説明

荷電粒子線装置および静電チャック装置

【課題】反りのある試料に対しても正常な保持動作を行う荷電粒子線装置を提供する。
【解決手段】前記課題を解決するために、本発明の荷電粒子線装置1は、試料ステージ21に保持された試料101に電子線12を照射し、試料101の画像を生成する荷電粒子線装置1であって、試料101の反り量を計測する反り量計測部35と、試料101を吸着する複数の吸着部221を有する静電チャックと、複数の吸着部221のそれぞれの下部に設けられた昇降可能な昇降部222と、反り量計測部35が計測した試料101の反り量に合わせて昇降部222を昇降させる昇降制御部633と、を備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷電粒子線装置および静電チャック装置の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体集積製品の集積度は益々向上し、その回路パターンの更なる高精細化が要求されてきている。加えて、回路パターンを形成する半導体ウェハ(以下、「ウェハ」という)は、Φ300mmが現在の主流であるが、量産コストの低減を図るべく、Φ450mmへの大口径化が検討されている。
【0003】
この分野では、ウェハ上に形成される回路パターンが所定の形状および寸法で作成されているか、異物の付着がないか等、各製造工程にて製造状態を検査・計測し、問題がある場合には、原因究明および対策を行うことが非常に重要である。回路パターンの状態を検査・計測する装置としては、荷電粒子線を用いた装置が種々使用されている。
例えば、回路パターンの幅の計測にはCD−SEM(Critical Dimension-Scanning Electron Microscope)が使用されており、配線形成後の欠陥位置検出にはSEM(Scanning Electron Microscope)式外観検査装置、欠陥観察・分類にはレビューSEM等が使用されており、これらはすべて走査電子顕微鏡技術を基礎にした装置である。
【0004】
ここで、上記の装置におけるウェハの保持機構としては、試料外周に基準ピンを2点設け、対向する方向から可動ピンによる押付け力で保持する機械的方式に代わって、静電チャック方式の適用が拡大している。静電チャック方式は、クーロン力とジョンソン・ラーベック力を利用したものに大別される。
前者のクーロン力は、静電チャックの誘電体層表面に載置された試料と静電チャックの電極との間に発生する静電吸着力である。後者のジョンソン・ラーベック力は、静電チャックの誘電体層表面に載置された試料と誘電体層表面との間で発生する静電吸着力である。両方式とも試料外周のピンは必要無いため、前述の機械的方式で問題となっていたピン付近のウェハの表面に発生する異物の対策ができる。また、静電吸着力により静電チャックの吸着面に固定されるので、ウェハの撓みや反りを低減させる作用もある。
【0005】
しかしながら、ウェハの製造プロセスの多様化により、様々な条件下での安定した吸着動作を実現することは難しく、それらに対応した様々な発明がなされている。
特許文献1に開示された技術は、幅広い周囲温度で安定した保持動作を可能としている。周囲温度の変化は、静電チャックの素材の体積抵抗率の変化を招き、これにより吸着脱特性の悪化、駆動電源の負荷増大という問題が発生する。この対策として、体積抵抗率の異なる複数の静電チャックを用い、周囲温度に応じて使用する静電チャックを切り替えている。
特許文献2に開示された技術は、静電チャックをリング形状、またはウェハの外周に沿って複数配置することで、ウェハの裏面との接触面積を抑制し、ウェハの裏面に異物が付着するのを抑制している。さらに、この静電チャックを板バネによって支持することで、ウェハの面方向には高い剛性を、上下方向には弾性を持たせ、撓みや反りのあるウェハ(以下、「反りウェハ」という)でも安定で柔軟な保持動作を可能としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−135527号公報
【特許文献2】特開2008−85290号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に開示された技術は、基本的にはウェハが平坦であるとの前提で構成されているため、ウェハの反り量が大きい場合(例えば、100μm以上)等は、十分な吸着力が得られず、吸着不能となり、致命的なエラーとして認識され、装置が停止してしまう。
特許文献2に開示された技術は、反りウェハを吸着できる場合もあるが、例えばウェハの中心が凹んでいるような形状では、静電チャックの吸着面にウェハが接触、または近接しないことも想定され、反りウェハに十分対応できているとはいえない。
【0008】
また、反りウェハへの対応策としては、静電チャックに供給する電圧を上昇させることで吸着力を強化し、ウェハを吸着することもできるが、それには以下のような課題がある。
第一に、例えば数百マイクロメートルの反りに対応するには、数キロボルト以上の高電圧が必要となり、ウェハや装置へダメージを与える放電のリスクが増大してしまう。
第二に、残留吸着の問題がある。残留吸着とは、静電チャックへ電圧を印加した状態から0ボルトに戻しても、ウェハ表面等に誘起された電荷が緩和されず、意図しない吸着力が残っている状態である。電圧に比例して残留吸着力も増加する傾向にあり、最悪は試料室内を大気開放して手動で取り出す事態となり、装置のダウンタイムが増大してしまう。
第三に、ウェハへ力を加えて強制的に平坦化させてしまうため、吸着動作によって、ウェハ上の回路パターンの寸法が変化、変形したり、回路パターンが断線したりするという問題が、回路パターンの更なる微細化により、顕在化すると考えられる。また、上述したように、ウェハの大口径化に伴うウェハの反り量の増大も懸念され、上記問題はさらに顕著に現れると考えられる。
【0009】
本発明は、このような背景に鑑みてなされたものであり、反りのある試料に対しても正常な保持動作を行うことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するために、本発明の荷電粒子線装置は、試料ステージに保持された試料に電子線を照射し、前記試料の画像を生成する荷電粒子線装置であって、前記試料の反り量を計測する反り量計測部と、前記試料を吸着する複数の吸着部を有する静電チャックと、前記複数の吸着部のそれぞれの下部に設けられた昇降可能な昇降部と、前記反り量計測部が計測した前記試料の反り量に合わせて前記昇降部を昇降させる昇降制御部と、を備えることを特徴とする。
その他の解決手段については、実施形態中で適宜説明する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、反りのある試料に対しても正常な保持動作を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】第1実施形態に係る荷電粒子線装置の構成を示すブロック図である。
【図2】試料室およびロードロック室の平面図であり、ウェハの反り量の計測を説明するための図である。
【図3】ウェハ保持部の上面およびA−A’断面を説明するための図である。
【図4】第1実施形態に係る荷電粒子線装置の動作を示すフローチャートである。
【図5】ウェハ保持部の初期状態からウェハ吸着までの様子を示す概略図であり、(a)は、ウェハ保持部の初期状態を示す図である。(b)は、ウェハ保持部の複数のZステージを試料の反り量に合わせて昇降させた状態を示す図である。(c)は、ウェハ保持部に試料を載置した状態を示す図である。(d)は、静電チャックに電圧を印加し、試料を吸着させた状態を示す図である。
【図6】第2実施形態に係る荷電粒子線装置の動作を示すフローチャートである。
【図7】ウェハ保持ステータス画面の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<第1実施形態>
以下、本発明の第1実施形態について、図1〜図5を参照して説明する。なお、各図において、共通する部分には同一の符号を付し重複した説明を省略する。
[荷電粒子線装置1の構成]
図1は、第1実施形態に係る荷電粒子線装置1の構成を示す図である。
荷電粒子線装置1は、カラム10と、試料室20と、ロードロック室30と、を備える。試料室20は、床面に設置する架台26上に床振動を除去する除振用マウント27を介して支持されており、試料室20の上部にはカラム10が、側部にはロードロック室30が取り付けられている。
【0014】
はじめに、試料搬送について説明する。まず大気側ゲート31が開き、ウェハ101が装置外部の図示しないウェハ搬送装置からロードロック室30内に搬入され、大気側ゲート31が閉じた後、真空ポンプ33によりロードロック室30が真空排気される。その後、試料室側ゲート34が開き、真空搬送ロボット32により、ウェハ101が試料室20内に搬入される。なお、試料室20内は、常に真空ポンプ25により真空排気されており、カラム10内も図示しない真空ポンプによって高真空度に保たれている。上記、真空排気、ウェハ搬送に係る各構成物は排気搬送制御部65によって制御されている。
【0015】
次に、試料室内での動作について説明する。試料室20内に搬入されたウェハ101は、試料ステージ21上のウェハ保持部22に載置される。試料ステージ21は、例えばボールねじとパルスモータを組み合わせた搬送手段や、リニアモータ、超音波モータ等を組み合わせた搬送手段を用い、ステージ制御部63により制御される。試料ステージ21上にはバーミラー23が取り付けられており、試料室20に取り付けられている干渉計24とバーミラー23との相対的な距離変化をレーザ測長することにより試料ステージ21の位置を計測して位置制御部62で処理を実施する。位置制御部62は、試料ステージ21上に搭載保持されたウェハ101の位置を管理する。ここで、試料ステージ21の位置を検出するために、リニアスケール等の位置検出手段を用いてもよい。
加速度制限テーブル50については、後記する。
【0016】
次に、電子線12による観察動作について説明する。カラム10内の電子銃11からは電子線12が射出され、この電子線12は、電子レンズ13および対物レンズ17によって収束される。さらに、電子線12は、偏向コイル14,15により所定の軌道に偏向され、ウェハ101に照射される。電子線12がウェハ101に照射されると反射電子および2次電子が発生し、検出器16によって検出される。検出器16で検出された反射電子および2次電子の検出信号は、偏向コイル14,15による電子線12の制御情報とともに、画像制御部64に入力される。画像制御部64では制御情報を元に画像データを生成し、制御部60を介して、画像が表示装置42に表示される。制御部60は、上記各構成部を統括する役割を果たしている。オペレータは、入力部41を使って観察条件等を入力することで所望の観察を実行できる。なお、本実施形態における走査型電子顕微鏡には高さ検出センサ(高さ検出部)18が搭載されており、ウェハ101の詳細な高さを検出し、それを元にカラム制御部61にて電子線12の偏向量、収束率等を決定している。
【0017】
ロードロック室30の上面には、図示しないガラス窓を設け、その上に2次元レーザ変位計(反り量計測部)35を設置している。2次元レーザ変位計35は、レーザにより距離を測定するものであり、ミクロンオーダの精度でウェハ101の反り量を計測できる。
【0018】
図2は、試料室20およびロードロック室30の平面図であり、ウェハ101の反り量の計測を説明するための図である。
図2に示すように、2次元レーザ変位計35は、ウェハ101をウェハ保持部22に載置する前に、ウェハ101の反り量を計測するようになっている。また、2次元レーザ変位計35は、線状の計測領域を持っており、計測領域がウェハ101の進行方向に対して垂直になるように設置されている。このため、試料室20へと向かう搬送動作中に、ウェハ101の全面の反り量を計測することができ、装置のスループット(単位時間当りに処理できるウェハ101の枚数)の低下を防いでいる。また、ステージ制御部63には、2次元レーザ変位計35を制御する反り量計測制御部631が設けられている。なお、ここでは、2次元レーザ変位計35を用いたが、コストや、必要な計測位置間隔(ウェハ101の進行方向に対して垂直方向の計測位置の間隔)等を鑑みて、スポット状の計測領域を持つレーザ変位計を複数並べてもよい。
【0019】
(ウェハ保持部22の構成)
図3は、ウェハ保持部22の上面およびA−A’断面を説明するための図である。
図3に示すように、ウェハ保持部22は、12個に分割されており、それぞれに静電チャックの吸着部221と、Zステージ(昇降部)222と、を備えている。また、ウェハ保持部22は、開口部223に格納される昇降機能を有するリフトピン(図示せず)を備えている。
吸着部221は、チャック電極に電圧を印加して試料を吸着するものである。
Zステージ222は、吸着部221の高さの調節を、他の吸着部221とは独立に行うものである。Zステージ222は、例えば、高精度位置決めが可能で低発塵のピエゾステージから成っている。
リフトピンは、真空搬送ロボット32によるウェハ101の搬入・搬出動作の際に、上昇してウェハ101を一時的に支えるものである。
【0020】
ステージ制御部63は、静電チャック制御部632と、Zステージ制御部(昇降制御部)633と、を備えている。
静電チャック制御部632は、静電チャックの各吸着部221の吸着動作のON/OFFや、吸着状態の検知を行うものである。
Zステージ制御部633は、各Zステージ222の位置を制御するものである。
なお、本実施形態におけるウェハ保持部22は、一例にすぎず、より複雑な反り形状のウェハ101に対応するために分割数を増やしたり、特徴的な反り状態に対応した分割形状にしたりしてもよい。例えば、ウェハ保持部22は、格子状、短冊状、ドーナツ状にしてもよい。また、ウェハ保持部22は、製造コストに鑑みて分割数を減らしてもよい。
【0021】
なお、本明細書等において、静電チャック装置とは、前記した反り量計測部と、静電チャックと、昇降部と、昇降制御部と、を備えるものである。
【0022】
[荷電粒子線装置1の動作(1)]
次に、荷電粒子線装置1の動作について図4および図5(構成は適宜図1から図3)を参照して説明する。
図4は、第1実施形態に係る荷電粒子線装置1によるウェハ観察の動作を示すフローチャートである。
図4のフローチャートに示すように、ステップS101において、真空搬送ロボット32は、ウェハ101を図示しないウェハ搬送用ケースから取り出し、ロードロック室30へ搬入する。このとき、図5(a)に示すように、ウェハ保持部22は、初期状態である。
ステップS102において、2次元レーザ変位計35(図2参照)は、ウェハ101の全面の反り量を計測し、位置データを取得する。反り量計測制御部631は、各Zステージ222の目標位置データを算出する。目標位置データは、例えば、静電チャックの各吸着部221およびZステージ222が担当する領域ごとの位置データの平均値である。
【0023】
ステップS103において、Zステージ制御部633(図3参照)は、算出された各Zステージの目標位置データに従い、複数のZステージ222をそれぞれ昇降させる。このとき、図5(b)に示すように、ウェハ保持部22は、複数のZステージ222をウェハ101の反り量に合わせて昇降させた状態となっている。なお、図5(b)では、ウェハ101の反りを強調して示している。
ステップS104において、真空搬送ロボット32は、ウェハ101を試料室へ搬入する。すなわち、真空搬送ロボット32は、ウェハ101を試料ステージ21の図示しないリフトピン上に載置し、その後、リフトピンが下降してウェハ101から離れ、ウェハ保持部22へウェハ101を載置する。このとき、図5(c)に示すように、ウェハ保持部22は、ウェハ101を載置した状態となっている。
【0024】
ステップS105において、静電チャック制御部632(図3参照)は、静電チャックの吸着部221に電圧を印加して、ウェハ101を吸着部221に吸着させる。このとき、図5(d)に示すように、ウェハ保持部22は、静電チャックの吸着部221に電圧が印加され、ウェハ101を吸着させた状態となっている。
ステップS106において、静電チャック制御部632は、ウェハ101の吸着状態がすべての吸着部221について正常であるか否かを判定する。例えば、静電チャック制御部632は、吸着動作時に瞬間的に流れる漏れ電流を計測し、予め設定された閾値との比較により判定する。
【0025】
ウェハ101の吸着状態がすべての吸着部221について正常であると判定した場合(ステップS106・Yes)、ステップS109において、荷電粒子線装置1は、オペレータが予め設定した条件に基づいて、ウェハ101の観察動作を行う。例えば、荷電粒子線装置1は、パターン欠陥部のSEM像を取得する動作を行う。
ステップS110において、静電チャック制御部632は、静電チャックの吸着部221に印加している電圧を止め、ウェハ101を吸着部221から脱離させる。
ステップS111において、真空搬送ロボット32は、ウェハ101を搬出する。
【0026】
一方、ウェハ101の吸着状態が少なくとも一部について正常でないと判定した場合(ステップS106・No)、ステップS107において、ステージ制御部63は、吸着状態が正常である吸着部221の吸着力を足し合わせて、総吸着力を算出する。なお、吸着状態が正常である吸着部221の吸着力は、既知である。
ステップS108において、ステージ制御部63は、加速度制限テーブル50(図1参照)を参照して、試料ステージ21が移動する際の加速度を制限する。ここで、加速度制限テーブル50は、総吸着力に対する試料ステージ21の最大許容加速度が設定されているテーブルである。最大許容加速度とは、試料ステージ21が移動した際に、ウェハ101に加わる慣性力によって位置ずれを起こさない限界の加速度を示す。その後、前記したステップS109からステップS111の処理が実行される。
【0027】
本実施形態により、反り量の大きなウェハでも正常な保持動作を可能とし、かつ、保持動作によるウェハの変形を最小限に抑えることができる。
また、静電チャックの吸着動作に異常が発生した場合でも、荷電粒子線装置が停止することなく、試料ステージが移動する際の加速度を自動的に制限して、所望の観察動作を行うことができる。
【0028】
<第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態について説明する。
[荷電粒子線装置1の動作(2)]
荷電粒子線装置1の第2実施形態における動作(2)について図6および図7(構成は適宜図1)を参照して説明する。
図6は、第2実施形態に係る荷電粒子線装置1によるウェハ観察の動作を示すフローチャートである。このフローチャートにおいて、ステップS101〜S106,S109〜S111の処理は、図4のフローチャートのステップS101〜S106,S109〜S111の処理と同様であるため、同一のステップ番号を付し説明は省略する。ここでは、ステップS201,S202の処理について説明する。
【0029】
図6のフローチャートに示すように、ステップS201において、制御部60は、ウェハ保持ステータス画面を表示させる。
ここで、ウェハ保持ステータス画面について説明する。
図7は、ウェハ保持ステータス画面の一例を示す図である。
ウェハ保持ステータス画面421は、保持状態詳細表示部422と、総吸着力表示部423と、ステージ加速度表示部424と、観察完了遅延時間表示部425と、ウェハ保持部概略表示部426と、Yesボタン427と、Noボタン428と、を備えている。
【0030】
保持状態詳細表示部422は、複数の吸着部221の吸着状態およびZステージ222の位置を示すものである。項目「No.」は、分割されたウェハ保持部22のそれぞれを識別する番号であり、後記するウェハ保持部概略表示部426に示す番号と対応する。項目「ESC(ElectroStatic Chuck)」は、吸着部221の吸着状態が正常であるとき、「OK」となる。項目「Z[μm]」は、Zステージ222のZ方向の位置データである。
総吸着力表示部423は、吸着状態が正常である吸着部221の吸着力の総和を示すものである。
【0031】
ステージ加速度表示部424は、すべての吸着状態が正常である場合の試料ステージ21の加速度を100%として示すものである。
観察完了遅延時間表示部425は、加速度制限に伴う観察動作時間の遅延時間を示すものである。
ウェハ保持部概略表示部426は、分割されたウェハ保持部22の外観の概略および分割されたウェハ保持部22のそれぞれを識別する番号を表示するものである。
オペレータは、このウェハ保持ステータス画面421が表示された場合、Yesボタン427またはNoボタン428を押下する。
【0032】
図6に戻り、ステップS202において、制御部60は、オペレータによりYesボタン427が押下されたか否かを判定する。
オペレータによりYesボタン427が押下されたと判定した場合(ステップS202・Yes)、ステップS109において、荷電粒子線装置1は、オペレータが予め設定した条件に基づいて、試料ステージ21の加速度を制限した状態で、ウェハ101の観察動作を行う。
一方、オペレータによりNoボタン428が押下されたと判定した場合(ステップS202・No)、荷電粒子線装置1は、観察動作を中止する。(ステップS110,S111)。
【0033】
本実施形態により、オペレータの判断によって、荷電粒子線装置1の処理を選択することができる。
【0034】
<変形例>
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更することができる。
【0035】
例えば、試料の高さを検出する高さ検出センサ18を備え、この高さ検出センサ18が検出した試料の高さが一定となるように、Zステージ制御部633が各Zステージ222を昇降させることとしてもよい。
これにより、反りのある試料であっても、試料の高さを一定にすることで高精度の測定に対応することができる。
【0036】
また、静電チャック制御部632に出力電圧可変機能を設け、制御部60は、静電チャックの各吸着部221に印加する電圧を、試料の反り量に応じて求め(例えば、テーブル参照や、換算式等によって求める)、静電チャック制御部632へ指示を与えることとしてもよい。
これにより、反り量の大きな試料の一部分の吸着部221に、より大きな電圧を印加することができ、反りのある試料であっても、平坦化することで高精度の測定に対応することができる。
【0037】
本発明の実施形態では、フローチャートのステップは、記載された順序に沿って時系列的に行われる処理の例を示したが、必ずしも時系列的に処理されなくとも、並列的あるいは個別実行される処理をも含むものである。
【0038】
また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0039】
1 荷電粒子線装置
12 電子線
18 高さ検出センサ(高さ検出部)
21 試料ステージ
22 ウェハ保持部
30 ロードロック室
35 2次元レーザ変位計(反り量計測部)
50 加速度制限テーブル
60 制御部
61 カラム制御部
62 位置制御部
63 ステージ制御部
64 画像制御部
65 排気搬送制御部
101 ウェハ(試料)
221 吸着部
222 Zステージ(昇降部)
421 ウェハ保持ステータス画面(試料の保持状態を示す画面)
631 反り量計測制御部
632 静電チャック制御部
633 Zステージ制御部(昇降制御部)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料ステージに保持された試料に電子線を照射し、前記試料の画像を生成する荷電粒子線装置であって、
前記試料の反り量を計測する反り量計測部と、
前記試料を吸着する複数の吸着部を有する静電チャックと、
前記複数の吸着部のそれぞれの下部に設けられた昇降可能な昇降部と、
前記反り量計測部が計測した前記試料の反り量に合わせて前記昇降部を昇降させる昇降制御部と、
を備えることを特徴とする荷電粒子線装置。
【請求項2】
前記静電チャックの各吸着部と前記試料との間の少なくとも一部において、吸着状態が正常でないと判定された場合には、予め設定された加速度制限テーブルに基づいて、前記試料ステージが移動する際の加速度を制限する制御部をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の荷電粒子線装置。
【請求項3】
前記静電チャックの各吸着部と前記試料との間の少なくとも一部において、吸着状態が正常でないと判定された場合には、前記試料の保持状態を示す画面を表示させる制御部をさらに備えることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の荷電粒子線装置。
【請求項4】
試料ステージに保持された試料に電子線を照射し、前記試料の画像を生成する荷電粒子線装置であって、
前記試料を吸着する複数の吸着部を有する静電チャックと、
前記複数の吸着部のそれぞれの下部に設けられた昇降可能な昇降部と、
前記試料の高さを検出する高さ検出部と、
前記高さ検出部が検出した前記試料の高さが一定となるように、前記昇降部を昇降させる昇降制御部と、
を備えることを特徴とする荷電粒子線装置。
【請求項5】
試料ステージに保持された試料に電子線を照射し、前記試料の画像を生成する荷電粒子線装置であって、
前記試料の反り量を計測する反り量計測部と、
前記試料を吸着する複数の吸着部を有する静電チャックと、
前記反り量計測部が計測した反り量に応じて、前記静電チャックに印加する電圧を制御する静電チャック制御部と、
を備えることを特徴とする荷電粒子線装置。
【請求項6】
試料を吸着するための静電チャック装置であって、
前記試料の反り量を計測する反り量計測部と、
前記試料を吸着する複数の吸着部を有する静電チャックと、
前記複数の吸着部のそれぞれの下部に設けられた昇降可能な昇降部と、
前記反り量計測部が計測した前記試料の反り量に合わせて前記昇降部を昇降させる昇降制御部と、
を備えることを特徴とする静電チャック装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−248733(P2012−248733A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−120174(P2011−120174)
【出願日】平成23年5月30日(2011.5.30)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】