Notice: Undefined variable: fterm_desc_sub in /mnt/www/biblio_conv.php on line 353
菌類の回収方法
説明

菌類の回収方法

【課題】高い生菌率で効率よく容易に胞子や分生子などの菌類を回収できる菌類の回収方法を提供する。
【解決手段】微生物培養物が内周側に投入される円筒状のスクリーンメッシュ20の内周側に、回転翼31を有した回転体30を配設した回収装置1を用いる。回転体30を回転させ、スクリーンメッシュ20に対して胞子や分生子などの菌類が通過する方向で風速0.3m/秒以上0.65m/秒以下の気流を生じさせる。微生物培養物をスクリーンメッシュ20の内周側に投入して解砕しつつ、気流により胞子や分生子などの菌類を培地成分から分離させてスクリーンメッシュ20を通過させ、回収する。生菌率が高く、高回収率で胞子や分生子などの菌類を回収できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微生物培養物から培養した菌類を回収する回収方法に関する。
【背景技術】
【0002】
今日、様々な微生物の胞子や分生子が、生物農薬の原体や酒造および醸造用の種こうじなどとして用いるべく、工業的に製造されている。
この微生物の工業的な製造方法において、微生物を培養した際、乾燥重量の大部分は培地成分であり、培養物中に含まれる胞子や分生子の重量はごく僅かである。また、培養物中の胞子や分生子を製品に加工する場合、培地成分などの不純物が品質を低下させるおそれがある。このため、胞子や分生子の製造方法では、培地成分などの不要成分を除去し、胞子や分生子を選択的に回収する必要がある。
そこで、培養物から胞子や分生子などの菌類を回収する方法として、スクリーンメッシュや濾布により濾過する湿式回収方法(例えば、特許文献5〜8参照)や、振動や気流分級する乾式回収方法(例えば、特許文献1〜4参照)などが実施されている。
【0003】
特許文献1の湿式回収方法は、糸状菌を固体培養した後の培養物を、水分やこれらにさらに緩衝液や生理食塩水などを含有した媒体中に分散させ、得られた懸濁液を培養物の残渣と胞子分散液とに、濾紙、濾布、篩などを用いて分離する。この後、胞子分散液に賦形剤を混合して造粒し、胞子を回収する構成が採られている。
しかしながら、この特許文献1に記載の方法では、水などの媒体により増量するので、処理量が多くなり、造粒時に媒体を除去する大きなエネルギーを必要とし、効率よく胞子を回収できないおそれがある。また、造粒時の熱負荷により、胞子の再発芽や過乾燥による胞子の死滅などのおそれがあり、効率よく胞子を回収できないおそれがある。また、胞子が疎水性などの場合、回収率が著しく低下するおそれがある。
【0004】
特許文献2に記載の湿式回収方法は、炭化水素油や脂肪酸エステル油、シリコーン油などの非水系液体に培養物を混合し、得られた混合物から培養残渣を、沈降分離あるいは濾布や金網などを用いた分画により除去し、微生物懸濁液を得る構成が採られている。
しかしながら、この特許文献2に記載の方法では、胞子と非水系液体とを再分離することが困難で、懸濁液として利用する製品形態に限られる不都合がある。また、微生物懸濁液の保管中、胞子が沈殿凝集するなど、不均一となるおそれがあり、安定した品質を提供できなくなるおそれがある。
【0005】
特許文献3に記載の湿式回収方法は、固体培養物を流動パラフィンや白色鉱物油に混合した後、綿布で絞り出し、胞子懸濁液を得る構成が採られている。
この特許文献3に記載の方法でも、特許文献2に記載の方法と同様に、流動パラフィンや白色鉱物油から懸濁する胞子のみを分離することは困難で、懸濁液として利用する製品形態に限られ、また胞子が沈殿凝集するおそれがある。
【0006】
一方、特許文献4の乾式回収方法は、乾式篩を用いて培養物から胞子を回収する構成が採られている。
また、特許文献5,6の乾式回収方法は、胞子が形成された固形物を解砕し篩い分けする構成が採られている。
さらに、特許文献7の乾式回収方法も、胞子が形成された培養物を篩い分けなどして胞子を回収する構成が採られている。
しかしながら、これら篩を用いて胞子を回収する方法では、篩を介して胞子自体の重力落下により回収するため、非常に軽い胞子の回収に時間を要し、回収効率の向上が望まれている。さらに、胞子は非常に軽いため、飛散しやすく、回収率が低下するとともに、分離回収の作業環境を悪化するおそれがある。また、胞子自体の凝集性や、培地成分である糖分、タンパク質、脂質を中心とした有機物の付着性などにより、胞子が培地成分に残留したり、機器への付着や篩の目詰まりが生じやすく、作業効率や回収効率が低下するおそれがある。このため、培地成分からの脱離性を高めるために、例えば特許文献5に記載のように、培養物を事前粉砕する方法があるが、胞子自体の凝集性や、粉砕時の飛散、機器への付着により、未回収分が増えるおそれがある。
【0007】
また、特許文献8の乾式回収方法は、切断刃を取り除いたウィリーミル(Wiley mill)により圧縮し、乱流、粒子同士の摩擦により分生子を取り出す構成が採られている。
しかしながら、特許文献8に記載のウィリーミルを用いる構成、その他ハンマーミル、パワーミル、ピンミル、ジェットミルなどの粉砕機を用いる場合、胞子や分生子に対する熱や物理的衝撃が大きく、死滅により回収率が低下するおそれがある。また、過粉砕により培地成分が微粉化し、回収する胞子や分生子とともに培地成分が不純物として混入し、不純物の割合が多くなって、品質が低下するおそれがある。
【0008】
そして、特許文献9の乾式回収方法には、培養物からサイクロンを用いて胞子や分生子など回収する構成が記載されている。
しかしながら、この特許文献9のサイクロンを用いるなど、気流分級する方法では、気流が弱いと十分に回収できないため、大きな気流を生じさせるための大型のコンプレッサーや配管などの設備が必要となる不都合が生じる。また、培地成分から胞子や分生子などを効率よく分離させるため、上述した粉砕機を用いると、上述したように、死滅により回収率が低下したり、不純物の割合が多くなってしまうおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2003−63917号公報
【特許文献2】特開2010−81832号公報
【特許文献3】特開2006−124337号公報
【特許文献4】特開平7−8272号公報
【特許文献5】特開2003−277214号公報
【特許文献6】特開2009−221132号公報
【特許文献7】特許第4159688号公報
【特許文献8】特表平9−506592号公報
【特許文献9】特許第4274750号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述したように、従来の湿式回収方法では、製品形態が限られるとともに、回収率の向上が得られにくく、凝集沈降による品質の低下が生じるおそれがある。
また、篩を用いる方法や、粉砕機を用いる方法、気流分級する方法など、従来の乾式回収方法では、処理能力の不足や目詰まりなどの煩雑性、格子の飛散などにより、回収率の向上や作業環境の改善、生菌率の向上などが得られないおそれがある。
【0011】
本発明の目的は、高い生菌率で効率よく容易に胞子や分生子などの菌類を回収できる菌類の回収方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、微生物培養物から培養した菌類を回収する回収方法であって、前記菌類が通過可能で前記微生物培養物の培養残渣が通過不可能なスクリーンメッシュを用い、前記スクリーンメッシュに対して前記菌類が通過する方向に風速0.3m/秒以上0.65m/秒以下の気流中に、前記微生物培養物を投入することを特徴とする。
ここで、微生物培養物の培養残渣とは、培地成分などの菌類を培養するための菌類以外の不純物に相当するものである。
この発明では、風速0.3m/秒以上0.65m/秒以下の気流中に微生物培養物を投入することで、風圧および微生物培養物同士の衝突などにより、胞子や分生子などの菌類が培地成分から分離され、気流と共にスクリーンメッシュを通過して回収される。
このことにより、粉砕機を用いる場合のような大きな物理的衝撃が菌類に加わることはなく、菌類が死滅することを防止できる。さらに、ある程度の風圧が作用するので、効率よく培地成分から分離されるとともに、気流によりスクリーンメッシュなどに付着や凝集することなく、非常に軽量な胞子や分生子などの菌類でも飛散せずに搬送されるので、スクリーンメッシュを通過させて効率よく回収でき、作業環境を悪化することなく、回収率を向上できる。
【0013】
本発明では、前記スクリーンメッシュは、内周側に前記微生物培養物が投入される円筒状に形成されたもので、前記スクリーンメッシュの内周側に配置され、前記スクリーンメッシュの中心軸に回転軸を有する回転体を用い、前記回転体を回転させることで、前記気流を生じさせる構成とすることが好ましい。
この発明では、微生物培養物が内周側に投入される円筒状のスクリーンメッシュの中心軸に回転軸を有する回転体を配置し、回転体の回転により風速0.3m/秒以上0.65m/秒以下の気流を生じさせる。
このことにより、回転体を設ける簡単な構成で菌類を高い回収率で回収できるとともに、微生物培養物を事前に解砕する必要がなく、解砕時の熱負荷や物理的負荷により菌類が死滅することを抑制できる。
【0014】
本発明では、前記回転体は、回転軸の周面に立設された支柱部と、この支柱部の先端に設けられ長手方向が前記回転軸に沿った羽根部とを複数備えた回転翼を備えた構成とすることが好ましい。
この発明では、回転軸の周方向に立設した支柱部の先端に、長手方向が回転軸に沿った羽根部を複数設けた回転翼を有した回転体を用いる。
このことにより、菌類に大きな物理的負荷が加わることを抑制しつつ、風速0.3m/秒以上0.65m/秒以下の気流を生じさせることができ、簡単な構成で、生菌率が高く回収率を向上できる。
【0015】
本発明では、前記菌類は、タラロマイセス属、ペニシリウム属、ペキロマイセス属、グリオクラディウム属、ボーベリア属、レカニシリウム属、アスペルギルス属、トリコデルマ属、フザリウム属、ノムラエア属、バーティシリウム属、ムコール属、クラドスポリウム属の群から選ばれた少なくとも1つである構成とすることが好ましい。
この発明では、タラロマイセス属、ペニシリウム属、ペキロマイセス属、グリオクラディウム属、ボーベリア属、レカニシリウム属、アスペルギルス属、トリコデルマ属、フザリウム属、ノムラエア属、バーティシリウム属、ムコール属、クラドスポリウム属の群から選ばれた菌類を、高い回収率で回収できる。
【0016】
本発明では、前記微生物培養物は、粉粒物が混合されている構成とすることが好ましい。
この発明では、微生物培養物に粉粒物を混合しておくことで、菌類の粉粒物への付着により培地成分から菌類を効率よく分離でき、回収率をより向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の菌類の回収方法を実施する一実施形態の回収装置を示す一部を切り欠いた概略斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の菌類の回収方法における実施形態について説明する。
なお、本発明は、以下の実施形態に限られるものではない。
【0019】
[微生物培養物]
本発明で用いられる微生物培養物は、固体培地または液体培地を担体および栄養源として微生物である菌類の培養を行った、培地成分と微生物との複合物である。
本発明における微生物培養では、通常の微生物の培養方法と同様の方法により行うことができる。微生物が増殖する条件であれば特に制限はないが、大量培養する場合は、フスマ、コムギ、オオムギ、ダイズ粉などを用いた固体培養方法が挙げられる。
ただし、胞子や分生子の形成を誘導するため、培地の組成、培地のpH、培養温度、培養湿度、酸素濃度などの培養条件を、その胞子形成条件に適合させるように調整することが望ましい。また、培養する微生物によっては、培養終了後、乾燥を行うことで、胞子化率、胞子の保存性、固体培養物の操作性を高めることができる。
【0020】
そして、微生物培養物には、粉粒物が混合されることが好ましい。混合する粉粒物としては、特に制限はないが、粘土鉱物、樹脂、無機質微粉、有機化合物、糖、食品原料微粉、粉末状界面活性剤などが挙げられる。
粘土鉱物としては、例えばカオリナイト、パイロフィライトなどが例示できる。
食品原料微粉(有機質微粉)としては、小麦粉、大豆粉、米粉などが例示できる。
粉末状界面活性剤としては、陰イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン界面活性剤などが例示できる。
無機質微粉としては、炭微粉、シリカ粉、各種無機塩類などが例示できる。
これら粉粒物は、粒径が0.05μm以上500μm以下、特に1μm以上100μm以下とすることが好ましい。ここで、粒径が0.05μmより細かくなると、粉粒物の凝集や飛散などが生じ、作業性や胞子回収効率を損なうおそれがある。一方、粒径が500μmより粗くなると、詳細は後述するがスクリーンメッシュの透過性を損ない、作業効率や胞子回収効率を低下させるおそれがある。このことから、粉粒物の粒径は、0.05μm以上500μm以下に設定される。
なお、粉粒物の混合に際しては、培地成分に混合する場合、微生物を培地後、後述する回収装置にて回収する直前など、いずれの時点で混合してもよい。
【0021】
[微生物]
本発明に用いる微生物としては特に制限はないが、タラロマイセス属、ペニシリウム属、ペキロマイセス属、グリオクラディウム属、ボーベリア属、レカニシリウム属、アスペルギルス属、トリコデルマ属、フザリウム属、ノムラエア属、バーティシリウム属、ムコール属、クラドスポリウム属の群から選ばれた少なくともいずれか1種の微生物が挙げられる。
なお、後述する回収装置にて胞子や分生子などの菌類を回収する微生物培養物は、1種類の微生物を培養したものに限らず、上記群から選ばれた複数の微生物を培養したものを用いたり、上記群から選ばれた微生物を培養した微生物培養物であって、培養した微生物がそれぞれ異なる複数の微生物培養物を用いたりしてもよい。
【0022】
[菌類の回収装置]
本発明の菌類の回収方法を実施する回収装置は、微生物培養物に所定の風速の気流を作用させ、微生物の胞子や分生子などである菌類を回収するものである。
図1に示すように、回収装置1は、筐体10と、この筐体10内に配設された円筒形のスクリーンメッシュ20と、スクリーンメッシュ20の内周側に配設した回転体30とを備えている。具体的な装置としては、パウシフター(商品名:ツカサ工業株式会社製)、ターボスクリーナー(商品名:ターボ工業株式会社製)、USシフター(商品名:株式会社徳寿工作所)、およびUXシフター(商品名:株式会社徳寿工作所)などが利用できる。なお、図1は、説明の都合上、筐体10およびスクリーンメッシュ20の一部を切り欠いたものを示す。
【0023】
筐体10は、例えばステンレス鋼などにて形成され、ホッパー11より微生物培養物が投入される図示しない投入口に連通するとともに菌類を排出する排出口12に連通する円筒状の内部空間10Aを有している。筐体10には、内部空間10Aを開閉する蓋体13が設けられている。この蓋体13には、スクリーンメッシュ20を通過しない培養残渣が排出される取出口13Aが設けられている。
なお、筐体10の材質は、ステンレス鋼に限られるものではないが、摩耗や腐蝕が生じにくい材料が好適である。
【0024】
スクリーンメッシュ20は、目的に適合するものであれば特に制限はないが、樹脂製または金属製のものが利用できる。特に、適度な伸縮性を有し、部分的かつ瞬間的な過負荷による破れが生じにくいPET(polyethylene terephthalate)樹脂またはナイロン樹脂にて形成したものが好適である。なお、金属製のものとしては、腐蝕などの点でステンレス鋼が好ましい。
そして、スクリーンメッシュ20は、円筒状に形成され、筐体10の内部空間10A内に同軸上で内周側が投入口に連通し、かつ外周面が筐体10の内周面から所定の間隙で離間する状態に配設されている。このスクリーンメッシュ20は、蓋体13が開かれた内部空間10Aから取出可能となっている。
スクリーンメッシュ20は、胞子や分生子などの菌類を通過可能で、微生物培養物の培地成分が通過不可能な目開きに設定されている。具体的には、1mm以下の目開きに設定することで、回収対象の胞子や分生子などの菌類と、不純物となる培地成分などの培養残渣とを分離できる。特に、回収対象の微生物毎に目開きを設定することがより望ましい。
具体的には、タラロマイセス属、ペニシリウム属、ペキロマイセス属およびアスペルギルス属の場合0.08mm以上1.0mm以下がより望ましく、ボーベリア属およびレカニシリウム属の場合0.05mm以上0.8mm以下がより望ましい。
なお、微生物培養物に賦形剤が混合された場合、目開きは0.03mm以上1.0mm以下、好ましくは0.05mm以上1.0mm以下とする。
【0025】
回転体30は、回転翼31と、この回転翼31を回転させる駆動手段32と、を備えている。
回転翼31は、例えば摩耗や腐蝕が生じにくい材料であるステンレス鋼にて形成され、筐体10の内部空間10A内に同軸上に回転自在に配設された回転軸31Aと、この回転軸31Aの周面に鍔状に立設された支柱部31Bと、この支柱部31Bの先端に設けられ長手方向が回転軸31Aに沿った羽根部31Cとを備えている。羽根部31Cは、長手方向でねじられた状態で支柱部31Bに配設されている。すなわち、回転翼31の回転により生じる回転気流が投入口から取出口13A側へ流れる渦流となる状態に、羽根部31Cがねじられて形成されている。
駆動手段32は、例えばモーター32Aを備え、所定の回転速度で回転翼31を回転させ、気流を生じさせる。
具体的には、胞子や分生子などの菌類がスクリーンメッシュ20を通過する際の風速が0.3m/秒以上0.65m/秒以下の気流を生じさせる回転速度とする。ここで、風速が0.3m/秒より遅くなると、胞子や分生子が十分に分離されず、回収率の向上が望めなくなる。また、風速が0.65m/秒では、胞子や分生子に加わる物理的衝撃が大きくなり、生菌率が低下して回収率の向上が望めなくなる。
このため、風速を0.3m/秒以上0.65m/秒以下に設定する。
【0026】
[菌類の回収方法]
次に、上記回収装置1を用いて胞子や分生子などの菌類を回収する方法について説明する。
【0027】
駆動手段32を駆動させ、回転翼31を所定の回転速度で回転させる。
回転速度は、筐体10内に配設したスクリーンメッシュ20に対し、胞子や分生子などの菌類が通過する方向で風速0.3m/秒以上0.65m/秒以下の気流を生じさせる速度に設定される。
この気流を発生した状態で、投入口から微生物培養物を投入する。
投入された微生物培養物は、気流が生じているスクリーンメッシュ20の内周側に投下され、気流により菌類が分離されてスクリーンメッシュ20を通過し、筐体10の内部空間10Aから排出口12を介して排出され、微粉画分として回収される。また、スクリーンメッシュ20を通過しなかった培養残渣などの粗粒画分は、取出口13Aを介して排出される。
ここで、スクリーンメッシュ20を通過して回収した微粉画分側における胞子や分生子などの生菌の総量は、微生物培養物の生菌総量に対して40%以上、好ましくは50%以上とすることが好ましい。すなわち、胞子や分生子などの菌類を工業や農業などで利用する場合、好適である。
【0028】
[実施形態の作用効果]
上述したように、上記実施形態では、スクリーンメッシュ20に対して胞子や分生子などの菌類が通過する方向で風速0.3m/秒以上0.65m/秒以下の気流中に微生物培養物を投入している。
このことにより、風圧および微生物培養物同士の衝突、さらには添加した粉粒物と微生物培養物との衝突などにより、胞子や分生子などの菌類が培地成分から分離され、気流と共にスクリーンメッシュ20を通過して回収される。
このように、従来の粉砕機を用いる場合のような大きな物理的衝撃が胞子や分生子などの菌類に加わることはなく、胞子や分生子などの菌類が死滅することを防止できる。さらに、ある程度の風圧が作用するので、効率よく培地成分から分離できるとともに、気流によりスクリーンメッシュ20などに付着や凝集することなく、非常に軽量な胞子や分生子などの菌類でも飛散せずに搬送できる。このため、スクリーンメッシュ20を通過させて効率よく回収でき、菌類の飛散による作業環境の悪化が生じることなく、菌類の回収率を向上できる。
【0029】
そして、上記実施形態では、回転軸31Aの周方向に立設した支柱部31Bの先端に、長手方向が回転時に沿った羽根部31Cを設けた回転翼31を複数設けた回転体30を用いている。
このため、菌類に大きな物理的負荷が加わることを抑制しつつ、風速0.3m/秒以上0.65m/秒以下の気流を生じさせることができ、簡単な構成で、生菌率が高く菌類の回収率を向上できる。さらに、回転体30により、微生物培養物が解砕されることとなるので、事前に解砕処理する必要がなく、菌類の回収作業が容易となり、より容易に効率よく菌類を回収できる。
【0030】
また、上記実施形態では、微生物培養物に、スクリーンメッシュ20を通過可能な粉粒物を混合している。
このため、菌類の粉粒物への付着により培地成分から菌類を効率よく分離でき、菌類の回収率をより向上できる。
【0031】
さらに、上記実施形態では、回転翼31の羽根部31Cは、それぞれねじられた状態に形成されている。
このことにより、回転翼31の回転により生じる回転気流が投入口から取出口13A側へ流れる渦流となり、投入された微生物培養物が筐体10の内部空間10A内に長時間対流することなく取出口13Aから適宜排出される。したがって、培地成分などが粉砕されて分離された胞子や分生子などの菌類に混入して不純物の割合が多くなるという不都合をより防止でき、羽根部31Cをねじった簡単な形状で、菌類の回収率を向上できる。
【0032】
[変形例]
なお、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良などは本発明に含まれるものである。
具体的には、回転体30を備えた回収装置1を用いる構成を例示したが、所定の風速の気流を生じさせるいずれの構成を適用できる。
例えば、回転体30を用いず、コンプレッサー、ボンベなどの圧縮空気、吸気ポンプ、ブロワーなど、気流を生じさせる各種構成を利用できる。これら送気もしくは吸気する構成を利用することで、菌体に加わる物理的衝撃をより軽減でき、菌体の生菌率を向上できる。
【0033】
その他、本発明の実施の際の具体的な構造および手順は、本発明の目的を達成できる範囲で他の構成に変更するなどしてもよい。
【実施例】
【0034】
以下、回転体30を備えた回収装置1を用いて、各種条件で菌類を回収した実験について説明する。
なお、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0035】
[微生物の培養]
微生物として、以下の表1に示す各種微生物を用いた。
具体的には、タラロマイセス・フラバス(微生物1)は、Y−9401株(FERM P−15816)を用いた。ペキロマイセス・テヌイペス(微生物2)は、OT10株(FERM AP−21795)を用いた。ボーベリア・バシアナ(微生物3)は、F−263株を用いた。レカニシリウム・レカニ(微生物4)は、OT14株(FERM AP−21796)を用いた。アスペルギルス・オリゼ(微生物5)は、土壌より単離して入手したものを用いた。
【0036】
【表1】

【0037】
培地成分は、MY−20培地成分を蒸留水に溶解し、坂口フラスコに注入してシリコ栓で密栓後、オートクレーブで121℃、15分間滅菌処理して作製したMY−20培地を用いた。
そして、各微生物を、MY−20培地を用いて5日間30℃で振とう培養し、培養液を調製した。
また、水を添加し含水率55%としたフスマをオートクレーブ滅菌した後、十分に混合し、固体培地とした。この固体培地にあらかじめ培養しておいた各微生物の培養液をそれぞれ接種し、28℃で7日間培養した。その後、30℃で3〜7日間乾燥し、微生物培養物を得た。
このようにして得られた各微生物培養物の胞子濃度を測定したところ、4×109 cfu/g〜9×109 cfu/gであった。
【0038】
ここで、微生物培養物の胞子濃度の分析は、以下の方法により実施した。
微生物培養物1gを正確に秤量し、滅菌済みの0.01%Tween溶液100mlに加えて十分に攪拌し、微生物懸濁液を作製した。この微生物懸濁液1mlを、滅菌済みの0.01%Tween溶液9mlに加えて十分に攪拌し、1/10希釈液を調製する。得られた1/10調製液の調製作業を繰り返し、微生物懸濁液の10-5希釈液を作製する。
そして、5枚のポテトデキストロース寒天培地プレートに、10-5希釈液0.1mlをそれぞれ塗布し、30℃で2〜3日間培養した。培養後の各プレートに出現した対象微生物コロニーの数をカウントし、5枚の平均値を算出する。そして、以下の計算式(1)を用いて、微生物培養物中の胞子濃度(CFU(colony forming unit)濃度)[cfu/g]を算出した。
なお、微生物培養物のCFU濃度が薄い場合、1/10調製液の調製作業の希釈段数を少なくするなどして調製した。
(プレート上のコロニー数の平均値)×100×105×10 …(1)
【0039】
[回収方法]
微生物の胞子の回収は、以下の表2に示す各装置を用いた。
具体的には、微生物培養物(表3中の培養物)と、微生物培養物に粉粒物を事前混合して調製した粉粒物入りの混合物(表3中の混合物)とを試料として用いた。なお、粉粒物は、カオリナイトおよびパイロフィライトにより構成され、粒径が1μm以上100μm以下の粘土鉱物を用いた。
そして、目開きおよび各装置の運転条件を適宜変更し、上記調製した微生物培養物から胞子を回収した。
その結果を、以下、表3に示す。
なお、表3中、微生物は表1に示すもの、装置は表2に示すものである。また、微粉画分回収率において、質量は試料の質量に対するスクリーンメッシュ20を通過して回収した微粉画分の質量の割合[%]、生菌は試料である微生物培養物のCFU総量に対する微粉画分のCFU総量の割合[%]である。同様に、粗粒画分残留率において、質量は試料の質量に対するスクリーンメッシュ20を通過しなかった残留する粗粒画分の質量の割合[%]、生菌は試料である微生物培養物のCFU総量に対する粗粒画分のCFU総量の割合[%]である。ロス率において、質量は試料全量から微粉画分および粗粒画分を減算した質量の割合[%]、生菌は試料全量のCFU総量から微粉画分および粗粒画分のCFU総量を減算したCFU総量の割合[%]である。
【0040】
【表2】

【0041】
【表3】

【0042】
表3に示す結果から、振動篩を用いる比較例1,6では、粗粒画分側に多くの胞子が残ってしまっていることが分かった。
また、ピンミル、パワーミル、クイックミルなどの粉砕機を用いる比較例2〜5,7では、振動篩を用いる場合に比して微粉画分側での生きた胞子の回収率は向上するものの、生菌のロスが高く飛散や特に死滅している割合が高く、衝撃が大きく、回収率の向上が得られないことが分かる。
一方、実施例1〜15では、風速0.30m/秒以上の気流でスクリーンメッシュ20を介して分級することにより、高い回収率でかつ高い生菌率で胞子を回収できた。
そして、スクリーンメッシュ20の目開きとして、0.08mmから1.0mmの範囲で、高い回収率かつ高い生菌率で胞子を回収できた。タラロマイセス属菌(微生物1)では、0.1mm以上0.7mm以下の範囲で、不要な培地成分の混入が抑制され、特に高い胞子回収率を示した。ペキロマイセス属菌では、0.5mmで高い胞子回収率を示した。ボーベリア属菌では、0.08mm以上0.7mm以下で高い胞子回収率を示した。レカニシリウム属菌では、0.08mmで高い胞子回収率を示した。アスペルギルス属菌では0.1mmで高い胞子回収率を示した。
【符号の説明】
【0043】
1……回収装置
30……回転体
31……回転翼
31A…回転軸
31B…支柱部
31C…回転翼

【特許請求の範囲】
【請求項1】
微生物培養物から培養した菌類を回収する回収方法であって、
前記菌類が通過可能で前記微生物培養物の培養残渣が通過不可能なスクリーンメッシュを用い、
前記スクリーンメッシュに対して前記菌類が通過する方向に風速0.3m/秒以上0.65m/秒以下の気流中に、前記微生物培養物を投入する
ことを特徴とする菌類の回収方法。
【請求項2】
請求項1に記載の菌類の回収方法において、
前記スクリーンメッシュは、内周側に前記微生物培養物が投入される円筒状に形成されたもので、
前記スクリーンメッシュの内周側に配置され、前記スクリーンメッシュの中心軸に回転軸を有する回転体を用い、
前記回転体を回転させることで、前記気流を生じさせる
ことを特徴とする菌類の回収方法。
【請求項3】
請求項2に記載の菌類の回収方法において、
前記回転体は、回転軸の周面に立設された支柱部と、この支柱部の先端に設けられ長手方向が前記回転軸に沿った羽根部とを複数備えた回転翼を備えた
ことを特徴とする菌類の回収方法。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の菌類の回収方法において、
前記菌類は、タラロマイセス属、ペニシリウム属、ペキロマイセス属、グリオクラディウム属、ボーベリア属、レカニシリウム属、アスペルギルス属、トリコデルマ属、フザリウム属、ノムラエア属、バーティシリウム属、ムコール属、クラドスポリウム属の群から選ばれた少なくとも1つである
ことを特徴とする菌類の回収方法。
【請求項5】
請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載の菌類の回収方法において、
前記微生物培養物は、粉粒物が混合されている
ことを特徴とする菌類の回収方法。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2013−42742(P2013−42742A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−185085(P2011−185085)
【出願日】平成23年8月26日(2011.8.26)
【出願人】(000183646)出光興産株式会社 (2,069)
【Fターム(参考)】