荷電粒子線照射システム、及び中性子線照射システム
【課題】荷電粒子を加速させる加速器を回転ガントリーに取り付けることで、省スペース化を図りつつ、加速器から発生する2次的な放射線による被曝のおそれを低減することが可能な荷電粒子線照射システムを提供する。
【解決手段】陽子線治療装置(荷電粒子線照射装置)1では、回転軸回りに回転可能なガントリー3に、荷電粒子を加速させる加速器2を取り付ける。加速器2の側面2aと治療台34(被照射体)との間に、放射線を遮蔽する遮蔽体41を配置する。これにより、加速器2内で荷電粒子が磁極や電極などの部品と衝突することで発生する2次的な放射線を、遮蔽体41によって遮蔽することができる。これらにより、システム全体の省スペース化を図りつつ、加速器2から発生する2次的な放射線による患者の被曝を防止する。
【解決手段】陽子線治療装置(荷電粒子線照射装置)1では、回転軸回りに回転可能なガントリー3に、荷電粒子を加速させる加速器2を取り付ける。加速器2の側面2aと治療台34(被照射体)との間に、放射線を遮蔽する遮蔽体41を配置する。これにより、加速器2内で荷電粒子が磁極や電極などの部品と衝突することで発生する2次的な放射線を、遮蔽体41によって遮蔽することができる。これらにより、システム全体の省スペース化を図りつつ、加速器2から発生する2次的な放射線による患者の被曝を防止する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷電粒子線照射システム、及び中性子線照射システムに関する。
【背景技術】
【0002】
陽子ビームなどの荷電粒子を患者に照射してがん治療を行う設備が知られている。この種の設備は、イオン源により生成されたイオン(荷電粒子)を加速させる粒子加速器、粒子加速器で加速された荷電粒子を輸送する輸送ライン、及び患者に対して任意の方向から荷電粒子を照射する回転自在の照射装置(回転ガントリー)を備えている。
【0003】
下記特許文献1に記載の荷電粒子放射線治療システムでは、ビーム発生粒子加速器が、回転ガントリーに取り付けられている。この加速器は、加速器から出射されたビームが、患者に対して直接的に照射されるように、回転ガントリーに支持されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2009−515671号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載された従来技術では、加速器内において、加速された荷電粒子の一部が、磁場を発生させるための電極や磁極などの部品に衝突し、この衝突の際に発生する2次放射線(中性子線、ガンマ線など)が、患者が存在する方向に進行するおそれがある。このように、荷電粒子が加速器内の部品に当たることで発生して加速器の側面から放射される2次的な放射線による患者の被曝を低減又は防止することが求められている。
【0006】
本発明は、上記の課題を解決することを目的としており、荷電粒子を加速させる加速器を回転ガントリーに取り付けることで、省スペース化を図りつつ、加速器から発生する2次的な放射線による被曝のおそれを低減することが可能な荷電粒子線照射システム、及び中性子線照射システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明に係る荷電粒子線照射システムは、荷電粒子を周回軌道に沿って加速し、荷電粒子線を出射する加速器と、加速器を搭載し、所定軸線周りに回転又は揺動可能なガントリーと、ガントリーに搭載され、加速器から出射された荷電粒子線を被照射体に向けて照射可能である照射部と、を備え、ガントリー内に設けられていると共に、周回軌道の径方向に交差する面である加速器の側面から放射される放射線を遮蔽する遮蔽体が配置されていることを特徴としている。
【0008】
また、本発明に係る中性子線照射システムは、荷電粒子を周回軌道に沿って加速し、荷電粒子線を出射する加速器と、加速器を搭載し、所定軸線回りに回転又は揺動可能なガントリーと、加速器から出射された荷電粒子線が照射されることにより中性子線を発生させる中性子線発生部と、ガントリーに搭載され、中性子線発生部で発生した中性子線を被照射体に向けて照射可能である照射部と、を備え、ガントリー内に設けられると共に、周回軌道の径方向に交差する面である加速器の側面から放射される放射線を遮蔽する遮蔽体が配置されていることを特徴としている。
【0009】
このような荷電粒子線照射システム、及び中性子線照射システムによれば、荷電粒子を加速させる加速器、加速器から出射された荷電粒子線(又は荷電粒子線を照射することにより発生した中性子線)を照射する照射部が、ガントリーに取り付けられているため、荷電粒子線又は中性子線を照射するための装置全体を小型化することができる。また、この装置全体が一体型に纏めて構成されるため、事前に工場などで組み上げることも可能となり、工場で組み上げたものを設置現場まで輸送して、そのまま設置することもできる。
【0010】
また、この荷電粒子線照射システム、及び中性子線照射システムでは、加速器の側面と被照射体との間に、放射線を遮蔽する遮蔽体が配置されているため、加速器の側面から放射される2次的な放射線が、遮蔽体によって遮蔽されることになる。これにより、加速器内で荷電粒子が磁極や電極などの部品と衝突することで発生する2次的な放射線は、遮蔽体によって遮蔽されるので、加速器から発生して側面から放射される2次的な放射線による患者の被曝を抑制することができる。
【0011】
ここで、遮蔽体は、周回軌道の周方向において、被照射体と対向する側面の部分から放射される放射線を遮蔽する位置のみに配置されていることが好適である。これにより、例えば、加速器の側面において、被照射体が存在する方向の部分のみに遮蔽体を配置し、被照射体が存在していない方向の側面部分に遮蔽体を配置しない構成とすることができる。そのため、遮蔽体を効果的に配置することができ、遮蔽体の設置スペースを省略することができる。その結果、側部に遮蔽体を有する加速器の大型化を抑制することができる。また、ガントリーの重量増加を抑制することができる。
【0012】
また、ガントリー内に設けられ、被照射体へ荷電粒子線が照射される照射室を有し、遮蔽体は、照射室を構成する壁部に支持されていることが好ましい。これにより、遮蔽体を照射室を構成する壁部に取り付けることで、遮蔽体を加速器に取り付けないようにすることができる。そのため、例えば、加速器をメンテナンス(点検、補修など)する際に、遮蔽体を取り外す必要がなくなり、メンテナンスを容易に行うことができる。
【0013】
また、遮蔽体は、加速器の側面の全周を覆うように配置され、遮蔽体の荷電粒子線の出射口側に切欠き部が形成されている。これにより、加速器の側面から放射される放射線を全周にわたって遮蔽することができる。
【0014】
また、加速器から出力された荷電粒子を輸送する輸送ラインに設けられ、荷電粒子のうち所望のエネルギー幅の荷電粒子を選択的に通過させるエネルギー選択部を備え、当該エネルギー選択部と被照射体との間には、放射線を遮蔽する他の遮蔽体が配置されていることが好適である。所望のエネルギー幅の荷電粒子を選択的に通過させるエネルギー選択部では、選択されないエネルギー幅の荷電粒子は、エネルギー選択部を通過することなくエネルギー選択部内の部品に衝突することになる。このとき、荷電粒子が衝突することで2次的な放射線が発生するため、エネルギー選択部と被照射体との間に遮蔽体を配置することで、2次的な放射線を遮蔽する。これにより、エネルギー選択部で発生する2次的な放射線による被曝のおそれを低減することができる。
【0015】
また、遮蔽体は、複数の異なる材質が遮蔽体の厚み方向に積層されて構成されていることが好ましい。これにより、例えば、遮蔽体の厚み方向において、高エネルギーの2次的な放射線を遮蔽する能力が高い方の材料をサイクロトロン2の側面側に配置し、低エネルギーの2次的な放射線を遮蔽する能力が高い方の材料を外側に配置することにより、遮蔽シールド44を小型化することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る荷電粒子線照射システムによれば、荷電粒子を加速させる加速器を回転ガントリーに取り付けることで、省スペース化を図りつつ、加速器から発生する2次的な放射線による被曝のおそれを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1実施形態に係る陽子線治療システム(荷電粒子線照射システム)の概観を示す斜視図である。
【図2】回転部の回転軸線に沿って、図1から回転部の半分を取り除いた一部切り欠き斜視断面図である。
【図3】図1の陽子線治療システムの縦断面図である。
【図4】本発明の第2実施形態に係る陽子線治療システムの縦断面図である。
【図5】本発明の第3実施形態に係る陽子線治療システムの縦断面図である。
【図6】本発明の第4実施形態に係る陽子線治療システムの縦断面図である。
【図7】本発明の第5実施形態に係る陽子線治療システムの縦断面図である。
【図8】本発明の第6実施形態に係る陽子線治療システムを示す概略構成図である。
【図9】本発明の第7実施形態に係る陽子線治療システムを示す概略構成図である。
【図10】図9中のシンクロサイクロトロン、及びシンクロサイクロトロンの側面に設けられた遮蔽シールドを示す斜視図である。
【図11】本発明の第8実施形態に係る中性子線治療システムを示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る荷電粒子線照射システムの好適な実施形態について図面を参照しながら説明する。本実施形態では、荷電粒子線照射システムを陽子線治療システムとした場合について説明する。陽子線治療システムは、例えばがん治療に適用されるものであり、患者の体内の腫瘍(照射目標)に対して、陽子ビーム(荷電粒子線)を照射する装置である。
【0019】
(第1実施形態)
まず、図1〜図3を参照して、本発明の第1実施形態に係る陽子線治療システム1について説明する。図1は、本実施形態に係る陽子線治療システム1の概観を示す斜視図であり、図2は、回転部の回転軸線に沿って、図1から回転部の半分を取り除いた一部切り欠き斜視断面図であり、図3は、図1の陽子線治療システムの回転軸線に沿う縦断面図である。
【0020】
図1〜図3に示すように、陽子線治療システム1は、陽子ビームを生成するサイクロトロン(粒子加速器)2と、円筒形状をなし、回転軸線周りに360°回転可能な外殻部(ガントリー)3と、陽子ビームを照射目標に向けて照射可能な照射部4と、サイクロトロン2で生成された陽子ビームを照射部4へ輸送する輸送ライン5と、を備えて構成されている。
【0021】
サイクロトロン2は、イオン源(図示せず)から供給されるイオン(水素の陽イオン)を真空箱(図示せず)の内部で加速させて、陽子ビームを生成する。サイクロトロン2の内部には、イオンを加速させるための磁場を形成するために、電磁石(鉄ヨーク)、電極などの部品(不図示)が配置されている。イオンは、形成された磁場によって、らせん状の軌道(周回軌道)に沿って加速される。サイクロトロン2では、イオンを加速させた後に陽子ビームを出射する。サイクロトロン2は輸送ライン5に連絡しており、生成された陽子ビームは輸送ライン5に導入される。
【0022】
外殻部(ガントリー)3は、図1及び図2に示すように、薄肉構造の円筒体であり、剛性を保ちつつ軽量化できるよう構成されている。外殻部3は、外殻部3の下方に配置されたローラ装置40によって、円筒形状の軸心A周りに回転自在に支持されている。外殻部3は、円筒形状の両端部近傍の外周面にて、ローラ装置40と当接し、モータ(図示せず)によりローラ装置40が駆動すると回転力が付与される。また、ブレーキ装置(図示せず)によって回転が停止される。なお、外殻部3の軸線方向の全長は例えば8メートルであり、直径は例えば6メートルである。なお、ガントリーは、円筒体を有していない構成でもよく、軸線A回りに180°揺動可能な枠体を有する構成でもよい(例えば図8参照)。
【0023】
外殻部3は、図2に示すように、その内部に、軸心A(所定軸線)と略直交するように仕切板31を備える。外殻部3は、この仕切板31によって、その内部を軸心方向に治療用領域(照射室)32及び陽子ビーム生成用領域(ビーム生成室)33の2つの領域に区切られている。また、本実施形態の陽子線治療システム1では、図3に示すように、サイクロトロン2の側面2aと、治療台34との間に、遮蔽シールド41が設けられている(詳しくは後述する)。なお、図2では、図を見易くするために、サイクロトロン2の側部に設けられた遮蔽シールド41の図示を省略している。
【0024】
治療用領域32には、陽子線治療の患者が横たわる治療台34が配置される。治療台34は、陽子ビーム照射時には、移動手段35により外殻部3の回転軸Aの近傍に配置される。また、治療台34は、移動手段35により、外殻部3の治療用領域32側の端部36の開口を介して、陽子線治療システム1の外部及び内部(治療用領域32)の間を移動可能である。
【0025】
この外殻部3の治療用領域32には、さらに照射部4が、外殻部3の回転軸Aに向かう方向Bにビームを照射するように固定して設置されている。照射部4は、外殻部3の回転に伴って治療台34の周囲を自在に回動し、外殻部3の回転軸周りの任意の方向から、治療台34の患者に対して陽子ビームを照射することができる。なお、照射部4はガントリーの回転に伴って回転可能であれば、その他の位置に取り付けられていても良く、例えば、外郭部3の内周面や、ベンディングマグネット53の端部などに取り付けられていてもよい。
【0026】
輸送ライン5は、その始端においてサイクロトロン2と連結され、終端において照射部4と連結されており、サイクロトロン2で加速された陽子ビームを照射部4へ輸送する。輸送ライン5は、陽子ビームを収束させるための複数の四極電磁石51、陽子ビームの照射エネルギーを調整するための複数(図2では3個)のESS(エネルギー選択システム、エネルギー選択部)52などを備え、その終端において、照射部4と連結する直前の位置に、陽子ビームを(本実施形態では略90度)湾曲させ、照射部4への陽子ビームの入射方向を決めるベンディングマグネット(偏向磁石)53を備えている。ベンディングマグネット53は、図2に示すように、治療用領域32において、照射部4から外殻部3の遠心方向に設置されている。なお、輸送ライン5には、その全体にわたり、陽子ビームの軌道に沿ってビーム輸送管(図示省略)が設けられている。
【0027】
ESS52は、輸送されてきた所定のエネルギー分布を有する陽子ビームから所望のエネルギー幅の陽子ビームを選択的に取り出すものである。ESS52には、複数のスリットが設けられ、陽子ビームが通過可能なスリットを設定することで、所望のエネルギー幅の荷電粒子のみを選択的に通過させる。換言すれば、その他のスリットを閉止することで、所望のエネルギー幅ではない陽子ビームを通過させないようにする。
【0028】
特に本実施形態では、円筒形状の外殻部3が、陽子線治療システム1全体の外殻として機能し装置全体の剛性を保ちつつ軽量化できるよう構成され、さらに、サイクロトロン2及び輸送ライン5の各要素は、この外殻部3の内側に少なくとも一部が収容され、当該外殻部3により保持されている。ここで、「外殻部3により保持されている」とは、具体的には、外殻部3の内面に直接取り付けられる状態、ブラケット等の部材を介して外殻部3の内面に連結される状態を意味する。そして、このような構成により、本実施形態の陽子線治療システム1は、陽子線治療に係る全ての構成要素を一体型に纏めたコンパクトな構成をとるものである。
【0029】
サイクロトロン2は、図2に示すように、輸送ライン5の終端(少なくともベンディングマグネット53)の位置に対して、外殻部3の回転軸Aまわりで対向する位置にて外殻部3により保持されている。言い換えると、サイクロトロン2とベンディングマグネット53とが、外殻部3の回転軸Aに平行な視線で見て、当該回転軸Aを中心として180度対向する位置、より詳細には、回転軸Aに平行な視線で見て、回転軸Aを挟んで対称の位置で外殻部3によりそれぞれ保持されている。このように配置することで、サイクロトロンをベンディングマグネットのカウンターウェイトとして利用でき、カウンターウェイトを省略できる。
【0030】
輸送ライン5は、図2に示すように、サイクロトロン2と連結する始端から、まず、外殻部3の軸心A方向と平行に、外殻部3の内周面に沿って、陽子ビーム生成用領域33側の端部37(治療用領域32側の端部36とは反対の方)へ向けて延在する。次に、外殻部3内部の端部37近傍で、3個のESS52を利用して、外殻部3の軸心Aを通りつつ、180度湾曲して、始端の位置と対向する外殻部3の内周面まで延在する。そして、軸心A方向と平行に、外殻部3の内周面に沿って、治療用領域32のベンディングマグネット53まで延在する。
【0031】
つまり、サイクロトロン2及び輸送ライン5の各要素は、外殻部3の回転軸Aに沿って円筒体の直径方向に延在する仮想平面上(図2の外殻部3断面に相当)に略U字状に配置される。なお、サイクロトロン2及び輸送ライン5の各要素は、略U字状に配置されるものに限定されず、その他の配置でもよく、例えば略L字状に配置されているものでもよい。下部側にサイクロトロン2が配置され、このサイクロトロン2から上方へ延在し、上部側で屈曲されて水平方向へ延在して照射部4へ連続するような配置でもよい。
【0032】
なお、サイクロトロン2及び輸送ライン5の各要素は、外殻部3の内面上に保持されるのが好ましいが、一部分が外殻部3外周面側に突出して露出し少なくとも一部が外殻部3の内面側にあってもよい。例えば、図1、図2の例では、外殻部3は、上部に開口し輸送ライン5に沿って延びる矩形の切り欠き部3aを有している。そして、四極電磁石51とベンディングマグネット53とが、外殻部3の外側から見て、切り欠き部3aを通じて露出している。この例のように、サイクロトロン2及び輸送ライン5の一部分が外殻部3の外側に露出する構成を採用することで、必要に応じ、外殻部3の外側から切り欠き部3aを通じてサイクロトロン2や輸送ライン5にアクセスすることができ、外殻部3の外側からメンテナンスを行うことができるので、メンテナンス性が向上する。
【0033】
また、サイクロトロン2は、陽子を真空箱の内部で周回させて加速するために中心軸をもつ円柱形状をなすのが一般的である。図2に示すように、サイクロトロン2は、その中心軸を外殻部3の軸心Aと直交するように配置してもよいし、外殻部3の軸心と平行に配置してもよい。
【0034】
ここで、本実施形態の陽子線治療システム1は、図3に示すように、サイクロトロン2の側面2aの表面に、遮蔽シールド41が設置されている。サイクロトロン2の側面2aは、陽イオンの周回軌道Sの径方向Rに交差する面を成している。遮蔽シールド41は、サイクロトロン2の側面2aにおいて、治療台34(患者、被照射体)が存在する方向の一部分のみに限定して配置され、治療台34が存在しない方向の部分の側面には、遮蔽シールド41が配置されていない構成となっている。治療台34が存在しない方の側面は、遮蔽シールド41に覆われておらず、露出している。
【0035】
サイクロトロン2は、図3に示す状態において、治療台34よりも下方でかつ仕切板31の背面側に配置されている。遮蔽シールド41は、治療台34に横たわる患者の一方の端部(頭頂部)P1を通過する接線L1と、患者の他方の端部(足先)P2を通過する接線L2との間のサイクロトロン2の側面2aにのみ配置されている。具体的には、遮蔽シールド41は、周方向Sにおいて、接線L1の側面2aとの接点P3と、接線L2の側面2aとの接点P4との間に配置され、遮蔽シールド41が配置されていない側面では、サイクロトロン2が露出している。サイクロトロン2の側面2aから放射される放射線が、直接的に治療台34及び患者34に照射しないように、サイクロトロン2の側面2aにおいて、治療台34(患者、被照射体)が存在する方向の部分にのみ遮蔽シールド41を配置されている。このように遮蔽シール41を配置することで、周回軌道の周方向Sにおいて、被照射体(34)と対向する側面2aの部分から放射される放射線のみを遮蔽する位置に、遮蔽体を配置している。
【0036】
なお、患者の身長は人それぞれで異なるので、遮蔽シールド41の大きさを設定する際は、高身長の患者にも対応できるように、患者の身長に余裕をもたせて(身長を高めにして)遮蔽シールド41の大きさを設定する。
【0037】
遮蔽シールド41は、放射線(ガンマ線、中性子線)を遮蔽する材質で構成されている。遮蔽シールドに適用可能な材質としては、例えば、鉄、ポリエチレンなどが挙げられる。また、ポリエチレンにホウ素などを添加したものを遮蔽シールド41に適用してもよい。
【0038】
また、遮蔽シールド41は、例えば、サイクロトロン2の側面に設けられた支持部(不図示)にボルト固定されている。
【0039】
このような陽子線治療システム1によれば、サイクロトロン2及び輸送ライン5は、筒形状をなす外殻部3内に少なくとも一部が収容されるため、陽子ビームを照射するために必要な構成要素(サイクロトロン2、輸送ライン5、照射部4)が一体型の装置としてまとめられるので、装置全体を小型化することができる。また、陽子線治療システム1全体が一体型に纏めて構成されるため、事前に工場などで組み上げることも可能となり、工場で組み上げたものを設置現場まで輸送してそのまま設置することもできる。この装置の設置現場で組み立てる必要がなくなる。このため、事前に工場などで装置を組み上げれば、設置現場での性能試験までの工程を短縮でき、性能試験を事前に工場で実施することも可能となる。この結果、小型化かつ据付工程短縮化が可能となるので、陽子線治療システム1の設置場所の選択肢が広がり、汎用性の向上を図ることができる。さらに、陽子線治療システム1の全体を筒形状の外殻部3で覆う構造をとるので、剛性を保ちつつ軽量化することができる。そして、剛性を保つことができるので、例えばサイクロトロン2の重量などに起因する装置の撓みを抑制して、照射部4のアイソセンター(回転軸Aと陽子ビームの中心線との交点)のずれの発生を防ぐことが可能となり、陽子ビームの照射制度を向上することができる。
【0040】
また、陽子線治療システム1によれば、遮蔽シールド41が、サイクロトロン2の側面と治療台34との間に配置されているため、サイクロトロン2から放射される2次的な放射線が遮蔽される。これにより、サイクロトロン2の内部で陽イオンが磁極や電極などの部品と衝突することで発生する2次的な放射線が、側面に設けられた遮蔽シールド41によって遮蔽される。その結果、サイクロトロン2で発生して側面から放射される2次的な放射線による患者の被曝を抑制することができる。なお、遮蔽されていない部分からの2次的放射線は、外殻部3の内周面等に衝突して減衰するため、外殻部3内で反射する2次的放射線による影響は小さくなる。
【0041】
また、遮蔽シールド41は、陽イオンの周回軌道の周方向Sにおいて、治療台34が存在する方の側面のみに配置されているため、遮蔽シールド41を効果的に配置することができ、遮蔽シールド41の設置スペースを省略することができる。その結果、装置の大型化、重量の増加を抑制することができる。
【0042】
(第2実施形態)
次に、図4を参照して、本発明の第2実施形態に係る陽子線治療システム1について説明する。図4は、第2実施形態に係る陽子線治療システム1の回転軸線に沿う縦断面図である。図4に示す第2実施形態に係る陽子線治療システム1が、図3に示す第1実施形態の陽子線治療システム1と異なる点は、ESS52と治療台34との間に、さらに、遮蔽シールド42が設けられている点である。
【0043】
この遮蔽シールド42は、ESS52から発生する2次的な放射線が、治療台34が存在する方向に進行するのを防止するものである。遮蔽シールド42は、外殻部3に直接支持されていてもよく、その他の部材を介して、外殻部3に支持される構成でもよい。遮蔽シールド42は、サイクロトロン2の側面に設けられた遮蔽シールド41と同じ材質によって構成されていてもよく、遮蔽シールド41と異なる材質によって構成されていてもよい。
【0044】
遮蔽シールド42は、例えば、ガントリーの回転軸Aと交差するように配置されている。遮蔽シールド42は、軸線方向Aにおいてサイクロトロン2と複数のESS52との間に配置されている。本実施形態の陽子線治療システム1では、1枚の遮蔽シールド42によって複数のESS52から発生する2次的な放射線を遮蔽する構成とされている。
【0045】
このような第2実施形態に係る陽子線治療システム1では、サイクロトロン2の側面を覆うように配置された遮蔽シールド41の他に、治療台34とESS52との間に配置された遮蔽シールド42を備える構成であるため、ESS52から発生した2次的な放射線による患者の被曝を抑制することができる。ESS52では、ESS52を通過することなく衝突した荷電粒子から2次的な放射線が発生するが、遮蔽シールド42によって遮蔽することができる。
【0046】
(第3実施形態)
次に、図5を参照して、本発明の第3実施形態に係る陽子線治療システム1について説明する。図5は、第3実施形態に係る陽子線治療システム1の回転軸線に沿う縦断面図である。図5に示す第3実施形態に係る陽子線治療システム1が、図4に示す第2実施形態の陽子線治療システム1と異なる点は、複数のESS52からの放射線を一枚の遮蔽シールド42で遮蔽する構成に代えて、複数のESS52からの放射線を複数の遮蔽シールド42Bで遮蔽する構成とした点である。
【0047】
この遮蔽シールド42Bは、ESS52から発生する2次的な放射線が、治療台34が存在する方向に進行するのを防止するものである。遮蔽シールド42Bは、外殻部3に直接支持されていてもよく、その他の部材を介して、外殻部3に支持される構成でもよい。遮蔽シールド42Bは、例えば、ESS52に固定される構成でもよい。遮蔽シールド42は、サイクロトロン2の側面に設けられた遮蔽シールド41と同じ材質によって構成されていてもよく、遮蔽シールド41と異なる材質によって構成されていてもよい。
【0048】
複数の遮蔽シールド42Bは、各ESS52に対応するように配置されている。例えば、遮蔽シールド42Bは、ESS52の治療台34側の側面と対向して配置されている。本実施形態の陽子線治療システム1では、複数の遮蔽シールド42Bが対向するESS52から発生する2次的な放射線を各々遮蔽する構成とされている。
【0049】
このような第3実施形態に係る陽子線治療システム1では、サイクロトロン2の側面を覆うように配置された遮蔽シールド41の他に、治療台34とESS52との間に配置された複数の遮蔽シールド42Bを備える構成であるため、ESS52から発生した2次的な放射線による患者の被曝を抑制することができる。ESS52では、ESS52を通過することなく衝突した荷電粒子から2次的な放射線が発生するが、遮蔽シールド42Bによって遮蔽することができる。
【0050】
また、本実施形態の陽子線治療システム1では、複数に分割された遮蔽シールド42Bを、ESS52に接近させて配置することが可能であるため、外殻部3内に他の機器(例えばPETカメラなど)を収納するためのスペースを確保することができる。
【0051】
(第4実施形態)
次に、図6を参照して、本発明の第4実施形態に係る陽子線治療システム1について説明する。図6は、第4実施形態に係る陽子線治療システム1の回転軸線に沿う縦断面図である。図6に示す第4実施形態に係る陽子線治療システム1が図3に示す第1実施形態の陽子線治療システム1と異なる点は、サイクロトロン2の側面2aを覆うように配置された遮蔽シールド41に代えて、治療用領域32(エンクロージャー)を仕切る床32aおよび仕切板(照射室を構成する壁部)31を、サイクロトロン2側から覆うように配置された遮蔽シールド43を備える点である。
【0052】
遮蔽シールド43は、エンクロージャーの床32a及び隔壁32bをサイクロトロン2側から覆うように配置されている。具体的には、遮蔽シールド43は、床32aの下側に配置された遮蔽板43aと、隔壁32bの背面側(治療用領域32とは反対側)に配置された遮蔽板43bとを備えている。遮蔽板43aは、床32aの下面に固定され、遮蔽板43aは、隔壁32bの背面に固定されている。遮蔽板43a,43bは、例えば、一体的に形成されている。このように遮蔽シールドは、サイクロトロン2の側面2aに支持されていない構成でもよい。遮蔽シールド43が、サイクロトロン2に支持されていない場合には、サイクロトロン2のメンテナンスを行う際に、遮蔽シールド43を取り外す必要がないため、作業の効率化を図ることができ、メンテナンスを容易に行うことが可能となる。
【0053】
遮蔽シールド43は、ガントリー(外殻部3)と共に回転するのではなく、床32a及び仕切板31に固定されているので、ガントリーの回転に必要な駆動力を減らすことが可能である。
【0054】
(第5実施形態)
次に、図7を参照して、本発明の第5実施形態に係る陽子線治療システム1について説明する。図7は、第5実施形態に係る陽子線治療システム1の回転軸線に沿う縦断面図である。図7に示す第5実施形態に係る陽子線治療システム1が図3に示す第1実施形態の陽子線治療システム1と異なる点は、複数の材質が積層されて構成された遮蔽シールド44を備える点である。
【0055】
遮蔽シールド44は、複数の異なる材質が遮蔽シールド44の厚み方向Tに積層されて構成されている。遮蔽シールド44の各層に配置される材質として、例えば、鉄、ポリエチレンなどが挙げられる。遮蔽シールド44では、例えば、サイクロトロン2側である内側に遮蔽材44aとして鉄が配置され、その外側に遮蔽材44bとしてポリエチレンが配置されている。このように高エネルギーの2次的な放射線を遮蔽する能力が高い方の材料をサイクロトロン2の側面側に配置し、低エネルギーの2次的な放射線を遮蔽する能力が高い方の材料を外側に配置することにより、遮蔽シールド44を小型化できる。その結果、製造コストの増加を抑えることができる。同様に、図4及び図5に示す遮蔽シールド42,43を、複数の異なる材質によって構成してもよい。
【0056】
(第6実施形態)
次に、図8を参照して、本発明の第6実施形態に係る陽子線治療システム1について説明する。図8は、第6実施形態に係る陽子線治療システム1の回転軸線に沿う縦断面図である。図8に示す第6実施形態に係る陽子線治療システム1が図3に示す第1実施形態の陽子線治療システム1と異なる点は、サイクロトロン2の側面2aを全周において覆うように配置された遮蔽シールド45を備える点、及び荷電粒子線の出射口側に切欠き部45aが形成されている点である。このように、サイクロトロン2の側面2aを全周覆うように、遮蔽シールド45を配置し、荷電粒子線の出射口側に切欠き部45aを形成して遮蔽体を配置しない構成でもよい。これにより、治療台34が存在する方向とは異なる方向に放出される2次的な放射線を遮蔽することができる。さらに、外殻部内で反射するわずかな2次的放射線による被曝を抑制することも可能である。
【0057】
(第7実施形態)
次に、図9を参照して、本発明の第7実施形態に係る陽子線治療システム61について説明する。図9は、第7実施形態に係る陽子線治療システム61を示す概略構成図であり、図10は、図9中のシンクロサイクロトロン62、及びシンクロサイクロトロン62の側面に設けられた遮蔽シールド46を示す斜視図である。図9に示す第7実施形態の陽子線治療システム61は、図3に示す第1実施形態の陽子線治療システム1とは異なるタイプのガントリー63を備えている。また、陽子線治療システム61は、サイクロトロン2に代えて、シンクロサイクロトロン(粒子加速器)62を備え、シンクロサイクロトロン62の側面62aに、放射線を遮蔽する遮蔽シールド46が設けられている。
【0058】
ガントリー63は、同一軸線(所定軸線A)上に延在し、治療台34を挟んで両側に配置された一対の回転軸65と、回転軸65から上方へ張り出す一対の脚部67と、一対の脚部67間で所定軸線A方向に延在しシンクロサイクロトロン62を両側から支持する一対の梁部68と、回転軸65から下方へ張り出す一対のカウンターウェイト66と、を備えている。
【0059】
建屋の壁体69は、治療台34を挟んで所定軸線A方向に互いに対向して配置されている。回転軸65は、建屋の壁体69に対して、所定軸線A回りに回転可能に支持されている。脚部67は、回転軸65の治療台34側の端部から図示上方へ延在している。カウンターウェイト66は、回転軸65の治療台34側の端部から図示下方へ、脚部67とは反対方向へ延在している。
【0060】
梁部68は、回転軸65から外方に離間した位置で、脚部67によって支持されている。梁部63は、所定軸線A方向に延在し、脚部67とは反対側の端部に、シンクロサイクロトロン62が固定されている。
【0061】
図9及び図10に示すように、シンクロサイクロトロン62は、円筒状の筐体を備えている。シンクロサイクロトロン62の上面62b及び底面62bは、所定軸線A方向に互いに対向して配置され、側面62aは所定軸線A方向に延在する中心軸線方向を取り囲む周方向に延在している。シンクロサイクロトロン62の側面において、治療台34側(図示下側)には、遮蔽シールド46が設けられている。
【0062】
例えば、シンクロサイクロトロン62の下側半分が、遮蔽シールド46によって覆われている。遮蔽シールド46は、シンクロサイクロトロン62の側面aの下半分、上面62bの下半分、及び底面62bの下半分を覆うように配置されている。梁部68は、シンクロサイクロトロン62を直接支持してもよく、遮蔽シールド46を介して間接的にシンクロサイクロトロン62を支持してもよい。なお、遮蔽シールド46は、側面aの下半分を覆う遮蔽体部分46aのみを備え、上面62b及び底面62bの下半分を覆う遮蔽体部分46bを備えていない構成でもよい。
【0063】
このように、シンクロサイクロトロン62を備える陽子線治療システム61において、シンクロサイクロトロン62の側面と治療台34との間に、遮蔽シールド46を配置する構成としてもよい。また、シンクロサイクロトロン62の全面を覆うように遮蔽シールドを配置してもよい。
【0064】
(第8実施形態)
次に、図11を参照して、本発明の第8実施形態に係る中性子線照射システム71について説明する。図11は、本発明の第8実施形態に係る中性子線治療システムを示す概略構成図である。図11に示す中性子線照射システム71が、図3に示す陽子線治療システム1と異なる点は、中性子線を発生させるターゲット(中性子線発生部)72を備えている点である。
【0065】
ターゲット72は、ベンディングマグネット53の先端(出口側)に設けられている。ターゲット72は、陽子線が照射されて中性子線を発生させる。そして、照射部4は、ターゲット72で発生した中性子線を被照射体(患者)に向けて照射する。中性子線は、例えば、患者の体内の腫瘍(照射目標)に対して照射される。
【0066】
このような中性子線照射システム71によれば、上記の実施形態の陽子線治療システムと同様に、サイクロトロン2の側面2aと治療台34(患者、被照射体)との間に、放射線を遮蔽する遮蔽シールド41が設けられているため、サイクロトロン2の側面2aから放射される2次的な放射線が、遮蔽体によって遮蔽されることになる。これにより、サイクロトロン2内で荷電粒子が磁極や電極などの部品と衝突することで発生する2次的な放射線は、遮蔽シールド41によって遮蔽されるので、側面2aから放射される2次的な放射線による患者の被曝を抑制することができる。なお、中性子線照射システム71に設置される遮蔽シールドは、図8に示す遮蔽シールド41に限定されず、図4〜9に示すような遮蔽シールド42〜46,42Bを備える中性子線照射システムとしてもよい。
【0067】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば、輸送ライン5を構成する各要素は、所望のビーム設計に応じて、その配置や個数を適宜変更することができる。
【0068】
また、粒子加速器はサイクロトロンに限定されず、シンクロトロンやシンクロサイクロトロンでも良い。シンクロトロンの場合は、荷電粒子はらせん状の周回軌道ではなく、同一円周上を回る周回軌道に沿って加速される。また、粒子線(荷電粒子)は陽子ビームに限定されず、炭素ビーム(重粒子ビーム)などでも良い。また、外殻部3の形状は、円筒に限らず他の筒状でもよい。
【0069】
また、遮蔽シールドは、加速器の側面を覆うものに限定されず、加速器の側面と患者(治療台)との間に配置されていればよい。また、遮蔽シールドは、加速器の外殻を成す筐体の内側に配置されている構成でもよい。
【0070】
ガントリーは360°回転(揺動)するものに限定されず、360°未満の揺動を行うものでもよい。
【符号の説明】
【0071】
1,61…陽子線治療装置(荷電粒子線照射システム)、2…サイクロトロン(加速器)、3…外殻部(回転ガントリー)、4,64…照射部、5…輸送ライン、34…治療台、41〜46,42B…遮蔽シールド、45a…切欠き部、52…ESS(エネルギー選択システム)、62…シンクロサイクロトロン(加速器)、63…回転ガントリー、71…中性子線照射システム、A…ガントリーの回転軸(所定軸線)。
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷電粒子線照射システム、及び中性子線照射システムに関する。
【背景技術】
【0002】
陽子ビームなどの荷電粒子を患者に照射してがん治療を行う設備が知られている。この種の設備は、イオン源により生成されたイオン(荷電粒子)を加速させる粒子加速器、粒子加速器で加速された荷電粒子を輸送する輸送ライン、及び患者に対して任意の方向から荷電粒子を照射する回転自在の照射装置(回転ガントリー)を備えている。
【0003】
下記特許文献1に記載の荷電粒子放射線治療システムでは、ビーム発生粒子加速器が、回転ガントリーに取り付けられている。この加速器は、加速器から出射されたビームが、患者に対して直接的に照射されるように、回転ガントリーに支持されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2009−515671号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載された従来技術では、加速器内において、加速された荷電粒子の一部が、磁場を発生させるための電極や磁極などの部品に衝突し、この衝突の際に発生する2次放射線(中性子線、ガンマ線など)が、患者が存在する方向に進行するおそれがある。このように、荷電粒子が加速器内の部品に当たることで発生して加速器の側面から放射される2次的な放射線による患者の被曝を低減又は防止することが求められている。
【0006】
本発明は、上記の課題を解決することを目的としており、荷電粒子を加速させる加速器を回転ガントリーに取り付けることで、省スペース化を図りつつ、加速器から発生する2次的な放射線による被曝のおそれを低減することが可能な荷電粒子線照射システム、及び中性子線照射システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明に係る荷電粒子線照射システムは、荷電粒子を周回軌道に沿って加速し、荷電粒子線を出射する加速器と、加速器を搭載し、所定軸線周りに回転又は揺動可能なガントリーと、ガントリーに搭載され、加速器から出射された荷電粒子線を被照射体に向けて照射可能である照射部と、を備え、ガントリー内に設けられていると共に、周回軌道の径方向に交差する面である加速器の側面から放射される放射線を遮蔽する遮蔽体が配置されていることを特徴としている。
【0008】
また、本発明に係る中性子線照射システムは、荷電粒子を周回軌道に沿って加速し、荷電粒子線を出射する加速器と、加速器を搭載し、所定軸線回りに回転又は揺動可能なガントリーと、加速器から出射された荷電粒子線が照射されることにより中性子線を発生させる中性子線発生部と、ガントリーに搭載され、中性子線発生部で発生した中性子線を被照射体に向けて照射可能である照射部と、を備え、ガントリー内に設けられると共に、周回軌道の径方向に交差する面である加速器の側面から放射される放射線を遮蔽する遮蔽体が配置されていることを特徴としている。
【0009】
このような荷電粒子線照射システム、及び中性子線照射システムによれば、荷電粒子を加速させる加速器、加速器から出射された荷電粒子線(又は荷電粒子線を照射することにより発生した中性子線)を照射する照射部が、ガントリーに取り付けられているため、荷電粒子線又は中性子線を照射するための装置全体を小型化することができる。また、この装置全体が一体型に纏めて構成されるため、事前に工場などで組み上げることも可能となり、工場で組み上げたものを設置現場まで輸送して、そのまま設置することもできる。
【0010】
また、この荷電粒子線照射システム、及び中性子線照射システムでは、加速器の側面と被照射体との間に、放射線を遮蔽する遮蔽体が配置されているため、加速器の側面から放射される2次的な放射線が、遮蔽体によって遮蔽されることになる。これにより、加速器内で荷電粒子が磁極や電極などの部品と衝突することで発生する2次的な放射線は、遮蔽体によって遮蔽されるので、加速器から発生して側面から放射される2次的な放射線による患者の被曝を抑制することができる。
【0011】
ここで、遮蔽体は、周回軌道の周方向において、被照射体と対向する側面の部分から放射される放射線を遮蔽する位置のみに配置されていることが好適である。これにより、例えば、加速器の側面において、被照射体が存在する方向の部分のみに遮蔽体を配置し、被照射体が存在していない方向の側面部分に遮蔽体を配置しない構成とすることができる。そのため、遮蔽体を効果的に配置することができ、遮蔽体の設置スペースを省略することができる。その結果、側部に遮蔽体を有する加速器の大型化を抑制することができる。また、ガントリーの重量増加を抑制することができる。
【0012】
また、ガントリー内に設けられ、被照射体へ荷電粒子線が照射される照射室を有し、遮蔽体は、照射室を構成する壁部に支持されていることが好ましい。これにより、遮蔽体を照射室を構成する壁部に取り付けることで、遮蔽体を加速器に取り付けないようにすることができる。そのため、例えば、加速器をメンテナンス(点検、補修など)する際に、遮蔽体を取り外す必要がなくなり、メンテナンスを容易に行うことができる。
【0013】
また、遮蔽体は、加速器の側面の全周を覆うように配置され、遮蔽体の荷電粒子線の出射口側に切欠き部が形成されている。これにより、加速器の側面から放射される放射線を全周にわたって遮蔽することができる。
【0014】
また、加速器から出力された荷電粒子を輸送する輸送ラインに設けられ、荷電粒子のうち所望のエネルギー幅の荷電粒子を選択的に通過させるエネルギー選択部を備え、当該エネルギー選択部と被照射体との間には、放射線を遮蔽する他の遮蔽体が配置されていることが好適である。所望のエネルギー幅の荷電粒子を選択的に通過させるエネルギー選択部では、選択されないエネルギー幅の荷電粒子は、エネルギー選択部を通過することなくエネルギー選択部内の部品に衝突することになる。このとき、荷電粒子が衝突することで2次的な放射線が発生するため、エネルギー選択部と被照射体との間に遮蔽体を配置することで、2次的な放射線を遮蔽する。これにより、エネルギー選択部で発生する2次的な放射線による被曝のおそれを低減することができる。
【0015】
また、遮蔽体は、複数の異なる材質が遮蔽体の厚み方向に積層されて構成されていることが好ましい。これにより、例えば、遮蔽体の厚み方向において、高エネルギーの2次的な放射線を遮蔽する能力が高い方の材料をサイクロトロン2の側面側に配置し、低エネルギーの2次的な放射線を遮蔽する能力が高い方の材料を外側に配置することにより、遮蔽シールド44を小型化することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る荷電粒子線照射システムによれば、荷電粒子を加速させる加速器を回転ガントリーに取り付けることで、省スペース化を図りつつ、加速器から発生する2次的な放射線による被曝のおそれを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1実施形態に係る陽子線治療システム(荷電粒子線照射システム)の概観を示す斜視図である。
【図2】回転部の回転軸線に沿って、図1から回転部の半分を取り除いた一部切り欠き斜視断面図である。
【図3】図1の陽子線治療システムの縦断面図である。
【図4】本発明の第2実施形態に係る陽子線治療システムの縦断面図である。
【図5】本発明の第3実施形態に係る陽子線治療システムの縦断面図である。
【図6】本発明の第4実施形態に係る陽子線治療システムの縦断面図である。
【図7】本発明の第5実施形態に係る陽子線治療システムの縦断面図である。
【図8】本発明の第6実施形態に係る陽子線治療システムを示す概略構成図である。
【図9】本発明の第7実施形態に係る陽子線治療システムを示す概略構成図である。
【図10】図9中のシンクロサイクロトロン、及びシンクロサイクロトロンの側面に設けられた遮蔽シールドを示す斜視図である。
【図11】本発明の第8実施形態に係る中性子線治療システムを示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る荷電粒子線照射システムの好適な実施形態について図面を参照しながら説明する。本実施形態では、荷電粒子線照射システムを陽子線治療システムとした場合について説明する。陽子線治療システムは、例えばがん治療に適用されるものであり、患者の体内の腫瘍(照射目標)に対して、陽子ビーム(荷電粒子線)を照射する装置である。
【0019】
(第1実施形態)
まず、図1〜図3を参照して、本発明の第1実施形態に係る陽子線治療システム1について説明する。図1は、本実施形態に係る陽子線治療システム1の概観を示す斜視図であり、図2は、回転部の回転軸線に沿って、図1から回転部の半分を取り除いた一部切り欠き斜視断面図であり、図3は、図1の陽子線治療システムの回転軸線に沿う縦断面図である。
【0020】
図1〜図3に示すように、陽子線治療システム1は、陽子ビームを生成するサイクロトロン(粒子加速器)2と、円筒形状をなし、回転軸線周りに360°回転可能な外殻部(ガントリー)3と、陽子ビームを照射目標に向けて照射可能な照射部4と、サイクロトロン2で生成された陽子ビームを照射部4へ輸送する輸送ライン5と、を備えて構成されている。
【0021】
サイクロトロン2は、イオン源(図示せず)から供給されるイオン(水素の陽イオン)を真空箱(図示せず)の内部で加速させて、陽子ビームを生成する。サイクロトロン2の内部には、イオンを加速させるための磁場を形成するために、電磁石(鉄ヨーク)、電極などの部品(不図示)が配置されている。イオンは、形成された磁場によって、らせん状の軌道(周回軌道)に沿って加速される。サイクロトロン2では、イオンを加速させた後に陽子ビームを出射する。サイクロトロン2は輸送ライン5に連絡しており、生成された陽子ビームは輸送ライン5に導入される。
【0022】
外殻部(ガントリー)3は、図1及び図2に示すように、薄肉構造の円筒体であり、剛性を保ちつつ軽量化できるよう構成されている。外殻部3は、外殻部3の下方に配置されたローラ装置40によって、円筒形状の軸心A周りに回転自在に支持されている。外殻部3は、円筒形状の両端部近傍の外周面にて、ローラ装置40と当接し、モータ(図示せず)によりローラ装置40が駆動すると回転力が付与される。また、ブレーキ装置(図示せず)によって回転が停止される。なお、外殻部3の軸線方向の全長は例えば8メートルであり、直径は例えば6メートルである。なお、ガントリーは、円筒体を有していない構成でもよく、軸線A回りに180°揺動可能な枠体を有する構成でもよい(例えば図8参照)。
【0023】
外殻部3は、図2に示すように、その内部に、軸心A(所定軸線)と略直交するように仕切板31を備える。外殻部3は、この仕切板31によって、その内部を軸心方向に治療用領域(照射室)32及び陽子ビーム生成用領域(ビーム生成室)33の2つの領域に区切られている。また、本実施形態の陽子線治療システム1では、図3に示すように、サイクロトロン2の側面2aと、治療台34との間に、遮蔽シールド41が設けられている(詳しくは後述する)。なお、図2では、図を見易くするために、サイクロトロン2の側部に設けられた遮蔽シールド41の図示を省略している。
【0024】
治療用領域32には、陽子線治療の患者が横たわる治療台34が配置される。治療台34は、陽子ビーム照射時には、移動手段35により外殻部3の回転軸Aの近傍に配置される。また、治療台34は、移動手段35により、外殻部3の治療用領域32側の端部36の開口を介して、陽子線治療システム1の外部及び内部(治療用領域32)の間を移動可能である。
【0025】
この外殻部3の治療用領域32には、さらに照射部4が、外殻部3の回転軸Aに向かう方向Bにビームを照射するように固定して設置されている。照射部4は、外殻部3の回転に伴って治療台34の周囲を自在に回動し、外殻部3の回転軸周りの任意の方向から、治療台34の患者に対して陽子ビームを照射することができる。なお、照射部4はガントリーの回転に伴って回転可能であれば、その他の位置に取り付けられていても良く、例えば、外郭部3の内周面や、ベンディングマグネット53の端部などに取り付けられていてもよい。
【0026】
輸送ライン5は、その始端においてサイクロトロン2と連結され、終端において照射部4と連結されており、サイクロトロン2で加速された陽子ビームを照射部4へ輸送する。輸送ライン5は、陽子ビームを収束させるための複数の四極電磁石51、陽子ビームの照射エネルギーを調整するための複数(図2では3個)のESS(エネルギー選択システム、エネルギー選択部)52などを備え、その終端において、照射部4と連結する直前の位置に、陽子ビームを(本実施形態では略90度)湾曲させ、照射部4への陽子ビームの入射方向を決めるベンディングマグネット(偏向磁石)53を備えている。ベンディングマグネット53は、図2に示すように、治療用領域32において、照射部4から外殻部3の遠心方向に設置されている。なお、輸送ライン5には、その全体にわたり、陽子ビームの軌道に沿ってビーム輸送管(図示省略)が設けられている。
【0027】
ESS52は、輸送されてきた所定のエネルギー分布を有する陽子ビームから所望のエネルギー幅の陽子ビームを選択的に取り出すものである。ESS52には、複数のスリットが設けられ、陽子ビームが通過可能なスリットを設定することで、所望のエネルギー幅の荷電粒子のみを選択的に通過させる。換言すれば、その他のスリットを閉止することで、所望のエネルギー幅ではない陽子ビームを通過させないようにする。
【0028】
特に本実施形態では、円筒形状の外殻部3が、陽子線治療システム1全体の外殻として機能し装置全体の剛性を保ちつつ軽量化できるよう構成され、さらに、サイクロトロン2及び輸送ライン5の各要素は、この外殻部3の内側に少なくとも一部が収容され、当該外殻部3により保持されている。ここで、「外殻部3により保持されている」とは、具体的には、外殻部3の内面に直接取り付けられる状態、ブラケット等の部材を介して外殻部3の内面に連結される状態を意味する。そして、このような構成により、本実施形態の陽子線治療システム1は、陽子線治療に係る全ての構成要素を一体型に纏めたコンパクトな構成をとるものである。
【0029】
サイクロトロン2は、図2に示すように、輸送ライン5の終端(少なくともベンディングマグネット53)の位置に対して、外殻部3の回転軸Aまわりで対向する位置にて外殻部3により保持されている。言い換えると、サイクロトロン2とベンディングマグネット53とが、外殻部3の回転軸Aに平行な視線で見て、当該回転軸Aを中心として180度対向する位置、より詳細には、回転軸Aに平行な視線で見て、回転軸Aを挟んで対称の位置で外殻部3によりそれぞれ保持されている。このように配置することで、サイクロトロンをベンディングマグネットのカウンターウェイトとして利用でき、カウンターウェイトを省略できる。
【0030】
輸送ライン5は、図2に示すように、サイクロトロン2と連結する始端から、まず、外殻部3の軸心A方向と平行に、外殻部3の内周面に沿って、陽子ビーム生成用領域33側の端部37(治療用領域32側の端部36とは反対の方)へ向けて延在する。次に、外殻部3内部の端部37近傍で、3個のESS52を利用して、外殻部3の軸心Aを通りつつ、180度湾曲して、始端の位置と対向する外殻部3の内周面まで延在する。そして、軸心A方向と平行に、外殻部3の内周面に沿って、治療用領域32のベンディングマグネット53まで延在する。
【0031】
つまり、サイクロトロン2及び輸送ライン5の各要素は、外殻部3の回転軸Aに沿って円筒体の直径方向に延在する仮想平面上(図2の外殻部3断面に相当)に略U字状に配置される。なお、サイクロトロン2及び輸送ライン5の各要素は、略U字状に配置されるものに限定されず、その他の配置でもよく、例えば略L字状に配置されているものでもよい。下部側にサイクロトロン2が配置され、このサイクロトロン2から上方へ延在し、上部側で屈曲されて水平方向へ延在して照射部4へ連続するような配置でもよい。
【0032】
なお、サイクロトロン2及び輸送ライン5の各要素は、外殻部3の内面上に保持されるのが好ましいが、一部分が外殻部3外周面側に突出して露出し少なくとも一部が外殻部3の内面側にあってもよい。例えば、図1、図2の例では、外殻部3は、上部に開口し輸送ライン5に沿って延びる矩形の切り欠き部3aを有している。そして、四極電磁石51とベンディングマグネット53とが、外殻部3の外側から見て、切り欠き部3aを通じて露出している。この例のように、サイクロトロン2及び輸送ライン5の一部分が外殻部3の外側に露出する構成を採用することで、必要に応じ、外殻部3の外側から切り欠き部3aを通じてサイクロトロン2や輸送ライン5にアクセスすることができ、外殻部3の外側からメンテナンスを行うことができるので、メンテナンス性が向上する。
【0033】
また、サイクロトロン2は、陽子を真空箱の内部で周回させて加速するために中心軸をもつ円柱形状をなすのが一般的である。図2に示すように、サイクロトロン2は、その中心軸を外殻部3の軸心Aと直交するように配置してもよいし、外殻部3の軸心と平行に配置してもよい。
【0034】
ここで、本実施形態の陽子線治療システム1は、図3に示すように、サイクロトロン2の側面2aの表面に、遮蔽シールド41が設置されている。サイクロトロン2の側面2aは、陽イオンの周回軌道Sの径方向Rに交差する面を成している。遮蔽シールド41は、サイクロトロン2の側面2aにおいて、治療台34(患者、被照射体)が存在する方向の一部分のみに限定して配置され、治療台34が存在しない方向の部分の側面には、遮蔽シールド41が配置されていない構成となっている。治療台34が存在しない方の側面は、遮蔽シールド41に覆われておらず、露出している。
【0035】
サイクロトロン2は、図3に示す状態において、治療台34よりも下方でかつ仕切板31の背面側に配置されている。遮蔽シールド41は、治療台34に横たわる患者の一方の端部(頭頂部)P1を通過する接線L1と、患者の他方の端部(足先)P2を通過する接線L2との間のサイクロトロン2の側面2aにのみ配置されている。具体的には、遮蔽シールド41は、周方向Sにおいて、接線L1の側面2aとの接点P3と、接線L2の側面2aとの接点P4との間に配置され、遮蔽シールド41が配置されていない側面では、サイクロトロン2が露出している。サイクロトロン2の側面2aから放射される放射線が、直接的に治療台34及び患者34に照射しないように、サイクロトロン2の側面2aにおいて、治療台34(患者、被照射体)が存在する方向の部分にのみ遮蔽シールド41を配置されている。このように遮蔽シール41を配置することで、周回軌道の周方向Sにおいて、被照射体(34)と対向する側面2aの部分から放射される放射線のみを遮蔽する位置に、遮蔽体を配置している。
【0036】
なお、患者の身長は人それぞれで異なるので、遮蔽シールド41の大きさを設定する際は、高身長の患者にも対応できるように、患者の身長に余裕をもたせて(身長を高めにして)遮蔽シールド41の大きさを設定する。
【0037】
遮蔽シールド41は、放射線(ガンマ線、中性子線)を遮蔽する材質で構成されている。遮蔽シールドに適用可能な材質としては、例えば、鉄、ポリエチレンなどが挙げられる。また、ポリエチレンにホウ素などを添加したものを遮蔽シールド41に適用してもよい。
【0038】
また、遮蔽シールド41は、例えば、サイクロトロン2の側面に設けられた支持部(不図示)にボルト固定されている。
【0039】
このような陽子線治療システム1によれば、サイクロトロン2及び輸送ライン5は、筒形状をなす外殻部3内に少なくとも一部が収容されるため、陽子ビームを照射するために必要な構成要素(サイクロトロン2、輸送ライン5、照射部4)が一体型の装置としてまとめられるので、装置全体を小型化することができる。また、陽子線治療システム1全体が一体型に纏めて構成されるため、事前に工場などで組み上げることも可能となり、工場で組み上げたものを設置現場まで輸送してそのまま設置することもできる。この装置の設置現場で組み立てる必要がなくなる。このため、事前に工場などで装置を組み上げれば、設置現場での性能試験までの工程を短縮でき、性能試験を事前に工場で実施することも可能となる。この結果、小型化かつ据付工程短縮化が可能となるので、陽子線治療システム1の設置場所の選択肢が広がり、汎用性の向上を図ることができる。さらに、陽子線治療システム1の全体を筒形状の外殻部3で覆う構造をとるので、剛性を保ちつつ軽量化することができる。そして、剛性を保つことができるので、例えばサイクロトロン2の重量などに起因する装置の撓みを抑制して、照射部4のアイソセンター(回転軸Aと陽子ビームの中心線との交点)のずれの発生を防ぐことが可能となり、陽子ビームの照射制度を向上することができる。
【0040】
また、陽子線治療システム1によれば、遮蔽シールド41が、サイクロトロン2の側面と治療台34との間に配置されているため、サイクロトロン2から放射される2次的な放射線が遮蔽される。これにより、サイクロトロン2の内部で陽イオンが磁極や電極などの部品と衝突することで発生する2次的な放射線が、側面に設けられた遮蔽シールド41によって遮蔽される。その結果、サイクロトロン2で発生して側面から放射される2次的な放射線による患者の被曝を抑制することができる。なお、遮蔽されていない部分からの2次的放射線は、外殻部3の内周面等に衝突して減衰するため、外殻部3内で反射する2次的放射線による影響は小さくなる。
【0041】
また、遮蔽シールド41は、陽イオンの周回軌道の周方向Sにおいて、治療台34が存在する方の側面のみに配置されているため、遮蔽シールド41を効果的に配置することができ、遮蔽シールド41の設置スペースを省略することができる。その結果、装置の大型化、重量の増加を抑制することができる。
【0042】
(第2実施形態)
次に、図4を参照して、本発明の第2実施形態に係る陽子線治療システム1について説明する。図4は、第2実施形態に係る陽子線治療システム1の回転軸線に沿う縦断面図である。図4に示す第2実施形態に係る陽子線治療システム1が、図3に示す第1実施形態の陽子線治療システム1と異なる点は、ESS52と治療台34との間に、さらに、遮蔽シールド42が設けられている点である。
【0043】
この遮蔽シールド42は、ESS52から発生する2次的な放射線が、治療台34が存在する方向に進行するのを防止するものである。遮蔽シールド42は、外殻部3に直接支持されていてもよく、その他の部材を介して、外殻部3に支持される構成でもよい。遮蔽シールド42は、サイクロトロン2の側面に設けられた遮蔽シールド41と同じ材質によって構成されていてもよく、遮蔽シールド41と異なる材質によって構成されていてもよい。
【0044】
遮蔽シールド42は、例えば、ガントリーの回転軸Aと交差するように配置されている。遮蔽シールド42は、軸線方向Aにおいてサイクロトロン2と複数のESS52との間に配置されている。本実施形態の陽子線治療システム1では、1枚の遮蔽シールド42によって複数のESS52から発生する2次的な放射線を遮蔽する構成とされている。
【0045】
このような第2実施形態に係る陽子線治療システム1では、サイクロトロン2の側面を覆うように配置された遮蔽シールド41の他に、治療台34とESS52との間に配置された遮蔽シールド42を備える構成であるため、ESS52から発生した2次的な放射線による患者の被曝を抑制することができる。ESS52では、ESS52を通過することなく衝突した荷電粒子から2次的な放射線が発生するが、遮蔽シールド42によって遮蔽することができる。
【0046】
(第3実施形態)
次に、図5を参照して、本発明の第3実施形態に係る陽子線治療システム1について説明する。図5は、第3実施形態に係る陽子線治療システム1の回転軸線に沿う縦断面図である。図5に示す第3実施形態に係る陽子線治療システム1が、図4に示す第2実施形態の陽子線治療システム1と異なる点は、複数のESS52からの放射線を一枚の遮蔽シールド42で遮蔽する構成に代えて、複数のESS52からの放射線を複数の遮蔽シールド42Bで遮蔽する構成とした点である。
【0047】
この遮蔽シールド42Bは、ESS52から発生する2次的な放射線が、治療台34が存在する方向に進行するのを防止するものである。遮蔽シールド42Bは、外殻部3に直接支持されていてもよく、その他の部材を介して、外殻部3に支持される構成でもよい。遮蔽シールド42Bは、例えば、ESS52に固定される構成でもよい。遮蔽シールド42は、サイクロトロン2の側面に設けられた遮蔽シールド41と同じ材質によって構成されていてもよく、遮蔽シールド41と異なる材質によって構成されていてもよい。
【0048】
複数の遮蔽シールド42Bは、各ESS52に対応するように配置されている。例えば、遮蔽シールド42Bは、ESS52の治療台34側の側面と対向して配置されている。本実施形態の陽子線治療システム1では、複数の遮蔽シールド42Bが対向するESS52から発生する2次的な放射線を各々遮蔽する構成とされている。
【0049】
このような第3実施形態に係る陽子線治療システム1では、サイクロトロン2の側面を覆うように配置された遮蔽シールド41の他に、治療台34とESS52との間に配置された複数の遮蔽シールド42Bを備える構成であるため、ESS52から発生した2次的な放射線による患者の被曝を抑制することができる。ESS52では、ESS52を通過することなく衝突した荷電粒子から2次的な放射線が発生するが、遮蔽シールド42Bによって遮蔽することができる。
【0050】
また、本実施形態の陽子線治療システム1では、複数に分割された遮蔽シールド42Bを、ESS52に接近させて配置することが可能であるため、外殻部3内に他の機器(例えばPETカメラなど)を収納するためのスペースを確保することができる。
【0051】
(第4実施形態)
次に、図6を参照して、本発明の第4実施形態に係る陽子線治療システム1について説明する。図6は、第4実施形態に係る陽子線治療システム1の回転軸線に沿う縦断面図である。図6に示す第4実施形態に係る陽子線治療システム1が図3に示す第1実施形態の陽子線治療システム1と異なる点は、サイクロトロン2の側面2aを覆うように配置された遮蔽シールド41に代えて、治療用領域32(エンクロージャー)を仕切る床32aおよび仕切板(照射室を構成する壁部)31を、サイクロトロン2側から覆うように配置された遮蔽シールド43を備える点である。
【0052】
遮蔽シールド43は、エンクロージャーの床32a及び隔壁32bをサイクロトロン2側から覆うように配置されている。具体的には、遮蔽シールド43は、床32aの下側に配置された遮蔽板43aと、隔壁32bの背面側(治療用領域32とは反対側)に配置された遮蔽板43bとを備えている。遮蔽板43aは、床32aの下面に固定され、遮蔽板43aは、隔壁32bの背面に固定されている。遮蔽板43a,43bは、例えば、一体的に形成されている。このように遮蔽シールドは、サイクロトロン2の側面2aに支持されていない構成でもよい。遮蔽シールド43が、サイクロトロン2に支持されていない場合には、サイクロトロン2のメンテナンスを行う際に、遮蔽シールド43を取り外す必要がないため、作業の効率化を図ることができ、メンテナンスを容易に行うことが可能となる。
【0053】
遮蔽シールド43は、ガントリー(外殻部3)と共に回転するのではなく、床32a及び仕切板31に固定されているので、ガントリーの回転に必要な駆動力を減らすことが可能である。
【0054】
(第5実施形態)
次に、図7を参照して、本発明の第5実施形態に係る陽子線治療システム1について説明する。図7は、第5実施形態に係る陽子線治療システム1の回転軸線に沿う縦断面図である。図7に示す第5実施形態に係る陽子線治療システム1が図3に示す第1実施形態の陽子線治療システム1と異なる点は、複数の材質が積層されて構成された遮蔽シールド44を備える点である。
【0055】
遮蔽シールド44は、複数の異なる材質が遮蔽シールド44の厚み方向Tに積層されて構成されている。遮蔽シールド44の各層に配置される材質として、例えば、鉄、ポリエチレンなどが挙げられる。遮蔽シールド44では、例えば、サイクロトロン2側である内側に遮蔽材44aとして鉄が配置され、その外側に遮蔽材44bとしてポリエチレンが配置されている。このように高エネルギーの2次的な放射線を遮蔽する能力が高い方の材料をサイクロトロン2の側面側に配置し、低エネルギーの2次的な放射線を遮蔽する能力が高い方の材料を外側に配置することにより、遮蔽シールド44を小型化できる。その結果、製造コストの増加を抑えることができる。同様に、図4及び図5に示す遮蔽シールド42,43を、複数の異なる材質によって構成してもよい。
【0056】
(第6実施形態)
次に、図8を参照して、本発明の第6実施形態に係る陽子線治療システム1について説明する。図8は、第6実施形態に係る陽子線治療システム1の回転軸線に沿う縦断面図である。図8に示す第6実施形態に係る陽子線治療システム1が図3に示す第1実施形態の陽子線治療システム1と異なる点は、サイクロトロン2の側面2aを全周において覆うように配置された遮蔽シールド45を備える点、及び荷電粒子線の出射口側に切欠き部45aが形成されている点である。このように、サイクロトロン2の側面2aを全周覆うように、遮蔽シールド45を配置し、荷電粒子線の出射口側に切欠き部45aを形成して遮蔽体を配置しない構成でもよい。これにより、治療台34が存在する方向とは異なる方向に放出される2次的な放射線を遮蔽することができる。さらに、外殻部内で反射するわずかな2次的放射線による被曝を抑制することも可能である。
【0057】
(第7実施形態)
次に、図9を参照して、本発明の第7実施形態に係る陽子線治療システム61について説明する。図9は、第7実施形態に係る陽子線治療システム61を示す概略構成図であり、図10は、図9中のシンクロサイクロトロン62、及びシンクロサイクロトロン62の側面に設けられた遮蔽シールド46を示す斜視図である。図9に示す第7実施形態の陽子線治療システム61は、図3に示す第1実施形態の陽子線治療システム1とは異なるタイプのガントリー63を備えている。また、陽子線治療システム61は、サイクロトロン2に代えて、シンクロサイクロトロン(粒子加速器)62を備え、シンクロサイクロトロン62の側面62aに、放射線を遮蔽する遮蔽シールド46が設けられている。
【0058】
ガントリー63は、同一軸線(所定軸線A)上に延在し、治療台34を挟んで両側に配置された一対の回転軸65と、回転軸65から上方へ張り出す一対の脚部67と、一対の脚部67間で所定軸線A方向に延在しシンクロサイクロトロン62を両側から支持する一対の梁部68と、回転軸65から下方へ張り出す一対のカウンターウェイト66と、を備えている。
【0059】
建屋の壁体69は、治療台34を挟んで所定軸線A方向に互いに対向して配置されている。回転軸65は、建屋の壁体69に対して、所定軸線A回りに回転可能に支持されている。脚部67は、回転軸65の治療台34側の端部から図示上方へ延在している。カウンターウェイト66は、回転軸65の治療台34側の端部から図示下方へ、脚部67とは反対方向へ延在している。
【0060】
梁部68は、回転軸65から外方に離間した位置で、脚部67によって支持されている。梁部63は、所定軸線A方向に延在し、脚部67とは反対側の端部に、シンクロサイクロトロン62が固定されている。
【0061】
図9及び図10に示すように、シンクロサイクロトロン62は、円筒状の筐体を備えている。シンクロサイクロトロン62の上面62b及び底面62bは、所定軸線A方向に互いに対向して配置され、側面62aは所定軸線A方向に延在する中心軸線方向を取り囲む周方向に延在している。シンクロサイクロトロン62の側面において、治療台34側(図示下側)には、遮蔽シールド46が設けられている。
【0062】
例えば、シンクロサイクロトロン62の下側半分が、遮蔽シールド46によって覆われている。遮蔽シールド46は、シンクロサイクロトロン62の側面aの下半分、上面62bの下半分、及び底面62bの下半分を覆うように配置されている。梁部68は、シンクロサイクロトロン62を直接支持してもよく、遮蔽シールド46を介して間接的にシンクロサイクロトロン62を支持してもよい。なお、遮蔽シールド46は、側面aの下半分を覆う遮蔽体部分46aのみを備え、上面62b及び底面62bの下半分を覆う遮蔽体部分46bを備えていない構成でもよい。
【0063】
このように、シンクロサイクロトロン62を備える陽子線治療システム61において、シンクロサイクロトロン62の側面と治療台34との間に、遮蔽シールド46を配置する構成としてもよい。また、シンクロサイクロトロン62の全面を覆うように遮蔽シールドを配置してもよい。
【0064】
(第8実施形態)
次に、図11を参照して、本発明の第8実施形態に係る中性子線照射システム71について説明する。図11は、本発明の第8実施形態に係る中性子線治療システムを示す概略構成図である。図11に示す中性子線照射システム71が、図3に示す陽子線治療システム1と異なる点は、中性子線を発生させるターゲット(中性子線発生部)72を備えている点である。
【0065】
ターゲット72は、ベンディングマグネット53の先端(出口側)に設けられている。ターゲット72は、陽子線が照射されて中性子線を発生させる。そして、照射部4は、ターゲット72で発生した中性子線を被照射体(患者)に向けて照射する。中性子線は、例えば、患者の体内の腫瘍(照射目標)に対して照射される。
【0066】
このような中性子線照射システム71によれば、上記の実施形態の陽子線治療システムと同様に、サイクロトロン2の側面2aと治療台34(患者、被照射体)との間に、放射線を遮蔽する遮蔽シールド41が設けられているため、サイクロトロン2の側面2aから放射される2次的な放射線が、遮蔽体によって遮蔽されることになる。これにより、サイクロトロン2内で荷電粒子が磁極や電極などの部品と衝突することで発生する2次的な放射線は、遮蔽シールド41によって遮蔽されるので、側面2aから放射される2次的な放射線による患者の被曝を抑制することができる。なお、中性子線照射システム71に設置される遮蔽シールドは、図8に示す遮蔽シールド41に限定されず、図4〜9に示すような遮蔽シールド42〜46,42Bを備える中性子線照射システムとしてもよい。
【0067】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば、輸送ライン5を構成する各要素は、所望のビーム設計に応じて、その配置や個数を適宜変更することができる。
【0068】
また、粒子加速器はサイクロトロンに限定されず、シンクロトロンやシンクロサイクロトロンでも良い。シンクロトロンの場合は、荷電粒子はらせん状の周回軌道ではなく、同一円周上を回る周回軌道に沿って加速される。また、粒子線(荷電粒子)は陽子ビームに限定されず、炭素ビーム(重粒子ビーム)などでも良い。また、外殻部3の形状は、円筒に限らず他の筒状でもよい。
【0069】
また、遮蔽シールドは、加速器の側面を覆うものに限定されず、加速器の側面と患者(治療台)との間に配置されていればよい。また、遮蔽シールドは、加速器の外殻を成す筐体の内側に配置されている構成でもよい。
【0070】
ガントリーは360°回転(揺動)するものに限定されず、360°未満の揺動を行うものでもよい。
【符号の説明】
【0071】
1,61…陽子線治療装置(荷電粒子線照射システム)、2…サイクロトロン(加速器)、3…外殻部(回転ガントリー)、4,64…照射部、5…輸送ライン、34…治療台、41〜46,42B…遮蔽シールド、45a…切欠き部、52…ESS(エネルギー選択システム)、62…シンクロサイクロトロン(加速器)、63…回転ガントリー、71…中性子線照射システム、A…ガントリーの回転軸(所定軸線)。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷電粒子を周回軌道に沿って加速し、荷電粒子線を出射する加速器と、
前記加速器を搭載し、所定軸線周りに回転又は揺動可能なガントリーと、
前記ガントリーに搭載され、前記加速器から出射された前記荷電粒子線を被照射体に向けて照射可能である照射部と、を備え、
前記ガントリー内に設けられていると共に、前記周回軌道の径方向に交差する面である前記加速器の側面から放射される放射線を遮蔽する遮蔽体が配置されていることを特徴とする荷電粒子線照射システム。
【請求項2】
前記遮蔽体は、前記周回軌道の周方向において、前記被照射体と対向する前記側面の部分から放射される放射線のみを遮蔽する位置に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の荷電粒子線照射システム。
【請求項3】
前記ガントリー内に設けられ、前記被照射体へ前記荷電粒子線が照射される照射室を有し、
前記遮蔽体は、前記照射室を構成する壁部に支持されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の荷電粒子線照射システム。
【請求項4】
前記遮蔽体は、前記加速器の前記側面の全周を覆うように配置され、
前記遮蔽体の荷電粒子線の出射口側に切欠き部が形成されていることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の荷電粒子線照射システム。
【請求項5】
前記加速器から出射された前記荷電粒子を輸送する輸送ライン上に設けられ、前記荷電粒子のうち所望のエネルギー幅の荷電粒子を選択的に通過させるエネルギー選択部を備え、
前記エネルギー選択部と前記被照射体との間には、放射線を遮蔽する他の遮蔽体が配置されていることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の荷電粒子線照射システム。
【請求項6】
前記遮蔽体は、複数の異なる材質が前記遮蔽体の厚み方向に積層されて構成されていることを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載の荷電粒子線照射システム。
【請求項7】
荷電粒子を周回軌道に沿って加速し、荷電粒子線を出射する加速器と、
前記加速器を搭載し、所定軸線回りに回転又は揺動可能なガントリーと、
前記加速器から出射された前記荷電粒子線が照射されることにより中性子線を発生させる中性子線発生部と、
前記ガントリーに搭載され、前記中性子線発生部で発生した中性子線を被照射体に向けて照射可能である照射部と、を備え、
前記ガントリー内に設けられると共に、前記周回軌道の径方向に交差する面である前記加速器の側面から放射される放射線を遮蔽する遮蔽体が配置されていることを特徴とする中性子線照射システム。
【請求項1】
荷電粒子を周回軌道に沿って加速し、荷電粒子線を出射する加速器と、
前記加速器を搭載し、所定軸線周りに回転又は揺動可能なガントリーと、
前記ガントリーに搭載され、前記加速器から出射された前記荷電粒子線を被照射体に向けて照射可能である照射部と、を備え、
前記ガントリー内に設けられていると共に、前記周回軌道の径方向に交差する面である前記加速器の側面から放射される放射線を遮蔽する遮蔽体が配置されていることを特徴とする荷電粒子線照射システム。
【請求項2】
前記遮蔽体は、前記周回軌道の周方向において、前記被照射体と対向する前記側面の部分から放射される放射線のみを遮蔽する位置に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の荷電粒子線照射システム。
【請求項3】
前記ガントリー内に設けられ、前記被照射体へ前記荷電粒子線が照射される照射室を有し、
前記遮蔽体は、前記照射室を構成する壁部に支持されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の荷電粒子線照射システム。
【請求項4】
前記遮蔽体は、前記加速器の前記側面の全周を覆うように配置され、
前記遮蔽体の荷電粒子線の出射口側に切欠き部が形成されていることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の荷電粒子線照射システム。
【請求項5】
前記加速器から出射された前記荷電粒子を輸送する輸送ライン上に設けられ、前記荷電粒子のうち所望のエネルギー幅の荷電粒子を選択的に通過させるエネルギー選択部を備え、
前記エネルギー選択部と前記被照射体との間には、放射線を遮蔽する他の遮蔽体が配置されていることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の荷電粒子線照射システム。
【請求項6】
前記遮蔽体は、複数の異なる材質が前記遮蔽体の厚み方向に積層されて構成されていることを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載の荷電粒子線照射システム。
【請求項7】
荷電粒子を周回軌道に沿って加速し、荷電粒子線を出射する加速器と、
前記加速器を搭載し、所定軸線回りに回転又は揺動可能なガントリーと、
前記加速器から出射された前記荷電粒子線が照射されることにより中性子線を発生させる中性子線発生部と、
前記ガントリーに搭載され、前記中性子線発生部で発生した中性子線を被照射体に向けて照射可能である照射部と、を備え、
前記ガントリー内に設けられると共に、前記周回軌道の径方向に交差する面である前記加速器の側面から放射される放射線を遮蔽する遮蔽体が配置されていることを特徴とする中性子線照射システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−187269(P2012−187269A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−53248(P2011−53248)
【出願日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【出願人】(000002107)住友重機械工業株式会社 (2,241)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【出願人】(000002107)住友重機械工業株式会社 (2,241)
【Fターム(参考)】
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