説明

落花生胚芽由来の生理活性物質

【課題】落花生胚芽を有効利用する。
【解決手段】次式(I):


で示される化合物又はその塩;前記化合物、又は落花生胚芽の抽出物を吸着クロマトグラフィーに負荷し、カラムを通過した画分及び水で溶出した画分を除去し、次いで40〜100%低級アルコールで溶出した画分又はその精製物を含有する抗炎症剤及び炎症性サイトカイン産生抑制剤;並びに前記化合物の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、落花生胚芽由来の生理活性物質、並びに生理活性物質の用途及び製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、高齢化や生活環境の悪化に伴う生活習慣病の増加とともに健康に関する関心が高まっており、食品の機能性に対するニーズも増加している。
【0003】
健康管理や生活習慣病を水際で予防するのに役立つ機能性食品は、今後、医薬品と同等に重要な位置を占めるようになると考えられ、その開発には実験科学的な根拠が必須で、それが高付加価値製品を生む。
【0004】
炎症は異物の侵入や組織の障害あるいは感染症など生体組織にとって好ましくない刺激によってさまざまな組織における免疫系が引き起こす生体防御反応で、過剰免疫反応によって炎症が過剰に組織を傷つけるアレルギー疾患や、外部から炎症を引き起こす物質(細菌、花粉、大気汚染物質などの抗原)が体内に侵入することによって起こるかゆみ、痛み、腫れ、組織損傷などの炎症を抑える抗炎症作用は健康の質を維持する上で重要な機能である。
【0005】
落花生 (学名:Arachis hypogaea L.)の豆果は、その最外層から内層に向かって殻(豆果)、種皮(薄皮)、子実(種子)から構成されている。落花生は一般に種子部を利用するが、胚芽は加工過程で大半が廃棄されている。落花生種皮には豊富なプロアントシアニジンが含まれ、落花生種皮抽出物又は該抽出物から単離されたプロアントシアニジンが骨髄細胞増殖活性、抗HIV活性、抗腫瘍効果、抗酸化活性等を有することが知られている(例えば、特許文献1〜3参照)。一方、落花生から分離された胚芽は、苦味を有するため食品としては不向きで、医薬品として利用された例もない。
【0006】
本発明者らは、先に落花生胚芽の熱水抽出物がサイトカインの産生を増加させることを報告している(非特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第3217278号公報(例えば、請求項1)
【特許文献2】特開平11−246431号公報(例えば、請求項1)
【特許文献3】特開2004−217558号公報(例えば、請求項1)
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】日本生薬学会第56回年会(2009年)講演要旨集第221頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は落花生胚芽を有効利用することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、落花生胚芽の機能性食品又は医薬品としての可能性を見出す目的で、単球系細胞を用いた免疫応答を指標に生理活性物質の探索を行ったところ、新規化合物を単離精製することに成功し、更に該化合物、及び落花生胚芽の抽出物から前記化合物を単離精製する工程で得られる特定の画分が、落花生胚芽の精製前の熱水抽出物とは逆に、炎症性サイトカインの産生を抑制し、抗炎症剤として有用であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明の要旨は以下のとおりである。
(1)次式(I):
【化1】

で示される化合物又はその塩。
【0012】
(2)前記(1)に記載の化合物又はその塩を含有する抗炎症剤。
(3)前記(1)に記載の化合物又はその塩を含有する炎症性サイトカイン産生抑制剤。
(4)落花生胚芽の抽出物を吸着クロマトグラフィーに負荷し、カラムを通過した画分及び水で溶出した画分を除去し、次いで40〜100%低級アルコールで溶出した画分又はその精製物を含有する抗炎症剤。
【0013】
(5)落花生胚芽の抽出物を吸着クロマトグラフィーに負荷し、カラムを通過した画分及び水で溶出した画分を除去し、次いで40〜100%低級アルコールで溶出した画分又はその精製物を含有する炎症性サイトカイン産生抑制剤。
(6)落花生胚芽の抽出物から前記(1)に記載の化合物を単離することを含む前記(1)に記載の化合物の製造方法。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、これまで廃棄されていた落花生胚芽を用いて、抗炎症剤及び炎症性サイトカイン産生抑制剤として有用な新規化合物を提供するとともに、該化合物及び落花生胚芽の抽出物の精製画分の抗炎症剤及び炎症性サイトカイン産生抑制剤として用途を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、落花生胚芽の抽出・分画手順を示す図である。
【図2】図2は、落花生胚芽熱水抽出物とHP−20分画物のサイトカイン(TNF−α及びIL−6)産生に及ぼす影響を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
前記式(I)で示される化合物は、落花生胚芽から、抽出し、単離することにより得ることができる。
【0017】
本発明に用いる落花生胚芽は、落花生果実の殻(豆果)を割り、種皮(薄皮)のついた実を焙煎することなく取り出すこともできるが、種皮(薄皮)が取除きやすく胚芽の取り出しが容易であることから、通常は焙煎を行う。常法に従い焙煎後、種皮(薄皮)のついていない落花生を通常ローラーで二つに割ると、二つ割りと胚芽が取れるので、両者を選別することにより落花生胚芽を容易に得ることができる。
【0018】
抽出溶媒としては、水、有機溶媒及びこれらの混合溶媒が挙げられる。有機溶媒としては、低級アルコール類、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール;エーテル類、例えばエチルエーテル、ジオキサン;ケトン類、例えばアセトン等の水混和性有機溶媒が好ましく、水及び有機溶媒の混合溶媒としては、水−エタノール混合溶媒、水−メタノール混合溶媒が好ましい。
通常、落花生胚芽1kg当り抽出溶媒1〜15Lを使用する。
【0019】
抽出温度は、通常、溶媒の融点ないし溶媒の沸点の範囲内であり、好ましくは0〜100℃、更に好ましくは5〜95℃である。超臨界抽出をしてもよい。また、抽出は、通常常圧下で行うが、加圧下又は減圧下で行ってもよい。抽出時間は、抽出温度等により異なり、通常5分間〜1日間である。抽出溶媒として熱水(85〜100℃)を用いて抽出する場合、抽出時間は、好ましくは5〜60分、更に好ましくは10〜30分である。
【0020】
前記のようにして得られた抽出液を、布、ステンレスフィルター、濾紙等で濾過して落花生胚芽、不純物等を取り除くことで、目的の抽出液を得ることができる。また、濾過後の抽出液に、スプレードライ処理、フリーズドライ処理、超臨界処理等の処理を施してもよい。
【0021】
このようにして得られる抽出物を吸着クロマトグラフィー、好ましくは芳香族系合成吸着剤等を用いる吸着クロマトグラフィーに負荷し、カラムを通過した画分及び水で溶出した画分を除去し、次いで40〜100%低級アルコールで溶出した画分を得る。
【0022】
前記芳香族系合成吸着剤は、イオン交換基を有しない、多孔性構造を有する合成物質で、疎水性相互作用により、主に有機物の分離精製に使用されるものであり、種々のものが知られており、例えば、特許第2784627号公報、特許第3527661号公報、特許第3891746号公報に記載されているものが挙げられる。具体的には、スチレンとジビニルベンゼンを重合して製造された芳香族系合成吸着剤が挙げられ、市販品としては、ダイヤイオンTMHP20、同HP21、セパビーズTMSP825L、同SP850、同SP700、同SP70(以上、三菱化学(株)製又は日本錬水(株)製)、アンバーライトTMXAD2、同XAD4、同XAD16(米国、ロームアンドハース社製)が挙げられる。
【0023】
前記のようにして得られる画分は、そのまま、又は更に逆相クロマトグラフィー、透析等の各種精製手段により精製して、有効成分として用いることができる。その際、単球系細胞を用いた免疫応答を指標に精製することが好ましい。
【0024】
本発明の化合物は、前記画分を、例えばODSカラムを用いた逆相クロマトグラフィーで精製することにより単離することができる。
【0025】
本発明の化合物は、カルボキシル基及びフェノール性水酸基を有するので、必要に応じて、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩などの塩に変換して用いることもできる。
【0026】
本発明の抗炎症剤及び炎症性サイトカイン産生抑制剤は、前記式(I)で示される化合物又はその塩、あるいは、前記画分又はその精製物を公知の食品又は医薬用担体と組合せて製剤化することができる。投与形態としては、特に制限はなく、必要に応じ適宜選択されるが、一般には錠剤、カプセル剤、顆粒剤、細粒剤、散剤、液剤、シロップ剤、懸濁剤、乳剤、エリキシル剤等の経口剤、又は注射剤、点滴剤、坐剤、吸入剤、経皮吸収剤、経粘膜吸収剤、貼付剤、軟膏剤等の非経口剤として使用される。
【0027】
本発明の抗炎症剤及び炎症性サイトカイン産生抑制剤の投与量は、患者の年令、体重、疾患の程度、投与経路により異なるが、経口投与では、前記式(I)で示される化合物又はその塩として、通常1日3〜600mg、前記画分又はその精製物乾燥粉末として、通常1日50〜3000mgであり、投与回数は、通常、経口投与では1日1〜3回である。
【0028】
経口剤は、例えばデンプン、乳糖、白糖、マンニット、カルボキシメチルセルロース、コーンスターチ、無機塩類等の賦形剤を用いて常法に従って製造される。
【0029】
この種の製剤には、適宜前記賦形剤の他に、結合剤、崩壊剤、界面活性剤、滑沢剤、流動性促進剤、矯味剤、着色剤、香料等を使用することができる。
【0030】
結合剤の具体例としては、結晶セルロース、結晶セルロース・カルメロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、カルメロースナトリウム、エチルセルロース、カルボキシメチルエチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、コムギデンプン、コメデンプン、トウモロコシデンプン、バレイショデンプン、デキストリン、アルファー化デンプン、部分アルファー化デンプン、ヒドロキシプロピルスターチ、プルラン、ポリビニルピロリドン、アミノアルキルメタクリレートコポリマーE、アミノアルキルメタクリレートコポリマーRS、メタクリル酸コポリマーL、メタクリル酸コポリマー、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート、ポリビニルアルコール、アラビアゴム、アラビアゴム末、寒天、ゼラチン、白色セラック、トラガント、精製白糖、マクロゴールが挙げられる。
【0031】
崩壊剤の具体例としては、結晶セルロース、メチルセルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、カルメロース、カルメロースカルシウム、カルメロースナトリウム、クロスカルメロースナトリウム、コムギデンプン、コメデンプン、トウモロコシデンプン、バレイショデンプン、部分アルファー化デンプン、ヒドロキシプロピルスターチ、カルボキシメチルスターチナトリウム、トラガントが挙げられる。
【0032】
界面活性剤の具体例としては、大豆レシチン、ショ糖脂肪酸エステル、ステアリン酸ポリオキシル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、セスキオレイン酸ソルビタン、トリオレイン酸ソルビタン、モノステアリン酸ソルビタン、モノパルミチン酸ソルビタン、モノラウリン酸ソルビタン、ポリソルベート、モノステアリン酸グリセリン、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウロマクロゴールが挙げられる。
【0033】
滑沢剤の具体例としては、コムギデンプン、コメデンプン、トウモロコシデンプン、ステアリン酸、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、含水二酸化ケイ素、軽質無水ケイ酸、合成ケイ酸アルミニウム、乾燥水酸化アルミニウムゲル、タルク、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、リン酸水素カルシウム、無水リン酸水素カルシウム、ショ糖脂肪酸エステル、ロウ類、水素添加植物油、ポリエチレングリコールが挙げられる。
【0034】
流動性促進剤の具体例としては、含水二酸化ケイ素、軽質無水ケイ酸、乾燥水酸化アルミニウムゲル、合成ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウムが挙げられる。
【0035】
また、本発明の抗炎症剤及び炎症性サイトカイン産生抑制剤は、シロップ剤、懸濁剤、乳剤、エリキシル剤、ドリンク剤等の液剤として投与する場合には、矯味矯臭剤、着色剤を含有してもよい。
【0036】
本発明の抗炎症剤及び炎症性サイトカイン産生抑制剤は、インターロイキン6(IL−6)、腫瘍壊死因子α(TNF−α)等の炎症性サイトカインの産生を抑制する作用を有し、感染症やアレルギーなどの過剰免疫反応によっておこる組織損傷などの炎症を抑制する抗炎症剤として有用である。本発明の抗炎症剤及び炎症性サイトカイン産生抑制剤は、食品、チューインガム、飲料等に添加して、いわゆる特定保健用食品(例えば、健康維持、生活習慣病の予防、中性脂肪の低減、血糖の改善を目的とする食品)、一般食品等とすることもできる。本発明の抗炎症剤及び炎症性サイトカイン産生抑制剤の製造原料である落花生胚芽は落花生の一部として食用に供されており、安全性は確立されている。
【実施例】
【0037】
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0038】
(実施例1)落花生胚芽の熱水抽出物の調製及び分画
落花生の胚芽1.5kgに水5Lを加え加熱し、90℃で15分抽出した。得られた抽出液を凍結乾燥し、別途、胚芽1.5kgについても同様の操作を行い、胚芽合計3kgから合わせて333gの熱水抽出物を得た。得られた熱水抽出物(317g)をダイヤイオンTMHP20(日本錬水(株))カラムクロマトグラフィー(カラム容量1.5L)に通導し、水、20%メタノール水溶液、60%メタノール水溶液及びメタノールの順でそれぞれ4.5Lによって溶出、分画した。60%メタノール水溶液で溶出して得た画分7.2gのうち6gを、更にODS(136g)を用いた逆相カラムクロマトグラフィー(水1.1L、10%メタノール水溶液、50%メタノール水溶液、70%メタノール水溶液及びメタノール各0.88Lによって溶出)によって分画した。10%メタノール水溶液溶出画分300mgを更にODS(136g)を用いた逆相カラムクロマトグラフィー(1%メタノール水溶液1.1L及び30%メタノール水溶液1.1Lによって溶出)によって分画し、30%メタノール水溶液溶出によって得た画分110mgを逆相HPLC(ODS 20×300mm,アセトニトリル/メタノール/水=1/2/8+0.1%ギ酸,6ml/min)によって分画し化合物A(6.4mg)を得た(図1)。
化合物A:2−O−β−アピオフラノシル−6−(4’−カルボキシ−3’−ヒドロキシ−3’−メチルブタノイル)−1−β−(4’’−ヒドロキシフェニル)エチルグルコピラノシド
IR λmax 3370, 1720, 1510, 1080 cm-1; 1H NMR (500 MHz, DMSO-d6) δ1.34, 2.57, 2.62, 2.66, 2.70, 2.81, 3.29, 3.36, 3.42, 3.46, 3.57, 3.60, 3.65, 3.68, 3.91, 3.93, 3.96, 4.18, 4.34, 4.42, 5.36, 6.69, 6.69, 7.05, 7.05; 13C NMR (125 MHz, DMSO-d6) δ27.8, 36.5, 46.0, 46.5, 64.6, 66.2, 70.7, 71.7, 72.0, 75.1, 75.4, 78.0, 78.4, 78.6, 80.7, 103.3, 110.5, 116.2, 116.2, 130.8, 130.9, 130.9, 156.8, 172.5, 175.2; HRFABMS m/z 577.2122 [M+H]+ (C25H37O15, Δ-1.0 mmu).
【0039】
【化2】

【0040】
(実施例2)THP−1細胞を用いた抗炎症活性の評価方法
ヒト単球系株化細胞THP−1(大日本製薬株式会社)を情報に従って培養し、対数増殖期にある細胞を使用した。すなわち、THP−1細胞を1.0×10細胞/ウェルの濃度になるようにRPMI−1640培地(5%ウシ胎児血清添加)に懸濁して調製し、96ウェルプレートに225μLずつ加え、24時間予備培養した。これに最終濃度が100ng/mLになるように基本培地で希釈したリポポリ多糖体(LPS)を25μL添加した。これに、0.3%DMSO/PBS溶液に落花生胚芽抽出物、分画物又は単離成分を種々の濃度で溶解した溶液を添加し、5%CO存在下のインキュベータ内、37℃の条件下で48時間培養した。
【0041】
培養終了後に、96ウェルプレートから細胞を含む培養液上清をエッペンチューブに回収し、遠心して上清を回収した。これらの上清については、培養液上清中の炎症性サイトカイン、腫瘍壊死因子α(TNF−α)及びインターロイキン6(IL−6)濃度を測定するまで−80℃で保存した。
【0042】
培養液中に含まれるTNF−α及びIL−6は、Biosource社製のELISA kit(Cytoscreen)により、操作マニュアルに従って測定した。培養は1サンプルあたり4ウェルで実施し、これらの平均値(pg/mL)±標準偏差で表示した。データの統計学的有意差は、分散分析法を用い、等分散であれば、母集団のデータを対照にDunnett’s法により有意差を比較し、5%未満の危険率をもって比較集団に統計学的有意差があると判定した。
【0043】
100μg/mLの濃度で細胞に作用させた予備試験において、落花生胚芽熱水抽出物は、LPS刺激48時間後にコントロール群(試料非添加対照群;以下同様)と比較して有意にTNF−αの産生を増加させ、水溶出画分(1a)及び20%メタノール水溶液溶出画分(1b)は、LPS刺激48時間後にコントロール群と比較して有意にIL−6の産生を増加させた。一方、60%メタノール水溶液溶出画分(1c)及びメタノール溶出画分(1d)は、LPS刺激48時間後にコントロール群と比較して、TNF−αの産生の抑制傾向を示した。
【0044】
100μg/mLの濃度で行った予備試験において、サイトカイン産生量の変化の大きかった48時間を培養時間と決定し、サンプル濃度を変えて、同様の試験を行った。結果を図2に示す。60%メタノール水溶液溶出画分(1c)は10μg/mLの濃度でコントロール群と比較して有意にTNF−αの産生を抑制し(p<0.05)、メタノール溶出画分(1d)は100μg/mLの濃度でコントロール群と比較して有意にTNF−αの産生を抑制した(p<0.01)。
【0045】
化合物Aは0.5及び5μg/mLの濃度においてTNF−αの産生を有意に抑制する(p<0.01)とともに、IL−6の産生を穏やかに抑制する作用を示し、当該物質が落花生胚芽の抗炎症性成分の一つであることが明らかとなった(図2の四角抜き)。
【符号の説明】
【0046】
エキス 落花生胚芽熱水抽出物
1a 水溶出画分
1b 20%メタノール水溶液溶出画分
1c 60%メタノール水溶液溶出画分
1d メタノール溶出画分
A 化合物A

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次式(I):
【化1】

で示される化合物又はその塩。
【請求項2】
請求項1記載の化合物又はその塩を含有する抗炎症剤。
【請求項3】
請求項1記載の化合物又はその塩を含有する炎症性サイトカイン産生抑制剤。
【請求項4】
落花生胚芽の抽出物を吸着クロマトグラフィーに負荷し、カラムを通過した画分及び水で溶出した画分を除去し、次いで40〜100%低級アルコールで溶出した画分又はその精製物を含有する抗炎症剤。
【請求項5】
落花生胚芽の抽出物を吸着クロマトグラフィーに負荷し、カラムを通過した画分及び水で溶出した画分を除去し、次いで40〜100%低級アルコールで溶出した画分又はその精製物を含有する炎症性サイトカイン産生抑制剤。
【請求項6】
落花生胚芽の抽出物から請求項1記載の化合物を単離することを含む請求項1記載の化合物の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−213687(P2011−213687A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−85135(P2010−85135)
【出願日】平成22年4月1日(2010.4.1)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り ポスター発表 研究集会名:日本生薬学会第56回年会 主催者名:日本生薬学会 開催日:平成21年10月3日〜4日(公開日:平成21年10月4日) 講演番号:2P−15 公開タイトル:落花生胚芽に含まれる単球系サイトカイン産生調節物質の探索
【出願人】(596049762)ソントン食品工業株式会社 (3)
【Fターム(参考)】