説明

荷電装置

【課題】目的粒子のイオン化の際に二次粒子が生成されることを防止するとともに、イオン生成機構で生成されたイオンのクラスター化を防止する。
【解決手段】荷電部6を含む流路5及び流路7は熱伝導性材料10で覆われており、さらに熱伝導性材料10の外側に発熱機構12が設けられている。発熱機構12の発熱量は温度調整器16によって制御されている。温度調整器16は熱電対14を介して熱伝導性材料10の温度を測定しながら、熱伝導性材料10の温度がイオン生成機構内の温度とほぼ同じになるように発熱機構12を制御するようになっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、DMA(微分型電気移動度測定装置:Differential Mobility Analyzer)、液体クロマトグラフィ又は液体クロマトグラフ‐質量分析計など電気的原理を用いる装置において、粒子の荷電又は帯電物の中和などに用いられる荷電装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
荷電装置としては、エアロゾル粒子を含むガスが供給されるチャンバー内に向けて軟X線を放射するX線放射部を備え、そのチャンバー内でエアロゾルをイオン化するものが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
また、イオン生成機構として、微小径のイオン噴射口が設けられ、内部で生成したイオンをイオン噴射口から噴射させる構造のものが提案されている(例えば、特許文献2参照。)。
【特許文献1】特開2004−53298号公報
【特許文献2】特開2002−25791号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に示されているような荷電装置はイオンを生成するイオン生成機構と目的粒子を荷電する荷電機構が一体化された構造となっており、目的粒子であるエアロゾル粒子と同時にチャンバー内に存在するガスもイオン化されるため、チャンバー内に自動車の排ガスなど反応性の高い成分を含むガスが導入されてしまうと、目的粒子のイオン化の際に、化学反応によって二次粒子が生成されてしまうという問題がある。
【0005】
また、特許文献2に示されているような微小径のイオン噴射口を備えてイオンを噴射させるイオン生成機構では、高圧条件下のイオン生成機構内から大気圧下に噴霧されたイオンは急激な圧力変化による断熱膨張によって温度が急激に低下してクラスター化することが考えられる。そのため、目的粒子以外の目的荷電粒子よりも大きな粒子が生成される可能性があり、目的粒子の粒子径を測定する場合などには、正確な測定が行なえないという問題が起こる。
【0006】
そこで本発明は、目的粒子のイオン化の際に二次粒子が生成されることを防止するとともに、イオン生成機構で生成されたイオンのクラスター化を防止することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る荷電装置の第1局面は、イオンを生成するためのイオン生成機構と、イオン生成機構で生成されたイオンを導入するためのイオン導入部、荷電対象粒子を含むガスを導入するための荷電対象粒子導入部、イオン導入部から導入されたイオンにより荷電対象粒子導入部から導入された荷電対象粒子を荷電する荷電部、及び荷電部で生成された荷電粒子を含むガスを排出するための排出部を備えた熱伝導性材料からなる荷電機構と、荷電機構の温度を調節するための温調機構と、を備えていることを特徴とするものである。
【0008】
荷電機構とイオン生成機構は同温度であることが好ましい。
【0009】
荷電部はイオン導入部と排出部の間に設けられており、イオン導入部から排出部までが均一な流路幅をもつ一本の流路で構成されていてもよい。
【0010】
本発明に係る荷電装置の第2局面は、イオンを生成するためのイオン生成機構と、熱伝導性材料からなり、イオン生成機構で生成されたイオンを導入するためのイオン導入部、荷電対象粒子を含むガスを導入するための荷電対象粒子導入部、イオン導入部から導入されたイオンにより荷電対象粒子導入部から導入された荷電対象粒子を荷電する荷電部、及び荷電部で生成された荷電粒子を含むガスを排出するための排出部を備え、荷電部がイオン導入部と排出部の間に設けられて、イオン導入部から排出部までが均一な流路幅をもつ一本の流路で構成されている荷電機構と、を備えているものである。
【0011】
本発明に係る荷電装置の第3局面は、イオンを生成するためのイオン生成機構と、イオン生成機構で生成されたイオンを導入するためのイオン導入部、荷電対象粒子を含むガスを導入するための荷電対象粒子導入部、イオン導入部から導入されたイオンにより荷電対象粒子導入部から導入された荷電対象粒子を荷電する荷電部、及び荷電部で生成された荷電粒子を含むガスを排出するための排出部を備えた熱伝導性材料からなる荷電機構と、を備え、イオン生成機構と前記荷電機構は熱伝導性材料で構成され、互いに接触しているものである。
【発明の効果】
【0012】
第1局面の荷電装置はイオン生成機構と荷電機構からなり、荷電機構の温度を調節するための温調機構を備えているので、荷電部とイオン生成との温度差が小さくなるように荷電機構の温度を調整でき、イオン生成機構から放出されたイオンが急激な温度変化によってクラスター化して大きくなることを抑制できる。また、イオン生成機構と荷電機構とがそれぞれ独立して設けられているので、イオン生成時に二次粒子が生成されることを防止できる。
【0013】
荷電機構とイオン生成機構が同温度になっていれば、イオン生成機構から荷電機構に導入されたイオンのクラスター化をさらに防止できる。
【0014】
荷電部がイオン導入部と排出部の間に設けられ、イオン導入部から排出部までが均一な流路幅をもつ一本の流路で構成されていれば、イオン導入部から導入されたイオンの急激な膨張を防止できるので、イオンのクラスター化をさらに防止できる。
【0015】
第2局面の荷電装置では、荷電部がイオン導入部と排出部の間に設けられ、イオン導入部から排出部までが均一な流路幅をもつ一本の流路で構成されているので、イオン導入部から導入されたイオンの膨張を防止できるので、イオンのクラスター化を抑制できる。
【0016】
第3局面の荷電装置は、イオン生成機構と荷電機構との間で熱伝達が行なわれてイオン生成機構と荷電機構との温度差が小さくなるので、イオン生成機構から荷電機構に導入されたイオンが急激な温度変化によってクラスター化して大きくなることを抑制できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
図1は本発明に係る荷電装置の一実施例を示す断面図である。
この実施例の荷電装置は、イオンを生成するイオン生成機構1と、イオン生成機構1の下部に取り付けられた荷電機構2とで構成されている。イオン生成機構1は下方に生成イオンを噴出するための微小な開口部からなるイオン噴出部(図示は省略)が設けられており、イオン噴出部から噴出されたイオンが荷電機構2のイオン導入部3から荷電機構2内に導入されるようになっている。
【0018】
荷電機構2は、上方からイオンを導入するイオン導入部3と下方からガスを排出する排出部8までが均一な径をもつ1本の流路5で構成されている。また、荷電機構2は側方から荷電対象粒子を含むガスを導入するための荷電対象粒子導入部4を備えており、荷電対象粒子導入部4は流路7によって流路5に合流している。流路5と流路7の合流部はイオン生成機構1で生成されたイオンと荷電対象粒子とを衝突させて荷電対象粒子を荷電する荷電部6を構成している。
【0019】
荷電部6を含む流路5及び流路7は、例えば銅、真鍮、ステンレスといった金属などの熱伝導性材料10で覆われており、さらに熱伝導性材料10の外側に例えばリボンヒータなどの発熱機構12が設けられている。発熱機構12の発熱量は温度調整器16によって制御されている。温度調整器16は熱電対14を介して熱伝導性材料10の温度を測定しながら、熱伝導性材料10の温度がイオン生成機構内の温度とほぼ同じになるように発熱機構12を制御するようになっている。発熱機構12、熱電対14及び温度調整器16は荷電部6を含む流路5及び流路7の温度を調整するための温調機構を構成している。
【0020】
この実施例の荷電装置は、発熱機構12、熱電対14及び温度調整器16からなる温調機構によって、荷電部6を含む流路5及び流路7の温度がイオン生成機構内の温度とほぼ同じになるように調整されるので、イオン生成機構1で生成されて噴出されたイオンが急激に冷却されることがなくなり、イオンがクラスター化して大きくなることを防止できる。さらに、イオン導入部3から排出部8までが均一な径をもつ流路5で構成されており、イオン生成部1から噴出されたイオンが荷電部6において断熱膨張することがないので、イオンのクラスター化をさらに防止できる。
【0021】
この実施例ではイオン導入部3から排出部8までが均一な径をもつ流路5で構成されているが、本発明はこれに限定されるものではなく、荷電部6が温度調節可能な空間として設けられているものであってもよい。その場合、イオン導入部3から導入されたイオンの膨張を防止することはできないが、イオンの温度が急激に低下することを防止できるので、イオンのクラスター化を抑制する効果がある。
【0022】
また、図2に示されるように、イオン導入部3から排出部8までが均一な径をもつ流路5で構成され、発熱機構、熱電対及び温度調整器などの温調機構を備えていないものであってもよい。この場合でも、イオン生成機構1から放出されたイオンが急激に膨張することを防止できるので、イオンのクラスター化を抑制する効果がある。
【0023】
次に、本発明に係る荷電装置の別の実施例を説明する。図3は荷電装置の別の実施例を示す断面図である。
この実施例の荷電装置は、放電芯24及び対向電極26を備えたイオン生成機構20と、イオン生成機構20の対向電極26の下面に上面が接した状態で配置された荷電機構30とを備えている。
【0024】
イオン生成機構20はイオンを生成するイオン生成部21に側方からイオン源ガスを導入するためのイオン源ガス導入部22が設けられている。イオン生成部21は、電源28に電気的に接続された放電芯24が上部に設けられており、下部に放電芯24と対をなす電極26が設けられている。
イオン生成部21は高温・高圧状態で放電芯24から電極26に向けて放電されることで、イオン源ガス導入部22から導入されたイオン源ガスがイオン化され、イオンがイオン噴出部28から噴出される。
【0025】
荷電機構30は中空の例えば銅、真鍮、ステンレスといった金属などの導電性及び熱伝導性の材料からなる筐体40で構成されている。荷電機構30の上部にイオンを導入するためのイオン導入部32が設けられており、側面に側方から荷電対象粒子を含むガスを導入するための荷電対象粒子導入部38が設けられている。荷電機構30内部の空間はイオンと荷電対象粒子とを衝突させて荷電対象粒子を荷電する荷電部36を構成している。荷電機構30の下部には荷電部36で荷電された荷電粒子を含むガスを排出するための排出部42が設けられている。
【0026】
荷電機構30は筐体40の上部40aがイオン生成機構20の対向電極26と接しており、イオン生成機構20内部の熱が対向電極26、筐体40を介して荷電部36に伝達されるようになっている。また、筐体40は接地されており、イオン生成機構20の放電芯24から放電された電流は筐体40を介してグランドに放出されるようになっている。
イオン生成機構20の対向電極26は導電性及び熱伝導性である金属で構成されているため、イオン生成機構20の熱が筐体40を介して荷電機構30全体に伝達される。これにより、荷電部36とイオン生成機構20の温度差が小さくなり、イオン導入部32から荷電部36に導入されたイオンが急激な温度低下によってクラスター化して大きくなることを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】荷電装置の一実施例を示す断面構成図である。
【図2】荷電装置のさらに他の実施例を示す断面構成図である。
【図3】荷電装置のさらに他の実施例を示す断面構成図である。
【符号の説明】
【0028】
1,20 イオン生成機構
2,30 荷電機構
3,32 イオン導入部
4,38 荷電対象粒子導入部
5,7 流路
6,36 荷電部
8,42 排出部
10 熱伝導性材料
12 リボンヒータ
14 熱電対
16 温度調整器
21 イオン生成部
22 イオン源ガス導入部
24 放電芯
26 対向電極
28 イオン放出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオンを生成するためのイオン生成機構と、
前記イオン生成機構で生成されたイオンを導入するためのイオン導入部、荷電対象粒子を含むガスを導入するための荷電対象粒子導入部、前記イオン導入部から導入されたイオンにより前記荷電対象粒子導入部から導入された荷電対象粒子を荷電する荷電部、及び前記荷電部で生成された荷電粒子を含むガスを排出するための排出部を備えた熱伝導性材料からなる荷電機構と、
前記荷電機構の温度を調節するための温調機構と、を備えていることを特徴とする荷電装置。
【請求項2】
前記荷電機構と前記イオン生成機構は同温度である請求項1に記載の荷電装置。
【請求項3】
前記荷電部は前記イオン導入部と前記排出部の間に設けられており、前記イオン導入部から前記排出部までが均一な流路幅をもつ一本の流路で構成されている請求項1又は2に記載の荷電装置。
【請求項4】
イオンを生成するためのイオン生成機構と、
熱伝導性材料からなり、前記イオン生成機構で生成されたイオンを導入するためのイオン導入部、荷電対象粒子を含むガスを導入するための荷電対象粒子導入部、前記イオン導入部から導入されたイオンにより前記荷電対象粒子導入部から導入された荷電対象粒子を荷電する荷電部、及び前記荷電部で生成された荷電粒子を含むガスを排出するための排出部を備え、前記荷電部が前記イオン導入部と前記排出部の間に設けられて、前記イオン導入部から前記排出部までが均一な流路幅をもつ一本の流路で構成されている荷電機構と、を備えている荷電装置。
【請求項5】
イオンを生成するためのイオン生成機構と、
前記イオン生成機構で生成されたイオンを導入するためのイオン導入部、荷電対象粒子を含むガスを導入するための荷電対象粒子導入部、前記イオン導入部から導入されたイオンにより前記荷電対象粒子導入部から導入された荷電対象粒子を荷電する荷電部、及び前記荷電部で生成された荷電粒子を含むガスを排出するための排出部を備えた熱伝導性材料からなる荷電機構と、を備え、
前記イオン生成機構と前記荷電機構は熱伝導性材料で構成され、互いに接触している荷電装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2008−70281(P2008−70281A)
【公開日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−250348(P2006−250348)
【出願日】平成18年9月15日(2006.9.15)
【出願人】(000001993)株式会社島津製作所 (3,708)
【Fターム(参考)】