説明

菌検出器具

【課題】全体の小型化を図り小さい作業空間でも使用できる菌検出器具を提供すること。
【解決手段】菌を培養するための培養空間12aをなすとともに開口部を有する培養管12と、この培養管12の開口部に着脱自在に装着される本体部13とを備えており、この本体部13には、菌を培養するための培地aが封入された培地容器A、殺菌剤bが封入された殺菌剤容器B、各容器A,Bを封止しているアルミシール材30を破断するためのカッタ20,21、及びカッタ20,21によりアルミシール材30が破断された際に培地a及び殺菌剤bを培養空間12a内に案内する案内路13aが設けられている。そして、培地容器Aと殺菌剤容器Bは、それぞれ相互に独立して各カッタ20,21側へ移動可能となっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、菌を検出するための菌検出器具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、食中毒菌などの菌(微生物)を検出するための菌検出器具として、菌を培養するための培養管、菌を環境(例えば、まな板や手指など)から採取するための菌採取具、菌を培養するための培地(培養液)、及び殺菌液を一体に構成した簡易型の菌検出器具が提案されている(例えば、特許文献1)。特許文献1の菌検出器具は、有底筒状の培養管、培養管の開口部に配設され綿棒を支持する本体部、本体部に装着されるとともに培地が封入された筒状の培地封入容器、培地封入容器に装着されるとともに液状の殺菌剤が封入された殺菌剤封入容器を備えている。特許文献1の菌検出器具によれば、食中毒菌の検査にあたり培地や消毒剤を新たに調製する必要がなく、簡便かつ容易に検査できるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−281955号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の菌検出器具では、菌採取具で菌を採取した後に培地を培養管内に投入するとともに、培養管を下方に位置するように試験管立てなどに立てた状態で所定時間(例えば、一晩)培養するようになっている。そして、培地色の変化や濁度を観察あるいは測定して判定を行うようになっている。しかしながら、特許文献1の菌検出器具では、培地が封入された培地封入容器と殺菌剤が封入される殺菌剤封入容器を含む全ての構成部材が直線状(直列)に連結された構成とされている。このため、特許文献1の菌検出器具では、その全長が長くなり易く、菌検出器具を立てて培養を行うための作業スペース(作業空間)として十分な高さを確保する必要があった。特に、特許文献1のような簡易型の菌検出器具では、厨房や事務所など作業スペースが限られた環境で用いられる場合が多く、より小さい作業スペースで検査可能な菌検出器具の提供が望まれていた。
【0005】
この発明は、このような従来の技術に存在する問題点に着目してなされたものであり、その目的は、全体の小型化を図り小さい作業空間でも使用できる菌検出器具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記問題点を解決するために、請求項1に記載の発明は、菌を培養するための培養空間をなすとともに開口部を有する培養容器と、前記培養容器の開口部に対して着脱自在に装着される本体部を備え、前記本体部は、菌を培養するための培養剤が封入された培養剤封入容器と、殺菌剤が封入された殺菌剤封入容器と、前記培養剤封入容器及び前記殺菌剤封入容器の各封入容器と各別に接触されることで各封入容器をそれぞれ破壊可能に構成された割具と、前記割具により破壊された各封入容器内の培養剤又は殺菌剤を前記培養空間内に案内する案内路と、を有しており、各封入容器は、それぞれ操作部を有するとともに、前記割具へ向かう方向に対して並列であって、且つそれぞれ相互に独立して前記割具側へ移動可能となるように前記本体部に装着されていることを要旨とする。
【0007】
これによれば、各封入容器は、それぞれ操作部を有するとともに、前記割具へ向かう方向に対して並列であって、且つそれぞれ相互に独立して割具側へ移動可能となるように本体部に装着されている。このため、各封入容器を直線状(直列)に配置した場合と比較して、その全長が長くなることを抑制できる。したがって、菌検出器具の小型化が図られるとともに、培養容器を下方に配置して立てて培養をするための作業空間として必要な高さが抑制され、少ない作業スペースでも使用できる。そして、操作部により培養剤封入容器の移動と、殺菌剤封入容器の移動とを別々に操作することが可能であり、培養剤と殺菌剤とを1つずつ確実に培養容器へ投入することができる。
【0008】
請求項2に記載の発明は、前記殺菌剤封入容器の前記割具側への移動を規制する第1規制部と、前記培養剤封入容器の前記割具側への移動を規制する第2規制部と、をさらに有し、前記殺菌剤封入容器は前記第1規制部による規制を解除することで前記割具側へ移動可能となるとともに、前記培養剤封入容器は前記第2規制部による規制を解除することで前記割具側へ移動可能となることを要旨とする。
【0009】
培養剤封入容器が意図せず割具側へ移動して培養剤が投入されることを抑制できるとともに、殺菌剤封入容器が意図せず割具側へ移動して殺菌剤が投入されることを抑制できる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、活物質ペーストの粘度変化に伴う端高の発生を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】(a)は第1実施形態の菌検出器具の正面図、(b)は断面図。
【図2】(a)は第1実施形態の本体部の平面図、(b)は本体部の断面図。
【図3】第1実施形態の培地容器及び殺菌剤容器の正面図。
【図4】(a)及び(b)は第1実施形態の菌検出器具の動作を説明する断面図。
【図5】(a)は第2実施形態の本体部の平面図、(b)は本体部の断面図。
【図6】(a)は別例の本体部の平面図、(b)は本体部の断面図。
【図7】別例の菌検出器具の部分断面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(第1実施形態)
以下、本発明を具体化した第1実施形態について図1〜図4にしたがって説明する。なお、以下の説明において「上」及び「下」は、菌検出器具11を用いて菌を培養している状態における「上」及び「下」を示すものとする。
【0013】
図1に示すように、本実施形態の菌検出器具11は、菌を培養するための培養管(培養容器)12が備えられている。有底筒状をなす培養管12は、内部を透視可能に透明なプラスチック(例えば、ポリスチレンやポリカーボネートなど)で試験管状に形成されている。培養管12の内部には、菌を培養するための培養空間12aが形成されている。培養管12の開口端部の外周面には、培養管12の直径方向において外側に突出する突出部12bが設けられている。
【0014】
培養管12の開口端部には、プラスチック材料(例えば、ポリプロピレンやポリエチレン)により形成され、その全体が略Y字管状をなす本体部13が着脱自在に装着されている。本体部13の一端(下端)には、略円筒状に形成されるとともに、培養管12の突出部12bが係合されつつ螺入される雌ネジ部14aが内側に形成された円筒部14が備えられている。円筒部14の外周面には、複数の凸条からなる滑り止めが形成されている。また、雌ネジ部14aの内側には、培養管12側に延びる円環状をなし、その中心軸が雌ネジ部14aの中心軸と一致するように形成されたシール部15が配設されている。シール部15は、培養管12が雌ネジ部14aに螺入された状態において、培養管12の内周面と密着(密閉)するようになっている。本体部13においてシール部15の内側には、下方(培養管12側)に開口する有底略円筒状に形成されているとともに、環境から検体
(菌)を採取するための綿棒(採取具)16の軸棒16aが圧入される保持部17が設けられている。なお、綿棒16の先端には、綿球(採取部)16bが形成されている。保持部17の内周面には、保持部17が伸びる方向に沿って複数本(本実施形態では、3本)のリブ17a(図2(b)に示す)が形成されており、菌検出器具11の組み立て時において綿棒16(軸棒16a)を保持部17に挿入し易くするとともに容易に脱落しないようになっている。保持部17に圧入された綿棒16は、本体部13が培養管12から着脱されることで、この本体部13と一体となって培養管12に対して挿抜可能となっている。また、綿棒16は、本体部13が培養管12に装着された状態において、綿球16bが培養管12の底方に配置されるようになっている。
【0015】
また、図1及び図2に示すように、本体部13の他端(上端)側は、二つに分岐されているとともに、それぞれ円筒部14から培養管12の反対側(上方)に向けて延びる略円筒状の第1容器保持部18、及び第2容器保持部19が形成されている。第1容器保持部18と第2容器保持部19は、各容器保持部18,19の中心軸が相互に平行となるように横並び(並列)に配置されている。また、第1容器保持部18と第2容器保持部19は、両容器保持部18,19の間に形成された連結壁部22によって連結されている。第1容器保持部18の基底部18aには、この基底部18aから培養管12とは反対側(上方)に向けて延びる第1カッタ(割具)20が形成されている。第1カッタ20は、第1カッタ20の伸びる方向と直交する断面視(平面視)において円弧状をなす刃部20aと、基底部から延びる板状の壁部20bとから構成されている。また、第2容器保持部19の基底部19aには、第1容器保持部18と同様に構成された刃部21a及び壁部21bを有する第2カッタ(割具)21が形成されている。なお、第1カッタ20と第2カッタ21とは、保持部17の中心軸を中心として対象となるように構成されている。また、各基底部18a,19aは、保持部17に向けて下方に傾斜するように形成されている。
【0016】
図2(b)に示すように、第1容器保持部18の内周面には、周方向に沿って内側に突出するリング状の位置決め部18bが形成されている。また、第1容器保持部18の開口端には、第1容器保持部18の内壁面から周方向に沿って内側に突出するリング状の抜け止め部18cが形成されている。また、第2容器保持部19についても、位置決め部19b、及び抜け止め部19cが設けられており、第1容器保持部18と同一構成とされている。
【0017】
図2に示すように、第1容器保持部18の開口端(抜け止め部18c)には、一部を切り欠いた略円環状をなす帯状のストッパ23が形成されている。ストッパ23は、ストッパ23の中心軸と第1容器保持部18の中心軸とが略一致するように配置されている。また、ストッパ23は、平面視において第1容器保持部18の周方向に沿うように形成されている。ストッパ23は、一端が連結壁部22の上端面から突出形成された固定部22aに固定されるとともに、自由端となる他端にツマミ部23aが形成されている。また、ストッパ23は、幅狭且つ薄肉に形成された複数(本実施形態では、2つ)の連結部Rによって第1容器保持部18の開口端に連結されている。連結部Rは、第1容器保持部18の中心軸に直交する断面視において、その断面積が小さくなるように形成されている。そして、ストッパ23は、ストッパ23、連結部R、及び抜け止め部18cで形成される隙間Sによって、第1容器保持部18の開口端と隔てられている。また、第2容器保持部19の開口端(抜け止め部19c)には、一端が固定部22aに固定されるとともに、他端にツマミ部24aが形成されたストッパ24が配置されている。ストッパ24は、ストッパ23と同様に、連結部Rによって抜け止め部19cに連結されている。なお、各ストッパ23,24は、平面視において固定部22aを中心として点対称となるように構成されている。そして、本体部13の内部には、第1容器保持部18、第2容器保持部19及び雌ネジ部14aから、液体を培養管12(培養空間12a)へ案内する案内路13aが形成されている。
【0018】
また、図1及び図3に示すように、第1容器保持部18には、菌を培養するための培地(培養剤)aを封入した培地容器(封入容器,培養剤封入容器)Aが装着されるようになっており、第2容器保持部19には、培地aで培養して増殖させた菌を殺菌(消毒)するための殺菌剤bを封入した殺菌剤容器(封入容器,殺菌剤封入容器)Bが装着されるようになっている。培地容器Aは、プラスチック(例えば、ポリプロピレンやポリエチレン)により略有底円筒状に形成されるとともに、その開口部が下方(培養管12側)に配置されるように第1容器保持部18に装着されている。培地容器Aは、菌を培養するための液体の培地を充填された後、アルミシートにプラスチックフィルム(例えば、ポリプロピレンやポリエチレン)をラミネートしたアルミシール材30を開口部に熱溶着することにより封止されている。培地容器Aに封入される培地は、菌検出器具11で検出しようとする菌の種類によって適宜選択されるものである。
【0019】
培地容器Aの上部には、複数の凸条からなる滑り止めが形成された操作部28が形成されている。操作部28の下方(培養管12側)は、操作部28の直径よりも小さい直径となるように形成された挿入部29とされている。このため、操作部28の下端部には、操作部28と挿入部29との直径差から段部28aが形成されている。挿入部29の外周面には、直径方向の外側に向けて突出する円環状の2つの突出部26が形成されている。また、挿入部29の外周面において突出部26より上方(培養管12とは反対側)には、その全体が略平板状に形成され、下方に向かって挿入部29の外周面からの高さが減少するように傾斜するテーパ部27aを有する2つの係合部27が設けられている。各係合部27は、挿入部29の周方向に均等に配置されているとともに、両係合部27の外接円の直径は、抜け止め部18c,19cの内径よりも大きく設定されている。本実施形態において殺菌剤容器Bは、封入される内容物が液体の殺菌剤(例えば、エタノール、塩酸アルキルジアミノエチルグリシンなど)である点においてのみ培地容器Aと相違しており、培地容器Aと同一の形状とされている。即ち、本実施形態では、培地容器Aと殺菌剤容器Bに用いられる部材(封入容器)の共通化が図られている。
【0020】
図1に示すように、培地容器Aを第1容器保持部18に装着した状態において、アルミシール材30は、第1カッタ20に接触しないようになっている。また、培地容器Aの係合部27は、位置決め部18bと抜け止め部18cとの間に配置されるようになっている。このため、培地容器Aは、上方(第1容器保持部18とは反対側)に向けて引っ張られた場合であっても、係合部27と抜け止め部18cとが係合することで容易に取り外しできないようなっている。また、この状態において、培地容器Aは、培地容器Aの段部28aがストッパ23の上部と係止(接触)することによって下方(第1カッタ20側)へ向けて移動することが規制されている。このため、菌検出器具11の使用前において、培地容器Aのアルミシール材30と第1カッタ20とが接触することでアルミシール材30が破断(破壊)し、培地aが案内路13aに流出しないようになっている。なお、前述したように、殺菌剤容器Bは培地容器Aと同一形状とされ、第2容器保持部19は第1容器保持部18と同一形状とされている。このため、殺菌剤容器Bを第2容器保持部19に装着した状態において、殺菌剤容器Bは、殺菌剤容器Bの係合部27と抜け止め部19cとが係合することで容易に取り外しできないようなっている。また、殺菌剤容器Bは、殺菌剤容器Bの段部28aがストッパ24の上部と係止(接触)することによって下方(第2カッタ21側)へ向けて移動することが規制されている。このため、菌検出器具11の使用前において、殺菌剤容器Bのアルミシール材30と第2カッタ21とが接触することでアルミシール材30が破断し、殺菌剤bが案内路13aに流出しないようになっている。
【0021】
次に、本実施形態の菌検出器具11の作用について、使用方法を中心に説明する。図4に示すように、先ず培養管12を回転させて本体部13(円筒部14)から取り外し、綿棒16を取り出す。次に、綿球16bを滅菌済みの生理食塩水などで湿らせた後、検査対
象となる箇所(例えば、まな板や手指)を綿球16bで擦ってして検体(菌)を採取する。次に、円筒部14の雌ネジ部14aに培養管12を螺入させて密閉するとともに、綿棒16を培養空間12a内に配置させる。次に、培地容器A側のストッパ23のツマミ部23a(図1に示す)をつまんで引っ張り、ストッパ23を第1容器保持部18から取り外す。この際、ストッパ23の一端は固定部22aに固定されていることから、完全に本体部13から取り外すことができないようになっている。このため、取り外したストッパ23が食材などに混入することを防止できる。また、ストッパ23を取り外したことで、培地容器Aの段部28aとストッパ23との係止(規制)が解除されることで、培地容器Aの第1カッタ20側(下方)への移動が許容される。次に、培地容器Aを第1カッタ20側へ移動させることで、培地aを封止しているアルミシール材30が破断され、封入されていた培地aが案内路13aを通って培養管12の培養空間12aへ流下案内される(図4(a)の状態)。なお、培地容器Aを第1カッタ20側へ移動させたのち、さらに周方向に回転させることでアルミシール材30をより確実に破断させるとともに、培地aが流出する開口部をより大きく形成することができる。また、この状態において、培地容器Aの挿入部29に形成された突出部26(図3に示す)は、第1容器保持部18の内周面と密着されるようになっており、案内路13a内の培地が培地容器Aと第1容器保持部18との間から漏出しないようになっている。
【0022】
次に、菌検出器具11を立てた状態とし、所定温度(例えば、30℃や37℃)で所定時間(例えば、一晩)の培養を行い、培地aの培地色の変化や、培養液(培地)の濁度を観察あるいは測定して判定を行う。
【0023】
続けて、殺菌剤容器B側のストッパ24のツマミ部24a(図2に示す)をつまんで、ストッパ24を第2容器保持部19から取り外す。この際、ストッパ24の一端は固定部22aに固定されていることから、完全に本体部13から取り外すことができないようになっている。このため、取り外したストッパ24が食材などに混入することを防止できる。また、ストッパ24を取り外したことで、殺菌剤容器Bの段部28aとストッパ24との係止(規制)が解除されることで、殺菌剤容器Bの第2カッタ21側(下方)への移動が許容される。次に、殺菌剤容器Bを第2カッタ21側へ移動させることで、殺菌剤bを封止しているアルミシール材30が破断され、殺菌剤bが案内路13aを通って培養管12の培養空間12aへ流下案内される(図4(b)の状態)。なお、殺菌剤容器Bを第2カッタ21側へ移動させたのち、さらに周方向に回転させることでアルミシール材30をより確実に破断させるとともに、殺菌剤bが流出する開口部をより大きく形成することができる。また、この状態において、殺菌剤容器Bの挿入部29に形成された突出部26(図3に示す)は、第2容器保持部19の内周面と密着されるようになっており、案内路13a内の培地及び殺菌剤が殺菌剤容器Bと第2容器保持部19との間から漏出しないようになっている。
【0024】
そして、培養管12(培養空間12a)内で、培地aと殺菌剤bとを混合することで、培養により増殖された菌を殺菌できるとともに、安全に廃棄可能としている。
したがって、本実施形態によれば以下の効果を得ることができる。
【0025】
(1)培地容器A及び殺菌剤容器Bは、何れも本体部13の各容器保持部18,19にそれぞれ装着した。このため、本体部13に培地容器Aを装着し、この培地容器Aに殺菌剤容器Bを装着するように、各容器A,Bを直列(直線状)に配置する場合と比較して菌検出器具11の全長が長くなることを抑制できる。したがって、菌検出器具11の小型化を図ることができるとともに、菌検出器具11を立てて使用(培養)するために必要な作業空間(スペース)として必要な高さが抑制され、少ない作業スペースでも菌検出器具11を用いて菌検査を行うことができる。
【0026】
(2)培地容器A及び殺菌剤容器Bは、それぞれ相互に独立して各カッタ20,21側へ移動させることが可能となっている。このため、培地容器Aの移動と、殺菌剤容器Bの移動とを別々に操作することが可能であり、培地aと殺菌剤bとを1種類ずつ確実に培養管12(培養空間12a)に投入することができる。
【0027】
(第2実施形態)
次に、本実施形態を具体化した第2実施形態について図5に従って説明する。以下の説明では、既に説明した実施形態と同一構成について同一の符号を付すなどし、その重複する説明を省略又は簡略する。第2実施形態における菌検出器具11は、ストッパ23,24の構成が第1実施形態と異なっており、その他の構成については同一構成とされている。
【0028】
図5に示すように、本実施形態におけるストッパ(移動規制機構)35は、第1容器保持部18の開口端(抜け止め部18c)及び第2容器保持部19の開口端(抜け止め部19c)に沿うように平面視略S字状をなす帯状に形成されている。ストッパ35の一端は、第2容器保持部19の開口端に固定部19dを介して固定されているとともに、自由端となる他端にツマミ部35aが形成されている。また、ストッパ35において各容器保持部18,19の間に位置する中間部35bは、連結部Rと同様の構成とされた連結部Kにより連結壁部22の上端部に連結されている。このため、ストッパ35は、ツマミ部35aをつまんで引っ張ることで、第1容器保持部18、連結壁部22、及び第2容器保持部19の順に本体部13から取り外せるようになっている。そして、本実施形態では、固定部19dを残してストッパ35を第2容器保持部19から取り外した後、固定部19dを基点として直径方向の外方に折り曲げることで、殺菌剤容器Bの段部28aとストッパ35との係止(接触)が解除される規制解除位置(図5(a)で点線で示す)へストッパ35を移動させることができるようになっている。即ち、ストッパ35は、第2容器保持部19に固定されていることから、第1容器保持部18から取り外した後でなければ、規制解除位置へ移動させることができないようになっている。本実施形態では、ストッパ35において、ツマミ部35aから中間部35b(連結部K)迄が第2規制部をなし、中間部35b(連結部K)から固定部19d迄が第1規制部をなしている。
【0029】
次に、本実施形態の菌検出器具11の作用について説明する。先ず、ストッパ35を第1容器保持部18から取り外して培地容器Aの段部28aとストッパ35との係止(規制)を解除するとともに、培地容器Aを第1カッタ20側へ移動させ、培地aを培養管12(培養空間12a)内に投入する。また、培地aで培養した菌を殺菌するには、第1容器保持部18から取り外したストッパ35を更に引っ張り、固定部19dを残して第2容器保持部19から取り外すとともに、固定部19dを基点に外方へ折り曲げて規制解除位置へ移動させる。これにより、殺菌剤容器Bの段部28aとストッパ35との係止(規制)が解除され、殺菌剤容器Bの第2カッタ21側(下方)への移動が許容される。そして、殺菌剤容器Bを第2カッタ21に向けて移動させて、殺菌剤を培養管12(培養空間12a)内に投入する。
【0030】
したがって、本実施形態によれば第1実施形態の効果(1),(2)に加えて以下の効果を得ることができる。
(3)ストッパ35を第1容器保持部18から取り外した後でなければ、ストッパ35を規制解除位置に移動させ、殺菌剤容器Bの段部28aとストッパ24との係止(接触)を解除できないようにした。このため、誤って培地容器Aより先に殺菌剤容器Bを第2カッタ21側に移動させ、培養して検査する前に殺菌剤bを培養管12(培養空間12a)内に投入してしまうことを抑制できる。即ち、検体(菌)を培地aで培養する前に殺菌剤bで殺菌してしまうという誤操作を防止できる。
【0031】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
○ 第2実施形態において、ストッパ35を異なる形状に構成してもよい。例えば、図6に示すように、平面視において各容器保持部18,19を囲うように形成された略楕円状をなす帯状のストッパ36としてもよい。この場合、ストッパ36は、固定部19dに代えて固定部22aにより連結壁部22の上端部に取り外し不能に固定するとよい。このように構成しても、ストッパ36を第1容器保持部18から取り外した後でなければ、ストッパ36を第2容器保持部19から取り外すことができず、殺菌剤容器Bの段部28aとストッパ24との係止(接触)を解除できないようにできる。したがって、本別例によれば第2実施形態の効果(3)と同様の効果を有する。
【0032】
○ 各実施形態において、培地容器Aと殺菌剤容器Bを相互に異なる形状としてもよい。さらに、培地容器A及び殺菌剤容器Bのうち、何れか一方を移動させた後でなければ他方を移動できないように構成してもよい。具体的に言えば、図7に示すように、培地容器Aの操作部28に対して上下に延びるように切り欠いた凹部Aaを形成するとともに、この凹部Aaに係合可能となるように、殺菌剤容器Bの操作部28に凸部Baを形成する。このように構成することで、培地容器Aを第1カッタ20側に移動させていない状態では、凹部Aaと凸部Baとが接触(係合)するため、殺菌剤容器Bを第2カッタ21側へ移動させることができないようにできる。このため、本別例によれば、仮に誤って殺菌剤容器B側のストッパ24あるいはストッパ35を取り外したとしても、先に殺菌剤容器Bを第2カッタ21側へ移動させて殺菌剤bを培養管12内に投入してしまうことを抑制できる。
【0033】
○ 各実施形態において、図7に示すように、本体部13の保持部17の上端部に、保持部17の内側と外部とを連通させる空気孔37を設けてもよい。このように構成すれば、培地aや殺菌剤bを培養管12(培養空間12a)に投入する際、培養管12内の空気を外部へ逃がすことで培地aや殺菌剤bを案内路13aから培養管12に速やかに移動(流下)させることができる。また、空気孔37を保持部17の上端部に形成することで、保持部17の内周面に形成されたリブ17a(図2(b)に示す)と軸棒16aとの間に形成される間隙により外部と培養空間12aとが連通されるため、培養中などに外部から菌が培養管12内に落下しにくくなっている。また、空気孔37には、疎水性のエアフィルタ(ろ過膜)などを設けてもよい。このように構成することで、空気孔37から培地aや殺菌剤bが外部に漏出することを抑制しつつ、空気を外部に逃がすことができる。
【0034】
○ 各実施形態において、図7に示すように、第1容器保持部18及び第2容器保持部19は、連結壁部22で連結しなくてもよい。この場合、固定部22aは、円筒部14から第1容器保持部18及び第2容器保持部19の間に位置し、両容器保持部18,19と平行になるように延びる棒状に形成すればよい。また、第2実施形態では、同様な棒状に形成した中間部35bに連結部Kを形成すればよい。このように構成することで、射出成型時に第1容器保持部18及び第2容器保持部19の型離れをし易くし、成形性を向上させることができる。
【0035】
○ 各実施形態において、培養管12は有底筒状に形成したが、多角形の筒状に形成したり、袋状に形成したりしてもよい。
○ 各実施形態において、各カッタ20,21の形状を異なる形状に構成してもよい。
【0036】
○ 各実施形態において、培地aや殺菌剤bは固体(粉末状、顆粒状、錠剤など)の培地aや殺菌剤bとしてもよい。この場合、培地aや殺菌剤bを培養管12に投入した後、滅菌済みの水などを別途投入してもよい。また、例えば、培地容器Aに固体の培地aを封入し、殺菌剤容器Bに殺菌剤bに代えて滅菌済みの水を封入してもよい。このように構成すれば、水に溶解することで性能が劣化し易い培地を固体のまま保持することが可能とな
り、このような培地を用いた菌検出器具11を提供できる。
【0037】
○ 各実施形態において、特定の菌以外の菌の増殖を抑制する抗生剤などの薬剤を綿球16bに予め含ませておいたり、薬剤を含ませたディスク状のろ紙を培養管12内に配置したりしてもよい。
【0038】
○ 各実施形態において、保持部17には、綿棒16に代えてウレタンフォームやスポンジ、ろ紙などを用いた採取具を装着してもよい。
○ 各実施形態において、培地容器A及び殺菌剤容器Bは、培地や殺菌剤を封入したガラスアンプルを保持する構成としてもよい。このように構成しても、各カッタ20,21によりガラスアンプルを破砕(破壊)することで、培地や殺菌剤を培養管12内に投入することができる。
【0039】
○ 各実施形態において、培地容器A及び殺菌剤容器Bの外周面に雄ネジを設ける一方、第1容器保持部18及び第2容器保持部19の内周面に雌ネジを形成し、各容器A,Bを各容器保持部18,19にそれぞれ螺入させるようにしてもよい。このように構成しても、培地容器A及び殺菌剤容器Bを各カッタ20,21側に移動させてアルミシール材30を破断させることができる。
【0040】
○ 各実施形態において、綿棒16を省略してもよい。この場合、別途用意した綿棒などの採取具で検体を採取した後、培養管12内に投入するようにする。
○ 各実施形態において、第1容器保持部18に殺菌剤容器Bを装着し、第2容器保持部19に培地容器Aを装着してもよい。
【0041】
○ 各実施形態において、培地容器Aと殺菌剤容器Bとは、中心軸が平行となるように配置しなくてもよい。例えば、培地容器Aと殺菌剤容器Bとが正面視でV字状に配置されてもよい。
【0042】
○ 各実施形態において、本体部13に装着する培地容器A及び殺菌剤容器Bの数はそれぞれ任意に変更してもよい。
次に、上記実施形態及び別例から把握できる技術的思想について以下に追記する。
【0043】
(イ)菌を培養するための培養空間をなすとともに開口部を有する培養容器と、前記培養容器の開口部に対して着脱自在に装着される本体部を備え、前記本体部は、菌を培養するための培養剤が封入された培養剤封入容器と、殺菌剤が封入された殺菌剤封入容器と、前記培養剤封入容器及び前記殺菌剤封入容器の各封入容器と接触されることで各封入容器を破壊可能に構成された割具と、前記割具により破壊された各封入容器内の培養剤又は殺菌剤を前記培養空間内に案内する案内路を有しており、各封入容器は、それぞれ相互に独立して前記割具側へ移動可能となるように前記本体部に装着されていることを特徴とする菌検出器具。
【0044】
(ロ)前記割具側への各封入容器の移動を規制する移動規制機構をさらに備え、前記移動規制機構は、前記培養剤封入容器の移動規制を解除した後でなければ前記殺菌剤封入容器の移動規制を解除できないように構成されていることを特徴とする技術的思想イに記載の菌検出器具。
【0045】
(ハ)前記移動規制機構は、一端が前記本体部から取り外し不能に固定され前記割具側への殺菌剤封入容器の移動を規制する第1規制部と、前記第1規制部の他端に連設されると共に前記本体部から取り外し可能に構成され前記割具側への培養剤封入容器の移動を規制する第2規制部と、から構成されており、前記第1規制部は、前記第2規制部が前記本体部から取り外されることにより、前記殺菌剤封入容器が割具側へ移動可能となる規制解除位置への移動が可能となるように構成されていることを特徴とする技術的思想ロに記載の菌検出器具。
【0046】
(ニ)前記移動規制機構は、前記殺菌剤封入容器に形成された突起部と、前記培養剤封入容器に形成され前記突起部と係合する係合部とから構成されており、前記殺菌剤封入容器は前記培養剤封入容器を割具側へ移動させた後でなければ前記突起部が前記係合部に係合することで前記割具側へ移動不能に構成されたことを特徴とする技術的思想ロ又はハに記載の菌検出器具。ここで、突起部は別例における凸部Baが該当し、係合部は凹部Aaが該当する。
【0047】
(ホ)検体を採取するための採取部を有し当該採取部が前記培養空間内に配置されるように本体部に固定された採取具をさらに備えたことを特徴とする技術的思想イ〜ニのいずれか1項に記載の菌検出器具。
【符号の説明】
【0048】
11…菌検出器具、12…培養管(培養容器)、12a…培養空間、13…本体部、13a…案内路、20…第1カッタ(割具)、21…第2カッタ(割具)、35,36…ストッパ(移動規制機構、第1,第2規制部)、A…培地容器(封入容器、培養剤封入容器)、B…殺菌剤容器(封入容器、殺菌剤封入容器)、a…培地(培養剤)、b…殺菌剤。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
菌を培養するための培養空間をなすとともに開口部を有する培養容器と、前記培養容器の開口部に対して着脱自在に装着される本体部を備え、
前記本体部は、
菌を培養するための培養剤が封入された培養剤封入容器と、
殺菌剤が封入された殺菌剤封入容器と、
前記培養剤封入容器及び前記殺菌剤封入容器の各封入容器と各別に接触されることで各封入容器をそれぞれ破壊可能に構成された割具と、
前記割具により破壊された各封入容器内の培養剤又は殺菌剤を前記培養空間内に案内する案内路と、を有しており、
各封入容器は、それぞれ操作部が設けられているとともに、前記割具へ向かう方向に対して並列であって、且つそれぞれ相互に独立して前記割具側へ移動可能となるように前記本体部に装着されていることを特徴とする菌検出器具。
【請求項2】
前記殺菌剤封入容器の前記割具側への移動を規制する第1規制部と、
前記培養剤封入容器の前記割具側への移動を規制する第2規制部と、をさらに有し、
前記殺菌剤封入容器は前記第1規制部による規制を解除することで前記割具側へ移動可能となるとともに、前記培養剤封入容器は前記第2規制部による規制を解除することで前記割具側へ移動可能となることを特徴とする請求項1に記載の菌検出器具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−66494(P2013−66494A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2013−10900(P2013−10900)
【出願日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【分割の表示】特願2008−331571(P2008−331571)の分割
【原出願日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【出願人】(596108287)コロナ技研工業株式会社 (4)
【Fターム(参考)】