説明

落下防止装置

【課題】 フォークリフトで物品の出し入れの作業ができるとともに、物品を落下防止の状態にすることができる落下防止装置を提供すること。
【解決手段】 本発明の落下防止装置100は、落下防止杆120と、棚板322に設けられた第一の固定側軸受け111及び第一の移動側軸受け112と、落下防止杆120に設けられた第二の固定側軸受け121及び第二の移動側軸受け122と、第一の固定側軸受け111と第二の移動側軸受け122の間に架け渡された第一の支持部131と、第二の固定側軸受け121と第一の移動側軸受け112の間に架け渡された第二の支持部132と、第一の支持部131の略中点と第二の支持部132の略中点とを連結する連結部133と、を概略具備している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地震等により什器、本棚や工場等の倉庫に設置された収納棚が振動しても、これらの収納棚の複数の棚板に載置された物品の落下や飛び出しを防止する落下防止装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、地震や意図しない何らかの物品の衝突等における振動、揺れ及び傾きで収納棚の複数の棚板に載置された物品の落下や飛び出しを防止する装置が種々提案されている。
【0003】
たとえば、特許文献1に開示される棚の荷物落下防止装置は、棚の前面両側の各支柱の上下に設けた2個の滑車と、この2個の滑車間に張設したワイヤと、2本のワイヤ間に横方向に取り付けた落下防止用バーと、一方の支柱の下方の滑車を回動させる歯車装置と、歯車装置と連結し他方の支柱の下方の滑車を回動させる駆動軸とを備え、複数の棚に対して各々落下防止用バーを配置し、各々の棚に載置された荷物の落下を防止する構成となっている。
【0004】
また、特許文献2に開示される収納物落下防止装置は、水平部材が第1の被係止部と第2の被係止部に、それぞれ係止した時、水平部材は開口部を横断して収納物が開口部から落下するのを阻止し、水平部材が第1の被係止部と第2の被係止部から離脱し、水平部材が下方に移動した時、開口部が開放され、収納物の出入りが許容される構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】 特開2010−120750号公報
【特許文献2】 特開2010−254407号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示される棚の荷物落下防止装置は、一方の支柱の下方の滑車を回動させる歯車装置と、歯車装置と連結し他方の支柱の下方の滑車を回動させる駆動軸の差動等により、落下防止用バーが傾く場合があり、落下防止用バーを水平に修正しなければならないという課題があった。
【0007】
また、特許文献2に開示される収納物落下防止装置は、フォークリフトの爪の先端で水平部材を斜め下方に傾斜させると水平部材が回転しフォークリフトの爪から水平部材が離脱することで収納物の出し入れが可能とはなるが、荷物の出し入れのための動作を別途行わなければならない課題があった。
【0008】
また、特許文献2に開示される収納物落下防止装置は、開口部から収納物が落下するのを防止させるためにフォークリフトの爪の先端で水平部材を持ち上げる動作を別途行わなければならず、開口部に水平部材を横断させる作業を忘れる虞があった。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明の目的は、上述した事情に鑑みなされたもので、物品の落下と飛び出しを確実に防止可能な落下防止装置を提供することである。
【0010】
また、この発明の別の目的は、フォークリフトで容易かつ確実に物品の出し入れのための作業が可能な落下防止装置を提供することである。
【0011】
また、この発明の別の目的は、フォークリフトで容易かつ確実に物品を落下防止の状態とすることが可能な落下防止装置を提供することである。
【0012】
上述した課題を解決し、目的を達成するため、この発明に係わる落下防止装置は、請求項1の記載によれば、複数の支柱と、該複数の支柱間に架け渡される棚板とからなる収納棚の収納開口に配置される落下防止装置であって、前記収納開口を横断する落下防止位置と前記収納開口を開放する退避位置とに位置変更可能な落下防止杆と、前記棚板に設けられた第一の固定側軸受け及び第一の移動側軸受けと、前記落下防止杆に設けられた第二の固定側軸受け及び第二の移動側軸受けと、一端が前記第一の固定側軸受けに回動可能に軸支され、他端が前記第二の移動側軸受けに滑動可能に軸受けされた第一の支持部と、一端が前記第二の固定側軸受けに回動可能に軸支され、他端が前記第一の移動側軸受けに滑動可能に軸受けされた第二の支持部と、前記第一の支持部と前記第二の支持部とを各々の略中点で回動可能に連結する連結部と、を具備し、前記第一の固定側軸受けと前記第二の固定側軸受けとを前記連結部に対して一方の側に配置するとともに、前記第一の移動側軸受けと前記第二の移動側軸受けとを前記連結部に対して他方の側に配置することを特徴とする。
【0013】
上述した課題を解決し、目的を達成するため、この発明に係わる落下防止装置は、請求項2の記載によれば、前記落下防止杆の一端または両端に前記落下防止杆を落下防止位置へと位置変更させる付勢手段を備えることを特徴とする。
【0014】
上述した課題を解決し、目的を達成するため、この発明に係わる落下防止装置は、請求項3の記載によれば、前記第一の支持部の一端の側と前記第二の支持部の他端の側と、または前記第一の支持部の他端の側と前記第二の支持部の一端の側と、の間に前記落下防止杆を落下防止位置へと位置変更させる付勢手段を備えることを特徴とする。
【0015】
上述した課題を解決し、目的を達成するため、この発明に係わる落下防止装置は、請求項4の記載によれば、前記第一の支持部の一端の側と前記第二の支持部の一端の側と、または前記第一の支持部の他端の側と前記第二の支持部の他端の側と、の間に前記落下防止杆を落下防止位置へと位置変更させる付勢手段を備えることを特徴とする。
【0016】
上述した課題を解決し、目的を達成するため、この発明に係わる落下防止装置は、請求項5の記載によれば、前記落下防止杆を退避位置に掛け止めする掛止手段を備えることを特徴とする。
【0017】
上述した課題を解決し、目的を達成するため、この発明に係わる落下防止装置は、請求項6の記載によれば、前記掛止手段による掛け止めを所定時間後に解除するセルフタイマー機構を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
この発明によれば、物品の落下と飛び出しを確実に防止可能な落下防止装置を提供することができる。
【0019】
また、この発明によれば、フォークリフトで容易かつ確実に物品の出し入れのための作業が可能な落下防止装置を提供することができる。
【0020】
また、この発明によれば、フォークリフトで容易かつ確実に物品を落下防止の状態とすることが可能な落下防止装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】 収納開口を横断する落下防止位置となっている第一の実施例の落下防止装置の正面図
【図2】 収納開口を開放する退避位置となっている第一の実施例の落下防止装置の正面図
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0022】
以下に図面を用いて本発明の実施例を説明する。なお、この実施例において、収納棚は工場や倉庫で使用されている所謂パレットラックを想定しているが、これに限定される物ではなく、事務所または一般家庭でも使用されている組み立て式の収納棚や本棚や什器等、支柱等の棚側壁と棚板とからなる収納開口を有する収納棚であれば、本発明の落下防止装置が適用可能である。
【0023】
最初に図1及び図2を用いて、本発明の第一の実施例としての落下防止装置100を説明する。図1は、収納開口を横断する落下防止位置となっている第一の実施例の落下防止装置の正面図である。図2は、収納開口を開放する退避位置となっている第一の実施例の落下防止装置の正面図である。なお、図1及び図2は、発明の内容と説明をわかりやすくするために各々の部材の縮尺は一定とはなっていない。
【0024】
図1及び図2には、本発明の第一の実施例の落下防止装置100が取り付けられた収納棚300が示されている。この収納棚300は、例えば、鋼材製のアングル材や角パイプ材等からなり、収納棚が設置される床面に立設される複数本の支柱312、314等と、例えば、鋼板や角パイプ材等からなり、これらの支柱に任意の上下間隔をもって架け渡されて各種物品が載置される棚板322、324等とから構成されている。
【0025】
また、収納棚300の棚板322へ物品を出し入れする側となる前側支柱312、314と収納棚322、324とで囲まれる収納開口342には、本発明の落下防止装置100の落下防止杆120が、収納開口342を横断する落下防止位置と収納開口342を開放する退避位置とに位置変更可能となるように配置されている。
【0026】
この第1の実施例での落下防止装置100は、落下防止杆120と、棚板322に設けられた第一の固定側軸受け111及び第一の移動側軸受け112と、落下防止杆120に設けられた第二の固定側軸受け121及び第二の移動側軸受け122と、第一の固定側軸受け111と第二の移動側軸受け122の間に架け渡された第一の支持部131と、第二の固定側軸受け121と第一の移動側軸受け112の間に架け渡された第二の支持部132と、第一の支持部131の略中点と第二の支持部132の略中点とを連結する連結部133と、を概略具備している。
【0027】
落下防止杆120は、支柱312と支柱314との間に架け渡される長さを有する柱状の部材であり、収納開口342を横断する落下防止位置にある場合は棚板322に載置された物品の転落防止を行い、収納開口342を開放する退避位置にある場合には、棚板322へ物品を出し入れするのに邪魔にならないようになっている。なお、図1及び図2における落下防止杆120は、収納開口342を横断している部分の径より両端部分の径が小さくなっているが、両端部分を含めて全体を同じ径としても良い。
【0028】
また、第一の固定側軸受け111と第一の移動側軸受け112は棚板322の物品を出し入れする側の側面に複数のネジ119等で取り付け位置変更可能に固定されている。
【0029】
また、第二の固定側軸受け121と第二の移動側軸受け122は落下防止杆120の下面(棚板322の側の面)に図示しない複数のネジ等で取り付け位置変更可能に固定されている。
【0030】
なお、第一の固定側軸受け111と第二の固定側軸受け121は連結部133から見て一方の側(図1において左側)に配置されている。また、第一の移動側軸受け112と第二の移動側軸受け122は連結部133から見て他方の側(図1において右側)に配置されている。なお、もちろん一組の固定側軸受けを他方に配置し、一組の移動側軸受けを一方に配置しても良い。
【0031】
また、第一の支持部131は、柱状の部材であり、一端が第一の固定側軸受け111に設けられた第一の固定側軸113に回動可能に軸支され、他端が第二の移動側軸受け122に設けられた第二の移動側軸124に軸受けされている。なお、第一の固定側軸113の軸方向は棚板322の側面に対して垂直である。また、第二の移動側軸124は棚板322の側面と平行に設けられた第二のスライド用長穴125の長穴方向に沿って滑動可能となっている。
【0032】
また、第二の支持部132は、柱状の部材であり、一端が第二の固定側軸受け121に設けられた第二の固定側軸123に回動可能に軸支され、他端が第一の移動側軸受け112に設けられた第一の移動側軸114に軸受けされている。なお、第二の固定側軸123の軸方向は棚板322の側面に対して垂直である。また、第一の移動側軸114は棚板322の側面と平行に設けられた第一のスライド用長穴115の長穴方向に沿って滑動可能となっている。
【0033】
また、連結部133は、第一の支持部131と第二の支持部132とを各々の略中点で回動可能に連結している。なお、連結部133の軸方向は棚板322の側面に対して垂直である。
【0034】
このような構成を有する本発明の落下防止装置では、落下防止杆120を収納開口342を横断する落下防止位置と収納開口342を開放する退避位置との間で位置変更を行うと、第一の支持部131は一端を軸支する第一の固定側軸113を回動中心として棚板322の側面に平行な面上で回動し、他端を軸受けする第二の移動側軸124が第二のスライド用長穴125の長穴方向に沿って滑動する。
【0035】
また、この第一の支持部131の回動により、連結部133が第一の固定側軸113を回動中心として棚板322の側面に平行な面上で回動することで、第二の支持部132が棚板322の側面に平行な面上で従動する。なお、第二の支持部132は、一端が第二の固定側軸123に回動可能に軸支され他端が第一の移動側軸114に軸受けされているので、この第一の支持部131の回動に伴う第二の支持部132の従動により、一端を軸支する第二の固定側軸123を回動中心として棚板322の側面に平行な面上で回動し、他端を軸受けする第一の移動側軸114が第一のスライド用長穴115の長穴方向に沿って滑動する。
【0036】
このように、第一の支持部131の第一の固定側軸113を回動中心とした回動と、それに伴う第二の支持部132の従動と、第二の支持部132の第二の固定側軸123を回動中心とした回動とにより、第一の支持部131と第二の支持部132は所謂パンタグラフ動作を行うこととなる。この結果、第二の移動側軸124を介して第一の支持部131の他端と接続され、第二の固定側軸123を介して第二の支持部の一端とに接続される落下防止杆120は、常に棚板322の物品が載置される載置面に対して平行な状態を保ったまま、棚板322の側面に平行な面上で、落下防止位置と退避位置との間を移動することとなる。
【0037】
また、収納開口342を構成する箇所の支柱312、314には、落下防止杆120を落下防止位置へ位置変更させて保持するための落下防止杆保持手段140が取り付けられている。この落下防止杆保持手段140は、落下防止杆120を落下防止位置へ位置変更させるための付勢手段としての定荷重バネ142と、落下防止位置へ位置変更される落下防止杆120を当該位置で保持するための落下防止杆保持部144と、落下防止杆保持部144が取り付けられると共に、定荷重バネ142を収納するための落下防止杆保持部本体146とを有している。
【0038】
また、この定荷重バネ142は、金属製薄板を一定の曲率で密着巻きして一端部を直線に引き伸ばすことで使用するバネであり、その一端が落下防止杆120の端部側面129に止め付けられ、他端の側となる金属製薄板が密着巻きされている部分が落下防止杆保持部本体146に収納されている。
【0039】
なお、図1及び図2に示す第一の実施例の落下防止装置100では、定荷重バネ142を支柱312、314に取り付けた2個の落下防止杆保持手段140の各々に設けているが、第一の支持部131と第二の支持部132で構成されるパンタグラフ機構では落下防止杆120は棚板322の物品の載置面に対して常に平行に移動するので、落下防止杆120を落下防止位置へ位置変更させる付勢力が得られるのであれば片側だけに設ける構成としても良い。
【0040】
このような構成となっている落下防止装置100では、落下防止杆120はこの定荷重バネ142により何らの負荷がかけられていない通常の状態において、収納開口342を横断する落下防止位置となるように棚板324の側に引き上げられている。
【0041】
また、落下防止杆保持部144は、棚板322の側に向かって、即ち下側に向かって落下防止杆保持部本体146へ取り付けられた部材であり、下側(即ち落下防止杆120が挿入される側)に向かって突出する一対の突出部により略コの字状部材となっている。落下防止杆120は、この一対の突出部の間に収まるようになっている。
【0042】
なお、このコの字状部材は落下防止杆保持部本体146に各々一組設けられており、この間に定荷重バネ142の引き伸ばされた金属製薄板が配置されるようになっている。
【0043】
また、落下防止杆保持部144の一対の突出部のうち、支柱312、314から遠い側の一方には、支柱312、314の側に向かって突起が設けられており、地震等で棚板322に載置された物品が落下防止杆120に衝突した場合に、落下防止杆120が落下防止位置から移動してしまうことを防止している。
【0044】
なお、落下防止杆保持部144の一対の突出部の一方に設けられた突起には、落下防止杆120が落下防止杆保持部144の一対の突出部の間に収まる方向に傾斜が設けられている。この構成により、落下防止杆120が落下防止位置まで引き上げられて当該傾斜に当接しながら該一対の突出部の間に収まるようになっている。
【0045】
なお、上記の説明では、上から吊り下げる形となる定荷重バネ142で落下防止杆120を落下防止位置に押し上げると説明したが、この定荷重バネ142の代わりにその他の各種バネを使用しても良いし、また落下防止杆120を下から押し上げるように各種バネを使用しても良い。
【0046】
また、この定荷重バネ142の代わりに、第一の支持部131の一端の側となる第一の固定側軸受け111の側と、第二の支持部132の他端の側となる第一の移動側軸受け112の側と、の間に落下防止杆120を落下防止位置へと位置変更させる付勢手段として、第一の固定側軸受け111と第一の移動側軸受け112の間を引っ張り狭める方向に付勢する各種バネを使用しても良い。また、同様に、第一の支持部131の他端の側となる第二の移動側軸受け122の側と、第二の支持部132の一端の側となる第二の固定側軸受け121の側と、の間に落下防止杆120を落下防止位置へと位置変更させる付勢手段として、第二の移動側軸受け122と第二の固定側軸受け121の間を引っ張り狭める方向に付勢する各種バネを使用しても良い。
【0047】
さらに、この定荷重バネ142の代わりに、第一の支持部131の一端の側となる第一の固定側軸受け111の側と、第二の支持部132の一端の側となる第二の固定側軸受け121の側と、の間に落下防止杆120を落下防止位置へと位置変更させる付勢手段として、第一の固定側軸受け111と第二の固定側軸受け121の間を押し広げる方向に付勢する各種バネを使用しても良い。また、第一の支持部131の他端の側となる第二の移動側軸受け122の側と、第二の支持部132の他端の側となる第一の移動側軸受け112の側と、の間に落下防止杆120を落下防止位置へと位置変更させる付勢手段として、第二の移動側軸受け122と第一の移動側軸受け112の間を押し広げる方向に付勢する各種バネを使用しても良い。
【0048】
棚板322の第一の固定側軸受け111と第一の移動側軸受け112との間には、落下防止杆120を収納開口342が開放する退避位置へ掛け止めするための落下防止杆掛止手段150が取り付けられている。この落下防止杆掛止手段150は、棚板322の側面に垂直な方向で重なり合う2本の第一の支持部131と第二の支持部132とを保持する支持部保持部152と、この2本の支持部を支持部保持部152内で掛け止めする掛止部154と、該掛け止めを解除する掛止解除部156とを有している。
【0049】
支持部保持部152は、棚板324の側に向かって、即ち上側に向かって棚板322に取り付けられた部材であり、上側(即ち2本の支持部が挿入される側)に向かって突出する一対の突出部により略コの字状部材となっている。2本の支持部は、この一対の突出部の間に収まるようになっている。なお、図1及び図2における第一の実施例においては、この略コの字状部材は一組設けられており、より安定的に2本の支持部を保持できるようになっている。
【0050】
また、支持部保持部152の一対の突出部のうち、棚板322から遠い側の一方には、棚板322の側に向かって突起が設けられており、後述する掛止部154と協働して2本の支持部を支持部保持部152内に保持するようになっている。
【0051】
なお、支持部保持部152の一対の突出部の一方に設けられた突起には、2本の支持部が支持部保持部152の一対の突出部の間に収まる方向に傾斜が設けられており、落下防止杆120が退避位置に引き下ろされた際に、2本の支持部の一方(図1及び図2においては第一の支持部131)が当該傾斜に当接しながら2本の支持部全体が該一対の突出部の間に収まるようになっている。
【0052】
また、掛止部154は、一組の支持部保持部152の間に設けられた棚板322の側面と平行な板状板部材であり、棚板322の側面に垂直な方向に移動可能となっている。また、棚板322の側面(または落下防止杆掛止手段150を棚板322の側面に取り付けるための平面部材)と掛止部154との間には、コイルバネ等の掛止部付勢手段が設けられており、無負荷の状態において、掛止部154は棚板322の側面から離れる方向に付勢されている。
【0053】
なお、掛止部154の2本の支持部が挿入される側、即ち上側には、2本の支持部が掛止部154の付勢力に抗してスムーズに支持部保持部152の一対の突出部内に挿入されるように、2本の支持部の他方(図1及び図2においては第二の支持部132)が当接する箇所に、棚板322の側に傾斜した摺動部が設けられている。
【0054】
このような構成を有する支持部保持部152と掛止部154とにより、落下防止杆120の退避位置への移動に従動する2本の支持部は、一方の支持部全体が支持部保持部152の一対の突出部の一方に設けられた突起を乗り越えながら支持部保持部152の一対の突出部内に挿入される。さらに、2本の支持部全体が支持部保持部152の一対の突出部内に挿入された後には、2本の支持部は、掛止部154の棚板322の側面から離れる方向の付勢力で支持部保持部152の一対の突出部の一方に押し付けられて支持部保持部152内に保持されることとなる。
【0055】
また、掛止部154による掛け止めを解除する掛止解除部156は、掛止部154に垂直に立設された棒状部材となっている。この掛止解除部156を掛止部154の付勢力に抗して押圧することで、掛止部154と支持部保持部152の一対の突出部の一方と支持部保持部152の一対の突出部の一方に設けられた突起との協働による掛け止めを解除するようになっている。
【0056】
なお、落下防止杆掛止手段には、オープンキャッチやワンタッチプッシュキャッチと呼ばれる、押すと閉まり、もう一度押すとスプリングの作動により開く機構を用いても良い。
【0057】
また、この第一の実施例においては、2本の支持部を掛止部154に掛け止めるように説明したが、もちろん落下防止杆120自身を掛け止めるように構成してもよい。
【0058】
このような構成を有する本発明の落下防止装置100において、落下防止杆120を収納開口342を横断する落下防止位置と収納開口342を開放する退避位置とに位置変更する方法を以下に説明する。
【0059】
初期状態では、図1に示すとおり、落下防止杆120は、落下防止杆保持手段140により収納開口342を横断する落下防止位置に位置している。この状態から、フォークリフトで物品としての各種荷物が載せられたパレットを棚板322に載置する際には、フォークリフトの爪の先端や下面もしくはパレットの下部や先端で落下防止杆120を棚板322の方向へ引き下ろす。
【0060】
この際、落下防止杆120は落下防止杆保持部144としての下側に向かって突出する一対の突出部の間に収まっているのみで、該突出部の一方に設けられている突起は地震等で物品が落下防止杆120に衝突した場合以外には機能させないようにしてあるので、落下防止杆120を引き下ろすための特別な作業を行う必要はない。
【0061】
なお、フォークリフトで扱うパレットの大きさは、例えば1100mm×1100mmとなっている。これに対してパレットラックの棚板の大きさは、荷物を出し入れする収納開口の側の幅で例えば2400mm等と複数のパレットを幅方向に並べて載置できる大きさとなっている。このため、本発明の落下防止杆120の長さも、例えば2500mm等とフォークリフトの爪の間の幅やパレット1枚の幅よりも大きくなっている。
【0062】
本発明の落下防止具100では、第一の支持部131と第二の支持部132がパンタグラフ動作を行うので、フォークリフトの爪の先等が落下防止杆120のどの部分を押し下げても常に棚板322に対して平行な状態を保ったまま移動可能であり、フォークリフトによる荷物の出し入れの作業性が高い。
【0063】
この後、さらに落下防止杆120を引き下ろしていくと、2本の支持部が掛止部154に掛け止められて収納開口342を開放する退避位置に位置変更完了となる。なお、この掛け止めの際も特別な作業を行わずとも落下防止杆120を引き下ろしていくのみで掛け止められるので、フォークリフトによる荷物の出し入れの作業性が高い。
【0064】
この後、フォークリフトの爪をパレットラック内に入れて、パレットを棚板322に載置した後に該爪をパレットラックから出すことで載置作業は完了となる。この後、パレットの爪先で掛止解除部156を軽く押圧することで、落下防止杆120は収納開口342を横断する落下防止位置へ位置変更される。この落下防止杆120の落下防止位置への位置変更作業もわざわざフォークリフトから降りて何らかの作業を行う必要がない簡便な作業であるので、落下防止杆120の落下防止位置への変更し忘れに非常に有効である。なお、フォークリフトの爪先で掛止解除部156を押圧する作業が難しい場合には、該掛止解除部156の先端に蛍光塗料等で彩色した板状部材を取り付ける等の工夫を行えば、より作業が容易になることが試作機での試験で確認されている。
【0065】
また、落下防止杆120の落下防止位置への位置変更作業を省略するために、落下防止杆掛止手段150に機械式または電子式セルフタイマー機構を設けて、所定時間後に落下防止杆掛止手段150を自動的に解除し、退避位置にある落下防止杆120が落下防止位置へ復帰するようにすれば、落下防止杆120の戻し忘れによる物品の落下に有効である。
【0066】
このように、載置されているパレットを棚板322から取り出す作業も、上記の作業と一緒であり、作業性の高さが損なわれることはない。
【0067】
以上のように、本発明の落下防止装置100は、今までの各種落下防止装置では難しかったフォークリフトによる作業性が非常に高いにも関わらず、物品の落下と飛び出しを確実に防止することが可能である。
【0068】
また、本発明の落下防止装置100では、パンタグラフ機構を採用しており、今までの各種落下防止装置で採用されている落下防止杆120の平行移動機構としてのレール等が必要ないので、構成も簡単で安価に提供可能である。なお、もちろんより確実に平行移動を行うために、本発明の落下防止装置100にレール機構を設けても良いことは説明するまでもない。
【0069】
また、本発明の落下防止装置100では、第一の支持部131と第二の支持部132とによるパンタグラフ機構を用いているので、第一の固定側軸受け111と第一の移動側軸受け112の取り付け位置を変更し、かつ、第二の固定側軸受け121と第二の移動側軸124の取り付け位置を変更することで落下防止杆120の収納開口342内での高さ位置が容易に変更可能である。このため、本発明の落下防止装置100は、載置する荷物によって棚板間の間隔を変更することがあるパレットラック等でもわざわざ構成部材を変更しなくとも対応できるので、簡便かつ安価に落下防止装置を提供することが可能となる。
【符号の説明】
【0070】
100・・落下防止装置、111・・第一の固定側軸受け、112・・第一の移動側軸受け、113・・第一の固定側軸、114・・第一の移動側軸、115・・第一のスライド用長穴、119・・ネジ、120・・落下防止杆、121・・第二の固定側軸受け、122・・第二の移動側軸受け、123・・第二の固定側軸、124・・第二の移動側軸、125・・第二のスライド用長穴、129・・端部側面、131・・第一の支持部、132・・第二の支持部、133・・連結部、140・・落下防止杆保持手段、142・・定荷重バネ、144・・落下防止杆保持部、146・・落下防止杆保持部本体、150・・落下防止杆掛止手段、152・・支持部保持部、154・・掛止部、156・・掛止解除部、300・・収納棚、312、314・・支柱、322、324・・棚板、342・・収納開口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の支柱と、該複数の支柱間に架け渡される棚板とからなる収納棚の収納開口に配置される落下防止装置であって、
前記収納開口を横断する落下防止位置と前記収納開口を開放する退避位置とに位置変更可能な落下防止杆と、
前記棚板に設けられた第一の固定側軸受け及び第一の移動側軸受けと、
前記落下防止杆に設けられた第二の固定側軸受け及び第二の移動側軸受けと、
一端が前記第一の固定側軸受けに回動可能に軸支され、他端が前記第二の移動側軸受けに滑動可能に軸受けされた第一の支持部と、
一端が前記第二の固定側軸受けに回動可能に軸支され、他端が前記第一の移動側軸受けに滑動可能に軸受けされた第二の支持部と、
前記第一の支持部と前記第二の支持部とを各々の略中点で回動可能に連結する連結部と、を具備し、
前記第一の固定側軸受けと前記第二の固定側軸受けとを前記連結部に対して一方の側に配置するとともに、前記第一の移動側軸受けと前記第二の移動側軸受けとを前記連結部に対して他方の側に配置することを特徴とする落下防止装置。
【請求項2】
前記落下防止杆の一端または両端に前記落下防止杆を落下防止位置へと位置変更させる付勢手段を備えることを特徴とする請求項1に記載の落下防止装置。
【請求項3】
前記第一の支持部の一端の側と前記第二の支持部の他端の側と、または前記第一の支持部の他端の側と前記第二の支持部の一端の側と、の間に前記落下防止杆を落下防止位置へと位置変更させる付勢手段を備えることを特徴とする請求項1に記載の落下防止装置。
【請求項4】
前記第一の支持部の一端の側と前記第二の支持部の一端の側と、または前記第一の支持部の他端の側と前記第二の支持部の他端の側と、の間に前記落下防止杆を落下防止位置へと位置変更させる付勢手段を備えることを特徴とする請求項1に記載の落下防止装置。
【請求項5】
前記落下防止杆を退避位置に掛け止めする掛止手段を備えることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の落下防止装置。
【請求項6】
前記掛止手段による掛け止めを所定時間後に解除するセルフタイマー機構を備えることを特徴とする請求項5に記載の落下防止装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−236712(P2012−236712A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−117395(P2011−117395)
【出願日】平成23年5月10日(2011.5.10)
【出願人】(501359412)株式会社リンテック21 (38)
【Fターム(参考)】