説明

落花生処理物を用いた交感神経興奮剤

【課題】落花生種皮処理物の新たな用途を提供する。
【解決手段】落花生の種皮又は種子の処理物を有効成分として含有することを特徴とする交感神経興奮剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、落花生種皮由来の有効成分を用いた交感神経興奮剤に関する。
【背景技術】
【0002】
カフェインは、交感神経興奮作用を有し、眠気防止等の目的で、解熱鎮痛剤、風邪薬、咳止め等の医薬品の他、食品、ドリンク剤に配合されている。
しかしながら、カフェインには、胃腸障害等の副作用を起こすことが問題になっている。
【0003】
一方、落花生種皮処理物は、骨髄細胞増殖活性、抗HIV活性、抗腫瘍効果等を有することが知られているが(特許文献1〜3参照)、交感神経に対する作用については何ら報告されていない。
【0004】
【特許文献1】特許第3217278号公報(例えば、請求項1)
【特許文献2】特開平11−246431号公報(例えば、請求項1)
【特許文献3】特開2004−217558号公報(例えば、請求項1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、落花生種皮処理物の新たな用途を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の要旨は以下のとおりである。
(1)落花生の種皮又は種子の処理物を有効成分として含有することを特徴とする交感神経興奮剤。
(2)前記処理物が落花生の種皮もしくは種子の抽出物又はそれらの処理物である前記(1)に記載の交感神経興奮剤。
(3)前記処理物が落花生の種子をそのまま、水、水混和性有機溶媒又はこれらの混合溶媒で抽出して得られる抽出物又はその処理物である前記(1)に記載の交感神経興奮剤。
(4)落花生種皮由来で水に溶解性を示す物質を有効成分として含有することを特徴とする交感神経興奮剤。
(5)落花生種皮由来で低級アルコールに溶解性を示す物質を有効成分として含有することを特徴とする交感神経興奮剤。
(6)落花生種皮由来で水及び低級アルコールに溶解性を示す物質を有効成分として含有することを特徴とする交感神経興奮剤。
(7)医薬、食品、チューインガム又は飲料に添加するための前記(1)〜(6)のいずれかに記載の交感神経興奮剤。
(8)眠気を減らすために用いられる前記(1)〜(7)のいずれかに記載の交感神経興奮剤。
(9)緊張感を維持するために用いられる前記(1)〜(7)のいずれかに記載の交感神経興奮剤。
(10)脂肪分解を促進するために用いられる前記(1)〜(7)のいずれかに記載の交感神経興奮剤。
(11)前記(1)〜(10)のいずれかに記載の交感神経興奮剤を含有する医薬又は食品組成物。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、落花生由来の、安全性の高い交感神経興奮剤を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
落花生の果実は強固な果皮を有し、この内部に通常2個の種子が存在する。内存する種子にはこれを包する種皮がある。
【0009】
本発明の交感神経興奮剤は、落花生種皮由来で水に溶解性を示す物質を含有すればよく、落花生の種皮、及び種子(皮付き種子をいう。)のいずれを用いてもよい。落花生種皮は、破砕、粉砕等により粉末化処理したものを用いてもよいが、抽出物又はその処理物として用いることが好ましい。
【0010】
本発明においては、種皮分離時の乾燥工程及び分離工程が不要であること、更に、種皮を種子から分離する際に種子由来の油分が種皮に付着することがあるが、これを防止して油分の混入を防止できることから、種子をそのまま溶媒で抽出することが特に好ましい。ここで、「種子をそのまま」とは、落花生種子から種皮を分離したり、落花生種子を破砕、粉砕等により粉末化処理することなく抽出を行うことをいう。落花生種子としては、種皮の全部又は一部が剥離したものを除外し、種皮が種子全体を覆っているものを選別して用いることが好ましい。
【0011】
抽出溶媒としては、水及び;低級アルコール類、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール;エーテル類、例えばエチルエーテル、ジオキサン;ケトン類、例えばアセトン等の水混和性有機溶媒、並びにこれらの混合溶媒が挙げられるが、水、エタノール、又は水−エタノール混合溶媒が好ましい。抽出に用いる水の種類は、上水、天然水、RO(逆浸透膜)処理水、深層水、磁気化水、単分子水、水の結鎖角度を変化させた処理水等、飲用又は皮膚に適用できるものであれば如何なるものでもよい。
【0012】
種子から分離された落花生種皮を用いる場合には、通常、落花生種皮1kg当り抽出溶媒5〜25Lを使用する。種子を用いる場合には、通常、種子1kg当り抽出溶媒1〜5Lを使用する。
【0013】
抽出温度は、通常、溶媒の融点ないし溶媒の沸点の範囲内であり、好ましくは0〜80℃、更に好ましくは5〜50℃である。超臨界抽出をしてもよい。また、抽出は、通常常圧下で行うが、加圧下又は減圧下で行ってもよい。抽出時間は、抽出温度等により異なり、通常5分間〜1日間であるが、種子由来の油分が溶出してこない時間内とするのが好ましい。抽出溶媒として水を用いて5〜50℃で抽出する場合、抽出時間は、好ましくは5〜60分、更に好ましくは10〜30分である。
【0014】
抽出液に再度未処理の落花生種皮又は種子を加え前記と同様の抽出操作を1又は複数回繰り返してもよい。
【0015】
前記のようにして得られた抽出液を、布、ステンレスフィルター、濾紙等で濾過して落花生種皮又は種子、不純物等を取り除くことで、目的の抽出液を得ることができる。また、濾過後の抽出液に、スプレードライ処理、フリーズドライ処理、超臨界処理等の処理を施してもよい。
【0016】
このようにして得られる抽出物は、そのまま本発明の交感神経興奮剤の有効成分として用いることができる。また、当該抽出物をイオン交換クロマトグラフィー、ゲル濾過クロマトグラフィー(好ましくは逆相カラムクロマトグラフィー(ODS))、透析等の各種精製手段により処理し、更に活性を高めた処理物として用いてもよい。その際、活性成分の化学的性質を利用して精製することが好ましい。
【0017】
即ち、本発明の交感神経興奮剤の好ましい活性成分は、水及び/又は低級アルコール(例えば、エタノール)に溶解する性質を有するため、この性質を利用して、水に溶解性を示す物質、低級アルコールに溶解性を示す物質、又は水及び低級アルコールに溶解性を示す物質を採取することにより、より純度の高い活性成分を得ることができる。
【0018】
本発明の交感神経興奮剤は、落花生種皮又は種子の処理物を公知の医薬用担体と組合せて製剤化することができる。投与形態としては、特に制限はなく、必要に応じ適宜選択されるが、一般には錠剤、カプセル剤、顆粒剤、細粒剤、散剤、液剤、シロップ剤、懸濁剤、乳剤、エリキシル剤等の経口剤、又は注射剤、点滴剤、坐剤、吸入剤、経皮吸収剤、経粘膜吸収剤、貼付剤、軟膏剤等の非経口剤として使用される。
【0019】
本発明の交感神経興奮剤の投与量は、患者の年令、体重、疾患の程度、投与経路により異なるが、経口投与では、落花生種皮又は種子の抽出物乾燥粉末として、通常1日50〜1000mgであり、投与回数は、通常、経口投与では1日1〜3回である。
【0020】
経口剤は、例えばデンプン、乳糖、白糖、マンニット、カルボキシメチルセルロース、コーンスターチ、無機塩類等の賦形剤を用いて常法に従って製造される。
【0021】
この種の製剤には、適宜前記賦形剤の他に、結合剤、崩壊剤、界面活性剤、滑沢剤、流動性促進剤、矯味剤、着色剤、香料等を使用することができる。
【0022】
結合剤の具体例としては、結晶セルロース、結晶セルロース・カルメロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、カルメロースナトリウム、エチルセルロース、カルボキシメチルエチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、コムギデンプン、コメデンプン、トウモロコシデンプン、バレイショデンプン、デキストリン、アルファー化デンプン、部分アルファー化デンプン、ヒドロキシプロピルスターチ、プルラン、ポリビニルピロリドン、アミノアルキルメタクリレートコポリマーE、アミノアルキルメタクリレートコポリマーRS、メタクリル酸コポリマーL、メタクリル酸コポリマー、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート、ポリビニルアルコール、アラビアゴム、アラビアゴム末、寒天、ゼラチン、白色セラック、トラガント、精製白糖、マクロゴールが挙げられる。
【0023】
崩壊剤の具体例としては、結晶セルロース、メチルセルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、カルメロース、カルメロースカルシウム、カルメロースナトリウム、クロスカルメロースナトリウム、コムギデンプン、コメデンプン、トウモロコシデンプン、バレイショデンプン、部分アルファー化デンプン、ヒドロキシプロピルスターチ、カルボキシメチルスターチナトリウム、トラガントが挙げられる。
【0024】
界面活性剤の具体例としては、大豆レシチン、ショ糖脂肪酸エステル、ステアリン酸ポリオキシル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、セスキオレイン酸ソルビタン、トリオレイン酸ソルビタン、モノステアリン酸ソルビタン、モノパルミチン酸ソルビタン、モノラウリン酸ソルビタン、ポリソルベート、モノステアリン酸グリセリン、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウロマクロゴールが挙げられる。
【0025】
滑沢剤の具体例としては、コムギデンプン、コメデンプン、トウモロコシデンプン、ステアリン酸、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、含水二酸化ケイ素、軽質無水ケイ酸、合成ケイ酸アルミニウム、乾燥水酸化アルミニウムゲル、タルク、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、リン酸水素カルシウム、無水リン酸水素カルシウム、ショ糖脂肪酸エステル、ロウ類、水素添加植物油、ポリエチレングリコールが挙げられる。
【0026】
流動性促進剤の具体例としては、含水二酸化ケイ素、軽質無水ケイ酸、乾燥水酸化アルミニウムゲル、合成ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウムが挙げられる。
【0027】
また、本発明の交感神経興奮剤は、シロップ剤、懸濁剤、乳剤、エリキシル剤、ドリンク剤等の液剤として投与する場合には、矯味矯臭剤、着色剤を含有してもよい。
【0028】
本発明の交感神経興奮剤は、食品(必要に応じて、乳酸菌等を配合してもよい。)、チューインガム、飲料(必要に応じて、乳酸菌等を配合してもよい。)等に添加して、いわゆる特定保健用食品(例えば、眠気の減少、緊張感の維持、身体の防御能の増強を目的とする食品)等とすることもできる。
【0029】
本発明の交感神経興奮剤は、加速度脈波を用いた自律神経機能の評価法(例えば、特開2004−358022号公報;Takada H, Okino K, Niwa Y: An Evaluation Method for Heart Rate Variability, by Using Acceleration Plethysmography, Health Evaluation and Promotion, 31: 547-551, 2004;周波数解析による自律神経活性時系列についての周波数解析の試み、森口孝一、楽木宏実、木田岩男、永井隆二、河内健治、永田鎮也、檜垣實男、荻原俊男、日本臨床生理学会雑誌, 30 : 93, 2000参照)によって、交感神経を興奮(刺激)する作用を有することが確認されている。
【0030】
また、本発明の交感神経興奮剤は、脂肪分解を促進する作用を有し、ダイエット用の医薬又は食品としても有用である。本発明の交感神経興奮剤は、更に、眠気の減少、緊張感の維持などの効果を有し、例えば、車の運転、残業時などの疲労蓄積時の効率アップ、試験勉強時のリフレッシュなどに有効である。
【0031】
本発明の交感神経興奮剤は、カフェインに類似する作用を有するが、カフェインに見られるような胃腸障害等の副作用を起こさないことから、カフェインに代えて、解熱鎮痛剤、風邪薬、咳止め等の医薬品の他、食品、ドリンク剤に配合することができる。
【0032】
本発明の交感神経興奮剤の製造原料である落花生種皮又は種子は食用に供されており、安全性は確立されている。
【実施例】
【0033】
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0034】
(実施例1)落花生種子抽出物の調製
(製造法A)
1.皮のむけていない落花生種子(以下「落花生種子」という。)を60kg用意し、簡単に水洗した。
2.RO処理水(以下「水」という。)(15〜25℃)30Lを容器に入れ、そこに前記1.で用意した落花生種子20kgを入れ、20分間放置した後、落花生種子だけを取り出し28Lの抽出液Aを得た。
3.前記抽出液Aに未抽出の落花生種子20kgを入れ、20分間放置した後、落花生種子だけを取り出し26Lの抽出液Bを得た。
4.前記抽出液Bに未抽出の落花生種子20kgを入れ、20分間放置した後、落花生種子だけを取り出し約24Lの抽出液Cを得た。
5.前記抽出液Cを目の細かい布で濾過し、抽出液Dを得た。
6.前記抽出液Dを加圧式濾過器にかけ、抽出液Eを得た。濾過器のフィルターとしては、布6枚を重ねたものを用いた。
7.前記抽出液Eを加圧式濾過器にかけ、抽出液Fを得た。濾過器のフィルターとしては、7μmのステンレス製フィルターを用いた。
8.前記抽出液Fを凍結濃縮し、抽出液Gを得た。
9.前記抽出液Gを凍結乾燥又はスプレードライに付し、150gの落花生種子抽出物Hを得た。
10.前記抽出物Hを60メッシュの篩にかけ、桃色の抽出物Iを微粒子状の粉体として得た。
11.前記抽出物Iを分析した結果を以下に示す。
【0035】
(1)薄層クロマトグラフィー
逆相薄層クロマトグラフィー(ODS)分析により、主として1種の成分からなることがわかった。
(a)展開溶媒:50%アセトニトリル
スポットA:Rf 0.71
(b)展開溶媒:35%アセトニトリル
スポットA:Rf 0.47
【0036】
(2)高速液体クロマトグラフィー
以下の条件で行った高速液体クロマトグラフィーは、分子量の異なるポリフェノールの混合物であることを示した。結果を図1に示す。
カラム:昭和電工(株)製 Shodex SUGAR KS-801(8.0mm id×300mm)
試料:前記抽出物I(水に溶解後、1日放置)
試料サイズ:10μL(10mg/ml)
溶離液:水
流量:0.35ml/分
カラム温度:80℃
圧力:50kg/cm
検出:RI range 1
【0037】
(3)逆相カラムクロマトグラフィー(ODS)によるポリフェノール含量の分析
前記抽出物I1.0gをODSカラム(ODS10g)に通導し、水80ml及び50%メタノール80mlを流した結果、50%メタノール溶出画分から0.96gのポリフェノールを得た。(ポリフェノール含有量96%)
【0038】
(4)NMRスペクトル
前記抽出物Iの核磁気共鳴(H NMR)スペクトル(500MHz,DO)を図2に示す。
【0039】
(5)IRスペクトル
前記抽出物Iの赤外線吸収(IR)スペクトルを以下に示す。
IR (KBr): 3000-3700, 2900, 2850, 1616, 1525, 823, 782 cm-1(図3参照)
12.NMRスペクトルによる解析から、前記抽出物Iには、約90%のプロアントシアニジンが含まれていることが判明した。
【0040】
(製造法B)
種皮付落花生種子を超純水1Lに10分間浸けた後、ブフナーロートを用いて減圧濾過した。濾液を凍結乾燥して、粉末状の落花生種子抽出物Jを2.65g得た。
落花生種子抽出物JのNMRスペクトル及びIRスペクトルを、それぞれ図4及び図5に示す。
【0041】
NMRスペクトルにおいて、高分子ポリフェノール由来のシグナル(6.5〜7.3ppm)の他に、糖に由来すると思われるシグナルが大きく観察され、前記抽出物Iのプロアントシアニジンとは相違する物質と考えられた。
【0042】
(公知のプロアントシアニジンとの比較)
特許第2975997号公報に記載の落花生種皮由来のプロアントシアニジンでは、段落0057に記載の構造式及び段落0058の表1に記載の置換基から明らかなように、芳香環(A環、B環、D環及びE環;段落0006の一般式(1)参照)上の水素合計9個に対し、F環(段落0006の一般式(1)参照)におけるメチレン水素が2個存在する。このメチレン水素は、段落0059の表2のH NMRデータの4´α、4´βに相当し、それらのシグナルが2.58〜2.95ppmに観察されるが、本発明のプロアントシアニジンでは対応するシグナルはほとんど観察されない(図2及び図4参照)。
【0043】
従って、実施例1及び2で得られたプロアントシアニジンは、特許第2975997号公報に記載の落花生種皮由来のプロアントシアニジンとは相違すると考えられる。
【0044】
(実施例2)臨床試験
1.試験方法
A.試験デザイン
試験は、実施例1で得られた抽出物I(以下「落花生種皮抽出エキス」という。)、食品素材A、プラセボの3群クロスオーバー試験とした。試験食摂取期間は8日間(負荷7日前から負荷当日まで)とした。なお、本試験は、ヘルシンキ宣言に基づく倫理的原則を遵守して実施され、被験者全例に本試験に対する同意書を取得した。また、あらかじめ「総合医科学研究所および総医研クリニック特定保健用食品等臨床試験受託に関する審査委員会」の承認を受けた。
【0045】
B.試験スケジュール
4週間隔で3回の試験食摂取期間及び負荷日を設定した。スケジュール例を表1に示した。
【0046】
【表1】

【0047】
C.試験食の概要
(a)被験食
2号ハードカプセル1個あたり落花生種皮抽出エキス50mg
(b)プラセボ食
2号ハードカプセル1個あたり結晶セルロース160mg
【0048】
D.試験食の摂取方法
朝夕食後に試験食を1個ずつ負荷前7日間摂取させた。負荷当日は負荷前及び負荷2時間後に試験食を1個ずつ2回摂取させた。
【0049】
E.身体作業による疲労負荷の方法
身体作業負荷は、エルゴメーターを試験スケジュールに従い漕ぐことにより与えた。負荷強度は無酸素性作業閾値(AT: Anaerobic Threshold)における心拍数の80%となる負荷強度(WattAT80%)とした。試験食摂取前日にエルゴメーター(コンビ(株)エアロバイク75XLII ME)及び呼吸代謝測定システム(ミナト医科学(株)エアロモニタAE−300S)を用いてAT時の酸素摂取量(VO)、心拍数を測定し負荷強度を算出した。試験日にはWattAT80%で2時間の2タームの負荷を与えた。
【0050】
F.回復期の設定
4時間の負荷が終了した後、4時間(昼食時間を含む)の回復期を設定した。各被験者に1台のベッドを用意し、読書や音楽を聴いてもらい過ごしてもらった。
【0051】
G.その他の被験者管理
(a)試験期間前の管理
試験期間中は暴飲暴食や過度な運動は禁止し、試験食摂取期間中は食事運動記録をつけてもらい、日常生活を把握した。
(b)試験期間中の管理
食事、入浴、就寝時間などの生活習慣を含めた行動を試験スケジュールに従わせた。食事に関して作業負荷前日及び作業負荷当日の夕食は同一メニューで約800kcalとした。作業負荷当日の昼食は炭水化物が中心の内容で400kcal程度とした。水分補給はミネラルウォーターのみとした。水分摂取量については制限しなかった。また、入浴はシャワーのみとした。
【0052】
2.結果
血液検査、加速度脈波及びVAS検査のデータについてプラセボ群と比較し解析した結果は以下のとおりであった。評価ポイントの略語は次の意味を有する。
Time_0:負荷前
Time_4:負荷4時間後
Time_8:回復4時間後
Time_02:負荷2時間後と負荷前との変化量
Time_04:負荷4時間後と負荷前との変化量
Time_08:回復4時間後と負荷前との変化量
Time_48:回復4時間後と負荷4時間後の変化量
【0053】
(1)生化学的検査
血液検査において遊離脂肪酸がTime_4、Time_04で有意に上昇し(p<0.01)、Time_48で有意に低下し(p<0.01)、脂肪分解を促進する作用を有することが示された。
結果を表2に示す。
【0054】
【表2】

【0055】
(2)加速度脈波
加速度脈波においてTime_8で、高速フーリエ変換法(FFT)における低周波数成分(LF)/高周波数成分(HF)(LF/HF−FFT)及び最大エントロピー法(MEM)における低周波数成分(LF)/高周波数成分(HF)(LF/HF−MEM)の有意な上昇がみられ、交感神経を興奮する作用を有することが示された。
結果を表3に示す。
【0056】
【表3】

【0057】
(3)VAS検査
(3−1)方法
VAS(Visual Analogue Scale)とは、線分の両端に基準となる表現を記した紙を見せ、被験者は測りたい内容が、その線分のどのあたりに相当するかをチェックする評価方法である。線分の左端からの長さを測定することにより、質問項目に対して定量的に結果が出て、多くの人の結果を平均するなどの処理ができるという利点を持つ方法である。本試験例で使用したVAS検査用紙の例を図6に示す。図6はおよその実際スケールを反映しており、線分の長さとしては10cmが通常である。
(3-2)結果
VASの線分長さの測定をしたところ、Time_02、Time_04、Time_08で眠気の有意な低下がみられた(表4)。
【0058】
【表4】

【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】落花生種子抽出物の高速液体クロマトグラフィーの結果を示す図である。
【図2】落花生種子抽出物のNMRスペクトルを示す図である。
【図3】落花生種子抽出物のIRスペクトルを示す図である。
【図4】落花生種子抽出物(結晶体)のNMRスペクトルを示す図である。
【図5】落花生種子の抽出物(結晶体)のIRスペクトルを示す図である。
【図6】VAS検査用紙の例を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
落花生の種皮又は種子の処理物を有効成分として含有することを特徴とする交感神経興奮剤。
【請求項2】
前記処理物が落花生の種皮もしくは種子の抽出物又はそれらの処理物である請求項1記載の交感神経興奮剤。
【請求項3】
前記処理物が落花生の種子をそのまま、水、水混和性有機溶媒又はこれらの混合溶媒で抽出して得られる抽出物又はその処理物である請求項1記載の交感神経興奮剤。
【請求項4】
落花生種皮由来で水に溶解性を示す物質を有効成分として含有することを特徴とする交感神経興奮剤。
【請求項5】
落花生種皮由来で低級アルコールに溶解性を示す物質を有効成分として含有することを特徴とする交感神経興奮剤。
【請求項6】
落花生種皮由来で水及び低級アルコールに溶解性を示す物質を有効成分として含有することを特徴とする交感神経興奮剤。
【請求項7】
医薬、食品、チューインガム又は飲料に添加するための請求項1〜6のいずれか1項に記載の交感神経興奮剤。
【請求項8】
眠気を減らすために用いられる請求項1〜7のいずれか1項に記載の交感神経興奮剤。
【請求項9】
緊張感を維持するために用いられる請求項1〜7のいずれか1項に記載の交感神経興奮剤。
【請求項10】
脂肪分解を促進するために用いられる請求項1〜7のいずれか1項に記載の交感神経興奮剤。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか1項に記載の交感神経興奮剤を含有する医薬又は食品組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−94787(P2008−94787A)
【公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−280488(P2006−280488)
【出願日】平成18年10月13日(2006.10.13)
【出願人】(506346185)PAQ株式会社 (1)
【出願人】(303030922)株式会社総医研ホールディングス (12)
【Fターム(参考)】