説明

葉に施用可能なケイ素栄養組成物および方法

葉面に施用可能な植物栄養素組成物は、(a)葉面吸収性ケイ素の農学的に許容される供給源を含む第一の成分と、(b)チオ硫酸イオンの農学的に許容される供給源、ケイ酸またはケイ酸イオンの重合を抑制するために効果的な薬剤、およびそれらの混合物から選択される第二の成分と、(c)第三の成分として、有機酸、無機陰イオンと可逆的に結合するかまたは無機イオンを錯化する能力のある官能基を有する有機化合物、およびそれらの混合物からなる群から選択される化合物の農学的に許容される混合物とを水溶液中に含む。この組成物は、植物のケイ素栄養摂取に、かつ、植物の真菌もしくは細菌性病害への感受性を低下させるために有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本願は、2008年7月11日出願の米国特許仮出願第61/080,019号の利益を主張し、その開示は引用することにより本明細書の一部をなすものとする。
【0002】
[発明の分野]
本発明は、葉面に施用可能な植物ケイ素栄養素組成物、植物のケイ素栄養摂取のための方法、および、植物の真菌もしくは細菌性病害への感受性を低下させるための方法に関する。
【背景技術】
【0003】
ケイ素は、植物において病害抵抗性を向上させることを含む、有用な機能を行う非必須植物栄養素として記載されている。例えば、Forbes&Watson(1992)Plant in Agriculture,Cambridge University Press,p.62を参照されたい。
【0004】
理論に縛られるものではないが、改良された病害抵抗性は、植物の表皮組織中のシリカの蓄積、および/または植物組織中での移動形態のケイ素の利用能に関連している可能性があると考えられる。植物の根は、時にはSiO2・2HOと記載されるモノケイ酸(monosilicic acid)、Si(OH)、またはその一価のケイ酸陰イオン、Si(OH)の形態で、土壌からケイ素を吸収するとして記載されている。吸収されたモノケイ酸は、重合してポリケイ酸を形成し、ポリケイ酸は、細胞壁において非晶質シリカの堆積物に変換され、肥厚したケイ素−セルロース膜を形成すると考えられる。Barker&Pilbeam(2006)Handbook of Plant Nutrition,CRC Press,Boca Raton,FL,pp.553−554を参照されたい。
【0005】
Mitani et al(2005)Plant Cell Physiol.46:279−283は、少なくともイネにおいて、ケイ素は根から吸収されるだけでなく、解離していないモノケイ酸の形態で木部を経てシュートに輸送されることが報告されている。この文献では、木部のモノケイ酸の濃度は、少なくとも一時的に、一般に許容されるその水中溶解度の限度(約2mM)よりもはるかに多い可能性があることを述べている。
【0006】
ケイ素が葉の表面を通じて吸収される形態は、明確に分からない。しかし、理論に縛られるものはないが、非重合形態のケイ酸またはケイ酸イオンだけが、葉表面を通って植物中に入ることができ、堆積地点に移動させることができると考えられる。さらに、ケイ素を含有する葉肥料を提供する際、水希釈用の水性濃縮物であるか、すぐに使える施用溶液であるかを問わず、ケイ素は水溶性形態であるべきであり、一般に高重合度のケイ酸またはケイ酸塩は除外される。ケイ素源の選択の唯一の制限は、水溶性であって水性ケイ素葉栄養組成物での使用に適していることである。
【0007】
Masudaに対する米国特許第5,183,477号は、ケイ素源としてアルカリ金属ケイ酸塩、例えばケイ酸ナトリウムまたはケイ酸カリウムを含有する、葉面に散布可能な組成物に関する。可能性のあるケイ素源には、NaSiO、NaSiO、NaSi、NaSi、KSiO、KHSiおよびKSi2・Oが含まれるといわれている。この組成物は、植物の葉の上に噴霧されると、植物を病害から保護するものとみなされている。
【0008】
Floratine,Collierville,TN製のTurgor(登録商標)ケイ素系栄養素は、ケイ酸カリウムおよびカリウムチオ硫酸塩を含む組成物であり、www.floridaturfsupport.com/floratine/Turgor.pdfに、芝への葉または土壌用途に適し、細胞構造および組織の強化、葉直立性(膨張(turgidity))、草刈(mowing cut)の改善、病害抵抗性、磨耗耐性、耐塩性、有毒金属緩衝作用、および光合成活性の増加を提供すると記載されている。最初の葉面散布量は12〜18 l/ha、それに続いて7〜21日ごとに5〜13 l/haで継続散布することが推奨され、40米国ガロン/エーカー(約340 l/ha)以下の散布量に希釈される。
【0009】
有機化合物の様々な混合物が、当技術分野で肥料添加剤として提案されている。具体的には、フミン酸組成物、Bio−Liquid Complex(商標)は、Bio Ag Technologies International(1999)www.phelpstek.com/portfolio/humic_acid.pdfにより、微量栄養素、より具体的には陽イオンの栄養素を、土壌から植物へ移動させる助けとなると記載されている。
【0010】
American Agritech製のTriFlex(商標)Bloom Formula栄養素組成物は、「リン酸、リン酸カリウム、硫酸マグネシウム、硫酸カリウム、ケイ酸カリウム[および]ケイ酸ナトリウム」を含有するとして記載されている。American Agritech製のTriFlex(商標)Grow Formula2−4−1栄養素組成物は、「硝酸カリウム、硝酸マグネシウム、硝酸アンモニウム、リン酸カリウム、硫酸カリウム、硫酸マグネシウム、ケイ酸カリウム[および]ケイ酸ナトリウム」を含有するとして記載されている。両方の組成物は、「選択されたビタミン、植物学的組織培養材料、必須アミノ酸、海草、フミン酸、フルボ酸および炭水化物を添加して栄養価を高めている」ものとみなされている。www.horticulturesource.com/product_info.php/products_id/82を参照されたい。これらの製品は、果物および花き作物の「土壌を用いないハイドロガーデニング(soilless hydrogardening)」(すなわち水耕栽培)のために処方されているものとみなされているが、コンテナの土壌の庭(container soil gardens)において従来の化学肥料よりも優れているものとみなされている。水耕のまたは土壌の生育培地への施用とは対照的に、葉面散布に関するそれらの適合性またはそれ以外の内容は、言及されていない。www.americanagritech.com/product/prduct_detail.asp?ID=1&pro_id_pk=40を参照されたい。
【0011】
Jones&Gatesに対する米国特許第5,250,500号には、葉面散布除草剤およびスプレー補助剤としてピロリン酸四カリウム(TKPP)を含む除草スプレー組成物が記載されている。
【0012】
特に、ケイ素の水溶性形態の範囲が限定されていること、水溶性形態でさえも重合して葉の吸収を利用できなくなる傾向、および植物内でのケイ素の輸送効率の悪さを考えると、植物、特に果物および野菜作物などの食用作物のケイ素栄養摂取にさらなる選択肢があることが望ましい。そのようなさらなる選択肢を、病害抵抗性を増大させる方法で植物の葉に投与することができれば、特に有益である。
【発明の概要】
【0013】
ここに、水溶液中に、
(a)葉面吸収性の(foliarly absorbable)ケイ素の農学的に許容される供給源を含む第一の成分と、
(b)チオ硫酸イオンの農学的に許容される供給源、ケイ酸またはケイ酸イオンの重合を抑制するために効果的な薬剤、およびそれらの混合物から選択される第二の成分;ならびに
(c)第三の成分として、有機酸、無機陰イオンと可逆的に結合するかまたは無機イオンを錯化する能力のある官能基を有する有機化合物、およびそれらの混合物からなる群から選択される化合物の農学的に許容される混合物
を含む、葉面に施用可能な植物栄養素組成物が提供される。
【0014】
そのような組成物を植物の葉の表面に施用することを含む、植物のケイ素栄養摂取のための方法がさらに提供される。
【0015】
そのような組成物を植物の葉の表面に施用することを含む、植物の真菌もしくは細菌性病害への感受性を低下させるための方法がなおさらに提供される。
【0016】
上記の方法のいずれかによれば、植物は、一実施形態では、食用作物、例えば果物または野菜作物などの非イネ科食用作物である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】実施例1に記載されるように、組成物A〜Eを葉面噴霧した後の、イネの葉組織中のSi含有量のヒストグラムである。
【図2】実施例2に記載されるように、組成物A〜Eを1回葉面噴霧した後の、イネの葉組織中のSi含有量のヒストグラムである。
【図3】実施例2に記載されるように、組成物A〜Eを2回葉面噴霧した後の、イネの葉組織中のSi含有量のヒストグラムである。
【図4】実施例3に記載されるように、組成物A〜Eを葉面噴霧した後の、イネの葉組織中のSi含有量のヒストグラムである。
【図5】実施例3に記載されるように、イネごま葉枯病菌(Bipolaris oryzae)の接種および組成物A〜Fを葉面噴霧した後の、AUBSPC(褐点病進行曲線下面積)のヒストグラムである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
上に概説したように、本発明は、一部分において、少なくとも3つの成分を含む植物栄養素組成物に関する。本発明の組成物は、意図される施用方法、組成物が施用される植物種、植物の生育条件およびその他の要因に応じて変動する。
【0019】
本発明の組成物は、水溶液の形態をとる。列挙される3つの成分の各々は、水性媒体中の溶液中に存在する。所望により少量の不溶性物質が(例えば培地中の懸濁物質中に)存在してもよいが、そのような不溶性物質の存在を最小限に抑えることが一般に好ましい。
【0020】
本明細書において物質に適用される用語「農学的に許容される」とは、植物またはその環境に許容されないほど損害を与えるかまたは有毒ではなく、本明細書に記載されるように使用した場合に当該物質に曝露される可能性のある使用者または他者に対して危険でないことを意味する。
【0021】
列挙される3つの成分の最初の1つは、葉面吸収性ケイ素の供給源である。そのような供給源には、少なくとも最適条件下で、植物がその葉の表面から吸収することのできる形態のケイ素を提供することのできる、あらゆる化合物または化合物の混合物が含まれる。
【0022】
用語「ケイ酸イオン」は、本明細書において、ケイ素のあらゆる陰イオン形態を意味する。ケイ酸イオンは、負に帯電した酸素原子によって取り囲まれている1個以上の中心のケイ素原子を含む。一般に、3個までのケイ素原子を含むケイ酸イオンは、水溶性である。本明細書において好ましいケイ酸イオンは、1個または2個の、最も好ましくはただ1個のケイ素原子を有する。
【0023】
ケイ素は、様々な形態で植物の葉により吸収され、理論に縛られるものはないが、主にモノケイ酸、Si(OH)、またはその一価の陰イオン、Si(OH)として吸収されると考えられる。Si(OH)およびその陰イオンSi(OH)は、主としてpHによる平衡な水溶液中に存在する。高いpH、例えば約9.0よりも大きいpHでは、モノケイ酸は、大部分が解離し、Si(OH)陰イオンとして存在する。
【0024】
一部の実施形態では、組成物は、アルカリ性のpH、例えば少なくとも約7.0、例えば少なくとも約7.5、少なくとも約8.0、少なくとも約8.5、少なくとも約9.0、少なくとも約9.5、少なくとも約10.0、少なくとも約10.5、または少なくとも約11.0のpHを有し、実質的に解離したケイ酸塩を、より可溶性の高い形態で維持する。
【0025】
葉面吸収性ケイ素の適した供給源は、電気的に中性の化合物を含み、その電気的に中性の化合物には、3個以下、好ましくは2個以下、最も好ましくはたった1個のケイ素原子を有する、少なくとも1つの負に帯電したケイ酸陰イオンと会合している、少なくとも1つの正に帯電した陽イオンが含まれる。そのような供給源の例は、水溶性アルカリ金属ケイ酸塩、例えばケイ酸カリウムまたはケイ酸ナトリウムである。2つ以上のかかる塩が、所望により存在してよい。カリウムならびにケイ酸イオンは植物にとって栄養的に有用であるので、ケイ酸カリウムを使用することが、一般に有利である。ケイ酸カリウムは、農学的に許容される形態で、例えば、AgSil(登録商標)の商標でPQ Corp.製の濃縮水溶液として、市販されている。供給業者のウェブサイトによれば、AgSil(登録商標)21およびAgSil(登録商標)25のpHは、それぞれ、11.7および11.3である。www.pqcorp.com/literature/report_24.pdfを参照されたい。
【0026】
列挙される3つの成分の二番目は、チオ硫酸イオンの農学的に許容される供給源、ケイ酸またはケイ酸イオンの重合を抑制するために効果的な薬剤、およびそれらの混合物から選択される。(a)チオ硫酸塩源および(b)ケイ酸またはケイ酸塩重合抑制剤のカテゴリーは、相互に排他的ではない。
【0027】
一部の実施形態では、第二の成分は、チオ硫酸イオン(S2−)の水溶性供給源、例えばチオ硫酸アンモニウム、チオ硫酸ナトリウムまたはチオ硫酸カリウムを含む。チオ硫酸イオン由来のカリウムならびに硫黄は、植物にとって栄養的に有用であるので、一般にカリウムチオ硫酸塩(K)を使用することが有利である。
【0028】
理論に縛られるものはないが、チオ硫酸イオンは、ケイ酸イオンまたはケイ酸の重合を抑制する働きをすると考えられる。さらに、かさねて理論に縛られるものはないが、この重合の抑制は、Si栄養素を植物組織中で長時間移動させるのに役立ち得ると考えられる。 しかし、第二の成分としてのチオ硫酸イオンの供給源の使用は、そのような作用様式に基づいていない。従って、チオ硫酸イオンの供給源は、必ずしも必須ではないが、ケイ酸塩重合抑制剤であり得る。
【0029】
多くの要因が、溶液中のケイ酸またはケイ酸イオンの重合の程度に影響を及ぼす。一部のかかる要因には、ケイ酸またはケイ酸塩濃度、温度、pHおよびその他のイオン、小分子およびポリマーの存在が含まれる。
【0030】
用語「ケイ酸」とは、ケイ素、水素および酸素原子からなる化合物の群をさす。単純なケイ酸としては、メタケイ酸(HSiO)、またはオルトケイ酸(HSiO)、ジケイ酸(HSi)およびピロケイ酸(HSi)が挙げられる。特定の条件下で、これらのケイ酸は縮合して複合体構造のポリマーケイ酸を形成する。この重合生成物は、一般にシリカゲル(SiO.nHO)と呼ばれることが多い。
【0031】
一般に、アルカリ金属ケイ酸塩溶液を希釈すると、pHは低くなり、ケイ酸は加水分解してより大きなポリマー種を形成する。pHはシラノール基(ケイ素に直接結合している−OH基)のイオン化の程度に影響を及ぼすので、pHは重合速度にも影響を及ぼす。一般に、ケイ酸塩溶液のpHが低下すると、重合の速度は増加する。
【0032】
したがって、一部の実施形態では、第二の成分は、ケイ酸またはケイ酸イオンの重合を抑制するために効果的なアルカリ化剤を含む。そのような薬剤は、組成物が全体として、少なくとも約7.0、例えば少なくとも約7.5、少なくとも約8.0、少なくとも約8.5、少なくとも約9.0、少なくとも約9.5、少なくとも約10.0、少なくとも約10.5、または少なくとも約11.0のpHを有するような量で存在してよい。
【0033】
列挙される3つの成分の三番目は、有機酸、無機陰イオンと可逆的に結合するかまたは無機イオンを錯化する能力のある官能基を有する有機化合物、およびそれらの混合物からなる群から選択される化合物の農学的に許容される混合物である。(a)有機酸および(b)無機陰イオンと可逆的に結合するかまたは無機イオンを錯化する能力のある官能基を有する有機化合物のカテゴリーは、特定の有機酸自体が無機陰イオンと可逆的に結合するかまたは無機イオンを錯化する能力のある官能基を有するので、相互に排他的ではない。
【0034】
用語「有機酸」は、本明細書において酸性の特性をもつ有機化合物を意味する。一般的な有機酸には、カルボン酸が含まれ、その酸性度は1個以上のカルボキシル(−COOH)基に関連する。酸性度を付与することのできるその他の基には、−OSOH基、−OH基、−SH基、エノール基およびフェノール基が含まれる。一部の実施形態では、化合物の混合物には、フミン酸、フルボ酸、ポリヒドロキシカルボン酸、アミノ酸およびそれらの混合物から選択される1以上の有機酸が含まれる。
【0035】
一部の実施形態では、化合物の混合物は、フミン質(humic substances)を含む。用語「フミン質」とは、本明細書において、有機物に富む供給源から単離され、水溶液中に抽出された有機化合物をさす。フミン質には、植物および動物質の微生物分解を伴う腐食化のプロセスにより形成された有機物の抽出物が含まれ、さらにレオナルダイトなどの古代の有機堆積物が含まれる。しかし、本発明の目的において、用語「フミン質」には、腐食化を受けていないかまたは一部分だけ腐食化した、有機物から抽出された化合物が明確に含まれる。フミン質は、一般に、どの単一の構造式も十分でない化合物の不均一な混合物からなる。フミン質の一般的な例としては、フミン酸およびフルボ酸が挙げられる。
【0036】
フミン酸およびフルボ酸は、超分子凝集体であり、多くの場合、その色、重合の程度、分子量、炭素含有量、酸素含有量および水中での溶解度を特徴とし、かつ/または、それらに基づいて分類される。一般に、フルボ酸は、淡黄色または淡褐色であるが、フミン酸の色は暗褐色または灰−黒色である。フルボ酸に分類される凝集体は、フミン酸に分類される凝集体よりも分子量が小さいが、これらのカテゴリーに対する正確な分子量のカットオフはない。より小型の分子の凝集体であるフミン酸およびフルボ酸などの化合物に関して、本明細書中の分子量は、超分子凝集体に施用されるものであり、それらのより小型の分子部分構造に施用されるものではないことは当然理解される。
【0037】
さらに、フミン酸およびフルボ酸は、様々なpHの溶液中のその溶解度によって規定することができる。用語「フミン酸」は、酸性条件(pH<2)下では水に不溶性であるが、それよりも高いpHでは可溶性であるフミン質の部分(fraction)を意味する。フミン酸は、土壌のフミン質の主な抽出可能成分である。用語「フルボ酸」は、全てのpH条件下で水に可溶性であるフミン質の部分を意味する。フルボ酸は、多くの場合、酸性化によりフミン酸が除去された後も溶液中にとどまっている。フミン酸およびフルボ酸はそれぞれ、脂肪族の特性と芳香族の特性の両方を提示する。
【0038】
無機イオンと可逆的に結合するかまたは無機イオンを錯化することが可能である物質は、植物栄養摂取に有用である。理論に縛られるものではないが、組成物がイオンを錯化する能力は、植物においてイオンの取り込みおよび/または移動を促進することにより植物栄養摂取を助けると考えられる。これは、イオンの木部または師部を経由する植物の成長点および結実点(fruiting point)への優先的な移動により起こり得る。無機イオンは、正に帯電した陽イオンであってもよいし、または負に帯電した陰イオンであってもよい。無機陽イオンの例としては、Mg2+、Ca2+、Fe2+およびFe3+が挙げられる。無機陰イオンの例としては、ホウ酸塩およびケイ酸塩が挙げられる。かかる可逆的に結合または錯化は、キレート化の形態をとってよい。
【0039】
フミン酸およびフルボ酸は、一部の重要な植物栄養素を含む、多価の陽イオンの非常に効果的なキレート剤であるが、それらは当技術分野においてケイ酸イオンなどのイオン種の改良された吸収にこれまで関係していない。理論に縛られるものではないが、本組成物において、フミン酸および/またはフルボ酸だけからなる第三の成分は効果的であるが、フミン酸および/またはフルボ酸の代わりにまたはフミン酸および/またはフルボ酸に加えて少なくとも1種類の陰イオン−錯化剤を有する第三の成分ほど効果的ではないと考えられる。
【0040】
したがって、一部の実施形態では、第三の成分は、無機陰イオンと可逆的に結合するかまたは無機イオンを錯化する能力のある官能基を有する1以上の有機化合物を含む。陰イオンと可逆的に結合するかまたは錯化する能力は、例えばポリアミンおよびアミノ酸において起こるように、これまでアミノ官能基に関連してきた。しかし、本発明は、第三の成分が、無機陰イオンと可逆的に結合するかまたは錯化する能力を示すあらゆる官能基または官能基の組合せを有する有機化合物を含む、組成物を包含する。
【0041】
特定の実施形態では、第三の成分は、無機陰イオンおよび無機陽イオンの両方と可逆的に結合するかまたは錯化する能力を有する有機酸を含む。
【0042】
第三の成分を構成する有機化合物は、多様な方法で(例えば、分子量、様々な官能基の中での炭素の分布、相対的な元素組成、アミノ酸含有量、炭水化物含有量、などにより)特徴付けることができる。
【0043】
一部の実施形態では、化合物の混合物は、約300〜約30,000ダルトン、例えば、約300〜約25,000ダルトン、約300〜約20,000ダルトン、または約300〜約18,000ダルトンの分子量分布をもつ有機分子または超分子凝集体を含む。
【0044】
様々な官能基の中での炭素分布を特徴付けるために、適した技法としては、限定されないが、13C−NMR、元素分析、フーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴質量分析(FTICR−MS)およびフーリエ変換赤外分光法(FTIR)が挙げられる。
【0045】
一実施形態では、カルボキシ基およびカルボニル基は、一緒に、有機化合物の混合物中の炭素原子の約25%〜約40%、例えば約30%〜約37%、例示として約35%の割合を占める。
【0046】
一実施形態では、芳香族基は、有機化合物の混合物中の炭素原子の約20%〜約45%、例えば約25%〜約40%または約27%〜約35%、例示として約30%の割合を占める。
【0047】
一実施形態では、脂肪族基は、有機化合物の混合物中の炭素原子の約10%〜約30%、例えば約13%〜約26%または約15%〜約22%、例示として約18%の割合を占める。
【0048】
一実施形態では、アセタール基およびその他のヘテロ脂肪族基は、有機化合物の混合物中の炭素原子の約10%〜約30%、例えば約13%〜約26%または約15%〜約22%、例示として約19%の割合を占める。
【0049】
一実施形態では、芳香族の脂肪族炭素に対する比は、約2:3〜約4:1、例えば約1:1〜約3:1または約3:2〜約2:1である。
【0050】
特別な例示となる実施形態では、有機化合物の混合物中の炭素分布は次の通りである。カルボキシ基およびカルボニル基、約35%;芳香族基、約30%;脂肪族基、約18%、アセタール基、約7%;およびその他のヘテロ脂肪族基、約12%。
【0051】
第三の成分の有機化合物の元素組成は、独立に、一つの一連の実施形態において、重量で次の通りである。C、約28%〜約55%、例示として約38%;H、約3%〜約5%、例示として約4%;O、約30%〜約50%、例示として約40%;N、約0.2%〜約3%、例示として約1.5%;S、約0.2%〜約4%、例示として約2%。
【0052】
第三の成分の有機化合物の元素組成は、独立に、もう一つの一連の実施形態において、重量で次の通りである:C、約45%〜約55%、例示として約50%;H、約3%〜約5%、例示として約4%;O、約40%〜約50%、例示として約45%;N、約0.2%〜約1%、例示として約0.5%;S、約0.2%〜約0.7%、例示として約0.4%。
【0053】
特別な例示となる実施形態では、元素分布は、重量で:C、約38%;H、約4%;O、約40%;N、約1.5%;およびS、約2%である。このバランスは、主に無機イオン、主としてカリウムおよびイオンからなる。
【0054】
もう一つの特別の例示となる実施形態では、元素分布は、重量で:C、約50%;H、約4%;O、約45%;N、約0.5%;およびS、約0.4%である。
【0055】
第三の成分中に存在してよい有機化合物のクラスの中には、様々な実施形態において、アミノ酸、炭水化物(単糖類、二糖類および多糖類)、糖アルコール、カルボニル化合物、ポリアミンおよびそれらの混合物がある。
【0056】
存在してよいアミノ酸の例としては、限定されないが、アルギニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、セリン、トレオニン、チロシンおよびバリンが挙げられる。
【0057】
存在してよい単糖類および二糖類の例としては、限定されないが、グルコース、ガラクトース、マンノース、フルクトース、アラビノース、リボースおよびキシロースが挙げられる。
【0058】
特定の実施形態では、第三の成分は、有機物に富む供給源から単離され、水溶液中に抽出された有機分子の混合物を含む。混合物は、約300〜約18,000ダルトンの分子量分布をもつ比較的小型の分子または超分子凝集体からなる。有機分子の混合物を分画した(fractionated)有機物に含まれるものは、様々なフミン質、有機酸および微生物滲出物である。大部分のフミン質のように、この混合物は、脂肪族の特性と芳香族の特性の両方を有することが示されている。例示として、炭素分布はカルボニル基およびカルボキシル基に約35%;芳香族基に約30%;脂肪族基に約18%、アセタール基に約7%;そしてその他のヘテロ脂肪族基に約12%を示す。
【0059】
適した有機化合物の混合物は、Floratine Biosciences、Inc(FBS)製のCarbon Boost(商標)−S 土壌溶液およびKAFE(商標)−F 葉用溶液として市販されている製品に見出すことができる。これらの製品についての情報は、www.fbsciences.comで得ることができる。従って本発明の例となる組成物は、ケイ酸カリウムを第一の成分として、カリウムチオ硫酸塩を第二の成分として、Carbon Boost(商標)−SまたはKAFE(商標)−F葉用溶液を第三の成分として、適した容積の水に添加することにより、調製することができる。
【0060】
組成物中に存在するべき第三の成分の量は、使用する特定の有機混合物によって決まる。この量は、例えば組成物中の混合物の溶解度の限度を超えることによるか、またはその他の絶対に必要な成分を溶液から外すことにより、物理的に不安定な組成物をもたらすほど多くあるべきではない。一方、この量は、目的植物種に施用された場合に、強化されたケイ素栄養摂取または強化された病害防除を提供できないほど少なくあるべきではない。任意の特定の有機混合物について、当業者は、日常的な製剤安定性および生物有効性試験により、任意の特定の使用のための組成物中の有機混合物の量を最適化することができる。
【0061】
特に、例えば、Carbon Boost(商標)−SおよびKAFE(商標)−F溶液に見出されるような有機化合物の混合物を使用する場合、本発明のケイ素栄養組成物中に必要な量は、著しく少ないと分かる場合が多い。例えば、1重量部(水を除く)程度のそのような混合物が、一部の状況では、植物の堆積部位への最大約1000またはそれ以上の重量部のSiの葉による送達を助けることができる。その他の状況では、日常的な試験に基づいて、より多くの量の有機混合物を添加することが有益であることが見出されることもある。一般に、有機化合物のSiに対する適した比は、約1:2000〜約1:5、例えば約1:1000〜約1:10または約1:500〜約1:20、例示として約1:100である。Carbon Boost(商標)−SまたはKAFE(商標)−F溶液を有機化合物の供給源として用いる場合、本発明の濃縮組成物に含める当該溶液の適した量は、約5〜約25、例えば約8〜約18、例示として約12重量部の濃縮組成物中、約1重量部のCarbon Boost(商標)−SまたはKAFE(商標)−F溶液である。
【0062】
所望により、さらなる成分が、上記の第一、第二、および第三の成分とともに本発明の組成物中に存在してよい。例えば、組成物は、ケイ素以外の植物栄養素の少なくとも1種類の農学的に許容される供給源をさらに含んでよい。(ケイ酸カリウムを第一の成分として使用し、カリウムチオ硫酸塩などのチオ硫酸塩を第二の成分として使用する場合、その組成物はカリウム(K)および硫黄(S)をすでに含んでいることに注意する。所望であれば、これらの栄養素のさらなる供給源が存在してもよい)。その供給源を所望により含めることのできる、その他の植物栄養素の例は、リン(P)、カルシウム(Ca)、マグネシウム(Mg)、鉄(Fe)、亜鉛(Zn)、マンガン(Mn)、銅(Cu)およびホウ素(B)である。多価の陽イオン、例えばCa、MgまたはFeなどの添加は、しかし、これらの多価の陽イオンが組成物中で十分にキレート化されていない場合には、不溶性ケイ酸塩の沈殿をもたらし得る。
【0063】
一実施形態では、組成物は、リンの供給源を含む。任意のリン酸塩、好ましくはピロリン酸四カリウム(TKPP)などの水溶性リン酸塩を使用することができる。
【0064】
本発明の組成物は、植物への施用の前の水へのさらなる希釈に適した濃縮形態で提供することができる。あるいは、組成物は植物への直接施用のためのすぐに使える溶液として提供することもできる。本発明の組成物はその他の肥料溶液と、かつ/または農薬溶液と組み合わせることができるので、組成物はそのようなその他の溶液と混合することにより希釈することができる。
【0065】
本発明の組成物は、その特定の栄養素の含有量の点で異なる(例えば、NPKおよび/またはSi含有量)。用語「NPK」は、一般的な肥料命名法を参照している。肥料のパッケージには、多くの場合その栄養素含有量が3つの目立つ数字で示され、それは窒素(元素Nとして)、リン(リン酸塩、Pとして)およびカリウム(カリ、KOとして)の重量百分率を表す。例えば、2−4−3と指定される肥料組成物は、2%のN、4%のP(Pとして)および3%のK(KOとして)を含む。
【0066】
一般に、本組成物の第三の成分によりもたらされる窒素は、NPK系で登録するには少なすぎる量である。従って、本発明の組成物は、多くの場合そのN含有量として「0」を示すことになる。しかし、所望であれば、尿素またはアンモニウムなどの窒素肥料または硝酸塩を、例えば約30重量%までのN量で添加することができる。
【0067】
P(Pとして)含有量は、一般に、重量で0%〜約10%、例えば約1%〜約8%、約3%〜約7%、または約4%〜約6%である。Pは、存在する場合、例示として、全部または一部TKPPによりもたらされ得る。
【0068】
K(KOとして)含有量は、一般に、重量で約1%〜約40%、例えば約5%〜約30%、または約10%〜約25%である。Kは、例示として、ケイ酸カリウム、カリウムチオ硫酸塩およびJKPPの1以上により与えられ得る。
【0069】
Si含有量は、一般に、重量で約0.1%〜約10%、例えば約1%〜約8%、約2%〜約6%、または約3%〜約5%の元素Siである。
【0070】
特別に例示となる組成物のNPK表示は0−5−18であり、約3.7%のSiを含む。
【0071】
上記のNPKおよびSi含有量は、さらなる希釈に適した濃縮組成物に関連する。植物の葉への施用を目的として、濃縮組成物は、水で最大約600倍に、より一般に、最大約100倍または最大約40倍に希釈することができる。例示として、濃縮生成物は、約60〜約600l/ha、例えば約80〜約400l/haまたは約100〜約200l/haの希釈後の全施用容積中、約1〜約30l/ha、例えば約5〜約25l/haで施用することができる。例示として、濃縮生成物のSi含有量が約1%〜約8%である場合、かかる希釈により、約0.001%〜約2%、例えば約0.01%〜約1%または約0.05%〜約0.5%のSi含有量を有する塗布溶液をもたらすことができる。3.7%のSiを有する0−5−18生成物は、15倍(すなわちその元の濃度の6.7%)に希釈されると、約0.25%のSiを含有する塗布溶液を生成し、そして、30倍(すなわちその元の濃度の3.3%)に希釈されると、約0.12%のSiを含有する塗布溶液を生成する。
【0072】
上記のように濃縮組成物を希釈することにより調製される塗布溶液は、本発明のさらなる実施形態を表す。
【0073】
濃縮物中であっても、すぐに使える組成物または希釈した組成物中であっても、SiのK(KOとして)に対する適した重量比は、例示として約1:1〜約1:10、例えば約1:2〜約1:8、例示として約1:5の範囲であり;かつ、(TKPPなどのリン酸塩供給源が存在する場合)SiのP(Pとして)に対する適した重量比は、例示として約5:1〜約1:5、例えば約3:1〜約1:3、例示として約1:1の範囲である。
【0074】
当業者は、本明細書に示される成分を混合することにより、上に列挙される栄養素の量または比を有する組成物を容易に調製する。例示として、第一の成分がケイ酸カリウム(KSiH)であり、第二の成分がカリウムチオ硫酸塩(K)であり、第三の成分が有機混合物であり、かつ、該組成物が所望によりTKPP(K)をさらに含む場合、本発明の水溶液は、1重量部のKSiHに対し、約0.05〜約5、例えば約0.1〜約3または約0.3〜約1.5重量部のK、本明細書の別の場所に示される適量の有機混合物、および、0〜約10、例えば約0.5〜約5または約1〜約2.5重量部のKを用いて調製することができる。これらの成分は、溶液中でそれらを維持するために十分な量の水に溶解される。この文脈で重量部とは、成分がその中に供給されている、水などのあらゆる希釈剤を除外すると理解される。例えば、KSiHが、水中25%溶液として供給される場合、1重量部のKSiHを提供するために4重量部の溶液が必要である。
【0075】
例示となる、TKPPを含まない組成物は、
2〜20%、例えば5〜20重量%のケイ酸カリウム(KSiH)と、
1〜40%、例えば2〜35%または5〜20重量%のカリウムチオ硫酸塩(K)と、
本明細書の別の場所に示される適量の有機混合物と、
合計して100重量%となる量の水と
からなる。
【0076】
例示となる、TKPPを含有する組成物は、
2〜20%、例えば5〜15重量%のケイ酸カリウム(KSiH)と、
1〜25%、例えば5〜20重量%のカリウムチオ硫酸塩(K)と、
本明細書の別の場所に示される適量の有機混合物と、
2〜30%、例えば5〜25重量%のTKPP(K)と、
合計して100重量%となる量の水と
からなる。
【0077】
所望によりその他の成分が本発明の組成物中に存在してよく、それには、界面活性剤(例えば葉表面の濡れを増すため)、スプレードリフト制御剤、消泡剤、粘度調整剤、不凍液、着色剤、などの従来の製剤アジュバントが含まれる。これらはいずれも、所望であれば、組成物の必須成分を不安定にしない限りは添加してよいが、一般にこれらは不必要であることが分かるであろう
【0078】
本発明の組成物を調製するための方法は、一般に必要な成分の単純な添加を伴う。所望であれば、これらの成分のいずれかを、その他の成分と混合する前に、好適な容積の水に事前に溶解させてよい。添加の順序は一般に重要でない。
【0079】
ケイ素栄養摂取のため、かつ/または植物の病害に対する感受性を低下させるための、本明細書に記載される組成物の使用方法は、本発明のさらなる実施形態である。組成物は、単一の植物(例えば、室内用観葉植物または庭園用観賞植物)に施用してもよいし、ある区域を占めている植物の集合体に施用してもよい。一部の実施形態では、組成物は、農作物または園芸作物、特には食用作物に施用される。「食用作物」は、本明細書において主にヒトの消費のために生育した作物を意味する。本発明の方法は、田畑使用のため、および保護された栽培で、例えば、温室使用の両方に適している。
【0080】
本方法は、イネ科(イネ科(grass family)に属する)作物、例えば、トウモロコシ、小麦、大麦、オートムギおよびイネを含む禾穀類などに有益であり得るが、本方法は、野菜作物、果物作物および種子作物を含む非イネ科作物にも非常に適している。用語「果物」および「野菜」は、本明細書において、その農業的または調理的な意味で使用され、厳密な植物学的意味で使用されるものではない。例えば、トマト、キュウリおよびズッキーニは、本目的において野菜と解釈されるが、植物学的に言うと、消費されるのはこれらの作物の果実である。
【0081】
本発明が有用であることが見出され得る野菜作物としては、限定されるものではないが、
・葉菜およびサラダ用野菜、例えば、アマランス、ビートの若い葉、ビターリーフ、チンゲンサイ、芽キャベツ、キャベツ、ブタナ、セルタス、チョクウィー(choukwee)、ツルムラサキ、チコリー、フユアオイ、菊の葉、ノヂシャ、クレス、タンポポ、エンダイブ、アリタソウ、アカザ、フィドルヘッド(fiddlehead)、フルーテッド・パンプキン(fluted pumpkin)、ゴールデン・サンフィア(golden samphire)、グッド・キング・ヘンリー、アイスプラント、ジャンブー、カイラン、ケール、小松菜、クカ(kuka)、ラゴス・ボロギ(Lagos bologi)、ランドクレス、レタス、ハンゲショウ、モロヘイヤ、水菜、カラシナ、白菜、ツルナ、オラーチェ、エンドウ葉、ポルク(polk)、赤チコリー、ロケット(アルガラ)、サムファイア、ハマフダンソウ(sea beet)、ハマナ、シエラ・レオネ・ボロギ(Sierra Leone bologi)、ソコ(soko)、スイバ、ホウレンソウ、スベリヒユ、フダンソウ、タアサイ、カブ葉(turnip greens)、オランダガラシ、ヨウサイ、ウィンターパースレーンおよびヤウ・チョイ(yau choy)など、
・花の咲く野菜および果実のなる野菜、例えば、エイコーン・スクオッシュ、アルメニアン・キューカンバー(Armenian cucumber)、アボカド、ピーマン、ニガウリ、バターナッツ・スクオッシュ、カイグア、ケープ・グーズベリー、カイエンペッパー、ハヤトウリ、チリペッパー、キュウリ、ナス(オーベルジーヌ)、アーティチョーク、ヘチマ、マラバル・ゴード(Malabar gourd)、パルワル、ペポカボチャ、多年生キュウリ、カボチャ、カラスウリ、スクオッシュ(マロー)、スイートコーン、スイートペッパー、ティンダ、トマト、トマティロ、冬瓜、ウエスト・インディアン・ガーキンおよびズッキーニ(コルゲット)など、
・マメ科の野菜(レギューム)例えば、アメリカホドイモ、小豆、黒豆、ササゲ、ヒヨコ豆(ガルバンゾ・ビーン)、ドラムスティック、フジマメ、ソラマメ(ブロード・ビーン)、サヤインゲン、グアー、インゲンマメ(haricot bean)、ホースグラム、インディアン・ピー(Indian pea)、インゲンマメ(kidney bean)、レンズマメ、ライマメ、モスビーン、緑豆、白インゲンマメ、オクラ、エンドウマメ、ピーナッツ(落花生)、キマメ、インゲンマメ(pinto bean)、ツルアズキ、ベニバナインゲン(runner bean)、大豆、タルウィ、テパリービーン、ウラド豆、ハッショウ豆、シカクマメおよびササゲなど、
・鱗茎野菜および茎野菜、例えば、アスパラガス、カルドン、セルリアック、セロリ、エレファントガーリック、ウイキョウ、ニンニク、コールラビ、クラト、リーク、レンコン、ノパル、タマネギ、プロイセンアスパラガス、エシャロット、ネギおよびギョウジャニンニクなど;、
・根野菜および塊野菜、例えば、アヒパ、アラカチャ、タケノコ、ビートルート、ブラッククミン、ゴボウ、ブロードリーフ・アローヘッド(broadleaf arrowhead)、カマス、カンナ、ニンジン、カサバ、チョロギ、大根、落花生エンドウ、ゾウコンニャク(elephant−foot yam)、エンセーテ、生姜、ゴボウ(gobo)、ハンブルグパセリ、セイヨウワサビ、キクイモ、ヒカマ、パースニップ、ヒッコリー、プレクトランサス、ジャガイモ、プレイリー・ターナップ(prairie turnip)、ラディッシュ、ルタバガ(スイード)、サルシフィ、スコルツォネラ、ムカゴニンジン、サツマイモ、タロイモ、ティー(ti)、タイガーナッツ、ターナップ、ウルコ(ulluco)、ワサビ、ウォーターチェスナット、ヤーコンおよびヤムなど;ならびに
・ハーブ、例えば、アンジェリカ、アニス、バジル、ベルガモット、キャラウェー、カルダモン、カモミール、チャイブ、シラントロ、コリアンダー、ディル、ウイキョウ、チョウセンニンジン、ジャスミン、ラベンダー、レモンバーム、レモンバジル、レモングラス、マジョラム、ミント、オレガノ、パセリ、ポピー、サフラン、セージ、スターアニス、タラゴン、タイム、ターメリックおよびバニラなどが挙げられる。
【0082】
本発明が有用であることが見出され得る果実作物としては、リンゴ、アプリコット、バナナ、ブラックベリー、クロフサスグリ、ブルーベリー、ボイゼンベリー、カンタロープ、サクラ、シトロン、クレメンタイン、クランベリー、ダムスン、ドラゴンフルーツ、イチジク、ブドウ、グレープフルーツ、セイヨウスモモ、セイヨウスグリ、グアバ、ハニーデュー、ジャックフルーツ、キーライム、キウィフルーツ、キンカン、レモン、ライム、ローガンベリー、竜眼、ビワ、マンダリン、マンゴー、マンゴスチン、メロン、マスクメロン、オレンジ、パパイヤ、桃、セイヨウナシ、柿、パイナップル、オオバコ、セイヨウスモモ、グレープフルーツ(pomelo)、ウチワサボテン、マルメロ、ラズベリー、アカフサスグリ、スターフルーツ、ストロベリー、タンジェロ、タンジェリン、タイベリー、アグリフルーツおよびスイカが挙げられるが、これらには限定されない。
【0083】
本発明が有用であることが見出され得る種子作物としては、穀類(例えば、大麦、トウモロコシ(メイズ)、粟黍、オートムギ、イネ、ライムギ、ソルガム(ミロ)および小麦)に加えて、非イネ科種子作物、例えば、ソバ、ワタ、アマニ(油)、カラシナ、ポピー、菜種(カノーラ(油)を含む)、ベニバナ、ゴマおよびヒマワリなどが挙げられる。
【0084】
上記のカテゴリーのいずれにも適合しない、本発明が有用であることが見出され得るその他の作物としては、限定されないが、テンサイ、サトウキビ、ホップおよびタバコが挙げられる。
【0085】
上記の作物の各々は、その独自の特定のケイ素栄養摂取および病害防除の必要性を有する。特定の作物に対する本明細書に記載される組成物のさらなる最適化は、過度の実験を行うことなく、本明細書の開示に基づいて、当業者により容易に取り掛かることができる。
【0086】
本発明の方法は、本明細書に記載される組成物を植物の葉の表面に施用することを含む。「葉の表面」は、本明細書において、一般に葉表面であるが、植物のその他の緑色の部分は、葉柄、托葉、茎、苞葉、花蕾などを含む、ケイ素の吸収を許容し得る表面を有し、本目的において、「葉の表面」には、そのような緑色の部分の表面が含まれることが理解される。吸収は、一般に、葉の表面の施用部位で起こるが、施用された組成物は、その他の領域に流れ落ちてそこで吸収される可能性がある。流出(施用された溶液が葉の表面から流れて、土壌または植物のその他の生育培地に到達する場合)は、一般に望ましくないが、施用された栄養素は、一般に、植物の根系により吸収されることができるので、完全に失われるのではない。しかし、流出を最小限に抑える施用方法が好ましく、それは当業者に周知である。その方法には、限定されないが、過度の噴霧量を回避すること(一般に、約400 l/haを超える噴霧量は実質的な流出を導く)、噴霧液滴サイズを制御すること(小さい液滴のほうが、大きい液滴よりも保持される可能性が高い)、雨または植物の頭上からの洗浄が差し迫ってない時に噴霧すること、などが挙げられる。
【0087】
本発明の組成物は、液体を葉の表面に施用するための任意の従来システムを用いて施用することができる。最も一般的に、噴霧による施用が最も便宜であることが分かるが、ブラシによる施用またはロープ芯(rope−wick)による施用を含む、その他の技法を必要であれば用いることもできる。噴霧に関して、散水ノズルおよび回転円盤噴霧器を含む、任意の従来の霧化法を用いて噴霧液滴を生成することができる。
【0088】
本明細書の上文に記載されるように、施用される組成物は希釈しなければならない。あまりに高濃度の溶液が葉の表面に直接施用されると、特定の植物種は、葉の「火傷」の形で施用部位に損傷を受け易い。これは、植物の成長および収量に悪影響を与える可能性があるためだけでなく、このように損傷した葉の表面が施用された栄養素を吸収する能力が低くなり得るので望ましくない。大部分の目的において、施用のためのSi濃度は、約0.5%を超えるべきではない。よりSi濃度の高い組成物は、一般に使用前に希釈されるべきである。施用される溶液の最適な濃度は、処理される植物種、特定の生育条件、使用される特定の組成物および求められる利益を含む、多数の要因によって決まる。当業者は、過度の実験を行うことなく容易に施用濃度(または濃縮組成物の希釈の程度)を最適化することができる。しかし、約3%〜約5%のSiを含有する濃縮組成物に関して、満足のいく結果は、一般に、約10〜約200倍(すなわち、約0.5%〜約10%の希釈で施用)希釈することにより、例えば約15〜約100倍(約1%〜約6.6%の希釈)、例示として、約1%、約1.25%、約1.6%、約2%、約2.5%、約3.3%、約4%、約5%または約6.6%の希釈により得られる。
【0089】
Siの散布量は、施用溶液中の濃度に関して、または単位面積当たりの量(一般に、葉面積ではなく土地面積)に関して特徴付けることができる。濃度に関して、適した散布量は、一般に約0.001%〜約2%のSi、例えば約0.01%〜約1%または約0.05%〜約0.5%のSi、例示として約0.05%、約0.06%、約0.1%、約0.12%、約0.15%、約0.18%、約0.2%、約0.25%、約0.3%、約0.36%、約0.4%または約0.5%のSiである。面積に関して、適した散布量は、一般に約0.05〜約2kg/haのSi、例えば約0.1〜約1kg/haのSi、例示として約0.1、約0.12、約0.15、約0.2、約0.25、約0.3、約0.4、約0.5、約0.6、約0.75、約0.8または約1kg/haのSiである。
【0090】
施用の頻度も、上述の要因によって変動し得る。比較的高い「スターター」割合で施用し、その後にそれより低い割合で施用することが有利であると見出される場合が多い。施用頻度は、例えば、1日2回から月1回、より一般に、1日1回から月2回、例示として1日1回あるいは2、3、4、5、7、10または14日の間隔であってよい。特定の状況では、単回施用で十分である。
【0091】
上に詳細に記載される方法は、植物のケイ素栄養摂取に有用である。Si栄養摂取の強化のあらゆる利益は、本方法の利益であり得、それには、限定されないが、より高品質の生産物、成長の改善および/またはより長期の生育期(いずれの場合もより高収量の生産物をもたらすことができる)、ストレス耐性の増大および/またはストレスからの回復の改善を含む植物ストレス管理の改良、機械的強度の増加、根発達の改良、耐乾燥性の改良および草高の改良が含まれる。
【0092】
様々な実施形態において、生産物の収量は、例えばSi栄養素処理を受けていない植物よりも少なくとも約2%、少なくとも約4%、少なくとも約6%、少なくとも約8%、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約25%または少なくとも約50%増加させることができる。
【0093】
植物の健康の改善、特に病害、特に細菌または真菌による病害に対する耐性または病害からの保護は、本発明の方法の重要な利点である。一実施形態では、植物の真菌もしくは細菌性病害への感受性を低下させるための方法が提供される。「感受性の低下」には、本明細書において、真菌もしくは細菌感染の発生率の低下、ならびに/または植物の健康および成長に起こるそのような感染の影響の低下が含まれる。理論に縛られるものはないが、本発明の組成物によりもたらされるSi栄養摂取の強化により、真菌および細菌病原体に対する植物の自然防御力が増強されると考えられる。かかる病原体の例としては、限定されないが、アルテルナリア(Alternaria)属、ブルメリア・グラミニス(Blumeria graminis)、ボトリチス・シレネア(Botrytis cinerea)、コクリオボラス・ミヤビーナス(Cochliobolus miyabeanus)、コレトトリクム・グロエオスポリオイデス(Colletotrichum gloeosporioides)、ディプロカルポン・ロザエ(Diplocarpon rosae)、フザリウム・オキシスポラム(Fusarium oxysporum)、マグナポルテ・グリセア(Magnaporthe grisea)、マグナポルテ・サリビニ(Magnaporthe salvinii)、フェオスフェリア・ノドラム(Phaeosphaeria nodorum)、ピシウム・アファニデルマータム(Pythium aphanidermatum)、ピシウム・ウルティマム(Pythium ultimum)、スクレロチニア・ホモエオカルパ(Sclerotinia homoeocarpa)、セプトリア・ノドラム(Septoria nodorum)、スファエロテカ・パンノーサ(Sphaerotheca pannosa)、スファエロテカ・キサンチイ(Sphaerotheca xanthii)、タナテフォーラス・ククメリス(Thanatephorus cucumeris)およびウンシヌラ・ネカトル(Uncinula necator)が挙げられる。
【0094】
単一種の病原体が、様々な作物において多様な病害を引き起こし得る。植物の細菌および真菌病害の例としては、限定されないが、炭疽病、ナラタケ病、アスコキタ(ascochyta)、アスペルギルス、斑点細菌病、かいよう病、斑葉細菌病、斑点細菌病、青枯病、炭疽病(bitter rot)、黒葉(black leaf)、根打ち病、黒腐病(black rot)、黒斑病、いもち病(blast)、胴枯れ病、青かび病、ボトリチス病、褐色腐敗病、褐点病、セルコルポラ(cercospora)、炭腐病、クラドスポリウム、根こぶ病、堅黒穂病、クレーターロット(crater rot)、菌核病、立ち枯れ病、ダラースポット病、べと病、早期疫病(early blight)、麦角、エルウィニア、偽裸黒穂病(false loose smut)、火傷病、株腐病、フルーツブロッチ(fruit blotch)、フザリウム、灰斑病、灰色かび病、心腐病、後期疫病(late blight)、葉枯病(leaf blight)、葉枯病(leaf blotch)、縮葉病、腐葉土(leaf mold)、赤さび病、斑点病、ウドンコ病(mildew)、壊死、ペノスポラ、フォーマ、ばら色かび病、ウドンコ病(powdery mildew)、クモノスカビ、根瘤病(root canker)、根腐れ、さび病、かさ病、黒穂病、白絹病、枝枯れ病、菌核病(stem rot)、バーティシリウム、白かび病、野火病および萎黄病(yellows)が挙げられる。
【実施例1】
【0095】
イネの葉に施用された物質からの葉組織へのSiの移動
lsi1変異株イネの種子(低ケイ素イネ1、能動的なSi取込みが欠損)を、10% NaOCl中で1.5分間表面滅菌し、滅菌水中で3分間すすぎ、発芽室中で25℃にて6日間、蒸留水を浸した発芽試験紙(germitest paper)の上で発芽させた。発芽した苗を2分の1の強さの栄養溶液を含むプラスチック容器に2日間移した。この期間の後、植物を、完全な強さの栄養溶液を含む新しいプラスチック容器に移した。この栄養溶液を、通気をせずに、4日ごとに交換した。pHを毎日確認し、必要な場合にはNaOHまたはHCl(1M)を用いて約5.5に維持した。この試験で用いた栄養溶液は、1.0mM KNO、0.25mM NHPO、0.1mM NHCl、0.5mM MgSO4・7HO、1.0mM Ca(NO2・4HO、0.3μM CuSO4・5HO、0.33μM ZnSO4・7HO、11.5μM HBO、3.5μM MnCl2・4HO、0.1μM(NHMo24、25μM FeSO4・7HOおよび25μM EDTAビソジック(bisodic)からなった。この栄養溶液はSiを含まなかった。
【0096】
試験は、5回の葉の噴霧処理からなるものであった。
A.3.7% Si、10.0% TKPP、7.5% カリウムチオ硫酸塩、それに加えて有機混合物(下記参照)
B.3.7% Si、33.2% カリウムチオ硫酸塩、それに加えて有機混合物(下記参照)
C.3.7% Si、33.2% カリウムチオ硫酸塩
D.ケイ酸カリウムとして9.9% Si(FertiSil(登録商標);PQ Corporation Ltda,Brazil)
E.対照(滅菌脱イオン水)
【0097】
本発明の組成物AおよびBに含められる有機混合物の量は、約10% KAFE(商標)−F葉用溶液(Floratine Biosciences,Inc.)か、または下に記載される通り調製された2%噴霧溶液中、約0.2% KAFE(商標)−F葉用溶液に等しい。
【0098】
試験は、5反復の完全無作為化デザインで準備した。それぞれの実験単位は、5リットルの栄養溶液と4株のイネ苗を含む1つのプラスチック容器からなった。実験は一回反復された。組成物A〜Eを、葉面散布としてそれぞれの植物の全ての葉に、A〜Dの場合には2容量%濃度で施用した。第二葉分げつ生育期(second leaf tiller growth stage)のイネ苗の葉に、DeVilbiss15番噴霧器を用いて吹き付けた。植物の基部は、栄養溶液への噴霧物質の流出を防ぐために、噴霧の間ずっと覆った。
【0099】
全ての処理から植物の葉を噴霧後24時間に回収した。半分を滅菌脱イオン水中で10分間穏やかに洗浄して、噴霧した葉表面に堆積したどのSiも、可能性を持って除去し、次いで、Elliott&Snyder(1991)J.Agric.Food Chem.39:1118−1119に記載されるようにSi含有量について分析する。葉組織のSi含有量についてのデータをANOVAに供し、テューキー検定を用いて平均値を有意差について試験した(P=0.05)。等分散性のためのコクラン検定により、2つの実験から得たSi含有量からのデータをプールすることができ得ることが示された。そのため、2回の試験からのデータをデータ分析のためにプールした。
【0100】
葉組織中のSi含有量は、図1に示される通りであった。Si含有量は、対照と比較して、組成物A、B、CおよびDにより、それぞれ98%、85%、78%および65%有意に(P≦0.05)増加した。本発明の組成物Aを噴霧した植物は、ケイ酸カリウム(組成物D)を噴霧した植物と比較してSi含有量において20%の増加を示し、本発明の組成物Bを噴霧した植物は、12%の増加を示した。これは、組成物DのSi含有量が組成物AおよびBに対するよりも2.67倍多かったという事実に反している。
【実施例2】
【0101】
[葉面施用物質からイネの葉組織へのSiの移動]
イネlsi1変異株苗を、実施例1の場合のように、同じ栄養溶液を用いて正確に栽培した。試験は、実施例1に記載される組成物A〜Eをそれぞれ1回または2回噴霧される(2回目の噴霧は最初の噴霧の48時間後)10回の葉の噴霧処理からなった。
【0102】
試験は、5反復の完全無作為化デザインで準備した。それぞれの実験単位は、5リットルの栄養溶液と4株のイネ苗を含む1つのプラスチック容器からなった。実験は一回反復された。組成物A〜Eを、葉面散布としてそれぞれの植物の全ての葉に、A〜Dの場合には2容量%濃度で施用した。噴霧処理は、1回または48時間の間隔で2回施用した。主な分げつを含む、植物1株あたり4回の分げつの第四葉に、DeVilbiss15番噴霧器を用いて吹き付けた。該植物のその他の葉は、噴霧の間プラスチックバッグで保護した。植物の基部は、栄養溶液への噴霧物質の流出を防ぐために、噴霧の間ずっと覆った。全ての処理を受けた植物の第四(噴霧)葉を、それぞれの噴霧後24時間で取り除いた。半分を滅菌脱イオン水中で10分間穏やかに洗浄して、噴霧した葉表面に堆積したSiを、可能性を持って除去し、次いで、Elliott&Snyder(1991)(上記参照)に記載されるようにSi含有量について分析する。葉組織のSi含有量についてのデータをANOVAに供し、テューキー検定を用いて平均値を有意差について試験した(P=0.05)。等分散性のためのコクラン検定により、2つの実験から得たSi含有量からのデータをプールすることができ得ることが示された。そのため、2回の試験からのデータをデータ分析のためにプールした。
【0103】
葉組織中のSi含有量は、それぞれ1回および2回噴霧した植物に対する、図2および図3に示されるとおりである。1回噴霧した植物では、Si含有量は、対照と比較して、組成物A、B、CおよびDにより、それぞれ69%、62%、56%および42%有意に(P≦0.05)増加した。2回噴霧した植物では、Si含有量は、対照と比較して、組成物A、B、CおよびDにより、それぞれ152%、119%、113%および85%有意に(P≦0.05)増加した。
【0104】
本発明の組成物Aを1回噴霧した植物は、ケイ酸カリウム(組成物D)を1回噴霧した植物と比較してSi含有量において、19%の増加を示し、本発明の組成物Bを1回噴霧した植物は、14%の増加を示した。本発明の組成物Aを2回噴霧した植物は、ケイ酸カリウム(組成物D)を2回噴霧した植物と比較してSi含有量において、36%の増加を示し、本発明の組成物Bを2回噴霧した植物は、18%の増加を示した。これは、組成物DのSi含有量が組成物AおよびBに対するよりも2.67倍多かったという事実に反している。
【実施例3】
【0105】
[Si組成物の葉面散布のイネの褐点病への効果]
イネlsi1変異株苗を、実施例1の場合のように、同じ栄養溶液を用いて正確に栽培した。試験は、実施例1に記載される組成物A〜Eと、組成物Fである殺真菌薬(ジフェノコナゾール、1.5ml/リットル)とによる6回の葉の噴霧処理からなるものであった。
【0106】
試験は、5反復の完全無作為化デザインで準備した。それぞれの実験単位は、5リットルの栄養溶液と4株のイネ苗を含む1つのプラスチック容器からなった。実験は一回反復された。組成物A〜Eを、褐点病病原体ビポラリス・オリザエ(Bipolaris oryzae)を植菌する24時間前に葉面散布としてイネの葉に施用した。組成物A〜Dの溶液は2%濃度で調製した。殺真菌薬(組成物F)は、1.5ml/リットル濃度で調製した。第五葉分げつ生育期の植物にDeVilbiss噴霧器No.15を用いて吹き付けた。植物の基部は、栄養溶液への噴霧物質の流出を防ぐために、噴霧の間ずっと覆った。
【0107】
有症イネ苗から得た、B.オリザエの病原体分離株(CNPAF−HO82)を用いて植物物に植菌した。B.オリザエの分生子懸濁液(5×10分生子/ml)を、VL Airbrush噴霧器(Paasche Airbrush Co.,Chicago,IL)を用いて、それぞれの植物の向軸性の葉身に微細な霧として流出するまで施用した。植菌の直後に、最初の24時間が暗期の25±2℃の霧室に植物を移した。この24時間の後、クールホワイト蛍光灯により提供される約162μE−2−1の12時間の明期を用いて植物をインキュベートした。実験の継続期間中は霧室の中に植物を保持した。
【0108】
それぞれの植物の葉の褐斑病重篤度を、植菌後24、48、72および96時間に罹病葉面積の割合に基づく国際稲研究所(International Rice Research Institute)(IRRI)の等級を用いて点数化した。それぞれの植物のそれぞれの葉に対する褐点病進行曲線下面積(AUBSPC)を、Shaner&Finney(1977)Phytopathol.67:1051−1056により提案される式を用いて経時的に褐点病進行曲線の台形積分を用いてコンピュータで計算した。実験の後、葉を収集し、Elliott&Snyder(1991)(上記参照)に記載されるようにSi含有量について分析する。葉組織のSi含有量およびAUBSPCについてのデータをANOVAに供し、テューキー検定を用いて平均値を有意差について試験した(P=0.05)。等分散性のためのコクラン検定により、2つの実験から得たSi含有量およびAUBSPCからのデータをプールすることができ得ることが示された;そのため、2回の試験からのデータをデータ分析のためにプールした。
【0109】
葉組織中のSi含有量は、図4に示される通りであった。Si含有量は、対照と比較して、組成物A、B、CおよびDにより、それぞれ132%、102%、110%および93%有意に(P≦0.05)増加した。本発明の組成物Aを噴霧した植物は、ケイ酸カリウム(組成物D)を噴霧した植物と比較してSi含有量において、20%の増加を示し、本発明の組成物Bを噴霧した植物は、5%の増加を示した。これは、組成物DのSi含有量が組成物AおよびBに対するよりも2.67倍多かったという事実に反している。
【0110】
AUBSPCデータを図5に示す。本発明の組成物Aを噴霧した植物は、対照と比較して、AUBSPCの49%の低下を示し、本発明の組成物Bを噴霧した植物は、AUBSPCの30%の低下を示した。一方、ケイ酸カリウム(組成物D)を噴霧した植物は、対照と比較して、AUBSPCのただ24%だけの低下を示した。この場合もやはり、これは、組成物DのSi含有量が組成物AおよびBに対するよりも2.67倍多かったという事実に反している。
【0111】
壊死斑の数およびサイズは、対照と比較して組成物A、BおよびCを噴霧した植物の葉で大幅に減少した。実際に、それらの葉では、合体した病斑はより少なく、萎黄病の強度が低下した。殺真菌薬(組成物F)を噴霧した植物の葉では病斑が完全になかった。ケイ酸カリウム(組成物D)を噴霧した植物の葉に形成された病斑は、より多数でより大きく、非常によく発達した萎黄病の光輪(halo)によって取り囲まれ、組成物A、BおよびCを噴霧した植物の葉と比較して強い壊死組織を有した。
【0112】
本明細書において引用される全ての特許および刊行物は、引用することにより本明細書の一部をなすものとする。
【0113】
「含む(comprise)」、「含む(comprises)」、および「含んでいる(comprising)」の用語は、排他的よりは包括的に解釈されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)葉面吸収性のケイ素の農学的に許容される供給源を含む第一の成分と、
(b)チオ硫酸イオンの農学的に許容される供給源、ケイ酸またはケイ酸イオンの重合を抑制するために効果的な薬剤、およびそれらの混合物から選択される第二の成分と、
(c)第三の成分として、有機酸、無機陰イオンと可逆的に結合するかまたは錯化する能力のある官能基を有する有機化合物、およびそれらの混合物からなる群から選択される化合物の農学的に許容される混合物と
を水溶液中に含む、葉面に施用可能な植物栄養素組成物。
【請求項2】
前記第一の成分がアルカリ金属ケイ酸塩を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記第一の成分がケイ酸カリウムを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記第二の成分が水溶性チオ硫酸塩を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記チオ硫酸塩がカリウムチオ硫酸塩である、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
前記第三の成分がフミン質を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記第三の成分が、ポリアミン、カルボニル化合物、多糖、糖アルコールおよびそれらの混合物から選択される1種類以上の化合物を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記第三の成分の前記化合物が、約300〜約18,000ダルトンの範囲の分子量を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
前記化合物の混合物中において、合計で、
(a)約25%〜約40%の炭素がカルボキシ基およびカルボニル基中にあり、約20%〜約45%の炭素が芳香族基中にあり、約10%〜約30%の炭素が脂肪族基中にあり、約10%〜約30%の炭素が、アセタールおよびその他のヘテロ脂肪族基中にあり、
(b)前記化合物の混合物が、元素の重量で、約28%〜約55%のC、約3%〜約5%のH、約30%〜約50%のO、約0.2%〜約3%のNおよび約0.2%〜約4%のSを含む、
請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
ケイ素以外の植物栄養素の少なくとも1種類の農学的に許容される供給源をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
前記少なくとも1種類の植物栄養素源が、リン源を含む、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
前記リン源が、ピロリン酸四カリウムを含む、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
植物の葉に施用するための溶液を調製するための希釈に適した濃縮製剤の形態の、請求項1に記載の組成物。
【請求項14】
約0.1%〜約10重量%のSiを含む、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
約1%〜約8重量%のSiを含む、請求項13に記載の組成物。
【請求項16】
前記第一の成分として、約5%〜約20%のケイ酸カリウムを含み、前記第二の成分として、約2%〜約35重量%のカリウムチオ硫酸塩を含み、前記第三の成分として、有機化合物または超分子凝集体の混合物の少なくとも約1重量部/1000重量部のSiを含み、
(a)前記化合物または凝集体は、約300〜約18,000ダルトンの範囲の分子量を有し、
(b)約25%〜約40%の炭素がカルボキシ基およびカルボニル基中にあり、約20%〜約45%の炭素が芳香族基中にあり、約10%〜約30%の炭素が脂肪族基中にあり、約10%〜約30%の炭素が、アセタールおよびその他のヘテロ脂肪族基中にあり、
(c)前記化合物の混合物が、元素の重量で、約28%〜約55%のC、約3%〜約5%のH、約30%〜約50%のO、約0.2%〜約3%のNおよび約0.2%〜約4%のSを含む、
請求項13に記載の組成物。
【請求項17】
約2%〜約30重量%のピロリン酸四カリウムをさらに含む、請求項16に記載の組成物。
【請求項18】
さらなる希釈をせずに植物の葉への施用に適した溶液の形態の、請求項15に記載の組成物。
【請求項19】
約0.001%〜約2重量%のSiを含む、請求項18に記載の組成物。
【請求項20】
約0.01%〜約1重量%のSiを含む、請求項18に記載の組成物。
【請求項21】
請求項1に記載の組成物を前記植物の葉の表面に施用することを含む、植物のケイ素栄養摂取のための方法。
【請求項22】
前記植物が、食用作物である、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記植物が、非イネ科作物である、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
前記植物が、果物または野菜作物である、請求項21に記載の方法。
【請求項25】
前記組成物が、濃縮製剤を水に希釈することにより調製され、前記希釈製剤が、濃縮製剤を前記葉の表面に噴霧することにより施用される、請求項21に記載の方法。
【請求項26】
前記組成物が、約0.001%〜約2重量%のSi濃度で施用される、請求項21に記載の方法。
【請求項27】
前記組成物が、約0.05〜約2kg Si/haをもたらす速度で施用される、請求項21に記載の方法。
【請求項28】
請求項1に記載の組成物を前記植物の葉の表面に施用することを含む、植物の真菌もしくは細菌性病害に対する感受性を低下させるための方法。
【請求項29】
前記植物が、食用作物である、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記植物が、非イネ科作物である、請求項28に記載の方法。
【請求項31】
前記植物が、果物または野菜作物である、請求項28に記載の方法。
【請求項32】
前記組成物が、濃縮製剤を水に希釈することにより調製され、前記希釈製剤が、濃縮製剤を前記葉の表面に噴霧することにより施用される、請求項28に記載の方法。
【請求項33】
前記組成物が、約0.001%〜約2重量%のSi濃度で施用される、請求項28に記載の方法。
【請求項34】
前記組成物が、約0.05〜約2kg Si/haをもたらす速度で施用される、請求項28に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2011−530467(P2011−530467A)
【公表日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−517645(P2011−517645)
【出願日】平成21年7月10日(2009.7.10)
【国際出願番号】PCT/US2009/050209
【国際公開番号】WO2010/006233
【国際公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【出願人】(511009592)エフビーサイエンシズ・ホールディングス,インコーポレイテッド (4)
【Fターム(参考)】