莢膜Streptococcuspneumoniae多糖の生産のための短縮された精製プロセス
Streptococcus pneumoniae細胞溶解物ブロスからの莢膜多糖を含有する実質的に精製された溶液を生産するための短縮されたプロセスが記載される。清澄化されたS.pneumoniae溶解物を限外濾過およびダイアフィルトレーションし、続いて4.5未満、好ましくは約3.5へのpH調節により、多糖収率に大きな影響を与えることなく溶液中のタンパク質の少なくとも98%が沈降させられた。さらに、限外濾過およびダイアフィルトレーションならびに4.5未満のpHへの酸性化に続き、活性炭を用いた濾過により、多糖収率に大きな影響を与えることなく残留タンパク質の少なくとも90%が沈降させられた。本発明の短縮されたプロセスを用いて精製され得る代表的で非限定的なS.pneumoniae血清型は、1、4、5、6A、6B、7F、9V、14、18C、19A、19F、および23Fである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、精製された肺炎球菌多糖の生産において用いられるStreptococcus pneumoniae(S.pneumoniae:肺炎連鎖球菌)血清型の細胞溶解物から過剰な可溶性タンパク質および他の不純物を除去するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
Streptococcus pneumoniaeは、グラム陽性の槍形球菌であり、通常は、対(双球菌)の状態だけでなく、短鎖または単細胞としても見られる。これらの菌は、それらがベータ溶血を示す嫌気性的成長の場合を除き、血液寒天プレート上で光輝性のコロニーを伴って容易に成長してアルファ溶血を示す。これらの菌は、細胞自体の酵素である自己溶解酵素の存在下で、細胞壁を分解できる胆汁塩に対し感受性である。この生物は、耐気性嫌気性菌であり、複雑な栄養要件を有するという点で選好性である。
【0003】
大部分の肺炎球菌血清型の細胞は、各細胞を囲む多糖被覆である莢膜を有する。この莢膜は、ヒトにおける病原性の決定因子である。なぜならば、莢膜は、抗体が細菌細胞に付着することを阻止することにより食作用を妨げるからである。現在90の莢膜血清型が同定されており、23の血清型が侵襲性疾患の約90%の原因である。ワクチンとして、多糖は、発達したまたは損なわれていない免疫系を有する個体においてS.pneumoniaeに対する適度な免疫を付与できる。しかしながら、多糖がCRM197のような高分子量タンパク質と結合され、複数の血清型の結合体を含有するワクチンに処方される場合、そのような結合型ワクチンは、肺炎球菌感染のリスクもまた最も高い乳幼児および高齢者における免疫応答を可能にする。
【0004】
ワクチン製品に利用される各S.pneumoniae血清型についての莢膜多糖は、生物を液体培地中で成長させることにより生産される。この生物の個体数は、多くの場合、種培養バイアルから種培養ボトルにスケールアップされ、生産規模の発酵容量に達するまで、漸増する容量の1つまたは複数の種発酵槽を経て継代される。成長周期の終止は、いくつかの手段の1つにより判定することができ、その時点で、細胞壁破壊と、細胞が定常期に達すると細胞溶解を引き起こす自己溶解酵素の放出とを助ける洗浄剤または他の試薬の添加により、細胞が溶解される。次に、下流の(精製)処理のために溶解物ブロスが採集される。主要な汚染物質は、細胞タンパク質、核酸、およびC−多糖および培地成分である。
【0005】
現在市販されている7−価肺炎球菌結合型(7vPnC)ワクチン(Prevnar(登録商標))、および新しく開発された13−価肺炎球菌結合型(13vPnC)ワクチンについての血清型の大部分について、現在の精製プロセスは、クロマトグラフィーおよび多重膜分離のような、多くの高価で労働集約的で技術的要求の厳しい操作を伴う16のステップを必要とする。S.Pneumoniae多糖のための精製プロセスを改善しようとする以前の試みとしては、例えば、発酵および回収の間のpH操作(特許文献1参照)ならびに溶媒および洗浄剤沈降が含まれた。しかしながら、これらのプロセスにおける不純物の除去は依然として、多くの労働集約的かつ高価なステップにわたっている。タンパク質レベルは、可溶性タンパク質の物理的および化学的特性のため、満たすのが最も問題となる規格である。
【0006】
従って、S.pneumoniae溶解物中の可溶性タンパク質レベルを低減し、現行の精製プロセスの無効力を排除して肺炎球菌結合型ワクチンに組み込むのに適した実質的に精製された莢膜多糖を生産する、単純化された精製プロセスが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許出願公開第2006/0228381号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、Streptococcus pneumoniae細胞溶解物から実質的に精製された莢膜多糖を生産するためのプロセスに関する。このプロセスは、
(a)選択されたStreptococcus pneumoniae血清型を生産する細菌細胞を含む発酵ブロスを提供するステップと、
(b)ステップ(a)における細菌細胞を溶解薬で溶解し、それにより細胞片、可溶性タンパク質、核酸、および多糖を含む細胞溶解物を生産するステップと、
(c)細胞片を除去するために遠心分離または濾過を用いてステップ(b)の細胞溶解物を清澄化し、それにより清澄化された細胞溶解物を生産するステップと、
(d)低分子量不純物を除去し多糖濃度を増大させるためにステップ(c)の清澄化された細胞溶解物を限外濾過およびダイアフィルトレーションし、それにより保持物質を生産するステップと、
(e)タンパク質および核酸を沈降させるためにステップ(d)の保持物質のpHを4.5未満に低下させ、それにより酸性化された保持物質溶液を形成するステップと、
(f)ステップ(e)において形成された酸性化された保持物質溶液を、沈降物の沈降を可能にするのに十分な時間保持し、続いて酸性化された保持物質溶液を濾過または遠心分離し、それにより清澄化された多糖溶液を生産するステップと、
(g)ステップ(f)の清澄化された多糖溶液を、活性炭フィルタを通して濾過するステップと、
(h)ステップ(g)により生産された濾過溶液を限外濾過およびダイアフィルトレーションし、それにより濃縮された精製多糖溶液を生産するステップと、
(i)ステップ(h)により生産された濃縮された精製多糖溶液を、無菌フィルタを用いて濾過するステップと、
を含み、それにより、溶液の形の実質的に精製された莢膜多糖が生産される。本発明のこの実施形態のために選択された代表的な非限定的なS.pneumoniae血清型は、1、4、5、6A、6B、7F、9V、14、18C、19A、19F、および23Fである。特定の実施形態において、ステップ(e)のpHは、約3.5に低下される。別の実施形態において、ステップ(h)のダイアフィルトレーションは、約5.5〜約7.5の間へのpH調節を含む。別の実施形態において、ステップ(h)のダイアフィルトレーションは、約7.0〜約7.5の間へのpH調節を含む。別の実施形態において、ステップ(h)のダイアフィルトレーションは、約7.4へのpH調節を含む。さらに別の実施形態において、ステップ(e)は、ステップ(d)の保持物質から少なくとも98%のタンパク質を除去する。別の実施形態において、ステップ(g)は、ステップ(f)の清澄化された多糖溶液から少なくとも90%のタンパク質を除去する。別の実施形態において、ステップ(g)の活性炭フィルタは、ウッドベースのリン酸−活性炭を含む。別の実施形態において、ステップ(f)は、ステップ(e)において形成された酸性化された保持物質溶液を少なくとも2時間保持するステップを含む。さらに別の実施形態において、ステップ(b)の溶解薬は、デオキシコール酸ナトリウム(DOC)である。別の実施形態において、ステップ(b)の溶解薬は、非動物由来溶解薬である。さらに別の実施形態において、ステップ(b)の溶解薬は、非動物由来溶解薬N−ラウリルサルコシンナトリウム(NLS)である。
【0009】
本発明のプロセスによってStreptococcus pneumoniae細胞溶解物から生産される実質的に精製された莢膜多糖は、肺炎球菌ワクチン、好ましくはタンパク質キャリアと結合された多糖を含有する肺炎球菌ワクチンの製造において用いられ得る。
【0010】
本発明はまた、血清型1、4、5、6A、6B、7F、9V、14、18C、19F、または23Fを含むStreptococcus pneumoniae細胞溶解物から実質的に精製された莢膜多糖を生産するためのプロセスに関する。このプロセスは、
(a)Streptococcus pneumoniae血清型1、4、5、6A、6B、7F、9V、14、18C、19F、または23Fを生産する細菌細胞を含む発酵ブロスを提供するステップと、
(b)ステップ(a)における細菌細胞を溶解薬で溶解し、それにより細胞片、可溶性タンパク質、核酸、および多糖を含む細胞溶解物を生産するステップと、
(c)細胞片を除去するために遠心分離または濾過を用いてステップ(b)の細胞溶解物を清澄化し、それにより清澄化された細胞溶解物を生産するステップと、
(d)低分子量不純物を除去し多糖濃度を増大させるためにステップ(c)の清澄化された細胞溶解物を、室温で中性pHにて、無塩の培地中で限外濾過およびダイアフィルトレーションし、それにより無塩の保持物質を生産するステップと、
(e)タンパク質および核酸を沈降させるためにステップ(d)の無塩の保持物質のpHを4.5未満に低下させ、それにより酸性化された保持物質溶液を形成するステップと、
(f)ステップ(e)において形成された酸性化された保持物質溶液を、沈降物の沈降を可能にするために少なくとも2時間、室温にて保持し、続いて酸性化された保持物質溶液を濾過または遠心分離し、それにより清澄化された多糖溶液を生産するステップと、
(g)ステップ(f)の清澄化された多糖溶液を、活性炭フィルタを通して濾過するステップと、
(h)ステップ(g)により生産された濾過溶液を限外濾過およびダイアフィルトレーションし、それにより濃縮された精製多糖溶液を生産するステップと、
(i)ステップ(h)により生産された濃縮された精製多糖溶液を、無菌フィルタを用いて濾過するステップと、
を含み、それにより溶液の形の血清型1、4、5、6A、6B、7F、9V、14、18C、19F、または23Fを含む実質的に精製された莢膜多糖が生産される。特定の実施形態において、ステップ(e)のpHは、約3.5に低下される。別の実施形態において、ステップ(h)のダイアフィルトレーションは、約5.5〜約7.5の間へのpH調節を含む。別の実施形態において、ステップ(h)のダイアフィルトレーションは、約7.0〜約7.5の間へのpH調節を含む。別の実施形態において、ステップ(h)のダイアフィルトレーションは、約7.4へのpH調節を含む。さらに別の実施形態において、ステップ(e)は、ステップ(d)の無塩の保持物質から少なくとも98%のタンパク質を除去する。別の実施形態において、ステップ(g)は、ステップ(f)の清澄化された多糖溶液から少なくとも90%のタンパク質を除去する。別の実施形態において、ステップ(g)の活性炭フィルタは、ウッドベースのリン酸−活性炭を含む。さらに別の実施形態において、ステップ(b)の溶解薬は、デオキシコール酸ナトリウム(DOC)である。別の実施形態において、ステップ(b)の溶解薬は、非動物由来溶解薬である。さらに別の実施形態において、ステップ(b)の溶解薬は、非動物由来溶解薬N−ラウリルサルコシンナトリウム(NLS)である。
【0011】
本発明はまた、血清型19Aを含むStreptococcus pneumoniae細胞溶解物から実質的に精製された莢膜多糖を生産するためのプロセスに関する。このプロセスは、
(a)Streptococcus pneumoniae血清型19Aを生産する細菌細胞を含む発酵ブロスを提供するステップと、
(b)ステップ(a)における細菌細胞を溶解薬で溶解し、それにより細胞片、可溶性タンパク質、核酸、および多糖を含む細胞溶解物を生産するステップと、
(c)細胞片を除去するために遠心分離または濾過を用いてステップ(b)の細胞溶解物を清澄化し、それにより清澄化された細胞溶解物を生産するステップと、
(d)低分子量不純物を除去し多糖濃度を増大させるためにステップ(c)の清澄化された細胞溶解物を、約4℃でpH約6にて、リン酸ナトリウム緩衝液中で限外濾過およびダイアフィルトレーションし、それにより保持物質を生産するステップと、
(e)タンパク質および核酸を沈降させるためにステップ(d)の保持物質のpHを4.5未満に低下させ、それにより酸性化された保持物質溶液を形成するステップと、
(f)ステップ(e)において形成された酸性化された保持物質溶液を、沈降物の沈降を可能にするため少なくとも2時間、約4℃で保持し、続いて酸性化された保持物質溶液を濾過または遠心分離し、それにより清澄化された多糖溶液を生産するステップと、
(g)ステップ(f)の清澄化された多糖溶液のpHを約6に調節し、それによりpH調節された清澄化された多糖溶液を生産するステップと、
(h)ステップ(g)のpH調節された清澄化された多糖溶液を、活性炭フィルタを通して濾過するステップと、
(i)ステップ(h)により生産された濾過溶液を限外濾過およびダイアフィルトレーションし、それにより濃縮された精製多糖溶液を生産するステップと、
(j)ステップ(i)により生産された濃縮された精製多糖溶液を、無菌フィルタを用いて濾過するステップと、
を含み、それにより溶液の形の血清型19Aを含む実質的に精製された莢膜多糖が生産される。特定の実施形態において、ステップ(e)のpHは、約3.5に低下される。別の実施形態において、ステップ(i)のダイアフィルトレーションは、約5.5〜約7.5の間へのpH調節を含む。別の実施形態において、ステップ(i)のダイアフィルトレーションは、約7.0〜約7.5の間へのpH調節を含む。別の実施形態において、ステップ(i)のダイアフィルトレーションは、約7.4へのpH調節を含む。さらに別の実施形態において、ステップ(e)は、ステップ(d)の保持物質から少なくとも98%のタンパク質を除去する。別の実施形態において、ステップ(h)は、ステップ(g)のpH調節された清澄化された多糖溶液から少なくとも90%のタンパク質を除去する。別の実施形態において、ステップ(h)の活性炭フィルタは、ウッドベースのリン酸−活性炭を含む。別の実施形態において、ステップ(d)のリン酸ナトリウム緩衝液は、25mMリン酸ナトリウムである。さらに別の実施形態において、ステップ(b)の溶解薬は、デオキシコール酸ナトリウム(DOC)である。別の実施形態において、ステップ(b)の溶解薬は、非動物由来溶解薬である。さらに別の実施形態において、ステップ(b)の溶解薬は、非動物由来溶解薬N−ラウリルサルコシンナトリウム(NLS)である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の短縮された精製プロセスを用いた血清型5についての平均インプロセス多糖(PS)収率、タンパク質/PS比率、および核酸(NA)/PS比率を示す。結果は、各精製ステップについて示してある。
【図2】現行の精製プロセス(A)からの血清型4PSについてのNMRスペクトルが短縮された精製プロセス(B)からの血清型4PSと比較して示してある。これら2つのスペクトル間には、著しい違いは全く観察されなかった。両方のスペクトルにおける右から2番目のピークは、ピルベートであり、ピルベート基ピーク高さは、両方のスペクトルにおいて同等であった。
【図3】本発明の短縮された精製プロセスを用いた血清型4についての平均インプロセスPS収率、タンパク質/PS比率、およびNA/PS比率を示す。結果は、各精製ステップについて示してある。
【図4】本発明の短縮された精製プロセスを用いた血清型19Aについての平均インプロセスPS収率、タンパク質/PS比率、およびNA/PS比率を示す。結果は、各精製ステップについて示してある。
【図5】本発明の短縮された精製プロセスを用いた血清型7Fについての平均インプロセスPS収率、タンパク質/PS比率、およびNA/PS比率を示す。結果は、各精製ステップについて示してある。
【図6】本発明の短縮された精製プロセスを用いた血清型6Bについての平均インプロセスPS収率、タンパク質/PS比率、およびNA/PS比率を示す。結果は、各精製ステップについて示してある。
【図7】本発明の短縮された精製プロセスを用いた血清型6Aについての平均インプロセスPS収率、タンパク質/PS比率、およびNA/PS比率を示す。結果は、各精製ステップについて示してある。
【図8】本発明の短縮された精製プロセスを用いた血清型1についての平均インプロセスPS収率、タンパク質/PS比率、およびNA/PS比率を示す。結果は、各精製ステップについて示してある。
【図9】本発明の短縮された精製プロセスを用いた血清型14についての平均インプロセスPS収率、タンパク質/PS比率、およびNA/PS比率を示す。結果は、各精製ステップについて示してある。
【図10】本発明の短縮された精製プロセスを用いて精製された血清型1、4、5、6A、6B、7F、9V、14、18C、19A、および19FについてのPSインプロセス収率の比較を示す。
【図11】本発明の短縮された精製プロセスを用いて精製された血清型1、4、5、6A、6B、7F、9V、14、18C、19A、および19Fについてのタンパク質/PS比率の比較を示す。結果は、各精製ステップについて比較してある。
【図12】本発明の短縮された精製プロセスを用いて精製された血清型1、4、5、6A、6B、7F、9V、14、18C、19A、および19FについてのNA/PS比率の比較を示す。結果は、各精製ステップについて比較してある。
【図13】本発明の短縮された精製プロセスの酸性化ステップに起因するタンパク質除去効率を示す。酸性化前後のタンパク質濃度(SDS−PAGE)の差は、血清型1、4、5、6A、6B、7F、9V、14、18C、19A、および19Fのバッチについての酸性化前の初期タンパク質濃度に対してプロットしてある。初期タンパク質濃度で割ったタンパク質濃度差は、酸性化ステップによるタンパク質除去率を反映した。
【図14】本発明の短縮された精製プロセスの炭素吸着ステップに起因するタンパク質除去効率を示す。除去された(炭素上に吸着された)タンパク質の量を、血清型1、4、5、6A、6B、7F、9V、14、18C、19A、および19Fのバッチについての初期タンパク質負荷量に対してプロットしてある。初期タンパク質負荷量で割った除去されたタンパク質の量は、炭素吸着ステップによるタンパク質除去率を反映した。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、肺炎球菌結合型ワクチンへの組み込みに適した実質的に精製された莢膜多糖を生産するための細胞Streptococcus pneumoniae溶解物中の可溶性タンパク質レベルを低減する短縮された精製プロセスに関する。現在市販されている7−価肺炎球菌結合型(7vPnC)ワクチン(Prevnar(登録商標))、ならびに新しく開発された13−価肺炎球菌結合型(13vPnC)ワクチンについての血清型の大部分について、現在の精製プロセスは、最高16のステップを必要とする。これらのステップは、クロマトグラフィーおよび多重膜分離のような、多くの高価で労働集約的で技術的要求の厳しい操作を伴う。本発明のプロセスは、同じ精製を達成しながらもこれらのステップのうち最高8つを省き、クロマトグラフィーの必要を無くす。従って、本発明は、より安価で、所要時間がより少なく、より少ないステップを伴うより効率的な精製プロセスに関する。
【0014】
本発明の短縮された精製プロセスは、清澄化された細胞S.pneumoniae溶解物ブロスを限外濾過およびダイアフィルトレーションし、続いて濃縮した溶解物ブロスを4.5未満、好ましくは約3.5のpHへ酸性化することにより、多糖収率に重大な影響を及ぼすことなく溶液中タンパク質の少なくとも98%が沈降させられるという発見に関する。pH4.5未満、好ましくはpH約3.5への酸性化の前に、溶解および清澄化された発酵ブロスを限外濾過およびダイアフィルトレーションすることにより、タンパク質の「塩溶」効果が省かれ、「塩析される」タンパク質のフラクション破片が増大される。「塩溶」がタンパク質の増大した溶解度を意味するのに対し、「塩析」は、溶液中のタンパク質がそれらの等電点に達する時のそれらのタンパク質の沈降を意味する。限外濾過およびダイアフィルトレーションステップはまた、炭酸ナトリウム処理したブロスが、pH5.0への酸性化を受ける場合に観察される発泡を防止する(米国特許出願公開第2006/0228381号参照)。従って、清澄化された溶解物ブロスの限外濾過およびダイアフィルトレーションにより、S.pneumoniae血清型発酵時に炭酸ナトリウムのような任意の低分子量pH滴定剤を用いることが可能になり、pH4.5未満へ酸性化される場合の清澄化された溶解物ブロスの発泡が防止される。
【0015】
「清澄化された溶解物ブロス」は、細胞片を除去するために遠心分離または濾過を受けた溶解物ブロスを意味する。
【0016】
「ダイアフィルトレーションする」、「ダイアフィルトレーション」、「DF」、および同様な用語は、例えば、溶液から小さい分子を除去するために適切な物理的および化学的特性を有する半透膜を用いることを意味する。
【0017】
「限外濾過する」、「限外濾過」、「UF」、および同様な用語は、例えば、溶液中の分子を区別し、同様な分子をより小さい容量の溶液へ濃縮するために適切な物理的および化学的特性を有する半透膜を用いることを意味する。
【0018】
本発明の方法の範囲内で、限外濾過およびダイアフィルトレーションは一般に、フィルタ膜の目詰まりを回避するために、「クロスフロー」または「接線フロー」濾過を含む。「クロスフロー」濾過において、濾過される溶液は、膜の表面を通過させられる。膜を通過する物質は、透過物と呼ばれる。膜を通過しない物質は、保持物質と呼ばれる。保持物質は、供給リザーバへリサイクルされて再濾過される。
【0019】
本明細書中で用いられるように、pH4.5未満、特にpH約3.5が達成される限り、限外濾過およびダイアフィルトレーションされた溶解物ブロスのpHを低下するために、任意の酸を用い得る。従って、有機酸および鉱酸双方を本発明の方法の範囲内で用い得る。本明細書中で用いられるように、用語「鉱酸」は、有機酸とは対照的に、化学反応により無機鉱物から誘導された酸を意味する。本発明の方法の範囲内で用いられ得る鉱酸の代表的な非限定的な例としては、塩酸、硝酸、リン酸、および硫酸が含まれる。特定の実施形態において、濃縮された溶解物ブロスのpHは、4.4、4.3、4.2、4.1、4.0、3.9、3.8、3.7、3.6、3.5、3.4、3.3、3.2、3.1、または3.0未満に低下される。他の実施形態において、濃縮された溶解物ブロスのpHは、約4.4、約4.3、約4.2、約4.1、約4.0、約3.9、約3.8、約3.7、約3.6、約3.5、約3.4、約3.3、約3.2、約3.1、約3.0、約2.9、約2.8、約2.7、約2.6、約2.5、約2.4、約2.3、約2.2、約2.1、または約2.0に低下される。
【0020】
本発明の短縮された精製プロセスはまた、上述の濃縮および低pHステップと組み合わせることにより、活性炭を用いた濾過により、多糖収率に重大な影響を及ぼすことなく残留タンパク質の少なくとも90%が沈降させられるという発見に関する。特定の実施形態において、おがくずまたは他の木材製品から誘導されリン酸により活性化された炭素を用いた炭素濾過は、現行の炭素濾過方法の範囲内で用いられる炭素よりも、タンパク質不純物の除去に効果的であることが見出された。
【0021】
従って、本発明は、Streptococcus pneumoniae細胞溶解物から実質的に精製された莢膜多糖を生産するためのプロセスに関し、このプロセスは、
(a)選択されたStreptococcus pneumoniae血清型を生産する細菌細胞を含む発酵ブロスを提供するステップと、
(b)ステップ(a)における細菌細胞を溶解薬で溶解し、それにより細胞片、可溶性タンパク質、核酸、および多糖を含む細胞溶解物を生産するステップと、
(c)細胞片を除去するために遠心分離または濾過を用いてステップ(b)の細胞溶解物を清澄化し、それにより清澄化された細胞溶解物を生産するステップと、
(d)低分子量不純物を除去し多糖濃度を増大させるためにステップ(c)の清澄化された細胞溶解物を限外濾過およびダイアフィルトレーションし、それにより保持物質を生産するステップと、
(e)タンパク質および核酸を沈降させるためにステップ(d)の保持物質のpHを4.5未満、特に3.5に低下させ、それにより酸性化された保持物質溶液を形成するステップと、
(f)ステップ(e)において形成された酸性化された保持物質溶液を、沈降物の沈降を可能にするのに十分な時間、特に少なくとも2時間、撹拌ありまたはなしで保持し、続いて酸性化された保持物質溶液を濾過または遠心分離し、それにより清澄化された多糖溶液を生産するステップと、
(g)ステップ(f)の清澄化された多糖溶液を活性炭フィルタ、特にウッドベースのリン酸−活性炭を通して濾過するステップと、
(h)ステップ(g)により生産された濾過溶液を限外濾過およびダイアフィルトレーションし、それにより濃縮された精製多糖溶液を生産するステップと、
(i)ステップ(h)により生産された濃縮された精製多糖溶液を、無菌フィルタを用いて濾過するステップと、
を含み、それにより、溶液の形の実質的に精製された莢膜多糖が生産される。ステップ(i)の無菌濾過は、濃縮された精製多糖溶液から細菌および粒子を除去するために有用である。本発明のこの実施形態のために選択された代表的な非限定的なS.pneumoniae血清型は、1、4、5、6A、6B、7F、9V、14、18C、19A、19F、および23Fである。特定の実施形態において、ステップ(e)は、ステップ(d)の保持物質から少なくとも98%のタンパク質を除去する。別の実施形態において、ステップ(g)は、ステップ(f)の清澄化された多糖溶液から少なくとも90%のタンパク質を除去する。別の実施形態において、ステップ(h)のダイアフィルトレーションは、約5.5〜約7.5の間へのpH調節を含む。しかしながら、長期保存中の実質的に精製された莢膜多糖の改善された安定性のために、ステップ(h)のダイアフィルトレーションは、約7.0〜約7.5の間への、より具体的には約7.4へのpH調節を含む。
【0022】
本明細書中で用いられるように、用語「実質的に精製された莢膜多糖含有溶解物」または「実質的に精製された莢膜多糖を含有する溶液」は、タンパク質と多糖とのパーセント比率(タンパク質/PS)が、10%未満、9%未満、8%未満、7%未満、6%未満、5%未満、4%未満、3%未満、2%未満、または1%未満および核酸と多糖とのパーセント比率(NA/PS)が、5%未満、4%未満、3%未満、2%未満、または1%未満であるようにタンパク質が除去された細胞Streptococcus pneumoniae溶解物または溶液を意味する。特定の実施形態において、実質的に精製された莢膜多糖含有溶解物または特定の血清型を含む溶液についてのタンパク質/PSおよびNA/PSのパーセント比率は、以下の通りである:血清型1については、タンパク質/PSの比率は2%未満であり、NA/PSの比率は2%未満であり、血清型4については、タンパク質/PSの比率は3%未満であり、NA/PSの比率は2%未満であり、血清型5については、タンパク質/PSの比率は7.5%以下であり、NA/PSの比率は2%以下であり、血清型6Aについては、タンパク質/PSの比率は2%未満であり、NA/PSの比率は2%未満であり、血清型6Bについては、タンパク質/PSの比率は4%未満であり、NA/PSの比率は1%未満であり、血清型7Fについては、タンパク質/PSの比率は5%未満であり、NA/PSの比率は2%未満であり、血清型9Vについては、タンパク質/PSの比率は2%未満であり、NA/PSの比率は1%未満であり、血清型14については、タンパク質/PSの比率は3%未満であり、NA/PSの比率は2%未満であり、血清型18Cについては、タンパク質/PSの比率は2%未満であり、NA/PSの比率は2%未満であり、血清型19Aについては、タンパク質/PSの比率は2%未満であり、NA/PSの比率は2%未満であり、血清型19Fについては、タンパク質/PSの比率は3%未満であり、NA/PSの比率は2%未満であり、血清型23Fについては、タンパク質/PSの比率は2%未満であり、NA/PSの比率は2%未満である。細胞溶解物または溶液中のタンパク質、多糖、および核酸濃度の定量のための方法は、当該技術分野においてよく知られており、例えば、SDS−PAGE(ドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動)分析、HPLC(高速液体クロマトグラフィー)およびSEC(サイズ排除クロマトグラフィー)、修正ローリーアッセイ、分光光度法、SEC−MALLS(サイズ排除クロマトグラフィー/多角度レーザー光散乱)、ならびにNMR(核磁気共鳴)が含まれる。
【0023】
本発明の方法の範囲内で、細菌細胞は、任意の溶解薬を用いて溶解され得る。「溶解薬」は、細胞壁破壊と、細胞溶解を引き起こす自己溶解酵素の放出とを助ける任意の薬剤であり、例えば、洗浄剤が含まれる。本明細書中で用いられるように、用語「洗浄剤」は、細菌細胞の溶解を引き起こすことができる任意の陰イオンまたは陽イオン洗浄剤を意味する。本発明の方法の範囲内で使用するためのそのような洗浄剤の代表的な例としては、デオキシコール酸ナトリウム(DOC)、N−ラウリルサルコシン(NLS)、ケノデオキシコール酸ナトリウム、およびサポニンが含まれる。
【0024】
本発明の1つの実施形態において、細菌細胞を溶解するために用いられる溶解薬は、DOCである。DOCは、胆汁酸デオキシコール酸のナトリウム塩であり、これは、雌ウシまたは雄ウシのような生物学的供給源から一般的に導かれる。DOCは、LytAタンパク質を活性化し、これは、Streptococcus pneumoniaeにおける細胞壁成長および分裂に関与する自己分解酵素である。LytAタンパク質は、そのC−末端部分にコリン結合領域を有し、lytA遺伝子の変異は、DOCによる溶解に対し抵抗力があるLytA突然変異体を生み出すことが知られている。
【0025】
Streptococcus pneumoniae多糖精製時のDOCの使用が健康上のリスクを招くという証拠は皆無であるが、そのような生物学的に誘導された試薬の使用は、潜在的な規制問題を引き起こすかもしれない。従って、本発明の1つの実施形態において、細菌細胞を溶解するために用いられる溶解薬は、非動物由来溶解薬である。本発明の方法の範囲内で使用するための非動物由来溶解薬としては、DOCの作用様式(すなわち、LytA機能に影響を及ぼし、Streptococcus pneumoniae細胞の溶解という結果になる)と同様な作用様式を有する非動物供給源からの薬剤が含まれる。そのような非動物由来溶解薬としては、DOCの類似体、界面活性剤、洗浄剤、およびコリンの構造的類似体が含まれるが、それらに限定されず、以下の実験セクションにおいて記載されるような手順を用いて判定され得る。1つの実施形態において、非動物由来溶解薬は、デカンスルホン酸、tert−オクチルフェノキシポリ(オキシエチレン)エタノール(例えば、Igepal(登録商標)CA−630、CAS#:9002−93−1、Sigma Aldrich,St.Louis,MOより入手可能)、オクチルフェノールエチレンオキシド縮合物(例えば、Triton(登録商標)X−100、Sigma Aldrich,St.Louis,MOより入手可能)、N−ラウリルサルコシンナトリウム(NLS)、ラウリルイミノジプロピオネート、ドデシル硫酸ナトリウム、ケノデオキシコール酸塩、ヒオデオキシコール酸塩、グリコデオキシコール酸塩、タウロデオキシコール酸塩、タウロケノデオキシコール酸塩、およびコール酸塩からなる群より選ばれる。別の実施形態において、非動物由来溶解薬は、NLSである。
【0026】
本発明はまた、上記で記載されたプロセスに対する血清型特異的な修正にも関する。例えば、血清型19A多糖は不安定であり、精製の間にその分子量が変化するため、記載されたプロセスに対する修正が、19A多糖を安定化するのに有用であることが見出された。これらの修正としては、限外濾過およびダイアフィルトレーションステップを、酸性化の前に、約4℃で、約6のpHにてリン酸ナトリウム緩衝液中で実行すること、沈降物の沈降を可能にするために、酸性化された保持物質溶液を約4℃で、少なくとも2時間保持すること、および、活性炭濾過ステップの前に、清澄化された多糖溶液のpHを6に調節することが含まれた。これとは対照的に、血清型1、4、5、6A、6B、7F、9V、14、18C、19F、および23Fについて、酸性化に先立つ限外濾過およびダイアフィルトレーションステップが、水のような無塩の媒質中で実行された場合に、より少ない多糖損失およびより多くのタンパク質除去が達成されることが発見され、このステップは、室温で、中性pHにて実行できたかもしれない。
【0027】
従って、本発明はまた、血清型1、4、5、6A、6B、7F、9V、14、18C、19F、または23Fを含むStreptococcus pneumoniae細胞溶解物から、実質的に精製された莢膜多糖を生産するためのプロセスに関し、このプロセスは、
(a)Streptococcus pneumoniae血清型1、4、5、6A、6B、7F、9V、14、18C、19F、または23Fを生産する細菌細胞を含む発酵ブロスを提供するステップと、
(b)ステップ(a)における細菌細胞を溶解薬で溶解し、それにより細胞片、可溶性タンパク質、核酸、および多糖を含む細胞溶解物を生産するステップと、
(c)細胞片を除去するために遠心分離または濾過を用いてステップ(b)の細胞溶解物を清澄化し、それにより清澄化された細胞溶解物を生産するステップと、
(d)低分子量不純物を除去し多糖濃度を増大させるためにステップ(c)の清澄化された細胞溶解物を、室温で中性pHにて、無塩の培地中で限外濾過およびダイアフィルトレーションし、それにより無塩の保持物質を生産するステップと、
(e)タンパク質および核酸を沈降させるためにステップ(d)の無塩の保持物質のpHを4.5未満、好ましくは約3.5に低下させ、それにより酸性化された保持物質溶液を形成するステップと、
(f)ステップ(e)において形成された酸性化された保持物質溶液を、沈降物の沈降を可能にするために少なくとも2時間、室温にて、撹拌ありまたはなしで保持し、続いて酸性化された保持物質溶液を濾過または遠心分離し、それにより清澄化された多糖溶液を生産するステップと、
(g)ステップ(f)の清澄化された多糖溶液を活性炭フィルタ、特にウッドベースのリン酸−活性炭を通して濾過するステップと、
(h)ステップ(g)により生産された濾過溶液を限外濾過およびダイアフィルトレーションし、それにより濃縮された精製多糖溶液を生産するステップと、
(i)ステップ(h)により生産された濃縮された精製多糖溶液を、無菌フィルタを用いて濾過するステップと、
を含み、それにより溶液の形の血清型1、4、5、6A、6B、7F、9V、14、18C、19F、または23Fを含む実質的に精製された莢膜多糖が生産される。特定の実施形態において、ステップ(e)は、ステップ(d)の無塩の保持物質から少なくとも98%のタンパク質を除去する。別の実施形態において、ステップ(g)は、ステップ(f)の清澄化された多糖溶液から少なくとも90%のタンパク質を除去する。別の実施形態において、ステップ(h)のダイアフィルトレーションは、約5.5〜約7.5の間へのpH調節を含む。しかしながら、長期保存中の実質的に精製された莢膜多糖の改善された安定性のために、ステップ(h)のダイアフィルトレーションは、約7.0〜約7.5の間への、より具体的には約7.4へのpH調節を含む。
【0028】
本発明はまた、血清型19Aを含むStreptococcus pneumoniae細胞溶解物から実質的に精製された莢膜多糖を生産するためのプロセスにも関し、このプロセスは、
(a)Streptococcus pneumoniae血清型19Aを生産する細菌細胞を含む発酵ブロスを提供するステップと、
(b)ステップ(a)における細菌細胞を洗浄剤で溶解し、それにより細胞片、可溶性タンパク質、核酸、および多糖を含む細胞溶解物を生産するステップと、
(c)細胞片を除去するために遠心分離または濾過を用いてステップ(b)の細胞溶解物を清澄化し、それにより清澄化された細胞溶解物を生産するステップと、
(d)低分子量不純物を除去し多糖濃度を増大させるためにステップ(c)の清澄化された細胞溶解物を、約4℃でpH約6にて、25mMリン酸ナトリウムのリン酸ナトリウム緩衝液中で限外濾過およびダイアフィルトレーションし、それにより保持物質を生産するステップと、
(e)タンパク質および核酸を沈降させるためにステップ(d)の保持物質のpHを4.5未満、特に約3.5に低下させ、それにより酸性化された保持物質溶液を形成するステップと、
(f)ステップ(e)において形成された酸性化された保持物質溶液を、沈降物の沈降を可能にするために少なくとも2時間、約4℃で撹拌ありまたはなしで保持し、続いて酸性化された保持物質溶液を濾過または遠心分離し、それにより清澄化された多糖溶液を生産するステップと、
(g)ステップ(f)の清澄化された多糖溶液のpHを約6に調節し、それによりpH調節された清澄化された多糖溶液を生産するステップと、
(h)ステップ(g)のpH調節された清澄化された多糖溶液を活性炭フィルタ、特にウッドベースのリン酸−活性炭を含むフィルタを通して濾過するステップと、
(i)ステップ(h)により生産された濾過溶液を限外濾過およびダイアフィルトレーションし、それにより濃縮された精製多糖溶液を生産するステップと、
(j)ステップ(i)により生産された濃縮された精製多糖溶液を、無菌フィルタを用いて濾過するステップと、
を含み、それにより溶液の形の血清型19Aを含む実質的に精製された莢膜多糖が生産される。特定の実施形態において、ステップ(e)は、ステップ(d)の保持物質から少なくとも98%のタンパク質を除去する。別の実施形態において、ステップ(h)は、ステップ(g)のpH調節された清澄化された多糖溶液から少なくとも90%のタンパク質を除去する。別の実施形態において、ステップ(i)のダイアフィルトレーションは、約5.5〜約7.5の間へのpH調節を含む。しかしながら、長期保存中の実質的に精製された19A多糖の改善された安定性のために、ステップ(i)のダイアフィルトレーションは、約7.0〜約7.5の間への、より具体的には約7.4へのpH調節を含む。
【0029】
以下の実施例は、例示のために提示されており、限定のためではない。
【実施例】
【0030】
実験
以下の実施例は、本発明の改善されたプロセスを用いて10Lスケールで精製したS.pneumoniae多糖血清型1、4、5、6A、6B、7F、9V、14、18C、19A、および19Fについての結果を提示し、結果を現行の精製プロセスの結果と比較する。
【0031】
(実施例1)
S.pneumoniae多糖血清型1、4、5、6A、6B、7F、14、および19Aのための短縮された精製プロセス
デオキシコール酸ナトリウム(DOC)により溶解したS.pneumoniae発酵ブロスを、それらの採取後2日間以内に得るか、4℃で保存して翌週のうちに処理した。以下に記載されるように、本発明の精製プロセスは、現行の精製プロセスと比較して以下の変更を含んでいた:1)酸性化ステップを、冒頭から最初の限外濾過/ダイアフィルトレーション1)(UF/DF)ステップ後に移動し、pHを、5ではなく3.5に調節した;2)ダイアフィルトレーション緩衝液を、0.025Mリン酸塩から脱イオン(DI)水に変更し;3)炭素吸着を、ウッドベースのリン酸活性炭を用いる2 CUNO R32SPカーボンディスク(CUNO Inc.,Wayne,NJ)に変更し、吸着時間を4ターンオーバーから12ターンオーバーへ延長した(各ターンオーバーは22分間であった)、4)約5回ダイアフィルトレーションする場合、最後の30Kダイアフィルトレーションステップの間、pHを7.4に調節した。同じ精製手順を、血清型1、4、5、6A、6B、または7Fに適用した。血清型19Aについては、ステップをさらに修正し、精製は、以下に記載されるように冷気室中で実施した。
【0032】
精製ステップ
プロセスを冷気室中で4℃にて実施した型19Aを除き、すべてのステップは室温で実施した。
【0033】
溶解物の清澄化:このステップの目的は、細胞片を除去し、ブロスを清澄化することであった。これは、遠心分離か、濾過によって達成された。ブロスを、10,000gで30分間またはブロスが清澄になるまで20℃(型19Aについては4℃)で遠心分離するか、Celpure(登録商標)濾過助剤(Advanced Minerals,Santa Barbara,CA)を添加してMillipore Prefilter(Millipore Corp.,Billerica,MA)を用いて濾過した。清澄化された溶解物をさらなる処理のために収集し、ペレットを廃棄した。
【0034】
第1のUF/DF(限外濾過/ダイアフィルトレーション):このステップにより、容積減少および緩衝液交換が提供され、また低分子量不純物が除去された。清澄化された溶解物を、元の容積の約1/8に濃縮した。ダイアフィルトレーションは、約10容量のDI水(19Aについては、pH6、25mMリン酸塩)を用いて実行した。
【0035】
酸性化:98%以上のタンパク質がこのステップにおいて除去された。撹拌している間、濃縮リン酸を保持物質に慎重に添加した。保持物質のpHを、pH3.5の目標値に調節した。酸性化された保持物質を30分間撹拌し、室温で一晩(19Aについては4℃で2時間)熟成させ、タンパク質および核酸の沈降という結果になった。
【0036】
酸性化された保持物質の清澄化:これは、酸性化後に沈澱物を除去する清澄化ステップであった。酸性化された溶液のスラリーを、ローター中で10,000rpmで(17,000相対遠心力またはRCF)20℃で1時間遠心分離した(6Bを除く。この場合、遠心分離は、37℃で6時間であった)。上清を収集し、ペレットを廃棄した。Celpure(登録商標)濾過助剤(Advanced Minerals,Santa Barbara,CA)を添加したMillipore Prefilter(Millipore Corp.,Billerica,MA)によるデプスフィルトレーションもこのステップ用に用いることができる。
【0037】
炭素吸着:ほとんどの場合、酸性化された100K保持物質の遠心分離後にわずかな黄色が見られた。色の除去は、ウッドベースのリン酸−活性炭を用いた炭素吸着により達成された。このステップにより、酸性化後に残る残留タンパク質も除去された。清澄化された多糖溶液を、炭素フィルタを通して5〜6時間または一晩再循環した(19Aについては、pHは、炭素吸着前に6に調節した)。
【0038】
最終30K UF/DF:これは、溶液を>2g/Lの最終多糖(PS)濃度に濃縮するための別の濃縮および緩衝液交換ステップであり、これを脱イオン(DI)水へダイアフィルトレーションした。炭素濾過したPS溶液を濃縮した。次に、濃縮物を、DI水で10×ダイアフィルトレーションした。pHは、ダイアフィルトレーションの間、7.4に調節した。
【0039】
最終0.2μm無菌濾過:最終PS溶液は、0.22μmフィルタまたは無菌使い捨てフィルタユニットにより無菌濾過し、4℃冷蔵庫中で保存した。
【0040】
分析方法
タンパク質、PS、および核酸濃度の定量は、SDS−PAGE(ドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動)分析、HPLC(高速液体クロマトグラフィー)およびSEC(サイズ排除クロマトグラフィー)、修正ローリーアッセイ、分光光度法、SEC−MALLS(サイズ排除クロマトグラフィー/多角度レーザー光散乱)、ならびにNMR(核磁気共鳴)を含む、当該技術分野においてよく知られた方法を用いて実行した。
【0041】
結果および考察
型5短縮精製バッチ:型5についての、短縮されたプロセスを用いた3つ精製バッチの最終PS収率、PS分子量および主要不純物レベルの比較ならびに現行のプロセスを用いたそれらの比較が表1に示してある。すべての開始ブロスは、DOC溶解高細胞密度発酵バッチであり、これらの多糖濃度(約0.5g/L)は、標準SOP発酵ブロスの多糖濃度(約0.3g/L)よりも高かった。30Kまたは50K膜を、第1のUF/DFステップに用いた。不純物レベルは、不純物/PS比率を用いて計算した。同じ方法を、本明細書中に記載されるすべての他の血清型について用いた。
【0042】
【表1】
表1のデータが示すように、短縮精製プロセスを用いる3つのバッチ全てのタンパク質比率は、≦7.5%の規格を満たし、また、現行プロセスのタンパク質比率に匹敵した。核酸(NA)ならびにC−多糖(C−PS)比率も、それぞれ≦2.0%および≦35%の規格を十分下回るものであり、現行プロセスのそれらの比率に匹敵した。表1に示される3つのバッチの最終PS収率および不純物レベルの結果は、短縮プロセスの再現性および堅牢性を実証している。
【0043】
多糖が3.5のより低いpHにおいて加水分解されるかどうかについて若干の懸念があった。従って、精製プロセス時のPS保持時間変化を監視し、最終精製PSの分子量を測定した。HPLCクロマトグラムからは、血清型5PS保持時間の著しい変化は全く観察されなかった。短縮プロセスによる精製PSの分子量および現行プロセスによる精製PSの分子量(284kg/mol)にも、MALLS測定に基づき、著しい違いは全くなかった。従って、精製PSの分子量は、短縮精製プロセスにより悪影響を受けなかったと結論づけられた。
【0044】
3つの短縮プロセスバッチについて処理ステップの各々におけるインプロセス多糖収率、タンパク質/多糖比率および核酸/多糖比率が表2にまとめてある。
【0045】
【表2】
どのような精製プロセスの各ステップの間にも、生成物の損失が常にある。これらの3つの短縮プロセスバッチについて、PS損失はほとんど、第1のUF/DFステップおよび酸性化ステップにおいて生じた。第1のUF/DFステップにおけるPSの損失は、膜表面へのPSまたはPS−タンパク質複合体の吸着に起因するものであった。この損失は、ダイアフィルトレーション後にDI水で膜の保持物質側をすすぎ、そのすすぎ液を元の保持物質と合わせることにより最小限になった。酸性化ステップにおけるPSの損失は、2つの理由に起因している可能性がある。すなわち、沈降固体へのPSの物理的吸着、および酸性化時の共沈に伴うタンパク質への多糖結合である。この第2の可能性をさらに調べたところ、結果はPS/タンパク質結合の証拠を示した。
【0046】
図1は、各精製ステップにおけるタンパク質/PS比率の減少を示す。遠心分離ステップによりタンパク質がわずかに除去されたが、大部分のタンパク質は、酸性化ステップで除去された。タンパク質力価が最も高いバッチについてさえ、pH3.5処置後には、痕跡量のタンパク質しか検出されなかった。
【0047】
タンパク質/PS比率と同様、核酸/PS比率は、バッチ間の不純物レベルのばらつきを示した。30/50KUF/DFステップは、同じ処理ステップにおけるタンパク質除去と比較して、著しい量の核酸を除去した。理論によって拘束されていないが、これは、核酸の分子サイズがタンパク質のサイズよりも小さく、それによって核酸が30/50KUF/DFステップを介して比較的容易に除去されることに起因していたのかもしれない。第1の遠心分離および酸性化ステップも、かなりの量の核酸を除去した。
【0048】
表2は、活性炭吸着ステップもタンパク質/PSおよびNA/PSレベルを低減することを示している。百分率減少は、最初の2つのステップほど著しくはなかったが、このステップは、溶液の色を除去するために重要であり、不純物レベルが規格を満たすことを確実にした。
【0049】
型4短縮精製バッチ:型4についての3つの短縮精製バッチの概略が表3に示してある。3つのバッチすべてについての供給ブロスは、DOC−溶解した。
【0050】
【表3】
型4PS収率も50〜60%の間であった。タンパク質/PS比率および核酸/PS比率は、十分それらの規格内であった。C−PS比率はまた、十分規格内であった。3つのバッチすべての分子量は、約300kg/モル近辺であった。同様な発酵ブロスを用いる現行の精製プロセスによって精製された血清型4PSも、より低い分子量285kg/モルをもたらした。発酵ブロスおよび最終精製溶液からのPSのHPLCクロマトグラフの比較により、PS保持時間に差が全くないことが示された。このことは、分子量の差は、プロセス変更によって引き起こされたのではなく、むしろ発酵プロセスの固有の性質に起因することを示唆している。
【0051】
型4PSは、精製された分子中にピルベート基を含んでおり、このピルベート基は、肺炎球菌結合型ワクチンにおいて使用するための結合に重要であった。ピルベート基量が酸処理により悪影響を受けないことを保証するため、NMR分析を実施した。図2は、標準の型4PSおよびバッチL29276−47から型4PSについてのNMRスペクトルを示す。2つのスペクトルの間に著しい違いは全く観察されなかった。両方のスペクトルおいて右から2番目のピークはピルベート基であり、ピルベート基ピーク高さは、両方のスペクトルにおいて同等であった。3つの短縮されたプロセスバッチすべてについてのピルベート基比率は、0.8モル/モルであり、>0.7モル/モルの規格を満たした。
【0052】
3つの型4バッチについてのインプロセスPS収率、タンパク質/PSおよびNA/PS比率の概要が表4に示してある。PS損失はほとんど、第1の遠心分離、酸性化および活性炭吸着ステップで生じ、それぞれ平均が10%、8%および20%であった。全体のPS収率は、型5のPS収率、約55%に近かった。
【0053】
【表4】
図3は、表4の3つのバッチについての精製ステップの各々における平均PS収率、タンパク質/PSおよびNA/PS比率変化を示す。タンパク質除去は、予想されるように大部分が酸性化ステップにおいて生じた。第1の遠心分離およびUF/DFステップも、ある一定量のタンパク質を集合的に除去したが、タンパク質減少は、酸性化ステップよりも少なかった。
【0054】
型5と同様に、大部分の核酸/PS比率減少は、50/100K UF/DF、第1の遠心分離、および酸性化ステップにおいて生じ、第1のUF/DFステップにおけるNA減少は、タンパク質の減少よりも著しかった。また、図3に示されるように、活性炭ステップは、ある一定量のタンパク質およびNAを除去し、不純物レベルを規格以下にした。活性炭ステップは、溶液の色も除去した。
【0055】
型19A短縮精製バッチ:型19A多糖は不安定であり、分子量は精製の間に変化する。短縮された精製プロセスは、19A多糖を安定化するために若干修正された。これらの修正は以下の通り要約される:1)精製ステップは、大部分を冷気室中で4℃にて実施し;2)第1の100Kダイアフィルトレーションを、室温水を用いる代わりにpH6の25mMリン酸塩緩衝液(4℃)を用いて冷却し;3)酸性化保持時間を、一晩から2時間に低減し;4)酸性化された100K保持物質を清澄化した後、pHを6に調節し、活性炭吸着をpH3.5ではなくpH6で実施した。
【0056】
短縮された精製プロセスによって精製された2つの19Aバッチの結果が、表5に示してある。
【0057】
【表5】
2つの短縮された精製バッチのPS収率は、それぞれ62および76%であった。最終タンパク質/PS比率、核酸比率、およびC−PS比率はすべて、それらのそれぞれの規格を満たした。2つのバッチからの多糖の最終の分子量は、それぞれ525kg/モルおよび488kg/モルであり、フェーズIII臨床試験において用いられる19AのPSの分子量(486kg/モル)に近かった。
【0058】
2つのバッチについてのタンパク質/PS比率は両方とも<2%の規格を満たした。2つのバッチのNAおよびC−PS比率は両方とも、十分それらの規格内であった。
【0059】
精製ステップの各々におけるPS収率、タンパク質およびNA減少が、表6および図4に示してある。結果は、第1の遠心分離ステップを除き、精製ステップの各々におけるPS損失を示した。血清型5および4のように、タンパク質およびNA除去は、ほとんど最初の3つのステップにおいて起こり、酸性化後には、どのような検出可能なタンパク質およびNAもほとんど残っていなかった。ことによると酸性化後の非常に低いタンパク質およびNA濃度のため、活性炭吸着ステップは著しい量のタンパク質およびNAを除去しなかったが、このステップは、色除去のために依然として必要とされた。
【0060】
【表6】
型7F短縮精製バッチ:型7Fは、非イオン多糖であり、上記の血清型と比較して、現行のプロセスを用いた精製の間に段階的変化を一般に必要とする。しかしながら、本発明の短縮された精製プロセスは、プロセス変更を必要することなく血清型7Fにうまく適用された。型7Fブロスの2つのバッチは、短縮されたプロセスを用いて精製された。1つは標準発酵ブロス(L29276−107)であり、1つは高細胞密度ブロス(L29276−157)であった。2つのバッチの結果の概要が表7に示してある。
【0061】
【表7】
型7FのPS収率は実際には、ことによると帯電したタンパク質分子への非イオンポリマーの結合がより少ないため、他の血清型よりも高かった。最終タンパク質、NAおよびC−PS比率はすべて、十分それらの規格内であった。型7Fの分子量は、標準バッチの分子量と同等であり、たとえ7F分子量が相当高かったとしても、非イオンポリマーの排除体積がより少ないため、PS溶液はあまり粘性を帯びていなかった。
【0062】
精製ステップの各々における型7FPS収率、タンパク質およびNA比率が表8に示してあり、2つのバッチの平均が図5においてプロットしてある。
【0063】
【表8】
各精製ステップにおいていくらかの型7FPS損失があった。全体的に、PS損失は、血清型5および4のPS損失より小さかった。タンパク質およびNA比率減少は大部分が、第1の遠心分離、100K UF/DF、および酸性化ステップによるものであった。他の血清型と同様、100K UF/DFは、NAの除去においてタンパク質よりも効率的であった。活性炭吸着ステップは、酸性化後の非常に低い不純物レベルのため、著しい量のタンパク質およびNAを除去しなかったが、このステップは色除去のために依然として必要であった。
【0064】
型6B短縮精製バッチ:6Bの2つのバッチを、短縮精製プロセスを用いて精製した。酸性化した100K保持物質の清澄化が、他の血清型よりも長い時間(1時間の代わりに6時間)を必要とすることが判明した。この差を除いて、精製プロセスは、血清型のそれと同様であった。2つのバッチの結果の概要が表9に示してある。
【0065】
【表9】
すべての不純物レベル(タンパク質、NA、およびC−PS)は、十分それらの規格内であった。PS収率は比較的高く、他の血清型と比較して、タンパク質およびNA比率も同じであった。
【0066】
精製ステップの各々におけるインプロセスPS収率、タンパク質およびNA比率が、表10および図6に示してある。
【0067】
【表10】
19Aと同様、PS損失は、PSの若干の増加があった第1の遠心分離ステップを除き、精製ステップの各々において生じた。タンパク質およびNAの除去は大部分、第1の遠心分離、第1の100K UF/DFおよび酸性化ステップにより達成された。しかしながら、活性炭吸着ステップにおいてタンパク質およびNA比率のいくらかの減少があった。
【0068】
型6A短縮精製バッチ:型6Aの2つのバッチを、短縮精製プロセスを用いて精製した。最終溶液のPS収率、不純物レベルおよび分子量の概要が表11に示してある。
【0069】
【表11】
2つの6Aバッチの最終PS収率は、両方とも>70%であり、これは、短縮プロセスを用いて処理した血清型の間で最も高かった。タンパク質、NA、およびC−PS比率はすべて、規格内であった。
【0070】
表12および図7は、精製ステップの各々におけるインプロセスPS収率、タンパク質およびNA比率変化を示す。第1の遠心分離および100K UF/DFステップにおいてPSのどのような損失もほとんどなかった。約10−15%PS損失が、酸性化および活性炭吸着ステップにおいて生じ、これは他の血清型のPS損失と近かった。大部分のタンパク質およびNA比率減少は、第1の遠心分離、100K UF/DF、および酸性化によるものであった。酸性化後、タンパク質およびNA比率は両方とも、すでにそれらの規格より下にあった。タンパク質については、酸性化が最も効率的なステップであったのに対し、NAについては、100K UF/DFがNA/PS比率を最も多く低減した。活性炭吸着ステップは、酸性化後の非常に低い不純物レベルのため、著しい量のタンパク質およびNAを除去しなかったが、このステップは色除去のために依然として必要であった。
【0071】
【表12】
型1短縮精製バッチ:短縮プロセスによって精製された型1の2つのバッチの概要が表13に示してある。バッチL29276−170は、高細胞密度発酵ブロスから精製し、L29276−173は、標準発酵ブロスから精製した。
【0072】
【表13】
両方のバッチのPS収率は約50%であり、タンパク質、NAおよびC−PSについての不純物レベルはすべて、それらの規格内にあった。
【0073】
精製ステップの各々の後におけるインプロセスPS収率、タンパク質およびNA比率が、表14および図8に示してある。傾向は、精製された他の血清型と同様であった。PS損失は大部分、酸性化および活性炭吸着ステップにおいて生じ、大部分のタンパク質およびNA除去は、最初の3つのステップにおいて生じた。タンパク質よりも多くのNAが100K UF/DFステップにおいて除去された。活性炭吸着ステップは、酸性化後の非常に低い不純物レベルのため、著しい量のタンパクおよびNAを除去しなかったが、このステップは、色除去のために依然として必要であった。
【0074】
【表14】
型14短縮精製バッチ:血清型14の2つバッチを、プロセス変更なしで、短縮精製プロセスを用いて精製した。最終PS収率および不純物レベルの概要が表15に示してある。
【0075】
【表15】
血清型7Fと同様、血清型14は非イオン多糖であり、その現行の精製プロセスは、他の血清型と若干異なる。しかしながら、本発明の短縮精製プロセスは、そのような付加的ステップの必要なしで、血清型14にうまく適用された。2つの短縮精製プロセスバッチのPS収率は、50〜60%であり、タンパク質およびNA比率は、それらの規格内にあった。精製されたPSの分子量も、規格を満たした。
【0076】
インプロセスPS収率、タンパク質およびNA比率の概要が、表16および図9に示してある。PS損失、タンパク質およびNA除去の同様な傾向が、上述の他の試験された血清型について観察された。
【0077】
【表16】
(実施例2)
種々の血清型の比較(血清型1、4、5、6A、6B、7F、9V、14、18C、19A、および19F)
本発明の短縮精製プロセスを用いた種々の血清型の精製を比較するために、実施例1において記載されたすべての血清型に加え血清型9V、18C、および19FについてのPS除去を、図10の1つのグラフにおいてプロットした。大部分の血清型は、精製ステップの各々においてPS損失と同様な傾向をたどった。第1の遠心分離ステップにおける型6Bおよび酸性化ステップにおける型14について、PS収率の増大があった。PS百分率損失は、血清型ごとに変化した。型5は、酸性化ステップにおいてほとんどのPSを失い、型4は、活性炭吸着ステップにおいてPSを失った。
【0078】
血清型の各々についての各精製ステップについてのタンパク質/PS比率が、図11に示してある。この図は、種々の血清型についての初期タンパク質/PS比率に差があることを示しており、型1、4、5、9V、19F、および18Cは、最も高い初期タンパク質/PS比率を有する。たとえタンパク質/PS比率が型1、4、5、9V、19F、および18Cについて、第1のUF/DFステップの後でさえも他の血清型と比較してずっと高くても、酸性化ステップは、タンパク質/PS比率を大きく低減し、タンパク質はこのステップ後にあまり残らなかった。
【0079】
図12に示されるように、NA/PS比率も、血清型ごとに変わった。型1および5が最も高いNA/PS比率を有しており、続いて型18Cおよび4であった。第1の遠心分離およびUF/DFステップは、これらの血清型について著しい量のNAを除去し、型1が最も効率的であるように思われた。酸性化ステップ後には、NAはほとんど残っていなかった。
【0080】
(実施例3)
酸性化および活性炭吸着ステップ効率分析(血清型1、4、5、6A、6B、7F、9V、14、18C、19A、および19F)
PnC多糖の精製にとり、最も重要かつ除去が困難な不純物はタンパク質である。短縮プロセスの不純物除去効率をより理解するために、2つの主要な精製ステップである酸性化および活性炭吸着をタンパク質除去について分析した。酸性化ステップについて、酸性化の前および後におけるタンパク質濃度(SDS−PAGE)の差を、本発明の短縮精製プロセスを用いた血清型1、4、5、6A、6B、7F、9V、14、18C、19A、および19Fについての酸性化間の初期タンパク質濃度に対してプロットした(図13)。
【0081】
酸性化ステップの前および後の溶液体積の比較的小さい変化のため、初期タンパク質濃度で割ったタンパク質濃度差は、酸性化ステップによるタンパク質除去レートを反映した。図13は、初期タンパク質濃度(SDS−PAGEアッセイによる)に対するタンパク質濃度差の直線的適合度の勾配を示す。非常に良好な直線関係が、タンパク質濃度変化と初期濃度の間に観察され、R2は1に近かった。勾配は0.9876であり、これは98.76%タンパク質除去に相当する(溶液体積変化は無視できるものと想定する)。従って、調べたすべての血清型について、酸性化ステップは非常に効率的であり、平均して酸性化ステップは、98%以上のタンパク質を除去した。
【0082】
酸性化ステップと同様、活性炭吸着ステップの効率も、除去された(炭素に吸着された)タンパク質の量を初期タンパク質負荷に対してプロットすることにより評価した(図14)。R2(0.9723)は、酸性化ステップの場合ほど高くはなかったが、除去されたタンパク質と初期タンパク質負荷との間に良好な直線関係が観察された。この直線的適合度の勾配は、タンパク質除去レートに対応するので、活性炭吸着ステップは、93.87%タンパク質除去をもたらした。
【0083】
酸性化および活性炭吸着ステップの分析に基づき、これら2つのステップ後には、約0.1%のタンパク質しか溶液中に残されなかった。
【0084】
実施例1〜3についての結論
短縮精製プロセスは、S.pneumoniaeの莢膜多糖のための現行の精製プロセスに取って代わるために開発された。この短縮精製プロセスは、わずかな変更と共に、血清型1、4、5、6A、6B、7F、9V、14、18C、19F、および19Aに直接適用された。プロセスは、DOC−溶解した発酵ブロスを用いて、10Lスケールで実施した。タンパク質/PS、NA/PSおよびC−PS/PS比率を含む不純物レベルはすべて、それらの規格を満たした。PS収率は50%以上であり、現行の精製プロセスのPS収率に匹敵した。インプロセスPS収率、タンパク質/PSおよびNA/PS比率は、種々の血清型の挙動を比較するためにプロットした。血清型1、5、9V、19F、および18Cは、100K UF/DFステップの前および後のタンパク質/PS比率に基づいて、精製が最も困難であることが判明した。
【0085】
ステップ分析は、酸性化および活性炭吸着ステップが、それぞれ98%以上および90%以上のタンパク質を除去した(SDS−PAGEにより測定)ことを示した。
【0086】
(実施例4)
多糖生産におけるデオキシコール酸ナトリウムの非動物由来溶解薬による代替
この実施例は、実質的に精製された莢膜Streptococcus pneumoniae多糖の生産について上述されたプロセス内において、非動物由来溶解薬がデオキシコール酸ナトリウム(DOC)の代替物として使用できるかどうかを調べた。上記のように、DOCは、Streptococcus pneumoniaeにおける細胞壁成長および分割に関与する自己分解酵素であるLytAタンパク質を活性化する。LytAタンパク質は、そのC末端部分にコリン結合ドメインを有し、lytA遺伝子の変異は、DOCによる溶解に対し抵抗性のあるLytA突然変異体を生み出すことが知られている。
【0087】
DOCの機序と同様な機序により細胞溶解を引き起こす化合物を同定するために、ラピッドマイクロタイタープレートアッセイが開発された。Streptococcus pneumoniae細胞の死滅および多糖の放出においてDOCと同等に効果的な、DOCに対するいくつかの非動物由来代替物が同定された。標準条件を用いた処理後、非動物由来化合物で生産された多糖のサイズおよび純度は、DOCで生産された多糖のサイズおよび純度と同一であった。
【0088】
方法
細胞溶解:試験される化合物を、0.1〜0.01%(v/v)の最終濃度で発酵ブロスに添加し、溶液を、37℃で1時間インキュベートさせた。次に溶液を、2〜8℃で一晩保存した。翌朝、溶液を遠心分離してすべての細胞片を除去した。細胞を含まないブロスをSEC−HPLCにより分析し、放出された多糖の濃度を決定した。溶解は、2〜37℃の間の任意の温度で、好ましくは6.0〜7.5のpH範囲で実行できたであろう。洗浄剤の濃度は一般に、個別の洗浄剤によって0.05〜0.2%の間であった。
【0089】
マイクロタイターアッセイ:種々の洗浄剤または界面活性剤による肺炎球菌のlytA−依存溶解を試験するために、ラピッドマイクロタイタープレートアッセイが考案された。S.pneumoniaeの同質遺伝子型株の2つの対をこのアッセイにおいて用いた;各対の一方がlytA遺伝子の野生型であるのに対し、他方の株は、lytA遺伝子中に欠失を有していた 従って、もし溶解が活性lytA機能に依存すれば、その洗浄剤は、突然変異株を溶解しないであろう。4つの株、すなわちR6X、R6X ΔlytA、D39、およびD39 ΔlytAを、HySoy培地中でほぼ対数増殖中期(OD600約0.2〜0.8;OD600=600nmにおける光学密度)まで培養した。次に細胞を遠心分離し、細胞ペレットをHySoy培地中に再懸濁させた。マイクロタイタープレートの各ウェルに、100μLの細胞懸濁液を、対照としての10μLの洗浄剤保存液または水と共に、添加した。36℃で約15分後、試料のOD600をSpectramax(登録商標)分光光度計(Molecular Devices,Sunnyvale,CA)で測定した。以下の結果は、新たに調製された細胞または凍結および解凍された細胞について観察された:DOC、ドデシル硫酸ナトリウム、Triton(登録商標)X−100およびN−ラウリルサルコシンにさらされた野生型細胞はすべて、培地ブランクと同等のOD値を持っており、これはlysisが生じていたことを示す。他方で、ΔlytA細胞は、これらの洗浄剤の存在下では溶解せず、これは、これらの洗浄剤が細胞を溶解するためにLytA機能が必要とされることを示す。
【0090】
比較分析研究に用いられるPSの単離:培養物を、10Lバイオリアクター中のHy−Soy培地中で成長させた。pHは、NaOHまたはNa2CO3を用いて約7.0に制御した。成長の終わりに(光学密度のさらなる増加が全く示されない)、培養物を0.12%DOCか0.1%NLSで処理した。培養物を、12〜16時間インキュベートした。細胞死滅の有効性は、処理したブロスの試料をTSA−血液寒天プレートに塗布することによって確認した。多糖は、(上記のように)清澄化された溶解物から標準手順を用いて精製した。精製多糖を、物質の純度および同一性を決定するのに適した各種の標準分析手法を用いて検査した。
【0091】
溶解物のPS含有量を、屈折率(RI)検出器に結合されたSEC−HPLCを用いて決定した。
【0092】
血清型1および6Bを用いた非動物由来溶解薬のスクリーニング
S.pneumoniae血清型1および6Bを、Hy−Soyベースの培地中で別個に成長させた。培養物を、別個に収集し、試験管中に別個に分配した。DOCに匹敵する溶解活性についてスクリーニングされる非動物由来化合物をストック溶液として(適切な溶媒中に)調製し、培養物に添加した。一晩インキュベートした後、試験管を遠心分離し、各血清型について溶解物のPS含有量をSEC−HPLCにより決定し、DOCと比較した。
【0093】
lytA突然変異体を用いた非動物由来溶解薬のスクリーニング
lytA変異を含有する株の同質遺伝子的対を、Hy−Soyベースの培地中で成長させた。細胞を収集し、マイクロタイタープレートのウェル中に分配した。試験化合物を添加し、培養物をインキュベートした。36℃で15分間の後、各ウェルの光学密度(OD600)を、SpectraMax(登録商標)プレートリーダー(Molecular Devices,Sunnyvale,CA)を用いて決定した(表17および18を参照されたい。これらの表は、代表的化合物についての2つの別個な試験の結果の概要を示す)。
【0094】
【表17】
【0095】
【表18】
上記のスクリーニング研究に基づき、DOCに取って代わる以下の非動物由来溶解薬が同定された:デカンスルホン酸、Igepal(登録商標)CA−630(tert−オクチルフェノキシポリ(オキシエチレン)エタノール;CAS#:9002−93−1;Sigma Aldrich,St.Louis,MOより入手可能)、N−ラウリルサルコシンナトリウム(NLS)、ラウリルイミノジプロピオネート、ドデシル硫酸ナトリウム、Triton(登録商標)X−100、ケノデオキシコール酸塩、ヒオデオキシコール酸塩、グリコデオキシコール酸塩、タウロデオキシコール酸塩、タウロケノデオキシコール酸塩、およびコール酸塩。
【0096】
NLS−溶解PSとDOC−溶解PSとの比較
S.pneumoniae多糖血清型1、4、5、6A、6B、および7Fを、実施例1および2において上述されたように10Lスケールで、本発明の改善されたプロセスを用いて精製した。しかしながら、一方のグループではNLS(0.1%)を溶解薬として用いたのに対し、他方のグループでは、DOC(0.12%)を溶解薬として用いた。
【0097】
PS収率、タンパク質/PS比率、NA/PS比率、およびPS分子量を、上記のように測定し、結果の概要を表19に示す。これらの結果は、本発明の精製方法における溶解薬としてのNLSの使用が、比較的高いPS収率を、比較的低いタンパク質および核酸レベルと共にもたらすことを示した。実際、試験した血清型の大多数について、溶解薬としてのNLSの使用は、DOCの使用と比較して、より高いPS収率をもたらした。
【0098】
【表19】
本明細書中で言及されたすべての刊行物および特許出願は、本発明が属する当業者の水準を示すものである。すべての刊行物および特許出願は、あたかも各個別の刊行物または特許出願が、具体的かつ個別的に参照により組み込まれるように、参照により本明細書中に組み込まれる。
【0099】
上記の発明は、理解を明瞭にする目的のため、例示および実施例によりある程度詳細に説明されてきたが、一定の変更および修正が、特許請求の範囲内で実施され得ることは明らかであろう。
【技術分野】
【0001】
本発明は、精製された肺炎球菌多糖の生産において用いられるStreptococcus pneumoniae(S.pneumoniae:肺炎連鎖球菌)血清型の細胞溶解物から過剰な可溶性タンパク質および他の不純物を除去するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
Streptococcus pneumoniaeは、グラム陽性の槍形球菌であり、通常は、対(双球菌)の状態だけでなく、短鎖または単細胞としても見られる。これらの菌は、それらがベータ溶血を示す嫌気性的成長の場合を除き、血液寒天プレート上で光輝性のコロニーを伴って容易に成長してアルファ溶血を示す。これらの菌は、細胞自体の酵素である自己溶解酵素の存在下で、細胞壁を分解できる胆汁塩に対し感受性である。この生物は、耐気性嫌気性菌であり、複雑な栄養要件を有するという点で選好性である。
【0003】
大部分の肺炎球菌血清型の細胞は、各細胞を囲む多糖被覆である莢膜を有する。この莢膜は、ヒトにおける病原性の決定因子である。なぜならば、莢膜は、抗体が細菌細胞に付着することを阻止することにより食作用を妨げるからである。現在90の莢膜血清型が同定されており、23の血清型が侵襲性疾患の約90%の原因である。ワクチンとして、多糖は、発達したまたは損なわれていない免疫系を有する個体においてS.pneumoniaeに対する適度な免疫を付与できる。しかしながら、多糖がCRM197のような高分子量タンパク質と結合され、複数の血清型の結合体を含有するワクチンに処方される場合、そのような結合型ワクチンは、肺炎球菌感染のリスクもまた最も高い乳幼児および高齢者における免疫応答を可能にする。
【0004】
ワクチン製品に利用される各S.pneumoniae血清型についての莢膜多糖は、生物を液体培地中で成長させることにより生産される。この生物の個体数は、多くの場合、種培養バイアルから種培養ボトルにスケールアップされ、生産規模の発酵容量に達するまで、漸増する容量の1つまたは複数の種発酵槽を経て継代される。成長周期の終止は、いくつかの手段の1つにより判定することができ、その時点で、細胞壁破壊と、細胞が定常期に達すると細胞溶解を引き起こす自己溶解酵素の放出とを助ける洗浄剤または他の試薬の添加により、細胞が溶解される。次に、下流の(精製)処理のために溶解物ブロスが採集される。主要な汚染物質は、細胞タンパク質、核酸、およびC−多糖および培地成分である。
【0005】
現在市販されている7−価肺炎球菌結合型(7vPnC)ワクチン(Prevnar(登録商標))、および新しく開発された13−価肺炎球菌結合型(13vPnC)ワクチンについての血清型の大部分について、現在の精製プロセスは、クロマトグラフィーおよび多重膜分離のような、多くの高価で労働集約的で技術的要求の厳しい操作を伴う16のステップを必要とする。S.Pneumoniae多糖のための精製プロセスを改善しようとする以前の試みとしては、例えば、発酵および回収の間のpH操作(特許文献1参照)ならびに溶媒および洗浄剤沈降が含まれた。しかしながら、これらのプロセスにおける不純物の除去は依然として、多くの労働集約的かつ高価なステップにわたっている。タンパク質レベルは、可溶性タンパク質の物理的および化学的特性のため、満たすのが最も問題となる規格である。
【0006】
従って、S.pneumoniae溶解物中の可溶性タンパク質レベルを低減し、現行の精製プロセスの無効力を排除して肺炎球菌結合型ワクチンに組み込むのに適した実質的に精製された莢膜多糖を生産する、単純化された精製プロセスが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許出願公開第2006/0228381号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、Streptococcus pneumoniae細胞溶解物から実質的に精製された莢膜多糖を生産するためのプロセスに関する。このプロセスは、
(a)選択されたStreptococcus pneumoniae血清型を生産する細菌細胞を含む発酵ブロスを提供するステップと、
(b)ステップ(a)における細菌細胞を溶解薬で溶解し、それにより細胞片、可溶性タンパク質、核酸、および多糖を含む細胞溶解物を生産するステップと、
(c)細胞片を除去するために遠心分離または濾過を用いてステップ(b)の細胞溶解物を清澄化し、それにより清澄化された細胞溶解物を生産するステップと、
(d)低分子量不純物を除去し多糖濃度を増大させるためにステップ(c)の清澄化された細胞溶解物を限外濾過およびダイアフィルトレーションし、それにより保持物質を生産するステップと、
(e)タンパク質および核酸を沈降させるためにステップ(d)の保持物質のpHを4.5未満に低下させ、それにより酸性化された保持物質溶液を形成するステップと、
(f)ステップ(e)において形成された酸性化された保持物質溶液を、沈降物の沈降を可能にするのに十分な時間保持し、続いて酸性化された保持物質溶液を濾過または遠心分離し、それにより清澄化された多糖溶液を生産するステップと、
(g)ステップ(f)の清澄化された多糖溶液を、活性炭フィルタを通して濾過するステップと、
(h)ステップ(g)により生産された濾過溶液を限外濾過およびダイアフィルトレーションし、それにより濃縮された精製多糖溶液を生産するステップと、
(i)ステップ(h)により生産された濃縮された精製多糖溶液を、無菌フィルタを用いて濾過するステップと、
を含み、それにより、溶液の形の実質的に精製された莢膜多糖が生産される。本発明のこの実施形態のために選択された代表的な非限定的なS.pneumoniae血清型は、1、4、5、6A、6B、7F、9V、14、18C、19A、19F、および23Fである。特定の実施形態において、ステップ(e)のpHは、約3.5に低下される。別の実施形態において、ステップ(h)のダイアフィルトレーションは、約5.5〜約7.5の間へのpH調節を含む。別の実施形態において、ステップ(h)のダイアフィルトレーションは、約7.0〜約7.5の間へのpH調節を含む。別の実施形態において、ステップ(h)のダイアフィルトレーションは、約7.4へのpH調節を含む。さらに別の実施形態において、ステップ(e)は、ステップ(d)の保持物質から少なくとも98%のタンパク質を除去する。別の実施形態において、ステップ(g)は、ステップ(f)の清澄化された多糖溶液から少なくとも90%のタンパク質を除去する。別の実施形態において、ステップ(g)の活性炭フィルタは、ウッドベースのリン酸−活性炭を含む。別の実施形態において、ステップ(f)は、ステップ(e)において形成された酸性化された保持物質溶液を少なくとも2時間保持するステップを含む。さらに別の実施形態において、ステップ(b)の溶解薬は、デオキシコール酸ナトリウム(DOC)である。別の実施形態において、ステップ(b)の溶解薬は、非動物由来溶解薬である。さらに別の実施形態において、ステップ(b)の溶解薬は、非動物由来溶解薬N−ラウリルサルコシンナトリウム(NLS)である。
【0009】
本発明のプロセスによってStreptococcus pneumoniae細胞溶解物から生産される実質的に精製された莢膜多糖は、肺炎球菌ワクチン、好ましくはタンパク質キャリアと結合された多糖を含有する肺炎球菌ワクチンの製造において用いられ得る。
【0010】
本発明はまた、血清型1、4、5、6A、6B、7F、9V、14、18C、19F、または23Fを含むStreptococcus pneumoniae細胞溶解物から実質的に精製された莢膜多糖を生産するためのプロセスに関する。このプロセスは、
(a)Streptococcus pneumoniae血清型1、4、5、6A、6B、7F、9V、14、18C、19F、または23Fを生産する細菌細胞を含む発酵ブロスを提供するステップと、
(b)ステップ(a)における細菌細胞を溶解薬で溶解し、それにより細胞片、可溶性タンパク質、核酸、および多糖を含む細胞溶解物を生産するステップと、
(c)細胞片を除去するために遠心分離または濾過を用いてステップ(b)の細胞溶解物を清澄化し、それにより清澄化された細胞溶解物を生産するステップと、
(d)低分子量不純物を除去し多糖濃度を増大させるためにステップ(c)の清澄化された細胞溶解物を、室温で中性pHにて、無塩の培地中で限外濾過およびダイアフィルトレーションし、それにより無塩の保持物質を生産するステップと、
(e)タンパク質および核酸を沈降させるためにステップ(d)の無塩の保持物質のpHを4.5未満に低下させ、それにより酸性化された保持物質溶液を形成するステップと、
(f)ステップ(e)において形成された酸性化された保持物質溶液を、沈降物の沈降を可能にするために少なくとも2時間、室温にて保持し、続いて酸性化された保持物質溶液を濾過または遠心分離し、それにより清澄化された多糖溶液を生産するステップと、
(g)ステップ(f)の清澄化された多糖溶液を、活性炭フィルタを通して濾過するステップと、
(h)ステップ(g)により生産された濾過溶液を限外濾過およびダイアフィルトレーションし、それにより濃縮された精製多糖溶液を生産するステップと、
(i)ステップ(h)により生産された濃縮された精製多糖溶液を、無菌フィルタを用いて濾過するステップと、
を含み、それにより溶液の形の血清型1、4、5、6A、6B、7F、9V、14、18C、19F、または23Fを含む実質的に精製された莢膜多糖が生産される。特定の実施形態において、ステップ(e)のpHは、約3.5に低下される。別の実施形態において、ステップ(h)のダイアフィルトレーションは、約5.5〜約7.5の間へのpH調節を含む。別の実施形態において、ステップ(h)のダイアフィルトレーションは、約7.0〜約7.5の間へのpH調節を含む。別の実施形態において、ステップ(h)のダイアフィルトレーションは、約7.4へのpH調節を含む。さらに別の実施形態において、ステップ(e)は、ステップ(d)の無塩の保持物質から少なくとも98%のタンパク質を除去する。別の実施形態において、ステップ(g)は、ステップ(f)の清澄化された多糖溶液から少なくとも90%のタンパク質を除去する。別の実施形態において、ステップ(g)の活性炭フィルタは、ウッドベースのリン酸−活性炭を含む。さらに別の実施形態において、ステップ(b)の溶解薬は、デオキシコール酸ナトリウム(DOC)である。別の実施形態において、ステップ(b)の溶解薬は、非動物由来溶解薬である。さらに別の実施形態において、ステップ(b)の溶解薬は、非動物由来溶解薬N−ラウリルサルコシンナトリウム(NLS)である。
【0011】
本発明はまた、血清型19Aを含むStreptococcus pneumoniae細胞溶解物から実質的に精製された莢膜多糖を生産するためのプロセスに関する。このプロセスは、
(a)Streptococcus pneumoniae血清型19Aを生産する細菌細胞を含む発酵ブロスを提供するステップと、
(b)ステップ(a)における細菌細胞を溶解薬で溶解し、それにより細胞片、可溶性タンパク質、核酸、および多糖を含む細胞溶解物を生産するステップと、
(c)細胞片を除去するために遠心分離または濾過を用いてステップ(b)の細胞溶解物を清澄化し、それにより清澄化された細胞溶解物を生産するステップと、
(d)低分子量不純物を除去し多糖濃度を増大させるためにステップ(c)の清澄化された細胞溶解物を、約4℃でpH約6にて、リン酸ナトリウム緩衝液中で限外濾過およびダイアフィルトレーションし、それにより保持物質を生産するステップと、
(e)タンパク質および核酸を沈降させるためにステップ(d)の保持物質のpHを4.5未満に低下させ、それにより酸性化された保持物質溶液を形成するステップと、
(f)ステップ(e)において形成された酸性化された保持物質溶液を、沈降物の沈降を可能にするため少なくとも2時間、約4℃で保持し、続いて酸性化された保持物質溶液を濾過または遠心分離し、それにより清澄化された多糖溶液を生産するステップと、
(g)ステップ(f)の清澄化された多糖溶液のpHを約6に調節し、それによりpH調節された清澄化された多糖溶液を生産するステップと、
(h)ステップ(g)のpH調節された清澄化された多糖溶液を、活性炭フィルタを通して濾過するステップと、
(i)ステップ(h)により生産された濾過溶液を限外濾過およびダイアフィルトレーションし、それにより濃縮された精製多糖溶液を生産するステップと、
(j)ステップ(i)により生産された濃縮された精製多糖溶液を、無菌フィルタを用いて濾過するステップと、
を含み、それにより溶液の形の血清型19Aを含む実質的に精製された莢膜多糖が生産される。特定の実施形態において、ステップ(e)のpHは、約3.5に低下される。別の実施形態において、ステップ(i)のダイアフィルトレーションは、約5.5〜約7.5の間へのpH調節を含む。別の実施形態において、ステップ(i)のダイアフィルトレーションは、約7.0〜約7.5の間へのpH調節を含む。別の実施形態において、ステップ(i)のダイアフィルトレーションは、約7.4へのpH調節を含む。さらに別の実施形態において、ステップ(e)は、ステップ(d)の保持物質から少なくとも98%のタンパク質を除去する。別の実施形態において、ステップ(h)は、ステップ(g)のpH調節された清澄化された多糖溶液から少なくとも90%のタンパク質を除去する。別の実施形態において、ステップ(h)の活性炭フィルタは、ウッドベースのリン酸−活性炭を含む。別の実施形態において、ステップ(d)のリン酸ナトリウム緩衝液は、25mMリン酸ナトリウムである。さらに別の実施形態において、ステップ(b)の溶解薬は、デオキシコール酸ナトリウム(DOC)である。別の実施形態において、ステップ(b)の溶解薬は、非動物由来溶解薬である。さらに別の実施形態において、ステップ(b)の溶解薬は、非動物由来溶解薬N−ラウリルサルコシンナトリウム(NLS)である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の短縮された精製プロセスを用いた血清型5についての平均インプロセス多糖(PS)収率、タンパク質/PS比率、および核酸(NA)/PS比率を示す。結果は、各精製ステップについて示してある。
【図2】現行の精製プロセス(A)からの血清型4PSについてのNMRスペクトルが短縮された精製プロセス(B)からの血清型4PSと比較して示してある。これら2つのスペクトル間には、著しい違いは全く観察されなかった。両方のスペクトルにおける右から2番目のピークは、ピルベートであり、ピルベート基ピーク高さは、両方のスペクトルにおいて同等であった。
【図3】本発明の短縮された精製プロセスを用いた血清型4についての平均インプロセスPS収率、タンパク質/PS比率、およびNA/PS比率を示す。結果は、各精製ステップについて示してある。
【図4】本発明の短縮された精製プロセスを用いた血清型19Aについての平均インプロセスPS収率、タンパク質/PS比率、およびNA/PS比率を示す。結果は、各精製ステップについて示してある。
【図5】本発明の短縮された精製プロセスを用いた血清型7Fについての平均インプロセスPS収率、タンパク質/PS比率、およびNA/PS比率を示す。結果は、各精製ステップについて示してある。
【図6】本発明の短縮された精製プロセスを用いた血清型6Bについての平均インプロセスPS収率、タンパク質/PS比率、およびNA/PS比率を示す。結果は、各精製ステップについて示してある。
【図7】本発明の短縮された精製プロセスを用いた血清型6Aについての平均インプロセスPS収率、タンパク質/PS比率、およびNA/PS比率を示す。結果は、各精製ステップについて示してある。
【図8】本発明の短縮された精製プロセスを用いた血清型1についての平均インプロセスPS収率、タンパク質/PS比率、およびNA/PS比率を示す。結果は、各精製ステップについて示してある。
【図9】本発明の短縮された精製プロセスを用いた血清型14についての平均インプロセスPS収率、タンパク質/PS比率、およびNA/PS比率を示す。結果は、各精製ステップについて示してある。
【図10】本発明の短縮された精製プロセスを用いて精製された血清型1、4、5、6A、6B、7F、9V、14、18C、19A、および19FについてのPSインプロセス収率の比較を示す。
【図11】本発明の短縮された精製プロセスを用いて精製された血清型1、4、5、6A、6B、7F、9V、14、18C、19A、および19Fについてのタンパク質/PS比率の比較を示す。結果は、各精製ステップについて比較してある。
【図12】本発明の短縮された精製プロセスを用いて精製された血清型1、4、5、6A、6B、7F、9V、14、18C、19A、および19FについてのNA/PS比率の比較を示す。結果は、各精製ステップについて比較してある。
【図13】本発明の短縮された精製プロセスの酸性化ステップに起因するタンパク質除去効率を示す。酸性化前後のタンパク質濃度(SDS−PAGE)の差は、血清型1、4、5、6A、6B、7F、9V、14、18C、19A、および19Fのバッチについての酸性化前の初期タンパク質濃度に対してプロットしてある。初期タンパク質濃度で割ったタンパク質濃度差は、酸性化ステップによるタンパク質除去率を反映した。
【図14】本発明の短縮された精製プロセスの炭素吸着ステップに起因するタンパク質除去効率を示す。除去された(炭素上に吸着された)タンパク質の量を、血清型1、4、5、6A、6B、7F、9V、14、18C、19A、および19Fのバッチについての初期タンパク質負荷量に対してプロットしてある。初期タンパク質負荷量で割った除去されたタンパク質の量は、炭素吸着ステップによるタンパク質除去率を反映した。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、肺炎球菌結合型ワクチンへの組み込みに適した実質的に精製された莢膜多糖を生産するための細胞Streptococcus pneumoniae溶解物中の可溶性タンパク質レベルを低減する短縮された精製プロセスに関する。現在市販されている7−価肺炎球菌結合型(7vPnC)ワクチン(Prevnar(登録商標))、ならびに新しく開発された13−価肺炎球菌結合型(13vPnC)ワクチンについての血清型の大部分について、現在の精製プロセスは、最高16のステップを必要とする。これらのステップは、クロマトグラフィーおよび多重膜分離のような、多くの高価で労働集約的で技術的要求の厳しい操作を伴う。本発明のプロセスは、同じ精製を達成しながらもこれらのステップのうち最高8つを省き、クロマトグラフィーの必要を無くす。従って、本発明は、より安価で、所要時間がより少なく、より少ないステップを伴うより効率的な精製プロセスに関する。
【0014】
本発明の短縮された精製プロセスは、清澄化された細胞S.pneumoniae溶解物ブロスを限外濾過およびダイアフィルトレーションし、続いて濃縮した溶解物ブロスを4.5未満、好ましくは約3.5のpHへ酸性化することにより、多糖収率に重大な影響を及ぼすことなく溶液中タンパク質の少なくとも98%が沈降させられるという発見に関する。pH4.5未満、好ましくはpH約3.5への酸性化の前に、溶解および清澄化された発酵ブロスを限外濾過およびダイアフィルトレーションすることにより、タンパク質の「塩溶」効果が省かれ、「塩析される」タンパク質のフラクション破片が増大される。「塩溶」がタンパク質の増大した溶解度を意味するのに対し、「塩析」は、溶液中のタンパク質がそれらの等電点に達する時のそれらのタンパク質の沈降を意味する。限外濾過およびダイアフィルトレーションステップはまた、炭酸ナトリウム処理したブロスが、pH5.0への酸性化を受ける場合に観察される発泡を防止する(米国特許出願公開第2006/0228381号参照)。従って、清澄化された溶解物ブロスの限外濾過およびダイアフィルトレーションにより、S.pneumoniae血清型発酵時に炭酸ナトリウムのような任意の低分子量pH滴定剤を用いることが可能になり、pH4.5未満へ酸性化される場合の清澄化された溶解物ブロスの発泡が防止される。
【0015】
「清澄化された溶解物ブロス」は、細胞片を除去するために遠心分離または濾過を受けた溶解物ブロスを意味する。
【0016】
「ダイアフィルトレーションする」、「ダイアフィルトレーション」、「DF」、および同様な用語は、例えば、溶液から小さい分子を除去するために適切な物理的および化学的特性を有する半透膜を用いることを意味する。
【0017】
「限外濾過する」、「限外濾過」、「UF」、および同様な用語は、例えば、溶液中の分子を区別し、同様な分子をより小さい容量の溶液へ濃縮するために適切な物理的および化学的特性を有する半透膜を用いることを意味する。
【0018】
本発明の方法の範囲内で、限外濾過およびダイアフィルトレーションは一般に、フィルタ膜の目詰まりを回避するために、「クロスフロー」または「接線フロー」濾過を含む。「クロスフロー」濾過において、濾過される溶液は、膜の表面を通過させられる。膜を通過する物質は、透過物と呼ばれる。膜を通過しない物質は、保持物質と呼ばれる。保持物質は、供給リザーバへリサイクルされて再濾過される。
【0019】
本明細書中で用いられるように、pH4.5未満、特にpH約3.5が達成される限り、限外濾過およびダイアフィルトレーションされた溶解物ブロスのpHを低下するために、任意の酸を用い得る。従って、有機酸および鉱酸双方を本発明の方法の範囲内で用い得る。本明細書中で用いられるように、用語「鉱酸」は、有機酸とは対照的に、化学反応により無機鉱物から誘導された酸を意味する。本発明の方法の範囲内で用いられ得る鉱酸の代表的な非限定的な例としては、塩酸、硝酸、リン酸、および硫酸が含まれる。特定の実施形態において、濃縮された溶解物ブロスのpHは、4.4、4.3、4.2、4.1、4.0、3.9、3.8、3.7、3.6、3.5、3.4、3.3、3.2、3.1、または3.0未満に低下される。他の実施形態において、濃縮された溶解物ブロスのpHは、約4.4、約4.3、約4.2、約4.1、約4.0、約3.9、約3.8、約3.7、約3.6、約3.5、約3.4、約3.3、約3.2、約3.1、約3.0、約2.9、約2.8、約2.7、約2.6、約2.5、約2.4、約2.3、約2.2、約2.1、または約2.0に低下される。
【0020】
本発明の短縮された精製プロセスはまた、上述の濃縮および低pHステップと組み合わせることにより、活性炭を用いた濾過により、多糖収率に重大な影響を及ぼすことなく残留タンパク質の少なくとも90%が沈降させられるという発見に関する。特定の実施形態において、おがくずまたは他の木材製品から誘導されリン酸により活性化された炭素を用いた炭素濾過は、現行の炭素濾過方法の範囲内で用いられる炭素よりも、タンパク質不純物の除去に効果的であることが見出された。
【0021】
従って、本発明は、Streptococcus pneumoniae細胞溶解物から実質的に精製された莢膜多糖を生産するためのプロセスに関し、このプロセスは、
(a)選択されたStreptococcus pneumoniae血清型を生産する細菌細胞を含む発酵ブロスを提供するステップと、
(b)ステップ(a)における細菌細胞を溶解薬で溶解し、それにより細胞片、可溶性タンパク質、核酸、および多糖を含む細胞溶解物を生産するステップと、
(c)細胞片を除去するために遠心分離または濾過を用いてステップ(b)の細胞溶解物を清澄化し、それにより清澄化された細胞溶解物を生産するステップと、
(d)低分子量不純物を除去し多糖濃度を増大させるためにステップ(c)の清澄化された細胞溶解物を限外濾過およびダイアフィルトレーションし、それにより保持物質を生産するステップと、
(e)タンパク質および核酸を沈降させるためにステップ(d)の保持物質のpHを4.5未満、特に3.5に低下させ、それにより酸性化された保持物質溶液を形成するステップと、
(f)ステップ(e)において形成された酸性化された保持物質溶液を、沈降物の沈降を可能にするのに十分な時間、特に少なくとも2時間、撹拌ありまたはなしで保持し、続いて酸性化された保持物質溶液を濾過または遠心分離し、それにより清澄化された多糖溶液を生産するステップと、
(g)ステップ(f)の清澄化された多糖溶液を活性炭フィルタ、特にウッドベースのリン酸−活性炭を通して濾過するステップと、
(h)ステップ(g)により生産された濾過溶液を限外濾過およびダイアフィルトレーションし、それにより濃縮された精製多糖溶液を生産するステップと、
(i)ステップ(h)により生産された濃縮された精製多糖溶液を、無菌フィルタを用いて濾過するステップと、
を含み、それにより、溶液の形の実質的に精製された莢膜多糖が生産される。ステップ(i)の無菌濾過は、濃縮された精製多糖溶液から細菌および粒子を除去するために有用である。本発明のこの実施形態のために選択された代表的な非限定的なS.pneumoniae血清型は、1、4、5、6A、6B、7F、9V、14、18C、19A、19F、および23Fである。特定の実施形態において、ステップ(e)は、ステップ(d)の保持物質から少なくとも98%のタンパク質を除去する。別の実施形態において、ステップ(g)は、ステップ(f)の清澄化された多糖溶液から少なくとも90%のタンパク質を除去する。別の実施形態において、ステップ(h)のダイアフィルトレーションは、約5.5〜約7.5の間へのpH調節を含む。しかしながら、長期保存中の実質的に精製された莢膜多糖の改善された安定性のために、ステップ(h)のダイアフィルトレーションは、約7.0〜約7.5の間への、より具体的には約7.4へのpH調節を含む。
【0022】
本明細書中で用いられるように、用語「実質的に精製された莢膜多糖含有溶解物」または「実質的に精製された莢膜多糖を含有する溶液」は、タンパク質と多糖とのパーセント比率(タンパク質/PS)が、10%未満、9%未満、8%未満、7%未満、6%未満、5%未満、4%未満、3%未満、2%未満、または1%未満および核酸と多糖とのパーセント比率(NA/PS)が、5%未満、4%未満、3%未満、2%未満、または1%未満であるようにタンパク質が除去された細胞Streptococcus pneumoniae溶解物または溶液を意味する。特定の実施形態において、実質的に精製された莢膜多糖含有溶解物または特定の血清型を含む溶液についてのタンパク質/PSおよびNA/PSのパーセント比率は、以下の通りである:血清型1については、タンパク質/PSの比率は2%未満であり、NA/PSの比率は2%未満であり、血清型4については、タンパク質/PSの比率は3%未満であり、NA/PSの比率は2%未満であり、血清型5については、タンパク質/PSの比率は7.5%以下であり、NA/PSの比率は2%以下であり、血清型6Aについては、タンパク質/PSの比率は2%未満であり、NA/PSの比率は2%未満であり、血清型6Bについては、タンパク質/PSの比率は4%未満であり、NA/PSの比率は1%未満であり、血清型7Fについては、タンパク質/PSの比率は5%未満であり、NA/PSの比率は2%未満であり、血清型9Vについては、タンパク質/PSの比率は2%未満であり、NA/PSの比率は1%未満であり、血清型14については、タンパク質/PSの比率は3%未満であり、NA/PSの比率は2%未満であり、血清型18Cについては、タンパク質/PSの比率は2%未満であり、NA/PSの比率は2%未満であり、血清型19Aについては、タンパク質/PSの比率は2%未満であり、NA/PSの比率は2%未満であり、血清型19Fについては、タンパク質/PSの比率は3%未満であり、NA/PSの比率は2%未満であり、血清型23Fについては、タンパク質/PSの比率は2%未満であり、NA/PSの比率は2%未満である。細胞溶解物または溶液中のタンパク質、多糖、および核酸濃度の定量のための方法は、当該技術分野においてよく知られており、例えば、SDS−PAGE(ドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動)分析、HPLC(高速液体クロマトグラフィー)およびSEC(サイズ排除クロマトグラフィー)、修正ローリーアッセイ、分光光度法、SEC−MALLS(サイズ排除クロマトグラフィー/多角度レーザー光散乱)、ならびにNMR(核磁気共鳴)が含まれる。
【0023】
本発明の方法の範囲内で、細菌細胞は、任意の溶解薬を用いて溶解され得る。「溶解薬」は、細胞壁破壊と、細胞溶解を引き起こす自己溶解酵素の放出とを助ける任意の薬剤であり、例えば、洗浄剤が含まれる。本明細書中で用いられるように、用語「洗浄剤」は、細菌細胞の溶解を引き起こすことができる任意の陰イオンまたは陽イオン洗浄剤を意味する。本発明の方法の範囲内で使用するためのそのような洗浄剤の代表的な例としては、デオキシコール酸ナトリウム(DOC)、N−ラウリルサルコシン(NLS)、ケノデオキシコール酸ナトリウム、およびサポニンが含まれる。
【0024】
本発明の1つの実施形態において、細菌細胞を溶解するために用いられる溶解薬は、DOCである。DOCは、胆汁酸デオキシコール酸のナトリウム塩であり、これは、雌ウシまたは雄ウシのような生物学的供給源から一般的に導かれる。DOCは、LytAタンパク質を活性化し、これは、Streptococcus pneumoniaeにおける細胞壁成長および分裂に関与する自己分解酵素である。LytAタンパク質は、そのC−末端部分にコリン結合領域を有し、lytA遺伝子の変異は、DOCによる溶解に対し抵抗力があるLytA突然変異体を生み出すことが知られている。
【0025】
Streptococcus pneumoniae多糖精製時のDOCの使用が健康上のリスクを招くという証拠は皆無であるが、そのような生物学的に誘導された試薬の使用は、潜在的な規制問題を引き起こすかもしれない。従って、本発明の1つの実施形態において、細菌細胞を溶解するために用いられる溶解薬は、非動物由来溶解薬である。本発明の方法の範囲内で使用するための非動物由来溶解薬としては、DOCの作用様式(すなわち、LytA機能に影響を及ぼし、Streptococcus pneumoniae細胞の溶解という結果になる)と同様な作用様式を有する非動物供給源からの薬剤が含まれる。そのような非動物由来溶解薬としては、DOCの類似体、界面活性剤、洗浄剤、およびコリンの構造的類似体が含まれるが、それらに限定されず、以下の実験セクションにおいて記載されるような手順を用いて判定され得る。1つの実施形態において、非動物由来溶解薬は、デカンスルホン酸、tert−オクチルフェノキシポリ(オキシエチレン)エタノール(例えば、Igepal(登録商標)CA−630、CAS#:9002−93−1、Sigma Aldrich,St.Louis,MOより入手可能)、オクチルフェノールエチレンオキシド縮合物(例えば、Triton(登録商標)X−100、Sigma Aldrich,St.Louis,MOより入手可能)、N−ラウリルサルコシンナトリウム(NLS)、ラウリルイミノジプロピオネート、ドデシル硫酸ナトリウム、ケノデオキシコール酸塩、ヒオデオキシコール酸塩、グリコデオキシコール酸塩、タウロデオキシコール酸塩、タウロケノデオキシコール酸塩、およびコール酸塩からなる群より選ばれる。別の実施形態において、非動物由来溶解薬は、NLSである。
【0026】
本発明はまた、上記で記載されたプロセスに対する血清型特異的な修正にも関する。例えば、血清型19A多糖は不安定であり、精製の間にその分子量が変化するため、記載されたプロセスに対する修正が、19A多糖を安定化するのに有用であることが見出された。これらの修正としては、限外濾過およびダイアフィルトレーションステップを、酸性化の前に、約4℃で、約6のpHにてリン酸ナトリウム緩衝液中で実行すること、沈降物の沈降を可能にするために、酸性化された保持物質溶液を約4℃で、少なくとも2時間保持すること、および、活性炭濾過ステップの前に、清澄化された多糖溶液のpHを6に調節することが含まれた。これとは対照的に、血清型1、4、5、6A、6B、7F、9V、14、18C、19F、および23Fについて、酸性化に先立つ限外濾過およびダイアフィルトレーションステップが、水のような無塩の媒質中で実行された場合に、より少ない多糖損失およびより多くのタンパク質除去が達成されることが発見され、このステップは、室温で、中性pHにて実行できたかもしれない。
【0027】
従って、本発明はまた、血清型1、4、5、6A、6B、7F、9V、14、18C、19F、または23Fを含むStreptococcus pneumoniae細胞溶解物から、実質的に精製された莢膜多糖を生産するためのプロセスに関し、このプロセスは、
(a)Streptococcus pneumoniae血清型1、4、5、6A、6B、7F、9V、14、18C、19F、または23Fを生産する細菌細胞を含む発酵ブロスを提供するステップと、
(b)ステップ(a)における細菌細胞を溶解薬で溶解し、それにより細胞片、可溶性タンパク質、核酸、および多糖を含む細胞溶解物を生産するステップと、
(c)細胞片を除去するために遠心分離または濾過を用いてステップ(b)の細胞溶解物を清澄化し、それにより清澄化された細胞溶解物を生産するステップと、
(d)低分子量不純物を除去し多糖濃度を増大させるためにステップ(c)の清澄化された細胞溶解物を、室温で中性pHにて、無塩の培地中で限外濾過およびダイアフィルトレーションし、それにより無塩の保持物質を生産するステップと、
(e)タンパク質および核酸を沈降させるためにステップ(d)の無塩の保持物質のpHを4.5未満、好ましくは約3.5に低下させ、それにより酸性化された保持物質溶液を形成するステップと、
(f)ステップ(e)において形成された酸性化された保持物質溶液を、沈降物の沈降を可能にするために少なくとも2時間、室温にて、撹拌ありまたはなしで保持し、続いて酸性化された保持物質溶液を濾過または遠心分離し、それにより清澄化された多糖溶液を生産するステップと、
(g)ステップ(f)の清澄化された多糖溶液を活性炭フィルタ、特にウッドベースのリン酸−活性炭を通して濾過するステップと、
(h)ステップ(g)により生産された濾過溶液を限外濾過およびダイアフィルトレーションし、それにより濃縮された精製多糖溶液を生産するステップと、
(i)ステップ(h)により生産された濃縮された精製多糖溶液を、無菌フィルタを用いて濾過するステップと、
を含み、それにより溶液の形の血清型1、4、5、6A、6B、7F、9V、14、18C、19F、または23Fを含む実質的に精製された莢膜多糖が生産される。特定の実施形態において、ステップ(e)は、ステップ(d)の無塩の保持物質から少なくとも98%のタンパク質を除去する。別の実施形態において、ステップ(g)は、ステップ(f)の清澄化された多糖溶液から少なくとも90%のタンパク質を除去する。別の実施形態において、ステップ(h)のダイアフィルトレーションは、約5.5〜約7.5の間へのpH調節を含む。しかしながら、長期保存中の実質的に精製された莢膜多糖の改善された安定性のために、ステップ(h)のダイアフィルトレーションは、約7.0〜約7.5の間への、より具体的には約7.4へのpH調節を含む。
【0028】
本発明はまた、血清型19Aを含むStreptococcus pneumoniae細胞溶解物から実質的に精製された莢膜多糖を生産するためのプロセスにも関し、このプロセスは、
(a)Streptococcus pneumoniae血清型19Aを生産する細菌細胞を含む発酵ブロスを提供するステップと、
(b)ステップ(a)における細菌細胞を洗浄剤で溶解し、それにより細胞片、可溶性タンパク質、核酸、および多糖を含む細胞溶解物を生産するステップと、
(c)細胞片を除去するために遠心分離または濾過を用いてステップ(b)の細胞溶解物を清澄化し、それにより清澄化された細胞溶解物を生産するステップと、
(d)低分子量不純物を除去し多糖濃度を増大させるためにステップ(c)の清澄化された細胞溶解物を、約4℃でpH約6にて、25mMリン酸ナトリウムのリン酸ナトリウム緩衝液中で限外濾過およびダイアフィルトレーションし、それにより保持物質を生産するステップと、
(e)タンパク質および核酸を沈降させるためにステップ(d)の保持物質のpHを4.5未満、特に約3.5に低下させ、それにより酸性化された保持物質溶液を形成するステップと、
(f)ステップ(e)において形成された酸性化された保持物質溶液を、沈降物の沈降を可能にするために少なくとも2時間、約4℃で撹拌ありまたはなしで保持し、続いて酸性化された保持物質溶液を濾過または遠心分離し、それにより清澄化された多糖溶液を生産するステップと、
(g)ステップ(f)の清澄化された多糖溶液のpHを約6に調節し、それによりpH調節された清澄化された多糖溶液を生産するステップと、
(h)ステップ(g)のpH調節された清澄化された多糖溶液を活性炭フィルタ、特にウッドベースのリン酸−活性炭を含むフィルタを通して濾過するステップと、
(i)ステップ(h)により生産された濾過溶液を限外濾過およびダイアフィルトレーションし、それにより濃縮された精製多糖溶液を生産するステップと、
(j)ステップ(i)により生産された濃縮された精製多糖溶液を、無菌フィルタを用いて濾過するステップと、
を含み、それにより溶液の形の血清型19Aを含む実質的に精製された莢膜多糖が生産される。特定の実施形態において、ステップ(e)は、ステップ(d)の保持物質から少なくとも98%のタンパク質を除去する。別の実施形態において、ステップ(h)は、ステップ(g)のpH調節された清澄化された多糖溶液から少なくとも90%のタンパク質を除去する。別の実施形態において、ステップ(i)のダイアフィルトレーションは、約5.5〜約7.5の間へのpH調節を含む。しかしながら、長期保存中の実質的に精製された19A多糖の改善された安定性のために、ステップ(i)のダイアフィルトレーションは、約7.0〜約7.5の間への、より具体的には約7.4へのpH調節を含む。
【0029】
以下の実施例は、例示のために提示されており、限定のためではない。
【実施例】
【0030】
実験
以下の実施例は、本発明の改善されたプロセスを用いて10Lスケールで精製したS.pneumoniae多糖血清型1、4、5、6A、6B、7F、9V、14、18C、19A、および19Fについての結果を提示し、結果を現行の精製プロセスの結果と比較する。
【0031】
(実施例1)
S.pneumoniae多糖血清型1、4、5、6A、6B、7F、14、および19Aのための短縮された精製プロセス
デオキシコール酸ナトリウム(DOC)により溶解したS.pneumoniae発酵ブロスを、それらの採取後2日間以内に得るか、4℃で保存して翌週のうちに処理した。以下に記載されるように、本発明の精製プロセスは、現行の精製プロセスと比較して以下の変更を含んでいた:1)酸性化ステップを、冒頭から最初の限外濾過/ダイアフィルトレーション1)(UF/DF)ステップ後に移動し、pHを、5ではなく3.5に調節した;2)ダイアフィルトレーション緩衝液を、0.025Mリン酸塩から脱イオン(DI)水に変更し;3)炭素吸着を、ウッドベースのリン酸活性炭を用いる2 CUNO R32SPカーボンディスク(CUNO Inc.,Wayne,NJ)に変更し、吸着時間を4ターンオーバーから12ターンオーバーへ延長した(各ターンオーバーは22分間であった)、4)約5回ダイアフィルトレーションする場合、最後の30Kダイアフィルトレーションステップの間、pHを7.4に調節した。同じ精製手順を、血清型1、4、5、6A、6B、または7Fに適用した。血清型19Aについては、ステップをさらに修正し、精製は、以下に記載されるように冷気室中で実施した。
【0032】
精製ステップ
プロセスを冷気室中で4℃にて実施した型19Aを除き、すべてのステップは室温で実施した。
【0033】
溶解物の清澄化:このステップの目的は、細胞片を除去し、ブロスを清澄化することであった。これは、遠心分離か、濾過によって達成された。ブロスを、10,000gで30分間またはブロスが清澄になるまで20℃(型19Aについては4℃)で遠心分離するか、Celpure(登録商標)濾過助剤(Advanced Minerals,Santa Barbara,CA)を添加してMillipore Prefilter(Millipore Corp.,Billerica,MA)を用いて濾過した。清澄化された溶解物をさらなる処理のために収集し、ペレットを廃棄した。
【0034】
第1のUF/DF(限外濾過/ダイアフィルトレーション):このステップにより、容積減少および緩衝液交換が提供され、また低分子量不純物が除去された。清澄化された溶解物を、元の容積の約1/8に濃縮した。ダイアフィルトレーションは、約10容量のDI水(19Aについては、pH6、25mMリン酸塩)を用いて実行した。
【0035】
酸性化:98%以上のタンパク質がこのステップにおいて除去された。撹拌している間、濃縮リン酸を保持物質に慎重に添加した。保持物質のpHを、pH3.5の目標値に調節した。酸性化された保持物質を30分間撹拌し、室温で一晩(19Aについては4℃で2時間)熟成させ、タンパク質および核酸の沈降という結果になった。
【0036】
酸性化された保持物質の清澄化:これは、酸性化後に沈澱物を除去する清澄化ステップであった。酸性化された溶液のスラリーを、ローター中で10,000rpmで(17,000相対遠心力またはRCF)20℃で1時間遠心分離した(6Bを除く。この場合、遠心分離は、37℃で6時間であった)。上清を収集し、ペレットを廃棄した。Celpure(登録商標)濾過助剤(Advanced Minerals,Santa Barbara,CA)を添加したMillipore Prefilter(Millipore Corp.,Billerica,MA)によるデプスフィルトレーションもこのステップ用に用いることができる。
【0037】
炭素吸着:ほとんどの場合、酸性化された100K保持物質の遠心分離後にわずかな黄色が見られた。色の除去は、ウッドベースのリン酸−活性炭を用いた炭素吸着により達成された。このステップにより、酸性化後に残る残留タンパク質も除去された。清澄化された多糖溶液を、炭素フィルタを通して5〜6時間または一晩再循環した(19Aについては、pHは、炭素吸着前に6に調節した)。
【0038】
最終30K UF/DF:これは、溶液を>2g/Lの最終多糖(PS)濃度に濃縮するための別の濃縮および緩衝液交換ステップであり、これを脱イオン(DI)水へダイアフィルトレーションした。炭素濾過したPS溶液を濃縮した。次に、濃縮物を、DI水で10×ダイアフィルトレーションした。pHは、ダイアフィルトレーションの間、7.4に調節した。
【0039】
最終0.2μm無菌濾過:最終PS溶液は、0.22μmフィルタまたは無菌使い捨てフィルタユニットにより無菌濾過し、4℃冷蔵庫中で保存した。
【0040】
分析方法
タンパク質、PS、および核酸濃度の定量は、SDS−PAGE(ドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動)分析、HPLC(高速液体クロマトグラフィー)およびSEC(サイズ排除クロマトグラフィー)、修正ローリーアッセイ、分光光度法、SEC−MALLS(サイズ排除クロマトグラフィー/多角度レーザー光散乱)、ならびにNMR(核磁気共鳴)を含む、当該技術分野においてよく知られた方法を用いて実行した。
【0041】
結果および考察
型5短縮精製バッチ:型5についての、短縮されたプロセスを用いた3つ精製バッチの最終PS収率、PS分子量および主要不純物レベルの比較ならびに現行のプロセスを用いたそれらの比較が表1に示してある。すべての開始ブロスは、DOC溶解高細胞密度発酵バッチであり、これらの多糖濃度(約0.5g/L)は、標準SOP発酵ブロスの多糖濃度(約0.3g/L)よりも高かった。30Kまたは50K膜を、第1のUF/DFステップに用いた。不純物レベルは、不純物/PS比率を用いて計算した。同じ方法を、本明細書中に記載されるすべての他の血清型について用いた。
【0042】
【表1】
表1のデータが示すように、短縮精製プロセスを用いる3つのバッチ全てのタンパク質比率は、≦7.5%の規格を満たし、また、現行プロセスのタンパク質比率に匹敵した。核酸(NA)ならびにC−多糖(C−PS)比率も、それぞれ≦2.0%および≦35%の規格を十分下回るものであり、現行プロセスのそれらの比率に匹敵した。表1に示される3つのバッチの最終PS収率および不純物レベルの結果は、短縮プロセスの再現性および堅牢性を実証している。
【0043】
多糖が3.5のより低いpHにおいて加水分解されるかどうかについて若干の懸念があった。従って、精製プロセス時のPS保持時間変化を監視し、最終精製PSの分子量を測定した。HPLCクロマトグラムからは、血清型5PS保持時間の著しい変化は全く観察されなかった。短縮プロセスによる精製PSの分子量および現行プロセスによる精製PSの分子量(284kg/mol)にも、MALLS測定に基づき、著しい違いは全くなかった。従って、精製PSの分子量は、短縮精製プロセスにより悪影響を受けなかったと結論づけられた。
【0044】
3つの短縮プロセスバッチについて処理ステップの各々におけるインプロセス多糖収率、タンパク質/多糖比率および核酸/多糖比率が表2にまとめてある。
【0045】
【表2】
どのような精製プロセスの各ステップの間にも、生成物の損失が常にある。これらの3つの短縮プロセスバッチについて、PS損失はほとんど、第1のUF/DFステップおよび酸性化ステップにおいて生じた。第1のUF/DFステップにおけるPSの損失は、膜表面へのPSまたはPS−タンパク質複合体の吸着に起因するものであった。この損失は、ダイアフィルトレーション後にDI水で膜の保持物質側をすすぎ、そのすすぎ液を元の保持物質と合わせることにより最小限になった。酸性化ステップにおけるPSの損失は、2つの理由に起因している可能性がある。すなわち、沈降固体へのPSの物理的吸着、および酸性化時の共沈に伴うタンパク質への多糖結合である。この第2の可能性をさらに調べたところ、結果はPS/タンパク質結合の証拠を示した。
【0046】
図1は、各精製ステップにおけるタンパク質/PS比率の減少を示す。遠心分離ステップによりタンパク質がわずかに除去されたが、大部分のタンパク質は、酸性化ステップで除去された。タンパク質力価が最も高いバッチについてさえ、pH3.5処置後には、痕跡量のタンパク質しか検出されなかった。
【0047】
タンパク質/PS比率と同様、核酸/PS比率は、バッチ間の不純物レベルのばらつきを示した。30/50KUF/DFステップは、同じ処理ステップにおけるタンパク質除去と比較して、著しい量の核酸を除去した。理論によって拘束されていないが、これは、核酸の分子サイズがタンパク質のサイズよりも小さく、それによって核酸が30/50KUF/DFステップを介して比較的容易に除去されることに起因していたのかもしれない。第1の遠心分離および酸性化ステップも、かなりの量の核酸を除去した。
【0048】
表2は、活性炭吸着ステップもタンパク質/PSおよびNA/PSレベルを低減することを示している。百分率減少は、最初の2つのステップほど著しくはなかったが、このステップは、溶液の色を除去するために重要であり、不純物レベルが規格を満たすことを確実にした。
【0049】
型4短縮精製バッチ:型4についての3つの短縮精製バッチの概略が表3に示してある。3つのバッチすべてについての供給ブロスは、DOC−溶解した。
【0050】
【表3】
型4PS収率も50〜60%の間であった。タンパク質/PS比率および核酸/PS比率は、十分それらの規格内であった。C−PS比率はまた、十分規格内であった。3つのバッチすべての分子量は、約300kg/モル近辺であった。同様な発酵ブロスを用いる現行の精製プロセスによって精製された血清型4PSも、より低い分子量285kg/モルをもたらした。発酵ブロスおよび最終精製溶液からのPSのHPLCクロマトグラフの比較により、PS保持時間に差が全くないことが示された。このことは、分子量の差は、プロセス変更によって引き起こされたのではなく、むしろ発酵プロセスの固有の性質に起因することを示唆している。
【0051】
型4PSは、精製された分子中にピルベート基を含んでおり、このピルベート基は、肺炎球菌結合型ワクチンにおいて使用するための結合に重要であった。ピルベート基量が酸処理により悪影響を受けないことを保証するため、NMR分析を実施した。図2は、標準の型4PSおよびバッチL29276−47から型4PSについてのNMRスペクトルを示す。2つのスペクトルの間に著しい違いは全く観察されなかった。両方のスペクトルおいて右から2番目のピークはピルベート基であり、ピルベート基ピーク高さは、両方のスペクトルにおいて同等であった。3つの短縮されたプロセスバッチすべてについてのピルベート基比率は、0.8モル/モルであり、>0.7モル/モルの規格を満たした。
【0052】
3つの型4バッチについてのインプロセスPS収率、タンパク質/PSおよびNA/PS比率の概要が表4に示してある。PS損失はほとんど、第1の遠心分離、酸性化および活性炭吸着ステップで生じ、それぞれ平均が10%、8%および20%であった。全体のPS収率は、型5のPS収率、約55%に近かった。
【0053】
【表4】
図3は、表4の3つのバッチについての精製ステップの各々における平均PS収率、タンパク質/PSおよびNA/PS比率変化を示す。タンパク質除去は、予想されるように大部分が酸性化ステップにおいて生じた。第1の遠心分離およびUF/DFステップも、ある一定量のタンパク質を集合的に除去したが、タンパク質減少は、酸性化ステップよりも少なかった。
【0054】
型5と同様に、大部分の核酸/PS比率減少は、50/100K UF/DF、第1の遠心分離、および酸性化ステップにおいて生じ、第1のUF/DFステップにおけるNA減少は、タンパク質の減少よりも著しかった。また、図3に示されるように、活性炭ステップは、ある一定量のタンパク質およびNAを除去し、不純物レベルを規格以下にした。活性炭ステップは、溶液の色も除去した。
【0055】
型19A短縮精製バッチ:型19A多糖は不安定であり、分子量は精製の間に変化する。短縮された精製プロセスは、19A多糖を安定化するために若干修正された。これらの修正は以下の通り要約される:1)精製ステップは、大部分を冷気室中で4℃にて実施し;2)第1の100Kダイアフィルトレーションを、室温水を用いる代わりにpH6の25mMリン酸塩緩衝液(4℃)を用いて冷却し;3)酸性化保持時間を、一晩から2時間に低減し;4)酸性化された100K保持物質を清澄化した後、pHを6に調節し、活性炭吸着をpH3.5ではなくpH6で実施した。
【0056】
短縮された精製プロセスによって精製された2つの19Aバッチの結果が、表5に示してある。
【0057】
【表5】
2つの短縮された精製バッチのPS収率は、それぞれ62および76%であった。最終タンパク質/PS比率、核酸比率、およびC−PS比率はすべて、それらのそれぞれの規格を満たした。2つのバッチからの多糖の最終の分子量は、それぞれ525kg/モルおよび488kg/モルであり、フェーズIII臨床試験において用いられる19AのPSの分子量(486kg/モル)に近かった。
【0058】
2つのバッチについてのタンパク質/PS比率は両方とも<2%の規格を満たした。2つのバッチのNAおよびC−PS比率は両方とも、十分それらの規格内であった。
【0059】
精製ステップの各々におけるPS収率、タンパク質およびNA減少が、表6および図4に示してある。結果は、第1の遠心分離ステップを除き、精製ステップの各々におけるPS損失を示した。血清型5および4のように、タンパク質およびNA除去は、ほとんど最初の3つのステップにおいて起こり、酸性化後には、どのような検出可能なタンパク質およびNAもほとんど残っていなかった。ことによると酸性化後の非常に低いタンパク質およびNA濃度のため、活性炭吸着ステップは著しい量のタンパク質およびNAを除去しなかったが、このステップは、色除去のために依然として必要とされた。
【0060】
【表6】
型7F短縮精製バッチ:型7Fは、非イオン多糖であり、上記の血清型と比較して、現行のプロセスを用いた精製の間に段階的変化を一般に必要とする。しかしながら、本発明の短縮された精製プロセスは、プロセス変更を必要することなく血清型7Fにうまく適用された。型7Fブロスの2つのバッチは、短縮されたプロセスを用いて精製された。1つは標準発酵ブロス(L29276−107)であり、1つは高細胞密度ブロス(L29276−157)であった。2つのバッチの結果の概要が表7に示してある。
【0061】
【表7】
型7FのPS収率は実際には、ことによると帯電したタンパク質分子への非イオンポリマーの結合がより少ないため、他の血清型よりも高かった。最終タンパク質、NAおよびC−PS比率はすべて、十分それらの規格内であった。型7Fの分子量は、標準バッチの分子量と同等であり、たとえ7F分子量が相当高かったとしても、非イオンポリマーの排除体積がより少ないため、PS溶液はあまり粘性を帯びていなかった。
【0062】
精製ステップの各々における型7FPS収率、タンパク質およびNA比率が表8に示してあり、2つのバッチの平均が図5においてプロットしてある。
【0063】
【表8】
各精製ステップにおいていくらかの型7FPS損失があった。全体的に、PS損失は、血清型5および4のPS損失より小さかった。タンパク質およびNA比率減少は大部分が、第1の遠心分離、100K UF/DF、および酸性化ステップによるものであった。他の血清型と同様、100K UF/DFは、NAの除去においてタンパク質よりも効率的であった。活性炭吸着ステップは、酸性化後の非常に低い不純物レベルのため、著しい量のタンパク質およびNAを除去しなかったが、このステップは色除去のために依然として必要であった。
【0064】
型6B短縮精製バッチ:6Bの2つのバッチを、短縮精製プロセスを用いて精製した。酸性化した100K保持物質の清澄化が、他の血清型よりも長い時間(1時間の代わりに6時間)を必要とすることが判明した。この差を除いて、精製プロセスは、血清型のそれと同様であった。2つのバッチの結果の概要が表9に示してある。
【0065】
【表9】
すべての不純物レベル(タンパク質、NA、およびC−PS)は、十分それらの規格内であった。PS収率は比較的高く、他の血清型と比較して、タンパク質およびNA比率も同じであった。
【0066】
精製ステップの各々におけるインプロセスPS収率、タンパク質およびNA比率が、表10および図6に示してある。
【0067】
【表10】
19Aと同様、PS損失は、PSの若干の増加があった第1の遠心分離ステップを除き、精製ステップの各々において生じた。タンパク質およびNAの除去は大部分、第1の遠心分離、第1の100K UF/DFおよび酸性化ステップにより達成された。しかしながら、活性炭吸着ステップにおいてタンパク質およびNA比率のいくらかの減少があった。
【0068】
型6A短縮精製バッチ:型6Aの2つのバッチを、短縮精製プロセスを用いて精製した。最終溶液のPS収率、不純物レベルおよび分子量の概要が表11に示してある。
【0069】
【表11】
2つの6Aバッチの最終PS収率は、両方とも>70%であり、これは、短縮プロセスを用いて処理した血清型の間で最も高かった。タンパク質、NA、およびC−PS比率はすべて、規格内であった。
【0070】
表12および図7は、精製ステップの各々におけるインプロセスPS収率、タンパク質およびNA比率変化を示す。第1の遠心分離および100K UF/DFステップにおいてPSのどのような損失もほとんどなかった。約10−15%PS損失が、酸性化および活性炭吸着ステップにおいて生じ、これは他の血清型のPS損失と近かった。大部分のタンパク質およびNA比率減少は、第1の遠心分離、100K UF/DF、および酸性化によるものであった。酸性化後、タンパク質およびNA比率は両方とも、すでにそれらの規格より下にあった。タンパク質については、酸性化が最も効率的なステップであったのに対し、NAについては、100K UF/DFがNA/PS比率を最も多く低減した。活性炭吸着ステップは、酸性化後の非常に低い不純物レベルのため、著しい量のタンパク質およびNAを除去しなかったが、このステップは色除去のために依然として必要であった。
【0071】
【表12】
型1短縮精製バッチ:短縮プロセスによって精製された型1の2つのバッチの概要が表13に示してある。バッチL29276−170は、高細胞密度発酵ブロスから精製し、L29276−173は、標準発酵ブロスから精製した。
【0072】
【表13】
両方のバッチのPS収率は約50%であり、タンパク質、NAおよびC−PSについての不純物レベルはすべて、それらの規格内にあった。
【0073】
精製ステップの各々の後におけるインプロセスPS収率、タンパク質およびNA比率が、表14および図8に示してある。傾向は、精製された他の血清型と同様であった。PS損失は大部分、酸性化および活性炭吸着ステップにおいて生じ、大部分のタンパク質およびNA除去は、最初の3つのステップにおいて生じた。タンパク質よりも多くのNAが100K UF/DFステップにおいて除去された。活性炭吸着ステップは、酸性化後の非常に低い不純物レベルのため、著しい量のタンパクおよびNAを除去しなかったが、このステップは、色除去のために依然として必要であった。
【0074】
【表14】
型14短縮精製バッチ:血清型14の2つバッチを、プロセス変更なしで、短縮精製プロセスを用いて精製した。最終PS収率および不純物レベルの概要が表15に示してある。
【0075】
【表15】
血清型7Fと同様、血清型14は非イオン多糖であり、その現行の精製プロセスは、他の血清型と若干異なる。しかしながら、本発明の短縮精製プロセスは、そのような付加的ステップの必要なしで、血清型14にうまく適用された。2つの短縮精製プロセスバッチのPS収率は、50〜60%であり、タンパク質およびNA比率は、それらの規格内にあった。精製されたPSの分子量も、規格を満たした。
【0076】
インプロセスPS収率、タンパク質およびNA比率の概要が、表16および図9に示してある。PS損失、タンパク質およびNA除去の同様な傾向が、上述の他の試験された血清型について観察された。
【0077】
【表16】
(実施例2)
種々の血清型の比較(血清型1、4、5、6A、6B、7F、9V、14、18C、19A、および19F)
本発明の短縮精製プロセスを用いた種々の血清型の精製を比較するために、実施例1において記載されたすべての血清型に加え血清型9V、18C、および19FについてのPS除去を、図10の1つのグラフにおいてプロットした。大部分の血清型は、精製ステップの各々においてPS損失と同様な傾向をたどった。第1の遠心分離ステップにおける型6Bおよび酸性化ステップにおける型14について、PS収率の増大があった。PS百分率損失は、血清型ごとに変化した。型5は、酸性化ステップにおいてほとんどのPSを失い、型4は、活性炭吸着ステップにおいてPSを失った。
【0078】
血清型の各々についての各精製ステップについてのタンパク質/PS比率が、図11に示してある。この図は、種々の血清型についての初期タンパク質/PS比率に差があることを示しており、型1、4、5、9V、19F、および18Cは、最も高い初期タンパク質/PS比率を有する。たとえタンパク質/PS比率が型1、4、5、9V、19F、および18Cについて、第1のUF/DFステップの後でさえも他の血清型と比較してずっと高くても、酸性化ステップは、タンパク質/PS比率を大きく低減し、タンパク質はこのステップ後にあまり残らなかった。
【0079】
図12に示されるように、NA/PS比率も、血清型ごとに変わった。型1および5が最も高いNA/PS比率を有しており、続いて型18Cおよび4であった。第1の遠心分離およびUF/DFステップは、これらの血清型について著しい量のNAを除去し、型1が最も効率的であるように思われた。酸性化ステップ後には、NAはほとんど残っていなかった。
【0080】
(実施例3)
酸性化および活性炭吸着ステップ効率分析(血清型1、4、5、6A、6B、7F、9V、14、18C、19A、および19F)
PnC多糖の精製にとり、最も重要かつ除去が困難な不純物はタンパク質である。短縮プロセスの不純物除去効率をより理解するために、2つの主要な精製ステップである酸性化および活性炭吸着をタンパク質除去について分析した。酸性化ステップについて、酸性化の前および後におけるタンパク質濃度(SDS−PAGE)の差を、本発明の短縮精製プロセスを用いた血清型1、4、5、6A、6B、7F、9V、14、18C、19A、および19Fについての酸性化間の初期タンパク質濃度に対してプロットした(図13)。
【0081】
酸性化ステップの前および後の溶液体積の比較的小さい変化のため、初期タンパク質濃度で割ったタンパク質濃度差は、酸性化ステップによるタンパク質除去レートを反映した。図13は、初期タンパク質濃度(SDS−PAGEアッセイによる)に対するタンパク質濃度差の直線的適合度の勾配を示す。非常に良好な直線関係が、タンパク質濃度変化と初期濃度の間に観察され、R2は1に近かった。勾配は0.9876であり、これは98.76%タンパク質除去に相当する(溶液体積変化は無視できるものと想定する)。従って、調べたすべての血清型について、酸性化ステップは非常に効率的であり、平均して酸性化ステップは、98%以上のタンパク質を除去した。
【0082】
酸性化ステップと同様、活性炭吸着ステップの効率も、除去された(炭素に吸着された)タンパク質の量を初期タンパク質負荷に対してプロットすることにより評価した(図14)。R2(0.9723)は、酸性化ステップの場合ほど高くはなかったが、除去されたタンパク質と初期タンパク質負荷との間に良好な直線関係が観察された。この直線的適合度の勾配は、タンパク質除去レートに対応するので、活性炭吸着ステップは、93.87%タンパク質除去をもたらした。
【0083】
酸性化および活性炭吸着ステップの分析に基づき、これら2つのステップ後には、約0.1%のタンパク質しか溶液中に残されなかった。
【0084】
実施例1〜3についての結論
短縮精製プロセスは、S.pneumoniaeの莢膜多糖のための現行の精製プロセスに取って代わるために開発された。この短縮精製プロセスは、わずかな変更と共に、血清型1、4、5、6A、6B、7F、9V、14、18C、19F、および19Aに直接適用された。プロセスは、DOC−溶解した発酵ブロスを用いて、10Lスケールで実施した。タンパク質/PS、NA/PSおよびC−PS/PS比率を含む不純物レベルはすべて、それらの規格を満たした。PS収率は50%以上であり、現行の精製プロセスのPS収率に匹敵した。インプロセスPS収率、タンパク質/PSおよびNA/PS比率は、種々の血清型の挙動を比較するためにプロットした。血清型1、5、9V、19F、および18Cは、100K UF/DFステップの前および後のタンパク質/PS比率に基づいて、精製が最も困難であることが判明した。
【0085】
ステップ分析は、酸性化および活性炭吸着ステップが、それぞれ98%以上および90%以上のタンパク質を除去した(SDS−PAGEにより測定)ことを示した。
【0086】
(実施例4)
多糖生産におけるデオキシコール酸ナトリウムの非動物由来溶解薬による代替
この実施例は、実質的に精製された莢膜Streptococcus pneumoniae多糖の生産について上述されたプロセス内において、非動物由来溶解薬がデオキシコール酸ナトリウム(DOC)の代替物として使用できるかどうかを調べた。上記のように、DOCは、Streptococcus pneumoniaeにおける細胞壁成長および分割に関与する自己分解酵素であるLytAタンパク質を活性化する。LytAタンパク質は、そのC末端部分にコリン結合ドメインを有し、lytA遺伝子の変異は、DOCによる溶解に対し抵抗性のあるLytA突然変異体を生み出すことが知られている。
【0087】
DOCの機序と同様な機序により細胞溶解を引き起こす化合物を同定するために、ラピッドマイクロタイタープレートアッセイが開発された。Streptococcus pneumoniae細胞の死滅および多糖の放出においてDOCと同等に効果的な、DOCに対するいくつかの非動物由来代替物が同定された。標準条件を用いた処理後、非動物由来化合物で生産された多糖のサイズおよび純度は、DOCで生産された多糖のサイズおよび純度と同一であった。
【0088】
方法
細胞溶解:試験される化合物を、0.1〜0.01%(v/v)の最終濃度で発酵ブロスに添加し、溶液を、37℃で1時間インキュベートさせた。次に溶液を、2〜8℃で一晩保存した。翌朝、溶液を遠心分離してすべての細胞片を除去した。細胞を含まないブロスをSEC−HPLCにより分析し、放出された多糖の濃度を決定した。溶解は、2〜37℃の間の任意の温度で、好ましくは6.0〜7.5のpH範囲で実行できたであろう。洗浄剤の濃度は一般に、個別の洗浄剤によって0.05〜0.2%の間であった。
【0089】
マイクロタイターアッセイ:種々の洗浄剤または界面活性剤による肺炎球菌のlytA−依存溶解を試験するために、ラピッドマイクロタイタープレートアッセイが考案された。S.pneumoniaeの同質遺伝子型株の2つの対をこのアッセイにおいて用いた;各対の一方がlytA遺伝子の野生型であるのに対し、他方の株は、lytA遺伝子中に欠失を有していた 従って、もし溶解が活性lytA機能に依存すれば、その洗浄剤は、突然変異株を溶解しないであろう。4つの株、すなわちR6X、R6X ΔlytA、D39、およびD39 ΔlytAを、HySoy培地中でほぼ対数増殖中期(OD600約0.2〜0.8;OD600=600nmにおける光学密度)まで培養した。次に細胞を遠心分離し、細胞ペレットをHySoy培地中に再懸濁させた。マイクロタイタープレートの各ウェルに、100μLの細胞懸濁液を、対照としての10μLの洗浄剤保存液または水と共に、添加した。36℃で約15分後、試料のOD600をSpectramax(登録商標)分光光度計(Molecular Devices,Sunnyvale,CA)で測定した。以下の結果は、新たに調製された細胞または凍結および解凍された細胞について観察された:DOC、ドデシル硫酸ナトリウム、Triton(登録商標)X−100およびN−ラウリルサルコシンにさらされた野生型細胞はすべて、培地ブランクと同等のOD値を持っており、これはlysisが生じていたことを示す。他方で、ΔlytA細胞は、これらの洗浄剤の存在下では溶解せず、これは、これらの洗浄剤が細胞を溶解するためにLytA機能が必要とされることを示す。
【0090】
比較分析研究に用いられるPSの単離:培養物を、10Lバイオリアクター中のHy−Soy培地中で成長させた。pHは、NaOHまたはNa2CO3を用いて約7.0に制御した。成長の終わりに(光学密度のさらなる増加が全く示されない)、培養物を0.12%DOCか0.1%NLSで処理した。培養物を、12〜16時間インキュベートした。細胞死滅の有効性は、処理したブロスの試料をTSA−血液寒天プレートに塗布することによって確認した。多糖は、(上記のように)清澄化された溶解物から標準手順を用いて精製した。精製多糖を、物質の純度および同一性を決定するのに適した各種の標準分析手法を用いて検査した。
【0091】
溶解物のPS含有量を、屈折率(RI)検出器に結合されたSEC−HPLCを用いて決定した。
【0092】
血清型1および6Bを用いた非動物由来溶解薬のスクリーニング
S.pneumoniae血清型1および6Bを、Hy−Soyベースの培地中で別個に成長させた。培養物を、別個に収集し、試験管中に別個に分配した。DOCに匹敵する溶解活性についてスクリーニングされる非動物由来化合物をストック溶液として(適切な溶媒中に)調製し、培養物に添加した。一晩インキュベートした後、試験管を遠心分離し、各血清型について溶解物のPS含有量をSEC−HPLCにより決定し、DOCと比較した。
【0093】
lytA突然変異体を用いた非動物由来溶解薬のスクリーニング
lytA変異を含有する株の同質遺伝子的対を、Hy−Soyベースの培地中で成長させた。細胞を収集し、マイクロタイタープレートのウェル中に分配した。試験化合物を添加し、培養物をインキュベートした。36℃で15分間の後、各ウェルの光学密度(OD600)を、SpectraMax(登録商標)プレートリーダー(Molecular Devices,Sunnyvale,CA)を用いて決定した(表17および18を参照されたい。これらの表は、代表的化合物についての2つの別個な試験の結果の概要を示す)。
【0094】
【表17】
【0095】
【表18】
上記のスクリーニング研究に基づき、DOCに取って代わる以下の非動物由来溶解薬が同定された:デカンスルホン酸、Igepal(登録商標)CA−630(tert−オクチルフェノキシポリ(オキシエチレン)エタノール;CAS#:9002−93−1;Sigma Aldrich,St.Louis,MOより入手可能)、N−ラウリルサルコシンナトリウム(NLS)、ラウリルイミノジプロピオネート、ドデシル硫酸ナトリウム、Triton(登録商標)X−100、ケノデオキシコール酸塩、ヒオデオキシコール酸塩、グリコデオキシコール酸塩、タウロデオキシコール酸塩、タウロケノデオキシコール酸塩、およびコール酸塩。
【0096】
NLS−溶解PSとDOC−溶解PSとの比較
S.pneumoniae多糖血清型1、4、5、6A、6B、および7Fを、実施例1および2において上述されたように10Lスケールで、本発明の改善されたプロセスを用いて精製した。しかしながら、一方のグループではNLS(0.1%)を溶解薬として用いたのに対し、他方のグループでは、DOC(0.12%)を溶解薬として用いた。
【0097】
PS収率、タンパク質/PS比率、NA/PS比率、およびPS分子量を、上記のように測定し、結果の概要を表19に示す。これらの結果は、本発明の精製方法における溶解薬としてのNLSの使用が、比較的高いPS収率を、比較的低いタンパク質および核酸レベルと共にもたらすことを示した。実際、試験した血清型の大多数について、溶解薬としてのNLSの使用は、DOCの使用と比較して、より高いPS収率をもたらした。
【0098】
【表19】
本明細書中で言及されたすべての刊行物および特許出願は、本発明が属する当業者の水準を示すものである。すべての刊行物および特許出願は、あたかも各個別の刊行物または特許出願が、具体的かつ個別的に参照により組み込まれるように、参照により本明細書中に組み込まれる。
【0099】
上記の発明は、理解を明瞭にする目的のため、例示および実施例によりある程度詳細に説明されてきたが、一定の変更および修正が、特許請求の範囲内で実施され得ることは明らかであろう。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
Streptococcus pneumoniae細胞溶解物から実質的に精製された莢膜多糖を生産するためのプロセスであって、
(a)選択されたStreptococcus pneumoniae血清型を生産する細菌細胞を含む発酵ブロスを提供するステップと、
(b)ステップ(a)における前記細菌細胞を溶解薬で溶解し、それにより細胞片、可溶性タンパク質、核酸、および多糖を含む細胞溶解物を生産するステップと、
(c)細胞片を除去するために遠心分離または濾過を用いてステップ(b)の前記細胞溶解物を清澄化し、それにより清澄化された細胞溶解物を生産するステップと、
(d)低分子量不純物を除去し多糖濃度を増大させるためにステップ(c)の前記清澄化された細胞溶解物を限外濾過およびダイアフィルトレーションし、それにより保持物質を生産するステップと、
(e)タンパク質および核酸を沈降させるためにステップ(d)の前記保持物質のpHを4.5未満に低下させ、それにより酸性化された保持物質溶液を形成するステップと、
(f)ステップ(e)において形成された前記酸性化された保持物質溶液を、沈降物の沈降を可能にするのに十分な時間保持し、続いて前記酸性化された保持物質溶液を濾過または遠心分離し、それにより清澄化された多糖溶液を生産するステップと、
(g)ステップ(f)の前記清澄化された多糖溶液を、活性炭フィルタを通して濾過するステップと、
(h)ステップ(g)により生産された前記濾過溶液を限外濾過およびダイアフィルトレーションし、それにより濃縮された精製多糖溶液を生産するステップと、
(i)ステップ(h)により生産された前記濃縮された精製多糖溶液を、無菌フィルタを用いて濾過するステップと、
を含み、それにより、溶液の形態の実質的に精製された莢膜多糖が生産される、
プロセス。
【請求項2】
前記選択されたStreptococcus pneumoniae血清型が、1、4、5、6A、6B、7F、9V、14、18C、19A、19F、および23Fからなる群より選ばれる、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
ステップ(e)の前記pHが、約3.5に低下される、請求項1または2に記載のプロセス。
【請求項4】
ステップ(h)の前記ダイアフィルトレーションが、約5.5〜約7.5の間へのpH調節を含む、請求項1、2または3に記載のプロセス。
【請求項5】
ステップ(h)の前記ダイアフィルトレーションが、約7.0〜約7.5の間へのpH調節を含む、請求項1、2または3に記載のプロセス。
【請求項6】
ステップ(h)の前記ダイアフィルトレーションが、約7.4へのpH調節を含む、請求項1、2または3に記載のプロセス。
【請求項7】
ステップ(e)が、ステップ(d)の前記保持物質から少なくとも98%のタンパク質を除去する、請求項1〜6のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項8】
ステップ(g)が、ステップ(f)の前記清澄化された多糖溶液から少なくとも90%のタンパク質を除去する、請求項1〜7のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項9】
ステップ(g)の前記活性炭フィルタが、ウッドベースのリン酸−活性炭を含む、請求項1〜8のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項10】
ステップ(f)が、ステップ(e)において形成された前記酸性化された保持物質溶液を少なくとも2時間保持することを含む、請求項1〜9のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項11】
ステップ(b)の前記溶解薬が、デオキシコール酸ナトリウムである、請求項1〜10のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項12】
ステップ(b)の前記溶解薬が、非動物由来溶解薬である、請求項1〜10のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項13】
前記非動物由来溶解薬が、デカンスルホン酸、tert−オクチルフェノキシポリ(オキシエチレン)エタノール、オクチルフェノールエチレンオキシド縮合物、N−ラウリルサルコシンナトリウム(NLS)、ラウリルイミノジプロピオネート、ドデシル硫酸ナトリウム、ケノデオキシコール酸塩、ヒオデオキシコール酸塩、グリコデオキシコール酸塩、タウロデオキシコール酸塩、タウロケノデオキシコール酸塩、およびコール酸塩からなる群より選ばれる、請求項12に記載のプロセス。
【請求項14】
前記非動物由来溶解薬が、N−ラウリルサルコシンナトリウムである、請求項12に記載のプロセス。
【請求項15】
血清型1、4、5、6A、6B、7F、9V、14、18C、19F、または23Fを含むStreptococcus pneumoniae細胞溶解物から実質的に精製された莢膜多糖を生産するためのプロセスであって、
(a)Streptococcus pneumoniae血清型1、4、5、6A、6B、7F、9V、14、18C、19F、または23Fを生産する細菌細胞を含む発酵ブロスを提供するステップと、
(b)ステップ(a)における前記細菌細胞を溶解薬で溶解し、それにより細胞片、可溶性タンパク質、核酸、および多糖を含む細胞溶解物を生産するステップと、
(c)細胞片を除去するために遠心分離または濾過を用いてステップ(b)の前記細胞溶解物を清澄化し、それにより清澄化された細胞溶解物を生産するステップと、
(d)低分子量不純物を除去し多糖濃度を増大させるためにステップ(c)の前記清澄化された細胞溶解物を、室温で中性pHにて、無塩の培地中で限外濾過およびダイアフィルトレーションし、それにより無塩の保持物質を生産するステップと、
(e)タンパク質および核酸を沈降させるためにステップ(d)の前記無塩の保持物質の前記pHを4.5未満に低下させ、それにより酸性化された保持物質溶液を形成するステップと、
(f)ステップ(e)において形成された前記酸性化された保持物質溶液を、前記沈降物の沈降を可能にするために少なくとも2時間、室温にて保持し、続いて前記酸性化された保持物質溶液を濾過または遠心分離し、それにより清澄化された多糖溶液を生産するステップと、
(g)ステップ(f)の前記清澄化された多糖溶液を、活性炭フィルタを通して濾過するステップと、
(h)ステップ(g)により生産された前記濾過溶液を限外濾過およびダイアフィルトレーションし、それにより濃縮された精製多糖溶液を生産するステップと、
(i)ステップ(h)により生産された前記濃縮された精製多糖溶液を、無菌フィルタを用いて濾過するステップと、
を含み、それにより溶液の形態の血清型1、4、5、6A、6B、7F、9V、14、18C、19F、または23Fを含む実質的に精製された莢膜多糖が生産される、
プロセス。
【請求項16】
ステップ(e)の前記pHが、約3.5に低下される、請求項15に記載のプロセス。
【請求項17】
ステップ(h)の前記ダイアフィルトレーションが、約5.5〜約7.5の間へのpH調節を含む、請求項15または16に記載のプロセス。
【請求項18】
ステップ(h)の前記ダイアフィルトレーションが、約7.0〜約7.5の間へのpH調節を含む、請求項15または16に記載のプロセス。
【請求項19】
ステップ(h)の前記ダイアフィルトレーションが、約7.4へのpH調節を含む、請求項15または16に記載のプロセス。
【請求項20】
ステップ(e)が、ステップ(d)の前記無塩の保持物質から少なくとも98%のタンパク質を除去する、請求項15〜19のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項21】
ステップ(g)が、ステップ(f)の前記清澄化された多糖溶液から少なくとも90%のタンパク質を除去する、請求項15〜20のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項22】
ステップ(g)の前記活性炭フィルタが、ウッドベースのリン酸−活性炭を含む、請求項15〜21のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項23】
ステップ(b)の前記溶解薬が、デオキシコール酸ナトリウムである、請求項15〜22のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項24】
ステップ(b)の前記溶解薬が、非動物由来溶解薬である、請求項15〜22のいずれか1項に記載のプロセス
【請求項25】
前記非動物由来溶解薬が、デカンスルホン酸、tert−オクチルフェノキシポリ(オキシエチレン)エタノール、オクチルフェノールエチレンオキシド縮合物、N−ラウリルサルコシンナトリウム(NLS)、ラウリルイミノジプロピオネート、ドデシル硫酸ナトリウム、ケノデオキシコール酸塩、ヒオデオキシコール酸塩、グリコデオキシコール酸塩、タウロデオキシコール酸塩、タウロケノデオキシコール酸塩、およびコール酸塩からなる群より選ばれる、請求項24に記載のプロセス。
【請求項26】
前記非動物由来溶解薬が、N−ラウリルサルコシンナトリウムである、請求項24に記載のプロセス。
【請求項27】
血清型19Aを含むStreptococcus pneumoniae細胞溶解物から実質的に精製された莢膜多糖を生産するためのプロセスであって、
(a)Streptococcus pneumoniae血清型19Aを生産する細菌細胞を含む発酵ブロスを提供するステップと、
(b)ステップ(a)における前記細菌細胞を溶解薬で溶解し、それにより細胞片、可溶性タンパク質、核酸、および多糖を含む細胞溶解物を生産するステップと、
(c)細胞片を除去するために遠心分離または濾過を用いてステップ(b)の前記細胞溶解物を清澄化し、それにより清澄化された細胞溶解物を生産するステップと、
(d)低分子量不純物を除去し多糖濃度を増大させるためにステップ(c)の前記清澄化された細胞溶解物を、約4℃でpH約6にて、リン酸ナトリウム緩衝液中で限外濾過およびダイアフィルトレーションし、それにより保持物質を生産するステップと、
(e)タンパク質および核酸を沈降させるためにステップ(d)の前記保持物質の前記pHを4.5未満に低下させ、それにより酸性化された保持物質溶液を形成するステップと、
(f)ステップ(e)において形成された前記酸性化された保持物質溶液を、前記沈降物の沈降を可能にするために少なくとも2時間、約4℃で保持し、続いて前記酸性化された保持物質溶液を濾過または遠心分離し、それにより清澄化された多糖溶液を生産するステップと、
(g)ステップ(f)の前記清澄化された多糖溶液の前記pHを約6に調節し、それによりpH調節された清澄化された多糖溶液を生産するステップと、
(h)ステップ(g)の前記pH調節された清澄化された多糖溶液を、活性炭フィルタを通して濾過するステップと、
(i)ステップ(h)により生産された前記濾過溶液を限外濾過およびダイアフィルトレーションし、それにより濃縮された精製多糖溶液を生産するステップと、
(j)ステップ(i)により生産された前記濃縮された精製多糖溶液を、無菌フィルタを用いて濾過するステップと、
を含み、それにより溶液の形態の血清型19Aを含む実質的に精製された莢膜多糖が生産される、
プロセス。
【請求項28】
ステップ(e)の前記pHが、約3.5に低下される、請求項27に記載のプロセス。
【請求項29】
ステップ(i)の前記ダイアフィルトレーションが、約5.5〜約7.5の間へのpH調節を含む、請求項27または28に記載のプロセス。
【請求項30】
ステップ(i)の前記ダイアフィルトレーションが、約7.0〜約7.5の間へのpH調節を含む、請求項27または28に記載のプロセス。
【請求項31】
ステップ(i)の前記ダイアフィルトレーションが、約7.4へのpH調節を含む、請求項27または28に記載のプロセス。
【請求項32】
ステップ(e)が、ステップ(d)の前記保持物質から少なくとも98%のタンパク質を除去する、請求項27〜31のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項33】
ステップ(h)が、ステップ(g)の前記pH調節された清澄化された多糖溶液から少なくとも90%のタンパク質を除去する、請求項27〜32のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項34】
ステップ(h)の前記活性炭フィルタが、ウッドベースのリン酸−活性炭を含む、請求項27〜33のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項35】
ステップ(d)の前記リン酸ナトリウム緩衝液が、25mMリン酸ナトリウムである、請求項27〜34のいずれか1項に記載プロセス。
【請求項36】
ステップ(b)の前記溶解薬が、デオキシコール酸ナトリウムである、請求項27〜35のいずれか1項に記載プロセス。
【請求項37】
ステップ(b)の前記溶解薬が、非動物由来溶解薬である、請求項27〜35のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項38】
前記非動物由来溶解薬が、デカンスルホン酸、tert−オクチルフェノキシポリ(オキシエチレン)エタノール、オクチルフェノールエチレンオキシド縮合物、N−ラウリルサルコシンナトリウム(NLS)、ラウリルイミノジプロピオネート、ドデシル硫酸ナトリウム、ケノデオキシコール酸塩、ヒオデオキシコール酸塩、グリコデオキシコール酸塩、タウロデオキシコール酸塩、タウロケノデオキシコール酸塩、およびコール酸塩からなる群より選ばれる、請求項37に記載のプロセス。
【請求項39】
前記非動物由来溶解薬が、N−ラウリルサルコシンナトリウムである、請求項37に記載のプロセス。
【請求項40】
肺炎球菌ワクチンの製造のためのプロセスであって、請求項1〜39のいずれか1項に記載のプロセスによりStreptococcus pneumoniae細胞溶解物から実質的に精製された莢膜多糖を生産するステップと、肺炎球菌ワクチンの前記製造において前記実質的に精製された莢膜多糖を用いるステップと、を含む、プロセス。
【請求項41】
前記肺炎球菌ワクチンが、タンパク質キャリアと結合された多糖を含む、請求項40に記載のプロセス。
【請求項1】
Streptococcus pneumoniae細胞溶解物から実質的に精製された莢膜多糖を生産するためのプロセスであって、
(a)選択されたStreptococcus pneumoniae血清型を生産する細菌細胞を含む発酵ブロスを提供するステップと、
(b)ステップ(a)における前記細菌細胞を溶解薬で溶解し、それにより細胞片、可溶性タンパク質、核酸、および多糖を含む細胞溶解物を生産するステップと、
(c)細胞片を除去するために遠心分離または濾過を用いてステップ(b)の前記細胞溶解物を清澄化し、それにより清澄化された細胞溶解物を生産するステップと、
(d)低分子量不純物を除去し多糖濃度を増大させるためにステップ(c)の前記清澄化された細胞溶解物を限外濾過およびダイアフィルトレーションし、それにより保持物質を生産するステップと、
(e)タンパク質および核酸を沈降させるためにステップ(d)の前記保持物質のpHを4.5未満に低下させ、それにより酸性化された保持物質溶液を形成するステップと、
(f)ステップ(e)において形成された前記酸性化された保持物質溶液を、沈降物の沈降を可能にするのに十分な時間保持し、続いて前記酸性化された保持物質溶液を濾過または遠心分離し、それにより清澄化された多糖溶液を生産するステップと、
(g)ステップ(f)の前記清澄化された多糖溶液を、活性炭フィルタを通して濾過するステップと、
(h)ステップ(g)により生産された前記濾過溶液を限外濾過およびダイアフィルトレーションし、それにより濃縮された精製多糖溶液を生産するステップと、
(i)ステップ(h)により生産された前記濃縮された精製多糖溶液を、無菌フィルタを用いて濾過するステップと、
を含み、それにより、溶液の形態の実質的に精製された莢膜多糖が生産される、
プロセス。
【請求項2】
前記選択されたStreptococcus pneumoniae血清型が、1、4、5、6A、6B、7F、9V、14、18C、19A、19F、および23Fからなる群より選ばれる、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
ステップ(e)の前記pHが、約3.5に低下される、請求項1または2に記載のプロセス。
【請求項4】
ステップ(h)の前記ダイアフィルトレーションが、約5.5〜約7.5の間へのpH調節を含む、請求項1、2または3に記載のプロセス。
【請求項5】
ステップ(h)の前記ダイアフィルトレーションが、約7.0〜約7.5の間へのpH調節を含む、請求項1、2または3に記載のプロセス。
【請求項6】
ステップ(h)の前記ダイアフィルトレーションが、約7.4へのpH調節を含む、請求項1、2または3に記載のプロセス。
【請求項7】
ステップ(e)が、ステップ(d)の前記保持物質から少なくとも98%のタンパク質を除去する、請求項1〜6のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項8】
ステップ(g)が、ステップ(f)の前記清澄化された多糖溶液から少なくとも90%のタンパク質を除去する、請求項1〜7のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項9】
ステップ(g)の前記活性炭フィルタが、ウッドベースのリン酸−活性炭を含む、請求項1〜8のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項10】
ステップ(f)が、ステップ(e)において形成された前記酸性化された保持物質溶液を少なくとも2時間保持することを含む、請求項1〜9のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項11】
ステップ(b)の前記溶解薬が、デオキシコール酸ナトリウムである、請求項1〜10のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項12】
ステップ(b)の前記溶解薬が、非動物由来溶解薬である、請求項1〜10のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項13】
前記非動物由来溶解薬が、デカンスルホン酸、tert−オクチルフェノキシポリ(オキシエチレン)エタノール、オクチルフェノールエチレンオキシド縮合物、N−ラウリルサルコシンナトリウム(NLS)、ラウリルイミノジプロピオネート、ドデシル硫酸ナトリウム、ケノデオキシコール酸塩、ヒオデオキシコール酸塩、グリコデオキシコール酸塩、タウロデオキシコール酸塩、タウロケノデオキシコール酸塩、およびコール酸塩からなる群より選ばれる、請求項12に記載のプロセス。
【請求項14】
前記非動物由来溶解薬が、N−ラウリルサルコシンナトリウムである、請求項12に記載のプロセス。
【請求項15】
血清型1、4、5、6A、6B、7F、9V、14、18C、19F、または23Fを含むStreptococcus pneumoniae細胞溶解物から実質的に精製された莢膜多糖を生産するためのプロセスであって、
(a)Streptococcus pneumoniae血清型1、4、5、6A、6B、7F、9V、14、18C、19F、または23Fを生産する細菌細胞を含む発酵ブロスを提供するステップと、
(b)ステップ(a)における前記細菌細胞を溶解薬で溶解し、それにより細胞片、可溶性タンパク質、核酸、および多糖を含む細胞溶解物を生産するステップと、
(c)細胞片を除去するために遠心分離または濾過を用いてステップ(b)の前記細胞溶解物を清澄化し、それにより清澄化された細胞溶解物を生産するステップと、
(d)低分子量不純物を除去し多糖濃度を増大させるためにステップ(c)の前記清澄化された細胞溶解物を、室温で中性pHにて、無塩の培地中で限外濾過およびダイアフィルトレーションし、それにより無塩の保持物質を生産するステップと、
(e)タンパク質および核酸を沈降させるためにステップ(d)の前記無塩の保持物質の前記pHを4.5未満に低下させ、それにより酸性化された保持物質溶液を形成するステップと、
(f)ステップ(e)において形成された前記酸性化された保持物質溶液を、前記沈降物の沈降を可能にするために少なくとも2時間、室温にて保持し、続いて前記酸性化された保持物質溶液を濾過または遠心分離し、それにより清澄化された多糖溶液を生産するステップと、
(g)ステップ(f)の前記清澄化された多糖溶液を、活性炭フィルタを通して濾過するステップと、
(h)ステップ(g)により生産された前記濾過溶液を限外濾過およびダイアフィルトレーションし、それにより濃縮された精製多糖溶液を生産するステップと、
(i)ステップ(h)により生産された前記濃縮された精製多糖溶液を、無菌フィルタを用いて濾過するステップと、
を含み、それにより溶液の形態の血清型1、4、5、6A、6B、7F、9V、14、18C、19F、または23Fを含む実質的に精製された莢膜多糖が生産される、
プロセス。
【請求項16】
ステップ(e)の前記pHが、約3.5に低下される、請求項15に記載のプロセス。
【請求項17】
ステップ(h)の前記ダイアフィルトレーションが、約5.5〜約7.5の間へのpH調節を含む、請求項15または16に記載のプロセス。
【請求項18】
ステップ(h)の前記ダイアフィルトレーションが、約7.0〜約7.5の間へのpH調節を含む、請求項15または16に記載のプロセス。
【請求項19】
ステップ(h)の前記ダイアフィルトレーションが、約7.4へのpH調節を含む、請求項15または16に記載のプロセス。
【請求項20】
ステップ(e)が、ステップ(d)の前記無塩の保持物質から少なくとも98%のタンパク質を除去する、請求項15〜19のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項21】
ステップ(g)が、ステップ(f)の前記清澄化された多糖溶液から少なくとも90%のタンパク質を除去する、請求項15〜20のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項22】
ステップ(g)の前記活性炭フィルタが、ウッドベースのリン酸−活性炭を含む、請求項15〜21のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項23】
ステップ(b)の前記溶解薬が、デオキシコール酸ナトリウムである、請求項15〜22のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項24】
ステップ(b)の前記溶解薬が、非動物由来溶解薬である、請求項15〜22のいずれか1項に記載のプロセス
【請求項25】
前記非動物由来溶解薬が、デカンスルホン酸、tert−オクチルフェノキシポリ(オキシエチレン)エタノール、オクチルフェノールエチレンオキシド縮合物、N−ラウリルサルコシンナトリウム(NLS)、ラウリルイミノジプロピオネート、ドデシル硫酸ナトリウム、ケノデオキシコール酸塩、ヒオデオキシコール酸塩、グリコデオキシコール酸塩、タウロデオキシコール酸塩、タウロケノデオキシコール酸塩、およびコール酸塩からなる群より選ばれる、請求項24に記載のプロセス。
【請求項26】
前記非動物由来溶解薬が、N−ラウリルサルコシンナトリウムである、請求項24に記載のプロセス。
【請求項27】
血清型19Aを含むStreptococcus pneumoniae細胞溶解物から実質的に精製された莢膜多糖を生産するためのプロセスであって、
(a)Streptococcus pneumoniae血清型19Aを生産する細菌細胞を含む発酵ブロスを提供するステップと、
(b)ステップ(a)における前記細菌細胞を溶解薬で溶解し、それにより細胞片、可溶性タンパク質、核酸、および多糖を含む細胞溶解物を生産するステップと、
(c)細胞片を除去するために遠心分離または濾過を用いてステップ(b)の前記細胞溶解物を清澄化し、それにより清澄化された細胞溶解物を生産するステップと、
(d)低分子量不純物を除去し多糖濃度を増大させるためにステップ(c)の前記清澄化された細胞溶解物を、約4℃でpH約6にて、リン酸ナトリウム緩衝液中で限外濾過およびダイアフィルトレーションし、それにより保持物質を生産するステップと、
(e)タンパク質および核酸を沈降させるためにステップ(d)の前記保持物質の前記pHを4.5未満に低下させ、それにより酸性化された保持物質溶液を形成するステップと、
(f)ステップ(e)において形成された前記酸性化された保持物質溶液を、前記沈降物の沈降を可能にするために少なくとも2時間、約4℃で保持し、続いて前記酸性化された保持物質溶液を濾過または遠心分離し、それにより清澄化された多糖溶液を生産するステップと、
(g)ステップ(f)の前記清澄化された多糖溶液の前記pHを約6に調節し、それによりpH調節された清澄化された多糖溶液を生産するステップと、
(h)ステップ(g)の前記pH調節された清澄化された多糖溶液を、活性炭フィルタを通して濾過するステップと、
(i)ステップ(h)により生産された前記濾過溶液を限外濾過およびダイアフィルトレーションし、それにより濃縮された精製多糖溶液を生産するステップと、
(j)ステップ(i)により生産された前記濃縮された精製多糖溶液を、無菌フィルタを用いて濾過するステップと、
を含み、それにより溶液の形態の血清型19Aを含む実質的に精製された莢膜多糖が生産される、
プロセス。
【請求項28】
ステップ(e)の前記pHが、約3.5に低下される、請求項27に記載のプロセス。
【請求項29】
ステップ(i)の前記ダイアフィルトレーションが、約5.5〜約7.5の間へのpH調節を含む、請求項27または28に記載のプロセス。
【請求項30】
ステップ(i)の前記ダイアフィルトレーションが、約7.0〜約7.5の間へのpH調節を含む、請求項27または28に記載のプロセス。
【請求項31】
ステップ(i)の前記ダイアフィルトレーションが、約7.4へのpH調節を含む、請求項27または28に記載のプロセス。
【請求項32】
ステップ(e)が、ステップ(d)の前記保持物質から少なくとも98%のタンパク質を除去する、請求項27〜31のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項33】
ステップ(h)が、ステップ(g)の前記pH調節された清澄化された多糖溶液から少なくとも90%のタンパク質を除去する、請求項27〜32のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項34】
ステップ(h)の前記活性炭フィルタが、ウッドベースのリン酸−活性炭を含む、請求項27〜33のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項35】
ステップ(d)の前記リン酸ナトリウム緩衝液が、25mMリン酸ナトリウムである、請求項27〜34のいずれか1項に記載プロセス。
【請求項36】
ステップ(b)の前記溶解薬が、デオキシコール酸ナトリウムである、請求項27〜35のいずれか1項に記載プロセス。
【請求項37】
ステップ(b)の前記溶解薬が、非動物由来溶解薬である、請求項27〜35のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項38】
前記非動物由来溶解薬が、デカンスルホン酸、tert−オクチルフェノキシポリ(オキシエチレン)エタノール、オクチルフェノールエチレンオキシド縮合物、N−ラウリルサルコシンナトリウム(NLS)、ラウリルイミノジプロピオネート、ドデシル硫酸ナトリウム、ケノデオキシコール酸塩、ヒオデオキシコール酸塩、グリコデオキシコール酸塩、タウロデオキシコール酸塩、タウロケノデオキシコール酸塩、およびコール酸塩からなる群より選ばれる、請求項37に記載のプロセス。
【請求項39】
前記非動物由来溶解薬が、N−ラウリルサルコシンナトリウムである、請求項37に記載のプロセス。
【請求項40】
肺炎球菌ワクチンの製造のためのプロセスであって、請求項1〜39のいずれか1項に記載のプロセスによりStreptococcus pneumoniae細胞溶解物から実質的に精製された莢膜多糖を生産するステップと、肺炎球菌ワクチンの前記製造において前記実質的に精製された莢膜多糖を用いるステップと、を含む、プロセス。
【請求項41】
前記肺炎球菌ワクチンが、タンパク質キャリアと結合された多糖を含む、請求項40に記載のプロセス。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
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【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公表番号】特表2010−521972(P2010−521972A)
【公表日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−554744(P2009−554744)
【出願日】平成20年3月20日(2008.3.20)
【国際出願番号】PCT/US2008/057688
【国際公開番号】WO2008/118752
【国際公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【出願人】(591011502)ワイス エルエルシー (573)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年3月20日(2008.3.20)
【国際出願番号】PCT/US2008/057688
【国際公開番号】WO2008/118752
【国際公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【出願人】(591011502)ワイス エルエルシー (573)
【Fターム(参考)】
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