説明

落雪防止金具、及び、太陽電池モジュールの固定構造

【課題】落雪を防止可能、且つ、太陽電池モジュールの撓みを防止可能な太陽電池モジュールの落雪防止金具及び太陽電池モジュールの固定構造を提供すること。
【解決手段】屋根上に沿って固定されたレール5に、固定部材3を介して複数固定された、方形の枠体210内に太陽電池パネル220が支持された平板状の太陽電池モジュール200上に積もった雪の落雪を防止する落雪防止金具4は、枠体210の側面部213に沿って形成され、その両側面に枠体210の側面部213又は化粧カバーと当接する第1部材31と、第1部材31に設けられ、枠体210の下面部211及び上面部212に当接することで、枠体210に固定される第2部材32と、第1部材31の上端部に設けられ、その先端が、枠体210又は太陽電池パネル220よりも突出する突起部41を有する雪止め部33と、を備える構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、住宅の屋根上に設置される太陽電池モジュールに用いられる落雪防止金具、及び、太陽電池モジュールの固定構造に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、住宅の屋根に葺かれる屋根材に太陽電池パネルを枠体で支持した太陽電池モジュールを取り付けて、太陽光により発電を行う方法が知られている。例えば、このような太陽電池モジュールの屋根への固定構造として、建築構造部材に留付けられる固定部材に太陽電池パネルを専用の枠体に嵌めた太陽電池モジュールを取り付ける構造(例えば、特許文献1参照)等が知られている。このような太陽電池モジュールは、例えば、傾斜する住宅の屋根に沿って固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−95281号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した太陽電池固定部材には、次のような問題があった。すなわち、太陽電池モジュールは、屋根に沿って固定されるため、傾斜する太陽電池モジュール上に積雪があると、太陽電池モジュール上に積もった雪が落雪する虞がある。
【0005】
住宅の屋根には落雪を防止するために、予め雪止部材として、雪止め用の金具や瓦が設けられている住宅もある。しかし、太陽電池モジュールは屋根から距離を置いて配置されるため、太陽電池パネルが当該雪止部材よりも屋根から高い位置に配置されることが多い。このような場合、雪止部材の屋根からの高さが太陽電池パネルの表面よりも低い位置にあるため、太陽電池パネル上の雪の落雪を防止することが難しい場合がある。
【0006】
また、隣り合う太陽電池モジュール間に、太陽電池モジュールよりも高い突起を有する部材を設け、雪を止める部材を設ける構成も考えられる。しかし、当該部材を設けるには、太陽電池モジュール間に部材を配置させるための隙間を設ける必要があり、このため、太陽電池モジュール間の隙間が大きくなる、という問題がある。
【0007】
また、落雪を防止すると太陽電池モジュール上に積もった雪の重みにより、太陽電池モジュールが撓む虞がある。この太陽電池モジュールの撓みは、太陽電池パネルが枠体から外れる要因となる。また、太陽電池モジュールの撓み量の増大や、太陽電池パネルが枠体から外れる等により、太陽電池パネルが割れる虞もある。
【0008】
そこで本発明は、落雪を防止可能、且つ、太陽電池モジュールの撓みを防止可能な太陽電池モジュールの落雪防止金具及び太陽電池モジュールの固定構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決し目的を達成するために、本発明の落雪防止金具及び太陽電池モジュールの固定構造は次のように構成されている。
【0010】
本発明の一態様として、屋根上に傾斜して複数固定された、方形の枠体内に太陽電池パネルが支持された平板状の太陽電池モジュール上に積もった雪の落雪防止金具であって、前記枠体の側面に沿って形成され、隣り合う前記太陽電池モジュールの前記枠体の側面、又は、前記枠体の側面及び前記屋根上の下端側に設けられる前記太陽電池モジュールの前記枠体の側面を覆う化粧カバーにその両側面が当接する第1部材と、前記第1部材に設けられ、前記枠体の下面及び上面に当接することで、前記枠体に固定される第2部材と、前記第1部材の上端部に設けられ、その先端が、前記枠体又は前記太陽電池パネルよりも突出する突起部を有する雪止め部と、を備える。
【0011】
本発明の一態様として、方形の枠体内に太陽電池パネルが支持された平板状の太陽電池モジュールを、屋根上に傾斜して複数固定するための固定構造において、前記屋根材上面と平行、且つ、細長状に延設されたベース部、前記ベース部の幅方向両端部に垂直方向に延び、その先端が前記太陽電池モジュールの下面に接する壁面部とを有するレールと、前記ベース部に着脱自在に取り付けられる支持部と、この支持部から前記ベース部に対して垂直方向に突出した突出部と、前記突出部から前記ベース部と平行に延設され、かつ、前記太陽電池モジュールの上面に接する押さえ部と、を具備する固定部材と、前記枠体の側面に沿って形成され、隣り合う前記太陽電池モジュールの前記枠体の側面、又は、前記枠体の側面及び前記屋根上の下端側に設けられる前記太陽電池モジュールの前記枠体の側面を覆う化粧カバーにその両側面が当接する第1部材、前記第1部材に設けられ、前記枠体の下面及び上面に当接することで、前記枠体に固定される第2部材、及び、前記第1部材の上端部に設けられ、その先端が、前記枠体又は前記太陽電池パネルよりも突出する突起部を有する雪止め部を具備する雪止め防止金具と、を備える。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、落雪を防止可能、且つ、太陽電池モジュールの撓みを防止可能な太陽電池モジュールの落雪防止金具及び太陽電池モジュールの固定構造を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施の形態に係る屋根材上に取り付けられる太陽電池モジュールの固定構造を模式的に示す斜視図。
【図2】同固定構造の構成を模式的に示す斜視図。
【図3】同固定構造の要部構成を示す断面図。
【図4】同固定構造の要部構成を示す断面図。
【図5】同固定構造の要部構成を示す斜視図。
【図6】本発明の変形例に係る固定構造の要部構成を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
屋根材100は、板材110を重ね合わせて形成され、屋根下地材(不図示)の上に固定されている。
【0015】
図1は本発明の一実施の形態に係る太陽電池モジュール200の固定構造1の構成、及び、当該固定構造1によって、屋根材100上に取り付けられる太陽電池モジュール200の構成を模式的に示す斜視図、図2は固定構造1に用いられるレール部材2及び固定部材3の構成を模式的に示す斜視図、図3は固定構造1の要部、特に、図2中III−III断面で固定構造1に用いられる固定部材3の構成を示す断面図、図4は固定構造1の要部、特に、図2中IV−IV断面で固定構造1に用いられる落雪防止金具4の構成を示す断面図、図5は落雪防止金具4の構成を示す斜視図である。
【0016】
図1乃至図4に示すように、固定構造1は、レール部材2と、固定部材3と、落雪防止金具4と、を備えている。このような固定構造1は、図1に示すように、屋根材100上に、太陽電池モジュール200を固定する構造である。また、固定構造1の軒先等の最下端に配置される固定部材3には、例えば化粧カバー300が固定される。
【0017】
屋根材100は、例えば、アスファルトシングルが用いられる。屋根材100は、複数種類の板材110を重ね合わせて形成され、屋根下地材の上に固定されている。また、複数種類の板材110と間には段差が形成されるため、必要に応じて固定部材3と屋根材100の上面との間の隙間に介在されるスペーサが積層配置される。
【0018】
図1及び図2に示すように、太陽電池モジュール200は、枠体210と、この枠体210に支持された太陽電池パネル220と、を備えている。太陽電池モジュール200は、その外観が上方視で平板状となる。
【0019】
図1に示すように、枠体210は、方形枠状に形成されている。枠体210は、図2及び図3に示すように、下面部211と、上面部212と、側面部213と、下面部211及び側面部213との稜部に設けられたリブ214と、を備えている。また、枠体210は、リブ214と上面部212との間に形成された、太陽電池パネル220を挿入支持する支持部215を有する。
【0020】
太陽電池パネル220は、マトリックス状に配置された太陽電池セル221と、これら太陽電池セル221をその内部に配置するパネル体222と、を備えている。太陽電池パネル220は、枠体210の支持部215にその四辺が挿入され、支持部215により支持される。
【0021】
化粧カバー300は、固定部材3の内部、例えば後述する支持部11や突出部12の露出を防止可能に、固定部材3を覆う。化粧カバー300は、レール部材2と固定部材3との間に挟持される被挟持部310と、被挟持部310と一体に形成された化粧面320と、を備えている。被挟持部310には、レール部材2の後述するレール5のベース部5a側に延びる係合部330が形成されている。また、被挟持部310は、具体的には、後述するレール部材2のレール5の鍔部5cと、固定部材3の押さえ部13との間(長さL)に挟持される。
【0022】
図1乃至図4に示すように、レール部材2は、レール5と、アース部材6と、取付具7と、を備えている。レール5は、例えば、太陽電池モジュール200を一対のレールにより、その延設方向に複数取付可能に形成されている。
【0023】
レール5は、屋根材100上面と平行であって、細長状に延設されたベース部5aと、ベース部5aの幅方向両端部に第1の長さMだけ垂直方向に延び、その先端が太陽電池モジュール200の下面に接する壁面部5bと、壁面部5bからベース部5aの平行に延設された鍔部5cとを備えている。また、レール5は、その壁面部5bの一部から、その延設方向に延びる長穴5dを有するフランジ部5eを有している。
【0024】
図2乃至図4に示すように、アース部材6は、ベース部5aに対し、支持部11と共にボルトBにより共締めされた平板部6aと、この平板部6aの一部であって、太陽電池モジュール200の下面に当接する当接部6bとを備えている。なお、当接部6bは、化粧カバー300の係合部330に係合することで、化粧カバー300の脱落を防止する機能を有している。
【0025】
図2に示すように、取付具7は、レール5を屋根材100に取り付け可能に形成されている。取付具7は、平板状の防水シート7aと、この防水シート7aの上に設けられたスレート金具7bと、このスレート金具7bに設けられたボルト7cとを備えている。ボルト7cは、フランジ部5eの長穴5dに挿通され、ナットN、ワッシャWにより締結することが可能に形成されている。
【0026】
即ち、取付具7は、ボルト7cとナットNとの締結により、スレート金具7bとナットNとの間にフランジ部5eを固定することで、レール5を屋根材100上に固定可能に形成されている。なお、スレート金具7bの高さ調整を行うスペーサTを適宜用いる。
【0027】
図1乃至図3に示すように、固定部材3は、レール部材2に太陽電池モジュール200を固定可能、且つ、太陽電池モジュール200を連結可能に形成されている。固定部材3は、レール5のベース部5aにボルトB及びナットNにより着脱自在に取り付けられる支持部11と、この支持部11からベース部5aに対して垂直方向に第1の長さMより長い第2の長さPだけ突出した突出部12と、この突出部12からベース部5aと平行に延設され、かつ、太陽電池モジュール200の上面に接する押さえ部13とを備えている。
【0028】
また、固定部材3は、これら支持部11,突出部12,押さえ部13が金属材料で一体に形成され、アース部材6と当接することで、アースをとる機能を有している。
【0029】
押さえ部13は、枠体210の上面部212に接し、レール5の延設方向に対して平行に形成されている。押さえ部13は、突出部12の両側面に突出し、突出部12を挟んで2枚の太陽電池モジュール200をレール5に向かって押さえる。
【0030】
図1、図4及び図5に示すように、落雪防止金具4は、太陽電池モジュール200の下端側に位置する側面に配置される。また、落雪防止金具4は、隣り合う太陽電池モジュール200間、及び、太陽電池モジュール200及び化粧カバー300間に設けられる。
【0031】
即ち、落雪防止金具4は、固定部材3により屋根材100上に配置された太陽電池モジュール200間、又は、太陽電池モジュール200及び化粧カバー300間に発生する隙間であって、同一の太陽電池モジュール200に配置された隣り合う固定部材3間に配置される。
【0032】
図1、図4及び図5に示すように、落雪防止金具4は、枠体210の側面部213に沿って延設された板状の第1部材31と、第1部材31に設けられた枠体210と嵌合する第2部材32と、第2部材32の上面に設けられた第3部材33と、を備えている。
【0033】
落雪防止金具4は、第1部材31、第2部材32及び第3部材33が、金属材料により一体に形成されている。また、落雪防止金具4は、第1部材31及び第2部材32により、その断面形状が枠体210の下面、上面及び側面の一部を覆うコの字状に形成されている。
【0034】
第1部材31は、枠体210の側面及び固定部材3の突出部12に平行に形成され、且つ、突出部12と略同一の厚さに形成される。第1部材31は、その両側面が隣り合う枠体210の側面部213、又は、隣り合う側面部213及び化粧カバー300の被挟持部材310に当接する。第1部材31は、その側面の高さが側面部213の高さと略同一に形成されている。
【0035】
第1部材31は、その幅(枠体210に沿った長さ)が同一の太陽電池モジュール200を固定する隣り合う固定部材3の間隔よりも短く形成されている。例えば、第1部材31は、その幅が、当該隣り合う固定部材3の間に複数配置可能な幅に形成されている。
【0036】
第2部材32は、第1部材31の両端側であって、第1部材31の一方の主面側に、固定部材3の挟持部13と平行に突出する、下面部211及び上面部212とそれぞれ当接する一対の嵌合部である。第2部材32は、枠体210に嵌合することで、枠体210を挟持し、且つ、落雪防止金具4が枠体210からの脱離することを防止可能に形成される。
【0037】
具体的には、第2部材32は、下面部211と当接する第1嵌合部35と、上面部212と当接する第2嵌合部36と、を備えている。第2部材32は、第1嵌合部35及び第2嵌合部36の間隔が下面部211の下面及び上面部212の上面間の高さと同じ長さに形成されている。第2部材32は、第1嵌合部35及び第2嵌合部36が下面部211及び上面部212と当接し、干渉することで、枠体210に嵌合される。
【0038】
第1嵌合部35は、下面部211の下面と対向するとともに、その先端に下面部211の端部に係合する係止部37を有している。係止部37は、枠体210から落雪防止金具4が抜ける方向の移動を規制する突起であり、その突起した内面と下面部211の先端とが当接する。
【0039】
第2嵌合部36は、上面部212を覆うとともに、上面部212と当接する面に、第1部材31の幅方向に延設された凸部38を有している。凸部38は、枠体210から落雪防止金具4が抜ける方向の移動の際に、上面部212の上面と干渉することで、抵抗となればよい。
【0040】
このような凸部38は、例えば、当該抜ける方向と直交する方向に延設された半円柱状に形成された突起であり、複数、例えば本実施形態においては2つ設けられている。
【0041】
第3部材33は、積雪の落雪を防止する雪止め部である。第3部材33は、第2部材32の上端部に設けられ、上面部212と対向する第2嵌合部36の上面よりも突出する突起部41と、突起部41の下端部に設けられた受部42と、を備えている。また、第3部材33は、突起部41及び受部42の稜部に、突起部41及び受部42を連続する隅肉43を有する。
【0042】
受部42は、突起部41の下端部から第1部材31を挟んで第2部材32とは相対する方向に延出する突起である。受部42は、対向する太陽電池モジュール200の枠体210の上面部212と離間して配置される。受部42は、積雪が落雪する方向に移動し、当該移動する積雪により突起部41が押圧され、当該突起部41が突起部41及び第2部材32の接続部を支点に回転方向に変形(回動)した場合に、回動可能に形成されている。受部42は、その下面が上面部212と離間して配置され、突起部41が雪により変形した場合にその回動により上面部212と当接する。
【0043】
第3部材33は、隅肉43を有することで、突起部41の受部42側への変形に対する強度が向上するとともに、突起部41の回動に伴い、受部42も回動可能に形成されている。
【0044】
次に、このように構成された落雪防止金具4を有する固定構造1を用いた、屋根材100上への太陽電池モジュール200の取り付けを説明する。先ず、レール5に固定部材3及びアース部材6を、ボルトB及びナットNを用いて取り付ける。
【0045】
このとき、固定部材3のレール5への取り付け位置は、各太陽電池モジュール200の下端面が位置する部位となる。また、レール部材2への固定部材3の取付において、図3及び図4に示すように、レール5及びアース部材6は、当接部6bがレール5の先端との間に隙間Sができるように配置する。
【0046】
次に、図1に示すように、レール5を屋根材100の上方から下方に沿って取付具7を用いて設置する。この際、レール5は太陽電池モジュール200の1枚の幅に対し2本用いる。なお、作業者は、レール5の間の屋根材100上を足場として、作業を進めることができる。
【0047】
次に、化粧カバー300の被挟持部310を、レール5の鍔部5cの上面(側面部5b)と、レール5の下端側に設けられた固定部材3の押さえ部13の下面との間に嵌め込む。この時、係合部330が隙間Sに入り込んで、当接部6bと係合する。
【0048】
次に、太陽電池モジュール200の枠体210に第2部材32を嵌合させる。なお、このとき、落雪防止金具4は、レール5に配置された際に、下方側に位置する枠体210の側面部213であって、太陽電池モジュール200が固定される固定部材3の間に対応する位置に2つ設けられる。
【0049】
次に、作業者は、化粧カバー300の位置を下側にして足場を確保し、落雪防止金具4が設けられた太陽電池モジュール200を鍔部5c上面とレール5の下端側にそれぞれ設けられた2つの固定部材3の押さえ部13の下面との間に嵌め込む。この時、太陽電池モジュール200は下端部を支持されるため、仮止めしなくても、安定して支持される。さらに、太陽電池モジュール200の下面には当接部6bが当接することで、アースが確保される。
【0050】
次に、上側に位置する太陽電池モジュール200を嵌め込む(図3中右側の太陽電池モジュール200)。同様にして、太陽電池モジュール200を嵌め込んで上端まで設置を行う。
【0051】
このため、作業者は下側から上側にかけて順次太陽電池モジュール200を嵌め込むだけで良いので、足場を確保することができ、容易に施工を行うことができる。
【0052】
このように構成された太陽電池モジュール200の固定構造1によれば、太陽電池モジュール200の下端側に落雪防止金具4を有することで、太陽電池モジュール200上に積もった雪が移動しても突起部41で受け止めることで、落雪を防止することが可能となる。また、落雪防止金具4は、受部42により雪の重みによる突起部41の破損を防止し、落雪防止を確実とし、高い信頼性を有する。
【0053】
具体的に説明すると、太陽電池モジュール200の上面に一定量の積雪があると、当該積雪は、その重みにより太陽電池モジュール200の傾斜方向に移動することとなる。しかし、当該移動した積雪は、第3部材33の突起部41と干渉すると、突起部41により移動が規制され移動が停止する。この結果、落雪が防止される。
【0054】
落雪が防止された状態での降雪等により太陽電池モジュール200上の積雪量が多くなると、突起部41が積雪により押圧される方向に力が加わり、突起部41及び第2部材32(第2嵌合部36)の接続部を支点に突起部41が回動するように変形する。このとき、当該変形による突起部41の回動に伴って、受部42も回動する。
【0055】
この回動により、受部42は、枠体210の上面部212に当接し、当該当接後の受部42及び突起部41の回動を規制することとなる。受部42が上面部212に当接することで、突起部41の過度な変形を防止するとともに、受部42により突起部41に加わる荷重を分散させることとなる。
【0056】
また、隅肉43により、突起部41の強度は向上されるため、突起部41の変形量を低減することが可能となる。これらのように、隅肉43により突起部41の強度を向上させ、且つ、受部42により、突起部41に加わる荷重を分散させることで、突起部41の塑性変形や破損を防止することが可能となる。
【0057】
また、落雪防止金具4は、積雪による太陽電池モジュール200の変形を防止し、太陽電池パネル220の破損を防止することが可能となる。即ち、太陽電池モジュール200上に積雪があると、当該積雪の重みにより、枠体210及び太陽電池パネル220は、太陽電池モジュール200を支持固定する固定部材3から離間するにつれて撓むこととなる。
【0058】
換言すると、積雪の重みにより、太陽電池モジュール200は、固定部材3間の中心に向かって撓むこととなる。太陽電池モジュール200の撓み量が一定に達すると、太陽電池パネル220が枠体210から外れる虞がある。太陽電池パネル220が外れると、その衝撃、又は、枠体210から外れた後の積雪による荷重によって、太陽電池パネル220が割れる虞がある。
【0059】
しかし、落雪防止金具4は、枠体210に嵌合され、第1部材31及び第2部材32が枠体210の下面部211の下面、上面部212の上面及び側面部213の側面と当接する構成である。この落雪防止金具4が枠体210と嵌合し、当接することで、枠体210の剛性を向上させ、枠体210の積雪による変形を防止することが可能となる。落雪防止金具4は、枠体210の変形を防止することで、太陽電池パネル220が枠体210から外れることを防止するとともに、積雪による太陽電池パネル220の破損を防止することが可能となる。
【0060】
また、落雪防止金具4は、固定部材3間に任意の数設けることが可能となり、自由度が高い設置が可能となる。例えば、冬季の日当たりが悪い部位であって、雪解けが期待できない部位には、より落雪を防止するために他よりも多く設けることも可能である。また、例えば、豪雪地帯等の設置する地域によって、設ける数を増減させてもよい。
【0061】
落雪防止金具4は、枠体210に嵌合させるだけでよく、既に設置されている太陽電池モジュール200に後付することも可能であり、また、必要に応じて増設することも可能である。
【0062】
また、落雪防止金具4は、固定部材3の突出部12と同一幅とすることで、別途、太陽電池モジュール200に取り付けるためのスペースを設けることなく、固定部材3により太陽電池モジュール200を固定した際に発生する隙間に設けることが可能となる。
【0063】
落雪防止金具4は、枠体210に嵌合させるだけで、第1部材31の一の側面(下方側に位置する側面)と、太陽電池モジュール200又は化粧カバーと当接し、且つ、係止部37及び凸部38が枠体210の下面部211及び上面部212と干渉する。この当接及び干渉により、落雪防止金具4は、枠体210から落雪防止金具4が抜ける方向の移動が規制され、雪の重みにより枠体210から外れることがない。
【0064】
また、落雪防止金具4は、抜ける方向の移動が規制されているだけで、枠体210に沿って移動する方向には規制されていない。このため、落雪防止金具4は、枠体210への嵌合後であっても、枠体210に沿ってスライド可能であるため、位置の調整が容易である。このように、落雪防止金具4は、設置作業性がよく、高い作業性を有することから、作業コストを低減することが可能となる。
【0065】
さらに、下方に位置する落雪防止金具4は、化粧カバー300と隣り合って配置され、その第1部材31が化粧カバー300の被挟持部材310と当接し、その受部42が化粧カバー300の上面と近接して対向する。このため、化粧カバー300が、風雨や外力等により固定部材3から脱離しようと回動や移動しても、第1部材31及び受部42と干渉する。このように、落雪防止金具4は、化粧カバー300と干渉することで、化粧カバー300が固定部材3から脱離することを防止することが可能となる。
【0066】
上述したように、本実施の形態に係る落雪防止金具4を用いた太陽電池モジュール200の固定構造1によれば、落雪防止金具4の突起部41により落雪を防止可能、且つ、落雪防止金具4により枠体210の剛性を向上させ、太陽電池モジュールの撓みを防止可能となる。
【0067】
なお、本発明は前記実施の形態に限定されるものではない。例えば、上述した例では、屋根材100としてアスファルトシングルを用いたが、これに限定されない。例えば、屋根材100は、瓦、ストレート、金属板金等の屋根材であってもよい。また、例えば、屋根材100を、平坦な屋根面を有する屋根材を用いれば、スペーサが不要となり、さらに設置が容易となる。
【0068】
また、上述した例では、落雪防止金具4は、固定部材3間に複数配置可能な長さに形成されている構成を説明したが、これに限定されない。例えば、固定部材3間の幅よりも若干短い長さとし、固定部材3間に一つだけ設ける構成であってもよい。但し、このような構成とした場合には、枠体210の剛性をさらに向上することはできるが、落雪防止金具の設置の自由度が低くなる虞があるため、自由度を向上させる場合には、複数配置可能な長さの落雪防止金具4であることが望ましい。
【0069】
また、上述した例では、落雪防止金具4は、第1部材31の高さ(第1嵌合部35及び第2嵌合部36の間隔)を、枠体210の側面部213の高さと同一に形成されているとしたが、第2部材32を、枠体210に嵌合可能であれば、これに限定されない。以下、本発明の変形例に係る固定構造1の落雪防止金具4Aについて、図6を用いて説明する。
【0070】
図6は、本発明の変形例に係る固定構造1の落雪防止金具4Aの構成を図2中IV−IV断面で示す断面図である。なお、本変形例に係る落雪防止金具4Aのうち、上述した第一実施形態に係る落雪防止金具4と同様の構成には同一符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0071】
落雪防止金具4Aは、枠体210の側面部213に沿って延設される第1部材31Aと、第1部材31Aに設けられた第2部材32と、第3部材33と、を備えている。落雪防止金具4は、第1部材31A及び第2部材32により、その断面形状が枠体210の下面、上面及び側面の一部を覆うコの字状に形成されている。
【0072】
第1部材31Aは、その厚さ方向の略中央で2つに分割され、積層することで固定部材3の突出部12と略同一の厚さに形成される。また、第1部材31Aは、当該積層位置により、その長さ、即ち、第1嵌合部35及び第2嵌合部36の間隔を調整可能に形成されている。
【0073】
具体的には、図6に示すように、第1部材31Aは、積層することで突出部12と同一厚さに形成される対の第1積層部51及び第2積層部52を備えている。第1積層部51及び第2積層部52は、互いに対向する面に、第1部材31Aの高さを調整するとともに、第1部材31Aの高さ方向の第1積層部51及び第2積層部52の移動を規制する調整部53をそれぞれ備えている。
【0074】
なお、図6においては、調整部53,53は、互いに噛合う歯であるが、例えば、調整部は、孔部とボルト等の締結部材であってもよい。即ち、調整部53は、第1部材31Aの高さ調整が可能であって、第1積層部51及び第2積層部52の高さ方向への移動を規制可能であればよい。
【0075】
第1積層部51は、その一方の端部に、第2部材32の第1嵌合部35が一体に設けられている。第2積層部52は、その一方の端部に、第2嵌合部36及び第3部材33が一体に設けられている。
【0076】
このよう構成された落雪防止金具4Aによれば、上述した落雪防止金具4Aと同様の効果を有するとともに、第1部材31Aの高さが調整可能となる。即ち、落雪防止金具4Aは、第1積層部51及び第2積層部52の位置を変えることで、第1嵌合部35および第2嵌合部36の間隔を調整可能となる。このため、枠体210の高さに併せて第2部材32が嵌合できるように、第1部材31Aの高さを調整すればよく、このため、異なる高さの枠体210に用いることが可能となり、管理が容易となる。この他、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変形実施可能である。
【符号の説明】
【0077】
1…固定構造、2…レール部材、3…固定部材、4…落雪防止金具、4A…落雪防止金具、5…レール、5c…鍔部、5a…ベース部、5b…壁面部、5d…長穴、5e…フランジ部、6…アース部材、6a…平板部、6b…当接部、7…取付具、7a…防水シート、7b…スレート金具、7c…ボルト、11…支持部、12…突出部、13…挟持部、31…第1部材、31A…第1部材、32…第2部材、33…第3部材(雪止め部)、35…第1嵌合部、36…第2嵌合部、37…係止部、38…凸部、41…突起部、42…受部、43…隅肉、51…第1積層部、52…第2積層部、53…調整部、100…屋根材、110…板材、200…太陽電池モジュール、210…枠体、211…下面部、212…上面部、 213…側面部、214…リブ、215…支持部、220…太陽電池パネル、221…太陽電池セル、222…パネル体、300…化粧カバー、310…被挟持部、320…化粧面、330…係合部、B…ボルト、N…ナット、S…隙間、T…スペーサ、W…ワッシャ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
屋根上に傾斜して複数固定された、方形の枠体内に太陽電池パネルが支持された平板状の太陽電池モジュール上に積もった雪の落雪防止金具であって、
前記枠体の側面に沿って形成され、隣り合う前記太陽電池モジュールの前記枠体の側面、又は、前記枠体の側面及び前記屋根上の下端側に設けられる前記太陽電池モジュールの前記枠体の側面を覆う化粧カバーにその両側面が当接する第1部材と、
前記第1部材に設けられ、前記枠体の下面及び上面に当接することで、前記枠体に固定される第2部材と、
前記第1部材の上端部に設けられ、その先端が、前記枠体又は前記太陽電池パネルよりも突出する突起部を有する雪止め部と、を備えることを特徴とする落雪防止金具。
【請求項2】
前記雪止め部は、前記突出部の下端部から前記第1部材を挟んで前記第2部材とは相対する方向に延出し、前記突起部に前記積もった雪により荷重が印加された場合に、前記突出部の変形に伴って移動して、前記第1部材の下方側に設けられた前記太陽電池モジュール又は前記化粧カバーと当接する受部をさらに有することを特徴とする請求項1に記載の落雪防止金具。
【請求項3】
前記第2部材は、前記第1部材の下端部に前記枠体の下面に沿って突出する第1嵌合部と、前記第1部材の上端部に前記枠体の上面に沿って突出する第2嵌合部とを具備し、前記第1嵌合部及び前記第2嵌合部の間隔が前記枠体の高さと同一に形成されることで、前記枠体に嵌合されることを特徴とする請求項1に記載の落雪防止金具。
【請求項4】
前記第1嵌合部及び前記第2嵌合部は、その間隔が可変可能に形成されていることを特徴とする請求項3に記載の落雪防止金具。
【請求項5】
方形の枠体内に太陽電池パネルが支持された平板状の太陽電池モジュールを、屋根上に傾斜して複数固定するための固定構造において、
前記屋根材上面と平行、且つ、細長状に延設されたベース部、前記ベース部の幅方向両端部に垂直方向に延び、その先端が前記太陽電池モジュールの下面に接する壁面部とを有するレールと、
前記ベース部に着脱自在に取り付けられる支持部と、この支持部から前記ベース部に対して垂直方向に突出した突出部と、前記突出部から前記ベース部と平行に延設され、かつ、前記太陽電池モジュールの上面に接する押さえ部とを具備する固定部材と、
前記枠体の側面に沿って形成され、隣り合う前記太陽電池モジュールの前記枠体の側面、又は、前記枠体の側面及び前記屋根上の下端側に設けられる前記太陽電池モジュールの前記枠体の側面を覆う化粧カバーにその両側面が当接する第1部材、前記第1部材に設けられ、前記枠体の下面及び上面に当接することで、前記枠体に固定される第2部材、及び、前記第1部材の上端部に設けられ、その先端が、前記枠体又は前記太陽電池パネルよりも突出する突起部を有する雪止め部を具備する雪止め防止金具と、
を備えることを特徴とする太陽電池モジュールの固定構造。
【請求項6】
前記雪止め部は、前記突出部の下端部から前記第1部材を挟んで前記第2部材とは相対する方向に延出し、前記突起部に前記積もった雪により荷重が印加された場合に、前記突出部の変形に伴って移動して、前記第1部材の下方側に設けられた前記太陽電池モジュール又は前記化粧カバーと当接する受部をさらに有することを特徴とする請求項5に記載の太陽電池モジュールの固定構造。
【請求項7】
前記第2部材は、前記第1部材の下端部に前記枠体の下面に沿って突出する第1嵌合部と、前記第1部材の上端部に前記枠体の上面に沿って突出する第2嵌合部とを具備し、前記第1嵌合部及び前記第2嵌合部の間隔が前記枠体の高さと同一に形成されることで、前記枠体に嵌合されることを特徴とする請求項5に記載の太陽電池モジュールの固定構造。
【請求項8】
前記第1嵌合部及び前記第2嵌合部は、その間隔が調整可能に形成されていることを特徴とする請求項7に記載の太陽電池モジュールの固定構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−229550(P2012−229550A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−98058(P2011−98058)
【出願日】平成23年4月26日(2011.4.26)
【出願人】(591135794)高島株式会社 (11)
【Fターム(参考)】