説明

荷電粒子線装置

【課題】 試料を大気中に取り出すことなく試料の断面加工と断面観察が行える荷電粒子線装置を提供する。
【解決手段】 イオン加工時、試料ホルダ22の第2の被取付部34がホルダ取付部16に取付けられる。そして、遮蔽材40のエッジ部42から突出した試料部分41がイオンビームによってエッチングされる。その後、試料ステージが電子光学系の光軸上に配置されて、イオンエッチングで現れた試料断面50がSEM観察される。一方、試料表面45をSEM観察する場合には、試料ホルダの第1の被取付部31がホルダ取付部16に取付けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料にイオンビームを照射して試料加工を行うイオンビーム加工装置や、走査電子顕微鏡などの荷電粒子線装置に関する。
【背景技術】
【0002】
イオンビーム加工装置は、試料の断面を得るために用いられている。そして、イオンビーム加工によって断面が形成された試料は、イオンビーム加工装置から大気中に取り出され、次に走査電子顕微鏡(SEM)の試料室に入れられて断面観察が行われる。その場合、試料の断面をSEM観察できるように、試料は大気中でSEM用の試料ホルダに載せ換えられる(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−319362号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のように試料を大気中に取り出してしまうと、試料が酸化したり湿気を帯びたりして、せっかく得た試料断面を良好にSEM観察できなくなる。また、特許文献1のように試料をイオンビーム加工装置から大気中に取り出してSEM用ホルダに載せ換える作業は、時間と手間を要する。
【0005】
本発明はこのような点に鑑みて成されたものであり、その目的の1つは、試料を大気中に取り出すことなく試料の断面加工と断面観察が行える荷電粒子線装置を提供することにある。
【0006】
また、試料ステージの傾斜機構を使用しなくても、試料の断面加工と断面観察が行える荷電粒子線装置を提供することも本発明の目的の1つである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成する本発明の荷電粒子線装置は、排気装置によって排気された試料室と、前記試料室に接続され、試料に電子線を照射する電子光学系と、前記試料室に接続され、試料にイオンビームを照射するイオンビーム光学系とを備えた荷電粒子線装置であって、前記試料室に配置され、ホルダ取付部を有する試料ステージと、前記ホルダ取付部に着脱可能に取付けられる第1および第2の被取付部と、試料交換棒に着脱可能に支持される被支持部と、試料を載置する試料台とを有する試料ホルダと、前記試料室に配置された前記試料交換棒であり、前記試料ホルダの被支持部を保持して次の(a)(b)の着脱動作が可能な試料交換棒とを備え、
(a)試料ホルダの第1の被取付部を試料ステージのホルダ取付部に対して着脱する
(b)試料ホルダの第1の被取付部に代えて、試料ホルダの第2の被取付部を試料ステージのホルダ取付部に対して着脱する
前記第1の被取付部と第2の被取付部と試料台は、次の(c)と(d)と(e)の条件が満たされるように、試料ホルダの所定位置に設けられていると共に、前記電子光学系とイオンビーム光学系は、次の(c)と(d)と(e)の条件が満たされるように、前記試料室にそれぞれ接続されていることを特徴とする
(c)第1の被取付部がホルダ取付部に取付けられて、試料ホルダが電子線による試料観察位置に配置されたとき、試料台の試料載置面が電子光学系の電子銃に対向する
(d)第2の被取付部がホルダ取付部に取付けられて、試料ホルダがイオンビームによる試料加工位置に配置されたとき、試料台の試料載置面がイオンビーム光学系のイオン銃に対向する
(e)第2の被取付部がホルダ取付部に取付けられて、試料ホルダが電子線による試料観察位置に配置されたとき、試料台の試料載置面が電子光学系の光軸に平行となる。
【発明の効果】
【0008】
本発明の荷電粒子線装置によれば、試料を大気中に取り出すことなく試料の断面加工と断面観察が行える。また、試料ステージの傾斜機構を使用しなくても、試料の断面加工と断面観察を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の荷電粒子線装置の一例を示した図である。
【図2】本発明の試料ホルダの一例を示した図である。
【図3】本発明を説明するために示した図である。
【図4】本発明の試料ホルダの他の例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を用いて本発明の実施の形態について説明する。
(実施例1)
図1は本発明の荷電粒子線装置の一例を示した図であり、図1(a)はその装置を横(−y側)から見た図、図1(b)はその装置を上(z側)から見た図である。
【0011】
図1において、1は試料室容器であり、その内部の試料室2は排気装置(図示せず)によって高真空に排気されている。3は電子光学系(SEM鏡筒)であり、電子光学系3は試料室容器1の上面に取付けられている。このように試料室2に接続された電子光学系3は、電子銃4と集束レンズ5と偏向レンズ6を備えている。7は電子光学系3の光軸であり、光軸7はz軸に平行である。
【0012】
8はイオンビーム光学系(イオン鏡筒)であり、イオンビーム光学系8は試料室容器1の側面(−y側の側面)に取付けられている。このように試料室2に接続されたイオンビーム光学系8は、イオン銃9を備えている。10はイオンビーム光学系8の光軸であり、光軸10はy軸に平行である。このイオンビーム光学系の光軸10と電子光学系の光軸7は交わっていないが、これらの光軸10,7はx軸に直交している。そして、イオンビーム光学系の光軸10は、電子光学系の光軸7からx軸方向に距離Lだけ離れている。
【0013】
11はレールであり、試料室2に配置されたレール11はx軸方向に延びている。レール11上には試料ステージ12が載っており、試料ステージ12はXステージ13とYステージ14とZステージ15とホルダ取付部16を備えている。このXステージ13は、ステージ移動機構17によってレール11上をx軸方向に移動される。また、Yステージ14は、ステージ移動機構17によってXステージ13上をy軸方向に移動される。また、Zステージ15は、ステージ移動機構17によってYステージ14上でz軸方向に移動される。このようなXYZステージ上に位置するホルダ取付部16は、それらのステージ移動に伴ってx,y,z軸方向に移動される。
【0014】
18は試料交換室容器であり、試料交換室容器18は試料室容器1の側面に着脱可能に取付けられている。試料交換室容器18は試料交換棒19を備えており、試料交換棒19の中心軸20はx軸に平行かつ電子光学系の光軸7に直交している。そして、試料交換棒19は、x軸方向に移動可能かつ、その中心軸20まわりに回動可能に試料交換室容器18に取付けられている。21は試料交換棒19の取っ手であり、オペレータは取っ手21を操作して、試料交換棒19をx軸方向に移動させたり回動させたりすることができる。
【0015】
22は試料ホルダであり、試料ホルダ22は試料交換棒19に保持されている。図1の状態においては試料ホルダ22は試料交換室23に位置しており、この試料交換室23は排気装置(図示せず)によって排気されている。なお、オペレータは、試料ホルダ22を試料交換棒19の先端に取付けてから、図1のように試料交換室容器18を試料室容器1に取付けるようにしている。
【0016】
24は真空ゲートであり、真空ゲート24は試料室容器1の側面に開閉可能に取付けられている。真空ゲート24が開けられると、試料交換室23と試料室2がつながり、一方、真空ゲート24が閉じられると、それらの2室は真空ゲート24によって真空遮断されるように構成されている。
【0017】
25は中央制御装置であり、中央制御装置25は、前記ステージ移動機構17と、試料室2に配置された2次電子検出器26と、表示装置27と、キーボード等の操作手段28に電気的に接続されている。
【0018】
ここで、上述した試料ホルダ22の構造を図2を用いて詳しく説明する。図2は、図1の状態における試料ホルダ22の斜視図である。すなわち、図2は、試料交換棒19に保持されて試料交換室23に配置された試料ホルダ22の斜視図である。
【0019】
30は試料ホルダ22の前面に開けられた雌ネジ(被支持部)であり、試料交換棒19先端に形成された雄ネジ(図示せず)が雌ネジ30に捩じ込まれている。このような形で、試料交換棒19は試料ホルダ22の被支持部30を支持している。
【0020】
31は第1の被取付部である。この第1の被取付部31が試料ステージ12のホルダ取付部16に着脱可能に取付けられるように、x軸方向に延びる溝32が第1の被取付部31に形成されている。溝32は、試料ホルダ前面に垂直な試料ホルダ下面33に形成されている。また、34は第2の被取付部である。この第2の被取付部34がホルダ取付部16に着脱可能に取付けられるように、x軸方向に延びる溝35が第2の被取付部34に形成されている。溝35は、試料ホルダ下面33に垂直な試料ホルダ側面36に形成されている。なお、雌ネジ30の中心から溝32までの距離a(図2参照)と、雌ネジ30の中心から溝35までの距離b(図2参照)とは同じである。
【0021】
37は試料台であり、試料39が試料台37の試料載置面38に接着されている。40は板状の遮蔽材であり、試料39を照射するイオンビームの一部を遮る遮蔽材40は、試料39の大部分を覆うように試料39上に配置されている。図中、41の部分は、遮蔽材40のエッジ部42からy方向に突出した試料部分である。
【0022】
前記遮蔽材40は、試料ホルダ上面43(側面36に垂直な上面43)上に配置された遮蔽材移動機構(位置調整手段)44に保持されている。遮蔽材移動機構44は、遮蔽材40をy軸方向に移動させるものであり、試料39に対するエッジ部42の位置を調整するためのものである。図1の装置においては、試料ホルダ22が試料ステージ12のホルダ取付部16に取付けられると、遮蔽材移動機構44と中央制御装置25とが電気的に接続されるように構成されている。そして、そのような接続状態においては、遮蔽材移動機構44は、中央制御装置25からの移動制御信号に基づいて遮蔽材40をy軸方向に移動させるように構成されている。
【0023】
以上、図1の装置構造について説明した。次に、このような装置における試料39の断面加工と、その断面観察について説明する。
【0024】
まず、試料39に対する遮蔽材エッジ部42の位置調整をSEM像を見ながら行うために、オペレータは、操作手段28に対して「試料ホルダ載せ換え」の入力を行う。すると中央制御装置25は、試料ステージ12を真空ゲート24近くの「試料ホルダ載せ換え位置」に移動させると共に、試料ステージ12のYステージ14とZステージ15を「試料ホルダ載せ換えのためのリセット位置」に戻すための移動制御信号Aをステージ移動機構17に送る。この移動制御信号Aを受けたステージ移動機構17は、Xステージ13を真空ゲート24の方に移動させて、試料ステージ12を「試料ホルダ載せ換え位置」である「イオンビーム光学系8の光軸10の直下」(図1(b)の位置A’)に移動させる。また、前記移動制御信号Aを受けたステージ移動機構17は、Yステージ14とZステージ15を「試料ホルダ載せ換えのためのリセット位置」に戻すので、試料ステージ12のホルダ取付部16のyz座標は、試料交換室23に現在位置している試料ホルダ22の第1の被取付部31のyz座標と一致する。
【0025】
こうして、試料ステージ12が「試料ホルダ載せ換え位置」に位置すると、真空ゲート24が開けられ、オペレータは取っ手21をつかんで試料交換棒19を試料室2の方に(x軸方向に)押し込んでいく。上述したようにホルダ取付部16のyz座標と第1の被取付部31のyz座標は既に一致しているので、試料交換棒19をx軸方向に更に押し込んでいくと、ホルダ取付部16が第1の被取付部31の溝32に完全に嵌め込まれる。こうして第1の被取付部31がホルダ取付部16に取付けられると、オペレータは、試料交換棒19先端の雄ネジが雌ネジ30から外れるように試料交換棒19を左に回転させる。そして、オペレータは、試料交換棒19の先端を試料交換室23まで退避させてから、真空ゲート24を閉じる。
【0026】
以上のようにして試料ホルダ22が試料ステージ12に装着されると、オペレータは、操作手段28に対して「SEM観察位置への移動」の入力を行う。すると中央制御装置25は、試料ステージ12を電子線による試料観察位置(SEM観察位置)に移動させるための移動制御信号Bをステージ移動機構17に送る。この信号Bを受けたステージ移動機構17は、Xステージ13を電子光学系3の方に移動させて、試料ステージ12を電子光学系3の光軸7上に移動させる。
【0027】
こうして試料ステージ12が電子光学系3の光軸7上に位置して試料ホルダ22がSEM観察位置に配置されると、試料39の表面45(図2参照)と遮蔽材40の表面46(図2参照)と前記試料載置面38(図2参照)は電子銃4に対向する。このような状態においてSEM観察のために電子銃4から電子線が発生され、その電子線は集束レンズ5によって試料表面45上に細く集束される。さらに、電子線は偏向レンズ6によって2次元的に偏向され、試料表面45および遮蔽材表面46は電子線によって2次元的に走査される。この電子線走査によって試料表面45および遮蔽材表面46から発生した2次電子は2次電子検出器26によって検出され、その検出信号は中央制御装置25に送られる。中央制御装置25は、2次電子検出器26からの信号に基づき、試料表面45および遮蔽材表面46のSEM像を表示装置27の表示画面上に表示させる。なお、試料表面45と遮蔽材表面46が観察視野に入るように、オペレータは操作手段28に対して入力を行ってXステージ13やYステージ14を移動させる。
【0028】
そして、オペレータは、表示されるSEM像を見ながら、断面を得たい試料位置に遮蔽材エッジ部42が位置するように、操作手段28に対して「遮蔽材の移動」の入力を行う。すると、中央制御装置25は、操作手段28からの入力信号に対応した移動制御信号を遮蔽材移動機構44に送り、その信号を受けた遮蔽材移動機構44は遮蔽材40をy軸方向に移動させる。
【0029】
こうして試料39に対する遮蔽材エッジ部42の位置調整が済むと、イオンビームによる試料39の断面加工を行うために、オペレータは、操作手段28に対して「試料ホルダ載せ換え」の入力を行う。すると中央制御装置25は、前記同様、移動制御信号Aをステージ移動機構17に送る。この結果、前記同様、試料ステージ12は「試料ホルダ載せ換え位置」である「イオンビーム光学系8の光軸10の直下」(図1(b)の位置A’)に移動されると共に、試料ホルダ22の雌ネジ(被支持部)30は試料交換棒19の中心軸20上に位置する。
【0030】
そこでオペレータは、真空ゲート24を開いて、試料交換棒19を試料室2の方に押し込んでいく。そして、オペレータは、試料交換棒19先端の雄ネジが雌ネジ30に捩じ込まれるように試料交換棒19を右に回転させる。こうして試料交換棒19が試料ホルダ22に取付けられると、オペレータは、試料ホルダ22の第1の被取付部31が試料ステージ12のホルダ取付部16から外れるように試料交換棒19を後方(試料交換室23の方)に真っ直ぐ引く。この結果、試料ホルダ22は試料ステージ12から離され、試料ホルダ22は試料交換棒19で支持された状態となる。
【0031】
次にオペレータは、図3(a)に示すように、試料交換棒19をその中心軸20まわりに反時計方向に90度回転させる。そしてオペレータが試料交換棒19を試料室2の方に押し込んでいくと、ホルダ取付部16が第2の被取付部34の溝35に完全に嵌め込まれる。こうして第2の被取付部34がホルダ取付部16に取付けられると、オペレータは、試料交換棒19先端の雄ネジが雌ネジ30から外れるように試料交換棒19を左に回転させる。そして、オペレータは、試料交換棒19の先端を試料交換室23まで退避させてから、真空ゲート24を閉じる。
【0032】
以上のようにして試料ホルダ22が90度回転して試料ステージ12に装着されると、試料ステージ12は現在「イオンビーム光学系8の光軸10の直下」に位置しているので、試料ホルダ22はイオンビームによる試料加工位置(イオン加工位置)に配置される。こうして試料ホルダ22がイオン加工位置に配置されると、試料39の表面45(図3(a)参照)と遮蔽材40の表面46(図3(a)参照)と試料載置面38(図3(a)参照)はイオンビーム光学系8のイオン銃9に対応する。このような状態において断面加工のためにイオン銃9からイオンビームが発生され、遮蔽材40のエッジ部42から突出した試料部分41がイオンビームによってエッチングされる。このエッチングにより、最終的に、エッジ部(遮蔽材表面46に対して垂直な面であるエッジ部)42と同じ高さの断面50(図3(b)参照)が試料39に形成される。断面50は試料表面45(図3(a)参照)に対して垂直な面である。
【0033】
こうして試料39の断面加工が行われると、断面50をSEM観察するために、オペレータは操作手段28に対して「SEM観察位置への移動」の入力を行う。すると中央制御装置25は、前記同様、移動制御信号Bをステージ移動機構17に送る。この結果、前記同様、試料ステージ12は「SEM観察位置」である電子光学系3の光軸7上に移動され、試料ホルダ22はSEM観察位置に配置される。この配置により、試料39の断面50(図3(b)参照)と、遮蔽材40の試料加工に寄与したエッジ部42(図3(a)参照)は電子銃4に対向する。一方、試料台37の試料載置面38(図3(a)参照)は、電子光学系3の光軸7に平行となる。
【0034】
そして、電子銃4から電子線が発生されて、断面50のSEM観察が行われる。その場合、断面50のSEM像は表示装置27の表示画面上に表示される。また、断面50が観察視野に入るように、オペレータは操作手段28に対して入力を行ってXステージ13やYステージ14を移動させる。
【0035】
なお、断面50のSEM観察の結果、オペレータが更にイオン加工が必要であると判断すると、オペレータは操作手段28に対して前記「試料ホルダ載せ換え」の入力を行う。すなわち、オペレータは、試料ステージ12を「イオンビーム光学系8の光軸10の直下」に移動させるための入力を行う。すると、前記同様、試料ステージ12は「イオンビーム光学系8の光軸10の直下」に移動されて、試料ホルダ22はイオン加工位置に再配置される。そして、前記同様、試料39がイオンビームによってエッチングされる。
【0036】
その後、こうして再加工された試料39は、前記同様、SEM観察位置に移動されて断面観察が行われる。このようなイオン加工と断面観察は必要に応じて繰り返し行われるが、その間、試料ホルダ22を試料ステージ12に対して着脱する作業は全く必要ない。すなわち、試料ホルダ22を載せた試料ステージ12をイオン加工位置とSEM観察位置の間で直線移動させれば、試料のイオン加工と断面観察を交互に行うことができる。
【0037】
また、それまでと異なる試料断面を観察したいときには、第1の被取付部31をホルダ取付部16に試料交換棒19を用いて取付け、そのあと上述したような手順を踏めば、新しい断面の加工とSEM観察を行うことができる。
【0038】
以上、本発明の一例を図1〜図3を用いて説明した。このような本発明によれば、傾斜機構を備えていないコンパクトな試料ステージを用いて、試料の断面加工と断面観察をスムーズに行うことができる。
(実施例2)
図4はSEM観察専用の試料ホルダ51を示した図である。試料ホルダ51の構造は、次の(1)〜(3)の点以外は図2の試料ホルダ22の構造と概ね同じであり、図2の試料ホルダの構成要素と同じ構成要素に対しては図2と同一番号を付けている。
(1)図2の試料ホルダ22における遮蔽材40を備えていない。
(2)図2の試料ホルダ22における遮蔽材移動機構44を備えていない。
(3)試料台52の試料載置面53に試料54が接着されている。そして、試料表面55と試料ホルダ上面43が同一面上に位置している。また、試料表面55に垂直な試料断面56と、試料ホルダ上面43に垂直な試料ホルダ側面57が同一面上に位置している。さらに、上面43から溝32までの距離cと、側面57から溝35までの距離dは等しい。
【0039】
このような試料ホルダ51の第1の被取付部31を前記同様にして図1のホルダ取付部16に取付け、そして、前記同様にして試料ホルダ51をSEM観察位置(光軸7上)に配置すれば、試料表面55のSEM観察を行うことができる。このとき、試料台52の試料載置面53は、電子銃4に対向する。
【0040】
一方、試料ホルダ51の第2の被取付部34を前記同様にして図1のホルダ取付部16に取付け(すなわち、前記イオン加工位置において、試料ホルダ51を試料交換棒19を用いて反時計方向に90度回転させて、第2の被取付部34をホルダ取付部16に取付ける)、そして、前記同様にして試料ホルダ51をSEM観察位置に配置すれば、試料断面56のSEM観察を行うことができる。このとき、試料台52の試料載置面53は、電子光学系3の光軸7に平行である。
【0041】
なお、上述したように、試料ホルダ51上の寸法cとd(図4参照)が同じになるように試料ホルダ51は作られている。さらに、試料表面55と試料ホルダ上面43は同一面上に位置し、試料断面56と試料ホルダ側面57は同一面上に位置している。したがって、試料表面55をSEM観察するために試料ホルダ51がSEM観察位置に配置されたときの試料表面55のz座標位置(高さ)と、試料断面56をSEM観察するために試料ホルダ51がSEM観察位置に配置されたときの試料断面56のz座標位置(高さ)は同じになる。このため、試料表面55のSEM観察の時に得たフォーカス合わせ情報を、次の試料断面56のSEM観察時に有効活用できる。
【符号の説明】
【0042】
1…試料室容器、2…試料室、3…電子光学系、4…電子銃、5…集束レンズ、6…偏向レンズ、7…光軸、8…イオンビーム光学系、9…イオン銃、10…光軸、11…レール、12…試料ステージ、13…Xステージ、14…Yステージ、15…Zステージ、16…ホルダ取付部、17…ステージ移動機構、18…試料交換室容器、19…試料交換棒、20…中心軸、21…取っ手、22…試料ホルダ、23…試料交換室、24…真空ゲート、25…中央制御装置、26…2次電子検出器、27…表示装置、28…操作手段、30…雌ネジ、31…第1の被取付部、32…溝、33…試料ホルダ下面、34…第2の被取付部、35…溝、36…試料ホルダ側面、37…試料台、38…試料載置面、39…試料、40…遮蔽材、42…エッジ部、43…試料ホルダ上面、44…遮蔽材移動機構、45…試料表面、46…遮蔽材表面、51…試料ホルダ、52…試料台、53…試料載置面、54…試料、55…試料表面、56…試料断面、57…試料ホルダ側面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
排気装置によって排気された試料室と、
前記試料室に接続され、試料に電子線を照射する電子光学系と、
前記試料室に接続され、試料にイオンビームを照射するイオンビーム光学系と
を備えた荷電粒子線装置であって、
前記試料室に配置され、ホルダ取付部を有する試料ステージと、
前記ホルダ取付部に着脱可能に取付けられる第1および第2の被取付部と、試料交換棒に着脱可能に支持される被支持部と、試料を載置する試料台とを有する試料ホルダと、
前記試料室に配置された前記試料交換棒であり、前記試料ホルダの被支持部を支持して次の(a)(b)の着脱動作が可能な試料交換棒とを備え、
(a)試料ホルダの第1の被取付部を試料ステージのホルダ取付部に対して着脱する
(b)試料ホルダの第1の被取付部に代えて、試料ホルダの第2の被取付部を試料ステージのホルダ取付部に対して着脱する
前記第1の被取付部と第2の被取付部と試料台は、次の(c)と(d)と(e)の条件が満たされるように、試料ホルダの所定位置に設けられていると共に、前記電子光学系とイオンビーム光学系は、次の(c)と(d)と(e)の条件が満たされるように、前記試料室にそれぞれ接続されていることを特徴とする荷電粒子線装置
(c)第1の被取付部がホルダ取付部に取付けられて、試料ホルダが電子線による試料観察位置に配置されたとき、試料台の試料載置面が電子光学系の電子銃に対向する
(d)第2の被取付部がホルダ取付部に取付けられて、試料ホルダがイオンビームによる試料加工位置に配置されたとき、試料台の試料載置面がイオンビーム光学系のイオン銃に対向する
(e)第2の被取付部がホルダ取付部に取付けられて、試料ホルダが電子線による試料観察位置に配置されたとき、試料台の試料載置面が電子光学系の光軸に平行となる。
【請求項2】
前記試料ホルダは、試料を照射するイオンビームの一部を遮る遮蔽材と、試料と遮蔽材の位置関係を調整する位置調整手段とを更に備え、遮蔽材は次の条件(f)が満たされるように試料ホルダの所定位置に設けられていることを特徴とする請求項1記載の荷電粒子線装置
(f)第2の被取付部がホルダ取付部に取付けられて、試料ホルダが電子線による試料観察位置に配置されたとき、遮蔽材の試料加工に寄与するエッジ部が電子光学系の電子銃に対向する。
【請求項3】
電子光学系の光軸とイオンビーム光学系の光軸は交わっておらず、試料ステージは、電子線による試料観察位置とイオンビームによる試料加工位置の間を直線的に移動するように構成されていることを特徴とする請求項1または請求項2記載の荷電粒子線装置。
【請求項4】
排気装置によって排気された試料室と、
前記試料室に接続され、試料に電子線を照射する電子光学系と
を備えた荷電粒子線装置であって、
前記試料室に配置され、ホルダ取付部を有する試料ステージと、
前記ホルダ取付部に着脱可能に取付けられる第1および第2の被取付部と、試料交換棒に着脱可能に支持される被支持部と、試料を載置する試料台とを有する試料ホルダと、
前記試料室に配置された前記試料交換棒であり、前記試料ホルダの被支持部を支持して次の(a)(b)の着脱動作が可能な試料交換棒とを備え、
(a)試料ホルダの第1の被取付部を試料ステージのホルダ取付部に対して着脱する
(b)試料ホルダの第1の被取付部に代えて、試料ホルダの第2の被取付部を試料ステージのホルダ取付部に対して着脱する
前記第1の被取付部と第2の被取付部と試料台は、次の(g)と(h)の条件が満たされるように、試料ホルダの所定位置に設けられていることを特徴とする荷電粒子線装置
(g)第1の被取付部がホルダ取付部に取付けられて、試料ホルダが電子線による試料観察位置に配置されたとき、試料台の試料載置面が電子光学系の電子銃に対向する
(h)第2の被取付部がホルダ取付部に取付けられて、試料ホルダが電子線による試料観察位置に配置されたとき、試料台の試料載置面が電子光学系の光軸に平行となる。
【請求項5】
前記試料交換棒は、試料室の外から操作可能であることを特徴とする請求項1から4の何れかに記載の荷電粒子線装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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