説明

落石等の受撃検出装置

【課題】受撃板を一方向に付勢する弾性部材の円弧長さ、曲率半径などを変更して接地面に対する受撃板の開閉角度や、復元力(反発力)を調整し、センサの検出感度を任意に変更可能な落石等の受撃検出装置を提供すること。
【解決手段】外部の力を受ける受撃板と、前記受撃板を一方向に付勢する弾性部材と、前記受撃板の変位を検出するセンサと、を具備してなることを特徴とする、落石等の受撃検出装置を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、受撃検出装置に関し、特に落石が発生するおそれのある現場の地山に設置して、落石等を連続的に検出する、落石等の受撃検出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の落石検出装置は、一対の検出板と、センサとを有し、前記センサは各検出板の上に所定重量以上の荷重を受けるとき検出信号を送るよう各検出板の間に配置されている落石検出装置が開示されている。(特許文献1参照)
【0003】
【特許文献1】特開2005−9174号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に示す落石検出装置は、センサ(チューブセンサ)の反力によって検出板が開いた状態を保持していることから、検出板の開閉角度や、検出板の復元力を制御するにはセンサの反力部(チューブ)を変更しなければならず、センサの反力部の交換と同時に内部センサの交換も強いられるほか、逆に内部センサの交換と同時に反力部の交換を強いられる可能性があった。
また、センサの反力部を変更するには、当該センサの反力部の材質や太さを変更したものを新たに交換する必要があるため、施工コストが多大となり、検出感度の変更を簡易に行うことができなかった。

【0005】
従って、本発明の目的は、簡易な構造で接地面に対する受撃板の開閉角度と、前記受撃板の復元力を容易に変更することが可能な、落石等の受撃検出装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで、上記目的を達成するためになされた本願の第1発明は、外部の力を受ける受撃板と、前記受撃板を一方向に付勢する弾性部材と、前記受撃板の変位を検出するセンサと、を具備してなることを特徴とする、落石等の受撃検出装置を提供するものである。
また、本願の第2発明は、底板と、前記底板に開閉可能に取り付けられ、外部の力を受ける受撃板と、前記受撃板を一方向に付勢する弾性部材と、前記受撃板の変位を検出するセンサと、を具備してなることを特徴とする、落石等の受撃検出装置を提供するものである。
また、本願の第3発明は、本願の第1発明又は第2発明に記載の落石等の受撃検出装置において、前記弾性部材が紐部材からなり、前記紐部材が円弧形状を呈していることを特徴とする、落石等の受撃検出装置を提供するものである。
また、本願の第4発明は、本願の第3発明に記載の落石等の受撃検出装置において、前記弾性部材の取り付け位置を変更することにより、円弧長さ及び曲率半径のうち少なくとも一つを調整可能にしたことを特徴とする、落石等の受撃検出装置を提供するものである。
また、本願の第5発明は、本願の第1発明乃至第4発明の何れかに記載の落石等の受撃検出装置において、前記弾性部材が複数取り付けられていることを特徴とする、落石等の受撃検出装置を提供するものである。
また、本願の第6発明は、本願の第1発明乃至第5発明の何れかに記載の落石等の受撃検出装置において、前記受撃板及び底板の少なくとも一つが網状であることを特徴とする、落石等の受撃検出装置を提供するものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、上記した課題を解決するための手段により、次のような効果の少なくとも一つを得ることができる。
【0008】
<1>施工現場に応じて、受撃検出装置の検出感度の変更が可能
弾性部材の円弧長さを調整することによって、設置面に対する受撃板の開閉角度や、受撃板の復元力を任意に調整できるほか、弾性部材の径、強度、材質、取り付け長さ、取り付け本数を変更することで、受撃板の開閉角度、受撃板の復元力、センサの検出感度を任意に調整できる。
また、設置箇所において縦方向の傾斜だけでなく横方向にも傾斜がある場合には、横方向に複数の弾性部材を設けておき、それぞれの弾性部材について個別に取り付け位置や円弧長さを調整することによって、接地面に対する受撃板の斜度を任意に調整することができる。
【0009】
<2>土砂、雪の堆積抑止効果
底板、受撃板を網状にすることにより、小さい土砂や雪が素通りし堆積しにくいため、堆積土砂や積雪を原因とする誤検出の防止や、メンテナンス回数の低減が図れる。
【0010】
<3>風による誤検出を防止
底板、受撃板を網状にすることにより、底板、受撃板が受ける風力を低減することができ、風を原因とする誤検出を防止することができる。
【0011】
<4>その他の効果
装置全体の構造が簡易で低コストであり、使用方法も当該装置を地山に取り付け、ロガーと接続するだけでよく、簡単である。また、装置の構成部品点数が少なく、光ファイバなどの精密機器を使用しないため、故障の頻度が少なく、落石検出用途に最適な構造である。また、底板、受撃板を網状にすることにより、軽量化が可能で現場設置が容易である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。
【実施例1】
【0013】
<1>全体構成
図1に本発明の受撃装置の概要を示す。
本発明の受撃検出装置1は、底板2と、前記底板2に開閉可能に取り付けられ、外部の力を受ける受撃板3と、前記受撃板3を一方向に付勢する弾性部材4と、前記受撃板3の変位を検出するセンサ5と、を具備する。以下に各部材を説明する。
【0014】
<2>底板2
底板2は、地山に取り付け可能に構成した部材であれば、素材や形状に特に限定を設けるものではない。より望ましくは図1のように網体にしておくことで、土砂の堆積抑止、軽量化に寄与し、設置現場において簡易に施工することができる。
【0015】
<3>受撃板3
受撃板3は、外部の力、例えば落石に対して受圧できる程度の強度を有していればよく、素材や形状に特に限定を設けるものではない。より望ましくは図1のように網体にしておくことで、土砂の堆積を抑止することができるほか、風の抵抗を小さくすることができ、落石以外の要因による受撃板3の変位を抑制することができる。
底板2と受撃板3とのそれぞれの一縁が、蝶番などの周知の手段で連結され、当該一縁が、受撃板2が開閉する際の支点軸となるように取り付けられる。
【0016】
<4>押圧部31
また、底板2と受撃板3との間の内面には、受撃板3が地山方向に変位する際に、後述するセンサ5を押圧することが可能な押圧部31を設けておく。
押圧部31は接触するセンサ5に対して半円形状の凸部となるように形成しておくことにより、センサ5が傷つくことを防止することができる。
本実施例において、受撃板3の内面、すなわち底板2と受撃板3の間の面に押圧部31を取り付けているが、受撃板3が地山方向に変位した際にセンサ5を押圧することが可能である位置に取り付けられていればよく、本実施例において取り付け位置を特に限定するものではない。
また、押圧部31の取り付け個数も同様に、受撃板3の横方向の長さやセンサ5の種類によって、適宜決定すればよい。
【0017】
<5>弾性部材4
弾性部材4はワイヤーロープなどの周知の紐状部材を用い、前記受撃板3を一方向に付勢するように取り付ける。より具体的には、弾性部材4の一端に設けた取り付け部41を受撃板3に固定し、一方の他端に設けた取り付け部42は、底板2に固定する。この際、紐状部材を円弧形状を形成するように取り付け、紐状部材を折り曲げたときに生じる復元力(反発力)を用いて、弾性部材4として使用することができる。なお、各取り付け部41,42の取り付け位置は、底板2と受撃板3との間の内面だけでなく側面や外面に取り付けてもよいし、円弧の軌跡方向は特に限定するものではない。
図1では、取り付け部41、42の取り付け位置を横方向にずらしているが、これは受撃板3が閉じるときに互いに干渉しあって破損することを防止するためである。
また、図3に示すように、弾性部材4の長さや取り付け位置を変更して、弾性部材4の円弧長さ、曲率半径を調整し、受撃板3の待機時の接地面に対する受撃板3の開閉角度や、復元力を調整することができ、センサ5の検出感度を任意に変更することができる。
同様に、紐状部材の太さ、強度、材質、長さ、取り付け本数によっても、上記した弾性部材4の復元力を任意に変更することができる。
【0018】
<6>センサ5
センサ5はチューブセンサなどを使用することができ、外力を受けて潰れた際に特定の検出信号を送るように構成される。
また、センサ5は底板2と受撃板3との間の位置に取り付けられる。より具体的には、センサ5は底板2や受撃板3に金具や結束部材(図示せず)等で取り付けられ、受撃板2が地山方向に変位する際に押圧部31によって潰れるように、押圧部31に対抗する位置に取り付けておく。また、センサ5の両端は受撃板3からはみ出されて計測装置(図示せず)に接続される。
【0019】
<7>結束部材6
結束部材6は、弾性部材4の各端部の根本を連結するのに用い、底板2と受撃板3との間の角度が一定角度以上開かないよう拘束しておくことができる。
【0020】
[作用]
次に、本発明の受撃検出装置1の作用について説明する。
【0021】
[落石の待機状態]
受撃検出装置1は、落石の検出が必要な現場の地山に設置して使用され、より具体的には底板2と受撃板3が連結された縁部を落石がやってくる方向、すなわち高度が高い方向に向けて設置する。
底板2と受撃板3との間は弾性部材4の復元力(反発力)と結束部材6の拘束力によって一定の開閉角度を保持しつづけ、落石の待機状態を維持する。
【0022】
[落石の検出]
図4に示すように、受撃板3の上に落石Bなどの荷重を受けると、その荷重により、受撃板3が底板2に対して閉じるように変位し、その変位によって押圧部31がセンサ5を潰すように働く。センサ5は潰れることによって特定の検出信号を計測装置に送り、計測装置がその検出信号を取得、解析することにより、落石が発生したことを検出することができる。
【0023】
[待機状態への復元]
落石Bが通過したあとは、弾性部材4の復元力により、受撃板3が所定の位置に戻り、センサ5への押圧も解除され、落石検出の待機状態に戻る。したがって、本願の受撃検出装置1は何度でも落石を検出することができる。
【0024】
[検出装置の調整]
例えば、検出の必要性がない小さな落石などにおいて本願の受撃検出装置1が落石を検出しているような場合は、受撃板3に対する弾性部材4の配置本数を増やしたり、弾性部材4の円弧長さを大きくすることで、受撃板の3の反発力を大きくし、落石Bの検出感度を低く抑えることもできる。
また、落石Bが発生しても、受撃板3に落石が接触せずに通過してしまって検出できないような場合には、弾性部材4の円弧長さや曲率半径を大きくして、受撃板3の開閉角度が斜面、すなわち接地面に対して90度に近づく方向に調整することで、落石Bが受撃板3に接触しやすくすることができる。
【0025】
本願の落石検出装置は、簡易な構造で故障が少なく、また検出センサに光ファイバなどの高価な部材を使用する必要がなく、他の部材も低コストであるため、交換が容易で維持管理がしやすい。
したがって、長期にわたって常に監視を続ける必要がある落石検出などの現場に最適な装置である。
【実施例2】
【0026】
図5に本発明の第2実施例を示す。底板2は地山Aと受撃検出装置1とを固定するために便宜的に設けているものであるため、本発明の第1実施例から底板2を省略することもできる。本実施例の場合、底板2の一縁に開閉自在に固定していた受撃板3の一縁を直接地山Aに開閉自在に固定してもよいし、底板2に固定していた弾性部材4の取り付け部42を直接地山Aに固定しても、同様の効果を得ることができる。
【実施例3】
【0027】
図6に本発明の第3実施例を示す。図6に示すように、底板2と受撃板3とを連結させずに本願の受撃検出装置1を構成することもできる。
この場合、弾性部材4を複数設け、それぞれの弾性部材4の円弧長さ、曲率半径を個別に設定することで、弾性部材4の復元力や設置面に対する受撃板の配置角度を任意に調節することができる。
また、結束部材6によって底板2と受撃板3との間の距離を調整することにより、落石待機時の所定位置を維持しておくようにしてもよい。
また、押圧部31とセンサ5は、底板2と受撃板3の間の内面に対抗する位置に設けておけばよい。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の受撃検出装置の実施例1の外観図。
【図2】本発明の受撃検出装置の実施例1の側面図。
【図3】実施例1において、弾性部材の取り付け位置を変更した場合の側面図。
【図4】実施例1において、落石発生時の受撃板の変位を示す側面図。
【図5】本発明の受撃検出装置の実施例2の側面図。
【図6】本発明の受撃検出装置の実施例3の側面図。
【符号の説明】
【0029】
1 受撃検出装置
2 底板
3 受撃板
31 押圧部
4 弾性部材
41、42 取り付け部
5 センサ
6 結束部材
A 地山
B 落石

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部の力を受ける受撃板と、
前記受撃板を一方向に付勢する弾性部材と、
前記受撃板の変位を検出するセンサと、を具備してなることを特徴とする、
落石等の受撃検出装置。
【請求項2】
底板と、
前記底板に開閉可能に取り付けられ、外部の力を受ける受撃板と、
前記受撃板を一方向に付勢する弾性部材と、
前記受撃板の変位を検出するセンサと、を具備してなることを特徴とする、
落石等の受撃検出装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の落石等の受撃検出装置において、前記弾性部材が紐部材からなり、前記紐部材が円弧形状を呈していることを特徴とする、落石等の受撃検出装置。
【請求項4】
請求項3に記載の落石等の受撃検出装置において、前記弾性部材の取り付け位置を変更することにより、円弧長さ及び曲率半径のうち少なくとも一つを調整可能にしたことを特徴とする、落石等の受撃検出装置。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れかに記載の落石等の受撃検出装置において、前記弾性部材が複数取り付けられていることを特徴とする、落石等の受撃検出装置。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れかに記載の落石等の受撃検出装置において、前記受撃板及び底板の少なくとも一つが網状であることを特徴とする、落石等の受撃検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−70900(P2007−70900A)
【公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−259393(P2005−259393)
【出願日】平成17年9月7日(2005.9.7)
【出願人】(000229128)日本ゼニスパイプ株式会社 (31)
【出願人】(599034631)株式会社 復建技術コンサルタント (1)
【Fターム(参考)】