説明

菓子

【課題】卵黄を含有し加熱処理を施しているにも拘わらず、カテキン特有の香味が引き立つ菓子を提供する。
【解決手段】キサントフィル類を8ppm以下含有する卵黄、並びに緑茶及び紅茶の少なくとも1種以上を配合し、加熱処理を施してなる菓子であって、前記卵黄の配合比率が卵黄全体の80%以上(固形分換算)であることを特徴とする菓子。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、卵黄を含有し加熱処理を施してなる菓子において、カテキン特有の香味を引き立てる菓子に関する。
【背景技術】
【0002】
クッキー、ワッフル、スポンジケーキ、プリン等の菓子は、卵黄に焼成や蒸煮等の加熱処理を施した際に生じる特有のコク味が特徴である。しかしながら、さらに抹茶等を加えてカテキン特有の香味を付与しようとしても、卵黄の加熱風味に阻害され、消費者の要望を十分に満足することが困難であった。
【0003】
カテキン特有の香味を付与する方法として、特開2004−313189号公報(特許文献1)には、特定のエステル型カテキン類を、特定量、特定比率で含有するカテキン含有飲食物が記載されている。しかしながら、工程が煩雑であるため、消費者の要望を十分に満足するものではなかった。
【0004】
【特許文献1】特開2004−313189号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明は、卵黄を含有し加熱処理を施しているにも拘わらず、カテキン特有の香味が引き立つ菓子を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者が、前記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、
キサントフィル類を特定量以下含有する卵黄、及び特定の茶類の少なくとも1種以上を配合し、加熱処理を施してなる菓子であって、キサントフィル類を特定量以下含有する卵黄の配合比率が、卵黄全体の特定比率以上となるように調製せしめたところ、意外にもカテキン特有の香味が引き立つ菓子を提供するものである。
【0007】
すなわち、本発明は、
(1)キサントフィル類を8ppm以下含有する卵黄、並びに緑茶及び紅茶の少なくとも1種以上を配合し、加熱処理を施してなる菓子であって、前記卵黄の配合比率が卵黄全体の80%以上(固形分換算)である菓子、
(2)緑茶及び紅茶の配合量が、茶葉及び/又はその浸出液の固形分換算で、0.1〜4%である(1)の菓子、
である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、卵黄を含有し加熱処理を施しているにも拘わらず、カテキン特有の香味が引き立つ菓子を提供することができる。これにより、菓子市場の更なる拡大が期待できる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を詳細に説明する。なお、本発明において「%」は「質量%」を意味する。
【0010】
本発明の菓子は、卵黄を含有し加熱処理を施すものであれば特に限定されず、例えば、クッキー、ワッフル、スポンジケーキ、カステラ、パンケーキ、パウンドケーキ、カスタードクリーム、プリン、黄味餡等を挙げることができる。
【0011】
本発明の菓子に用いるキサントフィル類を8ppm以下含有する卵黄は、トウモロコシ、パプリカ、マリーゴールド等のキサントフィル類を含む飼料を与えずに一定期間以上飼育した雌鶏により産卵される。これに対し、市販の鶏卵は、トウモロコシを与えて飼育した雌鶏が産卵しており、キサントフィル類を30〜100ppm含有している。
【0012】
キサントフィル類とは、カロテノイドのうち、炭素分子、水素分子及び酸素分子を含有しているものを指し、具体的には、ルテイン、ゼアキサンチン、カプサンチン等が挙げられる。
【0013】
前記卵黄のキサントフィル類の含有量は、8ppm以下であり、5ppm以下が好ましく、含有しないことがより好ましい。キサントフィル類の含有量が前記値より高い場合、カテキン特有の香味を引き立てる本発明の効果が得られ難い。なお、キサントフィル類の含有量は、改訂食品分析ハンドブック(建帛社出版)に記載の常法を用いて、鶏卵からキサントフィル類を抽出し、453nmの吸光度を測定することにより求められる。
【0014】
本発明の菓子全体に対する、キサントフィル類を8ppm以下含有する卵黄の配合量は、特に限定されず、クッキー、ワッフル、スポンジケーキ、プリン等の菓子を調製する際の必要量を配合すれば良く、生卵黄換算で、5〜20%以下が好ましい。キサントフィル類を8ppm以下含有する卵黄の配合量が、前記範囲より少ないと、所望の菓子を調製することができない場合がある。
【0015】
卵黄全体に対する、キサントフィル類を8ppm以下含有する卵黄の配合比率は、固形分換算で、少なくとも80%以上であり、90%以上が好ましい。キサントフィル類を8ppm以下含有する卵黄の配合比率が、前記値より少ないと、カテキン特有の香味が卵黄の加熱風味に阻害されてしまう恐れがある。
【0016】
本発明の菓子は、緑茶、紅茶の少なくとも1種以上を含有する。特に、緑茶のうち抹茶を用いた場合にカテキン特有の香味が引き立ち非常に好ましい。
【0017】
緑茶とは、製造の初期工程で加熱処理により茶葉中の酸化酵素の活性を止めることで、発酵を行わず、茶葉の緑色を保存させた茶葉又はその浸出物である。さらに、緑茶はその製造方法の特徴により、抹茶、ほうじ茶等に分類される。
【0018】
抹茶とは、蒸し加熱を施した後に乾燥させたものの葉脈を取り除き、石臼等で挽いた粉末及びその浸出物である。ほうじ茶とは、芳ばしい香味を付与するために緑茶を強火で炒ったものである。
【0019】
本発明の菓子において、緑茶の配合量は、茶葉及び/又はその浸出液の固形分換算で、0.1〜6%が好ましく、0.2〜3%がより好ましい。緑茶の配合量が前記範囲より少ない場合、カテキン特有の香味が引き立つ本発明の効果が得られ難い。前記範囲より多い場合、含有量の増加に応じて本発明の効果が得られ難く経済的でない。
【0020】
紅茶とは、酸化酵素の活性を利用して製造したもので、茶葉を萎れさせた後に湿度の高い部屋で充分に発酵させた茶葉及びその浸出物である。
【0021】
本発明の菓子において、紅茶の配合量は、茶葉及び/又はその浸出液の固形分換算で、0.1〜6%が好ましく、0.2〜3%がより好ましい。紅茶の配合量が前記範囲より少ない場合、カテキン特有の香味が引き立つ本発明の効果が得られ難い。前記範囲より多い場合、含有量の増加に応じて本発明の効果が得られ難く経済的でない。
【0022】
本発明の菓子の加熱処理温度は、クッキー、ワッフル、スポンジケーキ、プリン等の菓子の製造方法によって異なるが、卵黄の加熱風味は80〜180℃で加熱した時に生じる。
【0023】
本発明の菓子は、本発明の効果を損なわないものであれば、前記キサントフィル類を8ppm以下含有する卵黄と、緑茶、紅茶の少なくとも1種以上以外の原料を配合することができる。具体的には、例えば、スクロース、グルコース、ガラクトース、フルクトース、マンノース、ラクトース、マルトース、トレハロース、蜂蜜、水飴、還元水飴、砂糖結合水飴、オリゴ糖、還元オリゴ糖、異性化糖、転化糖、糖アルコール、澱粉を加水分解して製したデキストリン、サイクロデキストリン、還元デキストリン、イヌリン等の糖類、小麦粉、米粉等の穀粉、コーンスターチ、馬鈴薯澱粉、タピオカ澱粉等の生澱粉、物理的及び/又は酵素的及び/又は化学的処理を施した澱粉、大豆油、胡麻油等の油脂類、アーモンド、ナッツペースト、ナッツ粉末等のナッツ類、果実、果汁、果肉ペースト、乾燥果実等の果実類、野菜、野菜汁、野菜ペースト、乾燥野菜等の野菜類、家禽の卵白、卵黄、全卵、牛乳、濃縮乳、粉乳、乳蛋白質、発酵乳、チーズ等の乳原料、豆乳、大豆多糖類、大豆蛋白質等の大豆類、ゼラチン等の蛋白質原料、キサンタンガム、ネイティブジェランガム、グアーガム、タマリンドガム、ペクチン、カラギーナン、寒天、コンニャクマンナン、カルボキシメチルセルロースナトリウム等の増粘多糖類、バニラフレーバー、フルーツフレーバー等の香料、クチナシ色素等の着色料、ショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル等の乳化剤、酒石酸水素カリウム等のpH調整剤、色素、クエン酸、乳酸等の酸味料、ベーキングパウダー、重曹等の膨脹剤、塩化ナトリウム等の塩類、食物繊維等が挙げられる。
【実施例】
【0024】
以下に本発明の菓子を実施例及び試験例に基づき詳述する。なお、本発明はこれに限定するものではない。
【0025】
〔実施例1〕
下記表1の配合表を用い、常法に従ってスポンジケーキを調製した。具体的には、ミキサー等で種比重0.4g/mLまで泡立てた後、ケーキ型に流し入れ、170℃、30分間焼成し、本発明の菓子(抹茶のスポンジケーキ)を調製した。得られた抹茶のスポンジケーキは、カテキン特有の香味が引き立ち優れたものであった。
【0026】
〔表1〕

【0027】
〔実施例2〕
抹茶(粉末)0.4%を抹茶(粉末)0.2%及び清水0.2%に変更した以外は、実施例1に準じて、本発明の菓子(抹茶のスポンジケーキ)を調製した。得られた抹茶のスポンジケーキは、カテキン特有の香味が引き立ち優れたものであった。
【0028】
〔実施例3〕
抹茶(粉末)0.4%を紅茶(粉末)0.4%に変更した以外は、実施例1に準じて、本発明の菓子(紅茶のスポンジケーキ)を調製した。得られた紅茶のスポンジケーキは、実施例1よりは若干劣るものの、カテキン特有の香味が引き立っていた。
【0029】
〔実施例4〕
抹茶(粉末)0.4%及び清水9.6%を紅茶の浸出液(熱した牛乳で抽出、固形分1%)10%に変更した以外は、実施例1に準じて、本発明の菓子(紅茶のスポンジケーキ)を調製した。得られた紅茶のスポンジケーキは、実施例3よりは若干劣るものの、カテキン特有の香味が引き立っていた。
【0030】
〔実施例5〕
抹茶(粉末)0.4%をほうじ茶(粉末)0.4%に変更した以外は、実施例1に準じて、本発明の菓子(ほうじ茶のスポンジケーキ)を調製した。得られたほうじ茶のスポンジケーキは、実施例1よりは若干劣るものの、カテキン特有の香味が引き立っていた。
【0031】
〔比較例1〕
液卵黄のキサントフィル類含有量を5ppmから15ppmに変更した以外は、実施例1に準じて、菓子(抹茶のスポンジケーキ)を調製した。得られた抹茶のスポンジケーキの香味は、卵黄の加熱風味に阻害されぼやけていた。
【0032】
〔比較例2〕
液卵黄のキサントフィル類含有量を5ppmから40ppmに変更した以外は、実施例1に準じて、菓子(抹茶のスポンジケーキ)を調製した。得られた抹茶のスポンジケーキの香味は、卵黄の加熱風味に阻害されぼやけていた。
【0033】
〔比較例3〕
抹茶を市販のインスタントコーヒー(顆粒)に変更した以外は、実施例1に準じて、コーヒー風味の菓子(スポンジケーキ)を調製した。得られたスポンジケーキのコーヒーの香味は、卵黄の加熱風味に阻害されぼやけていた。
【0034】
〔比較例4〕
抹茶を麦茶に変更した以外は、実施例1に準じて、菓子(麦茶のスポンジケーキ)を調製した。得られたスポンジケーキの麦茶の香味は、卵黄の加熱風味に阻害されぼやけていた。
【0035】
〔実施例6〕
下記表2の配合表を用い、常法に従ってプリンを調製した。具体的には、原料を混合後、スチーマーを用いて80℃、30分間蒸し加熱を行った後、5℃まで冷却し本発明の菓子(抹茶のプリン)を調製した。得られた本発明の抹茶のプリンは、カテキン特有の香味が引き立ち非常に優れていた。
【0036】
〔表2〕


【特許請求の範囲】
【請求項1】
キサントフィル類を8ppm以下含有する卵黄、並びに緑茶及び紅茶の少なくとも1種以上を配合し、加熱処理を施してなる菓子であって、前記卵黄の配合比率が卵黄全体の80%以上(固形分換算)であることを特徴とする菓子。
【請求項2】
緑茶及び紅茶の配合量が、茶葉及び/又はその浸出液の固形分換算で、0.1〜6%である請求項1記載の菓子。

【公開番号】特開2012−90541(P2012−90541A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−239131(P2010−239131)
【出願日】平成22年10月25日(2010.10.25)
【出願人】(000001421)キユーピー株式会社 (657)
【Fターム(参考)】