説明

落下防止具

【課題】大きな揺れや振動においても外れることなく、棚の棚板に搭載された物品を確実に保持可能であり、かつ、既存の棚に対しても設置が容易な落下防止具を提供する。
【解決手段】落下防止竿11と、落下防止竿11の両端に一対設けられ、落下防止竿11を上方位置と下方位置とで回動可能に支持する固定部材12と、固定部材12と同様左右一対で設けられ、固定部材12を棚板に固定する取付部材13とを備える。取付部材13は、一方の端部である正面側に一対の固定部材12を固定する正面板13Aと、他方の端部である背面側にコの字状に形成されるフック部材13Bを備える。フック部材13Bは、棚板Rの背面側に引っかけて、落下防止具1全体を棚板に固定する役割を担う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、書棚、本棚やキャビネットなどの棚に用いられる物品の落下防止具であって、特に、既存の棚に対して着脱が自在で振動や揺れによっても棚に搭載された物品を確実に保持可能な落下防止具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、書棚、本棚やキャビネットなどの棚に備えられた棚板の前面に、横長の棒状体を設置して、地震や揺れがあった場合でも、棚板に搭載された本等の物品の落下を防止する落下防止部材が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
従来の落下防止具は、書架などの棚の前面において、棚の正面の物品取り出し口に当たる部分に、可動の棒状体を渡らせることで、搭載物が取り出し口から脱落するのを防止するものである。より具体的には、物品の取り出し口の左右に位置する棚の支柱に、一対の取付金具を取り付けるとともに、この取付金具に横竿と縦竿からなる落下防止竿を、その端部を軸として横竿が上方に向く位置と下方に向く位置との間を回動可能になるように取り付ける。また、支柱への取付金具には、横竿が上方に位置する際に、この横竿を上方で固定する固定部材が設けられている。この固定部材は、上部が開口し横竿を挿入する凹状の引っ掛けを形成している。
【0004】
また、書架などの棚に取り付けられる落下防止具としては、棚の支柱に棚板の高さを調整可能にする複数の係合孔が設けられているものがあり、この係合孔を利用して落下防止用のバーを取り付ける構成も提案されている(例えば、特許文献2参照。)。この態様では、落下防止バーの高さを、支柱に複数設けられた係合孔の高さに合わせて変更することで、自在に調整することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−236831号公報
【特許文献2】特開2001−128766号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の落下防止具は、設計段階から取り付けを想定しているものであれば良いが、当初は落下防止具の取り付けを予定していない既存の棚に対して用いるには、次のような課題があった。すなわち、特許文献1に代表される、支柱の前面にビス留めするような態様では、新たに取付穴を設け、ビス留めする必要があった。このような構成では、例えば、図書館のように、棚自体の数が膨大で、その一つ一つの棚板に取り付けなければならないことを考えると、設置作業に手間が掛かり、使い勝手の良いものとはいえなかった。
【0007】
また、特許文献2に代表される、支柱に設けられた棚板の高さを調整するための係合孔に設置する技術では、特許文献1のように新たに取付穴を設ける必要はないが、支柱に係合孔が設けられていない棚には用いることができず、また、係合孔の形状も必ずしも統一されているとは言えないので互換性や汎用性の面で課題があった。
【0008】
特に上記のような作業は、棚板上の搭載物である書籍等を棚からすべて取り除いた状態で行うのが通常であるが、図書館など、書籍が無数あるところで、そのような運用をすることは作業性からみて現実的でない。また、現地での穴を開口する作業も、棚板が薄いスチール製であることが多く、加工時に加工音が発生するとともに、スチール屑が発生するから、やはり図書館等の公共性の高い箇所では、現地製品への現場での加工も回避されるべき事情があった。
【0009】
本発明は、以上のような従来技術の課題を解決するために提案されたものであり、その目的は、大きな揺れや振動においても外れることなく、棚の棚板に搭載された物品を確実に保持可能であり、かつ、既存の棚に対しても設置が容易な落下防止具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、請求項1に係る発明は、書棚、本棚又はキャビネットなどの棚に用いられる物品の落下防止具であって、横長の棒状体からなる長尺の横竿と、前記横竿の両端に前記横竿と直交して設けられた短尺の縦竿とを備えた落下防止竿と、前記落下防止竿の両端に一対設けられ、前記縦竿端部を回動可能に支持して前記横竿が上方位置と下方位置とを移動可能にする固定部材と、一方の端部である正面側に前記一対の固定部材をそれぞれ固定し、他方の端部である背面側にコの字状に形成されるフック部材を有し、前記固定部材と前記フック部材との間には底面側に細長平面状に形成される設置部を有する取付部材と、を備えることを特徴とする。
【0011】
以上の態様では、フック部材を備えた取付部材を、棚板の両側に一対搭載することにより、穴開け加工などの作業を要せずに簡単な手法で、既存の棚に落下防止具を取り付けることが可能となる。特に、図書館に設置されるタイプの書棚では、横幅も広く、床から天井程度の高さに至るまで多段に構成されており、このような書棚に対して落下防止具を設置するに当たって、すべての書籍を取り除いた上で作業を行うのは作業効率からいって、適当とはいえない。この点、本発明の落下防止具では、フック部材を棚板の奥側背面部分に引っ掛けられればいいので、書籍を取り除かなくてもそのまま設置することが可能で、既存の棚に設置するに当たって、従来品に比較して作業効率を飛躍的に向上させることができる。
【0012】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記設置部には、底面側の少なくとも一部に粘着性の部材を備えたことを特徴とする。
【0013】
以上の態様では、取付部材の底面側である設置部に、例えば、両面テープ等の粘着性を有する部材を配することで、取付部材を棚板に対して位置ずれがなく安定的に設置することができる。
【0014】
請求項3の発明は、請求項1又は2の発明において、前記フック部材は、縦方向に伸縮自在な長さ調整機構を備えたことを特徴とする。
【0015】
以上の態様では、取付部材のフック部材の構成を、棚板の厚みの変化に対応できるように、下方のL字部分を伸縮可能に構成する。これにより、複数のタイプの棚に対して、対応して設置することができるようになる。
【発明の効果】
【0016】
以上のような本発明によれば、大きな揺れや振動においても外れることなく、棚の棚板に搭載された物品を確実に保持可能であり、かつ、既存の棚に対しても設置が容易な落下防止具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施の形態に係る落下防止具の全体構成を示す斜視図。
【図2】本発明の実施の形態に係る落下防止具の棚板への取り付け状態を示す斜視図。
【図3】本発明の実施の形態に係る落下防止具を設置した棚を示すイメージ図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態(以下、本実施形態という。)について、図面を参照しながら説明する。なお、図面においては、一部分を省略して示す場合がある。
【0019】
[1.本実施形態]
[1−1.構成]
本実施形態の落下防止具1は、書棚、本棚又はキャビネットなどの棚に搭載される物品の落下防止具であって、図1に示すように、落下防止竿11と、落下防止竿11の両端に一対設けられ、落下防止竿11を上方位置と下方位置とで回動可能に支持する固定部材12と、固定部材12と同様左右一対で設けられ、固定部材12を棚板に固定する取付部材13とを備える。固定部材12と取付部材13とは、スチール製の板状体を曲げ加工して形成される。
【0020】
落下防止竿11は、横長の棒状体からなる長尺の横竿11Aと、横竿11Aの両端に横竿と直交して設けられた短尺の縦竿11Bとを備える。横竿11Aと、縦竿11Bとは、2本の棒状体を横竿11Aと縦竿11Bとの境界で接合してなる。
【0021】
横竿11Aは、縦竿11Bとの接合部より外側に突出した部分を有し、この部分が、後述する固定部材12に固定される被固定部11Cをなす。一方、縦竿11Bは、横竿11Aと直交する方向で接合され、その先で、再び直交方向に曲がって後述する固定部12に軸支される軸受け部11Dを形成している。
【0022】
固定部材12は、落下防止竿11の両端に一対設けられ、縦竿11Bの端部を回動可能に支持する横竿11Aが上方位置と下方位置とを移動可能にする軸固定部12Aと、横竿11Aが上方位置にある際に、横竿11Aの被固定部11Cを保持する開口部12Bとを有する。
【0023】
この固定部材12は、一枚の板状体を屈曲変形させて構成したものであり、軸固定部12Aは、コの字状に曲げられつつ、コの字の開口部分を後述する取付部材13の正面部分に溶接等により接続することで縦長の箱状をなし、この筒状に軸受け部11Dを挿通させることで軸受け部11Dが上下移動とともに回動が可能となるように支持している。
【0024】
一方、開口部12Bは、固定部材12の上端部分をL字状に変形させ、軸固定部12Aと同様に、後述する取付部材13の正面部分に同じく溶接等により接続することで、上向きコの字状のポケットを形成している。この上向きコの字状のポケットからなる開口部12Bに、横竿11Aの被固定部11Cが上部から挿入されることで、横竿11Aが上方位置で保持されるようになっている。
【0025】
取付部材13は、一方の端部である正面側に一対の固定部材12を固定する正面板13Aと、他方の端部である背面側にコの字状に形成されるフック部材13Bを備える。また、正面板13Aとフック部材13Bとの間には底面側に細長平面状に形成される設置板13Cを備え、さらに、正面板13Aと設置板13Cとは側板13Dにより連設されている。これらの正面板13A及び側板13Dは、一枚のスチール製の板状体を折り曲げ加工することにより形成され、フック部材13B及び設置板13Cは、一枚の細長スチール板を折り曲げ加工して形成されている。また、正面板13A及び側板13Dを形成する板状体と、フック部材13B及び設置板13Cを形成する板状体とは、溶接により接続されている。
【0026】
正面板13Aは、正面側において、固定部材12の横幅と同程度で縦長に形成される。フック部材13Bは、設置板13Cを形成する板状体の端部を底面方向にコの字状に曲げ加工してなる。フック部材13Bは、棚板Rの背面側に引っ掛けて、落下防止具1全体を棚板に固定する役割を担うものであるので、コの字の大きさは棚板Rの背面側の形状に依拠して適宜調整される。
【0027】
設置板13Cは、棚板Rの奥行き方向に渡って棚板Rと接して、フック部材13Bにおける落下防止具1の棚板Rへの固定を補助する役割を担う。なお、本実施形形態では、設置板13Cの棚板Rへの接触固定をより確実なものにするため、例えば、図に示すように、両面テープTを設置板13Cと棚板Rとの間に間挿している。側板13Dは、側面視略三角形状でなり、固定部材12及び落下防止具1全体の形状や強度を補助する役割を担うとともに、落下防止具1を棚に設置する際に、棚板Rの側端部で側板13Dを支柱に接して配置するなど、位置決めを容易にする役割も担う(図2参照)。
【0028】
取付部材13は、基本的には、棚板Rの両側端部に設置されるものであり、棚板Rの奥行き方向のサイズに合わせて、フック部材13B、設置板13C及び側板13Dのサイズが決定されるとともに、棚板Rの横幅に応じて、落下防止竿11の長さが決定される。
【0029】
[1−2.作用効果]
以上のような構成の落下防止具1の作用について、図1と、落下防止具1を棚板に設置した状態を示した図2及び落下防止具1を格段に設けた棚を示す図3を参照して説明する。
【0030】
図1に示す状態から、取付部材13の設置板13Cの裏面に、両面テープTを貼付するとともに、棚板Rの両側端において、まず、棚板Rの背面に、フック部材13Bを引っかける。次に、設置板13Cを、棚板Rの奥行き方向に沿って設置し、両面テープTの粘着力により固定する。この状態を図2に示す。
【0031】
以上のような作業により、棚板Rの左右両側に、落下防止具1が設置される。この落下防止具1は、図2に示すように、落下防止竿11を、固定部材12の軸固定部12Aに軸支された状態で、下方位置(図に二点差線で示す)から上方位置に移動させ、横竿11Aの両端部に設けられた被固定部11Cを、固定部材12の開口部12Bに挿入することにより固定し使用する。
【0032】
図2及び図3のイメージ図に示すように、棚Cを構成する格段の棚板Rに、落下防止具1を設けることにより、棚板Rに搭載した書籍Bが、地震等の影響による揺れや振動によって図中手前側に落下しようとした場合、落下防止竿11の横竿11Aによりその落下を防止することができる。
【0033】
図2及び図3の状態において、棚板Rに搭載した本は、図中手前側に落ちようとするため、落下防止竿11に掛かる力の方向も図中手前側になる。このとき、フック部材13Bは、棚板Rの背面側で引っかかっているので、棚板Rの正面側方向に働く力に対しては強い構成となっている。
【0034】
以上のような本実施形態の落下防止具1によれば、フック部材13Bを備えた取付部材13を、棚板Rの両側に一対搭載することにより、穴開け加工などの作業を要せずに簡単な手法で、既存の棚に落下防止具を取り付けることが可能となる。
【0035】
特に、図3のイメージ図に示すような図書館に設置されるタイプの書棚では、横幅も広く、床から天井程度の高さに至るまで多段に構成されており、このような書棚Cに対して落下防止具を設置するに当たって、すべての書籍B(図中二点鎖線で表す。)を取り除いた上で作業を行うのは作業効率からいって、適当とはいえない。この点、本実施形態の落下防止具1では、フック部材13Bを棚板Rの奥側背面部分に引っかけられればいいので、書籍Bを取り除かなくてもそのまま設置することが可能で、従来品に比較して作業効率を飛躍的に上げることができる。
【0036】
また、フック部材13Bを、棚板Rの奥行き方向背面側に引っ掛ける構成により、棚から飛び出そうとする書籍の落下防止竿11に働く力を確実に押さえることができる。
【0037】
また、取付部材13の底面側である設置板13Cと棚板Rとの間に、両面テープTを間挿したことで、取付部材13の位置ずれがなく、棚板R上で落下防止具1を安定的に設置することができる。
【0038】
[2.他の実施形態]
本発明は、上記実施形態で示した態様に限定されるものではなく、例えば、以下の態様も包含する。上記実施形態において示した側板の形状は最適な実施形態の一例を示すものであり、上述の通り、落下防止具全体の形状や強度を補助する役割や、位置決めを容易にする役割を果たす限り、側面視三角形状に限らず、任意の形状に変更可能である。
【0039】
また、固定部材についても、従来同様の構成であって、本発明に顕著な構成ではないので、縦竿端部を回動可能に支持して横竿が上方位置と下方位置とを移動可能にする構成である限り、他の公知の構成に置き換えることは可能である。
【0040】
さらに、上記実施形態において、取付部材のフック部材の構成を、コの字形状で示したが、本発明はこのような態様に限られず、コの字部分の形状を、棚板の厚みの変化に対応できるように、下方のL字部分を伸縮可能に構成することもできる。
【符号の説明】
【0041】
1…落下防止武具
11…落下防止竿
11A…横竿
11B…縦竿
11C…被固定部
11D…軸受け部
12…固定部材
12A…軸固定部
12B…開口部
13…取付部材
13A…正面板
13B…フック部材
13C…設置板
13D…側板
B…書籍
C…棚
R…棚板
T…両面テープ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
書棚、本棚又はキャビネットなどの棚に用いられる物品の落下防止具であって、
横長の棒状体からなる長尺の横竿と、前記横竿の両端に前記横竿と直交して設けられた短尺の縦竿とを備えた落下防止竿と、
前記落下防止竿の両端に一対設けられ、前記縦竿端部を回動可能に支持して前記横竿が上方位置と下方位置とを移動可能にする固定部材と、
一方の端部である正面側に前記一対の固定部材をそれぞれ固定し、他方の端部である背面側にコの字状に形成されるフック部材を有し、前記固定部材と前記フック部材との間には底面側に細長平面状に形成される設置部を有する取付部材と、を備えることを特徴とする落下防止具。
【請求項2】
前記設置部には、底面側の少なくとも一部に粘着性の部材を備えたことを特徴とする請求項1記載の落下防止具。
【請求項3】
前記フック部材は、縦方向に伸縮自在な長さ調整機構を備えたことを特徴とする請求項1又は2記載の落下防止具。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2013−94397(P2013−94397A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−239666(P2011−239666)
【出願日】平成23年10月31日(2011.10.31)
【出願人】(000000561)株式会社岡村製作所 (1,415)