説明

菓子入りパン類の製造方法

【課題】 パン生地にパンとは異なる風味を有する菓子生地の小片を特別な添加剤や装置を用いることなく簡易な方法で練り込み、焼成後もパン生地と小片状の菓子生地が隙間を生じることなく適合し、菓子生地が有する味を引き立たせ、かつパン生地の有する風味とともに食感・外観にも変化をもたらすことを可能とした新しい形態のパン類を提供すること。
【解決手段】 パン生地に冷凍した菓子生地を練り込むことにより、パンや菓子類が有する風味が引き立った、かつ食感・外観に優れた菓子入りパン類を製造する。冷凍した菓子生地の形状としては、サイコロ状、直方体状、ペンシル(長棒)状、球状、楕円球状、円筒状、円錐状、三角錐状、三角柱状、金平糖状等を挙げることができる。また、パン生地に使用する小麦粉100質量部に対し、冷凍菓子生地を10〜50質量部混入することが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パン生地に、冷凍した菓子生地を散在するように練り込んで焼成した菓子入りパン類の製造方法、その製造方法により得られる菓子入りパン類の生地、及びそれを冷凍した菓子入りパン類の冷凍生地に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、パン生地に異種の食品や、異種のパン生地を存在させて練り込み、焼成し、パン類に変化をもたせたものは、種々知られている。例えば、パン生地形成時に、レーズン、くるみ、松の実、チーズ、チョコレートチップ等を混合して焼成したパン類や、パン生地を7割方捏ねあげた後、熱湯でよく溶いたココアを加えて、マーブル模様が残る程度にさっくりと混ぜ合わせて、常法により発酵、焼成したマーブルブレッドはよく見かける食品である。これら類似の技術として、パン生地に、ペースト状、液体状等の食品をゲル形成剤によってゼリー状として練り込んでパン類を製造する方法(たとえば、特許文献1参照)や、無着色又は薄く着色した無地のパン生地と、着色したパン生地を組合わせて得られたパン生地を焼成し、焼成後のパンの切断面に特定の模様や絵柄を与えるようにしたパンの製造方法(例えば、特許文献2参照)や、色調や風味の異なる複数のパン生地を一つのパン型に入れて焼成し、パン生地に基づく各パン組織部分が連続する一体の形態をなす型焼きパン(例えば、特許文献3参照)等が知られている。
【0003】
また、パン生地中に、クッキー生地が折り込まれ、焼成されることによって得られる層状菓子パン(例えば、特許文献4参照)や、小麦粉100質量部に対して、ローカストビーンガム1〜8質量部を配合して得られるフィリング用ケーキ生地を製パン生地に内包した後、加熱することにより内・外の互いの生地が剥離したり空洞を生じたりしないパンの製造方法(例えば、特許文献5参照)や、積層生地でクッキー生地を包み込み、圧延、折り畳み操作により得られる複合積層生地を成型後、焼成するベーカリー製品の製造方法(例えば、特許文献6参照)が知られている。
【0004】
さらに、パンのミミであるクラストを冷蔵または冷凍した後に断片化するか、断片化した後に冷蔵または冷凍することによって得られる断片化したクラストを、固化状態のままベーカリー製品の生地に添加し、該生地と混捏もしくは積層して焼成するクラスト入りベーカリー製品の製造方法も知られている(例えば、特許文献7参照)。
【0005】
一方、パン生地に、冷凍した菓子生地を散在するように混合・混捏して、常法により発酵、焼成するパン類の製造方法、この製造方法により製造される菓子入りパン類生地及びこの種の菓子入りパン類の生地を冷凍することは知られていない。
【0006】
【特許文献1】特開昭56−78554号公報
【特許文献2】特開昭64−34235号公報
【特許文献3】特開平3−123437号公報
【特許文献4】特開平7−250610号公報
【特許文献5】特開平8−308473号号公報
【特許文献6】特開2004−201656号公報
【特許文献7】特開平8−38029号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、パン生地にパンとは異なる風味を有する菓子生地を特別な添加剤や装置を用いることなく簡易な方法で練り込み、焼成後、パンと菓子との間に隙間を生じさせることなく、パンや菓子類が有する風味が引き立った、かつ食感・外観に優れた菓子入りパン類を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、従来のような特別な手段や添加剤等を使用せずに、パン生地にこれとは異なる菓子生地を練り込み、種々の変化ある風味を有するパン類を製造する方法について鋭意検討した結果、パン生地に冷凍した菓子生地を散在するように練り込むことにより、パンや菓子類が有する風味が引き立った、かつ食感・外観に優れた菓子入りパン類を製造しうることを見い出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち本発明は、(1)冷凍した菓子生地を、パン生地中に散在するように混合・混捏することを特徴とする菓子入りパン類の製造方法や、(2)冷凍した菓子生地が、サイコロ状、直方体状、ペンシル状、球状、楕円球状、円筒状、円錐状、三角錐状、三角柱状の1種又は2種以上の形状からなるものであることを特徴とする上記(1)記載の菓子入りパン類の製造方法や、(3)パン生地に使用する小麦粉100質量部に対し、冷凍した菓子生地を10〜50質量部混合することを特徴とする上記(1)又は(2)記載の菓子入りパン類の製造方法や、(4)菓子生地が、クッキー生地、シュー生地、クラッカー生地、プレッツェル生地又はパイ生地であることを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれかに記載の菓子入りパン類の製造方法や、(5)菓子生地が、酸味料、甘味料、ミルク、香味料、食塩の1種又は2種以上を用いて風味付けされていることを特徴とする上記(1)〜(4)のいずれかに記載の菓子入りパン類の製造方法に関する。
【0010】
また、本発明は、(6)冷凍した菓子生地が、パン生地中に散在するように混合・混捏されていることを特徴とする菓子入りパン類の生地や、(7)上記(6)記載の菓子入りパン類の生地が冷凍されていることを特徴とする菓子入りパン類の冷凍生地に関する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によると、パン生地に冷凍した菓子生地を混合・混捏して得られる菓子入りパン類の生地を、常法により発酵、焼成することにより、パンと菓子類との接触面に隙間のないパン類に仕上がり、食するときに菓子類の脱落がなく、また、菓子生地に様々な味付けをすることにより、通常のパンでは味わうことができない、塩味、スパイス味、強い甘味、強いミルク味等のバラエティーにとんだ様々な味を楽しむことができ、加えて、パンと菓子類との風味のバランスがよく、食感・外観においても優れた菓子入りパン類を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の菓子入りパン類の製造方法としては、パン生地に冷凍した菓子生地を散在するように混入して、常法により発酵、焼成する方法であれば特に制限されず、本発明の菓子入りパン類としては、上記本発明の菓子入りパン類の製造方法によって得られ、内部及び/又は表面に存在する菓子類とパンとの接触面に隙間がない菓子入りパン類であれば特に制限されず、本発明の菓子入りパン類の生地としては、パン生地に冷凍した菓子生地が混入されている生地であれば特に制限されず、本発明の菓子入りパン類の冷凍生地としては、上記本発明の菓子入りパン類の生地が冷凍されている冷凍生地であれば特に制限されず、ここで、パン生地とは食パン、菓子パン等の通常のパンの生地を意味する。また、上記混入とは、混合・混捏の他、挿入や表面付着をも意味する。
【0013】
本発明の特徴は、上記のように、冷凍した菓子生地をパン生地に混入する点にあるが、菓子生地をこのように冷凍処理するのは、第1に菓子生地を固化して混合・混捏等の混入後においても菓子生地の形状を維持して、パン生地と菓子生地が完全に混ざり合うことを防止するためであり、第2に、固化した冷凍菓子生地を特別な手段や添加剤等を使用せずに、所望の状態で混入(例えば、小片状の菓子生地がほぼ均一に散在するような混合・混捏や、長棒状の菓子生地をパン生地長手方向への挿入など)するためであり、第3に、冷凍された菓子生地が融解し終わるまでに、菓子生地表面が(菓子生地と接している)パン生地と馴染み合い、焼成後に菓子類とパンとの接触面に隙間がない菓子入りパン類を得るためである。したがって、冷凍した菓子生地を用いることにより、焼成後の菓子入りパンは、所望の位置に所望の状態で隙間を生じることなく、かつ食したとき、違和感なくパン類と菓子の両者がかもし出す風味や食感を享受することができる。
【0014】
上記パン生地としては、通常の組成よりなるパン生地であれば何ら制限されるものではなく、例えば、小麦粉として強力粉:薄力粉=100〜70:0〜30(質量比)からなる粉100gに対し、食用油脂類0〜20g,糖類0〜30g、食塩0.1〜2g、卵製品0〜30g、乳製品0〜3g、イースト2〜4g、イーストフード0〜0.1g及び水50〜70gからなる生地を好適に例示することができる。その他、香味料、ココア、チョコレート、レーズン等を添加したものもパン生地として用いることができる。
【0015】
上記の食用油脂類として大豆油、菜種油、綿実油、パーム油、サフラワー油、ひまわり油、バター、ラード、マーガリン、ショートニング等を例示できる。糖類としては砂糖、転化糖、異性化糖、含蜜糖、ブドウ糖、果糖、乳糖、麦芽糖、蜂蜜、水飴等をあげることができる。卵製品としては全卵、卵黄、卵白、乾燥卵、凍結卵、加糖濃縮卵等を挙げることができる。乳製品としては牛乳、練乳、全粉乳、脱脂粉乳、クリーム、ホエーパウダー、チーズ等を例示することができる。またその他の添加物として大豆粉、乳化剤、酵素、ビタミン類、ミネラル類、カルシウム供給源、及び菓子生地に用いられると同様の酸味、強い甘味、ミルク味、しそ味のするもの又はシーズニング等を用いることができるが、菓子生地に用いられるものと異なるものが風味の変化を楽しむことができるので好ましい。
【0016】
上記パン生地、例えば食パン生地における特に食塩や糖類の添加量は、菓子生地における食塩や糖類の含有量とのバランスを考慮して決定することが好ましい。例えば、菓子生地が甘めの場合には塩味を強めに風味付けすることができる他、塩味が濃いめの菓子の場合には食塩を少なめに、薄味の菓子の場合には食塩を多めに添加し、また、甘味が濃いめの菓子の場合には糖類を少なめに、薄味の菓子の場合には糖類を多めに添加し、パンと菓子との味のバランスをとることが好ましい。
【0017】
本発明で用いる菓子生地は、通常菓子生地として用いるものであれば何ら制限されるものではないが、用いる小麦粉は薄力粉を用いることが好ましく、薄力粉に中力粉や強力粉を混合し発酵して製造する場合も含まれる。かかる菓子生地として、クッキー生地、シュー生地、クラッカー生地、プレッツェル生地、パイ生地等を具体的に例示することができ、これら菓子生地としてのクッキー生地、シュー生地、クラッカー生地、プレッツェル生地、パイ生地等は、通常これらに用いられる組成よりなる菓子生地を用いることにより調製することができる。例えば、クッキー生地は、小麦粉に糖類、油脂及び水と、必要に応じて卵、食塩、膨張剤、乳製品、呈味剤、フルーツナッツ類及びこれらの乾燥粉末等を副材料として用いることができる。クラッカー生地、プレッツェル生地は、小麦粉、ショートニング、イースト、水、イーストフード、砂糖、食塩、重曹を用いる。パイ生地は、小麦粉に、油脂及び水と、必要に応じて卵、乳製品、糖類、食塩、呈味剤、イースト等を混捏し、圧延して生地を作製し、これにロールイン用の油脂を包み込み、圧延し、折り畳むことによりパイ生地を得ることができる。
【0018】
また、菓子生地の風味付けには、酸味料、甘味料、ミルク、香味料又は食塩の1種又は2種以上を用いることができる。酸味料として、酸味を感じさせる天然物系のフルーツ、例えば、クランベリー、レッドカラント、アプリコット、オレンジピール、レモン等や、食品添加物として許可されているクエン酸、酒石酸、グルコン酸、グルコノデルタラクトン、リンゴ酸、フマル酸、乳酸、アジピン酸、酢酸等を挙げることができる。甘味料として、甘味を感じさせる砂糖、蜂蜜、水飴、黒糖、ブドウ糖、果糖、乳糖、麦芽糖、転化糖、異性化糖、マンニトール等を例示することができる。ミルクとして、ミルク味を感じさせる牛乳、練乳、クリーム等を例示することができる。香味料として、例えば、赤紫蘇の粉末(所謂、「ゆかり」)や、シナモン、クローブ、ナツメグ、ジンジャーパウダー、バニラエッセンス、オールスパイス、クローブ、オレガノ、タイム、セージ、シナモン、とうがらし、ターメリック、ローレル、バジル、ペパーミント、ローズマリー、マジョラムを挙げることができる。そのほか、ゴマ類、コーンフレーク、ココナッツパウダー、ココア、チョコレート粉末や、ドライフルーツとして、干しブドウ、干しイチジク、干しリンゴ、バナナチップ、干しプルーン等のフレークや破砕物を用いることができ、菓子用種子として、ひまわりの種、かぼちゃの種、松の実、ヘーゼルナッツ、カシューナッツ、アーモンド等の粉砕物を用いることができる。
【0019】
パン生地に混入される冷凍した菓子生地の形状は特に制限されず、サイコロ状、直方体状、ペンシル(長棒)状、球状、楕円球状、円筒状、円錐状、三角錐状、三角柱状、金平糖状等を具体的に例示することができ、これらは1種又は2種以上用いることができる。長辺や直径が0.5〜3cmの小片タイプのサイコロ状、直方体状、球状等の菓子生地の1種又は2種以上を用いる場合は、パン生地中やパン生地表面に偏在させることもできるが、パン生地中にほぼ均一に散在するように混合・混捏することが好ましい。また、長さが3cm以上のペンシル状、円筒状の細長い菓子生地の1又は2以上を用いる場合は、パン生地中に挿入することにより混入することができ、この場合、細長い菓子生地の一部がパン生地から突出していてもよい。
【0020】
菓子生地を小片タイプのサイコロ状、直方体状、球状のような形状にして混合する場合、生地冷凍後に小片状に裁断するか、小片状に成型してから冷凍するかはどちらでもよい。また、菓子生地の冷凍温度は、通常の食品の冷凍温度の範囲で行われ、おおむね、−18〜−30℃で冷凍することが好ましい。
【0021】
本発明において、パン生地と冷凍菓子生地との配合割合は、特に制限されるものではないが、パン生地に使用する小麦粉100質量部に対し、冷凍菓子生地を10〜50質量部混入することが好ましい。菓子生地が10質量部以下では、菓子生地の組成にもよるが、菓子生地を使用することによる風味、食感・外観などにおいて満足できない可能性があり、また50質量%を超えると、菓子生地の組成にもよるが、パン生地に冷凍された菓子生地を混合・混捏(ミキシング)した際、パン生地の温度コントロールが困難となり、ミキシング後の生地に多少のベタツキ感が生じるおそれがある。
【0022】
本発明の菓子入りパン類の製造方法は、直捏法と中種法による方法のどちらでも行うことができる。直捏法は全原料を一度に捏ねて発酵させる方法で、古くから行われている製パンの基本的方法といえる。中種法は小麦粉の一部とイースト、イーストフードだけで中種を作り、十分発酵させた後、残りの全原料を加えて再度混捏し、仕上げ、ホイロ(焙炉)、焼成を行う方法である。
【0023】
本発明の菓子入りパン類の製造方法において、例えば、直捏法の場合、まず小麦粉、生イースト、イーストフード、食塩、上白糖、脱脂粉乳、マーガリン、水を用いてパン生地を製造する。一方、菓子生地として例えばクッキー生地を用いる場合は、常法であるシュガーバッター法に順じて行う。砂糖、油脂、水(濃縮乳)に必要に応じて全卵、香味料、食塩並びに膨張剤を加えてミキシングしてクリーム状とし、これに、小麦粉や必要に応じてα−澱粉等を加えてミキシングしてクッキー生地を作る。このクッキー生地を冷凍庫内で冷凍する。冷凍後のクッキー生地を例えばサイコロ状(ダイス状)に裁断し、冷凍したサイコロ状の菓子生地を調製する。この冷凍菓子生地は前記パン生地に混入されるが、小片タイプの複数の冷凍菓子生地をパン生地中に散在させる場合、あらかじめミキシングしておいたパン生地に小片タイプの複数の菓子生地を投入し、かかる冷凍菓子生地がほぼ均一に散在するように短時間追加のミキシングをすることが好ましく、また、細長い菓子生地を混入させる場合は、ミキシング終了後のパン生地に挿入することにより混入させることが好ましい。また、冷凍菓子生地投入時のパン生地温度は通常25〜30℃、好ましくは約28℃である。冷凍菓子生地をパン生地に混入後、例えば、60〜180分間発酵させ、適宜の質量に分割し、ベンチタイムを0〜30分間とり、成型し、焙炉(ホイロ)30〜40℃で30〜90分間、ついで170〜220℃で20〜60分間焼成することにより、本発明の菓子入りパン類を得ることができる。
【0024】
本発明の菓子入りパン類は、以上の本発明の菓子入りパン類の製造方法により得ることができ、内部や表面に存在する菓子類とパンとの接触面に隙間がない。
【0025】
本発明の菓子入りパン類の生地は、以上の本発明の菓子入りパン類の製造方法に用いられるものであるが、便宜上パン生地に混入された冷凍菓子生地が融解した状態のものや、冷凍菓子生地をパン生地に混入し、常法により発酵することにより得られるものも含まれる。
【0026】
本発明はまた、長期保存のため、或いはパン・菓子の小売店でも焼きたての菓子入りパン類が消費者に得ることができるように、菓子生地入りパン類の生地を冷凍した菓子入りパン類の冷凍生地をも対象としている。本発明の菓子入りパン類の冷凍生地には、冷凍菓子生地をパン生地に混入し、常法により発酵することにより得られる菓子入りパン類の生地を通常のパン生地の冷凍方法により冷凍したものや、冷凍菓子生地をパン生地に混入した菓子入りパン類の生地をそのまま冷凍したものを例示することができる。本発明の菓子入りパン類の冷凍生地を作製する場合、冷凍耐性の酵母を用いたり、パン生地にアスコルビン酸、モルト粉末、乳化剤、酵素剤等の生地改良剤を混合しておくなど、従来の冷凍パン生地の製造方法を有利に採用することができる。
【0027】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの例示に限定されるものではない。
[実施例1]
【0028】
(クッキー入り食パン)
パン生地の材料として、強力粉100質量部(以下、質量部を省略して単に部で表す)、生イースト3部、イーストフード0.1部、食塩2部、上白糖8部、脱脂粉乳2部、油脂(マーガリン)5部、水73部を用い、パン生地の調製には直捏法を採用した。一方、クッキー生地の材料として、薄力粉70部、中力粉30部、グラニュー糖40部、濃縮乳16部、マーガリン60部を用い、クッキー生地の調製は、マーガリンを撹拌によりクリーム状にし、これにグラニュー糖と濃縮乳を数回に分けて入れ、生地がふわっとするまで混合し、最後に小麦粉を一度に入れてさっくりと混ぜた。このクッキー生地を−30℃に設定した冷凍庫内で冷凍した後、1cm角のサイコロ状に裁断した。この冷凍したサイコロ状のクッキー生地20部を、パン生地材料に以下のタイミングで混合・混捏した。マーガリンを除くパン生地材料を低速2分・高速9分間ミキシングした後(パン生地温度28℃)、マーガリン(5部)を投入し、次いで中速1分・高速4分間ミキシングした後(パン生地温度28℃)、冷凍クッキー生地(20部)を投入し、中速1分間のミキシングを行った。ミキシングした後も、パン生地中の冷凍クッキー生地はほぼサイコロ形状を維持していた。前記のミキシング後の生地はベタツキがなく、生地感は良好であった。その後30℃で60分間発酵し、242gずつ6個に分割した。生地比容積は、4.0であった。ベンチタイム20分後、U字状に成型した。ホイロを38℃で47分間とった後、215℃で37分間焼成し、サイコロ状クッキー入りパン類を得た。焼成後のサイコロ状クッキー入りパン類は、通常のパンに比して、食感に変化があり、サイコロ状クッキー部とパン部との境目には隙間がなく、パン類の内部及び表面に、パン組織とは異なる組織を有するサイコロ状クッキーが存在し、模様としての外観も良好であった。
[実施例2]
【0029】
(クッキー入り食パン)
実施例1の冷凍クッキー生地の配合量を20部に代えて40部、発酵時間を60分間に代えて70分間、発酵後の分割質量1個当たり242gに代えて255gとしたこと以外実施例1と同様の方法により、サイコロ状クッキー入りパン類を得た。この実施例2において、ミキシング後の生地は、ベタツキがなく、生地感は良好であり、発酵後の比容積は3.8であった。焼成後のサイコロ状クッキー入りパン類は、食感、外観ともに実施例1と同様に良好であった。
[実施例3]
【0030】
(クッキー入り食パン)
実施例1の冷凍したクッキー生地の配合量20部に代えて60部を、発酵時間60分間に代えて80分間を、分割質量1個当たり242gに代えて271gを、38℃、47分間のホイロに代えて38℃、52分間のホイロとした以外は、実施例1と同様の方法により、サイコロ状クッキー入りパンを得た。この実施例3において、ミキシング後の生地は多少のベタツキ感があり、発酵後の比容積は3.6であった。焼成後のサイコロ状クッキー入りパン類は、濃厚な食感であり、模様としての外観は良好であった。
[実施例4]
【0031】
(おやつ風食パン)
実施例1のパン生地材料中の上白糖8部に代えて15部とし、クッキー生地材料中に塩0部に代えて塩1部とした以外実施例1と同様の方法により、サイコロ状クッキー入りのおやつ風食パンを製造した。この実施例4において、ミキシング後の生地感は良好であり、また、焼成後のサイコロ状クッキー入りおやつ風食パンは、クッキー部に塩を入れ、パン部分に上白糖を多く入れたので、パン部の甘みが引き立ったおやつ風のパン類が得られ、食感、外観とも良好であった。
[実施例5]
【0032】
(ゆかり入り食パン)
実施例1の菓子生地にゆかり(赤紫蘇の粉末)を0.5部加えた以外は、実施例1と同様の方法により製造した。ゆかり入りおにぎりを思わせる風味があり、食感、外観共に良好で、食欲をそそるものであった。
[実施例6]
【0033】
(塩クッキー入り食パン)
表1に示されるパン生地材料を用いて中種法により、中種ミキシングを低速2分・中速2分間行い(中種捏上温度は24℃)、中種発酵(27℃、湿度75%)を4時間行った。この中種生地に表1に示される本捏材料を混合した。一方、塩クッキー生地として、小麦粉(フラワー)100部、グラニュー糖30部、濃縮乳17部、マーガリン60部、食塩1.5部を用いて、実施例1におけるクッキーの製法と同様にして直径1cmの球状の冷凍クッキー生地を得た。本捏においてマーガリン以外の材料をミキシング低速2分・中速6分間ミキシングした後、マーガリン5部を投入し、次いで低速2分・中速5分間ミキシングを行い、得られたパン生地を3分割した。各1/3ずつの生地に冷凍クッキー生地を各々20部、40部、60部混合し、中速で1分間ミキシングした。本捏捏上温度27℃とし、フロア−タイム20分とした。3分割後の生地比容積は、菓子生地20部を混合したのものは、4.0、菓子生地40部を混合したものは3.8、菓子生地60部を混合したものは、3.6とした。その後、ベンチタイムを20分間とし、モルダーによる成型を行った後、ホイロを温度38℃、湿度85%で40分間で行った後、215℃で40分間焼成を行って、塩クッキー入り食パンを得た。焼成後の塩クッキー入り食パンは、塩味クッキーとパン部が調和し、食感がよく、外観もふっくらとしていた。
【0034】
【表1】

[実施例7]
【0035】
(菓子入りパン類の冷凍生地)
実施例1において、生イーストとして冷凍耐性の酵母を用いた。実施例1と同様の方法により、ミキシング、発酵、分割を経て得られた混合生地を−40℃の冷凍庫において冷凍し、冷凍クッキー入りパン類生地を得た。この冷凍クッキー入りパン類生地を−20℃で2日間保存した。その後、前記冷凍クッキー入りパン類生地を27℃60分間で解凍し、成形、ホイロを経て、215℃40分間で焼成したところ、実施例1で得られたサイコロ状クッキー入りパン類と同様に食感、風味、外観共に良好であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷凍した菓子生地を、パン生地中に散在するように混合・混捏することを特徴とする菓子入りパン類の製造方法。
【請求項2】
冷凍した菓子生地が、サイコロ状、直方体状、ペンシル状、球状、楕円球状、円筒状、円錐状、三角錐状、三角柱状の1種又は2種以上の形状からなるものであることを特徴とする請求項1記載の菓子入りパン類の製造方法。
【請求項3】
パン生地に使用する小麦粉100質量部に対し、冷凍した菓子生地を10〜50質量部混合することを特徴とする請求項1又は2記載の菓子入りパン類の製造方法。
【請求項4】
菓子生地が、クッキー生地、シュー生地、クラッカー生地、プレッツェル生地又はパイ生地であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の菓子入りパン類の製造方法。
【請求項5】
菓子生地が、酸味料、甘味料、ミルク、香味料、食塩の1種又は2種以上を用いて風味付けされていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の菓子入りパン類の製造方法。
【請求項6】
冷凍した菓子生地が、パン生地中に散在するように混合・混捏されていることを特徴とする菓子入りパン類の生地。
【請求項7】
請求項6記載の菓子入りパン類の生地が冷凍されていることを特徴とする菓子入りパン類の冷凍生地。