説明

荷電粒子線照射装置

【課題】簡素な構成で筒体に対する不活性ガスの供給量を管理することができる荷電粒子線照射装置を提供する。
【解決手段】本発明の荷電粒子線照射装置1は、荷電粒子を加速して荷電粒子線Pを出射するサイクロトロン3と、サイクロトロン3から出射された荷電粒子線Pを照射ノズル5へ輸送する真空ダクト7と、照射ノズル5内で荷電粒子線の進路上に配置され、内部に不活性ガスが充填されると共に、荷電粒子線Pを透過させるカプトンフィルム13,14を入口及び出口に有する延長ダクト10と、延長ダクト10内にヘリウムガスを供給するガス供給部20と、延長ダクト10の周囲に配置され、荷電粒子線Pを走査する走査磁石12と、延長ダクト10の内部圧力が設定圧以上のときに延長ダクト10内のヘリウムガスを外部にリークするリーク弁36と、を備え、ガス供給部20は、ヘリウムガスの供給量が各々異なる供給ラインA〜Cを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷電粒子線を被照射体に照射する荷電粒子線照射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、放射線治療に利用される荷電粒子線照射装置として、特許文献1に開示されたものが知られている。特許文献1には、スキャニング方式により荷電粒子線を走査してがん等の被照射体に照射する粒子線治療装置であって、荷電粒子線の経路上に設けられた不活性ガスチャンバと、不活性ガスチャンバ内に不活性ガスを供給する一本のガス供給管と、不活性ガスチャンバの内外の圧力差に応じてガス供給管のガス供給量を制御する制御装置と、を備えたものが記載されている。
【0003】
前述した粒子線治療装置では、筒状の不活性ガスチャンバの入口及び出口に隔離膜を設けて気密性を確保すると共に、内部に不活性ガスを供給することで内外の圧力差による隔離膜の破損を防いでいる。そして、この不活性ガスチャンバを荷電粒子線の経路上に配置することにより、空気の影響による荷電粒子線の散乱を回避して照射位置精度を向上させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−229025号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前述した従来の粒子線照射装置においては、不活性ガスの供給量制御を実現するため、不活性ガスチャンバの内外の圧力差に応じてガス流量を決定する制御装置やガス供給管の流量調節弁を駆動するためのアクチュエータなどを設ける必要があり、装置構成や制御が複雑化するという問題があった。
【0006】
そこで、本発明は、簡素な構成で筒体へのガス供給量を管理することができる荷電粒子線照射装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明に係る荷電粒子線照射装置は、荷電粒子を加速して荷電粒子線を出射する加速器と、荷電粒子線を被照射体へ照射する照射部と、加速器から出射された荷電粒子線を照射部へ輸送するダクトと、照射部内で荷電粒子線の進路上に配置され、内部に不活性ガスが充填されると共に、荷電粒子線を透過させる粒子線透過フィルムを入口及び出口に有する筒体と、筒体内に不活性ガスを供給するガス供給手段と、筒体の内部圧力が設定圧以上のときに筒体内の不活性ガスを外部にリークするリーク弁と、を備え、ガス供給手段は、不活性ガスの供給量が各々異なる複数の供給ラインを有することを特徴とする。
【0008】
本発明に係る荷電粒子線照射装置によれば、通常の使用において筒体への不活性ガスの供給量を変える必要がほとんどないことから、状況に応じて複数の供給ラインの中から適切な供給量のラインを選択する構成とすることで、筒体へのガス供給量の管理を容易に行うことができる。しかも、この荷電粒子線照射装置によれば、供給量を常時制御する従来の構成と比べて、非常に簡素な構成で筒体に対する不活性ガスの供給量を管理することができる。また、筒体の内部圧力が上がり過ぎた場合にはリーク弁により不活性ガスがリークされるので、筒体の内部圧力を所望の範囲内に管理することが容易である。
【0009】
本発明に係る荷電粒子線照射装置において、複数の供給ラインには、筒体内の圧力を所定値に維持するための圧力維持用供給ラインと、筒体内の圧力を調整するための調整用供給ラインと、筒体内の空気を不活性ガスに置換するための置換用供給ラインと、が含まれ、圧力維持用供給ラインの不活性ガスの供給量より調整用供給ラインの不活性ガスの供給量は大きく、調整用供給ラインの不活性ガスの供給量より置換用供給ラインの不活性ガスの供給量は大きいことが好ましい。
【0010】
本発明に係る荷電粒子線照射装置によれば、通常時において圧力維持用供給ラインによるガス供給を行い、メンテナンス等の調整時に供給量がやや大きい調整用供給ラインを用いることにより、状況に応じたガス供給量の管理を実現することができる。また、装置のセッテイング時など筒体内の空気を不活性ガスに置換する場合には供給量の大きい置換用供給ラインを用いることにより、効率の良い不活性ガスの置換が可能となる。
【0011】
本発明に係る荷電粒子線照射装置において、筒体内部の空気を吸引する吸引ポンプを更に備え、吸引ポンプは、複数の供給ラインのうち少なくとも一つの供給ラインを利用して筒体内部の空気を吸引することが好ましい。
【0012】
本発明に係る荷電粒子線照射装置によれば、筒体内の空気を不活性ガスに置換する場合に、ガス供給手段の供給ラインを利用して筒体内部の空気を吸引できるので、別途ポンプ用のラインを設ける必要がなく、配管数の削減及び装置構成の簡素化を図ることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、簡素な構成で筒体に対する不活性ガスの供給量を管理することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係る荷電粒子線照射装置の一実施形態を示す概略図である。
【図2】図1の延長ダクト及びガス供給ラインを説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、「上流」「下流」の語は、出射する荷電粒子線の上流(サイクロトロン側)、下流(患者側)をそれぞれ意味している。
【0016】
図1に示すように、荷電粒子線照射装置1は、放射線療法によるがん治療等に利用される装置であり、患者が置かれる治療台2を備えている。荷電粒子線照射装置1では、治療台2上の患者の腫瘍(被照射体)に対してサイクロトロン(加速器)3から出射された荷電粒子線Pの照射が行われる。荷電粒子線Pは、電荷をもった粒子を高速に加速したものであり、例えば陽子線、重粒子(重イオン)線等がある。
【0017】
荷電粒子線照射装置1は、回転軸Rを中心として治療台2の回りを360度回転可能な回転ガントリ4と、回転ガントリ4の内側に取り付けられ、回転ガントリ4によって任意の回転位置に移動可能な照射ノズル(照射部)5と、サイクロトロン3と照射ノズル5とを繋ぐビーム輸送ライン6と、を備えている。
【0018】
ビーム輸送ライン6は、サイクロトロン3から出射された荷電粒子線Pを照射ノズル5まで輸送する経路である。ビーム輸送ライン6は、荷電粒子線Pが通る真空ダクト7を備えている。真空ダクト7の内部は真空状態に維持されており、輸送中の荷電粒子線Pが空気等により散乱することを防いでいる。
【0019】
また、ビーム輸送ライン6は、真空ダクト7に沿って荷電粒子線Pを偏向させる偏向磁石8と、輸送中の荷電粒子線Pのビーム径を収束させる収束磁石9と、を備えている。
【0020】
照射ノズル5は、治療台2上の患者の患部に荷電粒子線Pを照射するものである。照射ノズル5は、回転ガントリ4に対して着脱可能に構成されている。照射ノズル5は、ビーム輸送ライン6の真空ダクト7に接続された延長ダクト(筒体)10と、延長ダクト10の周囲に配置された四極磁石11及び走査磁石12と、を有している。
【0021】
四極磁石11は、磁場により延長ダクト10に入射した荷電粒子線Pのビーム径を収束するためのものである。走査磁石12は、延長ダクト10に入射した荷電粒子線Pを走査してスキャニングビームとして扱うためのものである。
【0022】
図1及び図2に示すように、延長ダクト10は、照射ノズル5内で荷電粒子線Pの進路上に配置された中空部材である。延長ダクト10内にはヘリウムガス(不活性ガス)が充填されている。
【0023】
延長ダクト10は、真空ダクト7から荷電粒子線Pが入射する入口部10aと、走査磁石12による荷電粒子線Pが走査される中央部10bと、患者に向けて荷電粒子線Pが照射される出口部10cとから構成されている。
【0024】
入口部10a、中央部10b、及び出口部10cは、それぞれ円筒形状の部位であり、入口部10a、中央部10b、出口部10cの順に直径(太さ)が大きくなる。延長ダクト10は、患者に近いほどスキャニングビームの走査スペースを広く確保する必要があるため、入口部10a、中央部10b、出口部10cの順に内部スペースが広く形成されている。
【0025】
入口部10aの入口及び出口部10cの出口には、ヘリウムガスを延長ダクト10内に閉じ込めるためのカプトンフィルム(粒子線透過フィルム)[カプトンは登録商標]13,14が配置されている。カプトンフィルム13,14は、延長ダクト10内のヘリウムガスを外部の大気から隔離すると共に荷電粒子線Pを透過する性質を有している。
【0026】
カプトンフィルム13,14は、薄いほど荷電粒子線Pを減衰させることなく透過させることができるが、薄さに応じて強度が低下するため、延長ダクト10の内外の圧力差が大きくなると破損するおそれがある。特に断面直径の大きい出口側のカプトンフィルム14において破損の生じる可能性が大きい。また、延長ダクト10からは、カプトンフィルム13,14を通じて微量のヘリウムガスが漏洩するため、延長ダクト10内にヘリウムガスの供給を行う必要がある。
【0027】
荷電粒子線照射装置1は、延長ダクト10内にヘリウムガスを供給するガス供給部(ガス供給手段)20を有している。ガス供給部20は、回転ガントリ4外部のデッキ21に設置されたヘリウムガス容器22と、ヘリウムガス容器22と延長ダクト10とを接続する供給管23と、から構成される。
【0028】
デッキ21は、回転ガントリ4と独立に設けられており、ヘリウムガス容器22の位置は回転ガントリ4の回転と関わらず一定である。なお、ヘリウムガス容器22を回転ガントリに固定しても良い。
【0029】
供給管23は、ガス容器側配管24、ダクト側配管25、及び第1〜第3の配管26〜28から構成されている。ガス容器側配管24は、ヘリウムガス容器22に接続されており、ヘリウムガス容器22からヘリウムガスが導入される。ダクト側配管25は、延長ダクト10の出口部10cに接続されており、導入されたヘリウムガスを延長ダクト10に供給する。
【0030】
第1の配管26、第2の配管27、及び第3の配管28は、ガス容器側配管24とダクト側配管25との間で並列に設けられた配管である。第1〜第3の配管26〜28の一方の端は、ガス容器側配管24の端に備えられた三方弁32を起点として三方に分岐しており、第1〜第3の配管26〜28の他方の端はダクト側配管25にまとめて接続されている。この三方弁32を操作することにより、ヘリウムガスが流れ込む配管が切り換えられる。また、第1〜第3の配管26〜28は、ガス供給量を決定するバルブ29,30,31をそれぞれ備えている。
【0031】
ガス供給部20は、圧力維持用供給ラインA、調整用供給ラインB、及び置換用供給ラインCを有している。ここで、供給ラインとは、配管自体ではなく、ヘリウムガスの流れる流路を意味する。
【0032】
圧力維持用供給ラインAは、通常時において延長ダクト10内の圧力を所定値に維持するための供給ラインである。この所定値としては、例えば大気圧より僅かに高い圧力が選択される。圧力維持用供給ラインAは、ガス容器側配管24、ダクト側配管25、及び第1の配管26によって構成されている。
【0033】
この圧力維持用供給ラインAでは、ヘリウムガス容器22のヘリウムガスがガス容器側配管24、第1の配管26、ダクト側配管25の順に移動して延長ダクト10内に供給される。なお、ガス容器側配管24及びダクト側配管25は、各供給ラインで共通する配管である。
【0034】
圧力維持用供給ラインAによるヘリウムガスの供給量は、延長ダクト10内の圧力を大気圧より僅かに高い程度に維持できる量(例えば0.5L/min)に設定されている。この供給量は、第1の配管26のバルブ29によって一定値に固定されている。
【0035】
調整用供給ラインBは、メンテナンス等の延長ダクト10の圧力調整時に使用される供給ラインである。調整用供給ラインBは、ガス容器側配管24、ダクト側配管25、及び第2の配管27によって構成されている。
【0036】
この調整用供給ラインBでは、ヘリウムガス容器22のヘリウムガスがガス容器側配管24、第2の配管27、ダクト側配管25の順に移動して延長ダクト10内に供給される。調整用供給ラインBにおけるヘリウムガスの供給量は、圧力維持用供給ラインAのガス供給量より大きい値(例えば2.0L/min)に設定されている。この供給量は、第2の配管27のバルブ30によって一定値に固定されている。
【0037】
置換用供給ラインCは、延長ダクト10内の空気をヘリウムガスに置換する際に使用される供給ラインである。置換用供給ラインCは、ガス容器側配管24、ダクト側配管25、及び第3の配管28によって構成されている。
【0038】
この置換用供給ラインCでは、ヘリウムガス容器22のヘリウムガスがガス容器側配管24、第3の配管28、ダクト側配管25の順に移動して延長ダクト10内に供給される。置換用供給ラインCにおけるヘリウムガスの供給量は、調整用供給ラインBより大きい値(例えば10L/min)に設定されている。この供給量は、第3の配管28のバルブ31によって一定値に固定されている。置換用供給ラインCにおけるヘリウムガスの供給量は、圧力維持用供給ラインAの供給量の10倍以上であることが好ましい。
【0039】
圧力維持用供給ラインA、調整用供給ラインB、及び置換用供給ラインCは、三方弁32の切り替えによって選択された何れか一つのラインのみが使用される。なお、圧力維持用供給ラインA、調整用供給ラインB、及び置換用供給ラインCの配置や構成は、図2に示すものに限られない。
【0040】
荷電粒子線照射装置1は、延長ダクト10内の空気を吸引するための吸引ポンプ33を備えている。吸引ポンプ33は、延長ダクト10内の空気をヘリウムガスに置換する際に用いられるものである。
【0041】
吸引ポンプ33の吸引口には吸引配管34が接続されており、吸引配管34はガス容器側配管24の途中に設けられた切替弁35に接続されている。この切替弁35を切り替えることで、ヘリウムガス容器22に繋がる流路が閉じられ、吸引ポンプ33に繋がる流路が開かれる。この状態で吸引ポンプ33を駆動させることにより、延長ダクト10内の空気の吸引が行われる。吸引ポンプ33は、圧力維持用供給ラインA、調整用供給ラインB、及び置換用供給ラインCの何れかのラインを利用して延長ダクト10内の空気吸引を行う。
【0042】
また、荷電粒子線照射装置1は、内部圧力が設定圧以上のときに延長ダクト10内のヘリウムガスを外部にリークするリーク弁36を備えている。リーク弁36は、延長ダクト10の出口部10cに設けられている。リーク弁36の設定圧は、大気圧の1.5倍から2倍の範囲内で定められることが好ましい。このようなリーク弁36を設けることで、延長ダクト10内にヘリウムガスが過剰に供給された場合に、延長ダクト10内外の圧力差が増加してカプトンフィルム13,14が破れることを防止できる。
【0043】
また、荷電粒子線照射装置1は、延長ダクト10の内部圧力を表示する圧力計37を備えている。圧力計37は、延長ダクト10の出口部10cの側面に取り付けられている。圧力計37のメータ表示部は、照射ノズル5より突出しており、回転ガントリ−3内の治療室から見やすい位置に配置されている。
【0044】
この圧力計37のメータ表示部は、通常時において、圧力維持用供給ラインAからのガス供給により大気圧より高い値を示している。延長ダクト10においてガス漏れ等の異常が発生すると圧力計37のメータ表示部が大気圧まで下がり、これにより延長ダクト10の異常が検知される。なお、圧力計に代えて各種内圧センサーを採用しても良い。
【0045】
以上説明した本実施形態に係る荷電粒子線照射装置1によれば、通常の使用において延長ダクト10へのヘリウムガスの供給量を変える必要がほとんどないことから、状況に応じて三つの供給ラインA〜Cの中から適切な供給量のラインを選択する構成とすることで、延長ダクト10へのガス供給量の管理を容易に行うことができる。また、延長ダクト10の内部圧力が上がり過ぎた場合にはリーク弁によりヘリウムガスがリークされるので、延長ダクト10の内部圧力を所望の範囲内に管理することが容易である。
【0046】
しかも、この荷電粒子線照射装置1によれば、供給量を常時制御する従来の構成と比べて、複雑な制御装置やバルブを駆動させるアクチュエータ等を設ける必要もなく、非常に簡素な構成で延長ダクト10に対するヘリウムガスの供給量を管理することができる。また、複雑な制御装置を用いないので制御系トラブルを回避することができ、信頼性の高いガス供給量の管理を実現できると共に、簡素化により装置の製造コスト削減を図ることができる。
【0047】
また、この荷電粒子線照射装置1では、通常時において圧力維持用供給ラインAによるガス供給を行い、メンテナンス等の調整時に供給量がやや大きい調整用供給ラインBを用いることにより、状況に応じたガス供給量の管理を実現することができる。また、装置のセッテイング時など延長ダクト10内の空気をヘリウムガスに置換する場合には供給量の大きい置換用供給ラインCを用いることにより、効率の良いヘリウムガスの置換が可能となる。
【0048】
更に、この荷電粒子線照射装置1によれば、吸引ポンプ33による延長ダクト10内の空気を吸引する際に、ヘリウムガスの供給ラインA〜Cを利用して空気吸引を行うことができるので、別途ポンプ用のラインを設ける必要がなく、配管数の削減及び装置構成の簡素化を図ることができる。
【0049】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではない。
【0050】
例えば、荷電粒子線照射装置1は、360度回転する回転ガントリ4ではなく、360度未満(例えば180度)の揺動のみ可能なガントリを用いても良い。また、回転ガントリを用いた回転照射に代えて回転ガントリを用いず照射ノズルを固定した固定照射を用いても良い。本発明は固定照射についても有効に適用可能である。
【0051】
また、加速器は、シンクロトロン、シンクロサイクロトロン、線形加速器等でも良い。
【0052】
また、荷電粒子線照射装置1におけるガス供給量の管理は主に手動で行うことができるが、延長ダクト10の内外の圧力差に応じて供給ラインを切り換えるなど自動的に制御する態様であっても良い。
【0053】
また、延長ダクト10の内外を仕切るフィルムは、カプトンフィルム13,14に限られない。通過する荷電粒子線Pの強度に影響が出ない程度に薄く、延長ダクト10内の気密性を確保できるフィルムやシートであれば良い。更に、延長ダクト10内に充填されるガスは、ヘリウムガスに限られず、希ガスその他適切な不活性ガスを用いても良い。
【符号の説明】
【0054】
1…荷電粒子線照射装置 2…治療台 3…サイクロトロン(加速器) 4…回転ガントリ 5…照射ノズル(照射部) 6…ビーム輸送ライン 7…真空ダクト 8…偏向磁石 9…収束磁石 10…延長ダクト(筒体) 11…四極磁石 12…走査磁石 13,14…カプトンフィルム(粒子線透過フィルム) 20…ガス供給部(ガス供給手段) 21…デッキ 22…ヘリウムガス容器 23…供給管 24…ガス容器側配管 25…ダクト側配管 26…第1の配管 27…第2の配管 28…第3の配管 29,30,31…バルブ 32…三方弁 33…吸引ポンプ 34…吸引配管 35…切替弁 36…リーク弁 37…圧力計 A…圧力維持用供給ライン B…調整用供給ライン C…置換用供給ライン P…荷電粒子線 R…回転軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷電粒子を加速して荷電粒子線を出射する加速器と、
前記荷電粒子線を被照射体へ照射する照射部と、
前記加速器から出射された前記荷電粒子線を前記照射部へ輸送するダクトと、
前記照射部内で前記荷電粒子線の進路上に配置され、内部に不活性ガスが充填されると共に、荷電粒子線を透過させる粒子線透過フィルムを入口及び出口に有する筒体と、
前記筒体内に不活性ガスを供給するガス供給手段と、
前記筒体の内部圧力が設定圧以上のときに前記筒体内の不活性ガスを外部にリークするリーク弁と、を備え、
前記ガス供給手段は、不活性ガスの供給量が各々異なる複数の供給ラインを有することを特徴とする荷電粒子線照射装置。
【請求項2】
前記複数の供給ラインには、前記筒体の内部圧力を所定値に維持するための圧力維持用供給ラインと、前記筒体内の圧力を調整するための調整用供給ラインと、前記筒体内の空気を不活性ガスに置換するための置換用供給ラインと、が含まれ、
前記圧力維持用供給ラインの不活性ガスの供給量より前記調整用供給ラインの不活性ガスの供給量は大きく、前記調整用供給ラインの不活性ガスの供給量より前記置換用供給ラインの不活性ガスの供給量は大きいことを特徴とする請求項1に記載の荷電粒子線照射装置。
【請求項3】
前記筒体内部の空気を吸引するための吸引ポンプを更に備え、
前記吸引ポンプは、前記複数の供給ラインのうち少なくとも一つの供給ラインを利用して前記筒体内部の空気を吸引することを特徴とする請求項1又は2に記載の荷電粒子線照射装置。


【図1】
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【図2】
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