される。例えば、ビデオ表示装置は、呼吸止めの表現、呼吸の表現、次に止めるまでの呼吸の時間を明示するカウントダウン、又は呼吸を再開するまでの時間を明示するカウントダウンなど、患者に対する指令を表示する。
【0194】
半垂直位置決めシステム2500及び座位位置決めシステムは、効率をよくするため、頭部又は胴部における腫瘍の治療のために特化して使用される。半垂直位置決めシステム2500、座位位置決めシステム、及び横臥位置決めシステムは、すべて、患者の手足における腫瘍を治療するのに有用である。
【0195】
(支持システムの要素)
位置決め固定システム2515は、患者を位置決めするのに使用されるすべての要素、例えば、半垂直位置決めシステム2500、座位位置決めシステム、及び横臥位置決めシステムに記載された要素を備えている。好ましくは、位置決め固定システムの要素又は支持システムの要素は、陽子ビーム経路269を遮蔽する位置又はオーバーラップする位置にならないように位置合わせされる。しかしながら、いくつかの具体例においては、位置決め固定システムは、患者の治療の少なくとも一部の時間の間、陽子ビーム経路269の中に入る。具体的には、治療中に患者がy軸のまわりに回転される期間には、位置決め固定システムの要素が陽子ビーム経路269の中に存在することもある。位置決め固定システムの要素又は支持システムの要素が陽子ビーム経路中にある場合又はその期間においては、好ましくは、陽子ビーム・エネルギーを増強する調整がなされて、その増強された陽子ビーム・エネルギーが陽子ビームの位置決め固定システムの要素のインピーダンスを相殺する。1つの場合には、位置決め固定システムの要素の基準スキャンの期間に、又は、y軸のまわりの回転の関数としての位置決め固定システムの要素の基準スキャンとの組合せの期間に、決定された陽子ビームの位置決め固定システムの要素のインピーダンスを分離して測定することによって、陽子ビーム・エネルギーが増加される。
【0196】
明確な説明のために、位置決め固定部2515の要素又は支持システムの要素は、この実施形態においては、半垂直位置決めシステム2500と関連して記載されるけれども、位置決めの要素並びに、x軸、y軸、及びz軸は、いかなる座標システム、座位位置決めシステム又は横臥位置決めシステムにも、適合するように調整することが可能である。
【0197】
頭部支持部の一実施例は、人間の頭を支持するため、位置合わせするため、及び又はその動きを制限するために記載される。頭部支持部システムは、好ましくは、種々の頭部支持の要素、すなわち、頭部の後支持部、頭部の右位置合わせ要素、及び頭部の左位置合わせ要素のすべてを有する。頭部支持部の要素の後部は、好ましくは、頭部に合うように曲線であると共に、頭部支持部の軸に沿って、すなわち、z軸に沿って任意に調整できる。さらに、頭部支持部は、他の患者位置決め固定部と同様に、好ましくは、低密度又は高密度の発泡樹脂などの半剛性の材料で作られており、且つ、樹脂又は皮などの任意のカバーを有する。頭部の右側の位置合わせ要素及び頭部の左側の位置合わせ要素、すなわち頭部の位置合わせ要素は、主に頭部の動きを緩やかに固定するのに使用される。頭部の位置合わせ要素は、好ましくは、クッションの入った平らなものであるが、場合によっては頭部の側面に合うように曲率半径を有するものである。頭部の右側及び左側の位置合わせ要素は、好ましくは、平行移動軸に沿ってそれぞれ移動可能であり、頭部の左右の側面に接触させることができる。陽子線治療の間における頭部の制限された動きは、頭部又は首の腫瘍を目標にする時及び治療する時に重要である。頭部の位置合わせ要素及び頭部支持部の要素の後部は組み合わされて、チルト、回転若しくはヨウ、ロール及び又はx軸、y軸、及びz軸の座標システムの位置を制限する。
【0198】
(位置決めシステムのコンピュータ制御)
1つ以上の患者位置決めユニットの要素及び又は1つ以上の患者位置決め固定システムは、好ましくは、コンピュータ制御の下にあり、その制御において、コンピュータは、例えば、一連のモータ及びデバイスを介して、位置決めシステムを制御して、再現可能なように患者を位置決めする。例えば、患者は、最初に位置決めされ、患者位置決め固定システムによって固定される。各患者位置決め固定システムの位置は、主制御部110により、副制御部若しくは主制御部110により、又は分離したコンピュータ制御部により、記録及び保存がなされる。次に、患者に対する最終的な治療の指導中に、患者1430の腫瘍1420を見つけるために医療装置が使用される。画像システム170は、1つ以上のMRI、X線、CT、陽子ビーム断層撮影装置、及びその他を備えている。画像システム170からの画像が解析され、陽子線治療方針が立てられるこの時点までは、任意の時間を要する。患者は、この時間の間に固定システムから出ることができる。その任意の時間は、数分、数時間、又は数日であるかも知れない。患者が患者位置決めユニットに戻ったときには、コンピュータは、患者位置決めユニットを記録された位置に戻すことができる。このシステムは、画像処理及び治療方針の策定の期間中に使用される位置に、患者の迅速な再位置決めを可能にするので、患者位置決めの設定時間を最少にすることができ、且つ、癌治療に使用される荷電陽子ビーム・システム100の時間を最大にすることができる。
【0199】
(患者の配置)
好ましくは、患者1430は、陽子ビーム経路269に精密且つ正確な方法で位置合わせされる。種々の配置システムについて説明する。患者配置システムは、横臥位置決めシステムを用いて説明するが、半垂直位置決めシステム及び座位位置決めシステムにも同じく適用することができる。
【0200】
第1の配置システムにおいては、患者は、載置台に対して既知の位置に配置される。例えば、1つ以上の位置決め固定システムは、載置台の上の精密及び又は正確な位置に患者を位置決めする。載置台に結合され又は着脱可能に結合された配置固定の要素は、載置台に患者を位置決めするために任意に使用される。配置固定システムの要素は、手の要素、手先の要素、頭部の要素、又は胴体の要素など、患者のいかなる位置を位置決めするためにも使用される。
【0201】
第2の配置システムにおいては、載置台などの、1つ以上の位置決め固定システム又は支持部の要素が、患者治療室における要素に対して位置合わせされる。基本的には、錠/鍵システムが任意に使用され、錠は鍵に適合する。錠の要素と鍵の要素とは組み合わされて、x軸の位置、y軸の位置、及びz軸の位置、チルト、ヨウ、及びロールのいずれに関しても、陽子ビーム経路269に対して患者を配置する。基本的には、錠は第1の登録要素であり、鍵は第2の登録要素である。第2の登録要素は、第1の登録要素の中に適合し、第1の登録要素に隣接し、又は第1の登録要素と共に、陽子ビーム経路269に対する患者及び又は支持部の要素配置を固定する。登録要素のいくつかの実施例は、機械的停止要素などの機械的要素及び関連する位置又は接触を表す電気的接続要素のうち任意の要素を有する。
【0202】
第3の配置システムにおいては、上述した画像システムが使用され、陽子ビーム経路269に対する患者の位置、又は、載置台などのように患者を支えている支持部の要素若しくは構造体に配置された画像標識に対する患者の位置を測定するのに使用される。X線画像システムなどの画像システムを使用した場合には、第1の配置システム又は位置決め固定システムは、画像システムが対象の配置を決定した後は、患者の移動を最小限に抑える。同様に、X線画像システムなどの画像システムを使用した場合には、第1の配置システム及び又は第2の配置システムは、陽子ビーム経路269に対する患者の概略の位置を提供し、その後に画像システムが陽子ビーム経路269に対する患者の細かい位置を測定する。
【0203】
(患者の呼吸に同期したX線)
一実施形態において、X線画像は、患者の呼吸に同期して収集される。患者の呼吸に同期すると、患者の呼吸周期の期間における体の構成要素の動きに関係する位置の曖昧さを解消するので、陽子配送精度を高めることができる。
【0204】
第2の実施形態においては、X線システムが、陽子治療ビームによって見られる方向と同じ方向における患者のX線画像を得るために使用され、X線システム及び陽子治療ビームの双方が患者の呼吸に同期する。好ましくは、同期したシステムは、陰イオン源、シンクロトロン、及び又は、患者の呼吸に合わせたX線を提供する目標の方法及び装置と併用されて、粒子線治療の照射の直前及び又は同時にX線が収集されて、患者位置に対して目標及び制御がなされた配送を保証することにより、陽子ビーム位置確認システムを用いて、患者の正常な組織の周囲に対する破壊を最小にしつつ、強力な癌腫瘍の効率的な、精密な、及び又は正確な治療を得ることができる。
【0205】
X線配送制御アルゴリズムは、対象が呼吸を止めている呼吸の頂点又は底など、各呼吸の所定の期間内に、患者1430に対するX線の配送に同期させるのに使用される。X線画像との組合せを明確にするために、患者は、X線ビーム経路2270に対して正確に位置決めされて、精密に位置合わせされることが好ましい。X線配送制御アルゴリズムは、好ましくは、呼吸制御モジュールと統合される。このため、X線配送制御アルゴリズムは、対象が呼吸をしている時、呼吸の周期における対象の現在位置、及び又は対象が呼吸を止めている時を認識する。この方法において、X線配送制御アルゴリズムは、選択された呼吸の周期の期間にX線を配送することができる。正確且つ精密な患者の位置合わせによって、(1)他の体の器官に対する腫瘍1420のさらに正確且つ精密な位置、及び(2)患者1430及び腫瘍1420の3次元のX線画像の発生において、より正確且つ精密なX線の組合せが可能になる。
【0206】
図26は、患者の呼吸の周期の時間の既知の関数としてのX線発生装置2100又は3次元X線発生装置2100を使用して、患者1430及び腫瘍1420のX線画像2600を発生する一実施例である。一実施形態では、第1のステップとして、主制御部110は、指令し、監視し、及び又は患者位置決め2610を通知される。患者位置決め2610の第1の実施例では、主制御部110の制御に従って、自動的な患者位置決めシステムが、X線ビーム経路2270に対する患者1430の位置合わせのために使用される。患者位置決めの第2の実施例では、主制御部110は、患者1430が位置合わせされるセンサ又は人間の入力を介して通知される。第2のステップにおいて、後述するように、患者の呼吸が監視される2620。呼吸監視の第1の実施例として、患者の呼吸の周期において既知の点におけるX線が収集される2640。呼吸監視の第2の実施例では、患者の呼吸の制御の第3のステップにおいて、まず、患者の呼吸の周期が制御され2630、次に、第4のステップとして、患者の呼吸の周期の制御された点においてX線が収集される2640。患者位置決め2610の呼吸の周期、患者の呼吸の監視2620、患者の呼吸の制御2630、及び、X線の収集2640は、異なる患者位置で繰り返されることが好ましい。例えば、患者1430は、軸1417のまわりに回転され、X線が、回転の関数として収集される。第5のステップにおいて、患者1430、腫瘍1420、及び、上述した3次元X線発生装置2100と同じように、収集されたX線画像を用いた腫瘍のまわりの体の器官の3次元X線画像2650が発生される。患者の呼吸を監視するステップ及びそれを制御するステップについては、さらに後述する。
【0207】
(患者の呼吸の監視)
患者の呼吸パターンは、好ましくは、監視される2620。対象又は患者1430は、各呼吸とともに動く体の多くの部分で呼吸している。例えば、対象が呼吸すると、肺が動くにつれて、胃、腎臓、肝臓、胸の筋肉、皮膚、心臓、及び肺など、体の中の器官の関係する位置も動く。一般的には、胴体のほとんど又はすべての部分が呼吸と共に動く。事実、発明者らは、呼吸と一緒の胴体の動きに加えて、各呼吸と共に頭部及び脚にも様々な動きが存在することを認識した。陽子は腫瘍に特化して配送され周辺の組織には配送されないので、体への陽子線量の配送の際に動きを考慮すべきである。ビーム経路に対する腫瘍の存在位置が、動きによってあいまいになるという結果を生じる。この関係を少しでも解決するために、陽子は一連の呼吸の周期の各々における同一のポイントに選択的に配送される。
【0208】
最初に、対象の呼吸のリズムパターンが測定される2620。その周期が観察され又は測定される。例えば、陽子ビームのオペレータは、対象が呼吸している時又は呼吸と呼吸との間を観察できるので、陽子の配送を各呼吸の所定の周期に合わせることができる。あるいは他の実施例として、対象は息を吸うこと、息を吐くこと、及び又は息を止めることを指示され、その指示された時間の間に陽子が配送される。
【0209】
好ましくは、1つ以上のセンサが個人個人の呼吸の周期を測定するのに使用される。呼吸監視システムの2つの実施例、(1)温度監視システム、(2)力監視システムが提供される。
【0210】
温度呼吸監視システムの第1の実施例について説明する。温度呼吸監視システムにおいては、センサは、患者の鼻及び又は口のそばに配置される。上述したように、患者のあごは任意に固定されているので、温度呼吸監視システムは、好ましくは、患者の鼻の呼吸路のそばに配置される。陽子線治療に用いる温度センサ・システムの部品による立体的な構造からの妨害を避けるために、温度呼吸監視システムは、好ましくは、胴体又は脚の腫瘍を治療する場合など、頭又は首には位置していない腫瘍を治療する場合に使用される。温度呼吸監視システムにおいては、第1の温度抵抗2595が使用されて、患者の呼吸の周期及び又は患者の呼吸の周期内の位置を監視する。好ましくは、第1の温度抵抗2595は患者の鼻のそばに配置され、その結果、鼻を通って第1の温度抵抗2595に吐く患者の息が、第1の温度抵抗2595を暖めて、吐息を表示する。好ましくは、第2の温度抵抗が環境温度センサとして動作する。第2の温度抵抗は、好ましくは、患者の呼吸路から外れた位置ではあるが、第1の温度抵抗2595と同じ治療部屋の環境に配置される。温度抵抗2595等からの電流など、センサによって発生された信号は、好ましくは、電圧に変換されて、主制御部110又は主制御部の副制御部に送信される。第2の温度抵抗は、好ましくは、第1の温度抵抗2595の信号の一部である環境温度の変動を調整するのに使用され、例えば、温度抵抗2595等の数値の間の差分を計算することによって、患者の呼吸の周期のより正確な読取を取得できる。
【0211】
力/圧力呼吸監視システムの第2の実施例について説明する。力呼吸監視システムにおいては、胴体のそばにセンサが配置される。陽子線治療に用いる力センサ・システムの部品による立体的な構造からの妨害を避けるために、力呼吸監視システムは、好ましくは、頭、首、又は脚に位置している腫瘍を治療する場合に使用される。力呼吸監視システムにおいては、ベルト又はストラップ2555が、患者の各呼吸の周期と共に拡張又は収縮する患者の胴体の範囲の近傍に配置される。ベルト2555は、患者の胸のまわりにぴったりと合まって、且つ、伸縮可能であることが好ましい。力測定器2557はベルトに取り付けられて、患者の呼吸のパターンを検知する。力測定器2557にかけられる力は、呼吸の周期の間隔と相関関係がある。力測定器2557からの信号は、好ましくは、主制御部110又は主制御部の副制御部に送信される。
【0212】
(呼吸の制御)
図26において、対象の呼吸のリズムパターンが測定された後は、信号が対象に送られて、呼吸の周波数2630をさらに正確に制御する。例えば、表示画面2590が対象の前に配置されて、呼吸を止める時及び呼吸する時を対象に指示する。通常、呼吸制御モジュールは、1つ以上の呼吸センサからの入力を使用する。例えば、その入力は、次の呼吸の吐息がいつ完了するかを測定するのに使用される。呼吸の底において、制御モジュールは、例えば、モニタ上で、音声信号を介して、デジタル化され且つ自動的に発生された音声指令、又は、可視制御信号を介して、呼吸止め信号を患者に提示する。好ましくは、表示モニタ2590は対象の前に配置され、また、表示モニタは少なくとも呼吸の指令を対象に表示する。通常、対象は、約1/2、1、2、3、5又は10秒などの短い時間の間、呼吸を止めることを指示される。呼吸が止められる時間は、好ましくは、腫瘍に対する陽子ビームの配送時間に同期しており、その時間は約1/2、1、2、又は3秒である。呼吸の底において陽子を配送することが好ましいとはいえ、陽子は呼吸の周期の任意の点、例えば、最大吸入時に配送されてもよい。呼吸の頂点、又は、呼吸制御モジュールによって患者が息を深く吸い込んで、呼吸を止めることを指示された時の配送は、胸の空洞が最大になって、且つ、ある腫瘍にとって腫瘍と周辺の組織との間の距離が最大であるか、又は増加した体積の結果として周辺の組織が持ち上げられた呼吸の頂点において実行してもよい。したがって、周辺の組織を叩く陽子は最小になる。呼吸を止めることを要求する指示に対して、それを実行する作業を対象に気付かせるために、表示画面は、任意に3、2、1秒のカウントダウンなどにより、対象に対して呼吸を止めることを要求する時を告げるようにしてもよい。
【0213】
(呼吸と同期した陽子ビーム治療)
陽子配送制御アルゴリズムは、対象が呼吸を止めている呼吸の頂点又は底など、各呼吸の所定の期間内に、腫瘍に対する陽子の配送に同期させるのに使用される。陽子配送制御アルゴリズムは、好ましくは、呼吸制御モジュールと統合される。このため、陽子配送制御アルゴリズムは、患者が呼吸をしている時、呼吸の周期における患者の現在位置、及び又は患者が呼吸を止めている時を認識する。陽子配送制御アルゴリズムは、陽子がシンクロトロンの中に入射され及び又は予備的に加速される時、上述したように発振器を励起するためにRF信号が供給される時、及び、上述したようにシンクロトロンから陽子を抽出するためにDC電圧が供給される時を制御する。通常、陽子配送制御アルゴリズムは、対象が呼吸を止めることを指示される前に、又は、陽子配送時間のために選択された呼吸の周期における特定された期間の前に、陽子の予備加速及びそれに続くRF励起発振を初期化する。この方法において、陽子配送制御アルゴリズムは、上述したように、第2の一対のプレートに高いDC電圧を同時に又はほぼ同時に配送することによって、選択された呼吸の周期の期間に陽子を配送することができるので、シンクロトロンからの陽子の抽出ができると共に、それに続く患者に対する陽子の配送を選択された時点にすることができる。シンクロトロンにおける陽子の加速の期間は一定であるか又は陽子ビームの所望のエネルギーレベルに対して既知であるので、陽子配送制御アルゴリズムは、患者の呼吸の周期又は所望の呼吸の周期に対して整合するAC RF信号を設定するのに使用される。
【0214】
この実施形態においては、ある好適な実施形態を参照して本発明を説明したが、当業者は、本発明の精神及び範囲を逸脱することなく、この明細書において上記した実施形態に置き換えることができる他の応用例を容易に想到するであろう。
【0215】
(関連出願の相互参照)
本出願は、
米国仮特許出願61/055,395(2008年5月22日出願)、
米国仮特許出願61/137,574(2008年8月1日出願)、
米国仮特許出願61/192,245(2008年9月17日出願)、
米国仮特許出願61/055,409(2008年5月22日出願)、
米国仮特許出願61/203,308(2008年12月22日出願)、
米国仮特許出願61/188,407(2008年8月11日出願)、
米国仮特許出願61/209,529(2009年3月9日出願)、
米国仮特許出願61/188,406(2008年8月11日出願)、
米国仮特許出願61/189,815(2008年8月25日出願)、
米国仮特許出願61/208,182(2009年2月23日出願)、
米国仮特許出願61/201,731(2008年12月15日出願)、
米国仮特許出願61/208,971(2009年3月3日出願)、
米国仮特許出願61/205,362(2009年1月12日出願)、
米国仮特許出願61/134,717(2008年7月14日出願)、
米国仮特許出願61/134,707(2008年7月14日出願)、
米国仮特許出願61/201,732(2008年12月15日出願)、
米国仮特許出願61/198,509(2008年11月7日出願)、
米国仮特許出願61/134,718(2008年7月14日出願)、
米国仮特許出願61/190,613(2008年9月2日出願)、
米国仮特許出願61/191,043(2008年9月8日出願)、
米国仮特許出願61/192,237(2008年9月17日出願)、
米国仮特許出願61/201,728(2008年12月15日出願)、
米国仮特許出願61/190,546(2008年9月2日出願)、
米国仮特許出願61/189,017(2008年8月15日出願)、
米国仮特許出願61/198,248(2008年11月5日出願)、
米国仮特許出願61/198,508(2008年11月7日出願)、
米国仮特許出願61/197,971(2008年11月3日出願)、
米国仮特許出願61/199,405(2008年11月17日出願)、
米国仮特許出願61/199,403(2008年11月17日出願)、
米国仮特許出願61/199,404(2008年11月17日出願)、
の利益を主張し、及び
国際特許出願PCT/RU2009/00015「Multi-Field Charged Particle Cancer Therapy Method and Apparatus:マルチフィールド荷電粒子の癌治療の方法及び装置(2009年3月4日出願)」
について優先権を主張する。
これらのすべては、これらの開示内容を引用することにより、その全部がこの出願に組み込まれている。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒子ビーム癌治療システムの一環としてのX線装置であって、前記粒子ビーム癌治療システムが患者の腫瘍を照射する荷電粒子ビームの使用中に、前記X線装置は、
荷電粒子ビームの40ミリメートル以内に配置されたX線発生源であって、前記X線発生源が、(1)当該X線発生源の使用期間中、及び(2)荷電粒子ビームによる腫瘍治療の期間中に、単一の静的な位置を維持するX線発生源を備え、
前記X線発生源から放射されたX線が、荷電粒子ビームと実質的に平行に走る構成とした
ことを特徴とするX線装置。
【請求項2】
前記X線発生源は、タングステンのアノードを有する
ことを特徴とする請求項1に記載のX線装置。
【請求項3】
第1の断面距離を有する電子発生のカソードをさらに備え、X線は前記カソードからの電子が、前記タングステンのアノードを叩くことで発生される構成とした
ことを特徴とする請求項2に記載のX線装置。
【請求項4】
フォーカス制御電極と、
加速電極と、をさらに備え、前記フォーカス電極及び前記加速電極が、前記カソードと前記アノードとの間に配置され、前記フォーカス制御電極が、前記第1の断面距離から第2の断面距離まで電子をフォーカスし、前記第2の断面距離が、前記第1の断面距離の半分より短い構成とした
ことを特徴とする請求項3に記載のX線装置。
【請求項5】
制御電極と、
複数の加速電極と、
磁界レンズと、
4極磁石と、をさらに備えたX線装置であって、前記制御電極、前記加速電極、前記磁界レンズ、及び前記4極磁石のすべてが、前記カソードと前記アノードとの間に配置され、前記制御電極、前記加速電極、前記磁界レンズ、及び前記4極磁石が、電子ビーム断面領域に実質的に平行な電子ビームを形成するために組み合わされ、前記カソードの断面領域が、電子ビーム断面領域の約8倍よりも大きい構成とした
ことを特徴とする請求項3に記載のX線装置。
【請求項6】
前記実質的に平行な電子ビームが長円の断面形状を有し、前記長円の断面形状を有する電子ビームによって叩かれたときに、前記X線発生源の幾何学的形状が、ほぼ円形の断面形状のX線ビームを発生し、そのX線ビームが、荷電粒子ビームと実質的に平行に走る構成とした
ことを特徴とする請求項5に記載のX線装置。
【請求項7】
前記タングステンのアノードの背面に結合された冷却要素をさらに備える
ことを特徴とする請求項5に記載のX線装置。
【請求項8】
前記X線発生源の使用は、腫瘍治療のための荷電粒子ビームの次の使用から30秒以内に行われる構成とした
ことを特徴とする請求項1に記載のX線装置。
【請求項9】
X線断層撮影システムをさらに備え、
患者を保持する回転自在な載置台を有するX線装置であって、
前記回転自在な載置台が患者の照射期間中に約360度にわたって回転し、
前記X線発生源からのX線が、前記回転自在な載置台の4カ所よりも多い回転位置からの画像を出力する、構成とした
ことを特徴とする請求項8に記載のX線装置。
【請求項10】
腫瘍の多磁場画像が、X線画像の収集の間に患者を保持する載置台の回転によって収集され、そのX線画像は、少なくとも前記載置台の10カ所の回転位置において発生し、そのX線画像は、前記X線発生源からのX線を用いて生成される、構成とした
ことを特徴とする請求項1に記載のX線装置。
【請求項11】
患者の呼吸の周期に対応して呼吸信号を発生する呼吸センサと、
患者を保持する回転自在な載置台と、をさらに備え、前記回転自在な載置台が、患者の照射期間中に少なくとも180度にわたって回転するX線装置であって、
前記X線発生源からのX線が、呼吸の周期内の一組の点においてX線画像を生成するために前記呼吸信号を用いてタイミングを測り、
前記X線発生源が、前記回転自在な載置台の10カ所よりも多い回転位置からのX線画像を提供し、
X線画像が、腫瘍の3次元画像を形成するために組み合わされる、構成とした
ことを特徴とする請求項1に記載のX線装置。
【請求項12】
荷電粒子ビームを加速するシンクロトロンと、
患者の呼吸の周期に対応して呼吸信号を発生する呼吸センサと、
患者を保持すると共に、患者の照射期間中に少なくとも180度にわたって回転する回転自在な載置台と、をさらに備えるX線装置であって、
前記シンクロトロンが、前記呼吸信号を用いて呼吸の周期内の一組の点において腫瘍に対して前記荷電粒子ビームを配送し、
前記呼吸の周期内の一組の点における前記荷電粒子ビームの前記配送が、前記回転自在な載置台の4カ所よりも多い回転位置で発生し、
前記X線発生源からのX線を用いて収集されたX線画像を使用して腫瘍が目標にされる、構成とした
ことを特徴とする請求項1に記載のX線装置。
【請求項13】
前記呼吸の周期内の一組の点においてX線画像を発生する構成とした
ことを特徴とする請求項12に記載のX線装置。
【請求項14】
前記呼吸センサは、患者の胸に縛られた力測定器である
ことを特徴とする請求項12に記載のX線装置。
【請求項15】
前記呼吸センサは、
患者の鼻に近接して配置された第1の温度抵抗と、
患者の呼吸路から外れた位置で、且つ、前記回転自在な載置台及び患者と同じ治療部屋の環境に配置される第2の温度抵抗と、を有し、
前記呼吸信号は、前記第1の温度抵抗及び前記第2の温度抵抗の読取値の間の差を用いて発生される構成とした
ことを特徴とする請求項12に記載のX線装置。
【請求項16】
患者に対して呼吸制御指令を表示する表示画面をさらに備える
ことを特徴とする請求項12に記載のX線装置。
【請求項17】
前記呼吸信号は、前記呼吸制御指令を発生する際に使用され、前記呼吸制御指令は、患者が呼吸を保持すべき時までのカウントダウンを有する、構成とした
ことを特徴とする請求項12に記載のX線装置。
【請求項18】
前記呼吸の周期内の一組の点における荷電粒子ビームの前記配送が、前記回転自在な載置台の20カ所よりも多い回転位置で発生し、前記荷電粒子ビームの近位のエネルギーが、腫瘍の周囲に散乱される、構成とした
ことを特徴とする請求項12に記載のX線装置。
【請求項19】
シンクロトロンをさらに備えるX線装置であって、前記シンクロトロンは、
ベータトロン振動を有する第1の一対の羽根を備える高周波空洞システムと、
荷電粒子ビームの中の十分なベータトロン振動を持って通過する粒子から速度が低下した荷電粒子を発生する箔と、を有し、ラムバーソン磁石を介して荷電粒子を前記シンクロトロンの外に導く抽出電圧を有する第2の一対の羽根を、速度が低下した荷電粒子が通過する構成とした
ことを特徴とする請求項1に記載のX線装置。
【請求項20】
ベータトロン振動を有する前記高周波空洞システムが、前記呼吸信号を用いてタイミングを測る構成とした
ことを特徴とする請求項19に記載のX線装置。
【請求項21】
前記シンクロトロンは、
正確に4個の方向転換部を有すると共に、
シンクロトロンの周回経路に4極磁石を有しない、構成とした
ことを特徴とする請求項19に記載のX線装置。
【請求項22】
前記シンクロトロンは、
正確に4個の90度の方向転換部を備える
ことを特徴とする請求項19に記載のX線装置。
【請求項23】
前記4個の90度の方向転換部の各々は、4個の方向転換磁石を有し、前記4個の磁石の各々が、2つの面取りされたフォーカス・エッジを有する、構成とした
ことを特徴とする請求項22に記載のX線装置。
【請求項24】
入射システムをさらに備え、前記入射システムが、プラズマ室の中に少なくとも部分的に含まれる磁性材料を有し、前記プラズマ室が、変換箔において陰イオンを荷電粒子ビームに変換する、構成とした
ことを特徴とする請求項1に記載のX線装置。
【請求項25】
粒子ビーム癌治療システムの一環としてのX線方法であって、前記粒子ビーム癌治療システムが患者の腫瘍を照射する荷電粒子ビームの使用中に、前記X線方法は、
荷電粒子ビームの40ミリメートル以内に配置されたX線発生源であって、前記X線発生源が、(1)当該X線発生源の使用期間中、及び(2)荷電粒子ビームによる腫瘍治療の期間中に、単一の静的な位置を維持するX線発生源によって、X線を発生する工程を有するX線方法であって、
前記X線発生源から放射されたX線が、荷電粒子ビームと実質的に平行に走る工程を有する
ことを特徴とするX線方法。
【請求項26】
前記X線発生源が、タングステンのアノードを備えるように構成する工程を有する
ことを特徴とする請求項25に記載のX線方法。
【請求項27】
カソードによって電子を発生する工程をさらに有し、前記カソードが、第1の断面距離を有し、X線は、前記カソードからの電子が前記タングステンのアノードを叩くことによって発生されるように構成する工程を有する
ことを特徴とする請求項26に記載のX線方法。
【請求項28】
フォーカス制御電極によって前記第1の断面距離から第2の断面距離まで電子をフォーカスする工程と、
加速電極によって電子を加速する工程と、をさらに有し、前記フォーカス制御電極及び前記加速電極が、前記カソードと前記アノードとの間に配置されるように構成する工程を有する
ことを特徴とする請求項27に記載のX線方法。
【請求項29】
制御電極、複数の加速電極、磁界レンズ、及び4極磁石によって実質的に平行な電子ビームを形成する工程をさらに有し、前記制御電極、前記加速電極、前記磁界レンズ、及び前記4極磁石のすべてが、前記カソードと前記アノードとの間に配置されるように構成する工程を有するX線方法であって、
電子ビームが断面領域を有し、前記カソードの断面領域が、電子ビームの断面領域の約8倍よりも大きいように構成する工程を、有する
ことを特徴とする請求項27に記載のX線方法。
【請求項30】
実質的に円形の断面のX線ビームを形成する工程をさらに有し、前記実質的に平行な電子ビームが、長円の断面形状を有し、前記長円の断面形状を有する電子ビームによって叩かれたときに、前記X線発生源の幾何学的形状が、実質的に円形の断面のX線ビームを発生する工程を有する
ことを特徴とする請求項29に記載のX線方法。
【請求項31】
前記タングステンのアノードの背面に結合された冷却要素によって前記タングステンのアノードを冷却する工程をさらに有する
ことを特徴とする請求項29に記載のX線方法。
【請求項32】
腫瘍治療のための荷電粒子ビームの次の使用から30秒以内に、前記X線発生源を使用する工程をさらに有する
ことを特徴とする請求項25に記載のX線方法。
【請求項33】
回転自在な載置台に患者を保持する工程と、
患者に対する照射の期間中に、前記回転自在な載置台を約360度にわたって回転する工程と、
前記X線発生源からのX線によって、前記回転自在な載置台の4カ所よりも多い回転位置から画像を生成する工程と、
腫瘍の3次元画像を形成するために前記画像を組み合わせる工程と、をさらに有する
ことを特徴とする請求項32に記載のX線方法。
【請求項34】
腫瘍の多磁場画像を生成する工程をさらに有し、その多磁場画像は、X線画像の収集の間に患者を保持する載置台が回転することによって収集されるX線方法であって、
X線画像が、前記載置台の少なくとも10カ所の回転位置において発生する工程と、
X線画像が、前記X線発生源からのX線によって生成される工程と、を有する
ことを特徴とする請求項25に記載のX線方法。
【請求項35】
呼吸センサによって患者の呼吸の周期に対応した呼吸信号を発生する工程と、
回転自在な載置台を回転する工程であって、前記回転自在な載置台が患者を保持し、前記回転自在な回転台が、患者の照射期間中に少なくとも180度にわたって回転する工程と、
呼吸の周期内の一組の点においてX線画像を生成するために、前記呼吸信号を用いて前記X線発生源のタイミングを測る工程であって、前記X線画像が、回転自在な載置台の10カ所よりも多い回転位置を表す工程と、
腫瘍の3次元画像を形成するために、X線画像を組み合わせる工程と、をさらに有する
ことを特徴とする請求項25に記載のX線方法。
【請求項36】
シンクロトロンによって荷電粒子ビームを加速する工程と、
呼吸センサによって呼吸信号を発生する工程であって、前記呼吸信号が、患者の呼吸の周期に対応する工程と、
回転自在な載置台によって患者を回転する工程であって、前記回転自在な載置台が、患者の照射期間中に少なくとも180度にわたって回転する工程と、
前記呼吸信号を使用して、呼吸の周期内の一組の点において腫瘍に対して荷電粒子ビームを配送する工程と、をさらに有するX線方法であって、
前記呼吸の周期内の一組の点における前記荷電粒子ビームの配送が、前記載置台の4カ所の回転位置よりも多い回転位置で発生する工程と、
前記X線発生源からのX線を用いて収集されるX線画像を使用して、腫瘍が目標にされる工程と、を有する
ことを特徴とする請求項25に記載のX線方法。
【請求項37】
前記呼吸の周期内の一組の点においてX線画像を生成する工程をさらに有する
ことを特徴とする請求項36に記載のX線方法。
【請求項38】
前記呼吸センサは、患者の胸に縛られた力測定器によって構成する工程を有する
ことを特徴とする請求項36に記載のX線方法。
【請求項39】
患者の鼻に近接して第1の温度抵抗を配置する工程と、
患者の呼吸路から外れた位置で、且つ、前記回転自在な載置台及び患者と同じ治療部屋の環境に第2の温度抵抗を配置する工程と、
前記第1の温度抵抗及び前記第2の温度抵抗の間の読取値の差を用いて前記呼吸信号を発生する工程と、をさらに有する
ことを特徴とする請求項36に記載のX線方法。
【請求項40】
患者に対する呼吸制御指令を表示画面に表示する工程をさらに有する
ことを特徴とする請求項36に記載のX線方法。
【請求項41】
前記呼吸信号を使用して呼吸制御指令を発生する工程であって、前記呼吸制御指令が、患者が呼吸を保持すべき時までのカウントダウンを有する工程をさらに有する
ことを特徴とする請求項36に記載のX線方法。
【請求項42】
前記回転自在な載置台の20カ所よりも多い回転位置で、前記呼吸の一組の点において荷電粒子ビームを配送することによって、前記荷電粒子ビームの近位のエネルギーを腫瘍近傍の周囲に散乱する工程をさらに有する
ことを特徴とする請求項36に記載のX線方法。
【請求項43】
シンクロトロンを設ける工程であって、前記シンクロトロンが、
ベータトロン振動を有する第1の一対の羽根を有する高周波空洞システムと、
十分なベータトロン振動を有する荷電粒子ビームの中の粒子から速度が低下した荷電粒子を発生して自身を横断させる箔と、を有するように構成する工程と、
抽出電圧を有する第2の一対の羽根を速度が低下した荷電粒子が通過した後に、ラムバーソン磁石を介して荷電粒子を前記シンクロトロンの外に導く工程と、をさらに有する
ことを特徴とする請求項25に記載のX線方法。
【請求項44】
前記呼吸信号を用いてベータトロン振動を有する前記高周波空洞システムのタイミングを測る工程をさらに有する
ことを特徴とする請求項43に記載のX線方法。
【請求項45】
前記シンクロトロンが、正確に4個の屈曲部を備え、シンクロトロンの周回経路に4極磁石を備えないように構成する工程をさらに有する
ことを特徴とする請求項43に記載のX線方法。
【請求項46】
前記シンクロトロンが、正確に4個の90度の方向転換部を備えるように構成する工程を有する
ことを特徴とする請求項43に記載のX線方法。
【請求項47】
前記4個の90度の方向転換部の各々が4個の磁石を有し、前記4個の方向転換磁石の各々が、2つの面取りされたフォーカス・エッジを有するように構成する工程を有する
ことを特徴とする請求項46に記載のX線方法。
【請求項48】
変換箔において陰イオンを荷電粒子ビームに変換する工程をさらに有し、プラズマ室の中に少なくとも部分的に含まれる磁性材料を有する入射システムが陰イオンを発生するように構成する工程を有する
ことを特徴とする請求項25に記載のX線方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【公表番号】特表2011−523864(P2011−523864A)
【公表日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−510455(P2011−510455)
【出願日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際出願番号】PCT/RU2009/000250
【国際公開番号】WO2009/142548
【国際公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【出願人】(510308920)
【Fターム(参考)】