説明

落屑を促進するための尿素化合物の使用

【課題】皮膚に天然に存在し、落屑に関連したプロテアーゼを促進することにより、自然な落屑工程を刺激する、皮膚または粘膜の落屑を刺激する落屑刺激剤の提供。
【解決手段】生理学的に許容される媒体を含む組成物中における、皮膚および/または粘膜の落屑刺激剤としての、少なくとも1つの以下の式(I)の化合物


[式中、 R、R、RおよびRは水素原子、C〜Cアルキル基、またはC〜Cヒドロキシアルキル基を表し、RからR基の少なくとも1つはヒドロキシアルキル基を表す]、ならびにこれらの塩、これらの溶媒和物およびこれらの異性体の美容使用を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な落屑促進剤、およびそれらの化粧品または薬理学的、特に皮膚科学的組成物中への使用に関する。本発明はまた、皮膚またはその付属物をトリートメントするための美容方法、およびこれらの使用を許容する組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚は2つの区画、すなわち表面区画の表皮、およびより深部区画の真皮からなり、これらは相互に作用しあっている。自然なヒトの表皮は主に3種の細胞からなり、これらは、大多数を形成するケラチノサイト、メラノサイトおよびランゲルハンス細胞である。
【0003】
表皮は、通常、表皮の胚芽層を構成するケラチノサイトの基底層、胚芽層上に配列された多面体細胞の数層からなる、いわゆる有棘細胞層、ケラトヒアリン顆粒、異なる細胞質封入体を含む扁平細胞からなる1つから3つのいわゆる顆粒層、および最後に、角質細胞として知られている、その分化の終末段階にあるケラチノサイトの層の組合せからなる角質層(horny layer)(または角質層(stratum corneum))に分けられる。角質細胞は、主に、15nmの厚さの耐性構造体、いわゆる角質外被で囲まれたサイトケラチンを含む繊維状マトリックスからなる無核細胞である。これらの角質細胞の積み重ねは、表皮バリア機能に関与する角質層を構成する。正常な落屑工程中、最も表面にある角質細胞が、表皮の表面から脱離するものである。
【0004】
コルネオソーム又はコルネオデスモソームとして知られている、デスモソームに由来する細胞間構造物は、角質層に記載されてきた。角質層細胞間癒着部において、及び、落屑工程においても、それらは重要である。特に、細胞解離とある種のコルネオデスモソーム成分、たとえばデスモグレインIまたはコルネオデスモシンとの間に密接した相関関係が存在する。
【0005】
トリプシンまたはチモトリプシンタイプのいくつかのセリンプロテアーゼは、特に角質層のチモトリプシン様酵素の、コルネオデスモソームのタンパク質分解に関与しているようである。
【0006】
真皮は表皮に対して堅牢な支持部となる。真皮はまたフィーダー成分でもある。真皮は、主として線維芽細胞と細胞外マトリックスとからなり、細胞外マトリックス自体は主にコラーゲンとエラスチンと基底物質と呼ばれる物質とから構成される。白血球、肥満細胞又は組織マクロファージもまた存在する。更に、真皮には血管と神経線維も存在している。
表皮と真皮の間の結合は、真皮表皮接合部によりもたらされる。
【0007】
表皮ホメオスタシスは、表皮の深層において分化に係わるケラチノサイトと、落屑と言われるプロセスにおいて表皮の表面から除去されたコルネオサイトとの間の平衡に相当する。正常には、落屑はコルネオサイトからコルネオサイトで起こり、わずかしか残らない。
【0008】
落屑は、過去には機械的作用に関連付けられてきた。このいわゆるレンガとモルタル理論、すなわちレンガは角質細胞であり互いに脂質のモルタルでつながれているという理論(P. Elias, 1984)は、角質外被と中間ケラチン繊維とに接続された、角質デスモソームと呼ばれるデスモソ-ム由来の粘着性構造の発見によって初めて否認された(Chapman, Walsh et al. 1991; Serre, Mils et al. 1991; Walsh and Chapman, 1991)。これらの構造を構成するタンパク質は、落屑酵素の基質である。
【0009】
実際、分化中、デスモソームタンパク質の断片が徐々に現われることと、デスモソームの超微細構造の明らかな変化があり、研究者らは、これらの変化の原因となる酵素に注目することとなった。
【0010】
まず、T. Egelrud (Egelrud, Hofer et al. 1988; Egelrud and Lundstrom 1990; Egelrud and Lundstrom 1991)が、角質層(SC)中で、落屑に関連する「トリプシン様」および特に「キモトリプシン様」型のプロテアーゼ活性の存在を実証した。T. Egelrudによるこれらの研究は、落屑の生化学に関するあらゆる研究の基礎となる研究の一部である。その後、いくつかのシステインおよびアスパラギン酸プロテアーゼ、特に角質層チオールプロテアーゼ(SCTP)またはカテプシンL2、角質層カテプシンL様体(SCCL)、およびカテプシンDがこの過程に関係があるとされた。
【0011】
多くの状況下において、表皮の更新を促進し、肌の色艶を改善し、表面の凹凸を軽減し、皮膚を平滑にし、あるいは洗浄行為および体表面の死細胞の除去を促進するためには、この落屑機序を刺激することが、望ましい可能性がある。生理学的状態では、角質層の肥厚も観察され、これはたとえば皮膚の肥厚(たこ)の場合または日光を浴びた後では抑制することが望ましい。さらに、ある種の皮膚障害では、落屑は目に見えるものとなり、脱落した多数の角質細胞を含む大型の鱗屑である。落屑の脱制御は、分子レベルでますます明瞭に説明され、皮膚異常の各側面と関連している。
【0012】
魚鱗癬は、一般に落屑の異常に伴う表皮分化障害の例である。炎症性皮膚障害、乾癬、およびアトピー性皮膚炎では、落屑の異常に伴う障害を明らかにすることも可能となった。アクネの分野では、孔を塞ぐ角栓(これはプロテアーゼ活性によって除去することができる)の堆積は、面皰が出現する原因の1つである。ふけの出現は、落屑の欠陥の別の例であり、この場合は鱗屑が異常に目に付く。一般に、復元された表皮(Vicanova, Mommaas et al. 1996)に存在する落屑障害も、タンパク質分解作用の欠陥を表す。一部の病的皮膚は、尿素誘導体に基づいた落屑促進治療から恩恵を受けることができる。これらの病状の中で、ネザートン症候群、パピヨン-ルフェーブル症候群、より一般的には遺伝性の魚鱗癬、および乾癬あるいはアトピー性皮膚炎などが挙げられる。
【0013】
落屑の促進については、既にさまざまな方法、特にピーリングまたはスクラビングによる方法が提案されている。また、特にレチノイン酸およびその誘導体、乳酸またはグリコール酸などの、α-ヒドロキシ酸、あるいはサリチル酸などのβ-ヒドロキシ酸を使用することも可能である。
【0014】
しかしながら、提案されている活性物質は、よい結果を与えるものの、しばしばタンパク質分解および/または角質溶解活性を示し、そのため塗布された領域の炎症を引き起こす恐れがある。さらに、組成物に外来性のプロテアーゼを添加することは、それらを塗布された対象者に安定化、炎症の問題をもたらす可能性があり、またアレルギーのリスクを創り出す可能性がある。
【0015】
尿素の落屑促進性は、一般に尿素のタンパク質変性特性(いわゆる「角質溶解性」作用)と関係している。尿素はある種の角質デスモソーム基質を変性し、とりわけある種のプロテアーゼの作用を促進すると考えられている。他方、この作用は自然の落屑過程を刺激できる持続的作用ではない。それは、尿素が最後には、特に2Mを超える濃度で、プロテアーゼ自体に対して変性作用を示すからである。したがって、角質層のタンパク質分解活性を持続的に刺激できる化合物を見出すことが有利となろう。
【0016】
ある種の美容活性剤は、コルネオデスモソームのタンパク質の分解(degradation)、即ち落屑を刺激することができる。特許出願EP−852949(資生堂)は、デスモグレイン(コルネオデスモソームのタンパク質)の分解を促進するグリシンタイプのα−アミノ酸誘導体の、落屑としての使用を開示している。
【特許文献1】EP−852949
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
したがって、従来技術に記載された化合物の不利益点を示すことなく、良好な活性を示す、皮膚または粘膜の落屑を刺激する入手可能な落屑刺激剤の存在が望まれている。特に、皮膚に天然に存在し、落屑に関連したプロテアーゼを促進することにより、自然な落屑工程を刺激することが望まれている。
【0018】
予想外に、出願人は、これらの目的が、尿素から誘導された化合物を使用することにより達成されることを見出した。
【課題を解決するための手段】
【0019】
すなわち、本発明の主題は、生理学的に許容される媒体を含む組成物中における、皮膚および/または粘膜および/または表面成長体の落屑刺激剤としての、少なくとも1つの以下の式(I)の化合物
【0020】
【化1】

【0021】
[式中、
、R、RおよびRはそれぞれ、互いに独立に、水素原子、C〜Cアルキル基、または1〜5個のヒドロキシル基を含むことができるC〜Cヒドロキシアルキル基を表し、RからR基の少なくとも1つはヒドロキシアルキル基を表す]、ならびにこれらの塩、これらの溶媒和物およびこれらの異性体の美容使用に関する。
【0022】
実際、本発明では、このような化合物が落屑に関連するいくつかのメカニズムに顕著な効果を有し、したがって、このプロセスを刺激する完全で自然な作用が得られ、表皮の死んだ層の除去を推進する及び/または促進することが望ましい全ての場合において、適用されるものであることを見出した。
【0023】
本発明の使用は、美容的および非治療的使用であり、落屑及び/または剥離及び/または細胞再生が刺激されている個々の物理的な外観及び/または美的外観を改善することを目的とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
式(I)の化合物としては、
− 好ましくは、RはC〜Cヒドロキシアルキル基を示し、R、RおよびRは、それぞれ互いに独立に、水素原子またはC〜Cアルキル基を示し、
− 好ましくは、Rは、1〜5個のヒドロキシル基、特に1個のヒドロキシル基を含むC〜Cヒドロキシアルキル基を示し、R、RおよびRは水素原子を示し、
− より好ましくは、Rは、1個のヒドロキシル基を含むC〜Cヒドロキシアルキル基を示し、R、RおよびRは水素原子を示す。
【0025】
アルキル基の中では、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチルおよびtert−ブチル基を挙げることができる。
【0026】
ヒドロキシアルキル基の中では、単独のヒドロキシル基、および特にヒドロキシエチル、ヒドロキシプロピル、ヒドロキシブチル、ヒドロキシペンチルおよびヒドロキシヘキシル基を含むものが好ましい。
【0027】
塩の中では、硫酸、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、リン酸またはホウ酸などの無機酸の塩を挙げることができる。また、1つまたは複数のカルボン酸、スルホン酸またはホスホン酸基を含む有機酸の塩を挙げることができる。これらは、直鎖、分枝、または環式脂肪族酸または芳香族酸であり得る。これらの酸は、たとえばヒドロキシル基の形態のOおよびNから選択される1つまたは複数のヘテロ原子をさらに含むことができる。特に、プロピオン酸、酢酸、テレフタル酸、クエン酸および酒石酸を挙げることができる。
【0028】
「溶媒和物(solvate)」という用語は、前記式(I)の化合物と、1つまたは複数の水または有機溶媒の分子の化学量論的混合物を意味し、こうした混合物は、式(I)の化合物の合成から得られるものと理解される。
【0029】
好ましい式(I)の化合物として、N−(2−ヒドロキシエチル)尿素;N−(2−ヒドロキシプロピル)尿素;N−(3−ヒドロキシプロピル)尿素;N−(2,3−ジヒドロキシプロピル)尿素;N−(2,3,4,5,6−ペンタヒドロキシヘキシル)尿素;N−メチル−N−(1,3,4,5,6−ペンタヒドロキシ−2−ヘキシル)尿素;N−メチル−N'−(1−ヒドロキシ−2−メチル−2−プロピル)尿素;N−(1−ヒドロキシ−2−メチル−2−プロピル)尿素;N−(1,3−ジヒドロキシ−2−プロピル)尿素;N−[トリス(ヒドロキシメチル)メチル]尿素;N−エチル−N'−(2−ヒドロキシエチル)尿素;N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)尿素;N,N'−ビス(2−ヒドロキシエチル)尿素;N,N−ビス(2−ヒドロキシプロピル)尿素;N,N'−ビス(2−ヒドロキシプロピル)尿素;N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−N'−プロピル尿素;N,N−ビス(2−ヒドロキシプロピル)−N'−(2−ヒドロキシエチル)尿素;N−(tert−ブチル)−N'−(2−ヒドロキシエチル)−N'−(2−ヒドロキシプロピル)尿素;N−(1,3−ジヒドロキシ−2−プロピル)−N'−(2−ヒドロキシエチル)尿素;N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−N',N'−ジメチル尿素;N,N,N',N'−テトラキス(2−ヒドロキシエチル)尿素;N',N'−ビス(2−ヒドロキシエチル)−N',N'−ビス(2−ヒドロキシプロピル)尿素;およびこれらの混合物を挙げることができる。
好ましくは、式(I)の化合物は、N−(2−ヒドロキシエチル)尿素である。
【0030】
式(I)の化合物は、知られている化合物であり、特に出願DE−A−2703185に開示されている。さらに、これらの中で、N−(2−ヒドロキシエチル)尿素は、National Starch社から商標名Hydrovance(登録商標)として50重量%の水との混合物の形態で市販されている。しかしながら、本出願人の知る限りでは、これらの化合物は、タンパク質分解活性を刺激し、落屑を促進するために提案されたことはない。
【0031】
N−(2−ヒドロキシエチル)尿素の量及び本発明により使用される他の式(I)の化合物の量は、所望する結果に依存し、特に、改善すべき皮膚の状態に依存する所望のピーリングまたは剥離の深さに依存する。式(I)の化合物は特に、本発明による組成物中に、組成物の全重量に対して、0.01から70重量%、好ましくは、0.1重量%以上、さらには1重量%以上の範囲の量で存在可能であり、濃度は、いくつかの実施態様によれば、0.1から20重量%まで変化可能であり、特に、デイリーケア用には、10重量%以下であろう。
【0032】
より高い濃度、特に約30から50%が、ピーリング用には好ましく使用され、これらの適用は、たとえば、毎週、または2週間毎等、経時的に時間をあけて行われる。式(I)の化合物は、適用された後、適用表面から相当する体の表面をすすぎ流すことにより、除去される。接触時間は、たとえば、5分から6時間と種々変えることができる。
【0033】
本発明による組成物は、化粧品または薬理学的組成物、特に皮膚科学的組成物であってもよい。
【0034】
本発明によれば、生理学的に許容される媒体とは、皮膚、粘膜、爪および/または毛髪と適合性のある、化粧品としてまたは薬理学的に許容される媒体である。
【0035】
本発明による組成物は、爪、毛髪、特に皮膚および粘膜に施用することができる。この媒体は、好ましくは化粧品として許容される媒体、すなわち快適な色、匂いおよび感触を示し、許容できない不快感をもたらさないものである。
【0036】
この組成物は、好ましくは化粧品組成物または化粧品である。「化粧品」という用語は、人体の種々の表面部分(表皮、体毛および毛髪、爪、唇および外生殖器)、あるいは歯および口腔粘膜と接触させ、もっぱらまたは主として、これらを清浄化し、香気を与え、外観を改良し、および/または体臭をやわらげ、および/またはこれらを保護し、もしくは良好な状態に保持する目的のために接触させることが意図される物質または調製物を特に意味するものと理解される(改正化粧品指令76/768/EEC)。
【0037】
これらの特性は、したがって、研究されていた。
・ 5%の活性剤を含有する製剤化した生成物を用いて、制御された環境室下、コルネオデスモシンの分解をテストすることによる、落屑促進力:このテストにより、コルネオデスモシンのタンパク質分解を緩和する、製剤化した活性剤の能力を評価することができる。
・ 「角質溶解」の潜在能力:
ケラチン可溶化(「角質溶解」)テスト:このテストは、尿素とその誘導体の変性能力を例証することに相当する。分子の、SCのケラチンの可溶化効果は、電気泳動ゲルにおいてモニターされる。
・ SCの酸プロテアーゼの「活性化」の可能性:このテストでは、ある条件下において、ある表皮プロテアーゼのタンパク質溶解可能性が増加可能であることを示すことができる。
【0038】
本発明のある特徴によれば、前記式(I)の化合物は、それが刺激するコルネオデスモシン分解効果を有する。
【0039】
本発明の他の特徴によれば、前記式(I)の化合物は、尿素のケラチン溶解効果よりも大きいケラチン溶解効果を有する。
【0040】
最後に、より優位には、上記で定義した式(I)の化合物は、角質層のプロテアーゼの活性を刺激する。これらの酵素は、特に、以下のものからなる群から選択される。
・ カリクレイン(kallikrein)ファミリーのセリンプロテアーゼ、たとえば、カリクレイン5、7、または14;
・ アスパラギン酸プロテアーゼ、たとえばカテプシン(Cathepsin)D,E,またはSASパーゼ(Locuslink 151516)、または文献:WO 04/007548に記載されたプロテアーゼ;
・ システインプロテアーゼ、たとえばカテプシンB,H,L,L2,カルパインまたはカスパーゼ14;
・ メタロプロテアーゼ、たとえばカルボキシペプチダーゼ。
【0041】
特に、0.5から2M、特に1Mの濃度のN−(2−ヒドロキシエチル)尿素は、SCの酸プロテアーゼ、たとえばカテプシンDまたはカテプシンL2により、タンパク質基質の分解を刺激する。
【0042】
本発明による組成物は、特に、皮膚の荒れをスクラブするのに適した剥離組成物である。これら組成物は、角質層がより厚くなっている、たとえばたこを除去することができるピーリング組成物であってもよい。
【0043】
本発明による組成物はまた、皮膚および/または頭皮をクレンジングするための組成物でもあり、クレンジング剤の作用は、洗浄した表面から死んだ細胞の除去を促進することにより強化されるものである。これらの組成物はしたがって、フケの美容処理に、または、頭皮の剥離性状態の美容処理に、有用である。
【0044】
本発明の他の特徴によれば、式(I)の化合物またはその誘導体を含有する組成物は、皮膚及び/または粘膜、特に唇の表面状態を改善するためのものであり、特に、前記組成物は、皮膚及び/または唇の表面に存在する死んだ皮膚およびまたは荒れを除去することを促進するであろう。
【0045】
本発明はまた、落屑障害に関連した徴候のトリートメント用組成物を調製するための、上記に定義した少なくとも1つの式(I)の化合物またはその誘導体の使用に関する。
【0046】
本発明の主題はまた、魚鱗癬、過角化症、乾皮症(Xeroses)、乾癬、アトピー性皮膚炎、アクネ、およびフケから選択された少なくとも1つの皮膚障害をトリートメントための組成物を調製するための、少なくとも1つの式(I)の化合物の使用である。
【0047】
乾皮症(Xeroses)は、落屑の規制がない皮膚障害であり、老人性乾皮症、冬期乾皮症、ある洗浄剤の使用に、または更年期の開始に関連した乾皮症が挙げられる。
【0048】
アクネの分野では、毛穴をふさぐ角質栓の蓄積が、コメドの発現の1つの要因であり、後者は、より容易に除去可能であり、本発明による化合物のタンパク質分解および落屑作用によって、その形成が遅延するまたは避けられるものである。
【0049】
本発明のある実施態様によれば、組成物は、破片(debris)等の除去を促進することによる、外傷治癒を促進するためのものである。
【0050】
別の実施態様によれば、上記に定義した、式(I)の化合物またはそれらを含有する組成物は、表面凹凸を除去することにより、および、ケアーまたはメークアップ製品の適用にこれらを使用することにより、爪の外観を改善するのに有用である。爪の光沢を保持するのは、特に、ケラチン分解性および落屑活性を有するであろう、式(I)の化合物をあらかじめ適用することにより促進されるであろう。本発明による式(I)の化合物またはこれらを含有する組成物はまた、爪の周りに存在するキューティクルの除去を促進するであろう。式(I)の化合物は、第1段階中のベース形成に適用可能であり、次いで、乾燥すると、爪の光沢は、任意に得られるであろう。
【0051】
一般に、本発明の組成物はいずれも、経口摂取し、注入し、または皮膚(体の任意の皮膚の領域上に)または粘膜(口腔、頬骨、歯肉、生殖器、結膜等の粘膜)に塗布することができる。
好ましくは、本発明の組成物は、皮膚または粘膜に塗布される。
【0052】
考慮した投与方法に応じて、この組成物は普通に使用される製剤形態で提供することができる。
【0053】
皮膚または粘膜への局所施用では、組成物は、特に、水性もしくは油性の溶液またはローションもしくは血清タイプの分散物、水性相中の脂肪相(O/W)もしくは逆の場合(W/O)の分散物により得られる、乳液タイプの液体もしくは半液体のコンシステンシーを有するエマルジョン、あるいは水性もしくは無水のゲルもしくはクリームタイプの軟らかなコンシステンシーを有する懸濁液またはエマルジョン、または、マイクロカプセルまたは微粒子、あるいはイオン性および/もしくは非イオン性タイプまたはフォームの多孔質分散物の形態であり得る。これらの組成物は、通常の方法に従って調製される。
【0054】
注入用では、組成物は水性または油性のローションの形態、または血清の形態で提供することができる。眼用では、組成物は点眼の形態で提供することができ、経口摂取では、これはカプセル、顆粒、シロップまたはタブレットの形態で提供することができる。
【0055】
本発明による組成物の種々の成分の量は、考慮される分野で従来使用されたものである。
【0056】
化粧品分野では、これらの組成物は、特に、顔用、手用、足用、主な解剖学的しわまたは体用の清浄化、保護、トリートメント、または手入れをするためのクリーム(たとえば、デイクリーム、ナイトクリーム、メイキャップ落としクリーム、ファンデーションクリームまたはサンクリーム)、液体ファンデーション、メイキャップ落とし乳液、保護またはボデーケア用乳液、日焼け止め乳液、ローション、スキンケア用ゲルまたはフォーム、たとえば、クレンジングローション、人工タンニングローション、入浴用組成物、殺菌剤を含む防臭組成物、アフターシェーブジェルまたはローション、虫刺れ対抗組成物、あるいは湿疹、しゅさ、乾癬、苔癬および重症のそう痒症などのある種の皮膚病を治療する組成物である。
【0057】
本発明による組成物はまた、クレンジングソープまたはクレンジングバーを構成する固体調製物からなることもできる。
【0058】
組成物はまた、加圧噴射剤を含むエアロゾル組成物の形態で包装することもできる。
【0059】
本発明による組成物はまた、頭皮を手入れするための組成物、および特にシャンプー、ヘアセッティングローション、トリートメントローション、整髪クリームまたはジェル、ヘアリストラクチャリングローション、脱毛抑制ローションまたはジェル、駆虫性シャンプー、ふけ防止シャンプー等であり得る。
【0060】
組成物はまた、口腔使用、たとえば、練り歯磨きであり得る。この場合、組成物は、口腔用途の組成物に一般的な補助剤および添加剤、特に界面活性剤、増粘剤、湿潤剤、シリカなどの研磨剤、フッ化物、特にフッ化ナトリウムなどの種々の活性成分、および任意選択でナトリウムサッカリネートなどの甘味料を含むことができる。
【0061】
組成物がエマルジョンの場合、脂肪相の割合は、組成物総重量に対してほぼ5〜80重量%、好ましくはほぼ5〜50重量%であり得る。このエマルジョン状の組成物中で使用される油、ワックス、乳化剤および共乳化剤は、化粧品分野で通常使用されるものから選択される。乳化剤および共乳化剤は、組成物総重量に対して0.3〜30重量%、好ましくは0.5〜20重量%の範囲の割合で組成物中に存在する。さらに、エマルジョンは脂質小胞体を含むことができる。
【0062】
組成物が油性の溶液またはゲルの場合は、脂肪相が、組成物の総重量の90%超を占めることができる。
【0063】
公知の方法で、化粧品組成物はまた、親水性または親油性ゲル化剤、親水性または親油性添加剤、防腐剤、酸化防止剤、溶媒、香料、充填剤、スクリーン剤、臭気吸収剤および着色材料などの化粧品分野で一般的な補助剤を含むことができる。これらの種々の補助剤の量は、化粧品分野で従来使用される量であり、たとえば、組成物総重量のほぼ0.01〜10%で変化する。これらの補助剤は、その性質に応じて脂肪相、水性相および/または脂質球状体中に導入することができる。
【0064】
本発明で使用することができる油またはワックスとして、鉱油(ワセリン)、植物油(シアバターの液体分画、ヒマワリ油)、動物油(ペルヒドロスクアレン)、合成油(パーセリン油)、シリコーン油またはワックス(シクロメチコーン)、およびフッ素化油(ペルフルオロポリエーテル)、ミツロウ、カルナウバワックスまたはパラフィンワックスを挙げることができる。脂肪アルコールおよび脂肪酸(ステアリン酸)をこれらの油に加えることができる。本発明で使用することができる乳化剤としては、たとえば、ステアリン酸グリセリル、ポリソルベート60およびGattefosse社により商品名Tefose(登録商標)63として販売されているPEG−6/PEG−32/ステアリン酸グリコール混合物を挙げることができる。
【0065】
本発明で使用することができる溶媒としては、低級アルコール、特に、エタノールおよびイソプロパノール、およびプロピレングリコールを挙げることができる。
【0066】
本発明で使用することができる親水性ゲル化剤としては、カルボキシビニルポリマー(Carbomer(登録商標))、アクリル酸コポリマー、たとえばアクリレート/アルキルアクリレートコポリマー、ポリアクリルアミド、ヒドロキシプロピルセルロースなどの多糖類、天然ゴムおよびクレーを挙げることができ、親油性ゲル化剤としては、ベントンなどの変性クレー、ステアリン酸アルミニウムなどの脂肪酸の金属塩、疎水性シリカ、エチルセルロースおよびポリエチレンを挙げることができる。
【0067】
式(I)の化合物は単独で、または種々の比率の混合物として使用可能である。
【0068】
本発明のある実施態様によれば、これらは、単独の落屑剤として使用される。
【0069】
本発明の他の実施態様によれば、これらは、少なくとも1つの他の落屑剤と組み合わせて使用される。したがって、前記組成物は、式(I)の化合物とは相違する少なくとも1つの他の落屑刺激剤を含有する。
【0070】
式(I)の化合物は、他の薬剤の活性を促進し、したがって、組成物中、その量はより少なくても良い。
【0071】
「落屑剤」なる用語は、
− 剥離を促進することにより落屑に直接的に作用し得るあらゆる化合物、例えば、β-ヒドロキシ酸、特にサリチル酸とその誘導体(5-n-オクタノイルサリチル酸を含む);α-ヒドロキシ酸、例えばグリコール酸、クエン酸、乳酸、酒石酸、リンゴ酸またはマンデル酸;尿素;ゲンチシン酸;オリゴフコース;ケイ皮酸;シダレエンジュ(Saphora japonica)の抽出物;レスベラトロル;およびジャスモン酸のいくつかの誘導体;または、
− 落屑またはコルネオデスモソーム(corneodesmosomes)の分解に関与する酵素、グリコシダーゼ、他のプロテアーゼ(トリプシン、キモトリプシン様)の角質層キモトリプシン酵素(SCCE)に作用し得るあらゆる化合物を意味する。鉱物塩をキレートする薬剤:EDTA;N-アシル-N,N’,N’-エチレンジアミン三酢酸;アミノスルホン化合物、特に(N-2-ヒドロキシエチルピペラジン-N-2-エタン)スルホン酸(HEPES);2-オキソチアゾリジン-4-カルボン酸の誘導体(プロシステイン);グリシンのようなタイプのα-アミノ酸の誘導体(EP-0,852,949に記載のもの、Trilon Mの商品名でBASFから市販されているメチルグリシン二酢酸ナトリウム);蜂蜜;O-オクタノイル-6-D-マルトースおよびN-アセチルグルコサミンのような糖誘導体;栗の抽出物、たとえばSILAB社からRecoverine(登録商標)の名称で市販されているもの、ウチワサボテンの抽出物、たとえば、SILAB社からExfolactiveの商品名で市販されているもの、または、Degussa社から市販されているPhytosphingosine SLC(登録商標)を挙げることができる。
【0072】
本発明に好適な落屑剤は、特に、スルホン酸、カルシウムキレーター、α-ヒドロキシ酸、例えばグリコール酸、クエン酸、乳酸、酒石酸、リンゴ酸またはマンデル酸;アスコルビン酸およびその誘導体、たとえばアスコルビルグルコシドおよびアスコルビルリン酸マグネシウム;ニコチンアミド;尿素; (N-2-ヒドロキシエチルピペラジン-N-2-エタン)スルホン酸(HEPES);β-ヒドロキシ酸、たとえばサリチル酸およびその誘導体、レチノイド、たとえばレチノールおよびそのエステル、レチナール、レチノイン酸およびその誘導体、文献:FR2570377,EP199636,EP325540,EP402072に記載されているもの、栗またはウチワサボテンの抽出物、特にSILAB社から販売されているもの;システインまたはシステイン前駆体等の還元剤を含む群から選択可能である。
【0073】
使用可能な落屑剤はまた、ニコチン酸およびそのエステルおよびニコチンアミド(ビタミンB3またはビタミンPPとも称される)、およびアスコルビン酸およびその前駆体、特に文献:EP1529522に記載されているようなものである。
【0074】
特に、本発明による式(I)の尿素誘導体に関連可能であるシステイン前駆体が、文献:EP1337234に記載されている。これらの2−オキソチアゾリジン−4−カルボン酸誘導体(プロシステインとも称される)は、以下の式:
【0075】
【化2】

【0076】
(式中、
Xは、−OH基又は−NHR基を示し、R及びRは、同一でも異なっていてもよく、
−水素原子、
−少なくとも1つの−OR基、及び/又は少なくとも1つの−COOR基、及び/又は少なくとも1つの−NHR基、及び/又は少なくとも1つの−SR基、及び/又は少なくとも1つの−R基(ここで、Rは水素又は直鎖又は分枝C1−C4アルキルを示す)で任意に置換された直鎖又は分枝C1−C8アルキル基、
−COR基[ここで、Rは、少なくとも1つの−OR基、及び/又は少なくとも1つの−COOR基、及び/又は少なくとも1つの−NHR基、及び/又は少なくとも1つの−SR基、及び/又は少なくとも1つの−R基(ここで、Rは水素又は直鎖又は分枝C1−C4アルキルを示す)で任意に置換された直鎖又は分枝C1−C8アルキル基を示す]、
−少なくとも1つの−OR基、及び/又は少なくとも1つの−COOR基、及び/又は少なくとも1つの−NHR基、及び/又は少なくとも1つの−SR基、及び/又は少なくとも1つの−R基(ここで、Rは水素又は直鎖又は分枝C1−C4アルキルを示す)で任意に置換された、ベンゼンまたはヘテロ環アラルキルまたはアリール基を示す)。
【0077】
上記誘導体中、特に、プロシステインまたはL−2−オキソチアゾリジン−4−カルボン酸、2−オキソ−3−(L−γ−グルタミル)チアゾリジン−4−カルボン酸、N−(2−オキソチアゾリジン−4−イルカルボニル)グリシン、およびN−[2−オキソ−3−(L−γ−グルタミル)チアゾリジン−4−イルカルボニル]グリシンが挙げられる。
【0078】
本発明による組成物はまた、他の酵素、特に、外因性プロテアーゼおよび/またはグリコシダーゼおよび/またはリパーゼおよび/またはアミダーゼを含有可能である。
【0079】
このような化合物は従来、落屑用、および/または角質層の再生促進用組成物中に使用されており、上記で定義した少なくとも1つの式(I)の化合物を組み合わせると、これらの作用を強化および/または延長することが可能であろう。これらの酵素、特にプロテアーゼは、したがって、増強剤を用いない組成物中に使用する場合に、推奨される濃度よりも低い濃度で効果的であろう。これは、上記使用に関連したリスクおよび困難性を限定的にすることになるであろう。
【0080】
これらのプロテアーゼは、動物、植物または微生物由来のものでもよく、精製形態で使用される。特に、微生物由来のプロテアーゼ、たとえば、スブチリシン(subtillisin)、COLETICAからExfocelliaの商品名で販売されているもの、LSからProzimex HTB LS 9142で販売されているもの、NovoNordisk社からEsperase(登録商標)およびNeutrase(登録商標)で市販されているものを使用することができる。これらのプロテアーゼは、また、パパイヤ、メロン、特に、パパインをベースとした植物抽出物中に存在するプロテアーゼ、たとえば、COLLABORATIVE LABSからのLinked Papain C-PSの商品、パパインおよびブロメリン、たとえばLSからのVegales LS2939の商品、またはMucor mehi抽出物、たとえばACTIVE ORGANICSからのAcitzyme E3M-Mであってもよい。
【0081】
これらの酵素の濃度は、これらを含有するプロダクトの活性および純度に依存して調整されるものであろう。これらは、一般的には、本発明による式Iの化合物と組み合わせて、0.0001%から5%であるが、1%以下、さらには0.1%以下の濃度まで減少されることが可能である。
【0082】
グリコシダーゼは、基質として、プロテオグリカン、グリコリピド及び一般に角質層の複合糖質化合物を有しうるあらゆる酵素である。前記酵素は、特に、へパラナーゼ、シアリダーゼ、例えばノイラミニダーゼ、マンノシダーゼ、ガラクトシダーゼ、グルコシダーゼ、N-アセチルグルコサミニダーゼ、N-アセチルガラクトサミニダーゼ、コンドロイチナーゼ、グルクロニダーゼ又はヒアルロニダーゼ、さらには、文献:WO02/38122にたとえば記載されているような、セルラーゼである。特に、N-グリカナーゼ、セルラーゼ、β-グルコシダーゼ、β-ガラクトシダーゼ、N-アセチルグルコサミニダーゼ及び/又はN-アセチルガラクトサミニダーゼを使用可能である。本発明の組成物中に使用されるグリコシダーゼは、角質層の細胞によって合成されたタンパク質の抽出物から精製可能であり、または、微生物により天然に合成されたグリコシダーゼであってもよい。これらはまた、異種系において産生された組換えグリコシダーゼであってもよい。使用可能なグリコシダーゼの例は、RocheからまたはCalbiochemから販売されているものである。これらの酵素は、式(I)の化合物を単独で、またはくみあわせて、特に、2または3のグリコシダーゼと組み合わせて含有する組成物中に存在可能であると理解される。
【0083】
アミダーゼ活性を有するヒドロラーゼまたはアミダーゼの例は、一般的な命名法で、化合物群EC 3.5.1.1からEC 3.5.1.89のもの、中でも、文献:EP1438968に記載されている、アスパラギナーゼ、グルタミナーゼ、アミダーゼ、ウレアーゼ、アミノアシラーゼ、アスパルトアシラーゼ、セラミダーゼ、ペプチジルグルタミナーゼ、ホルムアミダーゼ、ペンタンアミダーゼ、及びアスパルチルグルコサミニダーゼAGAを挙げることができる。
【0084】
使用可能なリパーゼとしては、限定するわけではないが、NOVO社から市販されているSP144商品が挙げられる。
【0085】
本発明による組成物はさらに、少なくとも1つの美容活性剤、すなわち、保湿剤、有害なプロテアーゼの活性の減少または阻害剤、表皮分化刺激剤、および抗脂漏剤から選択された化合物を含有してもよい。
【0086】
「保湿剤」なる用語は、
− 角質層の保湿性を維持するためにバリア機能に作用する化合物または閉塞性化合物であって、例えばセラミド、スフィンゴイド系化合物、レシチン、グリコスフィンゴ脂質、リン脂質、コレステロールとその誘導体、フィトステロール(スチグマステロール、β−シトステロールまたはカンポステロール)、必須脂肪酸、1,2-ジアシルグリセロール、4-クロマノン、五環式トリテルペン、例えばウルソール酸、ワセリンおよびラノリン;
− または、角質層の水分含量を直接増大させる化合物であって、例えば、スレアロースとその誘導体、ヒアルロン酸とその誘導体、グリセロール、ペンタンジオール、ナトリウムピドラート、セリン、キシリトール、乳酸ナトリウム、ポリグリセリルアクリラート、エクトインとその誘導体、キトサン、オリゴ糖および多糖、環状炭酸塩、N-ラウロイル-ピロリドンカルボン酸およびN−α−ベンゾイル-L-アルギニン;特許文献:WO 02/051828に記載されているような、Hepes、またはC-グリコシド化誘導体;
− または、皮脂分泌腺を活性化する化合物であって、例えばステロイド誘導体(DHEA、7−酸化及び/または17−アルキル化誘導体、およびサポゲニン)、ジヒドロジャスモン酸メチル、およびビタミンD及びその誘導体
を意味するものと理解される。後者のカテゴリーの化合物は、より特に、成熟した、または更に成熟した、たとえば55または60歳を超える人の皮膚に適用するのに好適である。
【0087】
これらの化合物は、本発明による組成物の全重量に対して、0.001から30%、好ましくは0.01から20%で存在可能である。
【0088】
本発明による組成物に有用な、表皮増殖または分化の刺激剤は、より特別には、ケラチノサイトに活性を有する。
【0089】
本発明にかかる組成物で用いることができるケラチノサイト増殖刺激剤は、特に、レチニルパルミタートを含むレチノールとそのエステルのようなレチノイド;アデノシン;フロログルシノール;Gattefosse社から市販されているナッツケーキ(nut cake)抽出物;およびSederma社から市販されているジャガイモ(Solanum tuberosum)抽出物を含む。
【0090】
ケラチノサイトの分化刺激剤は、例えば、カルシウム等の無機物質;Silab社により商標名Structurin(登録商標)として販売されているものなどのルピナスペプチド抽出物; Seporga社により商標名Phytocohesin(登録商標)として販売されているものなどのベータ−シトステリル硫酸ナトリウム;Solabia社により商標名Phytovityl(登録商標)として販売されているものなどの水溶性トウモロコシ抽出物;Laboratoires Serobiologiques社により商標名Filladyn LS 9397(登録商標)として販売されているものなどのバンバラマメ(Voandzeia subterranea)のペプチド抽出物;およびセコイソラリシレシノールなどのリグナンを含む。
【0091】
組成物はまた、8−ヘキサデセン−1,16−ジカルボン酸、エクジステロイド類(ecdysteroids)、たとえばエクジステロン及びその誘導体、またはビタミンD誘導体、および/またはPPARアゴニスト類を含有してもよい。
【0092】
本発明による組成物中で使用することができる線維芽細胞の増殖を刺激する薬剤は、たとえば、植物タンパク質またはポリペプチド、特に、ダイズの抽出物(たとえば、LSN社により商品名Eleseryl SH−VEG 8(登録商標)として販売されている、またはSilab社により商標名Raffermine(登録商標)として販売されているダイズ抽出物);およびジベレリンおよびサイトカイニンなどの植物ホルモンから選択することができる。
【0093】
有害なプロテアーゼの活性を減少または阻害する薬剤としては、
− メタロプロテイナーゼ(マトリックスメタロプロテイナーゼまたはMMP)、特にMMP1、2、3または9などの阻害に作用するもの、たとえば、レチノイドおよび誘導体、オリゴペプチドおよびリポペプチド、リポアミノ酸、Coletica社により商標名Collalift(登録商標)として販売されている麦芽抽出物;ブルーベリーまたはローズマリーの抽出物;リコペン;イソフラボン、これらの誘導体またはこれらを含む植物抽出物、特に、ダイズ抽出物(Ichimaru Pharcos社により商標名Flavosterone SB(登録商標)として販売されている)、レッドクローバー抽出物(たとえば、Sederma社により商標名「Sterocare(登録商標)」として販売されている)、亜麻、葛根またはセージの抽出物;ウコン(Curcuma longa)の抽出物;あるいはメナモミ(Siegesbeckia)抽出物(たとえば、Sederma社により販売されている)を挙げることができ;
− あるいは、白血球エラスターゼまたはカテプシンGなどのある種のセリンプロテアーゼの阻害に作用するもの、たとえば、Laboratoires Serobiologiques社により商標名Parelastyl(登録商標)として販売されているマメ科植物(エンドウ(Pisum sativum))種子のペプチド抽出物;ヘパリノイド;及び(2−[アセチル(3−(トリフルオロメチル)フェニル)アミノ]−3−メチルブチリルアミノ]酢酸などのプソイドジペプチドを挙げることができる。
【0094】
本発明により添加可能な他のプロテアーゼ阻害剤は、たとえばトラネキサム酸などのプラスミノーゲン活性化阻害剤である。
【0095】
実際、あるプロテアーゼ活性が優位に本発明により活性化されるが、一方で、他の酵素は真皮または表皮の成分に有害な効果を有し、これらの活性が皮膚の外観や光沢に光学的な効果を得るために抑制されなければならないことが知られている。
【0096】
他の特徴によれば、組成物は、抗脂漏剤を含有し、たとえば、5α−リダクターゼインヒビターを含有し、これらは、特に、以下のものから選択される。
・レチノイド、特にレチノール;
・硫黄と硫黄含有誘導体;
・亜鉛塩、例えば乳酸亜鉛、グルコン酸亜鉛、ピドール酸亜鉛、カルボン酸亜鉛、サリチル酸亜鉛、および/またはシステアリン酸亜鉛;
・セレニウム塩化物;
・ビタミンB6またはピリドキシン;
・特にSEPPIC社によってSepicontrol A5(登録商標)という商品名で販売されているカプリロールグリシン、サルコシンおよび桂皮の抽出物の混合物;
・特にBiotech Marine社によってPhlorogine(登録商標)という商品名で販売されているラミナリア甘味薬の抽出物;
・特にSilab社によってSebonormine(登録商標)という商品名で販売されているスピラエアウルマリアの抽出物;
・例えば、マルゼン社によって全て販売されている種:アルニカモンタナ(Arnica montana)、アカナイキ(Cinchona succirubra)、チョウジ(Eugenia caryophyllata)、ホップ(Humulus lupulus)、セイヨウオトギリソウ(Hypericum perforatum)、セイヨウハッカ(Mentha piperita)、マンネンロウ(Rosmarinus officinalis)、サルビヤ(Salvia officinalis)およびタチジャコウソウ(Thymus vulgaris)の植物抽出物;
・特にEuromed社によって販売されているノコギリヤシ(Serenoa repens)の抽出物;
・シリブム(Silybum)属の植物の抽出物;
・オイゲノールおよびオイゲニルグルコシドを含むチョウジ(Eugenia caryophyllata)の抽出物。
【0097】
このような薬剤を含有する組成物は、特に、脂症のまたは過脂漏症の皮膚のトリートメントを目的とするものであろう。
【0098】
本発明の主題はまた、皮膚及び/または表面成長体の表面層の除去を促進するための、または、落屑を促進するための美容処理方法であって、少なくとも1つの式(I)の化合物、特にN−(2−ヒドロキシエチル)尿素またはそれを含有する組成物を、処理すべき領域に適用する工程を含む、方法である。
【0099】
本発明の他の主題は、少なくとも1つの式(I)の化合物または上記の組成物を、皮膚または粘膜に適用することを特徴とする、顔の輝きを促進する及び/または皮膚及び/または粘膜の表面凹凸を減少するための美容処理方法に関する。
【0100】
この方法を実行するには、皮膚の可視の及び/または触知できる凹凸をスムーズにするべく、たとえば、色素沈着したしみまたは傷跡をトーンダウンするべく、特に唇から死んだ皮膚を除去する及び/またはスムーズにするべく、式(I)の化合物またはそれを含有する組成物を皮膚またはその付属部領域、特に顔、首、および肩、手または唇に適用することができる。
【0101】
適用回数は、組成物中の式(I)の化合物の濃度および所望の効果に依存して種々変化させるであろう。参考としては、組成物を皮膚または表面成長体と5分から12時間の間で接触させ、前記接触期間の終わりに除去するまたは除去しないことができる。前記適用は、毎日または1日2回、または1週間に1回行ってもよく、2週から6ヶ月の期間、繰り返してもよく、困難性なく、この期間を延長または更新することが可能である。
【0102】
他の実施態様によれば、本発明は、皮膚及び/または粘膜の落屑を促進する美容方法に関し、前記美容方法は、少なくとも、(i)落屑を引き起こすよりも少なくとも小さい濃度で、上記で定義した式(I)の少なくとも1つの化合物、特にN−(2−ヒドロキシエチル)尿素、またはその塩またはその溶媒和物を、処理すべき領域に適用することからなる、ピーリング用皮膚を調製する工程と、(ii)それに次ぐ、落屑を引き起こすのに適した濃度で、少なくとも1つの落屑剤を適用することを含む工程とを含有する。落屑剤を濯ぐことにより除去する工程は、その後に行われるであろう。
【0103】
優位には、前記工程(i)は、式(I)の化合物の濃度を増加させて繰り返してもよい。これらの濃度は、所望する効果および適用回数によって、当業者は調節するであろうが、一般的には、10%よりも低い。たとえば、約2重量%の第1濃度を使用し、それに次ぐ1以上の適用は、約4重量%、次いで6重量%または8重量%である。
【0104】
前記工程(ii)は、式(I)の化合物のみから、または、混合物として、特に、N−(2−ヒドロキシエチル)尿素のみならず、スルホン酸、カルシウムキレーター、α-ヒドロキシ酸、例えばグリコール酸、クエン酸、乳酸、酒石酸、リンゴ酸またはマンデル酸;アスコルビン酸およびその誘導体、たとえばアスコルビルグルコシドおよびアスコルビルリン酸マグネシウム;ニコチンアミド;尿素; (N-2-ヒドロキシエチルピペラジン-N-2-エタン)スルホン酸(HEPES);β-ヒドロキシ酸、たとえばサリチル酸およびその誘導体、レチノールおよびそのエステル、レチナール、レチノイン酸およびその誘導体、栗またはウチワサボテンの抽出物、還元化合物、たとえば、システインまたはシステイン前駆体、ニコチン酸およびそのエステル、およびニコチンアミド(ビタミンB3またはビタミンPPとも称される)、8−ヘキサデセン−1,16−ジカルボン酸を含む群から選択可能である、少なくとも1つの落屑剤を適用することを含む。
前記工程(ii)中、落屑剤は、10%以上、特に約20から50%の全濃度で適用し、5分から6時間の間、好ましくは、5分から30分の間、皮膚と接触させるであろう。
【0105】
本発明による方法は、落屑剤、特に式(I)の化合物、たとえばN−(2−ヒドロキシエチル)尿素を、水またはマイルド洗浄剤ですすぐことにより除去する、少なくとも1つのさらなる工程を含有する。
【0106】
ある特別な実施態様によれば、本発明は、少なくとも2つの成分:
− 上記で定義した式(I)の少なくとも1つの化合物をまたはそれを含有する組成物を含む第1成分、
− プロテアーゼ、リパーゼ、およびグリコシダーゼから選択された少なくとも1つの剤を含有する第2成分
を適用することからなるケラチン物質の美容処理方法に関し、これら2つの成分は同時に、合同して、または順次に、皮膚、粘膜、または表面成長体に適用することからなる。
【0107】
優位には、第2成分は、落屑に関連した少なくとも1つのプロテアーゼを含有するであろう。
【0108】
保湿剤、有害プロテアーゼの活性の減少または阻害剤、表皮分化刺激剤、および抗脂漏剤から選択した薬剤が、優位には、第1および/または第2成分中に存在してもよい。
【0109】
第1成分は任意に、少なくとも1つの落屑剤、たとえば、直接的に落屑を促進する化合物、落屑またはコルネオデスモソームの分解に関連する酵素に作用する化合物、特に、システインまたはその前駆体から選択されるものを含有してもよい。
【0110】
本発明の主題はしたがって、また、少なくとも2つの成分:
− 上記で定義した式(I)の少なくとも1つの化合物を含有する第1成分、
− プロテアーゼ、リパーゼ、およびグリコシダーゼから選択された少なくとも1つの剤を含有する第2成分を含有する、キット形態の美容組成物または美容剤であって、これら2つの成分は同時に、合同して、または順次に、皮膚、粘膜、または表面成長体に適用される、美容組成物または美容剤に関する。
【0111】
上記さらなる落屑剤、たとえば、スルホン酸、カルシウムキレーター、α-ヒドロキシ酸、例えばグリコール酸、クエン酸、乳酸、酒石酸、リンゴ酸またはマンデル酸;アスコルビン酸およびその誘導体、たとえばアスコルビルグルコシドおよびアスコルビルリン酸マグネシウム;ニコチンアミド;尿素; (N-2-ヒドロキシエチルピペラジン-N-2-エタン)スルホン酸(HEPES);β-ヒドロキシ酸、たとえばサリチル酸およびその誘導体、レチノールおよびそのエステル、レチナール、レチノイン酸およびその誘導体、栗またはウチワサボテンの抽出物、還元化合物、たとえば、システインまたはシステイン前駆体、ニコチン酸およびそのエステル、およびニコチンアミド(ビタミンB3またはビタミンPPとも称される)、8−ヘキサデセン−1,16−ジカルボン酸もまた、第1及び/または第2成分中に存在可能である。
【0112】
第1及び/または第2成分はさらに、上記したような少なくとも1つの美容活性剤、たとえば、保湿剤、有害プロテアーゼの活性の減少または阻害剤、表皮分化刺激剤、および抗脂漏剤を含有可能である。
【0113】
本発明の主題はまた、少なくとも1つの式(I)の化合物と、上記に記載したような、すくなくとも1つの、式(I)の化合物とは相違する落屑剤を含有する化粧品または皮膚科学的組成物に関する。
【0114】
他の見地によれば、本発明はまた、
i)少なくとも1つの区画を区切る容器であって、封止部で封止される容器;および
ii)前記区画内に収容された組成物を含有する美容セットに関する。
【0115】
前記容器は、種々の適当な形態であってよい。特に、ボトル、チューブ、ポット、ボックス、パック、バッグ、またはケースの形態であってもよい。
【0116】
前記封止部は、着脱可能なストッパー、カバー、ふた、引き剥がしストリップ、またはカプセル、特に容器に取り付けられた本体と、前記本体と関節構造関係にあるカバーキャップの形態であってもよい。容器を選択的に封止する部材の形態でもよく、特に、ポンプ、バルブ、またはシャッターの形態であってもよい。
【0117】
容器は、アプリケータと組み合わせても良く、特に、ツイストワイヤーで保持した剛毛が配列したブラシの形態であってもよい。このようなツイストブラシは、特に、米国特許第4887622号に記載されている。または、特に成型によって得られる、複数のアプリケーション部材を有するくしの形態であってもよい。このようなくしは、たとえば、特許文献:FR2796529に記載されている。アプリケータは、たとえば、特許文献:FR2722380に記載されているような、細かいブラシの形態であってもよい。アプリケータは、フォームまたはエラストマーのブロック、フェルト、またはスパチラの形態であってもよい。アプリケータは、たとえば、米国特許第5492426号に記載されているように、封止部材を有するロッドに対して、自由な状態であっても、しっかり閉められるようであってもよい。アプリケータは、たとえば、特許文献:FR2761959に記載されているように、容器にしっかり閉められるようなものであってもよい。
【0118】
プロダクトは直接、容器に収容されてもよいし、間接的に収容されていてもよい。たとえば、プロダクトは、特に、ワイプまたはパッドの形態の、含浸型サポート上にあってもよく、独立して、または複数で、パックまたはバッグに配されていてもよい。このようなプロダクトを含んだサポートは、たとえば、特許出願:WO 01/03538に記載されている。
【0119】
封止部材はねじ合わせによって容器と結合してもよい。または、封止部材と容器間の結合は、ねじあわせ以外、特に、バイオネットメカニズムを介して、スナップ止め、グリッピング、ウエルディング、または接着ボンディングによって、または磁石によって行われても良い。「スナップ止め」なる用語は、特に、部材の、特に封止部材の弾性変形によるフランジまたはコード材のクロッシングを含むシステムを意味する。該システムでは、前記部材の弾性変形によるフランジまたはコード材の遮断後、前記部材を弾性的に拘束されない位置まで戻す。
【0120】
容器は、少なくとも部分的に熱可塑性材料で形成されていてもよい。熱可塑性材料の例としては、ポリプロピレンまたはポリエチレンが挙げられる。
または、容器は、非熱可塑性材料、特にガラスまたは金属(または合金)で形成されていてもよい。
【0121】
容器は、特にチューブやチューブ状ボトルの形態の剛性壁部または変形性壁部を有していても良い。
【0122】
容器は、組成物を分散する、または分散を促進する手段を含有してもよい。たとえば、容器は、組成物が容器内への加圧に反応して出てくるような変形性壁部を有していても良く、この加圧は容器の壁部を弾性的に(または非弾性的に)圧迫することによって行われる。または、特に、プロダクトがスティックの形態である場合、スティックはピストン機構によって動かされることが可能である。さらに、スティックの場合、特にメークアップ製品用のものでは、容器は、特にノッチを有する、またはねじ棒、または螺旋傾斜のメカニズムを有するものであってもよく、前記開口部の方向に、スティックを動かせるものであればよい。このようなメカニズムは、たとえば、特許文献:FR2806273またはFR2775566に記載されている。液状製品用のこのようなメカニズムは、特許文献:FR2727609に記載されている。
【0123】
容器は、組成物を含有する少なくとも1つのハウジングを区切るベースを有するケースと、ふた、特に前記ベースと関節係合し、前記ベースを少なくとも部分的にカバーすることが可能なふたとからなるものであっても良い。このようなケースは、たとえば、特許出願WO 03/018423または特許文献FR2791042に記載されている。
【0124】
容器には、容器の開口領域に配されたドレイナーが設けられていても良い。このようなドレイナーは、アプリケーターを拭くことができ、任意に一体化して形成していてもよい。このようなドレイナーは、たとえば特許文献FR2792618に記載されている。
【0125】
組成物は、常温で、容器内(室温)に収められていてもよく、または、特にプロペラントガス(アエロゾル)を用いて加圧されて収められていても良い。後者の場合、容器には、バルブ(たとえばアエロゾル用に用いられるもの)が装備されている。
【0126】
ある特別な実施態様では、美容セットは、少なくとも(i)少なくとも1つの上記で定義した式(I)の化合物を含有する第1コンパートメントと、(ii)少なくとも1つのプロテアーゼを含有する第2コンパートメントを含有する。
【0127】
本発明の他の主題は、上記で定義した式(I)の少なくとも1つの化合物の、再構成した(reconstructed)皮膚を調製するための使用に関する。
【0128】
本発明はしたがって、インビトロでの再構成した皮膚、より詳細には、再構成した表皮の寿命を延ばすための方法に関する。
【0129】
ある実施態様によれば、インビボにおける健常な皮膚において観察されるものと類似の規則的な落屑を促進するために、再構成した表皮は、低い濃度の、式(I)の化合物、たとえばN−(2−ヒドロキシエチル)尿素およびその誘導体で、毎日トリートメントすることができる。
【0130】
他の特徴によれば、式(I)の化合物、特にN−(2−ヒドロキシエチル)尿素を、ピーリング用と類似した高い投与量、すなわち、約20から40%で局所的に再構成した皮膚に適用し、次いで、すすぐものであり、この方法によれば、構成した角質層が蓄積されると、ケラチノサイトの生存にダメージを与える可能性がある、構成した角質層またはその部分を除去することが可能である。
【0131】
本発明の他の主題は、プロテアーゼ、特にアシッドプロテアーゼの活性をテスト化合物により定める工程を含有する、落屑分子を選択する方法に関する。
【0132】
このテストは、
a)アシッドプロテアーゼを含有する角質層抽出物を調製し、
b)試験化合物または尿素を含有する混合物を得るために、ラベルしたタンパク質基質を種々の濃度の試験化合物と、および、タンパク質分解濃度の尿素と混合し、
c)試験化合物、または尿素を含有する反応混合物を得るために、前記工程a)で得られた抽出物のフラクションを、工程b)の最後に得られた種々の混合物と接触させ、または、対照を得るためにラベルしたカゼイン基質と接触させ、
d)インキュベーション後、対照のものと、種々の反応混合物中のタンパク質分解反応を比較し、
e)タンパク質分解強度が対照のものよりも大きい化合物を選択することからなる工程を含有する。
【0133】
優位には、前記工程a)の抽出物は、角質層を磨り潰し、遠心分離し、上澄みを回収することにより得られる。
【0134】
優位な実施態様によれば、プロテイン基質は、カゼイン基質である。これは、蛍光基でラベルし、前記蛍光基はタンパク質分解中にはずされるものである。特に、Bodipyfl−カゼインであり、これは、タンパク質分解に比例して蛍光性が外れる。
【0135】
本発明の他の優位点は、以下の実施例から明らかとなるであろう。
【0136】
実施例1
制御した環境試験槽におけるコルネオデスモシンの分解
分子を中性ベースArlacel/Myrj中、製剤化した。プロダクトを、規定の温度、湿度、およびインキュベーション期間の条件下、ニスを塗ったストリッピングと接触させる。コルネオデスモシンをインキュベーション後、免疫検出法によりアッセイする。これは、電気泳動分離および膜への移送後、免疫ブロット法で行われる。抗体G3619を用いて特定のラベルをつけた後、化学発光により可視化される。
【0137】
National Starch社から販売されているN−(2−ヒドロキシエチル)尿素を含有するHydrovance(登録商標)製品を、尿素に対して、および対照に対して比較する。
【0138】
【表1】

【0139】
方法:
乾燥した足の裏の皮膚にニスを塗ったストリッピングから、3X3.5cmの長方形を切り出す。これらを42mgの各プロダクト(4mg/cm)で処理する。対照およびアッセイは平行して行う。アッセイは、37℃、70%の相対湿度下、5日間インキュベートする。対照は、−20℃で5日間保持する。各サンプルに対して、アセトンパウダーを作って秤量する。タンパク質を100μlの完全Laemmliバッファーで抽出する。これらをBradford法によりアッセイする。各サンプルのタンパク質レベルを調節すると、種々のサンプルの直接比較ができるであろう。
【0140】
タンパク質は12%アクリルアミドゲルにおいて、SDS-Page電気泳動法により分離する。タンパク質をPVDF膜に移送後、免疫検出を、通常のウエスタンブロット法にしたがって、1/12 500で、抗コルネオデスモシン抗体G3619(Guy Serre)を用いて行う。可視化は、化学発光により行われる。fluorSmax(Biorad)により検出したバンドは、ソフトウェアquantity-oneを用いて定量化する。
【0141】
本実験は2回繰り返され、第2の実験中、免疫ブロットは3回行われる。
結果は、行われた2回の実験の平均で示す。
【0142】
結果:
結果は、対照−80℃に対する残存コルネオデスモシンの割合として示される。
前記割合が低くなればなるほど、分解がより高くなり、落屑促進効果がより高くなる。
【0143】
【表2】

【0144】
Hydrovance(登録商標)は尿素よりも幾分高い効果を有する。
【0145】
実施例2: 角質層のタンパク質における角質溶解性
尿素の、角質溶解性タンパク質の変性効果が知られている。尿度誘導体を用いて可溶化することが困難である、SCのタンパク質およびケラチンに対して溶解効果を例証するために、最適化が行われた。
【0146】
方法:
ボランティアの足の裏の角質層のアセトンパウダー、30mgを調製し、3mlの水+2%CHAPS(双性イオン洗浄剤)と、室温で10分間接触させる。混合物を次いで、陶器装置中ですりつぶし、15000gで10分間遠心分離する。上澄みを除去する。この方法によって、結果の解釈に邪魔になるであろう、非常に溶解性のあるケラチンおよびタンパク質を除去することができる。ペレットを300μlの水+CHAPSに取り込み、20μlを10エッペンドルフ(Eppendorf)チューブに分配する。
テストすべき各分子を水+2%CHAPS中、2Mで調製する。
【0147】
200μlの溶液を、20μlのアセトンパウダー抽出物と混合する。アッセイを2回行う。薬剤なしの対照を平行して行う。反応混合物を室温で10分間、インキュベートし、これらを陶器装置中ですりつぶし、次いで、室温で50分間、インキュベートする。これらを、15000gで10分間遠心分離する。上澄みを回収し、1X Laemmliバッファー中1/4に希釈する。電気泳動を12.5%アクリルアミドゲルにおいて行い、ついで、硝酸銀で染色する。
【0148】
効果:
N-(2-ヒドロキシエチル)尿素組成物(Hydrovance(登録商標))は、低いMWバンドが現れるため、尿素とは区別可能であり、すなわち、より良好に抽出されたタンパク質、インキュベーション中に発生したフラグメントとは、区別可能である。
【0149】
実施例3: アシッドプロテアーゼにおける活性化の可能性
【0150】
アシッドプロテアーゼの活性化
SC(角質層)のある種のアシッドプロテアーゼを活性化する特性を評価する。この活性の測定は、Enzchekキット(Molecular Probes)を用いて蛍光分析アッセイにより行われる。このプロトコールは、加水分解すると蛍光を示すBodiphfl-カゼイン基質を用いる。この放出された蛍光は、プロテアーゼ活性に直接比例する。蛍光を、750V、485nmで励起し、535nmで発光する分光蛍光計により、96ウエルプレートおいて直接読み取る。
【0151】
N−(2−ヒドロキシエチル)尿素(本発明による化合物)を用いて得られた結果を、尿素を用いて得られた結果と比較する。
【0152】
方法:
分子を、pH5.0で、0.1M酢酸バッファー中、0,1,2、および4Mで調製する。酵素抽出物をアセトンパウダーから調製する。2mlのPBSバッファー+0.1%トリトンX100を、200mgの角質層アセトンパウダーとともに砕いた氷中、1時間接触させる。混合物を次いで、陶器装置中ですりつぶし、次いで、4℃、15000gで10分間遠心分離する。上澄みを回収する。1/200希釈したEnzchek基質を、分子を含む各溶液に取り込む。このアッセイを3回繰り返す。
【0153】
反応混合物を直接的に、白色プレートに調製する。10μlの酵素抽出物を200μlの、0、1,2、または4Mの基質を含有する溶液に添加する。読み取りは、t0、1 2h、t 16h、およびt 24hにおいて行われる。
結果は添付の図面に示す。
【0154】
1および2Mにおける尿素は、インキュベーション開始後、2時間までは、アシッドプロテアーゼに幾分の活性化効果を示す。
【0155】
一方、Hydrovance(登録商標)(N-(2-ヒドロキシエチル)尿素)では、対照とひかくすると、1および2Mの濃度で、顕著に、活性が大きく増加する。この増加は長く続くものである。4Mでは、経過時間に関係なく、活性は著しく低下することが観察される。
【0156】
実施例4: 組成物
ケアークリーム:
トリエタノールアミン ... 0.3300
水(および)ヒドロキシエチル尿素 ... 10.0000
水素添加ポリイソブテン ... 5.0000
プロピルパラベン ... 0.1000
メチルパラベン ... 0.2000
カルボメール ... 0.3000
シクロペンタシロキサン ...15.0000
水 ... 62.0700
PEG-50ステアレート ...2.5000
グリセリルステアレート(及び)PEG−100ステアレート ... 2.5000
セチルアルコール ...1.0000
ステアリルアルコール ...1.0000
【0157】
このクリームは、顔および首に、毎晩、適用可能である。
【0158】
− 糖エステルを用いる処方
水(および)ヒドロキシエチル尿素 ... 10.0000
サラノキのシードバター ... 2.0000
アプリコット核油 ... 6.0000
クロルヘキシジン ジグルコネート ... 0.3000
プロピルパラベン ... 0.1000
メチルパラベン ... 0.2500
キサンタンガム ... 0.2500
ポリアクリルアミド(及び)C13-14イソパラフィン(及び)ラウレス−7 ... 1.0000
シクロヘキサシロキサン ... 10.0000
水 ... 64.1000
メチルグルコース セスキステアレート ... 2.0000
PEG−20 メチルグルコース セスキステアレート ... 2.0000
ステアリルアルコール(及び)セレアルス(cerearth)−20 ... 2.0000
【0159】
このクリームは、毎日、適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0160】
【図1】N-(2-ヒドロキシエチル)尿素または尿素投与効果存在下における活性SCアシッドプロテアーゼの異なる濃度における経時的変化を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生理学的に許容される媒体を含む組成物中における、皮膚および/または粘膜の落屑刺激剤としての、少なくとも1つの以下の式(I)の化合物
【化1】

[式中、
、R、RおよびRはそれぞれ、互いに独立に、水素原子、C〜Cアルキル基、または1〜5個のヒドロキシル基を含むことができるC〜Cヒドロキシアルキル基を表し、RからR基の少なくとも1つはヒドロキシアルキル基を表す]、ならびにこれらの塩、これらの溶媒和物およびこれらの異性体の美容使用。
【請求項2】
式(I)において、RはC〜Cヒドロキシアルキル基を示し、R、RおよびRは、互いに独立に、水素原子またはC〜Cアルキル基を示すことを特徴とする、請求項1に記載の少なくとも1つの式(I)の化合物の使用。
【請求項3】
式(I)において、Rは、1〜5個のヒドロキシル基を含むC〜Cヒドロキシアルキル基を示し、R、RおよびRは、水素原子を示すことを特徴とする、請求項1または2に記載の使用。
【請求項4】
式(I)において、Rは、1個のヒドロキシル基を含むC〜Cヒドロキシアルキル基を示すことを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の使用。
【請求項5】
は、1個のヒドロキシル基を含むC〜Cヒドロキシアルキル基を示し、R、RおよびRは、水素原子を示すことを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の使用。
【請求項6】
式(I)の化合物が、N−(2−ヒドロキシエチル)尿素;N−(2−ヒドロキシプロピル)尿素;N−(3−ヒドロキシプロピル)尿素;N−(2,3−ジヒドロキシプロピル)尿素;N−(2,3,4,5,6−ペンタヒドロキシヘキシル)尿素;N−メチル−N−(1,3,4,5,6−ペンタヒドロキシ−2−ヘキシル)尿素;N−メチル−N'−(1−ヒドロキシ−2−メチル−2−プロピル)尿素;N−(1−ヒドロキシ−2−メチル−2−プロピル)尿素;N−(1,3−ジヒドロキシ−2−プロピル)尿素;N−[トリス(ヒドロキシメチル)メチル]尿素;N−エチル−N'−(2−ヒドロキシエチル)尿素;N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)尿素;N,N'−ビス(2−ヒドロキシエチル)尿素;N,N−ビス(2−ヒドロキシプロピル)尿素;N,N'−ビス(2−ヒドロキシプロピル)尿素;N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−N'−プロピル尿素;N,N−ビス(2−ヒドロキシプロピル)−N'−(2−ヒドロキシエチル)尿素;N−(tert−ブチル)−N'−(2−ヒドロキシエチル)−N'−(2−ヒドロキシプロピル)尿素;N−(1,3−ジヒドロキシ−2−プロピル)−N'−(2−ヒドロキシエチル)尿素;N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−N',N'−ジメチル尿素;N,N,N',N'−テトラキス(2−ヒドロキシエチル)尿素;N',N'−ビス(2−ヒドロキシエチル)−N',N'−ビス(2−ヒドロキシプロピル)尿素;ならびにこれらの混合物から選択されることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の使用。
【請求項7】
前記化合物が、コルネオデスモシンの分解を刺激し、および/または、式(I)の化合物が、ケラチン分解活性を有し、および/または、式(I)の化合物が、角質層のプロテアーゼ、特にアシッドプロテアーゼの活性を刺激することを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載の使用。
【請求項8】
前記組成物が、剥離組成物であることを特徴とする、請求項1から10のいずれか一項に記載の式(I)の化合物の使用。
【請求項9】
前記組成物が、皮膚及び/または頭皮をクレンジングするためのものであることを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載の使用。
【請求項10】
前記組成物が、皮膚及び/または唇の表面状態を改善するためのものであることを特徴とする、請求項1から9のいずれか一項に記載の使用。
【請求項11】
落屑障害に関連した徴候のトリートメント用組成物を調製するための、請求項1から6のいずれか一項に定義した式(I)の少なくとも1つの化合物の使用。
【請求項12】
前記組成物が、魚鱗癬、過角化症、乾皮症、乾癬、アトピー性皮膚炎、アクネ、およびフケから選択された少なくとも1つの皮膚障害をトリートメントための、および/または外傷治癒を促進するためのものであることを特徴とする、請求項11に記載の使用。
【請求項13】
前記組成物が、皮膚及び/または粘膜及び/または表面成長体に局所適用するためのものであることを特徴とする、請求項1から12のいずれか一項に記載の使用。
【請求項14】
前記組成物が、式(I)の化合物とは相違する少なくとも1つの落屑刺激剤をさらに含有することを特徴とする、請求項1から17のいずれか一項に記載の使用。
【請求項15】
前記組成物が、プロテアーゼ、グリコシダーゼ、およびリパーゼから選択された少なくとも1つの化合物をさらに含有し、及び/または、前記組成物が、保湿剤、有害なプロテアーゼの活性を減少させる又は阻害する薬剤、表皮分化刺激剤および抗脂漏剤から選択された少なくとも1つの化合物をさらに含有することを特徴とする、請求項1から14のいずれか一項に記載少なくとも1つの式(I)の化合物の使用。
【請求項16】
少なくとも1つの式(I)の化合物または請求項1から15のいずれか一項に記載のものを含有する組成物を、皮膚または粘膜に適用することを特徴とする、顔の輝きを促進する及び/または皮膚及び/または粘膜の表面凹凸を減少させるための美容処理方法。
【請求項17】
少なくとも2つの成分:
− 請求項1ないし15のいずれか1項に記載の式(I)の少なくとも1つの化合物を含有する第1成分、
− プロテアーゼ、リパーゼ、およびグリコシダーゼから選択された少なくとも1つの剤を含有する第2成分
を適用することからなり、これら2つの成分は同時に、合同して、または順次に、皮膚、粘膜、または表面成長体に適用することからなることを特徴とする、ケラチン物質の美容処理方法。
【請求項18】
少なくとも2つの成分:
− 請求項1ないし15のいずれか1項に記載の式(I)の少なくとも1つの化合物を含有する第1成分、
− プロテアーゼ、リパーゼ、およびグリコシダーゼから選択された少なくとも1つの剤を含有する第2成分を含有する、キット形態の美容剤であって、これら2つの成分は同時に、合同して、または順次に、皮膚、粘膜、または表面成長体に適用されることを特徴とする、美容剤。
【請求項19】
a)少なくとも1つの区画を区切る容器であって、封止部で封止される容器;および
b)前記区画内に収容された組成物を含有し、前記組成物は、請求項1ないし15に記載のものであることを特徴とする、美容セット。
【請求項20】
再構成した皮膚を調製するための、請求項1ないし7のいずれか1項に記載の式(I)の少なくとも1つの化合物の使用。
【請求項21】
a)アシッドプロテアーゼを含有する角質層抽出物を調製し、
b)試験化合物または尿素を含有する混合物を得るために、ラベルしたタンパク質基質を種々の濃度の試験化合物と、および、タンパク質分解濃度の尿素と混合し、
c)試験化合物、または尿素を含有する反応混合物を得るために、前記工程a)で得られた抽出物のフラクションを、工程b)の最後に得られた種々の混合物と接触させ、または、対照を得るためにラベルしたカゼイン基質と接触させ、
d)インキュベーション後、対照のものと、種々の反応混合物中のタンパク質分解反応を比較し、
e)タンパク質分解強度が対照のものよりも大きい化合物を選択することからなる工程を含有する、落屑化合物の選択方法。

【図1】
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【公開番号】特開2007−23038(P2007−23038A)
【公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2006−192113(P2006−192113)
【出願日】平成18年7月12日(2006.7.12)
【出願人】(391023932)ロレアル (950)
【Fターム(参考)】