説明

落橋防止PCブロック取付工事用特殊作業台車装置

【課題】 落橋防止PCブロックの取付け位置や姿勢の調整を人手により高精度で能率良くでき、また安全な取付作業を行うことができる落橋防止PCブロック取付工事用特殊作業台車装置を提供する。
【解決手段】 特殊作業台車装置は、作業足場上部ステージに仮設された2本のH型鋼レール上の横行台車に取付けられた3本の昇降姿勢制御油圧ジャッキを橋脚に向かって前方左右に2本、後方に1本配置することにより、安定した3点支持機構を構成し、積載された落橋防止PCブロックの姿勢や前後左右の微妙な傾きを容易に調整制御でき、橋脚にセットされているPCブロック取付アンカーボルトとの微妙な位置合わせを容易にすると共に、安全かつ高能率でPCブロックを橋脚に取付する工事を可能とするものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地震時等において橋桁等が橋脚や橋台から落下するのを防止するための、落橋防止PCブロック取付工事用に使用される落橋防止PCブロック取付工事用特殊作業台車装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、図7に示すように、橋桁15に鋼製の落橋防止ストッパーブラケット16を取り付けるとともに、橋脚(または橋台、以下同様)14に落橋防止PCブロック8を取り付けて、地震時等において橋桁15等が橋脚14から落下して大災害を発生することを防止する対策が行われている。
【0003】
従来、上記落橋防止PCブロック8を橋脚14に取り付ける工事技術としては、図7に示すように橋桁15の下にアンカーを打設して、これに図示していないチェーンブロックを取り付け、該チェーンブロックにより上記落橋防止PCブロック8を持ち上げて所定の位置近くまで運び上げ、落橋防止PCブロック8を宙吊り状態で人手により取付位置まで移動させ、あらかじめ橋脚14に取り付けたPCブロック取付アンカーボルト11の頭にPCブロック8に開けた取付アンカーボルト穴9の位置を合わせ、その後PCブロック8を取り付けアンカーボルト11に差し込み橋脚14に取り付けていた。
【0004】
また従来、図8に示すように、クレーン19の伸縮ブーム17の先端部に落橋防止PCブロック取付用先端治具18を設けて、このPCブロック取付用先端治具18に落橋防止PCブロック8をセットし、該伸縮ブーム17により高さや位置等を調整しながら落橋防止PCブロック8を橋脚14の取付位置まで移動させて取付ける技術があった。(例えば、特許文献1参照)
【0005】
さらに、クレーン19の替わりに、俯仰および旋回自在で、伸縮可能なブームの先端部に作業デッキを設けた高所作業車を使用する工事技術も提案されている。(例えば、特許文献2参照)
【特許文献1】特開平11−147691号公報
【特許文献2】特開2005−133324号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記チェーンブロックによる取付作業は、落橋防止PCブロック8のような重量物を作業者の頭上の狭い空間で、しかも吊り下げた不安定な状態で落橋防止PCブロック8を移動させて、PCブロック8に開けた取付アンカーボルト穴9を取付アンカーボルト11の頭に合わせなければならないので、危険極まりない苦渋作業で時間がかかるだけでなく、別途作業用の足場を組む必要があったり、落橋防止PCブロック8にワイヤを引っ掛けて吊り上げていたため、コンクリート製のPCブロックが欠けたりして、落橋防止工事の品質の低下を生じさせる等の問題があった。
【0007】
また、上記特許文献1のクレーン伸縮ブーム17の先端部のPCブロック取付用先端治具18による場合は、操作が遠方のクレーン運転室からの遠隔操作となるので、落橋防止PCブロック8の位置およびPCブロック8の姿勢や傾きの微調整が困難で、手間と時間がかかるだけでなく、クレーン伸縮ブーム17との干渉を防止するために、作業足場の安全手摺りを部分的に撤去する必要があり危険な作業となる等の問題点もあった。特許文献2の高所作業車を使用する落橋防止PCブロック取付工事の場合も、特許文献1と類似の問題点があった。
【0008】
さらに、一般に落橋防止工事の工事現場は橋の下となるため足場が悪く、大型のクレーン車や高所作業車の進入が困難な場所が多い。クレーン車や高所作業車の作業足場を設置しようとすると、落橋防止PCブロック8の10数倍の重量の作業車用の高強度な作業足場が必要となり、その高強度作業足場設置費用だけでも莫大なコストとなるため、そのような作業足場の設置は困難であり、クレーン車や高所作業車の使用が難しいという問題点もあった。また、山間部にある橋梁の場合は、橋脚14がクレーンや高所作業車では届かないほど高さが高くなる場合が多く、この場合はクレーンや高所作業車を使用することはできず、人手で困難な取付作業を強いられるという労働安全衛生上も好ましくない問題が発生していた。
【0009】
本発明は、上記の現状の多くの課題を解決するためになされたものであって、重量物である落橋防止PCブロック8の移動、搬送及び、上下昇降、上下位置調整、前後左右の位置と落橋防止PCブロック8の微妙な姿勢や傾きの微調整を人手で容易にできるようにする落橋防止PCブロック8の橋脚14への取付工事用特殊作業台車装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の解決しようとする課題は以上のごとくであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
請求項1に記載の本発明の落橋防止PCブロック取付工事用特殊作業台車装置Aは、作業足場上部ステージ12に仮設された2本のH型鋼レール13上を横行可能な横行ローラー7を有する横行台車1と、該横行台車1の上に3本の昇降姿勢制御油圧ジャッキ5a,5b,6により上下に昇降可能に設けられた昇降フレーム2と、該昇降フレーム2の上に設けられたフリーローラーテーブル3と、該フリーローラーテーブル3の上に前後に移動可能な落橋防止PCブロック積載板4とから構成されることを特徴とする落橋防止PCブロック取付工事用特殊作業台車装置である。
【0011】
また、請求項2に記載された該作業台車装置は、個別に昇降可能な3本の昇降油圧ジャッキ5a、5b、6を橋脚に向かって前方左右に2本、後方に1本配置して、昇降フレームを3点支持することを特徴としており、このことにより昇降フレーム2を介して、積載された落橋防止PCブロック8の姿勢や前後左右の傾きと上下の微妙な高さ位置を容易に微調整でき、橋脚14にセットされているPCブロック取付アンカーボルト11の頭とPCブロック8に開けられた取付アンカーボルト穴9との微妙な位置合わせが可能となり、人手で容易にかつ安全に落橋防止PCブロック8の橋脚14への取付作業を可能とすることを特徴とする落橋防止PCブロック取付工事用特殊作業台車装置である。
【0012】
上記構成によると、橋の下の橋脚部14に設けられた作業足場12の上に仮設の2本のH型鋼レール13を落橋防止PCブロック8の取付工事に必要な長さだけ設置して、本発明の特殊作業台車Aを取付けることにより、落橋防止PCブロック8を橋の上から特殊作業台車装置に取り込み、人手で簡単にかつ安全に取付工事を実施することが可能となる。
【発明の効果】
【0013】
以上で説明したように、本発明の落橋防止PCブロック取付工事用特殊作業台車装置Aを使用することにより、落橋防止PCブロック8の橋脚14への取付に際して、重量物である落橋防止PCブロック8の水平、垂直位置やその姿勢や傾きの調整を高精度で能率良く行うことができ、また、作業足場12上で人手で安全に落橋防止PCブロック8の取付作業を行うことができるという工事作業品質面と工事作業安全環境面から大きな工業的効果が得られるものである。特に、山間部等の従来クレーン車や高所作業車の使用が困難であった多くの取付工事現場における本発明の落橋防止PCブロック取付工事用特殊作業台車装置Aの使用の効果は、作業者の負荷軽減と危険回避面で著しいものがある。
【0014】
このように、本発明は、工事作業品質面、工事コスト面、工事作業安全環境面からの効果が大きく、落橋防止工事業界のみならず、世の中に多数設置されている橋梁の地震に対する安全性の向上が高品質の工事品質により確保されることにより、世の中に多大な貢献をするものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の好ましい実施形態について、図1から図6に基づいて説明する。
図1は、本発明の落橋防止PCブロック取付工事用特殊作業台車装置Aの概略構成を示す正面図である。図2、図3はそれぞれ、該落橋防止PCブロック取付工事用特殊作業台車の概略構成を示す側面図及び、平面図である。図4は、落橋防止PCブロックの一例を示す斜視図である。該落橋防止PCブロック8は、ブロック本体にPCブロック取付用のアンカーボルト穴9が複数個開けられており、上部の落橋防止ストッパーとの接触部には地震時の接触の衝撃を吸収するためのハニカム構造等の衝撃緩衝板10が取り付けられている。
【0016】
図1で、1は、作業足場12の上部デッキ上面に仮設された2本のH型鋼レールを横行可能な台車横行ローラー7を取付けた横行台車である。2は、該横行台車1に取り付けられた3本の昇降姿勢制御油圧ジャッキ5a,5b,6により、上下に昇降可能な昇降フレームである。該昇降フレーム2の上面にはフリーローラーテーブル3が取付けられており、該フリーローラーテーブル3の上には、落橋防止PCブロック8を積載し、フリーローラーテーブル3を介して落橋防止PCブロック8を前後に移動可能なPCブロック積載板4が載っている構造となっている。
【0017】
図2、図3に示すように、上下昇降用の3本の昇降姿勢制御用油圧ジャッキは、積載した落橋防止PCブロック8に開けられたPCブロック取付アンカーボルト穴9が橋脚14に取り付けられたPCブロック取付アンカーボルト11の頭の位置に合うまで上昇させ、さらに、取付アンカーボルト11にPCブロック8がスムーズに挿入できるように、落橋防止PCブロックの姿勢や前後左右の傾きを微妙に調整できるように、橋脚14に向かって横行台車1の前方左右位置に各1本の昇降姿勢制御油圧ジャッキ5a,5bを、横行台車1の後方に1本の昇降姿勢制御油圧ジャッキ6を、3点支持機構を構成する形で配置している。
【0018】
このように、該昇降フレーム2は、3点支持の3本の昇降姿勢制御油圧ジャッキ5a,5b,6を介して、横行台車1上に姿勢や前後左右の傾きが制御可能に取り付けられている。そのため、3本の昇降姿勢制御油圧ジャッキ5a,5b,6をそれぞれ微調整することにより、台車装置に積載された落橋防止PCブロック8の姿勢や前後左右の傾きを微妙に調整することが可能になり、PCブロック取付アンカーボルト11の取付の誤差に対して、取付アンカーボルト穴9の位置を人手で容易に合わせる作業が可能となるのである。
【0019】
図5は、本発明の作業台車装置Aを使用した作業の全体イメージ図である。
図6は、本発明の作業台車装置を使用して落橋防止PCブロック8を橋脚14に取付ける場合の取付状況を示す図で、図6(a)は、落橋防止PCブロックをPCブロック取付アンカーボルト11の高さ位置まで作業台車装置Aの昇降フレーム2により上昇させた状態図である。図6(b)は、落橋防止PCブロック8を橋脚14に取り付けられたPCブロック取付用アンカーボルト11にセットした状態を示す状態図である。
以下に、本発明による落橋防止PCブロック取付工事用特殊作業台車装置Aを使用して取付作業を行う場合の実際の作業要領を図5、図6に基づき説明する。
【0020】
まず、道路橋の上の片側車線に設置した小型移動クレーン車20から落橋防止PCブロック8を吊り下げ、橋の下の橋脚周りに設置された作業足場の上部デッキ12に橋幅をかわして伸ばして取り付けられた仮設の2本のH型鋼レール13の上に載せられた本発明の落橋防止PCブロック取付工事用特殊作業台車装置AのPCブロック積載板4の上に静かに積載する。積載したPCブロック8を転倒防止対策を施した後、横行台車1に取り付けられた台車横行ローラー7を使用して橋脚14の落橋防止PCブロック取付位置の下部に横行移動する。
【0021】
次に、PCブロック8の取付位置で横行台車1を止めた後、横行台車1に取付けられた3本の昇降姿勢制御油圧ジャッキを使用して落橋防止PCブロック8を積載した昇降フレーム2を、取付アンカーボルト穴9が取付アンカーボルト11の頭の位置に来るまで上昇させる。
【0022】
次に、主に前方左右に取付けられた2本の昇降姿勢制御油圧ジャッキ5a,5bを操作して、昇降フレーム2上にあるPCブロック積載板4の上に積載された落橋防止PCブロック8の姿勢や前後左右の傾きを微調整して、取付アンカーボルト11のセットの微妙なずれに対して、取付アンカーボルト穴9の位置を合わせる。取付アンカーボルト穴9と取付アンカーボルト11の位置を正確に合わせた後、昇降フレーム2の上部に取り付けられたフリーローラーテーブル3の上にセットされた前後移動可能なPCブロック積載板4をPCブロック8を積載した状態で前方へスライドさせて、PCブロック8を橋脚14に取り付けられたPCブロック取付アンカーボルト11に挿入セットする。
【0023】
落橋防止PCブロック8がPCブロック取付アンカーボルト11に挿入セットされた時点で、再度作業台車Aを操作して落橋防止PCブロック8の位置を、PCブロック8が橋脚14に対して所定の位置に納まるように微調整する。
【0024】
落橋防止PCブロック8が所定の位置に納まった時点で、すべての取付アンカーボルト穴9と取付アンカーボルトボルトの隙間に予め準備したスペーサーを挿入し、落橋防止PCブロックの下がりを防止し、所定のナットで落橋防止PCブロック8を橋脚14にしっかりと締め付ける。
【0025】
PCブロック取付ナットを全数締め付けた時点で、昇降フレームを下降させ、PCブロック積載板4を元の位置まで後退させて、横行台車1をPCブロック荷降ろし位置まで移動させて、次のPCブロックの荷降ろし準備を行う。
【0026】
以上で説明したように、本発明の落橋防止PCブロック取付工事用特殊作業台車装置Aを使用して、落橋防止PCブロック取付工事を行うことにより、簡単な足場や仮設H型鋼レール等の準備工事を行うことで、人手により簡単で安全でありながら、取付工事品質が良好で高能率な取付工事の実施が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の作業台車装置の概略構成を示す正面図
【図2】本発明の作業台車装置の概略構成を示す側面図
【図3】本発明の作業台車装置の概略構成を示す平面図
【図4】落橋防止PCブロックの一例を示す斜視図
【図5】本発明の作業台車装置を使用した作業の全体説明図
【図6】本発明の作業台車装置を使用してPCブロックの取付要領図 (a) PCブロックを取付アンカーボルトの高さまで上昇させた状態図 (b) PCブロックを取付アンカーボルトにセットした状態図
【図7】落橋防止PCブロックの取付状態図
【図8】クレーンを使用した取付工事を示す該略図
【符号の説明】
【0028】
A 落橋防止PCブロック取付工事用特殊作業台車装置
1 横行台車
2 昇降フレーム
3 フリーローラーテーブル
4 PCブロック積載板
5a 右前方昇降姿勢制御油圧ジャッキ
5b 左前方昇降姿勢制御油圧ジャッキ
6 後方昇降姿勢制御油圧ジャッキ
7 台車横行ローラー
8 落橋防止PCブロック
9 PCブロック取付アンカーボルト穴
10 衝撃緩衝板
11 PCブロック取付アンカーボルト
12 作業足場
13 台車横行用仮設H型鋼レール
14 橋脚(または橋台)
15 橋桁
16 落橋防止ストッパーブラケット
17 伸縮ブーム
18 PCブロック取付用先端治具
19 クレーン車

【特許請求の範囲】
【請求項1】
横行レール上を横移動可能とする複数の横行ローラーを取付けた横行台車と、該横行台車に取付けられた上下昇降可能な昇降姿勢制御用の3本の油圧ジャッキと、該油圧ジャッキにより上下昇降可能な昇降フレームと、該昇降フレーム上にフリーローラーテーブルを取り付け、該フリーローラーテーブル上に前後にスライド可能なPCブロック積載板を具備したことを特徴とする落橋防止PCブロック取付工事用特殊作業台車装置。
【請求項2】
上記上下昇降用の3本の昇降姿勢制御油圧ジャッキを、橋脚に向かって前側左右に2本、後側に1本取り付けることにより安定した3点支持機構を構成し、昇降フレーム上に積載されたPCブロックの上下位置と前後左右の姿勢傾きの微調整制御を可能にしたことを特徴とする請求項1記載の落橋防止PCブロック取付工事用特殊作業台車装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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